(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113780
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】地下トンネルを建設する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
E21D9/06 311B
E21D9/06 331
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091556
(22)【出願日】2023-06-02
(62)【分割の表示】P 2021559457の分割
【原出願日】2020-03-20
(31)【優先権主張番号】1903979.1
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】521437758
【氏名又は名称】ハイパートンネル アイピー リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,スティーブン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長いキロメートルのトンネルは、問題を生じさせ得る地質範囲を貫通する可能性がある。従来、トンネルの延長に沿って地質のサンプリングを行ない、それらサンプルから推定する。
【解決手段】少なくとも25mの延長を有する第1のボア10を穿孔する。それぞれ第2の所定の経路に沿って、複数の第2のボア20を穿孔する。ボア20の各々は、それらの間で実質的に角柱形状の領域を画定するために、第1の所定の経路に対して実質的に平行である。実質的に角柱形状の領域内の物質を掘削してトンネルを形成することによって先行技術の欠点を克服する。第1のボア10及び複数の第2のボア20を穿孔したデータを記録し、貫通して掘削することになる物質のタイプをオペレータに知らせるために使用することができる。したがって、基礎地質のより完全な見通しを、掘削開始前に得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下トンネルを建設する方法であって、
第1の所定の経路に沿って基礎地盤を貫通して、少なくとも25mの延長を有する第1のボアを穿孔するステップと、
それぞれ第2の所定の経路に沿って基礎地盤を貫通して、複数の第2のボアを穿孔するステップであって、前記それぞれ第2の所定の経路の各々は、それらの間で実質的に角柱形状の領域を画定するために、前記第1の所定の経路に対して実質的に平行である、穿孔するステップと、
前記実質的に角柱形状の領域内の物質を掘削して、トンネルシールドによってトンネルを形成するステップであって、
前記トンネルシールドは、その先端に複数のプローブを備え、前記複数のプローブにおける各々のプローブは、前記第1のボア及び前記複数の第2のボアにおけるそれぞれのボアと位置合わせされる、トンネルを形成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のプローブは、前記第1及び/または前記複数の第2のボア内から掘削するよう構成されたツールが装備される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シールドは、ドラグラインシールドであり、前記方法は、物質を貫通して前記ドラグラインシールドを引くことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ドラグラインシールドは、複数のケーブルによって物質を貫通して引かれ、前記複数のケーブルの各ケーブルは、前記第1のボア及び前記複数の第2のボアにおけるそれぞれのボアを貫通する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のケーブルの各ケーブルは、前記第1のボア及び前記複数の第2のボアのそれぞれのボアを通して、ダウンホールに固定されたケーブル戻りキャリッジに渡され、それぞれの前記ボアを通して前記ドラグラインシールドに戻される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の方法によって、地下トンネルを施工するシステムであって、
第1のボア及び複数の第2のボアを穿孔するよう構成された、方向性穿孔装備と、
前記第1のボア及び前記複数の第2のボアによって画定された、実質的に角柱形状の領域内の物質を掘削して、トンネルを形成するよう構成された、掘削装備と、
先端に複数のプローブを備え、前記複数のプローブにおける各々のプローブは、前記第1のボア及び前記複数の第2のボアにおけるそれぞれのボアと位置合わせされる、トンネルシールドとを備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に地下トンネルを建設する方法及びシステムに関し、排他的ではないが、特に長いキロメートルの延長を有するトンネル建設に利用することを見出す。
【背景技術】
【0002】
コスト及びスピードに加えて、トンネルを建設するときの主な困難は、遭遇することになる地質から発生する。比較的短いトンネルにおいて、地質はかなり均質である場合があり、計画は容易である。しかし、長いキロメートルのトンネルは、重大かつ潜在的に壊滅的な問題を生じさせる地質範囲を貫通する可能性がある。理想的には、トンネルは、その全延長にわたって有利及び/または均質な地質で建設される。しかし、従来の方法は、提案されたトンネルの延長に沿って(可能であれば)上方から地質のサンプリングのみを行ない、それらサンプルから推定することに関わる。
