(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113734
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ホスホネート及びその使用
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20230808BHJP
C09K 3/18 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
C23C26/00 A
C09K3/18 101
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086195
(22)【出願日】2023-05-25
(62)【分割の表示】P 2020520135の分割
【原出願日】2018-10-11
(31)【優先権主張番号】62/570,852
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ボールドウィン、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ベレット、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ、ギャレット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コーティングされた基材を提供する。
【解決手段】コーティングされた基材を形成するために、ホスホネート化学を介して、ホスホネート、ホスホン酸又はそれらの誘導体を有機又は無機基材(例えば、金属酸化物基材)に付着させる。いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、金属ホスホネート化合物の調製に用いられる。いくつかの実施形態において、ホスホン酸は、P-O-M結合を介した金属酸化物との共有結合によって、リガンド又は高分子鎖をグラフト化することによるハイブリッド素材の合成に用いられる。いくつかの実施形態において、これらグラフト化されたリガンド又は高分子鎖は、中間結合分子又は末端結合分子のどちらかとなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(X)、一般式(Xb)、又は一般式(X)と一般式(Xb)の組み合わせ
【化1】
(式中、Z、Z
1、及びZ
2は、それぞれ有機又は無機基材であり、J
2は、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、-C
1-20-アルキル-COOH、-C
1-20-アルキル-R
4であり、R
4は、
【化2】
又は
【化3】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)又はそれらの塩を含むコーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年10月11日に出願された米国仮特許出願第62/570,852号の優先権を主張し、その開示の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
コーティングされた基材、及び、ホスホネート化学を介して、ホスホネート、ホスホン酸又はそれらの誘導体を有機又は無機基材に付着させるための方法を説明する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書に提供されているのは、コーティングされた基材(substrate)である。そしてまた、本明細書に提供されているのは、コーティングされた基材を形成するために、ホスホネート化学を介して、ホスホネート、ホスホン酸又はそれらの誘導体を有機又は無機基材(例えば、金属酸化物基材)に付着させるための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】有機及び無機基材を官能基化にするための結合分子として、本明細書で利用できる各種のホスホネート(及び誘導体)の構成を示す。
【
図2】異なる結合様式を介した金属酸化物基材へのホスホン酸の-P-O-M-結合の一般的な表現を示す。
【
図3】ホスホリルコリン誘導体(例えば、LIPIDURE NH01)のその後のグラフト化のための中間結合分子となる11-ホスホノウンデカン酸を示す。
【
図4】ホスホリルコリン誘導体(例えば、LIPIDUREAC01)のその後のグラフト化のための中間結合分子となる6-アミノヘキシルホスホン酸を示す。
【
図5】金属酸化物表面の改質のための直接結合分子となるホスホコリンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に提供されているのは、ホスホネートコーティングされた素材、及びその調製方法である。
【0006】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、金属ホスホネート化合物の調製に用いられる。いくつかの実施形態において、ホスホン酸は、P-O-M結合を介した金属酸化物との共有結合によって、リガンド又は高分子鎖をグラフト化することによるハイブリッド素材の合成に用いられる。いくつかの実施形態において、これらグラフト化されたリガンド又は高分子鎖は、中間結合分子又は末端結合分子のどちらかとなる。
【0007】
(組成物)
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、ホスホネート又はホスホン酸、又はそれらの塩である。
【0008】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(I)又はその塩である。
【化1】
(I)
【0009】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(II)又はその塩である。
