(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113744
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】舌筋トレーニング用食品および舌筋のトレーニング方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230808BHJP
A63B 23/03 20060101ALI20230808BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A23L5/00 B
A63B23/03
A23G3/36
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087338
(22)【出願日】2023-05-27
(62)【分割の表示】P 2020506633の分割
【原出願日】2019-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2018046327
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518087753
【氏名又は名称】tantore株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(72)【発明者】
【氏名】中河原 真紀子
(57)【要約】
【課題】 場所や時間を選ばず舌筋をトレーニングすることができる食品および舌筋のトレーニング方法を提供する。
【解決手段】 舌筋トレーニング用食品は、水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とし、または徐溶性材料と他の材料とが積層されてシート状としたシート状食品によって構成する。シート状食品は20μm以上100μm未満の肉厚を有し、かつシート状食品の表面または裏面のうち少なくとも一方が、口腔内表面に付着させるために、突起を設けない面によって構成されている。舌筋のトレーニング方法は、シート状食品を上顎歯列もしくは下顎歯列または上顎および下顎の両歯列の少なくとも外側表面に付着させ、舌の表面または裏面によって舐めることにより徐溶させる。外側表面のみならず、内側表面についても同様に使用することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先で除溶させることで舌筋をトレーニングすることができる舌筋トレーニング用食品であって、水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品、所望の食品材料によるシート状の基材層の表面に前記徐溶性材料を積層もしくは担持させてなるシート状食品、または前記徐溶性材料と同種もしくは異種の徐溶性材料もしくはその他の食品材料が前記徐溶性材料に積層されてシート状としたシート状食品によって構成され、該シート状食品は20μm以上100μm未満の肉厚を有し、かつ該シート状食品の表面または裏面のうち少なくとも一方が、口腔内表面に付着させるために、突起を設けない面によって構成されていることを特徴とする舌筋トレーニング用食品。
【請求項2】
前記水溶性材料は、澱粉、澱粉誘導体、餅米、米粉、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、フルセラリアガム、ジェランガム、グアーガム、カシアガム、タラガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、アゾトバクタービネランジーガム、ペクチン、コンニャクマンナン、アルギン酸ナトリウム、カードラン、大豆タンパク、ゼイン、カゼイン、プルランおよびセルロース誘導体の中から選択される1種以上である請求項1に記載の舌筋トレーニング用食品。
【請求項3】
前記徐溶性材料は、さらに、茶カテキン、過酸化尿素、乳酸菌、ビタミン類、コラーゲン、葉酸、酵素、タンパク質、αリノレン酸、プロテイン、アントシアニン、ポリフェノール、プラセンタ、グルコサミン、コンドロイチン、亜鉛、プロテオグリカン、マグネシウム、ウコンおよび食品甘味料のうち、少なくとも1種以上を含有するものである請求項1または2に記載の舌筋トレーニング用食品。
【請求項4】
前記シート状食品は、飴、餅、団子、キャンディ、チューイングガム、グミキャンディ、チューイングキャンディおよびオブラートの中から選択される食品として製造されるものである請求項1~3のいずれかに記載の舌筋トレーニング用食品。
【請求項5】
前記水溶性材料は澱粉であり、前記シート状食品はオブラートであり、肉厚を30μm~50μmの範囲内とするものである請求項1または2に記載の舌筋トレーニング用食品。
【請求項6】
前記シート状食品は、横長の矩形に形成されている請求項1~5のいずれかに記載の舌筋トレーニング用食品。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の舌筋トレーニング食品を使用する舌筋のトレーニング方法であって、前記シート状食品の表面または裏面のうち突起を設けない側の面を上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先によって舐めることにより徐溶させることを特徴とする舌筋のトレーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌筋トレーニング用食品および舌筋のトレーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
舌の動作は、食事に際し咀嚼や嚥下に重要な機能を発揮するが、それ以外にも呼吸、滑舌など食事以外の動作においても重要な機能を発揮するものである。この舌の動作は、舌筋によるものであるが、年齢とともに筋力が衰えることにより、咀嚼力が低下し、円滑な嚥下に支障(誤嚥)を生じさせ、また、睡眠時における舌根部の沈み込みによる無呼吸症候群などの原因ともなっていた。また、近年では、二重あご、またはほうれい線などの美容面における舌筋の機能が注目されつつある。そこで、舌筋の筋力を向上させるために、意識的に舌を使うようなトレーニング方法が各分野において紹介されるようになってきた。