【0003】
回転切削ホイールが前面に付けられた大きい金属製の円筒形シールドを備え、かつ(任意選択で地質/土質条件に依拠して、抽出のためのスラリーと混合した)掘削土が蓄積されるチャンバを含んだ、トンネル掘削機(TBM)が公知である。チャンバの後には、背後のコンクリート製トンネル壁に対してTBMを前方へ押し出すために使用される、液圧ジャッキのセットが存在する。トンネル壁は、TBMが前方へ動く際にセグメントで設定される。一旦TBMが1つのセグメントの延長を掘削すると、TBMは停止して、新しいトンネルリングが、プレキャストコンクリートセグメントを利用したエレクタによって施工される。シールドの背後で、トンネルの仕上げ部の内側において、一般的にTBMシステムの一部と考慮される、泥除去部、適用できる場合はスラリー用パイプライン、制御室、プレキャストセグメントを搬送するためのレールなど、別の作業機構が確認され得る。しかしTBMは、トンネル掘削における停止と起動の性質、及び単一のTBMは、異なる岩盤/土質のタイプの間(特に酷い破砕層及びせん断岩石層)では容易に移行できないことを含む、様々な不利点を有する。
【0004】
加えて、鉱業、オイル及びガス、ならびに建設産業で使用されるような、様々な方向性ボーリング技術。例えば、水平方向穿孔(HDD)は、パイプの設定などのために使用される。HDDは、100~1200mmの径で800m以下までの長さしか、精確な穴を好適にボーリングすることができない。代替として方向性穿孔は、オイル及びガス産業で使用され、より長い穴をボーリングすることができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、以下で説明するようなシステム及び方法を提供することによって、先行技術の不利点を克服するよう努める。本発明は、新しいトンネルの建設、ならびに現存のトンネルの拡張、及び/または再ライニング、及び/または補修に、使用され得る。
【0006】
本発明の第1の態様によると、地下トンネルを建設する方法が提供され、この方法は:少なくとも25mの延長を有する第1のボアを、基礎地質を貫通する第1の所定の経路に沿って穿孔するステップと;基礎地質を貫通する第2の所定の経路にそれぞれ沿った、複数の第2のボアを穿孔するステップであって、それぞれ第2の所定の経路の各々は、それらの間で実質的に角柱形状の領域を画定するために、第1の所定の経路に対して実質的に平行である、穿孔するステップと;実質的に角柱形状の領域内の物質を掘削して、トンネルを形成するステップと、を備える。
【0007】
このように、第1のボア及び複数の第2のボアを穿孔したデータを記録し、貫通して掘削することになる物質のタイプをオペレータに知らせるために使用することができる。したがって、基礎地質のより完全な見通しを、掘削開始前に得ることができる。
【0008】
穿孔は、例えばHDD、またはオイル及びガス産業で使用される方向性穿孔の形態である、方向性ボーリングを含み得る。
【0009】
穿孔作業は、予め建設したトンネル入口及び/もしくは出口から、中間に位置されたシャフトから、ならびに/または地表から、実施され得る。
【0010】
第1のボア、及び/または複数の第2のボアにおける各々は、実質的に円形の断面、ならびにその径よりも大きい桁の延長を有する、穴及び/またはシャフトから構成され得る。例えば、各ボアは、100~1200mmの径を有し得る。各ボアは、少なくとも25m、少なくとも50m、少なくとも100m、少なくとも200m以上の延長を有し得る。
【0011】
本方法は、第1の所定の経路(及び任意選択で第2の所定の経路)を判断することを含み得る。しかしこれは、従来の方法で成される。
【0012】
実質的に角柱形状の領域は、複数の第2のボアのみによって画定され得るか、または複数の第2のボア及び第1のボアの組み合わせによって画定され得る。例えば、2本の第2のボアと組み合わせた第1のボアは、三角形の角柱領域を形成し得る。別の例にように、3本の第2のボアのみで三角形の角柱形状を形成し、第1のボアはこの三角形の角柱形状の領域内に位置される。代替として、互いに対して適切に設置された場合、3本の第2のボアは、第1のボアと共に立方体(正方形の角柱形状)の領域を形成し得る。
【0013】
角柱形状の領域は、湾曲し得る。すなわちこの領域は、その全延長に沿って、幾何学的形状(例えば三角形、正方形など)で、規則正しいか、またはそうではない断面を有し得る(その幾何学形状及びその形状のサイズは、その延長に沿って一定であり得る)。しかし、この領域を基礎とする経路は直線ではなくてもよく、曲線であってもよい。
【0014】
第1のボアは、単一の第1のボアか、または複数の第1のボア(例えば2本または3本の第1のボア)を備え得る。第1のボアは、リードボアを備え得る。リードボアは、角柱形状の領域の周囲から離隔され、角柱形状の領域における内側部分を貫通して位置され得る。
【0015】
第1のボアからのデータが、貫通して穿孔が実施される物質を判断するために、収集され得る。
【0016】
複数の第2のボアは、トンネルの外径を形成し得る。すなわち、複数の第2の経路は、提案されたトンネルの壁に沿って突出し得る。
【0017】
トンネルの断面は円形であってよい。しかし、矩形、半円形、アーチ型、平坦な底部など、他の断面も可能である。円形または湾曲した壁は、形成されるトンネルの安定性を向上させ得るが、これが(例えば第1/第2のボアから得られたデータから)不必要とされる場合、平坦な床部が、人、掘削装備、及び土砂用カートの容易な運動を促進させるために選択され得る。
