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特開2023-113672改善された精度および特異性を有する塩基エディター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113672
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】改善された精度および特異性を有する塩基エディター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230808BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230808BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230808BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230808BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230808BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230808BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230808BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230808BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230808BHJP
   C12N 9/22 20060101ALN20230808BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALN20230808BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/09 110
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K48/00
A61K35/28
A61P7/00
A61P7/06
A61P43/00 105
A61P43/00 111
C12N9/22
C12N5/0789
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023079369
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2019564906の分割
【原出願日】2018-05-25
(31)【優先権主張番号】62/511,296
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/541,544
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/622,676
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェイ.キース
(72)【発明者】
【氏名】ゲールケ,ジェーソン マイケル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】標的化された塩基編集テクノロジーのゲノムワイドの特異性を改善するための方法および組成物を提供する。
【解決手段】任意選択の介在性リンカーを伴って、操作されたバリアントデアミナーゼ、hAID、rAPOBEC1*、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhAPOBEC3Hに連結されたCas9様ニッカーゼ(nCas9)を含む、融合タンパク質であって、ノンカノニカルモチーフにおいて、前記デアミナーゼを作用させる、前記デアミナーゼの基質配列モチーフ中に、1または複数の特定の変異を含み、融合タンパク質は、任意選択で、ウラシルグリコシラーゼインヒビター(UGI)をさらに含む、融合タンパク質を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意選択の介在性リンカーを伴って、操作されたバリアントデアミナーゼ hAID、
rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOBEC3B、h
APOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhAPOBEC3
Hに連結されたCas9様ニッカーゼ(nCas9)を含む融合タンパク質であって、
ノンカノニカルモチーフ(non-canonical motif)において前記デアミナーゼを作用さ
せる前記デアミナーゼの基質配列モチーフ中に、表7、8および/または9に示される1
つまたは複数の変異を含み、
融合タンパク質は、任意選択で、ウラシルグリコシラーゼインヒビター(UGI)をさ
らに含む、
融合タンパク質。
【請求項2】
ノンコグネート配列モチーフを認識する、表1または表2に列挙されたデアミナーゼド
メインの操作されたバリアントを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOB
EC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhA
POBEC3Hの前記操作されたバリアントが、表7または8に示される1つまたは複数
の変異を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOB
EC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhA
POBEC3Hの前記操作されたバリアントが、(i)表7および/または8に示される
1つまたは複数の変異ならびに(ii)表9に示される1つまたは複数の変異を含む、請
求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOB
EC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3GまたはhAP
OBEC3Hの前記操作されたバリアントが、N57;K60および/もしくはY130
のうち1つもしくは複数における変異を有するhAPOBEC3A;またはN57、K6
0もしくはY130に対応する変異を有するhAID、rAPOBEC1、mAPOB
EC3、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBE
C3G、もしくはhAPOBEC3Hを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記操作されたバリアントが、N57およびY130における変異を有するhAPOB
EC3Aを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
N57GもしくはN57Q変異;K60AもしくはK60D変異;および/またはY1
30F変異のうち1つまたは複数を有するhAPOBEC3Aを含む、請求項5または6
に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記操作されたバリアントが、N57、K60に対応する変異、および/またはY13
0に対応する変異を有するhAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPO
BEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはh
APOBEC3Hを含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
N57G;K60D;またはY130Fに対応する変異のうち1つまたは複数を有する
hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOBEC3B、hAPOBE
C3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhAPOBEC3Hを含む、
請求項5または7に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOB
EC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhA
POBEC3Hの前記操作されたバリアントが、A71および/もしくはI96における
変異を有するhAPOBEC3A、またはA71および/もしくはI96に対応する変異
を有するhAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOBEC3B、hA
POBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、もしくはhAPOBEC3
H(例えば、表10に示される通り)を含む、請求項1から9のいずれかに記載の融合タ
ンパク質。
【請求項11】
ベータサラセミア変異HBB-28(A>G)を有する対象を処置する方法であって、
請求項1から10のいずれかに記載の融合タンパク質の治療有効量を送達するステップを
含み、デアミナーゼが、N57GもしくはN57AもしくはN57QまたはK60Aもし
くはK60DまたはY130Fにおける変異を含むAPO3Aを含み、好ましくは、前記
融合タンパク質が、ssDNAニック導入性Cas9または触媒的に不活性なCas9を
含む、方法。
【請求項12】
前記融合タンパク質が、RNP、mRNAまたはプラスミドとして送達される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
変異体の脱アミノ化に十分な条件下で、前記対象から収集されたCD34+造血幹細胞
および/または前駆体細胞を含む細胞の集団に、前記融合タンパク質をex vivoで
送達するステップ、ならびに前記細胞を、前記対象に、再注入により戻すステップを含む
、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
核酸中の選択されたシチジンを脱アミノ化する方法であって、前記核酸を、請求項1か
ら10のいずれかに記載の融合タンパク質または塩基編集システムと接触させるステップ
を含む方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれかに記載の精製された融合タンパク質または塩基編集システ
ムを含む組成物。
【請求項16】
1つまたは複数のリボ核タンパク質(RNP)複合体を含む、請求項15に記載の組成
物。
【請求項17】
請求項1から10のいずれかに記載の融合タンパク質または塩基編集システムをコード
する核酸。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸を含むベクター。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸を含む、単離された宿主細胞。
【請求項20】
幹細胞である、請求項19に記載の宿主細胞。
【請求項21】
造血幹細胞である、請求項19に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2017年5月25日出願の米国仮特許出願第62/511,296号;2
017年8月4日出願の米国仮特許出願第62/541,544号;および2018年1
月26日出願の米国仮特許出願第62/622,676号の利益を主張する。上述の全内
容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援の研究または開発
本発明は、National Institutes of Healthによって授
与された助成金番号GM118158の下で政府の支援で行われた。政府は、本発明にお
いて特定の権利を有する。
【0003】
標的化された塩基編集テクノロジーのゲノムワイドの特異性を改善するための方法およ
び組成物が、本明細書に記載される。
【背景技術】
【0004】
塩基編集(BE)テクノロジーは、シチジンデアミナーゼドメインを特異的ゲノム位置
に動員して、部位特異的シトシン→チミン遷移(transition)置換をもたらすために、操
作されたDNA結合ドメイン(例えば、RNAガイドされる触媒的に不活性なCas9(
dead Cas9すなわちdCas9)、ニッカーゼ(nickase)バージョンのCas
9(nCas9)またはジンクフィンガー(ZF)アレイ)を使用する1、2。BEは、
相同組換え修復(HDR)によって正確な変異をなすことが治療的に有益ではあるが伝統
的なヌクレアーゼベースのゲノム編集テクノロジーでは創出が困難である、細胞の状況で
顕在化する遺伝性疾患を処置するための特に魅力的なツールである。例えば、緩徐に分裂
しているまたは有糸分裂後の細胞集団から主に構成される組織においてHDRの結果を達
成することは困難であるまたは不可能であるが、それは、HDR経路が、細胞周期のG2
期およびS期に限定されるからである。さらに、ヌクレアーゼ誘導性切断の非相同末端
結合媒介性修復によって引き起こされる可変長さのインデル変異の競合的でより効率的な
誘導によって、編集が創出される前および後においてHDR修復の効率は実質的に低下さ
れ得る。対照的に、BEテクノロジーは、細胞型によって可変性のDNA修復機構を必要
とすることなしに、実施者が高度に制御可能で高度に正確な変異をなすことができる可能
性を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
CRISPR塩基エディタープラットフォーム(BE)は、ドナーDNA分子を必要と
せずに、正確なユーザー定義されたゲノム編集事象を生じる独自の能力を有する。シチジ
ンデアミナーゼドメインおよびウラシルグリコシラーゼインヒビター(UGI)に融合さ
れた一本鎖ニック導入性CRISPR-Cas9(nCas9)タンパク質を含む塩基エ
ディター(BE)(BE3)は、CRISPRガイドRNA(gRNA)スペーサー配列
によって決定される部位特異的様式で、シチジンからチミジンへの(CからTへの)塩基
遷移を効率的に誘導する。全てのゲノム編集試薬を用いる場合と同様、遺伝的にコード
された有害で不可逆的な副作用を生じる可能性を制限するために、治療薬として使用する
前に、BEがオフターゲット変異を生じる能力をまず決定し、次いで軽減することが重要
である。本明細書で、本発明者らは、臨床的に適切なものに向かうBEテクノロジーの成
熟化を可能にする、BEテクノロジーへの科学技術的改善を提案する。最初に、本発明者
らは、特定の2ヌクレオチドまたは3ヌクレオチドのゲノムコンテキストで存在するシト
シンだけを脱アミノ化できる天然のまたは操作されたデアミナーゼ(表1)を使用してB
Eを構築することによって、BE脱アミノ化にとって利用可能な、利用可能なシトシン基
質の絶対数を制限するための方法を記載する。
【0006】
このタンパク質は、例えば、デアミナーゼタンパク質またはドメインの特異性を増加さ
せるために、そのままで、または任意の可能な組合せで、表7に列挙された1つまたは複
数の変異を含み得る。このタンパク質は、例えば、変更および増加された基質配列を有す
る操作されたデアミナーゼタンパク質またはドメインを創出するために、表7中の変異の
いずれかと任意選択で組み合わせた、例えば、標的化可能なモチーフ配列を変更すること
を意図した、表8に列挙された1つまたは複数の変異を含み得る。さらに、このタンパク
質は、例えば、トリヌクレオチドモチーフ中の1番目または3番目のヌクレオチドに対す
る変更された特異性を有し、他の可能な脱アミノ化基質モチーフと比較してその標的モチ
ーフに対する増加した特異性を有する操作されたデアミナーゼタンパク質を創出するため
に、表7または表8中に列挙された変異のいずれかと任意選択で組合せた、表9に列挙さ
れた1つまたは複数の変異を含み得る。
【0007】
一部の実施形態では、hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOB
EC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOB
EC3G、またはhAPOBEC3Hの操作されたバリアントは、表7、8および/また
は9に示される1つまたは複数の変異を含む。一部の実施形態では、変異は、N57A/
G/Q/D/E;A71V;I96T;Y130F;もしくはK60A/D/E、または
それらの組合せである。
【0008】
一部の実施形態では、hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOB
EC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOB
EC3GまたはhAPOBEC3Hの操作されたバリアントは、(i)表7および/また
は8に示される1つまたは複数の変異ならびに(ii)表9に示される1つまたは複数の
変異を含む。
【0009】
一部の実施形態では、hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOB
EC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOB
EC3GまたはhAPOBEC3Hの操作されたバリアントは、N57(好ましくはN5
7GまたはN57Q);K60(好ましくはK60AまたはK60D)および/またはY
130(好ましくはY130F)のうち1つまたは複数における変異を有するhAPOB
EC3A;またはN57(例えば、表7中に示される3位における、例えば、3位におけ
るG)、K60(例えば、表7中に示される4位における、例えば、4位におけるD))
もしくはY130(例えば、表7中に示される6位における、例えば、6位におけるF)
に対応する変異を有するhAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOB
EC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3GもしくはhA
POBEC3Hを含む。
【0010】
一部の実施形態では、hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOB
EC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOB
EC3GまたはhAPOBEC3Hの操作されたバリアントは、N57(好ましくはN5
7G)およびY130(好ましくはY130F)における変異を有するhAPOBEC3
A、またはN57に対応する変異(例えば、表7中に示される3位における、例えば、3
位におけるG)およびY130に対応する変異(例えば、表7中に示される6位における
、例えば、6位におけるF)を有するhAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3
