(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113890
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】非燃焼加熱型香味吸引物品、及び、電気加熱型香味吸引システム
(51)【国際特許分類】
A24D 1/20 20200101AFI20230808BHJP
A24D 1/02 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A24D1/20
A24D1/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094959
(22)【出願日】2023-06-08
(62)【分割の表示】P 2021519342の分割
【原出願日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2019090766
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 成美
(72)【発明者】
【氏名】塘 健夫
(72)【発明者】
【氏名】本溜 哲也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】たばこ充填材を取り囲むラッパーに生じる染みを低減した非燃焼加熱型香味吸引物品を提供する。
【解決手段】非燃焼加熱型香味吸引物品は、たばこ充填物と揮発性香料とを含むたばこ充填材と、前記たばこ充填材を取り囲むラッパーと、を有するたばこ部を備える。ラッパーは、基材シートと、基材シートのたばこ充填材に当接する面に設けられる非金属のコーティング層と、を有するとともに、拡散係数の上限値は0.022cm/sと0.10cm/sとの間にある。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ充填物と、揮発性香料と、を含むたばこ充填材と、
前記たばこ充填材を取り囲むラッパーと、
を有するたばこ部を備え、
前記ラッパーの拡散係数は0cm/s以上であり、前記拡散係数の上限値は0.022cm/sと0.10cm/sとの間にある、非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項2】
前記ラッパーの前記拡散係数は、0cm/sから0.022cm/sである、請求項1に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項3】
前記ラッパーは、前記拡散係数の紙製及び/又は不織布製の基材シートを有する、請求項1又は請求項2に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項4】
前記ラッパーは、紙製及び/又は不織布製の基材シートと、前記基材シートに設けられる非金属のコーティング層と、を有し、
前記拡散係数は、前記基材シート及び前記コーティング層により規定される、請求項1又は請求項2に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項5】
前記基材シートは、紙製又は不織布製の第1シートと、紙製又は不織布製の第2シートとを有し、
前記コーティング層は、前記第1シートと前記第2シートとの間に挟まれている、請求項4に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項6】
前記コーティング層は、前記基材シートのうち前記たばこ充填材に当接する面に設けられている、請求項4に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項7】
前記コーティング層は、樹脂、増粘剤、又はこれらの混合物を含む、請求項4に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項8】
前記樹脂は、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体又はポリ酢酸ビニルである、請求項7に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項9】
前記増粘剤は、アラビアガム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項7に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項10】
前記コーティング層は、填料を更に含む、請求項4に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項11】
前記填料は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、微結晶セルロース、カオリン、タルク、又は、シリカである、請求項10に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項12】
前記揮発性香料は、l-メントールである、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項13】
前記たばこ充填材は、前記たばこ充填物の重量に対して1.2重量%以上の前記揮発性香料を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項14】
前記たばこ充填材は、前記たばこ充填物の重量に対して5重量%~30重量%のエアロゾル生成基材を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
【請求項15】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品と、
前記非燃焼加熱型香味吸引物品を加熱するヒータと、
を備える電気加熱型香味吸引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼を伴わない非燃焼加熱型香味吸引物品、及び、電気加熱型香味吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ刻みを円筒形に巻き上げるためのラッパーにおいて、染み発生を低減したものが知られている。たばこ用巻紙に発生する染みは、紙巻きたばこの蔵置中に、たばこ刻みに含まれる物質がラッパーに滲出することで形成されると考えられる。たばこ用巻紙に染みを形成する主な組成物の例として、たばこ刻みに含有させた香料が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
近年、燃焼を伴わない非燃焼加熱型の香味吸引物品が、においの低減等の観点から非常に有用であり、たばこ市場において急速に受け入れられつつある。一方、非燃焼加熱型の香味吸引物品では、伝統的紙巻たばこの燃焼中の温度(700℃~900℃)に比して加熱温度が著しく低い(30℃~400℃)。このため、伝統的紙巻たばこと同じ量の香料をたばこ刻みに含有させただけでは、ユーザが感じる香料の強さが十分でない問題がある。このため、この新しいタイプの香味吸引物品(非燃焼加熱型香味吸引物品)では、伝統的紙巻たばこと同等の清涼感(香喫味)を得るために、伝統的紙巻たばこに比して多量の香料をたばこ刻みに含有させる必要がある。したがって、非燃焼加熱型香味吸引物品では、伝統的紙巻たばこに比して、香料を増量した分だけ香料に起因した染みをラッパーに生じやすい。
【0005】
本発明は、たばこ充填材を取り囲むラッパーに生じる染みを低減した非燃焼加熱型香味吸引物品を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の1つの形態にかかる非燃焼加熱型香味吸引物品は、たばこ充填物と、揮発性香料と、を含むたばこ充填材と、前記たばこ充填材を取り囲むラッパーと、を有するたばこ部を備える。ラッパーの拡散係数は0cm/s以上であり、拡散係数の上限値は0.022cm/sと0.10cm/sとの間にある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の電気加熱型香味吸引システムを示す断面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電気加熱型香味吸引システムのロッドを拡大して示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、
図2中のロッドのたばこ部のF3-F3線に沿うラッパーおよびたばこ充填材を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2中のロッドのF4-F4線に沿うラッパーの一方の端部と、他方の端部と、それらの間の接着面と、を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す電気加熱型香味吸引システムの本体にロッドを差し込む過程を示した断面模式図である。
