(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113705
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】細胞寿命及び健康寿命を延長するための反応性γ-ケトアルデヒドのスカベンジャーの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/135 20060101AFI20230808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230808BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61K31/135
A61P43/00 111
A61P25/28
A61P37/02
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081751
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2019500331の分割
【原出願日】2017-07-06
(31)【優先権主張番号】62/359,183
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】511183973
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】305 Kirkland Hall,2201 West End Avenue,Nashville, Tennessee 37240, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ セカンド,エル.ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】グエン,トゥイ ティー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サーチュイン機能を保存するための組成物を提供する。
【解決手段】下記式及びその薬学的に許容し得る塩から選択される化合物を含んでなる、サーチュイン機能を保存するための組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの真核細胞に、有効量の少なくとも1つのγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を投与することを含んでなる、少なくとも1つの真核細胞の生存を促進させる方法。
【請求項2】
前記細胞が対象中に存在し、前記化合物がサリチルアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が式:
【化1】
(式中:
RはN又はCであり;
R
2は独立してH、置換又は非置換のアルキルであり;
R
3はH、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R
4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
及びその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が
【化2】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が
【化3】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が
【化4】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が
【化5】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が
【化6】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
有効量の少なくとも1つのγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を患者に投与することを含んでなる、対象において、細胞死又は細胞老化に関連する疾患又は障害を治療又は予防する方法。
【請求項10】
化合物がサリチルアミンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が式:
【化7】
(式中:
RはN又はCであり;
R
2は独立してH、置換又は非置換のアルキルであり;
R
3はH、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R
4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
及びその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が
【化8】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が
【化9】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が
【化10】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が
【化11】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が
【化12】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
治療有効量の少なくとも1つのγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を対象に投与することを含んでなる、対象において、アルツハイマー病を含む神経変性障害を治療又は予防する方法。
【請求項18】
前記化合物がサリチルアミンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が式:
【化13】
(式中:
RはN又はCであり;
R
2は独立してH、置換又は非置換のアルキルであり;
R
3はH、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R
4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
及びその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が
【化14】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物が
【化15】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が
【化16】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物が
【化17】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物が
【化18】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
治療有効量の少なくとも1つのγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を対象に投与することを含んでなる、対象において筋肉ATPレベルを増加させる方法。
【請求項26】
前記化合物がサリチルアミンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物が式:
【化19】
(式中:
RはN又はCであり;
R
2は独立してH、置換又は非置換のアルキルであり;
R
3はH、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R
4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
及びその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が
【化20】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が
【化21】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が
【化22】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物が
【化23】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が
【化24】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
治療有効量の少なくとも1つのγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を対象に投与することを含んでなる、炎症性自己免疫応答を治療する方法。
【請求項34】
前記化合物がサリチルアミンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物が式:
【化25】
(式中:
RはN又はCであり;
R
2は独立してH、置換又は非置換のアルキルであり;
R
3はH、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R
4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
及びその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物が
【化26】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物が
【化27】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物が
【化28】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物が
【化29】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記化合物が
【化30】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択される、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0001】
政府の補助
本発明は、国立衛生研究所により授与された助成番号HL121174及びHL095797の政府の支援によりなされた。米国政府は本発明に関する権利を有する。
先の出願
本願は、2016年7月6日出願の米国特許出願第62/359,183号(この内容は、参照により本明細書中に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
発明の説明
イソケタール(IsoK)は、脂質過酸化の高度反応性β-ケトアルデヒド生成物であって、タンパク質のリシル側鎖に共有結合的に付加してその機能を障害するものである。C. elegansをモデル生物として用いて、本発明者らは、IsoKが付加及び特定のタンパク質標的の不活化を通じて、分子老化の一因となること、及びこのプロセスが選択的IsoKスカベンジャーである本発明の化合物(サリチルアミン(SA)を含む)を用いて抑止され得ることを発見した。
本発明者らは、少なくとも1つの本発明の化合物での処理が成体線虫の長寿を67%近く延長し、老化に伴う複数の有害な生化学的及び機能的変化を予防することを発見した。
【0003】
本発明の化合物の例として、式:
【化1】
(式中:RはN又はCであり;R