【0018】
第1及び/または第2のボアは、例えば(埋め殺しの)パイプまたはライナーを用いてライニングされ得る。このように、各ボアの完全性が保護され得る。第1のボアは、複数の第2のボアにおける穿孔が開始される前、及び/または完了された後に、ライニングされ得る。同様に、第2のボアのうち少なくとも1本は、第1のボアの穿孔が開始される前、及び/または完了された後に、ライニングされ得る。ライニングは、ボア全体をライニングすること、またはボアの一部のみをライニングすることから構成される。任意のボアのライニングは、掘削に先立ち、除去されるか、または部分的に除去され得る。
【0019】
第1及び第2のボアの全て、またはいくつかは、同時に穿孔され得る。または各ボアは別々に穿孔され得る。これは、各ボアの完全性にリスクがある土砂を貫通して穿孔するとき、特に重要となり得る。
【0020】
トンネルを形成するための、実質的に角柱形状の領域内の掘削物は、トンネルシールドによって運び出され得る。トンネルシールドは、その先端に複数のプローブを備え、複数のプローブにおける各々のプローブは、第1のボア及び複数の第2のボアにおけるそれぞれのボアと位置合わせされる。
【0021】
シールドの形状は、トンネルの外形、すなわち掘削する領域の断面と一致する。これらのプローブは、第1及び/または第2のボア内に適合するようサイズが決められ得る。詳細には、これらのプローブは、所定の経路から各ボアの位置が、例えば50cmまで、より詳細には30cmまでの、いくらかの変動が認められるよう、サイズが決められ得る。
【0022】
許容外の逸脱が発生する範囲は、一時的に関連のプローブを(再係合され得るときまで)後退/除去することによって、及び(例えばロードヘッダユニットで確認されるような、ブームが取り付けられた切削ヘッドなど)代替の手段で掘削することによって、対処され得る。
【0023】
プローブには、(任意選択で相互交換可能な)ツールが装備され得る。これらツールは、第1及び/または第2のボア内から掘削可能にする。詳細には、例えばディスクカッター、回転カッターのシリンダまたはコーン、作業の対象となる物質に好適な歯状物を伴うチェーンソータイプのアーム、高圧水、プラウブレード、及び必要に応じてトンネルの外周及び内側の両方に向けて非常に大きな圧力を加えて、除去する物質をさらに緩めて破壊する液圧スプリッタなどの、様々な異なるツールが異なる物質に使用するために利用され得る。
【0024】
プローブは後退可能であり、それによってシールドの動きを必要とせずに、プローブは取り除くことができるか、またはツールを交換できる。
【0025】
破壊/崩落技術を、軟性及び/または緩い物質を掘削するために使用できる。このタイプの作業のため、プローブは、シールドが前進する際にプラウブレードと適合される。
【0026】
シールドが前進する際に、レーザアレイを使用して新たに露出された掘削外面を常に走査して、物質が残されて外周からトンネルの中に突出し、シールドの進捗を妨害するか邪魔をすることのないことを保証し得る。地中探知レーダも、新たに露出されたトンネルの、掘削残土が覆った領域で使用され得る。
【0027】
本方法は、このような領域が検出されたときに、例えば空気穿孔機もしくは交換可能な切削ヘッド、または他の好適なツールと共に取り付けられた、ロボットアームを使用することによって除去することを、さらに含み得る。
【0028】
方向性ボーリング/穿孔技術が、シールド技術と組み合わされることによって、シールドの各プローブの前部で実施され得る。それによって、穿孔が完了する前にシールドが前進するのを可能にする。
【0029】
シールドは、傾斜の付いた先端縁部を有し得る。その角度は、掘削する物質の性質に基づいて従来の方法によって選択することができる。詳細には、傾斜の付いた先端縁部は、掘削するトンネルに向かって上方に傾斜する。
【0030】
シールドは、液圧ラムによって押し込まれ得る。
【0031】
シールドは、ドラグラインシールドを備え得る。本方法は、物質を貫通してドラグラインシールドを引くことをさらに含み得る。ドラグラインシールドは、トンネルシールドとドラグライン掘削機技術との組み合わせであってよい。ドラグライン掘削機は、ブームによって位置付けするよう、ブームから懸架されたドラグラインバケットを備え得る。ケーブル/ロープ/チェーン(通常はウィンチで制御される)は、バケットを引張るために使用され、それによって掘削する物質をバケットの中にかき集める。ドラグラインシールドは、ウィンチで制御された(第1及び/第2のボアを通される)ケーブルによって同様に引張られる。しかし、ドラグラインシールドはトンネル内に置かれ、位置付けは不要であるので、位置付けブームは必要ない。
【0032】
ドラグラインシールドは、複数のケーブルによって物質を貫通して引かれ得る。複数のケーブルの各ケーブルは、第1のボア及び複数の第2のボアそれぞれを貫通する。
【0033】
このように、シールドの進捗は、確実かつ継続的となり得る。各ケーブルはそれぞれのプローブに装着される。シールドを前方に引くために、ウィンチは、複数のケーブルにおけるそれぞれのケーブル、または複数のケーブルのうち2本以上のケーブルに作用し得る。ウィンチは、ボアの反対側の端部(例えば開放端部)において提供され得る。
【0034】
複数のケーブルの各ケーブルは、第1のボア及び複数の第2のボアそれぞれを通して、ダウンホールに固定されたケーブル戻りキャリッジに渡され、それぞれのボアを通してドラグラインシールドに戻され得る。
【0035】
このように、ウィンチは、シールドの背部または内部に設けられ、各ボアが完成する前にシールドの作業を可能にし得る。
