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特開2023-113695前立腺特異的膜抗原発現癌の診断または治療のための新規放射性金属結合化合物
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  • 特開-前立腺特異的膜抗原発現癌の診断または治療のための新規放射性金属結合化合物 図1
  • 特開-前立腺特異的膜抗原発現癌の診断または治療のための新規放射性金属結合化合物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113695
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】前立腺特異的膜抗原発現癌の診断または治療のための新規放射性金属結合化合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/02 20060101AFI20230808BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230808BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C07K7/02
A61K38/08
A61K51/08 200
A61P35/00
A61P13/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081323
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2020543658の分割
【原出願日】2018-10-22
(31)【優先権主張番号】62/575,460
(32)【優先日】2017-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】520143199
【氏名又は名称】プロビンシャル・ヘルス・サービシーズ・オーソリティ
【氏名又は名称原語表記】PROVINCIAL HEALTH SERVICES AUTHORITY
(71)【出願人】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】クオ-シュヤン・リン
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ベナール
(72)【発明者】
【氏名】ショウ-ティン・クオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンシン・ジャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌の選択的な造影または治療のための放射性標識化合物、特に前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物を提供する。
【解決手段】次式で示される、PSMAを標的とする新規化合物を開示する。この化合物は放射性金属が結合しており、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を発現している組織の造影、またはPSMAを発現している疾患(例えば、癌)の治療に有用であり得る。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I-aまたは式I-bの化合物、または式I-aまたは式I-bの化合物の塩または溶媒和物:
【化1】
[式中、
1
【化2】
または-(CH25CH3であり;
2はI、Br、F、Cl、H、OH、OCH3、NH2、NO2またはCH3であり;
3
【化3】
であり;
Lは-CH2NH-、-(CH22NH-、-(CH23NH-、または-(CH24NH-であり;
4は、場合により放射性金属Xが結合している放射性金属キレーターであり;
nは1~3である]。
【請求項2】
式I-aの化合物、または式I-aの化合物の塩もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式I-bの化合物、または式I-bの化合物の塩もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1
【化4】
である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
1
【化5】
である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
1
【化6】
である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
1
【化7】
である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
1が-(CH25CH3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
1がL-アミノ酸残基の側鎖を形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
1がD-アミノ酸残基の側鎖を形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
1
【化8】
である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
2がパラ位に存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
2がメタ位に存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
2がオルト位に存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
2がIである、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
2がBrである、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
2がClである、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
2がHである、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
2がFである、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
2がOCH3である、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
2がOHである、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
2がNH2である、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
2がNO2である、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
2がCH3である、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
3がGly残基である、請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
3がAsp残基である、請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
3がGlu残基である、請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
3
【化9】
である、請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
3
【化10】
である、請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
4が、
DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)またはその誘導体;
TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸)またはその誘導体;
SarAr(1-N-(4-アミノベンジル)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]-エイコサン-1,8-ジアミンまたはその誘導体;
NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)またはその誘導体;
TRAP(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[メチル(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸)またはその誘導体;
HBED(N,N0-ビス(2-ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N0-二酢酸)またはその誘導体;
2,3-HOPO(3-ヒドロキシピリジン-2-オン)またはその誘導体;
PCTA(3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]-ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン-3,6,9、-三酢酸)またはその誘導体;
DFO(デスフェリオキサミン)またはその誘導体;
DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)またはその誘導体;
OCTAPA(N,N0-ビス(6-カルボキシ-2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン-N,N0-二酢酸)またはその誘導体;または
H2-MACROPA(N,N’-ビス[(6-カルボキシ-2-ピリジル)メチル]-4,13-ジアザ-18-クラウン-6)またはその誘導体
である、請求項1~29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
4がDOTAである、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
Lが-CH2NH-である、請求項1~31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
Lが-(CH22NH-である、請求項1~31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
Lが-(CH23NH-である、請求項1~31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
Lが-(CH24NH-である、請求項1~31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項36】
LがL-アミノ酸残基の側鎖を形成する、請求項32~35のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
LがD-アミノ酸残基の側鎖を形成する、請求項32~35のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
nが1である、請求項1~37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
nが2である、請求項1~37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
nが3である、請求項1~37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項41】
Xが不在である、請求項1~40のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項42】
Xが、64Cu、67Cu、90Y、111In、114mIn、117mSn、153Sm、149Tb、161Tb、177Lu、225Ac、213Bi、224Ra、212Bi、212Pb、225Ac、227Th、223Ra、47Sc、186Reまたは188Reである、請求項1~40のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
Xが177Luである、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
