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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113819
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】脂質組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/618 20150101AFI20230808BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 35/612 20150101ALI20230808BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61K35/618
A61P29/00
A61K35/612
A61K9/48
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023093106
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2019560209の分割
【原出願日】2018-12-21
(31)【優先権主張番号】2017905181
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】503107185
【氏名又は名称】ファーマリンク インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Pharmalink International Limited
【住所又は居所原語表記】c/o Third Floor, 31 C-D, Wyndham Street, Central, Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ホジソン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ ステファン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー クリストファー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炎症又は疼痛の処置に有用な組み合わせ又は組成物を提供する。
【解決手段】ムール貝脂質及びクリルオイルの組み合わせ又は組成物である。好ましくは、クリルオイルが少なくとも約50%w/wのリン脂質含有量を有する、組み合わせ又は組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムール貝脂質とクリルオイルとを含む組み合わせであって、個別投与又は連続投与のために適合されている組み合わせ。
【請求項2】
ムール貝脂質とクリルオイルとを含む組成物の形態にある請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記クリルオイルが少なくとも約40%w/wのリン脂質含有量を有する請求項1又は請求項2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記クリルオイルが少なくとも約60%w/wのリン脂質含有量を有する請求項3に記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記クリルオイルが約5%w/w以下の水分含有量を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項6】
前記クリルオイルが約3%w/w以下の水分含有量を有する請求項5に記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記クリルオイルが約1%w/w以下の水分含有量を有する請求項5に記載の組み合わせ。
【請求項8】
クリルオイルが約5%w/w以下の抽出溶媒含有量を有する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
前記クリルオイルが約3%w/w以下の抽出溶媒含有量を有する請求項8に記載の組み合わせ。
【請求項10】
前記クリルオイルが約1%w/w以下の抽出溶媒含有量を有する請求項8に記載の組み合わせ。
【請求項11】
前記ムール貝脂質がムール貝粉末の形態にある請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項12】
前記ムール貝脂質が、任意にビタミンEを含有するムール貝脂質エキスの形態にある請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項13】
クリルオイルに対するムール貝脂質の重量比が1:99~99:1の範囲にある請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項14】
クリルオイルに対するムール貝脂質の重量比が、約5:95、又は約10:90、又は約15:85、又は約20:80、又は約25:75、又は約30:70、又は約35:65、又は約40:60、又は約45:55、又は約50:50、又は約55:45、又は約60:40、又は約65:35、又は約70:30、又は約75:25、又は約80:20、又は約85:15、又は約90:10、又は約95:5である請求項13に記載の組み合わせ。
【請求項15】
経口単位剤形の形態の請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項16】
前記経口単位剤形が軟質ジェルカプセルである請求項15に記載の組み合わせ。
【請求項17】
前記経口単位剤形が、約10mg~約10gのムール貝脂質を含む請求項15又は請求項16に記載の組み合わせ。
【請求項18】
前記経口単位剤形が、約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2.0g、2.1g、2.2g、2.3g、2.4g、2.5g、2.6g、2.7g、2.8g、2.9g、3.0g、3.2g、3.5g、3.7g、4.0g、4.5g、5.0g、5.5g、6.0g、6.5g、7.0g、7.5g、8.0g、8.5g、9.0g、又は約9.5gのムール貝脂質を含む請求項17に記載の組み合わせ。
【請求項19】
前記経口単位剤形が、約10mg~約10gのクリルオイルを含む請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項20】
前記経口単位剤形が、約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2.0g、2.1g、2.2g、2.3g、2.4g、2.5g、2.6g、2.7g、2.8g、2.9g、3.0g、3.2g、3.5g、3.7g、4.0g、4.5g、5.0g、5.5g、6.0g、6.5g、7.0g、7.5g、8.0g、8.5g、9.0g、又は約9.5gのクリルオイルを含む請求項19に記載の組み合わせ。
【請求項21】
前記経口単位剤形が、約10~500mgの前記組み合わせを含む請求項15から請求項20のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項22】
前記経口単位剤形が、約50~300mgの前記組み合わせを含む請求項21に記載の組み合わせ。
【請求項23】
1種以上の薬学的に許容できる担体及び/又は添加剤をさらに含む請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項24】
ムール貝脂質及びクリルオイルからなる、又は実質的にムール貝脂質及びクリルオイルからなる請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項25】
ムール貝脂質とクリルオイルとを含む組成物。
【請求項26】
前記クリルオイルが少なくとも約50%w/wのリン脂質含有量を有する請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ムール貝脂質が、任意にビタミンEを含有するムール貝脂質エキスの形態にある請求項25又は請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
クリルオイルに対するムール貝脂質の重量比が、約5:95、又は約10:90、又は約15:85、又は約20:80、又は約25:75、又は約30:70、又は約35:65、又は約40:60、又は約45:55、又は約50:50、又は約55:45、又は約60:40、又は約65:35、又は約70:30、又は約75:25、又は約80:20、又は約85:15、又は約90:10、又は約95:5である請求項25から請求項27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
担体油をさらに含む請求項25から請求項28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記担体油が、組成物全体の約10%w/w~約90%w/wを構成する請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
ムール貝脂質及びクリルオイルの総量に対する担体油の重量比が約3:1~約1:3である請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
単位剤形の形態の請求項25から請求項31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
軟質ジェルカプセルに封入されている請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
約10~500mgの組み合わされたムール貝脂質及びクリルオイルを含む請求項32又は請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
約50~300mgの組み合わされたムール貝脂質及びクリルオイルを含む請求項34に記載の組み合わせ。
【請求項36】
被験者における炎症の処置において使用するための請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の組み合わせ又は請求項25から請求項35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
必要とする被験者における炎症の処置方法であって、前記被験者に請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の組み合わせ又は請求項25から請求項35のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を備える方法。
【請求項38】
炎症を処置するための医薬組合せの製造におけるムール貝脂質及びクリルオイルの使用。
【請求項39】
前記医薬が個別投与又は同時投与のために適合されている請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記医薬がムール貝脂質及びクリルオイルの組成物の形態にある請求項39に記載の使用。
【請求項41】
ムール貝脂質及びクリルオイルを含む炎症を処置するための組合せ剤。
【請求項42】
個別投与又は同時投与のために適合されている請求項41に記載の剤。
【請求項43】
被験者における疼痛の処置において使用するための請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の組み合わせ又は請求項25から請求項35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
必要とする被験者における疼痛の処置方法であって、前記被験者に請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の組み合わせ又は請求項25から請求項35のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を備える方法。
【請求項45】
疼痛を処置するための医薬組合せの製造におけるムール貝脂質及びクリルオイルの使用。
【請求項46】
前記医薬が個別投与又は同時投与のために適合されている請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記医薬がムール貝脂質及びクリルオイルの組成物の形態にある請求項46に記載の使用。
【請求項48】
ムール貝脂質及びクリルオイルを含む炎症を処置するための組合せ剤。
【請求項49】
個別投与又は同時投与のために適合されている請求項48に記載の剤。
【請求項50】
約50%以上のリン脂質含有量を有するクリルオイルの調製方法であって、
(a)オキアミバイオマス供給材料をCO及びエタノールの混合物と接触させ、クリルオイルを抽出する工程と、
(b)前記クリルオイルをCOと接触させ、前記オイルが少なくとも50%w/wのリン脂質含有量を有するように少なくとも一定割合の非極性脂質成分を抽出する工程と
を備える方法。
【請求項51】
前記オキアミバイオマス供給材料が、CO中の約15%w/w~約30%w/wエタノールの混合物と接触させられる請求項50に記載の方法。
