(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113855
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】癌治療のためのT細胞の活性化方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230808BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230808BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230808BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20230808BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230808BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230808BHJP
C07K 14/82 20060101ALI20230808BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230808BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230808BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230808BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20230808BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230808BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230808BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230808BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230808BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/078
C12N5/0783
C12Q1/02
C07K14/82
C07K19/00
C12N15/62 Z
A61K39/00 H
A61K35/15
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
C07K14/705
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093867
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2020507103の分割
【原出願日】2018-08-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0101800
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518426066
【氏名又は名称】グッド ティー セルズ、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポム ソク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エプスタイン-バールウイルス(epstein barrvirus;EBV)陰性癌特異的ネオエピトープ(neoepitope)とこれを含むT細胞活性化用組成物を提供する。
【解決手段】特定の配列で表される癌特異的ネオエピトープ(neo-epitope)、前記ネオエピトープがローディングされた抗原提示細胞、および前記抗原提示細胞によって癌治療のためのT細胞を活性化する方法を提供する。癌特異的エピトープがローディングされた抗原提示細胞、すなわち、樹状細胞を介して癌抗原特異的なT細胞、好ましくは、メモリーT細胞の分化および増殖を迅速で効果的に誘導することができ、このように活性化されたメモリーT細胞は、癌細胞の防御機序を避けて癌または腫瘍性状態を治療するか、癌の再発、進行または転移を予防することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~214のうちのいずれか1つで表される、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープ。
【請求項2】
前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープは、HLA-Aと結合親和性を示すものである、請求項1に記載のエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープ。
【請求項3】
前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープは、HLA-A*2402およびHLA-A*A0201のうちの少なくとも1つと結合親和性を示すものである、請求項1に記載のエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープ。
【請求項4】
前記癌は、配列番号1~214のうちのいずれか1つで表される癌特異的ネオエピトープを発現するものである、請求項1に記載のエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープ。
【請求項5】
前記癌は、大腸癌、膵臓癌、胃癌、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、肺癌、非小細胞性肺癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血液癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、結腸癌、骨癌、皮膚癌、頭部癌、子宮癌、直腸癌、脳腫瘍、肛門付近癌、卵管癌、子宮内膜癌腫、膣癌、陰門癌腫、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、1次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫、または脳下垂体腺腫である、請求項4に記載のエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープをコーディングする、核酸分子。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸分子が挿入された、発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の発現ベクターが形質感染した、宿主細胞。
【請求項9】
配列番号1~214のうちのいずれか1つで表されるエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープを含む、癌の予防又は治療用T細胞の活性化用組成物。
【請求項10】
前記T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、およびメモリーT細胞からなる群より選択された1種以上を含む、請求項9に記載のT細胞の活性化用組成物。
【請求項11】
配列番号1~214のうちのいずれか1つで表されるエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープがローディングされた、抗原提示細胞。
【請求項12】
樹状細胞、B細胞、およびマクロファージのうちの1種以上を含む、請求項11に記載の抗原提示細胞。
【請求項13】
T細胞の増殖または分化を促進する、請求項11に記載の抗原提示細胞。
【請求項14】
配列番号1~214のうちのいずれか1つで表されるエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープを抗原提示細胞にローディングする工程を含む、抗原提示細胞を製造する方法(但し、前記工程がヒト生体内で行われる場合を除く)。
【請求項15】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞、B細胞、およびマクロファージのうちの1種以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗原提示細胞が、目的の個体の末梢血液由来の末梢血単核細胞(PBMC)から得られたものである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ローディングが、前記抗原提示細胞を前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープと接触させて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ローディングが、前記抗原提示細胞をエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープでパルシング(pulsing)して行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ローディングが、前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープをコーディングする核酸分子が挿入された発現ベクターを前記抗原提示細胞にヌクレオフェクション(nucleofection)させて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ローディングが、
前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌特異的ネオエピトープおよび樹状細胞特異的抗体またはその断片を含む、融合タンパク質を用いて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
請求項11~13のいずれか1項に記載の抗原提示細胞によって活性化された、T細胞。
