(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113873
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】編成列車の車上装置及び編成列車
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20230808BHJP
B61L 23/14 20060101ALI20230808BHJP
B60L 15/38 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B61L25/02 C
B61L23/14 C
B60L15/38
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094463
(22)【出願日】2023-06-08
(62)【分割の表示】P 2018108992の分割
【原出願日】2018-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌秀
(57)【要約】
【課題】列車制御システムが適用された路線において、営業運転中に列車の編成内容を状
況に応じて任意に変更することを可能とする。
【解決手段】列車(編成列車)1の車上装置は、先頭車両10に設置されて先頭車両の車
両長LC1を記憶し且つ地上装置と通信可能な第1車上装置11と、中間車両20に設置
されて中間車両20の車両長LC2を記憶し且つ第1車上装置11と通信可能な第2車上
装置21と、後尾車両30に設置されて後尾車両30の車両長LC3を記憶し且つ第1車
上装置11と通信可能な第3車上装置31を含む。第1車上装置11は、第2及び第3車
上装置21、31から中間車両20の車両長LC2及び後尾車両30の車両長LC3を受
信して列車1の列車長LT(=LC1+LC2+LC3+α)を算出するように構成され
ている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数車両からなる編成列車の車上装置であって、
先頭車両に設置され、自車両の車両長を記憶し且つ地上装置と通信可能なメイン装置と
、
それぞれが前記先頭車両以外の各車両に設置され、自車両の車両長を記憶し且つ前記メ
イン装置と通信可能な少なくとも一つのサブ装置と、
を含み、
前記メイン装置は、前記少なくとも一つのサブ装置から前記先頭車両以外の各車両の車
両長を受信して前記編成列車の列車長を算出する、
車上装置。
【請求項2】
隣り合う車両に設置された前記サブ装置同士又は前記メイン装置と前記サブ装置とが通
信線を介して接続され、
前記メイン装置と所定のサブ装置との間にある中間サブ装置は、前記メイン装置と前記
所定のサブ装置との間の通信を中継可能に構成されている、請求項1に記載の車上装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つのサブ装置は、前記メイン装置から送信された応答要求信号を受信
すると、自身の識別情報及び自列車の車両長を含む応答を前記メイン装置に送信するよう
に構成されている、請求項1又は2に記載の車上装置。
【請求項4】
前記メイン装置は、前記編成列車が走行路を走行する前に前記応答要求信号を送信し、
前記応答要求信号に対する応答に基づいて前記編成列車の列車長を算出すると共に前記編
成列車における前記少なくとも一つのサブ装置の存在を把握する、請求項3に記載の車上
装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つのサブ装置は、前記応答要求信号を受信すると、さらに自列車の識
別情報を含む前記応答を前記メイン装置に送信するように構成され、
前記メイン装置は、前記応答要求信号に対する応答に基づいて前記編成列車の編成内容
を把握し、把握された前記編成列車の編成内容を前記地上装置に送信するように構成され
ている、請求項4に記載の車上装置。
【請求項6】
前記メイン装置は、前記編成列車が前記走行路を走行している間、定期的に前記応答要
求信号を送信し、把握されたサブ装置のうち前記応答要求信号に応答しないサブ装置があ
る場合には当該サブ装置が故障していると判断し、前記応答要求信号に応答しないサブ装
置を特定する情報を含む故障発生信号を前記先頭車両に設けられた運転台及び前記地上装
置の少なくとも一方に送信する、請求項4又は5に記載の車上装置。
【請求項7】
前記メイン装置は、前記編成列車が前記走行路を走行している間、定期的に前記応答要
求信号を送信し、把握されたサブ装置のうち前記応答要求信号に応答しないサブ装置があ
