(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113773
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】縦葺き屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/366 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
E04D3/366 102H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090818
(22)【出願日】2023-06-01
(62)【分割の表示】P 2019113716の分割
【原出願日】2019-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】成形が容易で、強固な保持作用と確実な防水作用を果たす縦葺き屋根構造を提供する。
【解決手段】屋根板1,1の側縁部13を左右一対の上部保持部材3A、3Bと下部保持部材2で挟着して接続される構造で、屋根板1は、面板部11の左右の端縁に下り段状に成形されると共に先端が上方へ屈曲された側縁部13が形成される。下部保持部材2、は下地への固定部21、左右一対の取付部22、屋根板の側縁部を下方から支持する支持部23、流れ方向の上端及び下端に凸部221を備える。上部保持部材3Aは、一方の屋根板の側縁部を上方から覆う覆い部31a、下部保持部材2の取付部22に取り付けられる係合部32aを備える上部一方部材、及び他方の屋根板の側縁部を上方から覆う覆い部31b、下部保持部材2の取付部22に取り付けられる係合部32bを備える上部他方部材3Bからなる。カバー材が上部保持部材3Aに一体的に組み付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に隣り合う縦葺き屋根板の側縁部が、左右一対の上部保持部材と下部保持部材で挟着されて接続される縦葺き屋根構造であって、
前記縦葺き屋根板は、面板部の左右の端縁に、下り段状に成形されると共にその先端が上方へ屈曲された側縁部が形成され、
前記下部保持部材は、下地への固定部と、左右一対の取付部と、前記縦葺き屋根板の側縁部が下方から支持される支持部と、流れ方向の上端及び下端にそれぞれ上方への凸部と、を備え、
前記上部保持部材は、左右に隣り合う縦葺き屋根板の一方の縦葺き屋根板の側縁部が上方から覆う覆い部と、前記下部保持部材の取付部に取り付けられる係合部と、を備える上部一方部材、及び左右に隣り合う縦葺き屋根板の他方の縦葺き屋根板の側縁部が上方から覆う覆い部と、前記下部保持部材の取付部に取り付けられる係合部と、を備える上部他方部材からなり、
下地上に固定された前記下部保持部材の左右に前記縦葺き屋根板が配設され、
前記上部一方部材の係合部が、前記下部保持部材の取付部に係合されると共に、前記上部他方部材の係合部が、前記下部保持部材の取付部に係合され、
前記下部保持部材の前記凸部にて前記上部一方部材及び前記上部他方部材の流れ方向への脱落が防止され、
左右の前記縦葺き屋根板の側縁部間を覆うカバー材が、前記上部保持部材に一体的に組み付けられていることを特徴とする縦葺き屋根構造。
【請求項2】
中央に隆起部を備える排水部材が下地に配設され、前記下部保持部材が前記隆起部に配された状態で固定具が打ち込まれて固定されることを特徴とする請求項1に記載の縦葺き屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦葺き屋根板の成形が容易であり、強固な保持作用と確実な防水作用を果たす縦葺き屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右側縁部に加工を施さない平板状の屋根板を用いた屋根構造として、特許文献1のような構造が提案されている。
当該特許文献1に用いられた屋根板は、側縁部に立ち上げ部(ハゼ部)が形成されていないため、ロール状の金属板材を現場に持ち込み、現場にて必要長さの金属板材を切断して施工に供することができるという利点を有する。
【0003】