2は独立してH、置換又は非置換のアルキルであり;R
3はH、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;R
4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
及びその薬学的に許容し得る塩から選択される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0004】
化合物は
【化2】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択され得る。
【0005】
化合物はまた
【化3】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択され得る。
【0006】
化合物又はアナログはまた
【化4】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択され得る。
【0007】
化合物はまた
【化5】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択され得る。
【0008】
化合物は
【化6】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択され得る。
【0009】
したがって、本発明の1つの実施形態は、必要とする患者に、有効量の少なくとも1つの本発明のγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩投与することを含んでなる、細胞の生存を促進する方法である。好ましくは、化合物はサリチルアミンである。
本発明の他の1つの実施形態は、必要とする患者に、有効量の少なくとも1つの本発明のγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を投与することを含んでなる、対象者における細胞死又は細胞老化に関連する疾患又は障害を治療又は予防する方法である。好ましくは、化合物はサリチルアミンである。
本発明の他の1つの実施形態は、必要とする対象者に、治療有効量の少なくとも1つの本発明のγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を投与することを含んでなる、対象者における神経変性障害(アルツハイマー病)を治療又は予防する方法である。好ましくは、化合物はサリチルアミンである。
【0010】
本発明の他の1つの実施形態は、必要とする対象者に、治療有効量の少なくとも1つの本発明のγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を投与することを含んでなる、対象者において筋肉のアデノシン三リン酸(ATP)レベルを増加させる方法である。好ましくは、当該化合物はサリチルアミンである。
本発明の他の1つの実施形態は、必要とする対象者に、治療有効量の少なくとも1つの本発明のγ-KAスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を投与することを含んでなる、炎症性自己免疫応答を治療する方法である。好ましくは、当該化合物はサリチルアミンである。
【0011】
本明細書及び添付の請求の範囲において用いる場合、単数形は、その内容がそうでないことを明確に示していない限り、言及対象が複数であることも含む。よって、例えば、「官能基」、「アルキル」又は「残基」への言及は、2又は3以上の当該官能基、アルキル又は残基の組合せも含む、といった具合である。
範囲は、本明細書においては、「約」が付された或る特定の値からとして及び/又は「約」が付された他の特定の値までとして表現され得る。このような範囲が表現されているとき、更なる観点は当該或る特定の値から及び/又は当該他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を用いて近似値として表現されるとき、当該特定の値が更なる観点を構成するものと理解される。更に、範囲の各端点は、その他の端点に対しても、その他の端点から独立しても、有意であると理解される。また、本明細書に開示される幾つかの値が存在すること、及び各値は、本明細書においては、当該値自体に加えて、「約」が付された当該特定の値としても開示されているものと理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。2つの特定の単位の間の各単位もまた開示されているものと理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、11、12、13及び14もまた開示されている。
【0012】
本明細書で用いる場合、用語「任意に有していてもよい~」又は「任意に~していてもよい」は、その後に記載する事象又は状況が生じても生じなくてもよいこと、並びに当該記載が前記事象又は状況が生じる場合の例及び生じない場合の例の両方を含むことを意味する。
本明細書で用いる場合、用語「対象者」とは投与の標的をいう。本明細書に開示される方法の対象者は、脊椎動物(例えば、哺乳動物)、魚類、鳥類、爬虫類又は両生類であり得る。よって、本明細書に開示される方法の対象者は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット又はげっ歯類であり得る。この用語は、特定の年齢も特定の性別も意味しない。よって、成体の及び新生の対象者並びに胎児/胎仔が、雄性又は雌性にかかわらず、包含されると意図されている。患者とは疾患又は障害に罹患した対象者をいう。用語「患者」はヒト及び獣医学的対象者を含む。
本明細書で用いる場合、用語「治療」とは、疾患、病的状態又は障害を治癒、寛解、安定化又は予防する意図での患者の医学的管理をいう。この用語は、積極的治療、すなわち、疾患、病的状態又は障害の改善に対して特異的に向けられた治療を含み、また、原因治療、すなわち、関連する疾患、病的状態又は障害の原因の除去に向けられた治療も含む。加えて、この用語は、待期療法、すなわち、疾患、病的状態又は障害の治癒より症状の軽減のために計画された治療;予防療法、すなわち、関連する疾患、病的状態又は障害の最小化又はそれらの発症の部分的若しくは完全な阻止に向けられた治療;及び支持治療、すなわち、関連する疾患、病的状態又は障害の改善に向けられた他の特異的療法を補うために用いられる治療を含む。
【0013】
本明細書で用いる場合、用語「予防する」又は「予防すること」とは、特に事前の作用により、何かの発生を防止すること、回避すること、取り除くこと、事前に措置すること、停止させること又は妨げることをいう。低減する、阻害する又は予防するが本明細書において使用される場合、具体的にそうでないと示されていない限り、他の2つの語の使用もまた、明確に開示されているものと理解される。本明細書において理解し得るように、治療及び予防の定義は重複部分が存在する。
本明細書で用いる場合、用語「診断される」は、当業者(例えば、医師)による健康診断を受け、本明細書において開示される化合物、組成物又は方法により診断又は治療することができる病的状態を有することが判明したことを意味する。本明細書で用いる場合、句「障害についての治療を必要としていると同定される」などとは、当該障害の治療の必要性に基づく対象者の選択をいう。例えば、対象者は、当業者による早期の診断に基いて、障害(例えば、炎症に関連する障害)の治療の必要性を有していると同定され得、その後、当該障害について治療を受けることができる。同定は、1つの観点において、診断する人とは異なる人が行い得ることも企図されている。また、更なる観点において、施術は、その後に施術を行う者が行い得ることも企図されている。
【0014】
本明細書で用いる場合、用語「投与すること」及び「投与」とは医薬調製物を対象者に提供する任意の方法をいう。このような方法は当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与及び非経口投与(注射可能な、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与及び皮下投与を含む)を含むが、これらに限定されない。投与は連続的又は間欠的であり得る。種々の観点において、調製物は、治療的に投与し得る;すなわち、既存の疾患又は病的状態を治療するために投与され得る。更なる種々の観点において、調製物は予防的に投与し得る;すなわち、疾患又は病的状態の予防のために投与され得る。
【0015】
本明細書で用いる場合、用語「有効量」とは、望ましくない状態に対して、所望の結果を達成するため又は或る効果を発揮するために十分である量をいう。例えば、「治療有効量」とは、望ましくない症状に対して、所望の治療結果を達成するため又は或る効果を発揮するために十分であるが、有害な副作用を引き起こすには一般的に不十分である量をいう。任意の特定の患者についての具体的な治療有効用量レベルは、種々の因子(治療すべき障害及び該障害の重篤度;用いる具体的組成物;患者の年齢、体重、健康一般、性別及び食餌;投与の回数;投与の経路;用いる具体的化合物の排泄速度;治療の継続期間;用いる具体的化合物と意図的に組み合わせて用いられるか又は偶然に同時に投与される薬物などを含む、医療分野において周知の因子)に依存する。例えば、所望の治療効果の達成に必要なレベルより低いレベルの用量の化合物から始めて、所望の効果が達成するまで徐々に投薬量を増加させることは、当業者に周知である。所望であれば、効果的な日用量は投与目的で複数の用量分割し得る。結果として、単回用量組成物は、そのような量又は日用量となるようなその約数分量を含み得る。投薬量は、任意の配合禁忌の場合、個々の医師により調整され得る。投薬量は変化し得、1日に1回又は2回以上の投薬で1日間又は数日間投与され得る。ガイダンスは、所与の医薬品クラスの適切な投薬についての文献に見出すことができる。更なる種々の観点において、調製物は「予防有効量」;すなわち、疾患又は病的状態の予防に効果的な量で投与され得る。
【0016】
本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容し得る担体」とは、滅菌の水性又は非水性の溶液、分散物、懸濁物又はエマルジョン、及び使用直前での滅菌の注射可能な溶液又は分散物への再構成のための滅菌の粉体をいう。適切な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例として、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)及び注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーディング剤(例えば、レシチン)の使用により、分散物の場合には必要な粒子サイズの維持及び界面活性剤の使用により維持され得る。これら組成物はまた、アジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含有し得る。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌及び抗菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含ませることにより保証し得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含ませることが望ましいこともある。注射可能な剤形の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含ませることにより生じ得る。注射可能なデポー剤形は、生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)中に薬物のマイクロカプセルマトリクスを形成することにより製造される。薬物 対 ポリマーの比及び用いる特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出速度は制御し得る。デポー型の注射可能な製剤はまた、体組織と適合性であるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を含ませることにより製造することもできる。この注射可能な製剤は、例えば、細菌保定フィルターでの濾過により、又は滅菌水又は他の滅菌の注射可能な媒体に使用直前に溶解若しくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより滅菌し得る。適切な不活性な担体として、糖、例えばラクトースを挙げることができる。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01~10マイクロメーターの範囲の効果的粒子サイズを有する。
