(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113752
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】抗VISTA(B7H5)抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230808BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230808BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230808BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230808BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230808BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20230808BHJP
A61P 35/02 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 N
G01N33/53 Y
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
A61K39/395 D
A61P35/00 ZNA
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088210
(22)【出願日】2023-05-29
(62)【分割の表示】P 2018542149の分割
【原出願日】2017-02-10
(31)【優先権主張番号】62/294,922
(32)【優先日】2016-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516186212
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,リンダ,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】パワーズ,ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ズデア ウバニ,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】マーベル,ダグラス,マシュー
(57)【要約】
【課題】抗VISTA(B7H5)抗体を提供すること。
【解決手段】ヒトおよびカニクイザル(cyno)のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、ヒトおよびカニクイザル(cyno)のVISTAに結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト治療に使用するために適切である可能性があるかどうかを同定するためのスクリーニング方法に使用するための組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトおよびカニクイザル(cyno)のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、ヒトおよびカニクイザル(cyno)のVISTAに結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト治療に使用するために適切である可能性があるかどうかを同定するためのスクリーニング方法に使用するための組成物であって、前記方法は、
(i)免疫およびスクリーニング方法を使用して、ヒトおよびカニクイザル(cyno)のVISTAに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを同定する工程、
(ii)ヒトおよびカニクイザル(cyno)のVISTAに結合する前記同定された抗体またはその抗原結合フラグメントを、非ヒト霊長目に投与する工程、
(iii)前記非ヒト霊長目から1つ以上の血液試料を回収する工程、
(iv)前記抗体または抗体フラグメントが循環好中球の数の減少を生じさせるかどうかを決定するために、前記1つ以上の血液試料中の好中球の数をアッセイする工程、および
(v)(iv)における前記アッセイに基づいて、ヒトおよびカニクイザル(cyno)のVISTAに結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト治療に使用するために適切である可能性があるかどうかを決定する工程
を含む、組成物。
【請求項2】
アッセイ工程(iv)が、前記抗体または抗体フラグメントが循環好中球の数の一時的な減少を生じさせるかどうかを決定する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫細胞上のFc受容体に結合するFc領域を含む請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Fc受容体はCD16受容体である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するVH CDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、さらに、配列番号28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するVL CDR2、および配列番号30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号37のアミノ酸配列を含む抗体VHドメインを含む、および/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号44のアミノ酸配列を含む抗体VLドメインを含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記非ヒト霊長目に投与される抗体または抗体フラグメントの量は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.0mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、10.0mg/kg、11.0mg/kg、12.0mg/kg、13.0mg/kg、14.0mg/kg、15.0mg/kg、16.0mg/kg、17.0mg/kg、18.0mg/kg、19.0mg/kg、20.0mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg 60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kgまたは100mg/kgを含む請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記非ヒト霊長目に投与される抗体または抗体フラグメントの量は、10.0mg/kg、30mg/kgまたは100mg/kgを含む請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/294,922号の利益を主張する。上記出願の教示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗VISTA(B7H5)抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍微少環境における癌細胞または免疫細胞によるネガティブ免疫調節因子の発現は、腫瘍に対する宿主免疫応答を抑制し得る。癌と効果的に戦うには、宿主免疫応答の腫瘍媒介抑制をブロックすることが望ましい。したがって、抗腫瘍免疫応答を抑制する腫瘍微少環境におけるネガティブ免疫調節因子を阻害する新しい有効な治療薬が要望されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lines et al Cancer Research 74:1924,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、抗VISTA(B7H5)抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一実施形態において、対象において生物学的応答を誘発する方法を提供する。本方法は、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを、対象に、その対象において生物学的応答を誘発するのに十分な量投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、生物学的応答は、循環免疫細胞の数の減少、骨髄および脾臓中の顆粒球数の減少、腫瘍微小環境(TME)における好中球、マクロファージ、T細胞、またはそれらの組み合わせの数の増加、および1種以上のサイトカイン(例えば、ケモカイン)のレベルの増加、あるいはこれらの応答の任意の組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、VISTAに結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、免疫細胞(例えば、NK細胞)上のFc受容体(例えば、CD16受容体)に結合するFc領域を含む。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)タンパク質に結合し、生物学的応答を誘発する抗体を同定する方法を提供する。この方法は、VISTAに結合する抗体、またはその抗体フラグメントを、細胞、組織、臓器または生物に提供する工程、およびその抗体またはその抗体フラグメントが細胞、組織、臓器または生物において生物学的応答を誘発するか否かを決定する工程を含む。いくつかの実施形態では、生物学的応答は、単球の活性化、T細胞の活性化、循環免疫細胞の数の減少、骨髄および脾臓中の顆粒球数の減少、腫瘍微小環境における好中球、マクロファージ、またはそれらの組み合わせの数の増加、および1種以上のサイトカインのレベルの増加、あるいはこれらの応答の任意の組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、VISTAに結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、免疫細胞(例えば、NK細胞)上のFc受容体(例えば、CD16受容体)に結合するFc領域を含む。
【0008】
本発明の方法は、例えば、VISTAタンパク質に結合する抗体を特徴付けるため、および潜在的な治療効果に関連する生物学的活性について抗VISTA抗体候補をスクリーニングするために有用である。
【0009】
本特許または本出願ファイルは、色彩を付して作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴っているこの特許または特許出願の公報の写しは、請求および必要な手数料の納付によって、特許庁により提供されるであろう。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、以下のものに関する。
項1
ヒトおよびカニクイザル(cyno)のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、ヒトおよびカニクイザル(cyno)のVISTAに結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト治療に使用するために適切である可能性があるかどうかを同定するためのスクリーニング方法に使用するための組成物であって、前記方法は、
(i)免疫およびスクリーニング方法を使用して、ヒトおよびカニクイザル(cyno)のVISTAに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを同定する工程、
(ii)ヒトおよびカニクイザル(cyno)のVISTAに結合する前記同定された抗体またはその抗原結合フラグメントを、非ヒト霊長目に投与する工程、
(iii)前記非ヒト霊長目から1つ以上の血液試料を回収する工程、
(iv)前記抗体または抗体フラグメントが循環好中球の数の減少を生じさせるかどうかを決定するために、前記1つ以上の血液試料中の好中球の数をアッセイする工程、および
(v)(iv)における前記アッセイに基づいて、ヒトおよびカニクイザル(cyno)のVISTAに結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト治療に使用するために適切である可能性があるかどうかを決定する工程
を含む、組成物。
項2
アッセイ工程(iv)が、前記抗体または抗体フラグメントが循環好中球の数の一時的な減少を生じさせるかどうかを決定する項1に記載の組成物。
項3
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫細胞上のFc受容体に結合するFc領域を含む項1または2に記載の組成物。
項4
前記Fc受容体はCD16受容体である項3に記載の組成物。
項5
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するVH CDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、さらに、配列番号28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するVL CDR2、および配列番号30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む項1~4のいずれかに記載の組成物。
項6
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号37のアミノ酸配列を含む抗体VHドメインを含む、および/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号44のアミノ酸配列を含む抗体VLドメインを含む項5に記載の組成物。
項7
前記非ヒト霊長目に投与される抗体または抗体フラグメントの量は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.0mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、10.0mg/kg、11.0mg/kg、12.0mg/kg、13.0mg/kg、14.0mg/kg、15.0mg/kg、16.0mg/kg、17.0mg/kg、18.0mg/kg、19.0mg/kg、20.0mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg 60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kgまたは100mg/kgを含む項1~6のいずれかに記載の組成物。
項8
前記非ヒト霊長目に投与される抗体または抗体フラグメントの量は、10.0mg/kg、30mg/kgまたは100mg/kgを含む項1~6のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、抗VISTA(B7H5)抗体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A-1C】TF1 AML細胞のVISTA発現を示すグラフ。TF-1 AML細胞株におけるフローサイトメトリーによるVISTAタンパク質の発現を示す。
【
図2A-2E】ヒトミエロイドおよびリンパ球サブセットを特定するための染色およびゲーティング戦略を示すグラフ。
【
図3A-3G】一人の健常ドナーのヒトミエロイドおよびリンパ球サブセットのVISTA発現を示すグラフ。
【
図4】多くの健常ドナーのヒトミエロイドおよびリンパ球サブセットのVISTA発現を示すグラフ。
【
図5A-5B】ヒト単球およびマクロファージのVISTA発現を特定するための染色およびゲーティング戦略を示すグラフ。
【
図6A-6C】ヒト単球およびマクロファージのVISTA発現を示すグラフ。
【
図7A-7E】ヒトT細胞およびNK細胞サブセットのVISTA発現を特定するための染色およびゲーティング戦略を示すグラフ。
【
図8A-8G】一人の健常ドナーのヒトT細胞およびNK細胞サブセットのVISTA発現を示すグラフ。
【
図9】多くの健常ドナーのヒトTおよびNK細胞サブセットのVISTA発現を示すグラフ。
【
図10A-10D】ヒト樹状細胞サブセットのVISTA発現を特定するための染色およびゲーティング戦略を示すグラフ。
【
図11A-11C】一人の健常ドナーのヒト樹状細胞サブセットおよび好塩基球のVISTA発現を示すグラフ。
【
図12】多くの健常ドナーのヒト樹状細胞サブセットおよび好塩基球のVISTA発現を示すグラフ。
【
図13A-13D】健康なヒトの抹消血細胞のVISTA発現の分析。マルチカラーフローサイトメトリー分析による健康なヒトの抹消血細胞のVISTA発現のプロファイル:異なる2個体からの全血試料について、単球SSC
lo,CD11b
hiCD14
hiCD16
-veCD33
+veHLA-DR
+veCD19
-ve)(
図13A)、好中球(SSC
hiCD177
+CD11b
hiCD14
loCD16
+veCD33
+veHLA-DR
-veCD19
-ve)(
図13B)のVISTA発現を分析した。CD4+T細胞(CD3
+veCD4
+ve)(
図13C)、およびCD8+T細胞(CD3
+veCD8
+ve)(
図13D)の分析のために、フィコール勾配を使用して抹消血単核球を単離した。
【
図14A-14C】肺癌患者および対照健常ドナーの末梢血液細胞のVISTA発現の分析。マルチカラーフローサイトメトリー分析による肺癌患者の抹消血細胞のVISTA発現のプロファイル:一個体の代表的なFACSプロット(
図14A)を示す。末梢血単核球をフィコールにより単離し、単球(CD14+CD11b+CD33+HLADR+CD15-)(
図14B)および骨髄由来サプレッサー細胞(CD14-CD11b+CD33-HLADR-CD15+CD16+)(
図14C)のVISTA発現を分析した。
【
図15A-15C】マルチカラーフローサイトメトリー分析による結腸癌患者の末梢血細胞のVISTA発現のプロファイル:一個体の代表的なFACSプロット(
図15A)を示す。末梢血単核球をフィコールにより単離し、単球(CD14+CD11b+CD33+HLADR+CD15-)(
図15B)および骨髄由来サプレッサー細胞(CD14-CD11b+CD33-HLADR-CD15+CD16+)(
図15C)のVISTA発現を分析した。
【
図16A-16D】マルチカラーフローサイトメトリー分析によるカニクイザルの末梢血細胞のVISTA発現のプロファイル:異なる4匹のサルからの全血試料について、単球(SSC
loCD11b
hiCD14
hiHLA-DR
hiCD16
-veCD19
-ve(
図16A)および好中球CD11b
hiCD14
loHLA-DR
-veCD16
-veCD19
-ve(
図16B)のVISTA発現を分析した。CD4+T細胞(TCRα/β
+veCD4
+ve)(
図16C)およびCD8+T細胞(TCRα/β
+veCD8
+ve)(
図16D)の分析のために、フィコール勾配を使用して、3匹のサルから末梢血単核球を単離した。
【
図17】ヘム細胞株におけるVISTA RNAの絶対発現値を示すグラフ。
【
図18】マウスA20細胞にGFPまたはヒトVISTAを安定にトランスフェクトした。それらをovaペプチドおよびDO11.10 T細胞とインキュベートした。インキュベーションの開始から24時間後、T細胞によるCD25の発現を測定した。A20-huVISTA細胞はT細胞によるCD25発現を抑制するが、この読み出しはVSTB95と共にインキュベートすることにより大きく回復する。
【
図19A-19F】ヒトVISTA ELISAの結果を示すグラフ。
【
図20A-20F】ヒトVISTAを発現する細胞に結合する抗VISTA抗体を示すヒトVISTA FACSの結果。
【
図21A-21D】6種の抗VISTA抗体候補の混合リンパ球反応物における希釈(30μg/ml~0.0μg/ml)の研究。
【
図22A-22B】6種の抗VISTA抗体候補のSEBアッセイ(個々のCPM値およびIFN-g濃度)における希釈(30μg/ml~0.0μg/ml)の研究。
【
図23】Proteon SPRチップにコーティングした抗VISTA抗体VSTB85、および同チップ上を走らせた表示コンペティター(表16に記載したコンペティター)によるVISTAタンパク質を用いたセンサーグラムプロット。
【
図25A-25B】雌C57Bl/6マウスにおけるMB49腫瘍増殖。グラフは、抗マウスVISTA抗体(
図25B)または対照IgG(
図25A)で処理した個々のマウスの腫瘍増殖を示す。
【
図26】ヒトVISTAのアミノ酸配列(配列番号46)。
【
図27】VISTAオルソログの多重配列アラインメント
【
図28】HDXにより測定された、VSTB50およびVSTB60抗体(上)またはVSTB95およびVSTB112抗体(下)が結合したヒトVISTAの領域
【
図29】VSTB112が結合したVISTAエピトープ。(上)標識された鎖を有するVISTAをイラストで示す。複合体中のVSTB112の5Å以内の少なくとも1つの原子を有する残基は青色に着色されている。青色および橙色の球体は鎖の切断を示し、青緑色および緑色の球体はそれぞれ、VISTA構造のN末端およびC末端を示す。(下)構造決定に使用したVISTAコンストラクトの配列。配列の下の丸は、VSTB112との主鎖接触部のみを構成する残基を示すために使用され、三角は側鎖接触部を示し、四角は、PISAによる計算で、側鎖接触部が水素結合または塩架橋相互作用をもたらしていることを示す。形状は、所与の残基により接触している最大原子数を有するCDRを示すために
図59に定義するCDR色で着色してある。二次構造要素は、MOEプログラムにおいて定義されるように、黄色の矢印はβ鎖を示し、赤色の長方形はαヘリックスを示す。
【
図30】VSTB112パラトープ。(上)VISTA抗原をイラストで示し、VISTAの5オングストローム(Å)以内のVSTB112の表面を、下の配列で特定したCDR同一性を指定するために使用した色で示している。CDRに隣接する接触フレームワーク残基には、VSTB112Fv領域の対応するCDR(下)配列と同様の色に着色している。背景色を付した部分は、キャバット定義によるCDRを示している。配列の下の丸は、VISTAとの主鎖接触部のみを構成する残基を示すために使用され、三角は側鎖接触部を示し、四角は、PISAによる計算で、側鎖接触部が水素結合または塩架橋相互作用をもたらしていることを示す。
【
図31】結晶学的、かつ水素重水素交換(HDX)により同定されたエピトープ領域の比較。構造決定に使用したVISTAコンストラクトの配列。配列の下の丸は、VSTB112との主鎖接触部のみを構成する残基を示すために使用され、三角は側鎖接触部を示し、四角は、PISAによる計算で、側鎖接触部が水素結合または塩架橋相互作用をもたらしていることを示す。
【
図32】全PBMC中のCD14+単球のVSTB174(VSTB112由来)による活性化。実験の各部分で、細胞をPBS、IgG1対照抗体、またはVSTB174(1、0.1もしくは0.01ug/ml)と共にインキュベートした。左のパネルはCD80 MFIを示し、右のパネルはHLA-DR MFIを示す(代表的な結果が得られた2つの試験ドナーを示す)。
【
図33】K562-VISTA細胞に対するVSTB174のADCC活性を示すグラフ。
【
図34】K562-VISTA細胞に対するVSTB174のADCP活性を示すグラフ。表記した両抗体は同じFabを有するが、VSTB174はIgG1Fcを有し、VSTB140はFcサイレントIgG2を有する。
【
図35】VSTB174、VSTB149またはVSTB140mAbにより仲介されたK562-VISTAに対する食作用を示すグラフ。各mAbを0.0008μg/ml~0.56μg/mlの範囲で7種の3.3倍用量(half log dose)で試験した。
【
図36】VSTB174、VSTB149またはVSTB140mAbにより仲介された骨髄腫細胞株K562細胞に対する食作用を示すグラフ。各mAbを0.0008μg/ml~0.56μg/mlの範囲で7種の3.3倍用量(half log dose)で試験した。
【
図37】雌のVISTA-KIマウスにおけるVSTB123(1、5、7.5および10mg/kg)のMB49腫瘍効果を評価する研究。移植6日後の投与開始時の腫瘍体積は、約50mm
3であった。VSTB123はマウスFc骨格に接合されたVSTB112Fabであり、VISTA-KIマウス中のヒトVISTAに結合する。
【
図38】グラフは、VISTAを高/中レベルで発現するCD14+細胞が、肺癌試料中13/13で、ならびに患者の遠位肺組織および末梢血中に見出されることを示している。
【
図39】GG8による肺癌のVISTAのIHC染色。
【
図40】抗VISTA抗体は、CD16架橋を介して単球活性化を誘発する。PD-L1発現は、ヒトPBMCを使用する骨髄活性化のマーカーとして使用される。陽性対照として用いた抗CD16は強力な単球活性化を誘発し、陰性対照として用いたFcブロック(Fc IgG1フラグメントの混合物)は単球活性化を遮断した。ヒトIgG1対照と比較して、VSTB112は単球活性化を誘発するが、VSTB140は誘発しない。
【
図41】hVISTA KI(ノックイン)マウスにおける確立されたMB49腫瘍の増殖に対するVSTB123またはVSTB124の効果に関する試験計画の概略図。抗体を、試験5日目、7日目、10日目、12日目、14日目、17日目、19日目、21日目、24日目および26日目に注入した。血液試料を、-2日目、-1日目、0日目、4日目、7日目、11日目、14日目、18日目、24日目、31日目および39日目に採取した。抗体注入と同じ日に血液試料を採取する場合、最初に血液試料を採取した。
【
図42A-42B】hVISTA KI雌マウスにおけるMB49腫瘍増殖(
図42A)、およびhVISTA KI雌マウスにおけるVSTB123またはVSTB124による処理後のMB49腫瘍を有するマウスの生存(
図42B)。
図42Aでは、マウスIgG2a対照群と比較して、VSTB123またはVSTB124で処理した雌マウスの平均腫瘍体積測定値(mm
3)を示す。処理期間は5~26日目であった。平均+/-SEMを示す。なお、グラフ間ではy軸が異なる。雌マウスのデータを33日目までグラフ化し、この33日目では、マウスの>70%が各群で依然として生存していた(1群当たりn=6または7)。
図42Bでは、hVISTA KI雌マウスの生存率をグラフ化している(VSTB123 10mg/kg、p=0.0108)。処理期間は5~26日目であった。
【
図43】VSTB174で処理したPBMCによる41サイトカインの発現の倍数変化。3人の健康なヒトドナーからの全PBMCを、示された濃度のVSTB174またはIgG1対照抗体で24時間処理した。サイトカイン産生を、41サイトカインマルチプレックスキットによって分析した。IgG1対照における発現の平均倍数変化を、対数カラースケールのヒートマップとして示す。アスタリスクは、処理試料平均と対照試料平均との間の有意差を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。範囲外(OOR)は、そのドナーにおけるサイトカインの全ての試料が正確な検出の限界を超えた(>上、<下)ことを示す。
【
図44A-44B】MB49腫瘍におけるマクロファージの活性化。
図44Aは試験計画の概略を示す。