【請求項22】
請求項13~15のいずれか1項に記載の抗原提示細胞によってT細胞を活性化する方法(但し、前記活性化がヒト生体内で行われる場合を除く)。
【請求項23】
前記方法は、前記T細胞を前記抗原提示細胞と共培養して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記T細胞が、目的の個体の末梢血単核細胞(PBMC)から得られたものである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記T細胞が、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、およびメモリーT細胞からなる群より選択された1種以上を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記共培養が、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-21(IL-21)、またはこれらの組み合わせを添加して行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記共培養が、サイトカインおよび兔疫グロブリン重鎖不変部を含む融合タンパク質を添加して行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記サイトカインは、インターフェロン-γ(IFN-γ)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-12(IL-12)、IL-18、腫瘍壊死因子(TNF)、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記共培養が、
CD27、CXCR3、またはCD62Lのリガンド;および兔疫グロブリン重鎖不変部を含む、融合タンパク質を添加して行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
請求項11~13のいずれか1項に記載の抗原提示細胞を有効成分として含む、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項31】
請求項21に記載の活性化されたT細胞を有効成分として含む、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌特異的ネオエピトープ(neo-epitope)、前記ネオエピトープ
がローディングされた抗原提示細胞、および前記抗原提示細胞によって癌治療のためのT
細胞を活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胃癌の発病は全世界的に、特にアジアで高い発病率を示す悪性腫瘍として知られている
。胃癌の発病原因としては種々知られてきているが、代表的に、エプスタイン-バールウ
イルス(epstein barr virus;EBV)の感染によって現れるEBV
関連性胃癌と、胃腸細胞の遺伝子変異の蓄積によって発生する胃癌細胞抗原関連性胃癌と
に分類することができる。現在、胃癌に対する治療策は、長い時間の間癌組織の切開手術
が最も効果的であると知られてきており、化学的療法および放射線治療も行われているが
、胃癌を初期に発見できなかった場合は完治が難しい疾病とされている。また、様々な生
物学的製剤(抗体、小分子)により臨床試験を進行させてきているが、まだ良い臨床的効
果を示す治療剤は現れていない。
【0003】
最近、患者由来の自己T細胞を用いた癌細胞特異的ターゲット治療方法が様々な機関で
研究されてきており、キメラ抗原受容体(chimeric antigen rece
ptor;CAR)T細胞を用いたリンパ腫に対して様々な機関で臨床試験を進行させた
結果、良好な臨床的効果と低い副作用から、抗癌治療への新たな分野として注目されてき
ている。
【0004】
患者由来T細胞を用いると、細胞治療剤の最も大きな副作用である免疫反応の誘導が少
なく、供与者のHLAタイプに対する制限が無くなるので、効果的で副作用のない治療剤
とされてきた。今のところ、抗癌治療分野で最も多く使用されている細胞治療剤の種類に
は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、NK細胞、樹状細胞、CAR T細胞が知られて
いる。NK細胞の場合、細胞死滅効能を有しているが、抗原特異性がないため、様々な副
作用があり、樹状細胞の場合には、直接的に細胞を死滅する機能がないのに対し、患者体
内のT細胞に抗原特異性を伝達して高い効率でT細胞の癌細胞特異性を付与できるワクチ
ン概念の治療剤である。また、CD4+T細胞は、抗原特異性により他の細胞に対して補
助する役割を有しており、CD8+T細胞の場合、抗原特異性および細胞死滅効果が最も
良い細胞として知られている。
【0005】
しかし、今のところ使用または開発されている細胞治療剤はほとんど限界があり、臨床
的な効果が現れていないのが現状である。その限界をみると、癌細胞は、人体内の免疫反
応を抑制する物質を自ら分泌するか、癌細胞に対する抗体の生成に必須な抗原を提示でき
ないため、適切な免疫反応を起こせないようにする。
【0006】
一方、樹状細胞は、人体の外部から入ってくるか、内部で発生する抗原を検知する監視
者の役割を果たすだけでなく、このように認知し吸収した抗原をもって免疫器官(sec
ondary lymphoid organ)に迅速に移動して抗原と反応するT細胞
を含む免疫細胞に抗原を提示する専門的な抗原提示細胞の役割を果たす。樹状細胞を用い
た抗癌免疫治療ワクチンの場合、様々な方法により開発されてきており、大きく、生体外
で発生した(ex vivo generated)樹状細胞ワクチンと、生体内(in
vivo)樹状細胞ワクチンとに分けられる。生体内樹状細胞ワクチンの場合、体内に
存在する樹状細胞に抗原を直接的に伝達する方式である。また、生体外で発生した樹状細
胞ワクチン方法の場合、患者のPBMCから樹状細胞を分離し、分離された樹状細胞に提
示する抗原を伝達し、これによって樹状細胞が活性化された後、さらに患者に注入し、注
入された樹状細胞からT細胞へ抗原を伝達する方法である。この方式の場合には、生体外
で樹状細胞の培養方法および抗原伝達方式が重要であり、現在使用される抗原提示方法と
しては、提示する抗原のDNAをウイルスやヌクレオフェクション(nucleofec
tion)を用いてトランスフェクションさせるか、樹状細胞をターゲットする抗体に抗
原を結合させて、樹状細胞をターゲットとする抗原を伝達することが用いられている。
【0007】
現在、樹状細胞ワクチンの最も大きな問題点としては、体内の激しい慢性炎症現象、ワ
ールブルク効果(Warburg effect)、免疫抑制サイトカイン、免疫抑制T
細胞および樹状細胞などが存在する癌の微細環境中で効果的な抗癌兔疫細胞の活性化が極
めて困難とされているという点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの目的は、エプスタイン-バールウイルス(epstein barr
virus;EBV)陰性癌特異的ネオエピトープ(neoepitope)とこれを含
むT細胞活性化用組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、本発明のネオエピトープがローディングされたもので、癌治療の
ためのT細胞を活性化させることができる抗原提示細胞を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、本発明のネオエピトープがローディングされた抗原提示細
胞によって活性化されたT細胞を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、癌治療のためにT細胞を活性化する方法を提供することで
ある。
【0012】
しかし、本発明がなそうとする技術的課題は以上に述べた課題に制限されず、述べてい
ないさらに他の課題は、以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理
解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、癌特異的エピトープ(tumor antigen e
pitope)に関する。
【0014】
本発明において、前記「癌特異的エピトープ」は、癌細胞にのみ存在し、正常細胞には
存在しない突然変異タンパク質抗原に由来するものである。本発明において、前記癌特異
的エピトープは、T細胞受容体によって認識される少なくとも1つのエピトープを含むも
ので、好ましくは、エプスタイン-バールウイルス(epstein barr vir
us;EBV)陰性癌で癌遺伝子の変異によって現れる自己癌抗原のネオエピトープ(n
eo-epitope)であってもよい。
【0015】
本発明において、前記「ネオエピトープ(neo-epitope)」は、正常な非癌
細胞または生殖細胞のようなレファレンスでは存在しないが、癌細胞では発見されるエピ
トープを指す。ここでは特に、正常な非癌細胞または生殖細胞では対応するエピトープが
発見されるが、癌細胞での1以上の突然変異によって、エピトープの配列が変化してネオ
エピトープが生じる状況も含まれる。ネオエピトープに関連して、ネオエピトープは、固
有の腫瘍特異的抗原を生成する腫瘍細胞においてランダム突然変異を発現すると見られる
。したがって、他の観点から見ると、ネオエピトープは、サイレントおよび他の非関連突
然変異を除去させる第1の内容物フィルタとして作用できる突然変異の類型(例えば、欠
失、挿入、転換、転移、転座)および影響(例えば、ナンセンス(non-sense)
、ミスセンス、フレーム移動など)を考慮して同定することができる。また、ネオエピト
ープ配列は、比較的短い長さ(例えば、7~11mer)の配列伸長と定義され、ここで
、このような伸長はアミノ酸配列の変化を含むことを理解しなければならない。最も典型
的に、変化したアミノ酸は、中央アミノ酸位置またはその近傍にあるはずである。例えば
、典型的なネオエピトープは、A4-N-A4、またはA3-N-A5、またはA2-N
-A7、またはA5-N-A3、またはA7-N-A2の構造を有することができ、ここ
