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▶ アンタイ−プラスミン テクノロジーズ, エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113698
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】非外科的治療を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/195 20060101AFI20230808BHJP
   A61K 38/57 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/4523 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61K31/195
A61K38/57
A61K31/197
A61K31/4523
A61P7/04
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P17/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081378
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2019554819の分割
【原出願日】2018-04-04
(31)【優先権主張番号】62/481,162
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519355002
【氏名又は名称】アンタイ-プラスミン テクノロジーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マードック, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ロリック, ロドニー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート, ダブリュ. ポール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】美容的または皮膚科学的処置などに関連する非外科的治療を向上させる方法を提供する。
【解決手段】非外科的治療を向上させる方法であって、非外科的治療のために、皮膚の一領域に、当該非外科的治療より前に抗線維素溶解薬を適用すること、皮膚の前記領域に非外科的治療を開始すること、および非外科的治療が完了するまで非外科的治療を継続することを含む方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非外科的治療を向上させる方法であって、
非外科的治療のために、皮膚の一領域に、当該非外科的治療より前に抗線維素溶解薬を適用すること、
皮膚の前記領域に非外科的治療を開始すること、および
非外科的治療が完了するまで非外科的治療を継続すること
を含む方法。
【請求項2】
抗線維素溶解薬を、非外科的治療の間に適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗線維素溶解薬を、非外科的治療の後に適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗線維素溶解薬が、溶液の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
溶液が、60%(重量/体積)以下の抗線維素溶解薬濃度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗線維素溶解薬が、トラネキサム酸、アプロチニン、イプシロンアミノカプロン酸(EACA)、クニッツドメイン(KD1)阻害剤またはAZD 6564である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
抗線維素溶解薬が、30%(重量/体積)以下のトラネキサム酸濃度を有するトラネキサム酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗線維素溶解薬が、少なくとも0.1%(重量/体積)のアプロチニン濃度を有するアプロチニンである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
抗線維素溶解薬が、60%(重量/体積)以下のEACA濃度を有するEACAである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
抗線維素溶解薬が、少なくとも0.1%(重量/体積)のKD1濃度を有するKD1である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
抗線維素溶解薬が、15%(重量/体積)以下のAZD 6564濃度を有するAZD 6564である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
抗線維素溶解薬が、溶液をヒト皮膚に適応させる薬学的に許容される担体の一部として適用される、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
非外科的治療が、美容的化合物、皮膚科学的化合物または他の化合物の注射または適用である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
抗線維素溶解薬が、非外科的治療の注射または適用の前に、間にまたは後に、ヒト皮膚の上または中に直接投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗線維素溶解薬を、治療材料と、治療材料を注射または適用する前に混合して混合材料を形成すること、および