図44Bは、腫瘍微小環境におけるCD80+マクロファージがVSTB123により増加し、VSTB124では増加しなかったことを示す。MB49腫瘍を有するhVISTA KIマウスをVSTB123、VSTB124または対照mIgG2aで処理し、3回目の投与の24時間後に、それらの腫瘍を分析して、腫瘍浸潤マクロファージにおけるCD80の相対的発現を決定した。各群は5匹のマウスを含んだ。横棒は平均を示す。*p<0.05。
【
図46】VSTB174は好中球の一時的な減少を誘発する。
【
図47】抗VISTA抗体(例えば、VSTB174)は、作用機序を提示した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態例を以下に記載する。
【0014】
本発明は、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)(Genbank:JN602184)(Wang et al.,2010、2011)と名付けられた新規な免疫グロブリンファミリーリガンドに対する抗体に関する。VISTAはPD-L1に対し相同性を有するが、造血系に限定される特有の発現パターンを示す。特に、VISTAは、CD11bhigh骨髄細胞では構成的に、かつ多く発現し、CD4+およびCD8+T細胞では低レベルで発現する。ヒトホモログは、マウスVISTAと略85%の相同性を有し、類似の発現パターンを持つ(Lines et al.,Cancer Research 74:1924,2014)。抗原提示細胞(APC)で発現したVISTAは、CD4+およびCD8+T細胞増殖、およびPD-1と無関係の類似の受容体によるサイトカイン産生を抑制する。受動的EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)疾患モデルにおいては、VISTA特異的モノクローナル抗体は、T細胞依存免疫応答を増強し、病気を悪化させた。腫瘍細胞におけるVISTAの過剰発現は、腫瘍を持った宿主における防御抗腫瘍免疫を低下させた。ヒトVISTAに関する研究によって、ヒトT細胞に対するその抑制機能が確認された(Lines et al Cancer Research 74:1924,2014)。Fliesらによる研究もまた、VISTA(PD-1Hと称する)が強力な免疫抑制分子であることを確認した(Flies et al.,2011)。VISTAは、米国特許出願公開第20130177557A1号明細書、ならびに米国特許第7,919,585号明細書および同第8,236,304号明細書にさらに詳細に記載されており、それらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0015】
VISTAは、免疫応答を抑制する新規な負の免疫調節因子である。例えば、本明細書の実施例12に記載するように、マウス腫瘍モデルにおけるVISTA特異的モノクローナル抗体による処理により、腫瘍免疫微少環境の抑制性を逆転させ、防御抗腫瘍免疫を増強させ、それ故、VISTAモノクローナル抗体の癌免疫療法の新しい治療法としての可能性を示すことがわかった。
【0016】
本発明の抗体およびフラグメント
「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ならびに、限定はされないが、酵素的開裂、ペプチド合成または組み換え技術などの知られた技術で得られる、それらのフラグメント、領域または誘導体を含むものとする。本発明の抗VISTA抗体は、免疫応答を調節、制御または増強するVISTAの一部に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体は本明細書に記載の1種以上の抗VISTA抗体を競合的に阻害する。2種以上の抗体が同じ標的への結合を競合するか否かを決定する方法は、当該技術分野で知られている。例えば、1つの抗体が他の抗体の標的への結合をブロックするか否かを決定するために、競合結合アッセイを使用することができる。一般に、競合結合アッセイは、固体基質または細胞に結合した精製標的抗原(例えば、PD-1)、標識されていない試験結合分子、および標識された参照結合分子の使用を含む。競合阻害は、固体基質または細胞に結合した標識量を、試験結合分子の存在下に測定することによって測定される。通常、試験結合分子は過剰に含まれる。一般に、競合結合分子が過剰に存在すると、共通抗原に対する参照結合分子の特異的結合が、少なくとも50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%またはそれ以上阻害される。いくつかの実施形態では、競合阻害は、競合阻害ELISAアッセイによって測定される。
【0017】
ポリクローナル抗体は、抗原で免疫性が付与された動物の血清に由来する異種の抗体分子の集団である。モノクローナル抗体は、抗原に特異的な抗体の実質的に同種の集団を含み、その集団は実質的に類似のエピトープ結合部位を含む。モノクローナル抗体は、当業者に知られた方法で得ることができる。例えば、Kohler and Milstein、Nature、256:495-497(1975);米国特許第4,376,110号明細書;Ausubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1987、1992);およびHarlow and Lane ANTIBODIES:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory(1988);Colligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)を参照されたい。これらの全ての内容は参照により本明細書にその全体が組み込まれる。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、GILDおよびそれらのサブクラスを含む免疫グロブリンクラスに分類され得る。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロ、インサイチューまたはインビボで培養することができる。
【0018】
本発明はまた、消化フラグメント、その特定の部分および変異体、例えば、抗体類似体、あるいは抗体またはその特定フラグメントもしくは部分の構造および/または機能が類似する抗体部分、例えば、一本鎖抗体およびそのフラグメントを包含する。機能的フラグメントとしては、哺乳動物のVISTAタンパク質に結合する抗原結合フラグメントが挙げられる。例えば、VISTAまたはその一部に結合することができる抗体フラグメント、例えば、限定はされないが、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化および部分還元による)、およびF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシンまたはプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分還元および再集合による)、FvまたはscFv(例えば、分子生物学的技術による)フラグメントは、本発明に包含される(例えば、Colligan,Immunology、上記を参照)。本発明の抗体フラグメントとしてはまた、Aaron L.Nelson,mAbs2:1,77-83(January/February 2010)において論じられ、説明されているものが挙げられる。
【0019】
このようなフラグメントは、例えば、当該分野で知られているような、および/または本明細書中に記載されているような、酵素による切断、合成または組み換え技術によって産生することができる。抗体はまた、1つ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を使用して、種々の切断形態で産生することができる。例えば、F(ab’)2重鎖部分をコードする組み合わせ遺伝子を、CH1ドメインおよび/または重鎖のヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。抗体の種々の部分は、従来技術により化学的に結合させることができ、または遺伝子工学手法を用いて隣接タンパク質として作成することができる。
【0020】
1つの実施形態では、免疫グロブリン鎖、またはその一部(例えば、可変領域、CDR)は、本明細書に記載の対応する可変配列鎖のアミノ酸配列に対し、約70~100%の同一性(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはそれらの任意の範囲もしくは値)を有する。好ましくは、70~100%のアミノ酸同一性(例えば、85、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはそれらの任意の範囲もしくは値)は、当該技術分野で知られているように、好適なコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0021】
重鎖および軽鎖の可変領域の配列は本明細書に示される。
【0022】
本発明の抗体、またはその特定の変異体は、本発明の抗体の任意の数の隣接するアミノ酸残基を含むことができ、その数は、抗TNF抗体の隣接残基数の10~100%からなる整数の群から選択される。この隣接アミノ酸残基の部分配列は、任意選択により、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250もしくはそれ以上のアミノ酸長、またはそれらの任意の範囲もしくは値である。さらに、そのような部分配列の数は、1~20からなる群から選択される整数、例えば、少なくとも2、3、4または5であり得る。
【0023】
当業者が認識しているように、本発明は、本発明の少なくとも1種の生物学的に活性な抗体を含む。生物学的に活性な抗体は、天然(非合成)の、内因性の、または関連する既知の抗体の少なくとも20%、30%または40%、好ましくは、少なくとも50%、60%または70%、最も好ましくは、少なくとも80%、90%、または95%~100%の比活性を有する。酵素活性および基質特異性の分析および定量的測定の方法は、当業者によく知られている。
【0024】
実質的な類似性は、天然(非合成)の、内因性の、または関連する既知の抗体の少なくとも85%(例えば、少なくとも95%)の同一性と、少なくとも85%(例えば、少なくとも95%)の活性を有する化合物を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、タンパク質の実質的に全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、CL、CHドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3)、ヒンジ、(VL、VH))が、僅かな配列の変化もしくは変異を含む、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である抗体を指す。同様に、霊長目(サル、ヒヒ、チンパンジーなど)、齧歯動物(マウス、ラットなど)、およびその他の哺乳動物を指定した抗体は、そのような種、亜属、属、亜科、科の特異抗体を示す。さらに、キメラ抗体は、上記の任意の組み合わせを含むことができる。そのような変化もしくは変異は、非改変抗体に比べて、ヒトまたは他の種の免疫原性を維持または低減するものであってよく、またそれが好ましい。したがって、ヒト抗体は、キメラもしくはヒト化抗体と異なっている。ヒト抗体は、機能的に再配列されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖および/または軽鎖)遺伝子を発現することができる非ヒト動物細胞、または原核細胞もしくは真核細胞によって産生することができると言える。さらに、ヒト抗体が一本鎖抗体の場合、天然ヒト抗体にはないリンカーペプチドを含むことができる。例えば、Fvは、2~約8個のグリシンまたは他のアミノ酸残基などのリンカーペプチドを含むことができ、それは、重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域に結合する。そのようなリンカーペプチドは、ヒト起源であると考えられる。
【0026】
モノクローナル抗体、好ましくは、少なくとも2種の抗原に結合特異性を有するヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である二重特異性、異種特異性、ヘテロ共役性、または類似の抗体もまた、使用することができる。この場合、結合特異性の1つは少なくとも1種のVISTAタンパク質に対するものであり、他は、他の任意の抗原に対するものである。二重特異性抗体の生成方法は当該技術分野で知られている。二重特異性抗体の組み換え生成は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいて行うことができるが、ここで、2本の重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))。国際公開第93/08829号パンフレット、米国特許第6,210,668号明細書、同第6,193,967号明細書、同第6,132,992号明細書、同第6,106,833号明細書、同第6,060,285号明細書、同第6,037,453号明細書、同第6,010,902号明細書、同第5,989,530号明細書、同第5,959,084号明細書、同第5,959,083号明細書、同第5,932,448号明細書、同第5,833,985号明細書、同第5,821,333号明細書、同第5,807,706号明細書、同第5,643,759号明細書、同第5,601,819号明細書、同第5,582,996号明細書、同第5,496,549号明細書、同第4,676,980号明細書、国際公開第91/00360号パンフレット、同第92/00373号パンフレット、欧州特許第03089号明細書、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)もまた参照されたい。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
一実施形態では、発明は、VISTAおよび第2の標的タンパク質(例えば、免疫チェックポイントタンパク質)を標的とする二重特異性抗体に関する。二重特異性抗体の例としては、VISTAおよびPD-L1を標的とする二重特異性抗体、ならびに、VISTAおよびPD-L2を標的とする二重特異性抗体が挙げられる。
【0028】
ヒトVISTAタンパク質またはそのフラグメントに特異的なヒト抗体は、VISTAタンパク質またはその一部(合成ペプチドなどの合成分子を含む)などの適切な免疫原性抗原に対して作ることができる。
【0029】
他の特異的または一般的な哺乳動物抗体を同様に作ることができる。免疫原性抗原の調製およびモノクローナル抗体の生成は、任意の好適な手法を用いて行うことができる。
【0030】
例えば、ハイブリドーマは、好適な不死の細胞株(例えば、限定はされないが、Sp2/0、Sp2/0-AG14、NSO、NS1、NS2、AE-1、L.5、>243、P3X63Ag8.653、Sp2SA3、Sp2MAI、Sp2SS1、Sp2SA5、U937、MLA144、ACT IV、MOLT4、DA-1、JURKAT、WEHI、K-562、COS、RAJI、NIH3T3、HL-60、MLA144、NAMAIWA、NEURO 2Aなどの骨髄腫細胞株、もしくは異種骨髄腫、それらの融合産物、またはそれらから誘導される細胞もしくは融合細胞、あるいは当該技術分野で知られている他の好適な任意の細胞株、例えば、www.atcc.orgを参照)を抗体産生細胞と融合させることによって生成することができる。抗体産生細胞としては、単離もしくはクローン化された脾臓、末梢血、リンパ、扁桃腺もしくは他の免疫細胞(例えば、B細胞)、あるいは重鎖もしくは軽鎖、定常もしくは可変、またはフレームワークもしくは相補性決定領域(CDR)配列を発現する他の任意の細胞を挙げることができる。そのような抗体産生細胞は、組み換えまたは内因性細胞であってよく、また、原核または真核生物(例えば、齧歯動物、ウマ、ヒツジ、ヤギ、雌ヒツジ、霊長目などの哺乳動物)の細胞であってよい。例えば、Ausubel(上記)、およびColligan,Immunology(上記),chapter2を参照されたい。これらは参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
【0031】
抗体産生細胞はまた、目的の抗原で免疫したヒトまたは他の好適な動物の、末梢血または脾臓もしくはリンパ節から得ることができる。他の好適な宿主細胞もまた、本発明の抗体、その特定のフラグメントまたは変異体をコードする異種または内因性核酸を発現させるために使用することができる。融合細胞(ハイブリドーマ)または組み換え細胞は選択培養条件または他の好適な知られた方法で単離することができ、また限界希釈法もしくは細胞選択、または他の知られた方法によってクローン化することができる。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、好適なアッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA))によって選択することができる。
【0032】
必要な特異性を有する抗体を産生もしくは単離する他の好適な方法、例えば、限定はされないが、ペプチドもしくはタンパク質ライブラリー(例えば、限定はされないが、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなどのディスプレイライブラリー;例えば、Cambridge antibody Technologies、Cambridgeshire、UK;MorphoSys、Martinsreid/Planegg、DE;Biovation、Aberdeen、Scotland、UK;Bioinvent、Lund、Sweden;Dyax Corp.、Enzon、Affymax/Biosite;Xoma、Berkeley、Calif.;Ixsys.から入手可能。例えば、PCT/GB91/01134号明細書、PCT/GB92/01755号明細書、PCT/GB92/002240号明細書、PCT/GB92/00883号明細書、PCT/GB93/00605号明細書、PCT/GB94/01422号明細書、PCT/GB94/02662号明細書、PCT/GB97/01835号明細書、国際公開第90/14443号パンフレット、同第90/14424号パンフレット、同第90/14430号パンフレット、PCT/U594/1234号明細書、国際公開第92/18619号パンフレット、同第96/07754号パンフレット、欧州特許第614989号明細書、国際公開第95/16027号パンフレット、同第88/06630号パンフレット、同第90/3809号パンフレット、米国特許第4,704,692号明細書、PCT/US91/02989号明細書、国際公開第89/06283号パンフレット、欧州特許第371998号明細書、同第550400号明細書、同第229046号明細書、PCT/US91/07149号明細書を参照)、または、確率的に生成されたペプチドもしくはタンパク質―米国特許第5,723,323号明細書、同第5,763,192号明細書、同第5,814,476号明細書、同第5,817,483号明細書、同第5,824,514号明細書、同第5,976,862号明細書、国際公開第86/05803号パンフレット、欧州特許第590689号明細書(各文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)から組み換え抗体を選択する方法;あるいは、当該技術分野で知られているように、かつ/または本明細書に記載されているように、一連のヒト抗体を産生することができる遺伝子組み換え動物の免疫付与を利用する方法(例えば、SCIDマウス、Nguyen et al.,Microbiol.Immunol.41:901-907(1997);Sandhu et al.,Crit.Rev.Biotechnol.16:95-118(1996);Eren et al.,Immunol.93:154-161(1998);各文献、ならびに関連特許および関連出願は、参照によりその全体が組み込まれる)を使用することができる。そのような手法としては、限定はされないが、リボソームディスプレイ(Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:4937-4942(May 1997);Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:14130-14135(November 1998));単一細胞抗体産生技術(米国特許第5,627,052号明細書、Wen et al.,J.Immunol.17:887-892(1987);Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:7843-7848(1996));ゲル微小液滴(gel microdroplet)およびフローサイトメトリー(Powell et al.,Biotechnol.8:333-337(1990);One Cell Systems,Cambridge,Mass.;Gray et al.,J.Imm.Meth.182:155-163(1995);Kenny et al.,Bio/Technol.13:787-790(1995));B細胞選択(Steenbakkers et al.,Molec.Biol.Reports 19:125-134(1994);Jonak et al.,Progress Biotech、Vol.5,In Vitro Immunization in Hybridoma Technology,Borrebaeck、ed.,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,Netherlands(1988))が挙げられる。
【0033】
非ヒトまたはヒト抗体を改変またはヒト化する方法もまた使用することができ、当該技術分野でよく知られている。一般に、ヒト化または改変抗体は、非ヒト源、例えば、限定はされないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長目または他の哺乳動物に由来するアミノ酸残基を1個以上有する。これらのヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、それらは、通常、既知のヒトの配列の「インポート」可変、定常または他の領域から取り込まれる。既知のヒトIg配列は、例えばwww.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi;www.atcc.org/phage/hdb.htmlに開示されており、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0034】
このようなインポートされた配列は、免疫原性の低減、または、当該技術分野で知られているような結合、アフィニティ、親和性、特異性、半減期もしくはその他の好適な特性を低下、増強もしくは改変するために使用することができる。一般に、非ヒトもしくはヒトCDR配列の一部または全部は維持されるが、フレームワークおよび/または定常領域の非ヒト配列の一部または全部はヒトまたは他のアミノ酸で置換される。抗体はまた、任意選択により、当業者に知られている三次元免疫グロブリンモデルを用いて、抗原に対する高いアフィニティ、および他の好ましい生物学的特性を保持してヒト化され得る。選択した候補免疫グロブリン配列の推定三次元配座構造を説明し表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンの抗原結合能力に影響する残基の分析が可能となる。このようにして、フレームワーク(FR)残基を、標的抗原に対するアフィニティの増大などの所望の抗体特性が得られるように、コンセンサスおよびインポート配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原との結合に及ぼす影響に直接的、かつ大きく関与している。本発明の抗体のヒト化または改変は、知られた方法、例えば、限定はされないが、例えば、Winter(Jones et al.、Nature 321:522(1986);Riechmann et al.、Nature 332:323(1988);Verhoeyen et al.、Science 239:1534(1988))、Sims et al.、J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196:901(1987)、Carter et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Presta et al.、J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5,723,323号明細書、同第5,976862号明細書、同第5,824514号明細書、同第5,817483号明細書、同第5,814476号明細書、同第5,763,192号明細書、同第5,723,323号明細書、同第5,766,886号明細書、同第5,714,352号明細書、同第6,204,023号明細書、同第6,180,370号明細書、同第5,693,762号明細書、同第5,530,101号明細書、同第5,585,089号明細書、同第5,225,539号明細書、同第4,816,567号明細書に記載された方法により行うことができる。これらはそれぞれ、本明細書に引用された文献と共に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
抗VISTA抗体はまた、任意選択により、本明細書に記載されているような、かつ/または当該技術分野で知られているような、一連のヒト抗体を産生することができる遺伝子組み換え動物、(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、非ヒト霊長目など)を免疫することによって生成することができる。ヒト抗VISTA抗体を産生する細胞は、好適な方法、例えば、本明細書に記載の方法で、そのような動物から単離し、不死化することができる。
【0036】