る場合であっても前記編成列車が路線を走行する前に算出された前記編成列車の列車長を
そのまま維持する、請求項4~6のいずれか一つに記載の車上装置。
【請求項8】
前記編成列車の先頭車両及び後尾車両には、それぞれ前記走行路に設置された地上子上
を通過する際に当該地上子と通信する車上子が設けられており、
前記メイン装置は、前記先頭車両に設けられた車上子が地上子と通信してから前記後尾
車両に設けられた車上子が同じ地上子と通信するまでの経過時間と前記編成列車の走行速
度とに基づいて検証用列車長を算出し、算出された検証用列車長と前記編成列車が前記走
行路を走行する前に算出された前記編成列車の列車長とを比較し、両者の差が所定値以上
ある場合には前記編成列車を停止させ又はあらかじめ設定された指定速度まで減速させる
と共に異常検出信号を前記先頭車両に設けられた運転台及び前記地上装置の少なくとも一
方に送信する、請求項4~7のいずれか一つに記載の車上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上装置とともに列車制御システムを構成する車上装置に関し、特に複数の
車両が連結されて形成(構成)される編成列車の車上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から列車の路線には列車制御システムが適用されている。このような列車制御シス
テムは、列車に搭載された車上装置が地上に設置された地上装置から提供される列車制御
情報に基づいて前記列車を制御し、これによって、前記路線における列車走行の安全性を
確保している。
【0003】
従来の列車制御システムの一例として特許文献1に記載された列車制御システムが知ら
れている。特許文献1に記載された列車制御システムは、いわゆる移動閉塞システムであ
って、列車の先頭位置を算出すると共に算出された先頭位置に前記列車の列車長を足した
長さを前記列車の在線位置として管理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の列車制御システムの多くは、管理対象となる各列車の列車長を算出する機能を有
しておらず、前記各列車に対応してあらかじめ設定された設定値を前記各列車の列車長と
して使用するのが一般的である。ここで、実際の列車長が対応する設定値と大きく異なる
列車が一つでもあると、そのような列車の在線位置が正確に把握されず、その結果、列車
走行の安全性が確保できなくなってしまう。このため、従来の列車制御システムでは営業
運転中における列車の編成内容の変更は制限されており、列車の編成内容を状況などに応
じて任意に変更することはできなかった。
【0006】
そこで、本発明は、列車制御システムが適用された路線において、営業運転中に列車の
編成内容を状況に応じて任意に変更することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、複数車両からなる編成列車の車上装置は、先頭車両に設置さ
れ、自車両の車両長を記憶し且つ地上装置と通信可能なメイン装置と、それぞれが前記先
頭車両以外の各車両に設置され、自車両の車両長を記憶し且つ前記メイン装置と通信可能
な少なくとも一つのサブ装置と、を含む。そして、前記メイン装置は、前記少なくとも一
つのサブ装置から前記先頭車両以外の各車両の車両長を受信して前記編成列車の列車長を
算出する。
【発明の効果】
【0008】
前記車上装置において、前記編成列車の先頭車両に設置されて前記地上装置と通信可能
な前記メイン装置は、前記先頭車両以外の各車両に設置された少なくとも一つのサブ装置
から前記各車両の車両長を受信して前記編成列車の列車長を算出するように構成されてい
る。このため、前記編成列車の編成内容が変更された場合であっても、前記メイン装置は
変更後の列車長を算出すると共に、算出された列車長又はこれを含む情報を前記地上装置
に送信することができる。つまり、列車制御システムは編成内容が変更された後の列車長
を把握した上で列車制御を行うことができる(すなわち、編成内容が変更された後の列車
長が列車制御システムにおいて共有され得る)。したがって、列車制御システムが適用さ
れた路線において営業運転中に列車の編成内容を状況に応じて任意に変更することが可能
になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明が適用された列車制御システムの一例の概略構成図である。
【
図3】前記列車が走行路を走行する前における前記列車制御システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図4】前記列車が走行路を走行する前に算出された前記列車の列車長の検証処理を示すフローチャートである。