Xが、64Cu、111In、89Zr、44Sc、68Ga、99mTc、86Y、152Tbまたは155Tbである、請求項1~40のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項45】
Xが68Gaである、請求項44に記載の化合物。
【請求項46】
式IIを有する化合物、または式IIの化合物の塩もしくは溶媒和物である化合物:
【化11】
[式中、
2はI、Br、またはメチルであり;
nは1~3であり;
Xは不在、225Acまたは177Luである]。
【請求項47】
2がIである、請求項46記載の化合物。
【請求項48】
nが3である、請求項46または47に記載の化合物。
【請求項49】
Xが177Luである、請求項46~48のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項50】
対象における前立腺特異的膜抗原(PSMA)発現癌の造影方法であって、請求項44または45に記載の化合物および薬学的に許容される添加剤を含む組成物を対象に投与すること、および
対象の組織を造影する
ことを含んでなる方法。
【請求項51】
請求項42、43および46~49のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容される添加剤を含む組成物を対象に投与することを含む、対象における前立腺特異的膜抗原(PSMA)発現癌を治療する方法。
【請求項52】
癌が、前立腺癌、腎癌、乳癌、甲状腺癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、脳腫瘍、黒色腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌または肉腫である、請求項50または51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の選択的な造影または治療のための放射性標識化合物、特に前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、N-アセチル-アスパルチルグルタミン酸のグルタミン酸とN-アセチルアスパラギン酸への加水分解を触媒する膜貫通タンパク質である。1 PSMAはほとんどの正常組織では発現しないが、前立腺腫瘍および転移では過剰発現する(最大1,000倍)。PSMAはほとんどの正常組織では発現しないが、前立腺腫瘍や転移では過剰発現する(最大1,000倍)2-3。その病理学的発現パターンにより、さまざまな放射性標識PSMAターゲッティング造影剤が設計され、前立腺癌の放射線治療について評価されてきた。4-7
【0003】
一般的な放射性標識されたPSMAターゲッティング内部放射線療法剤は、リジン-尿素-グルタミン酸(Lys-尿素-Glu)の誘導体であり、131I-MIP-1095、117Lu-PSMA I&Tが挙げられる。5-7 なかでも、177Lu-PSMA-617は最も研究されている薬剤であり、現在、多施設試験中である。7-14 予備データは、177Lu-PSMA-617が転移性前立腺癌の治療に効果的であり、患者の32~60%でPSAレベルが50%以上低下し、重篤な副作用がないことを示した。7-13 第II相のオーストラリアの試験では、測定可能な結節性または内臓疾患の患者の82%で客観的な応答が観察された。14 しかし、完全奏効率は低く(<7%)、患者の最大33%が177Lu-PSMA-617治療後も進行性疾患を有していた。7、9-13 興味深いことに、最近のレポートでは、177Lu-PSMA-617療法にもかかわらず疾患が進行した1人の対象を含む進行性転移性前立腺癌患者において、225Ac-PSMA-617(177Luをαエミッター225Acに置き換えた)で素晴らしい応答を示した。15
【0004】
内部放射線治療における225Ac-PSMA-617の大きな可能性にもかかわらず、225Acの供給は世界的に限られている。医薬品適正製造基準(GMP)準拠の177Luは複数のサプライヤーから大量に市販されているので、より効果的な177Lu標識されたPSMAターゲティング剤は、225Ac-PSMA-617よりも、前立腺癌の内部放射線治療に大きな即効性を有するであろう。225Ac-PSMA-617の有効性が高いのは、177Luから放出されるβ粒子によって生じる間接的な損傷と比べて、放射線耐性の影響を受けにくい二重鎖の切断をもたらすα粒子の高い線形エネルギー遷移に起因し得る。放射線治療効果を高める1つの方法は、177Lu標識薬剤の投与された放射能の単位あたりの腫瘍に沈着する放射線量を増やすことである。腫瘍への送達を改善する177Luは、放射性同位元素のコストを削減することにより、治療用放射性医薬品のコストも削減できる。
【0005】
前述の情報のいずれも本発明に対する先行技術を構成することを認めることは必ずしも意図するところではなく、解釈されるべきものでもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書は、PSMAを標的とする新規化合物を開示す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、式I-aまたは式I-bの化合物、または式I-aまたは式I-bの化合物の塩または溶媒和物を提供する:
【化1】
[式中、
1
【化2】
または-(CH25CH3であり;
2はI、Br、F、Cl、H、OH、OCH3、NH2、NO2またはCH3であり;
3
【化3】
であり;
Lは-CH2NH-、-(CH22NH-、-(CH23NH-、または-(CH24NH-であり;
4は、場合により放射性金属Xが結合している放射性金属キレーターであり;
nは1~3である]。
【0008】
式IIを有する化合物、または式IIの化合物の塩もしくは溶媒和物も開示される:
【化4】
[式中、
2はI、Br、またはメチルであり;
nは1~3であり;
Xは不在、225Acまたは177Luである]。
【0009】
ある実施形態では、Xが診断放射性金属である場合(例えば、必ずしもそれに限定されないが64Cu、111In、89Zr、44Sc、68Ga、99mTc、86Y、152Tbまたは155Tb)このような化合物は、対象におけるPSMA発現癌の造影に使用できる。したがって、対象におけるPSMA発現癌を造影する方法も開示され、この方法は、その化合物および薬学的に許容される添加剤を含む組成物を対象に投与すること;および対象の組織を造影することを含んでなる。
【0010】
ある実施形態では、Xが治療用放射性金属(例えば、これらに限定されないが64Cu、67Cu、90Y、111In、114mIn、117mSn、153Sm、149Tb、161Tb、177Lu、225Ac、213Bi、224Ra、212Bi、212Pb、225Ac、227Th、223Ra、47Sc、186Reまたは188Reなどの毒性放射性金属)である場合、そのような化合物は、対象におけるPSMA発現癌の治療に使用できる。したがって、対象における前立腺特異的膜抗原(PSMA)発現癌を治療する方法も開示され、この方法は、その化合物および薬学的に許容される添加剤を含む組成物を対象に投与することを含んでなる。
【0011】
本発明のこの要約は、必ずしも本発明のすべての特徴を説明しているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明からより明らかになるであろう。
図1図1は、Lupa-PSMA-617とLu-HTK01169によるLNCaP前立腺癌細胞への18F-DCFPyL結合の代表的な置換曲線を示す。
図2図2は、LNCaP腫瘍異種移植片を有するマウスにおける(A)177Lu標識PSMA-617および(B)HTK01169のSPECT/CT画像を示す。腫瘍異種移植片における177Lu-HTK01169のより高い持続的な取り込みが観察された。
図3A図3Aは、LNCaP腫瘍異種移植片(n≧5)を有するマウスの選択された臓器に対する177Lu-PSMA-617の生体内分布を示すグラフである。バーは左から右に:1時間、4時間、24時間、72時間、120時間である。
図3B図3Bは、LNCaP腫瘍異種移植片(n≧5)を有するマウスの選択された臓器に対する177Lu-HTK01169の生体内分布を示すグラフである。バーは左から右に:1時間、4時間、24時間、72時間、120時間である。
図4図4は、25-gマウスの主要な臓器/組織に対する177Lu-HTK01169(左のバー)と177Lu-PSMA-617(右のバー)によって送達された放射線量(mGy/MBq)を示すグラフである(OLINDAソフトウェアを使用して計算)。
図5図5は、OLINDAソフトウェアを使用して計算されたLNCaP腫瘍に対する177Lu-PSMA-617(下)と177Lu-HTK01169(上)の放射線量(mGy/MBq)を示すグラフである。これらのデータをさまざまな腫瘤で得、177Lu-PSMA-617および177Lu-HTK01169について、同じ腫瘍取り込み(%ID、パーセント注射量)および滞留時間と仮定する。
図6図6は、生理食塩水(コントロールグループ)、177Lu-PSMA-617(18.5MBq)または177Lu-HTK01169(2.3-18.5MBq)を注射されたLNCaP担癌マウス(グループあたりn=8)の全体の生存率を示す折れ線グラフである。最短から最長の生存期間の中央値:コントロール、2.3MBq177Lu-HTK01169、18.5MBq177Lu-PSMA-617、4.6MBq177Lu-HTK01169、9.3MBq177Lu-HTK01169、18.5MBq177Lu-HTK01169。
図7図7は、マウスを生理食塩水で処置した後の(A)腫瘍体積および(B)体重の経時的な変化の折れ線グラフを示す。
図8図8は、マウスを177Lu-PSMA-617(18.5MBq)で処理した後の、(A)腫瘍体積と(B)体重の経時変化の折れ線グラフを示す。
図9図9は、マウスを177Lu-HTK01169(18.5MBq)で処理した後の(A)腫瘍体積と(B)体重の経時変化の折れ線グラフを示す。
図10図10は、マウスを177Lu-HTK01169(9.3MBq)で処理した後の(A)腫瘍体積と(B)体重の経時変化の折れ線グラフを示す。
図11図11は、マウスを177Lu-HTK01169(4.6MBq)で処理した後の(A)腫瘍体積と(B)体重の経時変化の折れ線グラフを示す。
図12図12は、マウスを177Lu-HTK01169(2.3MBq)で処理した後の(A)腫瘍体積と(B)体重の経時変化の折れ線グラフを示す。
図13図13は、LNCaP腫瘍異種移植を有するマウスにおける注射後1時間または3時間で取得された、68Ga-HTK03026、68Ga-HTK03027、68Ga-HTK03029、および68Ga-HTK03041の最大強度投影PET/CT画像を示す。68Ga標識化合物はすべて、主に腎経路を介して排泄される。68Ga-HTK03026、68Ga-HTK03027および68Ga-HTK03029の腫瘍取り込みは比較可能であるが、68Ga-HTK03041の最高の腫瘍取り込みは注入後1時間から3時間に増加する。
図14図14は、LNCaP腫瘍異種移植片を有するマウスにおける注射後1時間および3時間に取得された、68Ga-HTK03055、68Ga-HTK03056、および68Ga-HTK03058の最大強度投影PET/CT画像を示す。注射後1時間の画像で心臓がはっきりと視覚化されるため、3つの化合物すべてがある程度の血液貯留を示す。血液(心臓)への取り込みは時間の経過とともに減少するが(注射後1時間から3時間)、腫瘍への取り込みは時間とともに増加する。
図15図15は、LNCaP腫瘍異種移植片を有するマウスにおける注射後1時間および3時間に取得された、68Ga-HTK03082、68Ga-HTK03085、および68Ga-HTK03086の最大強度投影PET/CT画像を示す。3つの化合物はすべて、主に腎経路から排泄される。68Ga-HTK03085と68Ga-HTK03086は、68Ga-HTK03082に比べて有意に高い血液保持率を示す。68Ga-HTK03085と68Ga-HTK03086の腫瘍取り込みも、注射後1時間から3時間に時間の経過とともに増加する。