、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G
もしくはhAPOBEC3Hを含む。
【0011】
一部の実施形態では、hAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOB
EC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOB
EC3GまたはhAPOBEC3Hの操作されたバリアントは、A71および/もしくは
I96における変異を有するhAPOBEC3A、またはA71および/もしくはI96
に対応する変異を有するhAID、rAPOBEC1、mAPOBEC3、hAPOB
EC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3GもしくはhA
POBEC3H(例えば、表10に示される通り)を含む。例えば、I96T、A71V
およびY130Fは各々、あるとしても配列優先性をそれほど回復することなく、WT由
来のデアミナーゼの編集活性を減弱させる(これは、オフターゲット効果に起因して重要
である)ので、これらは、全ての塩基編集部位の良好な候補になっている。
【0012】
さらに、ベータサラセミア変異HBB-28(A>G)を有する対象を処置するための
方法であって、前述の請求項のいずれか一項に記載の融合タンパク質の治療有効量を送達
するステップを含み、デアミナーゼが、N57GもしくはN57AもしくはN57Qまた
はK60AもしくはK60DまたはY130Fにおける変異を含むAPO3Aを含み、好
ましくは、融合タンパク質が、ssDNAニック導入性Cas9または触媒的に不活性な
Cas9を含む、方法が、本明細書で提供される。
【0013】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、RNP、mRNAまたはプラスミドとして送
達される。
【0014】
一部の実施形態では、本方法は、変異体の脱アミノ化に十分な条件下で、対象から収集
されたCD34+造血幹細胞および/または前駆体細胞を含む細胞の集団に、融合タンパ
ク質をex vivoで送達するステップ、ならびに細胞を、対象に、再注入により戻す
ステップを含む。
【0015】
核酸中の選択されたシチジンを脱アミノ化するための方法であって、核酸を、本明細書
に記載される融合タンパク質または塩基編集システムと接触させるステップを含む方法も
また、本明細書で提供される。
【0016】
さらに、本明細書に記載される精製された融合タンパク質または塩基編集システムを含
む組成物が、本明細書で提供される。
【0017】
さらに、本明細書に記載される融合タンパク質または塩基編集システムをコードする核
酸、ならびにこの核酸を含むベクター、およびこの核酸を含む宿主細胞、例えば、幹細胞
、例えば、造血幹細胞が、本明細書で提供される。
【0018】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明
が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。方法および材
料は、本発明における使用のために本明細書に記載される;当該分野で公知の他の適切な
方法および材料もまた使用され得る。材料、方法および例は、例示に過ぎず、限定を意図
しない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエン
トリーおよび他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、
定義を含む本明細書が支配する。
【0019】
本発明の他の特色および利点は、以下の詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範
囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】例示的な典型的な高効率塩基編集システムの図。その2つのヌクレアーゼドメインのうち1つにおいて触媒的に不活性化性の変異を有するニック導入性Cas9(nCas9)は、sgRNAの可変性のスペーサー配列によって指示される標的部位に結合する。安定なRループの形成は、脱アミノ化されていない鎖上にssDNA編集ウインドウを創出する。Cas9は、ゲノムDNA中に一本鎖切断を創出し、宿主細胞が、脱アミノ化された鎖を鋳型として使用して損傷を修復するのを促進し、そうして、シトシン→チミン遷移置換に向けて修復を偏らせる。
図2A-2B】図2Aおよび2Bは、それぞれ、認識ループ1(RL1)およびループ7についてのアラインメントを示す図である。両方の領域は、全てのタンパク質にわたって低い保存を示し、各酵素の配列特異性に顕著に寄与することが実験的に実証されている、または相同性に基づいて寄与すると予測される。Blosum62マトリックスによって実施し、Geneiousにおいて可視化したアラインメント。
図3A-3B】APO3AとssDNA基質との間で形成されるタンパク質-DNA接触の図である。RL1残基はマゼンタで示され、ループ7残基は赤で示され、ssDNA基質は黄色で示され、APO3Aの残りの残基は灰色で示される。図3Aは、本発明者らが、本明細書に記載されるデアミナーゼドメイン(配列番号1~9)の特異性を変更または増強するために置換変異をなすことを提案する、RL1およびループ7中の全ての残基の配向を示す。図3Bは、-1位(標的Cに対して)におけるチミンとD131(配列番号10~18)との間で形成される、黒の破線で示される塩基特異的水素結合を示す。PDBコード:5SWW。
図4】APO3A-nCas9-UGIタンパク質を、ゲノムに組み込まれたEGFP遺伝子内の部位を標的化するガイドRNA(配列番号19)と共に、U2OS細胞において過剰発現させたグラフである。72時間後、ゲノムDNAをこれらの細胞から抽出し、Illumina配列決定に供した。スペーサー内の各シトシンヌクレオチドについてのC>T遷移の頻度を、単一残基置換を有する15個のAPO3Aバリアントの各々についてプロットした。
図5】APO3A-nCas9-UGIタンパク質を、ゲノムに組み込まれたEGFP遺伝子内の部位を標的化するガイドRNA(配列番号19)と共に、U2OS細胞において過剰発現させたグラフである。72時間後、ゲノムDNAをこれらの細胞から抽出し、Illumina配列決定に供した。スペーサー内の各シトシンヌクレオチドについてのC>T遷移の頻度を、N57またはK60において単一残基置換を有するAPO3A-nCas9-UGIタンパク質についてプロットした。これらのタンパク質の各々は、野生型塩基エディタータンパク質と比較して減少された効率で、編集ウインドウ内のオフターゲットGCTモチーフを脱アミノ化したが、編集ウインドウ内のオンターゲットTCGモチーフにおいては効率的な脱アミノ化活性を保持した。
図6】EGFP部位1におけるオンターゲットTCGおよびオフターゲットGCTモチーフ(共に編集ウインドウ中にある)についてのシトシンからチミンへの編集効率の比が、単一残基置換を有するAPO3A-nCas9-UGIタンパク質の各々についてプロットされたグラフである。N57またはK60置換を有するタンパク質は、野生型APO3A塩基エディタータンパク質と比較して、増加した特異性比を有する。
図7】APO3A-nCas9-UGIタンパク質を、ゲノムに組み込まれたEGFP遺伝子内の部位を標的化するガイドRNA(配列番号20)と共に、U2OS細胞において過剰発現させたグラフである。72時間後、ゲノムDNAをこれらの細胞から抽出し、Illumina配列決定に供した。スペーサー内の各シトシンヌクレオチドについてのC>T遷移の頻度を、各塩基エディタータンパク質についてプロットした。
図8】EGFP部位2標的の編集ウインドウ内の全てのシトシン(これらは全て、オフターゲットトリヌクレオチドモチーフ中に存在する)についての、シトシンからチミンへの累積遷移頻度が、各塩基エディタータンパク質についてプロットされたグラフである。N57およびK60において単一残基置換を有するAPO3A塩基エディタータンパク質は、この標的部位の編集ウインドウ中に存在するオフターゲットシトシンを脱アミノ化する能力が顕著に減少されている。特に、APO3A N57Aは、この部位においてデアミナーゼ活性を全く示さなかった。
図9】安定に組み込まれたEGFP遺伝子を有するU2OS細胞に、EGFPを標的化するガイド(配列番号22)および示された塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドをトランスフェクトしたグラフである。72時間後、ゲノムDNAを細胞から抽出し、標的部位をPCRによって増幅し、PCR産物を、ハイスループットIllumina配列決定に供した。コグネートおよびノンコグネートモチーフにおけるCからTへの遷移の頻度を、トランスフェクション条件の各々についてプロットした。hAPOBEC3A(APO3A)N57に対してなされた変異は、塩基エディター構造中のデアミナーゼドメインの配列特異性を回復することにおいて、非常に有効であった。
図10】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトしたグラフである。2つの置換を有するAPO3A BE3タンパク質は一般に、試験した両方のgRNA中のコグネートモチーフにおける顕著な活性を喪失した。しかし、APO3A N57Q/Y130F塩基エディター3(BE3)二重変異体は、ノンコグネートモチーフにおける脱アミノ化の頻度を顕著に減少させつつ、両方のgRNAのコグネートモチーフに対する活性を保持した。
図11】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした図である。72時間後、ゲノムDNAを抽出し、標的部位をPCRによって増幅し、PCR産物を、ハイスループットIllumina配列決定に供した。20ヌクレオチドのスペーサー配列内の全てのシチジンについてのCからTへの遷移の頻度が、ヒートマップ形式でプロットされる。3つ全てのAPO3A BE3タンパク質が、BE3ならびに操作されたバリアントYE1、YE2およびYEE BE3(YE BE3)と比較して、コグネートモチーフに向けて脱アミノ化を強力に偏らせることができ、これは、ラットAPOBEC1(rAPO1)デアミナーゼドメイン中に、BE3と比較してその速度論的速度を緩徐化し、その編集ウインドウの長さを制限する点変異を取り込むことによってかかるバイスタンダー変異の頻度を減少させる44。参照配列、配列番号23~28。
図12】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした図である。72時間後、ゲノムDNAを抽出し、標的部位をPCRによって増幅し、PCR産物を、ハイスループットIllumina配列決定に供した。20ヌクレオチドのスペーサー配列内の全てのシチジンについてのCからTへの遷移の頻度が、ヒートマップ形式でプロットされる。3つ全てのAPO3A BE3タンパク質が、BE3およびYE BE3タンパク質と比較して、コグネートモチーフに向けて脱アミノ化を強力に偏らせることができた。参照配列、配列番号29~34。
図13】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした図である。サンプルを、以前に概説したように処理した。N57Gに加えてA71またはI96に対する変異を有するAPO3A BE3タンパク質は、ノンコグネートモチーフにおける脱アミノ化頻度を大きく減少させた。各部位についてのコグネート対ノンコグネートの編集の比を、バリアント塩基エディタータンパク質の各々に関して3つ全ての部位についてプロットしたところ、APO3A N57G I96T BE3が、試験した3つの部位の各々についておよそ13のコグネート:ノンコグネート編集比を達成したことが実証された。参照配列、配列番号35~37。
図14】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトしたグラフである。サンプルを、以前に概説したように処理した。プロットされた脱アミノ化頻度を得るために、編集ウインドウ内に入るシチジンについての全てのCからTへの遷移頻度を合計した。APO3A BE3は、25個のオフターゲット部位のうち16個において、非常に高いレベルの脱アミノ化を誘導した。BE3は、より低い頻度でではあるが、APO3A BE3と同じオフターゲット部位において脱アミノ化を誘導した。APO3A N57G BE3は、25個の部位のうち6個のみにおいてインデルを誘導し、これら6個の部位では、BE3よりもかなり低い頻度であった。
図15】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトしたグラフである。サンプルを、以前に概説したように処理した。プロットされた脱アミノ化頻度を得るために、編集ウインドウ内に入るシチジンについての全てのCからTへの遷移頻度を合計した。APO3A BE3は、15個のオフターゲット部位のうち3個において、非常に高いレベルの脱アミノ化を誘導した。BE3は、より低い頻度でではあるが、APO3A BE3と同じオフターゲット部位において脱アミノ化を誘導した。APO3A N57G BE3は、15個の調査したオフターゲット部位のいずれにおいても、脱アミノ化を誘導しなかった。
図16】塩基エディタータンパク質を用いてHBB-28(A>G)疾患対立遺伝子を標的化することから生じる潜在的対立遺伝子産物を示す模式図。編集ウインドウ中に存在する-25バイスタンダーシチジンの変異は、-28位における編集とは独立して、ベータ-サラセミア表現型を引き起こす。このように、-25位が塩基エディタータンパク質によって編集されないことが重要である。配列番号38~42が示される。
図17】HBB-28(A>G)疾患原因対立遺伝子の、染色体に組み込まれた200塩基対断片を有するHEK293T細胞に、HBB-28標的化gRNAおよび示されたBEタンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした図である。BE3およびYE BE3タンパク質は、およそ等しい頻度でコグネートおよびノンコグネートシチジンを脱アミノ化したが、APO3A N57G BEタンパク質は、編集ウインドウ中の2番目のシチジンの脱アミノ化を回避しつつ、疾患を修正するために、-28コグネートモチーフを強力に脱アミノ化した。
図18】BE3およびYE BE3タンパク質は、疾患原因HBB-28(A>G)変異の脱アミノ化を誘導するが、これは、配列決定した総対立遺伝子の1%未満において完全に修正された対立遺伝子を生じる。逆に、APO3A N57G BEタンパク質は、配列決定した総対立遺伝子の15~22%において完全に修正された対立遺伝子を生じる。参照配列、配列番号43。
図19】HBB-28(A>G)対立遺伝子の、染色体に組み込まれた断片を有するHEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトしたグラフである。サンプルを、以前に概説したように処理した。プロットされた脱アミノ化頻度を得るために、編集ウインドウ内に入るシチジンについての全てのCからTへの遷移頻度を合計した。BE3は、調査した8つのオフターゲット部位のうち3つにおいて脱アミノ化を生じたが、APO3A N57 BE3は、非常に低い頻度で、8つの部位のうちたった1つにおいて脱アミノ化を生じた。配列番号44が示される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
今日までに記載された最も効率的なBE構成では、シチジンデアミナーゼ(DA)ドメ
インおよびウラシルグリコシラーゼインヒビター(UGI;ゲノムからのウラシルの切り
出しを担う酵素である宿主細胞のウラシルデグリコシラーゼ(UDG)を阻害する小さな
バクテリオファージタンパク質1、4)は共に、nCas9(化膿性連鎖球菌(Streptoc
occus pyogenes)Cas9(SpCas9)または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aur
eus)Cas9(SaCas9)のいずれかに由来する)に融合される。nCas9は、
そのシングルガイドRNA(sgRNA)と隣接プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM
)の認識とによって特定される標的部位においてRループを形成し、RループのPAM遠
位末端近傍で一本鎖DNA(ssDNA)として露出された、およそ4~8ヌクレオチド
の非標的鎖を残す(図1)。ssDNAのこの領域は、ssDNA特異的DAドメインに
よって脱アミノ化されて、グアノシン:ウラシル(G:U)ミスマッチを生じることがで
きる鋳型であり、編集ウインドウを規定する。nCas9は、DNAの脱アミノ化されて
いない鎖にニック導入し、脱アミノ化された鎖を鋳型として使用してニック損傷を修復す
るように細胞に指示することによって、G:Uミスマッチの変換を、アデニン:チミン(
A:T)塩基対へと偏らせる。今日まで、これらの融合タンパク質中の記載されたDAド
メインは、ラットAPOBEC1(rAPO1)、ヤツメウナギに由来するCDAと称さ
れる活性化誘導性シチジンデアミナーゼ(AID)(PmCDA)、ヒトAID(hAI
D)、または核外輸送シグナルを欠くhAIDの高活性形態であった1~2、5~7。B
Eテクノロジーは、そのnCas9ドメインとしてSpCas9タンパク質(nSpCa
s9)を使用して当初確立された。本明細書では、本発明者らはnCas9に言及してい
るが、一般に、任意のCas9様ニッカーゼが、特記しない限り、Cpf1タンパク質(
関連するCpf1酵素クラスを含む)の任意のオルソログに基づいて使用され得る。
【0022】
治療設定におけるBEの使用に関する重要な考慮事項は、オフターゲット変異誘発につ
いてそのゲノムワイドの能力をアセスメントすること、および有害なオフターゲット変異
を刺激するリスクを最小化する、または理想的には排除するようにテクノロジーを改変す
ることである。現行世代のBEテクノロジーを用いて、本発明者らは、オフターゲット変
異誘発の3つの潜在的供給源を予測することができる:(1)オンターゲット部位内のシ
トシン塩基の望ましくない改変(nCas9刺激されたRループ形成は、脱アミノ化のた
めに合計で8つのオンターゲットヌクレオチドを露出させることができることが理由であ
る);(2)これらの部位においてシトシン脱アミノ化をもたらす、オフターゲットRル
ープ形成(Cas9は、そのsgRNAに対する変動する程度の相同性を有するオフター
ゲット部位に結合する、十分に報告された能力を有する8~9);および(3)融合物の
Cas9部分によるDNAへの結合なしに部位において生じ得るBE媒介性脱アミノ化(
例えば、溶液からの、またはデアミナーゼ自体のみによって弱く特定される部位において
媒介される活性)。本明細書では、本発明者らは、潜在的な望ましくないBE変異誘発を
低減させるまたは排除するために使用され得るBEに対する科学技術的改善を記載した。
【0023】