【0036】
ケーブル戻りキャリッジは、締付システムを備え得る。この締付システムは、ボアの壁と係合し、ボアの中に設置される。締付システムは、命令によって係合及び係合解除するよう、遠隔で操作可能であってよく、それによって締付システムは必要に応じて新たな箇所に移動させることができる。
【0037】
掘削残土は、例えば機械掘削機を用いて、連続的にローディング機構の上に除去され得る。しかし好ましい実施形態において、シールドは、掘削したトンネルを通した前方への動きが、掘削した掘削残土をローディング機構の上に持ち上げるよう、形状付けられる。詳細には、掘削残土を持ち上げる作用は、ブルドーザまたはドラグラインバケットの作用と類似する。
【0038】
シールドからの掘削残土の除去は、従来の方法によるものであり、重機を用いることが可能なトンネル床に戻される。重機は、ゼロエミッションで自立式の、電力または液圧式牽引車両を備え得る。これらの車両は、例えば使用される場合はプレキャストのライニングセグメントなどの材料を施工領域に運び、同様に掘削残土を撤去し得る。これら車両は、必要な場合、作業を再開する前に自動的に充電ポイントまで戻るよう構成され得る。
【0039】
最下のボア(例えばトンネルの床に沿ったボア)は、掘削残土がシールドに入るポイントの背後で、きれいに掃除され、それによってシールドの車台(例えばホイール/スキッド)は、埋め殺しライナーから所定の位置に残された、起伏の多いハーフパイプの中を進み得る。このように、シールドが前進する際に、レールを設定または延伸させる必要はない。
【0040】
任意の1本、または各ボアは、ライナーによってライニングされ得る。このライナーは、埋め殺しライナーを構成し得る。このライナーは、固体壁を構成し得る。代替として、ライナーは予め孔が開けられ得る。このように、現場の時間及びコストは、基礎地質が良好であると理解された状況において、避けられ得る。予め孔が開けられたライナーは、孔を覆う外側スリーブを備え得る。このように、物質または水が、制御されない方法でボアの中に入るのを防止し得る。
【0041】
装備は、従来の方法でライナーを貫通し、所望の箇所における作業を実施し得る。この装備は、戻りキャリッジ、穿孔ヘッド、及び/または孔開けガンを含み得る。詳細には、孔開けガン(水圧破砕産業で従来使用されるような)は、ライナーを貫通して、所望の箇所でライナーに孔を開け得る。孔開けガンは、複数の形状の装薬を備え得る。孔開けガンは、ライナーを越えて物質を弱体化するよう構成され得る。すなわち装薬は、物質を破砕するよう作用し得る。孔開けは、例えば角柱形状の領域に向けて内側に面するよう、角柱形状の領域から外側に離れて面するよう、及び/または角柱形状の領域の外径に沿って横断するよう、ライナーに対して所望の箇所に形成され得る。
【0042】
本方法は、物質を掘削する効率を向上させるために、掘削に先立ち、基礎地質を処置するステップをさらに含み得る。
【0043】
処置は、実質的に角柱形状の領域内の物質を、音波/水圧破砕することを含み得る。
【0044】
この領域の物質が比較的硬い場合、圧力水を、例えば孔を介して導入し、物質の破砕を生じさせ得る。天然ガスまたはオイルを移動させるための水力破砕作業とは異なり、破砕部を開けておくための水圧破砕プロパント(砂または酸化アルミニウムのいずれか)の小さい粒子を導入する必要はない。
【0045】
音波/水圧破砕技術を、孔を介して適用することで、例えば領域の中など、特定の予め決められた方向にのみ破砕を発生させることが可能である。
【0046】
シールドの前において、リーミングツールはボアを貫通し、埋め殺しライニングを破壊して、掘削する物質を破壊/崩落させ、それによって除去プロセスを補助し得る。
【0047】
処置は、実質的に角柱形状の領域の外側における基礎地質を、安定化させることを含み得る。
【0048】
このように、領域の外側における物質が比較的脆弱で、空洞を含み、不安定または浸水した場合、物質を安定化させることができる。装備をボアの下に設置して、基礎地質を安定化させ得る。
【0049】
安定化は、例えばポンプで冷却剤をライナーに通し、孔を通してライナーから出ることによる、地盤凍結技術を介するものであってよい。凍結技術は仮設であってよい。
【0050】
代替として、恒久的な安定化が、例えば化学薬品送達ノズル(例えば伸縮自在アーム内)を介した、化学安定剤を注入することによって実現され得る。使用される安定剤の量及びタイプは、安定化させる地質によって判断することになり、セメント、またはマイクロセメント、(コロイド状シリカとして公知の)鉱物グラウト、感水性のポリウレタン(水の浸入に対抗する、素早く反応する発泡用樹脂)、素早く反応する非感水性の任意のポリ尿素シリケートシステム(空隙を充填するための膨張発泡体)、アクリル樹脂、ジェットグラウティングすなわちソイルクリート(Soilcrete)(登録商標)として良く知られる、設計した特性に地盤を硬化させる原位置施工など、任意の他の材料を備え得る。
【0051】
実質的に角柱形状の領域の外側における、基礎地質の安定化は、完全に防止するとまではいかないが、さらなる水の浸入を大幅に軽減させ得る。掘削するトンネルの範囲内に残る、いかなる地下水も、最下のボアを介して排水することができる。
【0052】
上述のような安定化または脆弱化は、シールドを用いて同時にもたらすことができるので、地盤造成を、シールドの前進を開始する前に完全に完了させる必要はない。
【0053】
実質的に角柱形状の領域の外側における、基礎地盤の安定化を使用して、掘削に先立ってトンネルの当初の外側構造(シェル)を形成することができる。