【請求項52】
工程(a)が約60℃以下の温度で実施される請求項50又は請求項51に記載の方法。
【請求項53】
工程(a)が約300bar以上の圧力で実施される請求項50から請求項52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
工程(b)が約60°以下の温度で実施される請求項50から請求項53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
工程(a)が約300bar以上の圧力で実施される請求項50から請求項54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
工程(b)で得られるオイルが約60%w/w~約90%w/wの範囲のリン脂質含有量を有する請求項50から請求項55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
工程(a)で得られる抽出油からエタノールが除去される請求項50から請求項56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記エタノールが真空下、約60℃以下の温度で除去される請求項57に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に海産脂質の組み合わせに関する。特に本開示は、モエギイガイ及びオキアミから得られる脂質の組み合わせ、この組み合わせを含む組成物及び調製物、並びに治療におけるその組み合わせ及び組成物の使用に関する。本開示はさらに、クリルオイルの製造方法並びに上記組み合わせ及び組成物におけるクリルオイルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において何らかの先行刊行物(若しくはそれに由来する情報)、又は公知である何らかの事項を参照することは、先行刊行物(若しくはそれに由来する情報)又は公知の事項が、本明細書が関連する技術分野における共通一般知識の一部を形成するということの承認でも自白でも何等かの形の示唆でもなく、またそのように解釈されるべきでもない。
【0003】
炎症は、傷害及び感染に対する必要な生理的な適応応答であり、これがなければ、ヒト及び動物は生存することができないであろう。その機能は、傷害の初期原因を取り除き、有害な因子を除去し、組織構造及び機能の修復を開始することである。その初期急性期は、通常は、熱、疼痛、発赤及び腫脹を特徴とする。急性炎症の通常の結果は損傷の回復及び修復であるが、しかしながら、敗血症のような状態における不均衡な急性炎症反応及び長期の慢性炎症反応は、有害である可能性がある。
【0004】
重要なことに、今では慢性炎症は、変形性関節症、関節リウマチ、心血管疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、自己免疫疾患及び筋肉減少症等のすべての組織及び臓器に影響を及ぼす広い範囲の疾患の病態に関連づけられており、実際に慢性炎症は、老化のプロセス自体に関連づけられている。
【0005】
炎症過程に対する応答として、一定範囲の薬物の開発があり、最も有効なものは、過剰な炎症を抑制することができるグルココルチコイドステロイド薬物である。しかしながら、ステロイド薬物療法は、著しい副作用が原因でその幅広い臨床使用には限界があり、一般に短期の使用のみに制限されている。非ステロイド性消炎薬(NSAIDS)と呼ばれるイブプロフェン等の第2クラスの炎症薬が開発された。表1を参照。アスピリンが消炎活性を有し、アスピリンがこの第2クラスの消炎薬の一部であることは認識されていた。これらの薬物は、ステロイド薬物よりも安全であり、より多くの慢性炎症状態、例えば変形性関節症に対して使用することができた。
【0006】
【表1】
【0007】
プロスタグランジンは、炎症反応において鍵となる役割を果たし、その存在は、炎症組織において顕著に増大し、温度を高め、血管を拡張することにより疼痛及び熱感に寄与し、血管を拡張することは、プロスタグランジンが放出される場所で発赤及び腫脹を引き起こす。NSAIDは、シクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)及びシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の両方の競合的部位阻害剤であり、これによりプロスタグランジンの合成を低下させる。プロスタグランジンの産生を低下させることにより、NSAIDは、熱感の不快感を緩和し炎症及び関連する疼痛を低減するのを助ける。NSAIDSは、通常、疼痛及び炎症を特徴とする急性及び慢性の状態、例えば変形性関節症、関節リウマチ、頭痛及び片頭痛及び熱感の処置のために使用される。しかしながら、NSAIDSも安全を取り巻く考慮するべき問題を示し、胃腸毒性、腎毒性及び心臓血管毒性を呈する可能性がある。例えば、アスピリンは、使用から数日以内に胃出血を引き起こす可能性があり、2015年7月に、FDAは、アスピリンを除く一般のNSAID鎮痛剤の心臓への危険性についての過去の警告を繰り返した。これらには、イブプロフェン(Advil、Motrin)及びナプロキセン(Aleve)及び処方箋が必要なNSAIDが含まれる。
【0008】
従って、さらなる代替の消炎療法についてのニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ムール貝脂質及びクリルオイルの特定の組み合わせは、有利なことに、炎症過程に関係づけられる1種以上の炎症促進性メディエーターの産生又は放出に対して相加的又は相乗的な阻害効果をもたらす可能性があるということが今回見出された。それゆえ、いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、炎症を特徴とするか又は炎症性要素を有する障害に対する新しい治療的処置をもたらす可能性がある。いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、疼痛、例えば炎症に随伴する疼痛に対する新しい治療的処置をもたらす可能性がある。
【0010】
このように、1つの態様では、ムール貝脂質とクリルオイルとを含む組み合わせが提供される。このムール貝脂質とクリルオイルとの組み合わせは、被験者への個別投与又は同時投与のために適合されていてもよい。いくつかの実施形態では、当該組み合わせはムール貝脂質とクリルオイルとを含む組成物である。
【0011】
別の態様では、ムール貝脂質及びクリルオイルからなる、又は実質的にムール貝脂質及びクリルオイルからなる組み合わせが提供される。当該ムール貝脂質とクリルオイルとの組み合わせは、被験者への個別投与又は同時投与のために適合されていてもよい。いくつかの実施形態では、当該組み合わせは、ムール貝脂質及びクリルオイルからなる、又は実質的にムール貝脂質及びクリルオイルからなる組成物である。
【0012】
別の態様では、治療において使用するためのムール貝脂質とクリルオイルとを含む組み合わせが提供される。いくつかの実施形態では、被験者における炎症の処置において使用するためのムール貝脂質とクリルオイルとを含む組み合わせが提供される。被験者における疼痛の処置において使用するためのムール貝脂質とクリルオイルとを含む組み合わせも提供される。当該ムール貝脂質とクリルオイルとの組み合わせは、被験者への個別投与又は同時投与のために適合されていてもよい。いくつかの実施形態では、当該組み合わせはムール貝脂質とクリルオイルとを含む組成物である。
【0013】
別の態様では、本開示は、必要とする被験者における炎症の処置方法であって、その被験者に、ムール貝脂質とクリルオイルとを含む組み合わせを投与する工程を備える方法を提供する。本開示は、必要とする被験者における疼痛の処置方法であって、その被験者に、ムール貝脂質とクリルオイルとを含む組み合わせを投与する工程を備える方法も提供する。ムール貝脂質とクリルオイルとのこの組み合わせは、被験者への個別投与又は同時投与のために適合されていてもよい。いくつかの実施形態では、当該組み合わせはムール貝脂質とクリルオイルとを含む組成物である。
【0014】
別の態様では、本開示は、炎症を処置するための医薬組合せの製造におけるムール貝脂質及びクリルオイルの使用を提供する。本開示は、疼痛を処置するための医薬組合せの製造におけるムール貝脂質及びクリルオイルの使用も提供する。この医薬は、個別投与又は同時投与のために適合されていてもよい。いくつかの実施形態では、この組み合わせはムール貝脂質とクリルオイルとを含む組成物である。
【0015】
別の態様では、本開示は、炎症を処置するための組合せ剤であって、ムール貝脂質とクリルオイルとを含む組合せ剤を提供する。本開示は、疼痛を処置するための組合せ剤であって、ムール貝脂質とクリルオイルとを含む組合せ剤も提供する。このムール貝脂質及びクリルオイルは、被験者への個別投与又は同時投与のために適合されていてもよい。いくつかの実施形態では、当該組合せ剤はムール貝脂質とクリルオイルとを含む組成物である。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記ムール貝脂質は乾燥ムール貝粉末の形態にある。他の実施形態では、上記ムール貝脂質は、ムール貝から得られた脂質エキス(「ムール貝脂質エキス」)の形態にある。なおさらなる実施形態では、上記ムール貝脂質は、乾燥ムール貝粉末及びムール貝脂質エキスの組み合わせ又は組成物の形態にあってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記クリルオイルは、約40~99%w/w(重量/重量)の範囲のリン脂質含有量、さらなる実施形態では約50~99%w/wの範囲、例えば約60~80%w/wのリン脂質含有量を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、被験者における1種以上の障害を処置することにおいて有用であってもよく、この障害は炎症性要素を有し、この処置においては1種以上の炎症促進性分子の阻害が治療上有益である。いくつかの実施形態では、当該組み合わせは、1種以上の慢性障害を処置するために好適であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、例えば慢性炎症の処置において使用するために、当該組み合わせは、一般に利用できるNSAIDSに随伴する1以上の副作用の範囲、重症度又は継続期間を解消、回避又は別の態様で緩和してもよい。
【0020】
別の態様では、約50%以上、例えば約60%以上のリン脂質含有量を有するクリルオイルの調製方法であって、
(a)オキアミバイオマス供給材料をCO及びエタノールの混合物と接触させ、クリルオイルを抽出する工程と、
(b)上記クリルオイルをCOと接触させ、上記オイルが少なくとも50%w/wのリン脂質含有量を有するように少なくとも一定割合(一部)の非極性脂質成分を抽出する工程と
を備える方法が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、この方法から得られるクリルオイルは、約60%w/w以上、例えば少なくとも約65%w/w、又は70%w/w、又は75%w/w、又は80%w/w、又は85%w/w、又は90%w/wのリン脂質含有量を有する。
【0022】
本開示は、クリルオイルのリン脂質含有量の濃縮方法にも関する。
【0023】
従って、さらなる態様では、50%w/w未満のリン脂質含有量を有するクリルオイルのリン脂質含有量を約50%w/w以上まで高める方法であって、50%w/w未満のリン脂質含有量を有するクリルオイルをCOと接触させて、非極性脂質成分を選択的に除去する工程を備える方法が提供される。
【0024】
いくつかの実施形態では、濃縮前のクリルオイルは、約50%w/w未満、例えば約40%未満、又は約30%w/w未満又は20%w/wのリン脂質含有量を有する。いくつかの実施形態では、そのように得られた濃縮後のオイルは、少なくとも約55%w/w、又は少なくとも約60%w/w、又は少なくとも約65%w/w又は少なくとも約70%w/w又は少なくとも約75%w/w又は少なくとも約80%w/w又は少なくとも約85%w/w又は少なくとも約90%w/wのリン脂質含有量を有する。
【0025】
さらなる実施形態は、本開示の方法により得られる約50%w/w以上(例えば60%w/w以上)のリン脂質含有量を有するクリルオイルを提供する。
【0026】
なおさらなる実施形態は、本明細書に記載される組み合わせ及び組成物において使用するための約50%w/w以上又は60%w/w以上のリン脂質含有量を有するクリルオイルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A図1Aは、種々の濃度の、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの各々単独、オリーブ油並びにN-(3-(アミノメチル)ベンジル)アセトアミジン(1400W)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるNO阻害効果をグラフで示す。