前記混合材料を、治療される皮膚の前記領域に注射または適用すること、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
抗線維素溶解薬を適用することが腫脹、炎症または皮下出血を最小化する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
抗線維素溶解薬が全身的に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
抗線維素溶解薬が、非外科的治療の持続期間/機能を延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
非外科的治療が、皮膚充填剤または神経毒の注射である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
非外科的治療を向上させる組成物であって、抗線維素溶解薬を含む組成物。
【請求項21】
抗線維素溶解薬が、溶液の一部である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
抗線維素溶解薬が、溶液をヒト皮膚に適応させる薬学的に許容される担体の一部として局所適用される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
溶液が、60%(重量/体積)以下の抗線維素溶解薬濃度を有する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
抗線維素溶解薬が、トラネキサム酸、アプロチニン、イプシロンアミノカプロン酸(EACA)、クニッツドメイン(KD1)阻害剤またはAZD 6564である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
抗線維素溶解薬が、30%(重量/体積)以下のトラネキサム酸濃度を有するトラネキサム酸である、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
抗線維素溶解薬が、少なくとも0.1%(重量/体積)のアプロチニン濃度を有するアプロチニンである、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
抗線維素溶解薬が、60%(重量/体積)以下のEACA濃度を有するEACAである、請求項22に記載の組成物。
【請求項28】
抗線維素溶解薬が、少なくとも0.1%(重量/体積)のKD1濃度を有するKD1である、請求項22に記載の組成物。
【請求項29】
抗線維素溶解薬が、15%(重量/体積)以下のAZD 6564濃度を有するAZD 6564である、請求項22に記載の組成物。
【請求項30】
活性成分を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項31】
不活性成分を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項32】
治療材料を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項33】
治療材料が皮膚充填剤または神経毒である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
治療材料がヒアルロン酸ポリマーである、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
組成物が、非外科的治療と組み合わせて使用され、
非外科的治療が美容的処置、皮膚科学的処置または他の処置の注射または適用を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項36】
組成物の適用が、腫脹、炎症または皮下出血を最小化する、請求項20に記載の組成物。
【請求項37】
非外科的治療の注射または適用の前に、間にまたは後に、ヒト皮膚の上または中に直接投与される、請求項20に記載の組成物。
【請求項38】
薬学的に許容される担体と混合される、請求項20に記載の組成物。
【請求項39】
薬学的に許容される担体が、ゲル、ローションまたはクリームである、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
抗線維素溶解薬が、トラネキサム酸、アプロチニン、イプシロンアミノカプロン酸(EACA)、クニッツドメイン(KD1)阻害剤またはAZD 6564のアナログまたは誘導体である、請求項20に記載の組成物。
【請求項41】
非外科的治療の治療を向上させる方法であって、
皮膚の一領域に非外科的治療を開始すること、
非外科的治療を非外科的治療が完了するまで継続すること、ならびに
抗線維素溶解薬を皮膚の前記領域に適用することであり、当該適用が、非外科的治療の前、間および非外科的治療が開始された後のうち少なくとも1つである、抗線維素溶解薬を皮膚領域に適用すること
を含む方法。
【請求項42】
抗線維素溶解薬が、非外科的治療の前に適用される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
抗線維素溶解薬が、非外科的治療の間に適用される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
抗線維素溶解薬が、非外科的治療の後に適用される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
非外科的治療が、腫脹、炎症または皮下出血を最小化することによって向上する、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