【0054】
代替及び/または追加の、トンネルライニングの選択肢として、(防水ライニングを含むか、または含まない)プレキャストコンクリートセグメント、(例えば鉄筋を使用するモジュール式シャッター設計の型枠を含む)現場打ちコンクリート、及び/または、例えば吹付で適用される(防水膜を伴うか、または伴わず、任意選択でルーフボルト、ワイヤメッシュ、もしくはスチールリブ/鉄筋を組み込んだ)「ショットクリート(shotcrete)」などの吹付コンクリートが挙げられる。
【0055】
考えられるところでは、本発明を、木材、レンガ積み、メーソンリ、トンネル工法におけるパイプ、及び/または鋳鋼/鉄セグメントの、トンネルライニングと共に使用することもでき得る。
【0056】
例えば、トンネルライニングの構成は、吹付で適用される防水膜(例えばBASF(登録商標)の吹付で適用された防水膜は、連続的な防水システムを構成し、吹付コンクリートと原位置コンクリートとを組み合わせて作業するよう編成され、複合構造の構築を容易にする)、及び繊維補強コンクリートによる内側仕上げ吹付、を備え得る。代替として、地質が、より大きい構造的完全性を必要とする場合、現場打ち工法が好ましい場合がある。
【0057】
本方法は、連続的なコンクリート成形プロセスをさらに含む。詳細には、シールドが前進する際に、一連の連続した再使用可能な金属製型枠のうち最後のものは、前方へ動かされ、旧コンクリートは固化されており、ほぼノンストップのプロセスで打設が続く前部に位置付けられ得る。水及びセメントは、施工領域に運び込まれ、コンクリートは、可能であれば掘削した骨材を使用して掘削作業の近くの位置で混合され得る。型枠は、1セクションに3または4ピースで、概ね10mの延長であり、使用中は10以上のセグメントを伴うことが想定される。これは、連続サイクルにおいて、シールドの背後におけるトンネルの90mまででは、型枠を所定の位置に有して、前部において新しいコンクリートを打設し、後部においてコンクリートが固化され、そこで型枠セグメントのセットが取り外されて前部に渡されることを意味する。型枠は、コンクリートが最も古く、かつ固化した箇所のユニットを前方へ動かして、プロセスの前方において再展開させるよう、互いに対して通過することができる。型枠と、コンクリートが打設される表面との間の密閉が、空圧ガスケットを用いて作られ得る。一旦、最新の型枠が設置され、ガスケットが膨張すると、前のガスケットは収縮することになり、それによって打設は継続する。このプロセスは単純に繰り返され得る。
【0058】
方向性ボーリング及び掘削からの掘削残土は、コンクリート生成のために使用され得る。このコンクリートは、(予め組み立てられたライナーが使用される場合の)トンネルスキンと、シェルとの間の空間の中にポンプで運ばれ、それらの間の空隙を充填して、構造をさらに安定化させることができる。代替または追加として、このような掘削残土(例えば岩の破片)を、可動及び再使用可能型枠、または吹付コンクリートなど他のライニング工法を使用して、トンネルライニングを形成するよう、コンクリートを現場で生成するために必要な骨材の一部として使用され得る。
【0059】
連続プロセスにおいて、コンクリートが固化する際にコンクリートを保護する金属プレートまたは構造物を伴い、シールドが前方へ動きながら、平坦な床が打設され得る。シールドは、床において方向性穿孔されたボアのいくつかを、軌道またはレールとして利用し得る(必要な数は、シールドの設計によって判断される)。これらは、全てのトンネル工事が終了し、シールドが取り除かれると、充填されるか、または他の目的に使用することができる。
【0060】
本発明の第2の態様によると、地下トンネルを建設する方法が提供され、この方法は:第1のボアを、基礎地質を貫通する第1の所定の経路に沿って穿孔するステップと;基礎地質を貫通する第2の所定の経路にそれぞれ沿った、複数の第2のボアを穿孔するステップであって、それぞれ第2の所定の経路の各々は、それらの間で実質的に角柱形状の領域を画定するために、第1の所定の経路に対して実質的に平行である、穿孔するステップと;第1のボア及び/または複数の第2のボアのうち少なくとも1本を、パイプ及び/またはライナーでライニングするステップと;実質的に角柱形状の領域内の物質を掘削して、トンネルを形成するステップと、を備える。このように、各ボアの完全性が保護され得る。
【0061】
第1のボア及び/または複数の第2のボアは、(例えば埋め殺しの)パイプまたはライナーを用いてライニングされ得る。パイプ及び/またはライナーは、当技術分野で公知のプラスチック材料で構成され得る。
【0062】
第1のボアは、少なくとも25m、または25m未満の延長を有し得る。例えば、第1のボアは、少なくとも5m、10m、15m、及び/または20mの延長を有し得る。しかし、第2の態様における他の特徴は、第1の態様と共通であってよい。
【0063】
本発明の第3の態様によると、第1の態様または第2の態様の方法に従った、地下トンネルを建設するシステムが提供され、このシステムは:第1のボア及び複数の第2のボアを穿孔するよう構成された、方向性穿孔装備と;トンネルを形成するために、第1のボア及び複数の第2のボアによって画定された実質的に角柱形状の領域内の物質を掘削するよう構成された、掘削装備と、を備える。
【0064】
本発明の、上記及び他の特性、特徴、及び利点は、本発明の原理を例として例示する添付の図面を共に用いて、以下の詳細な説明から明確になろう。この説明は、例のためのみに与えられ、本発明の範囲を限定するものではない。以下で言及する参照図は、添付の図面を指す。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】円形ボアによって画定されたトンネルの外形を示す図である。