【
図5】他の列車(編成列車)の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明が適用された列車制御システムの一例の概略構成図である。
図1に示さ
れた列車制御システムにおいて、列車1は、走行路2上を
図1中の矢印方向に走行する。
地上には、複数の地上子3がそれぞれ走行路2上の異なる位置に設置され、複数の地上無
線機4が走行路2に沿って互いに所定の間隔をあけて設置されている。また、複数の地上
無線機4のそれぞれは通信線を介して地上装置5に接続されている。
【0011】
図2は、列車1の構成を示す図である。列車1は、複数の車両が連結されて形成(構成
)された編成列車である。本実施形態において、列車1は、先頭車両10と中間車両20
と後尾車両30とで構成されている。なお、本実施形態においては、先頭車両10及び後
尾車両30に駆動装置とブレーキ装置(いずれも図示省略)が設けられ、中間車両20に
はブレーキ装置(図示省略)のみが設けられているものとする。但し、これに限られるも
のではない。
【0012】
本実施形態において、先頭車両10には第1車上装置11、第1車上子12、速度発電
機13、データベース14、車上無線機15及び運転台16が設置され、中間車両20に
は第2車上装置21が設置され、後尾車両30には第3車上装置31及び第2車上子32
が設置されている。なお、第1車上装置11が本発明の「メイン装置」に相当し、第2車
上装置21及び第3車上装置31がそれぞれ本発明の「サブ装置」に相当する。
【0013】
第1車上装置11、第2車上装置21及び第3車上装置31のそれぞれは、信号や情報
の送受信を行う通信部(図示省略)と、各種処理を実行する制御部(図示省略)と、自身
に関する情報及び自身が設置された列車(自列車)に関する情報とを記憶している記憶部
(図示省略)と、を有している。
【0014】
本実施形態において、第1車上装置11の記憶部は、第1車上装置11の識別情報(装
置ID1)、先頭車両10の識別情報(車両ID1)及び先頭車両10の車両長LC1を
記憶している。第2車上装置21の記憶部は、第2車上装置21の識別情報(装置ID2
)と、中間車両20の識別情報(車両ID2)及び中間車両20の車両長LC2を記憶し
ている。第3車上装置31の記憶部は、第3車上装置31の識別情報(装置ID3)、後
尾車両30の識別情報(車両ID3)及び後尾車両30の車両長LC3を記憶している。
【0015】
第1車上装置11と第2車上装置21とは、先頭車両10と中間車両20とが連結され
たときに通信線41を介して互いに接続され、第2車上装置21と第3車上装置とは、中
間車両20と後尾車両30とが連結されたときに通信線42を介して互いに接続される。
ここで、第2車上装置21の通信部は、信号や情報の中継機能を有する。したがって、第
1車上装置11は、第2車上装置21及び第3車上装置31のそれぞれに信号や情報を送
信することができると共に、第2車上装置21及び第3車上装置31のそれぞれから信号
や情報を受信することができる。
【0016】
また、第1車上装置11は、車上無線機15に接続されている。したがって、第1車上
装置11は、車上無線機15及び複数の地上無線機4のいずれか(以下単に「地上無線機
4」という)を介して地上装置5に信号や情報を送信することができると共に、地上無線
機4及び車上無線機15を介して地上装置5から信号や情報を受信することができる。
【0017】
第1車上子12は先頭車両10の先頭下部に配置され、第2車上子32は後尾車両30
の後尾下部に配置されている。第1車上子12及び第2車上子32は、地上子3の上方を
通過する際に地上子3と通信して地上子3から識別情報(地上子ID)を取得するように
構成されている。第1車上子12は、地上子3から地上子IDを取得すると、取得された
地上子IDを第1車上装置11に出力する。第2車上子32は、地上子3から地上子ID
を取得すると、取得された地上子IDを第3車上装置31に出力する。また、第3車上装
置31は、第2車上子32から地上子IDを入力すると、入力された地上子IDを第1車
上装置11に出力する。
【0018】
速度発電機13は、先頭車両10の車軸に取り付けられている。速度発電機13は、前
記車軸(すなわち、車輪)の回転速度に応じた信号を出力するように構成されている。速
度発電機13の出力信号は、第1車上装置11に出力され、第1車上装置11が列車(編
成列車)1の走行速度や走行距離を算出するために使用される。
【0019】
データベース14には、列車1の制御に必要な各種情報が格納されている。前記各種情
報は、走行路2に関するデータ(曲線情報、勾配情報、制限速度情報、地上子IDに対応