非外科的治療が、非外科的治療の持続期間/機能を延長することにより向上し、
非外科的治療が皮膚充填剤または毒素を含む、
請求項41に記載の方法。
【請求項47】
抗線維素溶解薬を治療材料と混合して混合材料を形成すること、および
混合材料を治療される皮膚の前記領域に注射すること
を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
抗線維素溶解薬が、局所適用される溶液の一部である、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
溶液が、60%(重量/体積)以下の抗線維素溶解薬濃度を有する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
抗線維素溶解薬が、トラネキサム酸、アプロチニン、イプシロンアミノカプロン酸(EACA)、クニッツドメイン(KD1)阻害剤またはAZD 6564である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
抗線維素溶解薬が、30%(重量/体積)以下のトラネキサム酸濃度を有するトラネキサム酸である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
抗線維素溶解薬が、少なくとも0.1%(重量/体積)のアプロチニン濃度を有するアプロチニンである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
抗線維素溶解薬が、60%(重量/体積)以下のEACA濃度を有するEACAである、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
抗線維素溶解薬が、少なくとも0.1%(重量/体積)のKD1濃度を有するKD1である、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
抗線維素溶解薬が、15%(重量/体積)以下のAZD 6564濃度を有するAZD 6564である、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
抗線維素溶解薬が、溶液をヒト皮膚に適応させる薬学的に許容される担体の一部として適用される、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
非外科的治療が、美容的化合物、皮膚科学的化合物または他の化合物の注射または適用である、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる、2017年4月4日に出願された米国仮特許出願第62/481,162号からの優先権を主張する。
【0002】
本開示は、一般に非外科的治療に、より詳細には限定するものではないが、非外科的治療を向上させる方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の歴史
非外科的治療、例えば美容的または皮膚科学的処置に関連する非外科的治療の過程で、患者は、治療、例えば、充填剤もしくは神経毒の注射、またはケミカルピールの適用、アクネ治療、皮膚切除術およびレーザー皮膚治療に関連する、望まない腫脹、炎症および/または皮下出血を被ることがある。注射タイプの治療に関しては、針および圧力がわずかな出血を引き起こす可能性がある。この作用を阻止するために、エピネフリンなどのある種の血管収縮剤を、注射前に組織に適用して血管の寸法を低減し、それによって、血管が治療の間に傷付けられる可能性を少なくし、また、収縮した血管の寸法により出血の量を低減させることができる。しかし、エピネフリンなどの血管収縮剤は、薬物が消滅して血管が通常の状態に戻るにつれて、望まない作用をもたらし得る「リバウンド作用」を有する可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
非外科的治療を向上させる方法であって、非外科的治療の皮膚の一領域に非外科的治療より前に抗線維素溶解薬を適用すること、皮膚の前記領域に非外科的治療を開始すること、および非外科的治療が完了するまで非外科的治療を継続することを含む方法。
【0005】
非外科的治療を向上させる組成物であって、抗線維素溶解薬を含む組成物。
【0006】
非外科的治療の治療を向上させる方法であって、皮膚の一領域に非外科的治療を開始すること、非外科的治療を非外科的治療が完了するまで継続すること、ならびに抗線維素溶解薬を皮膚の前記領域に適用することであり、当該適用が非外科的治療の前、間および非外科的治療が開始された後のうち少なくとも1つである、抗線維素溶解薬を皮膚の前記領域に適用することを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
種々の実施態様において、方法および組成物は、皮下出血、腫脹、炎症または同様の事象に繋がりやすい非外科的治療を向上させるために使用され、方法は、非外科的治療の前に、間におよび/または後に抗線維素溶解薬を適用することにより、非外科的治療が行われる皮膚の一領域へ抗線維素溶解薬を適用することを含む。ある特定の実施態様において、皮下出血、腫脹および炎症を含む、ケミカルピール、皮膚切除、アクネ治療およびレーザー皮膚治療などの、いくつかの追加の非外科的な美容的および皮膚科学的治療がある。
【0008】
本発明の種々の実施態様を、ここから添付の表を参照して、より十分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態において具現化されてもよく、本明細書で明記する実施態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0009】
