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2023-113782プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)阻害剤および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113782
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)阻害剤および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 243/26 20060101AFI20230808BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C07C243/26 CSP
A61K31/16
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P31/04
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P43/00 105
A61P1/04
A61P7/00
A61P9/10
A61P9/12
A61P25/28
A61P9/10 101
A61P19/10
A61P19/02
A61P11/06
A61P9/04
A61P9/06
A61P5/00
A61P29/00
A61P9/00
A61P7/02
A61P17/06
A61P15/08
A61P17/00
A61P13/12
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091679
(22)【出願日】2023-06-02
(62)【分割の表示】P 2020503982の分割
【原出願日】2018-07-27
(31)【優先権主張番号】62/537,513
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509009692
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァシティ オブ ミシガン
(71)【出願人】
【識別番号】513130113
【氏名又は名称】イースタン ミシガン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エー.ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】コリー イーマル
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー ラインク
(72)【発明者】
【氏名】シッホン リー
(57)【要約】
【課題】本明細書では、プラスミノーゲン活性化因子-1(PAI-1)阻害剤化合物、およびPAI-1の上昇に関連する任意の疾患または障害の治療におけるその使用が提供される。
【解決手段】本開示には、血栓症および線維症を予防または軽減し、血栓溶解を促進し、脂質代謝を調節し、PAI-1、コレステロール、または脂質レベルの上昇に関連する疾患または障害を治療するためのそのような化合物の使用が含まれるが、これらに限定されない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
【請求項2】
プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)を阻害する方法における使用のための、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、前記方法は、PAI-1を、前記PAI-1を阻害するのに有効な量の、前記化合物またはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む、組成物。
【請求項3】
異常なPAI-1活性に関連する障害を治療する方法における使用のための、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、前記方法は、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記障害を治療するのに有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含む、組成物。
【請求項4】
前記障害が、がん、敗血症、肥満、インスリン抵抗性、脂質代謝の調節不全に関連する疾患または障害、上昇したVLDLまたはLDLレベルに関連する疾患または障害、高コレステロール、増殖性の疾患または障害、線維症および線維性疾患、炎症性腸疾患、凝固恒常性(coagulation homeostasis)、脳血管疾患、微小血管疾患、高血圧、認知症、アテローム性動脈硬化、骨粗鬆症、骨減少症、関節炎、喘息、心不全、不整脈、狭心症、ホルモン不足症(hormone insufficiency)、アルツハイマー病、高血圧、炎症、セプシス、線維素溶解障害、脳卒中、認知症、冠状動脈性心疾患、心筋梗塞、安定および不安定狭心症、血管疾患、末梢動脈疾患、急性血管症候群、血栓症、プロトロンボシス(prothrombosis)、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血管疾患、微小血管疾患、高血圧、糖尿病、高血糖、高インスリン血症、悪性病変、前悪性病変、消化管悪性腫瘍、脂肪肉腫、上皮性腫瘍、および乾癬、細胞外マトリックス蓄積障害、血管新生(neoangiogenesis)、骨髄線維症、線維素溶解機能障害、多嚢胞性卵巣症候群、エストロゲン欠乏で誘発される骨喪失、血管形成(angiogenesis)、血管新生、骨髄線維症、または線維素溶解機能障害である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記血栓症またはプロトロンボシスが関与する前記疾患または障害が、アテローム性動脈硬化プラークの形成、静脈血栓症、動脈血栓症、心筋虚血、心房細動、深部静脈血栓症、凝固症候群、肺血栓症、脳血栓症、手術の血栓塞栓性合併症、および末梢動脈閉塞である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記障害が線維症である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記線維症が肺線維症、腎線維症、心臓線維症、肝線維症、または強皮症である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記障害が炎症性腸疾患である、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記炎症性腸疾患がクローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞外マトリックス蓄積障害が腎線維症、慢性閉塞性肺疾患、多嚢胞性卵巣症候群、再狭窄、腎血管疾患、糖尿病性腎症、または臓器移植拒絶である、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
PAI-1レベルが上昇した対象におけるコレステロール、脂質クリアランス、および/または脂質取り込みを調節する方法における使用のための、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、前記方法は、有効量の前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記対象の前記上昇したPAIレベルを低下させてコレステロール、脂質クリアランス、および/または脂質取り込みを調節するのに有効な量で前記対象に投与することを含む、組成物。
【請求項12】
前記化合物または塩が、前記対象における循環高密度リポタンパク質(HDL)を増加させ、かつ/または循環超低密度リポタンパク質(VLDL)を減少させる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記化合物または塩が、アポリポタンパク質E(ApoE)またはアポリポタンパク質A(ApoA)のVLDL-Rへの結合を阻害する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記化合物または塩が、HDLまたはアポリポタンパク質E(ApoE)もしくはアポリポタンパク質A(ApoA)のApoA受容体への結合を減少させる、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記化合物または塩が、PAI-1のアポリポタンパク質E(ApoE)への結合を減少させる、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記化合物または塩が、PAI-1のアポリポタンパク質A(ApoA)への結合を減少させる、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記化合物または塩が、PAI-1のVLDLへの結合を減少させる、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記化合物または塩が、ビトロネクチンの存在下でPAI-1に結合する、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
前記化合物または塩が、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)の存在下でPAI-1に結合する、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
前記対象が、ヒトである、請求項2~19のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたHL089407の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明におけるある特定の権利を有する。
【0002】
本明細書では、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)活性を調節するための化合物および方法が提供される。より詳細には、本開示は、PAI-1の阻害剤、およびPAI-1活性の調節におけるそのような阻害剤の使用に関する。PAI-1活性に関連する多くの疾患または障害の治療のためのこれらの阻害剤の使用も提供される。そのような疾患または障害には、脂質代謝の調節不全、肥満、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、エストロゲン欠乏により誘発される骨喪失、線維症および線維性疾患、炎症、細胞遊走および細胞の遊走駆動性増殖、血管形成(angiogenesis)、ならびに血栓症が含まれるが、これらに限定されない。そのような阻害剤はまた、内因性線維素溶解の調節に、および薬理学的血栓溶解と併せて有用であると考えられる。