図1B図1Bは、種々の濃度の、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの各々単独、オリーブ油並びにN-(3-(アミノメチル)ベンジル)アセトアミジン(1400W)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるNO放出(%)をグラフで示す。
図2A図2Aは、種々の濃度の、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの各々単独、オリーブ油並びにデキサメタゾンに対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるTNFα阻害効果をグラフで示す。
図2B図2Bは、種々の濃度の、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの各々単独並びにオリーブ油に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるTNFα放出(%)をグラフで示す。
図3A図3Aは、種々の濃度の、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの各々単独、オリーブ油並びにデキサメタゾンに対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるIL-6阻害効果をグラフで示す。
図3B図3Bは、種々の濃度の、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの各々単独、並びにオリーブ油に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるIL-6放出(%)をグラフで示す。
図4A図4Aは、種々の濃度の、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの各々単独、オリーブ油並びにジクロフェナクに対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるPGE2阻害効果をグラフで示す。
図4B図4Bは、種々の濃度の、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの各々単独、並びにオリーブ油に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるPGE2放出(%)をグラフで示す。
図5A図5Aは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY90~LY50)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるNO放出(%)をグラフで示す。
図5B図5Bは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY50~LY10)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるNO放出(%)をグラフで示す。
図6A図6Aは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY75~LY60)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるNO放出(%)をグラフで示す。
図6B図6Bは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY60~LY45)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるNO放出(%)をグラフで示す。
図7図7は、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY90~LY10)による、相乗的なNO阻害についてのアイソボログラムをグラフで示す。
図8A図8Aは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY90~LY60)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるTNFα放出(%)をグラフで示す。
図8B図8Bは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY60~LY30)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるTNFα放出(%)をグラフで示す。
図8C図8Cは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY40~LY10)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるTNFα放出(%)をグラフで示す。
図9A図9Aは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY70~LY55)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるTNFα放出(%)をグラフで示す。
図9B図9Bは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY50~LY35)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるTNFα放出(%)をグラフで示す。
図10図10は、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY90~LY10)による相乗的なTNFα阻害についてのアイソボログラムをグラフで示す。
図11A図11Aは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY90~LY50)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるIL-6放出(%)をグラフで示す。
図11B図11Bは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY50~LY10)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるIL-6放出(%)をグラフで示す。
図12A図12Aは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY70~LY50)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるIL-6放出(%)をグラフで示す。
図12B図12Bは、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY50~LY30)に対する、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFγ)で刺激されたRAW264.7細胞におけるIL-6放出(%)をグラフで示す。
図13図13は、種々の濃度のムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせ(LY90~LY10)による相乗的なIL-6阻害についてのアイソボログラムをグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書及びそれに続く請求項の全体にわたって、文脈と矛盾しないかぎり、語句「comprise(…を含む、…を備える)」及び「comprises」及び「comprising」等の派生語は、記載された整数若しくは工程又は整数の群の包含を含意するがいずれの他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の排除も含意しないと理解される。
【0029】
本明細書及びそれに続く請求項の全体にわたって、文脈と矛盾しないかぎり、句「consisting essentially of(実質的に…からなる)」及び「consists essentially of」等の派生語は、記載された要素(1又は複数)が本発明の必須のすなわち必要な要素であるということを示すと理解される。この句は、本発明の特徴に実質的な影響を及ぼさない他の記載されていない要素の存在を許容するが、規定される本発明の基本的かつ新規な特徴に影響を及ぼすと考えられる追加の不特定の要素は排除する。
【0030】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて、複数の態様を包含する。
【0031】
用語「発明」は、本明細書に記載されるすべての開示、態様、実施形態及び実施例を含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、「約」は、記載された量、値又はパラメータの10%、5%、又は2~1%の程度は変動してもよく、少なくとも当該技術分野で受け入れられる許容度を含む量、値又はパラメータを指す。記載された整数の値に関して使用される場合、「約」は記載された値のどちらの側の1つの整数の変動を含んでもよく、例えば「50%」は49%及び51%を含んでよい。記載された値の範囲の前に置かれる場合、「約」はその範囲の上限及び下限の両方に適用されることが意図されている。
【0033】
特段の記載がない限り、以降で説明される特徴は、独立に、いずれの態様又は実施形態に適用してもよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、「ムール貝脂質」は、ニュージーランドグリーンリップド(New Zealand green-lipped:NZGL)(又はgreenshell)マッセル(モエギイガイ)から抽出又は入手される脂質成分を指す。このムール貝脂質は、多価不飽和長鎖脂肪酸(PUFA)、例えばALA、ETA、EPA及びDHA、ステロール、ステロールエステル、トリグリセリド、非極性脂質カロテノイドのうちの1種以上並びに(NZGL)マッセル(ムール貝)肉の他の成分を含んでもよい。このムール貝脂質は、乾燥ムール貝粉末、又はムール貝肉から抽出された脂質画分(「ムール貝脂質エキス」)の形態にあってもよい。「ムール貝脂質」がムール貝粉末及びムール貝脂質エキスの混合物を包含することも想定されており、例えばムール貝脂質がムール貝粉末の添加により補われてもよいし、ムール貝粉末がムール貝脂質の添加により補われてもよい。いくつかの実施形態では、ムール貝脂質は単離された脂質画分である。
【0035】
上記ムール貝脂質粉末は、新鮮な(生の)、冷凍の又は加熱処理したNZGLマッセル(ムール貝)肉からいずれかの好適な乾燥手段(例えば凍結乾燥、気流乾燥又は真空乾燥)及び粉砕手段によって調製されてもよい。脂肪酸(ALA、ETA、EPA及びDHAを含む)に加えて、ムール貝肉を乾燥することにより得られるムール貝粉末は、ミネラル、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、及びグリコサミノグリカン(例えばコンドロイチン-4-硫酸及びコンドロイチン-6-硫酸)を含む他の潜在的に有益な成分も含有することになる。ムール貝粉末の調製方法は当該技術分野で公知である。
【0036】
上記ムール貝脂質エキスは、いずれかの好適な方法、例えば溶媒抽出(例えばアセトン又はエタノール。例えば国際公開第2005073354A1号パンフレットを参照。その内容を参照により援用する)、酵素処理(例えば国際公開第2006128244号パンフレットを参照。その内容を参照により援用する)又は超臨界流体抽出により、新鮮な(生の)、冷凍の、加熱処理した又は乾燥した(例えば凍結乾燥した、気流乾燥した又は真空ドラム乾燥した)NZGLマッセル(ムール貝)肉(例えば粉末、噴霧乾燥(スプレードライ)された又は粉砕された形態)から得られてもよい。いくつかの実施形態では、このムール貝脂質エキスは、有利には、乾燥された(例えば凍結乾燥された)ムール貝肉(任意に、酸化を防止するために安定化される)から超臨界COを用いた抽出によって得られる。ムール貝脂質エキスを得るための例示的な方法は、国際公開第97/09992A1号パンフレットに記載されており、この文献の内容を参照により援用する。他の方法は当該技術分野で公知であろう。
【0037】
好ましい実施形態では、プロセスは、脂肪酸等の有益な成分が実質的には破壊されず顕著に保持されるような条件下、例えば低温加工で実施される。
【0038】
