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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113648
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】EDB標的化IL-12組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230808BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230808BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20230808BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230808BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230808BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230808BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230808BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/54
C07K14/47
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
C12N5/10
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K38/20
A61P37/04
【審査請求】有
【請求項の数】55
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077703
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2020542822の分割
【原出願日】2019-02-08
(31)【優先権主張番号】18156141.6
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18179313.4
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518360689
【氏名又は名称】フィロジェン ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッラ アレッサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】マタシ マッティア
(72)【発明者】
【氏名】オンガーロ ティツィアーノ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】EDBフィブロネクチンの発現に関連する様々な疾患および障害を効果的に治療するために使用することができる改良された組成物および方法を提供する。
【解決手段】a.第1のIL-12サブユニットおよび第2のIL-12タンパク質サブユニットを含むIL-12タンパク質;b.EDB結合ドメインを含むタンパク質;ならびにc.IL-12タンパク質とEDB結合ドメインを含むタンパク質との間のリンカーを含む組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.第1のIL-12サブユニットおよび第2のIL-12タンパク質サブユニットを含むIL-12タンパク質;
b.EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質;ならびに
c.IL-12タンパク質とEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質との間のリンカーを含む組成物。
【請求項2】
IL-12タンパク質とEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質との間のリンカーが、GSADGGSSAGGSDAG(配列番号4)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質がscFvを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質がダイアボディである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が一本鎖ダイアボディである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
IL-12タンパク質の第1のサブユニットがp40であり、第2のサブユニットがp35である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
IL-12タンパク質の第1のサブユニットが、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むp40であり、ここでIL-12タンパク質はIL-12受容体を活性化することができる、請求項1~6に記載の組成物。
【請求項8】
IL-12タンパク質の第2のサブユニットが、配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むp35であり、ここでIL-12タンパク質はIL-12受容体を活性化することができる、請求項1~7に記載の組成物。
【請求項9】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、単一特異性または二重特異性である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質がフィブロネクチンのエクストラドメインB (ED-B)に結合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物
【請求項11】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、配列番号28~33に示されるアミノ酸配列の1つ以上と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、配列番号28~33のアミノ酸配列の各々を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、配列番号7および5に記載のアミノ酸配列の1つ以上と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、配列番号7および5に記載のアミノ酸配列の各々を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、
a)前記ドメインの少なくとも1つが配列番号7または配列番号5に対してそれぞれ≧80%の配列同一性を有するという条件で請求項14に記載の配列対、および/または
b)前記ドメインの少なくとも1つがフィブロネクチンのエクストラドメインB (ED-B)に結合する能力を維持しながら、配列番号7または配列番号5に対してそれぞれ最大10個のアミノ酸置換を有するという条件で請求項14に記載の配列対の少なくとも1つを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つのアミノ酸置換が保存的アミノ酸置換である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、
請求項11~16に記載のEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質の1つと比較して、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に対する≧50%の標的結合親和性を有し、かつ/または
請求項11~16に記載のEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質の1つと、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)への結合について競合する、
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、2つのL19 VHドメインおよび2つのL19 VLドメインを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
2つのL19 VHドメインが同一のアミノ酸配列を有する、2つのL19 VHドメインが異なるアミノ酸配列を有する、2つのL19 VLドメインが同一のアミノ酸配列を有する、または2つのL19 VLドメインが異なるアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、1つのL19 VHドメインおよび1つのL19 VLドメインを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、
第1のリンカーによりp35ドメインに連結されたp40ドメイン;
SADリンカーによりp35ドメインに連結された第1のL19 VHドメイン;
第3のリンカーにより第1のL19 VHドメインに連結された第1のL19 VLドメイン;
第4のリンカーにより第1のL19 VLドメインに連結された第2のL19 VHドメイン;
第5のリンカーにより第2のL19 VHドメインに連結された第2のL19 VLドメイン
を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
p40ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
p35ドメインが、配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
第1のリンカーがGSリンカーである、請求項21~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記第1のリンカーが、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
第1のL19 VHドメイン、第2のL19 VHドメイン、またはその両方が、配列番号28~30に示される少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
第1のL19 VLドメイン、第2のL19 VLドメイン、またはその両方が、配列番号:31~33に記載の少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記第1のL19 VHドメイン、前記第2のL19 VHドメイン、またはその両方が、配列番号7に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記第1のL19 VLドメイン、前記第2のL19 VLドメイン、またはその両方が、配列番号5に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
SADリンカーが、配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
第3のリンカーがGSリンカーである、請求項21~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記第3のリンカーが、配列番号6に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
第5のリンカーがGSリンカーである、請求項21~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記第3のリンカーが、配列番号6に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
第3のリンカーおよび第5のリンカーが同一のアミノ酸配列を含む、請求項21~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
第4のリンカーがGSリンカーである、請求項21~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記第4のリンカーが、配列番号8に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が、配列番号16に示されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
組成物が、配列番号16に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
腫瘍性疾患と診断されているか、
腫瘍性疾患に罹患しているか、または
腫瘍性疾患を発症するリスクがある
ヒト又は動物対象の治療におけるか、またはそのような状態の予防のための、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物の(医薬品の製造のための)使用。
【請求項41】
腫瘍性疾患が、悪性黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)又はミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有する転移性結腸直腸がん、肝細胞がん、胃がん、皮膚の扁平上皮がん、子宮頸がん、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群より選択される、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
ヒト又は動物の対象における血管新生の阻害のための、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物の(医薬品の製造のための)使用。
【請求項43】
請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物、および任意に1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項44】
(i)請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物または請求項43に記載の医薬組成物および(ii)1つ以上の治療的活性化合物を含む組合せ。
【請求項45】
ED-Bフィブロネクチンの発現または過剰発現に関連する疾患または症状を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物、請求項43に記載の医薬組成物、または請求項44に記載の組合せの有効量を投与することを含む方法。
【請求項46】
a)請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物、請求項43に記載の医薬組成物または請求項44に記載の組合せ、
b)組成物、組成物または組合せを投与するための装置、および
c)使用説明書
を含むパーツの治療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、サイトカイン、抗原結合ドメイン、および改良されたリンカーを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
IL-12は、p35およびp40という2つのジスルフィド結合サブユニットを含むヘテロ二量体サイトカインである。IL-12はT細胞やナチュラルキラー細胞からのIFNγの産生を刺激し、またTh1ヘルパー細胞の分化を誘導する。IL-12は、自然免疫および細胞性免疫の重要なメディエーターであり、抗がんおよび抗転移活性の可能性がある。
【0003】
しかし、他の多くのサイトカインと同様に、IL-12の投与は重度の毒性と関連しており(Carら、1999)、1日1μg/kgという低用量でも、抗がん剤としての開発を妨げている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、とりわけ、EDBフィブロネクチンの発現に関連する様々な疾患および障害を効果的に治療するために使用することができる改良された組成物および方法を提供する。
【0005】
特に、本発明は、既知の組換えIL-12構築物よりも好ましい治療特性を有するIL-12結合EDB結合ドメインを提供する。本明細書に記載された組成物は、驚くべきことに、EDBを標的とするように設計された以前から知られているIL-12構築物よりも優れており、疾患または障害、例えば、がんの標的治療のためにIL-12を安全かつ効果的に投与する長い間知られている問題を解決する。本明細書に記載される組成物および方法は、その体内分布プロファイル、その忍容性、その治療ウインドウ、および疾患部位に到達する際のその効力の1つまたは複数を増強することによって、IL-12の改善された治療可能性を提供する。本明細書に記載される構築物はまた、驚くほど優れた製造可能性を示す。
【0006】
免疫サイトカイン治療薬の組織移行の向上は当技術分野において依然として必要とされている。また、これらは、産生が困難な高度に複雑なタンパク質であるため、免疫サイトカイン治療薬の改善された製造に対する要求が当技術分野では存在する。
【0007】
従って、改良版の免疫サイトカイン、例えば、IL-12およびEDBフィブロネクチン結合ドメインを含むタンパク質治療薬を提供することが本発明の目的である。本発明のさらなる目的は、より効率的な産生を示す免疫サイトカインを提供することである。本発明の別の目的は、in vivo性能、例えば標的結合または組織移行を改善した免疫サイトカインを提供することである。
【0008】
本発明は、抗原結合ドメインおよびそのような優れた特性を有するサイトカインを含む組成物を提供する。本発明および、適当なリンカーを含む、その特徴の一般的な利点について、以下に詳細に考察する。
【0009】
本発明の一態様によれば、組成物は、
a.第1のIL-12サブユニットおよび第2のIL-12タンパク質サブユニットを含むIL-12タンパク質;
b.EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質;ならびに
c.IL-12タンパク質とEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質との間のリンカーを含む。
好適には、IL-12の2つのサブユニットは、スキーム(N->C配向):p40-リンカー1-p35のとおり、所与のリンカーによって互いに結合される。
【0010】
好適には、IL-12はヒトIL-12である。本発明のいくつかの実施形態によれば、一本鎖ダイアボディはフィブロネクチンのスプライスアイソフォームに結合する。好ましくは、フィブロネクチンの前記エクストラドメインB(ED-B)は、ヒトフィブロネクチン(UniProt:P02751)のエクストラドメインBである。
【0011】
いくつかの実施形態において、IL-12タンパク質とEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質との間のリンカーは、GSADGGSSAGGSDAG(配列番号4)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、scFvを含む。いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、ダイアボディである。いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、一本鎖ダイアボディである。
いくつかの実施形態において、IL-12タンパク質の第1のサブユニットはp40であり、第2のサブユニットはp35である。
【0013】
いくつかの実施形態において、IL-12タンパク質の第1のサブユニットは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むp40であり、ここでIL-12タンパク質はIL-12受容体を活性化することができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、IL-12タンパク質の第2のサブユニットは、配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むp35であり、ここでIL-12タンパク質はIL-12受容体を活性化することができる。
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、単一特異性または二重特異性である。
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する。
【0015】
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、配列番号28~33に記載のアミノ酸配列の1つ以上と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、配列番号28~33のアミノ酸配列の各々を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、配列番号7および5に記載のアミノ酸配列の1つ以上と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、配列番号7および5に記載のアミノ酸配列の各々を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する能力を維持しながら、
a)ドメインの少なくとも1つは、それぞれ、配列番号7または配列番号5に対して≧80%の配列同一性を有するという条件で、上記の配列対か、および/または
b)ドメインの少なくとも1つは、それぞれ、配列番号7または配列番号5に対して最大10個のアミノ酸置換を有するという条件で、上記の配列対の少なくとも一つを含む。
いくつかの実施形態において、ペプチドまたはタンパク質は、少なくとも1つのアミノ酸置換が保存的アミノ酸置換である少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、
・上記の抗EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質の1つと比較して、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に対して≧50%の標的結合親和性を有し、および/または
・上記のEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質の1つとフィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)への結合について競合する。
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、2つのL19 VHドメインおよび2つのL19 VLドメインを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、
・2つのL19 VHドメインは同じアミノ酸配列を有する;
・2つのL19 VHドメインは異なるアミノ酸配列を有する;
・2つのL19 VLドメインは同じアミノ酸配列を有する;または
