(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113772
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ガラス体
(51)【国際特許分類】
C03C 17/36 20060101AFI20230808BHJP
C03C 27/06 20060101ALI20230808BHJP
E06B 3/66 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C03C17/36
C03C27/06 101H
E06B3/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090816
(22)【出願日】2023-06-01
(62)【分割の表示】P 2022570664の分割
【原出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021144790
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】大島 英明
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 章
(57)【要約】
【課題】受信エリアを拡げることが可能な電波透過性を有するガラス体を提供する。
【解決手段】ガラス体100は、第1面と、第1面とは反対側の第2面12と、を有する第1ガラス板1を備え、第1面及び第2面12の少なくとも一方の板面は、直進性のある波長を有する電波が透過可能な電波透過領域43を含んでおり、電波透過領域43は、電波を通過させる互いに離間した複数の電波通過部43Aと、隣り合う電波通過部43Aの間で電波の遮断性がある導電膜が形成された導電膜部43Bと、を有しており、電波透過領域43は、複数の電波通過部43Aを通過した電波の一部が回折して導電膜部43Bと対向する空間で重なり合う電波拡散構造で構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、当該第1面とは反対側の第2面と、を有する第1ガラス板を備え、
前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方の板面は、直進性のある波長を有する電波が透過可能な電波透過領域を含んでおり、
前記電波透過領域は、前記電波を通過させる互いに離間した複数の電波通過部と、隣り合う前記電波通過部の間で前記電波の遮断性がある導電膜が形成された導電膜部と、を有しており、
前記電波透過領域は、複数の前記電波通過部を通過した前記電波の一部が回折して前記導電膜部と対向する空間で重なり合う電波拡散構造で構成されているガラス体。
【請求項2】
前記電波通過部は、中心を通る線分の最大長が、前記波長の4倍以下である請求項1に記載のガラス体。
【請求項3】
隣り合う前記電波通過部の最短距離となる前記導電膜部の幅は、10mm以上500mm以下である請求項1又は2に記載のガラス体。
【請求項4】
前記少なくとも一方の板面は、前記電波透過領域の周囲に前記導電膜が形成された電波非透過領域を含んでおり、
前記電波通過部には、互いに離間した前記導電膜で覆われた複数の島を有するパターニングが形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス体。
【請求項5】
隣り合う前記島の間には、1μm以上100μm以下の線幅を有する細線が形成されており、隣り合う前記細線の間隔が200μm以上10mm以下である請求項4に記載のガラス体。
【請求項6】
前記島は、矩形状である請求項4又は5に記載のガラス体。
【請求項7】
前記波長は、10mm以上428mm以下である請求項1から6のいずれか一項に記載のガラス体。
【請求項8】
前記導電膜は、Low-E膜である請求項1から7のいずれか一項に記載のガラス体。
【請求項9】
前記第2面に対向する第3面と、当該第3面とは反対側の第4面と、を有する第2ガラス板と、前記第2面と前記第3面とに接触し、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に空隙層を形成するスペーサと、を更に備え、前記電波透過領域は、前記第2面又は前記第3面に形成されている請求項8に記載のガラス体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や建物の窓ガラスの板面にLow-E膜(低放射膜)が形成された、断熱性又は遮熱性を有するガラス体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このLow-E膜は、数百MHz~数十GHzの周波数帯域の電波に対して透過性が低い(遮断性を有する)といった問題がある。
【0003】
そこで、特許文献2に記載のガラス体は、平行な複数の線で構成される開口部をLow-E膜に設けており、この複数の線の長さとLow-E膜の面積との比率を規定することで、数百MHz~数十GHzの周波数帯域の電波に対して電波透過性を高めている。