国際公開第97/09992A1号パンフレットに記載される方法に従って得られる1つの例示的なムール貝脂質エキスは、PCSO-524(登録商標)(Pharmalink International Limited、香港)としても知られる。PCSO-524(登録商標)は、添加されたビタミンE(0.15%w/w、抗酸化防腐剤として添加されている)を含有し、遊離脂肪酸、トリグリセリド、ステロールエステル、非極性脂質及びカロテノイドの組み合わせを含み(Sinclair,A.J.ら、2000)、そして長鎖オメガ-3多価不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに他の長鎖脂肪酸、例えば5,9,12,15-オクタデカテトラエン酸、5,9,12,16-ノナデカテトラエン酸、7,11,14,17-エイコサテトラエン酸及び5,9,12,15,18-ヘンエイコサペンタエン酸の供給源である。PCSO-254(登録商標)(封入された経口剤形の中でオリーブ油と共に処方されている)は、Lyprinol(登録商標)及びOmega XL(登録商標)(ヒトによる消費用)、及びAntinol(登録商標)(イヌ及びネコ用)の名称で上市されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせで使用されるムール貝脂質エキスは、ビタミンE、(例えば約0.2%w/w、又は0.15%w/w、又は0.1%w/w、又は0.05%w/w又は約0.03%w/w又は約0.01%w/wの量で加えられる)と共に処方される。いくつかの実施形態では、ムール貝脂質は、PCSO-254(登録商標)、すなわち0.15%w/wのビタミンEを含有するムール貝脂質エキスの形態で使用される。いくつかの実施形態では、任意にビタミンEを含有するムール貝脂質は、さらにオリーブ油等の担体油と共に処方される。いくつかの実施形態ではムール貝脂質はムール貝脂質エキスでありビタミンEを含有するが、ビタミンEの添加は任意であり、従って、いくつかの実施形態では、ムール貝脂質エキスはそれだけで(ニートで)使用される、すなわちビタミンE等の他の付加的な原料のいずれも含有しない。
【0040】
ムール貝脂質は、種々の形態で、工業的な供給業者から購入されてもよい。
【0041】
クリルオイル(オキアミ油)は、ナンキョクオキアミ(Euphausia superba、Antarctic krill)、ツノナシオキアミ(Euphausia pacifica、Pacific krill)、Maganycitiphanes norvegica(Northern krill)、コオリオキアミ(Euphausia crystallorophias、ice krill)、Euphausia frigida、Euphausia longirostris、Euphausia triacantha及びEuphausia vallentiniを含めたいずれの好適なオキアミ種から調製されてよい。いくつかの好ましい実施形態では、クリルオイルはナンキョクオキアミから得られる。
【0042】
海産脂質は、遊離酸形態及びトリグリセリド形態の脂肪酸、特にEPA及びDHA等のオメガ-3脂肪酸を含有する。同様に、クリルオイルもオメガ-3脂肪酸が豊富であるが、しかしながら、クリルオイルは非常に多くの量のリン脂質を含有し、リン脂質では、上記脂肪酸はグリセロール部分を介してリン酸頭部に結合している。トリグリセリド形態よりも効率的に細胞膜の中へ取り込まれ、これにより、より容易に生物が利用可能になるのは脂肪酸のこのリン脂質結合形態である。クリルオイル中で見出される典型的なリン脂質として、ホスファチジルコリン、アルキルアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾアルキルアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、アルキルアシルホスファチジルエタノールアミン、カルジオリピン+N-アシルホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、及びリゾアルキルアシルホスファチジルエタノールアミンを挙げてもよい。クリルオイルは、かなりの量のアスタキサンチンも含有し、このアスタキサンチンは、抗酸化物質であり、クリルオイルの赤い色の理由でもある。
【0043】
いくつかの実施形態では、クリルオイルは、少なくとも約1%w/w、5%w/w、10%w/w、又は少なくとも約20%w/wのリン脂質を含有する。さらなる実施形態では、このオイルは、少なくとも約25%w/w又は少なくとも約30%w/w、又は少なくとも約35%w/w、又は少なくとも約40%w/w、又は少なくとも約45%w/w、又は少なくとも約50%w/w、又は少なくとも約55%w/w、又は少なくとも約60%w/w、又は少なくとも約65%w/w又は少なくとも約70%w/w、又は少なくとも約75%w/w、又は少なくとも約80%w/w又は少なくとも約85%w/wのリン脂質、又は少なくとも約90%w/wのリン脂質、又は少なくとも約95%w/wのリン脂質、又は少なくとも約97%w/wのリン脂質、又は少なくとも約98%w/wのリン脂質、又は少なくとも約99%w/wのリン脂質を含有する。いくつかの実施形態では、クリルオイルは、約40~99%w/w(すなわち、約40%w/w以上約99%w/w以下)の範囲のリン脂質含有量を有する。いくつかのさらなる実施形態では、クリルオイルは、約60~99%w/wの範囲、例えば約65~90%w/wの範囲のリン脂質含有量を有する。本明細書中で言及する場合、「濃縮(された)」クリルオイルは、少なくとも約60%w/wのリン脂質含有量を有するクリルオイルを指す。リン脂質含有量は、当該技術分野のいずれの好適な手段で、例えば31P NMR分析で決定されてもよい。
【0044】
リン脂質が濃縮されたクリルオイルを含めたクリルオイルの調製方法は、当該技術分野で公知である。典型的には、新鮮な、冷凍した、及び/又は加熱処理したオキアミ(例えばナンキョクオキアミ又はツノナシオキアミ)バイオマスが、溶媒(例えばエタノール等のアルコール;アセトン等のケトン;又はジメトキシエタン)及び/又は超臨界流体(例えばCO)を使用して抽出されてもよい。いくつかの限定を意図しない例示的なクリルオイルの調製方法は、米国特許第9,028,877号明細書、米国特許第9,375,453号明細書、米国特許第6,800,299号明細書、米国特許第8,828,447号明細書、米国特許第9,150,815号明細書、米国特許第8,383,845号明細書、国際公開第2007/123424号パンフレット、国際公開第2011/050474号パンフレット、国際公開第2015/104401号パンフレット及び国際公開第2015/121378号パンフレットに記載されており、これらの内容は、参照により本明細書に援用したものとする。さらなる方法も本明細書に記載される。クリルオイルは工業的な供給業者から購入されてもよい。
【0045】
いくつかの有利な実施形態では、クリルオイルは、約5%w/w以下、又は約4%w/w以下、又は3%w/w以下、又は2%w/w以下又は1%w/w以下、又は0.5%w/w以下の水分含有量を有する。いくつかの実施形態では、クリルオイルは、約5%w/w以下、又は約4%w/w以下、又は3%w/w以下、又は2%w/w以下又は1%w/w以下、又は0.5%w/w以下の残留抽出溶媒含有量を有する。さらなる実施形態では、クリルオイルは、約5%w/w以下、又は約4%w/w以下、又は3%w/w以下、又は2%w/w以下又は1%w/w以下、又は0.5%w/w以下の水分含有量、及び約5%w/w以下、又は約4%w/w以下、又は3%w/w以下、又は2%w/w以下又は1%w/w以下、又は0.5%w/w以下の残留抽出溶媒含有量を有する。水及び溶媒は、いずれの好適な手段により、例えば非常に短時間の加熱又は穏やかな加熱(例えば30分、又は1時間、又は2時間又は3時間、約60℃若しくはこれ未満、又は約50℃若しくはこれ未満、又は約40℃若しくはこれ未満の温度、かつ好ましくは構成成分の完全性が実質的には損なわれないように)、窒素気流又は凍結乾燥(フリーズドライ)により除去されてもよい。
【0046】
1種以上の炎症メディエーター、例えば亜酸化窒素(NO)、インターロイキン(例えばIL-6)等のサイトカイン、プロスタグランジン(例えばPG-E)、及びTNFα、に対する当該組み合わせの阻害活性は、被験者における、このような分子のうちの1種以上の阻害が治療上有益である1種以上の障害又は症候を処置することにおいて有用である可能性がある。特に、本開示の組み合わせは、過度の急性炎症、若しくは慢性炎症、及び/又はそれらに随伴する症候、例えば疼痛、熱感、発赤及び腫脹のうちの1種以上を処置することにおいて有用である可能性がある。いくつかの実施形態では、当該組み合わせは、病態が炎症性要素を含む障害における炎症、及び/又はこのような障害に随伴する疼痛を処置することにおいて有用である可能性がある。炎症性の態様を含む障害のいくつかの限定を意図しない例としては、アテローム性動脈硬化症、アレルギー、喘息、自己免疫疾患(例えばセリアック病、乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎)、線維筋痛症、痛風、片頭痛、変形性関節症、潰瘍性大腸炎、癌、アルツハイマー病を含めた認知障害、2型糖尿病、遅発性筋肉痛(DOMS)、クローン病及び強直性脊椎炎が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、関節痛を処置すること、又は変形性関節症若しくは関節リウマチに関連する関節可動性を改善することにおいて有用である可能性がある。いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、PGEの阻害が有益である可能性がある障害、例えば関節リウマチ、片頭痛並びに疼痛(侵害受容性疼痛(体性痛若しくは内臓痛)、及び/又は神経因性疼痛であってもよい)を処置することにおいて有用である可能性がある。
【0047】
本明細書に記載される組み合わせは、個別投与又は同時投与のために適合されていてもよいということは分かるであろう。同時投与のために適合されている場合、当該組み合わせは、ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの両方を含む一体の組成物若しくは混合物として、又は各組み合わせ成分の個別剤形として提供及び/又は投与されてもよい。ムール貝脂質エキス及びクリルオイルが各々別々に提供及び/又は投与される場合、それらは同時に、続けて、又はそれぞれ異なる時間に投与されてもよい。
【0048】
さらなる実施形態では、ムール貝脂質及びクリルオイルは、任意に、一緒に又は個別に、1種以上の薬学的に許容できる担体及び/又は添加剤と組み合わせて処方されてもよい。好適な担体のいくつかの例は、オリーブ油、ヒマシ油、アマニ油、ブドウ種子油、魚油(例えばマグロ油)、キャノーラ油(菜種油)、植物油、ヒマワリ油、チア油、大豆油、ゴマ油、藻油、及びこれらの混合物等の食用油である。1種以上の任意の添加剤、例えば抗酸化物質、ビタミン(脂溶性ビタミン(A、D、E及びK)、又は水溶性ビタミン(B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C)等)、食餌ミネラル、アミノ酸、矯味矯臭剤、乳化剤、薬学的に許容できるアルコール(例えばエタノール、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール)又は他の粘度調整剤、界面活性剤(例えばポリソルベート)、懸濁剤、ラクトース(乳糖)、デキストロース、スクロース(ショ糖)、マンニトール、ソルビトール、グルコース、滑沢剤、結合剤、デンプン、吸収促進薬及び防腐剤等も含まれてよい。担体又は添加剤は1以上の機能を果たしてもよい。ムール貝脂質及び/又はクリルオイルは、任意に、ムール貝及びクリルオイルの1種以上のさらなる精製又は部分的に精製された成分、例えばアスタキサンチン及びそのエステル、遊離酸、酸エステル、トリグリセリド又はリン脂質のいずれの形態であってもよい脂肪酸(例えばEPA、DHA)、ステロール、ステロールエステル、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質、並びにグリコサミノグリカン(例えばコンドロイチン硫酸)をさらに補充され又はそれらと組み合わされてもよい。全体を磨り潰した形態等の他の消炎性食物又はそのエキス、例えばウコン(クルクミン)、ショウガ、ニンニク、チョウジ等も,任意に組み込まれてよい。
【0049】
当該処方された組み合わせは、当該技術分野で公知の方法に従って調製されてよい。このような方法は、上記ムール貝脂質エキス及び/又はクリルオイルを任意に1種以上の添加剤成分と共に上記担体と完全に合わせる(混合する)工程を備える。いずれの担体又は添加剤も薬学的に許容できるものであることは理解されるであろう。
【0050】
従って、いくつかの実施形態では、ムール貝脂質及びクリルオイルは、別個に又は一緒に、オリーブ油等の担体油とともに処方される。いくつかの実施形態では、この担体油は、当該組み合わせ又は組成物の約10%w/w~約90%w/w、例えば約20%w/w~約80%w/wを構成する。さらなる実施形態では、担体油は、当該組み合わせ又は組成物の約25%w/w、又は約30%w/w、又は約35%w/w、又は約40%w/w、又は約45%w/w、又は約50%w/w、又は約55%w/w、又は約60%w/w、又は約65%w/w、又は約70%w/w、又は約75%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、ムール貝脂質及びクリルオイルの組み合わせた量に対する担体油の重量比は、約3:1、又は約2.5:1、又は約2:1、又は約1.5:1、又は約1:1、又は約1:1.5、又は約1:2、又は約1:2.5又は約1:3である。
【0051】