本発明の一目的は、非外科的治療から生じる腫脹、炎症、皮下出血、またはこれらと同一および類似のものの組合せを最小化または低減する方法および組成物であって、それにより非外科的治療を向上させることができる方法および組成物を提供することである。本発明のさらなる一目的は、皮膚充填剤および毒素を用いて、非外科的治療の持続期間/機能を延長することにより、非外科的治療を向上させることである。ある特定の実施態様において、本発明は、皮下出血、腫脹および炎症を含む、ケミカルピール、皮膚切除、アクネ治療およびレーザー皮膚治療などの、いくつかの非外科的な美容的および皮膚科学的治療と共に利用されてもよい。本明細書で使用するとき、非外科的治療は、審美的理由で身体的外観を改善するための美容的処置、損傷、疾患または機能不全の影響を修復するための、医薬、理学療法および放射線療法を含み、典型的には本質的に非侵襲性の、例えば皮膚の直線状切開を伴わない治療である治療を含むがこれらに限定されることはない、種々の治療を含んでよい。
【0010】
本発明によれば、非外科的治療は、ヒト患者の非外科的治療の前、間および/または後の1つまたは複数の抗線維素溶解薬の投与によって向上する。本明細書で使用するとき、用語「向上する」は、腫脹、炎症、皮下出血、またはこれらと同一および類似のものの組合せを最小化または低減することを意味し、また皮膚充填剤および毒素の持続期間/機能を延長することをも含んでよい。本発明の実施は、腫脹、炎症および/または皮下出血の低減をもたらすために非外科的治療の前に1種または複数の抗線維素溶解薬を利用する一方で、例えば、治療領域内またはその周辺において線維素溶解活性、例えばプラスミノゲンのプラスミンへの変換、を制限することにより、迅速かつ有効な治癒をさらに提供し、それによって非外科的治療を向上させることであってもよい。
【0011】
抗線維素溶解薬は、治療的、美容的または皮膚科学的治療の注射および/または適用などの非外科的治療に関連することがある腫脹、炎症、皮下出血、またはこれらと同一および類似のものの組合せを軽減するために提供されてもよい。抗線維素溶解薬は、単純な水溶液であってもよく、または薬学的に許容される担体、例えば、ゲル、ローション、またはクリームと混合してもよく、任意選択で、他の活性または不活性な治療成分および/または防腐剤を含んでもよい。溶液および/または化合物は、非外科的治療の注射または適用の数日、数時間、または数分前に、治療の間に、および/または治療の後に、治療に続いての腫脹、炎症および/または皮下出血を最小化するために、皮膚の上または中に直接投与されてもよい。抗線維素溶解薬はまた、非外科的医学的処置において同様な美容的ベネフィットおよび/または治癒ベネフィットを提供するために全身的に送達されてもよい。ある特定の実施態様において、局所投与と全身投与の組合せが使用されてもよい。
【0012】
一般的な抗線維素溶解薬の1つである、トラネキサム酸(TA)の静脈内投与に関して、この抗線維素溶解薬の最小投与量は、約10mg/kg体重である。より一般的な投与量は、連続的注入を用いる場合、治療前に約10mg/kg体重、その12時間後に1mg/kg/時である。連続注入を用いない場合、2回目のボーラス10mg/kgを、治療終了時か初回投与の約8時間後のどちらかに投与する。治療過程において投与する総量としての最大用量は、約80mg/kgである。用量は治療開始の約10~30分前に投与されるべきである。外傷発症に関して、投薬は、発症後3時間以内に行われるべきである。
【0013】
経口投与に関して、摂取されたTAの約半分は、血液中に入らず、したがって最小および最大用量は、IV投与の2倍量ということになる。重度の月経出血のような適応症に対しては、約8時間ごとに、5日間までの反復投与を行うべきである。別の一般的な抗線維素溶解薬、イプシロンアミノカプロン酸の投与量は、トラネキサム酸の投与量の約10倍である。
【0014】
本発明の目的において、抗線維素溶解薬は、組織中でのその継続的作用により、予防的に作用することができ、治療領域を、続いての非外科的治療に対して準備しかつ保護し、ならびに非外科的治療後に迅速なかつ改善された治癒過程を促進する。抗線維素溶解薬は、治療および/または注射材料に負の影響を与えることがないような方法で、適用および構成されてもよい。種々の実施態様において、抗線維素溶解薬は、例えば、遅発性の皮下出血、炎症および/または腫脹が起こり得る処置後の期間を通じて、例えば、2から7日間にわたって、療法を継続するために、注射に続いて送達されてもよい。
【0015】
本発明は、抗線維素溶解薬を前投与せずに、非外科的治療が開始された後に抗線維素溶解薬が投与される場合に、実施されてもよい。そうした実施において、抗線維素溶解薬は、非外科的治療の間および/または後に投与されることになる。非外科的治療の後に投与される場合、そうした投与は、迅速に、例えば、非外科的治療が完了した後、1時間以内などに、行われるべきである。さらに、本発明は、抗線維素溶解薬を注射される治療材料と混合することによって実施されてもよい。例えば、抗線維素溶解薬を前投与してまたは前投与せずに、注射材料を形成するためにトラネキサム酸とヒアルロン酸を混合してもよい。いくつかの実施態様において、抗線維素溶解薬は、アプロチニン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸(EACA)、クニッツドメイン(KD1)阻害剤、AZD 6564、およびそのアナログまたは誘導体であってもよい。
【0016】
抗線維素溶解薬は、血餅の溶解または分解を低減できるため、外科手術の間の止血過程を改善することが示されている。抗線維素溶解薬はまた、抜歯を受ける血友病患者において出血および輸血を低減するのに有効であることが示されている。さらに、抗線維素溶解薬は、経口投与した場合、重度の月経出血を低減することが示されている。
【0017】