【0003】
舌筋をトレーニングするためには、トレーニングする者が意識的に上顎歯列または下顎歯列の表面を舌で舐めるような動作を行う方法が考案されている(非特許文献1参照)。ところが、トレーニングする者が意識的に舌で上顎歯列等を舐める動作を行う場合には、本人の自主性に委ねられることから、トレーニングに対する意志の強弱によって効果が異なることとなっていた。そこで、この種の筋肉を鍛えるためのトレーニング器具が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://every-day-life.com/tongue-muscle/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲のトレーニング機器に係る特許文献1に開示される技術は、弾性エラストマで構成された器具を口腔内に挿入し、その一部(咬合部)を第一大臼歯に到達させた状態で噛むように使用するものである。舌筋の鍛錬には、咬合部から斜め下方に突出する部分(舌支え部)を舌で押し上げるように使用するものである。
【0007】
ところが、この種の器具を使用して舌筋を鍛錬する場合には、当該器具を口腔内に挿入しなければならず、衛生面を考慮すれば、口腔内に挿入する部分(咬合部および舌支え部)は、清潔な状態にしなければならず、家庭内における使用は可能であるが、外出時に携行して使用することには不向きなものであった。また、弾性エラストマによって構成されることから、適宜弾性変形可能であるとしても、口腔内の大きさや舌の長さなどは個人差があり、器具そのものの大きさを選択する必要があった。
【0008】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、場所や時間を選ばず舌筋をトレーニングすることができる食品および舌筋のトレーニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、舌筋トレーニング用食品に係る本発明は、水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品、所望の食品材料によるシート状の基材層の表面に前記徐溶性材料を積層もしくは担持させてなるシート状食品、または該徐溶性材料と同種もしくは異種の徐溶性材料もしくはその他の食品材料とが積層されてシート状としたシート状食品によって構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の舌筋トレーニング用食品は、それ自体が食品であることから、個別包装等により衛生的に保管することができるうえ、使用時ごとに新しい食品を食するもとなるから衛生的なものである。そのうえで、本発明の舌筋トレーニング用食品は、上記構成であるから、徐溶性材料(またはこれと他の材料との積層体)によるシート状食品を歯列に付着させることにより、舌を使って歯列に付着されるシート状食品を徐溶させれば、舌をトレーニングしながら食品を食することができる。
【0011】
徐溶性材料は、水溶性材料のみを原料とする場合のほか、水溶性材料を主原料とし、サプリメント成分や食品添加物などを加えたものとしてもよい。また、シート状食品は、徐溶性材料のみをシート状とする場合のほか、適宜選択された所望の食品材料をシート状としたうえで、その表面に徐溶性材料を積層し、または担持させるように構成したものであってもよい。このときの担持とは、基材層の粘着性を利用して徐溶性材料の粉末を固定させた状態や、ゾル化した徐溶性材料を塗布した状態でゲル化させる場合などがあり得る。さらに、シート状食品には、シート状の徐溶材料に対し他の食品材料を積層したものであってもよい。このときの他の食品材料とは、同種の徐溶性材料を肉厚調整等のために積層する場合のほか、異種の徐溶性材料を積層する場合もあり、さらには、徐溶性を有しないか極めて溶解しづらい食品などを積層する場合がある。徐溶性を有しないか極めて溶解しづらい食品を使用する場合は、徐溶性材料部分が溶解した後に咀嚼して食するものとすることができる。他の食品材料は、常温において形状が安定するものであれば、食品の種類や原料等が限定されるものではない。
【0012】
なお、徐溶性材料と他の食品材料とが積層されるシート状食品とは、他の食品材料を徐溶性材料でコーティングしたものなどを含み、専ら徐溶性材料を表面に積層したものである。徐溶性材料が表面に積層されることにより、歯列の表面との付着性を良くし、また表面の徐溶性材料が消失した後に内部の食品を食することを可能にするものである。
【0013】
ところで、水溶性材料としては、澱粉、澱粉誘導体、餅米、米粉、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、フルセラリアガム、ジェランガム、グアーガム、カシアガム、タラガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、アゾトバクタービネランジーガム、ペクチン、コンニャクマンナン、アルギン酸ナトリウム、カードラン、大豆タンパク、ゼイン、カゼイン、プルランおよびセルロース誘導体の中から1種以上を選択して使用することができる。単一材料により形状が安定しない場合は二種類の材料を混合して使用することができる。
【0014】
また、徐溶性材料には、さらに、茶カテキン、過酸化尿素、乳酸菌、ビタミン類、コラーゲン、葉酸、酵素、タンパク質、αリノレン酸、プロテイン、アントシアニン、ポリフェノール、プラセンタ、グルコサミン、コンドロイチン、亜鉛、プロテオグリカン、マグネシウム、ウコンおよび食品甘味料のうち、少なくとも1種以上を含有するものとすることができる。
【0015】
徐溶性材料に上記物質が含有されるということは、水溶性材料に上記物質が添加されていることであり、これらの物質が添加されることにより、舌筋トレーニング用としての使用と同時に、他の効果を得ることができる。例えば、茶カテキンは口腔内の雑菌を死滅させ口臭予防の効果を発揮させ、過酸化尿素は歯の美白化させる効果を発揮させ得る。また、ビタミン類やコラーゲンなど、通常は粒状等のサプリメント食品として摂取する物質を含有させることにより、舌筋のトレーニングを行いながらこれらのサプリメント食品を摂取することができる。