ヒト抗原に結合する一連のヒト抗体を産生することができる遺伝子組み換え動物は、知られた方法(例えば、限定はされないが、Lonberg et al.に対し発行された米国特許第5,770,428号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,545,806号明細書、同第5,625,126号明細書、同第5,625,825号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,661,016号明細書および同第5,789,650号明細書;Jakobovits et al.国際公開第98/50433号パンフレット、Jakobovits et al.国際公開第98/24893号パンフレット、Lonberg et al.国際公開第98/24884号パンフレット、Lonberg et al.国際公開第97/13852号パンフレット、Lonberg et al.国際公開第94/25585号パンフレット、Kucherlapate et al.国際公開第96/34096号パンフレット、Kucherlapate et al.欧州特許第0463151B1号明細書、Kucherlapate et al.欧州特許出願公開第0710719A1号明細書、Surani et al.米国特許第5,545,807号明細書、Bruggemann et al.国際公開第90/04036号パンフレット、Bruggemann et al.欧州特許第0438474B1号明細書、Lonberg et al.欧州特許出願公開第0814259A2号明細書、Lonberg et al.英国特許出願公開第2272440A号明細書、Lonberg et al.Nature 368:856-859(1994)、Taylor et al.,Int.Immunol.6(4)579-591(1994)、Green et al,Nature Genetics 7:13-21(1994)、Mendez et al.,Nature Genetics 15:146-156(1997)、Taylor et al.,Nucleic Acids Research 20(23):6287-6295(1992)、Tuaillon et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90(8)3720-3724(1993)、Lonberg et al.,Int Rev Immunol 13(1):65-93(1995)、ならびにFishwald et al.,Nat Biotechnol 14(7):845-851(1996)、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で生産することができる。一般に、これらのマウスは、機能的に再配列されるか、または機能的再配列を受けることができる少なくとも1つのヒト免疫グロブリン座からのDNAを含む少なくとも1つの導入遺伝子を含む。そのようなマウスにおける内因性免疫グロブリン座は、内因性遺伝子によってコードされる抗体を産生する動物の能力を除くために、破壊または欠失させることができる。
【0037】
類似のタンパク質またはフラグメントに特異的に結合する抗体のスクリーニングは、ペプチドディスプレイライブラリーを用いて都合良く行うことができる。この方法は、所望の機能または構造を有する個々のメンバーを膨大な数のペプチドからスクリーニングすることを伴う。ペプチドディスプレイライブラリーの抗体スクリーニングは、当該技術分野でよく知られている。ディスプレイされるペプチド配列は3~5000個以上のアミノ酸長、多くの場合5~100個のアミノ酸長、さらに多くの場合8~25個のアミノ酸長であり得る。ペプチドライブラリーを生成するための直接化学合成法に加えて、いくつかの組み換えDNA法が報告されている。1つのタイプは、バクテリオファージまたは細胞表面のペプチド配列のディスプレイを含む。各バクテリオファージまたは細胞は、特定のディスプレイされたペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含む。そのような方法は、国際公開第91/17271号パンフレット、同第91/18980号パンフレット、同第91/19818号パンフレットおよび同第93/08278に記載されている。ペプチドライブラリーを生成する他のシステムは、インビトロ化学合成法および組み換え法の両方の態様を有する。国際公開第92/05258号パンフレット、同第92/14843号パンフレットおよび同第96/19256号パンフレットを参照されたい。また、米国特許第5,658,754号明細書および同第5,643,768号明細書も参照されたい。ペプチドディスプレイライブラリー、ベクターおよびスクリーニングキットは、Invitrogen(Carlsbad、Calif.)およびCambridge antibody Technologies(Cambridgeshire、UK)などの供給者から商業的に入手可能である。例えば、Dyaxに譲渡された米国特許第4,704,692号明細書、同第4,939,666号明細書、同第4,946,778号明細書、同第5,260,203号明細書、同第5,455,030号明細書、同第5,518,889号明細書、同第5,534,621号明細書、同第5,656,730号明細書、同第5,763,733号明細書、同第5,767,260号明細書、同第5,856,456;5,223,409号明細書、同第5,403,484号明細書、同第5,571,698号明細書、同第5,837,500号明細書、Cambridge antibody Technologiesに譲渡された同第5,427,908号明細書、同第5,580,717号明細書、同第;5,885,793号明細書、Genentechに譲渡された同第5,750,373号明細書、同第5,618,920号明細書、同第5,595,898号明細書、同第5,576,195号明細書、同第5,698,435号明細書、同第5,693,493号明細書および同第5,698,417号明細書を参照されたい。
【0038】
本発明の抗体はまた、乳中にそのような抗体を生成するヤギ、雌ウシ、雌ヒツジなどの遺伝子組み換え動物を提供する、少なくとも1つの抗VISTA抗体をコードする核酸を用いて調製することができる。そのような動物は知られた方法で提供することができる。例えば、限定はされないが、米国特許第5,827,690号明細書、同第5,849,992号明細書、同第4,873,316号明細書、同第5,849,992号明細書、同第5,994,616号明細書、同第5,565,362号明細書、同第5,304,489号明細書などを参照されたい。これらはそれぞれ参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0039】
本発明の抗VISTA抗体はまた、遺伝子組み換え植物を用い、知られた方法にしたがって生成することができる。例えば、Fischer et al.,Biotechnol.Appl.Biochem.30:99-108(October、1999)、Cramer et al.,Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95-118(1999)、およびこれらに引用された文献;Ma et al.,Trends Biotechnol.13:522-7(1995);Ma et al.,Plant Physiol.109:341-6(1995);Whitelam et al.,Biochem.Soc.Trans.22:940-944(1994);およびこれらに引用された文献もまた参照されたい。上記各文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
本発明の抗体はヒトVISTAと広範なアフィニティ(KD)で結合することができる。好ましい実施形態では、本発明の少なくとも1つのヒトモノクローナル抗体は、任意選択により、ヒトVISTAに高アフィニティで結合することができる。例えば、ヒトモノクローナル抗体は、ヒトVISTAに約10-7M以下、例えば、限定はされないが、0.1~9.9(または、その中の任意の範囲もしくは値)×10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13またはその中の任意の範囲もしくは値のKDで結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体または抗体フラグメントは、ヒトVISTAに、少なくとも1×10-7リットル/モル、例えば、少なくとも1×10-8リットル/モル、例えば、少なくとも1×10-9リットル/モルリットル/モルのアフィニティで結合することができる。
【0041】
抗体の抗原に対するアフィニティまたは親和性は、任意の好適な方法を用いて実験的に決定することができる。(例えば、Berzofsky、et al.,“Antibody-Antigen Interactions”,In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,N.Y.(1984);Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,N.Y.(1992);および本明細書に記載の方法を参照されたい。)特定の抗体抗原相互作用のアフィニティ測定値は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)の下で測定した場合には変わり得る。したがって、アフィニティおよび他の抗原結合パラメータ(例えば、KD、Ka、Kd)の測定は、抗体および抗原の標準液と標準バッファとで行うことが好ましい。
【0042】
核酸分子
本明細書に示された情報、例えば、少なくとも1つの特定のフラグメントの少なくとも70~100%の隣接アミノ酸をコードする核酸配列、その変異体もしくはコンセンサス配列、またはこれらの配列の少なくとも1つを含む寄託されたベクターを使用して、配列番号1、2および3の重鎖可変CDR領域の全て、ならびに/または、配列番号4、5および6の軽鎖可変CDR領域の全てを含む少なくとも1つの抗VISTA抗体をコードする本発明の核酸分子を、本明細書に記載の方法、または当該技術分野で知られた方法により得ることができる。
【0043】
本発明の核酸分子は、RNAの形態、例えば、mRNA、hnRNA、tRNAもしくは他の形態、またはDNAの形態、例えば、限定はされないが、クローニングによって得られた、もしくは合成により生成されたcDNAおよびゲノムDNA、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。DNAは、三本鎖、二本鎖もしくは一本鎖、またはこれらの組み合わせであり得る。DNAもしくはRNAの少なくとも1本の鎖の一部は、センス鎖としても知られるコード鎖、またはアンチセンス鎖とも呼ばれる非コード鎖であり得る。
【0044】
本発明の単離核酸分子としては、オープンリーディングフレーム(ORF)、例えば、限定はされないが、少なくとも1本の重鎖もしくは軽鎖の、CDR1、CDR2および/もしくはCDR3などの、少なくとも1つのCDRの少なくとも1つの特定部分を含む核酸分子;抗VISTA抗体またはフラグメント、例えば、可変領域を含むフラグメントのコード配列を含む核酸分子;ならびに、上記のものと異なるが、遺伝子コードの縮重のために、本明細書に記載され、かつ/または当該技術分野で知られる少なくとも1つの抗VISTA抗体をなおコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を挙げることができる。そのような、本発明の特異的抗VISTA抗体をコードする縮重核酸変異体の生成は、当業者であれば日常的な仕事であろう。例えば、Ausubel、et al.(上記)を参照されたい。そのような核酸変異体は本発明に含まれる。
【0045】
本明細書に記載のように、抗VISTA抗体をコードする核酸を含む本発明の核酸分子としては、限定はされないが、抗体フラグメントのアミノ酸配列をコードするもの、全抗体またはその一部をコードする配列;抗体、フラグメントもしくは一部をコードする配列、および追加の配列、例えば、前記追加のコード配列の有無にかかわらず、少なくとも1つのシグナルリーダーまたは融合ペプチド、例えば、追加の非コード配列(例えば、限定はされないが、非コード5’および3’配列、例えば、転写、mRNAプロセッシング、例えば、スプライシング、およびポリアデニル化シグナル(例えば、mRNAのリボソーム結合および安定性)に役割を持つ転写された非翻訳配列)と共に含まれる少なくとも1つのイントロン;追加のアミノ酸、例えば追加の機能を付与するアミノ酸をコードする追加のコード配列を挙げることができる。したがって、抗体をコードする配列はマーカー配列、例えば、抗体フラグメントまたは一部を含む融合抗体の精製を促進するペプチドをコードする配列に融合することができる。
【0046】
本発明の抗体、フラグメントおよび領域の定常(C)領域をコードするヒト遺伝子は、知られた方法によって、ヒト胎児肝ライブラリーから取り出すことができる。ヒトC領域遺伝子は、ヒト細胞、例えば、ヒト免疫グロブリンを発現し産生する細胞から取り出すことができる。ヒトCH領域は、ヒトH鎖、例えばγ、μ、α、δもしくはεおよびそれらのサブタイプ、例えば、G1、G2、G3およびG4の知られたクラスまたはアイソタイプから取り出すことができる。H鎖アイソタイプは、抗体の様々なエフェクター機能を担っているため、CH領域の選択は、所望のエフェクター機能、例えば、補体結合、または抗体依存性細胞障害(ADCC)活性によって導かれるであろう。
【0047】
組成物
本明細書に開示の医薬組成物は、標準的手順にしたがって調製され、治療、例えば、軽減、予防もしくは除去のため、または、治療する病態の進行の遅延もしくは停止のために選択される用量で投与される(例えば、ヒト治療用の各種薬剤の投与方法の一般的な説明のためのRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAおよびGoodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics、McGraw-Hill、New York、N.Y.を参照(これらの内容は参照によって本明細書に組み込まれる))。開示の抗体および薬剤を含む組成物は、制御もしくは持続放出型送達システム(例えば、カプセル、生分解性マトリックス)によって送達することができる。本開示化合物の組成物の投与に好適な薬物送達のための遅延放出型送達システムは、例えば、米国特許第5,990,092号明細書,同第5,039,660号明細書、同第4,452,775号明細書および同第3,854,480に記載されており、それらの全教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
本発明の抗VISTA抗体および/またはフラグメントから医薬組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は、固体または液体であり得る。固形製剤としては、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、座薬および顆粒剤が挙げられる。例えば、本発明の化合物は、送達時に再構成する粉末の形態であり得る。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤またはカプセル化材としても機能し得る1種以上の物質であり得る。粉剤では、担体は、微粉化した有効成分との混合物を形成する微粉化した固体である。
【0049】
粉剤および錠剤は、約1~約70パーセントの有効成分を含有することが好ましい。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。錠剤、粉剤、カシェ剤、トローチ剤、速く溶けるストリップ剤、カプセル剤および丸剤は、経口投与に好適な有効成分を含有する固形の剤形として使用することができる。
【0050】
液体製剤としては、溶液、懸濁液、停留かん腸およびエマルション、例えば、水溶液または水性プロピレングリコール溶液が挙げられる。注射剤では、液体製剤を水性プロピレングリコール溶液中に溶液で配合することができる。
【0051】
医薬組成物は単位剤形とすることができる。そのような剤形では、組成物を適正量の有効成分を含有する単位用量に小分けする。単位剤形はパッケージ製剤とすることができ、パッケージは単位用量の分離量を含有する。投与量は患者の必要性、治療する病態の重症度、化合物および使用する投与経路によって変わり得る。特定の状況に適した投与量の決定は、当業者の能力の範囲内である。
【0052】
また、医薬組成物には、必要に応じて、他の混合可能な薬剤、例えば、医薬品、治療薬または予防薬を含有させることができる。治療薬または予防薬としては、限定はされないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣剤、合成薬、無機分子および有機分子が挙げられる。そのような薬剤(例えば、抗癌剤)の分類例としては、限定はされないが、細胞毒素、血管新生阻害薬、免疫調節薬、免疫療法薬、および、痛みの軽減、または1種以上の治療薬の有害作用を相殺するために使用される薬剤(例えば、グルココルチコイドの高カルシウム血作用を軽減するために使用されるビスホスフォネート)が挙げられる。
【0053】
血管新生阻害薬、本発明に記載の組成物および方法での使用に適した薬剤および療法としては、限定はされないが、アンジオスタチン(プラスミノゲンフラグメント);血管新生阻害アンチトロンビンIII;アンギオザイムが挙げられる。ビスホスフォネートとしては、限定はされないが、アレンドロネート、クロドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、パミドロネート、リセドロネート、チルドロネートおよびゾレドロネートが挙げられる。
【0054】
本明細書に記載の組成物および方法での使用に好適な免疫調節剤および免疫調節療法としては、限定はされないが、抗T細胞受容体、例えば、抗CD3抗体(例えば、Nuvion(Protein Design Labs)、OKT3(Johnson & Johnson)または抗CD20抗体Rituxan(IDEC))、抗CD52抗体(例えば、CAMPATH 1H(Ilex))、抗CD11a抗体(例えば、Xanelim(Genentech))、抗サイトカインまたは抗サイトカイン受容体抗体およびアンタゴニスト、例えば、抗IL-2受容体抗体(Zenapax(Protein Design Labs))、抗IL-6受容体抗体(例えば、MRA(Chugai))、および抗IL-12抗体(CNTO1275(Janssen))、抗TNFアルファ抗体(Remicade(Janssen))またはTNF受容体アンタゴニスト(Enbrel(Immunex))、抗IL-6抗体(BE8(Diaclone)およびシルツキシマブ(CNTO32(Centocor))、ならびに、腫瘍関連抗原に免疫特異的に結合する抗体(例えば、トラスツズマブ(Genentech))が挙げられる。
【0055】
本明細書に記載の組成物および方法での使用に好適な免疫療法薬としては、限定はされないが、イピリムマブ(抗CTLA-4)、ニボルマブ(抗PD-1)、ペンブロリズマブ(抗PD-1)、抗PD-L1抗体および抗LAG-3抗体が挙げられる。
【0056】
組成物は、治療有効量の抗体またはフラグメントを含む単位剤形の形態で作成されることが好ましい。単位剤形の例には、錠剤およびカプセル剤がある。治療目的のためには、錠剤およびカプセル剤は、有効成分に加えて、結合剤などの従来の担体、例えば、アカシアガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトールまたはトラガカント、充填剤、例えば、リン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトールまたはスクロース、潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、エチレングリコール、シリカまたはタルク、崩壊剤、例えば、ジャガイモデンプン、香味剤もしくは着色剤、または許容される湿潤剤を含有することができる。一般に水性もしくは油状溶液、懸濁液、エマルション、シロップ剤またはエリキシル剤の形態の経口液体製剤は、懸濁化剤、乳化剤、非水剤、保存料、着色剤および香味剤などの従来の添加剤を含有することができる。液体製剤の添加剤の例としては、アカシア、アーモンド油、エチルアルコール、分画ココナッツ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、食用硬化油脂、レシチン、メチルセルロース、メチルもしくはプロピルパラヒドロキシベンゾエート、プロピレングリコール、ソルビトールまたはソルビン酸が挙げられる。
【0057】
本明細書に記載の化合物および組成物の作製方法および使用方法に関する他の一般的な詳細は、当該技術分野でよく知られている。例えば、米国特許第7,820,169号明細書を参照されたい。その内容はその全体が組み込まれる。
【0058】
治療方法
当業者、例えば、臨床医は、個人に投与するための、特定の抗体、フラグメントおよび組成物の好適な用量および投与経路を、選択した薬剤、医薬製剤および投与経路、患者の各種因子、ならびに他の検討事項を考慮して決定することができる。用量は、引き起こされる、または生じる有害な副作用が最小、またはゼロになるものであることが好ましい。標準的な多剤投与処方では、薬剤は、患者が受ける治療において、あらかじめ決定された、または最適な血漿濃度を維持するように設計された処方計画にしたがって投与され得る。抗体、フラグメントおよび組成物は適切な用量範囲または治療有効量、例えば0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.0mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、10.0mg/kg、11.0mg/kg、12.0mg/kg、13.0mg/kg、14.0mg/kg、15.0mg/kg、16.0mg/kg、17.0mg/kg、18.0mg/kg、19.0mg/kg、20.0mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kgおよび100mg/kgで添加することができる。1つの実施形態では、投与する組成物、抗体またはフラグメントの用量は、1回の投与当たり0.1~15mg/kgである。
【0059】
抗体またはフラグメントは、1日に、1回、少なくとも1回、2回、少なくとも2回、3回、または少なくとも3回投与することができる。抗体またはフラグメントは、1週間に、1回、少なくとも1回、2回、少なくとも2回、3回、少なくとも3回、4回、少なくとも4回、5回、少なくとも5回、6回、または少なくとも6回投与することができる。抗体またはフラグメントは、1ヶ月に1回、1ヶ月に少なくとも1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に少なくとも2回、1ヶ月に3回、または1ヶ月に少なくとも3回投与することができる。抗体または抗体フラグメントは、1年に1回、1年に少なくとも1回、1年に2回、1年に少なくとも2回、1年に3回、1年に少なくとも3回、1年に4回、1年に少なくとも4回、1年に5回、1年に少なくとも5回、1年に6回、または1年に少なくとも6回投与することができる。
【0060】
抗VISTA抗体、フラグメントおよび組成物は、例えば、非経口または経口で、例えば、静脈内に、皮下に、経口で、直腸に、筋肉内に、腹腔内に、粘膜に、経皮的に、髄腔内に、鼻腔内に、または局所的に投与することができる。当業者は、以下の剤形が、有効成分として、本発明の化合物、または本発明の化合物に対応する薬学的に許容される塩を含み得ることを認識していよう。いくつかの実施形態では、これらの剤形は、有効成分として、化合物、または化合物に対応する薬学的に許容される塩を含み得る。
【0061】
本発明の抗VISTA抗体を、併用療法(例えば、互いに、または1種以上の他の治療薬と)の一部として投与することができる。本発明の化合物は、1種以上の他の治療薬の前、後、または同時に投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物および他の治療薬は、個別の製剤として、または混合した製剤として、同時に(例えば、一斉に)同時投与することができる。あるいは、薬剤は、個別の組成物として、熟練した臨床医によって決定される適切な時間枠(例えば、療法における医薬効果が重なって現れるのに十分な時間)内で、連続的に投与することができる。本発明の化合物および1種以上の他の治療薬は、単回投与または多数回投与で、順に、所望の治療効果を達成するのに好適なスケジュールで、投与することができる。
【0062】
本発明はまた、細胞、組織、臓器、動物または患者の少なくとも1つの悪性疾患の調節または治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物および組成物は、癌の治療または予防に使用される。癌には、任意の臓器系または体系の任意の悪性または良性の腫瘍が含まれ得る。例としては、限定はされないが、以下のものが挙げられる:乳癌、消化器/消化管癌、内分泌癌、神経内分泌癌、眼癌、泌尿生殖器癌、胚細胞癌、婦人科癌、頭頸部癌、血液癌、筋骨格癌、神経癌、呼吸器/胸部癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、子宮内膜、腎臓癌、膵臓癌、肝臓癌、胃癌、精巣癌、食道癌、前立腺癌、脳腫瘍、子宮頸癌、卵巣癌および甲状腺癌。他の癌としては、白血病、メラノーマおよびリンパ腫、ならびに本明細書に記載の癌を挙げることができる。いくつかの実施形態では、固形腫瘍に骨髄細胞および/またはT細胞が浸潤する。いくつかの実施形態では、癌は、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群および/または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、癌は、リンパ性白血病または骨髄性白血病などの任意の種類またはタイプの白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、T細胞前リンパ性白血病、大型顆粒リンパ球白血病、または成人T細胞白血病であり得る。いくつかの実施形態では、リンパ腫は、組織球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫またはホジキンリンパ腫であり、いくつかの実施形態では、癌は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、癌は、固形腫瘍、例えば、メラノーマまたは膀胱癌である。ある特定の実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌である。
【0063】
本発明はまた、細胞、組織、臓器、動物または患者の少なくとも1つの悪性疾患、例えば、限定はされないが、白血病、急性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞、T細胞またはFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、大腸癌、膵臓癌、上咽頭癌、悪性組織球増殖症、悪性の腫瘍随伴性症候群/高カルシウム血症、固形腫瘍、腺癌、肉腫、悪性メラノーマ、血管腫、転移疾患、癌関連骨吸収、癌関連骨痛などの少なくとも1つを調節または治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍に骨髄細胞および/またはT細胞が浸潤する。ある特定の実施形態では、固形腫瘍は非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物および療法は、ワクチン(ウイルスベクターワクチン、細菌ワクチン、細胞ワクチン、DNAワクチン、RNAワクチン、ペプチドワクチンまたはタンパク質ワクチンなど)と併用される。そのようなワクチンは、当該技術分野でよく知られている。例えば、Jeffrey Schlom、“Therapeutic Cancer Vaccines:Current Status and Moving Forward”,J Natl Cancer Inst;104:599-613(2012)を参照されたい。その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物および療法は、化学療法、ホルモン療法および生物学的療法用の薬剤、ならびに/またはビスホスフォネートと併用される。いくつかの実施形態では、化学療法用薬剤としては、次の1種以上が挙げられる:カルボプラチン(Paraplatin)、シスプラチン(Platinol、Platinol-AQ)、シクロヒスファミド(Cytoxan、Neosar)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド(VePesid)、フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン(Gemzar)、イリノテカン(Camptosar)、パクリタキセル(Taxol)、トポテカン(Hycamtin)、ビンクリスチン(Oncovin、Vincasar PFS)、ビンブラスチン(Velban)。