しかし、前記特許文献1に提案される屋根構造では、確かに屋根板の成形加工の点では優れているが、屋根板の側縁部を挟着しているに過ぎないので、例えば屋根面に負圧等が作用した際には容易に挟着が外れてしまうものであった。即ち面板部が上方へ引き上げられ、挟着されていた側縁が容易に外れてしまい、屋根板が外れ落ちたり、風で飛散するといった事故を起こす恐れがあった。
また、屋根板の側縁部を挟着しているに過ぎないので、屋根板の裏面側へ薄い等が廻り込み易いため、漏水を生ずる恐れもあった。
【0004】
そのため、本発明者らは、左右の側縁部として微少な成形を加えることにより、安定に保持される構造を特許文献2,3として提案した。これらのうち、特許文献2に提案した屋根構造は、屋根板の側縁に長孔状の貫通孔を形成して上部材と下部材とで挟着するものであり、特許文献3に提案した屋根構造は、側面視Z字状の係止部を形成して上部材と下部材とで挟着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2-143419号公報
【特許文献2】特許第2569266号公報
【特許文献3】特許第2874822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献2では、屋根板に複数の貫通孔を形成するので、当該貫通孔からの雨水の廻り込みは避けられない。また、前記特許文献3の側面視Z字状の係止部では、係止作用も水返し作用も十分には得られなかった。
そこで、本発明は、縦葺き屋根板の成形が容易であり、強固な保持作用と確実な防水作用を果たす縦葺き屋根構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、左右に隣り合う縦葺き屋根板の側縁部が、左右一対の上部保持部材と下部保持部材で挟着されて接続される縦葺き屋根構造であって、前記縦葺き屋根板は、面板部の左右の端縁に、下り段状に成形されると共にその先端が上方へ屈曲された側縁部が形成され、前記下部保持部材は、下地への固定部と、左右一対の取付部と、前記縦葺き屋根板の側縁部が下方から支持される支持部と、を備え、前記上部保持部材は、左右に隣り合う縦葺き屋根板の一方の縦葺き屋根板の側縁部が上方から覆う覆い部と、前記下部保持部材の取付部に取り付けられる係合部と、を備える上部一方部材、及び左右に隣り合う縦葺き屋根板の他方の縦葺き屋根板の側縁部が上方から覆う覆い部と、前記下部保持部材の取付部に取り付けられる係合部と、を備える上部他方部材からなり、下地上に固定された下部保持部材の左右に前記縦葺き屋根板が配設され、前記上部一方部材の係合部が、前記下部保持部材の取付部に係合されると共に、前記上部他方部材の係合部が、前記下部保持部材の取付部に係合され、左右の縦葺き屋根板の側縁部間を覆うカバー材が、上部保持部材に一体的に組み付けられていることを特徴とする縦葺き屋根構造に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の縦葺き屋根構造は、左右に隣り合う縦葺き屋根板の何れか一方のみを上部一方部材にて、他方の縦葺き屋根板のみを上部他方部材にて保持するので、下部保持部材の取付部に、容易に取り付けることができ、強固な保持作用と確実な防水作用を果たす。そのため、例えば十数センチより小さな部材でも取付に支障を生ずることないため、各種の縦葺き屋根構造に適用することができる。さらに、下部保持部材に、流れ方向の上端及び下端にそれぞれ上方への凸部が形成されているので、上部一方部材及び上部他方部材の流れ方向への脱落が防止される。
【0009】
また、中央に隆起部を備える排水部材を下地に配設し、前記下部保持部材を前記隆起部に配した状態で固定具を打ち込んで固定する場合、仮に側縁部の裏面側に雨水等が廻り込んだとしても排水部材の排水部にて確実に流下(排水)させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)本発明の実施例1の縦葺き屋根構造に用いた上部一方部材の三面図(平面図、正面図、左側面図)、(b)用いた下部保持部材の三面図(平面図、正面図、右側面図)と、その平面図と正面図との間に点線にて付記した屋根板の正面図、(c)用いた上部他方部材の三面図(平面図、正面図、左側面図)、(d)上部一方部材及び上部他方部材を取り付ける以前の下部保持部材を示す正面図、(e)下部保持部材に上部一方部材を取り付けた状態を示す正面図、(f)下部保持部材に上部他方部材を取り付けた状態を示す正面図である。
