(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113576
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】SOECシステムの大気動作のためのコンプレッサー統合及び安全な動作始動
(51)【国際特許分類】
C25B 1/042 20210101AFI20230808BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230808BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20230808BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20230808BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20230808BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20230808BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20230808BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230808BHJP
【FI】
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B13/04 301
C25B13/07
C25B15/023
H01M8/0656
C01B3/02 H
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023005891
(22)【出願日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】63/300,617
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーメルスタイン,ジョシュア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固体酸化物型電解セル(SOEC)システムの大気動作のためのコンプレッサー統合及び安全な動作始動を提供する。
【解決手段】固体酸化物型電解セルシステムのコンプレッサーであって、システムは、水素供給を受け取り、湿潤水素を排出する1つ以上のスタンプと、湿潤水素の温度を減少させるように構成される熱交換器又は凝縮器と、湿潤水素の圧力を増大させるように構成されるコンプレッサーと、湿潤水素の露点を低減するように構成される乾燥器とを備える、コンプレッサー、前記固体酸化物型電解セルシステム、並びに前記固体酸化物型電解セルシステムを動作させる方法を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物型電解セルシステムのコンプレッサーであって、
前記システムは、
水素供給を受け取り、湿潤水素を排出する1つ以上のスタンプと、
前記湿潤水素の温度を減少させるように構成される熱交換器又は凝縮器と、
前記湿潤水素の圧力を増大させるように構成されるコンプレッサーと、
前記湿潤水素の露点を低減するように構成される乾燥器と、
を備える、前記コンプレッサー。
【請求項2】
前記1つ以上のスタンプには、マニホールドによって水素が供給される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つ以上のスタンプ、前記熱交換器又は凝縮器、前記コンプレッサー、及び前記乾燥器のそれぞれは、フィードバックループ上に位置する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
スタンプごとに1つのコンプレッサーがある、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
複数のスタンプごとに1つのコンプレッサーがある、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コンプレッサーが完全に動作する前及び前記1つ以上のスタンプが完全に動作する間、前記熱交換器又は凝縮器の排出物が、第1の移行弁を開放することによって放出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コンプレッサーが動作状態になると、前記熱交換器又は凝縮器の排出物が、第2の移行弁を開放するとともに第1の移行弁を閉鎖することによって、吸引ノックアウトドラムに供給される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記吸引ノックアウトドラムは、凝縮物放出ラインを介して凝縮物を収集及び廃棄するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