【化2】
(II)
【0010】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(III)又はその塩である。
【化3】
(III)
【0011】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(IV)又はその塩である。
【化4】
(IV)
【0012】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(V)又はその塩である。
【化5】
(V)
【0013】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(VI)又はその塩である。
【化6】
(VI)
【0014】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(VII)又はその塩である。
【化7】
(VII)
【0015】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(V)又はその塩である。
【化8】
(V)
(式中、R
1は、-(CH
2)
2N
(+)(CH
3)
3、-(CH
2)
6NH
2、-(CH
2)
9COOH、-(CH
2)
6R
4、又は-(CH
2)
9R
4であり、R
4は、
【化9】
又は
【化10】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)
【0016】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(V)又はその塩である。
【化11】
(V)
(式中、R
1は、-(CH
2)
2N
(+)(CH
3)
3である。)
【0017】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(V)又はその塩である。
【化12】
(V)
(式中、R
1は、-(CH
2)
6NH
2である。)
【0018】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(V)又はその塩である。
【化13】
(V)
(式中、R
1は、-(CH
2)
9COOHである。)
【0019】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(V)又はその塩である。
【化14】
(V)
(式中、R
1は、-(CH
2)
6R
4であり、R
4は、
【化15】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)
【0020】
いくつかの実施形態において、ホスホネート又はホスホン酸は、一般式(V)又はその塩である。
【化16】
(V)
(式中、R
1は、-(CH
2)
9R
4であり、R
4は、
【化17】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)
【0021】
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、一般式(VIII)又はその塩を含むコーティングされた基材である。
ZJ1
(VIII)
(式中、Zは、有機又は無機基材であり、J1は、-OHである。)
【0022】
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、一般式(IX)又はその塩を含むコーティングされた基材である。
【化18】
(IX)
(式中、Zは、有機又は無機基材であり、J
2は、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、-C
1-20-アルキル-COOH、-C
1-20-アルキル-R
4であり、R
4は、
【化19】
又は
【化20】
(mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)
【0023】
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、一般式(IX)及び/又は(IXb)又はそれらの塩を含むコーティングされた基材である。
【化21】
(式中、Z、Z
1、及びZ
2は、それぞれ有機又は無機基材であるか、同じ有機又は無機基材であってもよく、及び/又は、基材の同じ位置に結合してもよく、J
2は、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、-C
1-20-アルキル-COOH、又は-C
1-20-アルキル-R
4であり、R
4は、
【化22】
又は
【化23】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)
【0024】
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、一般式(IX)、一般式(IXb)、又は一般式(IX)と一般式(IXb)の組み合わせを含むコーティングされた基材である。
【0025】
これらの態様のいくつかの実施形態において、J2は、-(CH2)2N(+)(CH3)3、-(CH2)6NH2、-(CH2)9COOH、-(CH2)6R4、又は-(CH2)9R4である。
【0026】
これらの態様のいくつかの実施形態において、J2は、-C1-20-アルキル-R4である。
【0027】
これらの態様のいくつかの実施形態において、J2は、-(CH2)6R4である。
【0028】
これらの態様のいくつかの実施形態において、J2は、-(CH2)9R4である。
【0029】
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、一般式(X)又はその塩を含むコーティングされた基材である。