【0016】
なお、シート状食品は、飴、餅、団子、キャンディ、チューイングガム、グミキャンディ、チューイングキャンディおよびオブラートの中から選択される概念の食品として製造することができる。グミキャンディまたはチューイングキャンディなどは比較的柔らかい食品として馴染みがあり、オブラートは変形容易なシート状の食品として馴染みがあるため、これらの食品に属する商品とすることにより、消費者の理解を促すことができる。また、飴やキャンディなどは、変形しない食品とされているが、歯列に付着できる形状とすることにより利用可能となる。チューイングガムは、咀嚼後に吐き出す食品であるが、舌筋のトレーニング後に咀嚼して食することができる商品とすることができる。このチューイングガムが、風船ガムである場合には、通常の咀嚼に加えて風船を膨らませる動作を行うことにより舌筋の効果的なトレーニングとなり得る。すなわち、風船ガムを膨らませる場合には、舌先を上下の唇から突き出すような動作が要求されることから、徐溶の際に歯列に沿って舌を移動させる動作と、舌先を突き出す動作とが相俟って、各種の舌筋に対するトレーニング効果を得ることができるのである。
【0017】
上述の各種食品として製造するために、前記シート状食品は、横長の矩形に形成されていることが好ましい。また、商品に応じて長手方向に沿った折り線により二つ折りされたものとすることが好ましい。さらには、長手方向に沿った中央線により二つ折りされ、さらに長手方向に沿った二つの折り線により長辺側端縁を内向きに折り返されていることが好ましい。特に、飴やキャンディなどの変形し辛い商品の場合には、上顎または下顎の歯列弓に応じた長さまたは形状に構成されていることが好ましい。
【0018】
また、上述の各種食品として製造する場合において、前記シート状食品は、適宜面積の任意の形状に形成されたものとすることができ、その場合、少なくとも片側表面に適宜間隔を有する突起部が形成されているものと構成することができる。
【0019】
上記構成の場合には、歯列弓にシート状食品を付着する方法ではなく、上顎の歯列を除く内側表面にシート状食品を付着し、舌先を移動させてこれを徐溶するような使用方法が可能となる。シート状食品の片側表面に突起部を構成する場合には、舌先の移動(徐溶)によって、突起部が徐々に変化することを舌先から知覚することができるとともに、全ての突起部の徐溶を目標として、舌先のトレーニングを行うことも可能となる。なお、少なくとも片側表面に突起部を有する構成であるから、舌先が当たる側の面に突起部を有していればよく、他方の表面に突起部を有する場合と、有しない場合とがあり得る。
【0020】
そして、前記シート状食品は、同種または異種を二枚積層して形成され、前記突起部は、内部に中空部が形成されたものとすることができる。このように、突起部を中空状態に構成する場合には、突起部に対し、舌先を適度な強さで押し当てることにより、当該突起部を破壊(緩やかに破裂)させることができ、このような舌先に適度な力を作用させるトレーニングを行うことができる。なお、二枚を積層して突起部を中空状態とする場合、突起部を構成する側のシートは、舌先を押し当てる強さに応じて適当に破壊(破裂)し得るような肉厚によって構成することとなる。
【0021】
さらに、適宜面積の任意の形状に形成されたシート状食品は、全体として略ドーム状に形成したものとすることができる。このような構成の場合には、ドーム状としたシート状食品を舌先に付着させることが可能となる。シート状食品を舌先に付着させる場合には、そのシート状食品を徐溶させるために、舌先を口腔内のどこかの表面に摺接させることが必要となり、前述のような歯列やそれ以外の上顎表面などの任意の表面に摺接させることによって舌筋のトレーニング効果を得ることができる。この場合の摺接面は、任意となることから、舌筋の発達状態に応じて、舌先に近い位置から開始し、徐々に奥側へ変更させることができる。
【0022】
他方、舌筋トレーニング用食品の使用方法に係る本発明は、前記いずれかに記載の舌筋トレーニング食品を使用するための方法であって、前記シート状食品を上顎歯列もしくは下顎歯列または上顎および下顎の両歯列の少なくとも外側表面に付着させ、舌の表面または裏面によって舐めることにより徐溶させることを特徴とする。この場合、シート状食品の全部を徐溶させることで食する場合のほか、適度な範囲について徐溶した後、残る部分を咀嚼して食する場合を含むものである。
【0023】
上記構成によれば、舌筋トレーニング用食品は、上顎および下顎の各歯列のいずれか一方または双方の少なくとも外側表面(唇側の表面)に付着させることから、この位置に付着させた食品を舐めて徐溶させるためには、舌を尽き出して舌先を上方または下方へ延ばさなければならず、さらに歯列に沿って舌先を左右へ移動させる動作が要求される。このような舌の動作には、舌筋を強力に働かせる必要があり、その結果として舌筋を活動させ、トレーニング効果を得ることができるのである。また、当然に上顎および下顎の歯列の内側表面(喉側の表面)にも舌筋トレーニング食品を同時に付着させることができ、この場合には、舌を後退させながら舌先を上下および左右に移動させることとなり、これまた舌筋のトレーニング効果を得ることとなる。
【0024】
なお、シート状食品が餅や団子などの場合、またはグミキャンディやチューイングガムのような場合においては、当該シート状食品の全部を徐溶によってのみ食するものではなく、表面の適当な部分を徐溶させ、その後の残余部分を咀嚼によって食することも可能である。さらに、シート状食品がチューイングガムであり、そのチューイングガムが風船ガムである場合には、風船ガムを膨らませるような動作を追加する使用方法もあり得る。
【0025】