経口、非経口、局所、経皮又は皮下等のいずれの投与形態も本発明で想定されるが、有利には、いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、経口剤形で提供及び/又は投与されてもよい。いくつかの実施形態では、当該組み合わせは、バルク形態で、例えば液体、シロップ、ペースト、半固体ワックス、分散液、懸濁液、エマルション(例えば油中水又は水中油)、微粉砕した粉末又はマイクロカプセル化粉末として提示することができ、このバルク形態から個々の投薬量を測定することができる。測定及び/又は投与は、さじ又はスクープ、シリンジ、点滴器、又は計量カップ等いずれの手段によってもよい。測定された投薬量は、そのまま、又は食物若しくは飲料に混ぜ込まれ、食物若しくは飲料に注がれ、若しくは食物若しくは飲料に振りかけられて被験者に投与されてもよい。
【0052】
他の実施形態では、当該組み合わせは、有利には単位経口剤形、すなわち固定剤形(固定用量形態)として提示される。好適な単位経口剤形のいくつかの例としては、個別包装のアンプル剤、チューブ、充填済みシリンジ(フィルドシリンジ)、サシェ(小袋)、噛むもの及びカプセル剤(硬質ジェルカプセル及び軟質ジェルカプセルを含む)が挙げられる。
【0053】
好適な単位経口剤形の一例は硬殻又は軟殻の形態のカプセル剤である。この殻(シェル)は、ゼラチン、プルラン、ヒプロメロース、PVA共重合体、カラギーナン、若しくはデンプン若しくはセルロース等の他の糖類成分のうちの1種以上、又はこれらの混合物を含んでもよく、着色剤、乳白剤、可塑剤(例えばソルビトール、キシロース、マルチトール及びグリセリン)などをさらに含んでもよい。ムール貝脂質及びクリルオイル等の海産油及び海産脂質の封入方法は、当該技術分野で公知である。例えば国際公開第2015/121378号パンフレットを参照。この文献の内容は、参照により本明細書に援用したものとする。クリルオイルが別個に封入されるいくつかの実施形態では、クリルオイルは、粘度調整剤等の任意のさらなる剤の不存在下で封入されてもよく、つまり、カプセル剤充填物は、実質的にクリルオイルからなる。
【0054】
いくつかの有利な実施形態では、本開示のムール貝脂質とクリルオイルとの組み合わせは、軟質ジェルカプセル形態、例えばムール貝脂質及びクリルオイルの両方を含む軟質ジェルカプセルとして、又はムール貝脂質及びクリルオイルが任意に好適な担体及び/若しくは添加剤と共に別個に封入されている個別の軟質ジェルカプセルとして提示される。好適な軟質ジェルカプセルは、ゼラチン(あるいは、プルラン及びヒプロメロース等の糖類源)から、任意にソルビトール及びグリセリン(グリセロール)等の1種以上の可塑剤、及び着色剤及び乳白剤等の添加剤と共に調製されてもよい。1つの例では、軟質ジェルカプセルの殻は、ゼラチン、並びにソルビトール及びグリセリンの一方又は両方を含んでもよい。
【0055】
マイクロカプセル化は、小さい液滴又は粒子がコーティング壁によって取り囲まれているか又はマトリクスに包埋されて粉末が形成される方法であり、このコーティング又はマトリクスは酸化等の化学反応に向かう傾向を回避又は低減する機能的バリアを形成する。加えて、このコーティング又はマトリクスは、潜在的な矯味矯臭の役割を提供してもよい。このように、いくつかの実施形態では、ムール貝脂質及び/又はクリルオイルは、別個に又は一緒にマイクロカプセル化されて、粉末が形成されてもよい。一般に使用されるマイクロカプセル化方法としては、乳化、噴霧乾燥、凍結乾燥、同軸エレクトロスプレー、押出、コアセルベーション(液滴形成)、超臨界流体技術、及びインサイチュ(その場)重合が挙げられる。コーティング材料としては、天然ポリマー及び合成ポリマー、炭水化物(例えばデンプン、グルコース)、タンパク質(例えばカゼイン、ゼラチン)及びこれらの混合物が挙げられる(例えば、Bakry,A.M.ら、Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety,15,143,2016及びその中で引用される参考文献、国際公開第2014/170464号パンフレット及び国際公開第2014/169315号パンフレットを参照。これらの内容は、参照により本明細書に援用される)。ムール貝脂質及び/又はクリルオイルは、上記のとおりの1種以上の担体又は添加剤と共にマイクロカプセル化されてもよい。マイクロカプセル化されたムール貝脂質及び/又はクリルオイル粉末は、例えば硬殻カプセル単位剤形にさらに封入されてもよい。粉末のマイクロカプセル化された脂質又はオイルは、任意に1種以上の担体又は添加剤と組み合わされてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、例えば振りかけ、撹拌、混合、又はこのムール貝脂質エキス及びクリルオイルの組み合わせを食物若しくは飲料に塗工若しくは組み込む他の手段によって食物又は飲料とともに摂取されてもよい。このように、当該組み合わせは、飲料又は食材への組み込みのための形式で提供されてもよい。いくつかの実施形態では、当該組み合わせは、食材及び飲料の調製において処方され、機能性食品を提供してもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、ムール貝脂質及びクリルオイルは、別個に又は一緒に、オリーブ油等の担体油と共に、任意に抗酸化物質(例えばビタミンE)と共に処方される。
【0058】
本開示の組み合わせにより処置される対象の被験者としては、哺乳類の被験者、例えばヒト、霊長類、ネコ科の動物、イヌ科の動物、ウシ亜科の動物、ウマ科の動物、ブタ、ウサギ科の動物、ヒツジ属の動物、及びヤギ亜科の動物が挙げられ、家畜(例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ及びヤギ)、コンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコ、ウサギ、モルモット)、及び捕獲された野生動物を含む。ウサギ、マウス、ラット、モルモット及びハムスター等の実験室動物は簡便な試験システムを提供する可能性があるため、このような実験室動物も想定される。
【0059】
上記の剤形のいずれも、適宜、ヒト用途又は獣医学用途に適用されてもよい。
【0060】
処置有効量は、所望の投薬計画に従って投与されたときに、所望の治療効果を少なくとも部分的に達成するために2成分で有効である当該組み合わせの量を含むことが意図されており、この所望の治療効果には、下記のもののうちの1種以上が含まれる:炎症及び/若しくは炎症の1種以上の症候(例えば熱感、疼痛、腫脹、発赤)の継続期間、重症度及び/若しくは頻度を緩和、解消若しくは低下させること、処置されている特定の障害若しくは状態の発症を予防若しくは遅延すること、その障害若しくは状態の進行を阻害すること、又はその障害若しくは状態の発症又は進行を(部分的に又は全体的に)停止若しくは逆転させること。
【0061】
好適な投薬量及び投薬計画は、担当の医師又は獣医によって決められてよく、処置されている特定の状態/症候、その状態の重症度、並びに被験者の全般的な年齢、身体の状態及び体重によって変わってもよい。上記ムール貝脂質及び/又はクリルオイルの好適な一日投薬量は、独立に、約10mg~約10gの範囲、例えば約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2.0g、2.1g、2.2g、2.3g、2.4g、2.5g、2.6g、2.7g、2.8g、2.9g、3.0g、3.2g、3.5g、3.7g、4.0g、4.5g、5.0g、5.5g、6.0g、6.5g、7.0g、7.5g、8.0g、8.5g、9.0g、又は約9.5gであってもよい。いくつかのさらなる実施形態では、当該組み合わせの一日投薬量は、約20mg~約15gの範囲、例えば約20mg、30mg、40mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2.0g、2.1g、2.2g、2.3g、2.4g、2.5g、2.6g、2.7g、2.8g、2.9g、3.0g、3.2g、3.5g、3.7g、4.0g、4.5g、5.0g、5.5g、6.0g、6.5g、7.0g、7.5g、8.0g、8.5g、9.0g、9.5g、10.0g、10.5g、11.0g、11.5g、12.0g、12.5g、13.0g、13.5g、14.0g、又は14.5gであってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、個々の単位投薬量(例えば軟質ジェルカプセル)は、任意に担体油(例えばオリーブ油)と共に処方され、約10mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、75mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、125mg、130mg、140mg、150mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、225mg、230mg、240mg、250mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、325mg、330mg、340mg、350mg、360mg、365mg、370mg、375mg、380mg、390mg、400、mg、410mg、420mg、425mg、430mg、440mg、450mg、460mg、465mg、470mg、475mg、480mg、490mg、又は約500mgの当該組み合わせを含有してよい。そのいくつかのさらなる実施形態では、当該組み合わせはビタミンEをさらに含む。そのいくつかのさらなる実施形態では、当該組み合わせは、ムール貝脂質及びクリルオイル全体の全量の約10%~約90%w/wの範囲の量のムール貝脂質(例えばPCSO-524として)を含み、かつ、ムール貝脂質及びクリルオイル全体の約90%~約10%w/wの範囲の量のクリルオイルを含み、つまり約10:90~90:10のクリルオイルに対するムール貝脂質の重量比、例えば約15:85、又は約20:80、又は約25:75、又は約30:70、又は約35:65、又は約40:60、又は約45:55、又は約50:50、又は約55:45、又は約60:40、又は約65:35、又は約70:30、又は約75:25、又は約80:20、又は約85:15のクリルオイルに対するムール貝脂質の重量比の量で含む。
【0063】
投薬量は、簡便に1日1回投与されてもよいし、一日投薬量が一日複数回(例えば2回、3回又は4回)に分けて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、一週間に1回、2回、3回又は4回以上、例えば一日おきに投与されてもよい。いくつかの実施形態では、処置は、例えば少なくとも6~12ヶ月又は少なくとも2~3年にわたって連続的又は長期のものであってもよく、又は進行中であってもよい。
【0064】
例えば上記一日投薬量のいずれかにおける本開示の組み合わせは、ムール貝脂質及びクリルオイル全体の全量の約1%~約99%w/wの範囲の量のムール貝脂質を含んでもよく、かつムール貝脂質及びクリルオイル全体の約99%~約1%の範囲の量のクリルオイルを含んでもよく、つまり約1:99~99:1のクリルオイルに対するムール貝脂質の重量比であってもよい。いくつかの実施形態では、当該組み合わせは、ムール貝脂質及びクリルオイル全体の全量の約5%~約95%w/wの範囲の量のムール貝脂質を含み、かつムール貝脂質及びクリルオイル全体の約95%~約5%の範囲の量のクリルオイルを含み、つまり約5:95~95:5のクリルオイルに対するムール貝脂質の重量比である。いくつかの実施形態では、当該組み合わせは、ムール貝脂質及びクリルオイル全体の全量の約10%~約90%w/wの範囲の量のムール貝脂質を含み、かつムール貝脂質及びクリルオイル全体の約90%~約10%w/wの範囲の量のクリルオイルを含み、つまり、約10:90~90:10のクリルオイルに対するムール貝脂質の重量比である。なおさらなる実施形態では、当該組み合わせは、約15:85、又は約20:80、又は約25:75、又は約30:70、又は約35:65、又は約40:60、又は約45:55、又は約50:50、又は約55:45、又は約60:40、又は約65:35、又は約70:30、又は約75:25、又は約80:20、又は約85:15のクリルオイルに対するムール貝脂質の重量比を含む。
【0065】
本開示の組み合わせはいずれか1種以上の障害に対する単独の消炎療法として投与されてもよいが、本開示の組み合わせは、1種以上のNSAIDS、例えばセレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、テロロラク(telorolac)、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク及びトルメチンの投与レジメンと併用して投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、例えば追加的なNSAIDS治療の必要性を解消又は実質的に解消することにより、又は有益な治療効果を達成するために必要とされるNSAIDSの投薬量及び/又は投薬頻度を低下させることにより、NSAIDSに随伴する潜在的な副作用を解消又は低減する可能性がある。
【0066】