より高いまたは変更された標的部位優先性を有するシチジンデアミナーゼドメインを使用
することによって、塩基エディターの特異性を増加させる
現行世代のBEテクノロジーは、一本鎖DNA(ssDNA)のおよそ8ヌクレオチド
のウインドウ中にシトシン→チミン遷移置換をもたらすために、ラットAPOBEC1(
rAPOBEC1)のシトシン脱アミノ化活性を使用する。ssDNA標的ウインドウは
、BE融合タンパク質のnCas9部分によって創出されるRループによって形成され、
sgRNA相補性領域の一番5’側のヌクレオチドのおよそ4ヌクレオチド下流で始まる
。従って、脱アミノ化される標的Cは、gRNA標的相補性配列内にある。標的配列内で
は、標的Cは、5’側から数えて5、6、7、8または9位に位置する必要がある。
【0024】
rAPOBEC1ドメインは、それ自体では固有の基質配列特異性をほとんど有さず、
標的Cに対してすぐ5’側の塩基がGでない限り、全ての配列コンテキストにおいてシト
シンを等しく良好に脱アミノ化し、標的Cに対してすぐ5’側の塩基がGである場合、脱
アミノ化はあまり効率的ではないがなおも可能である。さらに、rAPOBEC1がnC
as9に融合される場合、これは、編集ウインドウ内の複数のシトシンに対して処理能力
を有するようである、つまり、ssDNA標的ウインドウにおける単一の結合事象が、
ウインドウ中の1つよりも多いシトシンの脱アミノ化をしばしば生じる(2つ以上のシト
シンが存在する場合)。
【0025】
標的ウインドウ1つ当たりの複数の脱アミノ化は、オンターゲット結合部位において、
およびゲノム中のnCas9が結合する他のオフターゲットDNA配列において、望まし
くない変化を生じ得る。ある程度まで、オンターゲット編集ウインドウ内の望ましくない
脱アミノ化は、rAPOBEC1およびnCas9を分離するタンパク質リンカーの長さ
および柔軟性を変化させることによって制御することができる;しかし、この制御は、編
集ウインドウ中の特定の配列位置に合わせることができず、制限された編集ウインドウの
外側の検出可能な脱アミノ化をなおも示す10
【0026】
オンターゲット部位の編集ウインドウ内の非標的シトシンの望ましくない脱アミノ化、
オフターゲット部位における任意のシトシンの脱アミノ化を減少させるまたは完全に取り
除き、オンターゲット部位における望ましくない進行性の脱アミノ化事象を制限するため
に、本発明者らは、短い配列モチーフに対する固有の特異性および/または非進行性の脱
アミノ化活性を有する操作されたデアミナーゼドメインを使用して、BEを構築する。
【0027】
塩基エディター
一部の実施形態では、塩基エディターは、シトシンDNA塩基を改変するデアミナーゼ
、例えば、APOBEC1、APOBEC2、APOBEC3A、APOBEC3B、A
POBEC3C、APOBEC3D/E、APOBEC3F、APOBEC3G、APO
BEC3H、APOBEC4を含む、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポ
リペプチド様(APOBEC)ファミリーのデアミナーゼ由来のシチジンデアミナーゼ(
例えば、Yang et al., J Genet Genomics. 2017 Sep 20;44(9):423-437を参照のこと);
活性化誘導性シチジンデアミナーゼ(AID)、例えば、活性化誘導性シチジンデアミナ
ーゼ(AICDA)、シトシンデアミナーゼ1(CDA1)およびCDA2、ならびにt
RNAに対して作用するシトシンデアミナーゼ(CDAT)である。以下の表1は、例示
的な配列を提供する;他の配列も使用することができる。
【0028】
【表1】
【0029】
ヒトAID(hAID)、ヒトAPOBEC3およびマウスAPOBEC3酵素(AP
O3A-hAPO3H、mAPO3)は、標的シトシン周辺の1つ、2つまたは3つのさ
らなるヌクレオチドに対する特異性を有する(表2)11~16。1~3つのさらなるヌ
クレオチドからの追加的な特異性は、BE編集ウインドウ中の非標的シトシンが、ランダ
ムに分布したDNA中で脱アミノ化のために利用可能になる確率を、4分の1~64分の
1に減少させる。これは、オンターゲット部位、およびsgRNAに対する高い程度の類
似性を有するnCas9オフターゲット部位の両方におけるゲノム内の塩基編集酵素の特
異性を実質的に増強し、また、ゲノム中の総基質部位の数を大きく低減させることによっ
て、ゲノムの至る所での潜在的な誤ったsgRNA/nCas9非依存的脱アミノ化を制
限することに寄与する。重要なことに、hAPO3およびmAPO3酵素の固有の配列特
異性は、これらのタンパク質がそれらの標的配列特異性を変更または再割り当てするため
に操作され得る可能性を上昇させる。このシナリオでは、目的の各標的基質配列シグネチ
ャーを提供するために、多くの異なる2bpおよび3bp認識デアミナーゼを潜在的に操
作することができる。
【0030】
【表2】
【0031】
各内因性hAPO3およびmAPO3酵素は、それが作用できる、固有の2~3nt標
的基質モチーフ優先性を有する。例えば、APO3Aは、T(A/G)中の太字のシト
シンを脱アミノ化するが、hAPO3Gは、形態CCの基質を標的化する。この提案さ
れたクラスの基質特異的APO3含有BE試薬の標的化範囲全体を増加させるために、所
与のAPO3酵素によって標的化可能な配列モチーフの範囲を改変できることが有利であ
る。さらに、APO3酵素の基質特異性決定残基を操作することにより、好ましい基質部
位を変更するだけでなく、ゲノムにわたって豊富に存在し得る、他の密接にマッチしたジ
ヌクレオチドシグネチャーまたはトリヌクレオチドシグネチャーと比較して、その好まし
い部位に対するAPO3酵素の特異性を改善することもできる。hAPO3酵素は、認識
ループ1(RL1)およびループ7と呼ばれる可変性の配列組成を有する2つの認識ルー
プ中の残基間で形成される直接的接触を介して、それらのコグネート配列モチーフを認識
する12~13、17~22(表3、図2A~2Bおよび図3A~3Bを参照のこと)。
他の研究者は、これらの残基に対してなされる、これらのドメインの特異性を緩和または
変更する置換変異を以前に記載している。例えば、hAPO3Gループ7残基D316お
よびD317をアルギニンに変異させることは、CCからCCへと、酵素の基質特異
性を変化させる(ここで、太字のCは、脱アミノ化のための基質を表す)23。変異hA
PO3F D311Aは、TGCおよびTCCの標的化を増加させ、未改変の酵素は、T
TCを標的化することを好む15。さらに、RL1残基がhAPO3GのRL1残基によ
って置き換えられたキメラAPO3Aタンパク質は、酵素の特異性を顕著に緩和し24
hAIDループ7の残基をhAPO3GまたはhAPO3F由来の残基で置換することは
、ドナー酵素の標的配列プロファイルと似るように、変異体hAID酵素の標的配列プロ
ファイルを変化させる25。この研究は、RL1およびループ7中の残基に対する置換変
異が、タンパク質と標的ssDNAとの間で起こる塩基特異的接触を変更させることによ
って、APO3タンパク質の特異性を変更すると予測されることを確立しているが、これ
らの初期の研究を超えてAPO3基質配列特異性を再操作する報告は、これまで存在して
いない。さらに、本発明者らが知る限り、その標的配列モチーフに対するこれらのドメイ
ンの特異性を高める戦略を記載しているグループは存在しない。
【0032】
【表3】
【0033】
この目的のために、置換変異が、RL1および/またはループ7中に存在する残基に対
してなされ得る(各APO3またはAID酵素に対応する残基については表3を、これら
のタンパク質のアラインメントについては図2A~2Bを参照のこと)。RL1またはル
ープ7中の位置における最大数のアミノ酸置換組合せをサンプリングするために、本発明
者らは、これらのループ中のアミノ酸をランダム化し、所望の配列に対するロバストな脱
アミノ化活性を有するライブラリーメンバーについて選択するために、細菌選択スキーム
を使用する。ループ7の場合、配列モチーフを特定する役割を最も大きく担っていると考
えられる残基は、所望の配列モチーフと塩基特異的相互作用を形成すると予測され得る残
基へと個々に変異され、ループ7中の残りの位置はランダム化される。例えば、APO3
A残基D131は、5’-CYと水素結合を形成することが公知である(ここで、太字
のTは、塩基特異的接触を表す)。APO3Aの配列特異性をTCTからACTに変更す
るために、本発明者らは、D131の、N、QまたはRへの置換を有するAPO3A変異
体を最初に設計する。次いで、これらのAPO3Aバリアントの各々は、NNB、NNS
またはNNKの単純化されたコドンセット(ここで、N=A/C/G/T、B=C/G/
T、S=C/GおよびK=G/Tである)を使用して作製された合成縮重オリゴヌクレオ
チドライブラリーをクローニングすることによって、132~134位において改変され
る。
【0034】
これらの残基の各々に対してなされる置換変異は、他の特定された残基位置のいずれか
に対してなされた置換変異との任意の組合せでの、20種のカノニカルアミノ酸のいずれ
かを含む。さらに、これらの変異は、触媒活性に必要とされる最小のドメイン(触媒ドメ
イン;CD)まで、表3中の酵素をトランケートすることと組み合わせてなされ得る。本
明細書に記載される酵素のサブセットに由来するCDの例については、例示的なタンパク
質配列を参照のこと。これらの変異は、hAPO3Gの溶解度および触媒活性を増加させ
ることが以前に実証された5つの置換変異の全てまたは任意の組合せの存在下または非存
在下でもなされ得る(本明細書に記載される各APOまたはAID酵素についての相同な
置換変異の完全なリストについては、表4を参照のこと)。特に、表1に列挙されたデア
ミナーゼドメインは、本発明者らが行い得る任意の操作が存在しない場合、rAPOBE
C1と比較して好都合な固有の特性を有し得る。このように、本発明者らは、本発明者ら
が産生し得る任意の操作されたバリアントに加えて、表1に列挙された未改変のドメイン
を本明細書に記載する。
【0035】
【表4】
【0036】
CRISPR-Casヌクレアーゼ
本明細書に記載される配列特異的デアミナーゼは、Cas9ニッカーゼに融合される。
本明細書では、本発明者らはnCas9に言及しているが、一般に、任意のCas9様ニ
ッカーゼが、特記しない限り、Cpf1タンパク質(関連するCpf1酵素クラスを含む
)の任意のオルソログに基づいて使用され得る。表5は、例示的なリストを提供する。
【0037】
【表5】
当該分野で公知のこれらのオルソログ、ならびにそれらの変異体およびバリアントは、本
明細書に記載される融合タンパク質のいずれかにおいて使用され得る。例えば、国際公開
第2017/040348号パンフレット(これは、増加した特異性を有するSaCas
9およびSpCas9のバリアントを記載している)および国際公開第2016/141
224号パンフレット(これは、変更されたPAM特異性を有するSaCas9およびS
pCas9のバリアントを記載している)を参照のこと。
【0038】
化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)由来のCas9ヌクレアーゼ(以後単にCas9)は
、17~20ヌクレオチドの操作されたガイドRNA(gRNA)、例えば、シングルガ
イドRNAまたはcrRNA/tracrRNA対と、プロトスペーサー隣接モチーフ(
PAM)、例えば、配列NGGまたはNAGとマッチするPAMの隣にある目的の標的ゲ
ノムDNA配列の相補鎖との間での単純な塩基対相補性を介して、ガイドされ得る(Shen
et al., Cell Res (2013);Dicarlo et al., Nucleic Acids Res (2013);Jiang et al.
, Nat Biotechnol 31, 233-239 (2013);Jinek et al., Elife 2, e00471 (2013);Hwang
et al., Nat Biotechnol 31, 227-229 (2013);Cong et al., Science 339, 819-823 (2
013);Mali et al., Science 339, 823-826 (2013c);Cho et al., Nat Biotechnol 31,
230-232 (2013);Jinek et al., Science 337, 816-821 (2012))。プレボテラ属(Prevo
tella)およびフランシセラ属(Francisella)1由来の操作されたCRISPR(Cpf
1)ヌクレアーゼもまた、例えば、Zetsche et al., Cell 163, 759-771 (2015);Schund
er et al., Int J Med Microbiol 303, 51-60 (2013);Makarova et al., Nat Rev Micro
biol 13, 722-736 (2015);Fagerlund et al., Genome Biol 16, 251 (2015)に記載され
るように使用され得る。SpCas9とは異なり、Cpf1は、単一の42ntのcrR
NAのみを必要とし、これは、その3’末端に、標的DNA配列のプロトスペーサーに対
して相補的な23ntを有する(Zetsche et al., 2015)。さらに、SpCas9は、プ
ロトスペーサーの3’側にあるNGG PAM配列を認識するが、AsCpf1およびL
bCp1は、プロトスペーサーの5’側に見出されるTTTN PAMを認識する(同上
)。
【0039】
一部の実施形態では、本発明のシステムは、細菌中にコードされた、もしくは哺乳動物
細胞における発現のためにコドン最適化された、ならびに/またはそのPAM認識特異性
および/もしくはそのゲノムワイドの特異性において改変された、化膿性連鎖球菌(S. p
yogenes)もしくは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来の野生型もしくはバリ
アントCas9タンパク質、またはアシダミノコッカス種(Acidaminococcus sp.)BV
3L6もしくはラクノスピラ菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006由来の野生
型Cpf1タンパク質を利用する。いくつかのバリアントが記載されている;例えば、と
りわけ、国際公開第2016/141224号パンフレット、国際出願PCT/US20
16/049147明細書、Kleinstiver et al., Nat Biotechnol. 2016 Aug;34(8):869
-74;Tsai and Joung, Nat Rev Genet. 2016 May;17(5):300-12;Kleinstiver et al., N
ature. 2016 Jan 28;529(7587):490-5;Shmakov et al., Mol Cell. 2015 Nov 5;60(3):3
85-97;Kleinstiver et al., Nat Biotechnol. 2015 Dec;33(12):1293-1298;Dahlman et
al., Nat Biotechnol. 2015 Nov;33(11):1159-61;Kleinstiver et al., Nature. 2015
Jul 23;523(7561):481-5;Wyvekens et al., Hum Gene Ther. 2015 Jul;26(7):425-31;H
wang et al., Methods Mol Biol. 2015;1311:317-34;Osborn et al., Hum Gene Ther. 2
015 Feb;26(2):114-26;Konermann et al., Nature. 2015 Jan 29;517(7536):583-8;Fu
et al., Methods Enzymol. 2014;546:21-45;およびTsai et al., Nat Biotechnol. 2014
Jun;32(6):569-76を参照のこと。ガイドRNAは、Cas9またはCpf1と一緒に、
細胞中で発現されるまたは細胞中に存在する。ガイドRNAもしくはヌクレアーゼのいず
れか、または両方は、細胞において一過的にもしくは安定に発現され得、または精製され
たタンパク質もしくは核酸として導入され得る。
【0040】
一部の実施形態では、Cas9は、Cas9のヌクレアーゼ活性を低減させる、以下の
変異のうち1つもまた含む;例えば、SpCas9については、D10AまたはH840
Aにおける変異(これは一本鎖ニッカーゼを創出する)。
【0041】
一部の実施形態では、SpCas9バリアントは、Cas9のヌクレアーゼ活性を破壊
する、以下のアミノ酸位置のうち1つにおける変異もまた含む:タンパク質のヌクレアー
ゼ部分を触媒的に不活性にするための、D10、E762、D839、H983、または
D986およびH840またはN863、例えば、D10A/D10NおよびH840A
/H840N/H840Y;これらの位置における置換は、アラニン(Nishimasu al., C
ell 156, 935-949 (2014)にある通り)、または他の残基、例えば、グルタミン、アスパ
ラギン、チロシン、セリンもしくはアスパラギン酸、例えば、E762Q、H983N、
H983Y、D986N、N863D、N863SもしくはN863Hであり得る(国際
公開第2014/152432号パンフレットを参照のこと)。
【0042】
一部の実施形態では、Cas9は、1つまたは複数のウラシルグリコシラーゼインヒビ
ター(UGI)配列に融合される;例示的なUGI配列は以下の通りである:
TNLSDIIEKETGKQLVIQESILMLPEEVEEVIGNKPESDI
LVHTAYDESTDENVMLLTSDAPEYKPWALVIQDSNGENKI
KML(配列番号45)。UGIは、N末端、C末端にあり得、または存在しなくてもよ
い(任意選択で、トランスで、例えば、別々に発現され、または別々に提供もしくは投与
される)。
【0043】
使用の方法
本発明の組成物および方法は、操作されたAPO3Aデアミナーゼによるゲノムワイド
の特異性を増強するために使用され得る。例えば、BE3構造において用いられるAPO
3A N57Gは、一過的プラスミドトランスフェクションによって送達した場合、ガイ
ドRNAのスペーサー配列のアイデンティティーによって決定されるオフターゲット部位
において、増加したゲノムワイドの特異性を有する。さらに、本方法は、塩基エディター
試薬のゲノムワイドのオフターゲット変異誘発を制限するための、例えば、RNPまたは
mRNAトランスフェクションを使用した、表7中の変異のいずれかを有するAPO3A
BE3の送達を含み得る。さらに、表7中の変異のいずれかを有するAPO3A BE
3は(それら自体でまたは一緒になって)、一過的プラスミドトランスフェクション、R
NPまたはmRNAを使用して送達され得、ssDNAニック導入性Cas9または触媒
的に不活性なCas9(nCas9)は、融合タンパク質によるオフターゲット変異誘発