ところで、舌筋は、外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋および茎突舌筋)と、内舌筋(上縦舌筋、下縦舌筋、横舌筋および垂直舌筋)に区分され、外舌筋は専ら舌の位置を移動させるための筋肉であり、内舌筋は専ら舌の形状を変化させるための筋肉であるとされている。これらのうち、特に、オトガイ舌筋は、舌を下方に制するとともに舌を前方に突出させるための筋肉であり、このオトガイ舌筋の力が低下すると、睡眠時に舌が後退し、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすとされている。また、茎突舌筋は、嚥下の際に舌の表面に窪みを形成する(凹状にする)ための筋肉である。そのため、これらをトレーニングすることにより、誤嚥の防止や睡眠時無呼吸症候群の予防に効果を発揮することとなる。
【0026】
また、舌筋トレーニング用食品が二つ折りされた形態の場合における使用方法に係る本発明は、当該二つ折りされて対向する二片のシート部を歯列の内外両表面に同時に付着させることが可能となり、舌の表面または裏面によって舐めることにより徐溶させることを特徴とする。
【0027】
上記構成の場合には、舌筋トレーニング用食品が予め二つ折りにされていることから、上顎または下顎の歯列の表裏両面に対して同時に付着させることができるため、歯列の表裏を均等に舌で舐めるようにして食することにより、舌筋を全体的に活動させることとなり、舌筋全体に対するトレーニング効果を得ることができる。
【0028】
なお、いずれの使用方法にあっても、シート状食品は、上顎歯列および下顎歯列のそれぞれに付着させることが効果的であり、上顎および下顎の歯列に順次付着させてもよいが、同時に付着させてもよい。同時に付着させる場合には、歯列の外側表面または内側表面のいずれか一方にのみ付着させる場合もあれば、表裏両面に同時に付着させる場合であってもよい。
【0029】
さらに、舌筋トレーニング食品が、適宜面積の任意の形状に形成されたシート状食品によって構成された形態の場合における使用方法に係る発明は、前記シート状食品を上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌の表面によって舐めることにより徐溶させることを特徴とする。
【0030】
上記構成の場合には、シート状食品が上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着していることから、舌をさらに上向きに曲げる動作を伴いながら舐めることができ、舌筋のトレーニング効果を得ることができる。特に、突起部を有する構成の場合には、突起部の消滅を目標に舌先の移動を行うことができ、その目標達成をもってトレーニング終了の目安とすることも可能となる。また、突起部を中空とする場合には、舌先を適度な強さで押し当てることによって、突起部を破壊(破裂)させることができることから、そのような舌先を押し当てる動作による舌筋のトレーニング効果も得ることが可能となる。
【0031】
また、舌筋トレーニング食品が、略ドーム状に形成された前記シート状食品の内部を舌先に併せて付着させ、該シート状食品を介する状態の舌先を口腔内の任意の表面に摺接させることにより、舌の表面によって徐溶させることを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、シート状食品を口腔内に付着させるのではなく舌先に付着させ、舌先を口腔内の任意の表面に摺接させることによって徐溶させることから、使用者が自身の舌筋の状態に応じて、適度なトレーニングが可能となる。この場合、使用開始直後は歯列またはその近傍において摺接させ、継続的な使用により舌筋のさらなるトレーニングを行う場合は、舌先を口腔内の奥側の適当な表面に摺接させるように適宜変更させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の舌筋トレーニング食品によれば、基本的にはグミキャンディやオブラートのように、唾液によって徐溶する食品であることから、歯列に付着させた状態で舌を用いて食するため、必要な器具を要することなく、空いた時間を利用してトレーニングを補助することができる。特に、清涼感を与える食品甘味料を含有する食品の場合には、仕事等の休憩時間における気分転換に食する食品と同様に利用でき、また、他のサプリメント食品として接種される物質を含有する食品の場合には、同時にサプリメント効果を得ることができる。
【0034】
本発明の舌筋のトレーニング方法によれば、特別な器具等を使用するものではないことから、場所や時間を選ばず舌筋をトレーニングすることができる。また、歯列の外側表面に付着した食品を食することにより、舌を前方に突出させるための筋肉であるオトガイ舌筋を鍛えることができ、睡眠時無呼吸症候群の予防効果を得ることができる。同様に、舌を左右に移動させることにより茎突舌筋を鍛えることができ、正常な嚥下動作のための筋力を養い、誤嚥防止の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】舌筋トレーニング用食品の実施形態を示す説明図である。
【
図2】舌筋トレーニング用食品の各種形態を示す説明図である。
【
図3】舌筋トレーニング用食品の使用状態を示す説明図である。
【
図4】舌筋トレーニング用食品の使用方法に係る実施形態を示す説明図である。
【
図5】舌筋トレーニング用食品の使用方法に係る実施形態を示す説明図である。
【
図6】舌筋トレーニング用食品の第3の実施形態を示す説明図である。
【
図7】(a)は
図6中のVIIA-VIIA線による断面図であり、(b)は
図6中のVIIB-VIIB線による断面図であり、(c)はこれらを使用する場合の使用方法に係る実施形態を示す説明図である。
【
図8】(a)および(b)は舌筋トレーニング用食品の第4の実施形態を示す説明図であり、(c)はこれらを使用する場合の使用方法に係る実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、舌筋トレーニング用食品に係る本発明の実施形態を示す図である。なお、
図1(a)は第1の実施形態の舌筋トレーニング用食品100を例示するものであり、
図1(b)は第2の実施形態の舌筋トレーニング用食品を例示するものである。
【0037】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の舌筋トレーニング用食品100は、