図16図16は、LNCaP腫瘍異種移植片を有するマウスにおける注射後1時間と3時間に取得された、68Ga-HTK03087、68Ga-HTK03089、および68Ga-HTK03090の最大強度投影PET/CT画像を示す。68Ga-HTK03089と68Ga-HTK03090は、68Ga-HTK03087に比べて有意に高い血中滞留性を示す。68Ga-HTK03089と68Ga-HTK03090の腫瘍への取り込みも、注射後1時間から3時間に時間の経過とともに増加する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される、「含んでなる」、「有する」、「包含する」、および「含む」という用語、ならびにそれらの文法的変形は、包括的またはオープンエンドのものであり、追加の、列挙されていない要素および/または方法ステップを除外するものではない。「から本質的になる」という用語は、組成物、使用または方法に関連して本明細書で使用される場合、追加の要素および/または方法ステップが存在し得るが、これらの追加が、列挙された組成物、方法または使用の機能に実質的に影響しないことを示す。「からなる」という用語は、組成物、使用または方法に関連して本明細書で使用される場合、追加の要素および/または方法ステップの存在を除外する。特定の要素および/またはステップを含むものとして本明細書に記載される組成物、使用または方法はまた、これらの実施形態が具体的に参照されているか否かにかかわらず、特定の実施形態においては本質的にそれらの要素および/またはステップからなり得、他の実施形態においてはこれらの要素および/またはステップからなる。特定の要素および/またはステップを含むものとして本明細書に記載された使用または方法は、これらの実施形態が具体的に参照されているか否かにかかわらず、特定の実施形態では本質的にそれらの要素および/またはステップからなり、他の実施形態ではそれらの要素および/またはステップからなる。
【0014】
不定冠詞「a」による要素への言及は、要素が1つだけ存在することを文脈が明確に要求しない限り、複数の要素が存在する可能性を排除するものではない。単数形「a」、「an」、および「the」には、内容で明確に指示されていない限り、複数の指示対象が含まれる。本明細書で「含む」という用語と組み合わせて使用される場合の「a」または「an」という用語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1を超える」の意味と矛盾しない。
【0015】
特に明記しない限り、「特定の実施形態」、「さまざまな実施形態」、「ある実施形態」および同様の用語は、他の実施形態が、直接的または間接的に参照されているか否か、特徴または実施形態が方法、製品、使用、組成、化合物などの文脈で説明されているかどうかに関係なく、その実施形態について単独で、または本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせて、特定の特徴を含む。
【0016】
本明細書で使用される、「治療する」、「治療」、「治療的」などの用語は、症状の改善、疾患の進行の低減、予後の改善および癌の再発の低減を含む。
【0017】
本明細書で使用される、「診断薬」という用語は、「造影剤」を含む。したがって、「診断用放射性金属」には、造影剤としての使用に適した放射性金属が含まれる。
【0018】
「対象」という用語は、動物(例えば、哺乳動物または非哺乳動物)を指す。対象は、ヒトまたは非ヒト霊長類であり得る。対象は実験用哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターなど)であってよい。対象は、農業動物(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダなど)またはペット(例えば、イヌ、ネコなど)であり得る。
【0019】
本明細書で使用される、「塩」および「溶媒和物」という用語は、化学におけるそれらの通常の意味を有する。したがって、化合物が塩または溶媒和物である場合、それは適切な対イオンと会合している。塩を調製する方法または対イオンを交換する方法は当技術分野でよく知られている。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を化学量論量の適切な塩基(例えば、限定されないが、Na、Ca、Mg、またはKの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)、または 化学量論量の適切な酸を含むこれらの化合物の遊離塩基形態と反応させることにより調製することができる。このような反応は、一般に、水中または有機溶媒中、あるいは両者の混合物中で行われる。対イオンは、例えば、イオン交換クロマトグラフィーなどのイオン交換技術によって変更することができる。特定の形態が具体的に示されていない限り、すべての双性イオン、塩、溶媒和物および対イオンが意図される。
【0020】
ある特定の実施形態では、塩または対イオンは、対象への投与のために薬学的に許容され得る。より一般的には、本明細書に開示される任意の医薬組成物に関して、適切な添加剤の非限定的な例には、任意の適切な緩衝剤、安定剤、塩、抗酸化剤、錯化剤、等張化剤、凍結保護剤、凍結保護剤、懸濁剤、乳化剤、抗菌剤、保存剤、キレート化剤、結合剤、界面活性剤、湿潤剤、固定油などの非水性ビヒクル、または徐放または制御放出用のポリマーが挙げられる。例えば、それぞれの全体が参照により組み込まれる、Berge et al. 1977. (J. Pharm Sci. 66:1-19)、またはRemington- The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition (Gennaro et al editors. Lippincott Williams & Wilkins Philadelphia)を参照。
【0021】
本発明の一態様では、式I-aまたは式I-bである化合物、または式I-aまたは式I-bの化合物の塩または溶媒和物が開示される。
【化5】
[式中、
1
【化6】
または-(CH25CH3であり;
2はI、Br、F、Cl、H、OH、OCH3、NH2、NO2またはCH3であり;
3
【化7】
であり;
Lは-CH2NH-、-(CH22NH-、-(CH23NH-、または-(CH24NH-であり;
4は、場合により放射性金属Xが結合している放射性金属キレーターであり;
nは1~3である]。
【0022】
化学式(例えば、式I-aまたは式I-b)の結合を介して示される波線記号
は、波線の反対側の構造の定義を変更することなく、波線の片側のR基(例えば、R1、R2、R3)を定義することを意図する。R基が2つ以上の側で結合している場合(例:R3)、波線の外側の原子はR基の方向を明確にするために含まれている。したがって、2つの波線の間の原子のみがR基の定義を構成する。
【0023】
ある実施形態では、化合物は、式I-aの化合物であるか、または式I-aの塩もしくは溶媒和物である。
【0024】
ある実施形態において、化合物は、式I-bの化合物であるか、または式I-bの化合物の塩もしくは溶媒和物である。
【0025】
ある実施形態では、R1
【化8】
である。
【0026】
ある実施形態では、R1
【化9】
である。
【0027】
ある実施形態では、R1
【化10】
である。
【0028】
ある実施形態では、R1
【化11】
である。
【0029】
ある実施形態では、R1は-(CH25CH3である。
【0030】
1はアミノ酸残基の側鎖を形成する(例:2-ナフチルアラニンなど)。ある実施形態では、このアミノ酸はL-アミノ酸、すなわち。
【化12】
(例えば、L-2-ナフチルアラニンなど)である。ある実施形態では、アミノ酸はD-アミノ酸
【化13】
(例えば、D-2-ナフチルアラニンなど)である。
【0031】
ある実施形態では、R1
【化14】
である。
【0032】
ある実施形態では、R1
【化15】
である。
【0033】
ある実施形態では、R1
【化16】
である。
【0034】
ある実施形態では、R1
【化17】
である。
【0035】
ある実施形態では、nは1である。ある実施形態では、nは2である。ある実施形態では、nは3である。
【0036】
式I-aおよびI-bに示すように、ベンゼン環には1個のR2基がある。水素でない場合、R2はベンゼン環のパラ、メタ、またはオルト位に存在し得る。即ち、
【化18】
【0037】
ある実施形態では、R2はパラ位に存在する。ある実施形態では、R2はメタ位に存在する。ある実施形態では、R2はオルト位に存在する。
【0038】
ある実施形態では、R2はHである。ある実施形態では、R2はIである。ある実施形態では、R2はBrである。ある実施形態では、R2はFである。ある実施形態では、R2はClである。ある実施形態では、R2はOHである。ある実施形態では、R2はOCH3である。ある実施形態では、R2は、NH2である。ある実施形態では、R2はNO2である。ある実施形態では、R2はCH3である。
【0039】
ある実施形態では、R3
【化19】
(すなわち、Gly残基)である。
【0040】
ある実施形態では、R3
【化20】
(すなわち、Asp残基)である。ある実施形態では、Asp残基はD-Aspである。ある実施形態では、AspはL-Aspである。
【0041】
ある実施形態では、R3
【化21】
(すなわち、Glu残基)である。ある実施形態では、Glu残基はD-Gluである。ある実施形態では、Glu残基はL-Gluである。
【0042】
ある実施形態では、R3は、
【化22】
である。
【0043】
ある実施形態では、R3は、
【化23】
である。
【0044】
ある実施形態では、R3は、
【化24】
である。
【0045】
4は、目的とする放射性金属(即ちX)への結合に適しており、アミノ基への結合のために官能化されている任意の放射性金属キレーターであり得る。多くの適切な放射性金属キレーターが知られている。例えば、その全体が参照により組み込まれるOrvig, Chem. Soc. Rev., 2014, 43, 260-290。ある実施形態では、R4は:
DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)またはその誘導体、例えばDOTAGAなどであるがこれらに限定されない;
TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸)またはその誘導体、例えばCB-TE2A(4,11-ビス-(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]-ヘキサデカン)などであるがこれらに限定されない;
SarAr(1-N-(4-アミノベンジル)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]-エイコサン-1,8-ジアミンまたはその誘導体;
NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)またはその誘導体、例えば、NODAGAなどであるがこれらに限定されない;
TRAP(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[メチル(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸)またはその誘導体;
HBED(N,N0-ビス(2-ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N0-二酢酸)またはその誘導体;
2,3-HOPO(3-ヒドロキシピリジン-2-オン)またはその誘導体;
PCTA(3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]-ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン-3,6,9、-三酢酸)またはその誘導体;
DFO(デスフェリオキサミン)またはその誘導体、例えば、テトラヒドロキサメートDFO(DFO-star)などであるがこれらに限定されない;
DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)またはその誘導体、例えば、CHX-DTPA(2-(p-イソチオシアナトベンジル)-シクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸)などであるがこれらに限定されない;
OCTAPA(N,N0-ビス(6-カルボキシ-2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン-N,N0-二酢酸)またはその誘導体(例えばピコリン酸誘導体);または
H2-MACROPA(N,N’-ビス[(6-カルボキシ-2-ピリジル)メチル]-4,13-ジアザ-18-クラウン-6)またはその誘導体
である。
【0046】
ある実施形態では、Xは不在である。
【0047】