・2つのL19 VLドメインは異なるアミノ酸配列を有する。
いくつかの実施形態において、EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質は、1つのL19 VHドメインおよび1つのL19 VLドメインを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、組成物は、
・第1のリンカー(「リンカー1」とも呼ばれる)によりp35ドメインに連結されたp40ドメイン;
・SADリンカーによりp35ドメインに連結された第1のL19 VHドメイン;
・第3のリンカー(「リンカー3」とも呼ばれる)により第1のL19 VHドメインに連結された第1のL19 VLドメイン;
・第4のリンカー(「リンカー4」とも呼ばれる)により第1のL19 VLドメインに連結された第2のL19 VHドメイン;
・第5のリンカー(「リンカー5」とも呼ばれる)により第2のL19 VHドメインに連結された第2のL19 VLドメインを含む。
いくつかの実施形態において、第3のリンカーおよび第5のリンカーは、同じアミノ酸配列を含み、かつ/または互いに置き換えることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、p40ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、p35ドメインは、配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、第1のリンカー(「リンカー1」)は、GSリンカーである。
【0023】
いくつかの実施形態において、第1のリンカーは、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1のL19 VHドメイン、第2のL19 VHドメイン、またはその両方は、配列番号28-30に記載の少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、第1のL19 VLドメイン、第2のL19 VLドメイン、またはその両方は、配列番号31-33に記載の少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1のL19 VHドメイン、第2のL19 VHドメイン、またはその両方は、配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1のL19 VLドメイン、第2のL19 VLドメイン、またはその両方は、配列番号5に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、SADリンカーは、配列番号4に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、第3のリンカー(「リンカー3」)は、GSリンカーである。
【0029】
いくつかの実施形態において、第3のリンカーは、配列番号6に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、第5のリンカー(「リンカー5」)は、GSリンカーである。
【0030】
いくつかの実施形態において、第5のリンカーは、配列番号6に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、第3のリンカー(「リンカー3」)および第5のリンカー(「リンカー5」)は、同一のアミノ酸配列を含み、かつ/または互いに交換することができる。
いくつかの実施形態において、第4のリンカー(「リンカー4」)は、GSリンカーである。
【0032】
いくつかの実施形態において、第4のリンカーは、配列番号8に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、組成物は、配列番号16に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、組成物は、配列番号16に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0035】
本発明の別の態様によれば、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物の(医薬品の製造のための)使用は、
・腫瘍性疾患と診断されているか、
・腫瘍性疾患に罹患しているか、または
・腫瘍性疾患を発症するリスクがある
ヒトまたは動物対象の治療、またはそのような状態の予防のために提供される。
【0036】
いくつかの実施形態において、腫瘍性疾患は、悪性黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)又はミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有する転移性結腸直腸がん、肝細胞がん、胃がん、皮膚の扁平上皮がん、子宮頸がん、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群から選択される。
本発明の別の態様によれば、ヒトまたは動物の対象における血管新生の抑制のための上記開示による組成物の(医薬品の製造のための)使用が提供される。
本発明の別の態様によれば、上記の少なくとも組成物、および任意に1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様によれば、(i)上記の組成物または上記の医薬組成物、および(ii)1つ以上の治療的活性化合物を含む組合せが提供される。
【0037】
本発明の別の態様によれば、ED-Bフィブロネクチンの発現または過剰発現に関連する障害または状態を治療または予防するための方法であって、それを必要とする対象に、上記の組成物、上記の医薬組成物、または上記の組合せの有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0038】
本発明の別の態様によれば、パーツの治療用キットが提供され、
a)上記の組成物、上記の医薬組成物、または上記の組合せ、
b)組成物、組成物または組合せを投与するための装置、および
c)使用説明書を含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A】タンパク質発現実験の結果。材料および方法については下記を参照のこと。配列番号4のアミノ酸配列を有する15-merリンカー(本明細書では「SAD」とニックネームされる)は、全ての変異体(本明細書では「クローン」とも呼ばれる)のはるかに最良の産生収率を示す。2番目に良い変異体DDSよりも、収率はほぼ100%良かった。AKKAS株の2つの配列は配列番号9と18であり、AP7株の2つの配列は配列番号15と19であり、DDS株の2つの配列は配列番号10と20であり、AP6株の2つの配列は配列番号14と21であり、G4S株の2つの配列は配列番号11と22であり、SES株の2つの配列は配列番号12と23であり、Alpha3株の2つの配列は配列番号13と24であり、SAD株の2つの配列は配列番号4と25である。図1にはN末端残基とC末端残基(または5´-または3´-ヌクレオチド)があり、灰色で示してある。これらは、検索が必要な本出願の開示には属しない。それらは、それぞれのリンカーを埋め込むことができる枠組みを単純に示している。
図1B】タンパク質発現実験の結果。材料および方法については下記を参照のこと。SDS-PAGEキャラクタリゼーションは、全ての変異体に対して約120kDaの分子量を示した。
図2】ELISA実験。全ての変異体は、10μg/mlおよび1μg/ml濃度の両方で、ヒトフィブロネクチンのドメイン7B89に結合する。
図3】Biacoreの実験。すべての変異体はヒトフィブロネクチンのドメイン7B89と同様の結合挙動を示す。
図4】サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)。すべての変異体は、単量体免疫サイトカインに対応する13mlでの主要ピークと同等の凝集プロファイルを示し、凝集体に対応する10mlでのより小さいピークを示した。
図5】免疫蛍光染色実験。全ての変異体は、陰性対照と比較して、凍結した同系F9奇形腫検体の血管構造を特異的に染色した。
図6】in vivo腫瘍標的化。すべての変異体および陽性対照は、125Iで放射性ヨウ素化し、F9マウス奇形腫を皮下移植した免疫正常マウスに注射した(4~9μgタンパク質/動物)。注射24時間後に計測した放射能は、全ての変異体について腫瘍に蓄積を示した。しかしながら、「SAD」変異体は、他の7つのクローンと比較して、腫瘍における優れた蓄積を示した(~2,9% ID/g(=組織1g当たりの注射量)対して、2番目に良いものは(G4S)3であり、~2,4% ID/gを示す)。
図7】IL-12および抗フィブロネクチン抗体を用いた例示的免疫サイトカインフォーマット。
図8】IL-12および抗フィブロネクチン抗体を用いた例示的免疫サイトカインフォーマット。
図9】異なる融合タンパク質のSEC分析。(A)huIL-12L19L19「SAD」バッチA、(B)huIL-12L19L19「SAD」バッチB、(C)huIL-12L19L19「Old」バッチA(D)huIL-12L19L19「Old」バッチB。
図10】Biacoreの実験。「SAD」変異体は、フィブロネクチン7B89ドメインに対する「Old」リンカーを有する変異体と比較して、改善された見かけの親和性を有することを示した(3.8nM対6.7nM)。リンカーの変異はタンパク質の安定性に影響を及ぼすが、通常はその標的に対する親和性には影響しないので、この驚くべき結果は予想外である。
図11】in vivo腫瘍標的化実験。「SAD」変異体および「Old」変異体は、125Iで放射性ヨウ素化され、F9マウス奇形腫を皮下移植した免疫適格マウスに注射(10~11μgタンパク質/動物)された。「SAD」変異体は、「old」リンカー変異体と比較して、腫瘍標的化能が改善されることを示した。
【0040】
詳細な説明
<定義>
「抗体」とは、四量体構造単位を含む免疫グロブリンファミリーの分子を指し、各四量体は、2対の同一のポリペプチド鎖から構成され、各対は、1つの「軽鎖」(約25kD)および1つの「重鎖」(約50~70kD)を有し、ジスルフィド結合を通して連結される。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δ、εに分類され、そしてこれらは免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ定義する。抗体は、任意のアイソタイプ/分類(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE)、または任意のサブ分類(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)であり得る。
【0041】
軽鎖及び重鎖はどちらも構造的相同性と機能的相同性の領域に分けられる。用語「定常」および「可変」は、構造的および機能的に使用される。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100~110以上のアミノ酸の可変(V)領域またはドメインを規定する。可変軽鎖(VL)と可変重鎖(VH)という用語は、それぞれ軽鎖と重鎖のこれらの領域を指す。VHとVLの対合は一緒になって単一の抗原結合部位を形成する。V領域に加えて、H鎖およびL鎖の両方は定常(C)領域またはドメインを含む。免疫グロブリンC領域の分泌型は、CH1、CH2、CH3、任意にCH4(Cμ)、およびヒンジ領域の3つのCドメインから形成される。免疫グロブリンC領域の膜結合型も膜ドメインと細胞内ドメインをもっている。それぞれの各軽鎖は、N-末端にVLがあり、その反対側に定常領域(C)が続く。軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2またはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤移動、Fc受容体結合、補体結合などの重要な生物学的性質を与える。慣例により、定常領域ドメインの番号付けは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠位になるにつれて増加する。N末端は可変領域であり、C末端は定常領域である。CH3およびCLドメインは、それぞれ重鎖および軽鎖のカルボキシ末端ドメインを実際に構成する。VLはVHと並んでおり、CLは重鎖の第1の定常ドメインと並んでいる。本明細書中で使用される「抗体」は、従来の抗体構造および抗体の変異体を包含する。したがって、本概念の範囲内には、完全長抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、およびそれらの抗体断片がある。
【0042】
抗体は、完全免疫グロブリン鎖として、または種々のペプチダーゼで消化することによって産生される多くのよく特徴づけられた抗体断片として存在する。本明細書中で使用される用語「抗体断片」は、抗原のエピトープと特異的に相互作用する能力(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間的分布による)を保持する抗体の1つ以上の部分を指す。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域内のジスルフィド連結の下で抗体を消化し、それ自身がジスルフィド結合によってVH-CH1に連結された軽鎖であるFab’の二量体であるF(ab)’2を生成する。F(ab)’2は、緩やかな条件下で還元されて、ヒンジ領域におけるジスルフィド連結が切断され、それによりF(ab)’2二量体をFab’単量体に変換することができる。Fab´単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を有するFabである。Paul, Fundamental Immunology 3d ed.(1993).種々の抗体断片は、インタクトな抗体の消化の観点から定義されるが、当業者は、このような断片が、化学的に、または組換えDNA方法論を使用することによって、新規に合成され得ることを認識するであろう。本明細書で使用される「抗体断片」とは、抗体全体の修飾によって産生されるか、または結合特異性および機能的活性を保持する組換えDNA方法論を用いて新規に合成される抗体の1つまたは複数の部分を指す。抗体断片の例としては、Fv断片、一本鎖抗体(ScFv)、Fab、Fab’、Fd(VhおよびCH1ドメイン)、dAb(Vhおよび単離されたCDR);ダイアボディおよび一本鎖ダイアボディ;ならびに同じ結合特異性を有するこれらの断片の多量体型(例えば、F(ab’)2,)が挙げられる。抗体断片はまた、本発明において提供される結合特異性および活性を達成するために、サイトカイン移植タンパク質に組み込まれ得る。
【0043】
本明細書で使用される「Fab」ドメインは、重鎖可変ドメイン、定常領域CH1ドメイン、軽鎖可変ドメイン、および軽鎖定常領域CLドメインを含む。ドメインの相互作用は、CH1ドメインとCLドメインの間のジスルフィド結合によって安定化される。いくつかの実施形態において、Fabの重鎖ドメインは、N末端からC末端の順番で、VH-CHであり、Fabの軽鎖ドメインは、N末端からC末端の順番で、VL-CLである。いくつかの実施形態において、Fabの重鎖ドメインは、N末端からC末端の順番で、CH-VHであり、Fabの軽鎖ドメインは順番に、CL-VLである。Fabは歴史的にはインタクト免疫グロブリンのパパイン消化によって同定されたが、本開示の文脈では、「Fab」は、典型的には、いずれの方法により組換えで産生される。それぞれのFab断片は、抗原結合に関して一価である。すなわち、それは単一の抗原結合部位を有する。
【0044】
「相補性決定ドメイン」または「相補性決定領域」(「CDR」)は同義的に、VLおよびVHの超可変領域を指す。CDRは、このような標的タンパク質に対する特異性を有する抗体鎖の標的タンパク質結合部位である。それぞれのヒトのVLやVHには3つのCDR(CDR1-3、N-末端から順番に番号付けされている)があり、可変領域の約15~20%を構成している。CDRは標的タンパク質のエピトープと構造的に相補的であるため、結合特異性に直接関与している。VLまたはVHの残りの領域、いわゆるフレームワーク領域(FR)は、アミノ酸配列の変動が少ない(Kuby, Immunology, 4th ed., Chapter 4. W.H. Freeman & Co., New York, 2000)。
【0045】
CDRおよびフレームワーク領域の位置は、当技術分野における様々な周知の定義、例えば、Kabat, Chothia, international ImMunoGeneTics database (IMGT) 及びAbMを用いて決定することができる(例えば Johnson et al., Nucleic Acids Res., 29:205-206 (2001); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987); Chothia et al., Nature, 342:877-883 (1989); Chothia et al., J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992); Al-Lazikani et al., J.Mol.Biol., 273:927-748 (1997)を参照)。抗原結合部位の定義については、以下の文献にも記載されている:Ruiz et al., Nucleic Acids Res., 28:219-221 (2000); 及び Lefranc, M.P., Nucleic Acids Res., 29:207-209 (2001); MacCallum et al., J. Mol. Biol., 262:732-745 (1996); 及び Martin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9268-9272 (1989); Martin et al., Methods Enzymol., 203:121-153 (1991); 及び Rees et al., In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction, Oxford University Press, Oxford, 141-172 (1996)。
【0046】
Kabatでは、VHのCDRアミノ酸残基は31-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)、95-102(HCDR3)と番号付けされ、VLのCDRアミノ酸残基は24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)、89-97(LCDR3)と番号付けされている。Chothiaでは、VH中のCDRアミノ酸は26-32(HCDR1)、52-56(HCDR2)、95-102(HCDR3)と番号付けされ、VL中のアミノ酸残基は26-32(LCDR1)、50-52(LCDR2)、91-96(LCDR3)と番号付けされている。KabatとChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRは、ヒトVHにおけるアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、および95~102(HCDR3)と、ヒトVLにおけるアミノ酸残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、および89~97(LCDR3)からなる。
【0047】
本明細書中で使用される「抗体可変軽鎖」または「抗体可変重鎖」は、それぞれVLまたはVHを含むポリペプチドを指す。内因性VLは遺伝子セグメントV(可変)とJ(接合)により、内因性VHはV,D(多様性),およびJによりコードされている。VLまたはVHのそれぞれには、フレームワーク領域(FR)だけでなく、CDRも含まれる。用語「可変領域」または「V領域」は同義的に、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含む重鎖または軽鎖を意味する。V領域は、天然に存在するか、組換えまたは合成され得る。本出願において、抗体軽鎖および/または抗体重鎖は、時々、「抗体鎖」と総称され得る。本明細書に提供され、さらに記載されるように、「抗体可変軽鎖」または「抗体可変重鎖」および/または「可変領域」および/または「抗体鎖」は、任意にCDRに挿入されたサイトカインポリペプチド配列を含む。
【0048】
例えばCH2およびCH3ドメインを含む、本明細書で開示される免疫グロブリン重鎖のC末端部分は、「Fc」ドメインである。本明細書で使用される「Fc領域」は、第1の定常領域(CH1)免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を指す。Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、およびIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、およびこれらのドメインに対する柔軟なヒンジN末端を指す。IgAおよびIgM Fcについては、J鎖を含むことができる。IgGについては、Fcは免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3、ならびにCγ1とCγのヒンジを含む。Fc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシル末端に対する残基C226またはP230を含むと定義され、番号付けは、Kabatら(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service, Springfield, Va.)におけるようにEUインデックスに従うと理解される。「Fc領域」は、抗体または抗体断片との関連において、単離されたこの領域またはこの領域を指すことができる。「Fc領域」は、例えば、エフェクター機能を調節する修飾を含む、CH2およびCH3領域における、Fc領域の天然に存在する対立遺伝子変異体を含む。Fc領域には、生物学的機能に変化をもたらさない変異体も含まれる。例えば、1つ以上のアミノ酸は、生物学的機能の実質的な喪失なしに、免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端から欠失される。たとえば、特定の実施形態ではC末端のリジンが修飾されたり除去されたりする。特定の実施形態では、Fc領域の1つまたは複数のC末端残基が改変または除去される。特定の実施形態では、Fcの1つ以上のC末端残基(例えば、末端リシン)が欠失している。特定の他の実施形態では、Fc中の1以上のC末端残基は、別のアミノ酸で置換される(例えば、末端リジンが置換される)。このような変異体は、活性に対して最小限の影響を有するように、当技術分野で公知の一般的規則に従って選択される(例えば、Bowie, et al., Science 247:306-1310,1990を参照)。Fcドメインは、FcRなどの細胞受容体によって認識され、補体活性化タンパク質であるC1 qが結合する免疫グロブリン(Ig)の部分である。CH2エキソンの5´部分にコードされているヒンジ下部領域は、FcR受容体に結合するための抗体内の柔軟性を提供する。