【
図2】(a)実施例1に用いた上部一方部材及び上部他方部材の斜視図、(b)用いた下部保持部材の斜視図、(c)下部保持部材に上部一方部材及び上部他方部材を取り付けた状態を示す斜視図、(d)排水部材上にて屋根板の側縁部を上部保持部材及び下部保持部材で挟持すると共にカバー材を配設した状態の分解斜視図、(e)排水部材上に配設した下部保持部材への上部保持部材の取付状態、左右の縦葺き屋根板とカバー材との配置関係を示す状態を示す斜視図、(f)排水部材上に配設した下部保持部材へ上部他方部材を配設した状態の縦葺き屋根構造を示す正面図、(g)排水部材上に配設した下部保持部材へ上部他方部材を配設し、更に上部一方部材を配設した状態の縦葺き屋根構造を示す正面図である。
【
図3】(a)実施例1の縦葺き屋根構造を示す側断面図、(b)左側には、下部保持部材に上部一方部材を取り付けた状態、右側には、下部保持部材に上部他方部材を取り付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の縦葺き屋根構造は、左右に隣り合う縦葺き屋根板(以下、屋根板という)の側縁部を、左右一対の上部保持部材と下部保持部材で挟着して接続されるものである。
前記屋根板は、面板部の左右の端縁に、下り段状に成形されると共にその先端が上方へ屈曲された側縁部が形成される。
前記下部保持部材は、下地への固定部と、左右一対の取付部と、前記屋根板の側縁部を下方から支持する支持部と、流れ方向の上端及び下端にそれぞれ上方への凸部と、を備える。
前記上部保持部材は、左右に隣り合う前記屋根板の一方の屋根板の側縁部(のみ)を上方から覆う覆い部と、前記下部保持部材の取付部に取り付けられる係合部と、を備える上部一方部材、及び左右に隣り合う屋根板の他方の屋根板の側縁部(のみ)を上方から覆う覆い部と、前記下部保持部材の取付部に取り付けられる係合部と、を備える上部他方部材からなる。
そして、下地上に固定した下部保持部材の左右に前記屋根板を配設され、前記上部一方部材の係合部を、前記下部保持部材の取付部に係合させると共に、前記上部他方部材の係合部を、前記下部保持部材の取付部に係合され、、前記下部保持部材の前記凸部にて上部一方部材及び上部他方部材の流れ方向への脱落が防止され、左右の屋根板の側縁部間を覆うカバー材が、上部保持部材に一体的に組み付けられていることを特徴とする。
【0012】
前記縦葺き屋根構造を構成する屋根板、下部保持部材、上部保持部材(上部一方部材、上部他方部材)を、以下に、それぞれ詳細に説明する。
【0013】
前記屋根板は、面板部の左右の端縁に、裏面側への下り段状に成形されると共にその先端が上方へ屈曲された側縁部が形成される構成であって、言い換えれば下り段状部と水返し片状の側縁部とを備える。
前記面板部は平板状でも波状でも特に限定するものではないが、前述のようにこの屋根板の成形(加工)を容易とすることを目的としているので、専ら後述する図示実施例のように平板状とすることが望ましい。
なお、この屋根板は、公知の金属素材等より成形され、ロール成形やプレス成型、或いは両者の組合せにより成形(成型)されるものであり、その素材厚は特に限定するものではないが、概ね0.4乃至1.6mm程度である。
【0014】
前記下部保持部材は、前述のように下地への固定部と、左右一対の取付部と、前記屋根板の側縁部を下方から支持する支持部と、流れ方向の上端及び下端にそれぞれ上方への凸部と、を備える構成である。
前記支持部は、左右に隣り合う屋根板の側縁部を下方から支持するものであるから、左右にそれぞれ形成してもよいし、一連に形成してもよく、特にその形状等を限定するものではない。
前記取付部は、上部一方部材や上部他方部材に形成した係合部と連結する部位であり、図示実施例では略中央に上方が開放する空間を備える略U字状に形成し、前記空間に中心側へ突出する左右一対の係止片を設けた構成としたが、特に限定されるものではない。即ち係合にて連結可能であれば、この取付部や上部保持部材の係合部は、どのように形成してもよい。
なお、この下部保持部材は、流れ方向に一定長さの成型材である。