ガス分析器が、前記乾燥器の排出物を監視及び制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
1つ以上のスタンプにおいて、湿潤水素を排出することと、
熱交換器又は凝縮器において、前記湿潤水素の温度を減少させることと、
コンプレッサーにおいて、前記湿潤水素の圧力を増大させることと、
乾燥器において、前記湿潤水素の露点を低減させることと、
を含む、固体酸化物型電解セルシステムを動作させる方法。
【請求項11】
前記1つ以上のスタンプには、マニホールドによって水素が供給される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上のスタンプ、前記熱交換器又は凝縮器、前記コンプレッサー、及び前記乾燥器のそれぞれは、フィードバックループ上に位置する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
スタンプごとに1つのコンプレッサーがある、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
複数のスタンプごとに1つのコンプレッサーがある、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記コンプレッサーが完全に動作する前及び前記1つ以上のスタンプが完全に動作する間、前記熱交換器又は凝縮器の排出物が、第1の移行弁を開放することによって放出される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記コンプレッサーが動作状態になると、前記熱交換器又は凝縮器の排出物が、第2の移行弁を開放するとともに第1の移行弁を閉鎖することによって、吸引ノックアウトドラムに供給される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記吸引ノックアウトドラムは、凝縮物放出ラインを介して凝縮物を収集及び廃棄するように構成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ガス分析器が、前記乾燥器の排出物を監視及び制御する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、包括的には、固体酸化物型電解セル(SOEC)を含む電解槽システム及びその動作方法に関する。特に、SOECシステムの大気動作のためのコンプレッサー統合及び安全な動作始動に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、水素及び酸素を生成するために電解槽として動作することができ、これは、固体酸化物型電解セル(SOEC)と呼ばれる。SOFCモードでは、酸素イオンがカソード側(空気)からアノード側(燃料)に移送され、その駆動力となるのは、電解質にわたる酸素の分圧の化学勾配である。SOECモードでは、セルの空気側に正電位が印加されると、酸素イオンが燃料側から空気側に移送される。SOFCとSOECとの間でカソードとアノードとが逆転している(すなわち、SOFCカソードがSOECアノードとなり、SOFCアノードがSOECカソードとなる)ため、SOFCカソード(SOECアノード)は空気電極と呼ぶことができ、SOFCアノード(SOECカソード)は燃料電極と呼ぶことができる。SOECモードの間、燃料流中の水が還元され(H2O+2e→O2-+H2)、H2ガス及びO2-イオンを形成し、O2-イオンは、固体電解質を通して移送された後、空気側において酸化され(O2-からO2)、分子状酸素を生成する。空気及び湿潤燃料(水素、改質天然ガス)を用いて動作するSOFCの開回路電圧は、0.9V~1V程度(含水量に応じる)であるため、SOECモードにおいて空気側電極に印加される正電圧により、セル電圧を、典型的な動作電圧である1.1V~1.3Vまで上昇させる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施形態は、関連技術の制限及び不都合点に起因する1つ以上の問題を実質的に排除する、SOECシステムの大気動作のためのコンプレッサー統合及び安全な動作始動に関する。