【背景技術】
【0003】
プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)は、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)と組織型PA(tPA)の両方の主要な阻害剤である50kDaの単鎖糖タンパク質である。PAI-1は、他のPAIによるPA阻害の速度よりも10~1000倍速い値である2次速度定数おおよそ107-1-1でtPAとuPAを阻害する。さらに、慎重に収集された正常なヒト血漿中の総tPAの約70%がPAI-1との複合体で検出され、PAI-1によるtPAの阻害が正常な進行中のプロセスであることを示唆する。PAI-1はプラスミンを直接阻害することもできる。したがって、PAI-1は、インビボでのプラスミン生成の主要な調節因子であり、それ自体、線維性疾患と血栓性疾患の両方で重要な役割を果たすようである。PAI-1には3つの潜在的なN結合型グリコシル化部位があり、15~20%の炭水化物を含む。
【0004】
PAI-1は、セリンプロテアーゼ阻害剤スーパーファミリー(セルピン(SERPIN))に属し、これは、血中に見られる多くのプロテアーゼ阻害剤や、無関係または未知の機能を持つ他のタンパク質を含む遺伝子ファミリーである。セルピンは、プロテアーゼの不活性化の過程で消費され、「自殺阻害剤」として機能する。セルピンとその標的プロテアーゼとの会合は、活性中心ループ(RCL)と呼ばれるセルピンの表面ループに位置する「ベイト」残基と呼ばれる、アミノ酸残基において発生する。「ベイト」残基はP1残基とも呼ばれ、酵素の通常の基質を模倣すると考えられている。P1残基が標的プロテアーゼのS1部位と会合すると、RCLの切断が起こる。これは、セルピンの大きな立体構造変化と結びついており、セルピンの主な構造的特徴であるβシートAへのRCLの急速な挿入を伴う。これにより、プロテアーゼがセルピン表面にしっかりとドッキングし、その活性部位を含む酵素構造の歪みが生じる。また、RCLの挿入により、セルピンの構造安定性が大幅に向上し、複合体が強固になり、プロテアーゼがセルピンとの共有結合性アシル酵素複合体に補足される。
【0005】
天然のPAI-1は、少なくとも2つの異なる立体構造で存在し、細胞によって生成されて分泌される活性型と、細胞培地に経時的に蓄積する不活性型または潜在型である。血液および組織中、PAI-1のほとんどは活性型であるが、しかし、血小板にはPAI-1の活性型と潜在型の両方が見られる。活性型PAI-1では、RCLは分子の表面に露出しているが、プロテアーゼと反応すると、切断されたRCLはβシートAの中心に統合される。潜在型では、RCLは無傷であるが、露出する代わりに、RCLのアミノ末端側全体が中心鎖としてβシートAに挿入される。これは、潜在型PAI-1の安定性の増加とその阻害活性の欠如を説明する。
【0006】
活性型PAI-1は、37℃で1~2時間の半減期で潜在型に自然に変換し、変性剤で処理することにより潜在型PAI-1を活性型に戻すことができる。負に帯電したリン脂質は、潜在型PAI-1を活性型に変換することもでき、これは、細胞表面がPAI-1活性を調節できることを示唆している。ウサギに注入された潜在型PAI-1が明らかに活性型に変換されるという観察は、この仮説と一致している。活性構造と潜在構造の間の自発的可逆的相互変換は、PAI-1に特有であり、他のセルピンと区別されるが、潜在型立体構造の生物学的意義は不明のままである。
【0007】
PAI-1の他の非阻害型も特定されている。第1の形態は、活性型PAI-1内の1つ以上の重要なメチオニン残基の酸化から生じる。この形態は、酸化型メチオニン残基を特異的に減少させる酵素により部分的に再活性化できるという点で、潜在型PAI-1とは異なる。PAI-1の酸化的不活性化はPAI-1の調節の追加のメカニズムである可能性があり、好中球または他の細胞によって局所的に生成される酸素ラジカルがPAI-1を不活性化し、したがって、感染部位または組織再構築の領域でのプラスミンの生成を促進する可能性がある。PAI-1は、2つの異なる切断型でも存在する。上記のように、プロテアーゼと複合体を形成しているPAI-1は、そのRCLにおいて切断される。非複合化PAI-1は、そのRCLが切断された状態でも見られ、これは、PAI-1-PA複合体の解離またはP1以外の部位での非標的プロテアーゼによるRCLの切断から生じる。これらの形態のPAI-1はどれもプロテアーゼ活性を阻害することができないが、しかしそれらは他のリガンドと相互作用し得る。
【0008】
PAI-1と非プロテアーゼリガンドとの相互作用は、PAI-1機能に不可欠な役割を果たす。PAI-1は、ヘパリン、細胞接着タンパク質ビトロネクチンに高い親和性で結合し、リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)や超低密度リポタンパク質受容体(VLDL-R)などのエンドサイトーシス低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)ファミリーのメンバーである。これらの非プロテアーゼ相互作用は、PAI-1の局在化と機能の両方に重要であり、それらはRCL挿入に関連する構造変化を通じて主に立体構造的に制御される。血液では、活性型PAI-1のほとんどが糖タンパク質ビトロネクチンと複合体を形成して循環する。ビトロネクチンのPAI-1結合部位は、PAI-1構造のβシートAの端の領域に局在している。LDL-Rファミリーメンバーの結合部位は、ビトロネクチン結合ドメインに隣接するアルファヘリックスDに関連するPAI-1領域で、あまり特徴付けられていないが、同定されている。PAI-1のヘパリン結合ドメインもマッピングされている。この部位は、アンチトロンビンIIIのヘパリン結合ドメインに相同な領域のアルファヘリックスDにも局在し、LDL-Rファミリーメンバーの結合部位と重複する可能性がある。
【0009】
ビトロネクチンは血漿中を循環し、主に損傷または再構築の部位で細胞外マトリックスに存在する。PAI-1とビトロネクチンは、重要な機能的相互依存性を持っているようである。ビトロネクチンは、その活性構造でPAI-1を安定化させるため、生物学的半減期が長くなる。
【0010】
ビトロネクチンは、トロンビンのPAI-1阻害効率を約300倍も高める。同様に、ビトロネクチンへのPAI-1の結合は、細胞接着をサポートしない天然の血漿形態から、インテグリンを結合する能力のある「活性化」形態へとその立体構造を変化させる。ただし、インテグリン結合はPAI-1の存在によってブロックされる。上記のように、PAI-1とビトロネクチンとの会合は立体構造的に制御されており、プロテアーゼの阻害により、RCL挿入に関連するPAI-1の構造変化はビトロネクチンに対する高親和性の喪失とLDL-Rファミリーメンバーに対する親和性の増加をもたらす。これは、PAI-1にRCLが挿入され、ビトロネクチン結合部位が破壊されると同時に、PAI-1がプロテアーゼと複合体を形成している場合にのみ明らかになる潜在的な受容体結合部位が露出するためであり、その結果、ビトロネクチンからLDL-RファミリーメンバーへのPAI-1の相対的親和性が約100,000倍シフトし、その後ビトロネクチンから細胞受容体へのPAI-1局在化がシフトする。したがって、ビトロネクチンおよびLDL-RとのPAI-1の会合は、立体構造的に制御されている。
【0011】
高いPAI-1レベルは、様々な病気や障害に関連している。例えば、高いPAI-1レベルは、セプシスおよび心筋梗塞などの急性疾患、およびがん、アテローム性動脈硬化症、2型糖尿病などの慢性疾患に関連している。さらに、高いPAI-1レベルは心血管疾患に関連しており、PAI-1発現は重度のアテローム性動脈硬化血管で有意に増加し、PAI-1タンパク質レベルは正常血管からアテローム性動脈硬化プラークの脂肪線条への疾患進行中に一貫して上昇する。PAI-1レベルの増加は、肥満とインスリン抵抗性にも関連している。
【0012】
さらに、PAI-1の血漿中濃度の上昇は血栓事象に関連しており、PAI-1活性の抗体中和は内因性血栓溶解および再灌流の促進をもたらした。PAI-1のレベルの上昇は、多嚢胞性卵巣症候群およびエストロゲン欠乏によって誘発される骨喪失にも関係している。
【0013】
PAI-1は、マウス脂肪細胞とヒト脂肪細胞の両方で合成される。ヒトおよびマウスの内臓脂肪量とPAI-1の血漿レベルの間にも強い相関関係がある。肥満におけるPAI-1のこの劇的なアップレギュレーションは、脂肪組織自体が全身性PAI-1の上昇に直接寄与でき、血栓症の増加とアテローム性動脈硬化の促進を介して血管疾患の確率を高めることを示唆している。特に、非常に最近のデータは、PAI-1も肥満に直接的な役割を果たす可能性があることを示唆している。
【0014】
ある研究では、遺伝的に肥満で糖尿病のob/obマウスがPAI-1欠損バックグラウンドに交配すると、PAI-1のob/obマウスと比較して体重が著しく減少し、代謝プロファイルが改善した。同様に、栄養的に誘導された肥満とインスリン抵抗性は、PAI-1が遺伝的に欠損したマウスおよび経口で活性なPAI-1阻害剤で処理したマウスで劇的に減弱した。PAI-1欠損マウスの脂肪過多症およびインスリン抵抗性の改善は、高脂肪食のPAI-1欠損マウスでは、野生型マウスに比べて代謝率と総エネルギー消費が増加し、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPARγ)とアディポネクチンは維持されたという観察結果に関連している可能性がある。しかし、マウスにおけるPAI-1の過剰発現も脂肪組織形成を損なうため、関与する正確なメカニズムは示されておらず、複雑である可能性がある。まとめると、これらの観察結果は、PAI-1が、線維素溶解の調整と組織再構築の特定された活動を超えた相互作用を含む、肥満とインスリン抵抗性において以前に認識されていなかった直接的な役割を果たしていることを示唆している。
【0015】
確かに、PAI-1が脂肪組織の発達を積極的に調節する場合、PAI-1発現の増加と肥満の発症との関連は、脂肪組織の拡大と正常なコレステロール恒常性の調節不全を促進する正のフィードバックループを構成する可能性がある。したがって、PAI-1が代謝、肥満、およびインスリン抵抗性にどのように関与するかをより深く理解する必要性が当技術分野に存在する。