【0004】
また、特許文献3に記載のガラス体は、不連続な複数の島からなるLow-E膜を有する第1膜領域に設けており、この第1膜領域が電波透過性を有している。また、特許文献3には、第1ガラス板の第2面に第1膜領域を設け、第2ガラス板の第4面のうち第1膜領域に対向する位置にアンテナを設けた複層ガラスパネルの実施形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-226235号公報
【特許文献2】国際公開第2020/054762号
【特許文献3】国際公開第2021/095885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第4世代移動通信システム(以下、「4G」という)及び第5世代移動通信システム(以下、「5G」という)で使用される周波数帯域に含まれる700MHz~30GHzの電波はそれより低い周波数帯の電波と比較して直進性が高く、特許文献2に記載の開口部や特許文献3に記載の第1膜領域は、この電波の直進性を担保する形状に設定されている。特に、特許文献2に記載の開口部は、平行な複数の線をLow-E膜に設けているため、縞模様として視認されやすく、外観上の影響が大きくなってしまう。また、4Gや5Gは直進性が高いため、室内側において、屋外の基地局から飛来する電波に対して該開口部に対向する空間以外では電波が弱くなりやすく、電波を受信し難いといった問題がある。このため、直進性が高い電波における室内側の通信環境の改善が必要となる。
【0007】
そこで、受信エリアを拡げることが可能な電波透過性を有するガラス体が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガラス体の特徴構成は、第1面と、当該第1面とは反対側の第2面と、を有する第1ガラス板を備え、前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方の板面は、直進性のある波長を有する電波が透過可能な電波透過領域を含んでおり、前記電波透過領域は、前記電波を通過させる互いに離間した複数の電波通過部と、隣り合う前記電波通過部の間で前記電波の遮断性がある導電膜が形成された導電膜部と、を有しており、前記電波透過領域は、複数の前記電波通過部を通過した前記電波の一部が回折して前記導電膜部と対向する空間で重なり合う電波拡散構造で構成されている点にある。
【0009】
上述したように、例えば4Gの周波数帯域である700MHz~3.5GHzの電波や5Gの周波数帯域である3.6GHz~30GHzの電波は直進性が高く、ガラス体を通過する電波は、第1ガラス板の導電膜のない領域に対向する範囲内において電波強度が高くなる。一方、電波受信エリアを大きくするために、ガラス体に導電膜を設けなければ良いが、その場合は、断熱性や遮熱性(以下、「断熱性能」という)が無くなり、断熱性能と電波透過性とのトレードオフの関係にあった。
【0010】
本構成のガラス体は、電波透過領域において、電波を通過させる互いに離間した複数の電波通過部を設け、隣り合う電波通過部の間に導電膜部を設けている。つまり、電波透過領域においても導電膜部を設けることにより、断熱性能を高め、複数の電波通過部を設けることにより、電波透過性を高めている。
【0011】
さらに、本構成の電波透過領域は、複数の電波通過部を通過した電波の一部が回折して導電膜部と対向する空間で重なり合う電波拡散構造で構成されている。つまり、電波通過部を通過した電波が直進するだけでなく回折し、電波回折成分が導電膜部と対向する空間で重なり合う。これにより、電波強度が弱くなりやすい導電膜部と対向する空間において、電波強度を高めることが可能となり、電波受信エリアを大きくすることができる。このように、受信エリアを拡げることが可能な電波透過性を有するガラス体となっている。
【0012】
他の特徴構成として、前記電波通過部は、中心を通る線分の最大長が、前記波長の4倍以下である点にある。
【0013】
例えば、電波通過部が矩形状であり、一辺の長さが100mmであれば、波長が25mm以上(周波数帯が約12GHz以下)の電波回折成分が増加するとの知見を得た。本構成のように、電波通過部の中心を通る線分の最大長を波長の4倍以下とすれば、使用する周波数帯域に応じて、広い受信エリアで電波強度を高めることが可能な電波通過部の寸法を決定することができる。
【0014】
他の特徴構成として、隣り合う前記電波通過部の最短距離となる前記導電膜部の幅は、10mm以上500mm以下である点にある。
【0015】
本構成のように、隣り合う電波通過部の最短距離となる導電膜部の幅が10mm以上500mm以下であれば、断熱性能と電波透過性とを両立させることができる。なお、導電膜部の幅が10mmより小さい場合、導電膜部による電波遮断性が低下して電波透過領域全体が一体的な電波透過性を有することとなるため、電波回折成分が低下し、導電膜部の幅が500mmよりも大きい場合、第1ガラス板の近傍空間で電波の重なりが無いデッドスペースが生じ易くなる。
