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特開2023-113803シチシンのコハク酸塩およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113803
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】シチシンのコハク酸塩およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/439 20060101AFI20230808BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20230808BHJP
   C07D 471/18 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61K31/439
A61K9/48
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/36
A61P25/34
C07D471/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092903
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2021000114の分割
【原出願日】2017-02-06
(31)【優先権主張番号】1602145.3
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518274319
【氏名又は名称】アチーブ ファーマ ユーケイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート、リチャード アリステア バルフォア
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス、アンドルー ガレス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シチシンの新規な塩およびその塩を含む医薬組成物の提供、特に、改善された賦形剤適合性を示し、安定な医薬組成物の調製を可能にするシチシンの塩を提供する。
【解決手段】シチシンのコハク酸塩を含有する単位剤であって、該塩がコハク酸水素シチシンであり、該単位剤が経口、経鼻、又は局所の単位剤である、前記単位剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シチシンのコハク酸塩を含有する単位剤であって、該塩がコハク酸水素シチシンであり
、該単位剤が経口、経鼻、又は局所の単位剤である、前記単位剤。
【請求項2】
前記シチシンのコハク酸塩が溶媒和物または水和物である、請求項1に記載の単位剤。
【請求項3】
前記シチシンのコハク酸塩が、該コハク酸塩および医薬的に許容される賦形剤を含む医
薬組成物として調剤されている、請求項1又は2に記載の単位剤。
【請求項4】
錠剤またはカプセルの形態である、請求項1に記載の単位剤。
【請求項5】
前記医薬的に許容される賦形剤がラクトース、コーンスターチ及びコムギデンプンから
なる群から選択される、請求項3記載の単位剤。
【請求項6】
前記シチシンのコハク酸塩を1~3mg含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の
単位剤。
【請求項7】
ニコチン中毒の治療に使用するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の単位剤
【請求項8】
経口の単位剤である、請求項1から7のいずれか一項に記載の単位剤。
【請求項9】
経鼻の単位剤である、請求項1から7のいずれか一項に記載の単位剤。
【請求項10】
局所の単位剤である、請求項1から7のいずれか一項に記載の単位剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シチシンの新規な塩に関する。本発明はまた、新規なシチシン塩を含む医薬
組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シチシンは、強力なニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストであることが公知のピ
リジン様アルカロイドである。薬理学的には、シチシンはニコチンと高度の類似性を示す
。数多くの研究により、シチシンがニコチン中毒の治療に有用であることが示されている
【0003】
シチシンを含有する禁煙用製品は、Tabex(登録商標)という商品名で数年間市販
されている。Tabex(登録商標)製品は、1.5mgのシチシン遊離塩基を含む経口
投与錠剤の形態で市販されている。製品は有効であることが判明し、商業的に成功してい
るが、製品の認可された貯蔵寿命は2年である。
【0004】
当業者には認識されるように、医薬品には2年間の貯蔵寿命が一般に許容されるが、そ
れが、製品を迅速に包装し、輸送し、ユーザーに配送するという点で製造業者およびサプ
ライチェーンに圧力をかけ、さらに貯蔵寿命を超えた場合の在庫浪費のリスクを増加させ
る。さらに、製品が高温/多湿な気候(例:ICH気候帯(climactic zon
e)IIIおよびIV)の地域に出荷される場合は、製品を保護し、貯蔵寿命を維持する
ための追加包装が必要になることがある。
【0005】
先行技術では、シチシン含有製品のための多数の製剤アプローチが提案されている。例
えば、欧州特許第1586320号は、シチシン遊離塩基を含む固体投与製剤を開示して