を制限するために、SpCas9 NGG PAMに対する直交性PAM配列を認識する
、任意の操作されたSpCas9タンパク質46である。さらに、表7中の変異のいずれ
かを有する、直交性PAM配列を認識する黄色ブドウ球菌(S. aureus)Cas9または
操作された黄色ブドウ球菌(S. aureus)Cas9に融合されたAPO3Aもまた、使用
され得る47
【0044】
バリアント
一部の実施形態では、融合タンパク質の構成成分は、例示的な配列(例えば、本明細書
で提供される)のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、
90%、95%、97%または99%同一である、例えば、本明細書に記載される変異に
加えて、例示的な配列の残基の最大で5%、10%、15%または20%において、例え
ば保存的変異によって置き換えられた差異を有する。好ましい実施形態では、バリアント
は、親の所望の活性、例えば、ニッカーゼ活性、ならびに/またはガイドRNAおよび/
もしくは標的DNAと相互作用する能力を保持する。
【0045】
2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、これらの配列は、最適な比較目
的のためにアラインされる(例えば、ギャップが、最適なアラインメントのために、第1
および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方において導入され得、非相同な配
列は、比較目的のために無視され得る)。比較目的のためにアラインされる参照配列の長
さは、その参照配列の長さの少なくとも80%であり、一部の実施形態では、少なくとも
90%または100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置に
おけるヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置
と同じヌクレオチドによって占有される場合、これらの分子は、その位置において同一で
ある(本明細書で使用する場合、核酸「同一性」は、核酸「相同性」と等価である)。2
つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入され
る必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、これらの配列によっ
て共有される同一な位置の数の関数である。2つのポリペプチドまたは核酸配列間のパー
セント同一性は、例えば、公に入手可能なコンピューターソフトウェア、例えば、Smi
th Waterman Alignment(Smith, T. F. and M. S. Waterman (198
1) J Mol Biol 147:195-7);GeneMatcher Plus(商標)中に取り込ま
れた「BestFit」(Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics, 482
-489 (1981))、Schwarz and Dayhof (1979) Atlas of Protein Sequence and Structure
, Dayhof, M.O., Ed, pp 353-358;BLASTプログラム(Basic Local A
lignment Search Tool;(Altschul, S. F., W. Gish, et al. (19
90) J Mol Biol 215: 403-10)、BLAST-2、BLAST-P、BLAST-N、B
LAST-X、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、CLUSTALま
たはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当業者の技術範囲内
の種々の方式で決定される。さらに、当業者は、比較されている配列の長さにわたって最
大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメント
を測定するための適切なパラメーターを決定することができる。一般に、タンパク質また
は核酸について、比較の長さは、最大で全長でありかつ全長を含む任意の長さであり得る
(例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、
90%、95%または100%)。本発明の組成物および方法の目的のために、配列の全
長の少なくとも80%がアラインされる。
【0046】
本開示の目的のために、配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、
12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ、および5のフレームシフトギ
ャップペナルティと共に、Blossum 62スコアリングマトリックスを使用して達
成され得る。
【0047】
保存的置換には、典型的には、以下の群内の置換が含まれる:グリシン、アラニン;バ
リン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタ
ミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
【0048】
スプリットデアミナーゼ(split deaminase)融合タンパク質をコードする単離された
核酸、バリアントタンパク質を発現させるための1つまたは複数の調節ドメインに任意選
択で作動可能に連結された単離された核酸を含むベクター、ならびにかかる核酸を含み、
バリアントタンパク質を任意選択で発現させる、宿主細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞も
また、本明細書で提供される。一部の実施形態では、宿主細胞は、幹細胞、例えば、造血
幹細胞である。
【0049】
本明細書に記載されるスプリットデアミナーゼ融合タンパク質は、細胞のゲノムを変更
するために使用され得る。本方法は一般に、細胞においてスプリットデアミナーゼ融合タ
ンパク質を発現または接触させるステップを含む;1つまたは2つのCas9を使用する
バージョンでは、本方法は、細胞のゲノムの選択された部分に対して相補的な領域を有す
るガイドRNAを使用するステップを含む。細胞のゲノムを選択的に変更するための方法
は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第8,993,233号明細書;米国特許
第20140186958号明細書;米国特許第9,023,649号明細書;国際公開
第2014/099744号パンフレット;国際公開第2014/089290号パンフ
レット;国際公開第2014/144592号パンフレット;国際公開第144288号
パンフレット;国際公開第2014/204578号パンフレット;国際公開第2014
/152432号パンフレット;国際公開第2115/099850号パンフレット;米
国特許第8,697,359号明細書;米国特許第20160024529号明細書;米
国特許第20160024524号明細書;米国特許第20160024523号明細書
;米国特許第20160024510号明細書;米国特許第20160017366号明
細書;米国特許第20160017301号明細書;米国特許第20150376652
号明細書;米国特許第20150356239号明細書;米国特許第201503155
76号明細書;米国特許第20150291965号明細書;米国特許第2015025
2358号明細書;米国特許第20150247150号明細書;米国特許第20150
232883号明細書;米国特許第20150232882号明細書;米国特許第201
50203872号明細書;米国特許第20150191744号明細書;米国特許第2
0150184139号明細書;米国特許第20150176064号明細書;米国特許
第20150167000号明細書;米国特許第20150166969号明細書;米国
特許第20150159175号明細書;米国特許第20150159174号明細書;
米国特許第20150093473号明細書;米国特許第20150079681号明細
書;米国特許第20150067922号明細書;米国特許第20150056629号
明細書;米国特許第20150044772号明細書;米国特許第2015002450
0号明細書;米国特許第20150024499号明細書;米国特許第20150020
223号明細書;米国特許第20140356867号明細書;米国特許第201402
95557号明細書;米国特許第20140273235号明細書;米国特許第2014
0273226号明細書;米国特許第20140273037号明細書;米国特許第20
140189896号明細書;米国特許第20140113376号明細書;米国特許第
20140093941号明細書;米国特許第20130330778号明細書;米国特
許第20130288251号明細書;米国特許第20120088676号明細書;米
国特許第20110300538号明細書;米国特許第20110236530号明細書
;米国特許第20110217739号明細書;米国特許第20110002889号明
細書;米国特許第20100076057号明細書;米国特許第20110189776
号明細書;米国特許第20110223638号明細書;米国特許第201301302
48号明細書;米国特許第20150050699号明細書;米国特許第2015007
1899号明細書;米国特許第20150050699号明細書;米国特許第20150
045546号明細書;米国特許第20150031134号明細書;米国特許第201
50024500号明細書;米国特許第20140377868号明細書;米国特許第2
0140357530号明細書;米国特許第20140349400号明細書;米国特許
第20140335620号明細書;米国特許第20140335063号明細書;米国
特許第20140315985号明細書;米国特許第20140310830号明細書;
米国特許第20140310828号明細書;米国特許第20140309487号明細
書;米国特許第20140304853号明細書;米国特許第20140298547号
明細書;米国特許第20140295556号明細書;米国特許第2014029477
3号明細書;米国特許第20140287938号明細書;米国特許第20140273
234号明細書;米国特許第20140273232号明細書;米国特許第201402
73231号明細書;米国特許第20140273230号明細書;米国特許第2014
0271987号明細書;米国特許第20140256046号明細書;米国特許第20
140248702号明細書;米国特許第20140242702号明細書;米国特許第
20140242700号明細書;米国特許第20140242699号明細書;米国特
許第20140242664号明細書;米国特許第20140234972号明細書;米
国特許第20140227787号明細書;米国特許第20140212869号明細書
;米国特許第20140201857号明細書;米国特許第20140199767号明
細書;米国特許第20140189896号明細書;米国特許第20140186958
号明細書;米国特許第20140186919号明細書;米国特許第201401868
43号明細書;米国特許第20140179770号明細書;米国特許第2014017
9006号明細書;米国特許第20140170753号明細書;国際公開第2008/
108989号パンフレット;国際公開第2010/054108号パンフレット;国際
公開第2012/164565号パンフレット;国際公開第2013/098244号パ
ンフレット;国際公開第2013/176772号パンフレット;米国特許第20150
071899号明細書;Makarova et al., "Evolution and classification of the CRIS
PR-Cas systems" 9(6) Nature Reviews Microbiology 467-477 (1-23) (Jun. 2011);Wie
denheft et al., "RNA-guided genetic silencing systems in bacteria and archaea" 4
82 Nature 331-338 (Feb. 16, 2012);Gasiunas et al., "Cas9-crRNA ribonucleoprotei
n complex mediates specific DNA cleavage for adaptive immunity in bacteria" 109(
39) Proceedings of the National Academy of Sciences USA E2579-E2586 (Sep. 4, 201
2);Jinek et al., "A Programmable Dual-RNA-Guided DNA Endonuclease in Adaptive B
acterial Immunity" 337 Science 816-821 (Aug. 17, 2012);Carroll, "A CRISPR Appro
ach to Gene Targeting" 20(9) Molecular Therapy 1658-1660 (Sep. 2012);2012年
5月25日出願の米国特許出願第61/652,086号明細書;Al-Attar et al., Clu
stered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats (CRISPRs): The Hallmark o
f an Ingenious Antiviral Defense Mechanism in Prokaryotes, Biol Chem. (2011) vol
. 392, Issue 4, pp. 277-289;Hale et al., Essential Features and Rational Design
of CRISPR RNAs That Function With the Cas RAMP Module Complex to Cleave RNAs, M
olecular Cell, (2012) vol. 45, Issue 3, 292-302を参照のこと。
【0050】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、DNA結合ドメイン(例えば、ZFN、TA
LEまたはnCas9)とBEドメインとの間にリンカーを含む。これらの融合タンパク
質中で(または連結構造にある融合タンパク質間で)使用され得るリンカーには、融合タ
ンパク質の機能を妨害しない任意の配列が含まれ得る。好ましい実施形態では、リンカー
は短く、例えば、2~20アミノ酸であり、典型的には、柔軟性がある(すなわち、グリ
シン、アラニンおよびセリンなどの、高い程度の自由度を有するアミノ酸を含む)。一部
の実施形態では、リンカーは、GGGS(配列番号46)またはGGGGS(配列番号4
7)からなる1つまたは複数の単位、例えば、GGGS(配列番号47)またはGGGG
S(配列番号46)単位の、2つ、3つ、4つまたはそれよりも多いリピートを含む。他
のリンカー配列もまた使用され得る。
【0051】
一部の実施形態では、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質には、細胞内空間への送
達を促進する細胞透過性ペプチド配列、例えば、HIV由来TATペプチド、ペネトラチ
ン、トランスポータンまたはhCT由来細胞透過性ペプチドが含まれる。例えば、Caron
et al., (2001) Mol Ther. 3(3):310-8;Langel, Cell-Penetrating Peptides: Processe
s and Applications (CRC Press, Boca Raton FL 2002);El-Andaloussi et al., (2005)
Curr Pharm Des. 11(28):3597-611;およびDeshayes et al., (2005) Cell Mol Life Sc
i. 62(16):1839-49を参照のこと。
【0052】
細胞透過性ペプチド(CPP)は、細胞質または他のオルガネラ、例えば、ミトコンド
リアおよび核中への、細胞膜を横切る広範な生体分子の移動を促進する短いペプチドであ
る。CPPによって送達され得る分子の例には、治療的薬物、プラスミドDNA、オリゴ
ヌクレオチド、siRNA、ペプチド核酸(PNA)、タンパク質、ペプチド、ナノ粒子
およびリポソームが含まれる。CPPは、一般には30アミノ酸以下であり、天然に存在
するもしくは天然に存在しないタンパク質またはキメラ配列に由来し、正に荷電したアミ
ノ酸、例えば、リジンもしくはアルギニンの高い相対的存在量、または極性および非極性
アミノ酸の交互のパターンのいずれかを含有する。当該分野で一般に使用されるCPPに
は、Tat(Frankel et al., (1988) Cell. 55:1189-1193、Vives et al., (1997) J. B
iol. Chem. 272:16010-16017)、ペネトラチン(Derossi et al., (1994) J. Biol. Chem
. 269:10444-10450)、ポリアルギニンペプチド配列(Wender et al., (2000) Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA 97:13003-13008、Futaki et al., (2001) J. Biol. Chem. 276:5836-
5840)およびトランスポータン(Pooga et al., (1998) Nat. Biotechnol. 16:857-861)
が含まれる。
【0053】
CPPは、共有結合または非共有結合戦略を介して、それらのカーゴと連結され得る。
化学的架橋(Stetsenko et al., (2000) J. Org. Chem. 65:4900-4909、Gait et al. (20
03) Cell. Mol. Life. Sci. 60:844-853)または融合タンパク質のクローニング(Nagaha
ra et al., (1998) Nat. Med. 4:1449-1453)などの、CPPとそのカーゴとを共有結合
的に繋ぐための方法が、当該分野で公知である。カーゴと、極性および非極性ドメインを
含む短い両親媒性CPPとの間の非共有結合的カップリングは、静電相互作用および疎水
性相互作用を介して確立される。
【0054】
CPPは、細胞中へ、潜在的に治療的な生体分子を送達するために、当該分野で利用さ
れてきた。例には、免疫抑制のための、ポリアルギニンに連結されたシクロスポリン(Ro
thbard et al., (2000) Nature Medicine 6(11):1253-1257)、腫瘍発生を阻害するため
の、MPGと呼ばれるCPPに連結された、サイクリンB1に対するsiRNA(Crombe