【発明の概要】
【0016】
本明細書では、
【化1】
の構造を有する化合物であって、式中、XがClまたはFである、化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される。場合によっては、化合物は
【化2】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である。場合によっては、化合物は
【化3】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である。また、構造
【化4】
を有するPAI-1阻害剤またはその薬学的に許容される塩が提供される。さらに、構造
【化5】
を有するPAI-1阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が提供される。場合によっては、化合物は薬学的に許容される塩の形である。さらに提供されるのは、本明細書に開示される化合物または塩の1つ以上と薬学的に許容される賦形剤との薬学的組成物である。場合によっては、組成物は、構造
【化6】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。場合によっては、組成物は、構造
【化7】
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0017】
さらに、PAI-1を本明細書に開示される化合物と接触させることによりPAI-1を阻害する方法を提供する。また、異常なPAI-1活性に関連する障害を治療する方法であって、本明細書に開示される化合物を、障害を治療するのに有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。場合によっては、障害は、がん、敗血症、肥満、インスリン抵抗性、脂質代謝の調節不全に関連する疾患または障害、VLDLまたはLDLのレベルの上昇に関連する疾患または障害、高コレステロール、増殖性の疾患または障害、線維症および線維性疾患、炎症性腸疾患、凝固恒常性(coagulation homeostasis)、脳血管疾患、微小血管疾患、高血圧、認知症、アテローム性動脈硬化、骨粗鬆症、骨減少症、関節炎、喘息、心不全、不整脈、狭心症、ホルモン不足症(hormone insufficiency)、アルツハイマー病、高血圧、炎症、セプシス、線維素溶解障害、脳卒中、認知症、冠状動脈性心疾患、心筋梗塞、安定および不安定狭心症、血管疾患、末梢動脈疾患、急性血管症候群、血栓症、プロトロンボシス(prothrombosis)、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血管疾患、微小血管疾患、高血圧、糖尿病、高血糖、高インスリン血症、悪性病変、前悪性病変、消化管悪性腫瘍、脂肪肉腫、上皮性腫瘍、および乾癬、細胞外マトリックス蓄積障害、血管新生(neoangiogenesis)、骨髄線維症、線維素溶解機能障害、多嚢胞性卵巣症候群、エストロゲン欠乏で誘発される骨喪失、血管形成(angiogenesis)、血管新生、骨髄線維症、または線維素溶解機能障害である、様々な場合では、血栓症またはプロトロンボシスが関与する疾患または障害は、アテローム性動脈硬化プラークの形成、静脈血栓症、動脈血栓症、心筋虚血、心房細動、深部静脈血栓症、凝固症候群、肺血栓症、脳血栓症、手術の血栓塞栓性合併症、および末梢動脈閉塞である。場合によっては、障害は線維症であり、より具体的には、肺線維症、腎線維症、心臓線維症、肝線維症、または強皮症であり得る。場合によっては、障害は炎症性腸疾患であり、より詳細には、クローン病または潰瘍性大腸炎であり得る。場合によっては、細胞外マトリックス蓄積障害は腎線維症、慢性閉塞性肺疾患、多嚢胞性卵巣症候群、再狭窄、腎血管疾患、糖尿病性腎症、または臓器移植拒絶である。
【0018】
さらに、PAI-1のレベルが上昇した対象におけるコレステロール、脂質クリアランス、および/または脂質取り込みを調節する方法であって、本明細書に開示の化合物の有効量を、対象のPAIの上昇レベルを低下させてコレステロール、脂質クリアランス、および/または脂質取り込みを調節するのに有効な量で対象に投与することを含む、方法を提供する。場合によっては、化合物は対象の循環高密度リポタンパク質(HDL)を増加させ、および/または循環超低密度リポタンパク質(VLDL)を減少させる。様々な場合では、化合物はアポリポタンパク質E(ApoE)またはアポリポタンパク質A(ApoA)のVLDL-Rへの結合を阻害する。様々な場合では、化合物はHDLまたはアポリポタンパク質E(ApoE)もしくはアポリポタンパク質A(ApoA)のApoA受容体への結合を減少させる。様々な場合では、化合物はPAI-1のアポリポタンパク質E(ApoE)への結合を減少させる。様々な場合では、化合物はPAI-1のアポリポタンパク質A(ApoA)への結合を減少させる。様々な場合では、化合物はPAI-1のVLDLへの結合を減少させる。様々な場合では、化合物はビトロネクチンの存在下でPAI-1に結合する。様々な場合では、化合物はウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)の存在下でPAI-1に結合する。
【0019】
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、対象はヒトであり得る。
【0020】
前述の概要は、本発明の全ての態様を定義することを意図したものではなく、追加の態様は、発明を実施するための形態などの他のセクションで記載される。文書全体は統一された開示として関連することを意図しており、この文書の同じ文、または段落、またはセクションで特徴の組み合わせが合わせて見られない場合でも、本明細書に記載される特徴の全ての組み合わせが企図されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】様々な濃度のCDE-517の存在下でのセルピン活性を示す。
図2】様々な濃度のCDE-252の存在下でのセルピン活性を示す。
図3】様々な濃度のCDE-519の存在下でのセルピン活性を示す。
図4】様々な濃度のCDE-520の存在下でのセルピン活性を示す。
図5】様々な濃度のCDE-264の存在下でのセルピン活性を示す。
図6】様々な濃度のCDE-295の存在下でのセルピン活性を示す。
図7】様々な濃度のCDE-234の存在下でのセルピン活性を示す。
図8】様々な濃度のCDE-241の存在下でのセルピン活性を示す。
図9】様々な濃度のCDE-246の存在下でのセルピン活性を示す。
図10】様々な濃度のCDE-413の存在下でのセルピン活性を示す。
図11】様々な濃度のCDE-415の存在下でのセルピン活性を示す。
図12】様々な濃度のCDE-412の存在下でのセルピン活性を示す。
図13】様々な濃度のCDE-248の存在下でのセルピン活性を示す。
図14】様々な濃度のCDE-266の存在下でのセルピン活性を示す。
図15】様々な濃度のCDE-301の存在下でのセルピン活性を示す。
図16】様々な濃度のCDE-307の存在下でのセルピン活性を示す。
図17】様々な濃度のCDE-340の存在下でのセルピン活性を示す。
図18】様々な濃度のCDE-422の存在下でのセルピン活性を示す。
図19】様々な濃度のCDE-423の存在下でのセルピン活性を示す。
図20】様々な濃度のCDE-424の存在下でのセルピン活性を示す。
図21】様々な濃度のCDE-446の存在下でのセルピン活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、構造:
【化8】
を有するPAI-1阻害剤であって、式中、XがClまたはFである、PAI-1阻害剤またはその薬学的に許容される塩が提供される。場合によっては、化合物は構造
【化9】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。場合によっては、化合物は構造
【化10】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。さらに、構造
【化11】
を有するPAI-1阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が提供される。さらに、構造
【化12】
を有するPAI-1阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が提供される。これらの化合物またはその塩の1つ以上を含む薬学的組成物も提供される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」との用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなく、ヒトおよび下等動物の組織との接触での使用に好適であり、合理的な利益/リスク比に見合った、これらの塩を指す。薬学的に許容される塩は、当該技術分野で周知である。例えば、S.M.Berge et al.は、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19において、薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本開示の化合物の薬学的に許容される塩には、好適な無機および有機酸および塩基に由来するものが含まれる。薬学的に許容される、非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸で形成される、あるいはイオン交換などの当該技術分野で使用される他の方法を使用することによって形成される、アミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、樟脳スルホン酸塩(camphorsulfonate)、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。カルボン酸または他の酸性官能基を含む化合物の塩は、適切な塩基と反応させることにより調製できる。そのような塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム塩、アンモニウム、N+(C1-4アルキル)4塩、およびトリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、N、N´-ジベンジルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、トリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン、プロカイン、ジベンジルピペリジン、デヒドロアビエチルアミン、N、N´-ビスデヒドロアビエチルアミン、グルカミン、N-メチルグルカミン、コリジン、キニン、キノリンなどの有機塩基の塩およびリジンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸の塩が含まれるが、これらに限定されない。本開示はまた、本明細書に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も企図している。水溶性もしくは油溶性または分散性の製品は、そのような四級化によって得ることができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる薬学的に許容される塩には、適切な場合、非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、および対イオンを使用して形成されるアミンカチオン、例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などが含まれる。