【0004】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の説明において記載され、その説明から部分的に明らかになるか、又は本発明の実施によって習得することができる。本発明の目的及び他の利点は、特に、添付図面と合わせて記載の説明及び本件の特許請求の範囲に示される構造によって実現及び達成される。
【0005】
これらの利点及び他の利点を達成するために、本発明の目的に従って、具現化及び広範に記載されるように、SOECシステムの大気動作のためのコンプレッサー統合及び安全な動作始動は、圧力コントローラーによって吸引が制御されるコンプレッサーにおける再循環流を実装し、電解生成ガスのコンプレッサーへのスムーズな移行を可能にする供給及び通気グローブ制御弁をコンプレッサーの上流に実装し、コンプレッサーが停止された場合にコンプレッサースキッド上の迅速作動ボール弁が吸引ライン圧力を解放する、SOECシステムを動作させるシステム、装置、方法、及び命令を含む。
【0006】
以上の一般的な記載及び以下の詳細な記載はいずれも、例示的かつ説明的なものであり、特許請求の範囲に係る本発明の更なる説明を与えることを意図するものであることが理解される。
【0007】
本発明の更なる理解をもたらすために含まれ、本明細書に援用されるとともに本明細書の一部をなす添付図面は、本発明の実施形態を例示するとともに、明細書と合わせて本発明の原理を説明する役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一例示の実施形態に係るSOFC/SOECモジュール式システムを示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一例示の実施形態に係る大規模電解槽システムを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の別の例示の実施形態に係る大規模電解槽システムを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一例示の実施形態に係るコンプレッサーシステムを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一例示の実施形態に係るSOECシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に参照する。それらの例は、添付図面に示されている。前述の包括的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも例であり、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0010】
図1は、本発明の一例示の実施形態に係るSOFC/SOECモジュール式システム10を示している。
【0011】
SOFC/SOECシステム10のモジュール式設計は、柔軟なシステム設置及び動作を提供する。モジュールにより、単一の設計セットを用いて、設置された発電容量の拡縮、信頼性のある発電、燃料処理の柔軟性、並びに電力出力電圧及び周波数の柔軟性が可能になる。モジュール式設計により、非常に高い可用性及び信頼性を有する「常時オン」のユニットが得られ、メンテナンス及びスケールアップの手段も改善される。モジュール式設計は、利用可能な燃料、並びに顧客及び/又は地理的領域によって変動し得る必要な電圧及び周波数の使用も可能になる。
【0012】
SOFC/SOECモジュール式システム10は、発電機モジュール12(好ましくは複数の発電機モジュール12、「SGM」とも称する)、1つ以上の燃料処理モジュール16(SOFCシステム内)、及び1つ以上の電力調整モジュール18(すなわち、電気出力、発電機モジュール又は「SPM」とも称する)のうちの少なくとも1つが中に配置されるハウジング14を備える。これらの例示の実施形態において、電力調整モジュール18は、インバーター等の、DCをACに変換する又はACをDCに変換する機構を含むことができる。例えば、システム10は、2個~30個の発電機モジュール、3個~12個の発電機モジュール、6個~12個のモジュール等の任意の所望の数のモジュール、又は発電機モジュールの他の大規模構成を含むことができる。
【0013】
図1の例示のシステム10は、パッド20上に、任意の数の発電機モジュール12(横並びにされた6つのモジュールの1つの列)と、1つの燃料処理モジュール16(SOFCシステム内)と、1つの電力調整モジュール18とを備える。ハウジング14は、各モジュール12、16、18を収容するキャビネットを備えることができる。代替的に、モジュール16及び18は、単一のキャビネット内に配置してもよい。1列の発電機モジュール12が示されているが、システムは、2列以上のモジュール12を備えてもよい。例えば、SOFC/SOECシステム10は、背面対背面/端面対端面で配置された2列の発電機モジュール12を備えることもできる。