図1(a)に示すように、徐溶性材料をシート状としたシート状食品1によって構成されるものである。このシート状食品1は、上顎または下顎の歯列に沿って付着できるように横長の略長方形状としており、その長辺部分の長さが歯列の長さと同等または僅かに短い状態で設けられ、短辺の長さは、歯冠の長さと同等または僅かに短い状態で設けられる。また、このシート状食品1は、全体が徐溶性材料であり、その主原料は水溶性材料である。なお、徐溶性材料は、水溶性材料のみを原料とするものであってもよい。
【0038】
水溶性材料としては、澱粉、澱粉誘導体、餅米、米粉、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、フルセラリアガム、ジェランガム、グアーガム、カシアガム、タラガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、アゾトバクタービネランジーガム、ペクチン、コンニャクマンナン、アルギン酸ナトリウム、カードラン、大豆タンパク、ゼイン、カゼイン、プルランおよびセルロース誘導体を挙げることができ、これらの原料の中から1種以上を選択することが好ましい。
【0039】
上記の水溶性材料には、オブラートのように澱粉または澱粉誘導体によって、比較的早期に溶けるものであってもよく、温度変化によりゾルからゲルに転移する性質を有する材料(熱可逆性ゲル)を含有することにより、比較的溶ける時間が長いものとしてもよい。この熱可逆性ゲルを添加する場合には、ゾル温度領域において溶解液を調整し、適宜成形後に乾燥させることにより、ゲル化させることによって、所定の形状を維持しつつ徐溶性の食品となり得る。この種の材料としては、寒天、ゼラチン、カラギーナンなどがあり、いずれの場合も溶解液を成形しつつ乾燥させて徐溶性材料を得ることができる。また、餅米や米粉を使用する場合には餅や団子などの食品として加工することができ、通常は徐溶する食品ではないとしても、時間を掛けて徐溶することから、同様に徐溶性材料として使用することができる。
【0040】
さらに、水溶性材料そのものの溶ける時間の長短に応じ、シート状食品1の肉厚Tを調整し、口腔内での溶ける時間を調整するものとすることができる。例えば、澱粉等によって構成されるオブラートのような食品の場合は、肉厚Tを40μmとすることにより、溶解時間を長期化させ、また、熱可逆性ゲルを含有させた場合は、肉厚Tを20μmとすることにより溶解時間を短縮させるような場合があり得る。餅米や米粉を使用する場合はさらに薄くすることで溶解時間を短縮することができる。
【0041】
なお、上記肉厚Tの選定は、澱粉を使用したオブラートを使用する場合における溶解時間を基準としており、当該オブラートを使用する場合30μm~50μmの範囲内とすることが、舌筋トレーニング用食品100を構成したとき、舌筋のトレーニングに要する時間と溶解時間とのバランスが最も良かったことから、その中間値である40μmを基準としている。シート状と称しているが、肉厚Tが薄いことからフィルム状と称してもよいが、いずれも柔軟な変形自在な状態である。
【0042】
また、上記の水溶性材料には、茶カテキン、過酸化尿素、乳酸菌、ビタミン類、コラーゲン、葉酸、酵素、タンパク質、αリノレン酸、プロテイン、アントシアニン、ポリフェノール、プラセンタ、グルコサミン、コンドロイチン、亜鉛、プロテオグリカン、マグネシウム、ウコンおよび食品甘味料のうち、少なくとも1種以上を含有させるものであってもよい。すなわち、徐溶性材料には、前掲の添加物質を適宜選択して含有するものとすることができる。
【0043】
上記添加物質は、個々に特定の機能を促すために添加されるものである。例えば、茶カテキンは、口腔内の細菌を減少させるためであり、過酸化尿素は歯冠の美白効果を促すために添加される。その他の添加物質は、摂取によりサプリメント効果を得るために添加される。前掲の添加物質のほかにも、他の物質を添加してもよい。例えは、果実エキスなどを添加することにより、果実味の徐溶性材料とすることができる。
【0044】
上記に示すシート状食品1は、基本的には数十μmの肉厚を有するシート状に形成された変形自在なものである。従って、このシート状食品1を適宜変形しながら、横長の状態で歯列に沿って付着させることができるものとなっている。なお、シート状食品としては、飴、餅、団子、キャンディ、チューイングガム、グミキャンディ、チューイングキャンディおよびオブラートなどが挙げられ、これらの範疇に入る種類の食品として製品とすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
そして、全体を徐溶によって食することができるシート状食品の場合には、上述のように、基本的には数十μmの肉厚とすることが望ましいが、一部においてのみ徐溶させ、その残余部分を咀嚼によって食するようなシート状食品の場合には、柔軟性および溶解性に応じて、さらに厚く構成してもよい。例えば、1mm~5mmの肉厚とすることもできる。例えば、飴、餅、団子またはグミキャンディなどは、薄くすることにより取扱いが難しくなることがあり、また、全体的に溶解しづらい場合があることから、表面を徐溶した後に残りを咀嚼によって食するものとすることができる。この場合、全体を単一の材料で構成してもよいが、表面と本体とを異なる層で構成してもよい。
【0046】
<第2の実施形態>
他方、第2の実施形態の舌筋トレーニング用食品200は、
図1(b)に示すように、シート状食品1を二つ折りとした状態である。図示のように、予め歯列の形状に合わせた形状として構成してもよいが、単純に、前記第1の実施形態1の短辺の長さを大きくし、長辺に沿った折り線(中央線)により二つ折りした状態であってもよい。寒天等の熱可逆性ゲルの添加量が多い場合には、変形が容易でないため、歯列に合わせた形状とすることが好ましいが、熱可逆性材料の添加量が少ない場合には、比較的柔軟であるため、その肉厚Tと相俟って、二つ折りのシート状とすることが好ましい。
【0047】
なお、歯列に沿った形状とする場合には、二枚の平面部11,12を構成するとともに、その中間に歯列弓の全体が挿入できる間隙Hを形成するため、溝部13が形成されることとなる。この平面部11,12は、その肉厚Tの薄さから少なからず変形できるものであるため、溝部13は、使用者の個人的な歯列弓に合致させることまで要求されるものではない。すなわち、一般的な歯列弓の全体が挿入できる程度の溝部13が形成されていればよいものである。