で、Aは、タンパク質生成アミノ酸であり、Nは、変化したアミノ酸(野生型またはマッ
チングされた正常群に対して)である。例えば、本願で考慮されるネオエピトープ配列は
、比較的短い長さ(例えば、5~30mer、より典型的に7~11merまたは12~
25mer)の配列伸長を含み、ここで、このような伸長はアミノ酸配列の変化を含む。
したがって、単一アミノ酸の変化が、変化したアミノ酸の位置によって、変化したアミノ
酸を含む多数のネオエピトープ配列に提示できることを理解しなければならない。有利に
は、このような配列可変性は、ネオエピトープの多重選択を可能にして、1つ以上の好ま
しい形質(例えば、患者HLA-類型に対する最も高い親和度、最も高い構造的安定性な
ど)に基づいて選択可能な潜在的に有用な標的の数を増加させる。最も典型的に、このよ
うなネオエピトープは、2~50個のアミノ酸、より典型的には5~30個のアミノ酸、
最も典型的には9~15個のアミノ酸の長さを有するように計算され、変化したアミノ酸
は、好ましくは、中央に位置するか、そうでなければ、MHCとの結合を向上させる方式
で位置する。例えば、エピトープがMHC-I複合体によって提供される場合、典型的な
ネオエピトープの長さは、約8~11個のアミノ酸であり、MHC-II複合体を介して
提示された典型的なネオエピトープの長さは、約13~17個のアミノ酸を有するはずで
ある。簡単に理解されるように、ネオエピトープでの変化したアミノ酸の位置は中心では
ないため、実際にペプチド配列およびネオエピトープの実際の位相は大きく異なり得る。
【0016】
本発明において、前記ネオエピトープとしては、ヒトの血液から抽出されたT細胞、好
ましくは、メモリーT細胞(memory T cells)が効能を有し得るように、
HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、β2-マ
イクログロブリン、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-
DQB1、HLA-DRA1、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4
、HLA-DRB5、HLA-DM、HLA-DOA、およびHLA-DOB遺伝子座の
うちの少なくとも1つと結合親和性を示すことができる。なかでも、韓国人にとって最も
多く発現しているHLAタイプとして、例えば、HLA-A*2402、HLA-A*A
0201、HLA-A*3303、HLA-A*1101、HLA-A*0206、HL
A-A*3101、HLA-B*5101、HLA-B*4403、HLA-B*540
1、HLA-B*5801、およびHLA-B*3501のうちの少なくとも1つ、好ま
しくは、HLA-A*2402またはHLA-A*A0201と高い結合親和性を示すも
のであってもよい。
【0017】
好ましくは、本発明において、前記ネオエピトープとしては、HLA-A*2402に
対して高い結合親和性を有するもので、配列番号1~49のうちのいずれか1つで表され
るネオエピトープであってもよく;またはHLA-A*0201に対して高い結合親和性
を有するもので、配列番号50~214のうちのいずれか1つで表されるネオエピトープ
であってもよい。
【0018】
ただし、本発明において、前記ネオエピトープ-HLA親和度を測定する方法としては
、ネオエピトープが特定のHLA対立形質に結合するかを予測するためにNetMHC3
.4(URL:www.cbs.dtu.dk/services/NetMHC-3.4/)を用いることができるが、これに制
限されるわけではない。
【0019】
本発明において、前記「HLA」または「ヒト白血球抗原」は、免疫系の調節の原因に
なる細胞の表面上でMHC(主組織適合性複合体)タンパク質を暗号化するヒト遺伝子を
表す。「HLA-I」または「HLAクラスI」は、HLA-A、HLA-B、HLA-
C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、およびβ2-マイクログロブリン遺伝子座を
含むヒトMHCクラスI遺伝子を表す。「HLA-II」または「HLAクラスII」は
、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA
-DRA1、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB
5、HLA-DM、HLA-DOA、およびHLA-DOB遺伝子座を含むヒトMHCク
ラスII遺伝子を表す。
【0020】
本発明において、前記癌としては、エプスタイン-バールウイルス(epstein
barr virus;EBV)陰性癌で、本発明の配列番号1~214のうちのいずれ
か1つで表されるネオエピトープを発現する癌腫であれば制限なく含まれ、その種類を特
に制限しないが、例えば、大腸癌、膵臓癌、胃癌、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、
副甲状腺癌、肺癌、非小細胞性肺癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、
ホジキンリンパ腫、血液癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、結腸癌、骨癌、皮膚癌、
頭部癌、子宮癌、直腸癌、脳腫瘍、肛門付近癌、ラッパ管癌腫、子宮内膜癌腫、膣癌、陰
門癌腫、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、輸尿管癌
、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、中枢神経系(CNS central nervous
system)腫瘍、1次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫、または脳下垂体腺
腫であってもよく、好ましくは、胃癌であってもよい。
【0021】
本発明の他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tumor
antigen epitope)で、好ましくは、配列番号1~214のうちのいずれ
か1つで表されるエプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌抗原のネオエピトープ
(neoepitope)をコードする核酸分子に関する。
【0022】
本発明の核酸分子は、本発明で提供するポリペプチドのアミノ酸配列を、当業者に知ら
れているように、ポリヌクレオチド配列に翻訳した、核酸分子のすべてを含む。そのため
、ORF(open reading frame)による多様なポリヌクレオチド配列
が製造可能であり、これもすべて本発明の核酸分子に含まれる。
【0023】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記単離された核酸分子が挿
入された発現ベクターを提供する。
【0024】
本発明において、前記「ベクター」は、ある核酸分子が連結された他の核酸を輸送でき
る前記核酸分子である。ベクターの一つの類型は、追加的なDNAセグメントが結紮され
得る円形の二重鎖DNAを指す「プラスミド」である。他の類型のベクターは、ファージ
ベクターである。さらに他の類型のベクターは、ウイルス性ベクターで、追加的なDNA
セグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。あるベクターは、それらが流入
した宿主細胞で自律的な複製を行うことができる(例えば、バクテリア性ベクターはバク
テリア性複製起源を有するエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、非
エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に流入しながら宿主細胞のゲノムに統合され、
それによって、宿主ゲノムとともに複製される。それだけでなく、あるベクターは、これ
らが作動レベルで連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクター
は、本願において「組換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と名付けられる。
一般的に、組換えDNA手法で有用な発現ベクターは、たびたびプラスミドの形態で存在
する。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドがベクターのう
ち最も通常使用される形態であるため、相互交換して使用できる。
【0025】
本発明において、前記発現ベクターの具体的な例としては、商業的に広く使用されるp
CDNAベクター、F、R1、RP1、Col、pBR322、ToL、Tiベクター;
コスミド;ラムダ、ラムドイド(lambdoid)、M13、Mu、p1 P22、Q
μ、T-even、T2、T3、T7などのファージ;植物ウイルスからなる群より選択
されるが、これに制限されるわけではなく、当業者に発現ベクターとして知られたすべて
の発現ベクターは本発明に使用可能であり、発現ベクターを選択する際には、目的の宿主
細胞の性質による。宿主細胞へのベクターの導入時、リン酸カルシウムトランスフェクシ
ョン、ウイルス感染、DEAE-デキストラン調節トランスフェクション、リポフェクタ
ミントランスフェクション、または電気穿孔法によって行われるが、これに限定されるも
のではなく、当業者は使用する発現ベクターおよび宿主細胞に適した導入方法を選択して
用いることができる。好ましくは、ベクターは、1つ以上の選別マーカーを含有するが、
これに限定されず、選別マーカーを含まないベクターを用いて生産物の生産有無によって
選別が可能である。選別マーカーの選択は、目的の宿主細胞によって選別され、これは、
すでに当業者に知られた方法を利用するので、本発明はこれに制限を置かない。
【0026】
本発明の核酸分子を精製を容易にするためにタグ配列を発現ベクター上に挿入して融合
させることができる。前記タグとしては、ヘキサ-ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ
、mycタグ、またはflagタグを含むが、これに限定されるものではなく、当業者に