本発明は、非外科的処置における望まない皮下出血、炎症、および/または腫脹を回避または低減するために、抗線維素溶解薬の活性を、治療の前に、間におよび/または任意選択で治療後に利用する。本発明は、炎症、皮下出血、および/または腫脹を低減する本抗線維素溶解薬の活性は、必ずしも、単に抗線維素溶解機能ばかりではなく、あるいは単に出血の低減に関連するばかりではなく、非外科的治療領域において治癒が加速され、かつより正常な治療前の状態への復帰を促すように、組織環境を改善することによって、予防および治癒効果をさらに含むこともできることを認識している。
【0018】
種々の実施態様において、非外科的治療より前に抗線維素溶解薬でヒトを治療する方法は、治療後の炎症、皮下出血、および/または腫脹を低減するために利用されてもよい。ある特定の実施態様において、方法は、抗線維素溶解薬を含む薬学的組成物を利用することを含む。いくつかの実施態様において、薬学的組成物は、30%(重量/体積)以下の抗線維素溶解薬濃度を有する溶液であり、任意選択で、その中において溶液がヒト皮膚への使用に適応可能な薬学的に許容される担体中にあってもよい。種々の実施態様において、濃度は、60%(重量/体積)以下の抗線維素溶解薬であってもよい。
【0019】
ある特定の実施態様において、薬学的組成物抗線維素溶解薬は、トラネキサム酸であり、トラネキサム酸はまた、任意選択で、ヒト皮膚に適応可能な薬学的に許容される担体中にあってもよい。他の実施態様において、抗線維素溶解薬は、注射後の炎症、皮下出血および/または腫脹を低減するために、非外科的治療の注射より前に投与されてもよい。他の実施態様において、抗線維素溶解薬は、続いての治療に負の影響を与えないような方法で適用および構成されてもよい。
【0020】
種々の実施態様において、非外科的治療の前に、間におよび/または後に抗線維素溶解薬でヒトを治療する方法は、炎症、皮下出血、および/または腫脹を低減するために利用されてもよい。ある特定の実施態様において、非外科的治療は、抗線維素溶解薬によって向上させることができ、それによって皮膚充填剤および毒素の持続期間/機能を延長するというベネフィットを提供する。種々の実施態様において、抗線維素溶解薬を含む溶液は、炎症、皮下出血および/または腫脹を低減するために利用されてもよく、また限定された適用時間、例えば、3分間、を有してもよい。他の実施態様において、溶液は、約2から5分間の範囲の適用時間を有してもよい。ある特定の実施態様において、溶液の適用時間は、3から10分間の範囲であってもよい。
【0021】
美容的/皮膚科学的治療において使用される皮膚充填剤、例えば、JUVEDERM(登録商標)およびRESTYLANE(登録商標)は、典型的にはヒアルロン酸を含む。皮膚充填剤は、典型的には、皮膚内(例えば、頬の真皮中層から深層、眼周辺または唇/口周辺領域)に注射され、注射領域にボリュームを与え、より若々しい外観を残すよう作用する。皮膚充填剤治療の効果は、通常、6から12ヶ月間持続する。美容的/皮膚科学的治療において使用される毒素は典型的に、神経毒、例えば、BOTOX(登録商標)を含む。これらの毒素は典型的に、皮膚内(例えば、眉間領域)に注射され、顔の筋肉を弛緩させ、それによって注射領域周辺のラインおよびしわを低減するよう作用し、効果は通常、3から6ヶ月間持続する。
【0022】
フィブリンおよびコラーゲンなどの種々の物質を分解する、プラスミノゲンのプラスミンへの変換を抑制することにより、抗線維素溶解薬は、身体が、注射された物質、例えばヒアルロン酸および/または種々の神経毒を分解するのに要する時間を長引かせることができると考えられる。身体が、注射された物質を分解するのに要する時間を長引かせることにより、本発明は、注射剤の性能を向上させることを目指している。ある特定の実施態様において、トラネキサム酸などの抗線維素溶解薬は、非外科的治療、例えば、皮膚充填剤注射の前に、治療の結果として典型的にもたらされる腫脹および皮下出血を低減するために、利用されてもよい。他の実施態様において、トラネキサム酸などの抗線維素溶解薬は、治療領域の皮下出血を低減するために、治療後に(例えば、皮膚充填剤注射後に)利用されてもよい。
【0023】
非外科的治療における抗線維素溶解薬の役割をさらに調べるために、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)解析を、トラネキサム酸および、皮膚に局所適用する製品においてゲル様の稠度を創出するのに用いられる一般的物質であり、非外科的治療における抗線維素溶解薬の担体としての可能性があるヒアルロン酸(すなわち、ヒアルロナン)を含む担体に対して、ならびに、より持続性を高めるための架橋ヒアルロン酸ポリマー含有の一般的なヒアルロン酸皮膚充填剤に対して行い、トラネキサム酸と混合したときに、それぞれの形態のヒアルロン酸に変化があったかどうかを調べた。先ず、1%(重量/体積)のヒアルロン酸ポリマーおよび防腐剤を含有するERACLEA(登録商標)Skin Careのスキンケア製品を試験した。トラネキサム酸およびERACLEA(登録商標)製品のHPLCプロファイルを確立した後、ERACLEA(登録商標)製品に、トラネキサム酸濃度3%(重量/体積)になる量のトラネキサム酸を加えた。混合して直ちに解析用のHPLC系に注入した新鮮な試料調製物、ならびに混合して、注入前に20分間放置した試料調製物で、解析を行った。
【0024】
トラネキサム酸とヒアルロン酸ポリマーとの相互作用試験を、同じERACLEA(登録商標)製品に濃度0.5%(重量/体積)のトラネキサム酸および3%(重量/体積)のトラネキサム酸を数週間前に添加した試料について、HPLCによりさらに行った。ヒアルロン酸皮膚充填剤、より特に、JUVEDERM(登録商標)充填剤に、3%(重量/体積)トラネキサム酸を添加して、HPLC解析をさらに行った。前記の試験と同様に、JUVEDERM(登録商標)の解析は、解析のために直ちに注入した新鮮な試料調製物ならびに注入前に20分間放置した試料調製物を用いて行った。トラネキサム酸といずれかの形態のヒアルロン酸ポリマーとの相互作用を示した解析は、なかった。