【0048】
前述の第1の実施形態100および第2の実施形態200について、その詳細を説明する。
図2は、それぞれの形態を示したものであり、
図2(a)および(b)は、第1の実施形態100における具体的形態の端面部を示し、
図2(c)~(e)は、第2の実施形態200における具体的形態の端面部を示している。
【0049】
図2(a)に示す実施形態は、上述のように、一枚のシート状とした場合の形態である。この一枚のシート状食品1は、そのものが単一の原料によるもの、複数の原料が混合されているもの、またはこれらに添加物質が含有されるものなどがある。
【0050】
図2(b)に示す実施形態は、上述と同様のシート状食品1が、他の材料2に積層されたものである。他の材料2とは、例えばガムベースなどがある。ガムベースとしては、酢酸ビニル樹脂やポリイソブチレンなどを使用することができる。ガムベースを中央に配置し、その両面にシート状食品1を積層することにより、第1に、表裏の区別なく使用できること、第2に、一方のシート状食品1は、歯列との付着のために使用し、他方のシート状食品1を舌(唾液)による徐溶に供するものとすることができる。また、中央の層2が、徐溶性材料でないことから、表面のシート状食品1が唾液によって溶解した後に、本来的な食品(チューイングガム等)として食することも可能となる。
【0051】
チューイングガムのように、徐溶後に咀嚼して食する食品とする場合には、咀嚼そのものが舌筋のトレーニングとなるが、チューイングガムを風船ガムとする場合には、風船を膨らませる動作によって舌筋をさらにトレーニングさせることができる。すなわち、風船ガムを膨らませる際には、通常とは異なる舌の動作が要求される。そのため、徐溶において歯列に沿って舌を移動させる動作と、風船を膨らませる動作とが相俟って、効率的な舌筋のトレーニングが行えるのである。
【0052】
また、飴、餅またはグミキャンディなどの溶解しづらい食品にあっては、表面層1と本体層2とを積層するように構成してもよい。この場合、両層1,2は、同種の材料とする場合のほか、異なる材料で構成される場合とがある。基本的には表面層1の材料は、本体層2の材料よりも溶解しやすい材料とすることにより、表面層1の徐溶後に本体層2を咀嚼して食するような食べ方とすることができる。このとき、表面層1と本体層2との味を変化させれば、表面層1が溶解したことを容易に察することができる。なお、積層する材料(専ら本体層2)は、上記例示のものに限定されるものではなく、常温で形状が安定する食品であれば使用することができる。溶解しづらい食品を使用する場合は、表面層1が溶解した後、咀嚼により食するものとすることができる。
【0053】
さらに、上記本体層2を基材層とする場合、この本体層2が所望の食品材料(例えば、餅や和菓子など)であり、その表面に徐溶性材料による表面層1を積層することもでき、さらには、徐溶性材料の粉末を担持させた表面層1とする場合もあり得る。すなわち、本体層2が適宜なシート状であり、その表面に徐溶性材料が存在していれば同様の効果を得られるのである。表面に担持される場合としては、本体層(基材層)2に粘着性がある場合には、その粘着力を利用して徐溶性材料の粉末を固定させた状態があり、また、ゾル化した徐溶性材料を塗布した状態でゲル化させ、本体層(基材層)2の表面の全体または一部に徐溶性材料が薄膜状態で存在するような場合をも含むものである。
【0054】
図2(c)~(e)は、第2の実施形態の具体的形態であるが、これらを構成する個々のシート状食品は、
図2(a)または(b)に示すような単層型または多層型の双方を使用することができるものである。この種の説明は、個別の具体的形態にかかる説明において、特に説明することは省略している。
【0055】
図2(c)に示す実施形態は、単純に二つ折りした形態である。このときの折り線は、長手方向に沿った中央部(中央線)3である。このような二つ折りした状態の実施形態200の場合には、歯列の表裏に同時に平面部11,12を付着させることができる。
【0056】
図2(d)に示す実施形態は、前記二つ折りとした形態から、さらに内側に折り返した形態である。この実施形態では、長手方向に沿った中央部(中央線)3を第1の折り線とし、さらに、長手方向に沿った二つを折り線4,5としており、二つの折り線4,5によって折り返すことにより、長辺側端縁を内向きとする平面部11,12を構成している。この場合には、例えば、多層型のシート状食品(
図2(b))を用いる場合であっても、必ずしも両面に徐溶性材料を積層することなく、片面のみに徐溶性材料を積層し、この徐溶性材料層を最外層として構成すれば、歯列表面に付着させつつ舌(唾液)による徐溶も可能となり得る。
【0057】
図2(e)に示す実施形態は、予め歯列弓に応じた間隙Hを開口した形状としたものである。基本的には、
図2(c)に示す二つ折りした形態を使用する際に部分的に開口させたものであるが、使用する材料によって、変形できる範囲が狭い場合には、このような形態とすることができる。
【0058】
舌筋トレーニング用食品100,200の実施形態は上記のとおりであるから、いずれの舌筋トレーニング用食品100,200についても、歯列に付着させ、舌の動作(唾液の効果)によって、徐溶させることができる。このときの徐溶により、材料成分が徐々に口腔内に取り入れられ、摂取可能な状態となることから、食品として(嗜好品の一種として)味わうことができるのである。この徐溶のために舌を動かすことにより、舌筋のトレーニング効果を得るのである。
【0059】
そこで、上記の舌筋トレーニング用食品の使用方法に係る実施形態について説明する。