【0014】
各発電機モジュール12は、1つ以上のホットボックス13を収容するように構成される。各ホットボックス13は、導電性インターコネクトプレートによって分離されるセラミック酸化物電解質を有する固体酸化物型燃料電池の1つ以上のスタック又はカラム等の、燃料電池/電解セル(明確にするために図示せず)の1つ以上のスタック又はカラムを収容する。PEM、溶融炭酸塩、リン酸等の他のタイプの燃料電池を使用することもできる。
【0015】
燃料電池スタックは、外部及び/又は内部でマニホールド化されたスタックを含むことができる。例えば、スタックは、燃料電池/電解セル層及び/又は燃料電池/電解セル間のインターコネクトプレート内の開口部を通って延在する燃料及び空気ライザーを有して、燃料及び空気用に内部でマニホールド化することができる。
【0016】
燃料電池/電解セルスタックは、燃料用に内部でマニホールド化し、空気用に外部でマニホールド化してもよく、その場合、燃料入口及び排気ライザーのみが、燃料電池/電解セル層及び/又は燃料電池間のインターコネクトプレートの開口部を貫通する。燃料電池/電解セルは、直交流構成(空気及び燃料が、各燃料電池内の電解質の対向する側において互いに対して略垂直に流れる)、向流並列構成(空気及び燃料が、各燃料電池内の電解質の対向する側において、互いに対して略平行であるが対向する方向に流れる)、又は並流並列構成(空気及び燃料が、各燃料電池内の電解質の対向する側において、同じ方向に互いに対して略平行に流れる)を有することができる。
【0017】
燃料処理モジュール16及び電力調整モジュール18は、ハウジング14の1つのキャビネット内に収容してもよい。
図1の例示の実施形態に示されているように、6つの(又は任意の数の)発電機モジュール12の1列に対して1つのキャビネット14が設けられ、6つの発電機モジュール12は、入力/出力モジュール14の片側に直線的に横並びで配置される。モジュールの列は、例えば、システムが電力を提供する建造物に隣接して(例えば、モジュールのキャビネットの背面が建造物の壁に面するように)位置決めすることができる。
【0018】
発電機モジュール12の直線状の配列は容易に拡縮される。例えば、燃料電池/電解槽システム10によってサービス提供される建造物又は他の施設の電力需要に応じて、より多数又は少数の発電機モジュール12を設けてもよい。発電機モジュール12及び入力/出力モジュール14は、他の比率で設けることもできる。例えば、他の例示的な実施形態において、より多数又は少数の発電機モジュール12を入力/出力モジュール14に隣接して設けてもよい。さらに、2つ以上の入力/出力モジュール14によって(例えば、別個の燃料処理モジュール16及び電力調整モジュール18キャビネットを用いて)サポート機能をサービス提供することができる。さらに、入力/出力モジュール14が、発電機モジュール12の列の端部にあるが、発電機モジュール12の列の中央又は他の場所に位置することもできる。
【0019】
SOFC/SOECモジュール式システム10は、システム10の構成要素の整備を容易にするように構成することができる。例えば、日常的に又は高頻度で整備される構成要素(消耗部品等)は、単一のモジュール内に置いて、整備員が必要とする時間が低減されるようにしてもよい。例えば、パージガス(任意選択)を、単一のモジュール(例えば、燃料処理モジュール16又は併合した入力/出力モジュール14キャビネット)内に置くことができる。これは、日常的なメンテナンス中にアクセスされる唯一のモジュールキャビネットとなり得る。したがって、各モジュール12、14、16、及び18は、他のモジュールキャビネットを開けることなく、また、他のモジュールの整備、修理、又は取外しを行うことなく、整備、修理、又はシステムからの取外しを行うことができる。加えて、配管及び電気部品を、コンクリートパッドと発電機モジュール12との間に配置される鋼製上敷きの上に配置することができる。
【0020】
例えば、上述したように、システム10は複数の発電機モジュール12を備えることができる。少なくとも1つの発電機モジュール12がオフラインになる(すなわち、オフラインのモジュール12内のホットボックス13内のスタックによって電力が生成されない)とき、残りの発電機モジュール12、燃料処理モジュール16、及び電力調整モジュール18(又は併合した入力/出力モジュール14)はオフラインにならない。さらに、燃料電池/電解槽システム10は、各タイプのモジュール12、14、16、又は18を2つ以上含むことができる。特定のタイプの少なくとも1つのモジュールがオフラインになるとき、同じタイプの残りのモジュールはオフラインにならない。