【化24】
(X)
(式中、Zは、有機又は無機基材であり、J
2は、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、又は-C
1-20-アルキル-COOHである。)
【0030】
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、一般式(X)及び/若しくは(Xb)又はそれらの塩を含むコーティングされた基材である。
【化25】
(式中、Z、Z
1、及びZ
2は、それぞれ有機又は無機基材であるか、又は、同じ有機又は無機基材であってもよく、及び/又は、基材の同じ位置に結合してもよく、J
2は、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、又は-C
1-20-アルキル-COOHである。)
【0031】
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、一般式(X)、一般式(Xb)、又は一般式(X)と一般式(Xb)の組み合わせを含むコーティングされた基材である。
【0032】
これらの態様のいくつかの実施形態において、J2は、-(CH2)2N(+)(CH3)3である。
【0033】
これらの態様のいくつかの実施形態において、J2は、-(CH2)6NH2である。
【0034】
これらの態様のいくつかの実施形態において、J2は、-(CH2)9COOHである。
【0035】
いくつかの実施形態において、J
2は、-(CH
2)
6R
4であり、R
4は、
【化26】
である。
【0036】
いくつかの実施形態において、J
2は、-(CH
2)
9R
4であり、R
4は、
【化27】
である。
【0037】
一般式(I)-(IX)のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、及びR
3は、独立して、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、-C
1-20-アルキル-COOH、又は-C
1-20-アルキル-R
4であり、R
4は、
【化28】
又は
【化29】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。
【0038】
一般式(I)-(IX)のいくつかの実施形態において、R1、R2、及びR3は、独立して、-(CH2)2N(+)(CH3)3、-(CH2)6NH2、-(CH2)9COOH、-(CH2)6R4、又は-(CH2)9R4である。
【0039】
一般式(I)-(IX)のいくつかの実施形態において、R
4は、
【化30】
である。
【0040】
一般式(I)-(IX)のいくつかの実施形態において、R
4は、
【化31】
である。
【0041】
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、基材と第1のコーティング層とを含むコーティングされた基材であって、第1のコーティング層が基材と結合されることを特徴とする基材である。
【0042】
いくつかの態様において、本明細書に提供されているのは、基材と第1のコーティング層と第2のコーティング層とを含むコーティングされた基材であって、第1のコーティング層が基材と結合し、第2のコーティング層が第1のコーティング層と結合することを特徴とする基材である。
【0043】
これらの態様のいくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、基材と共有結合している。いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、基材と非共有結合している。
【0044】
いくつかの実施形態において、第2のコーティング層は、第1のコーティング層と共有結合している。いくつかの実施形態において、第2のコーティング層は、第1のコーティング層と非共有結合している。
【0045】
いくつかの実施形態において、第1のコーティング層が基材と共有結合し、第2のコーティング層が第1のコーティング層と共有結合している。
【0046】
いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、一般式(XI)-(XVI)の少なくとも一つにより、基材と共有結合している。
【化32】
(式中、J
2は、第1のコーティング層であり、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、又は-C
1-20-アルキル-COOHであり、Zは基材である。)
【0047】
いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、一般式(XI)、(XIb)、(XII)、(XIII)、(XIIIb)、(XIV)、(XIVb)、(XV)、(XVI)、及び/又は(XVIb)の少なくとも一つにより、基材と共有結合している。
【化33】
(式中、J
2は、第1のコーティング層であり、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、又は-C
1-20-アルキル-COOHであり、Z、Z
1、Z
2、及びZ
3は、それぞれ有機又は無機基材であるか、又は、同じ有機又は無機基材であってもよく、及び/又は、基材の同じ位置に結合してもよい。)
【0048】
いくつかの実施形態において、第2のコーティング層は、少なくともペプチド結合により、第1のコーティング層と共有結合している。
【0049】
いくつかの実施形態において、第2のコーティング層は、一般式(XVII)で表されるように、少なくともペプチド結合により、第1のコーティング層と共有結合している。
【化34】
(XVII)
(式中、X
1、は第1のコーティング層であり、X
2は、第2のコーティング層である。)
【0050】