する位置情報など)を含む。
【0020】
運転台16には、各種情報を表示する表示部(図示省略)や運転士が操作する操作部(
図示省略)などが設けられている。
【0021】
次に、前記列車制御システムの動作(主に地上装置5、第1車上装置11、第2車上装
置21及び第3車上装置31の動作)について、列車1が走行路2を走行する前と列車1
が走行路2での走行を開始した後とに分けて説明する。
【0022】
[列車1が走行路2を走行する前]
本実施形態において、第1車上装置11は、列車1が走行路2を走行する前、例えば走
行路2において列車1に電源が供給されたときに、列車1の列車長LTを算出するように
構成されている。ここで、前記「走行路2において列車1に電源が供給されたとき」は、
走行路2上での車両連結によって列車1が形成された場合における当該連結後に電源が供
給されたとき、及び、走行路2での車両分離によって列車1が形成された場合における当
該分離後に電源が供給されたときを含む。また、列車1に電源が供給されることにより、
第1車上装置11、第2車上装置21及び第3車上装置31が起動するものとする。
【0023】
図3は、列車1が走行路2を走行する前における前記列車制御システムの動作の一例を
示すシーケンス図である。なお、
図3は、列車1に電源が供給されて第1車上装置11、
第2車上装置21及び第3車上装置31が起動した直後における前記列車制御システムの
動作を示している。
【0024】
まず、第1車上装置11が起動すると、第1車上装置11は応答要求信号を送信する(
S1)。第1車上装置11から送信された前記応答要求信号は、通信線41を介して第2
車上装置21へと送られると共に、通信線41、第2車上装置21及び通信線42を介し
て第3車上装置31へと送られる。
【0025】
第2車上装置21は、前記応答要求信号を受信すると、第2車上装置21の識別情報(
装置ID2)、中間車両20の識別情報(車両ID2)及び中間車両20の車両長LC2
を含む応答信号を第1車上装置11に送信し(S2)、前記応答要求信号を受信した第3
車上装置31は、第3車上装置31の識別情報(装置ID3)、後尾車両30の識別情報
(車両ID3)及び後尾車両30の車両長LC3を含む応答信号を第1車上装置11に送
信する(S3)。
【0026】
第1車上装置11は、前記応答要求信号に対する応答、すなわち、第2車上装置21の
前記応答信号及び第3車上装置31の前記応答信号を受信すると、列車1の編成内容及び
列車1における自身以外の他の車上装置(すなわち、第2車上装置21及び第3車上装置
31)の存在を把握する(S4)。
【0027】
具体的には、本実施形態において、第1車上装置11は、車両ID1を有する自車両(
すなわち、先頭車両10)と、車両ID2を有する他の車両(中間車両20)と、車両I
D3を有するさらに他の車両(後尾車両30)とによって列車1が形成(構成)されてい
ること、装置ID2を有する第2車上装置21及び装置ID3を有する第3車上装置31
とが自身(すなわち、第1車上装置11)以外に存在すること、及び、装置ID2を有す
る第2車上装置21が車両ID2を有する車両(中間車両20)に設置されていると共に
装置ID3を有する第3車上装置31が車両ID3を有する車両(後尾車両30)に設置
されていること、を把握する。
【0028】
また、第1車上装置11は、前記応答要求信号に対する応答、すなわち、第2車上装置
21の前記応答信号及び第3車上装置31の前記応答信号に基づいて、列車1の列車長L
Tを下式により算出する(S5)。
LT=LC1+LC2+LC3+α
ここで、αは、車両間の隙間を考慮した補正値であり、例えば連結される車両数(ここ
で三つ)に応じて設定される。
【0029】
次いで、第1車上装置11は、把握された列車1の編成内容及び算出された列車1の列
車長LTを含む信号を車上無線機15及び地上無線機4を介して地上装置5に送信する(
S6)。これにより、地上装置5は、車両ID1を有する車両と車両ID2を有する車両
と車両ID3を有する車両とで形成(構成)され且つ列車長LTを有する列車1が走行路
2上に存在することを把握する(S7)。
【0030】
次いで、地上装置5は、地上無線機4及び車上無線機15を介して第1車上装置11に
走行許可信号を送信する(S8)。
【0031】
第1車上装置11は、前記走行許可信号を受信すると、先頭車両10に設けられたブレ
ーキ装置を解除する(S9)。また、第1車上装置11は、第2車上装置21及び第3車
上装置31にブレーキ解除信号を出力し(S10)、第2車上装置21を介して中間車両
20に設けられたブレーキ装置を解除すると共に(S11)、第3車上装置31を介して