【0017】
本明細書で用いる場合、用語「スカベンジャー」又は「スカベンジング」とは、不純物又は望まない反応生成物を除去又は不活化するために投与され得る化学物質をいう。例えば、イソケタールは、タンパク質のリシル残基に対して特異的に、不可逆的に付加する。本発明のイソケタールスカベンジャーは、イソケタールがリシル残基に付加する前にイソケタールと反応する。したがって、本発明の化合物はイソケタールを「スカベンジング」することにより、イソケタールがタンパク質に付加することを予防する。
本明細書で用いる場合、用語「置換(された)」は、有機化合物の許される置換基を全て含むものとする。1つの幅広い観点において、許される置換基として、有機化合物の非環式及び環式の、分岐及び非分岐の、炭素環式及びヘテロ環式並びに芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基として、例えば下記のものが挙げられる。許される置換基は、適切な有機化合物について1又は2以上の同じ又は異なるものであり得る。本開示の目的には、ヘテロ原子(例えば、窒素)は、水素置換基及び/又は本明細書に記載の有機化合物の任意の許される置換基(ヘテロ原子の価数を満足するもの)を有し得る。本開示は、有機化合物の許される置換基によって、如何なる様式でも制限されることを意図されていない。また、用語「置換」又は「~で置換(された)」は、当該置換が置き換えられた原子及び置換基の許される価数に従うこと、及び置換が安定な化合物、例えば、(例えば、再配置、環化、除去などによる)変換を自発的に受けない化合物をもたらすことという暗黙の条件を含む。
【0018】
用語「アルキル」は、本明細書で用いる場合、1~24の炭素原子の分岐又は非分岐の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。アルキル基は環式又は非環式であり得る。アルキル基は分岐又は非分岐であり得る。アルキル基はまた置換又は非置換であり得る。例えば、アルキル基は、1又は2以上の本明細書に記載の基(任意に置換していてもよいアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含むが、これらに限定されない)で置換され得る。「低級アルキル」基は、1~6(例えば、1~4)の炭素原子を含むアルキル基である。
【0019】
本明細書を通じて「アルキル」は、一般に、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指称するために用いられる;しかしながら、置換アルキル基はまた、アルキル基の具体的置換基を特定することにより、本明細書において具体的に言及される。例えば、用語「ハロゲン化アルキル」は、1又は2以上のハライド(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)で置換されたアルキル基を具体的に指す。用語「アルコキシアルキル」は、1又は2以上の下記のようなアルコキシ基で置換されたアルキル基を具体的に指す。用語「アルキルアミノ」は、1又は2以上の下記のアミノ基で置換されたアルキル基を具体的に指す。といった具合である。「アルキル」が或る1つの例で用いられ、具体的用語、例えば「アルキルアルコール」が別の或る1つの例で用いられる場合、用語「アルキル」も具体的用語、例えば「アルキルアルコール」を指すことを示唆すると意味していない。といった具合である。
このルールは本明細書に記載の他の基にも適用される。すなわち、用語、例えば「シクロアルキル」は非置換及び置換のシクロアルキル部分を指す一方、置換部分は、加えて、本明細書において具体的に特定され得る;例えば、特定の置換シクロアルキルは、例えば「アルキルシクロアルキル」を指し得る。同様に、置換アルコキシは、例えば「ハロゲン化アルコキシ」と具体的に指し得、特定の置換アルケニルは、例えば「アルケニルアルコール」を指し得る。といった具合である。またしても、一般的用語、例えば「シクロアルキル」及び具体的用語、例えば「アルキルシクロアルキル」の使用は、当該一般的用語が当該具体的用語を含まないことを示唆すると意味していない。
【0020】
用語「シクロアルキル」は、本明細書で用いる場合、少なくとも3つの炭素原子から構成される非芳香族炭素ベースの環である。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボニルなど挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル」は、上記のシクロアルキル基の1つタイプであり、その環の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、ケイ素又はリンであるが、これらに限定されない)で置換されているときの用語「シクロアルキル」の意味に含まれる。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は置換又は非置換であり得る。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、1又は2以上の本明細書に記載の基(任意に置換していてもよいアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含むが、これらに限定されない)で置換され得る。
用語「ポリアルキレン基」は、本明細書で用いる場合、互いに連結した2又は3以上のCH2基を有する基である。ポリアルキレン基は、式-(CH2)a- (式中、「a」は2~500の整数である)で表し得る。
【0021】
用語「アルコキシ」及び「アルコキシル」は、本明細書で用いる場合、エーテル結合により結合したアルキル又はシクロアルキル基を指す;すなわち、「アルコキシ」基は-OA1 (式中、A1は上記のアルキル又はシクロアルキルである)として定義し得る。「アルコキシ」はまたこのようなアルコキシ基のポリマーを含む;すなわち、アルコキシは、ポリエーテル、例えば、-OA1-OA2又は-OA1-(OA2)a-OA3 (式中、「a」は1~200の整数であり、A1、A2及びA3はアルキル及び/又はシクロアルキル基である)であり得る。
用語「アミン」又は「アミノ」は、本明細書で用いる場合、式NA1A2A3 (式中、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は任意に置換していてもよい本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る)により表される。
用語「ヒドロキシル」は、本明細書で用いる場合、式-OHにより表される。
用語「ニトロ」は、本明細書で用いる場合、式-NO2により表される。
用語「薬学的に許容され得る」は、生物学的に又はその他の意味で望ましくないものでない材料、すなわち、望ましくない生物学的効果の許容し得ないレベルを引き起こさず、有害な様式で相互作用しない材料を記述する。
【0022】
SAの作用に関する種々の分子標的の試験により、サーチュインSIR-2.1が最有力候補として明らかとなった。SAをSIR-2.1ノックアウト系統に投与すると、寿命及び健康寿命延長に対する効果が消えた。SAのSIR-2.1-依存性効果は、遺伝子発現プログラムの大きな変化によっても、ミトコンドリア機能の顕著な変化によっても媒介されない。しかしながら、発現アレイ分析は、転写因子ets-7及び関連遺伝子のSA-依存性調節を示した。ets-7ノックアウト蠕虫において、SAの長寿効果は、sir-2.1ノックアウト系統と同様に消滅した。しかしながら、SAは、非機能的SIR-2.1変異体においてets-7 mRNAレベルを用量依存的に増加させた。このことから、SIR-2.1はets-7の上流に存在すること及び共にSAの完全な寿命及び健康寿命延長に必要であることが示唆される。
米国出願公開第2007/0037865号及び第20090163476号(参照により本明細書中に組み込まれる)は、細胞の寿命を増加させ、広範な種々の疾患及び障害を治療及び/又は予防するために用い得るサーチュイン調整化合物(例えば、広範な種々の疾患及び障害(例えば、老化若しくはストレスに関連する疾患若しくは障害、糖尿病、肥満、神経変性性疾患、眼疾患及び障害、心血管疾患、血液凝固障害、炎症、ガンを含む)を治療及び/若しくは予防し、並びに/又はフラッシングなどのためのサーチュイン調整化合物を含む)を開示する。サーチュインタンパク質のレベル及び/又は活性を増加させるサーチュイン調整化合物はまた、増大したミトコンドリア活性の利益を享受し得る対象者における疾患又は障害を治療するため、筋肉の能力を増強するため、筋肉のATPレベルを増加させるため、又は低酸素又は虚血に関連する筋肉組織損傷を治療若しくは予防するために用い得る。
【0023】
よって、本発明の1つの実施形態は、細胞生存を本発明の化合物(SAを含む)又はその薬学的に許容し得る塩と接触させることを含んでなる、真核細胞の生存を促進する方法である。
本発明の他の1つの実施形態は、必要とする対象者に、治療有効量の本発明の化合物(SAを含む)又はその薬学的に許容し得る塩を投与することを含んでなる、対象者における細胞死又は細胞老化に関連する疾患又は障害を治療又は予防する方法である。
本発明の他の1つの実施形態は、必要とする対象者に、治療有効量の本発明の化合物(SAを含む)又はその薬学的に許容し得る塩投与することを含んでなる、対象者における神経変性障害(アルツハイマー病を含む)を治療又は予防する方法である。
本発明の他の1つの実施形態は、必要とする対象者に、治療有効量の本発明の化合物(SAを含む)又はその薬学的に許容し得る塩を投与することを含んでなる、対象者における筋肉のATPレベルを増加させる方法である。
【0024】
発明の背景
ポリ不飽和脂肪酸の過酸化は、フリーラジカル攻撃に対するその感受性に一部起因して、酸化ストレスのホールマークである[1, 2]。脂質過酸化産物の蓄積は、或る数のヒト疾患、例えば、アテローム性動脈硬化、ガン及び神経変性性疾患の病因に関連付けられている[3-5]。この現象は、一部は反応性アルデヒドの生成を通じて、酸化的損傷の伝播及び細胞死カスケードにおいて重要な役割を演じている[6]。脂質過酸化のこれら副産物は、マロンジアルデヒド(MDA)及び反応性ヒドロキシル-アルケナールを含むが、脂質過酸化の効果に寄与し、部分的にこれを媒介することが知られている[6, 7]。
【0025】