ある実施形態では、Xは治療用放射性金属である。例えば、Xは、64Cu、67Cu、90Y、111In、114mIn、117mSn、153Sm、149Tb、161Tb、177Lu、225Ac、213Bi、224Ra、212Bi、212Pb、225Ac、227Th、223Ra、47Sc、186Re、または188Reであり得るがこれらに限定されない。ある実施形態では、Xは64Cuである。ある実施形態では、Xは67Cuである。ある実施形態では、Xは90Yである。ある実施形態では、Xは111Inである。ある実施形態では、Xは114mInである。ある実施形態では、Xは117mSnである。ある実施形態では、Xは153Smである。ある実施形態では、Xは149Tbである。ある実施形態では、Xは161Tbである。ある実施形態では、Xは177Luである。ある実施形態では、Xは225Acである。ある実施形態では、Xは213Biである。ある実施形態では、Xは224Raである。ある実施形態では、Xは212Biである。ある実施形態では、Xは212Pbである。ある実施形態では、Xは225Acである。ある実施形態では、Xは227Thである。ある実施形態では、Xは223Raである。ある実施形態では、Xは47Scである。ある実施形態では、Xは186Reである。ある実施形態では、Xは188Reである。
【0048】
ある実施形態では、Xは診断用放射性金属である。例えば、Xは64Cu、111In、89Zr、44Sc、68Ga、99mTc、86Y、152Tbまたは155Tbであり得るがこれらに限定されない。ある実施形態では、Xは64Cuである。ある実施形態では、Xは111Inである。ある実施形態では、Xは89Zrである。ある実施形態では、Xは44Scである。ある実施形態では、Xは68Gaである。ある実施形態では、Xは99mTcである。ある実施形態では、Xは86Yである。ある実施形態では、Xは152Tbである。ある実施形態では、Xは155Tbである。
【0049】
ある実施形態では、R1
【化25】
であり、R3
【化26】
[式中、
2はI、Br、F、Cl、H、OH、OCH3、NH2、NO2またはCH3であり、
Xは不在、90Y、67Ga、68Ga、177Lu、225Ac、または111In]である。
これらの実施形態のあるは、R2がパラ位に存在する。これらの実施形態のあるものは、R2がIである。これらの実施形態のあるものは、Xが177Luであり、他の実施形態では、Xは225Acである。
【0050】
ある実施形態では、R1
【化27】
であり、R3
【化28】
[式中、
2はI、Br、F、Cl、H、OH、OCH3、NH2、NO2またはCH3であり、
Xは不在、90Y、67Ga、68Ga、177Lu、225Ac、または111In]である。
これらの実施形態のあるは、R2がパラ位に存在する。これらの実施形態のあるものは、R2がIである。これらの実施形態のあるものは、Xが177Luであり、他の実施形態では、Xは225Acである。これらの実施形態のあるものは、nが3である。
【0051】
ある実施形態では、Lは-CH2NH-である。ある実施形態では、Lは-(CH22NH-である。ある実施形態では、Lは-(CH23NH-である。ある実施形態では、Lは-(CH24NH-である。
【0052】
Lは、アミノ酸残基の側鎖を形成する(例えば、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4-ジアミノブタン酸(Dab)、オルニチン(Orn)またはリジン(Lys))。ある実施形態では、このアミノ酸はL-アミノ酸、すなわち
【化29】
(例えばL-Dap、L-Dab、L-Orn、L-Lys)である。ある実施形態では、アミノ酸はD-アミノ酸
【化30】
(例えばD-Dap、D-Dab、D-Orn、またはD-Lys)である。
【0053】
ある実施形態では、Lによって形成されるアミノ酸残基はL-アミノ酸であり、R1によって形成されるアミノ酸残基もL-アミノ酸である。ある実施形態では、Lによって形成されるアミノ酸残基はD-アミノ酸であり、R1によって形成されるアミノ酸残基もD-アミノ酸である。ある実施形態では、Lによって形成されるアミノ酸残基はL-アミノ酸であり、R1によって形成されるアミノ酸残基はD-アミノ酸である。ある実施形態では、Lによって形成されるアミノ酸残基はD-アミノ酸であり、R1によって形成されるアミノ酸残基はL-アミノ酸である。
【0054】
ある実施形態では、化合物は式IIを有する化合物、または式IIの化合物の塩もしくは溶媒和物である:
【化31】
[式中、
2はI、Br、またはメチルであり;
nは1~3であり;
Xは不在、225Acまたは177Luである]。
これらの実施形態のいくつかでは、R2はIである。これらの実施形態のいくつかでは、R2はBrである。これらの実施形態のいくつかでは、R2はメチルである。これらの実施形態のいくつかでは、nは1である。これらの実施形態のいくつかでは、nは2である。これらの実施形態のいくつかでは、nは3である。これらの実施形態のいくつかでは、Xは不在である。これらの実施形態のいくつかでは、Xは177Luであり、DOTA基に結合している。これらの実施形態のいくつかでは、Xは225Acであり、DOTA基に結合している。
【0055】
ある実施形態では、化合物は式IIIを有するか、または式IIIの化合物の塩もしくは溶媒和物である:
【化32】
(III、「X-HTK01169」とも呼ばれる。ここで、Xは不在、90Y、67Ga、68Ga、177Lu、225Ac、または111Inである)。Xが177Luのとき、化合物は以下に示す構造を有するか、その塩または溶媒和物である:
【化33】
(Lu-HTK01169)。
【0056】
HTK01169およびLu-HTK01169の合成スキームを以下の実施例1に記載する。実施例2は、式I-aおよびI-bのR基に対する多くの選択肢を組み込んだ、金属キレートPSMA結合化合物を調製するための合成スキームを記載する。
【0057】
上記の化合物は、アルブミン結合およびPSMA結合を調節して(例えば、Lu-PSMA-617と比較して)、腫瘍の取り込み/保持を調節(例えば、増強)して、PSMAを発現する癌の代替または改善された診断薬または治療薬を提供する。特に、上記の化合物は、化合物の血液循環時間を増加させるアルブミン結合ドメイン、すなわち、
【化34】
(例えば、Lu-HTK01169のヨードフェニルブチリル基。PCT特許公開番号WO2008/053360も参照)を含んでなる。R2および/またはnの値(つまりn=1、2または3)を変更すること、および/またはR3を導入(例:Glyまたはカルボキシレート含有AspまたはGluの付加)することによるアルブミン結合基の修飾は、化合物のアルブミン結合強度(すなわち、結合親和性)を調節(増加または減少)し、それにより、化合物の結果として生じる血液循環時間を調節することができる。理論に拘束されるわけではないが、アルブミンへの結合が強すぎる(すなわち、アルブミンへの結合親和性が高すぎる)化合物は、化合物が血液循環中に長く保持されすぎ、腫瘍への蓄積が非常に低くなる。これにより、腫瘍への全体的な取り込みが低下し、骨髄への放射線量が高すぎることになる。同時に、アルブミン結合親和性が弱すぎると、化合物が血液循環から急速に取り除かれ、腫瘍に蓄積する機会が減少する。さらに、上記の化合物はまた、Lys-尿素-Glu PSMA結合部分を含む。化合物のPSMA結合強度は、R1を修飾することで調整(増加または減少)できる。理論に縛られることを望まないが、上記の化合物の調節された腫瘍の取り込み/保持は、調節されたアルブミン結合および/またはPSMA結合強度(例えば、Lu-PSMA-617と比較して)による可能性がある。診断または治療効果は、キレーターと結合した放射性金属を変えることによってさらに調整することができる。以下の実施例によって示されるように、上記の変数は、上記の化合物において、PSMA発現腫瘍の取り込み/保持、したがって診断または治療効果を増強するために調整されている。
【0058】
Xが診断放射性金属である場合、対象のPSMA発現組織を造影するための放射性標識トレーサーの調製のための化合物の特定の実施形態の使用が開示される。対象のPSMA発現組織を造影する方法も開示され、この方法は、化合物の特定の実施形態および薬学的に許容される添加剤を含む組成物を対象に投与すること;および被検体の組織を造影する(例えば陽電子放出断層撮影(PET)を用いて)ことを含んでなる。組織が病変組織(例えば、PSMAを発現する癌)である場合、PSMAを標的とする治療は、対象を治療するために選択されてもよい。
【0059】
Xが治療用放射性金属である場合、対象におけるPSMA発現疾患(例えば、癌)の治療のための化合物(またはその医薬組成物)の特定の実施形態の使用が開示される。したがって、対象におけるPSMA発現疾患を治療するための医薬品の製造における化合物の使用が提供される。また、対象におけるPSMA発現疾患を治療する方法も提供され、この方法は、化合物および薬学的に許容される添加剤を含む組成物を対象に投与することを含む。例えば、限定はされないが、疾患は、PSMA発現癌であり得る。
【0060】
PSMAの発現はさまざまな癌で検出されている(例えば、Rowe et al., 2015, Annals of Nuclear Medicine 29:877-882;Sathekge et al., 2015, Eur J Nucl Med Mol Imaging 42:1482-1483;Verburg et al., 2015, Eur J Nucl Med Mol Imaging 42:1622-1623;およびPyka et al., J Nucl Med November 19, 2015 jnumed.115.164442)。したがって、非限定的に、PSMA発現癌は、前立腺癌、腎臓癌、乳癌、甲状腺癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、脳腫瘍、黒色腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌または肉腫であり得る。ある実施形態では、癌は前立腺癌である。
【実施例0061】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。
【0062】
実施例1:177Lu-HTK011691.
1 材料および方法
1.11 一般的方法
すべての化学物質と溶媒は商業的供給元から入手し、それ以上精製せずに使用した。タンパク質結合アッセイ用のヒト血清は、Innovative Research(Novi、MI)から入手した。PSMA-617およびHTK01169は、Aapptec(Louisville、KY)Endeavour 90ペプチドシンセサイザーで固相法を用いて合成した。質量分析は、ESIイオン源を備えたAB SCIEX(Framingham、MA)4000 QTRAP質量分析計システムを使用して行った。非放射性および177Lu標識ペプチドの精製と品質管理は、モデル1200クォータナリポンプとモデル1200 UV吸光度検出器を備えたAgilent(カリフォルニア州サンタクララ)HPLCシステムで行った。ラジオHPLCシステムには、Bioscan(ワシントンDC)NaIシンチレーション検出器を装備した。使用したHPLCカラムは、Phenomenex(Torrance、CA)セミ分取カラム(Luna C18、5μ、250×10mm)とPhenomenex分析カラム(Luna C18、5μ、250×4.6mm)であった。177Lu標識ペプチドの放射能は、Capintec(Ramsey、NJ)CRC(登録商標)-25R/W線量キャリブレーターを使用して測定した。
【0063】
1.12 PSMA-617およびHTK01169の固相合成
PSMA-617およびそのアルブミン-バインダー含有誘導体HTK01169の合成は、報告された手順16から修飾し、Fmoc-Lys(ivDde)-Wang樹脂から行った。t-ブチル保護グルタミル部分のイソシアネートをカップリングした後17、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の2%ヒドラジンでivDde保護基を除去した。Fmoc-2-Nal-OH、Fmoc-トラネキサム酸、DOTA-tris(t-bu)エステルのカップリングの後、続いてトリフルオロ酢酸(TFA)で切断して、PSMA-617の粗生成物を得た。0.1%TFAを含む水に25%アセトニトリルを含むセミ分取カラムを使用して、4.5mL/分(t=10.5分)の流速でHPLC精製した後、PSMA-617が25%の収率で得られた。ESI-MS:PSMA-617の計算値[M+H]4972916 1042.5;実測値[M+H] 1042.6。
【0064】
HTK01169の合成では、Fmoc-Lys(ivDde)-OHをFmoc-トラネキサム酸の後のシーケンスにカップリングした。Fmoc-Glu(tBu)-OHおよび4-(p-ヨードフェニル)酪酸をN末端に付加して、伸長を継続した。続いて、ivDde保護基を2%ヒドラジンのDMF溶液で除去し、DOTA-tris(t-bu)エステルをLys側鎖に結合させた。ペプチドをTFA処理で切断し、0.1%TFAを含む37%アセトニトリル水溶液でセミ分取カラムを使用して、流速4.5mL/分でHPLCにより精製した(t=9.7分)。HTK01169の収率は21%であった。ESI-MS:HTK01169の計算値[M+H]701001221I 1571.6;実測値[M+H] 1571.7。