後尾車両30に設けられたブレーキ装置を解除する(S12)。これにより、列車1が走
行可能な状態になり、列車1は所定の低速で走行路2での走行を開始する。
【0032】
[列車1が走行路2での走行を開始した後]
(1)列車長の検証
第1車上装置11は、列車1が走行路2での走行を開始した後、列車1が走行路2を走
行する前に算出された列車1の列車長LT(
図3のS5参照)の検証を行うように構成さ
れている。本実施形態において、第1車上装置11は、列車1が最初に地上子3上を通過
する際に列車1の列車長LTの検証を行う。
【0033】
図4は、第1車上装置11が行う列車長LTの検証処理を示すフローチャートである。
このフローチャートは、第1車上子12が地上子3と通信すると、すなわち、第1車上子
12から地上子IDが入力されると開始される。
【0034】
図4において、ステップS21では、検証用列車長LT_Vを算出する。具体的には、
第1車上装置11は、第1車上子12が地上子3と通信してから第2車上子32が同じ地
上子3と通信するまでの経過時間及び列車1の走行速度に基づいて、すなわち、第1車上
子12から地上子IDが入力されてから第3車上装置31から同一の地上子IDが入力さ
れるまでの経過時間及び列車1の走行速度に基づいて検証用列車長LT_Vを算出する。
【0035】
ステップS22では、ステップS21で算出された検証用列車長LT_Vと列車1が走
行路2を走行する前に算出された列車1の列車長LT(
図3のS5参照)とを比較する。
そして、検証用列車長LT_Vと列車長LTとの差(絶対値)が所定値未満であれば、ス
テップS23に進み、列車1の列車長LTが正しいと判定する(正常判定)。この場合、
第1車上装置11は後述する通常動作を行う。
【0036】
一方、検証用列車長LT_Vと列車長LTとの差が前記所定値以上であれば、ステップ
S24に進み、列車1の列車長LTが異常であると判定する(異常判定)。そして、ステ
ップS25において列車1を停止させると共に、ステップS26において異常検出信号を
先頭車両10に設けられた運転台16に送信し及び/又は車上無線機15と地上無線機4
とを介して地上装置5に送信し、列車1の運転士及び/又は前記列車制御システムの管理
者に対処を促す。
【0037】
(2)通常動作
第1車上装置11は、第1車上子12から入力される地上子IDに対応する位置情報と
速度発電機13の出力信号とに基づいて列車1の先頭位置を算出し、算出された先頭位置
に列車1の列車長LTを加算して列車1の在線位置を算出する。そして、第1車上装置1
1は、算出された列車1の在線位置を列車1の位置情報として車上無線機15及び地上無
線機4を介して地上装置5に送信する。
【0038】
地上装置5は、走行路2を走行している各列車(の車上装置)から各列車の位置情報を
受信し、走行路2を走行している各列車の在線位置を把握し管理する。そして、地上装置
5は、各列車の先行列車の在線位置などに基づいて各列車の列車制御情報を生成し、生成
された前記列車制御情報を前記各列車の車上装置に送信する。例えば、地上装置5は、列
車1の先行列車の在線位置に基づいて列車1の停止限界を含む列車1の列車制御情報を生
成し、生成された列車1の列車制御情報を地上無線機4及び車上無線機15を介して第1
車上装置11に送信する。
【0039】
第1車上装置11は、地上装置5から列車1の列車制御情報を受信すると、受信された
列車制御情報及びデータベース14に格納された情報に基づいて速度照査パターンを生成
し、生成された前記速度照査パターンにしたがって列車1の速度を制御する。すなわち、
第1車上装置11は、前記速度照査パターンと列車1の位置とからその時点での列車1の
許容速度を求め、列車1の走行速度が前記許容速度を超えないように列車1のブレーキ装
置を制御する。具体的には、本実施形態において、第1車上装置11は、先頭車両10に
設けられたブレーキ装置を動作させると共に、必要に応じて第2車上装置21及び/又は
第3車上装置31にブレーキ指令を出力し、第2車上装置21を介して中間車両20に設
けられたブレーキ装置を動作させ及び/又は第3車上装置31を介して後尾車両30に設
けられたブレーキ装置を動作させる。
【0040】
(3)故障診断
第1車上装置11は、列車1が走行路2を走行している間、定期的に前記応答要求信号
を送信し、列車1が走行路2を走行する前に把握された前記他の車上装置(すなわち、第
2及び第3車上装置21、31、
図3のS4参照)のうち前記応答要求信号に応答しない
車上装置があるか否かを判定する。
【0041】
前記応答要求信号に応答しない車上装置がある場合、第1車上装置11は、前記応答要