【
図6】
図6は、
図2中のロッドのたばこ部のF3-F3線に沿うラッパーおよびたばこ充填材の第1変形例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図2中のロッドのたばこ部のF3-F3線に沿うラッパーおよびたばこ充填材の第2変形例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の電気加熱型香味吸引システムのロッドを示す断面模式図である。
【
図9】
図9は、実施例、比較例の各測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1から
図5を参照して、電気加熱型香味吸引システムの実施形態について説明する。図面は、発明の各構成要素を模式的に示したものである。このため、図面上の寸法が実際の製品上の寸法とは必ずしも一致しない。
【0009】
[第1実施形態]
図1に示すように、電気加熱型香味吸引システム11は、伝統的な紙巻たばこ(シガレット)とは異なり、燃焼を伴わないでたばこ充填材23を電気加熱等により温めて、たばこの香味を味わうことができる加熱式のものである。
【0010】
電気加熱型香味吸引システム11は、本体12と、本体12の差し込み部13に対して着脱されるロッド14(非燃焼加熱型香味吸引物品)と、を有する。
【0011】
本体12は、箱状の筐体15と、ロッド14の形状に沿って円筒形に窪んだ差し込み部13と、を有する。本体12は、電池16と、制御回路17と、感圧部20と、伝熱部18(伝熱管)と、伝熱部18の周囲に設けられたヒータ21と、を筐体15の内部に有する。筐体15は、通気穴22と、本体12の起動用のスイッチ29と、を有する。通気穴22は、筐体15の外部と差し込み部13とを連通させるとともに、差し込み部13に差し込まれたロッド14に空気を供給できる。
【0012】
制御回路17は、電池16から電力供給を受けることができる。制御回路17は、ヒータ21に通電してヒータ21の温度を適切な範囲内に調節できる。制御回路17は、ロッド14の内部を例えば30℃~400℃、好ましくは100℃~400℃、より好ましくは150℃~250℃で加熱するようにヒータ21を制御する。感圧部20は、圧力センサ(感圧センサ)で構成される。感圧部20は、制御回路17から電力の供給を受ける。感圧部20は、差し込み部13内(通気穴22内)の負圧を感知することで、ユーザが吸引したことを検出できる。
【0013】
差し込み部13は、筐体15の他の部分から円筒形に窪んで形成される。
【0014】
伝熱部18は、中空円筒形をなしている。伝熱部18は、金属材料によって形成される。伝熱部18を構成する金属材料は、金、銀、銅、アルミニウム、あるいはそれらを用いた合金等、熱伝導率の大きい金属であることが好ましい。
【0015】
ヒータ21は、例えば、ニクロム線等の一般的な電熱線で構成される。ヒータ21は、伝熱部18の周囲に巻き回されて円筒状に配置される。なお、ヒータ21の加熱方式は、電気抵抗によるジュール熱を用いたものに限られるものではなく、例えばIH(Induction Heating)方式でもよいし、酸化熱等の化学反応を用いた方式であってもよい。その場合は、加熱方式にあった伝熱部の材料、形状が選択されてもよい。なお、ヒータ21は、ロッド14(非燃焼加熱香味吸引物品)を外側から加熱するが、ロッド14(たばこ部24)の内部に差し込み可能なブレード状に形成され、ロッド14を内側から加熱するものであってもよい。
【0016】
(ロッド)
図2に示すロッド14(非燃焼加熱型香味吸引物品)は、円柱形状に形成される。円柱状のロッド14の円周の長さは、例えば16mm~27mmであることが好ましく、20mm~26mmであることがより好ましく、21mm~25mmであることがさらに好ましい。ロッド14の全長(水平方向の長さ)は特に限定されないが、例えば、40mm~90mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましく、50mm~60mmであることがさらに好ましい。
【0017】
ロッド14は、たばこ充填材23が充填されたたばこ部24と、吸口25を構成するフィルター部26と、たばこ部24とフィルター部26とを連結する連結部27と、通気孔部28と、を有する。通気孔部28は、連結部27を厚み方向に貫通するように複数の貫通孔を有する。複数の貫通孔は、ロッド14の中心軸の延長線上から見て、放射状に配置するように形成される。本実施形態では、通気孔部28は、連結部27に設けられている。通気孔部28は、フィルター部26に設けられていてもよい。また、本実施形態では、通気孔部28の複数の貫通孔は、円環上に一定間隔を空けて1列に並んで設けられる。通気孔部28の複数の貫通孔は例えば124個である。通気孔部28の複数の貫通孔は、2つの円環上に一定の間隔を空けて2列に並んで設けられていてもよい。通気孔部28の複数の貫通孔は、1列又は2列の通気孔部28が不連続又は不規則に並んで設けられていてもよい。ユーザが吸口25をくわえて吸引する際に、通気孔部28を介して主流煙中に外気が取り込まれる。
【0018】
フィルター部26は、円柱形をなしている。フィルター部26は、例えば酢酸セルロース繊維が充填されて構成されたロッド状の第1セグメント31と、例えば酢酸セルロース繊維が充填されて構成されたロッド状の第2セグメント32と、を有する。第1セグメント31は、たばこ部24側に位置している。第1セグメント31は、中空部を有していてもよい。第2セグメント32は、吸口25側に位置している。第2セグメント32は、中実である。第1セグメント31および第2セグメント32のそれぞれは、インナープラグラッパー33によって周囲が巻かれている。第1セグメント31および第2セグメント32は、アウタープラグラッパー34によって連結されている。アウタープラグラッパー34は、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン等で構成された接着剤によって第1セグメント31および第2セグメント32に接着されている。
【0019】
フィルター部26の長さを例えば10mm~30mm、連結部27の紙管35の長さを例えば10mm~30mm、第1セグメント31の長さを例えば5mm~15mm、第2セグメント32の長さを例えば5mm~15mmとすることができる。これら個々のセグメントの長さは、一例であり、製造適性、要求品質、たばこ部24の長さ等に応じて、適宜変更できる。
【0020】
例えば、第1セグメント31(センターホールセグメント)は、1つまたは複数の中空部を有する第1充填層と、第1充填層を覆うインナープラグラッパー33と、で構成される。第1セグメント31は、第2セグメント32の強度を高める機能を有する。第1セグメント31の第1充填層は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されている。この酢酸セルロース繊維には、トリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロースの質量に対して、例えば6質量%~20質量%添加されて硬化されている。第1セグメント31の中空部は、例えば内径φ1.0mm~φ5.0mmである。
【0021】
第1セグメント31の第1充填層は、例えば、比較的に高い繊維充填密度で構成されてもよく、或いは、後述する第2セグメント32の第2充填層の繊維充填密度と同等であってもよい。このため、吸引時には、空気やエアロゾルが中空部のみを流れることになり、第1充填層には空気やエアロゾルがほとんど流れない。例えば、第2セグメント32において、エアロゾル成分の濾過による減少を少なくしたい場合には、例えば第2セグメント32の長さを短くして、その分だけ第1セグメント31を長くすることもできる。
【0022】
第2セグメント32の長さを短縮し、その分だけ第1セグメント31を長くすることは、エアロゾル成分のデリバリー量を増大させるために有効である。第1セグメント31の第1充填層は、繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることがない。
【0023】
第2セグメント32は、第2充填層と、第2充填層を覆うインナープラグラッパー33と、で構成される。第2セグメント32(フィルターセグメント)は、酢酸セルロース繊維が一般的な密度で充填されており、一般的なエアロゾル成分の濾過性能を有する。
【0024】
第1セグメント31と第2セグメント32との間で、たばこ部24から放出されるエアロゾル(主流煙)をろ過するろ過性能を異ならせてもよい。第1セグメント31および第2セグメント32の少なくとも一方に、香料を含ませてもよい。フィルター部26の構造は任意であり、上記のような複数のセグメントを有する構造であってもよいし、単一のセグメントによって構成されていてもよい。