また、前記支持部の外側には、後述する図示実施例に示すように屋根板の下り段状部及び面板部の端縁を下方から支持するL字状片を形成してもよい。このL字状片の横片(フランジ)は、雪止めや太陽熱集熱器機等の取付箇所とすることができる。
【0015】
なお、前記固定部の流れ方向の上端及び下端には、上方への凸部を形成してもよい。この凸部は、上部一方部材及び上部他方部材の流れ方向への脱落を防止することができる。この凸部としては、例えば後述する図示実施例のように切り込み片を立ち上げて形成した爪状でもよいし、ビス等でもよい。
【0016】
前記上部保持部材は、前述のように左右一対の上部一方部材及び上部他方部材からなる構成である。
このうち、上部一方部材は、左右に隣り合う前記屋根板の一方の屋根板の側縁部のみを上方から覆う覆い部(以下、区別のため一方覆い部という)と、前記下部保持部材の取付部に取り付けられる係合部と、を備える。
また、上部他方部材は、左右に隣り合う屋根板の他方の屋根板の側縁部のみを上方から覆う覆い部(他方覆い部)と、前記下部保持部材の取付部に取り付けられる係合部と、を備える。
前記一方覆い部も前記他方覆い部も、屋根板の側縁部を上方から覆うものであるが、特にこれらの覆い部をL字状に形成して上方から囲う場合には、負圧等が作用して面板部の中央方向へ引っ張られても、当該L字状の覆い部の縦片に側縁部の先端が当接(係止)し、面板部への引っ張りによる外れを防止するため望ましい。
なお、上部一方部材も上部他方部材も、覆い部が形成された側の逆側には、後述する図示実施例のように覆い部を設けない。
前記係合部は、上部一方部材にも上部他方部材にも設けられる部位であり、前記下部保持部材に設けた取付部と連結する部位であり、図示実施例では略U字状部分の外側に下方から上方に向かって厚肉となる左右一対の半鏃状片を設けた構成としたが、特に限定するものではない。
なお、これらの上部一方部材、上部他方部材には、流れ方向に連続するカバー材を取り付けるための固定受部を設けるが、これらの部材は一定長さの成型材として成形する。
【0017】
前述のように上部一方部材や上部他方部材の係合部と下部保持部材の取付部とは、係合にて連結可能であればどのように形成してもよく、後述する図示実施例のように上方から押圧して弾性嵌合させるものが好ましい。
【0018】
そして、前記屋根板の側縁部は、前記上部一方部材の一方覆い部、前記上部他方部材の他方覆い部にて、上方から覆われると共に、前記下部保持部材の支持部にて、下方から支持される構成であるから、上下から挟着状に保持される被挟持部分となる。
この側縁部は、前述のように先端が上方へ屈曲されて水返し片状に形成されるため、その先端が当接(係止)するように覆い部(一方覆い部及び他方覆い部)をL字状に形成することが望ましい。
【0019】
また、本発明の縦葺き屋根構造には、左右に隣り合う屋根板間に排水部材を配設していることが望ましく、特に中央に隆起部を備える排水部材を下地に配設し、前記下部保持部材を前記隆起部に配した状態で固定具を打ち込んで固定することが望ましい。仮に側縁部の裏面側に雨水等が廻り込んだとしても、排水部材の排水部にて確実に流下(排水)させることができるからである。
【0020】
また、前述のように上部一方部材や上部他方部材は、流れ方向に連続するカバー材を取り付ける固定受部を設けるため、該カバー材により、雨水等の浸入を防止することができる。
前記カバー材は、少なくとも左右の屋根板の側縁部間を覆う被覆部を有するものであって、前記固定受部に取り付けられる固定部を備える連続材である。前記被覆部は、前記屋根板の側縁部を覆う部位であって、その配設に際して両面粘着フォーム材等の止水材を介在させて側縁部との間からの雨水等の浸入を防止していることが好ましい。また、前記固定部は、上部一方部材や上部他方部材に設けた固定受部に係合等にて連結される部位であって、係合や嵌合等にて連結可能であれば、これらの固定受部や固定部は、どのように形成してもよい。
【実施例0021】
図1には、本発明の実施例1の縦葺き屋根構造に用いる左右一対の上部保持部材3(3A,3B)と下部保持部材2とを示すものであり、同図(a)は上部一方部材3Aの三面図(平面図、正面図、左側面図)であり、同図(b)は用いた下部保持部材2の三面図(平面図、正面図、右側面図)、同図(c)は用いた上部他方部材3Bの三面図(平面図、正面図、左側面図)であり、