本発明者らは、64の位置-及び立体-異性体から構成される高度反応性レブグランジン様β-ケトアルデヒド(β-KA、又はイソケタール、IsoK)を同定した。イソケタールは、プロスタグランジンH2様エンドペルオキシド中間体(H2-イソプロスタン)の再配置により、イソプロスタン経路の産物として生成される[8, 9]。IsoKは、タンパク質のリシル残基中のε-アミノ基に共有結合的に付加して、安定な付加体(ラクタム環として構造的に特徴付けられる)及び分子内架橋を形成する[9-11]。IsoK-リシル-ラクタム付加体は、アテローム性動脈硬化、末期腎疾患、アルツハイマー病において有意に増加することが示されており、高血圧の主要な原因として示されている[12-14]。IsoKの強力な細胞毒性及びタンパク質凝集を誘導し酵素機能を崩壊させるその能力は強力な病因能力を示す一方[15-18]、タンパク質でのIsoK付加体の生成が疾患にどの程度寄与しているかの有意な研究は、インビボでIsoK付加体の生成を選択的に低減させる方法を必要とする。
【0026】
酸化的傷害におけるイソケタールの生物学的役割をより十分に規定するため及びその有害効果を予防できる可能性のために、IsoKの選択的スカベンジャーを同定する研究が行われた。当初のスクリーニングにより、リード化合物ピリドキサミン(PM)が同定された[19]。構造-活性関連性研究により、重要な部分が、メチルアミンに隣接するヒドロキシル基を有するフェノールアミンであると同定された。したがって、他のフェノールアミン、例えば、サリチルアミン(SA)も、イソケタールのスカベンジングについて、同様に強力であり、PMと同程度に選択的であるが、より親油性である。SAは、過酸化水素に曝されたインタクトな細胞において細胞の生存力を保護し、SAでの前処理は5%細胞死しかもたらさなかったのに対し、ビヒクルコントロール処理細胞では95%の細胞が死亡した。このことから、IsoKは酸化媒介死の主要なエフェクターであることが示唆される[20]。SAは経口投与によりで生物的利用可能になり[21]、SA投与は、マウスにおいて、老化に伴う作業記憶の喪失及びアンジオテンシンII誘導高血圧の発症を予防する[14, 22]。IsoKのタンパク質への付加の予防は、幅広く顕著に有益な生物学的効果を有するが、IsoKスカベンジャーにより改変される正確な分子プロセスは明らかになっていない。より正確には、IsoKが老化プロセスにおいて演じている可能性のある役割及びIsoKスカベンジャーが如何にして正常な老化に影響を及ぼし得るのかは、現時点で、未解決の問題である。
【0027】
老化は、分子レベル、細胞レベル、組織レベル及び生物全体レベルで機能が進行性に低下することにより特徴付けられる[23-26]。全体的な結果は、環境的チャレンジに応答する能力の漸進的低下及び疾患及び死に対する脆弱性の増大である[27-29]。老化として認識されるマルチレベル、マルチシステムの変化に寄与する機序は、幾つかは議論のある問題である。概して、老化の基礎となる機序は、プログラムされた老化理論[30, 31]並びに累積的損傷理論[32]及び恒常性不全[33]に分けることができるが、この2つは関連し得ることを認識すべきである[34]。少なくとも、累積的損傷/恒常性不全仮説(例えば、「生存速度」/代謝理論[35, 36]、フリーラジカル理論[37]、タンパク質恒常性不全[38]、累積的DNA損傷[39]など)については、分子代謝及びレドックス恒常性を制御する経路は、老化プロセスの中核として繰返し浮上している[34]。代謝制御、レドックス調節及び老化の交点に存在する、最もよく研究された経路の1つはサーチュイン経路である。
【0028】
サーチュインは、極端な食餌(dietary extremes)に対する生理学的順応において主要な役割を演じ、老化及び老化に関連する疾患への対向に関連付けられている、高度に保存されたタンパク質ファミリーである[40-42]。サーチュインは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)-依存性タンパク質デアセチラーゼ及び/又はADP-リボシルトランスフェラーゼである。生化学的活性に関するNADの要件に起因して、サーチュインは細胞の代謝状況を感知して応答する。実際、これは、カロリー制限が(すなわち、(サーチュイン活性を増大させる)NAD+利用可能性を増大させることにより)自然寿命を延長する鍵となる機序であると考えられる。モデル生物(酵母、蠕虫及びハエを含む)における多くの研究により、サーチュインSir2(サイレント情報レギュレーター2)及びそのホモログの操作は寿命を延長し得ることが示唆されている[41, 43-46]。C. elegansにおける酵母Sir2に最も近いホモログ(sir-2.1)の過剰発現は、寿命の延長をもたらし、当該遺伝子の欠失又はノックダウンは寿命を短縮する[45, 47-49]。サーチュインは、ストレス抵抗性、代謝及び細胞生存の調節において種々の役割を演じる7つの哺乳動物サーチュイン(SIRT1-7)のファミリーであるが、哺乳動物の寿命の調節におけるそれらの役割は未解明である。不確定性にもかかわらず、多くの研究により、サーチュインは老化及び老化に伴う疾患の一因となるストレス応答経路を調節することが示唆されている。
【0029】
本発明者らは、老化に伴う酸化的傷害及びIsoKの蓄積が、寿命及び健康寿命を調節する鍵となるタンパク質の付加体化及び不活化をもたらすことを決定した。具体的には、本発明者らは、SIR-2.1及び下流標的がIsoK付加体化により不活化されること及びIsoKのスカベンジャーによる処理がタンパク質機能を保存し、自然寿命を延長し、身体的健康の変性的変化低減し得ることを決定した。本発明者らは、IsoKの強力なスカベンジャーであるSAでの野生型Bristol N2の処理が、寿命及び健康寿命を有意に延長することを見出した。本発明者らは、タンパク質の生化学的機能をノックアウトすることで薬物効果が消滅したので、長寿に対するSAの効果がSIR-2.1に依存性であることを示した。続く実験において、本発明者らは、主にタンパク質恒常性を維持することにより、老化及び酸化的傷害の古典的マーカーと共に寿命及び健康寿命を調節するためにSAにより保存されるSIR-2.1/ets-7軸を規定した。
【0030】
老化の酸化ストレス理論は、正常な代謝プロセスにより生成されるROSが老化プロセスにおいて或る役割を演じていると推論している[37]。酸化促進物質と抗酸化物質との間の不均衡は、老化に伴い種々の高分子の酸化的損傷の蓄積を導き、機能的細胞プロセスの進行性喪失を生じる。反応性β-ケトアルデヒド(IsoKと呼ぶ)が、複数のタンパク質に付加してこれを不活化することにより、酸化的傷害において重要な役割を演じているという本発明者らの観察を考慮して、本発明者らは、SA投与がIsoKをスカベンジングし、鍵となるタンパク質標的の老化に伴う不活化を予防することにより自然寿命を延長し得ることを発見した。成体期の第1日目に開始して、N2 WT C. elegansを漸増濃度のSAに自然死まで継続的に曝露した(
図1A)。SAはメジアン寿命の用量依存的増加を生じ(
図1B)、50μMはメジアン寿命を16日間から19日間まで18%増加させ、100μMは寿命を16日間から21日間まで32%増加させ(p < 0.05)、500μMはメジアン寿命を16日間から25日間まで56%増加させた(p < 0.01)。これらデータは、成体WT C. elegansにおけるSAの顕著な寿命延長効果を示している。
【0031】
本発明者らまた、SA投与が成体蠕虫において自然寿命を延長するだけでなく、より長く生存する蠕虫が延長された健康寿命も示すこと-すなわち、より長く生存する蠕虫が表現型的により若いことを証明した[50]。このことを定量するため、本発明者らは、老化に伴い予想通りに変化し健康寿命と関連する生化学的指標(リポフスチン自己蛍光)及び行動的尺度(咽頭ポンピング)の両方を選択した。自己蛍光リポフスチン顆粒、酸化及び架橋した脂質及びタンパク質の混成混合物及び終端糖化産物の線虫腸上皮における蓄積は、老化に伴う増加が観察される既知の保存された現象である[51, 52]。リポフスチン顆粒の可視化は、健康寿命の老化に伴う評価として用いられることが多い。リポフスチン自己蛍光を経時的(5日ごと)にN2成体線虫(10~20/コロニー)において漸増用量のSAの存在下で定量した。蛍光強度の曲線下面積(AUC)を時間の関数として積分することによりSA応答プロフィールを作成した(
図1C)。100μM又は500μMのSAでの処理は、WT動物におけるビヒクルコントロールと比較して、老化関連リポフスチン蓄積の有意な低減を示した(p < 0.01)。健康の行動的/機能的測定のために、咽頭ポンピング速度を定量した。咽頭による定常的ポンピングを必要とする咽頭を通じて蠕虫に細菌を摂取させた[53]。咽頭ポンピング速度は、老化と共に確実に低下し、複数の老化に伴うプロセスに帰せられている[54, 55]。WT N2蠕虫において定量した咽頭ポンピング速度は、漸増濃度のSAを含むOP50-播種NGM寒天プレート上で確立された。咽頭ポンピング頻度は、動物の加齢に伴い5日ごとに測定して記録した。全体として、WT N2蠕虫は、咽頭ポンピング速度の老化関連低下に対する用量依存的保護を示した(
図1D)(p < 0.05)。まとめると、これらデータは、成体N2 C. elegansに投与される場合、SAが寿命のみでなく健康寿命も用量依存的に延長することを証明している。
【0032】
他の実施形態において、本発明は、SA投与がIsoK-リシル-ラクタムタンパク質付加体の生成を減少させることを証明する。IsoKがタンパク質標的を不活化する機序には、標的タンパク質内のリシル残基の側鎖でのεアミン基の共有結合的付加体化が関与する(
図2A)。この共有結合的付加体化の初期産物は、リシル側鎖及びイソケタールから構成されるラクタム環構造である。SAのアミン基は、IsoKに対して、より遥かに反応性であり、より迅速にIsoKと付加体を形成して、リシル側鎖の付加体化を防止することによりタンパク質機能を保存する。C. elegansをSAで処理したときにこの機序がインビボで作用可能である場合、IsoK-リシル-ラクタム付加体の用量依存的低減が観察されるはずである。このことを直接試験するため、WT N2蠕虫を第15日目までビヒクル又は漸増濃度のSAで処理し、次いでIsoK-リシル-ラクタム付加体定量のために、定量用の重同位体-標識内部標準を用いる液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS/MS)により採集した[56]。SA処理は、WT動物におけるビヒクルコントロールと比較して、IsoK-リシル-ラクタム付加体レベルの有意な用量依存的低減をもたらした(p < 0.01)(
図2B)。
【0033】
本発明はまた、SIR-2.1がその機能がサリチルアミンにより保存される重要なタンパク質であることを証明する。SA処理は、多くの異なるタンパク質標的でのIsoK付加体生成を予防するはずであり、これらタンパク質の多くが寿命及び健康寿命に対して幾らかの影響を有し得るが、本発明者らは、SAの有益効果の媒介に重要な特定のタンパク質が存在し得ることを決定した。具体的には、本発明の発明者らは、幾つかの理由からSIR-2.1がこれら「高価値標的」の1つであることを認識した。複数の研究において、SIR-2.1及びそのオーソログの活性増大が寿命増加に有意に県連付けられている。サーチュインは、膜結合及び膜リッチ細胞内区画(例えば、ミトコンドリア)に通常見出されるリシルデアセチラーゼであり、そのため、サーチュインは、IsoK及びその標的であるリシル残基を生じる膜脂質に非常に近位に存在する。最後に、幾つかのサーチュインアイソフォームは、長アシル鎖のリシル部分に対して最大のデアシラーゼ活性を有することが示されており、SIR-2.1がIsoK及びタンパク質のリシル側鎖に近位に存在する確率が高い可能性を高めている[57, 58]。第一に、本発明者らは、イソケタールが化学的にサーチュインタンパク質を不活化し得ることを示したかった。なぜならば、このことが、インビボでの直接相互作用が尤もであることの証明に役立ち、十分な酸化ストレスが、サーチュインの活性化より[42, 59-62]、阻害を実際に導くという本発明者らの理解を支持するからである。組換えヒトSIRT1を漸増濃度の合成純粋IsoKとインキュベートし、発光ベースのSirt-Gloアッセイ(Promega)を用いてデアセチラーゼ酵素活性を評価した。精製イソケタールは、組換えヒトサーチュイン1を用量依存的に阻害し(