【0065】
1.13 Lu-PSMA-617およびLu-HTK01169の合成
PSMA-617(5.5mg、5.3μmol)またはHTK01169(4.1mg、2.6μmol)の溶液を、NaOAc緩衝液(0.1M、500μL、pH4.2)中のLuCl3(5当量)と90℃で15分間インキュベートした後、セミ分取カラムを使用してHPLCにより精製した。Lu-PSMA-617については、HPLC条件を、0.1%TFAを含む25%アセトニトリル水溶液、流速4.5mL/分(t=9.7分)とした。収率は62%であった。ESI-MS:計算値[M+H] (Lu-PSMA-617) C4969916 [Lu] 1214.4;実測値[M+H] 1214.4。Lu-HTK01169の場合、HPLC条件は、0.1%TFAを含む37%アセトニトリル水溶液、流速4.5mL/分(t=10.0分)とした。収率は31%であった。ESI-MS:計算値[M+H] (Lu-HTK01169) C70971221I [Lu] 1743.5;実測値[M+H] 1743.9。
【0066】
1.14 In vitro競合結合アッセイ
以前に報告されたように、LNCaP前立腺癌細胞および放射性リガンドとして18F-DCFPyLを使用して、インビトロ競合結合アッセイを実施した。18 簡単にいうと、LNCaP細胞(400,000/ウェル)を24ウェルポリ-D-リジンコーティングプレート上に48時間プレーティングした。増殖培地を除去し、HEPES緩衝生理食塩水(50mM HEPES、pH 7.5、0.9%塩化ナトリウム)で置き換え、細胞を37℃で1時間インキュベートした。18F-DCFPyL(0.1nM)を、種々の濃度(0.5mM~0.05nM)の試験化合物(Lu-PSMA-617またはLu-HTK01169)を含む各ウェルに(3連で)追加した。非特異的結合は、10μMの非放射性標識DCFPyLの存在下で測定した。アッセイ混合物を、穏やかに攪拌しながら37℃で1時間さらにインキュベートした。次に、緩衝液および高温のリガンドを除去し、細胞を冷HEPES緩衝生理食塩水で2回洗浄した。細胞を回収するために、0.25%トリプシン溶液400μLを各ウェルに加えた。放射能は、PerkinElmer(マサチューセッツ州ウォルサム)Wizard2 2480自動ガンマカウンターで測定した。非線形回帰分析とKi計算は、GraphPad Prism 7ソフトウェアを使用して行った。
【0067】
1.15 177Lu-PSMA-617および177Lu-HTK01169の合成
177LuCl3(10~20μL中329.3~769.9MBq)を、NaOAc緩衝液(0.5mL、0.1M、pH4.5)中のPSMA-617またはHTK01169(25μg)の溶液に加えた。混合物を90℃で15分間インキュベートした後、HPLCで精製した。177Lu-PSMA-617および177Lu-HTK01169のHPLC精製条件(セミプレップカラム、4.5mL/分)は、それぞれ、23%および36%アセトニトリル水溶液(0.1%TFA)とした。177Lu-PSMA-617と177Lu-HTK01169の保持時間はそれぞれ15.0分と13.8分であった。品質管理は、対応する精製溶媒条件を使用して、2mL/分の流速にて分析カラムで行った。177Lu-PSMA-617と177Lu-HTK01169の保持時間はどちらも約5.5分であった。
【0068】
1.16 血漿タンパク質結合アッセイ
血漿タンパク質結合アッセイを文献の方法に従って行った。19 簡単に言えば、37kBqの177Lu-PSMA-617または177Lu-HTK01169を50μLのPBSに入れて200μLのヒト血清に加えた、混合物を室温で1分間インキュベートした。次に、混合物をメンブレンフィルター(Nanosep(登録商標)、30 K、Pall Corporation、USA)にロードし、45分間遠心分離した(30、130×g)。生理食塩水(50μL)を加え、遠心をさらに15分間続けた。メンブレンフィルターのある上部と溶液のある下部をガンマカウンターでカウントした。対照として、ヒト血清の代わりに生理食塩水を使用した。
【0069】
1.17 SPECT/CTイメージング、生体内分布および内部放射線療法試験
SPECT/CTイメージングと生体内分布は、NOD-scid IL2Rgammanull(NSG)雄性マウスを使用して実行され、内部放射線療法試験はNOD.Cg-Rag1tm1Mom Il2rgtm1Wjl/SzJ(NRG)雄性マウスを使用して実施した。マウスは飼育され、実験はカナダ動物保護委員会によって確立され、ブリティッシュコロンビア大学の動物倫理委員会によって承認されたガイドラインに従って行った。マウスを酸素中2%イソフルランで吸入麻酔し、左肩後方に1×107 LNCaP細胞を皮下移植した。接種後5~6週間で腫瘍が直径5~8mmに達したときに、マウスを試験に使用した。
【0070】
SPECT/CTイメージング実験はMILabs(ユトレヒト、オランダ)U-SPECT-II/CTスキャナーを使用して行った。それぞれの腫瘍マウスに、麻酔下(酸素中2%イソフルラン)で尾静脈から~37MBqの177Lu標識PSMA-617またはHTK01169を注射した。マウスを回復させ、ケージ内を自由に歩き回らせ、注射後4、24、72、120時間後に造影した。各時点で、マウスを再び鎮静させ、スキャナーに配置した。最初に、解剖学的参照のために60kVの電圧設定と615μAの電流で5分間のCTスキャンを行い、続いて超高解像度マルチピンホールラットマウス(1mmピンホールサイズ)コリメータを用いてリストモードで取得した60分間の静的エミッションスキャンを行った。U-SPECT IIソフトウェアを使用して、3つのエネルギーウィンドウに20%のウィンドウ幅でデータを再構築した。フォトピークウィンドウは208 keVを中心とし、下部散乱ウィンドウと上部散乱ウィンドウはそれぞれ170 keVと255 keVを中心とした。画像は、順序付けされたサブセット期待値最大化アルゴリズム(3回の反復、16個のサブセット)、および0.5mm後処理ガウスフィルターを使用して再構築された。画像は、PMOD(PMOD Technologies、スイス)で注入時間に合わせて減衰補正され、Inveon Research Workplaceソフトウェア(Siemens Medical Solutions USA、Inc.)で定性的な視覚化のためにDICOMに変換された。
【0071】
生体内分布試験では、マウスに上記のように177Lu標識PSMA-617またはHTK01169(2~4MBq)を注射した。所定の時点(注射後1、4、24、72、または120時間)で、CO2吸入によりマウスを安楽死させた。心臓からすぐに血液を採取し、目的の臓器/組織を採取した。収集した臓器/組織を秤量し、自動ガンマカウンターを使用してカウントした。ブロッキング試験のために、マウスに177Lu-HTK01169(2~4MBq)と50nmolの非放射性標準物質を同時注射し、注射後4時間で目的の臓器/組織を採取した。
【0072】
放射線療法試験では、腫瘍マウスに生理食塩水(コントロールグループ)、177Lu-PSMA-617(18.5MBq)または177Lu-HTK01169(18.5、9.3、4.6、または2.3MBq))を注射した(グループあたりn=8)。腫瘍のサイズおよび体重を、注射の日(0日目)から試験の完了(120日目)まで週2回測定した。エンドポイント基準は、20%を超える体重減少、腫瘍体積>1000mm3、または腫瘍の活発な潰瘍として定義した。
【0073】
1.18放射線量測定の計算
内部線量測定の推定値は、臓器レベルの内部線量評価(OLINDA)ソフトウェアv.2.0を使用して計算した。37これらの推定は、マウスに対して25g MOBYファントム38、ヒトに対しては成人男性についてNURBSモデル39を使用して行い、腫瘍には以前に報告された単位密度球モデル40を使用した。すべてのファントムと球モデルはOLINDAで使用でき、元の臓器/腫瘍ごとに注射された放射能により正規化された崩壊の総数を入力する必要がある(単位MBq×h/MBq)。
【0074】
生体内分布データ(以下のTable 1および2で利用可能)を使用して、OLINDAに必要な動力学入力値を決定した。最初に、各値は対応する時点まで減衰した(表の値は注射時点で示す)。次に、各臓器の種々時点での取り込みデータ(%ID/g)を、Pythonで開発された社内ソフトウェアを使用して、単指数関数
【数1】
と、双指数関数
【数2】
の両方に適合させた。最適な決定は、フィットの決定係数(R2)を最大化し、残差を最小化することに基づいて選択した。曲線下面積は、各臓器の最適なフィットから得られたパラメーターに基づいて分析的に計算され、これにより、OLINDAが必要とする動的入力値が得られた。
【0075】
マウスの場合、副腎、血液、脂肪、筋肉、精嚢はファントムでモデル化されていない。これらの臓器はグループ化され、OLINDAが体の残り部分と呼ぶものに含まれた。
【0076】
ヒトへのマウスの体内分布データの外挿は、Kirschner et al41によって提案された方法および以下の方程式を用いて行った。
【数3】
【0077】
ここで、morganは臓器の質量であり、Mは全身の質量を表する。下付き文字は、値がヒトに対応するかマウスに対応するかを示す。臓器の質量と総体重は、OLINDAのファントムのシミュレートされた質量から取得された。生体内分布データは、OLINDAヒトのファントムに存在する左結腸、右結腸、および直腸を区別しないため、腸のこれら3つの領域は、体内分布の大腸と同じ放射能取り込み(%ID/g)を有すると想定した。血液の%ID/gは、ファントムの心臓内容物に対するものと想定した。この値は、Wesselsらによって記載された方法42に基づく骨髄取り込みの計算にも使用し、この試験で示された患者の値に基づいて、ヘマトクリット率を0.40と想定した。最後に、赤色骨髄の値は、0.32倍にスケールされた血液測定値を使用した。ヒトの場合、生体分布データに存在する脂肪、筋肉、および精嚢はファントムでモデル化されていないため、これらの領域に存在する崩壊の数は、体の残り部分に含まれた。マウスの場合と同様にデータを再度フィッティングし、減衰の総数の値をOLINDAに入力した(単位MBq×h/MBq)。
【0078】
最後に、腫瘍における崩壊の数もマウスの生体内分布データに基づいて計算し、その値をOLINDAで利用可能な球モデルに入力した。
【0079】
1.2結果
1.21ペプチド合成および放射化学
PSMA-617およびHTK01169を、それぞれ25%および21%の収率で合成した。LuCl3と反応させた後、HPLCで精製し、Lu-PSMA-617およびLu-HTK01169がそれぞれ62%と31%の収率で得られた。PSMA-617、HTK01169、およびそれらのLu錯体の同定は、MS分析によって確認された。
【0080】
177Lu標識は、酢酸緩衝液(pH4.5)で90℃にて行い、その後HPLCで精製した。177Lu-PSMA-617は、86.0±1.7%(n=3)の放射化学的収率で782±43.3GBq/μmolのモル活性と>99%の放射化学的純度で得られた。177Lu-HTK01169は、63.0±16.2%(n=4)の放射化学的収率で、170±73.6GBq/μmolのモル活性と>99%の放射化学的純度で得られた。
【0081】
1.22 PSMAおよび血清タンパク質への結合
Lu-PSMA-617およびLu-HTK01169は用量依存的にLNCaP細胞上のPSMAへの18F-DCFPyLの結合を阻害し(図1)、それらの計算されたK値はそれぞれ0.24±0.06および0.04±0.01nMであった(n=3)。生理食塩水とのインキュベーションおよび遠心分離後、フィルターに結合した放射能は、177Lu-PSMA-617および177Lu-HTK01169についてそれぞれ、5.21±1.42および25.8±3.42%であった(n=3)。生理食塩水をヒトの血清で置き換えると、フィルターに結合した放射能が、177Lu-PSMA-617および177Lu-HTK01169について、同じ条件下で、それぞれ82.7±0.32および99.2±0.02%に増加した(n=3)。
【0082】
1.23 SPECT/CTイメージングおよび生体内分布