【0049】
「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるもしくは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、またはキメラ抗体に新たな特性を付与する全く異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、および薬物)に連結されるように、定常領域またはその部分が改変され、置換され、または交換された抗体分子であるか;または(b)可変領域またはその部分が、異なるもしくは改変された抗原特異性を有する可変領域で改変され、置換され、または交換された抗体分子である。
【0050】
「ヒト化」抗体は、ヒトにおいて免疫原性が低い一方で、非ヒト抗体の反応性(例えば、結合特異性、活性)を保持する抗体である。これは、例えば、ヒト以外のCDR領域を保持し、抗体の残りの部分をヒト対応物と置換することによって達成することができる。例えば、以下を参照することができる:Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun., 28:489-498 (1991); Padlan, Molec. Immun., 31(3):169-217 (1994)。
【0051】
「ヒト抗体」は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト由来の配列に由来する可変領域を有する抗体を含む。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域は、ヒト配列、例えば、ヒト生殖細胞系列配列、またはヒト生殖細胞系列配列の突然変異型、またはヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列を含むまたは抗体(例えば、Knappikら(J. Mol. Biol. 296:57-86, 2000)に記載されている)に由来する。ヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発またはin vivoでの体細胞突然変異によって導入された突然変異、または安定性もしくは製造を促進するための保存的置換)を含み得る。
【0052】
「単離された」という用語は、核酸またはタンパク質に適用された場合、核酸またはタンパク質が、それが自然状態で関連する他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。それは、均一な状態にあることが望ましい。それは、乾燥溶液または水溶液のいずれかであり得る。純度および均質性は、典型的には、分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高性能液体クロマトグラフィーを使用して決定される。調製物中に存在する優勢な種であるタンパク質を実質的に精製する。特に、単離された遺伝子は、遺伝子に隣接し、目的の遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離される。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲル中で本質的に1つのバンドを生じることを意味する。特に、それは、核酸またはタンパク質が少なくとも85%純粋であり、より好ましくは少なくとも95%純粋であり、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0053】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそのポリマーの一本鎖または二本鎖形態のいずれかを指す。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される、天然ヌクレオチドの公知のアナログを含有する核酸を包含する。特に明記しない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オーソログ、SNP、および相補的配列、ならびに明示的に示された配列も潜在的に包含する。具体的には、1つ以上の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換される配列を生成することによって、縮重コドン置換を達成することができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); 及び Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0054】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書中、アミノ酸残基のポリマーを意味するために同義的に使用される。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび非天然に存在するアミノ酸ポリマーの人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書中で使用されるように、「EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質」という用語は、全体として、またはその部分/断片によって、EDBに結合するペプチドまたはタンパク質、すなわち、フィブロネクチンを含むエクストラドメインBに関連する。
【0055】
一般的に、ペプチドは、例えば、≧3アミノ酸残基および≦50アミノ酸残基(したがって、オリゴまたはポリペプチド)の長さを有する単量体分子であってよく、一方、タンパク質は、例えば、≧50アミノ酸残基の長さを有する各鎖1つ以上のタンパク質を有する単量体または二量体または高分子であってよい。
【0056】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合するα-炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の全般的な化学構造とは異なっているが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する構造を有する化合物を指す。
【0057】
「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用する。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードするか、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列をコードする核酸を意味する。遺伝暗号の縮重のために、機能的に同一な多数の核酸は、任意のタンパク質をコードする。たとえば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべてアミノ酸であるアラニンをコードしている。従って、コドンによりアラニンが指定される全ての位置で、コドンは、コードされたポリペプチドを改変することなく、対応する記載のコドンのいずれかに改変することができる。このような核酸変異は「サイレント変異」であり、これは保存的に修飾された変異の1種である。ポリペプチドをコードする本明細書中の全ての核酸配列は、核酸の全ての可能性のあるサイレント変異をさらに記載する。当業者は、機能的に同一の分子を取得するために、核酸中の各コドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、及び通常、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾することができることは認識されよう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載される配列の各々に内在している。
【0058】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸または少数の割合のアミノ酸を変化させ、付加または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加が、化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす「保存的に修飾された変異体」であることを認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野でよく知られている。このような保存的に改変された変異体は、多型変異体、種間ホモログ、および対立遺伝子に加えられ、それらを除外しない。以下の8つの群は、各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0059】
この文脈において、本明細書中で使用される「保存的アミノ酸置換」は、非保存的置換よりも抗体機能に対するより小さな効果を有する。アミノ酸の分類にはいろいろな方法があるが、それらの構造とR基の全般的な化学的性質に基づいて、しばしば6つの主要な群に分類される。
【0060】
いくつかの実施形態において、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものである。例えば、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、
・塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、
・酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、
・非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、
・非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、
・β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および
・芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0061】
他の保存されたアミノ酸置換は、ペプチドの電荷を修飾するためにアスパラギンをアスパラギン酸に置換する場合のように、アミノ酸側鎖ファミリーを横切って起こることもできる。保存的変化には、さらに、化学的に相同な非天然アミノ酸(すなわち、ロイシンの代わりに合成非天然疎水性アミノ酸、トリプトファンの代わりに合成非天然芳香族アミノ酸)の置換を含むことができる。
【0062】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較窓上で2つの最適に並べられた配列を比較することによって決定され、ここで、比較窓におけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、付加または欠失を含まない参照配列(例えば、ポリペプチド)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して一致位置の数を得、一致位置の数を比較窓における位置の総数で除し、結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0063】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列との関連において、「同一」またはパーセント「同一性」という用語は、同一配列である2つ以上の配列または部分配列を指す。比較窓、または次の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手動の位置合わせと目視検査で測定された指定領域で最大の対応を比較して位置合わせした場合、2つの配列が同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定されたパーセンテージを持つ場合(つまり、指定された領域全体、または指定されていない場合は、参照配列の配列全体にわたって、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性)、2つの配列は「実質的に同一」である。開示は、本明細書に例示される、それぞれポリペプチドまたはポリヌクレオチドと実質的に同一であるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを提供する。任意に、同一性は、長さが少なくとも約15、25または50ヌクレオチドである領域にわたって、またはより好ましくは長さが100~500または1000またはそれ以上のヌクレオチドである領域にわたって、または参照配列の完全長にわたって存在する。アミノ酸配列に関して、同一性または実質的同一性は、長さが少なくとも5、10、15または20アミノ酸、場合によっては長さが少なくとも約25、30、35、40、50、75または100アミノ酸、場合によっては長さが少なくとも約150、200または250アミノ酸、または参照配列の全長にわたる領域にわたって存在することができる。より短いアミノ酸配列、例えば20以下のアミノ酸配列に関しては、本明細書で定義される保存的置換に従って、1または2個のアミノ酸残基が保存的に置換された場合、実質的な同一性が存在する。
【0064】
用語「対象」、「患者」および「個体」は同義的に、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類哺乳動物を意味する。哺乳動物は、実験哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターでもよい。いくつかの実施態様において、哺乳動物は、畜産哺乳動物(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ科動物)又は家畜哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ)であり得る。
【0065】
本明細書中、用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」は、疾病または障害について、いくつかの実施形態において、疾病又は障害を改善すること(すなわち、疾患の発症またはその臨床症状の少なくとも1つを鈍化させるか、停止させるか、減少させる)を指す。別の実施形態において、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」は、患者によって識別できない可能性のあるものを含む少なくとも1つの身体的パラメータを緩和させるか、または改善することを指す。さらに別の実施形態において、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」は、疾病または障害を身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメータの安定化)、またはその両方のいずれかで調節することを指す。さらに別の実施形態において、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」または「予防的治療(prophylaxis)」は、疾病または障害の発症の発症または進行または増悪を予防すること、または遅延させることを指す。
【0066】
「併用投与する」という用語は、個体中に2つの(またはそれ以上の)活性剤が同時に存在することを意味する。併用投与される活性剤は、同時または連続的に送達することができる。
【0067】
本発明の種々の態様は、以下のセクションで詳細に記載される。セクションの使用は、本発明を制限することを意図したものではない。各セクションは、本発明の任意の態様に適用することができる。本発明は、記載された組成物の特定の構成要素部分または記載された方法のプロセスステップに限定されず、組成物および方法は変化し得る。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0068】
本明細書及び付属の請求項において用いられる場合、単数形「a」、「an」及び「The」には、文脈が明確に他のことを規定していない限り、単数及び/又は複数の指示対象を含んでいる。本出願においては、特に断りがない限り、「又は」の使用は、「及び/又は」を意味する。さらに、数値によって区切られるパラメータ範囲が与えられる場合、その範囲は、これらの限界値を含むものとみなされることを理解されたい。本明細書に引用される全ての技術の開示は、その全体が参照により援用される。
【0069】
本明細書中で使用される用語「GSリンカー」は、主に、または排他的に、グリシンおよびセリン残基からなるペプチドリンカーに関する(「Gly-Serリンカー」とも呼ばれる)。異なる実施形態において、GSリンカーは、配列番号2、6または8のいずれかにおいて本明細書に記載されたリンカーである。
【0070】
本明細書中で使用される「保存的アミノ酸置換」は、非保存的置換よりも抗体機能に及ぼす効果が小さい。アミノ酸の分類にはいろいろな方法があるが、それらの構造とR基の全般的な化学的性質に基づいて、しばしば6つの主要な群に分類される。
【0071】
本明細書中で使用される用語「標的結合親和性」は、本発明による結合分子の標的に対する親和性を指し、「KD」値を用いて数値的に表される。一般に、より高い「KD」値がより弱い結合に相当する。いつくかの実施態様において「KD」は、放射性標識抗原結合アッセイ(MA)または、例えば、BIAcore(登録商標)-2000またはBIAcore(登録商標)-3000を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって測定される。特定の実施形態において、「on-rate」または「rate of association」または「association rate」または「kon」および「off-rate」または「rate of dissociation」または「dissociation rate」または「koff」も、表面プラズモン共鳴(SPR)法によって測定される。追加の実施形態では、「KD」、「kon」および「koff」がOctet(登録商標)システムを使用して測定される。
【0072】
本明細書中で使用される「結合について競合する」という用語は、上記の配列によって定義される抗体の1つに関して使用され、これは、実際の抗体が、前記配列によって定義された抗体と同様に、同じ標的、または標的エピトープまたはドメインもしくはサブドメインに結合する活性であることを意味し、後者の変異体である。結合の効率(例えば、動力学または熱力学)は、後者の効率と同じか、またはそれより大きいか、またはそれより小さいことができる。例えば、基質への結合のための平衡結合定数は、2つの抗体について異なり得る。
【0073】
本明細書中で使用される用語「所定の標的に結合する能力を維持する」とは、例えば、それぞれの変異体が非修飾ペプチドのそれと比較して≧50%の標的結合親和性を有することを意味する。
EDBフィブロネクチン
【0074】
フィブロネクチン(UniProt:P02751)は、インテグリンと呼ばれる膜貫通受容体タンパク質に結合する細胞外マトリックスの高分子量(~440kDa)糖タンパク質である。インテグリンと同様に、フィブロネクチンはコラーゲン、フィブリン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(シンデカンなど)などの細胞外マトリックス成分と結合する。
【0075】
フィブロネクチンはがん発生に関与している。肺がんでは、特に非小細胞肺がんでフィブロネクチン発現が増加している。肺がん細胞のフィブロネクチンへの接着は、腫瘍形成性を増強し、アポトーシス誘導化学療法剤に対する耐性を付与する。フィブロネクチンは、肺腫瘍の増殖/生存および治療に対する抵抗性を促進する可能性があり、新しい抗がん剤の開発のための新規標的となることが議論されている。
【0076】
フィブロネクチンはタンパク質二量体として存在し、二つのほぼ同一の単量体が一対のジスルフィド結合で連結されている。フィブロネクチンタンパク質は単一の遺伝子から産生されるが、その前駆体mRNAの選択的スプライシングは、1コピーのフィブロネクチン遺伝子から産生され、EDA、EDBおよびIIICSドメインをコードする3つの部位で起こり、複数のアイソフォームが作られる。
【0077】
EDAまたはEDBドメインを含むフィブロネクチンアイソフォームは、胚発生におけるそれらの重要性および正常成体組織におけるそれらの制限された存在のために、腫瘍胎児型として知られる。これらのアイソフォームはまた、血管新生の重要なマーカーとして認識されており、これは発生における重要な生理学的過程であり、がんの進行において腫瘍細胞によって必要とされる。ED-Bフィブロネクチンは、腫瘍組織、特に乳がん、脳腫瘍、リンパ腫細胞、および前立腺がんにおいて発現される。その組織特異的発現プロファイルのため、ED-Bフィブロネクチンは、治療標的化のために利用する魅力的な腫瘍抗原である。
【0078】
IL-12
インターロイキン-12は、免疫系に対して複数の生物学的効果を有するヘテロ二量体サイトカインである。p35とp40の2つのサブユニットからなり、いずれもIL-12の活性型であるp70の分泌に必要である。インターロイキン‐12は樹状細胞(DC)に作用し、成熟と抗原提示の増加を導き、これは腫瘍特異的抗原に対するT細胞応答の開始を可能にすることができる。また、DCによるIL-12の分泌を促し、応答を増幅するポジティブフィードバック機構を作り出す。いったん応答が開始されると、IL-12は免疫系をTh1サイトカインプロファイルに向かわせ、CD4+T細胞にインターフェロンγ(IFN-γ)を分泌させ、CD8+細胞傷害性T細胞応答を導くという基本的な役割を果たす。
【0079】
IL-12はまた、IFN-γと結合する腫瘍壊死因子-Alpha(TNF-α)を含む他のサイトカインの分泌を導く強力な炎症誘発性サイトカインであり、CD4+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の発生の前提条件である。さらに、IL-12は、IFN-γおよび他のサイトカインの誘導を介して、マクロファージおよび好酸球などの自然免疫細胞の活性化を促進することができる。その後、この活性化は、これらの細胞によるIL-12分泌を導き、自然応答および獲得応答の両方のさらなる増幅を導く。しかしながら、高レベルのIL-12、ひいてはIFN-γもまた、IL-10のようなアンタゴニスト分子の誘導およびSTAT4のようなIL-12の下流のシグナル伝達分子の枯渇と関連している。
【0080】
IL-12を治療薬として利用する以前の試みは、IL-12が、しばしば、許容できない毒性副作用、例えば、発熱、疲労、血液学的変化、高血糖、および/または臓器機能不全を伴う、せいぜい控えめなの抗腫瘍効果を示し、不成功であった。
【0081】
本明細書中で使用される「p35」は、以下に示すアミノ酸配列と少なくとも80%(80%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する:
RNLPVATPDPGMFPCLHHSQNLLRAVSNMLQKARQTLEFYPCTSEEIDHEDITKDKTSTVEACLPLELTKNESCLNSRETSFITNGSCLASRKTSFMMALCLSSIYEDLKMYQVEFKTMNAKLLMDPKRQIFLDQNMLAVIDELMQALNFNSETVPQKSSLEEPDFYKTKIKLCILLHAFRIRAVTIDRVMSYLNAS(配列番号3).