【0066】
他の実施形態では、本明細書に記載の抗VISTA化合物および療法は、1種以上の免疫チェックポイント抗体、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、トレメリムマブ、イピリムマブ、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗TIM-3抗体、抗LAG-3v、抗OX40抗体および抗GITR抗体などと併用される。
【0067】
他の一実施形態では、本明細書に記載の抗VISTA化合物および療法は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)小分子阻害剤と併用される。
【0068】
本発明の抗VISTA化合物および組成物は、癌を予防(癌の再発防止を含む)または治療(例えば、癌またはその1種以上の症状の管理または改善)するために、それを必要としている対象に投与することができる。癌またはその1種以上の症状の予防、治療、管理または改善に有用であると知られているか、または使用されてきたか、もしくは現在使用されている薬剤または療法(例えば、化学療法、放射線療法、イマチニブ、ソラフェニブおよびベムラフェニブなどの標的療法、ホルモン療法、ならびに/または生物学的療法もしくは免疫療法)は、本明細書に記載の本発明の化合物または組成物と併用することができる。抗癌剤としては、限定はされないが、以下のものが挙げられる:5-フルオロウラシル、アシビシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ビカルタミド、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、塩酸カルビシン、カルゼルシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デキソマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、ドロロキシフェンシトラート、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、塩酸エフロルニチン、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホスキドン、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモフォシン、インターロイキンIl(組み換えインターロイキンII、すなわちrIL2を含む)、インターフェロン アルファ-2a、インターフェロン アルファ-2b、インターフェロン アルファ-m、インターフェロン アルファ-n3、インターフェロン ベータ-Ia、インターフェロンガンマ-Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、ランレオチドアセテート、レトロゾール、リュープロリドアセテート、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、塩酸メクロレタミン、メゲストロールアセテート、メレンゲストロールアセテート、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、マイトマイシン、ミトスペル、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、オルマプラチン、パクリタキセル、ペグアスパルガーゼ、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、ログレチミド、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌール、タリソマイシン、テガフール、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、トポテカン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシナート、硫酸ビンロイロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、塩酸ゾルビシン。標的療法としては、限定はされないが、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ、ソラフェニブおよびベムラフェニブ)が挙げられる。本発明はまた、x線、ガンマ線および癌細胞を破壊する他の線源の使用を含む放射線療法と組み合わせた本発明の抗VISTA化合物の投与を包含する。癌治療は当該技術分野で知られており、Physician’s Desk Reference(57th ed.,2003)などの文献に記載されている。
【0069】
本明細書に記載の抗VISTA抗体はまた、例えば、慢性感染症、とりわけHIV、HBV、HCV、およびHSVなどの治療に有用である。
【0070】
本発明の抗VISTA抗体を選択するための各種特性および配列情報を本明細書中の表1A、1Bおよび2に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
生物学的応答を誘発する方法
一実施形態では、本発明は、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)タンパク質に結合する抗体を使用して、対象において生物学的応答を誘発する方法を提供する。本方法は、VISTAタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを、対象に、その対象において生物学的応答を誘発するのに十分な量投与する工程を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、VISTAに結合する抗体または抗原結合フラグメントによって誘発される生物学的応答は、循環免疫細胞数の減少、骨髄および/または脾臓中の顆粒球数の減少、腫瘍微小環境(TME)における好中球、マクロファージ、T細胞、またはそれらの組み合わせの数の増加、および1種以上のサイトカインのレベルの増加、あるいはこれらの応答の任意の組み合わせである。
【0080】
一実施形態では、誘発される生物学的応答は、循環免疫細胞の数の減少である。減少する循環免疫細胞は、例えば、単球、好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。1つの実施形態では、循環免疫細胞の数の減少は一時的である。
【0081】
本明細書で使用される場合、循環免疫細胞の数の「一時的」減少は、抗体または抗原結合フラグメントの投与前のレベルに対する一時的な減少を指し、減少したレベルは、その後の時点で、前のレベルに戻るか、またはそれを超える。
【0082】
一実施形態では、誘発される生物学的応答は、対象の1つ以上の組織(例えば、骨髄)および/または臓器(例えば、脾臓)における顆粒球の数の減少である。
【0083】
一実施形態では、誘発される生物学的応答は、腫瘍微小環境(TME)における免疫細胞の数の増加である。TMEにおいて増加する免疫細胞としては、限定はされないが、好中球、マクロファージ、T細胞、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0084】
一実施形態では、誘発される生物学的応答は、1種以上のサイトカイン(例えば、1種以上のケモカイン)のレベルの増加である。抗VISTA抗体または抗原結合フラグメントの投与に応じて増加し得るサイトカインの例としては、例えば、IL-6、TNFα、MCP-3、MDC、MIP-1β、IP-10、IL-1Rα、GM-CSF、IL-12p70、GRO、MIP-1α、IL-1β、RANTES、G-CSF、IL-1α、IL-7、IL-12p40、IL-13、IFNγ、TNFβ、IFNα、IL-4、IL-10、FGF-2、フラクタルカイン、VEGF、IL-17A、Flt3L、IL-9、TGFα、IL-15、EGF、PDGF-αα、MCP-1、IL-8、sCD40L、エオタキシン、IL-2、IL-3およびIL-5、ならびにPDGF-BBが挙げられる。
【0085】
ある特定の実施形態では、対象に投与される、VISTAに結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、エフェクター機能を有するFc領域(例えば、細胞上のFc受容体に結合する)を含む。ある特定の実施形態では、この抗体、またはその抗原結合フラグメントは、免疫細胞(例えば、NK細胞)上のCD16受容体(例えば、FcγRIIIa、FcγRIIIb)に結合する。
【0086】
一実施形態では、対象に投与される、VISTAに結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するVH CDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、さらに、配列番号28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するVL CDR2、および配列番号30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む。ある特定の実施形態では、抗体は、VSTB174またはその抗原結合フラグメントである。
【0087】
一実施形態では、VISTAに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが投与される対象は哺乳動物である。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。他の一実施形態では、哺乳動物は非ヒト霊長目である。さらに他の実施形態では、哺乳動物は齧歯動物(例えば、マウス、ラット)である。
【0088】
一実施形態では、対象は、癌(例えば、固形腫瘍、白血病、リンパ腫)を有する。いくつかの実施形態では、癌は、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群および/または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、癌は、リンパ性白血病または骨髄性白血病などの任意の種類またはタイプの白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、T細胞前リンパ性白血病、大型顆粒リンパ球白血病、または成人T細胞白血病であり得る。いくつかの実施形態では、リンパ腫は、組織球性リンパ腫であり、いくつかの実施形態では、癌は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、癌は、固形腫瘍、例えば、メラノーマ、乳癌または膀胱癌である。いくつかの実施形態では、癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))である。いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌である。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌である。
【0089】
抗体またはそのフラグメントは、例えば、静脈内(IV)、皮下(SQ)または経口(PO)を含む任意の好適な非経口または経口で投与することができる。
【0090】
抗VISTA抗体のスクリーニング方法
本発明は、一実施形態において、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)タンパク質に結合し、生物学的応答を誘発する抗体を同定する方法を提供する。この方法は、VISTAに結合する抗体、またはその抗体フラグメントを、細胞、組織、臓器および/または生物に提供する工程、ならびにその抗体またはその抗体フラグメントが細胞、組織、臓器または生物において生物学的応答を誘発するか否かを決定する工程を含む。
【0091】
一実施形態では、決定する生物学的応答として、単球の活性化、T細胞の活性化、循環免疫細胞の数の減少、骨髄および脾臓中の顆粒球数の減少、腫瘍微小環境(TME)における好中球、マクロファージ、T細胞、またはそれらの組み合わせの数の増加、1種以上のサイトカイン(例えば、ケモカイン)のレベルの増加、あるいはこれらの応答の任意の組み合わせが挙げられる。
【0092】
一実施形態では、本方法により同定される、VISTAに結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、エフェクター機能を有するFc領域(例えば、細胞上のFc受容体に結合する)を含む。ある特定の実施形態では、この抗体、またはその抗原結合フラグメントは、免疫細胞(例えば、NK細胞)上のCD16受容体(例えば、FcγRIIIa、FcγRIIIb)に結合する。
【0093】
一実施形態では、本方法により同定される、VISTAに結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するVH CDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、さらに、配列番号28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するVL CDR2、および配列番号30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む。
【0094】
一実施形態では、生物学的応答は、様々なタイプの試料、例えば、限定はされないが、組織試料、生体液試料(例えば、哺乳動物の血漿、血清、リンパ液、全血、脊髄、羊膜または他の動物由来の液)、細胞(例えば、腫瘍細胞、免疫細胞)試料などで分析することができる。試料としては、例えば、(a)固定されていない新鮮組織および/または細胞を含む標本、(b)固定包埋された組織標本、例えば、保存材料、ならびに(c)凍結した組織または細胞を挙げることができる。したがって、試料は、新鮮であるか、あるいは、液体溶液に、急速冷凍もしくは凍結乾燥、スライドまたは他の支持材上に塗布、または乾燥、包埋もしくは固定して保存され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、組織または細胞試料は固定または包埋される。例えば、細胞および組織を再生可能で生きているような方法で保存するために、固定液が使用される。固定液はまた、細胞および組織を安定化し、それにより、プロセッシングおよび染色法の厳しさからそれらを保護する。例えば、組織のブロック、切片、塗抹を含む試料を固定液に浸漬、または塗布物の場合には乾燥させることができる。
【0096】
試料を得るために、対象から試料を採取する任意の方法、例えば、採血、脊椎穿刺、組織スメアもしくはスクレープ、または組織生検を使用することができる。したがって、試料は、生検標本(例えば、腫瘍、ポリープ、腫瘤(固形、細胞))、吸引物、塗抹または血液試料であり得る。試料は、腫瘍(例えば、癌性増殖)および/または腫瘍細胞を有するか、あるいは、腫瘍および/または腫瘍細胞を有する疑いのある組織であり得る。例えば、腫瘍生検は、直視下生検、標的領域から全(切除生検)または部分(切開生検)腫瘤を除去する手順で得ることができる。あるいは、腫瘍試料は、経皮的生検、針様器具を用い、小切開または穿刺を行って(画像装置の助けの有無にかかわらず)、個々の細胞もしくは細胞塊(例えば、微細針吸引(FNA))、または組織のコアもしくはフラグメント(コア生検)を得る手順で得ることができる。
【0097】
試料は、細胞学的に(例えば、塗抹))、組織学的に(例えば、凍結もしくはパラフィン切片)または他の任意の好適な方法(例えば、分子診断法)により検査することができる。腫瘍試料はまた、個体組織由来の培養ヒト細胞からインビトロで採集することによって得ることができる。腫瘍細胞は、必要に応じて、分析前に、急速凍結、または管理された凍結レジームなどの、分析可能な条件で試料のタンパク質および/または核酸を保存する好適な貯蔵手段によって貯蔵することができる。必要に応じて、凍結は、抗凍結剤、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、またはプロパンジオール-スクロースの存在下で行うことができる。腫瘍細胞は、必要に応じて、貯蔵前または貯蔵後に、分析目的のためにプールすることができる。
【0098】
一実施形態では、生物学的応答は、例えば、免疫学的方法および免疫化学的方法、例えば、限定はされないが、フローサイトメトリー(例えば、FACS分析)、サイトカイン放出アッセイ、ケモカイン放出アッセイ、細胞活性化アッセイ、細胞増殖アッセイ、細胞移動アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、例えば、化学発光アッセイ、ラジオイムノアッセイ、イムノブロット(例えば、ウェスタンブロット)、免疫組織化学(IHC)、免疫沈降、および他の抗体による定量方法(例えば、Luminex(登録商標)ビーズベースアッセイ)などのインビトロアッセイを使用して測定することができる。他の好適な方法としては、例えば、質量分析法が挙げられる。
【0099】
一実施形態では、生物学的応答は、非ヒト動物において、インビボで測定することができる。一実施形態では、非ヒト動物は非ヒト霊長目である。さらに他の実施形態では、非ヒト動物は齧歯動物(例えば、マウス、ラット)である。いくつかの実施形態では、非ヒト動物はトランスジェニック動物である。
【0100】
一実施形態では、非ヒト動物は、癌(例えば、固形腫瘍、白血病、リンパ腫)を有する。いくつかの実施形態では、癌は、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群および/または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、癌は、リンパ性白血病または骨髄性白血病などの任意の種類またはタイプの白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、T細胞前リンパ性白血病、大型顆粒リンパ球白血病、または成人T細胞白血病であり得る。いくつかの実施形態では、リンパ腫は、組織球性リンパ腫であり、いくつかの実施形態では、癌は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、癌は、固形腫瘍、例えば、メラノーマ、乳癌または膀胱癌である。いくつかの実施形態では、癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))である。いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌である。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌である。
【0101】
一実施形態では、分析する生物学的応答は、循環免疫細胞の数の減少である。減少する循環免疫細胞は、例えば、単球、好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。1つの実施形態では、循環免疫細胞の数の減少は一時的である。
【0102】
一実施形態では、分析する生物学的応答は、対象の1つ以上の組織(例えば、骨髄)または臓器(例えば、脾臓)における顆粒球の数の減少である。
【0103】
一実施形態では、分析する生物学的応答は、腫瘍微小環境(TME)における免疫細胞の数の増加である。TMEにおいて増加する免疫細胞としては、限定はされないが、好中球、マクロファージ、T細胞、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0104】
一実施形態では、分析する生物学的応答は、1種以上のサイトカイン(例えば、1種以上のケモカイン)のレベルの増加である。抗VISTA抗体または抗原結合フラグメントの投与に応じて増加し得るサイトカインの例としては、例えば、IL-6、TNFα、MCP-3、MDC、MIP-1β、IP-10、IL-1Rα、GM-CSF、IL-12p70、GRO、MIP-1α、IL-1β、RANTES、G-CSF、IL-1α、IL-7、IL-12p40、IL-13、IFNγ、TNFβ、IFNα、IL-4、IL-10、FGF-2、フラクタルカイン、VEGF、IL-17A、Flt3L、IL-9、TGFα、IL-15、EGF、PDGF-αα、MCP-1、IL-8、sCD40L、エオタキシン、IL-2、IL-3およびIL-5、ならびにPDGF-BBが挙げられる。
【実施例0105】
実施例1:ヒト造血細胞におけるVISTA発現の分析
方法:
VISTA発現用の新鮮ヒトPBMCの調製および染色
いくつかのドナーから新鮮単離したPBMC(末梢血単核球)におけるVISTA発現を試験した。染色に抗ヒトVISTAビオチン(GA-1)を使用した(5μg/ml)。マウスIgG1、Kビオチン(クローンMOPC-21、5μg/ml)をアイソタイプ対照として使用した。
【0106】
ドナー材料
Biological Specialty Corp.(Colmar、PA)から血液試料を得、同じ日に採取し、分析した。ヘパリン硫酸を含む全血10mlを分析のために送った。
【0107】
試料の調製
血液を滅菌PBSにより1:1に希釈した。希釈した臍帯血22mlを、20mlコニカルチューブ内の滅菌Ficoll-Hypaque(GE Healthcare カタログ番号17-144003)上に注ぎ、層を形成した。チューブを1800rpmで20分間、室温で遠心分離機にかけた。遠心分離後、1mlピペットを用いて界面の単核球を採取し、2本の50mlコニカルチューブに入れた。滅菌PBSを各チューブに加えて、体積を50mlとし、細胞を300gで10分間、4℃で遠心分離機にかけた。上清を捨てた。細胞を50mlの滅菌PBS中に再懸濁し、チューブを300gで10分間、4℃で回転させた。上清を捨てた。細胞をまとめ、計数前に、50mlの滅菌PBS中に再懸濁した。
【0108】
染色プロトコル:5×107個のPBMCを含有する凍結バイアルを、補償制御のために、かつ染色用対照として使用した。
【0109】
以下の試薬および/または消耗品を使用した。
【0110】
0.2%EDTAを補充したBD Biosciences製のFACS染色緩衝液(BSA)(カタログ番号554657);リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco カタログ番号14190);96ウェルポリプロピレン丸底プレート(BD#3077);1.2mlプリプロピレンクラスターチューブ(Corning#4451);ImmunoNext製のビオチン化抗VISTAクローンGA-1ロット番号080612B(5μg/mlで使用);ビオチン化mIgG1、Kアイソタイプ対照(クローンMOPC-21);Biolegendカタログ番号400104、ロット番号B116649(5μg/mlで使用);抗ヒト抗体(下の染色表を参照);近赤外吸収ライブ・デッド色素(Invitrogen、カタログ番号L10119);およびSTP-APC(BD Biosciences カタログ番号554067、ロット番号04251)(FACS緩衝液で1:200に希釈して使用)、STP-PE(Biolegendカタログ番号405203、ロット番号B139688)(FACS緩衝液で1:200に希釈して使用)、STP-PE Cy7(アイソタイプ対照試料において非特異的結合を示す)、STP-Q605(Invitrogen カタログ番号Q10101MP、ロット番号53449A)(FACS緩衝液で1:200に希釈して使用)を含むストレプトアビジン試薬。
【0111】
細胞表面染色プロトコル
染色前に、1×106個の細胞を96ウェル丸底プレートに移し、150μlのPBSで洗浄した。その後、プレートを、1300rpm、4℃で、3分間、遠心分離機にかけた。
【0112】
その後、細胞をPBSで再度洗浄し、上記のように遠心分離機にかけた。
【0113】
その後、0.25μlの近赤外吸収ライブ・デッド色素を含有する50μlのPBS中でライブ・デッド染色を行った。室温で10分後、ウェルを150μlのFACs染色緩衝液で洗浄し、1300rpm、4℃で、3分間、遠心分離機にかけた。上清を捨てた。
【0114】
ヒト血清を1:100で含む50μlのFACS染色緩衝液で細胞をブロックした。プレートを4℃で、15分間インキュベートした。その後、ウェルを150μlのFACs染色緩衝液で洗浄し、1300rpm、4℃で、3分間、遠心分離機にかけた。上清を捨てた。
【0115】
その後、表面染色のために、以下の抗体を含有するカクテルを各ウェルに加えた。カクテルを下の表3~6に記載する。各カクテルは対象の個体群に応じて、他とは別に使用される。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
表面染色後、細胞をFACS染色緩衝液で2回、前述のようにして洗浄し、1300rpm、4℃で、5分間、遠心分離機にかけた。試料を、蛍光標識された適切なストレプトアビジンを含む50μlのFACS染色緩衝液中に再懸濁した。試料を4℃で30分間インキュベートした。細胞を150μlのFACS染色緩衝液で洗浄し、1300rpm、4℃で、5分間、遠心分離機にかけた。この洗浄工程を繰返した後、試料を250μlのFACS染色緩衝液中に再懸濁した。同日、試料をBD LSRFortessaTMセルアナライザー(BD Biosciences)で分析した。
【0121】
データ解析
特定の表現型個体群をゲーティングするために、FlowJo Version9ソフトウエアを用いて、フローサイトメトリーデータを再分析した。異なる細胞サブセットにおけるVISTA発現を比較するために、幾何平均の一覧を使用した。抗VISTA処理試料の平均値からアイソタイプ対照の値を減算することによって、各個体群をバックグラウンドで正規化した。グラフをプリズムで作成し、スチューデントのt検定(2種の試料のみを比較する場合)、またはボンフェローニのポスト検定を含む一元配置ANOVAを使用して統計処理を行った。
【0122】
結果:
ヒトミエロイドおよびリンパ球サブセットにおけるVISTAの発現:
図2A~2E、3A~3G、4、5A~5Bおよび6A~6Cに示すように、CD14
+単球におけるVISTA発現は、他の全ての個体群と大きく異なっていた(p<0.001)。他の個体群間では大きな違いは認められなかった。末梢血では、単球が最も高レベルでVISTAを発現し、CD14
+CD16
-サブセットがCD14
loCD16
+細胞よりはるかに高い発現を示した。一方、APCは中程度のVISTA発現を示し、リンパ球サブセットは低い発現レベルを示した。
【0123】
ヒトTおよびNKサブセットにおけるVISTAの発現:
図7A~7E、8A~8Gおよび9に示すように、NKサブセットを含むCD56
lo細胞はCD56
HiNK細胞よりはるかに高いVISTA発現レベルを示した。T細胞サブセットのうち、CD8
+記憶細胞は最も高い発現レベルを示したが、CD8
+ナイーブT細胞またはCD4
+T細胞よりさほど高くはなかった。
【0124】
ヒト樹状細胞サブセットにおけるVISTAの発現:
図10A~10D、11A~11Cおよび12に示すように、VISTA発現に大きな違いは認められず、DCおよび好塩基球は低いVISTA発現を示し、形質細胞様樹状細胞(pDC)は一般にそれらと比較して高かったが顕著なほどではなかった。
【0125】
結論:これらの結果は、各種の免疫細胞サブセッにおけるVISTA発現を示し、VISTAは単球で最も高く発現し、種々のT細胞サブセットおよびNK細胞ではいくらか発現し、B細胞では全く発現しないか殆ど発現しない。
【0126】
実施例2:末梢血細胞におけるVISTA発現
方法:
全血の染色:新鮮単離した全血(100μl)を下記に示した抗体カクテルで、4℃で30分間インキュベーションすることによって染色した。赤血球(RBC)をRBC溶解緩衝液で溶解し、残りの細胞を染色緩衝液で1回洗浄した。細胞を200μlの染色緩衝液に再懸濁した。MACSQuantフローサイトメーターを用いてデータを集め、FlowJo解析ソフトウエアを用いて解析した。
【0127】
末梢血単核球(PBMC)の染色:末梢血単核球を、フィコール勾配を用いて全血から単離した。新鮮単離した1×106個のPBMCを、100μlの染色緩衝液中で抗体カクテルにより染色した。試料を4℃で30分間インキュベートし、その後、染色緩衝液で1回洗浄した。細胞を100μlの染色緩衝液に再懸濁した。MACSQuant(登録商標)フローサイトメーター(Miltenyi Biotec)を用いてデータを集め、FlowJo解析ソフトウエアを用いて解析した。
【0128】
使用した抗体は、CD11b、CD33、CD177、CD16、CD15、CD14、CD20、HLADR、CD3、CD4、CD8、CD127、CD69、およびFOXP3抗体(Biolegend、San Diego、CA)であった。APC-結合マウス抗ヒトVISTA(クローンGG8)はImmuNext(Lebanon、NH)により作製された。
結論:
健康なヒトの抹消血細胞におけるVISTA発現
【0129】
全血および末梢血単核球のVISTA発現を、マルチカラーフローサイトメトリーを用いて解析した。
図15Aおよび15Bに示すように、最も高いVISTA発現は、単核球で検出され、続いて、好中球で検出された。
図13Cおよび13Dに示すように、CD4+およびCD8+の両T細胞のVISTA発現は低レベルであった。
【0130】
癌患者の末梢血細胞におけるVISTAの発現
図14A~Cに示すように、肺癌患者の末梢血単核球(PBMC)を解析した。
図14Aは、CD14
+単球およびCD15
+骨髄由来の抑制性細胞(MDSC)の解析を示す代表的なFACSプロットである。結果は、表現型の上では、CD15
+細胞が好中球由来のMDSCであることを示唆している。さらに、これらの細胞は健常者の血液試料には存在しない。
図14Bは、健常者と癌患者由来の単球におけるVISTA発現の代表的なヒストグラムであり、健常対照に比較して癌患者の細胞のVISTA発現レベルが高いことを示唆している。同様に、
図14Cに示すように、癌患者のMDSCでは、高レベルのVISTAが認められた。
【0131】
図15Aは、結腸癌患者の血液に好中球由来のMDSCが存在することを示す代表的なFACSプロットである。
図15Bおよび15Cは、健常なドナーの血液試料に比べて癌患者の単球におけるVISTA発現がより高いことを示す代表的なヒストグラムである。
【0132】
カニクイザルの末梢血細胞におけるVISTAの発現
図16Aおよび16Bに示すように、サルの全血のフローサイトメトリー解析は、ヒト細胞に似たVISTA発現パターンを示した。単球および好中球はいずれも、CD4
+(
図16C)およびCD8
+(
図16D)T細胞に比べて最高レベルでVISTAを発現した。
【0133】
実施例3:ヘム悪性細胞株におけるRNAレベルおよびタンパク質レベルでのVISTA発現
VISTAはヘム悪性腫瘍で発現するため、抗VISTA抗体は悪性細胞を破壊の標的とし、また、VISTAをブロックして、抗腫瘍免疫反応を促進する可能性がある。
【0134】
データは約140ヘム悪性細胞株(解析においては、いくつかの細胞種は繰り返される)のRNAseqを含む。データを
図17に示す。
【0135】
RNAseq値をFPKM(マップされたフラグメント100万本当たりのエクソン1キロベース当たりのフラグメント数)値で示す。
【0136】
実質的に、これは、遺伝子のエクソン領域内の全リードが計数され、遺伝子長と1試料当たりの全リード数により正規化されていることを意味する(試料間の差を説明するため)。カットオフ値は1で、1超はVISTA発現(RNAレベルで)が陽性であり、1未満はVISTA発現が陰性である。
【0137】
結果は、多くの細胞株がRNAレベルで陽性であることを示した(急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)。VISTAは正常な骨髄細胞で高発現し、その機能は抗腫瘍免疫応答などの免疫応答を低下させると考えられることから、このことが予期され得る。
【0138】
実施例4:VISTAに対するモノクローナル抗体の生成
ファージパニング
24のファージパニング実験を行い、Cyno VISTA-Hisに対するファージの反応性を向上させた。カニクイザルVISTAタンパク質は、ヒトVISTAタンパク質より良好なビオチン結合を示すため、これらの実験にはそのカニクイザルVISTAタンパク質を使用した。ファージ実験の成功を決定するために、それぞれのパニングラウンドからのファージプールをビオチン化cyno VISTA-Hisでコーティングしたニュートラアビジンプレートに加え、HRP-結合抗M13抗体で検出した。ファージ選択ラウンドから個々のコロニーを採取し、96ウェルプレート中でFabタンパク質を産生させた。発現したFab上清を、ビオチン化cyno VISTA-Hisへの結合について分析した。これには200より多くがヒットした。
【0139】
FabプレートのVHおよびVL領域を増幅し、DNA配列決定を行い、FASTAファイルとしてエクスポートした。変質されMABとして試験されるべきクローンを採取する場合に、クローンは配列多様性ならびに翻訳語修飾の危険性が限られていること、および疎水性残基がなるべく少ないことを基準に選択された。
【0140】
ファージクローンからのVHおよびVLを哺乳動物のIgG1/カッパ発現ベクターにサブクローン化し、HEK293細胞に導入した。Protein A Sepharose Fast Flow親和性樹脂により、抗体を精製した。ファージMABの濃度を、Nanodrop測定を用いる定量ELISAによって測定した。抗体パネルを高レベルで発現させた。SDS-PAGE分析によって、発現した各抗体変異体の完全性が示された。
【0141】
VL多様性を有するファージベクターへクローニングするための、パニングの最終ラウンドから得られたポリクローナル抗体混合物のVHドメインを増幅することによって、ファージ抗体をインライン成熟させた。これにより、濃縮されたVHプールが得られ、これはVLの多様性が加わった試料となった。ファージは、VISTA ECD Hisタンパク質への非常に高アフィニティの結合を同定しようとする期待を伴った、1~2ラウンドの厳しいパニングにより採取された。モノクローナルFabのELISAを行い、成熟が成功したことを決定した。ELISAおよび発現データを、元のデノボパニング実験から100%に設定された参照クローンに対して正規化し、cyno VISTA抗原への結合シグナルが参照クローンより強いアフィニティ成熟クローンが同定された。このプロセスは、低濃度の抗原(1nM)でスクリーニングすると、200%までの結合を示す数種のクローンを生み出し、最も高いアフィニティを有するクローンが、MABとしてその配列が決定され生産された。
【0142】
ハイブリドーマの生成
【0143】
BALB/cAnNCrlマウスの1群は、完全フロイントアジュバント中で乳化したHu VISTA-Ig組み換えタンパク質(Sino)50μgの腹腔内(IP)注射を1回受け、2週後、不完全フロイントアジュバント中で乳化したHu VISTA-Ig組み換えタンパク質50μgのIP注射を1回受けた。2週後、マウスは、不完全フロイントアジュバント中で乳化したcyno VISTA-Fc組み換えタンパク質50μgのIP注射を1回受けた。全てのマウスは、尾の基部にPBS中25μgのヒトVISTAおよび同25μgのcyno VISTAの最終注射を受け、5日後、融合のために脾臓を回収した。
【0144】
BALB/cAnNCrlマウスの別の群は、完全フロイントアジュバント中で乳化したHu VISTA-His組み換えタンパク質50μgのIP注射を1回受けた。2週間後、マウスは、不完全フロイントアジュバント中で乳化したHu VISTA-His組み換えタンパク質50μgのIP注射を1回受けた。2週間後、マウスは、不完全フロイントアジュバント中で乳化したCyno VISTA-His組み換えタンパク質50μgのIP注射を1回受けた。2週間後、全てのマウスは、PBS中25μgのHu VISTA-Hisおよび同25μgのCyno VISTA-Hisの最終注射を受け、3日後、融合のために脾臓を回収した。
【0145】
融合の日に、マウスをCO2窒息により安楽死させ、脾臓を取り出し、10mLの冷リン酸緩衝生理食塩水に入れた。小さい乳棒を用いて、細かい網目のスクリーンを通して脾臓をすり潰し、室温でPBSにより濯いで、脾臓細胞の単一細胞懸濁液を調製した。細胞をPBS中で1回洗浄し、RBC溶解に供した。簡潔に記せば、脾臓ごとに細胞を3mLのRBC溶解緩衝液(Sigma#R7757)に再懸濁させ、氷上に5分間置いた。再度、細胞をPBSにより室温で1回洗浄し、磁気ソートのために標識した。製造業者の使用説明書により、細胞には、抗マウスThy1.2、抗マウスCD11bおよび抗マウスIgM磁気ビーズ(それぞれ、Miltenyi Biotec#130-049-101、同130-049-601および同130-047-301)で標識し、その後、Midi MACSを用いてMSカラムによりソートした。陰性の細胞画分(陽性の細胞画分は廃棄した)をFO細胞と融合させた。1:1の比のマウス骨髄腫細胞対生脾臓細胞で融合を行った。簡潔に記せば、脾臓および骨髄腫細胞を一緒に混合して、ペレット化し、50mLのPBS中で1回洗浄した。10e8個の脾臓細胞当たり1mLのポリエチレングリコール(PEG)溶液(2g PEG、分子量4000、2mL DMEM、0.4mL DMSO)を用いて、ペレットを37℃で30秒間再懸濁させた。次いで、細胞/融合混合物を緩やかに撹拌しながら37℃の水浴に約60秒間浸漬した。37℃のDMEMを1分間かけて徐々に添加し、融合反応を停止させた。融合した細胞を室温で5分間静置し、次いで、150Gで5分間遠心分離した。その後、細胞をMedium E-HAT(HAT(Sigma カタログ番号H0262)を含むMedium E(StemCell Technologies カタログ番号03805))に再懸濁し、96ウェル平底ポリスチレン組織培養プレート(Corning#3997)に播種した。
【0146】
捕捉EIAを使用して、cyno VISTAに特異的な抗体について、ハイブリドーマ上清をスクリーニングした。簡潔に記せば、プレート(Nunc-Maxisorp#446612)を、少なくとも60分間、コーティングバッファ(Thermo 28382)中のヤギ抗マウスIgG(Fc)抗体(Jackson#115-006-071)で4μg/mlの濃度でコーティングした。プレートを、200μl/ウェルの0.4%(重量/体積)ウシ血清アルブミン(BSA)(PSB中)により、室温で30分間ブロッキングした。プレートを1回洗浄し、50μl/ウェルのハイブリドーマ上清を加え、室温で少なくとも30分間インキュベートした。プレートを1回洗浄し、50μl/ウェルの0.1μg/mLcyno VISTA-huIgを加え、室温で30分間インキュベートした。プレートを1回洗浄し、0.4%BSA/PBS中1:40,000のストレプトアビジンHRP(Jackson 016-030-084)をプレートに加え、室温で30分間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、続いて100μl/ウェルTMB Turbo基質(Thermo Scientific 34022)を使用して、室温で約10分間インキュベートして、発色させた。25μl/ウェルの4N硫酸を使用して反応を停止させ、自動プレート分光計を使用して450nmで吸光度を測定した。限界希釈法により、一次ヒットのうち15個をサブクローニングのために選択し、一次スクリーニングと同じ形式でスクリーニングした。
【0147】
全てのcyno VISTA反応性ハイブリドーマ細胞株を、ヒトVISTA-Igを使用して交差スクリーニングし、交差反応性を評価した。簡潔に記せば、プレート(Nunc-Maxisorp#446612)を、0.1M炭酸-重炭酸ナトリウムバッファ、pH9.4(Pierce 28382 BupHTM)中4μg/mLのヤギ抗ms Fc(Jackson#115-006-071)により、4℃で終夜コーティングした。洗浄せずに、ウェルを、200μlのブロック液(PBS(Invitrogen)中0.4%のBSA(Sigma)(重量/体積))により、4℃で終夜ブロッキングした。ブロック溶液を除去した後、希釈していないハイブリドーマ上清を、コーティングしたプレート上、室温で30分間インキュベートした。プレートをPBST(PBS中0.02%のTween 20(Sigma)(重量/体積))で1回洗浄し、その後、Hu VISTA-Igをブロック液で100ng/mlに希釈して30分間インキュベートした。プレートを1回洗浄し、ブロック液で1:10,000に希釈したヤギ抗ヒトFc-HRP(Jackson#109-036-098)により、室温で30分間プローブ処理した。プレートを再度洗浄し、続いて100μl/ウェルのTMB Turbo基質(Thermo Scientific 34022)を使用して、室温で約10分間インキュベートし、発色させた。25μl/ウェルの4N硫酸を使用して反応を停止させ、自動プレート分光計を使用して450nmで吸光度を測定した。
【0148】
ヒトおよびカニクイザルの両方のVISTAに反応性を有することを示したハイブリドーマは、クローニングされたV領域抗体配列を有した。ハイブリドーマ細胞を調製し、その後、InvitrogenのSuperScript III cells Direct cDNA Systemを用いて逆転写酵素(RT)反応を行った。簡潔に記せば、培養培地を廃棄し、プレートを氷上に置き、200μlの冷PBSに再懸濁させた。40μlをMicroAmp高速96ウェル反応PCRプレートに移し、プレートを冷金属プレートベース上に置き、プラスチックフィルムで密封して、700rpmで3分間回転させた。PBSを廃棄し、各ウェルに10μlの再懸濁バッファおよび1μlの溶解促進剤を加えた。プレートを密封し、75℃で10分間インキュベートして、-80℃で保存した。
【0149】
RT反応のために、各ウェルは、5μlの水、1.6μlの10×DNaseバッファ、1.2μlの50mM EDTA、2μlのOligo(dT)20(50mM)および1μlの10mM dNTP Mixを含んだ。プレートを70℃で5分間インキュベートし、続いて氷上で2分間インキュベートし、その後、以下の試薬を各ウェルに加えた:6μlの5×RTバッファ、1μlのRNaseOUTTM(40U/μl)、1μlのSuperScriptTMIII RT(200U/μl)および1μlの0.1M DTT。プレートを密封し、50℃に予備加熱したサーマルサイクラー上に置き、50℃で50分間インキュベートし、その後、不活化させた(85℃で5分間のインキュベーション)。反応物を氷上で冷やし、一本鎖cDNAを、次に使用するまで-80℃で保存した。
【0150】
V領域増幅のために、20μlのPCR反応を設定した。各ウェルは、16.2μlの水、2.0μlの10×PCR反応バッファ、0.8μlのMgSO4(50mM)、0.4μlの10mM dNTP、0.15μlの100μMフォワードプライマー混合物、0.05μlの100μMリバースプライマー、0.2μlのHiFi Tag酵素を含んだ。上記のように調製したcDNA(2μl/ウェル)をPCR内容混合物に移し、プレートを密封して、増幅反応を行った:VHに対して、プログラムは、(i)94℃で1分間、(ii)94℃で15秒間、(iii)55℃で30秒間、(iv)68℃で1分間とした。工程(ii~iv)を合計35サイクル繰り返し、その後、68℃で3分の最後の伸長を続けた。VLに対して、プログラムは、(i)94℃で1分間、(ii)94℃で15秒間、(iii)55℃で30秒間、(iv)65℃で30秒間、(v)68℃で1分間とした。工程(ii~v)を合計35サイクル繰り返し、その後、68℃で3分の最後の伸長を続けた。
【0151】
フォワードプライマーを予め混合し、そうした混合物とリバースプライマーを3:1の比で使用した。PCR産物をアガロースゲル上で検証した。促進剤(In-Fusion HC Cloning Kit、カタログ番号639650、Clontech)を加えることにより、注入クローニングのための反応物を調製した。5μlのPCR反応物をPCRプレートに移し、続いて2μlの促進剤/ウェルを移した。プレートを密封し、サーマルサイクラー(37℃で15分および80℃で15分)中でインキュベートした。Esp3I消化により目的のベクター(vDR243またはvDR301)を調製した(30μlの反応において、1.5μgのベクターを3μlのTangoバッファ、2lのEsp3Iおよび水中で、37℃で2時間かけて消化した)。
【0152】
注入クローニングのために、2μlの促進剤で処理したPCR産物を100ngのEsp3I消化ベクターおよび2μlの5X注入酵素(Clontech)と混合した。注入反応は、96ウェルPCRプレート形式で行った。PCRマシンでプレートを50℃で15分間インキュベートし、Stellaコンピテントセルを、振盪することなく42℃で40秒間ヒートショックにより形質転換し、選択抗生物質を有するLB寒天プレート上に撒き、37℃で終夜インキュベートした。翌日、コロニーを、LB/カルベニシリン培地を含む96ウェルの深底ウェルプレートに採取し、37℃で終夜増殖させた。等体積の30%重量/体積グリセロールと混合した終夜培養物から凍結ストックを作製した。配列決定プライマーSPF0052を使用してV領域を配列決定した。配列を解析して、ハイブリドーマvHおよびvL当たり1つの陽性ウェルを選択し、新しいプレートに再配置して、アンピシリンを含む富化培地中で終夜増殖させた。次いで、96ウェルプレート中、小規模トランスフェクションのためにクローンをミニプレップDNA調製した。
【0153】
重鎖および軽鎖の両方について48個の選択されたマウスハイブリドーマ配列は、インターナルソフトウエアプログラムを使用して適合させたヒトフレームワークであった。マウスvHまたはvLのそれぞれ1つについて、1つのヒトフレームワークを選択した。逆翻訳によりV領域DNA配列を得た。HFAアミノ酸配列に対応する合成DNA領域は、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)に注文した。予め切断したvDR149およびvDR157、ヒトIgG1およびヒトカッパそれぞれにクローニングした。Qiagen Endo-free Maxi-prepキットを使用してDNAを調製した。Expi293(100ml)培養物を使用してこの抗体パネルを発現させた。
【0154】
実施例5:インビトロにおけるヒトVISTA-IG T細胞抑制アッセイのためのプロトコル
マウスA20細胞に、GFPまたはヒトVISTAのいずれかを安定にトランスフェクトした。それらをovaペプチドおよびDO11.10 T細胞とインキュベートした。インキュベーションの開始から24時間後、T細胞によるCD25の発現を測定した。A20-huVISTA細胞は、T細胞によるCD25発現を抑制するが、この読み出しは、この読み出しはVSTB95と共にインキュベートすることにより大きく回復する(
図18)。
【0155】
実施例6:抗VISTA抗体のヒトフレームワーク領域の適合
重鎖および軽鎖の両方のマウスハイブリドーマ配列は、インターナルソフトウエアプログラムを使用してCDR移植(Jones、et al.Nature,321:522-525(1986)により適合されたヒトフレームワークであった。このプログラムは、Kabatの定義(Wu、T.T.& Kabat,E.A.(1970).J Exp Med,132,211-50)に従ってV領域配列の相補性決定領域(CDR)を表し、Blastを使用してフレームワーク領域とヒト生殖細胞系遺伝子を比較する。マウスフレームワークに対して最も高い配列同一性を有するヒト生殖細胞系を、ヒトフレームワーク適合(HFA)のためのアクセプター遺伝子として選択した。いくつかの場合では、ヒトフレームワークが良好に発現した以前の実験に基づいて、密接に関連のあるヒト生殖細胞系遺伝子を代わりに選択した。マウスvHまたはvLのV領域のそれぞれについて選択したヒトフレームワークについてのDNA配列を逆翻訳により得た。HFAアミノ酸配列に対応する合成DNA領域は、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)に注文した。ヒトIgG1およびヒトカッパのそれぞれへのクローニングを行った。
【0156】
実施例7:抗VISTA抗体コンストラクト
細胞株開発用分子のためのプラスミドおよび配列情報:VSTB112可変領域、およびIgG1κ定常領域(VSTB174、定常領域中のアロタイプ変化のために新しい番号)、IgG2シグマ定常領域(VSTB140)またはIgG1プロテアーゼ耐性定常領域(VSTB149)を有する抗VISTA抗体のためにプラスミドコンストラクトを作製した。
【0157】
Lonzaベクター
pEE6.4およびpEE12.4チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)発現ベクター系(Lonza Biologics、PLC)は、哺乳動物発現細胞株における治療用mAb作製のための一次発現系としてBiologics Research(BR)およびPharmaceutical Development & Manufacturing Sciences(PDMS)で確立された。各ベクターは、重鎖(HC)または軽鎖(LC)の発現を駆動するヒトサイトメガロウイルス(huCMV-MIE)プロモーターを含み、アンピシリン耐性遺伝子を含む。pEE12.4ベクターはまた、グルタミンシンテターゼ(GS)酵素をコードする遺伝子を含む。グルタミンシンテターゼ活性を必要とする増殖条件は、発現ベクターを維持するために、細胞に選択的な圧力を加える(GS Gene Expression System Manual Version4.0)。一遺伝子ベクターとして、pEE6.4を使用してHC遺伝子をクローニングし、pEE12.4を使用してLC遺伝子をクローニングした。これらの2つのLonza一遺伝子ベクターからLonza二重遺伝子プラスミドが作製される。
【0158】
選択VISTA mAbの重鎖可変領域のアミノ酸配列
>VSTB112重鎖(配列番号37)
【化1】
>VSTB50重鎖(配列番号38)
【化2】
>VSTB53重鎖(配列番号39)
【化3】
>VSTB95重鎖(配列番号40)
【化4】
【0159】
選択VISTA mAbの軽鎖可変領域のアミノ酸配列
>VSTB50軽鎖(配列番号41)
【化5】
>VSTB53軽鎖(配列番号42)
【化6】
>VSTB95軽鎖(配列番号43)
【化7】
>VSTB112軽鎖(配列番号44)
【化8】
>VSTB116軽鎖(配列番号45)
【化9】
【0160】
実施例8:抗VISTA抗体のELISAおよびFACSスクリーニング
これらの実験は、産生された抗体のヒトまたはカニクイザルVISTAタンパク質に対する結合能をELISAにおいて測定するため、および、FACSスクリーニングにより、その抗体の、ヒトまたはカニクイザルVISTAタンパク質を発現するK562細胞(ヒト骨髄性白血病細胞株)の表面のVISTAタンパク質に対する結合能を測定するために行われた。
【0161】
方法:
ELISA手順概要:プレートに、終夜、4℃で、1μg/mlのSB0361(ヒト)またはSB0361(cyno(カニクイザル))タンパク質をコーティングした。それらはそれぞれの種からのVISTAの細胞外ドメインである。抗体を出発濃度として1μg/mlに希釈し、計4種の濃度に1:4の段階希釈を行い、室温室温(RT)で2時間インキュベートした。マウス抗ヒトIgG1-HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を検出のために使用し、RTで1時間インキュベートした。洗浄は全て、PBS-Tween(0.05%)を用いて行った。
【0162】
FACS手順概要:2×105個のK562-G8(ヒト)またはK562-C7(cyno)細胞を、5μg/mlの各試験抗体で染色し、4℃で30分間インキュベートした。ヤギ抗ヒトIgG1-PE(フィコエリスリン)抗体を、二次検出抗体として5μg/mlで使用した。細胞をBD Fortessaにかけ、FlowJoソフトウエア(Tree Star、Inc.、Ashlang、OR)を用いて、生きた集団のMFI(平均蛍光強度)で解析した。
【0163】
データ解析/結果:各抗体について、ELISAおよびFACS解析の両方で、抗体が確実に結合したか否かに関する主観的スコア(イエス/ノー)を、4アッセイのそれぞれで示した。抗体がいずれかのアッセイで結合に対し「ノー」という結果を示したなら、それがネガティブであることを確認することを繰り返した。結果を、下の表7と、
図19A~19Fおよび20A~20Fに示す。
【0164】
【0165】
【0166】
実施例9:混合リンパ球反応(MLR)およびブドウ球菌(STAPHYLOCOCCUS)エンテロトキシンB(SEB)活性化アッセイを使用した抗ヒトVISTA抗体のスクリーニング結果
この試験の目的は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイおよびブドウ球菌(staphylococcus)エンテロトキシンB活性化(SEB)アッセイにおいて細胞性免疫応答を高める多機能的α-VISTA抗体の同定を支援するデータを示すことであった。
【0167】
混合リンパ球反応(MLR)は、同種異系T細胞応答を駆動するのにミスマッチなMHCクラスIおよびIIに依存する標準的な免疫学的アッセイである。末梢血単核細胞を2つのミスマッチの個体から単離して、一緒にインキュベートし、これらのミスマッチの結果として増殖およびサイトカイン産生が起こる。
【0168】
材料と方法:
500mlのRPMIを、50mlのヒトAB血清、5mlのペニシリン/ストレプトマイシン(10,000U/ml)、5mlのL-グルタミン(100×)および10mlのHEPES(1M)と合わせて10%AB培地を調製した。培地は14日を超えない日数保存した。0.2mlのチミジンストック(1mCi/ml)を9.8mlのRPMIで希釈して、1mCiの力価のチミジンを調製した。
【0169】
可溶性VISTA抗体を10%AB血清培地中で20μg/mlに希釈した。100μlの適切な抗体溶液を96ウェルU底プレート(Falcon product#353077または同等物)の適切なウェルに加えた。種々の細胞集団を添加した後、最終濃度は10μg/mlであった。
【0170】
白血球の単離:ドナーは少なくとも18歳で、概ね健康であり、地域個体群から無作為に選択した。単離チューブから50mlコニカルチューブにドナーの血液を移した。25mlの血液当たり15mlのFicoll 1077を、血液と混合しないように注意して下層に位置させた。室温で、細胞を1250Gで25分間中断せずに遠心分離した。Ficollと血清の界面で白血球を単離し、40mlのハンクス平衡塩溶液(HBSS)に加えて希釈した。細胞を、4℃で10分間、453G(1500rpm)で遠心分離した。細胞を50mlのHBSSに再懸濁させ、500μlの別のチューブに移して計数した。
【0171】