【0016】
他の特徴構成として、前記少なくとも一方の板面は、前記電波透過領域の周囲に前記導電膜が形成された電波非透過領域を含んでおり、前記電波通過部には、互いに離間した前記導電膜で覆われた複数の島を有するパターニングが形成されている点にある。
【0017】
本構成のように、電波通過部に、互いに離間した導電膜で覆われた複数の島を有するパターニングが形成されていれば、電波非透過領域と電波透過領域との間で外観上の影響を小さくすることができる。
【0018】
他の特徴構成として、隣り合う前記島の間には、1μm以上100μm以下の線幅を有する細線が形成されており、隣り合う前記細線の間隔が200μm以上10mm以下である点にある。
【0019】
本構成のように、隣り合う島の間には、1μm以上100μm以下の線幅を有する細線が形成されており、隣り合う細線の間隔が200μm以上10mm以下であれば、電波透過性を担保しつつ、外観上の影響を小さくすることができる。なお、細線の線幅が1μmより小さくなれば隣り合う島と島の絶縁が取り難くなるため電波透過性の確保が難しくなり、100μmより大きくなれば、断熱性能が低下しやすくなる。また、隣り合う細線の間隔が200μmより小さくなれば、断熱性能が低下し、10mmより大きくなれば、電波透過性が低下しやすくなる。
【0020】
他の特徴構成として、前記島は、矩形状である点にある。
【0021】
本構成のように島が矩形状であれば、パターニング加工が容易である。
【0022】
他の特徴構成として、前記波長は、10mm以上428mm以下である点にある。
【0023】
本構成のように波長が10mm以上428mm以下(周波数帯が700MHz以上30GHz以下)であれば、特に直進性が高くなるため、上記構成のガラス体を採用することによる有用性を高めることができる。
【0024】
他の特徴構成として、前記導電膜は、Low-E膜である点にある。
【0025】
本構成のように導電膜をLow-E膜とすれば、断熱性能を高めつつ、受信エリアを拡げることが可能な電波透過性を担保できる。
【0026】
他の特徴構成として、前記第2面に対向する第3面と、当該第3面とは反対側の第4面と、を有する第2ガラス板と、前記第2面と前記第3面とに接触し、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に空隙層を形成するスペーサと、を更に備え、前記電波透過領域は、前記第2面又は前記第3面に形成されている点にある。
【0027】
本構成のような複層ガラスにおいて、第1ガラス板の第2面、又は、第2ガラス板の第3面にLow-E膜を配置すれば断熱性能が高まる。この断熱性能を高めたガラス体において、電波透過領域を第2面又は第3面に形成すれば、上記構成のガラス体を採用することによる有用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態におけるガラス体を設けた構造物の概念図である。
【
図2】第一実施形態におけるガラス体の側断面図である。
【
図3】第二実施形態におけるガラス体の側断面図である。
【
図4】本実施形態における電波透過領域を有するガラス体の正面図である。
【
図5】比較例における開口を通過する電波のシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】本実施例における電波透過領域を通過する電波のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】本実施例における電波透過領域を通過する電波のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】本実施例における電波透過領域を通過する電波のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】比較例1における開口を通過する電波の拡がりを示す図である。
【
図10】比較例2における開口を通過する電波の拡がりを示す図である。
【
図11】比較例3における開口を通過する電波の拡がりを示す図である。
【
図12】本実施例における電波透過領域を通過する電波の拡がりを示す図である。
【
図13】比較例3のガラス体が板面方向に複数並べて配置された場合における開口を通過する電波の拡がりを示す図である。
【
図14】本実施例のガラス体が板面方向に複数並べて配置された場合における電波透過領域を通過する電波の拡がりを示す図である。
【
図15】その他の実施形態における電波透過領域を有するガラス体の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係るガラス体の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0030】
本実施形態におけるガラス体100は、種々の用途に用いることができ、例えば、建物の窓ガラス、自動車、航空機、船舶、列車などの移動体の窓ガラスとして用いることができる。