【0021】
したがって、複数のモジュールを備えるシステムにおいて、モジュール12、14、16、又は18のそれぞれは、システムにおける他のモジュールの動作を停止することなく、電気的に切断し、燃料電池/電解セルモジュール式システム10から取り外し、及び/又は整備若しくは修理することができ、燃料電池システムは発電を継続することが可能になる。1つのホットボックス13内の燃料電池/電解槽の1つのスタックが故障した又は整備のためにオフラインになった場合、SOFC/SOECモジュール式システム10全体を停止する必要はない。
【0022】
図2は、本発明の一例示の実施形態に係る大規模電解槽システム200を示している。
【0023】
大規模電解槽システム200は、複数のモジュール式ブロック210、220、230、240に始動水素を供給するように構成されるガス分配モジュール(「GDM」)250を備える。SOEC及びSOFCシステムは、通常、始動及び停止のために新たな水素ガスを必要とする。ガス分配モジュール250は、圧力検出器、熱検出器、ガス安全遮断器、及びパージガス分配器を更に備えることができる。
【0024】
上述したように、各モジュール式ブロックは、例えば、1つのパワーモジュール(「SPM」)及び1つ以上の発電機モジュール(「SGM」)を含む。モジュール式ブロックをシステムの集合体にグループ化したものを、スタンプと称する。したがって、大規模電解槽システム200はスタンプである。水素は圧力下で各SGMに供給される可燃性ガスであるため、安全イベントが検出されると、発電機モジュールSGMの群へのガスを遮断する安全な方法が必要となる。したがって、GDM250は、安全イベントが検出されると、SGMに供給される水素を遮断するように構成される。圧力検出、過圧保護、及びガス安全遮断等の安全設計は、GDM250及び/又は燃料処理モジュール(例えば、16)によって電解槽システム200内に容易に適用される。加えて、スタンプレベルコントローラーをGDM250において提供することができる。
【0025】
4つのモジュール式ブロック210、220、230、240のグループ化が一例示の構成となっているが、この構成は、ガスの安全性のための効率的なグループ化である。加えて、4つのモジュール式ブロック210、220、230、240のグループ化は、整備用通路260内の水素生成物の収集に効率的である。整備用通路260内の管路261は、下流の圧縮システムと統合される水素生成物を収集するように構成される。管路261は、発電機モジュールSGM内への凝縮物の逆流を防止するように構成される。また、凝縮物の管理は、様々な監視及び制御装置並びに管路を使用して、水出口(又はBOP1)に戻すことを可能にする。
【0026】
図3は、本発明の一例示の実施形態に係る大規模(例えば、10メガワットシステム)電解槽システム300を示している。
図3に示されているように、電解槽システム300は、複数のスタンプ310、320、330、340、350、360、及び370を備える。加えて、電解槽システム300は、水源BOP1、水素生成物収集部BOP2(例えば、管路261を含む)、並びに水素圧縮及び処理部BOP3等の追加のバランスオブプラント構成要素を更に備える。水素圧縮及び処理部BOP3は、それぞれのスタンプ310、320、330、340、350、360、及び370ごとのガス分配モジュール(例えば、GDM250)に圧力下で水素を供給するように機能的に構成される。したがって、スタンプアーキテクチャは、大規模設置のために繰返しの要素を使用して組み上げることで、大規模設計において繰り返すことができる。
【0027】
図4は、本発明の一例示の実施形態に係るコンプレッサーシステム400を示している。
【0028】
図4に示されているように、コンプレッサーシステム400は、マニホールド430(例えば、現場用の生成物マニホールド、又は貯蔵された水素に結合されるもの)によって水素が供給される1つ以上のスタンプ410を備える。例えば、水素は、1つ以上のスタンプ410のガス分配モジュール(例えば、
図2のGDM250)に供給することができる。コンプレッサーシステム400は、1つ以上のスタンプ410から、熱交換器又は凝縮器411と、移行弁(transition valves)412と、隔離弁413と、吸引ノックアウトドラム421と、コンプレッサー422と、コンプレッサースキッド乾燥システム425(例えば、乾燥器)と、ガス分析器420とを通る閉フィードバックループを更に備える。様々な構成において、スタンプごとに1つのコンプレッサー422がある場合も、複数のスタンプ410に対して1つのコンプレッサー422がある場合もある。