いる。この文献には、開示された製剤が改善された安定性を提供すると述べられているが
、これがシチシンの塩の使用によって達成され得るという示唆はない。実際、その文献に
はシチシンの塩は開示されていない。
【0006】
国際公開第2014/076680号もまた、シチシンの安定性を改善すると述べられ
ているシチシン含有製剤を開示している。欧州特許第1586320号の場合と同様に、
安定性を改善するためにシチシンの塩を使用するという示唆も、言及された塩もない。国
際公開第2014/076680号では、シチシン活性成分とラクトースとの間の不適合
の問題が提起されている。具体的には、ラクトースは化学的に完全に不活性ではなく、メ
イラード反応を引き起こすことがあるラクトース分子中のカルボキシル基の存在により、
シチシンを含む錠剤を不安定化させる可能性があると述べられている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、当技術分野において、従来の賦形剤、例えばラクトースと本質的により適
合性のあるシチシンの形態が必要とされている。
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに予想外に、改善された賦形剤適合性を示し、賦形剤とし
てラクトースを用いて製剤化することができるシチシンの新規塩を同定した。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様によれば、シチシンのコハク酸塩が提供される。本発
明の実施形態において、この塩は、溶媒和物または水和物の形態で存在してもよい。塩は
、好ましくはコハク酸水素シチシンである。
【0010】
上記のように、塩の改善された適合性は、安定な医薬組成物の調製を可能にする。した
がって、本発明の第2の態様によれば、シチシンのコハク酸塩および医薬的に許容される
担体を含む医薬組成物が提供される。
【0011】
一実施形態において、医薬的に許容される担体はラクトースである。ラクトースは、ラ
クトース一水和物または無水ラクトースであり得る。
【0012】
本明細書に開示される組成物は、当技術分野において公知の任意の経路による投与に適
切であり得る。本発明のこの態様に包含される医薬製剤には、経口、経鼻または局所投与
に適した製剤が含まれる。一実施形態において、組成物は、錠剤またはカプセルのような
固体形態で製剤化され得る。
【0013】
本発明の組成物中で使用され得る賦形剤に関して、これらには、充填剤、崩壊剤、保存
剤、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)および/または湿潤剤が含まれる。使
用され得る充填剤の例には、ラクトース(無水または一水和物)、セルロース、デンプン
(例えば、トウモロコシおよび/またはコムギデンプン)、リン酸カルシウム、マンニト
ールおよび当技術分野で公知の他のものが含まれる。
【0014】
保存剤は、製剤の細菌または真菌汚染を防止し、パラベン、クロロブタノール、フェノ
ールまたはソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤を含み得る。
【0015】
医薬組成物は、当技術分野で公知の任意の方法に従って、例えば、コリドンまたはシェ
ラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタンまたは糖を使用して、コーティングするこ
とができる。
【0016】
本発明の医薬組成物は、甘味剤、香味剤または着色剤をさらに含んでもよい。
【0017】
医薬組成物がカプセルの形態で提供される本発明の実施形態において、これらは、任意
の適切な方法によって調製され得る。例えば、このようなカプセルは、塩をラクトースま
たはソルビトールなどの不活性担体と混合し、ゼラチンカプセルに充填することによって
調製することができる。
【0018】
本発明の実施形態において、医薬組成物は、単位剤形(例えば、錠剤、カプセル剤)と
して提供される。組成物中のコハク酸シチシン塩の量は、約0.5mgまたは約1.0m
g~2.0mg、3.0mg、5.0mgまたは約10mgの範囲であり得る。ある実施
形態において、本発明の医薬組成物は、25℃および60%±5%の相対湿度で保存した
場合、2年を超える貯蔵寿命を有することができる。
他の記載と重複するが、本発明を以下に示す。
[発明1]
シチシンのコハク酸塩。
[発明2]
前記塩がコハク酸水素シチシンである、発明1に記載の塩。
[発明3]
発明1または2に記載の塩の溶媒和物または水和物。
[発明4]
発明1から3のいずれか一項に記載の塩および医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組
成物。
[発明5]
錠剤またはカプセルの形態である、発明4に記載の医薬組成物。
[発明6]
前記医薬的に許容される賦形剤がラクトース、コーンスターチおよび/またはコムギデ
ンプンである、発明4または5に記載の医薬組成物
[発明7]
発明1から3のいずれか一項に記載の塩を1~3mg含む単位剤形として提供される、
発明4から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[発明8]
ニコチン中毒の治療に使用するための、発明4から7のいずれか一項に記載の医薬組成
物。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)310nmおよび(b)203nmにおけるシチシンのHPLCクロマトグラムを示す図である。
図2】(a)310nmおよび(b)203nmにおけるコハク酸のHPLCクロマトグラムを示す図である。
図3】(a)310nmおよび(b)203nmにおけるコハク酸シチシンのHPLCクロマトグラムを示す図である。