【0025】
さらに、HPLC解析を、ヒアルロン酸充填剤、具体的にはJUVEDERM(登録商標)について、ヒトプラスミンと混合した場合および生理食塩水と混合した場合とで、行った。これらの解析の目的は、ヒアルロン酸充填剤の分解、特に、ヒトプラスミンによる処置後の試料中のヒアルロン酸充填剤の完全な分解を、生理食塩水と混合した場合には全く影響がないことと共に、実証することである。前述の解析を、各解析に関してより詳細に、以下に記述する。
【0026】
トラネキサム酸に対するHPLC法の展開
試料調製物を次のように調製した:100μLのトラネキサム酸(供給源:AUROMEDICS(登録商標)、濃度100mg/mL滅菌溶液)をシリンジでバイアルから取り出し、体積比60:40の蒸留水/アセトニトリル水溶液を加えて、体積1000μLに希釈した。この原液を、ヒアルロン酸ポリマー、充填剤およびヒトプラスミンとの比較のためのHPLC法を展開するために何度も使用した。以下に示す表1は、流速1mL/分、試料濃度10mg/mL、注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系でHPLCを行ったトラネキサム酸の紫外(UV)結果を表す。以下に見られるように、トラネキサム酸の保持時間は、2.280分である。
【0027】
ヒアルロン酸ポリマーに対するHPLC法の展開
試料調製物を次のように調製した:10mgのヒアルロン酸ポリマー(供給源:ERACLEA(登録商標)、純水和)を、2.5mLオートサンプラーバイアルに秤取し、体積比60:40の蒸留水/アセトニトリル水溶液を加えて、体積1000μLに希釈して、標準原液として使用した。以下に示す表2は、流速1mL/分、試料濃度10mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系でHPLCを行ったヒアルロン酸ポリマーのUV結果を表す。以下に見られるように、ヒアルロン酸ポリマーの保持時間は、7.467分である。
【0028】
トラネキサム酸の保持時間2.280分とヒアルロン酸ポリマーの保持時間7.467分を利用して、トラネキサム酸とヒアルロン酸ポリマーとの間で算出した保持時間の差は、5.187分であった。
【0029】
トラネキサム酸とヒアルロン酸ポリマーとの何らかの結合相互作用を検出するHPLC試験
以下に示す表3は、新たに調製し、直ちに注入して、流速1mL/分、試料濃度10mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系でHPLCを行ったヒアルロン酸ポリマー中3%(重量/体積)トラネキサム酸のUV結果を表す。以下に見られるように、保持時間は、トラネキサム酸およびヒアルロン酸ポリマーに関して、それぞれ、2.217分および7.577分である。
【0030】
以下に示す表4は、20分間放置してから注入して、流速1mL/分、試料濃度10mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系でHPLCを行った、新たに調製したヒアルロン酸ポリマー中3%(重量/体積)トラネキサム酸のUV結果を表す。以下に見られるように、保持時間は、トラネキサム酸およびヒアルロン酸ポリマーに関して、それぞれ、2.217分および7.577分である。
【0031】
直ちに注入してHPLCを行ったヒアルロン酸ポリマー中トラネキサム酸試料、および20分間放置してから注入してHPLCを行ったヒアルロン酸ポリマー中トラネキサム酸試料から収集したデータに基づくと、20分間にわたり、トラネキサム酸とヒアルロン酸ポリマーとの間に相互作用はない。トラネキサム酸とヒアルロン酸ポリマーとの間に相互作用が存在しないことをさらに例証するために、追加の試料および種々の濃度でHPLC解析を行った。
【0032】
以下に示す表5は、HPLC解析を行う数週間前にHylaco,LLC.より供給されたヒアルロン酸ポリマー1%(重量/体積)を含有する溶液中の3%(重量/体積)トラネキサム酸のUV結果を表す。HPLCは、流速1mL/分、試料濃度10mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系で行った。以下に見られるように、保持時間は、トラネキサム酸およびヒアルロン酸ポリマーに関して、それぞれ、2.210分および7.520分である。同様に、以下に示すデータは、トラネキサム酸と溶液中に混合した場合のこのヒアルロン酸ポリマーとの間に相互作用がないことを示唆している。
【0033】
以下に示す表6は、HPLC解析を行う数週間前にHylaco,LLC.より供給されたヒアルロン酸ポリマー1%(重量/体積)を含有する溶液中の0.5%(重量/体積)トラネキサム酸のUV結果を表す。HPLCは、流速1mL/分、試料濃度12.0mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比60:40のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系で行った。以下に見られるように、保持時間は、トラネキサム酸およびヒアルロン酸ポリマーに関して、それぞれ、2.197分および7.593分である。
【0034】
以下に示す表7は、HPLC解析を行う数週間前にHylaco,LLC.より供給されたヒアルロン酸ポリマー(スクラッチ試料)中0.5%(重量/体積)トラネキサム酸のUV結果を表す。HPLCは、流速1mL/分、試料濃度11.6mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系で行った。以下に見られるように、保持時間は、トラネキサム酸およびヒアルロン酸ポリマーに関して、それぞれ、2.170分および7.497分である。