混合リンパ球反応(MLR)96ウェルプレートの設定:分析する試料の数に基づいて、アッセイに必要な「刺激細胞」および「応答細胞」の適切な数を決定した。96ウェルU底プレートに、刺激個体群は0.5×105細胞/ウェルで播種し、応答個体群は1.0×105細胞/ウェルで播種する。全ての条件は3回実施しなければならない。適切な数の「刺激細胞」を新しいコニカルチューブにピペッティングし、前述のように遠心分離した。細胞を10mlに再懸濁し、4000radで照射した。細胞を前述のように遠心分離し、10%AB血清培地に1×106/mlの濃度で再懸濁させ、50μlを適切なウェルに加えた。必要な数の応答細胞を単離し、前述のように遠心分離し、10%AB血清培地に2×106/mlの濃度で再懸濁させ、50μlを適切なウェルに加えた。細胞を37℃、5%CO2で5日間インキュベートした。5日目に、インターフェロンガンマ(IFN-γ産生の分析のために、30μlの上清を除去した。5日目に、40μCi/mlの力価のチミジン溶液25μlを各ウェルに添加し、37℃、5%CO2で8時間インキュベートした。製造業者の使用説明書により、細胞を96ウェルマイクロシンチレーションプレートに移した。製造業者に使用説明書により、マイクロシンチレーション計数器を使用して計数した。IFN-γ濃度を、製造業者のプロトコルを使用して、ELISA(eBioscience カタログ番号88-7316-88)により測定した。
【0172】
データ解析:未処理のウェルについて、1分当たりの平均カウント数(CPM)またはIFN-γ濃度を計算した。各試験群の平均CPMまたはIFN-γを計算した。データセットをLog10変換した。それぞれの化合物について、12MLR倍のスコアを使用して、それぞれの化合物の12試験群のセットについての平均を計算した。12試験の平均スコア=Σ[(log10(試験化合物についての3回の平均CPM))-(log10(未処理についての3回の平均CPM))]/12
【0173】
許容基準:アッセイを行う前に、全ての試験試薬および適切な対照をエンドトキシンについて試験し、それらは<0.1EU/mgのレベルを有した。応答細胞は単独では、平均で700CPM未満のCPMカウントを有し、単独でインキュベートしたときに、細胞が休眠状態にあったことが示された。MLR群についてのCPMは、単独でインキュベートした応答細胞のCPMよりも少なくとも2倍高く、反応が起こったことおよびドナーがミスマッチであったことが示された。全てのMLRアッセイは、ヒトIgG1陰性対照タンパク質を含んだ。ヒトIgG1陰性対照の結果は、スチューデントt検定の使用に基づいて、未処理試料とは統計的に異ならなかった。
【0174】
MLRにおける抗VISTA抗体のスクリーニング:全ての化合物の最初のスクリーニング。抗VISTA抗体を用いたMLRを行う前に、抗体が、FACS分析により細胞結合VISTAに、またELISAによりVISTAタンパク質に共に結合することを確認した。抗体S26(VSTB77)、S30(VSTB86)、S31(VSTB88)、S32(VSTB90)およびS39(VSTB74)は、この最初のスクリーニングに失敗したが、アッセイにおいて依然試験中である。最初のスクリーニングの目的で、全ての抗体を、増殖を伴うMLR中10μg/mlで試験し、IFN-γが測定されたパラメータであった(
図21A~21Dおよび22A~22B)。
【0175】
6個の誘導抗体の選択。最初のスクリーニングから、さらなる分析のために6個の候補:VSTB112(S2)、VSTB116(S5)、VSTB95(S16)、VSTB50(S41)、VSTB53(S43)およびVSTB60(S47)を選択した。
【0176】
MLRにおける上位6個の候補の希釈試験:プロトコルの調整。プロトコルは前述のものと同じであり、抗体が以下の濃度に希釈されるように調整した:30、10、3、1、0.3、0.1、0.03、0.01および0μg/ml。
【0177】
IC50値の決定:元のCPM数およびIFN-γ濃度を使用して、各抗体のIC50を決定した。IC50の計算は、プログラム「EZ-R stats」を使用して決定した。6個の個々の応答体を使用してIC50値を決定した。誘導候補の用量力価を有するMLRにおける個々のCPM数およびIFN-γ濃度。
【0178】
【0179】
結論:最初のスクリーニングは、複数のVISTA特異的抗体がMLR細胞性免疫応答を高め得ることを示した。次いで、有効性および変動に基づいて抗体をランク付けし、これらの結果に基づいて、VSTB112、VSTB116、VSTB95、VSTB50、VSTB53およびVSTB60を選択して、用量-力価実験で評価した。VSTB60は、用量-力価実験において、他の5種の抗体よりも弱い応答を誘発した。
【0180】
ブドウ球菌(staphylococcus)エンテロトキシンB(SEB)活性化アッセイ:SEBは、特異的なVβ+T細胞の活性化を誘発する細菌性の超抗原である。末梢血単核細胞を単離して、培養下でSEB抗原とインキュベートすると、強いサイトカイン産生が誘発される。このアッセイは、5個の誘導候補に対して行った。
【0181】
10%AB培地の調製、1mCi力価チミジンの調製、可溶性VISTA抗体の調製、および白血球細胞の単離は全てMLRにおいて上述の通りに行った。
【0182】
SEB96ウェルプレートの設定:分析する試料の数に基づいて、アッセイに必要な応答細胞の適切な数を決定した。96ウェルU底プレートに2.0×105細胞/ウェルで応答個体群を播種する。全ての条件は3回行わなければならない。前述のように細胞を遠心分離し、10%AB血清培地に4×106/mlの濃度で再懸濁し、50μlを適切なウェルに加えた。40ng/mlの濃度でSEB抗原を含有する10%AB血清培地50μlを添加した。記載の実験において、SEBは、Sigma Aldrichから入手した(カタログ番号S0812)。ウェル中の最終濃度は10ng/mlであった。細胞を37℃、5%CO2で3日間インキュベートした。3日目に、IFN-γ産生の分析のために、30μlの上清を除去した。1mCi/ml力価のチミジン溶液25μlを各ウェルに添加し、37℃、5%CO2で8時間インキュベートした。製造業者の使用説明書により、細胞を96ウェルマイクロシンチレーションプレーに移した。マイクロシンチレーション計測器を使用して、製造業者の使用説明書により計測を行った。IFN-γ濃度を、製造業者のプロトコルを使用して、ELISA(eBioscience カタログ番号88-7316-88)により測定した。
【0183】
プロトコル:データ解析。それぞれの抗体について、全ての濃度で、1分当たりの平均カウント数(CPM)またはIFN-γ濃度を計算した。許容基準を前述のように行った。記載のようにIC50値を決定した。誘導候補の用量力価を有するSEBアッセイにおける個々のCPM数およびIFN-γ濃度。
【0184】
【0185】
結論:SEBアッセイにおいて、VISTA特異的抗体は、用量依存的にサイトカイン産生および増殖を高めた。SEB試験によるIC50値は一般に、MLR希釈試験の結果に類似していた。
【0186】
実施例10:エピトープビニングアッセイ
方法:ProteOn XPR36系(BioRad)を使用して、エピトープビニングを行った。アミンカップリング化学(BioRad、カタログ番号176-2410)についての製造業者の使用説明書を使用して、ProteOn GLCチップ(BioRad、カタログ番号176-5011)を2組の6個のモノクローナル抗体(mAb)でコーティングした。
【0187】
過剰(250nM終濃度)な競合mAbを、ヒトVISTA(終濃度25nM)と、室温で4時間予備インキュベートして、コーティングmAbのパネルでコーティングしたチップ上で同時に6個を、4分の結合時間で走らせ、5分間解離させた。それぞれの施行の後、100mMリン酸でチップを再生させた。
【0188】
データ分析は、リガンドによる全てのセンサーグラムのグループ分け、およびXおよびY軸整列および人為的影響の除去を自動で行う整列ウィザードの適用を含んだ。次いで、データにスポット間補正を適用した。
【0189】
非競合性mAbは、A1シグナル(ヒトVISTAのみに結合)と同じかまたはそれより大きい結合シグナルを有するものと定義した。
【0190】
競合性mAbは、A1シグナル(すなわち、ヒトVISTAのみに結合)よりはるかに小さい結合シグナルを有するものと定義した。
【0191】
結果:
図23に示される例示センサーグラムにおいて、VSTB85抗体をProteon SPRチップにコーティングし、指定の競合剤を用いて予備インキュベートしたVISTAタンパク質を、チップ上に走らせた。VISTA/VSTB50複合体を走らせた場合に陽性の応答が見られたので、VSTB50は非競合性抗体の例である。VISTAと複合化したGG8、VSTB49およびVSTB51は、チップ上にコーティングされたVSTB85に結合せず、そのためVISTA上のVSTB85と同じ結合部位に対して競合すると分類された。
【0192】
【0193】
【0194】
実施例11:PROTEONアフィニティ決定
抗IgG Fcコーティング表面を使用して、ProteOnチップ上で抗体を捕捉した。0.39nM~100nMの範囲のVISTAタンパク質の濃度でのヒトおよびカニクイザル(cyno)VISTA細胞外ドメイン(ECD)の結合について、抗体を試験した。抗原を、抗体コーティングチップに4分間結合させ、その後、解離を30分間モニタリングした。100mMリン酸による18秒間の2回の処理でチップを再生させた。全ての実験を25℃で行い、データを1:1ラングミュア結合モデルに適合させた。
【0195】
実施例12:MB49マウス膀胱腫瘍モデルにおける抗VISTA処理の効果
方法:
C57Bl/6マウスにMB49腫瘍細胞を注入した。腫瘍が確立されたところで、抗VISTA処理を開始した。その後、腫瘍増殖を1週間に3回モニタリングした。腫瘍が任意の寸法で15mmに達したところでIACUC規則に従ってマウスを安楽死させた。
【0196】
それぞれの実験で、MB49細胞の凍結バイアルを解凍し、10%血清およびペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を加えたRPMI 1640(+L-Glut)中で増殖させた。培養の3日後、StemPro Accutaseを使用して細胞を回収し、5×106細胞/mlの濃度でRPMIに再懸濁してマウス1匹当たり50μlを注入した。
【0197】
6~8週齢の雌C57Bl/6マウスをアメリカ国立癌研究所(National Cancer Institute)から購入した。到着した際に、マウスを1日間順化させ、その後、右脇腹の毛を剃り、尾に入れ墨をした。次いで、3~5日後にマウスに注入した。
【0198】
腫瘍注入(皮内):マウスの毛を剃った脇腹に、50μlのMB49細胞懸濁物(約250,000細胞)を皮内(i.d.)注入した。
【0199】
腫瘍増殖のモニタリング:最初に広い寸法(L)、次いで最初の測定に対して90°の角度(W)を横切る電気毛細管を使用して、腫瘍の増殖を測定した。腫瘍体積を次のようにして得た:
体積=(L2
*W2)/2
【0200】
腫瘍の直径が約5mm(体積約60mm3)に達したところで、腫瘍が確立されたとみなした。確立されたところで、治療を開始した。治療の間、実験が終了するまで、1週間に3回、腫瘍の増殖を測定した。
【0201】
抗VISTA治療:キメラ化13F3-mIgG2aモノクローナル抗体を10mg/kgで腹腔内注射した。注射スケジュールは、4週間にわたり毎週3回とした。
【0202】
マウスの安楽死:IACUC要件に従い、腫瘍が最も長い寸法で15mmに達した際に動物を安楽死させた。
【0203】
有効性の分析:データ管理のためにエクセル、およびグラフ化のためにGraphPad Prismを使用してマウス腫瘍体積を分析した。R統計学的コンピューターソフトウェアについてマクロを使用して統計学的分析を行った。
【0204】
【0205】
結果:
雌マウスにおけるCh13F3-mIgG2a治療により、70%の動物で完全な腫瘍拒絶(CR)に至り、30%(n=7)で部分寛解(PR)に至った(表13および
図25B)。対照的に、全ての対照mIgG2a処理マウスは、腫瘍の進行性増殖を示した(6/6)(
図25A)。これらのデータは、抗VISTA処理が腫瘍増殖に大きな効果を有し得ることを示している。
【0206】
【0207】
ヒトVISTA配列を
図26および27に示す(Wang et al.,2011、上記、による。この文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0208】
実施例13:水素/重水素(H/D)交換試験を使用した抗VISTA抗体のエピトープマッピング
ヒトVISTA上のVSTB50、60、95および112についてのエピトープを同定するために、対応するFabを使用して、溶液水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)を行った。H/D交換について、Fab摂動(perturbation)を分析するために使用した手順は、いくつかの変更を有して前述のもの(Hamuro et al.,J.Biomol.Techniques 14:171-182,2003;Horn et al.,Biochemistry 45:8488-8498,2006)と同様であった。Pierce Fab Preparation Kit(Thermo Scientific、カタログ番号44985)を使用して、パパイン消化およびプロテインA捕捉によりIgGからFabを調製した。ヒトVISTAタンパク質配列は、6個のN結合グリコシル化部位を含む。配列カバー率を向上させるために、PNGase Fによりタンパク質を脱グリコシル化した。脱グリコシル化VISTAタンパク質を、重水素化水溶液中で所定時間インキュベートして、交換可能水素原子に重水素取り込みを生じた。重水素化VISTAタンパク質を、4℃で30秒、2分、10分および60分の間、46μLの酸化重水素(D2O)中で、VSTB50、VSTB60、VSTB95またはVSTB112のFabと複合体化した。低pHにより交換反応を停止させ、ペプシンでタンパク質を消化した。同定されたペプチドでの重水素レベルを、LC-MSの質量シフトからモニタリングした。参照対照として、Fab分子と複合体化しないこと以外は、VISTAタンパク質を同様に処理した。Fabに結合した領域は、交換から比較的保護され、そのため参照VISTAタンパク質よりも多くの重水素の画分を含む部位であると推測された。タンパク質の約94%を、特定のペプチドにマッピングし得た。
【0209】
VISTAとVSTB50/VSTB60、およびVSTB95/VSTB112の溶液HDX-MS摂動マップを
図28の上および下にそれぞれ示す。2つのエピトープ群を同定した。抗VISTA VSTB50はVSTB60と同じエピトープを認識し、VSTB95は、VISTA上でVSTB112とは別のエピトープに結合する。抗VISTA VSTB50および60は、断片
103NLTLLDSGL
111(配列番号62)および
136VQTGKDAPSNC
146(配列番号63)を含む同じエピトープを共有する(
図28、上)。抗VISTA VSTB95および112は、断片
27PVDKGHDVTF
36(配列番号75)および
54RRPIRDLTFQDL
65(配列番号:65)を含む同様のエピトープを標的すると思われる(
図28、下)。残基39~52および118~134を含むVSTB95および112による弱い摂動を示す2つの他の断片がある。しかしながら、減少のレベルは、差動マップにおける以前の領域(27~36および54~65)ほど強くはない。VSTB95および112による強い摂動を示す1つのペプチド
100TMR
102がVISTA表面の他の面に位置するが、これはエピトープ領域27~36および54~65とは離れている。この摂動はアロステリック効果のためであり得る。これらのHDX-MSの結果は、抗VISTA抗体についてのペプチドレベルでのエピトープを提供する。これら2つのエピトープ群についてエピトープ領域の重複はなかった。これらの結果は、互いに競合しない以前の競合ビニングデータと一致する。
【0210】
実施例14:タンパク質結晶学によるヒトVISTA ECD:VSTB112 FAB複合体の構造決定
VISTA構造を決定して、VISTA細胞外ドメイン(ECD)と誘導抗体VSTB112のFabフラグメントの間の相互作用を規定するエピトープおよびパラトープを示す努力において、複合体を結晶化し、1.85Åの解像度まで構造を決定した。抗体VSTB112のFabフラグメントと複合体化したヒトVISTAのECDの構造は、VISTA ECD自身の構造の決定と、この相互作用のためのエピトープ/パラトープの規定に共に努力する中で決定された。この構造は、VISTAが、IgV折りたたみにTCR Vα鎖と同様の鎖トポロジーを適用することを明らかにする。βサンドイッチの背面および前面のB鎖とF鎖を架橋する標準的なジスルフィド結合に加えて、該構造により、ECDが、2つのさらなるジスルフィド結合を有し、その1つがCC’ループを前面シートにつなぎ、第2のものがA’鎖とG’鎖の間にあることが明らかになる。VISTA分子間に結晶接触が存在するが、それらは小さなものであり、この構造に基づくVISTA ECDの二量体についての証明はない。VSTB112エピトープは、VISTA BC、CC’およびFGループと最も近い前面ベータシート(C’CFG)の残基と共に、これらのループの一部を含むことが示される。パラトープは、接触を最小にするCDR L3との重鎖相互作用に対して大きく偏る。
【0211】
VISTA:VSTB112相互作用を規定するエピトープ/パラトープ
VSTB112 Fabは、VISTA ECDへの結合の際に1024.3Å2の表面積が埋まり、重鎖表面の埋没はこの合計の715.3Å2となる。VISTAとVSTB112軽鎖の間に7個の水素結合および4個の塩の架橋相互作用が形成され、VISTAとVSTB112重鎖の間に10個の水素と2個の塩の架橋相互作用が形成される。VSTB112は、FGループの近位の末端で前面シート鎖C’、C、FおよびG中の残基、ならびにBC、FGおよびCC’ループ中の残基を認識する(
図29および30)。CC’ループとの相互作用は、さらなる軽鎖相互作用を作製するFGループ中の残基E125およびR127のみを有するFab軽鎖との接触のほとんどの原因となる。VISTA FGループに対応する残基119~127は、VSTB112との結合時に埋まる合計1034.8Å2の表面積の38%になる。特に、このループは極性が高く、次の配列-IRHHHSEHR-(配列番号76)から構成される。さらに、VSTB112 CDR H3中のW103は、VISTAの主鎖の残基H122およびH123を正確に包み、VISTA H121は、CDR H2中のF55の芳香族環との相互作用の端を形成する。
【0212】
結晶学およびHDXにより同定されたエピトープ領域の比較を
図31に示す。
【0213】
実施例15:抗VISTA抗体によるT細胞および単球の活性化
抗VISTA抗体の機能的効果を2つのインビトロアッセイ、混合白血球反応(MLR)およびSEB(スタフィロコッカス(Staphylococcus)エンテロトキシンB)で評価した。両アッセイは、T細胞増殖およびサイトカイン誘導を一次読み出しとして測定するが、これらの効果は異なるメカニズムによる。MLRにおいて、異なる2人のヒトドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を一緒にインキュベートし、1人のドナーのT細胞と他方のドナーの樹状細胞間の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の不適合は、T細胞の増殖およびインターフェロン(IFNγ)産生をもたらす。SEBアッセイでは、単一ドナーからのPBMCを細菌性超抗原と共にインキュベートする。これは、抗原提示細胞(APC)表面のMHC Class IIタンパク質をT細胞のT細胞受容体(TCR)に直接結合させ、T細胞の活性化、増殖、およびサイトカイン分泌を引き起こす。両アッセイにおいて、VSTB174の親分子であるVSTB112は、T細胞増殖およびサイトカイン産生の用量依存的誘導を示し、候補の中で最も強力であった(
図21A~21D、表12)。
【0214】
【0215】
単球活性化アッセイ
表12に示したアッセイデータは、VSTB174の親分子であるVSTB112で生成された。VSTB174の活性をより理解するために、単球活性化アッセイを行った。結果は、全PBMCと共にVSTB174をインキュベートすると、CD14+単球上の活性化マーカー(CD80およびHLA-DR)の上方制御を誘導し、VISTAを高レベルで発現すると知られている免疫細胞サブセットに結合する抗体の効果を示すことを示した(
図32)。他の問題は、全PBMCにおける単球活性化に対する作用が、VISTAに結合し、IgG1 Fcを有する抗体によって促進されるか否かである。抗体VSTB103およびVSTB63は、VSTB112およびVSTB111と同様、VISTAに高アフィニティ(それぞれ、KD6.36E-10および8.30E-10)で結合し、かつVISTAタンパク質を発現する細胞に結合する。VSTB103はVSTB112と同じエピトープ・ビンにあり、一方、VSTB63は異なるエピトープ・ビンにあり、抗体はいずれも単球活性化を促進しない。総合すると、これらの結果は、VSTB174がT細胞活性化/増殖に影響を及ぼし得るメカニズムの1つは、NK細胞によって促進される単球活性化によるものであることを示している。
【0216】
培地の調製
500mlのRPMI 1640(Corning、10-040-CV)を50mlのヒトAB血清(Valley Biomedical、Inc、ロット番号3C0405)、5mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、17-602E)10,000U/ml、5mlのL-グルタミンglutamine(100×)(Gibco、25030-081)および10mlのHEPES(1M)(Fisher BP299-100、ロット番号-1)と混合した。培地を4℃で、14日を超えない日数保存した。
【0217】
可溶性VISTAおよび対照抗体の調製
抗体を10%AB血清で2×所望の濃度に希釈した:VSTB174:lot VSTB174.003
【0218】
96ウェルU底プレート(Falcon、353077)の適切なウェルに100μlの適切な抗体溶液を加えた。種々の細胞集団を100μlに加え、各抗体の最終濃度を1、0.1または0.01g/mlとした。IgG1対照抗体CNTO 3930(Lot 6405、ENDO<0.1EU/mg)を最終濃度1μg/mlで加えた。
【0219】
PBMCを単離した。
【0220】
ドナーは、少なくとも18歳で、概ね健康であり、地域個体群から無作為に選択した。
【0221】
ドナーの血液を、単離チューブから50mlコニカルチューブに移した。
【0222】
15mlのFicoll 1077(SIGMA、10771)を、血液と混合しないように注意しながら、下層に位置させた。これは血液25ml当たりであった。
【0223】
室温で、細胞を1250Gで25分間中断せずに遠心分離した。
【0224】
Ficollと血清の界面で白血球を単離し、40mlのハンクス平衡塩溶液(HBSS)に加えて希釈した。
【0225】
細胞を4℃で10分間、453G(1500rpm)で遠心分離した。
【0226】
細胞を50mlのHBSSに再懸濁し、個別のエッペンドルフチューブに500lを移すことによってカウントした。
【0227】
さらに、Miltenyi製のPan Monocyte単離キットを製造会社の使用説明書(カタログ番号130-096-537)どおりに使用して、いくつかの処理群における陰性選択によってCD14+細胞を単離した。
【0228】
インビトロ培養手順
分析する試料の数に基づいて、アッセイに必要な細胞の適切な数を決定した。96ウェルU底プレートに2.0×105細胞/ウェルで応答個体群を播種した。CD14負の選択個体群は、0.5×105個の細胞を播種した。全ての条件を3回行った。
【0229】
細胞を上記のように遠心分離し、全PBMC個体群では、10%AB血清培地中に、2×106/mlの濃度に、CD14負の選択個体群では、0.5×106/mlの濃度に再懸濁し、試験抗体100lを適切なウェルに加え、各ウェルの全体積を200lとした。
【0230】
細胞を37℃、5%CO2で、1、2、または3日間インキュベートした。
【0231】
抗体染色およびフローサイトメトリー
96ウェルU底プレートを453Gで5分間遠心分離機にかけ、上清を除去した。
【0232】
細胞を200μlのPBSで洗浄し、工程5.5.1.と同様にして遠心分離機にかけた。
【0233】
上清を捨て、以下の抗体を含有する50μlのPBSに再懸濁した:
・CD14-APC(クローン HCD14)1:250(Biolegend カタログ番号325608)
・HLA-DR-PE Cy7(クローン L243)1:250(Biolegend カタログ番号307616)
・CD80-PE(クローン 2D10)1:250(Biolegend カタログ番号305208)
・Hu FcR結合阻害剤(eBioscience カタログ番号14-9161-73)
【0234】
暗所の濡れた氷上で20分間インキュベートした。
【0235】
150μlのPBSを加え、工程5.5.1.と同様にして遠心分離機にかけた。
【0236】
150lのPBS緩衝液を添加し、FACSにより分析した。
【0237】
試料をMiltenyi MACSQuant 10-パラメータ フローサイトメーターにかけ、FlowJo9.7.5を用いて、CD14+個体群上のHLA-DRおよびCD80の発現を分析した。幾何平均蛍光強度(MFI)、一連の数の中央傾向を決める統計値を、処理を比較する定義統計として使用した。
【0238】
統計解析
全ての統計をPrism GraphPad,version6で行った。多重性に対するテューキーの補正を含むOne-Way ANOVAを使用して、各タイムポイントで、グループ間の一対比較を行った。全ての検定および比較で、0.05未満のP値は、有意であると見なした。全てのグラフおよび表で、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0239】
実施例16:抗VISTA抗体のADCCおよびADCP活性
VSTB174はIgG1 Fcを有し、それは抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、および抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)活性を与え得る。両タイプのアッセイを行い、VSTB174は、K562-VISTA細胞を溶解または貪食する(
図33~34)が、K562骨髄腫細胞株親細胞はしないことがわかった(データは示さず)。VISTAの阻害作用を調節するVSTB174の作用のさらなるメカニズムは、VISTAを高レベルで発現する細胞の溶解または呑食であり、したがって、局所微少環境からそれらを除去する。
【0240】
実施例17:さらなる抗VISTA抗体のADCP活性
抗ヒトVISTA mAb(VSTB173およびVSTB174)によりVIATAを異所的に発現する細胞のマクロファージ媒介食作用増強の研究に、インビトロ食作用アッセイを使用した。これらのmAbを異なるFc骨格(IgG1 WT(野生型)、IgG1 PR(プロテアーゼ耐性)およびIgG2σ)にクローニングし、食作用の増強に関し異なる活性を持つ可能性があると仮定した。IgG1およびIgG1 PR骨格は、Fc受容体に結合することができ、ADCPを引き起こす可能性があるが、IgG2σは、Fc受容体に結合せず、ADCPを媒介しない。
【0241】
ADCPアッセイにおいて、K562親細胞およびK562-VISTA標的細胞を用いて抗VISTA抗体を試験した。
図35~36に示すように、VSTB174、VSTB149、VSTB173およびVSTB145は、K562-VISTA細胞のhMac食作用を増強した。Fc受容体に結合しなかったIgG2σ Fcを有するVISTA抗体、VSTB140またはVSTB132、予想どおり食作用を増強しなかった。IgG1 Fcを有するVISTA mAb、VSTB174およびVSTB173は、IgG1PR Fcを有するVSTB149およびVSTB145より、より強い食作用を示した(EC