SPECT/CT造影試験は、177Lu-PSMA-617および177Lu-HTK01169の両方とも、主に腎経路を介して排泄され、特に初期の時点(4および24時間、図2)で、177Lu-HTK01169の高い腎保持を有することを示した。より高い且つ持続的な腫瘍での取り込みが、177Lu-HTK01169で観察された。177Lu-PSMA-617と177Lu-HTK01169の生体内分布データを図3Aと3Bに示す(Table 1および2も参照)。これらのデータは、SPECT/CT画像からの観察と一致していた。
【表1】
【表2】
【0083】
177Lu-PSMA-617は、血液および非標的臓器/組織から急速に除去された。注射の1時間後、血中に残ったのはわずか0.68±0.23%ID/gであった。取り込みは、脾臓(3.34±1.77%ID/g)、副腎(4.88±2.41%ID/g)、腎臓(97.2±19.4%ID/g)、肺(1.34±0.39%ID/g)およびLNCaP腫瘍(15.1±5.58%ID/g)を含め、PSMA発現組織で観察された。20-21 注射後120時間での腫瘍の取り込みは7.91±2.82%ID/gまで徐々に減少した。他の組織/臓器からのクリアランスが速いため、腫瘍とバックグラウンドの177Lu-PSMA-617のコントラスト比は時間とともに改善した(上記のTable 1)。
【0084】
ビルトインアルブミンバインダーを使用した場合、177Lu-HTK01169の血中クリアランスは177Lu-PSMA-617よりも遅くなった(図3Aおよび3B)。177Lu-HTK01169の腫瘍取り込みは、初期の時点で継続的に増加し、注射後24時間でピークに達し(55.9±12.5%ID/g)、試験の過程で持続した(120時間の時点で56.4±13.2%ID/g)。177Lu-PSMA-617と同様に、脾臓、副腎、腎臓、肺にも取り込みが観察された(上記のTable 2)。腫瘍への持続的な取り込みと他の臓器/組織からのクリアランスが比較的速いため、腫瘍とバックグラウンドの177Lu-PSMA-617コントラスト比は時間とともに改善した。同じ時点(4時間)で収集された生体内分布データと比較すると、コールドスタンダードでのブロッキングでは、収集されたすべての組織/臓器、特にPSMA発現腎臓(125±16.4 vs 5.50±1.95%ID/g)およびLNCaP腫瘍(55.9±12.5 vs 1.70±0.28%ID/g)での取り込みが減少した。
【0085】
1.24放射線量測定の計算
腫瘍を有するマウスから得られた生体分布データに基づいて、マウスの主要器官/組織に送達された放射線量の推定値を、OLINDAソフトウェアを使用して計算した。結果を図4と表3に示す。ここでは、データフィットから計算された元の臓器の入力動態(MBq-h/MBq)と標的臓器への線量(mGy/MBq)の両方が示されている。177Lu-PSMA-617と比較して、177Lu-HTK01169は、177Lu-PSMA-617から1.5倍高い放射線量を受けた膀胱を除き、すべての主要臓器に、9.4~23.1倍高い放射線量を送達した。
【表3】
【0086】
ヒトの臓器/組織に送達された計算された放射線量についても、同様の結果が得られた(Table 4)。ほとんどのヒトの臓器/組織は、177Lu-HTK01169から11.9~24.9倍高い放射線量を受けた。特に、脳、心臓、赤色骨髄、および脾臓は、177Lu-HTK01169で6倍、50.4倍、30.4倍、および28.1倍高い線量を受けた。膀胱は177Lu-PSMA-617から1.3倍高い放射線量を受けた。
【表4】
【0087】
177Lu-PSMA-617および177Lu-HTK01169からのLNCaP腫瘍の速度論に基づいて単位密度球に送達された放射線量の挙動を図5およびTable 5に示す。OLINDAでの入力として使用する速度論的取り込み値は、177Lu-PSMA-617および177Lu-HTK01169について、それぞれ3.80MBq-h/MBqおよび31.72MBq-h/MBqであった。177Lu-HTK01169は、シミュレートされた球体(腫瘍)のサイズに関係なく、LNCaP腫瘍に177Lu-PSMA-617よりも8.3倍高い放射線量を送達した。
【表5】
【0088】
1.25 内部放射線療法試験
内部放射線療法試験の結果をTable 6および図6に示し、治療後のLNCaP腫瘍体積およびマウス体重の経時的な変化を図7~12に示す。対照群(Table 6のグループA、図7(A))の腫瘍体積は処置(生理食塩水注射)後に継続的に増加し、対照群の生存期間中央値はわずか14日であった(腫瘍体積が1000mm3に達したときにマウスを安楽死させた)。177Lu-PSMA-617(18.5MBq、Table 6のグループB、図8A)で処置したマウスの腫瘍は、最初は縮小したが、後で再び成長し、生存期間の中央値は58日間に改善された。177Lu-HTK01169(Table 6、グループC~F、図9(A)~12(A))で処置したマウスの経時的な腫瘍サイズの変化は、注入された放射能に依存し、より高い放射能がより効果的で持続的な腫瘍増殖阻害につながった。18.5、9.3、4.6、および2.3MBqの177Lu-HTK01169で処置したマウスのグループの生存期間の中央値は、それぞれ>120、103、61、および28日であった。処置に関係なくすべてのマウスで体重減少は観察されず(図7(B)~12(B))、18.5MBqの177Lu-HTK01169(Table 6のグループC)で治療されたマウスはすべての、試験終了時(120日目)まで生存した。
【表6】
【0089】
1.3 考察
医薬品の循環時間を延長し、腫瘍への取り込みを最大化するための小分子アルブミン結合剤の使用は、内部放射線療法剤の設計のための魅力的な戦略となっている。先駆的研究は、主にETHチューリッヒの科学者によって、4-(p-ヨードフェニル)酪酸をアルブミン結合モチーフとして、ε-アミノ基でアシル化されたD-Lysを使用して行った。22 以前の研究では、葉酸受容体を標的とした放射性医薬品の設計にこの戦略を適用することに焦点があてられた。23 葉酸受容体αとプロトン共役葉酸トランスポーターは腎近位尿細管で高発現しているため、放射標識された葉酸誘導体は一般に非常に高く持続的な腎臓への取り込みをもたらする。23 ビルトインアルブミンバインダーを有する放射性標識された葉酸誘導体は、血中滞留時間を大幅に延長し、腫瘍への取り込みを増加させ、腫瘍と腎臓の取り込み比率を改善することが報告されている。23
【0090】
最近、この戦略を使用して、アルブミン結合モチーフを有するPSMAを標的とした放射線治療薬を設計する試みも行った。24-28 報告されたアルブミン結合PSMA標的化治療剤のうち、177Lu-PSMA-ALB-02、177Lu-PSMA-ALB-056と177Lu-RPS-063は、PSMA発現腫瘍に対し177Lu-PSMA-617より、約1.8、2.3、および3.8倍高い放射線量をもたらすことが示された。26-28 さらに、PSMA発現PC-3 PIP腫瘍を有するマウスの内部放射線療法試験で177Lu-PSMA-ALB-056をさらに評価した。27 177Lu-PSMA-617または177Lu-PSMA-ALB-056で処置されたマウスは、生理食塩水で処理した対照群のマウスと比較して生存期間の中央値が延長した。最も重要なのは、2MBqの177Lu-PSMA-ALB-056を使用した場合、5MBqの177Lu-PSMA-617を使用した場合と比較してやや良好な生存期間の中央値をもたらすことが可能であった(36 vs 32日)。
【0091】
本実施例では、最も研究されたPSMA標的放射線治療剤である177Lu-PSMA-617の腫瘍取り込みをさらに改善するため、新規アルブミン結合剤のコンジュゲーションを用いた。文献で報告された最も一般的なアルブミン結合モチーフは、ε-アミノ基で4-(p-ヨードフェニル)酪酸によってアシル化されたD-Lysで構成されていた。22-23 D-Lysのα-カルボキシル基はアルブミン結合モチーフの一部であるので、固相合成によるペプチドへの結合には使用できない。29 Lu-HTK01169の構造式で示されるように、Glu残基がD-Lysの代わりに用いられる。結果として、Glu側鎖のカルボキシル基はアルブミンへの結合に使用でき、α-カルボキシル基を固相合成によるペプチドへの結合に用いた。本実施例に示すように、DOTAキレーターとPSMA標的Lys-尿素-Gluの間のリンカーの修飾は、治療効果に悪影響を及ぼさなかったため、このようなリンカーの修飾は十分に許容できるという報告が確認された。17 実際、本実施例に示すように、Lu-HTK01169は、Lu-PSMA-617と比較してPSMA結合が6倍向上することが観察された(K値:0.04±0.01 vs 0.24±0.06nM)。理論に縛られることを望まないが、改善されたPSMA結合は、高度に親油性の4-(p-ヨードフェニル)ブチリル基の導入によるものであり得る。
【0092】
177Lu-HTK01169がアルブミンに結合する能力を、血漿タンパク質結合アッセイにより評価した。フリーの177Lu-PSMA-617が約17%であるのとは対照的に、同じ条件下で177Lu-HTK01169は1%未満であり、血漿タンパク質と相互作用するアルブミンバインダー修飾誘導体の能力が実証された。
【0093】
血中滞留時間を延長し、腫瘍への取り込みを最大化するためのアルブミン結合剤の付加は、SPECT/CTおよび体内分布試験によって確認された。177Lu-HTK01169はピーク腫瘍取り込みの改善(177Lu-HTK01169:55.9±12.5%ID/g;177Lu-PSMA-617:15.1±5.58%ID/g)だけでなく、最も重要なことには、177Lu-PSMA-617のように摂取量が時間の経過とともに減少せず、持続したことである。理論に縛られることを望まないが、これは、部分的には、Lu-PSMA-617よりもLu-HTK01169の改善されたPSMA結合に起因し得る。177Lu-PSMA-617と比較して、より長い滞留時間と改善された取り込みの組み合わせにより、LNCaP腫瘍異種移植片に対して、177Lu-PSMA-617の8.3倍の放射線量が得られた。このような設計戦略は、αエミッター225Acのようなより長い半減期を有する放射性同位体(t1/2225Ac、9.95 d;177Lu、6.65 d)にとってより重要であり得る。現在臨床で使用されている225Acは229Thから抽出され、供給が限定されている。30-31 225Ac-PSMA-617から225Ac-HTK01169に切り替えることで、225Ac-標識PSMAを標的とする放射性リガンドで治療できる患者数が有意に増加し得る。
【0094】
本実施例は、約37MBqの177Lu-PSMA-617または177Lu-HTK01169の注入によりLNCaP腫瘍異種移植片のサイズが時間の経過とともに急速に減少することを示した(図2)。高解像度SPECT画像の取得に使用された約37MBqの注入された放射能は、LNCaP腫瘍の治療に必要な177Lu-HTK01169の線量を超えている可能性がある。したがって、本実施例の内部放射線療法試験では、18.5MBqの177Lu-PSMA-617または177Lu-HTK01169、並びにその半分(9.3MBq)、4分の1(4.6MBq)または1/8(2.3MBq)の線量の177Lu-HTK01169で処理したマウスの生存期間中央値を比較した。線量測定データから予測されるとおり、177Lu-HTK01169の1/8線量(2.3MBq)は、177Lu-HTK01169(18.5MBq、Table 6)のそれと比較した場合、同様の生存期間中央値をもたらさなかった。しかし、4分の1の量(4.5MBq)の177Lu-HTK01169で処理されたマウスの生存期間の中央値は、18.5MBqの177Lu-PSMA-617で処理されたマウスのそれよりもわずかに優れていることが観察された(61 vs 58日、Table 6)。
【0095】
報告されたアルブミン-バインダー結合PSMA標的化放射線治療薬のうち、177Lu-PSMA-ALB-056のみが放射線療法試験で評価され、直接177Lu-PSMA-617と比較された。27 本実施例の知見と、177Lu-PSMA-ALB-056についてUmbrichtらによって報告された知見との主な違いは2つある。27 腫瘍モデルとして、本実施例では改変されていない内因性前立腺癌細胞株であるLNCaPを使用した。177Lu-PSMA-ALB-056の評価では、LNCaP細胞よりもPSMA発現レベルがはるかに高い形質導入細胞株であるPC-3 PIPを使用した。27 したがって、以前に報告された試験での177Lu-PSMA-ALB-056および177Lu-PSMA-617の治療線量(2および5MBq)は、本実施例で使用されたもの(2.3~18.5MBq)よりも低かった。2つ目の違いは腫瘍のサイズである。177Lu-PSMA-ALB-056の評価で用いた平均腫瘍サイズが約100mm3であるのに対し、177Lu-PSMA-617または177Lu-HTK01169で治療を開始する場合の本実施例での平均腫瘍サイズは531~640mm3であった。本実施例におけるより大きな腫瘍は、治療に対するより高い程度の耐性をもたらした可能性が高く、その後、同様の増殖阻害を達成するためにより高い放射線量を必要とした。