図4】(a)ESI+および(b)ESI-のコハク酸シチシンのHRMSスペクトルを示す図である。
図5】(a)ESI+および(b)ESI-のコハク酸シチシンのMS-MSスペクトルを示す図である。
図6】(a)FTIRおよび(b)FTIR(ATR)のコハク酸シチシンのIRスペクトルを示す図である。
図7】コハク酸水素シチシンに関する(a)コハク酸および(b)シチシンのDAD検出器を用いたピーク純度決定を示す図である。
【0020】
本発明の様々な実施形態を、以下の例を参照してさらに説明する。
【0021】
例1:コハク酸シチシン塩の調製
シチシンおよびコハク酸の水性混合物を調製した。これらの出発材料のHPLCクロマ
トグラムを図1および2に示す。アセトンを加え、混合物から約70%の収率でコハク酸
シチシン塩を単離した。
【0022】
出発材料(シチシンおよびコハク酸)および得られた塩を、いくつかの分析方法を用い
て特徴づけた(図1~7を参照されたい)。結果を以下の表1に示す。塩のクロマトグラ
フィー純度をHPLCを用いて決定し、99.9%よりも高いことが判明した(図3)。
図に示すように、本発明の塩は、従来の塩析方法を用いて、非常に高純度で容易に製造す
ることができる。
【0023】
得られた塩に、高分解能質量スペクトル分析(図4)、タンデム質量分析(図5)、I
R分光法(図6)およびUV/VIS分析(図7)を実施した。
【0024】
【表1】
【0025】
例2:コハク酸シチシン塩の安定性
例1から得られたコハク酸シチシン塩の試料を、その安定性、および使用した賦形剤と
のAPIとの適合性を調べるために、標準的な製剤化で製剤化した。これらの製剤の予備
分析は、コハク酸塩を含む製剤が、シチシン遊離塩基を含む製剤より有意により安定であ
ることを示している。
【0026】
例3-塩のスクリーニング
以下の表に詳述するモル濃度を有する、酸性塩形成剤のストック溶液を担体溶媒中で調
製した:
【表2】
【0027】
シチシンAPI(非合成)のストック溶液もCHCNおよび2-Me-THF中で調
製した。2.4gのシチシンを、40℃に加熱した24mlのCHCNに溶解した。2
.4gのシチシンを、60℃の温度に加熱した60mlの2-Me-THFに溶解した。
【0028】
40℃に加熱した10ml容量のチューブに、2mlのシチシン/CHCNストック
溶液または5mlのシチシン2-Me-THFストック溶液を入れた。次いで、酸ストッ
ク溶液を等モル量で加熱下チューブに添加した。溶液を40℃で1時間保持し、次いで周
囲温度(約18℃)に18時間放冷した。固体形成が自発的に生じない場合、i)窒素下
で徐々に吹き込み、結晶化を誘発、ii)貧溶媒投入/トリチュレート、iii)窒素下
で二次吹き込み、3mlのTBMEおよび1mlのアセトンでトリチュレーションする操
作を行った。
【0029】
次いで、得られた固体の濾過をPTFEフリットカラムを用いて行い、得られた固体を
50℃で48時間乾燥させた。次に、得られた生成物の特性を分析し、以下の表は、この
スクリーニングの結果および得られた生成物の特性をまとめたものである;
【表3】
【0030】
図に示すように、適切な塩は、一般的な酸性塩形成剤の酢酸、アスコルビン酸または安
息香酸で形成することができなかった。しかしながら、コハク酸塩は容易に形成され、有
利な特性を示した。
【0031】
例4-ラクトース非適合性試験
シチシン0.9541gを水1mlに溶解し、黄色の溶液を得た。コハク酸、0.59
19g、1当量を固体としてシチシン溶液に加え、攪拌しながらゆっくりと溶解させた。
アセトン(10ml)を入れ、下部がシチシン/コハク酸/水の溶液、および上部がアセ
トンの分配混合物を得た。シチシン/コハク酸/水の溶液の一部をアセトン(10ml)
でトリチュレーションして、粘稠な混合物を沈殿した白色固体に変換した。この白色懸濁
液を、シチシン/コハク酸/水の溶液/アセトン混合物の残りに加え、アセトン10ml
ですすぎ、攪拌を続けた。これにより、粘性のシチシン/コハク酸/水混合物を、攪拌を
停止したときに沈降が生じる白色懸濁液に変換した。固体を濾過により単離し、50℃で
約16時間真空乾燥させた。回収された固体は、H NMR分析によってコハク酸シチ
シンであることが確認された。
【0032】
回収率:1.5463g、シチシン対コハク酸が1:1の塩の化学量論に基づいて80
.76%
シチシン/ラクトースおよびコハク酸シチシン/ラクトース二成分混合物の安定性を、
9日間でゆるめた蓋を備えたバイアル中で40℃および75%相対湿度(RH)において
評価した。
【0033】
使用した試料混合物および保存条件を表2および表3に詳述する。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
安定性試験の開始時に、シチシン/ラクトース混合物の化学純度は99.83面積%で
あり、コハク酸シチシン/ラクトース混合物は99.68面積%であった。
【0037】
安定性試験期間の終了時に、以下の結果が観察された:
【0038】
【表6】
【0039】
表4のデータからわかるように、コハク酸塩の形態で存在する場合、シチシンは、遊離
塩基形態で存在する場合よりも実質的に低い速度で分解される。したがって、コハク酸塩
は、シチシンの安定性を効果的に改善し、ラクトースを含む組成物によるその製剤化を容
易にする。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【手続補正書】
【提出日】2023-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に実質的に記載された、新規な物、方法及び製造方法。