求信号に応答しない車上装置が故障していると判断する。そして、第1車上装置11は、
前記応答要求信号に応答しない車上装置(すなわち、故障している車上装置)を特定する
情報を含む故障発生信号を運転台16に送信し及び/又は車上無線機15と地上無線機4
とを介して地上装置5に送信し、列車1の運転士及び/又は前記列車制御システムの管理
者に対処を促す。
【0042】
例えば第2車上装置21が前記応答要求信号に応答しない場合、第1車上装置11は、
第2車上装置21が故障していると判断し、第2車上装置21の識別情報(装置ID2)
及び/又は第2車上装置21が設置されている中間車両20の識別情報(車両ID2)を
含む前記故障発生信号を生成し、生成された前記故障発生信号を運転台16及び/又は地
上装置5に送信する。
【0043】
ここで、第1車上装置11は、前記応答要求信号に応答しない車上装置がある場合であ
っても、列車1が走行路2を走行する前に算出された列車1の列車長LTをそのまま維持
し、列車1が走行路2を走行している間、列車1の列車長LTを用いて列車1の在線位置
を算出する。
【0044】
以上のように、本実施形態において、列車(編成列車)1の先頭車両10に設置された
第1車上装置11は、先頭車両10以外の各車両(中間車両20、後尾車両30)に設置
された少なくとも一つの車上装置(第2車上装置21、第3車上装置31)から前記各車
両の列車長を受信して、列車1の列車長LTを算出するように構成されている。具体的に
は、第1車上装置11は、前記各車両に設置された前記少なくとも一つの車上装置に応答
要求信号を送信すると共に、前記応答要求信号に対する応答に含まれた前記各車両の列車
長を用いて列車1の列車長LTを算出するように構成されている。
【0045】
このため、列車1の編成内容が変更された場合(例えば、中間車両20が削除され又は
他の中間車両が追加された場合)であっても、第1車上装置11は、編成内容が変更され
た後の列車長を算出することができる。また、第1車上装置11は、編成内容が変更され
た後の前記列車長又はこれを含む情報を車上無線機15及び地上無線機4を介して地上装
置5に送信することができる。したがって、編成内容が変更された後の前記列車長が前記
列車制御システムにおいて共有され、前記列車制御システムは、編成内容が変更された後
の前記列車長を把握した上で列車制御を行うことができる。この結果、列車制御システム
が適用された路線(走行路2)において営業運転中に列車1の編成内容を状況に応じて任
意に変更することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態において、列車(編成列車)1の先頭車両10に設置された第1車上
装置11は、列車1が走行路2を走行する前に列車1の列車長LTを算出すると共に、列
車1が走行路2での走行を開始した後に列車1の列車長LTの検証を行うように構成され
ている。具体的には、第1車上装置11は、第1車上子12が地上子3と通信してから第
2車上子32が同じ地上子3と通信するまでの経過時間及び列車1の走行速度に基づいて
検証用列車長LT_Vを算出し、検証用列車長LT_Vと列車長LTとの差が前記所定値
以上である場合には異常判定を行って列車1を停止させるようにしている。このため、走
行路2における列車走行の安全性が確保され得る。
【0047】
なお、上述の実施形態において、第1車上装置11は、把握された列車1の編成内容及
び算出された列車1の列車長LTを含む信号を車上無線機15及び地上無線機4を介して
地上装置5に送信している(
図3のS6)。しかし、これに限られるものではない。列車
1が走行路2を走行する前において、第1車上装置11は、把握された列車1の編成内容
のみを地上装置5に送信してもよい。
【0048】
また、上述の実施形態において、第1車上装置11は、列車1が走行路2での走行を開
始した後、列車1が最初に地上子3上を通過する際に、列車1が走行路2を走行する前に
算出された列車1の列車長LTの検証を行うようにしている。しかし、これに限られるも
のではない、第1車上装置11は、列車1が地上子3上を通過する度に列車1の列車長L
Tの検証を行うようにしてもよい。
【0049】
また、上述の実施形態において、第1車上装置11は、検証用列車長LT_Vと列車長
LTとの差が前記所定値以上である場合に列車1を停止させるようにしている。しかし、
これに限られるものではない。第1車上装置11は、検証用列車長LT_Vと列車長LT
との差が前記所定値以上である場合に列車1をあらかじめ設定された指定速度まで減速さ
せるようにしてもよい。
【0050】
また、上述の実施形態において、第1車上装置11と第2車上装置21とは通信線41