【0029】
1つ以上のスタンプ410は、熱交換器又は凝縮器411に湿潤水素(例えば、蒸気と水素との組合せ)を供給する。熱交換器又は凝縮器411は、1つ以上のスタンプ410の排出物の温度を、コンプレッサー422の吸引に好適な温度に低減する(例えば、40℃~80℃冷却することにより、スタンプの排出物において150℃であるのを70℃~110℃に冷却する)。いくつかの例において、コンプレッサー422に供給される生成物温度は、230℃まで上がり得る。
【0030】
移行弁412を使用して、1つ以上のスタンプ410及びコンプレッサー422を完全な動作状態にする。コンプレッサー422が完全に動作する前及び1つ以上のスタンプ410が完全に動作する間、凝縮器411の排出物が、移行弁412Aを開放することによって放出される。コンプレッサー422が100%の再循環で完全な動作状態になると、凝縮器411の排出物が、移行弁412Bを開放するとともに移行弁412Aを閉鎖することによって、吸引ノックアウトドラム421に供給される。
【0031】
障害イベントが生じた(例えば、過剰な圧力が検出された)場合、隔離弁413(例えば、迅速作動空気式ボール弁)が使用される。例えば、隔離弁413Aは、過剰な圧力が検出されると、開放することができる。隔離弁413Bは、コンプレッサー422の動作中に開放される。したがって、過剰な圧力は、過剰な圧力の蓄積に起因して損傷し得る1つ以上のスタンプ410に戻されない。
【0032】
吸引ノックアウトドラム421は、凝縮物放出ライン(図示せず)を介して形成された凝縮物を収集及び廃棄するように構成される。また、吸引ノックアウトドラム421は、圧力変動を調節するように構成される。
【0033】
コンプレッサー422の圧縮された(すなわち、増大した圧力の)排出物は、コンプレッサースキッド乾燥システム425によって更に乾燥される。ガス分析器420は、コンプレッサースキッド乾燥システム425の排出物(すなわち、乾燥ガス)を監視及び制御して、目標露点、目標窒素含有量、及び/又は目標酸素含有量を維持する。例えば、ガス分析器420は、露点センサー及び1つ以上のガスクロマトグラフを備えるように構成することができる。ガス分析器420は、コンプレッサースキッド乾燥システム425の排出物(すなわち、乾燥ガス)が、マニホールド430(例えば、顧客生成物ライン)に供給される前に、1つ以上の純度要件(例えば、水分及びガス含有量)を満たすことを確実にする。ガス分析器420は、コンプレッサースキッド乾燥システム425を制御することによって露点(すなわち、水分)を調整することができる。しかしながら、1つ以上の不純物(例えば、窒素又は酸素)がそれぞれの閾値を超過する場合、警告信号又は停止信号をシステムコントローラー(図示せず)に送信することができる。
【0034】
レギュレーター426は、背圧レギュレーターである。システム400が始動するとき、コンプレッサー422及びコンプレッサースキッド乾燥システム425に対して最小圧力が必要である。そうでないと、コンプレッサー422及びコンプレッサースキッド乾燥システム425は、動作に十分な圧力を発生させるのが遅くなる場合がある。レギュレーター416は、前方圧力レギュレーターである。レギュレーター416において、圧縮生成物は、広範な圧力(例えば、5PSI~10000PSI)を有し得る。レギュレーター416から排出される圧力は、圧力コントローラー415に供給される前に(例えば、100mbar未満に)調整される。圧力コントローラー415は、吸引ノックアウトドラム421における圧力を測定するとともに、吸引ノックアウトドラム421への供給時の圧力を(例えば、100mbar未満に)維持することによって、吸引ノックアウトドラム421における圧力を維持するように構成される。いくつかの実施形態において、吸引ノックアウトドラム421は任意選択のものである。
【0035】
したがって、本発明の様々な実施形態は、コンプレッサーシステムと水素を発生させるSOECシステムとの統合、及びその始動の制御に関する。
【0036】
動作時、動作中のSOECシステムは、非常に低い圧力で、例えば、大気圧において又は周囲条件を僅かに超える(例えば、およそ40mbar)圧力で水素を生成する。圧力が低いため、コンプレッサーをオンにしたり、弁を切り替えたりする等の下流の処理における僅かな変動により、SOECスタックが故障するリスクがある即時の圧力/真空サージを引き起こすおそれがある。したがって、様々な実施形態は、そのようなサージを引き起こすことなくコンプレッサーをオンにすることを可能にし、コンプレッサーへのスムーズな移行を可能にし、停止条件下で圧縮から通気へと移行する安全な手段を提供する技法を提供する。