【0025】
連結部27は、円筒形をなしている。連結部27は、例えば厚紙等によって円筒形に形成された紙管35と、紙管35の周囲を取り囲むライニングペーパー36(ペーパー)と、を有する。ライニングペーパー36は、その一方の面(内面)に、通気孔部28の付近を除く全面又は略全面に形成された接着層37を有する。接着層37は、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン等で構成されている。ライニングペーパー36は、たばこ部24、紙管35、およびフィルター部26の外側に円筒形に巻かれて、接着層37を介してこれらに接着され、これらを一体的に連結・固定している。ライニングペーパー36によって、たばこ部24、紙管35、およびフィルター部26が一体にされた後に、複数の通気孔部28が外側からレーザ加工を施して形成される。
【0026】
たばこ部24は、円柱形をなしている。たばこ部24の全長(軸方向の長さ)は、例えば、12mm~70mmであることが好ましく、12mm~50mmであることがより好ましく、15mm~30mmであることがさらに好ましい。たばこ部24の断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等とすることができる。
【0027】
たばこ部24は、たばこ充填材23と、たばこ充填材23を取り囲んだ筒状のラッパー41と、を有する。ラッパー41は、たばこ充填材23の周囲に円筒形に巻き回されている。
【0028】
(ラッパー)
図3に示すように、ラッパー41は、紙製の基材シート42(
図7中の基材シート1(第1シート))と、基材シート42の一方の面に設けられた非金属のコーティング層43と、を有する。コーティング層43は、基材シート42に対してコーティング剤である樹脂又は増粘剤を塗布されることで形成される。コーティング層43は、基材シート42のたばこ充填材23に当接する面に設けられている。従って、コーティング層43は、ロッド14(非燃焼加熱型香味吸引物品)として巻き上げられた際に、ラッパー41の内面側に配置される。コーティング層43の配置は、ラッパー41の内面側に配置されるものに限定されるものではない。コーティング層43は、例えば、基材シート42のたばこ充填材23とは接しない面(外面側)に設けられていてもよいし、基材シート42の両面に一対に設けられていてもよい。ラッパー41の通気度は、例えば、5コレスタユニット(C.U.)未満であり、3コレスタユニット未満であることが好ましく、1コレスタユニット未満であることがさらに好ましい。ラッパー41の拡散係数は、ガスとしてCO
2やN
2を用い、且つ測定条件として環境温度22℃、環境の相対湿度60%で測定した場合に、例えば、0cm/s~0.1cm/sであり、0cm/s~0.05cm/sであることが好ましく、0cm/s~0.022cm/sであることがさらに好ましい。拡散係数の測定機器として、Diffusivity Testerを用いた。Diffusivity Testerは、例えば、borgwaldt社製のものを用い、その測定は同社発行の説明書に従い行った。
【0029】
基材シート42は、商業的に入手可能な紙で構成されている。基材シート42の坪量は、例えば、20g/m2~50g/m2であり、25g/m2~45g/m2であることが好ましく、33g/m2~39g/m2であることがさらに好ましい。ラッパー41の不透明度は、例えば、72%~100%であることが好ましい。ラッパー41の白色度は、例えば、70%~100%であることが好ましい。
【0030】
基材シート42は、商業的に入手可能な不織布で構成されていてもよい。
【0031】
コーティング層43は、樹脂、増粘剤、又はこれらの混合物を含んでいる。コーティング層43に含まれる樹脂、増粘剤、又はこれらの混合物は、その一部が基材シート42のミクロポア内に侵入してミクロポアを閉塞することができ、それによってラッパー41の拡散係数を0cm/s~0.022cm/sの範囲内にすることができる。
【0032】
コーティング層43が、主成分として樹脂を含んで構成される場合には、当該樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリ酢酸ビニル(PVAc)であってもよいし、これらを混合した組成物(混合物)を用いてもよい。コーティング層43が、主成分として樹脂を含んで構成される場合には、当該樹脂は、填料をさらに含む組成物として構成されてもよい。填料は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、カオリン、タルク、又はシリカのうち、いずれか1つであってもよいし、これらのいくつかを混合したものであってもよい。このようにコーティング層43に填料を含ませることで、ラッパー41同士のブロッキングが防止されるとともに、ラッパー41のカールが防止され、さらにラッパー41の白色度/不透明度が改善される等の利点がある。
【0033】
コーティング層43が、主成分として増粘剤を含んで構成される場合には、当該増粘剤は、アラビアガム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のうち、いずれか1つであってもよいし、これらのいくつかを混合した組成物であってもよい。コーティング層43が、主として増粘剤で構成される場合には、当該増粘剤は、填料をさらに含む組成物として構成されてもよい。填料は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、カオリン、タルク、又はシリカのうち、いずれか1つであってもよいし、これらのいくつかを混合したものであってもよい。このようにコーティング層43に填料を含ませることで、ラッパー41同士のブロッキング(固着)が防止されるとともに、ラッパー41のカールが防止され、さらにラッパー41の白色度/不透明度が改善される等の利点がある。
【0034】
コーティング層43は、主成分として上記のような樹脂と、上記のような増粘剤と、の両方を含む組成物(混合物)として構成されてもよい。その場合に、コーティング層43は、上記した填料のうち、いずれか1つ又は2つ以上を混合したものをさらに含む組成物として構成されてもよい。
【0035】
コーティング層43を形成するコーティング剤が基材シート42に塗布される量は、コーティング剤の種類によって異なる。例えば、コーティング剤としてアラビアガムを用いる場合には、1m2当たりの塗布量は、微少量、例えば、0g/m2よりも大きく、10g/m2未満であることが好ましい。コーティング剤としてポリビニルアルコールを用いる場合には、1m2当たりの塗布量は、微少量、例えば、0g/m2よりも大きく、10.0g/m2未満であることが好ましい。コーティング剤としてポリ酢酸ビニルを用いる場合には、1m2当たりの塗布量は、微少量、例えば、0g/m2よりも大きく、10.0g/m2未満であることが好ましい。各物質の塗工量の下限は、拡散係数を測定しながら必要量とすることが好ましい。
【0036】
図4に示すように、ラッパー41は、一方の端部41Aと、一方の端部41Aとは反対側に設けられた他方の端部41Bと、を有する。たばこ充填材23の周囲に巻き回された状態で、他方の端部41Bは、一方の端部41Aに対して、接着剤45を介して上側に貼り合わされる。このため、一方の端部41Aと他方の端部41Bとは、互いに重ね合わされて接着された重ね合わせ部44を構成する。他方の端部41Bに対応する部分のコーティング層43には、濡れ性を改善する表面処理が施される。この表面処理は、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、その他の表面改質処理であってよい。このように表面処理を行うことで、当該表面処理が施された面が一方の端部41Aと他方の端部41Bとの間の接着面47となり、これらの間で接着剤45を介した接着が強固になる。
【0037】
本実施形態では、他方の端部41Bに対応する部分のコーティング層43に、濡れ性を改善する表面処理がなされている。一方の端部41Aおよび他方の端部41Bの両方のコーティング層43に濡れ性を改善する表面処理を行ってもよい。或いは、この表面処理の代替案として次の構造を採用し得る。すなわち、一方の端部41Aおよび他方の端部41Bのいずれか一方に対応する位置に、コーティング層43を形成しない非形成領域46を設けてもよい。
図4の例では、他方の端部41Bに対応する位置に非形成領域46を設けることとなる。
【0038】
当該表面処理が施された面或いは非形成領域46には、一方の端部41Aと他方の端部41Bとを接着するための接着剤45が塗布される。接着剤45は、例えば、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンで構成される。当該表面処理が施される面或いは非形成領域46は、接着剤45とともに、一方の端部41Aと他方の端部41Bとの間の接着面47をなしている。