【0082】
本明細書中で使用される「p40」は、以下に示すアミノ酸配列と少なくとも80%(80%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する:
IWELKKDVYVVELDWYPDAPGEMVVLTCDTPEEDGITWTLDQSSEVLGSGKTLTIQVKEFGDAGQYTCHKGGEVLSHSLLLLHKKEDGIWSTDILKDQKEPKNKTFLRCEAKNYSGRFTCWWLTTISTDLTFSVKSSRGSSDPQGVTCGAATLSAERVRGDNKEYEYSVECQEDSACPAAEESLPIEVMVDAVHKLKYENYTSSFFIRDIIKPDPPKNLQLKPLKNSRQVEVSWEYPDTWSTPHSYFSLTFCVQVQGKSKREKKDRVFTDKTSATVICRKNASISVRAQDRYYSSSWSEWASVPCS(配列番号1).
【0083】
本明細書中で使用される「IL-12」は、(i)下記(a)および(b)の両方を含むポリペプチドを意味し、
並びに(ii)IL-12受容体を活性化することができる:
(a)p35、またはその断片であって、p35が、下記に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(80%)の同一性を有するアミノ酸配列を含む:
RNLPVATPDPGMFPCLHHSQNLLRAVSNMLQKARQTLEFYPCTSEEIDHEDITKDKTSTVEACLPLELTKNESCLNSRETSFITNGSCLASRKTSFMMALCLSSIYEDLKMYQVEFKTMNAKLLMDPKRQIFLDQNMLAVIDELMQALNFNSETVPQKSSLEEPDFYKTKIKLCILLHAFRIRAVTIDRVMSYLNAS(配列番号3)
および
(b)p40、またはその断片であって、p40が、下記に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(80%)の同一性を有するアミノ酸配列を含む:
IWELKKDVYVVELDWYPDAPGEMVVLTCDTPEEDGITWTLDQSSEVLGSGKTLTIQVKEFGDAGQYTCHKGGEVLSHSLLLLHKKEDGIWSTDILKDQKEPKNKTFLRCEAKNYSGRFTCWWLTTISTDLTFSVKSSRGSSDPQGVTCGAATLSAERVRGDNKEYEYSVECQEDSACPAAEESLPIEVMVDAVHKLKYENYTSSFFIRDIIKPDPPKNLQLKPLKNSRQVEVSWEYPDTWSTPHSYFSLTFCVQVQGKSKREKKDRVFTDKTSATVICRKNASISVRAQDRYYSSSWSEWASVPCS(配列番号1)。
【0084】
リンカー
特定の実施形態において、1つ以上のペプチドリンカーは、(Glyn-Ser)m配列、(Glyn-Ala)m配列、または(Glyn-Ser)m/(Glyn-Ala)m配列の任意の組合せから独立に選択される。ここで、それぞれのnは、1から5までの整数であり、それぞれのmは、0から10までの整数である。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは(Gly4-Ser)mであり、ここで、mは0から10までの整数である。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは(Gly4-Ala)mであり、ここで、mは0~10の整数である。リンカーの例としては、限定されるわけではないが、特定の実施形態には、G4S反復、例えば、Gly-SerリンカーGGGGS(配列番号34)、またはmが1以上の正の整数である(GGGGS)mが含まれる。たとえば、m=1、m=2、m=3、m=4、m=5およびm=6、m=7、m=8、m=9およびm=10である。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GGGGS)3又は(GGGS)4を含むがこれに限定されない、GGGGS(配列番号34)の複数の反復を含む。いくつかの実施形態において、Serは、Alaに置換することができる。例えば、(GGGGA)のようなリンカーG/A(配列番号35)、または(GGGGA)mで、ここでmは1以上の正の整数である。いくつかの実施形態において、リンカーは、GGGGA(配列番号35)の複数の反復を含む。他の実施形態では、リンカーは、組合せおよび複数のGGGGS(配列番号34)、およびGGGGA(配列番号35)を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号2)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列GSADGGSSAGGSDAG(配列番号4)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列GSSGG(配列番号6)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列SSSSGSSSSGSSSSG(配列番号8)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列GGGAKGGGGKAGGGS(配列番号9)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列GGGGDGGGGDGGGGS(配列番号10)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号11)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGEGGGGS(配列番号12)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列AEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号13)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列APAPAPAPAPAP(配列番号14)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列APAPAPAPAPAPAP(配列番号15)を含む。
【0086】
抗EDB結合IL-12
本発明は、とりわけ、がんを含むEDB-フィブロネクチンの発現に関連する疾患または障害を治療するための方法および組成物を提供する。本明細書に記載されるのは、IL-12のがん指向性送達を達成するための標的としてフィブロネクチンを利用する新しい組成物および方法である。このアプローチは、全身毒性を減少させ、IL-12の治療域を増加させる一方で、IL-12の治療可能性を十分に利用することを約束する。
IL-12およびEDBフィブロネクチン標的化ドメインを含む他の構築物は以前に記載されているが、現在開示されている組成物は驚くほど優れている。
【0087】
WO2006/119897は、その内容が本明細書に参照により援用されており、「L19」と名付けられたEDBフィブロネクチン標的化抗体と結合したIL-12の3つの異なった分子フォーマットを開示している。
【0088】
1つのフォーマットは、図7Aに示されるように、sc(IL-12)-scFv(L19)であった。このフォーマットは、2つのサブユニットがペプチドリンカーを介して連結され、次いで、IL-12が、第2のペプチドリンカーを介して(したがって、「一本鎖」IL-12、またはsc(IL-12))、一本鎖FvフォーマットにもあるL19抗体に連結されるIL-12ヘテロ二量体からなる(したがって、scFv(L19))。このフォーマットは、従来技術の知見と一致して、控えめな腫瘍標的化能を示した。
別のフォーマットは、図7Bに示されるように、sc(IL-12)-SIP(L19)のホモ二量体であった。SIPフォーマット(「小免疫タンパク質」)は、出願人によりWO2003/076469において開発されており、「ミニ抗体」ともニックネームが付けられている。SIPは、CH4ドメインに結合したscFvを含む2つのサブユニットからなるホモ二量体である。二つのCH4ドメインはジスルフィド架橋によって互いに結合している。L19の腫瘍標的化特性がSIPフォーマットを用いて改善され得るという先行技術の指摘にもかかわらず、このコンジュゲートの腫瘍取り込みの増加は観察されなかった。
【0089】
別のフォーマットは、ジスルフィド架橋によって互いに結合したIL-12p40およびp35サブユニットのヘテロ二量体であり、それぞれのサブユニットがscFv(L19)に融合し、図7Cに示されるように、scFv(L19)-p35/p40-scFv(L19)ヘテロ二量体を形成した。このヘテロ二量体フォーマットにより、腫瘍への取り込みの著明な改善が得られた。
【0090】
その内容が本明細書に参照により援用されるWO2013/014149において、出願人は、「F8」と名付けられた抗体と名付けられた抗EDAフィブロネクチン腫瘍標的化抗体に結合したIL-12の2つの新たな代替分子フォーマットを開示している。
【0091】
その中で、IL-12免疫コンジュゲートのもう一つのフォーマットは、「一本鎖ダイアボディ」を含む。本質的には、短い-5アミノ酸-リンカーをもつ2つのscFv抗体(したがって「ダイアボディ」を形成する)が、より長い-15アミノ酸-ペプチドリンカーによって互いに結合したものからなる。
【0092】
単一特異性F8一本鎖ダイアボディ(図8B参照)に融合したIL-12を特徴とする分子フォーマットは、腫瘍標的化の点で、(i)scFv(F8)-p35/p40-scFv(F8)ヘテロ二量体(図8A)このヘテロ二量体(そのL19変異体において、WO2006/119897に開示された最良のフォーマットであることが証明された)、または(ii)ダイアボディに結合した2つのIL-12分子(図8C)のいずれよりも優れていることが示された。
【0093】
L19
本明細書で使用する「L19抗体」とは、EDBフィブロネクチンまたはその任意の部分に結合し、以下のアミノ酸配列の1つ以上と少なくとも75%(75%)の同一性を有するアミノ酸配列を含む任意の抗体を意味する:
L19 VH (配列番号7)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSS

L19 VL (配列番号5)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIK

CDR1 VH (配列番号28)
SFSMS

CDR2 VH (配列番号29)
SISGSSGTTYYADSVKG

CDR3 VH (配列番号30)
PFPYFDY

CDR1 VL (配列番号31)
RASQSVSSSFLA

CDR2 VL (配列番号32)
YASSRAT

CDR3 VL (配列番号33)
QQTGRIPPT

L19 ダイアボディ(配列番号36)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSSGSSGGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIK
【0094】
医薬組成物
本発明のさらなる態様は、本発明の少なくとも1つのコンジュゲートおよび任意に薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
本発明の医薬組成物は、典型的には、治療的有効量の本発明のコンジュゲートと、任意に、薬学的に許容される賦形剤などの添加物質とを含む。前記医薬組成物は、医薬当業者で周知の方法で調製される。担体または賦形剤は、活性成分のビヒクルまたは媒体として機能し得る液状物質であってもよい。適当な担体または賦形剤は当技術分野で周知であり、例えば、安定剤、抗酸化剤、pH調節物質、放出制御賦形剤を含む。
【0095】
本発明の薬学的調製物は、例えば、非経口的使用に適合され得、溶液などの形態で患者に投与され得る。本発明の組成物を含む組成物を患者に投与することができる。投与は、好ましくは「治療的有効量」であり、これは、患児に利益を示すのに充分である。このような利益は、少なくとも1つの症状の改善であり得る。実際に投与される量、および投与の割合およびタイムコースは、治療されるものの性質および重症度に依存するであろう。治療の処方、例えば用量に関する決定などは、総合診療医や他の医師の責務の範囲内である。治療は、医師の判断で、毎日、週2回、週1回、または月1回の間隔で繰り返すことができる。
【0096】
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤または液体剤形であってもよい。錠剤は、ゼラチンまたは補助剤のような固体担体を含むことができる。液体医薬組成物は、一般に、水、鉱油、動物油または植物油、鉱油または合成油のような液体担体を含む。生理食塩液、デキストロース又は他の糖類溶液又はグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールを含むことができる。
【0097】
静脈内注射または罹患部位への注射の場合、活性成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容可能な水溶液の形成である。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液のような等張ビヒクルを用いて適当な溶液を調製することができる。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤を含めてもよい。
【0098】
さらに、本明細書に開示される実施形態は、互いに関連しない個々の実施形態として理解されることを意味しないことを理解されたい。特有の実施形態で議論される特徴は、本明細書に示される他の実施形態に関連するとしても開示されることを意味する。ある事例では、特定の特徴が、一実施形態では開示されていないが、別の実施形態で開示されている場合は、当業者は、前記特徴が前記他の実施形態で開示されるものではないことを必ずしも意味しないことを理解されよう。当業者であれば、他の実施形態についても前記特徴を開示することが本出願の主旨であるが、単に明瞭にするため、及び本明細書を管理可能な量に維持するために、これが行われていないことを理解されよう。
【0099】
さらに、本明細書で参照する文献の内容を参照により援用する。これは、特に、標準的または通常方法を開示する先行技術文献を指す。その場合、参照による援用は、主に十分な開示を可能にし、長い反復を避ける目的がある。
【0100】
一般に、本発明の組成物は、標的構造がEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質の特異性によって規定される、細胞、組織、臓器または患者における特異的標的構造に結合することができる。
【0101】
標的に到達すると、IL-12はT細胞やナチュラルキラー細胞からのIFNγの産生を刺激し、Th1ヘルパー細胞の分化も誘導する。IL-12は、自然免疫および細胞性免疫の重要なメディエーターである。構築物中のEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質が、標的構造、例えば、腫瘍、血液疾患、またはがんに変化する過程にある細胞を特徴付けるレセプターまたは細胞外マトリックスタンパク質に特異的である場合、組成物の結合は、IL-12媒介の強力な抗がん剤および抗転移活性を誘発する。
【0102】
本出願人らは、GSADGGSSAGGSDAGを含むアミノ酸モチーフを含むリンカーを用いて、IL-12をEDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質(すなわち、WO2013/014149に開示されているようなダイアボディ)に結合させると、より優れた腫瘍標的性能ならびに優れた産生収率が達成され得ることを驚くべきことに発見した。同時に、この変異体の結合挙動は、より短いGSADGGリンカーの結合挙動よりも優れており、本願明細書中「Old」とニックネームされ、WO2013/014149に開示されている。