図3(a)は、使用状態の代表例として、前述した舌筋トレーニング用食品100を上顎歯列Aaおよび下顎歯列Abの外側表面に付着させた状態を示している。上述のように、第1の実施形態の舌筋トレーニング用食品100は、シート状に形成されたもの(二つ折りされていないもの)であるため、歯列AaおよびAbに沿って横長に付着させることができる。このときの付着は、歯列表面に存在する僅かな唾液によって、シート状食品の表面が徐溶されることによる。すなわち、装着直前に、歯列Aa,Abを舐める等の行為により、唾液で歯列Aa,Abの表面を湿らせるのである。この唾液により表面の徐溶性材料を僅かに溶かせることにより、シート状食品は歯列Aa,Abの表面に容易に付着し得るのである。
【0060】
このとき、
図3(a)に示すように、舌筋トレーニング用食品100の片側面は、歯Aの外側表面A1および内側表面A2のうち、いずれか一方、または双方に付着させるのである。両面A1,A2に付着させる場合は、それぞれ個別の舌筋トレーニング用食品100を個々に付着させることとなる。
【0061】
また、二つ折りした舌筋トレーニング用食品200を使用する場合は、
図3(c)および(d)に示すように、二つの平面部11,12のうち、一方の平面部12を歯Aの内側表面A2に付着させ(
図3(c))、その後、他方の平面部12を歯Aの外側表面A1に付着させるのである(
図3(d))。このように、歯Aの両面A1,A2に対して同時に付着させず、個別に付着させることにより、付着後の舌筋トレーニング用食品200は、歯列弓に沿って好適な状態となる。なお、この付着の順序は特に限定されるものではなく、先に外側表面A1から付着させ、その後に内側表面A2に付着させてもよい。
【0062】
上述のように、いずれかの舌筋トレーニング用食品100,200を歯列に付着すれば、その後は、舌筋トレーニング用食品100,200の表面を舐めるように舌を動かすのである。舌の動かし方は、徐溶材料が全体に溶けるように、当該舌筋トレーニング用食品100,200の表面全体に舌先を到達させるようにするのである。
【0063】
この動作を
図4および
図5に示している。例えば、
図4(a)に示すように、上顎歯列Aaの外側表面を舐める場合は、下顎Cを少し突き出すとともに、舌Bを前方に延ばし、舌先B1を上唇Daと歯列Aaとの間に押し入れるのである。さらに、この状態を維持しながら舌先B1を歯列弓に沿って左右に移動させることにより、全体に舌先B1を到達させることができる。この動作により、外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋および茎突舌筋)の活動を促し、舌筋のトレーニング効果を得ることができる。
【0064】
同様に、
図4(b)に示すように、下顎歯列Abの外側表面を舐める場合は、下顎Cを少し後退させるとともに、舌Bの全体を後へ引きつけ、舌先B1を下唇Dbと歯列Abとの間に押し入れるようにする。このとき、舌先B1の裏側によって歯列Abの外側表面を舐めることができる状態となる。この場合においても、舌先B1を歯列弓に沿って左右に移動させることにより、外舌筋を活発に働かせることとなり、舌筋のトレーニング効果を得ることができる。
【0065】
一般的には、歯列Aa,Abの外側表面に舌先B1を到達させる行為は僅少であることから、少なくとも上述のように歯列Aa,Abの外側表面を中心に舌筋をトレーニングすることが好ましいが、さらに、歯列Aa,Abの内側表面も併せて同様に舌先B1を運動させることにより、舌筋のトレーニングに効果を有する。
【0066】
この場合、上顎歯列Aaの内側表面に舌先B1を到達させる場合には、
図5(a)に示すように、舌Bを後方へ引いた状態で、舌先B1を持ち上げる動作となる。また、下顎歯列Abの内側表面に舌先B1を到達させる場合には、
図5(b)に示すように、舌Bを後方へ引いた状態で、舌先B1の少し手前を下向きに押さえるような動作となる。そして、このような状態で、舌先B1を歯列弓に沿って左右に移動させることにより、外舌筋を活発に働かせることとなり、舌筋のトレーニング効果を得ることができる。
【0067】
上述のような上顎歯列Aaおよび下顎歯列Abのそれぞれの外側および内側について、均等に舌先B1を移動させるような動作を毎日数回行うことにより、舌筋全体は鍛錬されることとなる。専ら、外舌筋が鍛えられることにより、睡眠時無呼吸症候群の予防効果を得ることができ、また、正常な嚥下動作のための筋力を養うことができる。
【0068】
<第3の実施形態>
舌筋トレーニング用食品に係る第3の実施形態は、
図6(a)に示すように、例えば、徐溶性材料によって長円形表面を有するシート状としたシート状食品1によって構成したものである。シート状食品1の表面形状は長円形に限定されず矩形でもよく、さらにダルマ形状や円形など種々の形状にすることができる。このように構成された舌筋トレーニング用食品300は、口腔内の任意の表面に付着させて、その状態で舌先を使用して徐溶させるような使用方法が可能となる。
【0069】
また、
図6(b)および(c)に示すように、シート状食品1の片側表面(表面)10aに、比較的小さな複数の突起部6を適宜間隔で配置した舌筋トレーニング用食品400を構成してもよい。この突起部6は、例えば、直径2mm~5mmの直径を有する円形底面を有する円柱状とし、相互の間隔を1mm~3mmの範囲で定めることができる。そして、シート状食品1の表面が、例えば30mm×20mmの長方形の場合には、
図6(b)のように12個の突起部6を有する状態から
図6(c)のように6個の突起部6を有する状態とすることができる。なお、シート状食品1の表面形状は長方形に限らず、円形や楕円形など任意であり、前記例示の全体的な寸法や数は適宜変更できるものである。また、この円柱状の突起部6は中空状としてもよい。
【0070】
中空状の突起部6を構成する場合には、
図6(d)に示すように、二種類のシート状食品1A,1Bを積層するものとすることができる。この場合、一方のシート状食品1Aを表面層、他方のシート状食品1Bを本体層とし、表面層1Aは、予め突起部6(裏面側からは陥没部)を形成させておき、この両者を積層することによって、突起部6を中空状態とすることができる。二種類のシート状食品1A,1Bは、同質の徐溶性材料によって構成することができるほか、異なる材料で構成したものを積層してもよい。
【0071】
このように、突起部6を有する形態においては、例えば、単一の徐溶性材料によって単純に突起部6を形成する形態とするほか、複数の徐溶性材料を積層して構成することができる。突起部6は、