【0039】
ラッパー41には、香料成分が含まれていてもよい。具体的には、ラッパー41の基材シート42に香料成分が含まれていてもよいし、ラッパー41のコーティング層43に香料成分が含まれていてもよい。
【0040】
たばこ充填材23は、葉たばこ(乾燥葉)の刻み、および/または葉たばこ粉砕物をシート状に成形したものを所定幅に刻んだもの(シート状成形物)で構成される。たばこ充填材23は、葉たばこ粉砕物をシート状に成形したものを所定幅に刻んだもの(シート状成形物)および/または葉たばこ(乾燥葉)の刻みをランダムな配向で充填して形成される。このシート状成形物には、エアロゾル生成基材および香料成分が含まれていてもよい。葉たばこの刻みに対して、エアロゾル生成基材および香料成分が添加・含有されていてもよい。
【0041】
(たばこ充填材)
本発明に係るたばこ充填材23は、たばこ充填物(たばこ)と、エアロゾル生成基材とを含む。たばこ充填材23は、さらに後述する揮発性香料、水等を含んでもよい。たばこ充填物として用いるたばこの大きさやその調製法については特に制限はない。たばこ充填物には、例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8mm~1.2mmの細長い帯状に刻んだものを用いることができる。前記幅に刻んだ場合、たばこ葉の刻みの長さは、おおよそ、1mm~40mm程度となる。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が例えば、20μm~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8mm~1.2mmの細長い帯状に刻んだもの(たばこ再生シート、シート状成形物)をたばこ充填物として含ませてもよい。前記幅に刻んだ場合、刻みの長さは、おおよそ、例えば1mm~40mm程度となる。さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工して折り畳んだものをたばこ充填物として用いてもよい。乾燥したたばこ葉を刻んで使用する場合であっても、粉砕して均一化したシートとして用いる場合でも、たばこ充填物に含まれるたばこの種類は、様々のものを用いることができる。
【0042】
たばこ充填物には、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、および、その他のニコチアナ・タバカム種、ニコチアナ・ルスチカ種、ニコチアナ・トメントーサ種を、目的とする味となるように適宜ブレンドして用いることができる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0043】
たばこを粉砕して均一化シート(たばこ再生シート)に加工する方法は従来の方法が複数存在している。1つは抄紙プロセスを用いて作られる抄造シートであり、2つは水等の適切な溶媒及び必要な種類/量のバインダーをたばこ粉砕物と混ぜて均一化したのちに金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させて作られるキャストシートであり、3つは水等の適切な溶媒及び必要な種類/量のバインダーをたばこ粉砕物と混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型した圧延シートがある。前記均一化シート(たばこ再生シート)の種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0044】
たばこ充填材23には、葉たばこ(乾燥葉)および葉たばこ粉砕物をシート状に成形したものに対して、エアロゾル生成基材および揮発性香料が塗布又は含有されることが好ましい。エアロゾル生成基材は、葉たばこ(乾燥葉)および葉たばこ粉砕物をシート状に成形したものに対して、例えば5重量%~30重量%で含有されることが好ましい。エアロゾル生成基材は、加熱によりエアロゾルを生成し得る材料であり、例えばグリセリン、プロピレングリコール(PG)、トリエチルシトレート(TEC)、トリアセチン、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。エアロゾル生成基材は、グリセリンを含むことが好ましい。
【0045】
たばこ充填材23の充填密度は、特に限定されないが、ロッド14(非燃焼加熱型香味吸引物品)の性能を担保し、良好な喫味の付与の観点から、通常250mg/cm3~700mg/cm3であり、好ましくは320mg/cm3~420mg/cm3である。具体的には、たばこ部24中のたばこ充填材23の含有量の範囲は、円周22mm、長さ20mmのたばこ部24の場合、たばこ部24あたり200mg~400mgとすることができ、250mg~320mgとすることがさらに好ましい。
【0046】
たばこ充填材23に含まれる揮発性香料(香料成分)は、電気加熱型香味吸引システム11に用いられる香料であれば限定されることなく任意の香料を使用することができる。香料成分は、l-メントール、天然植物性香料(例えば、シナモン、セージ、ハーブ、カモミール、葛草、甘茶、クローブ、ラベンダー、カルダモン、チョウジ、ナツメグ、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、ローズ油、レモン、オレンジ、ケイ皮、キャラウェー、ジャスミン、ジンジャー、コリアンダー、バニラエキス、スペアミント、ペパーミント、カシア、コーヒー、セロリー、カスカリラ、サンダルウッド、ココア、イランイラン、フェンネル、アニス、リコリス、セントジョンズブレッド、スモモエキス、ピーチエキス等)、糖類(例えば、グルコース、フルクトース、異性化糖、カラメル等)、ココア類(パウダー、エキス等)、エステル類(例えば、酢酸イソアミル、酢酸リナリル、プロピオン酸イソアミル、酪酸リナリル等)、ケトン類(例えば、メントン、イオノン、ダマセノン、エチルマルトール等)、アルコール類(例えば、ゲラニオール、リナロール、アネトール、オイゲノール等)、アルデヒド類(例えば、バニリン、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド等)、ラクトン類(例えば、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトン等)、動物性香料(例えば、ムスク、アンバーグリス、シベット、カストリウム等)、炭化水素類(例えば、リモネン、ピネン等)、たばこ植物(たばこ葉、たばこ茎、たばこ花、たばこ根、およびたばこ種)の抽出物からなる群より選ばれる1種を用いることができる。たばこ充填材23に含まれる揮発性香料として特に好ましいのは、l-メントールである。或いは、たばこ充填材23に含まれる揮発性香料は、上記群より選ばれた2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
たばこ充填材23に含まれる香料成分は、固体で使用されてもよいし、適切な溶媒、例えばプロピレングリコール、エチルアルコール、ベンジルアルコール、トリエチルシトレートに溶解または分散させて使用されてもよい。好ましくは、乳化剤の添加により溶媒中で分散状態が形成されやすい香料、たとえば疎水性香料や油溶性香料等を用いることができる。これらの香料成分は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0048】
たばこ充填材23中の揮発性香料の含有量は、特に限定されるものではない。良好な喫味の付与の観点から、たばこ充填材は、たばこ充填物の重量に対して0.5重量%~10重量%の揮発性香料を含み、たばこ充填物の重量に対して1重量%~9重量%の揮発性香料を含むことが好ましく、たばこ充填物の重量に対して1.2重量%~8重量%の揮発性香料を含むことがさらに好ましい。
【0049】
(たばこ部の製造方法)
たばこ部24の製造に先立ち、基材シート42にコーティング剤を塗布してラッパー41を形成する。ラッパー41は、ロール状に巻き回された基材シート42の一方の面に、コーティング層43となるコーティング剤を塗布することで形成される。コーティング剤を塗布する方法としては種々のコーティング方法を採用することができ、例えば、フレキソ、グラビア、ダイコート、ゲートロールコート、その他のコーティング方法を用いることができる。
【0050】
基材シート42の表面にコーティング層43が形成されたラッパー41において、一方の端部41Aおよび他方の端部41Bの少なくとも一方に対応するコーティング層43は、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、その他の表面処理を受けることが好ましい。特に、本実施形態の