【0024】
PAI-1阻害剤の使用方法
本明細書で上述したように、本明細書で開示される方法は、PAI-1阻害剤を投与することを含む、PAI-1レベルの上昇に関連する疾患または障害を治療することを含むと考えられる。一態様では、対象は哺乳動物である。場合によっては、哺乳類の対象はヒトである。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書は、PAI-1阻害剤化合物、およびPAI-1活性に関連する多くの疾患または障害の治療における化合物の使用方法を提供する。そのような状態、例えば疾患または障害には、脂質代謝の調節不全、肥満、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、エストロゲン欠乏によって誘発される骨喪失、線維症および線維性疾患、炎症、細胞遊走および細胞の遊走駆動性増殖、および血管形成または血栓症が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、そのような阻害剤は、内因性線維素溶解の調節に、および薬理学的血栓溶解と併せて有用であるとも考えられている。様々な態様では、本明細書は、PAI-1阻害剤化合物と、セプシス、心筋梗塞、および血栓症などこれらに限定されないが、セプシス、心筋梗塞、または血栓症に罹患していないことが知られている正常な対象のPAI-1レベルと比較して、高PAI-1レベルに関連する急性疾患の治療における化合物の使用方法と、を提供する。いくつかの態様では、本明細書に開示されるPAI-1阻害剤化合物は、がん、アテローム性動脈硬化、インスリン抵抗性、2型糖尿病、および線維性疾患などこれらに限定されないが、これらの疾患または障害に罹患していないことが知られている正常な対象のPAI-1レベルと比較して、高PAI-1レベルに関連する疾患および障害を治療する方法で使用される。様々な態様では、本明細書では、対象における循環HDLの増加および/または循環VLDLの減少を含む脂質代謝を調節するためのPAI-1阻害化合物が提供される。
【0026】
様々な態様では、PAI-1阻害剤は、疾患または障害を含むあらゆる状態の治療に有用であり、PAI-1レベルの低減は利益を提供するであろう。PAI-1阻害剤は、単独で、またはPAI-1レベルの減少を促進するように作用し得る他の化合物と組み合わせて有用である。
【0027】
PAI-1阻害剤は、適切な製剤に製剤化され、治療有効量で対象内の1つ以上の部位に投与され得る。いくつかの実施形態では、PAI-1阻害剤に基づく療法は、連続的または断続的な静脈内投与を介して実施される。様々な態様において、PAI-1阻害剤ベースの療法は、連続的または断続的な筋肉内または皮下投与を介して行われる。他の局面において、PAI阻害剤ベースの療法は、経口投与または口腔投与を介して行われる。「有効量」とは、PAI-1、プラスミノーゲン活性化因子、HDL、LDL、またはVLDLの1つ以上の生物学的活性のレベルの観察可能な変化および/または、治療方法が意図される適応症の観察可能な変化をサポートするのに十分なPAI-1阻害化合物の量を意味する。変化は、PAI-1活性のレベルを下げる可能性がある。いくつかの態様では、変化はプラスミノーゲン活性化因子、および/またはHDLの増加、および/またはLDLおよびVLDLの減少である。
【0028】
様々な態様では、組成物の投与は全身的または局所的であり、さらに他の態様では、治療有効量のPAI-1阻害剤組成物の単一部位注射を含む。本明細書に開示される治療用組成物の投与のための当業者に公知の任意の経路は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、経口、または長期投与用のカテーテルを含むと考えられる。
【0029】
場合によっては、治療用組成物は複数の部位で患者に送達されると考えられる。複数回の投与は同時に行われるか、数時間にわたって投与される。同様に、治療用組成物は経口投与により定期的に摂取されると考えられる。ある特定の場合では、治療用組成物の連続フローを提供することが有益である。追加の療法は、例えば、毎日、毎週、または毎月などの期間ベースで行われる。
【0030】
PAI-1阻害剤組成物の送達のみに基づく療法に加えて、併用療法が特に考えられる。PAI-1阻害剤組成物療法は、PAI-1、LDLおよびVLDLレベルの上昇の治療に一般に使用される他の薬剤と同様に併用して使用されると考えられる。
【0031】
本明細書に開示される方法および組成物を使用して適切な治療結果を達成するために、PAI-1阻害剤および少なくとも1つの他の治療薬(第2の治療薬)を含む組成物がそれを必要とする対象に投与されることがさらに考えられる。そのような治療薬には、スタチン、抗炎症薬、ACE阻害薬などのコレステロール低下薬などの心血管疾患の管理に使用される薬剤が含まれるが、これらに限定されない。そのような薬物には、脳卒中、発作、およびアルツハイマー病を標的とする薬物を含むがこれらに限定されない神経障害を標的とする薬物も含まれる。別の態様では、追加の薬剤には、糖尿病を標的とする薬物が含まれるが、これに限定されない。これらは全て、PAI-1レベルの上昇に関連する障害であり、したがって、併用療法はPAI-1阻害剤および他の既知の療法とともに使用できると考えられる。
【0032】
併用療法組成物は、PAI-1、VLDL、またはLDLのレベルの増加の治療において所望の治療結果をもたらし、および/または本明細書に記載の適応症に検出可能な変化をもたらすのに有効な組み合わせ量で提供される。このプロセスでは、PAI-1阻害剤と第2の薬剤または因子を同時に投与する。したがって、方法は、両方の薬剤を含む単一の組成物または薬理学的製剤を投与すること、または2つの異なる組成物または製剤を同時に投与することを含み、一方の組成物はPAI-1阻害剤の治療用組成物を含み、他方は第2の治療薬を含む。
【0033】
あるいは、PAI-1阻害剤治療は、数分から数週間の範囲の間隔で、第2の治療薬治療の前にまたは後に続く。第2の治療薬およびPAI-1阻害剤が別々に投与される実施形態では、一般に、第2の治療薬およびPAI-1阻害剤が有利に組み合わされた効果を発揮することができるように、有意な期間が各送達の時間の間に満了しないことを保証する。そのような場合、互いに約12~24時間以内に、または交互に互いに約6~12時間以内に、あるいは交互に、わずか約12時間の遅延時間で両方のモダリティを投与することが考えられる。状況によっては、ただし、それぞれの投与の間に数日間(2、3、4、5、6または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過する場合、治療期間を大幅に延長することが望ましい。
【0034】
患者へのPAI-1阻害剤の全身送達は、疾患または障害の即時の臨床症状を打ち消すために治療上有効な量の化合物を送達するための非常に効率的な方法である。あるいは、特定の状況では、PAI-1阻害剤および/または第2の治療薬の局所送達が適切である。特定の実施形態では、PAI-1阻害剤は、長期間にわたって患者に送達されることが企図される。さらに、患者の生涯を通じてPAI-1阻害剤を摂取して、PAI-1、VLDLおよび/またはLDLレベルを低下させることが企図される。
【0035】
薬学的組成物
上記のように、本明細書では、有効量のPAI-1阻害剤と、希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/またはPAI-1阻害剤治療に有用な担体などの薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物を使用する方法を提供する。そのような組成物は、様々な緩衝液内容物(例えば、Tris-HCl、酢酸、リン酸)、pHおよびイオン強度の希釈剤、洗剤や可溶化剤(例えば、Tween 80、Polysorbate 80)、酸化防止剤(例、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例、チメルソール(thimersol)、ベンジルアルコール)、および増量物質(例、乳糖、マンニトール)などの添加物、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの高分子化合物の微粒子製剤への、またはリポソームまたはミセルに関連した材料の組み込みを含む。そのような組成物は、PAI-1阻害剤の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を与えるだろう。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington´s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990)Mack Publishing Co.,Easton,PA,pages1435-1712を参照されたい。
【0036】
無菌液体組成物には、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤が含まれる。本明細書に開示される化合物は、滅菌水、滅菌有機溶媒、または両方の混合物などの薬学的に許容される担体に溶解または懸濁することができる。一態様では、液体担体は、親による注射に適したものである。化合物が十分に可溶性である場合、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどの適切な有機溶媒を使用して、または使用せずに、通常の生理食塩水に直接溶解することができる。必要に応じて、微粉化された化合物の分散液は、デンプン水溶液またはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液、または落花生油などの適切な油に作り上げることができる。滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、筋肉内、腹腔内、または皮下注射により利用できる。多くの場合、好ましい固体経口投与方法の代わりに液体組成物の形態を使用してもよい。