図1には、ガラス体100を建物の窓ガラスに用いた模式図が示されている。なお、ガラス体100は、外気と接する窓ガラスであっても良いし、室内を区画する窓ガラスであっても良い。
【0031】
図1に示すように、ガラス体100は、板面が矩形の外形を有する第1ガラス板1を備えている。ガラス体100は、直進性を有する4Gの周波数帯域である700MHz~3.5GHz(波長428mm~85mm)や5Gの周波数帯域3.6GHz~30GHz(波長83mm~10mm)の全帯域または一部の帯域に対応する電波が透過可能な電波透過領域43と、電波透過領域43の周囲にLow-E膜41(導電膜の一例)が形成された電波非透過領域42とを含んでいる。本実施形態における電波透過領域43は、電波の一部が回折して電波受信エリアを拡げる電波拡散構造となっている。電波透過領域43の詳細は後述する。
【0032】
第1ガラス板1(後述する第2ガラス板2も同様)の材料は特には限定されず、公知のガラス板を用いることができる。例えば、熱線吸収ガラス、クリアガラス、グリーンガラス、UVグリーンガラス、ソーダライムガラスなど種々のガラス板を用いることができる。第1ガラス板1の厚みは、特には限定されないが、例えば、2~15mmであることが好ましく、2.5~8mmであることがさらに好ましい。
【0033】
<第一実施形態:単板ガラス>
図2に示すように、第1ガラス板1は、第1面11と、第1面11とは反対側の第2面12とを有する。この第1ガラス板1の第2面12に、電波遮断性を有するLow-E膜41(導電膜の一例)が形成されている。Low-E膜41は、電波の遮断性がある導電性薄膜である。導電性薄膜の表面抵抗率は20Ω未満であると好ましい。こうすると、Low-E膜41は赤外域から電波域(数百MHz~数十GHzの周波数帯域)にわたる波長領域で高い反射率を有する。そのためLow-E膜41が形成されている第1ガラス板1の板面は、電波の透過性は低くなるが、放射率も低くなる。第1ガラス板1の第2面12に、Low-E膜41が全域に形成されている電波非透過領域42を有する。また、Low-E膜41が形成された板面である第2面12の一部(図では中央部分)に、Low-E膜41の一部がレーザ加工等により除去された電波透過領域43が設けられている。この電波透過領域43は、直進性を有する4Gの周波数帯域である700MHz~3.5GHz(波長428mm~85mm)や5Gの周波数帯域3.6GHz~30GHz(波長83mm~10mm)の全帯域または一部の帯域に対応する電波の透過を可能にするように配置される。なお、第1ガラス板1の第1面11に、電波非透過領域42及び電波透過領域43を設けても良い。
【0034】
<第二実施形態:複層ガラス>
図3に示すように、ガラス体100は、板面がほぼ同じ矩形の外形を有する2つのガラス板、つまり第1ガラス板1及び第2ガラス板2を有する複層ガラスである。一対のガラス板1,2は、その周縁部に配置されたスペーサ5によって互いに連結されている。スペーサ5により、一対のガラス板1,2間には空隙層3が形成される。第1ガラス板1は、室外側の板面である第1面11と、第1面11とは反対側の空隙層3側の板面である第2面12とを有する。第2ガラス板2は、空隙層3側の板面である第3面13と、第3面13とは反対側の室内側の板面である第4面14とを有する。つまり、スペーサ5は、第2面12と第3面13とに接触している。空隙層3の側の板面(第2面12)に、電波遮断性を有するLow-E膜41(導電膜の一例)が形成されている。なお、図示を省略するが、スペーサ5よりも外側に配置されたシール材が配置された枠体により、空隙層3は密閉されている。
【0035】
第1ガラス板1の第2面12に、Low-E膜41が全域に形成されている電波非透過領域42を有する。また、Low-E膜41が形成された板面である第2面12に、Low-E膜41の一部がレーザ加工等により除去された電波透過領域43が設けられている。この電波透過領域43は、直進性を有する4Gの周波数帯域である700MHz~3.5GHz(波長428mm~85mm)や5Gの周波数帯域3.6GHz~30GHz(波長83mm~10mm)の全帯域または一部の帯域に対応する電波の透過を可能にするように配置される。なお、本実施形態のような複層ガラスにおいて、第1ガラス板1の第2面12、又は、第2ガラス板2の第3面13にLow-E膜41を配置すれば断熱性能が高まる。また、第1ガラス板1の第1面11又は第2ガラス板2の第4面14に、電波非透過領域42及び電波透過領域43を設けても良い。また、ガラス体100の室内側の板面(第4面14)に、電波送受信用のアンテナ(不図示)を設置してもよいし、室内の天井等にアンテナを設置しても良い。
【0036】
<Low-E膜>