いくつかの実施形態において、第2のコーティング層は、一般式(XVIII)で表されるように、少なくともペプチド結合により、第1のコーティング層と共有結合している。
【化35】
(XVIII)
(式中、X
1は、第1のコーティング層であり、X
2は、第2のコーティング層である。)
【0051】
いくつかの実施形態において、基材は、有機基材である。いくつかの実施形態において、基材は、無機基材である。いくつかの実施形態において、基材は、アルミニウム、チタン、亜鉛、白金、タンタル、銅、ニッケル、ロジウム、金、銀、パラジウム、クロム、鉄、インジウム、ルテニウム、オスミウム、錫、イリジウム、又はこれらの組み合わせのような、金属、又は、金属合金であるが、これに限られない。いくつかの実施形態において、基材は、金属合金である。いくつかの実施形態において、金属合金は、金属間化合物合金である。いくつかの実施形態において、金属合金は、ニッケルチタニウム合金(例えば、ニチノール)である。いくつかの実施形態において、金属合金は、電解研磨された金属合金である。いくつかの実施形態において、金属合金は、約20-50Kの範囲(例えば、約20K、25K、30K、35K、40K、45K、50K、又はこれらの2つの値で境界付けられる範囲、例えば、約20-25K、35-40K、35-50K、又は45-50K)の熱ヒステリシスマルテンサイト変態を有する。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、親水性、疎水性、又は両親媒性のコーティング層である。いくつかの実施形態において、第2のコーティング層は、親水性、疎水性、又は両親媒性のコーティング層である。
【0053】
いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、遠位端と近位端を有し、近位端は基材と結合し、遠位端は、ヒドロキシル、一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アミン、カルボン酸、アミド、又はそれらの塩を含む。いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、アルキル層(例えば、C1-20-アルキル)である。
【0054】
いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、-(CH2)2N(+)(CH3)3、-(CH2)6NH2、又は-(CH2)9COOHである。
【0055】
いくつかの実施形態において、第2のコーティング層は、LIPIDUREである。いくつかの実施形態において、LIPIDUREは、LIPIDURE NH01、又はLIPIDURE AC01である。いくつかの実施形態において、第2のコーティング層は、一般式(XIX)である。
【化36】
(XIX)
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)
【0056】
(方法)
本明細書に提供されているのは、本明細書に提供されている組成物を調製する方法である。
【0057】
一つの態様において、本明細書に提供されているのは、コーティングされた基材が形成されるように、本ホスホネート、ホスホン酸、又はそれらの塩を本明細書に提供されている基材に接触させることを含む、本明細書に提供されているコーティングされた基材を調製する方法である。
【0058】
いくつかの実施形態において、基材は、コーティングされた基材を形成するために、真空オーブン内の加熱下で、ホスホネート、ホスホン酸、又はそれらの塩と接触させられる。
【0059】
いくつかの実施形態において、基材は、一般式(VIII)で表される基材である。
【0060】
いくつかの実施形態において、ホスホネート、ホスホン酸、又はそれらの塩は、一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)、一般式(V)、一般式(VI)、又は一般式(VII)である。
【0061】
いくつかの実施形態において、コーティングされた基材は、一般式(X)又はその塩を含む。
【化37】
(X)
(式中、Zは、有機又は無機基材であり、J
2は、-(CH
2)
2N
(+)(CH
3)
3、-(CH
2)
6NH
2、-(CH
2)
9COOHである。)
【0062】
いくつかの実施形態において、コーティングされた基材は、一般式(X)及び/若しくは(Xb)又はそれらの塩を含む。
【化38】
(Z、Z
1、及びZ
2は、それぞれ有機又は無機基材であるか、又は、同じ有機又は無機基材であってもよく、及び/又は、基材の同じ位置に結合してもよく、J
2は、-(CH
2)
2N
(+)(CH
3)
3、-(CH
2)
6NH
2、又は-(CH
2)
9COOHである。)
【0063】
いくつかの態様において、コーティングされた基材は、一般式(X)、一般式(Xb)、又は一般式(X)と一般式(Xb)の組み合わせを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、一般式(IX)
【化39】
(IX)
(式中、Zは、有機又は無機基材であり、J
2は、-C
1-20-アルキル-R
4であり、R
4は
【化40】
又は
【化41】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)又はその塩を含むコーティングされた基材を形成するために、
コーティングされた基材が、さらに、一般式(XX)で表される化合物
【化42】
(XX)
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)又はその塩と接触するか、又は、
コーティングされた基材が、さらに、一般式(XXI)で表される化合物
【化43】
(XXI)
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である)である。)又はその塩と接触する。