【0037】
コンプレッサーをオンにするように起動するために圧力スイッチを使用するものもある。ここでは、生成水素は、コンプレッサー吸引へと供給される。圧力閾値に達すると、コンプレッサーはオンになる。これは、コールドスタート状態から迅速に応答し、コンプレッサーの始動による圧力変動に素早く反応し得る、低温PEM及びアルカリシステムにおいて使用されている。SOECシステムは、概して比較的遅く、実施形態は、始動時に未反応の蒸気を利用して、コンプレッサーにおける圧力スパイク又は真空を防止する。
【0038】
上記圧力切替え構想によって圧力を均衡させる手段として大型の倒立バケツを使用するものもある。これは、水素と空気とを混合することができる開放システムの可能性をもたらす。また、倒立バケツは、非常に大型であり、かなりのフットプリントを占めるものとなる。
【0039】
様々な実施形態において、既知の技法の欠点が解決される。第1に、圧力コントローラー415によって吸引が制御されるコンプレッサー422において100%の再循環流を実装する。圧力コントローラー415は、電解水素流量とは独立して、コンプレッサー422への設定された吸引圧力を維持する。第2に、電解生成ガスのコンプレッサー422へのスムーズな移行を可能にする移行弁412(例えば、供給及び通気グローブ制御弁)をコンプレッサー422の上流に実装する。第3に、コンプレッサースキッド上の隔離弁413(例えば、迅速作動ボール弁)を利用して、コンプレッサー422が停止されるか又は障害イベントが生じた場合に(即座に、例えば、2秒又は3秒未満の範囲で)吸引ラインの圧力を解放する。
【0040】
実施形態は、コンプレッサーがオンになる前にSOECシステムの安定化を可能にすることで、既知の技法とは異なる。加えて、コンプレッサーユニットの始動又は停止により生じ得る圧力サージに対するスタックの感度の問題が防止される。
【0041】
図5は、本発明の一例示の実施形態に係るSOECシステム500を示している。
【0042】
図5に示されているように、SOECシステム500は、空気導管105と、空気ブロワー106と、空気入口107と、蒸気導管110と、再循環蒸気入口111と、ホットボックス150と、任意選択の水素導管130と、濃縮空気出口123と、濃縮空気導管125と、濃縮空気ブロワー126と、蒸気及び水素生成物出口120と、スプリッター160と、ベンチュリ流量計165と、蒸気再循環ブロワー170と、熱センサー175とを備える。
【0043】
一例示の構成及び動作によれば、蒸気導管110において供給される蒸気(例えば、様々な圧力で現場又は施設蒸気を供給する)は、約100℃~110℃(例えば、105℃)の温度と、約1psigの圧力とを有することができる。様々な実施形態において、蒸気は、外部源からSOECシステム500に供給することができ、又は局所的に発生させることができる。いくつかの実施形態において、複数の蒸気入口が、外部蒸気及び局所蒸気をそれぞれ受け取るように構成することができる。代替的又は付加的に、水は、SOECシステム500に供給し、気化させることができる。
【0044】
空気導管105における空気供給(例えば、周囲空気)は、局所大気圧における周囲温度とすることができ、その温度は約-20℃~+45℃であり得る。空気導管105からの空気は、空気ブロワー106において受け取られ、空気ブロワー106によって排出される空気は、圧縮の熱によって周囲よりも僅かに高い温度となる。例えば、空気ブロワー106によって排出される空気の温度は、20℃の周囲空気温度と比較して、1.0psigにおいて約30℃とすることができる。その後、空気導管105の空気供給は、ホットボックス150の空気入口107において受け取られる。
【0045】
任意選択の水素導管130からの水素は、水素がSOECシステム500によって他の方法で生成されていないときの始動及び過渡のためにのみ必要とされ得る。例えば、定常状態において別個の水素給送流又は水素再循環蒸気は必要なくなる。この水素流の圧力は、現場構築時に決定される設計オプションであり、約5psig~3000psigとすることができる。温度は、貯蔵部に由来し得るため、周囲温度付近であり得る。
【0046】
空気導管105における空気供給、蒸気導管110における蒸気供給、及び任意選択の水素導管130における水素供給は、ホットボックス150に供給される。さらに、ホットボックス150は、ホットボックス150の蒸気及び水素生成物出口120において蒸気及び水素生成物H2-H2O-Gを排出する。ここで、Gは総量(Gross)を表す。ホットボックス排出物H2-H2O-Gは、約100℃~180℃(例えば、130℃)の温度、約0.1psig~0.5psigの圧力を有することができる。