【
図3】孔開けガンによる破裂の方向を示す、
図1のトンネル外形の一部を示す図である。
【
図4】水圧破砕によって形成された割れ目を示す、
図3と類似の図である。
【
図5】様々な安定化技術を示す、
図3及び
図4と類似の図である。
【
図6】
図1と類似の、完成したトンネル外形を示す図である。
【
図8】ボアの中で使用するための、予め孔が開けられた埋め殺しライナーを示す図である。
【
図9】ダウンホールの伸縮自在化学薬品送達キャリッジを示す図である。
【
図10】ダウンホールのケーブル戻りキャリッジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明を、特定の図面に対して説明するが、本発明はそれらではなく、特許請求の範囲のみによって限定される。示される図面は概略に過ぎず、非限定である。各図面は、本発明の全ての特徴を含み得ず、したがって必ずしも本発明の実施形態であると考慮する必要はない。図面において、いくつかの要素のサイズは誇張され、例示目的のため、縮尺に則っていない場合がある。寸法及び関連の寸法は、本発明の実施に対して実際の縮図に対応していない。
【0067】
さらに、明細書及び特許請求の範囲における、第1の、第2の、第3の、等の用語は、類似の要素間を区別するために使用され、ランク付けまたは任意の他の方法における、時間的空間的のいずれの順番も、必ずしも表わさない。このように使用される用語は、適切な状況において交換可能であり、その動作は、本明細書で説明または例示する以外の順番も可能であることを、理解されたい。同様に、特定の順番で説明または請求する方法ステップは、異なる順番で動作することが、理解され得る。
【0068】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲における、上、下、上方、下方などの用語は、説明目的で使用され、必ずしも相関位置を表わすためのものではない。このように使用される用語は、適切な状況において交換可能であり、その動作は、本明細書で説明または例示する以外の方向も可能であることを、理解されたい。
【0069】
特許請求の範囲において使用される用語「備えている、含んでいる(comprising)」は、その後に列挙される手段に限定されるように解釈するべきではなく、他の要素またはステップを排除しないことに、留意されたい。したがってそれは、述べた特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素の存在を言及したように規定するよう解釈されるが、1つもしくは複数の他の特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素、もしくはそれらのグループの存在、または追加を除外しないよう解釈するべきである。したがって、表現の範囲「手段A及びBを備えたデバイス」は、構成要素A及びBのみから構成されたデバイスに、限定されるべきではない。本発明に関して、デバイスに関連する構成要素が、A及びBのみであることを意味する。
【0070】
同様に、本明細書で使用される用語「接続された(connected)」は、直接的な接続のみに限定されるものと解釈するべきではない。したがって、表現の範囲「デバイスBに接続されたデバイスA」は、デバイスAの出力部がデバイスBの入力部に直接的に接続されるデバイスまたはシステムに、限定されるべきではない。これは、Aの出力部とBの入力部との間に経路が存在し、それは他のデバイスまたは手段を含む経路であってよいことを意味する。「接続された」は、2つ以上の要素が、直接的に物理的接触もしくは電気的接触しているかのいずれか、または、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、やはり互いに協働もしくは相互作用していることを、意味し得る。例えば、ワイヤレス接続が企図される。
【0071】
この明細書全体の、「実施形態」または「態様」に対する参照は、実施形態または態様と共に説明した、特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態または態様に含まれることを意味する。したがって、「1つの実施形態において」、「実施形態において」、または「態様において」という、本明細書の全体の様々な位置に現出するフレーズは、同じ実施形態または態様の全てを必ずしも指しておらず、様々な実施形態または態様を指し得る。さらに、本発明の、任意の1つの実施形態または態様における、特定の特徴、構造、または特質は、任意の好適な方法で、本発明の、別の実施形態または態様の、任意の他の特定の特徴、構造、もしくは特性と組み合わされてよく、それは、1つまたは複数の実施形態もしくは態様において、本開示から当業者には明確となろう。
【0072】
同様に、説明において、本発明の様々な特徴は、本開示を簡素化し、1つまたは複数の様々な発明の態様を理解する目的で、時としてそれらを単一の実施形態、図面、または説明に共にグループ化されることを、理解されたい。しかし本開示の方法は、請求する発明が、各請求項に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とする意図を反映すると、解釈するべきではない。さらに、任意の個々の図面または態様の説明は、必ずしも本発明の実施形態であると考える必要はない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、上記で開示した単一の実施形態における全ての特徴よりも少なくなる。したがって、「発明を実施するための形態」の後の、特許請求の範囲は、ここで明示的にこの「発明を実施するための形態」に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の実施形態として、それ自体で自立する。