【0103】
本出願人らは、サイトカインとL19一本鎖ダイアボディ間の異なったポリペプチドリンカーを有する一本鎖ダイアボディフォーマット(huIL-12L19L19)において、L19抗体に結合したヒトIL-12の8つのクローンを最初に評価し、特徴付けた。
【0104】
(i)「AKKAS」(ii)「DDS」(iii)「(G4S)3」(iv)「SAD」および(v)「SES」とニックネームをつけた5つのクローンは、免疫サイトカインの組換え抗体への接合のためのリンカーを含み、それらの異なった電荷特性(中性、正電荷、負電荷)のために選択されている。
(vi)Alpha3(vii)AP6および(viii)AP7とニックネームをつけた3つの追加クローンを開発した。これら3つのクローンに関しては、Chenら(2013)で報告されている原理を考慮し、実施した。このレビューは、堅いリンカーがより良好な安定性を有し、サイトカインと抗体の間の正しい距離を維持し、従って治療効果を増加する可能性を示唆する。
リンカー(i)~(viii)のいずれも、この特異的免疫サイトカインにおいて以前に試験されていなかった。
【0105】
「SAD」リンカーは、(iii)他のクローンと比較してED-Bに対する結合挙動を損ないことなしに、(i)腫瘍標的化性能および(ii)EDB結合ドメインを含むペプチドまたはタンパク質に結合したIL-12の産生収率を他のクローンと比較して大きく増強することが、驚くべきことに見出された。これは、Chenによって報告された原理の考察にもかかわらず、SADリンカーのみが、「Old」クローン(以下により詳細に記載)および本明細書に記載される他の新規変異体の両方と比較した場合、多くの優れた特性を有する組成物をもたらしたことは、全く驚くべきことである。
【0106】
最後に、WO2013/014149に開示されたリンカーを含む「Old」とニックネームを付けられた9番目のクローンを「SAD」リンカーと比較したところ、配列の最初の部分を「Old」リンカーと共有しているにもかかわらず、「SAD」リンカーがED-Bに対して優れた結合親和性を有することが驚くべきことに見出された。
【0107】
さらに、サイズ排除クロマトグラフィー後、「SAD」リンカーは、「Old」リンカーと比較してより高い単量体部分を示し、これは、全体コンジュゲートの集合がより効率的であることを意味し、「SAD」リンカーによって与えられるより高い単量体部分は、全体製造収率を増加させると予想される。
【0108】
本明細書中で使用される用語「一本鎖ダイアボディ」は、以下のスキーム(N->C配向):L19VH-リンカー3-L19VL-リンカー4-L19VH-リンカー3-L19VLに従って、短いリンカー、好ましくは3~10アミノ酸長、より好ましくは5アミノ酸長を有する2つの一本鎖Fv(scFv)抗体(「ダイアボディ」としても知られる)が、より長いリンカー、好ましくは5~20アミノ酸長、より好ましくは15アミノ酸長によって互いに連結された構築物に関する。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ヘテロ二量体IL-12タンパク質の第1のサブユニットはp40であり、第2のサブユニットはp35である。前述したように、EDAまたはEDBドメインを含むフィブロネクチンアイソフォームは、正常の成体組織における限定された存在とは対照的に、それらの発生上の重要性および腫瘍におけるそれらの再発現のために、腫瘍胎児型として知られている。
【0110】
これらのアイソフォームはまた、血管新生の重要なマーカーとして認識されており、これは発生における重要な生理学的過程であり、がんの進行において腫瘍細胞によって必要とされる。
【0111】
したがって、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)は、本明細書で考察するような免疫サイトカインの使用を含む、抗がん治療のための魅力的な標的である。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態によれば、一本鎖ダイアボディは、相補性決定領域(CDR)、または目的の抗原に特異的に結合することが可能な抗体のVHおよび/またはVLドメイン、例えばフィブロネクチンのエクストラドメインBの抗原に特異的に結合することが可能な抗体の1つ以上のCDRまたはVHおよび/またはVLドメインを有する抗原結合部位を含み得る。
【0113】
抗原結合部位は、相補性決定領域(CDR)の配列によって提供され得る。CDRまたはCDRのセットを運ぶ構造は、一般に、CDRまたはCDRのセットが、再配列された免疫グロブリン遺伝子によってコードされる天然に存在するVHおよびVL抗体可変ドメインのCDRまたはCDRのセットに対応する位置に位置する抗体重鎖または軽鎖配列またはその実質的部分である。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、Kabatら(1987) (Sequences of Proteins of Immunological Interest.4 th Edition.US Department of Health and Human Services.)およびその最新情報を参考にして決定することができる。最新情報は、現在インターネット上で入手可能である(at immuno.bme.nwu.edu又は任意の検索エンジンを使用して「Kabat」を検索)。
【0114】
CDR領域またはCDRにより、Kabatら(1987)「Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4thEdition, US Department of Health and Human Services」 Kabat et al., (1991a)「Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5thEdition, US Department of Health and Human Services, Public Service, NIH, Washington, and later editions」により定義された免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の超可変領域を指すことが意図される。抗体は、典型的には、3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRを含む。ここで、CDRまたはCDRsという用語は、当該抗原またはそれが認識するエピトープに対する抗体の親和性によって結合にかかわっているアミノ酸残基の大部分を含むこれらの領域の1つ、または全体を、ケースに応じて示すために使用される。
【0115】
したがって、一本鎖ダイアボディは、1、2、3、4、5または6個のCDR、または抗体L19のVHおよび/またはVLドメインを有する抗原結合部位を含み得る。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態によれば、一本鎖ダイアボディは、配列番号28~33に記載の抗体L19の相補性決定領域(CDR)を有する抗原結合部位を含み得る。抗原結合部位は、それぞれ、配列番号7および5に記載された抗体L19のVHおよび/またはVLドメインを含むことができる。
【0117】
抗原結合部位は、抗体L19の1、2、3、4、5または6つのCDRを含み得る。L19のCDRのアミノ酸配列は、
配列番号28(VH CDR1);
配列番号29(VH CDR2);
配列番号30(VH CDR3);
配列番号31(VL CDR1);
配列番号32(VL CDR2)および/または
配列番号33(VL CDR3)である。
【0118】
配列番号28~30は、ヒトモノクローナル抗体L19のVH CDR領域(それぞれ1~3)のアミノ酸配列である。配列番号31~33は、ヒトモノクローナル抗体L19のVL CDR領域(それぞれ1~3)のアミノ酸である。抗体L19のVHおよびVLドメインのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号7および5に対応する。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態によれば、一本鎖ダイヤボディは、
a)本明細書中で配列番号28-30として定義される3つの重鎖CDRおよび本明細書中で配列番号31-33として定義される3つの軽鎖CDRを含むセット、
b)本明細書中で配列番号7として定義されるVH中の3つの重鎖CDRおよび本明細書中で配列番号5として定義されるVL中の3つの軽鎖CDRのセット、
c)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する能力を維持しながら、CDRの少なくとも1つがa)またはb)で指定されたそれぞれのCDRに対して最大3つのアミノ酸置換を持っているという条件付きの、a)またはb)の重鎖CDR/軽鎖CDRの組合せ、
d)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する能力を維持しながら、CDRの少なくとも1つが、a)またはb)で指定されたそれぞれのCDRに対して66%以上の配列同一性を持っているという条件付きの、a)またはb)の重鎖CDR/軽鎖CDRの組合せ、の少なくとも一つを含み、
ここで、CDRはフィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合することができるように、適切なタンパク質フレームワークに埋め込まれている。
【0120】
いくつかの実施形態では、CDRの少なくとも1つは、それぞれのCDRに対して、≧67、好ましくは≧68、より好ましくは≧69、≧70、≧71、≧72、≧73、≧74、≧75、≧76、≧77、≧78、≧79、≧80、≧81、≧82、≧83、≧84、≧85、≧86、≧87、≧88、≧89、≧90、≧91、≧92、≧93、≧94、≧95、≧96、≧97、≧98または最も好ましくは≧99%の配列同一性を有する。
別の実施形態では、CDRの少なくとも1つは、親和性成熟または他の修飾によって修飾されており、上に開示された配列と比較して配列改変をもたらしている。
【0121】
いくつかの実施形態において、CDRの少なくとも1つは、a)またはb)に明記されるように、それぞれのCDRに対して最大2、好ましくは1アミノ酸置換を有する。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態によれば、一本鎖ダイアボディは、
a)配列番号7および5に記載の抗体L19のVHおよびVLドメイン、
b)ドメインの少なくとも1つがそれぞれ、配列番号7または配列番号5に対して≧80%の配列同一性を有するという条件付きの、a)の重鎖/軽鎖可変ドメイン配列対、および/または
c)a)の重鎖/軽鎖可変ドメイン配列対、および/またはc)ドメインがそれぞれ配列番号7または配列番号5に対して、10までのアミノ酸置換を有するという条件付きの、a)の重鎖/軽鎖可変ドメイン配列対、のうちの少なくとも1つを含み、前記ドメインの少なくとも1つは、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する能力を維持する。
【0123】
いくつかの実施形態において、ドメインの少なくとも1つは、それぞれ、≧81、好ましくは≧82、より好ましくは≧83、≧84、≧85、≧86、≧87、≧88、≧89、≧90、≧91、≧92、≧93、≧94、≧95、≧96、≧97、≧98または最も好ましくは≧99%の配列同一性を、配列番号7または配列番号5に対して有する。
【0124】
いくつかの実施形態において、ドメインの少なくとも1つは、それぞれ、最大9個、好ましくは最大8個、より好ましくは最大7個、6個、5個、4個、3個または2個、および最も好ましくは最大1個のアミノ酸置換を、配列番号7または配列番号5に対して有する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、一本鎖ダイアボディにおける少なくとも1つのアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。
【0125】
さらなる一実施形態によれば、前記組成物は、全長構造「[p40]-[リンカー1]-[p35]-[SADリンカー]-[L19VH]-[リンカー3]-[L19VL]-[リンカー4]-[L19VH]-[リンカー3]-[L19VL]」を有する。
1つのさらなる実施形態によれば、組成物は、配列番号16による全長配列を有する。
【0126】
疾患
本発明のさらなる態様によれば、
・腫瘍性疾患と診断されているか、
・腫瘍性疾患に罹患してるか、または
・腫瘍性疾患を発症するリスクがある
ヒトまたは動物の対象の治療における、またはそのような状態の予防のための上記の組成物の(医薬品の製造のための)使用が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における血管新生の抑制における前記請求項のいずれかに記載の組成物の(医薬品の製造のための)使用。
【0127】
したがって、本明細書に記載されるコンジュゲートは、in vivoでIL-12を新生血管系に標的化することによって、腫瘍性疾患を治療するか、または血管新生を阻害する方法において使用され得る。
「腫瘍性疾患」という用語は、腫瘍および血液疾患を含む、悪性変質およびがんを包含する。
【0128】
また、薬剤、特に治療剤、例えばIL-12を患者の新生血管系に標的化することによって、がんを治療する方法、または血管新生を阻害する方法も考えられ、この方法は、本明細書に記載されるコンジュゲートの治療的有効量を患者に投与することを含む。本明細書に記載される組成物を用いて治療可能な状態には、がん、他の腫瘍および新生物状態が含まれる。該組成物は、血管新生を阻害し、それによってリウマチ関節炎、糖尿病性網膜症、加齢性筋肉変性、血管腫、腫瘍およびがんを治療するために使用され得る。治療には予防的治療が含まれる。前記組成物はまた、診断方法、例えば、上記条件のいずれかと関連し得る血管新生の標的化および診断において投与され得る。組成物に含まれるタンパク質治療薬または診断薬の性質、および標的化部分の特異性に応じて、他の疾患および状態を診断し、治療することもできる。
【0129】
本明細書に記載されるような治療に適したがんは、固形または非固形がんまたは悪性リンパ腫のいずれかの型を含み、特に肝がん、リンパ腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、肉腫、皮膚がん、膀胱がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、頭頸部がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん、胃がんおよび脳がんを含む。がんは家族性のことも散発性のこともある。がんは転移性のことも非転移性のこともある。
好ましくは、がんは、腎臓がん、乳がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、肉腫(例えば、消化管間質腫瘍)、皮膚がん(例えば、メラノーマ)、結腸直腸がん、および神経内分泌腫瘍の群から選択されるがんである。
いくつかの実施形態において、腫瘍性疾患は、ED-Bフィブロネクチンの発現または過剰発現によって特徴付けられる。
【0130】
本発明の組成物は、任意の適切な経路を介して、通常、血流中への注射および/または処理される部位、例えば、腫瘍または腫瘍血管系への直接的な注射によって、処理を必要とする患者に投与され得る。正確な投与量とその投与回数は、多くの因子、処理経路、処理対象となる領域(例えば、腫瘍)の大きさと位置に依存するであろう。
【0131】