を介して接続され、第2車上装置21と第3車上装置31とは通信線42を介して接続さ
れている。しかし、これに限られるものではない。第1車上装置11、第2車上装置21
及び第3車上装置31が無線により信号や情報の送受信を行うように構成されてもよい。
【0051】
さらに、
図5に示されるように、後尾車両30が先頭車両10と同様の構成を有しても
よい。すなわち、第3車上装置31及び第2車上子32に加えて、速度発電機13、デー
タベース14、車上無線機15及び運転台16が後尾車両30に設置されてもよい。この
ようにすると、列車1が矢印A方向に走行する場合には、上述の実施形態と同様に、第1
車上装置11が本発明の「メイン装置」して機能し、列車1が矢印B方向に走行する場合
には、第3車上装置31が本発明の「メイン装置」として機能し得るので便宜である。
【0052】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態
や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が
可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…列車、2…走行路、3…地上子、4…地上無線機、5…地上装置、10…先頭車両
、11…第1車上装置(メイン装置)、12…第1車上子、13…速度発電機、14…デ
ータベース、15…車上無線機、16…運転台、20…中間車両、21…第2車上装置(
サブ装置)、30…後尾車両、31…第3車上装置、32…第2車上子
【手続補正書】
【提出日】2023-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数車両からなる編成列車の車上装置であって、
所定車両に設置されて自車両の車両長を記憶したメイン装置と前記所定車両以外の車両に設置されて自車両の車両長を記憶した少なくとも一つのサブ装置とを含み、
前記メイン装置は、地上装置及び前記少なくとも一つのサブ装置と通信可能であり、前記編成列車の走行前に前記少なくとも一つのサブ装置から車両長を受信し、受信された車両長と車両数に応じた補正値とに基づき前記編成列車の列車長を算出し、算出された列車長を前記地上装置に送信し、当該列車長の前記地上装置への送信後に前記地上装置から走行許可信号を受信すると前記編成列車を走行可能とする、
車上装置。
【請求項2】
前記メイン装置は、前記編成列車が走行して地上子を通過すると検証用列車長を算出し、算出された検証用列車長と走行前に算出された前記列車長との差が所定値未満であるか否かで正常/異常判定を行う、請求項1に記載の車上装置。
【請求項3】
複数車両からなる編成列車の車上装置であって、
所定車両に設置されて自車両の車両長を記憶したメイン装置と前記所定車両以外の車両に設置されて自車両の車両長を記憶した少なくとも一つのサブ装置とを含み、
前記メイン装置は、地上装置及び前記少なくとも一つのサブ装置と通信可能であり、前記編成列車の走行前に前記少なくとも一つのサブ装置から車両長を受信して前記編成列車の列車長を算出し、算出された列車長を前記地上装置に送信し、当該列車長の前記地上装置への送信後に前記地上装置から走行許可信号を受信すると前記編成列車を走行可能とする一方、前記編成列車が走行して地上子を通過すると検証用列車長を算出し、算出された検証用列車長と走行前に算出された前記列車長との差が所定値未満であるか否かで正常/異常判定を行う、
車上装置。
【請求項4】
前記地上子は、走行を開始した前記編成列車が最初に通過する地上子である、請求項2又は3に記載の車上装置。
【請求項5】
前記編成列車の先頭車両及び後尾車両には、それぞれ前記地上子上を通過する際に当該地上子と通信する車上子が設けられており、
前記メイン装置は、前記先頭車両に設けられた車上子が地上子と通信してから後尾車両に設けられた車上子が同じ地上子と通信するまでの経過時間と、前記編成列車の速度とに基づいて前記検証用列車長を算出する、請求項2~4のいずれか一つに記載の車上装置。
【請求項6】
前記メイン装置は、前記検証用列車長と走行前に算出された前記列車長との差が所定値以上である場合に異常があると判定し、前記編成列車を停止させ又はあらかじめ設定された指定速度まで減速させる、請求項2~5のいずれか一つに記載の車上装置。
【請求項7】
複数車両からなる編成列車であって、
各車両には自車両の車両長を記憶し且つ各車両が連結されると互いに通信可能に接続される車上装置が設置されており、