【0065】
いくつかの実施形態において、一般式(IX)及び/若しくは(IXb)
【化44】
(式中、Z、Z
1、及びZ
2は、それぞれ有機又は無機基材であるか、又は、同じ有機又は無機基材であってもよく、及び/又は、基材の同じ位置に結合してもよく、J
2は、-C
1-20-アルキル-R
4であり、R
4は、
【化45】
又は
【化46】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)又はそれらの塩を含むコーティングされた基材を形成するために、
コーティングされた基材が、さらに、一般式(XX)で表される化合物
【化47】
(XX)
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)又はその塩と接触するか、又は、
コーティングされた基材が、さらに、一般式(XXI)で表される化合物
【化48】
(XXI)
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である)又はその塩と接触する。
【0066】
いくつかの態様において、コーティングされた基材は、一般式(IX)、一般式(IXb)、又は一般式(IX)と一般式(IXb)の組み合わせを含む。
【0067】
当業者は、本明細書に記載された特定の手順、実施形態、特許請求の範囲、及び実施例の多くの均等物を認識または通常の実験に過ぎないものを利用して確認することができる。
【0068】
値と範囲は常に本明細書に供され、これらの値と範囲、又はこれらの値と範囲の組み合わせにより包含された全ての値と範囲は、本明細書に供された態様及び実施形態の範囲内に包含されることを意味することが理解される。さらに、これらの範囲に属する全ての値もまた、値の範囲の上限または下限と同様に、本出願により意図される。
【0069】
(実施例)
以下の実施例はさらに、本組成物及び方法の態様を説明する。しかしながら、これらの実施例は、本明細書に記載された教示又は開示を制限するものではない。これらの実施例は、説明目的で供される。
【0070】
(実施例1)
(中間結合分子としてのホスホネート又はホスホン酸)
ホスホネートを含有するリガンドは、特定の基材のその後の官能基化及び変形のために金属酸化物と共有結合してもよい。電解研磨されたニチノール切取り試片は、超音波処理により洗浄された。切取り試片は、従来のようにDI H2O内で沸騰させられ、誘導加熱が金属表面の酸化を増加させることが実証された。ホスホネートを含有するCOOH末端は、THF、又はTHFと水の混合物中で定温放置しながら、T-BAG沈殿法を用いて適用された。ニチノール切取り試片は、真空オーブン内で、熱硬化された。LIPIDURE NH01(アミノ官能基化ホスホリルコリン)は、ペプチド結合の形成を通してホスホネート接合層(tie layer)にグラフト化された。
図3は反応スキームを示す。
図4(
図3と同様に)は、ホスホネートを含有するアミノ末端が前述のT-BAG沈殿法を用いて適用される反応スキーム(LIPIDURE AC01(カルボキシル官能基化ホスホリルコリン)は、ペプチド結合の形成を通してホスホネート接合層にグラフト化された反応スキーム)を示す。
【0071】
(実施例2)
(末端結合分子としてのホスホネート又はホスホン酸)
ホスホネート及びポリアミド(PA’s)は、金属酸化物と直接共有結合し得、基材の表面組成を変更する自己集合単分子層の形成することにより、基材の特性を改質してもよい。
【0072】
電解研磨されたニチノール切取り試片は、超音波処理により洗浄された。切取り試片は、通常のようにDI H2O内で沸騰させられ、誘導加熱が金属表面の酸化を増加させることが実証された。ホスホコリンは、前述のT-BAG沈殿法を用いて適用された。この場合、エタノールが担体溶媒として用いられた。ニチノール切取り試片は、真空オーブン内で、熱硬化された。
図5は反応スキーム案を示す。
【0073】
これらの実施例ではニチノールが使用されているけれども、いくつかの実施形態において、化学的性質は、金属/金属合金の酸化物表面に適用することができる。いくつかの実施形態において、ホスホネート/ホスホン酸(又は誘導体)は、少なくとも一つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)の官能基化されたリガンドを含む。いくつかの実施形態において、リガンドは、遊離アミノ、カルボキシル、又はチオール類を含む、脂肪族部分、分岐部分、又は環部分を含むが、これに限られない。いくつかの実施形態において、T-BAG沈殿に用いられる担体溶媒は、中間結合分子が可溶又はほぼ可溶(例えば、少なくとも、80%、90%、95%、又は99%可溶性)な溶媒である。
【0074】
(結果)
(実施例1及び実施例2)
多種のホスホネート素材が調査された。成功したコーティングは、標準的なステントの実施につき、電解研磨されたニチノールハイポチューブの水接触角試験により決定された(表1)。ホスホネートの適用は、ホスホコリン塩化ナトリウム塩の適用以外ではニチノールの疎水性表面を保持する。それから、LIPIDUREのホスホネート接合層への接合(conjugation)は、水接触角を減らす。
表1:ホスホネートのベースコート(例えば、第1のコーティング層)、及びLIPIDUREのトップコート(例えば、第2のコーティング層)の水接触角
【表1】
【0075】
(参照及び均等物による組み込み)
本出願を通して引用される全ての参照の内容(文献の参照、登録特許、公開された特許出願、及び、同時係属中の特許出願を含む)は、その全体が参照により明確に本明細書に組み込まれる。別段の定義がされていない限り、本明細書で用いられている全ての技術及び科学用語は、当業者に一般に知られている意味と一致する。
【0076】