知られた精製を容易にするタグはすべて本発明で利用可能である。
【0027】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記発現ベクターがトランス
フェクトした宿主細胞を提供する。
【0028】
本発明において、前記「宿主細胞」には、ポリペプチド挿入物の組込みのためのベクタ
ーの受取者(recipient)であるか、受取者であった個別的な細胞または細胞培
養物が含まれる。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれ、前記子孫は、自然的な、偶
発的なまたは故意の突然変異のため、必ずしも元の母細胞と完全に同一(形態学上または
ゲノムDNA補完体において)でないことがある。宿主細胞には本願のポリペプチドで体
内に形質注入された細胞が含まれる。
【0029】
本発明において、前記宿主細胞としては、哺乳動物、植物、昆虫、菌類、または細胞性
起源の細胞を含むことができ、例えば、大腸菌、ストレプトマイセス、サルモネラ・ティ
フィムリウムなどのバクテリア細胞;酵母細胞、ピキア・パストリスなどの菌類細胞;シ
ョウジョウバエ、スポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO(チャイニーズハムス
ター卵巣細胞、Chinese hamster ovary cells)、SP2/
0(マウス骨髄腫)、ヒトリンパ芽球(Human lymphoblastoid)、
COS、NSO(マウス骨髄腫)、293T、BOWメラノーマ細胞、HT-1080、
BHK(ベビーハムスター腎臓細胞、Baby Hamster Kidney cel
ls)、HEK(ヒト胚腎臓細胞、Human Embryonic Kidney c
ells)、またはPERC.6(ヒト網膜細胞)の動物細胞;または植物細胞であって
もよいが、これに制限されるわけではなく、当業者に知られた宿主細胞として使用可能な
細胞はすべて利用可能である。
【0030】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tum
or antigen epitope)、これをコーディングする核酸分子、前記核酸
分子が挿入された発現ベクターまたは前記発現ベクターが形質転換された宿主細胞を含む
T細胞の活性化用組成物に関する。
【0031】
本明細書で使用されるように、「T細胞の活性化」は、少なくとも1つの腫瘍抗原ペプ
チドを認識するT細胞受容体を有する、単クローン(例えば、同一のTCRを暗号化する
)または多クローン(例えば、相異なるTCRを暗号化するクローンを有する)T細胞集
団を称する。活性化されたT細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキ
ラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、およびメモリーT細胞からなる群より選択され
た1種以上を含むが、これに限定されないT細胞の1つ以上の亜型を含有することができ
るが、好ましくは、メモリーT細胞(memory T cells)であってもよい。
【0032】
本発明において、前記活性化されたT細胞は、癌細胞の防御機構を避けて癌または腫瘍
性状態を治療するか、癌の再発、進行または転移を予防することができる。
【0033】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tum
or antigen epitope)がローディング(loading)された抗原
提示細胞(antigen presenting cells、APC)であってもよ
い。
【0034】
本発明において、前記抗原提示細胞は、樹状細胞(dendritic cells、
DC)、B細胞、およびマクロファージのうちの1種以上を含むことができるが、好まし
くは、樹状細胞であってもよい。
【0035】
本発明において、前記「樹状細胞」は、リンパ性または非リンパ性組織で発見される形
態学的に類似する細胞類型の多様な集団の構成員である。このような細胞は、これらの独
特の形態、および抗原ペプチドをT細胞に提示するタンパク質である表面クラスIおよび
クラスII MHC分子の高い発現水準を特徴とする。DC、他のAPCおよびT細胞は
、末梢血液に由来する末梢血単核細胞(PBMC)のように、都合的には末梢血液から、
そして多数の組織供給源から単離されるか、由来(例えば、分化)できる。
【0036】
本発明において、前記抗原提示細胞は、癌抗原特異的なT細胞、好ましくは、メモリー
T細胞の分化および増殖を誘導することで癌細胞の防御機序を避けて癌または腫瘍性状態
を治療するか、癌の再発、進行または転移を予防することができる。
【0037】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tum
or antigen epitope);および樹状細胞特異的抗体またはその断片を
含む融合タンパク質に関する。
【0038】
本発明で提供する融合タンパク質は、樹状細胞に本発明で提供する癌特異的エピトープ
がローディングできるようにする。
【0039】
本発明において、前記樹状細胞特異的抗体としては、樹状細胞のDCIR、MHCクラ
スI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD
14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD
43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD
86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、
CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、Clec9A、33D1、マン
ノース受容体(mannose receptor)、ランゲリン(Langerin)
、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体、IL-2受容体、ICA
M-1、Fcγ受容体、LOX-1、またはASPGRに特異的な抗体であってもよいが
、これに制限されるわけではない。
【0040】
本発明の融合タンパク質において、前記癌特異的エピトープは、前記樹状細胞特異的抗
体またはその断片にコンジュゲートされたものであってもよい。ここで、前記「コンジュ
ゲート(conjugate)」は、2つの部分を一緒に結合させて形成された任意の物
質をいう。本発明に係る代表的な接合体は、抗原と抗体およびTLR効能剤を一緒に結合
させて形成されたものを含む。用語「コンジュゲーション(conjugation)」
は、接合体を形成する工程をいい、一般的に、物理的カップリング、例えば、共有結合、
同時-配位共有結合、または第2結合力、例えば、ファンデルワールス結合力(Van
der Waals bonding force)をいう。抗原を抗体に連結させる工
程はさらに、ドックリン-コヘシン会合(dockerin-cohesin asso
ciation)のような非共有結合性会合[(Banchereau)らの米国特許公
報第20100135994号、本願に参照として引用された部分に関連する]により、
またはペプチドまたは化学的結合を形成することで直接的な化学的連結によって行われる
。
【0041】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tum
or antigen epitope)がローディングされた抗原提示細胞(Anti
gen presenting cells、APC)を製造する方法に関する。
【0042】
本発明において、前記抗原提示細胞は、樹状細胞、B細胞、およびマクロファージのう
ちの1種以上を含むことができるが、好ましくは、樹状細胞であってもよい。
【0043】
本発明において、前記樹状細胞(例えば、未成熟樹状細胞)は、自己供給源、すなわち
、目的の個体由来を含む多様な供給源から得ることができ、好ましくは、末梢血液由来の
末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cel
l、PBMC)から得られ、より好ましくは、個体由来PBMCから単核球を分離して複
数のサイトカインと接触させることで得られる。ここで、前記単核球の樹状細胞への分化
を誘導するサイトカインの種類は特に制限しないが、例えば、GM-CSFおよびIL-
4のうちの1種以上を含むことができる。
【0044】
本発明において、前記「目的の個体」とは、癌が発病したか、発病の可能性が高い個体
を意味する。
【0045】
本発明において、前記のように抗原提示細胞が用意されると、前記抗原提示細胞に本発
明の癌特異的エピトープをローディングすることができる。一般的に、未成熟樹状細胞は
、食作用や受容体を介した細胞内取込み(エンドサイトーシス)により抗原を捕獲して、
細胞内の一連の過程により抗原を加工後、MHCに抗原ペプチドを積載してTリンパ球に
提示する。抗原を加工する過程とともに、樹状細胞は次第に成熟して食作用と細胞内取込
みに使用される受容体を失い、MHCクラスI、II、補助刺激分子、細胞癒着分子の発
現が増加し、新たなケモカイン受容体を発現して周辺リンパ節のTリンパ球が豊かな地域
に移動してTリンパ球に抗原を提示することにより、Tリンパ球免疫反応を起こす。
【0046】
本発明の一例として、前記癌特異的エピトープを前記抗原提示細胞にローディングする
ためには、前記抗原提示細胞を本発明の癌特異的エピトープと接触させることができ、好
ましくは、前記抗原提示細胞として、例えば、未成熟樹状細胞、またはPBMCに含まれ
るか、これに由来する(例えば、分化した)抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)に本発明
の前記癌特異的エピトープをパルシング(pulsing)するステップを行うことがで
きる。本技術分野で知られているように、パルシングは、細胞、例えば、樹状細胞を、抗
原ペプチドを含有する溶液と混合し、次いで、任意に混合物から抗原ペプチドを除去する
工程を称する。本発明では、前記未成熟樹状細胞を癌特異的エピトープと接触させる時、