【0073】
さらに、本明細書で説明するいくつかの実施形態が、他の実施形態に含まれたいくつかの特徴を含む一方で、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内であることを意味し、当業者には理解されるように、さらに別の実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、任意の請求された実施形態を、任意の組み合わせで使用することができる。
【0074】
本明細書で提供される説明において、多くの特定の詳細が記載される。しかし、本発明の実施形態は、これら特定の詳細なしでも実施され得ることを理解されたい。他の例において、公知の方法、構造、及び技術は、この説明の理解を不明瞭にしないよう、詳細に示されていない。
【0075】
本発明の説明において、反対に述べない限り、パラメータの許容範囲で、上限または下限における代替の値の開示は、それらの値のうち一方が他方よりもより好ましい表示と結合して、上記の代替のより好ましいものとあまり好ましくないものとの間にある、上記のパラメートの各中間値は、上記のあまり好ましくない値に対して、かつ上記のあまり好ましくない値と上記の中間値との間にある各値に対しても、それ自体好ましいことを暗黙の表現として解釈される。
【0076】
用語「少なくとも1つの」の使用は、特定の状況において1つのみを意味し得る。用語「任意の」は、特定の状況において「全て」及び/または「各々」を意味し得る。
【0077】
次に本発明の原理を、例示的な特徴に関する少なくとも1枚の図面の「発明を実施するための形態」によって説明する。他の配置が、基礎となるコンセプトまたは技術的教示から逸脱することなく、当業者の理解に従って構成され得ることは明確である。本発明は添付の特許請求の範囲における条件によってのみ限定される。
【0078】
図1は、円形ボアによって画定されたトンネルの外形を示す図である。3本の中央リードボア10が、トンネルの経路に沿って穿孔される。それらの周りで、形状を画定する複数のボア20が穿孔され、平坦な下部床を有するアーチ形状のトンネル外形を形成する。トンネルの勾配角は、対象となるトンネルの特定の要件に対して最適化され、例えば垂直とされ得る。
【0079】
図2は、山腹30の中に穿孔中の、リードボア10及び形状を画定するボア20の側面図であり、各ボア10、20の延長は、それらの最終的延長よりも短い。理解され得るように、ボアのうちいくつかは、他のボアと同時に穿孔され、いくつかは他のボアが開始される前に完了され、及び/または、いくつかは部分的に穿孔され、他のボアが継続される間に中断され得る。
【0080】
図3は、
図1におけるトンネル外形の一部の図であり、詳細には、1本のリードボア10及び6本の形状を画定するボア20を含む、左上1/4の図である。ボア10、20は、埋め殺しライニング(図示せず)でライニングされ、その中にそれぞれの孔開けガン(やはり図示せず)が挿入される。孔開けガンは、形状付けられた炸薬が、埋め殺しライニングに対して所定の方向に孔を開けるのを可能にし、方向付けられた破裂40をもたらす。ここで示される破裂40は、掘削する領域の内側に向けられた、3本のボアからのみのものである。しかし、追加の孔開けが、同時または後で形成され得る。代替の実施形態において、孔開けガンは空圧で動作し、埋め殺しライナーに孔を開ける。
【0081】
図4は、
図3に示されるものと類似の孔を介して、水圧破砕によって形成された割れ目50を示す、
図3と類似の図である。
【0082】
図5は、凍結60を介して、及び化学薬品注入70を介して、掘削する領域の外側の安定化を示す、
図3及び
図4と類似の図である。これらの技術は、掘削する領域から離れるよう外側に向けられた孔を使用することを必要とする。
【0083】
図6は、
図1と類似し、
図2の山腹30における、完成したトンネル100外形を示す図である。形状を画定するボア20及び掘削によって画定された外形80の外側において、基礎地質は補強/安定化されており、トンネルを取り囲む補強領域90を形成する。適用され得るライニングの選択肢の例が、外側コンクリートライニング120を伴い表示される。外側コンクリートライニング120は、必要に応じて防水膜115によって、内側コンクリートライニング110から分離される。
【0084】
多くの他のトンネルライニング及び仕上げ方法が利用可能である。例えば、仮設で再使用可能な金属製型枠が、トンネル内に設置され得る。コンクリート120は、型枠の背後に適用され、トンネルの円滑な内壁を形成する。一旦コンクリート120が完全に硬化すると、仮設の型枠を取り外して、トンネルの別のセクションに再使用され、内壁として円滑なコンクリート120を残し得る。
【0085】
任意選択で、掘削中に、トンネルの床における形状を画定する2本のボア20が残され、溝/トラフ130として作用して、機械(特にドラグラインシールド)をトンネルに沿って誘導するのに役立ち得る。トンネル掘削が完了すると、これらの溝/トラフ130を後日充填することができる。
【0086】