図3A)、IC50は97.8μMであった。
【0034】
次に、本発明者らは、インビボで、SIR-2.1が、C. elegansを漸増用量のSAで処理したとき、時間依存性酸化的不活化から機能的に保護される重要なタンパク質であることを示した。非機能的SIR-2.1変異を有する線虫系統VC199[sir-2.1(ok434)]を、WT線虫を用いる寿命実験で使用した濃度と同じ濃度のSAで処理した。成体期の第1日目に開始して、SIR-2.1変異体をSA-被覆OP50-播種NGMプレートで生育させた。SIR-2.1変異体蠕虫を新たに作製したSA-OP50-NGM寒天プレートに2日ごとに移し、全ての蠕虫が死ぬまで白金線を用いて生存を評価した;白金線で僅かに触った際に動けば生存とした(
図3B)。SAをVC199系統に投与したとき、N2系統において観察されたメジアン寿命を延長する効果は、完全に消滅した(
図3C;VC199メジアン寿命:16日間、0μM SA;15日間、50μM SA;15日間、100μM SA;15日間、500μM SA;p = 0.70)。このことは、SA-媒介寿命延長が、一部はサーチュイン活性の保存により、作用することを示している。
本発明者らはまた、SIR-2.1が、長寿効果に加え、SAの健康寿命延長効果に必要であることを示す。N2系統を用いたときと同様に、本発明者らは、VC199線虫を漸増濃度のSAで処理し、老化-依存性の自己蛍光リポフスチン顆粒蓄積及び咽頭ポンピング速度低下を評価した。SIR-2.1を欠く蠕虫では、用いた用量のSAはいずれも、第15日目に、リポフスチン蓄積を減少させることができず(
図3D)(p = 0.50)、咽頭ポンピング速度を保存することもできなかった(
図3E)(p = 0.50)。まとめると、これらデータは、SIR-2.1が成体C. elegansにおいて健康寿命及び寿命に対するSAの効果の重要な標的であることを強く示唆している。
【0035】
本発明者らはまた、SIR-2.1保護が酸化ストレスに対する抵抗性を高めるが、ミトコンドリア機能には影響しないことを示す。サーチュイン活性化の主要な刺激の1つは酸化ストレスである。複数の異なる種における複数のサーチュインアイソフォームは、酸化的傷害に対する細胞防御において重要な役割を演じることが示されている[42, 61, 62]。実際、ミトコンドリア抗酸化物質であるマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)は、サーチュインアイソフォームにより脱アセチル化される主要なタンパク質標的の1つとして同定されており、脱アセチル化がMnSODの酵素活性を増強する[60]。SAが実際にSIR-2.1の酵素機能をインビボで保存する場合、本発明者らは、SA処理が酸化的傷害のバイオマーカーをSIR-2.1-依存的様式で、用量依存的に減少させるという仮説を立てた。酸化的傷害を定量するため、本発明者らはF
3-イソプロスタン(F
3-IsoP)を測定した。F
3-IsoPは、エイコサペンタエン酸(EPA)のフリーラジカル-媒介過酸化の産物であり、Caenorhabditis elegansにおける酸化的損傷の高度に感受性で正確なマーカーであることが知られている[63-65]。漸増濃度のSAを含むOP50-NGM寒天プレートで成体期の第1日目から第15日目の採集まで生育したWT N2系統及びVC199(SIR-2.1欠損系統)線虫からF
3-IsoPを採集した。WT N2蠕虫からのF
3-IsoPの定量(
図4A)は、F
3-IsoPレベルの用量依存的低下を示し、100μM SAはF
3-IsoP産生を29%減少させ(p < 0.01)、500μMはF
3-IsoPレベルの44%低下を示した(p < 0.005)。明らかに対照的に、SIR-2.1欠損線虫は、僅かに高いベースラインレベルのF
3-IsoPを示し、そのレベルは試験したいずれの用量のSAでも有意に減少しなかった(
図4B)。このことは、SA自体が直接的な抗酸化物質として作用するのではないことを確証し、SIR-2.1酵素活性がSA処理により保存されるという仮説を支持し、酸化的傷害に対する細胞防御についてのポジティブな効果が予想される。SIR-2.1機能を保存するSAの能力を更に特徴付けるため、本発明者らはMnSODのLys122でのアセチル化を評価した。成体期の第15日目での最高用量のSA(500μM)で、WT N2線虫は、同じSA用量で処理したVC199系統と比較して、MnSODにおけるより低いアセチル-Lys122の傾向を示す(
図4C及び4D)。このことは、SIR-2.1により媒介される、MnSODアセチル化状態及び機能に対するSA処理の少なくとも適度なポジティブな効果を支持する。
【0036】
ミトコンドリアは、老化生物学の中核に位置し、エネルギー産生、炭素基質代謝、アポトーシス調節並びにレドックスの平衡及びシグナル伝達において重要な役割を演じている[66-68]。サーチュインはミトコンドリア機能の調節において主要な役割を演じているので、本発明者らは次に、SAがミトコンドリアプロセスの保護によりその効果のいずれかを発揮しているかどうかを調べたかった。ミトコンドリア呼吸に対するSAの効果を調べるため、本発明者らは、SAをWT N2(
図5A)及び非機能的SIR-2.1変異体蠕虫(
図5B)に投与し、蠕虫全体における酸素消費率(OCR)を数日間にわたって測定した。OCRはN2及びVC199系統の両方において老化と共に減少し、SAは、いずれの系統においてもミトコンドリアOCRに対して何らの効果を示さなかった(p > 0.05)。本発明者らはまた、ミトコンドリアDNA(mtDNA)完全性に対するSA処理の効果を調べた。核DNAに対するmtDNA含量を測定するための定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)アッセイを用いて、WT N2(
図5C)及びVC199 SIR-2.1変異体(
図5D)は、老化に伴っても、SA処置によってもmtDNAコピー数に有意差がないことを示した。まとめると、これらデータは、SA処理のSIR-2.1依存性効果がミトコンドリア機能の有意な変化によって媒介されるものではないことを示唆している。
【0037】
本発明者らはまた、遺伝子発現分析によりets-7がサリチルアミンの重要なエフェクターとして明らかになることを発見した。プログラムされた老化は、老化を活性化して死に至る組込みプログラムがゲノムに存在することを示唆している老化の主要な理論の1つである[69]。上記の機能に加えて、サーチュインは、提案されているヒストンデアセチラーゼ活性により遺伝子発現プログラムに対して強力な調節効果を有し得る。SAの効果が少なくとも一部がSIR-2.1媒介性であることの根拠となる証拠を用いて、本発明者らは、WT N2蠕虫において、SA処理後の全体的遺伝子発現の変化の役割をより十分に規定しようとした。本発明者らは、1又は2以上の特定の経路に集中する遺伝子発現のかなり幅広い変化の存在を理解した。SAが老化遺伝子転写プログラムを変化させるかどうかを評価するため、本発明者らは、SA(0、100、500μM SA)に15日間曝露した成体WT N2蠕虫についてマイクロアレイ分析を行った。遺伝子発現アレイは、驚くべきことに、SA処理が遺伝子発現に対して比較的小さな効果を発揮することを示し、遺伝子発現に対して影響する主要な変量は老化自体であった。マイクロアレイから、本発明者らは、100及び500μM SAの両方でアップレギュレートされる26の遺伝子(群I)、100μM SAより500μM SAで強力にダウンレギュレートされる38の遺伝子(群II)、種々にダウンレギュレートされる15の遺伝子(群III)及び両用量のSAでダウンレギュレートされる30の遺伝子(群IV)を同定した(
図6A)。Unigene識別子を有する8,902プローブセットのうち、109のプローブセットのみがSA投与により第15日目に少なくとも25%の発現変化を示した。よって、SA処理の主要な効果は、SAの提案された作用機序により予想されるように、翻訳後レベルでありそうである。
【0038】
にもかかわらず、幾らかの顕著に変化した遺伝子がSA処理の下流に存在した。先ず、マイクロアレイ結果を検証するため、本発明者らは、4つの遺伝子siah-1、sma-4、F13D12.6及びets-7についてリアルタイムRT-PCRを行った(
図6B)。遺伝子siah-1及びsma-4は、SAにより第15日目のWT N2蠕虫においてダウンレギュレーションを示し、F13D12.6及びets-7はSAによりアップレギュレーションを示した。SA投与により、siah-1及びsma-4のメッセンジャーRNAレベルは25%近く減少し、F13D12.6及びets-7は25%近く上昇した(p < 0.05)。WEB-ベースのGene SeT分析ツールキット(WEBGESTALT <http://bioinfo.vanderbilt.edu/webgestalt/>)を用いる遺伝子オントロジー(GO)を使用した経路分析により、SA投与で好ましく変化した多くの他のものの中で、代謝プロセス、脂質代謝プロセス、タンパク質分解経路が強調された(補充データを参照)。RT-PCRにより確証されたアレイデータから、本発明者らは、ETSクラスの転写因子ETS-7を目的のタンパク質として同定した。ETS因子は、脂質代謝の調節に関与し、Drosophila melanogaster及びC. elegansの両方で寿命を調節することが知られている[70, 71]。サリチルアミンの下流での寿命の調節におけるETS-7の役割を調べるため、SAをets-7遺伝子ノックアウト系統RB981[F19F10.5(ok888) V]に投与した。SIR-2.1欠損VC199系統と同様に、ets-7の喪失は寿命延長に対して何らのSA-媒介効果も示さなかった(RB981メジアン寿命:16日間、0μM SA;15日間、500μM SA、p > 0.05)(
図6C及び6D)。本発明者らは、当初、ets-7のアップレギュレーションはSIR-2.1に依存し、このことが増強された長寿をもたらし得るとする仮説を立てた。このことを調べるため、本発明者らは、漸増用量のSAで処理した非機能的SIR-2.1変異体線虫におけるets-7のリアルタイムRT-PCR定量を行った(
図6E)。ets-7のメッセンジャーRNAレベルは、500μM SA投与により第15日目のWT N2蠕虫において32%増大し(p < 0.05)、同様に、ets-7転写レベルの用量依存的増大は、第15日目の非機能的SIR-2.1変異体VC199において観察することができ、最高用量のSAはmRNA発現の有意な442%増大を示した(p < 0.01)。まとめると、これら知見は、非機能的SIR-2.1変異体におけるets-7アップレギュレーションがSIR-2.1喪失の補償の試みであり、これがSA-投与により更に増強されるが、最終的にはSIR-2.1の非存在下では長寿を減弱させるには不十分であることを示唆している。本発明者らのデータは、ets-7が寿命のSA-依存性増加に必要であるが、機能的なSIR-2.1の存在なしでは不十分であることを示唆している。
【0039】
本発明の実施形態において、本発明者らは、酸化的傷害の最も障害性の産物の幾つか-すなわち、一般にはβ-ケトアルデヒド、具体的にはイソケタール-のスカベンジャーであるサリチルアミンでの処理がC. elegansにおいて自然寿命及び健康寿命を延長することができること、及びこれら効果がSIR-2.1及びETS-7に依存性であることを示した。本発明の実施形態は、SAの効果は、作用の生化学的機序について知られていることと一致して、及びタンパク質恒常性メディエーターの役割においてSAを幅広く配置するため、主としてタンパク質レベルで働くことを示した。本発明者らは更に、SIR-2.1及びETS-7はSA処理により保存される重要な標的であるが、これら2つの標的の活性を保存する主要な生化学的効果は、通常の抗酸化防御を増強することであり、ミトコンドリア機能、mtDNA完全性及び遺伝子発現に対する効果は、小さいものから存在しないものまであることを示した。