当業者は、本明細書が提供する特定の実施形態の多くの均等物を認識または通常の実験に過ぎないものを利用して確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲により包含する事を意図する。
【0077】
[付記1]
一般式(X)、一般式(Xb)、又は一般式(X)と一般式(Xb)の組み合わせ
【化49】
(式中、Z、Z
1、及びZ
2は、それぞれ有機又は無機基材であり、J
2は、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、-C
1-20-アルキル-COOH、-C
1-20-アルキル-R
4であり、R
4は、
【化50】
又は
【化51】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)又はそれらの塩を含むコーティングされた基材。
【0078】
[付記2]
J2は、-(CH2)2N(+)(CH3)3、-(CH2)6NH2、-(CH2)9COOH、-(CH2)6R4又は-(CH2)9R4である、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0079】
[付記3]
J2は-(CH2)6R4である、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0080】
[付記4]
J2は-(CH2)9R4である、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0081】
[付記5]
J2は-(CH2)2N(+)(CH3)3である、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0082】
[付記6]
J2は-(CH2)6NH2である、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0083】
[付記7]
J2は-(CH2)9COOHである、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0084】
[付記8]
J
2は-(CH
2)
6R
4であり、R
4は、
【化52】
である、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0085】
[付記9]
J
2は-(CH
2)
9R
4であり、R
4は、
【化53】
である、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0086】
[付記10]
R
4は、
【化54】
である、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0087】
[付記11]
R
4は、
【化55】
である、付記1に記載のコーティングされた基材。
【0088】
[付記12]
一般式(X)、一般式(Xb)、又は一般式(X)と一般式(Xb)の組み合わせ
【化56】
(式中、Z、Z
1、及びZ
2は、それぞれ有機又は無機基材であり、J
2は、-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH
2、又は-C
1-20-アルキル-COOHである。)又はそれらの塩を含むコーティングされた基材を調製する方法であって、
1)一般式(Xa)又は(Xb)を含むコーティングされた基材が形成されるように、Z又はZ
1及びZ
2を一般式(V)で表される化合物
【化57】
(V)
(式中、R
1は-C
1-20-アルキル-N
(+)(CH
3)
3、-C
1-20-アルキル-NH2、-C
1-20-アルキル-COOHである。)又はその塩と接触させること、
を含む、方法。
【0089】
[付記13]
R1及びJ2は、-(CH2)2N(+)(CH3)3、-(CH2)6NH2、又は、-(CH2)9COOHである、付記12に記載の方法。
【0090】
[付記14]
J
2は-C
1-20-アルキル-NH
2であり、
一般式(IX)、一般式(IXb)、又は一般式(IX)と一般式(IXb)の組み合わせ
【化58】
(式中、Z、Z
1、及びZ
2は、それぞれ有機又は無機基材であり、J
2は-C
1-20-アルキル-R
4であり、R
4は、
【化59】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)又はそれらの塩を含むコーティングされた基材を形成するために、
2)一般式(X)又は(Xb)を一般式(XX)で表される化合物
【化60】
(XX)
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)又はその塩と接触させること、
をさらに含む、付記12に記載の方法。
【0091】
[付記15]
J2は-(CH2)6NH2である、付記14に記載の方法。
【0092】
[付記16]
J
2は-C
1-20-アルキル-COOHであり、
一般式(IX)、一般式(IXb)、又は一般式(IX)と一般式(Xb)の組み合わせ
【化61】
(式中、Z、Z
1、及びZ
2は、それぞれ有機又は無機基材であり、J
2は-C
1-20-アルキル-R
4であり、R
4は、
【化62】
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)である。)又はそれらの塩を含むコーティングされた基材を形成するために、
2)一般式(X)、(Xb)、又は一般式(X)と(Xb)の組み合わせを一般式(XXI)で表される化合物
【化63】
(XXI)
(式中、mは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)であり、nは、1-1000(例えば、1-100、例えば、1-50、例えば、1-10)である。)又はその塩と接触させること、
をさらに含む、付記12に記載の方法。
【0093】
[付記17]
J2は-(CH2)9COOHである、付記16に記載の方法。