z et al., (2007) Biochem Soc. Trans. 35:44-46)、がん細胞の成長を低減させるため
の、CPPに連結された腫瘍抑制因子p53ペプチド(Takenobu et al., (2002) Mol. C
ancer Ther. 1(12):1043-1049、Snyder et al., (2004) PLoS Biol. 2:E36)、および喘
息を処置するための、Tatに融合されたドミナントネガティブ形態のRasまたはホス
ホイノシトール3キナーゼ(PI3K)(Myou et al., (2003) J. Immunol. 171:4399-4
405)が含まれる。
【0055】
CPPは、画像化およびバイオセンシング適用のために、細胞中に造影剤を輸送するた
めに、当該分野で利用されてきた。例えば、Tatに結合された緑色蛍光タンパク質(G
FP)は、がん細胞を標識するために使用されてきた(Shokolenko et al., (2005) DNA
Repair 4(4):511-518)。量子ドットにコンジュゲートされたTatは、ラット脳の可視
化のために、血液脳関門を首尾よく横断するために使用されてきた(Santra et al., (20
05) Chem. Commun. 3144-3146)。CPPは、細胞画像化のための核磁気共鳴画像化技術
とも組み合わされてきた(Liu et al., (2006) Biochem. and Biophys. Res. Comm. 347(
1):133-140)。Ramsey and Flynn, Pharmacol Ther. 2015 Jul 22. pii: S0163-7258(15)
00141-2もまた参照のこと。
【0056】
あるいは、またはさらに、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質は、核局在化配列、
例えば、SV40ラージT抗原NLS(PKKKRRV(配列番号48))およびヌクレ
オプラスミンNLS(KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号49))を含み得る
。他のNLSは、当該分野で公知である;例えば、Cokol et al., EMBO Rep. 2000 Nov 1
5; 1(5): 411-415;Freitas and Cunha, Curr Genomics. 2009 Dec; 10(8): 550-557を参
照のこと。
【0057】
一部の実施形態では、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質は、リガンドに対する高
い親和性を有する部分、例えば、GST、FLAGまたはヘキサヒスチジン配列を含む。
かかる親和性タグは、組換えスプリットデアミナーゼ融合タンパク質の精製を促進するこ
とができる。
【0058】
スプリットデアミナーゼ融合タンパク質が細胞に送達される方法について、これらのタ
ンパク質は、当該分野で公知の任意の方法を使用して、例えば、in vitro翻訳、
または適切な宿主細胞における、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質をコードする核
酸からの発現によって、産生され得る;タンパク質を産生するためのいくつかの方法が、
当該分野で公知である。例えば、タンパク質は、酵母、大腸菌(E. coli)、昆虫細胞株
、植物、トランスジェニック動物または培養哺乳動物細胞において産生され得、それらか
ら精製され得る;例えば、Palomares et al., “Production of Recombinant Proteins:
Challenges and Solutions,” Methods Mol Biol. 2004;267:15-52を参照のこと。さらに
、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質は、任意選択で、タンパク質が細胞の内側に入
ると切断されるリンカーを伴って、細胞中への移行を促進する部分、例えば、脂質ナノ粒
子に連結され得る。例えば、LaFountaine et al., Int J Pharm. 2015 Aug 13;494(1):18
0-194を参照のこと。
【0059】
発現系
本明細書に記載されるスプリットデアミナーゼ融合タンパク質を使用するために、それ
らをコードする核酸からそれらを発現させることが望ましい場合があり得る。これは、種
々の方式で実施され得る。例えば、スプリットデアミナーゼ融合物をコードする核酸は、
複製および/または発現のために、原核生物細胞または真核生物細胞中への形質転換のた
めの中間ベクター中にクローニングされ得る。中間ベクターは、典型的には、スプリット
デアミナーゼ融合タンパク質の産生のためのスプリットデアミナーゼ融合物をコードする
核酸の格納または操作のための、原核生物ベクター、例えば、プラスミド、またはシャト
ルベクター、または昆虫ベクターである。スプリットデアミナーゼ融合タンパク質をコー
ドする核酸はまた、植物細胞、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞もしくはヒト細胞、真
菌細胞、細菌細胞または原生動物細胞への投与のために、発現ベクター中にクローニング
され得る。
【0060】
発現を得るために、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質をコードする配列は、典型
的には、転写を指示するプロモーターを含有する発現ベクター中にサブクローニングされ
る。適切な細菌プロモーターおよび真核生物プロモーターは、当該分野で周知であり、例
えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3d ed. 2001);Kri
egler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);および Current
Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 2010)に記載されている。操
作されたタンパク質を発現させるための細菌発現系は、例えば、大腸菌(E. coli)、バ
チルス種(Bacillus sp.)およびサルモネラ属(Salmonella)において利用可能である(
Palva et al., 1983, Gene 22:229-235)。かかる発現系のためのキットは市販されてい
る。哺乳動物細胞、酵母および昆虫細胞のための真核生物発現系は、当該分野で周知であ
り、市販もされている。
【0061】
核酸の発現を指示するために使用されるプロモーターは、特定の適用に依存する。例え
ば、強い構成的プロモーターは、典型的には、融合タンパク質の発現および精製のために
使用される。対照的に、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質が、遺伝子調節のために
in vivoで投与される場合、構成的または誘導性のいずれかのプロモーターが、ス
プリットデアミナーゼ融合タンパク質の特定の使用に依存して使用され得る。さらに、ス
プリットデアミナーゼ融合タンパク質の投与のための好ましいプロモーターは、弱いプロ
モーター、例えば、HSV TK、または類似の活性を有するプロモーターであり得る。
プロモーターは、トランス活性化に対して応答性のエレメント、例えば、低酸素応答エレ
メント、Gal4応答エレメント、lacリプレッサー応答エレメント、ならびに小分子
制御系、例えば、テトラサイクリン調節系およびRU-486系もまた含み得る(例えば
、Gossen & Bujard, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547;Oligino et al., 19
98, Gene Ther., 5:491-496;Wang et al., 1997, Gene Ther., 4:432-441;Neering et
al., 1996, Blood, 88:1147-55;およびRendahl et al., 1998, Nat. Biotechnol., 16:7
57-761を参照のこと)。
【0062】
プロモーターに加えて、発現ベクターは、典型的には、原核生物または真核生物のいず
れかの宿主細胞における核酸の発現のために必要とされるさらなるエレメントを全て含有
する転写単位または発現カセットを含有する。従って、典型的な発現カセットは、例えば
、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結された
プロモーター、および例えば、転写物の効率的なポリアデニル化、転写終結、リボソーム
結合部位または翻訳終結のために必要とされる任意のシグナルを含有する。カセットのさ
らなるエレメントには、例えば、エンハンサー、および異種スプライスイントロンシグナ
ル(heterologous spliced intronic signal)が含まれ得る。
【0063】
細胞中に遺伝情報を輸送するために使用される特定の発現ベクターは、スプリットデア
ミナーゼ融合タンパク質の意図した使用、例えば、植物、動物、細菌、真菌、原生動物な
どにおける発現に関して選択される。標準的な細菌発現ベクターには、プラスミド、例え
ば、pBR322ベースのプラスミド、pSKF、pET23D、ならびに市販のタグ融
合物発現系、例えば、GSTおよびLacZが含まれる。
【0064】
真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含有する発現ベクター、例えば、SV40ベ
クター、パピローマウイルスベクター、およびエプスタイン・バーウイルスに由来するベ
クターは、真核生物発現ベクターにおいて使用される場合が多い。他の例示的な真核生物
ベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-
5、バキュロウイルスpDSVE、およびSV40初期プロモーター、SV40後期プロ
モーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉
腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核生物細胞における発現
のために有効であることが示されている他のプロモーターの指示の下でタンパク質の発現
を可能にする任意の他のベクターが含まれる。
【0065】
スプリットデアミナーゼ融合タンパク質を発現させるためのベクターは、ガイドRNA
の発現を駆動するRNA Pol IIIプロモーター、例えば、H1、U6または7S
Kプロモーターを含み得る。これらのヒトプロモーターは、プラスミドトランスフェクシ
ョンの後に、哺乳動物細胞におけるスプリットデアミナーゼ融合タンパク質の発現を可能
にする。
【0066】
一部の発現系は、安定にトランスフェクトされた細胞株の選択のためのマーカー、例え
ば、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼおよびジヒドロ葉
酸レダクターゼを有する。ポリヘドリンプロモーターまたは他の強いバキュロウイルスプ
ロモーターの指示の下にあるgRNAコード配列と共に、昆虫細胞においてバキュロウイ
ルスベクターを使用するなどの、高収量の発現系もまた適切である。
【0067】
発現ベクター中に典型的に含まれるエレメントには、大腸菌(E. coli)において機能
するレプリコン、組換えプラスミドを有する細菌の選択を可能にする抗生物質耐性をコー
ドする遺伝子、および組換え配列の挿入を可能にするプラスミドの非必須領域中の独自の
制限部位もまた含まれる。
【0068】
標準的なトランスフェクション法は、標準的な技術を使用して次いで精製される大量の
タンパク質を発現する細菌、哺乳動物、酵母または昆虫の細胞株を産生するために使用さ
れる(例えば、Colley et al., 1989, J. Biol. Chem., 264:17619-22;Guide to Protei
n Purification, in Methods in Enzymology, vol. 182 (Deutscher, ed., 1990)を参照
のこと)。真核生物細胞および原核生物細胞の形質転換は、標準的な技術に従って実施さ
れる(例えば、Morrison, 1977, J. Bacteriol. 132:349-351;Clark-Curtiss & Curtiss
, Methods in Enzymology 101:347-362 (Wu et al., eds, 1983)を参照のこと)。
【0069】
外来ヌクレオチド配列を宿主細胞中に導入するための公知の手順のいずれかが使用され
得る。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラス
ト融合、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リポソーム、マイクロインジ
ェクション、ネイキッドDNA、プラスミドベクター、エピソームおよび組込みの両方の
ウイルスベクター、ならびにクローニングされたゲノムDNA、cDNA、合成DNAま
たは他の外来遺伝子材料を宿主細胞中に導入するための他の周知の方法のいずれかの使用
が含まれる(例えば、Sambrook et al.、上記を参照のこと)。使用される特定の遺伝子
操作手順が、少なくとも1つの遺伝子を、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質を発現
することが可能な宿主細胞中に首尾よく導入できることだけが必要である。
【0070】
あるいは、本方法は、スプリットデアミナーゼ融合タンパク質およびガイドRNAを、
例えば、複合体として、一緒に送達することを含み得る。例えば、スプリットデアミナー
ゼ融合タンパク質およびgRNAは、宿主細胞において過剰発現され得、精製され得、次
いで、リボ核タンパク質(RNP)を形成するためにガイドRNAと(例えば、試験管中
で)複合体化され得、細胞に送達され得る。一部の実施形態では、スプリットデアミナー
ゼ融合タンパク質は、細菌発現プラスミドの使用を介して、細菌において発現され得、そ
こから精製され得る。例えば、Hisタグ化スプリットデアミナーゼ融合タンパク質は、
細菌細胞において発現され得、次いで、ニッケルアフィニティークロマトグラフィーを使
用して精製され得る。RNPの使用は、ヌクレアーゼもしくはガイドをコードする、また
はヌクレアーゼをmRNAとしてコードするプラスミドDNAを送達する必要性を回避す
る。RNP送達は、特異性も改善し得るが、これはおそらくは、RNPの半減期がより短
く、ヌクレアーゼおよびガイドの持続的な発現(プラスミドから得られるような)が存在
しないからである。RNPは、例えば、脂質媒介性トランスフェクションまたはエレクト
ロポレーションを使用して、in vivoまたはin vitroで細胞に送達され得
る。例えば、Liang et al. "Rapid and highly efficient mammalian cell engineering
via Cas9 protein transfection." Journal of biotechnology 208 (2015): 44-53;Zuri
s, John A., et al. "Cationic lipid-mediated delivery of proteins enables efficie
nt protein-based genome editing in vitro and in vivo." Nature biotechnology 33.1
(2015): 73-80;Kim et al. "Highly efficient RNA-guided genome editing in human
cells via delivery of purified Cas9 ribonucleoproteins." Genome research 24.6 (2
014): 1012-1019を参照のこと。
【0071】
本発明は、例えば、本明細書に記載される方法における使用のための、ベクター、およ
びベクターを含む細胞、ならびに本明細書に記載されるタンパク質および核酸を含むキッ
トもまた含む。
【0072】
ベータ-サラセミアを処置する
ベータ-サラセミアは、ベータ-グロビン鎖の合成における遺伝的欠損を特徴とする遺
伝性障害の一群である。罹患した個体が変異についてホモ接合性である重症型サラセミア
は、輸血を必要とする重症貧血と関連する。軽症型サラセミアは、最も重症度が低く、典
型的には処置を必要としないが、軽症型サラセミアと重症型サラセミアとの間の重症度の
レベルを有するものは、中間型サラセミアを有すると言われる。例えば、Cao and Galane
llo, Genetics in Medicine 12, 61-76 (2010)を参照のこと。
【0073】
hAPOBEC3A変異体、例えば、N57GもしくはN57AもしくはN57Qまた
はK60AもしくはK60DまたはY130Fは、本明細書に記載されるBE3構造中の
融合タンパク質として、例えば、一部の東アジア人集団において一般的なベータ-サラセ
ミア変異HBB-28(A>G)を有する対象において、治療として使用され得る(Lian
g et al., Protein Cell. 2017 Nov;8(11):811-822を参照のこと)。この変異を有する対
象を同定するための方法は、当該分野で公知である;例えば、Saetung et al., Southeas
t Asian J Trop Med Public Health. 2013 Nov;44(6):1055-64;Liu et al., Hemoglobin
. 2015;39(1):18-23;Doro et al., Hemoglobin. 2017 Mar;41(2):96-99;Zhang et al.,
BMJ Open. 2017 Jan 31;7(1):e013367を参照のこと。本方法は、CD34+造血幹細胞
および前駆体細胞(HSPC)を動員し、次いでそれらを抽出することを含み得る(例え
ば、Bonig and Papayannopoulou, Methods Mol Biol. 2012; 904: 1-14;Jin, et al., B
ioMed Research International, vol. 2014, Article ID 435215, 9 pages, 2014を参照
のこと)。次いで、HSPCは、塩基エディタータンパク質をコードするmRNAを導入
することによって、または精製された塩基エディタータンパク質+ガイド(例えば、RN
P)を使用することによって、ex vivoで(対象の身体の外側で)改変される。こ
れらの細胞は、増殖させるために、例えば数日間にわたって培養物中で維持され得、その
後、改変された細胞が、対象に、注入により戻される。対象はまた、改変された細胞が良
好に生着することを確実にするために、注入前に骨髄破壊され得る(Sullivan, Keith M.