50値を示す表13および14を参照)。
【0242】
【0243】
【0244】
VSTB174およびVSTB173は、最大濃度でもK562親細胞の食作用に対する増強は弱く(
図35~36)、これはK562細胞によるVISTAの発現が低いためであり得る。他の抗VISTA抗体はK562細胞の食作用を増強しなかった。
【0245】
K562-VISTA食作用アッセイにおいて、陰性対照抗体をそれぞれ2種類の濃度で試験したが、食作用は全く誘導されなかった。この結果は、抗VISTA抗体によって媒介される食作用が特異的で、K562-VISTA細胞によるVISTA抗原の発現によるものであることを示している。
【0246】
実施例18:さらなる抗VISTA抗体のADCC活性
ADCCを誘導するそれらの能力を試験するために、以下の3種のヒト抗VISTA抗体を試験した:
VSTB174(IgG1)
VSTB149(IgG1 PR)
VSTB174.LF(IgG1 LF(低フコース))。
【0247】
各抗体について、同じプレートで、6種の異なる濃度を、2回の個別の実験で、全6個のデータポインドで各3回試験した。
【0248】
VSTB174、VSTB149、およびVSTB174.LFはそれぞれ10、1、0.1および0.01μg/mLで、測定可能なADCC活性を示したが、0.001μg/mLでは、LF抗体のみが測定可能なADCC活性を示し、0.0001μg/mLでは抗体はいずれもADCCを示さなかった。これらの各抗体はIgG1またはIgG1変異Fcを有しており、この結果が予想される。LF抗体曲線のEC50値(0.002293μg/mL)が標準のIgG1抗体曲線(0.02381μg/mL)に比べて小さいことから明らかなように、LF抗体は、ADCC効力の増大を示した。IgG1 PR抗体曲線は、標準のIgG1曲線(0.01846μg/mL)に類似したEC50値を有した。
【0249】
【0250】
ヒトIgG1、ヒトIgG1 PRおよびヒトIgG1 LF抗体は全て、10、1、0.1および0.01μg/mL抗体濃度で、測定可能なADCC媒介性傷害を示したが、LF抗体のみが0.001μg/mL抗体濃度で傷害を示した。0.0001μg/mL抗体濃度では、抗VISTA抗体はいずれも傷害を示さなかった。
【0251】
EC50値から明らかなように、LF抗体は、標準のIgG1抗体またはIgG1 PR抗体の約10倍を超えるADCC傷害効果を示した。
【0252】
実施例19:VSTB174のヒトおよびカニクイザルVISTAに対するアフィニティ
ヒトおよびカニクイザルVISTA細胞外ドメイン(ECD)に対するVSTB174のアフィニティを、ProteOn装置を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)法によって測定した。VSTB174は各タンパク質に対して非常に類似したKD値を示した(ヒトVISTA ECDで1.56E-10MおよびカニクイザルVISTAで8.66E-11M)。
【0253】
実施例20:マウス腫瘍モデルにおいて、VISTA抗体は有効性を示す
マウス種、試薬および腫瘍モデル
インビボ試験では、C57Bl/6バックグラウンドと戻し交配したヒトVISTAノックイン(VISTA-KI)マウスを使用した。
【0254】
抗ヒトVISTA抗体を作製して、マウスFc IgG2aに移植したVSTB174可変領域(VSTB123)を使用したVISTA-KIマウスにおける試験が可能になった。
【0255】
VISTA KIマウスにおいて、MB49膀胱癌を評価した。
【0256】
抗VISTA抗体療法が野生型マウスにおいて腫瘍増殖を抑制することを示す公開された試験(Le Mercier et al.,2014)に加えて、異なる投与スケジュールを使用したwtマウス、およびVSTB123で治療したVISTA-KIマウスにおいて、代理ハムスター抗体による抗腫瘍の有効性が示された。
【0257】
VISTA-KIマウスのMB49腫瘍モデルにおけるインビボ有効性試験
雌VISTA-KIマウスにおいてMB49有効性試験を行い、1~10mg/kgの範囲のいくつかの用量でVSTB123を試験した。0日目に、マウスに250,000個のMB49腫瘍細胞を皮内注入した。6日目に、
図37に示すように投与を開始した(10mg/kgのアイソタイプ対照mIgG2a、または示した用量のVSTB123;10匹のマウス/群)。
【0258】
図37に示すように、VSTB123は、低用量に対して高用量でより有効であった。10mg/kgおよび7.5mg/kgの用量は同等であったが、5または1mg/kgで投与したマウスで腫瘍はより速く増殖した。
【0259】
実施例21:抗VISTA抗体を用いたヒト腫瘍におけるVISTA発現の検出
図1は、AML腫瘍細胞株によるVISTA発現を示し、これと、
図17のRNA seq発現データは、AML細胞によりVISTAが発現されるという考え、および抗VISTA薬物が、免疫調節または抗体媒介性傷害に対し、これらの細胞を直接標的にすることにより効果的であるという考えを支持する。
【0260】
肺癌においてVISTA発現を評価するためのデータは、外科的切除による肺腫瘍試料から得た。細胞を解離させ、VISTAおよび多くの他のマーカーの発現について特徴付けした。結果は、13/13肺腫瘍(扁平上皮癌または腺癌)がCD14+VISTA+骨髄細胞を含むことを示した(
図38)。
【0261】
実施例22:抗VISTA抗体を用いた肺腫瘍におけるVISTA発現の検出
クローンGG8、抗ヒトVISTAマウスIgG1を使用して、免疫組織化学アッセイを最適化した。このmAbを使用して、非小細胞肺癌(NSCLC)FFPE腫瘍切片におけるVISTAの染色を調べた。
【0262】
FFPE腫瘍切片を、標準的な抗原賦活化法により処理した後に染色した。GG8マウス抗ヒトVISTA抗体を1:500希釈で使用した。ウサギ抗マウスポリクローナル抗体、その後、抗ウサギポリマーHRPを使用して、GG8結合を検出した。続いて、ヘマトキシリンでの対比染色を行い、その後、腫瘍切片をスコアリングした。
【0263】
肺癌におけるVISTA発現は、免疫浸潤にほぼ限定され(
図39に示した例)、高レベルのVISTA陽性細胞は、多くの肺癌試料に存在した。
【0264】
実施例23:VSTB174のFABフラグメントと複合体化されたヒトVISTAの細胞外ドメイン(ECD)の構造
VISTA抗原変異体を作製して、結晶学のために精製した。組み換えhisタグ付加VSTB174 Fabを内部発現させて精製した。結晶を作製し、シンクロトロン照射を使用してVISTA ECD:VSTB174 Fab複合体についての高解像度データを集めるために使用し、相同性モデリングおよび電子密度分析を併用して、構造決定を解決した(
図29(上))。
【0265】
x線結晶学により、VISTA ECD:VSTB174 Fab複合体の構造を、1.85Åの解像度まで決定し、VISTA ECDの第1の構造を提供し、VSTB174エピトープおよびパラトープを示した。VISTA ECDは、IgV折りたたみにCTLA-4ECDと類似のトポロジーを採用するが、βサンドイッチの前面シートから伸長する特有のG’鎖を有する。A’およびG’は、A’鎖の残基C12とG’鎖の残基C146の間に形成されるジスルフィド架橋を介してさらに化学的に接続される。3つの分子内ジスルフィド結合に繋がれる6個のシステインが見られたが、結晶接触に基づけば、二量体化VISTAの証拠はない。
【0266】
VSTB174は、FGループの近位の末端で前面シート鎖C’、C、FおよびG中の残基、ならびにBC、FGおよびCC’ループ内の残基を認識する。
【0267】
実施例24:抗VISTA抗体による単球活性化はCD16(FcγRIII)架橋を必要とする
本研究は、培養下、単球を活性化する抗VISTA抗体の能力を評価するために設計された。単球活性化を、単球活性化の標準マーカーの表面発現の上方制御によって評価した:CD80、CD86、HLA-DRおよびPD-L1。VSTB174が活性なFcを有すると仮定して、抗VISTA媒介単球活性化におけるCD16および他のFc受容体の役割を調べた。特に、VSTB112(HuIgG1活性Fc)またはVSTB140(IgG2シグマサイレントFc)を用いて単球活性化を誘発し、抗VISTA媒介単球活性化を遮断する抗CD16、抗CD32、および抗CD64抗体の能力を調べた。可溶性Fcフラグメントもまた、Fc結合を非特異的にブロックするために、同アッセイにおいて使用した。
【0268】
PBMC(好中球を欠く)でのCD16発現は、通常、NK細胞および炎症性単球(CD14+/-、CD16+)に限定されている。抗VISTA誘導単球活性化におけるNK細胞の役割を決定するために、NK細胞を枯渇させた。さらに、単球活性化が可能な活性化NK細胞の主要産物であるIFN-γをブロックして、その個々の寄与を評価した。
【0269】
方法
培地の調製
全ての希釈および培養は、10%ヒトAB血清(Sigma-Aldrich、カタログ番号H5667)および1%Penn/Strep(Life Technologies;カタログ番号15140-122)を含有するRPMI(Life Technologies;カタログ番号11875-093)で行った。
【0270】
遮断抗体
抗CD16(Biolegend カタログ番号302050、クローン3G8)、抗CD32(BD カタログ番号552930、クローンFLI8.26)、および抗CD64(Biolegend カタログ番号305016、クローン10.1)を、示されるように、完全培地で20μg/mlに希釈した。インハウスブロック(in-house block)(IHB)もまた完全培地で8mg/mLに希釈した。
【0271】
50μlのこれらのストックを、示された各活性化/ブロッキング条件について、96ウェルプレート上に三連でプレートアウトした。抗体を含まない培地50μLを「非遮断対照」に使用した。
【0272】
細胞調製
示された各ドナー当たり2バイアルの凍結PBMC(HemaCare PB009C-1、10×106細胞/バイアル)を37℃の水浴で解凍し、完全培地で10mLに希釈し、1500RPMで5分間遠心分離した。
【0273】
希釈した凍結培地を含む培地を除去し、細胞を10mLの新鮮な培地で洗浄し、上記のように遠沈させた。この回転の前に、各試料について10μLの試料を保持した。
【0274】
試料をトリパンブルーで1:2に希釈し、CountessTM Automated Cell Counter(カタログ番号C10227)でカウントして、細胞数を決定した。細胞を完全培地に2×106細胞/mLの濃度で再懸濁した。この細胞調製物100μLを全ての実験ウェルに添加した。細胞/遮断抗体混合物含有プレートを37℃で15分間インキュベートした。
【0275】
活性化
VSTB112、VSTB140、およびHuIgG1アイソタイプ対照(11.76mg/mL)を全て完全培地で20μg/mLに希釈した。インキュベーション工程の完了後、50μLの活性化抗体ストックを、細胞および遮断試薬を含む適切なウェルに添加した。遮断抗体および活性化抗体の最終濃度は5μg/mLであった。IHBの最終濃度は2mg/mLであった。細胞を37℃で終夜(20時間)インキュベートした。
【0276】
分析
インキュベーション後、全ての実験プレートを1500RPMで5分間回転させた。培地150μLをピペッティングにより除去し、後の分析のために-80℃で保存した。150μLのFACS緩衝液(Becton Dickinson;カタログ番号554657)を各ウェルに添加し、ピペッティングにより混合し、試料を再び1500RPMで5分間回転させた。細胞を、2mg/mLのIHBを含む50uLのFACS緩衝液に再懸濁し、暗所において4℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、FACS緩衝液で希釈した50μLの以下の染色混合物を、全ての試料に添加した(全ての抗体を1:25に希釈した):CD14-APC(Biolegend、クローンHCD14);CD80-PE(Biolegend、クローンCD10);CD86-FITC(Biolegend、クローンIT2.2);HLA-DR-APCCy7(Biolegend、クローンL243);PD-L1-PeCy7(Biolegend、クローン29E2A3)。試料を暗所において4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、100μLのFACS緩衝液を各ウェルに添加し、プレートを1500RPMで5分間回転させた。細胞を上記のように1Xで洗浄し、最終的にAqua LIVE/DEAD(登録商標)(Life Technologies、カタログ番号L34957)を含む200μLのFACS緩衝液に製造業者の使用説明書に従って再懸濁した。試料をBD FACS CantoTMIIにかけ、FlowJo ver9.2で分析した。
【0277】
結果
培養完了後、生存CD14+細胞におけるCD80、CD86、HLA-DRおよびPD-L1の発現を分析した(
図40、PD-L1発現を示す)。HuIgG1アイソタイプ対照で処理したPBMC培養物中の単球と比較して、VSTB112で処理した培養物中の単球は、これらのマーカー各々のレベルを増加させた。この増加のレベルは、ドナーによって変化した(データは示さず)。VSTB140で処理した培養物中の単球は、活性化マーカーのレベルの上昇を示さず、活性なFc領域がその作用に必要であることを示した(
図40)。いくつかの場合において、さらに、培養物に競合結合インヒビターFcフラグメント(IHB)を加えると、VSTB112媒介活性化を弱め、いくつかの場合には、そして完全に無効にした。これらの受容体を遮断する抗体はVSTB112媒介単球活性化を遮断しなかったため、この作用はCD32またはCD64依存性ではなかった(データは示さず)。
【0278】
PBMC(好中球を欠く)でのCD16発現は、通常、NK細胞および炎症性単球(CD14+/-、CD16+)に限定されている。予備データは、抗VISTA抗体による単球のインビトロでの活性化におけるNK細胞の役割を同定した。NK細胞の枯渇またはIFNγ受容体の遮断は、抗VISTA誘導単球活性化の程度を大きく減少させ、NK細胞およびIFNγがいずれもインビトロでの抗VISTA媒介単球活性化に寄与することを示唆する(データは示さず)。
【0279】
要約すると、CD80、CD86、HLA-DR、およびPD-L1を単球活性化のマーカーとして用いて、VSTB112(抗体VSTB174の親分子)およびそのサイレントFc誘導体、VSTB140のPBMC培養における単球活性化能を、非特異的ヒトIgG1対照抗体(CNTO 3930)と比較した。全てのパラメータにより、単球はVSTB112により活性化され、VSTB140によっては活性化されなかった。VSTB140が活性化できず、可溶性FcフラグメントがVSTB112の活性化能力を部分的に消失させる能力を有することから、この活性はFc依存性であると思われる(
図40、PD-L1を単球活性化のマーカーとして示す)。さらに、この活性化は、これらの培養物中のNK細胞の存在、およびIFN-γの抗体誘導産生に依存した。というのも、インビトロ培養系からのこれらの成分のいずれかを除去すると単球活性化が顕著に弱められた(データは示さず)。本明細書に示すように、活性化のメカニズムは、VISTA結合抗体の非存在下でさえ、CD16を架橋する抗体の付加によって完全かつ確実に模倣され得るので、Fc受容体CD16の架橋に依存すると思われる。
【0280】
実施例25:抗VISTA抗体による腫瘍増殖阻害にはエフェクター機能が必要である
T細胞の負の調節因子であるVISTAは多くの造血細胞で発現し、腫瘍微小環境において高度に発現する(Le Mercier,et al.,Cancer Research 74(7):1933-44,2014)。腫瘍を有するマウスを抗マウスVISTA抗体によりインビボで処理すると、腫瘍増殖が大きく抑制される(Le Mercier,et al.)。
【0281】
この研究は、雄または雌のhVISTA KI(ノックイン)マウスにおける確立したMB49腫瘍の増殖に対する抗ヒトVISTA抗体VSTB123およびVSTB124の効果を調べるために実施した。これらのマウスは、マウスVISTA遺伝子の代わりにノックインされたヒトVISTA cDNAを有し、RNAおよびタンパク質レベルの両方でヒトVISTAのみを発現する。MB49腫瘍細胞は雄性H-Y抗原(Wasiuk et al.,Cancer Immunol Immunother 61:2273-82、2012)(雄性マウスにおいては自己抗原であるが、雌マウスにおいては外来抗原である)を発現する。腫瘍の直径が3~5mmに達したときに処理を開始した。抗VISTAまたは対照抗体を、10回の投与で10mg/kgおよび5mg/kgとなる量で、週3回投与した。実験の期間中、全てのマウス群を、腫瘍体積、生存、体重、および末梢血の免疫個体群の変化で評価した。薬物動態(PK)および抗薬物抗体(ADA)の発生も評価した。
【0282】
方法
試験計画
雄および雌hVISTA KIマウスにおいて、並行および同一の試験を行った。各性で、マウスを、10および5mg/kgのいずれかのVSTB123もしくはVSTB124、または10mg/kgのmIgG2a対照抗体でそれぞれ処理した6~7匹のマウスの5群に分けた。実験計画については
図41を参照されたい。
【0283】
細胞源および調製
MB49細胞をR.Noelle博士の研究室(元は、P.Matzinger博士から)から入手した。MB49細胞が、マイコプラズマ(mycoplasma)および他の汚染物質を含まないことを確認した(IDDEX RADIL ケース番号22209-2014におけるIMPACTTMSC試験)。1つの細胞バイアルを解凍し、10%FBSおよびpen/strep抗生物質を含むRPMI 1640(+L-Glut)中で増殖させた。培養3日後、細胞を、StemPro(登録商標)Accutase(登録商標)との短時間のインキュベーションによって回収し、2回洗浄し、5×106細胞/mlで冷RPMIに再懸濁した後、マウスに注入した。全ての培養試薬は、GibcoおよびHycloneから購入した。
【0284】
試験薬剤および用量
VSTB123およびVSTB124は、Janssenによって作製されたキメラ抗ヒトVISTA抗体である。各々はVSTB174由来の同じ抗ヒトVISTA可変領域を有するが、マウスIgG2a Fc(VSTB123)またはマウスIgG2a ala/alaサイレントFc(VSTB124)にクローニングされる。抗体およびmIgG2a(BioXcell BE0085、クローンC1.18.14 ロット番号5035/0514)対照をPBSで希釈し、0.2mlの容量で腹腔内注射により投与して、10または5mg/kgの投与量を送達した。
【0285】
マウス
hVISTA KIマウスをSage Labs(Boyertown、PA)で繁殖させた。8~12週齢のマウスを、最初に検疫施設で3週間経過させ、その後、通常の施設に移した。それらを2日間順化させ、その後、右脇腹の毛を剃り、尾に入れ墨をした。5日後、腫瘍細胞を注入した。
【0286】
細胞の皮内注入
【0287】
マウスの毛を剃った右脇腹に、50μlのMB49細胞懸濁物(約250,000細胞)を皮内注入した。注入が不十分となったマウス(注入部位からの漏出、または皮内注入の代わりに皮下注入)は全て実験から除外した。
【0288】
ランダム化、処理開始および腫瘍測定
腫瘍が3mm~5mmの直径に達した注入後4日目に、ほとんどの雄マウスにおいて腫瘍を測定した。ほとんどのマウスが測定または目視検査によって腫瘍増殖の証拠を示したという観察に基づいて、マウスを処理群に無作為に割り当てた。5日目に処理を開始した。処理期間中、実験が終了するまで、1週間に2~3回、腫瘍の増殖をモニタリングした。腫瘍体積の決定に、式(L×W2)/2を用いた(Lは長さまたは最長寸法であり、Wは腫瘍の幅である)。
【0289】
3回の連続測定で腫瘍が初期の体積の半分(またはサイズはより小さいが、13.5mm3以上)になったとき、部分寛解(PR)に達した。3回の連続測定でいずれかの腫瘍が13.5mm3未満になったとき、完全寛解に達した。
【0290】
結果
図42A(左)に示すように、10mg/kgのVSTB123で処理した雌マウスは、対照群と比較して腫瘍体積が大きく減少した。腫瘍増殖に対する効果は、3回の抗体投与後、早くも13日目に検出できた。さらに、各VSTB123処理群中に、完全で持続的な腫瘍退縮を示したマウスが存在した:10mg/kg群において5/7、および5mg/kg群において3/6。6匹の対照群のマウスはいずれも退縮しなかった(データは示さず)。
【0291】
VSTB124による処理では、いずれの投与量でも雌の腫瘍増殖を阻害しなかった(
図42A、右)。VSTB123はFc受容体に結合可能なマウスIgG2aを有するが、VSTB124はサイレントFcを有するので、この結果は、Fc結合がこのモデルにおける有効性にとって重要であることを示唆している。
【0292】
マウスの生存を52日間モニタリングした(
図42B)。雌マウスについては、6匹の対照動物のうち2匹が52日目に依然として生存していたため、生存比較はより困難であった。しかし、10mg/kgのVSTB123で処理したマウスは7/7が52日目に生存していたが(p=0.0108)、5mg/kgのVSTB123で処理したマウスは4/6がその日に依然として生存していた。VSTB124による雌マウスの処理では、生存は改善されなかった。
【0293】
本明細書に示すように、MB49腫瘍を有する雌hVISTA KIマウスのVSTB123による処理では、10mg/kgの群の85%(5/7のマウス)が完全寛解(CR)に達し、生存が大幅に増大し(p=0.0108);5mg/kgでのVSTB123による処理では、6匹のマウスのうち3匹がCRに達した(50%)。対照的に、VSTB124は、腫瘍の増殖または生存にさほど影響を及ぼさなかった。この結果は、VSTB123の結果と比較して、MB49モデルにおける抗VISTA抗体の有効性に活性FCを必要とし得ることを示唆している。
【0294】
実施例26:VSTB174はサイトカインの放出を誘発する
抗VISTA抗体は、CD80およびHLADRなどの共刺激マーカーの上方制御によって測定されるように、全PBMC培養物においてCD14+単球の活性化を誘導する。本研究は、抗VISTA抗体VSTB174と共に培養したヒトPBMC培養物におけるサイトカインの変化を、もしあれば、決定した。
【0295】
単球は、Ficoll密度遠心分離によって単離された末梢血の約10~30%に相当する先天性白血球である。単球は、それらが発現する共刺激タンパク質およびサイトカインのレベルに基づいて、炎症性応答および抗炎症性応答の両方において重要な役割を果たすことが示されている。抗VISTA抗体(例えば、VSTB174)は、CD80およびHLA-DRなどの細胞表面の共刺激マーカーの上方制御によって測定されるように、全PBMC培養物においてCD14+単球を活性化する。抗VISTA抗体処理がアッセイにおいてサイトカインの産生を変化させるか否かを決定するために、全PBMCをVSTB174で24時間処理し、上清をLuminex(登録商標)により41サイトカインの差次的発現について分析した。
【0296】
本明細書に示すように、抗ヒトVISTA抗体VSTB174の全PBMCとの培養は、インビトロでのヒトPBMCにおける多くのサイトカインの発現を大きく増大させた。
【0297】
方法
培地の調製
500mlのRPMI 1640(Corning、10-040-CV)を50mlのヒトAB血清(Valley Biomedical、Inc、ロット番号3C0405)、5mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、17-602E)10,000U/ml、5mlのL-グルタミンglutamine(100×)(Gibco、25030-081)および10mlのHEPES(1M)(Fisher BP299-100、ロット番号-1)と混合した。培地を4℃で、14日を超えない日数保存した。
【0298】
抗VISTA VSTB174および対照抗体の調製
抗体を10%AB血清培地で2×所望の濃度に希釈した。96ウェルU底プレート(Falcon、353077)の適切なウェルに、100μlの適切な抗体溶液を加えた。細胞を100μlに加え、各抗体の最終濃度を10、1、0.1または0.01μg/mlとした。IgG1対照抗体CNTO 3930(Lot 6405、ENDO<0.1EU/mg)を最終濃度10μg/mlで加えた。各条件を3回行った。
【0299】
PBMCの単離
ドナーは、少なくとも18歳で、概ね健康であり、地域個体群から無作為に選択した。3人のドナーが、この研究のためにPBMCを提供した。ドナーの血液を、単離チューブから50mlコニカルチューブに移した。15mlのFicoll 1077(SIGMA、10771)を、血液と混合しないように注意しながら、下層に位置させた。これは血液25ml当たりであった。室温で、細胞を1250Gで25分間中断せずに遠心分離した。Ficollと血清の界面で白血球を単離し、40mlのハンクス平衡塩溶液(HBSS)に加えて希釈した。細胞を4℃で10分間、453G(1500rpm)で遠心分離した。細胞を50mlのHBSSに再懸濁し、個別のエッペンドルフチューブに500μlを移すことによってカウントした。
【0300】
インビトロ培養手順
分析する試料の数に基づいて、アッセイに必要な細胞の適切な数を決定した。96ウェルU底プレートに2.0×105細胞/ウェルでPBMCを播種した。全ての条件を技術的三重反復で行った。
【0301】
細胞を4℃で10分間、453G(1500rpm)で遠心分離し、10%AB培地に2×106/mlの濃度で再懸濁し、適切なウェルに100μlを加え、各ウェルの全体積を200μlにした。細胞を37℃、5%CO2で、24時間インキュベートした。Luminex(登録商標)による分析のために、100μlの上清を回収した。
【0302】
多重分析
サイトカインを、Millipore Human cyto/chemo MAG Premix 41 Plexキット(カタログ番号 HCYTMAG-60K-PX41、EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)を用いて測定した。組換えサイトカイン標準からの較正曲線を、試料と同じマトリックス中で3倍希釈工程で調製した。高スパイクおよび低スパイク(刺激されたヒトPBMCおよび樹状細胞由来の上清)を、サイトカインリカバリーを決定するために含めた。標準および品質対照を技術的三重反復で測定し、各三重反復試験試料を1回測定し、ブランク値を全ての読み取り値から差し引いた。全てのアッセイを室温で96ウェルフィルタープレート(Millipore、Billerica、MA)において直接的に行い、光から保護した。簡潔に記せば、ウェルを、1%BSAを含有する100μlのPBSで予め湿潤させ、次いで、ビーズを、標準、試料、スパイク、またはブランクと一緒に、100μlの最終容量で添加し、そして室温で30分間、連続的に振盪しながら一緒にインキュベートした。ビーズを1%のBSAおよび0.05%のTween20を含有する100μlのPBSで3回洗浄した。ビオチン化抗体のカクテル(50μl/ウェル)をビーズに添加し、室温で30分間、連続的に振盪しながらインキュベートした。ビーズを3回洗浄し、次いでストレプトアビジン-PEを10分間添加した。ビーズを再び3回洗浄し、1%のBSAおよび0.05%のTween20を含有する125μlのPBSに再懸濁した。ビーズの蛍光強度を、Bio-Plex(登録商標)アレイリーダーを用いて測定した。5つのパラメトリック曲線フィッティングを有するBio-Plex(登録商標)Managerソフトウエアをデータ分析に使用した。