Toll-like受容体作用剤を処理して未成熟樹状細胞の集団の成熟を追加的に誘導
することができる。この時、例示的なTLR作用剤には、Poly IC、MALP、お
よびR848が含まれるが、これに限定されない。
【0047】
本発明の他の例として、前記癌特異的エピトープを前記抗原提示細胞にローディングす
るためには、前記癌特異的エピトープをコードする核酸分子が挿入された発現ベクター、
好ましくは、プラスミドで前記抗原提示細胞をヌクレオフェクション(nucleofe
ction)させることができる。ここで、前記ヌクレオフェクションの際、例えば、A
maxa(登録商標)ヌクレオフェクションシステムまたはInVitrogen(登録
商標)ヌクレオフェクションシステムを含む、本分野における何らかの有用な手段によっ
て発生することができる。
【0048】
本発明のさらに他の例示として、前記癌特異的エピトープを前記抗原提示細胞にローデ
ィングするためには、本発明で提供する前記癌特異的エピトープ;および樹状細胞特異的
抗体またはその断片を含む融合タンパク質を用いて行われる。
【0049】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗原提示細胞によって活性化
されたT細胞に関する。
【0050】
本発明において、前記T細胞は、腫瘍抗原ペプチドを認識するT細胞受容体を有する、
単クローン(例えば、同一のTCRを暗号化する)または多クローン(例えば、相異なる
TCRを暗号化するクローンを有する)T細胞集団を称するもので、細胞傷害性T細胞、
ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、およびメモリー
T細胞からなる群より選択された1種以上を含むことができ、これに限定されないT細胞
の1つ以上の亜型を含有することができるが、好ましくは、メモリーT細胞であってもよ
い。
【0051】
本発明において、前記「メモリーT細胞(memory T cells)」は、これ
らの特異的抗原と前に遭遇して反応したT細胞または活性化されたT細胞から分化したT
細胞である。腫瘍特異的メモリーT細胞は、T細胞総量の小さい部分を構成するが、これ
らは、個人の全体寿命の間に腫瘍細胞の監視に重要な機能を行う。腫瘍特異的メモリーT
細胞がこれらの特定腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞に遭遇すれば、メモリーT細胞は直ちに
活性化されてクローン拡張(clonally expanded)する。活性化され増
殖されたT細胞は、エフェクターT細胞に分化して、高効率で腫瘍細胞を殺す。メモリー
T細胞は、T細胞の臓器腫瘍抗原特異的反応を確立し維持するのに重要である。本発明に
おいて、活性化されたT細胞、好ましくは、活性化されたメモリーT細胞は、癌細胞の抗
原を特異的に認識して、癌細胞の防御機序を避けて癌または腫瘍性状態を治療するか、癌
の再発、進行または転移を予防することができる。
【0052】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗原提示細胞によってT細胞
を活性化する方法に関する。
【0053】
本発明では、前記T細胞の活性化のためには、前記T細胞を本発明の癌特異的エピトー
プがローディングされた抗原提示細胞と共培養することができる。
【0054】
本発明において、前記T細胞は、自己供給源、すなわち、目的の個体由来を含む多様な
供給源から得ることができ、好ましくは、末梢血液由来の末梢血単核細胞(Periph
eral blood mononuclear cell、PBMC)から得られ、よ
り好ましくは、前記末梢血単核細胞の非付着性部分から得ることができる。本発明の一例
として、前記PBMCの非付着性部分を末梢血液サンプルの密度勾配遠心分離によって得
ることができ、これを抗CD3抗体(例えば、OKT3)があるかなしで、少なくとも1
つのサイトカイン(例えば、IL-2)と一緒に培養して得ることができる。
【0055】
本発明において、前記T細胞は、腫瘍抗原ペプチドを認識するT細胞受容体を有する、
単クローン(例えば、同一のTCRを暗号化する)または多クローン(例えば、相異なる
TCRを暗号化するクローンを有する)T細胞集団を称するもので、細胞傷害性T細胞、
ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、およびメモリー
T細胞からなる群より選択された1種以上を含むことができ、これに限定されないT細胞
の1つ以上の亜型を含有することができるが、好ましくは、メモリーT細胞であってもよ
い。
【0056】
また、本発明において、前記T細胞および前記抗原提示細胞は、同一の個体、例えば、
癌に苦しめられている個体(例えば、低等級から中間等級の癌)に由来できるが、これに
制限されるわけではない。
【0057】
本発明において、前記T細胞の活性化のために、前記T細胞は、本発明の抗原提示細胞
と1、2、3、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、
28、または30日間のうちのいずれか1つ以上の間に共培養され、好ましくは、1日~
21日、1日~14日、2日~10日、2日~5日、2日~5日、3日、5日、7日、1
0日、14日、16日、18日、または21日間共同培養されるが、これに制限されるわ
けではない。
【0058】
本発明において、前記T細胞と本発明の抗原提示細胞の共培養時、1種以上のサイトカ
インを添加してT細胞の活性化、成熟および/または増殖を促進し、後のメモリーT細胞
への分化のためにT細胞をプライミングすることができる。このようなステップで使用で
きる例示的なサイトカインには、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン
-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(IL
-15)、インターロイキン-21(IL-21)、またはこれらの組み合わせなどが含
まれるが、これに限定されない。
【0059】
また、本発明では、前記T細胞と本発明の抗原提示細胞の共培養時、サイトカインおよ
び兔疫グロブリン重鎖不変部を含む融合タンパク質を添加してT細胞の活性化、成熟およ
び/または増殖を促進し、後のメモリーT細胞への分化のためにT細胞をプライミングす
ることができる。ここで、前記サイトカインとしては、インターフェロン-γ(IFN-
γ)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インタ
ーロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-18(IL-18)、腫瘍壊死因
子(TNF)、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)であっても
よいが、これに制限されるわけではない。また、前記兔疫グロブリン重鎖不変部は、兔疫
グロブリンヒンジ部、および任意にCH2ドメイン、CH3ドメイン、およびCH4ドメ
インまたはその配合物から構成された群より選択された兔疫グロブリン重鎖不変部領域で
あってもよいが、これに制限されるわけではない。さらに、前記兔疫グロブリン重鎖不変
部は、IgA(Igα)、IgD(Igδ)、IgE(Igε)、IgG(Igγ)、お
よびIgM(Igμ)で、当業界で呼ばれる任意の5つの兔疫グロブリンクラスに属する
兔疫グロブリンに由来できるが、好ましくは、IgGクラスに由来する兔疫グロブリン重
鎖不変部であってもよい。
【0060】
また、本発明では、前記T細胞と本発明の抗原提示細胞の共培養時、メモリーT細胞で
高く発現する細胞表面タンパク質と結合するリガンド;および兔疫グロブリン重鎖不変部
を含む融合タンパク質を添加してT細胞の活性化、成熟および/または増殖を促進し、後
のメモリーT細胞への分化のためにT細胞をプライミングすることができる。ここで、前
記メモリーT細胞で高く発現する細胞表面タンパク質としては、CD27、CXCR3、
またはCD62Lであってもよい。前記CD27に結合可能なリガンドとしては、CD7
0であってもよく、CXCR3に結合可能なリガンドは、CXCR9またはCXCR10
であってもよいし、前記CD62Lに結合可能なリガンドは、GlyCAM-1、CD3
4、MadCAM-1、またはPSGL-1であってもよいが、これに制限されるわけで
はない。さらに、前記兔疫グロブリン重鎖不変部は、IgA(Igα)、IgD(Igδ
)、IgE(Igε)、IgG(Igγ)、およびIgM(Igμ)で、当業界で呼ばれ
る任意の5つの兔疫グロブリンクラスに属する兔疫グロブリンに由来できるが、好ましく
は、IgGクラスに由来する兔疫グロブリン重鎖不変部であってもよい。
【0061】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープがローデ
ィングされた抗原提示細胞を有効成分として含む免疫治療剤に関する。本発明に係る免疫
治療剤は、免疫反応を増加させるか、特定疾病で、例えば、癌の治療または予防に好まし
い免疫反応の一部を選択的に上昇させることができる。
【0062】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープがローデ
ィングされた抗原提示細胞;および/または活性化されたT細胞を有効成分として含む抗
癌ワクチン、癌の予防または治療用薬学組成物に関する。
【0063】
本発明で提供する前記抗原提示細胞は、癌抗原特異的なT細胞、好ましくは、メモリー
T細胞の分化および増殖を誘導することができ、このように活性化されたメモリーT細胞
は、癌細胞の防御機序を避けて癌または腫瘍性状態を治療するか、癌の再発、進行または
転移を予防することができる。
【0064】
本発明において、前記「癌」は、哺乳類で典型的に調節されない細胞成長で特徴づけら
れた生理的状態を示すか、指す。本発明において、予防、改善または治療の対象になる癌
は、エプスタイン-バールウイルス(epstein barr virus;EBV)
陰性癌で、本発明の配列番号1~214のうちのいずれか1つで表されるネオエピトープ
を発現する癌腫であれば制限なく含まれ、その種類を特に制限しないが、例えば、大腸癌