上で論じたように、1以上の実施形態では、本明細書に開示される組み合わせで使用されるクリルオイルは、有利には少なくとも約50%w/w以上、好ましくは少なくとも約60%w/w以上のリン脂質含有量を有してもよい。高リン脂質(例えば約50%w/w又は60%w/w超)のクリルオイルをオキアミ粉から抽出するための多くの先行技術の方法は、CO及びCO/エタノールの組み合わせを使用する。しかしながら、クリルオイルのリン脂質含有量が高くなるほどクリルオイルはより高粘度になり、約60%以上の含有量を有するクリルオイルは通常は常温で粘性が高いペーストを呈することがよく認識されている。これは、特に工業的又は商業的規模のオイル製造では製造上の課題を提示する。というのも、粘性が高い材料からの抽出プロセスで使用される溶媒を揮発させるためにより高い温度が必要とされ、オイルへの熱関連の損傷がより起こりやすくなるからである。加えて、そのあとに、そのオイルを抽出槽から梱包槽へ移動させるために高い圧力が必要とされる。
【0067】
1つの例示的な先行技術の方法は、国際公開第2007123424号パンフレットに記載されている。この文献は、供給材料が最初に純粋なCOで抽出され、中性の脂質(すなわち非極性トリグリセリド)のみを抽出して、この非極性トリグリセリドの除去のおかげで、リン脂質が濃縮された材料を残す2工程プロセスを記載する。このリン脂質が濃縮された材料は、次にCO+≧10%エタノール共溶媒で抽出されて、極性のリン脂質、及び残っている非極性トリグリセリドが一緒にオキアミ原料バイオマスから抽出される。この方法は、商業規模ではプラント能力を十分に使用しない。というのも、そのプロセスの両方の段階の間、高圧抽出装置の中のかなりの容積が供給バイオマス中の抽出できないタンパク質、炭水化物及び灰分で満たされているからである。上記方法は、基本的には、(より効率的な連続操作と比べて)効率的でないバッチ操作でもあり、このことはプロセスコストに悪影響を及ぼす可能性がある。効果的には、出来上がったオイル中に最終の極性リン脂質含有量を届けるための濃縮は、工業規模で不均質な固体原料に対して直接第1工程で成し遂げられる。その固体原料の極性脂質及び非極性脂質の含有量、並びに各々がその後どれほど十分に抽出されるかの正確な事前の知識が、正確な最終のオイル濃縮のために必要とされる。実際には、商業規模での不確実性がコストがかかる過剰な濃縮につながる可能性があり、この過剰な濃縮は、そのあと必要に応じて、仕様に戻すための最終調合を要する。このことは、またこのプロセスの経済性に悪影響を及ぼす。
【0068】
米国特許第9,735,453号明細書、米国特許第9,078,905号明細書、米国特許第9,028,877号明細書、米国特許第9,320,765号明細書及び米国特許第9,072,752号明細書は、中性の(非極性トリグリセリド)脂質を抽出するためのCO又はCO及びおよそ5%エタノール、並びにその後の、バルクの不均質な固体物質からクリルオイルを多くの量のリン脂質、アスタキサンチンエステル及び/又はオメガ-3脂肪酸とともに抽出するためのCO/約20%エタノールを用いたオキアミの抽出を記載する。これらの方法は、上記の不都合を有することは共通である。
【0069】
今回、本開示は、特に工業的又は商業的規模で先行技術の方法に従って高含有量の又は濃縮されたリン脂質含有クリルオイルを調製するとき(例えば、少なくとも約50kg、100kg、200kg、300kg又は500kg以上のオーダーでオイルのバッチを製造するとき)の上で論じた不都合のうちの1以上をいくつかの実施形態では軽減、最小化又は解消しうる方法を記載する。このように、本開示は、少なくとも約50%w/w以上、好ましくは少なくとも約60%w/w以上のレベルまでのリン脂質含有量を有するクリルオイルの調製方法、及び低リン脂質含有量(約50%w/w未満)のオイルの少なくとも約50%w/w以上のレベル、好ましくは少なくとも約60%w/w以上のレベルまでの濃縮方法も提供する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも約50%w/wのリン脂質含有量を有するクリルオイルを調製するための2工程プロセスであって、第1工程は約50%w/w未満のリン脂質含有量を有する第1クリルオイルをオキアミバイオマスから抽出し、次いで少なくとも一定割合(一部)の非極性脂質成分(例えばトリグリセリド)をこの第1クリルオイルから除去して、第1クリルオイルと比べてリン脂質が濃縮されている(すなわちより高いリン脂質含有量を有する)第2クリルオイルを得ることを伴う2工程プロセスを提供する。
【0071】
これまでに論じた先行技術の方法とは対照的に、当該方法のいくつかの実施形態は、オキアミバイオマス供給材料からのオイルの非選択的な抽出で開始する。固体の供給粉末からの極性脂質(例えばリン脂質)及び非極性脂質(例えばトリグリセリド)の両方の抽出は、CO及びエタノールの混合物(例えば共沸エタノール、すなわち約95%エタノールを含む水-エタノール混合物)を使用して成し遂げられてもよい。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態では、CO中の少なくとも約15%w/w又は少なくとも約20%w/w、例えば約17~22%w/wの範囲のエタノールの質量比が使用されてもよい。さらなる実施形態では、CO中の少なくとも約25%w/wエタノールの質量比が使用されてもよく、例えばCO中の少なくとも約26%w/wエタノール、又は少なくとも約27%w/wエタノール、又は少なくとも約28%w/wエタノール、又は少なくとも約29%w/wエタノール、又は少なくとも約30%w/wエタノールが使用される。
【0073】
この段落で論じられる他の実施形態のいずれか1つを含めて、いくつかの実施形態では、抽出温度は、生成物分解のリスクを有利に低下又は最小化するために、約60℃以下、例えば約55℃以下、又は約50℃以下、又は約45℃以下、又は40℃以下、又は35℃以下、又は30℃以下である。抽出圧力は、選択された温度及びエタノールに対するCOの比に対して超臨界状態、亜臨界状態及び/又は臨界近傍状態を確保するように設定されてもよい。いくつかの実施形態では、この圧力は、約200~350bar(20~35MPa)、例えば約250~300bar(25~30MPa)の範囲にあるが、より高い圧力、例えば400bar(40MPa)以上が技術的には効果的であり、使用されてもよい。いくつかの実施形態では、上記圧力の値又は範囲は、非極性脂質の抽出が当該方法にとって律速にならないことを確保するのに十分な溶媒密度を生み出す。いくつかの実施形態では、抽出圧力条件は、超臨界状態、亜臨界状態又は臨界近傍状態の間を動くように、抽出プロセス全体にわたって調整されてもよい。いくつかの実施形態では、亜臨界状態及び/又は臨界近傍状態が使用され、そのための条件はCO-エタノール二元混合比(又は水も含有する共沸エタノールの場合は三元混合比)に応じて変わることになる。抽出時間は当業者によって決定されてよく、とりわけ、抽出条件及び所望の経済的な最適化に依存してもよい。いくつかの実施形態では、抽出時間は、通常は約1~15時間の範囲、例えば約2~10時間、例えば約2~5時間又は約3~6時間、又は約4~5時間の範囲にある。抽出時間は、今度は、とりわけバイオマス供給材料の量及び粒径に依存する可能性がある。より大きい粒子は、動かないバイオマス及び均一な溶媒接触を依然として保持しながら、より高い溶媒流量が使用されることを許容することになる。しかしながら、より大きい粒子は、溶媒が粒子の中心に到達するために拡散が増強される必要も提示し、より多くの溶媒が必要とされる。このように、いくつかの実施形態では、供給材料の粒径は約1~5mm、例えば約2~3mmである。
【0074】
いくつかのさらなる実施形態では、抽出圧力は約300bar(30MPa)であり、抽出温度は約60℃である。
【0075】
上記オイルの分離は、より低い温度(例えば約25~35℃)及び圧力(例えば約25~60bar(2.5~6MPa))で行うことができる。
【0076】
得られた抽出油は、極性脂質(例えばリン脂質)及び非極性脂質(例えばトリグリセリド)の両方を含有し、約50%w/w未満、又は約45%w/w未満、又は約40%w/w未満、又は約35%w/w未満、又は約30%w/w未満、又は約25%w/w未満、又は約20%w/w未満、又は約10%w/w未満のリン脂質含有量を有してもよい。
【0077】
いくつかの有利な実施形態では、次に、オイルの中に存在する水及びエタノールを、いずれかの好適な方法、例えば真空(減圧)下でのエバポレーション(任意に穏やかな加熱、例えば約65℃以下を用いる)、窒素気流又は凍結乾燥を使用して除去することができる。いくつかの実施形態では、このオイルは、任意に穏やかな加熱を用いる真空下でのエバポレーションに供される。このあとに、低粘度の極性脂質及び非極性脂質の混合物(高い割合の非極性脂質は低粘度を与える)から水及びエタノール共溶媒を除去するためにより高温(例えば約70℃、約75℃又は約80℃)の短い滞留時間(例えば1~3秒)が続いてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、抽出油の成分の分解を回避又は最小にするために、温度は、有利には真空下での穏やかな加熱全体にわたって約60℃を超えない。さらなる実施形態では、温度は、真空下での穏やかな加熱全体にわたって、有利には約55℃、又は約50℃又は約45℃、又は約40℃、又は約35℃、又は約30℃、又は約25℃を超えない。
【0078】
いくつかの実施形態では、エバポレーション後の残留する揮発性の含有物(水及びエタノール)は約3%w/w以下である。というのも、このことが、残留するエタノール及び水があとの濃縮工程で脂質の分離に悪影響を及ぼす可能性を最小にする可能性があるからである。さらなる実施形態では、残留する揮発性の含有物は、約2.5%w/w以下、又は約2.0%w/w以下、又はa約1.5%w/w以下、又は約1.0%w/w以下、又は約0.5%w/w未満、又は約0.3%w/w未満、又は約0.1%w/w未満である。
【0079】
この段階で、エバポレーション後、非極性脂質成分の存在のため、オイルはまだ流体であり、例えばリン脂質及び/又はオメガ-3脂肪酸の含有量について簡単に分析することができる。これは重要である。というのも、所望の濃縮度、従って以下の工程で成し遂げられる最終のオイルのリン脂質含有量を算出するために、正確な分析が必要とされるからである。特に、最終の高リン脂質含有量が所望される場合、過剰濃縮(すなわち、非極性脂質のさらなる除去)は、たとえ小さな差であっても、過大な粘度に起因する処理の問題につながる可能性がある。エバポレーション後のオイルは、任意に、中間生成物槽へ移した後に、均一性を確保するために十分に混合することができる。任意に、このオイルは、分析のための流体で均一な材料を維持するのを助けるために、穏やかに加熱されてもよい(例えば約60℃以下又は55℃、又は約50℃又は約45℃、又は約40℃、又は約35℃、又は約30℃、又は約25℃の温度)。第1工程CO/EtOH抽出により得られる未濃縮オイルの、これまでに論じられた先行技術の方法で使用される第1工程のバルク固体バイオマスと比べてより低い粘性は、いくつかの実施形態では、有利にもより正確な組成分析を可能にする可能性がある。というのも、バルク(全体)の均一性がより容易に成し遂げられうるからである。いくつかの実施形態では、このことは、有利にも、後の非極性脂質の選択的抽出においてリン脂質の過剰濃縮を回避、最小化又は別の態様で低減する可能性がある。リン脂質の過剰濃縮は、それが回避、最小化又は低減されないと、望ましくないほどに粘性が高い又は移動できない固体生成物を生じる可能性がある。
【0080】
当該方法の第2工程は、第1工程で得られたオイルからの非極性(トリグリセリド)脂質の好ましい又は選択的な抽出を伴う。第1抽出工程により得られる未濃縮オイルが中間体槽に移された場合、その未濃縮オイルは上記抽出設備に戻される。このオイルは、非極性(トリグリセリド)脂質を選択的に抽出するために、CO抽出に、いくつかの好ましい実施形態では、超臨界状態の、例えば約300bar(30MPa)以上及び約60℃でのCO抽出にさらに供される。いくつかの実施形態では、この抽出は、より低い圧力で開始することができ、次いで圧力は、漸増的に所望のレベル(例えば約300bar(30MPa))まで上昇させることができる。非極性(トリグリセリド)脂質は、着実に抽出することができ、これにより、要求される組成目標、例えば少なくとも約50%w/wのリン脂質含有量、又は少なくとも約55%w/wのリン脂質、又は少なくとも約60%w/w、リン脂質又は少なくとも約65%w/wのリン脂質、又は少なくとも約70%w/wのリン脂質、又は少なくとも約75%w/wのリン脂質、又は少なくとも約80%w/wのリン脂質、又は少なくとも約85%w/wのリン脂質、又は少なくとも約90%w/wのリン脂質、又は少なくとも約95%w/wのリン脂質、又は少なくとも約97%w/wのリン脂質、又は少なくとも約98%w/wのリン脂質、又は少なくとも約99%w/wのリン脂質が成し遂げられるまで、残りの抽残物を濃縮することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、要求される量の非極性脂質が抽出されて、所望のレベルのリン脂質濃縮が達成されると、その抽出容器を部分的に除圧することで、残留圧力が、今回濃縮され(そしてより粘性が高い)抽残物の排出を必要に応じて支援することが可能になる。濃縮された高粘度のオイルの排出は、まだ部分的に加圧されている抽出装置からの排出により、より大きな程度起こりやすくなる可能性がある。このようにして、極度に粘性が高い材料を以降のブレンド及び処方のために移すことができる。