【0040】
本発明者らの研究の幾つかの観点は、特に注目に値する。第一に、成体蠕虫においてSA処理を開始し、その効果を示した。これは、遺伝子操作又は重要な発生期間の間における特定の処置若しくはストレス因子の適用に依拠する幾つかの他の長寿延長介入とは異なるものである[72-75]。この介入は確かに多くの有益な情報をもたらすが、直接的な翻訳能力は限定的である可能性が高い。第二に、SAは、抗酸化酵素(例えば、MnSOD)のSIR-2.1媒介活性化により、酸化ストレスに対する予測可能な効果を示したが、遺伝子発現及びミトコンドリア機能に対する効果の欠如は、目立っており、有益な情報をもたらすものであった。このことは、SAが大きな遺伝子発現プログラムの維持や改変によっても、おそらく、全体の核及び/又はミトコンドリアゲノム完全性の維持によっても、ミトコンドリア機能に対する大きな効果によっても作用していないことを示唆する。ミトコンドリア酸素消費に対する如何なる明らかな効果もないことは、SA処理効果の媒介におけるSIR-2.1の中心的役割を考えれば、たぶん、少し驚くべきことである。しかしながら、SIR-2.1は、代謝調節を超えて幅広い多面的効果を発揮することが知られており[45, 49, 76-78]、本発明者らのデータは、SIR-2.1に帰せられるこれら他の機能の幾つかの保護と一致している。最後に、SA処理は、活性化又は阻害されたときに長寿に対して影響することが示されているストレス/ホルメシスループ[34, 75, 79, 80]のいずれかを誘導しないようである。
【0041】
遺伝子発現アレイによるETS-7の同定、及びETS-7は必要であるがSAがその効果を発揮するには十分ではないというその後の知見は、特別な言及に値する。本発明者らは、ETS-7に特に着目した。なぜならば、ETSファミリー転写因子が脂質代謝に対する効果を通じて長寿を調節することは文献に先例があるからである[70, 71, 81]。他の脂質代謝遺伝子がSA処理により顕著に調節されることが示されたことを考慮して、本発明者らはETS-7が重要な調節遺伝子である可能性があり、同定した他の脂質代謝遺伝子はETS-7の下流であると推論した。ETS-7はSAの効果に必要であるが、DAF-16は必要でないとの知見は、SAにより調整される特異的タンパク質標的が実際に存在することを示唆している。更に、SAとSIR-2.1とETS-7との間で観察された相互作用は、SA処理による自然寿命の延長が、複数の調節タンパク質の生化学的活性の保護を通じて生じ、SIR-2.1はシグナル伝達経路において主要ノードとして働き、ETS-7は二次的役割を演じていることを強く示唆している。SA処理により影響を受ける全ての重要なシグナル伝達ノードの更なる説明及びシグナル伝達階層の解明は、将来の研究のための関心が集まる重要な分野となる。
【0042】
本発明の化合物を臨床的に有用な抗老化治療として解釈できる可能性は高い。サリチルアミンは哺乳動物において経口投与で生物的利用可能になる[21]。マウスにおける飲用水を介する長期投与(約1年間)は、不寛容のエビデンスを示さず、過剰な有害事象のエビデンスも示さなかった[22]。このことは抗-老化介入を考慮する場合特に重要である。なぜならば、本発明者らは、その作用機序を考慮すれば、SAが長期にわたって継続的に投与される必要があると予測するからである。長期SA処理したマウスにおいて過剰な腫瘍生成は観察されず[82-84]、このことは、腫瘍転移に関する非特異的抗酸化治療のネガティブな効果に関する最近の報告を考慮すれば、重要である[85, 86]。最後に、SAのヒト研究への適用は、かなり迅速に進めることができるはずである。なぜならば、SAは、ソバの種子に見出された天然に存在する小分子であり、天然サプリメントとしての使用に関してFDA Generally Recognized as Safe(GRAS)の指定を現在待っている状態であるからである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1.SAはN2 C. elegans蠕虫の寿命を延長する。(A)SA-媒介N2寿命延長の濃度依存性についてのカプラン-マイヤー生存曲線。成体期の第1日目に、SAを2日ごとに投与し、全ての蠕虫が死ぬまで生存を1日おきに評価した。(B)SA処理N2メジアン寿命の概要。SA投与はメジアン寿命の用量依存的増加を示す。データは4つの独立実験の平均±SEMとして示す。* P < 0.05(ビヒクルコントロールとの比較)、** P < 0.01(ビヒクルコントロールとの比較)。(C)老化に伴うポフスチン自己蛍光蓄積のSA-媒介減少の効果。蛍光強度の曲線下面積(AUC)を時間の関数として積分することによりSA応答プロフィールを作成した。N2ビヒクルコントロールと比較して、SAでの処理は自己蛍光の有意な低減を示す。データは5つの独立実験の平均±SEMとして表す。* P < 0.01(ビヒクルコントロールとの比較)、** P < 0.005(ビヒクルコントロールとの比較)。(D)老化蠕虫の咽頭ポンピング速度変化。ポンピング速度は老化に伴い低下するが、SA投与はポンピング速度の低下を遅延させる。データは5つの独立実験の平均±SEMとして表す。* P < 0.05(ビヒクルコントロールとの比較)、** P < 0.01(ビヒクルコントロールとの比較)。
【
図2】
図2.SA投与は、IsoK-リシル-ラクタムタンパク質付加体の生成を減少させる。(A)脂質過酸化及びIsoK生成の概略図。IsoKは、タンパク質のリシル残基のβ-アミノと反応して安定なラクタム付加体を生成する。IsoKスカベンジャーSAの添加はIsoK付加体化を予防する。(B)LC/MS/MSによるIsoK-リシル-ラクタム付加体定量。IsoK-リシル-ラクタム付加体はSA処理により減少した。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。* P < 0.01(ビヒクルコントロールとの比較)、** P < 0.005(ビヒクルコントロールとの比較)。
【
図3】
図3.SIR-2.1はSA-媒介寿命延長に必要である。(A)合成的に精製したIsoKはrhSIRT1の生化学的活性を低下させる。組換えヒトSIRT1を漸増濃度のIsoKとインキュベートし、発光ベースアッセイを用いて酵素活性を評価した。3つの独立実験から濃度-応答曲線を作成してIC50値を算出した。(B)非機能的SIR-2.1変異体の寿命に対するSA投与の効果を示すカプラン-マイヤー生存曲線。(C)SA-処理SIR-2.1変異体メジアン寿命の概要。SA投与はSIR-2.1変異体のメジアン寿命に影響しない。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。P = 0.70。(D)老化に伴うリポフスチン自己蛍光蓄積の変化。WT動物におけるビヒクルコントロールと比較して、SA応答プロフィールは、いずれの用量のSAもリポフスチン蓄積を低下させることができなかったことを示す。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。P = 0.5。(E)SA-処理SIR-2.1変異体における咽頭ポンピング速度の変化。SA投与は咽頭ポンピング速度を保存できなかった。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。P = 0.5。
【
図4】
図4.SA処理は、SIR-2.1-依存的様式で酸化的傷害のバイオマーカーを用量依存的に低下させる。(A, B)F
3-IsoP測定による酸化的損傷の定量。N2 WT及びSIR-2.1変異体動物にSAを成体期の第1日目から採集まで投与した。溶解物を成体期の第15日目に採集し、F
3-IsoPをGC/MSにより測定した。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。* P < 0.01(ビヒクルコントロールとの比較)、** P < 0.005(ビヒクルコントロールとの比較)。(C)アセチル-Lys 122 MnSODのレベルをN2 WT及びSIR-2.1変異体タンパク質抽出物から測定し、ウェスタンブロットにより分析した。(D)アセチル-Lys 122 MnSODの定量。WT N2線虫におけるSA処理は、SIR-2.1変異体動物と比較して、アセチル-Lys 122 MnSODがより低い傾向を示す。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。P > 0.05。
【
図5】
図5.SIR-2.1保護はミトコンドリア機能に影響しない。(A, B)SA投与は酸素消費率(OCR)を変化させない。SAの存在下及び非存在下でのN2 WT及びSIR-2.1変異体のOCRを、XF Seahorse Biosciences Analyzer
TMにより経時的に測定した。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。それぞれ、P = 0.1及びP = 0.3。(C, D)SA処理はmtDNA完全性を変化させない。mtDNA含量の分析は、SA-処理N2 WT及びSIR-2.1変異体動物の溶解物について経時的に行った。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。それぞれP = 0.1及びP = 0.6。
【
図6】
図6.遺伝子発現分析により、ets-7がSAの重要なエフェクターとして明らかとなる。(A)15日齢CEにおいて処理により異なって調節される遺伝子のヒートマップ。109のプローブセットが、両サンプルにおいて一致した、少なくとも25%の発現変化を有した。これらは、両用量のSAによりアップレギュレートされる26遺伝子(群I)、100μM SAより500μM SAによってより強力にダウンレギュレートされる38遺伝子(群II)、種々にダウンレギュレートされる15遺伝子(群III)及びSAの用量にかかわらずダウンレギュレートされる30遺伝子(群IV)を含む。(B)選択された遺伝子についてのマイクロアレイ結果のリアルタイムRT-PCR変動。遺伝子siah-1及びsma-4は、第15日目のWT N2蠕虫においてSAによるダウンレギュレーションを示し、F13D12.6及びets-7は、SAによるアップレギュレーションを示した。データは5つの独立実験の平均±SEMとして表す。* P < 0.05(ビヒクルコントロールとの比較)、** P < 0.01(ビヒクルコントロールとの比較)。(C)SA-媒介ets-7ノックアウト変異体寿命延長の濃度依存性についてのカプラン-マイヤー生存曲線。(D)SA-処理ets-7ノックアウト変異体メジアン寿命の概要。SA投与は、ets-7ノックアウト変異体のメジアン寿命を変化させない。データは5つの独立実験の平均±SEMとして表す。P = 0.40。(E)漸増用量のSAで処理した非機能的SIR-2.1変異体線虫におけるets-7のリアルタイムRT-PCR定量。ets-7の転写レベルは、第15日目のN2 WT蠕虫においてSA投与により25%増加し、ets-7 mRNAレベルの用量依存的増加を第15日目のSIR-2.1変異体において観察することができる。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。* P < 0.05(ビヒクルコントロールとの比較)、** P < 0.01(ビヒクルコントロールとの比較)。