, et al., New England Journal of Medicine 378.1 (2018): 35-47を参照のこと)。次
いで、改変された幹細胞は、対象の骨髄中に生着し、ベータ-サラセミアフリーの赤血球
を産生することができる。
【0074】
本明細書に記載されるように、本発明者らは、APO3A N57G BE3が、一部
の東アジア人集団において一般的なβ-サラセミア原因対立遺伝子HBB-28(A>G
)における単一ヌクレオチド編集を効率的に誘導できるかどうかを調査した。本発明者ら
は、疾患原因HBB-28(A>G)プロモーター対立遺伝子の、単独で組み込まれた2
00bp断片を有するHEK293Tモデル細胞株を最初に創出し、APO3A N57
G BE3が、BE3またはYE BE3誘導体と比較して、-28(A>G)位におけ
る単一ヌクレオチド編集(センス鎖に影響を与えるための、アンチセンス鎖に対する編集
)をより効率的に誘導できるかどうかを試験した。予想されるように、APO3A N5
7G BE3は、HBB-25バイスタンダーモチーフにおいて有意により少ない編集事
象を誘導したが、-28(A>G)コグネートモチーフでは高い編集活性を維持した。B
E3による編集は、0.57%の完全に修正された対立遺伝子を生じた。BE3による、
編集ウインドウ中のHBB-25シチジンの脱アミノ化は、それぞれ、対立遺伝子の11
.5%および1.8%において、原因β-サラセミア変異HBB-25(G>T)および
(G>C)変異を生じる。BE3による編集後に、総対立遺伝子の15.2%において存
在する産物-25(G>A)もまた、独立したβ-サラセミア表現型を生じ得るが、これ
は、臨床的にはいまだ確認されていない。逆に、HBB-28(A>G)部位におけるA
PO3A N57G BE3による編集は、BE3よりも40倍大きい、22.5%の完
全に修正された対立遺伝子を生じ、3.96%の、-25位における総編集率を生じた。
【実施例0075】
本発明は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない以下の実施例におい
てさらに記載される。
【0076】
材料および方法
プラスミドおよびオリゴヌクレオチド
アミノ酸置換を含有するBE発現プラスミドを、PCRおよび標準的な分子クローニン
グ法によって生成した。gRNA発現プラスミドを、アニーリングしたオリゴヌクレオチ
ド二重鎖を、BsmBIで切断したMLM3636中にライゲーションすることによって
構築した。HBB-28(A>G)およびCTNNB1部位を標的化するものを除く全て
のgRNAを、5’グアニンヌクレオチドを含有する部位を標的化するように設計した。
【0077】
ヒト細胞の培養およびトランスフェクション
EGFP-PESTレポーター遺伝子の単一の安定に組み込まれたコピーを含有する2
OS.EGFP細胞、およびHEK293T細胞を、10%熱不活性化胎仔ウシ血清、2
mM GlutaMax、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補充したDMEM中で
、5%COで37℃で培養した。U2OS.EGFP細胞用の培地には、400μg
ml-1のGeneticinを補充した。細胞株のアイデンティティーを、STRプロ
ファイリング(ATCC)によって検証し、細胞を、マイコプラズマ混入について定期的
に試験した。U2OS.EGFP細胞に、DN-100プログラムおよびSE細胞株キッ
トをLonza 4-D Nucleofectorで使用して、製造業者の推奨に従っ
て、BEを発現するプラスミド750ngおよびsgRNAを発現するプラスミド250
ngをトランスフェクトした。HEK293Tトランスフェクションについて、75,0
00個の細胞を、24ウェルプレート中に播種し、18時間後、製造業者の推奨に従って
TransIT-293(Mirus)を使用して、BEを発現するプラスミド600n
gおよびsgRNAを発現するプラスミド200ngをトランスフェクトした。全ての標
的化されたアンプリコン配列決定およびGUIDE-seq実験のために、ゲノムDNA
を、トランスフェクションの72時間後に抽出した。細胞を、100mM Tris-H
Cl pH8.0、150mM NaCl、5mM EDTAおよび0.05%SDSを
含有する溶解緩衝液中で溶解させ、250rpmで振盪しているインキュベーター中で5
5℃で一晩インキュベートした。2.5M NaClおよび18%PEG-6000中に
再懸濁されたカルボキシル改変Sera-Mag Magnetic Speed-be
ads(磁気ビーズ)を使用して、溶解された細胞からゲノムDNAを抽出した。
【0078】
HEK293T.HBB細胞株を、レンチウイルスベクター中で、ピューロマイシン耐
性遺伝子の発現を駆動するEF1aプロモーターの上流に、HBBプロモーターの200
塩基対断片をクローニングすることによって構築した。HBB-28(A>G)変異を、
PCRおよび標準的な分子クローニング法によって挿入した。このレンチウイルスベクタ
ーを、293FS細胞中にトランスフェクトし、ウイルス粒子を含有する培地を、72時
間後に回収した。ウイルス粒子を含有する培地を、段階希釈し、およそ1千万個のHEK
293T細胞と共に、10cmプレートに添加した。48時間後、培地に、2.5μg
ml-1のピューロマイシンを補充し、細胞を、最も少ない生存コロニーを有する10c
mプレートから回収して、単一コピーの組込みを確実にした。
【0079】
オフターゲット部位選択およびアンプリコン設計
本明細書で特徴付けた部位のうち2つ、EMX1部位1およびFANCFは、BE3特
異的オフターゲット部位を発見するための偏りがないアプローチである改変型Digen
ome-seqによって以前に特徴付けられた。改変型Digenome-seqによっ
て発見された全てのオフターゲットを調査したが、これらの部位は、BE3を使用してd
e novoで発見されたので、最も網羅的なオフターゲット特徴付けを表す。VEGF
A部位2標的は、GUIDE-seqによって以前に特徴付けられたプロミスキャスなホ
モポリマー性gRNAである。VEGFA部位2 gRNAは、100個を超えるヌクレ
アーゼオフターゲット部位を有するので、本発明者らは、本発明者らが本明細書での特徴
付けのために独自のPCR増幅プライマーを設計できた遺伝子座中にも存在する、最も高
い数のGUIDE-seq読み取りを有する20個のオフターゲット部位を選択した。C
TNNB1およびHBB-28(A>G)gRNAは、BEまたはヌクレアーゼオフター
ゲット部位に関して以前には特徴付けられていない。本発明者らは、これらのgRNAを
使用して、以前に記載されたように17、GUIDE-seqを実施して、SpCas9
ヌクレアーゼオフターゲット部位を決定し、Cas-OFFinderを使用して、1つ
のRNAバルジおよび1つのミスマッチを有する潜在的オフターゲット部位を全て予測し
た(GUIDE-seqおよびCas-OFFinder分析は、hg38参照ゲノムを
使用して実施した)。このクラスのオフターゲットは、ヌクレアーゼと比較して、BE3
においてより優勢であり16、従って、本発明者らがGUIDE-seqによって発見す
る可能性が低かった部位である。潜在的な編集されたシチジンが、Illumina H
TS読み取りの最初の100塩基対内に入るように、プライマーを、全てのオフターゲッ
ト部位を増幅するように設計した。EMX1部位1、VEGFA部位2およびCTNNB
1部位1オフターゲット部位を包含する合計で6つのプライマー対は、それらの意図した
アンプリコンを増幅せず、従って、さらなる分析からは排除した。
【0080】
統計的試験
全ての統計的試験は、サンプル間の等分散を仮定せずに、Benjamini、Kri
egerおよびYekutieliの方法に従って、両側スチューデントt検定を使用し
て実施した。
【0081】
標的化されたアンプリコン配列決定
オンターゲット部位およびオフターゲット部位を、各条件について、3つの生物学的反
復試料からの約100ngのゲノムDNAから増幅した。PCR増幅は、Phusion
High Fidelity DNA Polymerase(NEB)を用いて実施
した。50μlのPCR反応を、1×体積の磁気ビーズを用いて精製した。増幅忠実度を
、Qiaxcel機器でのキャピラリー電気泳動によって検証した。直交性配列を有する
アンプリコンを、各三連のトランスフェクションについてプールし、Illuminaフ
ローセル適合性アダプターを、NEBNext Ultra II DNA Libra
ry Prepキットを製造業者の指示に従って使用して付加した。Illumina
i5およびi7インデックスを、NEBNext Multiplex Oligos
for Illuminaのプライマー(Dual Index Primers Se
t 1)を使用するQ5 High Fidelity DNA Polymerase
を用いたさらなる10サイクルのPCRによって付加し、0.7×体積の磁気ビーズを使
用して精製した。Illumina適合性アダプターおよびインデックスを含有する最終
アンプリコンライブラリーを、液滴デジタルPCRによって定量化し、Illumina
MiSeq機器での150bpのペアードエンド読み取りを用いて配列決定した。配列
決定読み取りを、MiSeq Reporterによって逆多重化し、次いで、改変バー
ジョンのCRISPRessoによって、各位置における塩基頻度について分析した28
。インデルを、各sgRNAについての予測された切断部位周辺の10塩基対ウインドウ
に置いて定量化した。
【0082】
HBB-28(A>G)gRNAの発現
ゲノムワイドのオフターゲット編集を減少させるHF1またはHypa変異を有するe
A3A BEを使用するために、スペーサーと標的部位との間にミスマッチを有さないg
RNA中の20ヌクレオチドのスペーサー配列を使用することが必要であった。本発明者
らは、+1位のグアニンヌクレオチドにおいて転写を優先的に開始するU6プロモーター
を使用して、プラスミドからHBB-28(A>G)gRNAを発現させた。スペーサー
と標的部位との間の完全なマッチングを保つために、本発明者らは、スペーサーの5’側
においてミスマッチしたグアニンを除去することができる自己切断性5’ハンマーヘッド
型リボザイムを追加した。
【0083】
例示的なタンパク質配列
rAPOBEC1-XTEN L8-nCas9-UGI-SV40 NLS
【0084】
【化1】
【0085】
ウラシルグリコシラーゼインヒビター(UGI)
【0086】
【化2】
【0087】
hAID
【0088】
【化3】
【0089】
N末端RNA結合領域を欠如するhAIDv溶解度バリアント
【0090】
【化4】
【0091】
N末端RNA結合領域およびC末端のあまり構造化されていない領域を欠如するhAID
v溶解度バリアント
【0092】
【化5】
【0093】
rAPOBEC1
【0094】
【化6】
【0095】
mAPOBEC3
【0096】
【化7】
【0097】
mAPOBEC3触媒ドメイン
【0098】
【化8】
【0099】
hAPOBEC3A
【0100】
【化9】
【0101】
hAPOBEC3G
【0102】
【化10】
【0103】
hAPOBEC3G触媒ドメイン
【0104】
【化11】
【0105】
hAPOBEC3H
【0106】
【化12】
【0107】
hAPOBEC3F
【0108】
【化13】
【0109】
hAPOBEC3F触媒ドメイン
【0110】
【化14】
【0111】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)Cas9
【0112】
【化15】
【0113】
カンピロバクター・ジェジュニ(C. jejuni)Cas9
【0114】
【化16】
【0115】
パルビバクラム・ラバメンチボランス(P. lavamentivorans)Cas9
【0116】
【化17】
【0117】
ナイセリア・シネレア(N. cinerea)Cas9
【0118】
【化18】
【0119】
カンピロバクター・ラリ(C. lari)Cas9
【0120】
【化19】
【0121】
[実施例1]
標的化された塩基編集テクノロジーのゲノムワイドの特異性を改善する
野生型シチジンデアミナーゼドメインは、2~3ヌクレオチドのモチーフに対する固有
の基質配列特異性を有する(表1を参照のこと)。APOBEC酵素は、認識ループ1(
RL1)およびループ7と呼ばれる可変性の配列組成を有する2つの認識ループ中の残基
間で形成される直接的接触を介して、それらのコグネート配列モチーフを認識する12~
13、17~22(表2、図2A~2Bおよび図3A~3Bを参照のこと)。例えば、A
PO3A基質配列特異性の主要な決定基は、ループ7中の残基D131であり、これは、
5’TCモチーフ中のチミンと、2つの水素結合を形成する。APO3Aの特異性を改変
するために、本発明者らは、131位における残基のアイデンティティーを、塩基特異的
接触を形成することが以前に実証された残基へと変更させた(表7)43
【0122】
表1に列挙された全ての他のAPOBECデアミナーゼの特異性を変更するために、本
発明者らは、APO3Aに対する配列アラインメントによって同定された、これらのタン
パク質の各々からの相同な残基を変更させた。
【0123】
野生型APO3Aは、5’TcRモチーフに対する固有の配列特異性を有するが、より
低い効率で5’AcR、5’GcRおよび5’CcRモチーフ(ここで、小文字のCは、
脱アミノ化される残基である)を脱アミノ化することができる。これは、TcGまたはT
cAモチーフのみが効率的に脱アミノ化されるように、APO3Aとその基質ssDNA
との間で形成される接触の形態で過剰な結合エネルギーを除去することによって、そのカ
ノニカルTcR基質モチーフに対するより高い特異性を有するようにAPO3Aを操作す
ることが可能であり得ることを示唆している。基質ssDNAに結合したAPO3Aの結
晶構造21に基づいて、本発明者らは、それらを変更することで、より特異的なデアミナ
ーゼが生じ得るように、そのDNA接触が顕著な非特異的基質結合エネルギーに寄与し得
る候補残基として、R28およびK30(これらは、半特異的様式で、TCRのすぐ3’
側の塩基に接触すると考えられる)ならびにN57、R60およびY130(これらは全
て、非塩基特異的様式でssDNA基質骨格と接触する)を同定した。本発明者らはまた
、標的シトシン塩基がその中に嵌まる疎水性ポケットの形成に寄与する残基としてW98
を同定し、W98Yが、デアミナーゼ活性を保持しつつこのポケットの疎水性を減少させ
、それによって、Tcモチーフの脱アミノ化に必要とされる結合エネルギーを上回る任意
の可能な過剰な結合エネルギーを減少させると仮説を立てた。複数のAPOBECホモロ
グおよびオルソログが、配列レベルでAPO3Aに対する顕著な類似性を有するので、本
発明者らは、これらのタンパク質の各々に対する基質配列特異性を増加させると予測され
るコグネート残基もまた同定した。
【0124】
本発明者らが、TcRモチーフに対する増加した特異性を有する操作された塩基編集タ
ンパク質に寄与することができると仮説を立てた変異を検証するために、本発明者らは、
哺乳動物細胞におけるタンパク質過剰発現のために、プラスミドベクター中に、APO3
A中に単一残基置換を有するAPO3A-nCas9-UGIタンパク質をコードする遺
伝子をクローニングした。次いで、本発明者らは、単一の組み込まれたEGFP遺伝子内
の脱アミノ化基質として作用することが可能な複数のトリヌクレオチドモチーフを有する
2つの別個の部位のうち1つを標的化するガイドRNAを発現するように設計したプラス
ミドと組み合わせて、ヒトU2OS細胞中に、これらのプラスミドベクターをトランスフ
ェクトした。72時間後、本発明者らは、トランスフェクトされたU2OS集団からゲノ
ムDNAを回収し、ガイドRNAゲノム標的部位においてハイスループットアンプリコン
配列決定を実施した。本発明者らは、野生型APO3Aタンパク質をnCas9-UGI
に融合させた場合、得られたタンパク質が、予測されたTcRモチーフにある標的部位に