【0096】
177Lu-PSMA-617と比較して、アルブミン-結合剤を結合した177Lu-HTK01169は、LNCaP腫瘍異種移植片に3.7倍高いピーク取り込みと8.3倍の総放射線量を送達した。LNCaP癌を有するマウスを対象とした内部放射線療法試験はまた、177Lu-HTK01169は、同様の治療効果を達成するのに、177Lu-PSMA-617の投与された放射能の4分の1しか必要としないことを示した。臨床的に言うと、177Luまたは225Acで放射性標識されたHTK01169は、177Lu-PSMA-617の投与された放射能のほんの一部で、同様または改善された放射線治療効果をもたらす潜在能力を有する。HTK01169に新しく導入されたアルブミンバインダーは、ペプチド伸長に沿って固相上に直接構築できる。177Lu-HTK01169から得られた有望なデータに基づいて、この新しいアルブミン結合モチーフは、他の(放射性)ペプチドに適用して、血液保持時間を延長し、治療効果を最大化する潜在能力を有する。
【0097】
実施例2:修飾された金属キレートPSMA結合化合物
2.1 材料および方法
2.11 一般的方法
化学物質と溶媒はすべて商業的供給元から入手し、それ以上精製せずに使用した。PSMAターゲットペプチドは、AAPPTec(ルイビル、ケンタッキー州)のEndeavor 90ペプチドシンセサイザーで固相法を使用して合成した。低温および放射性標識のペプチドの精製と品質管理は、モデル1200クォータナリポンプ、モデル1200 UV吸光度検出器(220nmに設定)、およびBioscan(ワシントンDC)NaIシンチレーション検出器を備えたAgilent HPLCシステムで行った。Agilent HPLCシステムの操作は、Agilent ChemStationソフトウェアを使用して制御した。使用したHPLCカラムは、Phenomenex(Torrance、CA)から購入したセミ分取カラム(Luna C18、5μ、250×10mm)と分析カラム(Luna C18、5μ、250×4.6mm)であった。所望のペプチドを含む回収されたHPLC溶出液は、Labconco(カンザスシティー、MO)FreeZone 4.5 Plusフリーズドライヤーを使用して凍結乾燥した。質量分析は、ESIイオン源を備えたAB SCIEX(Framingham、MA)4000 QTRAP質量分析計システムを使用して行った。C18 Sep-Pakカートリッジ(1 cm3、50 mg)はウォーターズ(マサチューセッツ州ミルフォード)から入手した。68GaはiThemba Labs(Somerset West、南アフリカ)ジェネレーターから溶出し、Eichrom Technologies LLC(Lisle、IL)のDGA樹脂カラムを使用して精製した。68Ga標識ペプチドの放射能は、Capintec(Ramsey、NJ)CRC(登録商標)-25R/W線量キャリブレーターを使用して測定し、体内分布試験から収集されたマウス組織の放射能は、Perkin Elmer(Waltham、MA)Wizard2 2480自動ガンマカウンターを使用して計測した。
【0098】
2.12 HTK03026、HTK03027、HTK03029、およびHTK03041の合成
HTK03026、HTK03027、HTK03029、およびHTK03041の構造を以下に示す:
【化35】
【0099】
HTK3026、HTK03027、HTK03029、およびHTK03041の固相合成を文献の手順から変更した。16 Fmoc-Lys(ivDde)-Wang樹脂(0.3mmol、0.61mmol/g負荷)をDMFに30分間懸濁した。次に、DMF中の20%ピペリジンで樹脂を処理することにより(3×8分)、Fmocを除去した。文献の手順に従って、グルタミン酸のジ-t-ブチルエステルのイソシアネート誘導体(3当量)を調製した。17 リジン固定化樹脂に添加し、16時間反応させた。樹脂をDMFで洗浄した後、ivDde保護基をDMF中の2%ヒドラジンで除去した(5×5分)。次いで、Fmoc-2-Aoc-OH(HTK03026の場合)、Fmoc-Ala(2-Anth)-OH(HTK03027の場合)、Fmoc-Ala(1-ピレニル)-OH(HTK03029の場合)またはFmoc-Ala(9-Anth)-OH(HTK03041の場合)を、Fmoc保護アミノ酸(3当量)、HBTU(3当量)、HOBT(3当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(8当量)を用いてLysの側鎖に結合させた。その後、Fmoc-トラネキサム酸を添加して伸長を続け、最後にDOTA-トリス(t-bu)エステル(2-(4,7,10-トリス(2-(t-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10)-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)を加えた。
【0100】
次に、ペプチドを脱保護し、同時に室温で2時間、95/5のトリフルオロ酢酸(TFA)/トリイソプロピルシラン(TIS)で処理することにより、樹脂から切断した。濾過後、TFA溶液に冷ジエチルエーテルを加えることによりペプチドを沈殿させた。粗製ペプチドを、セミ分取用カラムを用いたHPLCにより精製した。所望のペプチドを含む溶出液を集め、プールし、凍結乾燥した。
HTK03026のHPLC条件は、0.1%TFAを含む27%アセトニトリル水溶液で、流速は4.5mL/分とした。保持時間は10.7分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03026) C45H75N9O16 986.5;実測値[M+H]+ 986.6。
HTK03027のHPLC条件は、0.1%TFAを含む32%アセトニトリル水溶液で流速4.5mL/分とした。保持時間は7.1分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03027) C53H74N9O16 1092.5;実測値[M+H]+ 1094.6。
HTK03029のHPLC条件は、0.1%TFAを含む33%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/分とした。保持時間は7.3分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03029) C55H74N9O16 1116.5;実測値[M+H]+ 1116.6。
HTK03041のHPLC条件は、0.1%TFAを含む31%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は7.2分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03041) C53H74N9O16 1092.5;実測値[M+H]+ 1092.6。
【0101】
2.13 HTK03024、HTK03055、HTK03056、HTK03058、HTK03082、HTK03085、HTK03086、HTK03087、HTK03089、およびHTK03090の合成
HTK03024、HTK03055、HTK03056、HTK03058、HTK03085、HTK03086、HTK03087、HTK03089、およびHTK03090の構造を以下に示す:
【化36】
式中、R=I(HTK03024)、Cl(HTK03055)、H(HTK03056)、Br(HTK03058)、F(HTK03085)、OCH3(HTK03086)、NH2(HTK03087)、NO2(HTK03089)、またはCH3(HTK03090)である。
【0102】
HTK03082の構造を以下に示す。
【化37】
(HTK03082)
Fmoc-Lys(ivDde)-Wang樹脂(0.3mmol、0.61mmol/g負荷)をDMFに30分間懸濁した。次に、DMF中の20%ピペリジンで樹脂を処理することにより(3×8分)、Fmocを除去した。文献の手順に従って、グルタミン酸のジ-t-ブチルエステルのイソシアネート誘導体(3当量)を調製した。17 リジン固定化樹脂に添加し、16時間反応させた。樹脂をDMFで洗浄した後、ivDde保護基をDMF中の2%ヒドラジンで除去した(5×5分)。次に、Fmocベースの化学を使用した固相ペプチド合成により、Fmoc-2-Nal-OHをLysの側鎖に結合させた後、Fmoc-トラネキサム酸、Fmoc-Lys(ivDde)-OH、およびFmoc-Gly-OHを結合させた。すべてのカップリングは、Fmoc保護アミノ酸(3当量)、HBTU(3当量)、HOBT(3当量)、DIEA(8当量)を用いて、DMF中で行った。その後、Fmocベースの化学を使用して同じペプチド結合樹脂に、4-(p-ヨードフェニル)酪酸(HTK03024の場合)、4-(p-クロロフェニル)酪酸(HTK03055の場合)、4-フェニル酪酸(HTK03056の場合)、4-(p-ブロモフェニル)酪酸(HTK03058の場合)、3-フェニルプロパン酸(HTK03082の場合)、4-(p-フルオロフェニル)酪酸(HTK03085の場合)、4-(p-メトキシフェニル)酪酸(HTK03086の場合)、4-(p-(t-ブチルオキシカルボニル)アミノフェニル)酪酸(HTK03087の場合)、4-(p-ニトロフェニル)酪酸(HTK03089の場合)、または4-(p-トリル)酪酸(HTK03090の場合)を結合させて伸長を継続した。DMF中の2%ヒドラジンでivDde保護基を選択的に除去した後(5×5分)、キレーターDOTAをLysの側鎖に結合させて前駆体を得た。
【0103】
次に、ペプチドを脱保護し、95/5のトリフルオロ酢酸(TFA)/トリイソプロピルシラン(TIS)で室温にて2時間処理することにより、同時に樹脂から切断した。濾過後、TFA溶液に冷ジエチルエーテルを加えることによりペプチドを沈殿させた。粗製ペプチドを、分取用カラムを用いたHPLCにより精製した。所望のペプチドを含む溶出液を集め、プールし、凍結乾燥した。
HTK03024のHPLC条件は、0.1%TFAを含む37%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は8.8分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03024) C67H96N12O19I 1499.6;実測値[M+H]+ 1499.6。
HTK03055のHPLC条件は、0.1%TFAを含む35%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は9.7分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03055) C67H96N12O19Cl 1407.7;実測値[M+H]+ 1407.7。
HTK03056のHPLC条件は、0.1%TFAを含む0-80%アセトニトリル水溶液(20分間)で流速4.5mL/分とした。保持時間は13.4分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03056) C67H97N12O19 1373.7;実測値[M+H]+ 1373.8。
HTK03058のHPLC条件は、0.1%TFAを含む0-80%アセトニトリル水溶液(20分間)で、流速4.5mL/分とした。保持時間は13.4分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03058) C67H96N12O19Br 1451.6;実測値[M+H]+ 1451.6。
HTK03082のHPLC条件は、0.1%TFAを含む31%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は11.1分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03082) C66H95N12O19 1359.7;実測値[M+H]+ 1359.9。
HTK03085のHPLC条件は、0.1%TFAを含む34%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は9.0分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03085) C67H96N12O19F 1391.7;実測値[M+H]+ 1391.9。