【
図7】
図7(S1).SAはdaf-16遺伝子ノックアウト変異体系統の寿命を延長する。(A)daf-16遺伝子ノックアウト変異体系統に対するSA投与の効果を示すカプラン-マイヤー生存曲線。成体期の第1日目に開始して、動物をOP50-播種NGM-SAプレートに2日ごとに移した。全ての蠕虫が死ぬまで生存を2日ごとに評価した。(B)SA処理daf-16ノックアウト変異体メジアン寿命の概要。SAはdaf-16ノックアウト蠕虫において最大寿命及びメジアン寿命を増加させた。データは4つの独立実験の平均±SEMとして表す。* P < 0.01(ビヒクルコントロールとの比較)。
【
図8】
図8(S2).老化に伴うリポフスチン自己蛍光の変化。(A)4つの実験から代表的な共焦点画像を示す。同期化後期L4/初期若成体蠕虫をFUDR含有SA-OP50-播種NGMプレートに置き、蠕虫を20℃で維持した。5日ごとに、10~15匹の蠕虫を2%寒天パッド上に載置し、DMSO中3mMレバミゾールで麻酔した。各処理条件の代表的な共焦点画像を、LSM510共焦点顕微鏡(Carl Zeiss MicroImaging, Inc)でPlan-Aprochromat 20×対物レンズにより、XZ断面について200nmごとに走査して獲得した。画像をZeiss LSM Image Browserで加工処理した。
図S2は
図1C及び3Dに関連する。
【
図9】
図9(S3).WEBGESTALTによる遺伝子オントロジーエンリッチメント。第15日目のN2 WT蠕虫におけるSA-媒介ゲノム変化の経路分析。N2 WT蠕虫に対するSA投与のゲノム効果を更に解明するため、WebGestalt(異なる公的資源からの情報を組み込み、機能的ゲノム研究、プロテオミック研究及び大規模遺伝子研究から大きな遺伝子セットの図を提供するアプローチ)を用いて遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメントを行った。有向非巡回グラフ(DAG)からの生物学的関連性を、GOView(ユーザが提供した複数のGOタームリストを可視化して比較し、共通の及び特異的な生物学的テーマを特定することを可能にするウェブベースのアップリケーション)を用いて作成した。(A)SA投与によりアップレギュレートされる群I遺伝子のDAG。チャートは、SA投与により有望に改変されるものとして、とりわけ、代謝プロセス、脂質代謝プロセス及びタンパク質分解経路を強調する。
【実施例0044】
実施例及び方法
C. elegans系統及び維持
C. elegans系統は、20℃にて、Escherichia coli株NA22を播種した標準線虫生育培地(NGM)寒天プレート上で培養した。以下の系統を本研究に用いた:野生型C. elegans Bristol系統(N2)、sir-2.1(ok434) IV、F19F10.5(ok888) V及びdaf-16(mu86)。これら系統はCaenorhabditis Genetics Center(University of Minnesota, St. Paul, MN)から取得した。15日齢(第15日目)の成体蠕虫の培養物の作製のために、同期化後期L4/初期若成体蠕虫[87]を、採集まで、UV-照射OP50 E. coli及び子孫産生を阻害するための0.12mM 5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(FUDR)[88]を薬物無しで又は薬物と共に含有するペプトン富化15cmプレートに移した。
【0045】
サリチルアミン曝露
0.5%ペプトンを含有するNGM-寒天プレートで生育させた線虫を採集し、0.5N NaOH、1%次亜塩素酸塩を含むアルカリ性次亜塩素酸塩により卵を単離した(8分間23℃)。回収した卵をM9緩衝液中でリンスし、E. coli株OP50を播種した新鮮な寒天プレートに置き、20℃にて後期L4/若成体期まで維持した。後期L4/若成体脱皮後、蠕虫を、0.12mM FUDR、OP50 E. coli及び種々の濃度のSAを含有するペプトン富化15cmプレートに移した。サリチルアミン薬物プレートを新たに作製した後、寒天上にSAを拡げて移した。プレートを乾燥させた。E. coli株OP50をUV照射に30分間曝露して死滅させた後、SA-FUDR NGM寒天プレート上に播いた。蠕虫を、新鮮なSA-FUDR-OP50 NGMプレートに1日おきに移して採集するまで、その生涯を通じてSAに曝露した。
【0046】
長寿アッセイ
生存培養物を60-mm寒天プレート上で生育させた;後期L4/若成体脱皮後、約100成体をSA-OP50-播種NGMプレートに移した。サリチルアミン薬物プレートを新たに作製した後、寒天上にSAを拡げて移した。プレートを乾燥させた後、UV照射OP50細菌を播いた。蠕虫を20℃にて維持し、新たに作製したSA-OP50-NGM寒天プレートに2~3日おきに移す間に生存蠕虫を計数した。白金線で僅かに触った際に動けば生存とした。蠕虫を死ぬまで維持した。
【0047】
自己蛍光測定
同期化後期L4/初期若成体蠕虫をFUDR含有SA-OP50-播種NGMプレート上に置き、蠕虫を20℃にて維持した。5日ごとに、10~15の蠕虫を2%寒天パッド上に載置し、DMSO中3mMレバミゾールで麻酔した。Lambda LSキセノンランプ(Sutter Instrument Company)並びにNikon Plan Fluor 20×乾燥対物レンズ及びNikon Plan Apo 60× 1.3油浸対物レンズを備えたエピ蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse 80i)を用い、DAPIフィルター下で250ms露光にて撮像した。ImageJソフトウェアを用いて蛍光を算出した[89]。
【0048】
咽頭ポンピング
C. elegans咽頭ポンピング速度アッセイを、細菌叢を有する60mm寒天プレート上で室温にて行った。5日ごとに、蠕虫を新鮮な細菌-播種NGMプレートに移し、測定前に摂食速度を平衡化するために25℃にて10分間インキュベートした。10分間のインキュベーション後、Zeiss TLB 3.1顕微鏡下で咽頭に焦点を合わせて蠕虫を観察した。咽頭の末端球における収縮回数を20秒間計数してプロットした。
【0049】
酸素消費分析
Seahorse Bioscience XFe96 Analyzerを用いてC. elegans全体の酸素消費率を測定した。蠕虫を、FUDR含有SA-OP50-播種NGMプレート上で維持した0日目、2日目及び15日目のコロニーから、M9培地中での洗浄に続く氷冷60% w/vスクロースグラジエントでの浮遊により採集して、細菌残渣から清浄な細菌不含成体蠕虫を分離した。蠕虫をM9中に1,000蠕虫/ウェルで播種した。20分間の平衡化後、2分間の測定を行って、全ての実験条件及び系統について基礎OCRを得た。
【0050】
ゲノムコピー数分析
相対的なミトコンドリア及び核コピー数を定量的リアルタイムPCRにより測定した[90]。NADHデヒドロゲナーゼユニット1(nd1)及びcox-4遺伝子の164bp領域のプライマーをmtDNAコピー数の測定に用いた。nd1フォワードプライマー5'-AGCGTCATTTATTGGGAAGAAGAC-3'及びリバースプライマー5'-AAGCTTGTGCTAATCCCATAAATGT-3'。Cox-4フォワードプライマー5'-GCC GAC TGG AAG AAC TTG TC-3'及びリバースプライマー5'-GCGGAGATCACCTTCCAGTA-3'。リアルタイムPCR条件は、2分間50℃、10分間95℃、続いて40サイクルの15秒間95℃及び60秒間63℃であった。増幅産物はSYBR Green(iQTM SYBR(登録商標) Green Supermix, Bio-Rad)を用いて検出し、蛍光シグナル強度は、CFX96 TouchTMリアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad)でソフトウェアCFX ManagerTM(バージョン3.1)により決定した。FUDR含有SA-OP50-播種NGMプレートで生育させた0日目、2日目及び15日目のステージの線虫から粗製蠕虫溶解物を採集し、mtDNA及びnucDNAコピー数のリアルタイムPCRベースの測定のためのテンプレートDNAとして用いた。
【0051】
生物発光アッセイにおけるNAD+-依存性脱アセチル化
製造業者の指示を少し改変してSIRT-GloTMアッセイ及びスクリーニングシステム(Promega Corporation, Madison, WI)を用いて、NAD+依存性ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)クラスIII酵素(サーチュイン)の相対的活性を測定した。このアッセイは、SIRT活性により脱アセチル化され得るアセチル化発光生成性ペプチド基質を利用する。このペプチド基質の脱アセチル化は、提供される試薬中にプロテアーゼを有する共役酵素系を用いて測定され、発光生成性ペプチドを分解してアミノルシフェリンを遊離する。遊離アミノルシフェリンは、安定で持続的な発光を生成するUltra-GloTMホタルルシフェラーゼ反応を用いて定量することができる。精製組換えヒトSIRT1(R&D Systems, Biotechne)活性は、HEPES-緩衝化整理食塩水(10mM HEPES、150nM NaCl、2mM MgCl2)中15-E2-IsoKの存在下及び非存在下にてアッセイした。15-E2-IsoKはArmanathらの方法により合成した[91]。発光はマイクロプレートリーダー(FLUOstar Optima microplate reader, BMG Labtechnologies)により検出した。
【0052】
サンプル調製及びGC/MSによる内因性F3-IsoPの検出
F3-イソプロスタンは、SA-処理蠕虫から、ガスクロマトグラフィー-陰イオン化学イオン化-質量分析(GC-NICI-MS)アプローチにより定量した[92]。FUDR含有SA-OP50-播種NGMプレートで維持した蠕虫を、第15日目に、M9培地中での洗浄に続く氷冷60% w/vスクロースグラジエントでの浮遊により採集して、細菌残渣から清浄な細菌不含成体蠕虫を分離した。清浄な蠕虫をエッペンドルフチューブに移し、酸化ジルコニウムビーズ(1.0mm)を含むMini-Beadbeater-24(登録商標)(BioSpec, Bartlesville, OK)を用いて4℃でホモジナイズした。次いで、ホモジネートを、57μM BHT(5% w/v BHT:MeOH)を含有する15% w/v KOHにより30分間37℃にて加水分解した。次に、サンプルを最大速度で遠心分離して蠕虫砕片をペレット化し、上清を16mLポリプロピレンチューブ(Denville Scientific, Inc., Holliston, MA)に移した。
【0053】
Milneら[92]の方法により、サンプルを248pgの重水素化内部標準[2H4]-15-F2t-IsoPでスパイクし、定量し、較正し、更なる分離相抽出(SPE)のための調製においてHClでpH < 3に酸性化した。C18 Sep-Pakカートリッジ(Waters, Milford, MA)を5mLのMeOH、続いて5mLのpH3水でプレコンディショニングし、減圧して1mL/分の流速を得た。サンプルをカートリッジに適用して、完全に貫流させた後、等量のpH3水及びヘプタンを添加してカラム洗浄し、その後、酢酸エチル:ヘプタン(1:1 v:v)で溶出させた。次いで、無水硫酸ナトリウムを各サンプルに添加して、過剰な水をサンプルから吸収し、その後、酢酸エチルでプレコンディショニングしたシリカSep-Pakカートリッジ(Waters, Milford, MA)に適用した。サンプルをシリカSep-Pakカラムに移し、通過させた後、酢酸エチルで洗浄し、酢酸エチル:MeOH(45:55 v:v)で溶出させた。