図1(b)の平面図と正面図との間には、用いる屋根板1の正面図を点線にて示したので、下部保持部材2への屋根板1の取付状態が示されている。
【0022】
各構成部材をそれぞれ簡易に説明すると、前記屋根板1は、面板部11の左右のそれぞれの端縁に、下り段状に成形される(下り段状部12)と共にその先端が上方へ屈曲された側縁部13が形成される。
また、前記下部保持部材2は、図示しない下地への固定部22と、左右一対の取付部23と、前記屋根板1の側縁部13を下方から支持する支持部24と、を備える。
さらに、前記上部保持部材3Aは、左右一対の上部一方部材3A及び上部他方部材3Bからなり、上部一方部材3Aは、左右に隣り合う屋根板1,1の一方の屋根板1の側縁部13のみを上方から覆う覆い部31aと、前記下部保持部材2の取付部23に取り付けられる係合部33と、を備え、上部他方部材3Bは、左右に隣り合う屋根板1,1の他方の屋根板1の側縁部13のみを上方から覆う覆い部31bと、前記下部保持部材2の取付部23に取り付けられる係合部33と、を備える。
【0023】
前記屋根板1は、この図示実施例では略水平状の平板部分である面板部11の左右の端縁に、下り段状部12と水返し片状の側縁部13とを備える構成であり、ロール成形やプレス成型、或いは両者の組合せにより成形(成型)され、その素材厚は概ね0.4乃至1.6mm程度に成型した。
前記下り段状部12及び前記側縁部13は、略Z字状に成形され、下部保持部材2の支持部24に支持させた際に安定に保持される。
【0024】
前記下部保持部材2は、
図1(b)に示すようにこの図示実施例では略H字状の左右の縦片21,21が大きく拡開する部材であって、該縦片21,21を連結する略水平状の横片22が当該
図1には図示しない下地への固定部であり、その平面図に示すように部材の略中央に形成した孔220が固定具2bの取付孔である。前記固定部22の上方空間が、上部一方部材3Aや上部他方部材3Bに設けた略U字状の係合部33を取り付ける取付部23であって、より具体的には、この略U字状部分33の外側に形成されて左右一対の突出片331,331が、取付部23の空間に中央側へ突出する左右一対の係止片231,231に弾性的に係合(嵌合)する。
なお、前記固定部22の流れ方向の上端(図面では前端)及び下端(図面では後端)には、それぞれ切り込み片を立ち上げて形成した爪状の凸部221,221が形成されている。
また、前記左右の縦片21,21の上端から端側へ略水平状に延在する横片24が前記屋根板1の側縁部13を下方から支持する支持部であり、更に外側へ延在するL字状片25が下り段状部12及び面板部11の端縁を受支する受支部である。なお、縦片21の上端には突起片232が、受支部25の横片の中央側にも突起片251が形成されているので、支持部24が上方が開放する囲い皿状に形成され、屋根板1の側縁部13を支持させた際に安定に係合状に保持することができる。
【0025】
前記上部一方部材3Aは、
図1(a)に示すようにこの図示実施例ではU字状の片方(左側)の縦片の上端を端側へ延在させた部材であって、前記下部保持部材2の取付部22に取り付けられるU字状の係合部33と、該係合部33の片方(左側)の縦片の上端から端側へ延在して前記屋根板1の側縁部13を上方から覆うL字状の一方覆い部31aと、を備える一定長さの成型材である。なお、前記係合部33のもう片方(右側)の縦片の上端には僅かに端側へ延在する押し部32aが設けられている。
さらに、前記係合部33(U字状)の外側に下方から上方に向かって厚肉となる左右一対の半鏃状片が係合片331,331として設けられ、前記係合部33(U字状)の内側に上方から下方に向かって厚肉となる左右一対の半鏃状片が係止片332,332として設けられている。
これらの上部一方部材3A及び上部他方部材3Bは、前述のように一定長さの成型材であるが、その流れ方向の寸法は、前記下部保持部材2の流れ方向の長さの半分以下にで形成されている。
【0026】
前記上部他方部材3Bは、