図4の例では、他方の端部41Bに対応するコーティング層43は、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、その他の表面処理を受けることが好ましい。
【0051】
これによって、一方の端部41Aおよび他方の端部41Bの少なくとも一方において、接着剤45に対する濡れ性(親和性)が向上する。このように表面処理を受けた面に接着剤45を塗布する。そして、ラッパー41をたばこ充填材23の周囲に巻き回して円筒形のたばこ部24を形成するように、一方の端部41Aと他方の端部41Bとを接着する。このとき、このように表面処理がなされた面が一方の端部41Aと他方の端部41Bとの間の接着面47となり、コーティング層43に対する接着剤45の親和性が向上して、強固な接着部が形成される。
【0052】
或いは、このような表面処理の工程に代えて、ラッパー41の一方の端部41Aおよび他方の端部41Bのいずれか一方にコーティング層43を形成しない非形成領域46を設けることとしてもよい。当該非形成領域46に接着剤45を塗布して、ラッパー41をたばこ充填材23の周囲に巻き回して円筒形のたばこ部24を形成するように、一方の端部41Aと他方の端部41Bとを接着する。このとき、非形成領域46を一方の端部41Aと他方の端部41Bとの間の接着面47とする。このようにすれば、基材シート42上の非形成領域46が接着面47となり、接着面47にコーティング層43が介在しないために、強固な接着部が形成される。
【0053】
表面処理を受けるか又は非形成領域46が形成されたラッパー41は、一般的なたばこ巻き上げ機に導入されて、たばこ充填材23の周囲に巻き回されて細長い円柱形に形成される。このとき、ラッパー41は、コーティング層43が内側(たばこ充填材23側)になるように、たばこ巻き上げ機にセットされる。そして、細長い円柱形に形成されたたばこ充填材23およびラッパー41は、カッター等で所定の長さに切断される。これによってたばこ部24が形成される。たばこ部24は、別途に作成された紙管35およびフィルター部26と直列的に並べられる。これらのたばこ部24、紙管35、およびフィルター部26は、ライニングペーパー36によって直列的かつ一体に巻き上げられる。以上の工程によって、電気加熱型香味吸引システム11のロッド14が製造される。
【0054】
電気加熱型香味吸引システム11の本体12についても、公知の電子機器の製造方法によって製造できる。このように製造されたロッド14および本体12を組み合わせて、電気加熱型香味吸引システム11が実現される。
【0055】
(電気加熱型香味吸引システムの作用)
図5に示すように、本体12の差し込み部13に対してロッド14を差し込むことで、本体12に対してロッド14が装着される。この状態で、ユーザがスイッチ29を押し下げて本体12を起動状態にすると、制御回路17がヒータ21を駆動して、ヒータ21および伝熱部18を所定の温度(例えば、30℃~400℃)まで昇温させる。これによって、たばこ部24が加熱される。この状態で、ユーザが吸口25をくわえて吸引を開始すると、たばこ部24からたばこの香味を含む蒸気(エアロゾル)が放出される。当該蒸気は、通気孔部28から連結部27の内部に流入した空気によって冷却され、より確実なエアロゾル化(微小な液滴化)がなされる。
【0056】
当該エアロゾルは、フィルター部26で適切にろ過されてユーザの口腔内に届けられる。これによって、ユーザは、たばこの香味を味わうことができる。このとき、制御回路17は、感圧部20を介して筐体15内の負圧を感知する。これによって、制御回路17は、ユーザが吸引を行った回数をカウントしたり、総吸引時間を算出したりすることができる。制御回路17は、スイッチ29の押し下げ後から所定時間経過したり、ユーザが所定回数の吸引を行ったり、ユーザの総吸引時間が所定の時間を超えたり、或いはユーザが再度スイッチ29を押し下げて起動状態を解除したり、した場合に、ヒータ21および伝熱部18の加熱を停止する。これによって、1回の香味吸引動作が完了する。そして、ユーザが差し込み部13から使用後のロッド14を除去して、新しいロッド14を差し込み部13に差し込むことで、ユーザは再び新しいロッド14からたばこの香味を味わうことができる。
【0057】
本実施形態のロッド14(非燃焼加熱型香味吸引物品)は、コーティング層43により、ラッパー41の拡散係数が0cm/s~0.022cm/sに抑えられている。このため、蔵置中のロッド14において揮散した揮発性香料がラッパー41を透過することがなく、揮発性香料がラッパー41の表面に染みを形成することがない。また、低温での保存中においても、揮散した揮発性香料がラッパー41を透過することがない。低温保存中の揮発性香料(特に、l-メントール)による結晶形成のメカニズムの詳細は不明であるが、ラッパー41のミクロポアを透過してラッパー41の外面に付着した揮発性香料が結晶の核となり、その後に結晶が成長して揮発性香料による毛状(繊維状)の結晶が形成されるものと考えられる。本実施形態では、揮発性香料がラッパー41を透過することを抑制する。このため、結晶の核となる最初の揮発性香料がラッパー41の外面に付着することが防がれるものと思われる。したがって、本実施形態のロッド14では、ラッパー41表面の染みの発生だけでなく、低温保存中において、ラッパー41表面に揮発性香料による繊維状の結晶が発生することも防止される。
【0058】
第1実施形態によれば以下のことが言える。
【0059】
非燃焼加熱型香味吸引物品は、たばこ充填物と、揮発性香料と、を含むたばこ充填材23と、たばこ充填材23を取り囲むラッパー41と、を有するたばこ部24を備え、ラッパー41は、基材シート42と、基材シート42のたばこ充填材23に当接する面に設けられる非金属のコーティング層43と、を有するとともに、ラッパー41の拡散係数が0cm/s~0.022cm/sである。
【0060】
この構成によれば、コーティング層43を設けることで、拡散係数が0cm/s~0.022cm/sのレベルになるまで、基材シート42中のミクロポアを塞ぐことができる。このため、揮発性香料がラッパー41を透過してしまうことを防止できる。これによって、たばこ充填材23中の揮発性香料がラッパー41に染みを形成してしまうことを防止できる。また、非燃焼加熱型香味吸引物品を低温で保存した際に、揮散した揮発性香料によって、ラッパー41の表面から繊維状の結晶を生じてしまうことがある。本実施形態の非燃焼加熱型香味吸引物品によれば、そのような揮発性香料による繊維状の結晶を生じることが防止される。これによって、非燃焼加熱型香味吸引物品の外観に対して、ユーザが違和感を生じることがなく、高品質な非燃焼加熱型香味吸引物品を提供できる。
【0061】
コーティング層43は、樹脂、増粘剤、又はこれらの混合物を含んでいる。この構成によれば、コーティング層43によって、基材シート42中のミクロポアを塞ぐことができる。
【0062】
前記樹脂は、ポリビニルアルコール又はポリ酢酸ビニルである。この構成によれば、基材シート42に対して少ない塗工量で、拡散係数が十分に低減されたラッパー41を得ることができる。
【0063】
前記増粘剤は、アラビアガム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、又はメチルセルロースである。この構成によれば、種々の増粘剤を用いることによっても、拡散係数が十分に低減されたラッパー41を得ることができる。
【0064】
コーティング層43は、填料を更に含む。この構成によれば、コーティング層43が微細な粒子状の填料を含むことによって、更に効率的に基材シート42中のミクロポアを塞ぐことができる。また、保管中に巻上げ前のラッパー41同士が固着してしまう、いわゆるブロッキングが防止されるとともに、ラッパー41のカールを有効に防止できる。さらに、ラッパー41の白色度/不透明度が改善できる。
【0065】
前記填料は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、微結晶セルロース、カオリン、タルク、シリカ、である。この構成によれば、ラッパー41同士のブロッキングが防止されるとともに、ラッパー41のカールを有効に防止できる。さらに、ラッパー41の白色度/不透明度が改善できる。
【0066】
前記揮発性香料は、l-メントールである。l-メントールは、蔵置中にパッケージ内において揮散が起こりやすく、蔵置中にラッパー41に染みを生じたり、低温での蔵置中にラッパー41に繊維状(針状)の結晶を生じたりする不具合を生じやすい。上記の構成によれば、揮発性香料が、l-メントールである場合であっても、蔵置中にラッパー41に染みを生じたり、或いは、低温での蔵置中に繊維状の結晶をラッパー41から生じたりする不具合を防止することができる。
【0067】