【0082】
1以上の実施形態では、当該方法は、半連続処理を可能にし、他の抽出容器が稼動し続けている間、個々の抽出容器が一度に1つだけだが連続ローテーションで交代される。このようにして、複数の抽出装置のバッチを変更するために停止することが回避されてもよい。
【0083】
他の実施形態では、本明細書に記載される第2工程は、少なくとも約50%w/wのリン脂質含有量を有するクリルオイルを得るために、約50%w/w未満のリン脂質含有量を有する任意のクリルオイルのリン脂質含有量を高めるために使用することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、出発のクリルオイルは、約45%w/w以下、又は約40%w/w以下、又は約35%w/w以下、又は約30%w/w以下、又は約25%w/w以下、又は約20%w/w以下、又は約10%w/w以下のリン脂質含有量を有する。いくつかの実施形態では、最終の濃縮後のオイルは、少なくとも約55%w/wのリン脂質、又は少なくとも約60%w/wのリン脂質又は少なくとも約65%w/wのリン脂質、又は少なくとも約70%w/wのリン脂質、又は少なくとも約75%w/wのリン脂質、又は少なくとも約80%w/wのリン脂質、又は少なくとも約85%w/wのリン脂質、又は少なくとも約90%w/wのリン脂質、又は少なくとも約95%w/wのリン脂質、又は少なくとも約97%w/wのリン脂質、又は少なくとも約98%w/wのリン脂質、又は少なくとも約99%w/wのリン脂質のリン脂質含有量を有してもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、濃縮クリルオイルは、約5%w/w以下、又は約4%w/w以下、又は3%w/w以下、又は2%w/w以下又は1%w/w以下、又は0.5%w/w以下の最終水分含有量を有する。いくつかの実施形態では、このクリルオイルは、約5%w/w以下、又は約4%w/w以下、又は3%w/w以下、又は2%w/w以下又は1%w/w以下、又は0.5%w/w以下の残留抽出溶媒含有量を有する。さらなる実施形態では、このクリルオイルは、約5%w/w以下、又は約4%w/w以下、又は3%w/w以下、又は2%w/w以下又は1%w/w以下、又は0.5%w/w以下の水分含有量を有し、約5%w/w以下、又は約4%w/w以下、又は3%w/w以下、又は2%w/w以下又は1%w/w以下、又は0.5%w/w以下の残留抽出溶媒含有量を有する。なおさらなる実施形態では、濃縮後のクリルは、5%w/w以下、又は約4%w/w以下、又は3%w/w以下、又は2%w/w以下又は1.5%w/w以下、又は1%w/w以下、又は0.5%w/w以下、又は0.3%w/w以下、又は0.1%w/w以下の残留溶媒(水及びエタノール)含有量を有する。
【0086】
さらなる他の実施形態では、最終の濃縮クリルオイルは、少なくとも約60%w/wリン脂質のリン脂質含有量、及び約3%w/w以下の残留溶媒含有量を有する。
【0087】
本明細書に記載されるクリルオイルに関する他の実施形態も、本開示の方法により製造されるクリルオイルに、適宜、適用されてよい。
【0088】
以下の実施例は、本開示のいくつかの実施形態を説明する目的で提供され、本明細書中にこれまで記載された一般性を限定することは意図されていない。
【実施例0089】
実施例1 - 62%w/wリン脂質のクリルオイルの調製
1.オキアミ粉末からのクリルオイルの抽出
オキアミ粉末を、CO/エタノール(エタノール:オキアミ粉末の供給比は約3.0~3.5:1w/w)を用い、約17~22%w/wの範囲のエタノール質量分率、60℃の温度及び300bar(30MPa)の圧力で抽出した。このエタノール/CO段階抽出は継続時間が10~15時間であった。抽出油/CO/EtOH混合物を45bar(4.5MPa)の圧力及び25℃で分離した。
【0090】
この方法により得られた数バッチのオイルをブレンドして、極性成分及び非極性極性成分の両方を含有し、約42%のリン脂質含有量を有するクリルオイルを得た(下記表1-1参照)。
【0091】
【表1.1】
【0092】
2.工程1から得たクリルオイルからのトリグリセリドの選択的抽出
5.9kgの供給クリルオイル(上記表1-1に示す組成を有する)を1つの10.7L抽出容器(直径155mm)に直接投入した。この供給材料を、COを用いて60℃の温度及び300bar(30MPa)の圧力で抽出した。
【0093】
ほぼトリグリセリドを含有するエキスを回収し、このエキスは、抽出容器に投入した供給クリルオイルよりも顕著に粘性が低かった。
【0094】
抽出した物質の全質量が抽出できる物質の理論量の97%に到達すると、抽出容器の除圧プロセスを開始した。上記設備を、一定のランプ速度で15分間にわたって300bar(30MPa)から100bar(10MPa)まで除圧し、CO循環は続けたが抽出流量の50%であった。この間、抽出装置への出口で測定した温度は、60℃の稼動温度から50℃へ低下した。次にこの抽出装置を、ポンプを稼動させずに、さらに15分間にわたって100bar(10MPa)から75bar(7.5MPa)へとさらに除圧した。その後、この分離容器の内容物を空にした。
【0095】
抽出容器がまだ処理温度及び75bar(75MPa)の圧力にある間に、この容器からその濃縮クリルオイル内容物を抽出装置の容器の基部から抽残物表面レベより十分下まで出し、これにより高圧CO2のロスを回避し、抽残オイルを排出した。濃縮後のオイルの回収には約1時間かかり、その間、抽出容器中の残りのCO2が膨張してかつて抽残オイルによって占められていた空間を占めるにつれて、容器の圧力は75bar(7.5MPa)から54bar(5.4MPa)まで低下した。
【0096】
濃縮後のオイルの排出が終了すると、いくらかの濃縮クリルオイルが抽出容器の中に、容器の分配器及び底に残っていることが観察され、これは濃縮後のオイルの全質量の2%未満にあたると見積もられた。商業スケールでは、そのような残っているオイルがあればそれは、その抽出装置用の以降のクリルオイルバッチへと回収される。
【0097】
アスタキサンチン及びリン脂質の分析に先だって、この濃縮後のオイルを、オーブン中、55℃で1時間加熱した。これにより、試料には、分析用の均質な試料を得るために、撹拌するために十分に流動性があるようになった。
【0098】
表1-2は、供給油、抽出油及び濃縮油について質量、並びにリン脂質(PL)及びアスタキサンチン(Asta)の含有量をまとめる。ごく少量のリン脂質(<1g/100gエキス)及びアスタキサンチン(<2mg/100gエキス)が同時に抽出された。全体では、濃縮プロセスから得たエキスの質量は、62%リン脂質までの濃縮用に必要とされた理論エキスの98%であった。
【0099】
【表1.2】
【0100】
表1-3及び表1-4は、濃縮後のオイルの組成含有量をまとめる。
【0101】
【表1.3】
【0102】
【表1.4】
【0103】
実施例2
【0104】
ムール貝脂質エキスを国際公開第97/09992号パンフレットに従って調製し、PCSO-524(登録商標)(Pharmalink International Limited、香港)の形態で使用した。クリルオイルを実施例1の方法により調製し、このクリルオイルは上記表1-3及び表1-4に示した組成含有量を有していた。
【0105】
試料調製
新鮮な試料を毎日調製した。この試料をサンプリング前に反転させて混合した。この試料を1.5mL遠心管の中に秤量し、エタノールで100mg/mLにしてストック(原液)を調製した。上記オイルを正しい比で秤量し次いでエタノールで濃度調整することによりこのストック混合物を調製した。この原液の段階希釈をエタノール中で行った。次にこの段階希釈物を細胞培地中で希釈し(1対100)、その後、最終1対10希釈物で細胞(三重)に加えた。これにより、すべての投薬及び対照について0.1%のエタノール濃度となった。クリルオイルはおよそ62%w/wのリン脂質を含有していた。ムール貝脂質エキスをPCSO-524(登録商標)の形態で使用した。
【0106】
結果を提示する際に使用する略語を下記表2-1に示す。
【0107】
【表2.1】
【0108】
アッセイ
標準的な細胞培地中で培養し異なる試験化合物/エキス及び陽性対照の存在下又は不存在下でLPS及びIFNγと共にインキュベーションした、リポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFNγ)で刺激したマウスマクロファージ、RAW264.7細胞の中で消炎活性を決定した。NO、PGE及びLTB、サイトカイン、TNFα及びIL-6を含めた炎症メディエーターの産生を、市販のキットを使用して、確立された方法によって測定した。各試料を、少なくとも3つの濃度で(3つの複製物を使用し、最大濃度は100μg/mlであった)(n=9)、関連する内部対照とともに試験した(表2-2)。各試料の細胞毒性もMTTアッセイにより決定した。試験したいずれの濃度に対しても細胞毒性を検出しなかった。
【0109】
各アッセイに対するアッセイパラメータを表2-2にまとめる。手短に言えば、消炎アッセイを実施するために、上記培養したRAW264.7細胞をカウントし、96穴プレートにプレーティングし(0.8×105細胞/ウェル)、示したプレーティング時間にわたりインキュベーションした。次にこの培地を吸引し、新しい培地に置換し、続いて試験化合物を加えた。この化合物を刺激薬の添加に先だって1時間インキュベーションした。次にこのプレートを4~18時間インキュベーションし、上清を注目するメディエーターについて分析し、残っている細胞の生存率をMTTによって求めた。
【0110】
陽性対照は、類似のアッセイにおけるその幅広い使用に基づいて選択し、N-(3-(アミノメチル)ベンジル)アセトアミジン(1400W)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の時間依存的な強い結合阻害剤(Garvey,E.P.ら、J Biol Chem,1997,21:272(8):4959-63、及び一般に使用されるサイトカイン阻害剤であるデキサメタゾンを含んでいた。ジクロフェナクは、一般的な非ステロイド系消炎剤であり、PGE2を産生するシクロオキシゲナーゼ(COX)の公知の阻害剤である。
【0111】
【表2.2】
【0112】
結果
1.一酸化窒素アッセイ
NOは、ラジカル代謝産物であり、シグナル伝達分子として及び炎症における毒剤として数多くの生理学的機能を有することが示されている(Coleman、2001)。NOは、3種の一酸化窒素合成酵素(NOS)、もともとマウスマクロファージにおいて記載された構成型、神経型NOS及び血管内皮型NOS、及び誘導型、iNOS(Nathan & Xie,1994;Stuehr & Marletta,1985)、によるL-アルギニンの酸化に由来する。誘導型は、ひとたび発現すると頻繁に活性化され、それゆえLPS及びIFN-γのような炎症性分子によって刺激されるNF-κBによって転写レベルで制御される。iNOSによるNOの産生は、NOがはるかに高い(nM)持続レベルで産生されるまでに数時間の遅延時間を経験する(Nathan & Xie,1994)。NOSの誘導型は、炎症に関係づけられる可能性が最も高く、産生されるNOのレベルがより高いため、インビトロでより簡単に評価される。
【0113】
NOは、珍しいシグナル伝達分子である。NOに対する特異的な細胞表面受容体が存在しないため、NOは無差別に細胞に侵入するが、その効果は細胞型及びNO濃度に依存し、従って広い範囲の生理的反応を生み出す。NOは、血管透過性の向上、血管拡張、及び組織の損傷を引き起こし病原体を取り除くラジカルの発生を引き起こす(Guzik,Korbut, & Adamek-Guzik,2003)。これらの生理的変化は、血流の増加を伴う炎症に関連し、より多くの免疫細胞が冒された組織に侵入し、これによりその病原体を破壊することを可能にする。
【0114】
上記NO阻害アッセイについての結果を図1A及び図1B並びに表2-3に示す。
【0115】
【表2.3】
【0116】
2.腫瘍壊死因子-α
TNFαは、主に急性期炎症反応に関与する細胞シグナル伝達タンパク質(サイトカイン)である。マクロファージがTNFαの主要な供給源であるが、TNFαは、CD4+リンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マスト細胞、好酸球、及び神経細胞等の多くの他の細胞型によって放出されうる。TNFαはMAPK及びNF-κBの活性化によって産生される。TNFαは、それ自身の産生及びインターロイキン-1β(IL-1β)等の他の炎症性サイトカインの産生を増加させるように作用する。TNFαは、熱感、アポトーシス細胞死、悪液質、炎症を誘導し、腫瘍形成及びウイルス複製を阻害する。TNFαは、敗血症、外傷性障害、虚血、喘息、熱傷、過敏性腸症候群、アルツハイマー病、癌、大うつ病、関節炎及び多発性硬化症を含む多くの病状に関係づけられている(Cairns,Panacek,Harken, & Banerjee、2000;Dowlatiら、2010;Swardfagerら、2010)。
【0117】
上記TNFα阻害アッセイについての結果を図2A及び図2B並びに表2-4に示す。
【0118】
【表2.4】
【0119】
3.インターロイキン-6