【0037】
標準的な投与計画のために、化合物の単位剤形を調製することが好ましい。このようにして、組成物は医師の指示でより少ない用量に容易に細分することができる。例えば、単位投薬は、小包化された粉末、バイアルまたはアンプルで、一態様ではカプセルまたは錠剤の形で構成されてもよい。組成物のこれらの単位剤形に存在する活性化合物は、患者の特定の必要性に応じて、1日1回または複数回の毎日の投与のために、約1グラム~約15グラム以上の量で存在し得る。活性化合物の1日量は、投与経路、患者の大きさ、年齢、性別、病状の重症度、および血液分析と患者の回復率によって追跡される治療への応答によって異なる。
【0038】
採用される正確な用量は、宿主、獣医学またはヒト医学のいずれであるか、状態の性質および重症度、例えば治療される疾患または障害、投与様式、および使用される特定の活性物質を含むいくつかの要因に依存する。化合物は、任意の従来の経路により、特に経腸的に、そして一態様では、錠剤またはカプセルの形態で経口的に投与され得る。投与される化合物は、特にアテローム性動脈硬化症および後遺症(狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全、腎不全、脳卒中、末梢動脈閉塞、および関連する疾患状態)の予防的または治療的治療で使用するための医薬品として使用するために、必要に応じて遊離形または薬学的に許容される塩形であり得る。これらの手段は、病気の状態の進行速度を遅くし、自然な方法で身体がプロセスの方向を逆転させるのを助ける。
【0039】
PAI-1阻害剤またはその誘導体は、当業者が認識するように、注射、または経口、経鼻、肺、局所、または他のタイプの投与用に製剤化することができる。製剤は、再構成のために液体であっても、凍結乾燥などの固体であってもよい。
【0040】
PAI-1阻害剤またはその誘導体は、PAI-1、LDL、またはVLDLのレベルの増加に関連する急性または慢性の疾患または障害のいずれかの治療に有用である。いくつかの態様では、PAI-1阻害剤の投与により緩和または調節される状態(例えば、疾患または障害)は、VLDLおよびLDLのレベルの増加を特徴とするものである。そのような状態は、化学療法や放射線療法などの他の目的の療法過程として誘発される場合がある。そのような状態は、遺伝的遺伝に起因するか、別の状態または薬物の副作用である可能性があると考えられる。
【0041】
「薬学的または薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与されたときに、薬害反応、アレルギー反応、または他の有害反応を引き起こさない分子実体および組成物を指す。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤がベクターまたは細胞と適合しない場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が考慮される。補助的な活性成分も組成物に組み込むことができる。
【0042】
本明細書に開示される方法で使用される活性組成物には、古典的な薬学的製剤が含まれる。これらの組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、一般的な経路を介して行われる。薬学的組成物は、任意の従来の方法、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、くも膜下腔内、球後、肺内(例えば、持続放出)によって、経口、舌下、鼻、肛門、膣、または経皮送達によって、または特定の部位での外科的留置によって、対象に導入され得る。治療は、単回投与または一定期間にわたる複数回投与で構成されてもよい。
【0043】
活性化合物は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中の遊離塩基または薬理学的に許容される塩の溶液として投与用に調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中で、ならびに油中で調製できる。通常の保存および使用条件下においては、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含む。
【0044】
注射用途に適した薬学的形態には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、形態は滅菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動性でなければならない。製造および保管の条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射用組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によってもたらされ得る。
【0045】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した他の成分のいくつかとともに適切な溶媒に組み込み、その後ろ過滅菌することによって調製される。一般的に、分散剤は、様々な滅菌した活性成分を、基本的な分散媒および上に列挙しものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分プラス予めろ過滅菌されたその溶液からの任意の追加の所望の成分との粉末を生成する真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0046】
「薬学的に許容される担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と適合しない場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が考慮される。補助的な活性成分も組成物に組み込むことができる。
【0047】
組成物の経口投与のために、PAI-1阻害剤を賦形剤と混合し、摂取できないうがい薬および歯磨剤の形で使用してもよい。うがい薬は、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)などの適切な溶媒に必要量の活性成分を組み込んで調製することができる。あるいは、活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび重炭酸カリウムを含む消毒洗浄液に組み込まれてもよい。活性成分は、ゲル、ペースト、粉末、スラリーなどが含まれる歯磨剤に分散させることもできる。活性成分は、水、結合剤、研磨剤、香味剤、発泡剤、および湿潤剤を含み得るペースト歯磨剤に治療有効量で添加され得る。
【0048】
本方法で使用される組成物は、中性または塩の形態で製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することもできる。
【0049】
本方法で使用される組成物は、ミセルまたはリポソームで製剤化されてもよい。そのような製剤には、立体的に安定化されたミセルまたはリポソームおよび立体的に安定化された混合ミセルまたはリポソームが含まれる。リポソームおよびミセルの脂質二重層は細胞の原形質膜と融合し、閉じ込められた内容物を細胞内区画に送達することが知られているため、そのような製剤は細胞内送達を促進することができる。
【0050】
製剤化されると、溶液は、投与製剤に適合する方法で、治療的に有効な量で投与される。製剤は、注射液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。例えば、水溶液での非経口投与の場合、必要に応じて溶液を適切に緩衝し、液体希釈剤を十分な生理食塩水またはグルコースで最初に等張にする必要がある。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適している。
【0051】
一般的に、PAI-1阻害剤またはその誘導体の有効量は、年齢、体重、およびレシピエントの疾患または障害の状態または重症度によって決定される。参照により本明細書に組み込まれる、Remington´s Pharmaceutical Sciences,supra,pages697-773を参照されたい。典型的には、約0.001μg/kg体重/日~約1000μg/kg体重/日の投与量が使用され得るが、当業者が認識するように、より多くまたはより少なくも使用され得る。投与は、1日1回以上、またはより少ない頻度であり得、本明細書に記載される他の組成物と併用され得る。本開示は、本明細書に列挙された投与量に限定されないことに留意されたい。
【0052】
約1グラムの最小1日用量で治療計画を開始することにより、PAI-1の血中濃度と患者の症状緩和分析を使用して、より高い用量が必要かどうかを判断できる。当業者は、治療のための適切な用量レベルが、こうして送達される分子、PAI-1阻害剤化合物が使用されている適応症、投与経路、および患者の体格(患者の体重、体表面、または臓器の大きさ)と状態(年齢および全身の健康)にある程度依存して変化することを理解するであろう。したがって、臨床医は投与量を滴定し、最適な治療効果を得るために投与経路を変更してもよい。典型的な用量は、上記の要因に応じて、約0.1μg/kg~最大約100mg/kg以上の範囲であり得る。他の実施形態では、投与量は、0.1μg/kg~最大約100mg/kg、または1μg/kg~最大約100mg/kg、または5μg/kg~最大約100mg/kgの範囲であり得る。
【0053】
「単位用量」は、適切な担体に分散した治療用組成物の個別の量として定義される。非経口投与は、薬物の治療的循環レベルを維持するために、最初のボーラス投与とそれに続く持続注入で実施することができる。当業者は、良好な医療行為および個々の患者の臨床状態によって決定されるように、有効な投与量および投与計画を容易に最適化するであろう。
【0054】