HTK03086のHPLC条件は、0.1%TFAを含む33%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は9.1分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03086) C68H99N12O20 1403.7;実測値[M+H]+ 1404.1。
HTK03087のHPLC条件は、0.1%TFAを含む23%アセトニトリル水溶液で流速4.5mL/分とした。保持時間は13.9分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03087) C67H98N13O19 1388.7;実測値[M+H]+ 1389.0。
HTK03089のHPLC条件は、0.1%TFAを含む33%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/分とした。保持時間は10.6分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03089) C67H96N13O21 1418.7;実測値[M+H]+ 1419.0。
HTK03090のHPLC条件は、0.1%TFAを含む35%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は9.1分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (HTK03090) C68H99N12O19 1387.7;実測値[M+H]+ 1387.9。
【0104】
2.14 Ga標識標準の合成
Ga標識標準を調製するために、各前駆体の溶液を、80℃で15分間、NaOAc緩衝液(0.1M、500μL、pH4.2)中のGaCl3(5当量)と共にインキュベートした。次に、反応混合物を、分取用カラムを用いたHPLCにより精製し、所望のペプチドを含むHPLC溶出液を回収し、プールし、凍結乾燥した。
Ga-HTK03026のHPLC条件は、0.1%TFAを含む27%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は9.4分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03026) C44H73N9O16Ga 1052.4;実測値[M+H]+ 1052.5。
Ga-HTK03027のHPLC条件は、0.1%TFAを含む32%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/分とした。保持時間は9.5分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03027) C53H72N9O16Ga 1159.4;実測値[M+H]+ 1161.4。
HTK03029のHPLC条件は、0.1%TFAを含む33%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は10.3分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03029) C55H72N9O16Ga 1183.4;実測値[M+H]+ 1183.4。
Ga-HTK03041のHPLC条件は、0.1%TFAを含む31%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は9.3分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03041) C53H72N9O16Ga 1159.4;実測値[M+H]+ 1159.4。
Ga-HTK03024のHPLC条件は、0.1%TFAを含む39%アセトニトリル水溶液で流速4.5mL/分とした。保持時間は8.0分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03024) C67H93N12O19IGa 1565.5;実測値[M+H]+ 1565.5。
Ga-HTK03055のHPLC条件は、0.1%TFAを含む35%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は12.7分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03055) C67H94N12O19ClGa 1474.6;実測値[M+H]2+ 738.4。
Ga-HTK03056のHPLC条件は、0.1%TFAを含む34%アセトニトリル水溶液で流速4.5mL/分とした。保持時間は9.0分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03056) C67H94N12O19Ga 1439.6;実測値[M+H]+ 1439.8。
Ga-HTK03058のHPLC条件は、0.1%TFAを含む34%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は10.3分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03058) C67H93N12O19BrGa 1517.5;実測値[M+H]+ 1518.0。
Ga-HTK03082のHPLC条件は、0.1%TFAを含む31%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は12.5分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03082) C66H93N12O19Ga 1426.6;実測値[M+H]+ 1426.9。
Ga-HTK03085のHPLC条件は、0.1%TFAを含む34%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は9.0分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03085) C67H94N12O19FGa 1458.6;実測値[M+H]+ 1459.6。
Ga-HTK03086のHPLC条件は、0.1%TFAを含む33%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/分とした。保持時間は12.0分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03089) C67H94N13O21Ga 1485.6;実測値[M+H]+ 1485.9。
Ga-HTK03090のHPLC条件は、0.1%TFAを含む35%アセトニトリル水溶液で、流速4.5mL/とした。保持時間は11.3分であった。ESI-MS:計算値[M+H]+ (Ga-HTK03090) C68H97N12O19Ga 1454.6;実測値[M+H]+ 1455.8。
【0105】
2.15 細胞培養
LNCap細胞株はATCC(LNCaPクローンFGC、CRL-1740)から入手した。この細胞は、ヒト前立腺腺癌の左鎖骨上リンパ節の転移部位から確立された。細胞は、10%FBS、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/ mL)を添加したPRMI 1640培地を用い、37℃、5%CO2を含む加湿インキュベーターにて培養した。次に、80~90%コンフルエンスに増殖した細胞を、無菌のリン酸緩衝生理食塩水(1×PBS pH7.4)で洗浄し、トリプシン処理した。回収した細胞数を、Hausser Scientific(Horsham、PA)血球計で計測した。
【0106】
2.16 68Ga標識化合物の合成
0.5mLの水中の精製された68Gaを、予め0.7mLのHEPES緩衝液(2M、pH5.0)および50μgのDOTA含有前駆体を入れた4mLのガラスバイアルに加えた。マイクロ波加熱下で放射性標識反応を1分間行った。反応混合物を、それぞれの非放射性Ga標識標準の精製についてセクション2.14で記載したのと同じセミ分取カラムと条件を使用して、HPLCで精製した。
【0107】
2.17 PET/CT造影および生体内分布
造影および生体内分布試験は、NODSCID 1L2RγKO雄マウスを使用して行った。マウスを酸素中2%イソフルランで吸入麻酔し、左肩の後ろに1×107 LNCaP細胞を皮下移植した。マウスは、腫瘍が5~6週間で直径5~8mmまで成長したときに造影するか、体内分布試験に使用した。
【0108】
PET造影試験はSiemens InveonマイクロPET/CTスキャナーを使用して行った。腫瘍を有する各マウスに、麻酔下(酸素中2%イソフルラン)で6~8MBqの68Ga標識トレーサーを尾静脈から注射した。マウスを回復させ、ケージ内を自由に歩き回らせた。50分後、マウスを酸素吸入の2%イソフルランで再度鎮静させ、スキャナーに配置した。PET画像を再構成するためのセグメンテーション後、ローカリゼーションと減衰補正のために、最初に10分のCTスキャンを行った。次に、10分間の静的PETイメージングを実行して、腫瘍や他の臓器への取り込みを測定した。取得の間、マウスを加熱パッドで保温した。注射後3時間(p.i.)に取得した造影試験では、マウスを170分p.i.でマイクロPET/CTスキャナーに配置した。次に、前述のようにCT撮影を行い、15分間の静的PETイメージングを行って、腫瘍や他の臓器への取り込みを測定した。
【0109】
生体内分布試験のために、上記のとおりマウスに放射性トレーサーを注射した。所定の時点(1時間または3時間)で、マウスを2%イソフルラン吸入で麻酔し、CO2吸入で安楽死させた。心臓からすぐに血液を採取し、目的の臓器/組織を採取した。収集した臓器/組織を秤量し、自動ガンマカウンターを使用してカウントした。各臓器/組織での取り込みは、標準曲線を使用して注射量に正規化され、組織1グラムあたりの注射量のパーセンテージ(%ID/g)で表した。
【0110】
2.2 結果
本実施例の結果をTable 7~10および図13~16に示す。実施例1の結果と組み合わせると、これらの結果は、式1-aおよび式1-bに包含される様々な化合物が特に有用であることを示している。
【表7】
【0111】
【表8】
【0112】
2017年10月22日に提出された米国仮出願番号62/575,460は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本願において記載される定義と参照により組み込まれる文書に記載の定義との間に不一致があり得る限りにおいて、本願での定義は、参照により組み込まれる文書での定義を上書きするものである。
【0113】
本発明を1つ以上の実施形態に関して記載した。但し、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更および修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【0114】
【表9】
【0115】
【表10】
【0116】
参考文献番号(文献名の行内記載は省略)
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図1
図2
図3A
図3B
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図16
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】
[式中、Rは
【化2】
である]
で示される化合物。
【請求項2】
Rが、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
放射性金属が結合している、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
放射性金属が、64Cu、111In、89Zr、44Sc、68Ga、99mTc、86Y、152Tbまたは155Tbである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物および薬学的に許容される添加剤を含む組成物。
【請求項6】
対象における前立腺特異的膜抗原(PSMA)発現癌の造影のための、請求項4に記載の化合物および薬学的に許容される添加剤を含む組成物。
【請求項7】
癌が、前立腺癌、腎癌、乳癌、甲状腺癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、脳腫瘍、黒色腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌または肉腫である、請求項6に記載の組成物。
【外国語明細書】