、膵臓癌、胃癌、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、非咽頭癌、肺癌、非
小細胞性肺癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血
液癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、結腸癌、骨癌、皮膚癌、頭部癌、子宮癌、直腸
癌、脳腫瘍、肛門付近癌、卵管癌、子宮内膜癌腫、膣癌、陰門癌腫、食道癌、小腸癌、内
分泌腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎盂癌、中
枢神経系(CNS central nervoussystem)腫瘍、1次CNSリ
ンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫、または脳下垂体腺腫などであってもよいし、好ましく
は、胃癌であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0065】
本発明において、「予防」は、本発明の薬学組成物を用いて癌の症状を遮断するか、そ
の症状を抑制または遅延させるあらゆる行為であれば制限なく含むことができる。
【0066】
また、本発明において、「治療」は、本発明の薬学組成物を用いて癌の症状が好転する
か、有利になるあらゆる行為であれば制限なく含むことができる。
【0067】
本発明において、前記薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末、
または飲料形態であることを特徴とし、前記薬学組成物は、ヒトを対象にすることを特徴
とすることができる。
【0068】
本発明において、前記薬学組成物は、これらに限定されるものではないが、それぞれ通
常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用
剤、坐剤、および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用できる。本発明の薬学組成物は、
薬学的に許容可能な担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与時に
は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、
香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化
剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤
、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学組成物の剤形は、
上述のような薬学的に許容される担体と混合して多様に製造可能である。例えば、経口投
与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、
シロップ、ウエハーなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アン
プルまたは多数回投薬の形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カ
プセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0069】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤、および希釈剤の例としては、ラクトース、デキス
トロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、
マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェ
ート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、未晶質セルロース、ポリ
ビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエー
ト、タルク、マグネシウムステアレート、または鉱物油などが使用できる。また、充填剤
、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などを追加的に含むことができる。
【0070】
本発明において、前記薬学組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、口
腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、
腸管、局所、舌下、または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。
【0071】
本発明において、前記「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢
内、胸骨内、硬膜内、病巣内、および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学
組成物はさらに、直腸投与のための坐剤の形態で投与される。
【0072】
本発明の前記薬学組成物は、使用された特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康
、性別、定式、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合、および予防または治療される特
定疾患の重度を含む様々な要因によって多様に変化することができ、前記薬学組成物の投
与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路、および期間によって異な
るが、当業者によって適切に選択可能であり、1日0.0001~50mg/kgまたは
0.001~50mg/kg投与することができる。投与は、1日に1回投与してもよく
、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するも
のではない。本発明に係る医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロッ
プ、スラリー、懸濁剤に剤形化される。
【0073】
本発明の他の実施形態によれば、癌を予防または治療するために、目的の個体に本発明
で提供する癌特異的エピトープがローディングされた抗原提示細胞;および/または活性
化されたT細胞を投与するステップを含む、癌の予防または治療方法に関する。
【0074】
本発明で提供する癌特異的エピトープがローディングされた抗原提示細胞または活性化
されたT細胞の投与量、スケジュール、および投与経路は、個体の大きさおよび条件によ
って、そして標準薬学的慣行によって決定可能である。例示的な投与経路は、静脈内、動
脈内、腹腔内、肺内、血管内、筋肉内、器官内、皮下、眼内、脊髄腔内、または経皮を含
む。
【0075】
個体に投与される細胞の用量は、例えば、投与される細胞の特定類型、投与経路、およ
び治療される癌の特定類型と病期によって異なる。前記量は、激しい毒性または有害な事
例なしに、癌に対する治療反応のような所望の反応をもたらすのに十分でなければならな
い。一部の実施形態において、投与される活性化されたT細胞または抗原提示細胞(例え
ば、樹状細胞)の量は、治療的有効量である。一部の実施形態において、細胞(例えば、
癌特異的エピトープがローディングされた樹状細胞または活性化されたT細胞)の量は、
治療前の同一の個体での相応する腫瘍の大きさ、癌細胞の数または腫瘍の成長速度と比較
して、または治療を受けていない他の個体での相応する活性と比較して、少なくとも約1
0%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、ま
たは100%のうちのいずれか1つの分だけ腫瘍の大きさを減少させるか、癌細胞の数を
減少させるか、腫瘍の成長速度を減少させるのに十分な量である。精製された酵素を用い
た試験管内検定、細胞ベース検定、動物モデル、または人体実験のような標準方法を用い
て効果の規模を測定することができる。
【0076】
本発明の一実施形態において、本発明の癌特異的エピトープがローディングされた抗原
提示細胞(例えば、樹状細胞)は、1×105~5×105、5×105~1×106、
1×106~2×106、2×106~3×106、3×106~4×106、4×10
6~5×106、5×106~6×106、6×106~7×106、7×106~8×
106、8×106~1×108、1×106~3×106、3×106~5×106、
5×106~7×106、2×106~4×106、1×106~5×106、または5
×106~1×107個のうちのいずれか1つの細胞/個体の投与量で投与されるが、こ
れに制限されるわけではない。
【0077】
本発明の他の実施形態において、本発明の癌特異的エピトープがローディングされた抗
原提示細胞(例えば、樹状細胞)は、1×104~5×104、5×104~1×105
、1×105~2×105、2×105~4×105、4×105~6×105、6×1
05~8×105、8×105~1×106、1×106~2×106、2×106~1
×107、1×104~1×105、1×105~1×106、1×106~1×107
、1×104~1×106、または1×105~1×107個のうちのいずれか1つの細
胞/kgの投与量で投与されるが、これに制限されるわけではない。
【0078】
また、本発明の一実施形態において、本発明の活性化されたT細胞は、1×108~5
×108、5×108~9×108、9×108~1×109、1×109~2×109
、2×109~3×109、3×109~4×109、4×109~5×109、5×1
09~6×109、6×109~1×1010、1×109~3×109、3×109~
5×109、5×109~7×109、7×109~1×1010、1×109~5×1
09、5×109~1×1010、3×109~7×109、1×1010~1.5×1
010、1×1010~2×1010、または1×109~1×1010個のうちのいず
れか1つの細胞/個体の投与量で投与されるが、これに制限されるわけではない。