投与の頻度は、薬剤の薬物動態パラメーターと投与経路に依存する。最適な薬学的製剤は、投与経路および所望の投与量に応じて、当業者によって決定されるであろう。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington´s Pharmaceutical Sciences,supra,pages1435-1712を参照されたい。そのような製剤は、投与された薬剤の物理的状態、安定性、インビボ放出の速度およびインビボクリアランスの速度に影響を与える可能性がある。投与経路に応じて、体重、体表面積または臓器の大きさに応じて適切な用量が計算される。適切な治療用量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、特に本明細書に開示された投与量情報およびアッセイ、ならびに動物またはヒトでの臨床試験で観察された薬物動態データに照らして、過度の実験なしに当業者によって日常的に行われる。
【0055】
適切な投与量は、関連する用量反応データと併せて、心筋梗塞のレベルを決定するための確立されたアッセイを使用することにより確認することができる。最終的な投薬計画は、薬の作用、例えば薬の比活性、損傷の重症度、患者の反応性、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、感染の重症度、投与時間およびその他の臨床的要因などを変更する要因を考慮して、担当医が決定する。研究が行われると、適切な用量レベルと治療期間に関するさらなる情報が明らかになる。
【0056】
本明細書に開示される薬学的組成物および治療方法は、ヒト医学および獣医学の分野で有用であることは理解されよう。したがって、治療される対象は、一態様では哺乳動物である。代表的な態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0057】
加えて、さらに考えられるのは、PAI-1阻害剤と、任意選択的に、本明細書で論じる急性および慢性の疾患および障害の治療に有用な少なくとも1つの追加因子を含む組成物を含む成分を含むキットである。
【0058】
疾患または障害の治療における化合物の使用
本明細書では、本明細書で論じられる任意の疾患または障害の治療または予防のための医薬品の製造のために開示される化合物の使用が提供される。
【0059】
化合物は、セリンプロテアーゼ阻害剤PAI-1の阻害剤であり、したがって、PAI-1の産生および/または作用を伴うこれらのプロセスの治療または予防に有用である。したがって、化合物は、様々な態様では、本明細書に記載されるように、血栓症の予防または軽減、血栓溶解の促進、脂質代謝を調節する線維症の軽減に有用である。いくつかの態様では、化合物は、高コレステロールおよびPAI-1レベルの上昇に関連する疾患または障害の治療に有用である。様々な態様では、化合物は、高レベルのVLDLまたはLDLの治療に有用である。いくつかの態様では、化合物はHDLの上昇に有用である。
【0060】
いくつかの態様では、PAI-1活性に関連する疾患または障害の治療のためのこれらの阻害剤の使用が提供される。そのような疾患または障害としては、炎症、細胞遊走および細胞の遊走駆動性増殖、および血管形成または血栓症が含まれるが、これらに限定されない。そのような阻害剤はまた、内因性線維素溶解の調節に、および薬理学的血栓溶解と併せて有用であると考えられる。
【0061】
化合物は、インスリン抵抗性、肥満、インスリン非依存性糖尿病、心血管疾患、冠動脈に関連する血栓症および脳血管疾患の治療または予防に有用である。化合物は、アテローム性動脈硬化プラークの形成、静脈および動脈血栓症、心筋虚血、心房細動、深部静脈血栓症、凝固症候群、肺血栓症、脳血栓症、手術の血栓塞栓性合併症(関節置換術など)、および末梢動脈閉塞を含むが、これらに限定されない血栓症状態および血栓形成促進性状態を伴う疾患プロセスの阻害にも有用である。これらの化合物は、心房細動に関連する、または心房細動から生じる脳卒中の治療にも有用である。
【0062】
化合物はまた、高コレステロールおよびそのような状態に関連する疾患または障害の治療または予防にも使用される。
【0063】
化合物は、腎線維症、慢性閉塞性肺疾患、多嚢胞性卵巣症候群、再狭窄、腎血管疾患、臓器移植拒絶を含むがこれらに限定されない、細胞外マトリックスの蓄積に関連する疾患または障害の治療にも使用できる。
【0064】
化合物は、肺線維症、腎線維症、心臓線維症、肝線維症、および強皮症を含むがこれらに限定されない線維症の治療にも使用できる。
【0065】
化合物は、クローン病および潰瘍性大腸炎を含むがこれらに限定されない炎症性腸疾患の治療にも使用され得る。
【0066】
化合物は、悪性腫瘍、および血管新生に関連する疾患または障害(糖尿病性網膜症など)の治療にも使用できる。
【0067】
化合物はまた、血管手術、血管移植およびステントの開存性、臓器、組織および細胞のインプラント術および移植を含む、血管の開通性の維持を含むプロセスまたは手順と併せて、およびその後に使用されてもよい。
【0068】
化合物は、アルツハイマー病の治療にも使用できる。この方法はまた、アルツハイマー病を患っているまたはアルツハイマー病に罹った、哺乳動物、特にヒトにおけるPAI-1によるプラスミノーゲン活性化の阻害として特徴付けることができる。この方法は、哺乳動物、特にアルツハイマー病を患っているまたはアルツハイマー病に罹った、哺乳動物のプラスミン濃度のレベルを増加または正常化する方法として特徴付けられてもよい。
【0069】
化合物は、間質細胞過形成および細胞外マトリックスタンパク質の増加を調節することにより、骨髄化生を伴う骨髄線維症治療に使用できる。
【0070】
この化合物は、プロテアーゼ阻害剤を含む高活性抗レトロウイルス療法(HAART)と併用して、そのような療法を受けているHIV-1感染患者の線維素溶解機能障害および凝固亢進に起因する疾患または障害の治療にも使用できる。
【0071】
該化合物は、糖尿病性腎症および腎症に関連する腎透析の治療に使用され得る。
【0072】
化合物は、がん、敗血症、乾癬などの増殖性疾患、凝固恒常性の改善、脳血管疾患、微小血管疾患、高血圧、認知症、アテローム性動脈硬化、骨粗鬆症、関節炎、喘息、心不全、不整脈、狭心症などの治療のために、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、骨粗鬆症、骨減少症の進行の治療、予防、または逆転させるホルモン補充剤として、炎症マーカーを減少させるために、線維素溶解障害に、C反応性タンパク質の減少させるために、または低悪性度血管炎症、脳卒中、認知症、冠状動脈性心臓病を予防または治療するために、心筋梗塞の一次および二次予防に、安定および不安定狭心症に、冠動脈イベントの一次予防に、心血管イベントの二次予防に、末梢血管疾患、末梢動脈疾患、急性血管症候群、深部静脈血栓症、肺塞栓症に、心筋血行再建術を受けるリスクの低減に、腎症、神経障害、網膜症、ネフローゼ症候群などの微小血管疾患に、高血圧に、1型および2型糖尿病および関連疾患に、肥満、インスリン抵抗性、高血糖、高インスリン血症、悪性病変、前悪性病変、消化管悪性腫瘍、脂肪肉腫および上皮性腫瘍、乾癬などの増殖性疾患に、凝固恒常性の改善に、および/または内皮機能の改善に、脳血管疾患の全ての形態に、使用され得る。
【0073】
本明細書に開示される化合物は、瘢痕の予防のための創傷治癒における局所適用に使用することができる。
【0074】
本明細書に開示されている化合物は、炎症性疾患、敗血症性ショック、感染症に伴う血管損傷の治療に、透析、液相での血液貯蔵、特にエクスビボ血小板凝集に使用される血液および血液製剤の処理に使用できる。化合物は、血栓溶解剤、線維素溶解剤および抗凝固剤と組み合わせて使用することもできる。本発明の化合物はまた、病院環境での血液化学の分析中にヒトの血漿に加えて、その線維素溶解能力を決定してもよい。
【0075】
本明細書ではさらに、哺乳動物、一態様では、ヒトにおいて本明細書で言及される各疾患を治療、予防、寛解または阻害する方法であり、そのような治療、予防、寛解または阻害を必要とする哺乳動物に本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩の薬学的または治療的有効量を投与することをそれぞれ含む方法(複数可)を提供する。
【0076】
本明細書に開示される化合物は、乳がんおよび卵巣がんを含むがこれらに限定されないがんを治療するため、および転移がんの同定のための造影剤として使用することもできる。
【0077】
本明細書の化合物の薬学的または治療的有効量は、それを必要とする哺乳動物のセリンプロテアーゼ阻害剤PAI-1を望ましい改善を提供するのに十分な程度に十分に阻害する問題の化合物の量を指すことが理解されるであろう問題の状態で、またはセリンプロテアーゼ阻害剤PAI-1の十分な阻害を提供して、問題の病気または状態の生理学的基礎の発症を予防、阻害または制限する。
【実施例0078】
化合物CDE517の合成:
【化13】
【0079】
エチル2-((4-クロロ-3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)アミノ)-2-オキソアセテート:ジクロロメタン(10mL)中の、4-クロロ-3-(トリフルオロメトキシ)ベンジルアミン(771.9mg、3.42mmol)およびピリジン(830μL、10.26mmol)撹拌溶液を、氷浴で冷却した。エチルオキサリルクロリド(385μL、3.42mmol)を滴下し、混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、0.2NHCl(2x)、飽和NaHCO3水溶液(2x)、およびブライン(1x)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮して、生成物1.0726g(収率96%)を透明な油として得た。1H-NMR(DMSO-d6,400MHz)δ9.5(t,J=6Hz,1H),7.62(d,J=8.2Hz,1H),7.44(bs,1H),7.3(dd,J=8.7,1.8Hz,1H),4.33(d,J=6.4Hz,2H),4.21(q,J=6.9Hz,2H),1.23(t,J=6.9Hz,3H)。
【化14】
【0080】
N-(4-クロロ-3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)-2-ヒドラジニル-2-オキソアセトアミド(CDE-517):無水エタノール(30mL)中のエチル2-((4-クロロ-3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)アミノ)-2-オキソアセテート(1.0726g、3.29mmol)の溶液に、50%ヒドラジン水和物(425μL、6.59mmol)を滴下し、2時間撹拌した。固体をろ過し、真空で乾燥させ、次いで沸騰脱イオン水で粉砕して、0.7191g(収率70.2%)の生成物を白色固体として得た。1H-NMR(DMSO-d6,400MHz)δ10.1(bs,1H),9.37(t,J=6.4Hz,1H),7.61(d,J=8.2Hz,1H),7.42(bs,1H),7.28(dd,J=8.3,1.8Hz,1H),4.5(d,J=3.6Hz,2H),4.31(d,J=6.4Hz,2H);13C-NMR(DMSO-d6,100MHz)δ160.6,158.3,144.3,141.1,131.4,128.5,124.8,122.4,120.6(q,J=256.5Hz),41.8。