【0047】
加えて、ホットボックス排出物H2-H2O-Gは、スプリッター160に供給され、蒸気再循環流RECH2OLP(ここで、LPは低圧(low pressure)を表す)と、純生成物H2-H2O-N(ここで、Nは純量(Net)を表す)(例えば、商業使用又は貯蔵のための生成物)とに分割される。ここで、純生成物H2-H2O-Nは、約100℃~180℃(例えば、130℃)の温度、約0.1psig~0.5psigの圧力を有することができる。蒸気再循環流RECH2OLPは、約100℃~180℃(例えば、130℃)の温度、約0.1psig~0.5psigの圧力を有することができる。ホットボックス150は、濃縮空気出口123において濃縮空気導管125を介して、本質的に局所大気圧(例えば、0.5psig未満又は0.05psig未満)において約120℃~300℃の温度を有し得る濃縮空気を更に排出することができる。
【0048】
蒸気再循環流RECH2OLPは、蒸気再循環ブロワー170に供給される。結果として生じる再循環蒸気REC-STMは、約100℃~180℃(例えば、140℃、154℃)の温度、約0.5psig~1.5psig(例えば、約1psig)の圧力を有することができ、再循環蒸気入口111においてホットボックス150に供給される。いくつかの実施形態において、再循環水素供給物は、再循環蒸気とともに含まれない場合がある。
【0049】
図5から理解することができるように、蒸気導管110における流入蒸気温度(例えば、105℃)は、内部蒸気発生を伴うSOEC構成と比較して低い。様々な構成において、複数の再循環ループは、内部蒸気発生及び外部蒸気発生の双方を使用するSOECシステムに対して構成することができる。図示されているように、再循環蒸気入口111は、蒸気導管110からの蒸気を受け取るように構成される。ここで、実施形態は、任意選択で、内部蒸気発生コイル、1つ以上の気化器、及び/又は他の加熱素子を通して、典型的には飽和して約105℃の温度にある、蒸気導管110から施設に供給される蒸気を導き、濃縮空気導管125において任意選択のファン又は濃縮空気ブロワー126を通して熱が解放される前に、蒸気供給物を更に加熱(すなわち、過熱)するように、空気排気熱(例えば、約280℃)を使用する。
【0050】
いくつかの実施形態において、顧客(例えば、ユーザー、オペレーター、そのコンピューター)は、固体酸化物型電解セル(SOEC)システムを制御することが可能にされる。1つ以上のインターフェースは、異なる状態のSOECを動作させる顧客コマンドを受信及び実行する、カスタム通信プロトコル(例えば、イーサネット、インターネット、ハードワイヤード等を介する)を提供する。したがって、実施形態は、SOECの安全な動作を保証しながら再生可能水素を利用するという顧客ニーズを満たすためのサポートを提供する。
【0051】
例えば、実施形態は、顧客又は他の第三者が、水素発生、電力制限、及び利用可能な蒸気等のパラメーターを使用して、SOECシステムを制御することを可能にする。いくつかの実施形態において、通信が失われた場合に安全なスタンバイ状態に移行することが可能なシステムが提供される。さらに、安全なスタンバイ状態は、顧客が同意する条件に基づいて定義することができる。
【0052】
付加的又は代替的に、実施形態は、顧客がSOECシステムを動作させるための1つ以上の機構を提供し、動作の安全限界内に留まる安全ロジックを提供し、水素生成のランピング(ramping)を可能にすることによって水素発生が顧客ニーズを満たすことを保証する。いくつかの例において、顧客は、今後の現場制限(例えば、外部水素が利用可能でないこと、利用可能な電力スケジュール、電力貯蔵部に対する通信制限、水及び供給水素の貯蔵制限等)の事前通知を受信することができる。したがって、顧客は、そのような制限に合わせて調整を行う(例えば、現場における水素使用又は水素貯蔵制限に基づいて水素発生を調整する)ことができる。
【0053】
本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明のSOECシステムの大気動作のためのコンプレッサー統合及び安全な動作始動において様々な変更及び変形を行うことができることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、本発明の変更及び変形が添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にあるならば、それらを包含することが意図される。
【外国語明細書】