たばこ充填材23は、前記たばこ充填物の重量に対して1.2重量%以上の前記揮発性香料を含む。通常、このように揮発性香料の含有量が大きいたばこ充填材23では、揮発性香料がラッパー41に染み込んで染みを形成したり、ラッパー41表面に結晶を形成したりすることがあった。この構成によれば、このように染みや結晶を生じやすい、揮発性香料の含有量が大きいたばこ充填材23を用いた場合でも、ラッパー41に染みや結晶を生じてしまうことを有効に防止することができる。
【0068】
ラッパー41の通気度は、1コレスタユニット未満である。この構成によれば、ラッパー41を低通気度にすることができ、これによって揮発性香料がラッパー41を透過してしまう可能性をさらに低減できる。これによって、蔵置中にラッパー41に染みを生じたり、低温での蔵置中にラッパー41に繊維状の結晶を生じたりする不具合を防止できる。
【0069】
基材シート42は、紙及び/又は不織布である。この構成によれば、非燃焼加熱型香味吸引物品のラッパー41の外観を伝統的紙巻きたばこと同様にすることができ、ユーザに違和感を生じさせることを防止できる。
【0070】
この場合、ラッパー41は、一方の端部41Aと、一方の端部41Aとは反対側に設けられ一方の端部41Aに対して貼り合わされる他方の端部41Bと、を有する。一方の端部41Aおよび他方の端部41Bの少なくとも一方に対応する部分のコーティング層43には、濡れ性を改善する表面処理が施されるとともに、当該表面処理が施された面が一方の端部41Aと他方の端部41Bとの間の接着面47をなす。
【0071】
また、非燃焼加熱型香味吸引物品の製造方法は、基材シート42に樹脂又は増粘剤を含むコーティング剤を塗布してコーティング層43を有するラッパー41を形成し、ラッパー41の一方の端部41Aと、一方の端部41Aとは反対側に設けられ一方の端部41Aに対して貼り合わされる他方の端部41Bと、の少なくとも一方に対応する部分のコーティング層43に濡れ性を改善する表面処理を施し、前記表面処理した面を接着面47とするように、一方の端部41Aと他方の端部41Bとを接着面47で接着して揮発性香料を含むたばこ充填材23をラッパー41で取り囲む。
【0072】
これらの構成によれば、コーティング層43を設けたことに起因して、ラッパー41の接着部の接着強度が低下することを防止できる。これによって、ラッパー41の重ね合わせ部における接着不良等の不具合を生じることを防止できる。
【0073】
この場合、ラッパー41は、一方の端部41Aと、一方の端部41Aとは反対側に設けられ一方の端部41Aに対して貼り合わされる他方の端部41Bと、を有する。一方の端部41Aおよび他方の端部41Bのいずれか一方に対応する部分には、コーティング層43が形成されない非形成領域46を有する。非形成領域46は、一方の端部41Aと他方の端部41Bとの間の接着面47をなす。
【0074】
この構成によれば、接着面47となる部分にコーティング層43を設けないようにすることができる。これによって、コーティング層43を設けたことに起因するラッパー41の重ね合わせ部での接着強度の低下を防止することができる。また、一方の端部41Aおよび他方の端部41Bのうち、いずれか一方にコーティング層43を残すことで、ラッパーの拡散係数を0cm/s~0.022cm/sの範囲内に維持することができる。
【0075】
電気加熱型香味吸引システム11は、非燃焼加熱型香味吸引物品と、前記非燃焼加熱型香味吸引物品に加熱するヒータ21と、を備える。この構成によれば、揮発性香料によってラッパー41に染みが発生してしまうこと、および低温保存時に繊維状(針状)の結晶を生じてしまうことを防止した電気加熱型香味吸引システム11を実現できる。
【0076】
ヒータ21は、前記非燃焼加熱型香味吸引物品を30℃~400℃で加熱する。従来の伝統的紙巻たばこでは、燃焼を伴うために、たばこ充填材23の加熱温度は、700℃~900℃という高温であった。上記構成によれば、伝統的紙巻たばこに比してたばこ部24の加熱温度が著しく低いために、同じ強さの揮発性香料をエアロゾル中にユーザが感じることができるように、揮発性香料をたばこ充填材23に含有させる量を増加させる必要がある。そして、このように揮発性香料を増量すると、この揮発性香料によってラッパー41に染みを生じやすくなったたり、低温保存中にラッパー41から繊維状の結晶を生じやすくなったりする問題がある。本実施形態によれば、このように揮発性香料を増量した場合でも、ラッパー41に染みを生じたり、ラッパー41から繊維状の結晶を生じたりすることを有効に防止することができる。これによって、高品質な非燃焼加熱型香味吸引物品およびそれを備えた電気加熱型香味吸引システム11を実現できる。
【0077】
[第1変形例]
図6に示すように、ラッパー41は、紙製の基材シート42(
図9中の基材シート1)のみで形成されていてもよい。紙製の基材シート42として、たとえばグラシン紙を用いる。グラシン紙は、基材シート42中のミクロポアを抑制し、拡散係数を小さくすることができる。このため、コーティング層43は必ずしも必要ではない。
【0078】
なお、基材シート42中のミクロポアを抑制し、拡散係数を小さくすることができれば、グラシン紙のような紙製の基材シート42の代わりに、不織布製の基材シート42を用いてもよい。
【0079】
第1実施形態の第1変形例によれば以下のことが言える。
【0080】
非燃焼加熱型香味吸引物品は、たばこ充填物と、揮発性香料と、を含むたばこ充填材23と、たばこ充填材23を取り囲むラッパー41と、を有するたばこ部24を備え、ラッパー41は、紙製又は不織布製の基材シート42を有し、ラッパー41の拡散係数が0cm/s~0.006cm/sである。
【0081】
この構成によれば、基材シート42すなわちラッパー41を適宜に選択することで、揮発性香料がラッパー41を透過してしまうことを防止できる。これによって、たばこ充填材23中の揮発性香料がラッパー41に染みを形成してしまうことを防止できる。また、非燃焼加熱型香味吸引物品を低温で保存した際に、揮散した揮発性香料によって、ラッパー41の表面から繊維状の結晶を生じてしまうことがある。本実施形態の非燃焼加熱型香味吸引物品によれば、そのような揮発性香料による繊維状の結晶を生じることが防止される。これによって、非燃焼加熱型香味吸引物品の外観に対して、ユーザが違和感を生じることがなく、高品質な非燃焼加熱型香味吸引物品を提供できる。
【0082】
[第2変形例]
図7に示すように、ラッパー41は、紙製の基材シート42(
図9中の基材シート1(第1シート))、コーティング層43に加えて、基材シート42と同一または異なる素材でコーティング層43の内側に第2基材シート42A(
図9中の基材シート2(第2シート))を有することも好適である。すなわち、コーティング層43は、基材シート42と基材シート42Aとの間に挟まれている。ラッパー41を3層構造とし、基材シート42中のミクロポアを抑制することで拡散係数を小さくすることができる。
【0083】
なお、基材シート42中のミクロポアを抑制し、拡散係数を小さくすることができれば、紙製の基材シート42の代わりに、不織布製の基材シート42を用いてもよい。同様に、基材シート42A中のミクロポアを抑制し、拡散係数を小さくすることができれば、紙製の基材シート42Aの代わりに、不織布製の基材シート42Aを用いてもよい。
【0084】
第1実施形態の第2変形例によれば以下のことが言える。
【0085】
非燃焼加熱型香味吸引物品は、たばこ充填物と、揮発性香料と、を含むたばこ充填材23と、たばこ充填材23を取り囲むラッパー41と、を有するたばこ部24を備え、ラッパー41は、紙製又は不織布製の複数の基材シート42,42Aと、基材シート42,42A間に形成されたコーティング層43とを有し、ラッパー41の拡散係数が0.001cm/s~0.015cm/sである。
【0086】
この構成によれば、基材シート42,42A、及びコーティング層43を形成する素材すなわちラッパー41を適宜に選択することで、揮発性香料がラッパー41を透過してしまうことを防止できる。これによって、たばこ充填材23中の揮発性香料がラッパー41に染みを形成してしまうことを防止できる。また、非燃焼加熱型香味吸引物品を低温で保存した際に、揮散した揮発性香料によって、ラッパー41の表面から繊維状の結晶を生じてしまうことがある。本実施形態の非燃焼加熱型香味吸引物品によれば、そのような揮発性香料による繊維状の結晶を生じることが防止される。これによって、非燃焼加熱型香味吸引物品の外観に対して、ユーザが違和感を生じることがなく、高品質な非燃焼加熱型香味吸引物品を提供できる。
【0087】
[第2実施形態]
図8を参照して、第2実施形態の電気加熱型香味吸引システム11およびそれに含まれる非燃焼加熱型香味吸引物品(ロッド14)について説明する。本実施形態では、ロッド14の形状が異なっているが、他の部分は第1実施形態と共通している。以下では、主として、上記第1実施形態とは異なる部分であるロッド14について説明し、それらと共通する部分については、図示および説明を省略する。