【0081】
化合物CDE-415の合成:
N-(3-クロロ-4-フルオロベンジル)-2-ヒドラジニル-2-オキソアセトアミド(CDE-415):ジクロロメタン(5ml)中の、3-クロロ-4-フルオロベンジルアミン(230μL、1.83mmol)およびピリジン(296μL、3.66mmol)の溶液に、エチル2-クロロ-2-オキソアセテート(215μL、1.92mmol)を氷浴上で滴下した。5分後に溶液を氷浴から取り出し、室温まで温めた。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、0.2NHCl(2x)および飽和NaHCO3(1x)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮して、0.336gのエチル2-(3-クロロ-4-フルオロベンジルアミノ)-2-オキソアセテートを白色固体として得た(収率71%)。1HNMR(CDCl3,400MHz)δ7.42(s,1H),7.34(dd,J=2.3,6.9Hz,1H),7.17(M,1H),7.10(t,J=8.7Hz,1H),4.46(d,J=6.0Hz,2H),4.35(q,J=7.3Hz,2H),1.39(t,J=6.9Hz,3H)。エタノール(6ml)中のエチル2-(3-クロロ-4-フルオロベンジルアミノ)-2-オキソアセテート(211.9mg、0.816mmol)の溶液に、50%ヒドラジン水和物(102μL)を滴下した。混合物を室温で一晩撹拌した。混合物から生成物をろ過し、真空乾燥して、0.188gのN-(3-クロロ-4-フルオロベンジル)-2-ヒドラジニル-2-オキソアセトアミドを白色固体として得た(収率94%)。1HNMR(DMSO-d6,400MHz)δ10.01(s,1H),9.28(t,J=6.4Hz,1H),7.42(dd,J=1.8,5.5Hz,1H),7.32(t,J=8.7Hz,1H),7.23(m,1H),4.48(s,2H),4.25(d,J=6.4Hz,2H);13CNMR(DMSO-d6,100MHz)δ160.48,158.43,156.75(d,J=244Hz),137.32,129.97,128.63,119.62(J=18Hz),117.25(J=20Hz),41.66。
【0082】
化合物CDE-412の合成:
N-(4-クロロ-3-フルオロベンジル)-2-ヒドラジニル-2-オキソアセトアミド(CDE-412):ジクロロメタン(5ml)中の、4-クロロ-3-フルオロベンジルアミン(225μL、1.83mmol)およびピリジン(296μL、3.66mmol)の溶液に、エチル2-クロロ-2-オキソアセテート(215μL、1.92mmol)を氷浴上で滴下した。10分後に溶液を氷浴から取り出し、室温まで温めた。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、0.2NHCl(2x)および飽和NaHCO3(1x)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空濃縮して、0.3878g(82%収率)のエチル2-(4-クロロ-3-フルオロベンジルアミノ)-2-オキソアセテートを白色固体として得た。1HNMR(CDCl3,400MHz)δ7.45(s,1H),7.36(t,J=7.96Hz,1H),7.09(d,J=9.6Hz,1H),7.02(d,J=8.3Hz,1H),4.48(d,J=6.4Hz,2H),4.35(q,J=6.9Hz,2H),1.38(t,J=6.9Hz,3H)。エタノール(6ml)中のエチル2-(4-クロロ-3-フルオロベンジルアミノ)-2-オキソアセテート(119.7mg、0.461mmol)の溶液に、50%ヒドラジン水和物(57μL)を滴下した。混合物を室温で一晩撹拌した。混合物から生成物をろ過し、真空乾燥して、59.0mgのN-(4-クロロ-3-フルオロベンジル)-2-ヒドラジニル-2-オキソアセトアミドを白色固体として得た(収率52%)。1HNMR(DMSO-d6,400MHz)δ10.02(s,1H),9.30(t,J=6.4Hz,1H),7.49(t,J=8.24Hz,1H),7.24(dd,J=1.8,10.5Hz,1H),7.08(dd,J=1.36,8.24Hz,1H),4.51(s,2H),4.27(d,J=6.4Hz,2H);13CNMR(DMSO-d6,100MHz)δ160.54,158.74,158.40,156.29,141.29,141.23,130.99,125.08,125.05,118.36,118.19,116.31,116.10,41.86。
【0083】
PAI-1阻害剤の蛍光IC50プレートアッセイ:血漿中のPAI-1阻害剤活性をアッセイするために、組み換え活性ヒトPAI-1(MolecularInnovations)を、10μg/mLアプロチニン(Roche)を含むPAI-1枯渇ヒト血漿(MolecularInnovations)に20nMまでの濃度で加えた。次に、10μLのこのヒト血漿(PAI-1あり、またはPAI-1なし)を、濃度が増加するPAI-1阻害剤を含む80μLの緩衝液を含むウェルに添加し、23℃で15分間インキュベートした(緩衝液:40mMHEPES、100mMNaCl、0.005%Tween-20、pH7.4、および10%DMSO)。次に、10μLの25nMUPA(rheotromb)(最終2.5nM)を各反応ウェルに加え、24℃でさらに30分間インキュベートし、最終PAI-1濃度は2nMであり、最終uPA濃度は2.5nMであった。このインキュベーション後、100mMのuPA蛍光基質Z-Gly-Gly-Arg-AMC(Calbiochem)を含む100μLの緩衝液を50μMの最終濃度で添加し、各反応混合物の残留uPA活性を23℃で10分間、370nmの励起波長と440nmの発光波長で測定したuPAによるAMC放出速度から決定した。データは、残留PAI-1活性として、対照PAI-1活性のパーセントとして表される。
【0084】
緩衝液または1.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む緩衝液でのアッセイについては、血漿もアプロチニンも添加せず、100mMNaCl、40mMHEPES、0.005%Tween-20、10%DMSO、pH7.4、または1.5%BSAを含む同じ緩衝液のいずれかで活性を測定したことを除き、アッセイは上記のとおり行った。結果は図に示されている。図1は、構造
【化15】
(CDE-517)の化合物の場合である。図2は、構造
【化16】
(CDE-252)の化合物の場合である。図3は、構造
【化17】
(CDE-519)の化合物の場合である。図4は、構造
【化18】
(CDE-520)の化合物の場合である。図5は、構造
【化19】
(CDE-264)の化合物の場合である。図6は、構造
【化20】
(CDE-295)の化合物の場合である。図7は、構造
【化21】
(CDE-234)の化合物の場合である。図8は、構造
【化22】
(CDE-241)の化合物の場合である。図9は、構造
【化23】
(CDE-246)の化合物の場合である。図10は、構造
【化24】
(CDE-413)の化合物の場合である。
【0085】
図11は、構造
【化25】
(CDE-415)の化合物の場合である。図12は、構造
【化26】
(CDE-412)の化合物の場合である。これらのデータは、モノハロフェニル化合物CDE-248およびCDE-266(それぞれ図13および14)、ならびに他の様々なジハロフェニル化合物:[1](CDE-301、図15)、[2](CDE-307、図16)、[3](CDE-340、図17)、[4](CDE-422、図18)、[5](CDE-423、図19)、[6](CDE-424、図20)、および[7](CDE-446、図21)のデータと比較される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2023-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
図11は、構造
【化25】
(CDE-415)の化合物の場合である。図12は、構造
【化26】
(CDE-412)の化合物の場合である。これらのデータは、モノハロフェニル化合物CDE-248およびCDE-266(それぞれ図13および14)、ならびに他の様々なジハロフェニル化合物:[1](CDE-301、図15)、[2](CDE-307、図16)、[3](CDE-340、図17)、[4](CDE-422、図18)、[5](CDE-423、図19)、[6](CDE-424、図20)、および[7](CDE-446、図21)のデータと比較される。
本発明の態様の一部を以下に記載する。
1.下記構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化27】
2.プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)を阻害する方法における使用のための、項目1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、前記方法は、PAI-1を、前記PAI-1を阻害するのに有効な量の、前記化合物またはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む、組成物。
3.異常なPAI-1活性に関連する障害を治療する方法における使用のための、項目1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、前記方法は、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記障害を治療するのに有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含む、組成物。