Low-E膜41は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、好ましくは、銀を主成分とする層を含む多層膜である。また、Low-E膜41は、金属層、金属酸化物層、金属窒化物層および金属酸窒化物層から選ばれる2種以上の層を積層した多層からなるのも好ましい。金属層の好適な例としては銀層が挙げられる。金属酸化物層の好適な例としては、酸化スズ層、酸化チタン層または酸化亜鉛層が挙げられる。金属窒化物層の好適な例としては窒化ケイ素が挙げられる。金属酸窒化物層の好適な例としては酸窒化ケイ素が挙げられる。Low-E膜41は、物理的気相成長法(PVD)等の真空成膜法が好ましく、特にスパッタリング法が大面積を均一に成膜できるため好ましい。電波透過領域43は、例えば、スパッタリング法によりガラス板にLow-E膜41を成膜した後、レーザ加工等によりLow-E膜41を除去することで形成される。電波透過領域43は、各種のマスキング材を用いて形成してもよい。電波透過領域43は、このような手法で形成することで、ガラス板の所望の位置に容易に配置することができる。
【0037】
また、Low-E膜41は、酸化スズ層、窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、酸化チタン層、酸化亜鉛層および銀層から選ばれる3種以上の層を積層した多層からなるのがより好ましく、ガラス板表面から順次、(1)酸化スズ層(第1反射防止層)、酸化亜鉛層(第1反射防止層)、銀層(金属層)、酸化亜鉛層(第2反射防止層)および酸化スズ層(第2反射防止層)、(2)窒化ケイ素層(第1反射防止層)、酸化亜鉛層(第1反射防止層)、銀層(金属層)および酸化亜鉛層(第2反射防止層)を積層した3層または5層からなるのが最も好ましい。
【0038】
Low-E膜41は、銀を主成分とする金属層を含有する。金属層の膜厚は5nm以上20nm以下であることが好ましく、10nm以上15nm以下であることが更に好ましい。Low-E膜41が、銀を主成分とする所定の膜厚の金属層を有することで、熱の放射を抑制することができる。これにより、ガラス体100は、断熱性能を向上させることができる。また、金属層の膜厚が15nm以下であることで、Low-E膜41による外観上の影響を小さくすることができる。
【0039】
Low-E膜41は、金属層の内側である、Low-E膜41が形成された板面に近い側に第1反射防止層を有し、第1反射防止層の光学膜厚の合計が20nm以上120nm以下であると好適である。Low-E膜41は、金属層の外側である、Low-E膜41が形成された板面から遠い側に第2反射防止層を有し、第2反射防止層の光学膜厚の合計が60nm以上120nm以下であると好適である。光学膜厚は、(屈折率n)×(膜厚d)によって算出することができる。第1反射防止層(第2反射防止層)が複数の膜によって構成される場合には、それぞれの膜で算出される光学膜厚の合計が第1反射防止層(第2反射防止層)の光学膜厚となる。光学膜厚を算出する上で、屈折率は可視光の波長により値が変動する。ここでは、可視光の波長を一般的な可視域の基準波長(550nm)の場合の屈折率に基づいた光学膜厚である。
【0040】
上記のように、Low-E膜41は、金属層を基準にして第1ガラス板1の第2面12に近い側に所定の膜厚の第1反射防止層が存在することで、金属層が保護されてLow-E膜41は低反射性能を有することになり、熱を確実に遮断することができる。また、ガラス体100において高い可視光透過率と好適な反射色調を実現できる。
【0041】
また、Low-E膜41は、金属層を基準にして第1ガラス板1の第2面12に遠い側に所定の膜厚の第2反射防止層が存在する場合においても、金属層が保護されてLow-E膜41は低反射性能を有することになり、熱を確実に遮断することができる。また、ガラス体100において高い可視光透過率と好適な反射色調を実現できる。
【0042】
<電波透過領域>
図4に示すように、本実施形態における電波非透過領域42は、電波透過領域43の周囲にLow-E膜41が形成された領域となっており、電波透過領域43は、電波の一部が回折して電波受信エリアを拡げる電波拡散構造となっている。電波透過領域43は、直進性のある波長(10mm~500mm)を有する電波を通過させる互いに離間した複数(本実施形態では5×5の25個)の電波通過部43Aと、隣り合う電波通過部43Aの間で電波遮断性があるLow-E膜41が形成された導電膜部43Bとを有している。この電波透過領域43は、複数の電波通過部43Aを通過した電波の一部が回折して導電膜部43Bと対向する空間で重なり合う電波拡散構造で構成されている。
【0043】
本実施形態における電波通過部43Aは矩形状に形成されており、4辺のうち最も長い辺が、通過する電波の波長(10mm~500mm、以下、単に「波長」という)に対して4倍以下となっている。換言すると、電波通過部43Aは、中心を通る線分の最大長L(偏波となる電波の電界振動方向)が、波長の4倍以下である。このように、電波通過部43Aの中心を通る線分の最大長Lを波長の4倍以下とすれば、使用する周波数帯域に応じて、広い受信エリアで電波強度を高めることが可能な電波通過部43Aの寸法を決定することができる。一方、5G(ミリ波)の周波数帯域30GHz~300GHz(波長11mm未満)に対応する電波については、電波通過部43Aの加工が困難となるため、本実施形態に係る電波拡散構造として好ましくなく、通過する電波の波長を10mm以上としても良いし、5G(sub6帯)の波長49mm以上(周波数帯6GHz以下)に限定しても良い。なお、本実施形態では、電波通過部43Aが正方形であるため、4辺全て電波通過部43Aの中心を通る線分の最大長Lと等しくなるが、長方形である場合は、4辺のうち長い方の2辺が電波通過部43Aの中心を通る線分の最大長Lと等しくなる。