【0088】
ロッド14は、たばこ充填材23が充填されたたばこ部24と、吸口25を構成するフィルター部26と、たばこ部24とフィルター部26とを連結する連結部27と、たばこ部24に隣接して設けられた付加セグメント51(第2フィルター部)と、通気孔部28と、を有する。たばこ部24、フィルター部26、および通気孔部28は、第1実施形態と同様の構成を有する。たばこ部24のラッパー41は、第1実施形態と同様の構成のほか、第1変形例、第2変形例と同様の構成を有することが好適である。
【0089】
付加セグメント51(第2フィルター部)は、円柱形に形成され、たばこ部24のフィルター部26に対向する第1端面24Aとは反対側の第2端面24Bを覆う(目隠しする)ように設けられている。より具体的には、付加セグメント51は、たばこ部24の第2端面24Bを覆い隠すように、たばこ部24に隣接して設けられている。付加セグメント51は、通気性を有し、特に円柱の軸方向に高い通気性を有する。
【0090】
本実施形態では、付加セグメント51は、酢酸セルロース繊維が充填されて構成されたロッド状のフィルターである。付加セグメント51は、第1実施形態のフィルター部26の第1セグメント31と同様の、中心に中空部51Aを有するセンターホールセグメントとして構成されているが、付加セグメント51の実施態様としてはこれに限定されるものではない。付加セグメント51は、フィルター部26の第2セグメント32と同様の、センターホールが設けられない中実のフィルターで構成されてもよいし、連結部27のライニングペーパー36をたばこ部24(たばこ充填材23)よりも先端側(吸口25とは反対側)に突出させた円環状の突出部(この場合、突出部の内側は空洞として形成される)で構成されてもよい。
【0091】
連結部27は、例えば厚紙等によって円筒形に形成された紙管35と、紙管35の周囲を取り囲むライニングペーパー36と、を有する。ライニングペーパー36の一方の面(内面)には、通気孔部28の付近を除く全面又は略全面に酢酸ビニル樹脂系エマルジョン等で構成された接着剤が塗布されている。ライニングペーパー36は、付加セグメント51、たばこ部24、紙管35、およびフィルター部26の外側に円筒形に巻かれて、これらを一体的に連結している。ライニングペーパー36によって、たばこ部24、紙管35、およびフィルター部26が一体にされた後に、複数の通気孔部28が外側からレーザ加工を施して形成される。
【0092】
付加セグメント51をたばこ部24と連結する手段は、ライニングペーパー36に限られるものではない。ライニングペーパー36とは別に設けた巻紙によって、付加セグメント51とたばこ部24とを連結しても当然によい。
【0093】
本実施形態のロッド14(非燃焼加熱型香味吸引物品)の作用について説明する。本実施形態のロッド14は、たばこ部24よりも先端側に目隠し用の付加セグメント51を有する。このため、低温での保存中にたばこ部24のたばこ充填材23が露出している部分から、揮発性香料(特に、l-メントール)による毛状(繊維状、針状)の結晶を生じてしまうことを防止できる。
【0094】
付加セグメント51を、中心に中空部51Aを有するセンターホールセグメントや、ライニングペーパー36により形成した円環状の突出部で構成した場合には、低温保存中に、たばこ充填材23が露出している部分から成長した揮発性香料の結晶が、付加セグメント51の中空部51A内や、突出部の内側に生じることになる。しかしながら、中空部51A内や突出部内であれば、ユーザが外側から視認することはできず、ロッドを常温に戻す途中の短時間内で、当該繊維状(針状)の結晶は分解してしまうために、実質的に不具合となることがない。また、付加セグメント51を、センターホールセグメントや突出部とすることで、通気抵抗が増加することをできるだけ防止することができ、付加セグメント51がロッド14の設計上の制約となることを防止できる。
【0095】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。
【0096】
非燃焼加熱型香味吸引物品は、たばこ部24に隣接して設けられたフィルター部26と、たばこ部24のフィルター部26に対向する第1端面24Aとは反対側の第2端面24Bを覆うように設けられ、通気性を有する付加セグメント51と、を備える。この構成によれば、低温保存時に第2端面24Bに位置するたばこ充填材23から揮発性香料による繊維状の結晶を生じた場合でも、付加セグメント51によって当該結晶を覆い隠すことができる。これによって、当該結晶がユーザから視認され、製品に繊維などが混入していると誤解される不具合を防止できる。
【0097】
非燃焼加熱型香味吸引物品および電気加熱型香味吸引システム11は、上記実施形態および各変形例に記載されたものに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【実施例0098】
以下、
図9に示される表に従い、ラッパー41の種類を変更してロッド14を形成した実施例1~8、比較例1~6について説明する。各実施例、比較例の説明に先立ち、拡散係数の測定方法、染み発生率の評価方法、結晶の発生の評価方法について説明する。
【0099】
<拡散係数の測定方法>
拡散係数は、ガスとしてN2およびCO2を用い、22℃、相対湿度60%の測定条件下で、borgwaldt社製のDiffusivity Testerで測定した。その他の測定条件は同社発行の説明書に従った。
【0100】
<染み発生率及び染み抑制効果の評価方法>
評価には、円周22mm、長さ56mmのたばこロッド(シガレット用の長いたばこロッド)を用いた。評価に用いるたばこロッドには、たばこ充填物の重量に対して6重量%のl-メントール(揮発性香料)を含むたばこ充填材23を用いた。このたばこ充填材23を用いた完成品のたばこロッドを室温で気密性(ガスバリア性)のある密閉容器内に静置した状態で、14日間蔵置して、その染みの発生数を評価した。1本のたばこロッドに対して、最大直径1mm以上の染みが5個以上発生したもの、又は最大直径3mm以上の染みが1個以上発生したものを、染み発生ロッドと定義した。
【0101】
染み発生率は、以下のように計算した。上記のように構成したたばこロッドを200本用意し、これを上記条件で14日間蔵置後に観察して、染み発生ロッドの数を数えた。総数(200本)に対する染み発生ロッドの本数の割合を、染み発生率(%)とした。
【0102】
染み発生率が35%未満のものを染み抑制効果有り「〇」、染み発生率が35%以上のものを染み抑制効果なし「×」と定義した。
【0103】
<結晶の発生の評価方法>
評価に用いるたばこロッドは、上記した染み発生率及び染み抑制効果の評価に用いたたばこロッド(シガレット用の長いたばこロッド)と同一のたばこロッドを用いた。評価に用いるたばこロッドには、たばこ充填物の重量に対して6重量%のl-メントール(揮発性香料)を含むたばこ充填材23を用いた。このたばこ充填材23を用いた完成品のたばこロッドを4℃の冷蔵庫内で、気密性(ガスバリア性)のある密閉容器内に静置した状態で、14日間蔵置した。蔵置後、l-メントールの繊維状(針状)の結晶の有無を評価した。ラッパー41の表面に繊維状の結晶がないものを効果あり「〇」、ラッパー41の表面に繊維状の結晶があるものを効果なし「×」とした。
【0104】
[実施例1]
基材シート42として、伝統的紙巻たばこにも使用される一般的なチップペーパーの原紙(TP原紙)を用いた。このTP原紙は、製紙メーカーから商業的に入手可能である。この基材シート42の坪量は、36g/m2であった。
【0105】
ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、増粘剤であるアラビアガムを用いた。このアラビアガムを基材シート42の一方の面にフレキソコーターを用いて、塗布してラッパー41を形成した。基材シート42に対するアラビアガムの塗布量(塗工量)は、7.3g/m2とした。
【0106】
このラッパー41の総坪量は、43g/m2であった。基材シート42及びコーティング層43を含むラッパー41の不透明度は、81%であった。このラッパー41の白色度は、88%であった。
【0107】
ラッパー41の拡散係数は、0.002cm/sであった。ラッパー41の通気度は、1コレスタユニット未満であった。染み発生率は、27.5%であり、染み抑制効果は、有り「〇」であった。結晶抑制効果は有り「〇」であった。
【0108】
[実施例2]
基材シート42として、伝統的紙巻たばこにも使用される一般的なチップペーパーの原紙(TP原紙)を用いた。この基材シート42の坪量は、36g/m2であった。
【0109】
ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)を用いた。このポリビニルアルコールを基材シート42の一方の面にフレキソコーターを用いて、塗布してラッパー41を形成した。基材シート42に対するポリビニルアルコールの塗布量(塗工量)は、3.8g/m2とした。