【0054】
溶出物を窒素及びF3-IsoP下で乾燥させ、薄層クロマトグラフィー(TLC)による分離のためにMeOH中に再懸濁した。遊離酸TLC標準8-イソ-プロスタグランジンF2αメチルエステル(8-イソ-PGF2α、Cayman Chemicals, Ann Arbor, MI)及びサンプルを予め洗浄したシリカTLCプレートにスポッティングし、クロロホルム:MeOH:酢酸(84.5:14.5:1 v:v:v)を含有するTLCタンク内に入れ、溶媒前端に達するまで行った。遊離酸TLC標準は、リンモリブデン酸溶液を標準プレートに噴霧することにより可視化し、サンプルをTLCプレートからTLC標準(Rf~0.35)の領域において擦り取った。サンプルをシリカから酢酸エチル:EtOH(1:1 v:v)中への再懸濁により抽出し、窒素下で乾燥させた。この点から全ての工程は、Nguyenらの方法により記載されるとおりのF3-IsoP測定プロトコルに従った[63]。重水素化F2-IsoP標準をm/z 573で測定した。F3-IsoPをm/z 567で測定した。誘導体化F3-IsoPを含むピークの高さとを重水素化内部標準ピークの高さとの比較により内因性F3-IsoPレベルを定量した。
【0055】
ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイを製造業者(Pierce Protein Biology, Waltham, MA)により記載されるとおりに用いて、線虫ホモジネートのタンパク質濃度を決定した。
LC/MSを用いるイソケタールタンパク質付加体の定量
FUDR含有SA-OP50-播種NGMプレートで生育させた蠕虫を、第15日目の成体ステージに、M9培地中続いて氷冷60% w/vスクロースグラジエント中での洗浄により採集して、細菌残渣から清浄な細菌不含成体蠕虫を分離した。清浄な蠕虫をエッペンドルフチューブに移し、液体窒素中で急速冷凍し、37℃で3回溶解させた。サンプル加工処理中のIsoKタンパク質付加体の人為的生成を防止するために、抗酸化剤(100μMインドメタシン、220μMブチル化ヒドロキシトルエン及び5mMトリフェニルホスフィン)及び100μMピリドキサミン二塩酸塩を含む緩衝液中でサンプルを、携帯型ホモジナイザー(Polytron PT 1200E, KINEMATICA AG)を用いてホモジナイズした。IsoK-リシル-ラクタム付加体のレベルは以前に記載されたとおりに測定した[56]。
【0056】
簡潔には、IsoKタンパク質付加体は、酵素的タンパク質分解及びIsoK-リシル-ラクタム付加体としての分離後に、定量用重同位体標識内部標準を用いる液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS/MS)により測定した。サンプルを15% KOHで処理し、エステル化イソケタールを加水分解し、次いでプロナーゼプロテアーゼ(Streptomyces griseus, Calbiochem, San Diego, CA)を用い、続いてアミノペプチダーゼM(Calbiochem, San Diego, CA)を用いる完全なタンパク質分解的消化に付して、IsoK-リシル-ラクタム付加体を放出させた。消化後、500pgの(13C6)-IsoK-リシル-ラクタム内部標準を各サンプルに添加し、続いて固相抽出(SPE)によりリシル付加体を部分精製し、調製用HPLC(2690 Alliance HPLC system, Waters, Milford, MA)により更に精製した。次いで、Isok-リシル-ラクタム付加体を、内部標準に関してm/z 479→84遷移及びm/z 487→90遷移についてLCエレクトロスプレータンデム質量分析をモニタリングする選択的反応により定量した(TSQ量子トリプル四重極型質量分析機、Thermo Fischer Scientific, Waltham, MAに接続したThermoFinnigan Surveyer MSポンプ)。
線虫ホモジネートのタンパク質濃度は、Thermo Scientific Pierce BCAタンパク質アッセイを製造業者(Pierce Protein Biology, Waltham, MA)が記載するとおりに用いて測定した。
【0057】
ウェスタンブロット
FUDR含有SA-OP50-播種NGMプレートで生育させた第15日目の成体蠕虫をM9培地中に採集し、続いて氷冷60% w/vスクロースグラジエントで浮遊させて、細菌残渣から清浄な細菌不含成体蠕虫を分離した。清浄な蠕虫を、プロテアーゼ阻害剤、トリコスタチンA、ニコチンアミド及びホスファターゼ阻害剤を有する放射免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液を含むエッペンドルフチューブに移し、液体窒素中で急速冷凍し、37℃で3回溶解させた。20~30μgのタンパク質を10% SDS-PAGEアクリルアミドゲルにロードした。タンパク質をニトロセルロースメンブレン上にエレクトロブロットし、5%脱脂乳及び0.05%アジ化ナトリウムを含む0.1% Tween PBSでブロックし、一次抗体として抗-MnSOD(ab13533, AbCam, Cambridge, MA)、抗-アセチル-リシル122 MnSOD(Gius博士の厚意による寄贈、Northwestern University at Chicago, IL, USA;Epitomics, Inc, Burlingame, CA)、抗-アセチル-リシル68 MnSOD(Gius博士の厚意による寄贈、Northwestern University at Chicago, IL, USA;Epitomics, Inc, Burlingame, CA)及び抗-β-アクチン(A5316, Sigma, St. Louis, MO)を用いてウェスタンブロットを行った。タンパク質を、ホースラディッシュペルオキシダーゼで標識した種に妥当な二次抗体(Santa Cruz Biotechnology, Dallas, TX)及び化学発光基質(Amersham ECL Prime Westernblotting Detection Reagent, GE Healthcare, Pittsburgh, PA)により可視化した。ImageJを用いてデンシトメトリーを取得した。
【0058】
マイクロアレイ分析
トータルRNAをTrizol法により単離した。FUDR含有SA-OP50-播種NGMプレートで維持した蠕虫を、第15日目に、M9培地中での洗浄に続く氷冷60% w/vスクロースグラジエントでの浮遊により採集して、細菌残渣から清浄な細菌不含成体蠕虫を分離した。清浄な蠕虫を、Trizol(Life Technologies)を含むエッペンドルフチューブに移し、次いで液体窒素中で急速冷凍し、37℃で3回溶解させた。クロロホルムを各サンプルに添加し、続いてイソプロパノールを用いて沈降させ、75%エタノールで洗浄した。次いで、上清をRNeasy MinElute(Qiagen Inc., Valencia, CA)スピンカラムに移し、この時点から全ての工程は、製造業者の指示書に記載のRNA精製プロトコルに従った。
次いで、この混合物を激しく撹拌し、シュレッダーカラム(Qiagen Inc., Valencia, CA)に移し、遠心分離した。シュレッダーカラムからの溶出物をVersageneキットに含まれるPreclearカラムに移し、この時点から全ての工程は、キットマニュアルに記載のプロトコルに従った。単離後、トータルRNAを二本鎖cDNAに逆転写し、増幅し、標識し、NuGEN Ovulation Biotinキット(San Carlos, CA)を用いてフラグメント化した。フラグメント化は、Agilent Bioanazlyer 2100(Santa Clara, CA)を用いて確証し、フラグメント化した標識産物を、製造業者のプロトコルに従ってAffymetrixのC. elegans Gene 1.0 ST GeneChip(Santa Clara, CA)にハイブリダイズさせた。
【0059】
マイクロアレイデータ分析は、Robust Multi-chip分析(RMA)により規格化したアレイで行った。サンプル及びプローブセットについての質コントロールを段階的に行い、範囲外(outlying)サンプル及び貧弱なプローブセットを検出した。主成分分析(PCA)スコアプロット及びハイブリダイゼーションコントロールプロットは、サンプル検出のために適用した(少なくとも1つのサンプルがlog2(発現)>7)。高品質データについてのフィルタリングにより、発現が少なくとも25%変化した109の遺伝子(これらをサリチルアミン応答性遺伝子として規定した)がもたらされた。
下記のとおりのRT-PCR法を用いてmRNA発現の変化を調べることにより、マイクロアレイ結果の独立の検証を行った。
【0060】
TaqMan遺伝子発現アッセイ
トータルRNAを前述のようにTrizol法により単離した。単離後、High Capacity cDNA Reverse Transcriptionキット(Life Technologies)を製造業者の指示書により用いて、2μgのトータルRNAをcDNA合成に使用した。TaqMan遺伝子発現アッセイプローブ(Life Technologies)を各遺伝子に用いて定量的リアルタイムPCR(Bio-Rad)を行った。増幅産物をハウスキーピング遺伝子ama-1(RNAポリメラーゼII)に対して規格化する前に、比較2-ΔΔCt法を用いて倍数差を決定した[93]。次のプローブを用いた:ama-1(アッセイID:Ce2462269_m1)、ets-7(Ce02477624_g1)、F13D12.6(Ce02439540_m1)、siah-1(アッセイID:Ce02462269_m1)及びsma-4(アッセイID:Ce202447346_g1)。
統計
全ての統計学的分析はGraphPad Prism 6(GraphPad Software, Inc.)を用いて行った。100%で最高が制限されるS字状用量-応答モデルを利用して濃度応答曲線を作成した。寿命実験の統計学的有意性を、Mantel-Coxログランク検定(全体の生存曲線の差を評価するノンパラメトリック尺度)を用いて評価した。2群間比較は、分散が等しいと仮定して、スチューデントの両側t検定を用いて行った。異なる時点での多群比較は、反復測定値を用いる二元配置ANOVAを利用し、続いてボンフェローニの多重比較事後検定を利用して行った。P < 0.05の値を統計学的に有意とみなした。
【0061】
参考文献
本明細書に引用する参考文献及び刊行物(下記で列挙するものを含む)は参照により本明細書に組み込まれる。
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【0062】
本発明はこのように説明されるので、本発明を多くの方法で変化させ得ることは自明である。当業者に自明であるこのような変化は、本開示内に含まれるとみなされるべきである。
そうでないことが示されていない限り、本明細書において用いる、成分の量、特性(例えば、反応条件)などを表す全ての数は、全ての場合で、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうでないことが示されていない限り、本明細書及び請求の範囲に示される数値パラメータは、本発明により決定すべきことが求められる所望の性質に応じて変動し得る近似値である。
本発明の幅広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、実験の節又は実施例の節に示される数値は、可能な限り正確に記載した。しかしながら、如何なる数値も、本来的に、それぞれの試験測定に見出される標準偏差に必然的に起因する或る種の誤差を含む。