【0044】
また、電波通過部43Aは、中心を通る線分の最大長Lが10mm以上、且つ、波長の4倍以下であることが好ましく、20mm以上、且つ、波長の2倍以下であることが更に好ましい。なお、電波通過部43Aの中心を通る線分の最大長Lは、10mmより下回ると、後述するパターニング加工が困難となり、波長の4倍を超えると電波回折成分が減少し、広い受信エリアで電波強度を高めることが困難となる。
【0045】
隣り合う電波通過部43Aの最短距離となる導電膜部43Bの幅Wは、10mm以上、且つ、500mm以下であることが好ましく、10mm以上、且つ、100mm以下であることが更に好ましい。このように、隣り合う電波通過部43Aの最短距離となる導電膜部43Bの幅Wが10mm以上500mm以下であれば、断熱性能と電波透過性とを両立させることができる。なお、導電膜部43Bの幅Wが10mmより小さい場合、導電膜部43Bによる電波遮断性が低下して電波透過領域43全体が一体的な電波透過性を有することとなるため、電波回折成分が低下し、導電膜部43Bの幅Wが500mmよりも大きい場合、第1ガラス板1の近傍空間で電波の重なりが無いデッドスペースが生じ易くなる。
【0046】
夫々の電波通過部43Aには、互いに離間したLow-E膜41で覆われた複数の島43Aaを有するパターニングが形成されている。電波通過部43Aは、例えば、スパッタリング法によりガラス板にLow-E膜41を成膜した後、レーザ加工等によりLow-E膜41のみを除去することで、隣り合う島43Aaの間に細線43Abが形成される。このように細線43Abを形成すれば、ガラス板に傷が付かず、細線43Abを目立たなくすることができる。本実施形態における複数の島43Aaは、同一の線幅を有する細線43Abを介して、互いに等間隔に離間したシンメトリー形状で形成されている。
【0047】
この細線43Abの線幅は、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上30μm以下であることが更に好ましい。細線43Abの線幅が1μmより小さくなれば一体的なLow-E膜41となって隣り合う島43Aaと島43Aaの絶縁が取り難くなるため電波透過性の確保が難しくなり、100μmより大きくなれば、断熱性能が低下しやすくなる。
【0048】
隣り合う細線43Abの間隔(隣り合う細線43Abの線中心間距離)は、200μm以上10mm以下であることが好ましく、500μm以上3mm以下であることが更に好ましい。また、隣り合う細線43Abの間隔が200μmより小さくなれば、断熱性能が低下し、10mmより大きくなれば、電波透過性が低下しやすくなる。なお、隣り合う細線43Abの間隔の上限値は、波長の3分の1以下であることが好ましい。
【0049】
<評価試験>
(試験条件)
第1ガラス板1の厚みが6mmのソーダライムガラスを用い、第2面12を覆うLow-E膜41は、第1ガラス板1の第2面12側から、SnO2/ZnO/Ag/SUS/ZnO/SnO2として、合計膜厚が80nm、放射率が0.1とした。Low-E膜41を除去するレーザ加工条件は、ガラスを除去すること無くLow-E膜41のみ除去できるように、YAG:Ndレーザを用いて、繰り返し周波数100kHz,波長355nm,操作速度300mm/secとした。
【0050】
(放射率)
フーリエ変換赤外分光度計(Perkin Elmer製Frontier Gold)を用い、JIS-R3106に従い放射率を測定した。電波通過部43Aの個数及び大きさ、細線43Abの線幅及び間隔を変化させた場合における電波通過部43Aの放射率を表1に示す。電波通過部43A及び島43Aaを全て正方形で形成し、隣り合う電波通過部43Aの最短距離となる導電膜部43Bの幅を50mmに設定した。
【表1】
【0051】
表1の試験番号(3)に示すように、細線43Abの線幅が100μmより大きくなれば、電波通過部43Aの放射率が著しく悪化し、断熱性能が低下することが理解できる。また、試験番号(1),(2),(4),(5),(6)に示すように、電波通過部43Aの個数や大きさに関わらず、細線43Abの線幅を100μm以下、且つ、細線43Abの間隔を200μm以上とすれば、第1ガラス板1の板面全域をLow-E膜41で覆う場合に比べて、放射率の悪化を抑制し、断熱性能が維持されることが理解できる。
【0052】
(電波透過特性)
続いて、本実施形態におけるガラス体100の電波透過領域43は、電波の一部が回折して電波受信エリアを拡げる電波拡散構造となっていることを立証するシミュレーション結果について説明する。
図5~