おいてであるが、標的部位に存在するGcTおよびGcGモチーフに対しても、C>T遷
移をもたらすことができることが見出された(図4)。しかし、N57またはK60を表
7に列挙された残基に変異させた場合、本発明者らは、編集ウインドウ中に存在するオン
ターゲットTcGにおいてロバストな脱アミノ化を観察したが、塩基編集ウインドウの外
側および編集ウインドウ中に存在するGcTモチーフにおいて、これらのタンパク質がモ
チーフを標的化する能力の有意な減少を観察した。特に、APO3A N57A-nCa
s9-UGIおよびAPO3A K60D-nCas9-UGIは、編集ウインドウTc
Gに対してロバストな活性を保持し、編集ウインドウGcTモチーフに対しては、低い~
非常に低い活性を保持した(図5)。EGFP部位1の編集ウインドウ中におけるTcG
のGcTに対する優先性のこの増加を定量的に評価するために、本発明者らは、編集ウイ
ンドウ中のTcGモチーフにおける脱アミノ化頻度を、編集ウインドウ中のGcTモチー
フの脱アミノ化頻度によって除算して、これらのタンパク質についての特異性比を決定し
た(図6)。本発明者らは、APO3A N57A-nCas9-UGIおよびAPO3
A K60D/E/N-nCas9-UGIが両方とも、野生型APO3A-nCas9
-UGIタンパク質と比較して、GcTモチーフではなくTcGモチーフを選ぶ特異性の
増加を示したことを見出した。次いで、本発明者らは、EGFP部位2、GcA、AcA
、AcC、CcC、CcAおよびGcGモチーフを有する標的部位、ならびに編集ウイン
ドウの外側のTcGモチーフに対するこれらのタンパク質の活性を評価した。以前に記載
された変異体の各々が、標的部位中のこれらのオフターゲットモチーフの各々に対する有
意に減少した活性、ならびに編集ウインドウの外側で見出されるオンターゲットTCGモ
チーフに対する減少した活性を示した(図7図8)。
【0125】
そのssDNA基質との複合体中のAPO3Aの結晶構造21に基づいて、本発明者ら
は、K30が、TcGモチーフ中の3番目のヌクレオチドと塩基特異的に接触すると判定
した。本発明者らは、この位置において残基に対してなされた変異が、トリヌクレオチド
基質モチーフ中のAPO3A-nCas9-UGIによって認識される3番目のヌクレオ
チドのアイデンティティーを変更させると仮説を立てた。本発明者らは、30位における
残基のアイデンティティーが、基質モチーフ中の3番目のヌクレオチドのアイデンティテ
ィーに顕著に影響すると予測するので、本発明者らは、本発明者らが表9中の特定の塩基
に接触すると予測する残基を決定した。
【0126】
塩基エディタータンパク質をコードする得られたプラスミドDNAを、一過的トランス
フェクションによって、染色体に組み込まれたEGFP遺伝子を標的化するgRNAをコ
ードするプラスミドと一緒にヒト細胞に送達した場合、APO3A中の種々の残基に対し
てなされた変異(表9)は、様々な程度まで、配列優先性を回復することができた(図9
)。本発明者らは、表7に列挙された位置に対する変異を組み合わせ、プラスミドの一過
的トランスフェクションによってBEタンパク質を同じEGFP標的部位へと標的化する
ことによって、そのコグネート5’TCモチーフに対するAPO3Aの特異性を増強でき
、APO3A N57AまたはN57G BE3と類似のモチーフ特異性を有するAPO
3A N57Q/Y130F BE3バリアント(図10)を生じることもまた見出した
【0127】
本発明者らは、別のノンコグネート5’VC(ここで、V=A、CまたはGである)に
加えて、編集ウインドウ中にコグネート5’TCモチーフを含有する12個の内因性ゲノ
ム部位において、APO3A N57AもしくはN57Gまたは(N57Q/Y130F
)BE3の活性をスクリーニングし、それらを、BE3ならびに技術水準の操作されたバ
リアントYE1、YE2およびYEE BE3(YE BE3)に対して比較したが、こ
れは、ラットAPOBEC1(rAPO1)デアミナーゼドメイン中に、BE3と比較し
てその速度論的速度を緩徐化し、その編集ウインドウの長さを制限する点変異を取り込む
ことによってかかるバイスタンダー変異の頻度を減少させる44。本発明者らは、12個
の部位のうち8個において、操作されたAPO3A BE3バリアントが、ノンコグネー
ト5’VCモチーフの5倍~264倍、コグネートモチーフにおけるCからTへの編集を
誘導したことを見出した(図11~12)。しかし、操作されたAPO3A BE3バリ
アントは、残り4つの部位において、5未満の比でコグネート:ノンコグネート編集を誘
導した。
【0128】
本発明者らは次に、相同なタンパク質の触媒速度および処理能力に影響することが以前
に示された残基において、APO3A N57G BE3への変異を追加することによっ
て、これらの部位において配列特異的脱アミノ化を改善しようとした(表10)。YE
BE3タンパク質に由来する個々の相同な変異の追加は、APO3A N57G二重変異
体の配列特異性を顕著に増加させなかったが、残基A71およびI96に対してなされた
変異は、試験した3つの部位について、コグネート:ノンコグネート編集比を、5未満か
らおよそ13まで大きく増加させた(図13)。
【0129】
決定的なことに、これらの変異の正確な性質は、送達モダリティに依存した様式で異な
り得る。例えば、リボ核タンパク質(RNP)による、またはmRNA中にコードされた
これらの試薬の送達は、細胞中でのタンパク質のより短い持続時間を生じ得る。細胞中で
の塩基エディタータンパク質のより短い持続時間は、例えばプラスミドトランスフェクシ
ョンによるより長く続く送達と比較して、異なる変異スペクトルを生じ得る45。結果と
して、プラスミドによって送達した場合には最適未満の配列特異性を保持するが、より短
く続くモダリティによって送達した場合には最適な配列特異性を保持する操作されたシチ
ジンデアミナーゼBE、例えば、APO3A N57QまたはK60DまたはY130F
BE3を使用することが必要であり得る。
【0130】
操作されたバリアントAPO3A N57G BE3はまた、野生型APO3A BE
3およびBE3と比較して、オフターゲット部位における増加したゲノムワイドの忠実度
を示した。本発明者らは、十分に特徴付けられたEMX1(図14)またはFANCF
gRNA(図15)を発現するプラスミドと一緒に、APO3A BE3、APO3A
N57G BE3またはBE3をコードするプラスミドDNAを、細胞に一過的にトラン
スフェクトした。BE3は、EMX1については25個の以前に同定されたオフターゲッ
ト部位のうち16個において、FANCFについては15個のオフターゲット部位のうち
3つにおいて、ハイスループット配列決定によって検出可能な編集を誘導した。逆に、A
PO3A N57G BE3は、EMX1については6/25の部位、FANCFについ
ては0/15の部位において編集を誘導した。APO3A N57G BE3がオフター
ゲット編集を誘導した部位では、これは、BE3と比較して、大きく低減された頻度でで
あった。HF1またはHypa SpCas9からの高忠実度変異の、APO3A N5
7G BE3への追加は、アッセイの検出閾値を下回るまで、全てのオフターゲット編集
を低減させた。
【0131】
最後に、本発明者らは、APO3A N57G塩基エディターが、ベータ-サラセミア
変異HBB-28(A>G)をより効率的に修正するために使用することができるかどう
かを決定しようとした。アンチセンス鎖上のこの変異を標的化するgRNA(CTGAC
TTTATGCCCAGCCC(ここで、太字の小文字「c」は、標的シトシンである
))では、5’Aが先行する2番目のシチジン(バイスタンダーシチジン)が、-28位
における5’Tが先行する標的シチジンに加えて、編集ウインドウ中に存在する。バイス
タンダーシチジンの変異は、独立したベータサラセミア表現型を生じ、HBB-28(A
>G)変異については、なんらかの潜在的治療で回避すべきである。本発明者らは、HB
B-28(A>G)変異をコードするHBBプロモーターの、レンチウイルスに組み込ま
れた200塩基対断片を有するHEK293細胞中に、BE3またはAPO3A N57
G BE3(ならびに第2のUGIドメインをA3A N57G BE3に追加するもの
、またはHF1もしくはHypa高忠実度変異をnCas9部分に追加するものを含む、
図16に示される他のタンパク質)をコードするプラスミドDNAを一過的にトランスフ
ェクトした。72時間後、本発明者らは、細胞からゲノムDNAを回収し、PCRを使用
して標的部位を増幅し、illuminaハイスループット配列決定によってPCR産物
を配列決定して、標的シチジンおよびバイスタンダーシチジンの両方の脱アミノ化頻度を
試験した。
【0132】
本発明者らは、BE3およびYE BE3タンパク質が、およそ等しい比率で標的シチ
ジンおよびバイスタンダーシチジンの両方を編集したが、APO3A N57G BE3
が、標的シチジンを、バイスタンダーシチジンのおよそ15倍脱アミノ化したことを見出
した(図17)。次いで、本発明者らは、BE3でHBB-28(A>G)部位を編集す
ることが、完全に修正された対立遺伝子(すなわち、-28位は編集されているが、いず
れの他の位置も編集されていない対立遺伝子)を生じた頻度を分析した。BE3は、配列
決定した総対立遺伝子の0.5%の頻度で、完全に編集された対立遺伝子を生じた。逆に
、APO3A N57G BE3で編集することは、BE3で編集することの40倍、配
列決定した対立遺伝子の総計の22%の比率で、完全に編集された対立遺伝子を生じた(
図18)。本発明者らは、次に、APO3A N57G BE3で編集することが、HB
B-28(A>G)gRNAを使用して、BE3よりも少ないオフターゲット脱アミノ化
事象を生じるかどうかを調査した。BE3は、8つのオフターゲット部位のうち3つにお
いて検出可能な脱アミノ化を誘導したが、APO3A N57G BE3は、8つのオフ
ターゲット部位のうちたった1つにおいて編集を誘導した(図19)。従って、操作され
たAPO3A N57G BE3バリアントは、BE3または技術水準のYE BE3タ
ンパク質と比較して、試験した8つの部位においてより少ないオフターゲット効果で、H
BB-28(A>G)疾患原因対立遺伝子をより効率的に修正することができる。
【0133】
さらなる実験では、寄付から回収された、HBB-28(A>G)変異を有するヒト患
者のCD34+HSPCを使用する。精製されたA3A N57G BE3タンパク質を
、ガイドRNAと共に細胞に送達する。5日後、gDNAを抽出し、疾患修正を配列決定
によって評価する。
【0134】
表7に列挙された変異は、そのままで、または任意の可能な組合せで、デアミナーゼタ
ンパク質またはドメインの特異性を増加させるために使用され得る。表8に列挙された変
異は、標的化可能なモチーフ配列を変更するために意図され、変更および増加された基質
配列を有する操作されたデアミナーゼタンパク質またはドメインを創出するために、表7
中の変異のいずれかと組み合わされ得る。さらに、表9に列挙された変異は、トリヌクレ
オチドモチーフ中の1番目または3番目のヌクレオチドに対する変更された特異性を有し
、他の可能な脱アミノ化基質モチーフと比較してその標的モチーフに対する増加した特異
性を有する操作されたデアミナーゼタンパク質を創出するために、表7または表8中に列
挙された変異のいずれかと組み合わされ得る。
【0135】
【表6】
【0136】
表7は、特異性操作のための、顕著な配列および構造類似性を有するAPOBECオル
ソログを示す。これらの例では、APO3Aに対するタンパク質配列アラインメントを使
用して、APO3A位置に対して相同な残基を決定した。変異される6つの残基位置の各
々が、デアミナーゼタンパク質とそのssDNA基質との間の過剰な結合エネルギーを低
減させることによって、そのカノニカルまたは再操作された基質配列に対するそのデアミ
ナーゼドメインの特異性を増加させると予測される1つまたは複数の残基と共に列挙され
る。
【0137】
【表7】
【0138】
これらの例では、APO3Aに対するタンパク質配列アラインメントを使用して、AP
O3A D131に対して相同な残基を決定した。各タンパク質の配列特異性を変更する
と予測される残基変異の位置およびアイデンティティーが、各2ヌクレオチドモチーフに
ついて与えられる。全ての位置情報は、uniprot.orgから得た野生型タンパク
質配列を指す。
【0139】
【表8】
【0140】
これらの例では、APO3Aに対するタンパク質配列アラインメントを使用して、AP
O3A K30に対して相同な残基を決定した。各タンパク質の配列特異性を変更すると
予測される残基変異の位置およびアイデンティティーが、各3ヌクレオチドモチーフにつ
いて与えられる。全ての位置情報は、uniprot.orgから得た野生型タンパク質
配列を指す。
【0141】
【表9】
【0142】
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【0143】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と併せて記載されてきたが、上述の説明は、本発明の範囲を
限定するのではなく例示する意図であり、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定
されることを理解すべきである。他の態様、利点および改変は、以下の特許請求の範囲内
である。
図1
図2A
図2B
図3A-3B】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
2023113672000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載された発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図1】例示的な典型的な高効率塩基編集システムの図。その2つのヌクレアーゼドメインのうち1つにおいて触媒的に不活性化性の変異を有するニック導入性Cas9(nCas9)は、sgRNAの可変性のスペーサー配列によって指示される標的部位に結合する。安定なRループの形成は、脱アミノ化されていない鎖上にssDNA編集ウインドウを創出する。Cas9は、ゲノムDNA中に一本鎖切断を創出し、宿主細胞が、脱アミノ化された鎖を鋳型として使用して損傷を修復するのを促進し、そうして、シトシン→チミン遷移置換に向けて修復を偏らせる。
図2A-2B】図2Aおよび2Bは、それぞれ、認識ループ1(RL1)およびループ7についてのアラインメントを示す図である。両方の領域は、全てのタンパク質にわたって低い保存を示し、各酵素の配列特異性に顕著に寄与することが実験的に実証されている、または相同性に基づいて寄与すると予測される。Blosum62マトリックスによって実施し、Geneiousにおいて可視化したアラインメント。
図3A-3B】APO3AとssDNA基質との間で形成されるタンパク質-DNA接触の図である。RL1残基はマゼンタで示され、ループ7残基は赤で示され、ssDNA基質は黄色で示され、APO3Aの残りの残基は灰色で示される。図3Aは、本発明者らが、本明細書に記載されるデアミナーゼドメイン(配列番号1~9)の特異性を変更または増強するために置換変異をなすことを提案する、RL1およびループ7中の全ての残基の配向を示す。図3Bは、-1位(標的Cに対して)におけるチミンとD131(配列番号10~18)との間で形成される、黒の破線で示される塩基特異的水素結合を示す。PDBコード:5SWW。
図4】APO3A-nCas9-UGIタンパク質を、ゲノムに組み込まれたEGFP遺伝子内の部位を標的化するガイドRNA(配列番号19)と共に、U2OS細胞において過剰発現させたグラフである。72時間後、ゲノムDNAをこれらの細胞から抽出し、Illumina配列決定に供した。スペーサー内の各シトシンヌクレオチドについてのC>T遷移の頻度を、単一残基置換を有する15個のAPO3Aバリアントの各々についてプロットした。