【0079】
本発明の他の実施形態において、本発明の活性化されたT細胞は、1×107~1×1
08、1×108~2×108、2×108~4×108、4×108~6×108、6
×108~8×108、8×108~1×109、1×109~2×109、2×109
~4×109、4×109~1×1010、2×108~6×108、6×108~1×
109、1×108~2×108、2×108~2×109、1×107~1×108、
1×108~1×109、1×109~1×1010、または1×107~1×109個
のうちのいずれか1つの細胞/kgの投与量で投与されるが、これに制限されるわけでは
ない。
【0080】
本発明において、前記癌特異的エピトープがローディングされた抗原提示細胞(例えば
、樹状細胞)および/または活性化されたT細胞の投与時、ヒトアルブミンのような安定
化剤または賦形剤がともに使用できる。
【0081】
本発明において、前記癌特異的エピトープがローディングされた抗原提示細胞(例えば
、樹状細胞)および/または活性化されたT細胞の投与量および投与スケジュールは、投
与する医師の判断に基づいて治療過程にわたって調整可能である。一部の実施形態におい
て、活性化されたT細胞は、前記癌特異的エピトープがローディングされた抗原提示細胞
が投与され、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11
日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21
日、または1ヶ月後に投与されるか、前記抗原提示細胞と同時に投与されるが、これに制
限されるわけではない。
【0082】
本発明において、前記癌特異的エピトープがローディングされた抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)および/または活性化されたT細胞の投与時、単独でまたは他の療法、例えば、手術、放射線治療、遺伝子治療、免疫治療、骨髄移植、幹細胞移植、ホルモン療法、標的治療、冷凍療法、超音波治療、光線力学療法、化学療法などとともに行われる。追加的に、増殖性疾患が発病する危険がより大きい人は疾患の発病を抑制および/または遅延するための治療を受けることができる。
本発明の態様としては、例えば以下のものが挙げられる。
[1]
配列番号1~214のうちのいずれか1つで表される癌特異的ネオエピトープ。
[2]
前記癌特異的ネオエピトープは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、竄Q-マイクログロブリン、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRA1、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DM、HLA-DOA、およびHLA-DOB遺伝子座のうちの少なくとも1つと結合親和性を示すものである、[1]に記載の癌特異的ネオエピトープ。
[3]
前記癌特異的ネオエピトープは、HLA-A*2402およびHLA-A*A0201のうちの少なくとも1つと結合親和性を示すものである、[1]に記載の癌特異的ネオエピトープ。
[4]
前記癌は、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌である、[1]に記載の癌特異的ネオエピトープ。
[5]
前記癌は、配列番号1~214のうちのいずれか1つで表される癌特異的ネオエピトープを発現するものである、[4]に記載の癌特異的ネオエピトープ。
[6]
前記癌は、大腸癌、膵臓癌、胃癌、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、肺癌、非小細胞性肺癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血液癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、結腸癌、骨癌、皮膚癌、頭部癌、子宮癌、直腸癌、脳腫瘍、肛門付近癌、卵管癌、子宮内膜癌腫、膣癌、陰門癌腫、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、1次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫、または脳下垂体腺腫である、[5]に記載のEBV陰性胃癌特異的ネオエピトープ。
[7]
[1]~[6]のいずれか1に記載の癌特異的ネオエピトープをコーディングする核酸分子。
[8]
[7]に記載の核酸分子が挿入された発現ベクター。
[9]
[8]に記載の発現ベクターが形質感染した宿主細胞。
[10]
配列番号1~214のうちのいずれか1つで表される癌特異的ネオエピトープを含む、T細胞の活性化用組成物。
[11]
前記T細胞は、癌の予防または治療のためのものである、[10]に記載のT細胞の活性化用組成物。
[12]
前記T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、およびメモリーT細胞からなる群より選択された1種以上を含む、[10]に記載のT細胞の活性化用組成物。
[13]
配列番号1~214のうちのいずれか1つで表される癌特異的ネオエピトープがローディングされた抗原提示細胞。
[14]
前記抗原提示細胞は、樹状細胞、B細胞、およびマクロファージのうちの1種以上を含む、[13]に記載の抗原提示細胞。
[15]
前記抗原提示細胞は、T細胞の増殖または分化を促進する、[13]に記載の抗原提示細胞。
[16]
配列番号1~214のうちのいずれか1つで表される癌特異的ネオエピトープ;および樹状細胞特異的抗体またはその断片を含む融合タンパク質。
[17]
前記樹状細胞特異的抗体は、樹状細胞のDCIR、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、Clec9A、33D1、マンノース受容体、ランゲリン(Langerin)、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体、IL-2受容体、ICAM-1、Fcγ受容体、LOX-1、またはASPGRに特異的な抗体である、[16]に記載の融合タンパク質。
[18]
配列番号1~214のうちのいずれか1つで表される癌特異的ネオエピトープがローディングされた抗原提示細胞を製造する方法。
[19]
前記抗原提示細胞は、樹状細胞、B細胞、およびマクロファージのうちの1種以上を含む、[18]に記載の方法。
[20]
前記抗原提示細胞は、目的の個体の末梢血液由来の末梢血単核細胞(PBMC)から得られたものである、[18]に記載の方法。
[21]
前記ローディングは、前記抗原提示細胞を前記癌特異的ネオエピトープと接触させて行われる、[18]に記載の方法。
[22]
前記ローディングは、前記抗原提示細胞に前記癌特異的ネオエピトープをパルシング(pulsing)して行われる、[18]に記載の方法。
[23]
前記ローディングは、前記癌特異的ネオエピトープをコーディングする核酸分子が挿入された発現ベクターを前記抗原提示細胞にヌクレオフェクション(nucleofection)させて行われる、[18]に記載の方法。
[24]
前記ローディングは、前記癌特異的ネオエピトープ;および樹状細胞特異的抗体またはその断片を含む融合タンパク質を用いて行われる、[18]に記載の方法。
[25]
[13]~[15]のいずれか1に記載の抗原提示細胞によって活性化された、T細胞。
[26]
[13]~[15]のいずれか1に記載の抗原提示細胞によってT細胞を活性化する方法。
[27]
前記方法は、前記T細胞を前記抗原提示細胞と共培養して行われる、[26]に記載の方法。
[28]
前記T細胞は、目的の個体の末梢血単核細胞(PBMC)から得られたものである、[26]に記載の方法。
[29]
前記T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、およびメモリーT細胞からなる群より選択された1種以上を含む、[26]に記載の方法。
[30]
前記共培養時、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-21(IL-21)、またはこれらの組み合わせを添加して行われる、[27]に記載の方法。
[31]
前記共培養時、サイトカインおよび兔疫グロブリン重鎖不変部を含む融合タンパク質を添加して行われる、[27]に記載の方法。
[32]
前記サイトカインは、インターフェロン-γ(IFN-γ)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-12(IL-12)、IL-18、腫瘍壊死因子(TNF)、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)である、[31]に記載の方法。
[33]
前記共培養時、CD27、CXCR3、またはCD62Lのリガンド;および兔疫グロブリン重鎖不変部を含む融合タンパク質を添加して行われる、[27]に記載の方法。
[34]
[13]~[15]のいずれか1に記載の抗原提示細胞を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学組成物。
[35]
前記癌は、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌である、[34]に記載の薬学組成物。
[36]
[25]に記載の活性化されたT細胞を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学組成物。
[37]
前記癌は、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陰性癌である、請求項36に記載の薬学組成物。
【発明の効果】
【0083】
本発明で提供する癌特異的エピトープがローディングされた抗原提示細胞、すなわち、
樹状細胞を介して癌抗原特異的なT細胞、好ましくは、メモリーT細胞の分化および増殖
を迅速で効果的に誘導することができ、このように活性化されたメモリーT細胞は、癌細
胞の防御機序を避けて癌または腫瘍性状態を治療するか、癌の再発、進行または転移を予
防することができる。
【0084】