反応性に関して、対象は、対象内のがんのパラメータ(例えば、血液がん、例えば、がん細胞の増殖、増殖および/または生存)が、任意の適切な測定によって、例えば質量、細胞数または体積によって決定されるとき、検出可能な量、例えば、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上遅延または減少される場合に、治療に反応する。1つの実施例では、対象が、治療が行われない場合に予測される平均余命を約5%、10%、20%、30%、40%、50%以上延長した平均余命を経験した場合に、治療に反応する。別の実施例では、対象が無病生存率、全生存率または増悪までの期間が増加している場合、対象は治療に反応する。例えば、NCCN腫瘍診療ガイドライン(NCCNガイドライン(登録商標))によって提供された基準を含む、患者が治療に反応するかどうかを決定するために、いくつかの方法を用いることができる。
【0132】
組合せ療法
組成物は、単独で、または他の治療と組合せて、同時に、または連続的に、治療される状態に依存して投与され得る。他の治療には、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェンまたはケトプロフェン)のような適切な用量の疼痛緩和薬、またはモルヒネのようなオピエート、または制吐薬の投与が含まれ得る。
本発明のさらなる態様によれば、上記記載の組成物または医薬組成物と、1つ以上の治療的活性化合物との組合せが提供される。
【0133】
本発明のさらなる態様によれば、ED-Bフィブロネクチンの発現または過剰発現に関連する障害または状態を治療または予防するための方法であって、それを必要とする対象に、組成物、医薬組成物または上記記載に従った組合せの有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0134】
キット
本発明のさらなる態様によれば、
a)上記による組成物、医薬組成物または組合せ、
b)組成物、組成物または組合せを投与するための装置、および
c)使用説明書を含むパーツのキットが提供される。
【0135】
いくつかの実施形態において、このようなパーツのキットは、適切な患者用パンフレットを備えた薬剤充填済みシリンジを含む。別の実施形態では、このようなパーツのキットは、適当な使用者指示のある輸液ボトルを含む。
【0136】
キットの構成要素は、滅菌され、密封されたバイアルまたは他の容器中にあることが望ましい。
キットは、本明細書に記載される方法における成分の使用説明書をさらに含むことができる。キットの構成要素は、容器、例えばバッグ、箱、ジャー、缶またはブリスターパックに含まれていてもよく、包装されていてもよい。
【実施例0137】
本発明は図面および前記の説明において詳細に図示および説明されてきたが、そのような図示および説明は例示または例示的であり、限定的ではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。開示される実施形態に対する他の変形形態は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、請求される発明を実施する際に当業者によって理解され、実施され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a(1つの)」又は「an(1つの)」は複数形を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを使用して利益を得ることができないことを示すものではない。特許請求の範囲のどの引用符号も、範囲を限定すると解釈するべきではない。
本明細書に開示される全てのアミノ酸配列は、N末端からC末端まで示される;本明細書に開示される全ての核酸配列は、5´->3´で示される。
【0138】
実施例1
出願人らは驚くべきことに、特定のリンカーを用いてIL-12を一本鎖ダイアボディ(すなわち、WO2013/014149に開示された優れたフォーマット)に結合させると、より優れた腫瘍標的化性能ならびに優れた産生収率が達成され得ることを発見した。
【0139】
出願人は、サイトカインとL19一本鎖ダイアボディの間に異なったポリペプチドリンカーを有する一本鎖ダイアボディフォーマット(huIL-12L19L19)において、L19抗体に結合したヒトIL-12の8つのクローンを評価し、特徴付けした。
【0140】
(i)「AKKAS」(ii)「DDS」(iii)「(G4S)3」(iv)「SAD」および(v)「SES」とニックネームを付けられた5つのクローンは、免疫サイトカインを組換え抗体に接合させるためのリンカーを含み、それらの異なった電荷特性(中性、正電荷、負電荷)のために選択されている。
(vi)Alpha3(vii)AP6および(viii)AP7とニックネームを付けられた3つの追加クローンを開発した。これら3つのクローンに関して、Chenら(2013)に報告された教示を検討し、実施した。このレビューは、堅い(rigid)リンカーがより良好な安定性を有し、サイトカインと抗体の間の正しい距離を維持し、従って治療効果を増加する可能性を示唆する。
リンカー(i)~(viii)のいずれも、この特異的免疫サイトカインにおいて以前に試験されていなかった。
【0141】
驚くべきことに、「SAD」リンカーは、他のクローンと比較してED-Bに等しく結合する能力がある一方で、一本鎖ダイアボディに結合したIL-12の腫瘍標的化性能および産生収率を大幅に増強することが見出された。
材料および方法
実施例で試験された変異体は、以下の一般的な構造を有する:
【表1】
【0142】
配列番号 異なる変異体(本明細書では「クローン」とも呼ばれる)は、表2に詳述されているように、リンカー2の配列が互いに異なる:
【表2】
【0143】
様々なリンカーをもつ8つの融合タンパク質のクローニング
huIL-12L19L19をコードする配列は、L19抗体およびIL12ペイロードという異なったPCR断片を組み立てることによって作製された。L19遺伝子を、適切なプライマーを用いて、あらかじめ生成された融合タンパク質L19-IL2鋳型からPCR増幅した。第2のL19遺伝子を適当なプライマーでPCR増幅した。
【0144】
同時に、IL-12のp35ドメインの遺伝子の一部を、適切なプライマーを用いて、以前に生成されたIL12ベースの免疫サイトカインからPCR増幅した。2つの中間体断片をPCRで(P35-L19断片を生成するため)組み立て、BamHI/BspEIで二重消化し、p35を含む二重消化ベクターにクローン化した。新たに作製したp35-L19ベクターをその後BspEI/NotI-HFで二重消化し、第2のL19ダイアボディ断片遺伝子と連結した。断片p35-L19L19をBamHI/NotI-HFにより消化し、p40サブユニット遺伝子を有する前もって二重消化した哺乳動物細胞発現ベクターpcDNA3.1(+)にクローン化し、完全長IL12-L19L19を得た。
【0145】
断片「A」(リンカーを有するp35の一部をコード)、断片「B」(リンカーと抗体の一部をコード)のPCRアッセンブリーにより、IL12と一本鎖ダイアボディL19断片の間に様々なリンカー挿入した。異なる断片「A」と断片「B」は、適当なプライマーを用いて、鋳型としてIL12-L19L19から増幅した。
【0146】
クローンAP7のためにデザインされたクローニング戦略は、突然変異体クローン(AP6と命名)の作製につながった。すべてのPCR産物をBamHI-HFおよびBspEI制限酵素で二重消化し、P35-L19L19 pcDNA3.1プラスミドに連結した。得られたプラスミドを増幅し、NotI-HFおよびBamHI-HF制限酵素で二重消化し、挿入断片をIL12を含むpcDNA3.1プラスミドにサブクローニングした。得られたDNAプラスミドを増幅し、細胞トランスフェクションに用いた。
【0147】
様々なリンカー8つの融合タンパク質の発現精製
種々のヒトIL-12融合体の産生には、懸濁液中のCHO-S細胞を用いた。huIL‐12L19L19変異体は一過性遺伝子発現を用いて発現した。製造用4×106のCHO-S細胞を懸濁液中で1ml遠心分離し、CHO-Sに適した培地1mLに再懸濁した。次に、100万細胞当たり、プラスミドDNAの0.625μgに続いて、2.5μgのポリエチレンイミン(PEI;pH7.0の1mg/mL水溶液)を細胞に加え、穏やかに混合した。トランスフェクトした培養物を、31℃の振盪インキュベーターで6日間インキュベートした。
【0148】
最後に、一過性遺伝子発現により産生された融合タンパク質をタンパク質A親和性クロマトグラフィーにより細胞培養培地から精製し、次いでPBSに対して透析した。
【0149】
SDS-PAGE
融合タンパク質の正しい分子量を、SDS‐PAGE10%およびSDS‐PAGE12%により還元および非還元条件下で分析した。
【0150】
ELISA
種々のIL-12融合物の正しい結合を確認するために、Elisaプレートを50ug/mlのフィブロネクチンドメイン7B89で一晩コーティングした(参照、WO2001/062800A1、その内容は参照により本明細書に援用される)。免疫サイトカインを10ug/mlおよび1ug/mlで試験した。二次試薬として、タンパク質A西洋ワサビペルオキシダーゼを用いた。このアッセイはBMBlue POD可溶性基質を用いて発色させた。333mMのH2SO4を加えて比色反応を停止し、マイクロタイタープレートリーダーを用いて波長450nmと650nmで吸光度を測定した。
【0151】
サイズ排除クロマトグラフィーとBiacore
Superdex200増加カラムを用いたAKTA FPLCシステムでサイズ排除クロマトグラフィーを行った。表面プラズモン共鳴実験親和性測定を、フィブロネクチン7B89ドメインコーティングCM5チップ上、精製huIL‐12L19L19クローンで、Biacore X100装置により行った。試料は連続希釈として注入され、濃度範囲は1μMから250nMであった。
【0152】
免疫蛍光
様々なhuIL-12融合体のがん細胞への結合能を確認するため、凍結同系F9奇形腫検体の凍結切片(8um)上に免疫蛍光法を実施した。腫瘍切片は氷冷アセトン(5分)で固定した。固定後、カバースリップを洗浄し、PBS中の20%ウシ胎児血清で45分間ブロッキングした。濃度5μg/mlのHuIL‐12L19L19クローンを室温で1時間2% BSA/PBS溶液中に添加した。次に、カバースリップを、PBSで2回洗浄し、最終希釈1:1000の二次抗体マウス抗ヒトインターロイキン-12を2%BSA/PBS溶液中に室温で1時間添加した。その後、カバースリップを再度PBSで2回洗浄し、最終希釈1:500の三次抗体ヤギ抗マウスを添加した。DAPIを用いて核を対比染色した。
【0153】
放射性標識およびin vivo腫瘍標的化
種々のIL-12融合体のin vivo腫瘍への結合能を確認するために、それらの標的化能を生体内分布分析により評価した。100μgの各IL-12L19L19クローンを125IおよびクロラミンT水和物で放射性ヨウ素化し、PD10カラムで精製した。放射性標識したタンパク質をF9マウス奇形腫を皮下移植した免疫適格マウスの側尾静脈に注射した。マウス1匹あたりの注射用量は4~9μgであった。注射24時間後にマウスを屠殺した。臓器の重量を測定し、Packard Cobra γカウンターを用いて放射能を計数した。代表臓器の放射能含有量は、組織1g当たりの注入量に対する割合(%ID/g ±標準誤差)で表した。
【0154】
結果
クローニング、発現およびSDS-PAGE
huIL‐12L19L19融合タンパク質の8つの変異体は、サイトカインとL19一本鎖ダイアボディの間の各々異なるポリペプチドリンカーでクローニングに成功した。SDS‐PAGEキャラクタリゼーションは、全ての変異体について約120kDaの分子量を示し、これは予想されるタンパク質サイズ(約109kDa、非グリコシル化)を確認した。(CHO-S細胞における一過性遺伝子発現による)発現は、すべての変異体について、3.5~5mg/Lの範囲であった。驚くべきことに、「SAD」とニックネームを付けられたクローンは、9mg/Lの収量を示し、これは、他の7つのクローンの収量よりも著しく高い。結果を図1に示す。
【0155】
ELISA
ELISAでは、8つのクローン、Alpha3、AP6、AP7、DDS、SES、AKKAS、(G4S)3およびSADはすべてについて、ヒトフィブロネクチンのドメイン7B89に対する結合(10μg/mlおよび1μg/ml濃度の両方)を確認した。結果を図2に示す。
【0156】
BiaCore
ヒトフィブロネクチンのドメイン7B89で被覆したチップについて、Biacore分析により、より正確な親和定数の決定を行った(図3)。試料は連続希釈として注入し、濃度は1000nM、750nM、500nMおよび250nMに等しかった(図3)。見かけのKDはBiacore X100 Evaluation Softwareにより推定した。
【0157】
サイズ排除クロマトグラフィー
8つのクローン、Alpha3、AP6、AP7、DDS、SES、AKKAS、(G4S)3およびSADを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-200increase)で特徴付けしたところ、全てのクローンは、単量体免疫サイトカインに対応する主要ピークと同等のプロファイルを示した(図4)。
【0158】
免疫蛍光
凍結同系F9奇形腫検体凍結切片(8um)上にクローンのAlpha3,AP6,AP7,DDS,SES,AKKAS,(G4S)3およびSADを用いて免疫蛍光法を行った。すべてのクローンは、陰性対照と比較して、血管系に特異的な結合を示した(図5)。
【0159】
in vivo腫瘍標的化
in vivo標的化は生体内分布解析により評価した。Alpha3、AP6、AP7、DDS、SES、AKKAS、(G4S)3およびSAD、ならびに陽性対照(マウスIL-12に結合したL19一本鎖ダイアボディ)の8クローンを、125Iで放射性ヨード化し、皮下移植したF9マウス奇形腫を有する免疫応答性マウスに注射した(4~9μgタンパク質/動物)。注射24時間後に計数した放射能は、すべてのクローンで腫瘍に集積を示したが、「SAD」クローンは他の7クローンと比較して腫瘍に優れた集積を示した。(図6
【0160】
実施例2
さらなる一連の比較実験において、「SAD」リンカーもまた、結合能、単量体プロファイルおよび腫瘍標的化能に関して、WO2013/014149に開示された古い(およびより短い)GSADGGリンカー(配列番号26)よりも優れていることが驚くべきことに見出された。
材料および方法
この実施例で検証された変異体は、以下の一般的な構造を有する:
【表3】
配列番号 異なる変異体(本明細書では「クローン」とも呼ばれる)は、リンカー2の配列が互いに異なる:
【表4】
【0161】
融合タンパク質のクローニング
一本鎖ダイアボディフォーマット中のL19抗体(すなわち、それぞれhuIL-12L19L19「Old」およびhuIL-12L19L19「SAD」変異体)に6または15アミノ酸リンカーを介して融合されたhuIL-12を含む融合タンパク質を、上記の株に沿ってクローン化した。
【0162】
融合タンパク質の発現
一本鎖ダイアボディフォーマットにおけるL19抗体(すなわち、それぞれhuIL-12L19L19「Old」およびhuIL-12L19L19「SAD」変異体)に6または15アミノ酸リンカーを介して融合されたhuIL-12を含む融合タンパク質を、懸濁液適応CHO細胞培養における一過性遺伝子発現によって産生した。トランスフェクション後、細胞を、ProCHO-4培地(4mM超グルタミンを添加)中で、振盪条件下で31℃で6日間維持し、その後、培養上清を遠心分離によって回収し、さらに処理して、融合タンパク質を精製した。
【0163】
プロテインA樹脂を用いた融合タンパク質の精製
トランスフェクトされたCHO細胞懸濁培養物を、4℃で5000rpmで30分間遠心分離した。上清は0.45umフィルターを用いた濾過によりさらに精製にした。タンパク質A樹脂を濾過した上清に添加し、混合物を振盪条件下で約1時間インキュベートした。次に樹脂を液体クロマトグラフィーカラムに回収し、「緩衝液A」(100mM NaCl、0.5mM EDTA、0.1% Tween 20 in PBS pH 7.4)で洗浄した後、「緩衝液B」(500mM NaCl 0.5mM EDTA in PBS pH 7.4)で2回目の洗浄を行った。huIL‐12を含む融合タンパク質を100mM TEAを用いて重力流によって溶出した。アリコートを採取し、融合タンパク質を含む画分をUVスペクトロメトリーによって確認して、プールし、PBSに対して一晩透析した。