【0035】
上記のデータは、トラネキサム酸は、容易な局所適用のためのゲル様の稠度をもつ水溶液中のこの形態のヒアルロン酸ポリマーとは相互作用しないと思われることを示す。したがって、トラネキサム酸は局所調製物に使用される担体と適合性があることが示される。トラネキサム酸は、皮膚充填剤、特にJUVEDERM(登録商標)ファミリー充填剤の1つ、に使用される架橋形態のヒアルロン酸と相互作用するかどうか、および、したがって非外科的治療がヒアルロン酸皮膚充填剤を利用する場合に、炎症、皮下出血および/または腫脹を低減するために、非外科的治療の前および後に使用するのに適するかどうかを判定するために、さらなる解析を行った。
【0036】
ヒアルロン酸充填剤に対するHPLC法の展開
試料調製物を次のように調製した:13mgの充填剤(供給源:JUVEDERM(登録商標)Vollere XC)を、2.5mLバイアルに秤取し、体積比60:40の蒸留水/アセトニトリル水溶液を加えて、体積1000μLに希釈した。以下に示す表8は、流速1mL/分、試料濃度13mg/mL(シリンジから)、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系でHPLCを行ったJUVEDERM(登録商標)Vollere XCのUV結果を表す。以下に見られるように、保持時間は、充填剤に関して、2.167分、3.420分および9.953分であり、最大面積は保持時間3.420分で得られた。
【0037】
以下に示す表9は、新たに調製し、直ちに注入して、流速1mL/分、試料濃度10mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系でHPLCを行ったJUVEDERM(登録商標)充填剤中3%(重量/体積)トラネキサム酸のUV結果を表す。以下に見られるように、保持時間は、トラネキサム酸およびJUVEDERM(登録商標)充填剤に関して、それぞれ、2.327分および3.143分である。
【0038】
以下に示す表10は、20分間放置してから注入して、流速1mL/分、試料濃度10mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系でHPLCを行った、新たに調製したJUVEDERM(登録商標)充填剤中3%(重量/体積)トラネキサム酸のUV結果を表す。以下に見られるように、保持時間は、トラネキサム酸およびJUVEDERM(登録商標)充填剤に関して、それぞれ、2.327分および3.143分である。
【0039】
直ちに注入してHPLCを行ったJUVEDERM(登録商標)充填剤中トラネキサム酸、および20分間放置してから注入してHPLCを行った試料から収集したデータに基づくと、トラネキサム酸と充填剤との間に20分間にわたり、相互作用はない。データは、特に、数週間接触した場合にゲル溶液中のトラネキサム酸とヒアルロン酸との間に相互作用がなかったことから、トラネキサム酸と皮膚充填剤材料との間に何らかの相互作用があるのであれば、20分間にわたる両者の直接的接触の間に相互作用が示されるであろうことを示唆している。
【0040】
ヒトプラスミンに起因するヒアルロン酸充填剤の分解の可能性を調べるために、ヒトプラスミンに接触させたヒアルロン酸充填剤、ならびに生理食塩水に浸したヒアルロン酸充填剤に関して、HPLCを用いて、ヒアルロン酸充填剤を解析した。
【0041】
ヒトプラスミンに接触させたヒアルロン酸充填剤の分解を測定するためのHPLC試験
試料調製物を次のように調製した:13mgの充填剤(供給源:JUVEDERM(登録商標)Vollere XC)を、2.5mLバイアルに秤取し、体積比60:40の蒸留水/アセトニトリル水溶液を加えて、体積1000μLに希釈した。この原液から、100μLを採り、100μLの5U(0.5mL)のヒトプラスミン(供給源:Sigma Aldrich、Lot #17148421)と混合し、15分間ゆっくりと振盪し、濾過して、HPLC系に注入した。以下に示す表11は、流速1mL/分、試料濃度13mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系でHPLCを行った試料のUV結果を表す。以下のデータは、3.14分(すなわち、充填剤のピーク)において保持ピークが見られないことから、ヒトプラスミンで処置後の充填剤ヒアルロン酸ポリマーの完全な分解が存在することを示唆している。
【0042】
3.14分における保持ピークが明らかに存在しない、3.003分および3.900分という保持時間を上に示す。表11は、充填剤が存在していたのであれば、出現していたであろう3.14分における保持ピークが存在しないことから、ヒトプラスミンで処置後の充填剤ヒアルロン酸ポリマーの完全な分解を示している。
【0043】
充填剤データとヒトプラスミンで処置した充填剤のデータとの比較は、3.14における保持ピークは、ヒトプラスミンで処置した充填剤においては存在しない一方で、この保持ピークは、充填剤においては明白に観察できることを示す。データは、ヒトプラスミンで処置後の充填剤ヒアルロン酸ポリマーの完全な分解を示している。
【0044】
生理食塩水に浸した後のヒアルロン酸充填剤の分解を測定するためのHPLC試験
試料調製物を次のように調製した:10mgの充填剤(供給源:JUVEDERM(登録商標)Vollere XC)を、2.5mLバイアルに秤取し、体積比60:40の蒸留水/アセトニトリル水溶液を加えて、体積1000μLに希釈した。この原液から、100μLを採り、100μLの生理食塩水(供給源:Hospira,Inc.、Lot 64-154-DK)と混合し、15分間ゆっくりと振盪し、濾過して、HPLC系に注入した。以下に示す表12は、流速1mL/分、試料濃度10mg/mL、および注入量10μL、波長205nm、および体積比40:60のアセトニトリル/蒸留水の溶媒系でHPLCを行った試料のUV結果を表す。以下に見られるように、保持時間は、2.353分および3.120分である。