図1(c)に示すようにこの図示実施例ではU字状の片方(右側)の縦片の上端を端側へ延在させた部材であって、前記上部一方部材3Aとは左右対称の部材である。そのため、前記上部一方部材3Aと同様に前記下部保持部材2の取付部22に取り付けられるU字状の係合部33を備えるが、該係合部33の片方(右側)の縦片の上端から端側へ延在して前記屋根板1の側縁部13を上方から覆うL字状の他方覆い部31bを備える一定長さの成型材であり、前記係合部33のもう片方(左側)の縦片の上端には僅かに端側へ延在する押し部32bが設けられている。
【0027】
前記下部保持部材2に対し、前記屋根板1,1を配設するには、
図1(b)中に示すように下部保持部材2設けた支持部24,24に、屋根板1,1に設けた側縁部13,13を支持させる。
その際、前記支持部24は、
図1(d)に示すように中央側に突起片232が、端側に受支部25から延在する突起片251が存在するため、上方が開放する囲い皿状であり、屋根板1の側縁部13を安定に係合状に保持することができる。
【0028】
その後、
図1(e)に示すように前記上部一方部材3Aの係合部33を、前記下部保持部材2の取付部23に係合させると共に、
図1(f)に示すように前記上部他方部材3Bの係合部33を、前記下部保持部材2の取付部23に係合させる。
その際、上部一方部材3Aや上部他方部材3Bの取付は、点線で示すように一方覆い部31aや他方覆い部31bが上になるように傾斜状に臨ませて回動状に取付部23へ係合させることができる。言い換えれば、覆い部31a,31bが形成されない押し部32a,32bが下になるように臨ませて回動させると、押し部32a,32bを取付部23の上端に近接させて回動できるため、容易に係合させることができる。
【0029】
図2(a)~(c)は、前記上部一方部材3A、前記上部他方部材3B、及び前記下部保持部材2を、並びにその係合状態をそれぞれ斜視図にて示している。
図2(d)は、排水部材6上にて屋根板1の側縁部13を上部保持部材(3A,3B)及び下部保持部材2で挟持すると共にカバー材5を配設した状態の分解斜視図であり、
図2(e)は、排水部材6上に配設した下部保持部材2への上部保持部材(3A,3B)の取付状態、左右の縦葺き屋根板1,1とカバー材5との配置関係を示す状態を示す斜視図である。
【0030】
前記排水部材6は、底面部61の略中央に上方へ凸状の隆起部62を備え、前記底面部61の左右端を上方へ立ち上げて側面部63,63としており、前記隆起部62を挟んで左右に排水部が形成されている構成である。なお、この隆起部62の裏面側には、弾性止水材8Bが配設されている。
前記カバー材5は、流れ方向に連続する通し材であって、隣り合う屋根板1,1の側縁部13,13間を覆う略平坦状の被覆部51の左右の端縁を裏面側へ折り返し、更に下方へ折り下げると共に、その下端をそれぞれ外側へ跳ね上げ状に折り曲げて係合部52,52を設けた構成である。なお、このカバー材5の被覆部51の左右の端縁は、膨出する円弧状に成形されている。また、この被覆部51の裏面側には、弾性止水材8Aが配設されている。
【0031】
前記排水部材6には、前述のように隆起部62が形成されているので、前記下部保持部材2を配設し、部材の略中央に形成した取付孔220に対して固定具2bを打ち込むことにより、両部材6,2を一連に固定することができる。
図示実施例では、前述のように隆起部62の裏面側に弾性止水材8Bが配設されているので、排水部材6の排水部からの雨水が仮に固定具2bを伝うことがあっても、弾性止水材8Bにて下地4上への漏水を防止できる。
その後、取り付けた下部保持部材2に対し、左右の屋根板1,1の側縁部13,13を前述の操作手順にて取り付け、その後、上部一方部材3A及び上部他方部材3Bを取り付ける手順に付いても既に説明したとおりである。
図示実施例では、
図2(c)~(e)に示すように上部一方部材3Aを前記取付孔220の水下側(図面手前側)に、上部他方部材3Bを前記取付孔220の水上側(図面奥側)に、取り付けるが、前記固定部22の流れ方向の上端(図面では前端)及び下端(図面では後端)には、それぞれ切り込み片を立ち上げて形成した爪状の凸部221,221が形成されているため、流れ方向への脱落が防止される。
【0032】
その後、前記カバー材5を上方から臨ませ、上部一方部材3A及び上部他方部材3Bの係合部33,33に係合するように上方から押圧して係合部52,52を弾性係合させて取り付け、略平坦状の外装面を形成する。