TNFαのように、IL-6は炎症促進性サイトカインと考えられている。IL-6は、T細胞及びマクロファージにより分泌され、免疫応答を刺激する。IL-6は、骨髄中での好中球の産生の増加を担う。IL-6はB細胞の成長を支え、T細胞の制御性T細胞への分化に対して拮抗性がある。IL-6は、血液脳関門を通過し、視床下部でPGEの合成を開始し、これにより体温の設定温度(セットポイント)を変えることができる(Banks,Kastin, & Gutierrez、1994)。
【0120】
IL-6阻害アッセイについての結果を図3A及び図3B並びに表2-5に示す。
【0121】
【表2.5】
【0122】
4.プロスタグランジンE
プロスタグランジンE2(PGE)は、酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)の作用によりアラキドン酸(AA)から産生される脂質メディエーターの1つであり、発熱、疼痛感覚及び炎症を誘導することに関与する。アスピリン及び非ステロイド性消炎薬(NSAIDS)はプロスタノイド(PGEを含む)の生合成を阻害し、解熱、鎮痛及び消炎の効果をもたらす(Kawahara,K.ら、2015、及びKawabata,A.,2011)。
【0123】
結果を図4A及び図4B並びに表2-6に示す。
【0124】
【表2.6】
【0125】
結果のまとめ
ムール貝脂質エキス及びクリルオイルは、NO、TNFα及びIL-6を個々に阻害するが、PGEを阻害しないことが、試験した濃度のこのアッセイ系で明らかになった。
【0126】
ムール貝脂質エキス及びクリルオイルの当該組み合わせは、NO、TNFα及びIL-6を阻害することにおいて、ムール貝脂質エキス又はクリルオイルのいずれか単独よりも有効であった。PGEアッセイでは、ムール貝脂質エキスもクリルオイルも単独では阻害活性を示さなかったが、組み合わせると阻害を示した。
【0127】
実施例3 - 相乗効果
ムール貝脂質エキスを国際公開第97/09992号パンフレットに従って調製し、PCSO-524(登録商標)の形態で使用した。クリルオイルを実施例1の方法により調製し、このクリルオイルは上記表1-3及び表1-4に示した組成含有量を有していた。
【0128】
試料、調製及び組み合わせ
PCSO-524(登録商標)のストック試料及び高リン脂質クリルオイルを、実験のサンプリング前に反転により混合した。この試料を15mL遠心管の中に秤量し、エタノールで100mg/mLにしてストックを調製した。この混合物を、希釈オイルを正しい比で混合することにより調製した。段階希釈をエタノール中で行った。次にこの段階希釈物を細胞培地中で希釈し(1対100)、その後、最終1対10希釈物で細胞(三重に)に加えた。これにより、すべての投薬及び対照について0.1%のエタノール濃度となった。これらの用量を毎日新鮮に調製した。表3-1は、各試料に対して使用した略語を示す。
【0129】
【表3.1】
【0130】
アッセイ
標準的な細胞培地(DMEM、ウシ胎児血清5%)中で培養し異なる試験化合物/エキス及び対照の存在下又は不存在下でインキュベーションしたリポ多糖(LPS)及びインターフェロンγ(IFNγ)で刺激したマウスマクロファージ、RAW264.7細胞の中で消炎活性を決定した。NO、サイトカイン、TNFα及びIL-6を含めた炎症メディエーターの産生を、市販のELISAキット(表3-2に列挙した供給業者)を使用して、確立された方法によって測定した。各試料を、少なくとも6つの濃度で(3つの複製物を使用し、最大濃度は100μg/mLであった)(n=9)、関連する内部対照(表3-2に示す)とともに試験した。試験した各試料の細胞毒性を、MTTアッセイにより決定した。試験したいずれの濃度に対しても細胞毒性は検出されなかった。
【0131】
各アッセイに対するアッセイパラメータを表3-2にまとめる。手短に言えば、NO、TNFα及びIL-6のアッセイのために、培養したRAW264.7細胞をカウントし、96穴プレートにプレーティングし(0.8×10細胞/ウェル)、48時間インキュベーションした。次にこの培地を吸引し、新しい培地に置換し、続いて試験化合物を加えた。この化合物を刺激薬の添加に先だって1時間インキュベーションした。次にこのプレートを18時間インキュベーションし、上清を注目するメディエーターについて分析し、残っている細胞の生存率をMTTによって求めた。
【0132】
陽性対照は、類似のアッセイにおけるその幅広い使用に基づいて選択し、N-(3-(アミノメチル)ベンジル)アセトアミジン(1400W)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の時間依存的な強い結合阻害剤(Garveyら、1997)、及び一般に使用されるサイトカイン阻害剤であるデキサメタゾンを含んでいた。
【0133】
【表3.2】
【0134】
相乗作用の算出
相乗作用は併用効果(combination index)として表される。相乗作用併用効果(CI)及びアイソボログラムIC50加重値を、Compsynソフトウェアを使用して算出した。Graphpad Prismで生成した用量反応曲線をその曲線を代表する10点に変換した。次にこれらの10点をそれらのデータポイントにフィットするための曲線を生成するCompsynプログラムに入力した。この方法は、完全な用量反応曲線をその相乗作用プログラムで忠実に複製するために好ましかった。次にCompsynフィット曲線を相乗作用の算出のために使用した。試験した範囲にわたる相乗作用におけるパターンは、アイソボログラムを用いて観察することができ、アイソボログラムは、IC50で活性に対する各成分の相対的な寄与をプロットする。ブレンドされた2つの薬物の間に引かれた直線がある(Biavatti、2009)。その線の下の値は相乗作用を示し、線上の値は相加的と考えられ、線より上の値は拮抗的である。
【0135】
結果
1.一酸化窒素アッセイ
上記組み合わせが炎症性シグナル伝達分子NOに対して相乗的な阻害を示すか否かを判定するために、それらをアッセイした。まず、上記組み合わせを10%増分で試験した。観察した最も活性な組み合わせはLY60であった。さらに次に、LY60の周辺で5%増分を試験した。
【0136】
試験した組み合わせLY90~LY10の用量反応曲線を図5A図5B図6A及び図6Bに示す。NO阻害に対するIC50値及び併用効果を表3-3及び表3-4に提示する。1未満の併用効果は相乗作用を示す。10%増分についてのアイソボログラムを図7に示す。
【0137】
【表3.3】
【0138】
【表3.4】
【0139】
2.TNFαアッセイ
上記組み合わせが炎症性サイトカインTNFαに対して相乗的な阻害を示すか否かを判定するために、それらをアッセイした。まず、上記組み合わせを10%増分で試験した。観察した最も活性な組み合わせはLY50であった。さらに次に、LY50の周辺で5%増分を試験した。
【0140】
試験した組み合わせLY90~LY10の用量反応曲線を図8A図8B図8C図9A及び図9Bに示す。TNFα阻害に対するIC50値及び併用効果を表3-5及び表3-6に提示する。1未満の併用効果は相乗作用を示す。10%増分についてのアイソボログラムを図10に示す。
【0141】
【表3.5】
【0142】
【表3.6】
【0143】
3.IL-6アッセイ
上記組み合わせが炎症性サイトカインIL-6に対して相乗的な阻害を示すか否かを判定するために、それらをアッセイした。まず、上記組み合わせを10%増分で試験した。観察した最も活性な組み合わせはLY60であった。さらに次に、LY60の周辺で5%増分を試験した。
【0144】
試験した組み合わせLY90~LY10の用量反応曲線を図11A図11B図12A及び図12Bに示す。IL-6阻害に対するIC50値及び併用効果を表3-7及び表3-8に提示する。1未満の併用効果は相乗作用を示す。10%増分についてのアイソボログラムを図13に示す。
【0145】
【表3.7】
【0146】
【表3.8】
【0147】
結果のまとめ
組み合わせて使用したムール貝脂質エキス及びクリルオイルは、NO、TNFα及びIL-6を阻害することにおいて、相乗作用についての数学的基準を満たすことがこのアッセイ系で明らかになった。
【0148】
実施例4 - 患者研究
様々な疼痛/炎症状態に罹患している患者に、ムール貝脂質エキス(PCSO-542の形態で)及びクリルオイル(61%PL)のPCSO-542:クリルオイルが75:25の比の組み合わせを、カプセル形態で投与した。そのカプセルの組成を表4-1に提示する。
【0149】
【表4.1】
【0150】
投薬量は、通常、1回、2回又は3回の投薬での1日あたり2~8カプセルの範囲であった。上記組み合わせを用いた処置を開始するのに先だって、患者は、典型的には、疼痛を抑えるためにパラセタモール又はイブプロフェンを含めた1種以上のNSAIDSを服用していた。結果を表4-2に示す。
【0151】
【表4.2】
【0152】
参考文献
Biavatti,M.W.(2009). Synergy:an old wisdom,a new paradigm for pharmacotherapy. Brazilian Journal of Pharmaceutical Sciences,45(3),371-378
Cairns,C.B.,Panacek,E.A.,Harken,A.H., & Banerjee,A.(2000). Bench to bedside:Tumor necrosis factor-alpha:From inflammation to resuscitation. Academic Emergency Medicine,7(8),930-941
Coleman,J.W.(2001). Nitric oxide in immunity and inflammation. Int Immunopharmacol,1(8),1397-1406
Dowlati,Y.,Herrmann,N.,Swardfager,W.,Liu,H.,Sham,L.,Reim,E.K., & Lanctot,K.L.(2010). A Meta-Analysis of Cytokines in Major Depression. Biological Psychiatry,67(5),446-457. doi:10.1016/j.biopsych.2009.09.033
Garvey,E.P.,Oplinger,J.A.,Furfine,E.S.,Kiff,R.J.,Laszlo,F.,Whittle,B.J.R., & Knowles,R.G.(1997). 1400W is a slow, tight binding, and highly selective inhibitor of inducible nitric-oxide synthase in vitro and in vivo. Journal of Biological Chemistry,272(8),4959-4963
Guzik,T.J.,Korbut,R., & Adamek-Guzik,T.(2003). Nitric oxide and superoxide in inflammation and immune regulation. J Physiol Pharmacol,54(4),469-487
Kawabata,A.,(2011). Prostaglandin E and Pain - An Update. Biol Pharm Bull,34(8),1170-1173
Kawahara,K.(2015). Prostaglandin E-induced inflammation:Relevance of prostaglandin E receptors. Biochim Biophys Acta,1851(4),414-421
Nathan,C., & Xie,Q.W.(1994). Nitric oxide synthases: roles,tolls, and controls. Cell,78(6),915-918
Sinclair,A.J.,Murphy,K.J. and Li,D.(2000) Marine lipids overview ”news insights and lipid composition of Lyprinol”. Allerg Immunol(Paris)32(7),261-271
Stuehr,D.J., & Marletta,M.A.(1985). Mammalian nitrate biosynthesis:mouse macrophages produce nitrite and nitrate in response to Escherichia coli lipopolysaccharide. Proc Natl Acad Sci USA,82(22),7738-7742
Swardfager,W.,Lanctot,K.,Rothenburg,L.,Wong,A.,Cappell,J., & Herrmann,N.(2010). A Meta-Analysis of Cytokines in Alzheimer’s Disease. Biological Psychiatry,68(10),930-941
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムール貝脂質とクリルオイルとを含む組み合わせであって、個別投与又は連続投与のために適合されている組み合わせ。
【外国語明細書】