【0045】
結果の概要
前述の考察に示すように、トラネキサム酸は、皮膚充填剤としての使用のためのゲル形態であれ、架橋形態であれ、ヒアルロン酸とは相互作用しないと思われ、したがって、非外科的治療がヒアルロン酸ベースの皮膚充填剤を含む場合に、炎症、皮下出血および/または腫脹を低減するために、非外科的治療の前および後に使用するのに適しているであろう。
【0046】
上記のように、トラネキサム酸とJUVEDERM(登録商標)の混合物は20分間放置され、このことはトラネキサム酸と皮膚充填剤材料との間に相互作用がないことを示すものである。さらに、トラネキサム酸とERACLEA(登録商標)製品中のヒアルロン酸との間に、数週間接触させておいた場合、相互作用はなかったし、また皮膚充填剤中の架橋ヒアルロン酸は、一般に、架橋させていないヒアルロン酸と比較してはるかに堅固である。皮膚充填剤処置において、トラネキサム酸は、一般に、トラネキサム酸が身体によって代謝される前の約18時間以内に、皮膚中でヒアルロン酸材料と接触することになる。
【0047】
さらに、データは、充填剤ヒアルロン酸ポリマーはヒトプラスミンによって完全に分解され、またトラネキサム酸などの抗線維素溶解薬は、プラスミノゲンのプラスミンへの変換を抑制するところから、トラネキサム酸の使用は、実際、インビボ充填剤処置の持続期間および有効性を増大することができることを示す。
【0048】
さらに、以下で論じるように、臨床試験は、非外科的治療にトラネキサム酸を加えることは、トラネキサム酸などの抗線維素溶解薬の非存在下で行われた臨床試験と比較して、皮下出血および腫脹を低減することを立証したことを示す。
【0049】
臨床試験
鼻唇溝におけるJUVEDERM(登録商標)Ultra XCの無作為化比較臨床評価が2週間にわたって行われ(Allerganが実施)、一般的な治療部位反応が、重症度および持続期間ごとに、示された。JUVEDERM(登録商標)Ultra XCに対する最もよく見られた注射部位反応は、発赤、腫脹、柔軟性、堅さ、しこり/こぶ、変色および皮下出血であった。試験によれば、全体として、86%の被験者が腫脹を報告し、59%の被験者が皮下出血を報告した。
【0050】
約1年間にわたって行われた非外科的使用において、318名の患者を、ヒアルロン酸皮膚充填剤の注射前および注射後に、濃度3%(重量/体積)のトラネキサム酸を含む溶液に曝露した。患者の1%未満が皮下出血および腫脹で、トラネキサム酸の使用なしでのヒアルロン酸充填剤処置と比較して、指数関数的および予想外の低下の発生を報告した。318名中3名の患者が、皮下出血または腫脹の発生を報告した。
【0051】
前述のように、臨床的使用において、トラネキサム酸は皮下出血および腫脹の抑制において重要な役割を果たす。これは、非外科的治療の注射部位における抗線維素溶解薬の活性に起因する可能性がある。さらに、前述の検査データに基づき、抗線維素溶解薬は、プラスミノゲンのプラスミンへの変換を抑制することにより、注射されたヒアルロン酸皮膚充填剤の分解を遅らせるのに重要な役割を果たす可能性がある。
【0052】
種々の実施態様において、抗線維素溶解薬は、アプロチニン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸(EACA)、クニッツドメイン(KD1)阻害剤、AZD 6564、およびそのアナログまたは誘導体であってもよい。種々の実施態様において、クニッツドメイン阻害剤は、KD1に類似のクニッツ型阻害剤であってもよい。
【0053】
ある特定の実施態様において、EACAは60%(重量/体積)以下のEACA溶液中の抗線維素溶解薬として利用されてもよい。いくつかの実施態様において、EACAの濃度は、約7%(重量/体積)から約60%(重量/体積)の範囲であってもよい。
【0054】
他の実施態様において、トラネキサム酸は、30%(重量/体積)以下のトラネキサム酸溶液中の抗線維素溶解薬として利用されてもよい。種々の実施態様において、トラネキサム酸の濃度は、約0.7%(重量/体積)から約30%(重量/体積)の範囲であってもよい。
【0055】
さらなる実施態様において、アプロチニンが、少なくとも0.1%(重量/体積)のアプロチニン溶液中の抗線維素溶解薬として利用されてもよい。
【0056】
よりさらなる実施態様において、KD1は、少なくとも0.1%(重量/体積)のKD1溶液中の抗線維素溶解薬として利用されてもよい。
【0057】
ある特定の実施態様において、AZD 6564は、15%(重量/体積)以下の溶液中の抗線維素溶解薬として利用されてもよい。さらなる実施態様において、AZD 6564の濃度は、約0.35%(重量/体積)から約15%(重量/体積)の範囲であってもよい。
【0058】
本開示の方法および組成物の種々の実施態様は、添付の表および図面において例証され、かつ前述の明細書において記述されているが、本発明は開示の実施態様に限定されることはなく、本明細書において明記される本発明の精神および範囲から逸脱することなく多数の再構成、変更および置換が可能であることが理解されるであろう。本明細書および実施例は、例証としてのみ、解釈されることを意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非外科的治療を向上させる方法であって、
非外科的治療のために、皮膚の一領域に、当該非外科的治療より前に抗線維素溶解薬を適用すること、
皮膚の前記領域に非外科的治療を開始すること、および
非外科的治療が完了するまで非外科的治療を継続すること
を含む方法。
【外国語明細書】