即ち前記カバー材5の被覆部51と前記屋根材1の面板部11は、面一状に連続して略平坦状の外装面を形成する。
【0033】
図2(f)には、排水部材6上に配設された下部保持部材2へ上部他方部材3Bを配設した状態を示すが、
図2(g)には、上部一方部材3Aと上部他方部材3Bの両方を配設した状態を示している。即ち
図2(f)は、取付孔220から水上側を見た断面図であって、
図2(g)は、水下端から水上側を見た正面図であるため、上部他方部材3Bを点線にて示している。
【0034】
図3(a)は、施工された縦葺き屋根構造の側断面図であって、
図3(b)には、その正面図を示すが、上部他方部材3Bの取付状態を明確に示すため、同図の右側には、前記
図3(a)中に示した一点鎖線における断面構成を示している。
同図における下地4は、流れ方向に配された角状材(母屋)4A上に木毛セメント板などからなる野地板4Bが敷設され、更にその上にアスファルトルーフィング4cが配設された構成である。
前記下地4の上には、適宜間隔で断面矩形状の断熱材7が配され、この断熱材7,7の配設間隔には、前記排水部材6及び前記下部保持部材2が配設されている。
【0035】
これらの各部材からなる図示実施例の縦葺き屋根構造を施工するには、以下の手順で行う。
まず、前記下地4の上に、所定間隔にて前記断熱材7を敷設し、隣り合う間隔に前記排水部材6を配すると共にその隆起部62に跨るように前記下部保持部材2を配設し、固定具2bにて下地4に固定する。
次に、前記断熱材7上に前記屋根板1を配設し、その面板部11の端縁及び下り段状部12を前記下部保持部材2の受支部25に載置させると共に、その側縁部13を前記支持部24に載置させる。
図示実施例では、支持部24は、上方が開放する囲い皿状であるため、屋根板1の側縁部13を安定に係合状に保持できることは既に説明したとおりである。
【0036】
続いて、前記上部一方部材3Aや前記上部他方部材3Bの係合部33を、前記下部保持部材2の取付部23に対して取り付ける。
この上部一方部材3Aや上部他方部材3Bの取付部23への取付についても、既に説明したように覆い部31a,31bが形成されない押し部32a,32bを取付部23の上端に近接させて回動させることで、容易に取付部23に係合させることができる。
図示実施例では、上部一方部材3Aの水下端は、下部保持部材2の水下側の凸部221に係止され、上部他方部材3Bの水上端は、下部保持部材2の水上側の凸部221に係止されるため、流れ方向への脱落が防止される。
【0037】
その後、前記カバー材5を上方から臨ませ、上部一方部材3Aや上部他方部材3Bの係合部33(係止片332)に係合するように上方から押圧して係合部52を弾性係合させて取り付け、略平坦状の外装面を形成する。
図示実施例では、カバー材5の被覆部51の裏面側に、弾性止水材8Aが配設されているため、該弾性止水材8Aが被覆部51の先端側から浸入しようとする雨水のそれ以上の浸入を防止することができる。
【0038】
そして、前記各部材から構成される図示実施例の縦葺き屋根構造は、左右一対の上部保持部材3A及び下部保持部材3Bによって縦葺き屋根板1,1の側縁部13,13を挟持する施工法により得られたものであり、左右に隣り合う縦葺き屋根板1,1の何れか一方のみを上部一方部材3Aにて保持し、他方の縦葺き屋根板1のみを上部他方部材3Bにて保持するので、上部一方部材3Aも上部他方部材3Bも、覆い部31a,31bが形成された側の逆側には設けないため、下部保持部材2の取付部23に、容易に取り付けることができ、強固な保持作用と確実な防水作用を果たすことができる。
【0039】
特に、上部一方部材3Aや上部他方部材3Bの取付は、一方覆い部31aや他方覆い部31bが上になるように傾斜状に臨ませ、容易に回動状に取付部23へ係合させることができる。要するに押し部32a,32bが下になるように取付部23の上端に近接させて臨ませて回動させると、容易に係合させることができる。例えば当該上部一方部材3Aや上部他方部材3Bが、十数センチより小さな部材だったとしても、取付に支障を生ずることなく、上部一方部材3Aも上部他方部材3Bを容易に取り付けることができる。