かつて養子(adoptive)T細胞治療において、癌患者治療のために多数のT細
胞を生産するために3~6ヶ月の長時間がかかり、免疫細胞治療における細胞生産工程で
大きな問題点があった。しかし、本発明による場合、患者の治療に使用しなければならな
い109の自己メモリーT細胞を3週以内に生産することができ、費用節減および外部汚
染源に対する感染危険要素を最小化することができる。したがって、本発明による場合、
より多くの固形癌患者に迅速な治療的接近が可能で、末期癌患者にも適用可能な技術であ
る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】本発明の一実施例により作製されたEBV陰性胃癌特異的自己メモリーT細胞(HLA-A2402)の抗原特異性を確認するために、IFNr ELISPOTによりEBV陰性胃癌抗原のネオエピトープ(10mer)がローディングされた樹状細胞で刺激したT細胞、刺激のない対照群細胞のうちIFNrを分泌する細胞の比率を確認した結果を示すものである。
【
図2】本発明の一実施例により作製されたEBV陰性胃癌特異的自己メモリーT細胞(HLA-A2402)の抗原特異性を確認するために、IFNr ELISPOTによりEBV陰性胃癌抗原のネオエピトープ(10mer)がローディングされた樹状細胞で刺激したT細胞、刺激のない対照群細胞のうちIFNrを分泌する細胞の比率を確認した結果を示すものである。
【
図3】本発明の一実施例により作製されたEBV陰性胃癌特異的自己メモリーT細胞(HLA-A0201)の抗原特異性を確認するために、IFNr ELISPOTによりEBV陰性胃癌抗原のネオエピトープ(10mer)がローディングされた樹状細胞で刺激したT細胞、刺激のない対照群細胞のうちIFNrを分泌する細胞の比率を確認した結果を示すものである。
【
図4】本発明の一実施例により作製されたEBV陰性胃癌特異的自己メモリーT細胞(HLA-A0201)の抗原特異性を確認するために、IFNr ELISPOTによりEBV陰性胃癌抗原のネオエピトープ(10mer)がローディングされた樹状細胞で刺激したT細胞、刺激のない対照群細胞のうちIFNrを分泌する細胞の比率を確認した結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
本発明の一実施形態によれば、配列番号1~214のうちのいずれか1つで表されるエ
プスタイン-バールウイルス(epstein barr virus;EBV)陰性癌
特異的ネオエピトープ(neo-epitope)に関する。
【0087】
本発明の他の実施形態によれば、本発明で提供する前記癌特異的ネオエピトープ(ne
o-epitope)がローディング(loading)された抗原提示細胞(anti
gen presenting cells、APC)に関する。
【0088】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗原提示細胞(Antige
n presenting cells)によって活性化されたT細胞に関する。
【0089】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープがローデ
ィングされた抗原提示細胞;および/または活性化されたT細胞を有効成分として含む抗
癌ワクチン、または癌の予防または治療用薬学組成物に関する。
【実施例0090】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をよ
り具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの
実施例によって制限されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明で
あろう。
【0091】
[実施例1]EBV陰性胃癌細胞に特異的な自己メモリーT細胞の作製方法および臨床
的適用
1.EBV陰性胃癌細胞抗原ネオエピトープの選別
胃癌細胞で遺伝子変異が蓄積された最も主なシーケンスを予測し、このシーケンスがT
細胞のHLAに結合するエピトープを予測するアルゴリズムは、Neopepseeを利
用して開発した。この時、ネオエピトープ予測アルゴリズムには、韓国人にとって最も多
く発現しているHLAタイプ(HLA-A2402、A0201)と結合親和性が高いと
予想されるペプチドシーケンスを発掘した。このために、現在、TCGAに存在するすべ
てのEBV陰性胃癌患者の全エキソームシーケンシングとRNAseqデータ分析により
mRNAに発現するミスセンス変異を予測した。各HLAタイプと発掘されたネオエピト
ープとの結合親和性は、NetMHCから得られたIC50値(nM)と、NetCTL
panから得られたMHC-ペプチド結合の順位ベース予測値(rank-based
predictive value)をすべて考慮し、追加的に、タンパク質切断、TC
R接触残基でアミノ酸の疎水性、アミノ酸の極性および荷電値と、分子サイズおよびペプ
チドのエントロピーをすべて考慮してNeopepseeの最終スコアが算定され、これ
によって、最終的に癌特異的ネオ-抗原の可能性を予測してネオエピトープを発掘した。
【0092】
下記表1~6は、韓国人にとって最も多く発現すると知られたHLA-A2402、H
LA-A0201を発現する患者のRNAseqデータを分析して、ネオエピトープと予
想されるシーケンスとシーケンスを発現する当該遺伝子、そして正常シーケンスを示し、
本シーケンスとHLAとの結合親和性を予測して、実際に細胞治療剤を作製する時に使用
可能なネオエピトープの種類を予測する表である。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
前記表1~3から明らかなように、インシリコ(in silico)予測により、H
LA-A2402に対して高い結合親和性を有するネオエピトープとして、AYNSIS
SEVI(配列番号45)(IC50=274nM)、TYQNDNKPEF(配列番号
42)(IC50=187nM)、FFYPCHPDVF(配列番号49)(IC50=
436nM)、VYNMPSTPSF(配列番号32)(IC50=38nM)、RYL
GPTDWQL(配列番号41)(IC50=159nM)、LMVIGIPFFF(配
列番号48)(IC50=404nM)を選定した。
【0100】
また、表4~6から明らかなように、HLA-A0201に対して高い結合親和性を有
するネオエピトープとしては、MLIDVLLIGV(配列番号122)(IC50=4
nM)、MMDRQMLPPV(配列番号123)(IC50=6nM)、LMWVCA
LGHL(配列番号173)(IC50=120nM)、GIVDIFLSFL(配列番
号174)(IC50=125nM)、AVFVICWTPI(配列番号213)(IC
50=448nM)、TLRVLLIVGV(配列番号214)(IC50=457nM
)を選定した。
【0101】
以下の実験のために前記のように選別したネオエピトープを、作製されたMHC-ペプ
チドマルチマー(multimer)(8、9、10mer)で合成した。これを用いて
患者由来のT細胞のうちこれを認知できる細胞を抽出し、この後、EBV陰性胃癌細胞抗
原特異的自己メモリーT細胞を作製した。
【0102】
2.選別されたネオエピトープがローディングされた樹状細胞で活性化されたT細胞の
ELISPOT結果
健康なヒトの血液から抽出したPBMCをフローサイトメトリーにより単核球(mon
ocyte)と白血球(leukocyte)に分離して、単核球は樹状細胞に分化させ
るために、GM-CSFとIL-4サイトカインを培養液に入れて、2日間培養した。ま
た、白血球の場合、抗-CD3/CD28抗体とともに3日間培養し、この後、IL-2
サイトカインをともに入れた培養液で培養した。樹状細胞に分化した単核球に、前記のよ
うに選別したネオエピトープペプチドをエレクトロポレーション法で樹状細胞に導入した
。この後、5日間培養して、樹状細胞の表面で前記ネオエピトープが発現することを確認
した後、抗CD3/CD28抗体が含まれた培養液で培養している白血球とともに1:2
0(樹状細胞:白血球)の比率で共培養した。共培養時、培養液には樹状細胞の抗原提示
機能の効能を増加させるサイトカインであるIL-4と、T細胞のメモリー細胞への転換
を補助する機能をするサイトカインであるIL-2とIL-7をともに入れたサイトカイ
ンカクテルを混ぜて培養した。16時間後、このように活性化されたT細胞のIFN-γ
の発現程度をELISPOTで測定して、その結果を
図1~4に示した。72時間共同培
養した後、樹状細胞を介して抗原が提示されたメモリーT細胞を選び出すために、IFN
rサイトカインを分泌するT細胞を抽出できる磁石を用いた細胞抽出機(MACS)を用
いてEBV抗原特異的メモリーT細胞を抽出した。抽出されたメモリーT細胞は、メモリ
ー機能を維持し、細胞の数を増加させるために、IL-2、IL-7、IL-15サイト
カインが混合された培養液で培養して、マウスに注入可能な細胞数に到達するまで培養し
た。ただし、対照群としては、刺激のないEBV陽性胃癌ペプチド(HLA-A3101
)を導入した細胞を使用した。
【0103】
その結果、Neopepseeにより予測されたネオエピトープペプチドがローディン
グされた樹状細胞とともに培養されたT細胞において、前記ペプチドのHLAに対する結
合親和性と関係なく、対照群に比べてIFNrの分泌がはるかに多いことを確認すること
ができた。
【0104】
これによって、本発明において、前記表1~6で、HLA-A2402またはHLA-
A0201に対して高い結合親和性を有するネオエピトープがローディングされた樹状細
胞によって細胞傷害性Tリンパ球(Cytotoxic T lymphocytes、
CTLs)を活性化させることができ、このように活性化されたT細胞は、新抗原である
ネオエピトープを認知できる抗原特異性を有することが分かった。
【0105】
以上、本発明の特定の部分を詳細に述べたが、当業界における通常の知識を有する者に
とってこのような具体的な記述は単に好ましい実施形態に過ぎず、そのため、本発明の範
囲が制限されるわけではない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、
添付した請求項とその等価物によって定義されるというべきである。