【0303】
統計解析
全ての統計をR統計コンピューティング言語で行った。検出を下回る(<OOR)サイトカイン濃度値を検出可能な最小濃度に再スケーリングし、正確な定量を上回る(>OOR)値を直線的に定量可能な最大濃度に再スケーリングした。統計解析の前に、統計的外れ値を、グラブスのp<0.05および群平均から1標準偏差より大きい外れ値距離に基づいて、単一ステップを用いて除去した。テューキーのHSD(Honest Significant Difference)を含むOne-Way ANOVAを使用して、各タイムポイントで、グループ間の一対比較を行った。全ての検定および比較で、0.05未満のP値は、有意であると見なした。全てのグラフおよび表で、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図43は、Rのgplotsパッケージのheatmap.2関数を用いて、サイトカインの完全な階層的クラスタリングにより作成された。
【0304】
結果
全PBMCに対する抗VISTA抗体の効果を決定するために、VSTB174を種々の濃度で24時間、細胞培養物に添加し、そして上清を41サイトカインのレベルについて分析した。VSTB174で処理した全PBMCは、多数のサイトカインの発現において統計的に有意な増加を示し、その多くは単球細胞および顆粒球細胞によって正準的に発現する(
図43)。各ドナーのPBMC応答は、VSTB174によって駆動される応答の強さにおいて特有であった。ドナー1および2は、ドナー3が示したよりもはるかに多くの分析物において有意な増加を示した(
図43)。また、3人のドナー全てが特定の分析物において有意な増加を示した場合、ベースラインに対する倍数変化は、通常、ドナー3で最も低かった(データは示さず)。
【0305】
VSTB174の効果は、薬剤が0.1~10μg/mlの間に存在する場合に最も検出される可能性が高く、0.01μg/mlでは、有意に上方制御された分析物はほとんどなかった(
図43)。
【0306】
全てのドナーで、IgG1対照よりも有意に上昇したサイトカインは以下のものであった:IL-6、TNFα、MCP-3、MDC、MIP-1β、IP-10、IL-1Rα、GM-CSF、IL-12p70およびGRO。
【0307】
いくつかのサイトカインは、ドナー1および2においてのみ有意に上昇した:MIP-1α、IL-1β、RANTES、G-CSF、IL-1α、IL-7、IL-12p40、IL-13、IFNγ、TNFβ、IFNα(ドナー3で上昇したが、依然としてベースラインに近い)、IL-4、IL-10、FGF-2、フラクタルカイン、VEGF、IL-17、Flt3L、IL-9、TGFα、IL-15、EGF、およびPDGF-αα。
【0308】
2つのサイトカイン、MCP-1およびIL-8は、ドナー3においてのみ有意に上昇した。これらのサイトカインのベースラインレベルはドナー1および2のアッセイで定量できる範囲を超えていたので、分析物はVSTB174による処理で上昇した可能性があるが、測定することはできなかった(OOR>として記載)。MCP-1およびIL-8のベースラインおよび処理レベルは、ドナー3についてのアッセイのダイナミックレンジ内であった。
【0309】
VSTB174による処理を受けたいずれのドナーにおいても、ベースラインと比較して変化しなかったサイトカインがいくつか存在した:sCD40L、エオタキシン、IL-5、PDGF-ββ、IL-2、IL-3。IL-2、IL-3およびsCD40Lは薬物投与によりドナー1において有意に上昇したが、IL-2およびIL-3のレベルは依然として非常に低いままであった。sCD40Lのみ、0.1μg/mlの用量でドナー1において上昇し、他の用量では上昇しなかった。
【0310】
本明細書に示すように、VSTB174は、用量依存的に、多数のヒトドナー試料のPBMCからの多くのサイトカインの産生の増強を誘導した。
【0311】
さらに、雌hVISTA KIマウスにおけるインビボ研究はまた、VSTB123に応答して炎症性サイトカイン(例えばMCP-1、IP-10、IL-8、IL-6、MIP-1b、IL-10、IL-7、IFN-γ、G-CSF、RANTES、IL-15、TNFα、IL-1β、MIP-1a、IL-1a、GM-CSF、IL-12p40、IL-13および/またはエオタキシン)の産生が増加することを示した。特に、上方制御されたサイトカインが、骨髄細胞の動員、移動または活性化に関与することが示された。MB49腫瘍細胞を移植したhVISTA KIマウスならびにナイーブhVISTA KIマウスはいずれも、類似のサイトカイン放出プロフィールを示した(データは示さず)。
【0312】
実施例27:VSTB123はCD80+マクロファージの腫瘍環境への移行を誘発する
VISTAは、ほとんどの造血細胞で発現するT細胞の負の調節因子である。本研究は、抗ヒトVISTAのVSTB123またはVSTB124抗体による処理に反応したMB49腫瘍担持hVISTA KIマウスにおける免疫個体群数および活性化表現型の変化を特定するために実施した。hVISTA KIマウスは、マウスVISTA遺伝子の代わりにノックインされたヒトVISTA cDNAを有し、RNAおよびタンパク質レベルの両方でヒトVISTAのみを発現することが先に確認された。MB49腫瘍細胞は、雄マウスでは自己抗原であるが雌マウスでは外来抗原であり、腫瘍微小環境で高度に発現する、雄性H-Y抗原を発現する。本明細書に示すように、腫瘍を有するマウスは、VSTB123またはVSTB124による処理後に骨髄浸潤の増加、およびAVSTB123による処理での腫瘍浸潤マクロファージ上のCD80活性化マーカーの発現の増加で応答した。
【0313】
方法
試験計画
hVISTA KIマウスを、それぞれ5匹の雌マウスからなる3つの群に分けた。それぞれのマウスに、0日目に右脇腹にMB49腫瘍細胞を注入した。7日目、9日目、および11日目に、10mg/kgのmIgG2a対照抗体、VSTB123、またはVSTB124をマウスに注入した。12日目に、マウスを安楽死させ、血液、脾臓、および腫瘍を複数のパラメータによって分析した。
図44Aはこの実験計画を示す。
【0314】
マウス
hVISTA KIマウスをSage Labs(Boyertown、PA)で繁殖させる。8~12週齢のマウスを、最初に検疫施設で3週間経過させ、その後、通常の施設に移した。それらを2日間順化させ、その後、右脇腹の毛を剃り、尾に入れ墨をした。5日後、腫瘍細胞を注入した。
【0315】
細胞源および調製
MB49細胞をR.Noelle博士の研究室(元は、P.Matzinger博士から)から入手した。MB49細胞が、マイコプラズマ(mycoplasma)および他の汚染物質を含まないことを確認した(IDDEX RADIL ケース番号22209-2014におけるIMPACTTMSC試験)。1つの細胞バイアルを解凍し、10%FBSおよびpen/strep抗生物質を含むRPMI 1640(+L-Glut)中で増殖させた。培養3日後、細胞を、StemPro(登録商標)Accutase(登録商標)との短時間のインキュベーションによって回収し、2回洗浄し、5×106細胞/mlの濃度で冷RPMIに再懸濁し、マウス1匹当たり50ml(2.5×105細胞)を注入した。全ての培養試薬は、GibcoおよびHycloneから購入した。
【0316】
細胞の皮内注入
マウスの毛を剃った右脇腹に、50μlのMB49細胞懸濁物(約250,000細胞)を皮内注入した。注入が不十分となったマウス(注入部位からの漏出、または皮内注入の代わりに皮下注入)は全て実験から除外した。
【0317】
被験薬および投与
VSTB123およびVSTB124はJanssenによって作製された。VSTB123は、muIgG2a Fcスキャフォールド上のVSTB174可変領域からなる抗ヒトVISTA抗体である。VSTB124は、Fcをサイレンシングするala/ala変異を有するmuIgG2a Fcスキャフォールド上のVSTB174可変領域からなる抗ヒトVISTA抗体である。対照マウス抗体(mIgG2a)は、BioXcell、クローンC1.18.4、ロット番号5386-2/1014により、PBS中8.4mg/ml 1×で生成された。
【0318】
投与のために、抗体をPBSで1mg/mlに希釈した。マウスに0.2mlの容量を腹腔内注入し、最終濃度10mg/kgを送達した。
図44Aに概説したように、マウスは、腫瘍注入後7、9および11日目に抗体療法を受けた。
【0319】
組織の採取
マウスを、Dartmouth IACUCプロトコルに従ってCO2を用いて安楽死させた。マウスを心臓穿刺により放血し、血液を採取した。脾臓および腫瘍を解剖した。
【0320】
HBSS中のコラゲナーゼ(1mg/ml、Sigma Aldrich)およびgentle MACSTM分散装置(Miltenyi Biotec)を用い、製造業者の使用説明書に従って脾臓の細胞を分離させた。細胞を40μmフィルターに通し、次いで、3mlのACK溶解緩衝液(Lonza、ロット番号0000400419)中で5分間、赤血球を溶解させた。HBSS中で1回洗浄した後、細胞をPBSに再懸濁し、免疫染色した。
【0321】
腫瘍解離キットおよびgentle MACSTM分散装置(Miltenyi Biotec)を使用し、製造業者の使用説明書に従って腫瘍細胞を分離させた。分離後、細胞を40μmフィルターに通し、次いで、ACK溶解緩衝液を使用して赤血球を溶解させた。HBSS中で1回洗浄した後、細胞を微量のPBSに再懸濁し、免疫染色した。流入領域リンパ節からの単細胞懸濁液を、機械的破砕および40μmフィルターを通過させることによって調製した。細胞を洗浄し、計数し、RPMIに再懸濁した。
【0322】
血液試料を遠心沈澱させて、血漿および全血細胞を分離した。血漿を回収し、続いて凍結させ、-80℃に保ち、サイトカインおよびANA ELISA分析に使用した。全血細胞を3mlのACK溶解緩衝液(Lonza、ロット番号0000400419)中で5分間、赤血球の溶解に供した。細胞をHBSS中で1回洗浄した後、PBSに再懸濁し、免疫染色に使用した。
【0323】
フローサイトメトリー
単細胞懸濁液を抗マウスCD16/32(Miltenyi)(1:200)により4℃で15分間Fcブロックした。細胞をPBSで希釈した抗体カクテルと共に30分間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄した後、氷上で30分間、固定/透過希釈標準溶液(eBioscience)に再懸濁した。細胞を回転させ、上清を廃棄し、PBSに再懸濁し、終夜インキュベートした。
【0324】
骨髄パネル:
-Live/Dead Yellow(Life Technologies)(1:1000)
-Ly6G-FITC(Biolegend、1A8)(1:200)
-CD45-PE(Biolegend、30-F11)(1:800)
-CD80-PE/CF594(BD Biosciences、16-10A1)(1:200)
-Ly6C-PerCP/Cy5.5(Biolegend、HK1.4)(1:100)
-CD11c-PE/Cy7(Biolgend、N418)(1/200)
-MHC class II-Alexa Fluor 647(Biolegend、M5/114.15.2)(1/400)
-CD86-Alexa Fluor 700(Biolegend、GL-1)(1/200)
-F4/80-APC/Cy7(Biolegend、BM8)(1/200)
-CD11b-BrV421(Biolegend、M1/70)(1/100)
【0325】
細胞を濯ぎ、Gallios 10カラーフローサイトメーターにかけた。全ての細胞を、ライブ・デッドおよびポジティブCD45染色でゲーティングした。顆粒球はCD11b+、Ly6G+およびLy6C-であった。単球はCD11b+、Ly6G-およびLy6C+であった。マクロファージはCD11b+、Ly6G-、Ly6C-およびF4/80+であった。樹状細胞をLy6G-、Ly6C-、CD11c+でゲーティングし、CD11bは中間または高かった。フローサイトメトリーデータを、FlowJoを用いて分析した。
【0326】
統計解析
全ての統計をPrism GraphPad,version6で行った。各条件について、ANOVAとテューキーの補正を用いて値を比較した。全ての場合において、mIgG2a対照処理動物との比較を行った。有意性はGraphPad標準を使用したアスタリスクによって要約され、1つのアスタリスクは*P<0.05を示し、2つの**はP<0.01を示し、3つの***はP<0.001を示し、4つの****はP<0.0001を示す。
【0327】
結果
抗VISTAまたは対照抗体処理動物の脇腹から解剖した腫瘍を分析して、フローサイトメトリーによって細胞個体群に対する効果を決定した。腫瘍浸潤マクロファージを、活性化マーカーCD80、CD86、およびMHCクラスIIの発現における抗VISTA誘導変化について調べた。
図44Bは、フローサイトメトリー解析の結果を示す。腫瘍浸潤マクロファージは、処理に関係なく、脾臓マクロファージよりも高レベルのCD86を発現したが(データは示さず)、抗VISTA処理に応じてCD86をさらに上方制御しなかった。逆に、CD80の発現はVSTB123で処理したhVISTA KIマウスの腫瘍浸潤マクロファージで有意に増加したが、VSTB124で処理したマウスでは増加しなかった(
図44B)。
【0328】
実施例28:VSTB123は腫瘍微小環境へのMPO+細胞の移動を誘発する
本研究は、抗ヒトVISTAのVSTB123またはVSTB124抗体による処理に反応したMB49腫瘍担持hVISTA KIマウスにおける腫瘍環境の変化を、もしあれば、特定するために実施した。本明細書に示すように、VSTB123は、腫瘍環境へのミエロペルオキシダーゼ染色細胞の移動を誘発した。
【0329】
方法
実施例27に記載のように処理したMB49腫瘍担持hVISTA KIマウスから死亡後に腫瘍および脾臓を迅速に解剖した。次いで、腫瘍および脾臓試料をカセットに入れ、10%ホルマリンに室温で2~3週間固定し(通常は4日間以下で固定)固定し、次いで、PBSで簡単に洗浄し、70%エタノールに移して保持した(Fisher Scientifics)後、Geisel School of Medicine at DartmouthのPathology Translational Research Coreに移し、そこでパラフィン包埋し、切片化し、次いで染色した。
【0330】
パラフィン包埋組織切片(4μm)を、Leica BOND RX自動染色機を用いて染色した。脱蝋後、切片を抗原回復(Bond epitope retrieval solution 2、100oC、20分)に供し、一次抗体(以下の表17の希釈を参照のこと)と共に30~60分間、Leica希釈剤中、室温でインキュベートした。次いで、スライドをPBSで3×5分洗浄し、二次抗体(Leica Bond Refine検出キット、DS9800)と共にインキュベートした。PBSで3回最終洗浄した後、切片をDAB(Leica Bondポリマー検出キット)と共にインキュベートし、濯ぎ、ヘマトキシリンで対比染色し、マウントした。
【0331】
スライドを、Leica(Aperio(登録商標)AT2、SCN400)ホールスライドスキャナーでスキャンした。ホールスライドスキャンを、HALOソフトウェア(Indica Labs)を用いて定量した。
【0332】
【0333】
結果
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)染色スライドを、本明細書に記載するようにスキャンし、Aperio(登録商標)ImageScopeにおいて評価した。12の腫瘍試料(6つのmIgG2a腫瘍、6つのVSTB123腫瘍)を単独および集合して可視化した。MPO染色陽性細胞は、好中球と一致する形態を有していた。IgG処理対照において、MPO細胞は、腫瘍組織全体にわたって、高密度であるが限局的で、十分に区別されたクラスターを示した。典型的には、これらの高密度凝集体は単一の脂肪細胞を取り囲んだ。より多くのMPO陽性細胞がVSTB123処理腫瘍において観察され、mIgG2a対照と比較して腫瘍実質へのより広い浸潤性分布を示した。
【0334】
実施例29:VSTB174は血液中の好中球の一時的な減少を誘発する
VSTB174(CNTO8548)をカニクイザルに1ヶ月間静脈内ボーラス注入により投与し、潜在的な毒性を評価し、また、もしあれば、毒性の潜在的な可逆性を評価した。赤血球質量および白血球数などの臨床病理学的パラメータ(例えば、血液学)を測定した。本明細書に示すように、VSTB174は、循環好中球の一時的な減少を誘発した。
【0335】
方法
この研究の目的のために、本明細書中に記載の手順を、36日目まで全ての動物に適用する。
【0336】
被験物質:VSTB174(50mg/ml、-70℃に維持し、かつ光から保護)。各投与日に、ストック被験物質の新しいバイアルを凍結保存から取り出し、約1時間室温まで平衡化し、バイアルを穏やかに旋回させ(振盪もボルテックスもしなかった)、溶液が均質になるまで混合した。被験物質の名目濃度(50mg/mL)を、投与溶液の調製のための希釈計算に使用した。バイオセーフティーフード下で、被験物質を対照物質(0.9%塩化ナトリウム)により希釈して、製剤を調製した。最終的な被験物質製剤を、0.22ミクロンのシリンジフィルター(PVDF膜)を通して濾過し、保持時間が4時間を超える前に、投与のために適切なサイズの注入器に充填した。注入器サイズは、投与量について可能な限り最小とした。調製した投与用注入器を、調製後、4時間以内に使用した。調製手順を、生データで維持した。残留量を廃棄した。
【0337】
対照物質:注射用0.9%塩化ナトリウム、USP、バッチ番号P326603、室温で保存。
【0338】
実験計画を表18に示す。
【0339】
【0340】
被験物質および対照物質の投与
被験物質または対照物質を、グループ1、2、3および4の適切な動物に、好適な末梢静脈への静脈内(ゆっくりしたボーラス)注入により、週1回、5週間(すなわち、1、8、15、22、および29日目)、合計5回投与した。各動物に対する投与量は、投与前日までに得られた最新の体重測定値に基づいた。動物を、用量投与のために一時的に拘束し、鎮痛剤は使用しなかった。使い捨ての滅菌注入器を、各動物/用量に使用した。投与初日を1日目とした。
【0341】
試料採取
静脈穿刺により血液を採取した。尿は、処理前および剖検の日に、特殊なステンレス鋼製ケージパンから排液することにより採取した。ケージパン採取が成功しなかった場合、剖検時に膀胱穿刺により尿を採取した。採取後、試料を適切な実験室に移して処理した。臨床化学血液採取前に動物を絶食させた。試料は以下のように採取した:(-2)週目、(-1)週目、1日目(投与4時間後)、2日目、4日目、8日目(前)、15日目(前)、22日目(前)、29日目(投与4時間後)、31日目、34日目、6週目、7週目および8週目。
【0342】
血液学
血液試料を好中球数(絶対)について分析した。血液塗抹標本を各血液試料から調製した。血液塗抹標本を標識し、染色し、保存し、保管した。
【0343】
結果
一般に、5週間(すなわち、1日目、8日目、15日目、22日目、および29日目)にわたる1週間に1回、計5回の静脈内(ゆっくりとしたボーラス)注入によるVSTB174の投与は、カニクイザルにおいて、≦30mg/kg/週のレベルで概ね良好な耐容性を示した。好中球は2日目に顕著な減少が始まり、29日目までに徐々に基準値に戻り、投与後の31日目および34日目に100mg/kg/週で減少した(
図46)。
【0344】
本明細書中に引用した全ての特許、公開された出願、および文献の教示は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0345】
本発明を、その実施形態例に関して詳細に説明し記載してきたが、当業者であれば、添付した特許請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細に様々な変化を加え得ることは理解するであろう。
【0346】
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]対象に生物学的応答を誘発する方法であって、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを、前記対象に、前記対象において生物学的応答を誘発するのに十分な量投与する工程を含み、前記生物学的応答は、
a)循環免疫細胞数の減少、
b)骨髄および脾臓における顆粒球数の減少、
c)腫瘍微小環境における好中球、マクロファージ、T細胞、またはそれらの組み合わせの数の増加、および
d)1種以上のサイトカインのレベルの増加、あるいは
e)これらの組み合わせ
からなる群から選択される方法。
[2]前記生物学的応答は循環免疫細胞数の減少である[1]に記載の方法。
[3]前記循環免疫細胞は、単球、好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、またはこれらの組み合わせである[2]に記載の方法。
[4]前記循環免疫細胞数の減少は一時的である[1]、[2]または[3]に記載の方法。
[5]前記生物学的応答は、骨髄および脾臓における顆粒球数の減少である[1]に記載の方法。
[6]前記生物学的応答は、腫瘍微小環境における好中球、マクロファージまたはこれらの組み合わせの数の増加である[1]に記載の方法。
[7]前記生物学的応答は、1種以上のサイトカインのレベルの増加であり、前記1種以上のサイトカインは、IL-6、TNFα、MCP-3、MDC、MIP-1β、IP-10、IL-1Rα、GM-CSF、IL-12p70、GRO、MIP-1α、IL-1β、RANTES、G-CSF、IL-1α、IL-7、IL-12p40、IL-13、IFNγ、TNFβ、IFNα、IL-4、IL-10、FGF-2、フラクタルカイン、VEGF、IL-17、Flt3L、IL-9、TGFα、IL-15、EGF、PDGF-αα、MCP-1、IL-8、sCD40L、エオタキシン、IL-2、IL-3およびIL-5、ならびにPDGF-BBからなる群から選択される[1]に記載の方法。
[8]前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫細胞上のFc受容体に結合するFc領域を含む[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]前記Fc受容体はCD16受容体である[8]に記載の方法。
[10]前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するVH CDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、さらに、配列番号28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するVL CDR2、および配列番号30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]前記対象は哺乳動物である[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12]前記哺乳動物はヒトである[11]に記載の方法。
[13]前記哺乳動物は非ヒト霊長目である[11]に記載の方法。
[14]前記哺乳動物は齧歯動物である[11]に記載の方法。
[15]前記対象は腫瘍を有する[1]~[14]のいずれか一項に記載の方法。
[16]前記対象は、肺癌、膀胱癌または乳癌を有する[1]~[15]のいずれか一項に記載の方法。
[17]T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)タンパク質に結合し、生物学的応答を誘発する抗体を同定する方法であって、
a)VISTAに結合する抗体、またはその抗体フラグメントを、細胞、組織、臓器または生物に提供する工程;ならびに
b)前記抗体またはその抗体フラグメントが前記細胞、組織、臓器または生物において生物学的応答を誘発するか否かを決定する工程であって、前記生物学的応答が
i)単球の活性化;
ii)T細胞の活性化;
iii)循環免疫細胞数の減少;
iv)骨髄および脾臓における顆粒球数の減少;
v)腫瘍微小環境における好中球、マクロファージまたはその両方の数の増加;および
1種以上のサイトカインのレベルの増加;
あるいはそれらの組み合わせ
からなる群から選択される工程
を含む方法。
[18]前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫細胞上のFc受容体に結合するFc領域を含む[17]に記載の方法。
[19]前記Fc受容体はCD16受容体である[18]に記載の方法。
[20]前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するVH CDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、さらに、配列番号28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するVL CDR2、および配列番号30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む[17]~[19]のいずれか一項に記載の方法。
[21]前記生物学的応答は、インビトロアッセイを用いて決定される[17]~[20]のいずれか一項に記載の方法。
[22]前記インビトロアッセイは、免疫組織化学(IHC)染色アッセイ、サイトカイン放出アッセイ、ケモカイン放出アッセイ、細胞活性化アッセイ、細胞増殖アッセイ、細胞移動アッセイ、およびフローサイトメトリーアッセイからなる群から選択されるアッセイである[21]に記載の方法。
[23]前記生物学的応答は、非ヒト動物においてインビボで決定される[17]~[20]のいずれか一項に記載の方法。
[24]前記非ヒト動物は非ヒト霊長目である[23]に記載の方法。
[25]前記非ヒト動物は齧歯動物である[23]に記載の方法。
[26]前記非ヒト動物はトランスジェニック動物である[23]~[25]のいずれか一項に記載の方法。
[27]前記非ヒト動物は腫瘍を有する[23]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28]前記非ヒト動物は、肺癌、膀胱癌または乳癌を有する[23]~[27]のいずれか一項に記載の方法。
[29]前記生物学的応答は循環免疫細胞数の減少である[17]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30]前記循環免疫細胞は、単球、好中球、リンパ球、好酸球もしくは好塩基球、またはこれらの組み合わせである[29]に記載の方法。
[31]前記循環免疫細胞数の減少は一時的である[29]または[30]に記載の方法。
[32]前記生物学的応答は、骨髄および脾臓における顆粒球数の減少である[17]に記載の方法。
[33]前記生物学的応答は、腫瘍微小環境における好中球、マクロファージまたはその両方の数の増加である[17]に記載の方法。
[34]前記生物学的応答は、1種以上のサイトカインのレベルの増加であり、前記1種以上のサイトカインは、IL-6、TNFα、MCP-3、MDC、MIP-1β、IP-10、IL-1Rα、GM-CSF、IL-12p70、GRO、MIP-1α、IL-1β、RANTES、G-CSF、IL-1α、IL-7、IL-12p40、IL-13、IFNγ、TNFβ、IFNα、IL-4、IL-10、FGF-2、フラクタルカイン、VEGF、IL-17、Flt3L、IL-9、TGFα、IL-15、EGF、PDGF-αα、MCP-1、IL-8、sCD40L、エオタキシン、IL-2、IL-3およびIL-5、ならびにPDGF-BBからなる群から選択される[17]に記載の方法。