図14には、本実施形態に係るガラス体100及び比較例に係るガラス体の電波透過特性を確認したシミュレーション結果が示されている。なお、
図5~
図8は、Micro-Stripes2高周波電磁界シミュレータを用い、
図9~
図14は、Altair Feko高周波電磁界シミュレータを用いた。また、
図5~
図12は、第1ガラス板1の第1面11に対して電波を垂直に入射させる垂直入射とし、
図13及び
図14は、第1ガラス板1の第1面11に対して電波を斜めに入射させる斜め入射とした。
【0053】
図5~
図8には、電波透過領域43の電波通過部43Aとして、100mm×100mmの開口(中心を通る線分の最大長Lが100mm)を有する平面視(開口の上辺)から見たシミュレーション結果が示されている。この電波通過部43Aに対し、30GHz~1GHz(波長10mm~300mm)の電波を照射するシミュレーションを行った。図の破線で囲まれた領域が強い電波(入射する電波を0dBとしたときの電波透過損失10dB以下)の分布を示している。
【0054】
比較例としての
図5に示すように、周波数帯が比較的高い30GHz~15GHz(波長10mm~20mm)においては、電波通過部43Aを通過した電波がほぼ回折すること無く直進していることが分かる。一方、本実施例としての
図6に示すように、周波数帯が比較的低い10GHz~1GHz(波長30mm~300mm)においては、電波通過部43Aを通過した電波が導電膜部43Bに対向する空間まで拡がるように回折していることが分かる。
【0055】
図7~
図8には、導電膜部43Bの幅Wを50mmに設定したときにおける隣り合う電波通過部43Aを通過した電波の重なり状況を示している。
図7に示すように、周波数帯5GHz(波長60mm)では、導電膜部43Bに対向する空間で広い重なりを有しており、周波数帯10GHz(波長30mm)では、やや重なり度合が低下するものの、電波透過領域43は、複数の電波通過部43Aを通過した電波の一部が回折して導電膜部43Bと対向する空間で重なり合う電波拡散構造で構成されていることが理解できる。
図8に示すように、周波数帯が低い3GHz~1GHz(波長100mm~300mm)では、導電膜部43Bに対向する空間で広い重なりを有している。これらから、電波の波長(30mm~300)が開口長さ100mm(中心を通る線分の最大長L)に対して、4分の1よりも大きいことが好ましいことが分かる。換言すると、電波通過部43Aは、波長の4倍以下であることが好ましい。なお、電波の波長(60mm~300mm)が開口長さ100mm(中心を通る線分の最大長L)に対して、2分の1よりも大きいことが更に好ましく、この場合、電波通過部43Aは波長の2倍以下となる。
【0056】
図9~
図12には、第1ガラス板1の第1面11側から3.5GHzの周波数帯(波長86mm)を有する電波を垂直に入射させ、第1ガラス板1の第2面12から平行に1m離間した空間(図では2点鎖線)における電波の拡がりのシミュレーション結果が示されている。
図9は、第1ガラス板1の第2面12の全体がLow-E膜41で覆われた比較例1を示し、
図10は、第1ガラス板1の第2面12の中央のLow-E膜41を除去して形成された100mm×100mmの開口を1つ有する比較例2を示し、
図11は、第1ガラス板1の第2面12の中央のLow-E膜41を除去して形成された500mm×500mmの開口を1つ有する比較例3を示している。
図12は、上述した実施形態に係るガラス体100のように、100mm×100mmの電波通過部43Aを5×5個並べて合計500mm×500mmの電波透過領域43を第1ガラス板1の第2面12の中央に形成した本実施例を示している。
【0057】
図9に示す比較例1では電波が遮断されており、電波透過損失が30dB以上であったため、第1ガラス板1の第2面12側では、ほとんど電波を受信できていない。
図10に示す比較例2では開口から直進した電波のみであり、電波の拡がりが全く無かった。
図11に示す比較例3では、500mmの開口長さであり、電波波長86mmに対して4倍以上であることから、電波の拡がりがほとんど無かった。一方、
図12に示す本実施例では、電波透過損失が3dB以上15dB以下の範囲に拡がっており、電波強度がやや低下するものの、電波の受信エリアを拡大することができた。
【0058】
図13及び
図14には、第1ガラス板1を板面方向に4枚並べて配置した場合における電波の拡がりのシミュレーション結果が示されている。具体的には、
図13及び
図14では、3.5GHzの周波数帯(波長86mm)を有する電波を各々の第1ガラス板1の第1面11側から第2面12に向けて右向きの入射角45度で斜め入射させ、xy平面沿って水平方向に形成される領域R(図では2点鎖線)における電波の拡がりが示されている。領域Rは、4枚の第1ガラス板1が並べて配置される第1辺部Aと第1辺部Aに垂直となる第2辺部Bとによって形成される矩形領域である。
図13及び
図14では、第1辺部Aの長さが7800mmに設定され、第2辺部Bの長さが5500mmに設定されている。第1辺部Aに沿う複数の開口(電波透過領域43)は、第1辺部Aの両端から開口までの距離P1が900mmに設定され、隣接する開口間の距離P2が1800mmに設定されている。