図5】APO3A-nCas9-UGIタンパク質を、ゲノムに組み込まれたEGFP遺伝子内の部位を標的化するガイドRNA(配列番号19)と共に、U2OS細胞において過剰発現させたグラフである。72時間後、ゲノムDNAをこれらの細胞から抽出し、Illumina配列決定に供した。スペーサー内の各シトシンヌクレオチドについてのC>T遷移の頻度を、N57またはK60において単一残基置換を有するAPO3A-nCas9-UGIタンパク質についてプロットした。これらのタンパク質の各々は、野生型塩基エディタータンパク質と比較して減少された効率で、編集ウインドウ内のオフターゲットGCTモチーフを脱アミノ化したが、編集ウインドウ内のオンターゲットTCGモチーフにおいては効率的な脱アミノ化活性を保持した。
図6】EGFP部位1におけるオンターゲットTCGおよびオフターゲットGCTモチーフ(共に編集ウインドウ中にある)についてのシトシンからチミンへの編集効率の比が、単一残基置換を有するAPO3A-nCas9-UGIタンパク質の各々についてプロットされたグラフである。N57またはK60置換を有するタンパク質は、野生型APO3A塩基エディタータンパク質と比較して、増加した特異性比を有する。
図7】APO3A-nCas9-UGIタンパク質を、ゲノムに組み込まれたEGFP遺伝子内の部位を標的化するガイドRNA(配列番号20)と共に、U2OS細胞において過剰発現させたグラフである。72時間後、ゲノムDNAをこれらの細胞から抽出し、Illumina配列決定に供した。スペーサー内の各シトシンヌクレオチドについてのC>T遷移の頻度を、各塩基エディタータンパク質についてプロットした。
図8】EGFP部位2標的の編集ウインドウ内の全てのシトシン(これらは全て、オフターゲットトリヌクレオチドモチーフ中に存在する)についての、シトシンからチミンへの累積遷移頻度が、各塩基エディタータンパク質についてプロットされたグラフである。N57およびK60において単一残基置換を有するAPO3A塩基エディタータンパク質は、この標的部位の編集ウインドウ中に存在するオフターゲットシトシンを脱アミノ化する能力が顕著に減少されている。特に、APO3A N57Aは、この部位においてデアミナーゼ活性を全く示さなかった。
図9】安定に組み込まれたEGFP遺伝子を有するU2OS細胞に、EGFPを標的化するガイド(配列番号22)および示された塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドをトランスフェクトしたグラフである。72時間後、ゲノムDNAを細胞から抽出し、標的部位をPCRによって増幅し、PCR産物を、ハイスループットIllumina配列決定に供した。コグネートおよびノンコグネートモチーフにおけるCからTへの遷移の頻度を、トランスフェクション条件の各々についてプロットした。hAPOBEC3A(APO3A)N57に対してなされた変異は、塩基エディター構造中のデアミナーゼドメインの配列特異性を回復することにおいて、非常に有効であった。
図10】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトしたグラフである。2つの置換を有するAPO3A BE3タンパク質は一般に、試験した両方のgRNA中のコグネートモチーフにおける顕著な活性を喪失した。しかし、APO3A N57Q/Y130F塩基エディター3(BE3)二重変異体は、ノンコグネートモチーフにおける脱アミノ化の頻度を顕著に減少させつつ、両方のgRNAのコグネートモチーフに対する活性を保持した。
図11】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした図である。72時間後、ゲノムDNAを抽出し、標的部位をPCRによって増幅し、PCR産物を、ハイスループットIllumina配列決定に供した。20ヌクレオチドのスペーサー配列内の全てのシチジンについてのCからTへの遷移の頻度が、ヒートマップ形式でプロットされる。3つ全てのAPO3A BE3タンパク質が、BE3ならびに操作されたバリアントYE1、YE2およびYEE BE3(YE BE3)と比較して、コグネートモチーフに向けて脱アミノ化を強力に偏らせることができ、これは、ラットAPOBEC1(rAPO1)デアミナーゼドメイン中に、BE3と比較してその速度論的速度を緩徐化し、その編集ウインドウの長さを制限する点変異を取り込むことによってかかるバイスタンダー変異の頻度を減少させる44。参照配列、配列番号23~28。
図12】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした図である。72時間後、ゲノムDNAを抽出し、標的部位をPCRによって増幅し、PCR産物を、ハイスループットIllumina配列決定に供した。20ヌクレオチドのスペーサー配列内の全てのシチジンについてのCからTへの遷移の頻度が、ヒートマップ形式でプロットされる。3つ全てのAPO3A BE3タンパク質が、BE3およびYE BE3タンパク質と比較して、コグネートモチーフに向けて脱アミノ化を強力に偏らせることができた。参照配列、配列番号29~34。
図13】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした図である。サンプルを、以前に概説したように処理した。N57Gに加えてA71またはI96に対する変異を有するAPO3A BE3タンパク質は、ノンコグネートモチーフにおける脱アミノ化頻度を大きく減少させた。各部位についてのコグネート対ノンコグネートの編集の比を、バリアント塩基エディタータンパク質の各々に関して3つ全ての部位についてプロットしたところ、APO3A N57G I96T BE3が、試験した3つの部位の各々についておよそ13のコグネート:ノンコグネート編集比を達成したことが実証された。参照配列、配列番号35~37。
図14】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトしたグラフである。サンプルを、以前に概説したように処理した。プロットされた脱アミノ化頻度を得るために、編集ウインドウ内に入るシチジンについての全てのCからTへの遷移頻度を合計した。APO3A BE3は、25個のオフターゲット部位のうち16個において、非常に高いレベルの脱アミノ化を誘導した。BE3は、より低い頻度でではあるが、APO3A BE3と同じオフターゲット部位において脱アミノ化を誘導した。APO3A N57G BE3は、25個の部位のうち6個のみにおいてインデルを誘導し、これら6個の部位では、BE3よりもかなり低い頻度であった。
図15】HEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトしたグラフである。サンプルを、以前に概説したように処理した。プロットされた脱アミノ化頻度を得るために、編集ウインドウ内に入るシチジンについての全てのCからTへの遷移頻度を合計した。APO3A BE3は、15個のオフターゲット部位のうち3個において、非常に高いレベルの脱アミノ化を誘導した。BE3は、より低い頻度でではあるが、APO3A BE3と同じオフターゲット部位において脱アミノ化を誘導した。APO3A N57G BE3は、15個の調査したオフターゲット部位のいずれにおいても、脱アミノ化を誘導しなかった。
図16】塩基エディタータンパク質を用いてHBB-28(A>G)疾患対立遺伝子を標的化することから生じる潜在的対立遺伝子産物を示す模式図。編集ウインドウ中に存在する-25バイスタンダーシチジンの変異は、-28位における編集とは独立して、ベータ-サラセミア表現型を引き起こす。このように、-25位が塩基エディタータンパク質によって編集されないことが重要である。配列番号38~42が示される。
図17】HBB-28(A>G)疾患原因対立遺伝子の、染色体に組み込まれた200塩基対断片を有するHEK293T細胞に、HBB-28標的化gRNAおよび示されたBEタンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした図である。BE3およびYE BE3タンパク質は、およそ等しい頻度でコグネートおよびノンコグネートシチジンを脱アミノ化したが、APO3A N57G BEタンパク質は、編集ウインドウ中の2番目のシチジンの脱アミノ化を回避しつつ、疾患を修正するために、-28コグネートモチーフを強力に脱アミノ化した。参照配列、配列番号43。
図18】BE3およびYE BE3タンパク質は、疾患原因HBB-28(A>G)変異の脱アミノ化を誘導するが、これは、配列決定した総対立遺伝子の1%未満において完全に修正された対立遺伝子を生じる。逆に、APO3A N57G BEタンパク質は、配列決定した総対立遺伝子の15~22%において完全に修正された対立遺伝子を生じる
図19】HBB-28(A>G)対立遺伝子の、染色体に組み込まれた断片を有するHEK293T細胞に、示されたgRNAおよび塩基エディタータンパク質を発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトしたグラフである。サンプルを、以前に概説したように処理した。プロットされた脱アミノ化頻度を得るために、編集ウインドウ内に入るシチジンについての全てのCからTへの遷移頻度を合計した。BE3は、調査した8つのオフターゲット部位のうち3つにおいて脱アミノ化を生じたが、APO3A N57 BE3は、非常に低い頻度で、8つの部位のうちたった1つにおいて脱アミノ化を生じた。配列番号44が示される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0143
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0143】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と併せて記載されてきたが、上述の説明は、本発明の範囲を限定するのではなく例示する意図であり、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定されることを理解すべきである。他の態様、利点および改変は、以下の特許請求の範囲内である。

本発明は、下記の態様を含む。
<1>
任意選択の介在性リンカーを伴って、操作されたバリアントデアミナーゼ hAID、rAPOBEC1 、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhAPOBEC3Hに連結されたCas9様ニッカーゼ(nCas9)を含む融合タンパク質であって、
ノンカノニカルモチーフ(non-canonical motif)において前記デアミナーゼを作用させる前記デアミナーゼの基質配列モチーフ中に、表7、8および/または9に示される1つまたは複数の変異を含み、
融合タンパク質は、任意選択で、ウラシルグリコシラーゼインヒビター(UGI)をさらに含む、
融合タンパク質。
<2>
ノンコグネート配列モチーフを認識する、表1または表2に列挙されたデアミナーゼドメインの操作されたバリアントを含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<3>
hAID、rAPOBEC1 、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhAPOBEC3Hの前記操作されたバリアントが、表7または8に示される1つまたは複数の変異を含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<4>
hAID、rAPOBEC1 、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhAPOBEC3Hの前記操作されたバリアントが、(i)表7および/または8に示される1つまたは複数の変異ならびに(ii)表9に示される1つまたは複数の変異を含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<5>
hAID、rAPOBEC1 、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3GまたはhAPOBEC3Hの前記操作されたバリアントが、N57;K60および/もしくはY130のうち1つもしくは複数における変異を有するhAPOBEC3A;またはN57、K60もしくはY130に対応する変異を有するhAID、rAPOBEC1 、mAPOBEC3、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、もしくはhAPOBEC3Hを含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<6>
前記操作されたバリアントが、N57およびY130における変異を有するhAPOBEC3Aを含む、<1>に記載の融合タンパク質。
<7>
N57GもしくはN57Q変異;K60AもしくはK60D変異;および/またはY130F変異のうち1つまたは複数を有するhAPOBEC3Aを含む、<5>または<6>に記載の融合タンパク質。
<8>
前記操作されたバリアントが、N57、K60に対応する変異、および/またはY130に対応する変異を有するhAID、rAPOBEC1 、mAPOBEC3、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhAPOBEC3Hを含む、<5>に記載の融合タンパク質。
<9>
N57G;K60D;またはY130Fに対応する変異のうち1つまたは複数を有するhAID、rAPOBEC1 、mAPOBEC3、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhAPOBEC3Hを含む、<5>または<7>に記載の融合タンパク質。
<10>
hAID、rAPOBEC1 、mAPOBEC3、hAPOBEC3A、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、またはhAPOBEC3Hの前記操作されたバリアントが、A71および/もしくはI96における変異を有するhAPOBEC3A、またはA71および/もしくはI96に対応する変異を有するhAID、rAPOBEC1 、mAPOBEC3、hAPOBEC3B、hAPOBEC3C、hAPOBEC3F、hAPOBEC3G、もしくはhAPOBEC3H(例えば、表10に示される通り)を含む、<1>から<9>のいずれかに記載の融合タンパク質。
<11>
ベータサラセミア変異HBB-28(A>G)を有する対象を処置する方法であって、<1>から<10>のいずれかに記載の融合タンパク質の治療有効量を送達するステップを含み、デアミナーゼが、N57GもしくはN57AもしくはN57QまたはK60AもしくはK60DまたはY130Fにおける変異を含むAPO3Aを含み、好ましくは、前記融合タンパク質が、ssDNAニック導入性Cas9または触媒的に不活性なCas9を含む、方法。
<12>
前記融合タンパク質が、RNP、mRNAまたはプラスミドとして送達される、<11>に記載の方法。
<13>
変異体の脱アミノ化に十分な条件下で、前記対象から収集されたCD34+造血幹細胞および/または前駆体細胞を含む細胞の集団に、前記融合タンパク質をex vivoで送達するステップ、ならびに前記細胞を、前記対象に、再注入により戻すステップを含む、<11>に記載の方法。
<14>
核酸中の選択されたシチジンを脱アミノ化する方法であって、前記核酸を、<1>から<10>のいずれかに記載の融合タンパク質または塩基編集システムと接触させるステップを含む方法。
<15>
<1>から<10>のいずれかに記載の精製された融合タンパク質または塩基編集システムを含む組成物。
<16>
1つまたは複数のリボ核タンパク質(RNP)複合体を含む、<15>に記載の組成物。
<17>
<1>から<10>のいずれかに記載の融合タンパク質または塩基編集システムをコードする核酸。
<18>
<17>に記載の核酸を含むベクター。
<19>
<18>に記載の核酸を含む、単離された宿主細胞。
<20>
幹細胞である、<19>に記載の宿主細胞。
<21>
造血幹細胞である、<19>に記載の宿主細胞。

【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023113672000001.app
【外国語明細書】