4.前記障害が、がん、敗血症、肥満、インスリン抵抗性、脂質代謝の調節不全に関連する疾患または障害、上昇したVLDLまたはLDLレベルに関連する疾患または障害、高コレステロール、増殖性の疾患または障害、線維症および線維性疾患、炎症性腸疾患、凝固恒常性(coagulation homeostasis)、脳血管疾患、微小血管疾患、高血圧、認知症、アテローム性動脈硬化、骨粗鬆症、骨減少症、関節炎、喘息、心不全、不整脈、狭心症、ホルモン不足症(hormone insufficiency)、アルツハイマー病、高血圧、炎症、セプシス、線維素溶解障害、脳卒中、認知症、冠状動脈性心疾患、心筋梗塞、安定および不安定狭心症、血管疾患、末梢動脈疾患、急性血管症候群、血栓症、プロトロンボシス(prothrombosis)、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血管疾患、微小血管疾患、高血圧、糖尿病、高血糖、高インスリン血症、悪性病変、前悪性病変、消化管悪性腫瘍、脂肪肉腫、上皮性腫瘍、および乾癬、細胞外マトリックス蓄積障害、血管新生(neoangiogenesis)、骨髄線維症、線維素溶解機能障害、多嚢胞性卵巣症候群、エストロゲン欠乏で誘発される骨喪失、血管形成(angiogenesis)、血管新生、骨髄線維症、または線維素溶解機能障害である、項目3に記載の組成物。
5.前記血栓症またはプロトロンボシスが関与する前記疾患または障害が、アテローム性動脈硬化プラークの形成、静脈血栓症、動脈血栓症、心筋虚血、心房細動、深部静脈血栓症、凝固症候群、肺血栓症、脳血栓症、手術の血栓塞栓性合併症、および末梢動脈閉塞である、項目4に記載の組成物。
6.前記障害が線維症である、項目4に記載の組成物。
7.前記線維症が肺線維症、腎線維症、心臓線維症、肝線維症、または強皮症である、項目6に記載の組成物。
8.前記障害が炎症性腸疾患である、項目4に記載の組成物。
9.前記炎症性腸疾患がクローン病または潰瘍性大腸炎である、項目8に記載の組成物。
10.前記細胞外マトリックス蓄積障害が腎線維症、慢性閉塞性肺疾患、多嚢胞性卵巣症候群、再狭窄、腎血管疾患、糖尿病性腎症、または臓器移植拒絶である、項目4に記載の組成物。
11.PAI-1レベルが上昇した対象におけるコレステロール、脂質クリアランス、および/または脂質取り込みを調節する方法における使用のための、項目1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、前記方法は、有効量の前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記対象の前記上昇したPAIレベルを低下させてコレステロール、脂質クリアランス、および/または脂質取り込みを調節するのに有効な量で前記対象に投与することを含む、組成物。
12.前記化合物または塩が、前記対象における循環高密度リポタンパク質(HDL)を増加させ、かつ/または循環超低密度リポタンパク質(VLDL)を減少させる、項目11に記載の組成物。
13.前記化合物または塩が、アポリポタンパク質E(ApoE)またはアポリポタンパク質A(ApoA)のVLDL-Rへの結合を阻害する、項目11に記載の組成物。
14.前記化合物または塩が、HDLまたはアポリポタンパク質E(ApoE)もしくはアポリポタンパク質A(ApoA)のApoA受容体への結合を減少させる、項目11に記載の組成物。
15.前記化合物または塩が、PAI-1のアポリポタンパク質E(ApoE)への結合を減少させる、項目11に記載の組成物。
16.前記化合物または塩が、PAI-1のアポリポタンパク質A(ApoA)への結合を減少させる、項目11に記載の組成物。
17.前記化合物または塩が、PAI-1のVLDLへの結合を減少させる、項目11に記載の組成物。
18.前記化合物または塩が、ビトロネクチンの存在下でPAI-1に結合する、項目11に記載の組成物。
19.前記化合物または塩が、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)の存在下でPAI-1に結合する、項目11に記載の組成物。
20.前記対象が、ヒトである、項目2~19のいずれかに記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造:
【化1】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または下記構造:
【化2】
を有する化合物もしくはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項3】
前記化合物が、下記構造:
【化3】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)を阻害するための、下記構造:
【化4】
を有する化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含む組成物、または請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
異常なPAI-1活性に関連する障害を治療するための、下記構造:
【化5】
を有する化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含む組成物、または請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記障害が、がん、敗血症、肥満、インスリン抵抗性、脂質代謝の調節不全に関連する疾患または障害、上昇したVLDLまたはLDLレベルに関連する疾患または障害、高コレステロール、増殖性の疾患または障害、線維症および線維性疾患、炎症性腸疾患、凝固恒常性(coagulation homeostasis)、脳血管疾患、微小血管疾患、高血圧、認知症、アテローム性動脈硬化、骨粗鬆症、骨減少症、関節炎、喘息、心不全、不整脈、狭心症、ホルモン不足症(hormone insufficiency)、アルツハイマー病、高血圧、炎症、セプシス、線維素溶解障害、脳卒中、認知症、冠状動脈性心疾患、心筋梗塞、安定および不安定狭心症、血管疾患、末梢動脈疾患、急性血管症候群、血栓症、プロトロンボシス(prothrombosis)、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血管疾患、微小血管疾患、高血圧、糖尿病、高血糖、高インスリン血症、悪性病変、前悪性病変、消化管悪性腫瘍、脂肪肉腫、上皮性腫瘍、および乾癬、細胞外マトリックス蓄積障害、血管新生(neoangiogenesis)、骨髄線維症、線維素溶解機能障害、多嚢胞性卵巣症候群、エストロゲン欠乏で誘発される骨喪失、血管形成(angiogenesis)、血管新生、骨髄線維症、または線維素溶解機能障害である、請求項5に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項7】
前記血栓症またはプロトロンボシスが関与する前記疾患または障害が、アテローム性動脈硬化プラークの形成、静脈血栓症、動脈血栓症、心筋虚血、心房細動、深部静脈血栓症、凝固症候群、肺血栓症、脳血栓症、手術の血栓塞栓性合併症、および末梢動脈閉塞である、請求項6に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項8】
前記障害が線維症である、請求項6に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項9】
前記線維症が肺線維症、腎線維症、心臓線維症、肝線維症、または強皮症である、請求項7に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項10】
前記障害が炎症性腸疾患である、請求項6に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項11】
前記炎症性腸疾患がクローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項10に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項12】
前記細胞外マトリックス蓄積障害が腎線維症、慢性閉塞性肺疾患、多嚢胞性卵巣症候群、再狭窄、腎血管疾患、糖尿病性腎症、または臓器移植拒絶である、請求項6に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項13】
PAI-1レベルが上昇した対象におけるコレステロール、脂質クリアランス、および/または脂質取り込みを調節するための、下記構造:
【化6】
を有する化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含む組成物、または請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記化合物または塩が、前記対象における循環高密度リポタンパク質(HDL)を増加させ、かつ/または循環超低密度リポタンパク質(VLDL)を減少させる、請求項13に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項15】
前記化合物または塩が、アポリポタンパク質E(ApoE)またはアポリポタンパク質A(ApoA)のVLDL-Rへの結合を阻害する、請求項13に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項16】
前記化合物または塩が、HDLまたはアポリポタンパク質E(ApoE)もしくはアポリポタンパク質A(ApoA)のApoA受容体への結合を減少させる、請求項13に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項17】
前記化合物または塩が、PAI-1のアポリポタンパク質E(ApoE)への結合を減少させる、請求項13に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項18】
前記化合物または塩が、PAI-1のアポリポタンパク質A(ApoA)への結合を減少させる、請求項13に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項19】
前記化合物または塩が、PAI-1のVLDLへの結合を減少させる、請求項13に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項20】
前記化合物または塩が、ビトロネクチンの存在下でPAI-1に結合する、請求項13に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項21】
前記化合物または塩が、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)の存在下でPAI-1に結合する、請求項13に記載の組成物または薬学的組成物。