図13では、第1ガラス板1として第2面12の中央のLow-E膜41を除去して形成された500mm×500mmの開口を1つ有する比較例3のガラス体が用いられている。
図14では、第1ガラス板1として、上述した実施形態に係るガラス体100のように、100mm×100mmの電波通過部43Aを5×5個並べて合計500mm×500mmの電波透過領域43を第2面12の中央に形成した本実施例のガラス体が用いられている。
【0059】
比較例3のガラス体が用いられた
図13では、第1ガラス板1の開口を通過した夫々の電波はいずれも水平方向の拡がりが小さいため、電波が領域Rの半分程度しか行き渡らない。一方、本実施例のガラス体が用いられた
図14では、電波透過領域43を通過した夫々の電波はいずれも水平方向の拡がりが大きいため、電波が領域Rに対して全体的に行き渡るようになった。以下、具体的に説明する。領域Rについて、左上の角から右下の角に向けて仮想の対角線Cを引き、領域Rのうち対角線Cに対して左側を第1領域R1とし右側を第2領域R2とする。この場合、
図13では、第1ガラス板1の開口を通過した電波は、第1領域R1には行き渡るものの、第2領域R2のうち対角線Cから離れた領域には行き渡らない。一方、
図14では、電波強度がやや低下するものの、電波が第1領域R1だけでなく第2領域R2にも広く行き渡り、電波が領域Rに対して全体的に行き渡ることが確認された。
【0060】
このように、本実施形態におけるガラス体100は、電波透過領域43において、電波を通過させる互いに離間した複数の電波通過部43Aを設け、隣り合う電波通過部43Aの間に導電膜部43Bを設けている。つまり、電波透過領域43においても導電膜部43Bを設けることにより、断熱性能を高め、複数の電波通過部43Aを設けることにより、電波透過性を高めている。
【0061】
また、電波透過領域43は、複数の電波通過部43Aを通過した電波の一部が回折して導電膜部43Bと対向する空間で重なり合う電波拡散構造で構成されている。つまり、電波通過部43Aを通過した電波が直進するだけでなく回折し、電波回折成分が導電膜部43Bと対向する空間で重なり合う。これにより、電波強度が弱くなりやすい導電膜部43Bと対向する空間において、電波強度を高めることが可能となり、電波受信エリアを大きくすることができる。よって、受信エリアを拡げることが可能な電波透過性を有するガラス体100となっている。
【0062】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態における電波透過領域43は、矩形状に限定されず、例えば、円形状、長円状、楕円状、十字形等であっても良い。この場合でも、電波通過部43Aは、中心を通る線分の最大長Lが10mm以上、且つ、波長の4倍以下であることが好ましい。
(2)
図15に示すように、電波透過領域43の電波通過部43Aを円環状に形成しても良い。この場合でも、電波通過部43Aに複数の細線43Abを同心円状に等間隔で形成したパターニング加工が施されることが好ましい。電波透過領域43の各種寸法範囲は、上述した実施形態と同様である。
(3)上述した実施形態における電波通過部43Aに形成された複数の島43Aaを省略して、電波通過部43Aの全域に亘ってLow-E膜41を除去しても良い。また、島43Aaの形状も矩形状に限定されず、例えば、円形状、長円状、楕円状等であっても良い。
(4)電波透過領域43は、Low-E膜41を除去してガラス板を露出させる必要はなく、少なくとも銀を主成分とする金属層が除去されていれば良い。
【0063】
(5)第二実施形態における複層ガラスにおいて、第1ガラス板1の第2面12に遮熱膜を配置し、第2ガラス板2の第3面13にLow-E膜41を配置しても良い。遮熱膜は、好ましくは、チタンの窒化物を主成分とする層を含む多層膜である。金属窒化物層の好適な例としては窒化チタン層が挙げられる。遮熱膜の膜厚は、積層される膜の種類により適宜選択されるが、通常、5~100nmであり、好ましくは10~50nmである。遮熱膜は、例えば熱線吸収膜によって構成されている。遮熱膜が熱線吸収膜であると、遮熱膜によって赤外線を吸収することができるので、ガラス体100において遮熱性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、建物の窓ガラス、自動車、航空機、船舶、列車などの移動体の窓ガラスとしてのガラス体に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 :第1ガラス板
2 :第2ガラス板
3 :空隙層
5 :スペーサ
11 :第1面
12 :第2面
13 :第3面
14 :第4面
41 :Low-E膜(導電膜)
42 :電波非透過領域
43 :電波透過領域
43A :電波通過部
43Aa :島
43Ab :細線
43B :導電膜部
100 :ガラス体
L :中心を通る線分の最大長
W :導電膜部の幅