所定車両の車上装置は、地上装置と通信可能であり、前記所定車両以外の車両の車上装置から車両長を受信し、受信された車両長と車両数に応じた補正値とに基づき前記編成列車の列車長を算出し、算出された列車長を前記地上装置に送信し、当該列車長の前記地上装置への送信後に前記地上装置から走行許可信号を受信すると前記編成列車を走行可能とする、
編成列車。
【請求項8】
複数車両からなる編成列車であって、
各車両には自車両の車両長を記憶し且つ各車両が連結されると互いに通信可能に接続される車上装置が設置されており、
所定車両の車上装置は、地上装置と通信可能であり、前記所定車両以外の車両の車上装置から車両長を受信して前記編成列車の列車長を算出し、算出された列車長を前記地上装置に送信し、当該列車長の前記地上装置への送信後に前記地上装置から走行許可信号を受信すると前記編成列車を走行可能とし、前記編成列車が走行して地上子を通過することで算出される検証用列車長と走行前に算出された前記列車長との差が所定値未満であるか否かで正常/異常判定を行う、
編成列車。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、編成列車の車上装置及び編成列車に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一側面によると、複数車両からなる編成列車の車上装置は、所定車両に設置されて自車両の車両長を記憶したメイン装置と前記所定車両以外の車両に設置されて自車両の車両長を記憶した少なくとも一つのサブ装置とを含み、前記メイン装置は、地上装置及び前記少なくとも一つのサブ装置と通信可能であり、前記編成列車の走行前に前記少なくとも一つのサブ装置から車両長を受信し、受信された車両長と車両数に応じた補正値とに基づき前記編成列車の列車長を算出し、算出された列車長を前記地上装置に送信し、当該列車長の前記地上装置への送信後に前記地上装置から走行許可信号を受信すると前記編成列車を走行可能とする。
本発明の他の側面によると、複数車両からなる編成列車の車上装置は、所定車両に設置されて自車両の車両長を記憶したメイン装置と前記所定車両以外の車両に設置されて自車両の車両長を記憶した少なくとも一つのサブ装置とを含み、前記メイン装置は、地上装置及び前記少なくとも一つのサブ装置と通信可能であり、前記編成列車の走行前に前記少なくとも一つのサブ装置から車両長を受信して前記編成列車の列車長を算出し、算出された列車長を前記地上装置に送信し、当該列車長の前記地上装置への送信後に前記地上装置から走行許可信号を受信すると前記編成列車を走行可能とする一方、前記編成列車が走行して地上子を通過すると検証用列車長を算出し、算出された検証用列車長と走行前に算出された前記列車長との差が所定値未満であるか否かで正常/異常判定を行う。
本発明のさらに他の側面によると、複数車両からなる編成列車の各車両には自車両の車両長を記憶し且つ各車両が連結されると互いに通信可能に接続される車上装置が設置されており、所定車両の車上装置は、地上装置と通信可能であり、前記所定車両以外の車両の車上装置から車両長を受信して受信された車両長と車両数に応じた補正値とに基づき前記編成列車の列車長を算出し、算出された列車長を前記地上装置に送信し、当該列車長の前記地上装置への送信後に前記地上装置から走行許可信号を受信すると前記編成列車を走行可能とする。
本発明のさらに他の側面によると、複数車両からなる編成列車の各車両には自車両の車両長を記憶し且つ各車両が連結されると互いに通信可能に接続される車上装置が設置されており、所定車両の車上装置は、地上装置と通信可能であり、前記所定車両以外の車両の車上装置から車両長を受信して前記編成列車の列車長を算出し、算出された列車長を前記地上装置に送信し、当該列車長の前記地上装置への送信後に前記地上装置から走行許可信号を受信すると前記編成列車を走行可能とし、前記編成列車が走行して地上子を通過することで算出される検証用列車長と走行前に算出された前記列車長との差が所定値未満であるか否かで正常/異常判定を行う。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
前記編成列車の所定車両(例えば先頭車両)に設置されて前記地上装置と通信可能な車上装置(前記メイン装置)は、前記所定車両以外の車両に設置された少なくとも一つの車上装置(サブ装置)から車両長を受信して前記編成列車の列車長を算出し、算出された列車長を前記地上装置に送信するように構成されている。このため、前記編成列車の編成内容が変更された場合であっても、列車制御システムは編成内容が変更された後の列車長を把握した上で列車制御を行うことができる(すなわち、編成内容が変更された後の列車長が列車制御システムにおいて共有され得る)。したがって、列車制御システムが適用された路線において営業運転中に列車の編成内容を状況に応じて任意に変更することが可能になる。