【0164】
融合タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー
融合タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィーを、AKTA-FPLCシステム上の泳動緩衝液としてPBSを用いてSuperdex 200増加10/300 GLカラムを用いて実施した。100μlのタンパク質溶液をループに注入し、カラムに自動的に注入した。280nmでのUV吸光度を経時的に評価した。融合タンパク質のSECプロファイルをUNICORNソフトウェアのピーク積分関数を用いて分析し、全%面積またはピーク%面積に対する単量体画分の割合を定量した。試料負荷によるピークアーチファクトまたは試料緩衝液中に存在する塩を除外するために、保持容量5~17.5mLの間隔のみを定量に考慮した。
【0165】
BIACore
表面プラズモン共鳴実験親和性測定を、フィブロネクチン7B89ドメイン新鮮被覆CM5チップ上の精製「Old」および「SAD」クローンを有するBiacoreX100装置により実施した。試料を、250nM、125nMおよび62.5mMに等しい濃度の連続希釈として注入した(図10)。見かけのKDはBiacore X100 Evaluation Softwareにより推定した。
【0166】
放射性標識およびin vivo腫瘍標的化
精製タンパク質サンプルhuIL-12L19L19「SAD」(リンカーGSADGGSSAGGSDAG、配列番号4)およびhuIL-12L19L19「Old」(リンカーGSADGG、配列番号26)(100g)を125IおよびクロラミンT水和物で放射性ヨウ素化し、PD10カラムで精製した。タンパク質はタンパク質A親和性クロマトグラフィー後に放射性ヨード化した。タンパク質を皮下移植したF9マウス奇形腫を有する免疫適格(129/Sv)マウスの外側尾静脈に注射した。マウス1匹あたりの注射用量は10~11gであった。注射24時間後にマウスを屠殺した。臓器サンプルの重量を測定し、Packard Cobra γカウンターを用いて放射能を計数した。異なる臓器におけるタンパク質取り込みを計算し、組織1g当たりの注射用量のパーセンテージ(%ID/g ±標準誤差)で表した。腫瘍へのタンパク質取り込みはTarliら(1999)に従い腫瘍成長により調整した。
【0167】
結果
融合タンパク質の発現と精製、サイズ排除クロマトグラフィー
huIL-12L19L19「SAD」とhuIL-12L19「Old」の2種類の変異体は、CHO細胞での一過性遺伝子発現によって作製された。実験は2回行われ、2組の産生実験が異なる日に行われ、それぞれバッチAおよびBが生成された。タンパク質-Aアフィニティークロマトグラフィーによる一段階精製、およびPBSによる透析に続いて、タンパク質試料の均一性をサイズ排除クロマトグラフィーによって評価した(図9)。両タンパク質変異体は、初期保持容積で溶出する高分子量変異体の存在によって強調されるタンパク質凝集を示した。どちらの場合も、huIL-12L19「SAD」は、UNICORNソフトウエアのピーク積分機能を用いたタンパク質の単量体部分の定量によって確認されたように、より良好なプロファイルを示した。実際、huIL-12L19「SAD」変異体は、huIL-12L19「Old」と比較して、より低い凝集傾向を示した。これは、ベースラインより上の曲線下総面積のパーセンテージとして単量体のピーク面積を考慮するか(平均値:それぞれ54.57%対46.69%)、または統合されたすべてのピークの合計のパーセンテージとして単量体のピーク面積(平均値:それぞれ58.83%対52.74%)を考慮した(表1)。
【表5】
【0168】
表1:UNICORNソフトウエアのピーク積分関数により評価した異なる融合タンパク質の単量体画分の定量。(*)ベースラインより上の曲線下総面積に対するピーク面積の割合。(°)すべての積分ピークの合計に対するピーク面積の割合。
【0169】
Biacore
見かけのKDは、Biacore X100 Evaluation Softwareにより、「Old」クローン(huIL-12L19L19「Old」とリンカーGSADGG)では6.7nM、「SAD」クローン(huIL-12L19L19「SAD」とリンカーGSADGGSSAGGSDAG)では3.8nMと推定された(図10)。
in vivo腫瘍標的化
注射24時間後に計数した放射能は、「SAD」クローンが「Old」クローンと比較して予想外に優れた腫瘍取り込みを有することを示した(図11)。
【0170】
実施例3
huIL-12L19L19「SAD」変異体の有効性は、悪性黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)又はミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有する転移性結腸直腸がん、肝細胞がん、胃がん、皮膚の扁平上皮がん、子宮頸がん、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有するヒト患者において評価される。少なくとも1つの患者コホートでは、直前の治療として投与された免疫チェックポイント遮断療法をベースとしたレジメンで、疾患の進行が実証されている。
【0171】
患者にhuIL-12L19L19「SAD」変異体を週1回8週間静脈内投与する。患者は4μg/kg、8μg/kg、12μg/kg、16μg/kgまたは20μg/kgの投与を受ける。
治療開始から6ヵ月間、または同意の撤回または進行性疾患がみられるまで患者を追跡する。
【0172】
IL12-L19L19L19-L12の薬物動態解析は、融合分子およびIL12部分のサンドイッチ捕捉を用いて評価する。ヒト抗融合タンパク質抗体(HAFA)は、表面プラズモン共鳴分析およびサンドイッチ捕捉により試験する。固形がんに対するRECIST(version 1.1)又は悪性リンパ腫評価基準のLUGANO基準を用いて、8週目、16週目及び24週目に抗腫瘍活性、例えば有効性を評価する。
【0173】
更なる実施形態
実施形態の第1のセットによれば、以下が提供される:
1.a)第1および第2サブユニットを有するヘテロ二量体IL-12タンパク質、
b)一本鎖ダイアボディ、および
c)IL-12タンパク質と一本鎖ダイアボディとの間のリンカーを含むコンジュゲートであって、リンカーはSADを含むアミノ酸モチーフを含む、コンジュゲート。
2.上記SADリンカーが、アミノ酸モチーフモチーフGSADGGSSAGGSDAG(配列番号4)を含む点1に記載のコンジュゲート。
3.ヘテロ二量体IL-12タンパク質の第1のサブユニットがp40であり、第2のサブユニットがp35である、点1~2のいずれかに記載のコンジュゲート。
4.一本鎖ダイアボディが単一特異性または二重特異性である、点1~3のいずれかに記載のコンジュゲート。
5.一本鎖ダイアボディがフィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する、点1~4のいずれかに記載のコンジュゲート。
6.一本鎖ダイアボディが2つのL19 VHドメインおよび2つのL19 VLドメインを含む、点1~5のいずれかに記載のコンジュゲート。
7.完全長構造[p40]-[リンカー1]-[p35]-[SADリンカー]-[L19VH]-[リンカー3]-[L19VL]-[リンカー4]-[L19VH]-[リンカー3]-[L19VL]を有する点1~6のいずれかに記載のコンジュゲート。
8.配列番号16による全長配列を有する点1~7のいずれかに記載のコンジュゲート。
9.・腫瘍性疾患と診断されているか、
・腫瘍性疾患に罹患しているか、または
・腫瘍性疾患を発症するリスクがある
ヒト又は動物対象の治療におけるか、またはそのような状態の予防のための、上記点のいずれかに記載のコンジュゲートの(医薬品の製造のための)使用。
10.ヒトまたは動物の対象における血管新生の抑制における上記点のいずれかに記載のコンジュゲートの(医薬品の製造のための)使用。
11.点1~8のいずれかに記載のコンジュゲートを少なくとも含み、および任意に1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
12.(i)点1~8のいずれか1つに記載のコンジュゲート、または点11に記載の医薬組成物、および(ii)1つ以上の治療的活性化合物を含む組合せ。
13.ED-Bフィブロネクチンの発現または過剰発現に関連する障害または状態を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、点1~8のいずれか1項に記載のコンジュゲートの有効量、点11に記載の医薬組成物、または点12に記載の組合せを投与することを含む、方法。
14.a)点1~8のいずれか1つに記載のコンジュゲート、点11に記載の医薬組成物または点12に記載の組合せ、
b)前記コンジュゲート、組成物または組合せを投与するための装置、および
c)使用説明書を含むパーツの治療用キット。
【0174】
実施形態の第2のセットによれば、以下が提供される:
1.a)第1および第2サブユニットを有するヘテロ二量体IL-12タンパク質、
b)一本鎖ダイアボディ、および
c)IL-12タンパク質と一本鎖ダイアボディとの間のリンカーを含むコンジュゲートであって、このリンカーは、GSADGGSSAGGSDAG(配列番号4)を含むアミノ酸モチーフを含む、コンジュゲート。
2.ヘテロ二量体IL-12タンパク質の第1のサブユニットがp40であり、第2のサブユニットがp35である、点1のいずれかに記載のコンジュゲート。3.一本鎖ダイアボディが単一特異性または二重特異性である、点1~2のいずれかに記載のコンジュゲート。
4.一本鎖ダイアボディがフィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する、点1~3のいずれかに記載のコンジュゲート。
5.一本鎖ダイアボディが2つのL19 VHドメインおよび2つのL19 VLドメインを含む、点1~4のいずれかに記載のコンジュゲート。
6.完全長構造[p40]-[リンカー1]-[p35]-[SADリンカー]-[L19VH]-[リンカー3]-[L19VL]-[リンカー4]-[L19VH]-[リンカー3]-[L19VL]を有する点1~5のいずれかに記載のコンジュゲート。
7.配列番号16による全長配列を有する点1~6のいずれかに記載のコンジュゲート。
8.・腫瘍性疾患と診断されているか、
・腫瘍性疾患に罹患しているか、または
・腫瘍性疾患を発症するリスクがある
ヒト又は動物対象の治療におけるか、またはそのような状態の予防のための、上記点のいずれかに記載のコンジュゲートの(医薬品の製造のための)使用。
9.ヒトまたは動物の対象における血管新生の抑制における上記点のいずれかに記載のコンジュゲートの(医薬品の製造のための)使用。
10.少なくとも点1~7に記載のコンジュゲート、および任意に1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
11.(i)点1~7のいずれか1つに記載のコンジュゲート、または点10に記載の医薬組成物、および(ii)1つ以上の治療的活性化合物を含む組合せ。
12.ED-Bフィブロネクチンの発現または過剰発現に関連する障害または状態を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、点1~7のいずれか1項に記載のコンジュゲートの有効量、点10に記載の医薬組成物、または点11に記載の組合せを投与することを含む、方法。
13.a)点1~点7のいずれかに記載のコンジュゲート、点10に記載の医薬組成物又は点11に記載の組合せ、
b)コンジュゲート、組成物又は組合せを投与するための装置、および
c)使用説明書を含むパーツの治療用キット。
【0175】
実施形態の第三のセットによれば、以下が提供される:
1.a)第1および第2サブユニットを有するヘテロ二量体IL-12タンパク質、
b)一本鎖ダイアボディ、および
c)IL-12タンパク質と一本鎖ダイアボディとの間のリンカー
を含むコンジュゲートであって、このリンカーは、GSADGGSSAGGSDAG(配列番号4)を含むアミノ酸モチーフを含む、コンジュゲート。
2.ヘテロ二量体IL-12タンパク質の第1のサブユニットがp40であり、第2のサブユニットがp35である、点1に記載のコンジュゲート。
3.一本鎖ダイアボディが単一特異性または二重特異性である、点1~2のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
4.一本鎖ダイアボディがフィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する、点1~3のいずれか一項に記載のコンジュゲート
5.前記一本鎖ダイアボディが、配列番号28~33に記載の抗体L19の相補性決定領域(CDR)を有する抗原結合部位を含む、点1~4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
6.一本鎖ダイアボディが、配列番号7および5に記載の抗体L19のVHおよびVLドメインを含む、点1~5に記載のコンジュゲート。
7.一本鎖ダイアボディが、a)点6の重鎖/軽鎖可変ドメイン配列対の少なくとも1つを含み、前記ドメインの少なくとも1つが、それぞれ、配列番号7または配列番号5に対して≧80%の配列同一性を有する、および/またはb)点6の重鎖/軽鎖可変ドメイン配列対を有する、ただし、ドメインの少なくとも1つは、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する能力を維持しながら、それぞれ、配列番号7または配列番号5に対して≧10のアミノ酸置換を有する、点1~6のいずれかに記載のコンジュゲート。
8.一本鎖ダイアボディにおける少なくとも1つのアミノ酸置換が保存的アミノ酸置換である、点1~7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
9.一本鎖ダイアボディが、点5、または点6の抗体の1つと比較して、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に対して≧50%の標的結合親和性を有し、かつ/または点5、または点6の抗体の1つとフィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)への結合について競合する、点1~8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
10.一本鎖ダイアボディが2つのL19 VHドメインおよび2つのL19 VLドメインを含む、点1~9のいずれか一項に記載のコンジュゲート
11.完全長構造[p40]-[リンカー1]-[p35]-[SADリンカー]-[L19VH]-[リンカー3]-[L19VL]-[リンカー4]-[L19VH]-[リンカー3]-[L19VL]を有する点1~10のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
12.配列番号16による全長配列を有する点1~11のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
13.・腫瘍性疾患と診断されているか、
・腫瘍性疾患に罹患しているか、または
・腫瘍性疾患を発症するリスクがある
ヒト又は動物対象の治療におけるか、またはそのような状態の予防のための、上記点のいずれか一に記載のコンジュゲートの(医薬品の製造のための)使用。
14.ヒトまたは動物の対象における血管新生の抑制のための、前記点のいずれか1つに記載のコンジュゲートの(医薬品の製造のための)使用。
15.点1~12のいずれか1つ、および任意に1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を少なくとも含むコンジュゲートを含む薬学的組成物。
16.(i)点1~12のいずれか1つに記載のコンジュゲート物、または点15に記載の医薬組成物、および(ii)1つ以上の治療的活性化合物を含む組合せ。