図7(a)に示すように、徐溶性材料を突出させた構成のほか、
図7(b)に示すように、中空状とすることができる。
【0072】
いずれの形態におけるトレーニング用食品300,400においても、
図7(c)に示すように、上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、これを舌先によって徐溶させることで、舌筋をトレーニングするのである。突起部6を設けない形態の場合は、表裏の区別は存在しないため、一方の面を口腔内表面に付着させれば、他方の面は舌の方向へ向かって露出することとなり、この表面を舌先で舐めるように徐溶することができる。
【0073】
これに対し、突起部6を有する形態の場合には、当該突起部6を形成していない面(裏面側)を口腔内表面に付着することにより、突起部6を有する側の面(表面側)が舌の方向へ向かって露出する状態となる。そこで、舌先によって突起部6を徐溶することができる。さらに、突起部6が中空の場合には、突起部6に対して適度な強さで舌先を押し当てることにより、その突起部6を破壊(破裂)させるように使用することもできる。舌先を口腔内表面に強く押し当てるような動作は、通常の生活における場合の動作ではないことから、舌筋のトレーニング効果を向上させるものとなる。
【0074】
なお、突起部6は、シート状食品1の両側表面(表面10aおよび裏面10b)に設ける構成でもよい。この場合には、裏面10bにおける突起部6の位置が、表面10aにおいて突起部6が設けられていない位置とすることにより、表面10aの側の平面部分を舌先で押し当てることで裏面10bの側の突起部6を破壊(破裂)させるような舌の動作も要求されることとなり、より複雑な舌の動作を伴うトレーニングが可能となる。
【0075】
<第4の実施形態>
舌筋トレーニング用食品に係る第4の実施形態は、
図8(a)および(b)に示すように、例えば、シート状食品1を全体として略ドーム状としたものである。略ドーム状とは、
図8(a)に示すように、シート状食品1を弧状断面としたもののほか、
図8(b)に示すように、円形もしくは楕円形または矩形のシート状食品1の周辺部分を襞状に折り曲げ、底面部および側面部を設けた有底筒状としたものを含む概念である。そして、これらの略ドーム状とするシート状食品1は、成形型による成型によって構成するほか、絞り加工(絞り成形型)によって構成してもよい。襞状に折り曲げた形状についても絞り成形型による絞り加工によって構成することも可能である。
【0076】
このように、シート状食品1を全体として略ドーム状に構成することにより、しかも、開口部の直径を約5mm~20mmとすることにより、略ドーム状の内部に舌先を侵入させることができる。すなわち、舌先をシート状食品1で被覆するような状態とすることができるのである。また、襞状部分を有する形状の場合は、当該襞状部分を拡張させることにより、個々の舌の大きさに合わせて開口部の径を拡大させることも可能となる。そして、舌先がシート状食品1に接することにより、その表面は僅かに溶けることから、舌先に密着させた状態で付着させることができる。このような舌先にシート状食品1が密着した状態であれば、舌先を口腔内表面に摺接させても、シート状食品1が舌先から容易に離脱することがなく、当該被覆状態を維持しつつ舌先の自由な動作が可能となる。
【0077】
従って、上記のような形態の舌筋トレーニング用食品500を使用する場合、
図8(c)に示すように、略ドーム状のシート状食品1を舌先に装着した状態で、その舌先を口腔内表面に摺接させれば、シート状食品1は徐溶することとなり、その動作によって舌筋をトレーニングするものである。さらに、この形態のトレーニング用食品500の場合には、舌尖のみならず舌体部分についてもシート状食品1によって被覆されることとなるから、舌尖のみを集中して使用することにならず、舌体の側部などを口腔内表面に摺接させることにより、略ドーム状のシート状食品1を全体として徐溶させることが可能となる。このように、舌先の向きを変化させるなど、舌の活発な動作が要求されることとなることから、複雑な舌の動作によって舌筋のトレーニング効果を向上させることができるのである。
【0078】
なお、この種の形態のトレーニング用食品500は、図示(
図8(c))のように、舌先の僅かな部分のみを被覆するような大きさとしてもよいが、その他に、舌体の適当な範囲を被覆し得る大きさとしてもよい。この場合は、シート状食品1の開口部の直径は上記よりも大きく構成されることとなる。
【0079】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、上記の実施形態は本発明の一例を示すものであって、本発明がこれらの実施形態に制限されるものではない。従って、本実施形態の構成要素の一部を変更し、または他の要素を追加してもよい。
【0080】
すなわち、上記実施形態では、食品として食することができる旨の説明をしたが、これらの食品を嗜好品として、手軽に食することができるものであれば、嗜好品の摂取という目的を達成しながら、舌筋のトレーニング効果を得ることができる。従って、一般的な嗜好品の摂取のタイミングおよび場所において使用することができる。例えば、職場における休憩時間中に食する清涼剤含有のグミキャンディのように、舌筋トレーニング用食品100,200,300,400,500を食することができる。舌筋をトレーニングするとはいえ、1分程度の時間により歯列弓に沿って、または口腔内表面に摺接させるように、何度も舌先を移動させることができることから、その間に徐溶材料を溶かして全体を食することができるからである。
【符号の説明】
【0081】
1 シート状食品(または表面層)
1A シート状食品(表面層)
1B シート状食品(本体層)
2 他の材料(ガムベースまたは本体層)
3 折り線(中央部、中央線)
4,5 折り線
6 突起部
10a シート状食品の面(表面)
10b シート状食品の面(裏面)
11,12 平面部
13 溝部
100,200,300,400,500 舌筋トレーニング用食品
A 歯
Aa,Ab 歯列
B 舌
B1 舌先
C 下顎
Da 上唇
Db 下唇
E 口腔内表面(上顎表面)
H 間隙
T 肉厚