図7は、ドラグラインシールドの側面図である。矢印200は、掘削中におけるドラグラインシールドの運動の方向を示す。ドラグラインシールドの外形は、所定の外側トンネル形状と一致する。シールドの先端縁部202における傾斜角は、対象となるトンネルの特定の要件に最適化され、例えば垂直とされ得る。
【0087】
トンネルを貫通するシールドの推進は、ドラグラインシールドを押し出す液圧ラム206を介して、及び/または、ライニングされたボアを通り抜けてドラグラインシールドを前方へ引くウィンチまで延びた、プローブの端部に装着されたケーブル208を介して、成され得る。後者は、連続的な動きを促進させるので、好ましい方法である。
【0088】
トンネルの床に沿った、形状を画定する下部のボアは、掘削残土がシールドに入るポイントの背後できれいに掃除され、それによってドラグラインシールドのホイール210(または代替として車台)は、埋め殺しライナーから所定の位置に残された起伏の多いハーフパイプの中を進むことができる。ドラグラインシールドが前進する際に、レールを設定または延伸させる必要はない。
【0089】
シールドの先端面におけるプローブ204は、形状を画定するボアと位置合わせし、かつその中に延びる。プローブ204は、それらが形状を画定するボアと係合するよう離隔され、かつサイズを決められる。ドラグラインシールドは、次に決められたトンネル形状を貫通して、前方へ動く。ボアの精度が非常に精確である一方で、プローブ204は、ボアの経路が目標のコースから逸脱した、いくらかの変動を許容できることになる。許容外の逸脱が発生した短い範囲では、ロードヘッダユニットに見られるようなブームに取り付けられた切削ヘッド212など、他の手段による掘削期間の後でプローブが再係合され得るときまで、プローブを後退させることが判る。
【0090】
プローブ204には交換可能なツールが装備される。それらツールは、状況が要求するくらい正確または敏感とするのを可能にする。これらは、限定ではないが、ディスクカッター、回転カッター、シリンダまたはコーン、掘削する物質に好適な歯状物を有するチェーンソータイプのアーム、高圧水、プラウブレード214、及び除去する物質をさらに緩くして破壊するために(加えて形状を画定するボアの埋め殺しライナーを除去するために)、トンネル外形の外周/周囲の周り、及び/または(トンネルの内部に向かう)内側の両方に、所望の方向に膨大な圧力を加えることができる、液圧スプリッタ216、を含む。
【0091】
破壊/崩落技術は、特にトンネルの外周における外側の領域が安定されて、自己支持シェルを形成する場合、掘削する軟性及び/または緩い物質に使用することができる。このタイプの作業のため、プローブは、ドラグラインシールドが前進する際にプラウブレード214と適合される。
【0092】
レーザアレイ(図示せず)は、掘削で新たに露出された外面を常に走査218し、ドラグラインシールドの進捗を妨害するか邪魔するような物質が、内側に突出して残されないことを保証する。地中探知レーダも、新たに露出されたトンネルの、掘削残土が覆った領域で使用され得る。任意のこのような領域を見つけるために、進捗を妨害することなく、空圧穿孔もしくは交換可能な切断ヘッド、または他の好適なツールが取り付けられた、1つまたは複数のロボットアーム212によって、直ちに取り組むことになる。
【0093】
ドラグラインシールドの防護下で作業すると、掘削残土はシールドの内側におけるローディング機構222の上に(必要に応じて機械掘削機220によって補助されて)連続的に掘削される。ローディング機構222の上に積載することは、ブルドーザのように、主に掘削残土を貫通して前方へ動くドラグラインシールドの作用によるものであってよい。掘削残土の除去は、従来の方法による。掘削残土はコンベア224上で後方へ動かされ、そこでは、新たに横たわる床に重機を載せることができる。
【0094】
図8は、ボア内で使用するために予め孔が開けられた埋め殺しライナーの、軸方向断面、及び斜視図である。このライナーは、実質的に円筒形状を有し、外側から内側に孔を開けられた穴230のアレイを伴う。
【0095】
図9は、個々のボア238において、化学薬品処置を要する領域まで移動させるよう構成された、ダウンホールの伸縮自在化学薬品送達キャリッジ236を示す図である。このキャリッジは、キャリッジ本体242の周りに配置された5つの伸縮自在送達プローブ240を備えるが、他の数も考えられる。一旦位置まで動かされると、使用される化学薬品は、従来の手段によって圧力下でポンプによってキャリッジの中に入れられる。この圧力は、伸縮自在プローブを延伸させ、埋め殺しライナーにおいて、予め開けられた対応する穴(またはライナーが所定の位置にあるときに作られた穴)を通して、ボアの外側における物質の中に押し出される。送達される化学薬品の量、及びそれが送達される領域は、ボーリングプロセス中に得られた地質の知識、及びトンネルに必要な最終的設計強度に基づいて、各々の事例について選択される。
【0096】
図10は、ダウンホールのケーブル戻りキャリッジの図であり、キャリッジハウジング250を伴って透視的に示す。ライニングされたボアの壁と係合し、このボアの中で展開された締付システム252は、ハウジング250の中に配設される。締付システム252は、オペレータによって係合または係合解除され、キャリッジをボア内で動かして、ウィンチを使用する準備のために、所定の位置に固定することができる。ケーブルの第1の端部254は、シールドに接続される。ケーブルの第2の端部256は、ウィンチに接続される。ウィンチがケーブルの第2の端部256を巻き取る際に、キャリッジ内の一連の滑車258は、ケーブルの方向を逆転させ、それによってシールドはケーブルの第1の端部254によって引かれる。