17.ED-Bフィブロネクチンの発現または過剰発現に関連する障害または状態を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、点1~12のいずれか1つに記載のコンジュゲートの有効量、点15に記載の医薬組成物、または点16に記載の組合せを投与することを含む、方法。
18.a)点1~12のいずれか1つに記載のコンジュゲート、点15に記載の医薬組成物または点16に記載の組合せ、
b)前記コンジュゲート、組成物または組合せを投与するための装置、および
c)使用説明書を含むパーツの治療用キット。
【0176】
本発明のさらなる一実施形態によれば、SADリンカーは、アミノ酸モチーフGSADGGSSAGGSDAG(配列番号4)を含む。本明細書中で使用される用語「一本鎖ダイアボディ」は、スキーム(N->C配向):L19VH-リンカー3-L19VL-リンカー4-L19VH-リンカー3-L19VLのとおり、短いリンカー、好ましくは5アミノ酸長を有し、より長いリンカー、好ましくは15アミノ酸長により互いに結合された2つの一本鎖Fv(scFv)抗体の構築物に関する。
【0177】
本発明の一実施形態によれば、リンカー3は、GSSGG(配列番号6)であり、リンカー4はSSSSGSSSSGSSSSG(配列番号8)である。本発明の1つの実施形態によれば、ヘテロ二量体IL-12タンパク質の第1のサブユニットはp40であり、第2のサブユニットはp35である。好適には、2つのサブユニットは、スキーム(N->C配向):p40-リンカー1-p35のとおり、所与のリンカーによって互いに結合される。
【0178】
好適には、IL-12はヒトIL-12である。好ましい実施態様において、リンカー1は、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号2)である。本発明の一実施形態によれば、一本鎖ダイアボディは単一特異性または二重特異性である。本発明の1つの実施形態によれば、一本鎖ダイアボディはフィブロネクチンのスプライスアイソフォームに結合する。本発明の1つの実施形態によれば、一本鎖ダイアボディはフィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する。
【0179】
参考文献(その開示は、その全体が参照として本明細書に援用される)
Car et al., Toxicologic Pathology (1999), 27(1), 58-63
Chen et al., Adv Drug Deliv Rev. (2013), 65(10), 1357-1369
WO2013/014149
WO2006/119897
Tarli et al., Blood (1999), 94(1), 192-198.
【0180】
配列
下記の配列は、本出願の開示の一部を形成する。WIPO ST 25互換性のある電子化配列表もまた、この出願と共に提供される。疑義を避けるため、以下の表中の配列と電子化配列表中の配列との間に齟齬が存在する場合、この表中の配列は正しいものとみなされるものとする。
【表6】
図1A
図1B
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
【配列表】
2023113648000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.第1のIL-12サブユニットおよび第2のIL-12タンパク質サブユニットを含むIL-12タンパク質;
b.EDB結合ドメインを含むンパク質;ならびに
c.IL-12タンパク質とEDB結合ドメインを含むンパク質との間のリンカーを含む組成物。
【請求項2】
IL-12タンパク質とEDB結合ドメインを含むンパク質との間のリンカーが、GSADGGSSAGGSDAG(配列番号4)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
EDB結合ドメインを含むンパク質がscFvを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
EDB結合ドメインを含むンパク質がダイアボディである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
EDB結合ドメインを含むンパク質が一本鎖ダイアボディである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
IL-12タンパク質の第1のサブユニットがp40であり、第2のサブユニットがp35である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
IL-12タンパク質の第1のサブユニットが、配列番号1たはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むp40であり、ここでIL-12タンパク質はIL-12受容体を活性化することができる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
IL-12タンパク質の第2のサブユニットが、配列番号3たはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むp35であり、ここでIL-12タンパク質はIL-12受容体を活性化することができる、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
EDB結合ドメインを含むンパク質が、単一特異性または二重特異性である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
EDB結合ドメインを含むンパク質がフィブロネクチンのエクストラドメインB (ED-B)に結合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物
【請求項11】
EDB結合ドメインを含むンパク質が、配列番号28から33のいずれか1つ少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
EDB結合ドメインを含むンパク質が、配列番号28~33のアミノ酸配列の各々を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
EDB結合ドメインを含むンパク質が、配列番号またはに記載のアミノ酸配列の1つ以上と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
EDB結合ドメインを含むンパク質が、配列番号および7を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
フィブロネクチンのエクストラドメインBED-B)に結合する能力を維持しながら、
EDB結合ドメインを含むンパク質が、
a)前記ドメインの少なくとも1つが配列番号7または配列番号5に対してそれぞれ≧80%の配列同一性を有するという条件で請求項14に記載の配列対、および/または
b)配列番号7または配列番号5に対してそれぞれ最大10個のアミノ酸置換を有するという条件で請求項14に記載の配列対
の少なくとも1つを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つのアミノ酸置換が保存的アミノ酸置換である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
EDB結合ドメインを含むンパク質が、
a)請求項11~16のいずれか一項に記載のEDB結合ドメインを含むンパク質の1つと比較して、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に対する≧50%の標的結合親和性を有し、かつ/または
b)請求項11~16のいずれか一項に記載のEDB結合ドメインを含むンパク質の1つと、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)への結合について競合する、
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
EDB結合ドメインを含むンパク質が、2つのL19 VHドメインおよび2つのL19 VLドメインを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
a)2つのL19 VHドメインが同一のアミノ酸配列を有する、
b)2つのL19 VHドメインが異なるアミノ酸配列を有する、
c)2つのL19 VLドメインが同一のアミノ酸配列を有する、または
d)2つのL19 VLドメインが異なるアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
EDB結合ドメインを含むンパク質が、1つのL19 VHドメインおよび1つのL19 VLドメインを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、
a)第1のリンカーによりp35ドメインに連結されたp40ドメイン;
b)SADリンカーによりp35ドメインに連結された第1のL19 VHドメイン;
c)第3のリンカーにより第1のL19 VHドメインに連結された第1のL19 VLドメイン;
d)第4のリンカーにより第1のL19 VLドメインに連結された第2のL19 VHドメイン;または
e)第5のリンカーにより第2のL19 VHドメインに連結された第2のL19 VLドメイン
を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
p40ドメインが、配列番号1たはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
p35ドメインが、配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
第1のリンカーがGSリンカーである、請求項21~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記第1のリンカーが、配列番号2少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
第1のL19 VHドメイン、第2のL19 VHドメイン、またはその両方が、配列番号28~30のいずれか一つと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
第1のL19 VLドメイン、第2のL19 VLドメイン、またはその両方が、配列番号1~33のいずれか一項にと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記第1のL19 VHドメイン、前記第2のL19 VHドメイン、またはその両方が、配列番号7少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記第1のL19 VLドメイン、前記第2のL19 VLドメイン、またはその両方が、配列番号5少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
SADリンカーが、配列番号4少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
第3のリンカーがGSリンカーである、請求項21~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記第3のリンカーが、配列番号6少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
第5のリンカーがGSリンカーである、請求項21~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記第のリンカーが、配列番号6少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
第3のリンカーおよび第5のリンカーが同一のアミノ酸配列を含む、請求項21~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
第4のリンカーがGSリンカーである、請求項21~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記第4のリンカーが、配列番号8少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が、配列番号16少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
組成物が、配列番号16少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物、および任意選択的に、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項41】
a)請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物または請求項40に記載の医薬組成物;および
b)1つ以上の治療的活性化合物
を含む、組合せ。
【請求項42】
a)およびb)が別々に投与されるのに適している、請求項41に記載の組合せ。
【請求項43】
請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物、または請求項41に記載の組合せを含む、対象における腫瘍性疾患の治療または予防のための治療薬。
【請求項44】
対象が腫瘍性疾患を発症するリスクがある、請求項43に記載の治療薬。
【請求項45】
対象が腫瘍性疾患に罹患している、請求項43に記載の治療薬。
【請求項46】
腫瘍性疾患が、悪性黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)又はミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有する転移性結腸直腸がん、肝細胞がん、胃がん、皮膚の扁平上皮がん、子宮頸がん、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群より選択される、請求項43~35のいずれか1項記載の腫瘍性疾患を治療するための治療薬。
【請求項47】
請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物、または請求項41に記載の組合せを含む、対象における血管新生を抑制するための治療薬。
【請求項48】
対象におけるED-Bフィブロネクチンの発現または過剰発現に関連する疾患または症状の治療のための医薬であって、請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物、または請求項41に記載の組合せを含む、治療薬。
【請求項49】
a)請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物、請求項4に記載の医薬組成物または請求項4に記載の組合せ、
b)組成物、組成物または組合せを投与するための装置、および
c)使用説明書
を含むパーツの治療用キット。
【請求項50】
請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物をコードするポリヌクレオチド。
【請求項51】
プロモーターと、請求項50に記載のポリヌクレオチドとを含むベクター。
【請求項52】
a)請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物をコードするポリヌクレオチドを細胞に接触させること;
b)a)でコードされるポリペプチドを産生するのに十分な量でポリヌクレオチドを発現させること;および
c)該ポリペプチドを回収すること
を含むポリペプチドの製造方法。
【請求項53】
細胞がCHO細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物をコードするポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項55】
細胞がCHO細胞である、請求項54に記載の細胞。
【外国語明細書】