【0110】
このラッパー41の総坪量は、40g/m2であった。基材シート42及びコーティング層43を含むラッパー41の不透明度は、80%であった。このラッパー41の白色度は、88%であった。
【0111】
ラッパー41の拡散係数は、0.000cm/sであった。ラッパー41の通気度は、1コレスタユニット未満であった。染み発生率は、0%であり、染み抑制効果は、有り「〇」であった。結晶抑制効果は有り「〇」であった。
【0112】
[実施例3]
基材シート42として、伝統的紙巻たばこにも使用される一般的なチップペーパーの原紙(TP原紙)を用いた。この基材シート42の坪量は、36g/m2であった。
【0113】
ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いた。このエチレン酢酸ビニル共重合体を基材シートの一方の面にコーターを用いて、塗布してラッパー41を形成した。基材シート42に対するエチレン酢酸ビニル共重合体の塗布量(塗工量)は、4.5g/m2とした。
【0114】
このラッパー41の総坪量は、41g/m2であった。基材シート42及びコーティング層43を含むラッパー41の不透明度は、81%であった。このラッパー41の白色度は、89%であった。
【0115】
ラッパー41の拡散係数は、0.022cm/sであった。ラッパー41の通気度は、1コレスタユニット未満であった。染み発生率は、1.5%であり、染み抑制効果は、有り「〇」であった。結晶抑制効果は有り「〇」であった。
【0116】
[実施例4]
基材シート42として、グラシン紙を用いた。この基材シート42の坪量は、35g/m2であった。
【0117】
このラッパー41には、コーティング層43がなく、塗布物質を用いていない。このラッパー41の総坪量すなわち基材シート42の総坪量は、グラシン紙の坪量と同じ35g/m2であった。このラッパー41の不透明度すなわち基材シート42の不透明度は、14%であった。ラッパー41の白色度すなわち基材シート42の白色度は、74%であった。
【0118】
ラッパー41の拡散係数すなわち基材シート42の拡散係数は、0.006cm/sであった。ラッパー41の通気度すなわち基材シート42の通気度は、0.7コレスタユニットであり、1コレスタユニット未満であった。染み発生率は、0%であり、染み抑制効果は、有り「〇」であった。結晶抑制効果は有り「〇」であった。
【0119】
[実施例5]
基材シート42は、外側の第1基材シート42と、内側の第2基材シート42Aとを有する。第2基材シート42Aの一方の面には、コーティング層43が設けられている。第1基材シート42として、TP原紙を用いた。この基材シート42の坪量は、37g/m2であった。第2基材シート42Aとして、P10000Cと称される不織布を用いた。この基材シート42Aの坪量は、24g/m2であった。
【0120】
ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、樹脂であるポリ酢酸ビニル(PVAc)を用いた。このポリ酢酸ビニルを基材シート42または基材シート42Aの一方の面にコーターを用いて塗布し、このポリ酢酸ビニルに基材シート42Aまたは基材シート42を重ねてラッパー41を形成した。基材シート42または基材シート42Aに対するポリ酢酸ビニルの塗布量(塗工量)は、1.1g/m2とした。
【0121】
このラッパー41の総坪量は、62g/m2であった。ラッパー41の不透明度は、80%であった。このラッパー41の白色度は、86%であった。
【0122】
ラッパー41の拡散係数は、0.015cm/sであった。ラッパー41の通気度は、2.3コレスタユニットであった。染み発生率は、0%であり、染み抑制効果は、有り「〇」であった。結晶抑制効果は有り「〇」であった。
【0123】
[実施例6]
基材シート42は、外側の第1基材シート42と、内側の第2基材シート42Aとを有する。第2基材シート42Aの一方の面には、コーティング層43が設けられている。第1基材シート42として、TP原紙を用いた。この基材シート42の坪量は、37g/m2であった。第2基材シート42Aとして、グラシン紙を用いた。この基材シート42Aの坪量は、25g/m2であった。
【0124】
ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、樹脂であるポリ酢酸ビニル(PVAc)を用いた。このポリ酢酸ビニルを基材シート42または基材シート42Aの一方の面にコーターを用いて塗布し、このポリ酢酸ビニルに基材シート42Aまたは基材シート42を重ねてラッパー41を形成した。基材シート42または基材シート42Aに対するポリ酢酸ビニルの塗布量(塗工量)は、1.9g/m2とした。
【0125】
このラッパー41の総坪量は、64g/m2であった。ラッパー41の不透明度は、81%であった。このラッパー41の白色度は、86%であった。
【0126】
ラッパー41の拡散係数は、0.001cm/sであった。ラッパー41の通気度は、0.7コレスタユニットであった。染み発生率は、0%であり、染み抑制効果は、有り「〇」であった。結晶抑制効果は有り「〇」であった。
【0127】
[実施例7]
基材シート42は、外側の第1基材シート42と、内側の第2基材シート42Aとを有する。第2基材シート42Aの一方の面には、コーティング層43が設けられている。第1基材シート42として、伝統的紙巻たばこにおいて、たばこ充填材23を円柱形に巻き上げるための巻紙やフィルターを円柱形に巻き上げるためのラッパーとして使用される紙(商品名:NPNP1)を用いた。NPNP1は、製紙メーカーから商業的に入手可能である。この基材シート42の坪量は、35g/m2であった。第2基材シート42Aとして、グラシン紙を用いた。この基材シート42Aの坪量は、25g/m2であった。
【0128】
ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、樹脂であるポリ酢酸ビニル(PVAc)を用いた。このポリ酢酸ビニルを基材シート42または基材シート42Aの一方の面にコーターを用いて塗布し、このポリ酢酸ビニルに基材シート42Aまたは基材シート42を重ねてラッパー41を形成した。基材シート42または基材シート42Aに対するポリ酢酸ビニルの塗布量(塗工量)は、1.8g/m2とした。
【0129】
このラッパー41の総坪量は、62g/m2であった。ラッパー41の不透明度は、78%であった。このラッパー41の白色度は、89%であった。
【0130】
ラッパー41の拡散係数は、0.003cm/sであった。ラッパー41の通気度は、1.5コレスタユニットであった。染み発生率は、0%であり、染み抑制効果は、有り「〇」であった。結晶抑制効果は有り「〇」であった。
【0131】
[実施例8]
基材シート42は、外側の第1基材シート42と、内側の第2基材シート42Aとを有する。第2基材シート42Aの一方の面には、コーティング層43が設けられている。第1基材シート42として、TP原紙を用いた。この基材シート42の坪量は、37g/m2であった。第2基材シート42Aとして、TP原紙を用いた。この基材シート42Aの坪量は、37g/m2であった。
【0132】
ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、樹脂であるポリ酢酸ビニル(PVAc)を用いた。このポリ酢酸ビニルを基材シート42または基材シート42Aの一方の面にコーターを用いて塗布し、このポリ酢酸ビニルに基材シート42Aまたは基材シート42を重ねてラッパー41を形成した。基材シート42または基材シート42Aに対するポリ酢酸ビニルの塗布量(塗工量)は、1.5g/m2とした。
【0133】
このラッパー41の総坪量は、76g/m2であった。ラッパー41の不透明度は、87%であった。このラッパー41の白色度は、88%であった。
【0134】
ラッパー41の拡散係数は、0.009cm/sであった。ラッパー41の通気度は、1.0コレスタユニットであった。染み発生率は、0%であり、染み抑制効果は、有り「〇」であった。結晶抑制効果は有り「〇」であった。
【0135】
[比較例1]
基材シート42として、伝統的紙巻たばこにおいて、たばこ充填材23を円柱形に巻き上げるための巻紙やフィルターを円柱形に巻き上げるためのラッパーとして使用される紙(商品名:NPNP1)を用いた。NPNP1は、製紙メーカーから商業的に入手可能である。この基材シート42の坪量は、35g/m2であった。この基材シート42には、樹脂や増粘剤を塗布せず、比較例1のラッパー41は、コーティング層43を持たない。このラッパー41(基材シート42)の不透明度は、83%であった。ラッパー41の白色度は、94%であった。
【0136】
ラッパー41の拡散係数は、1.009cm/sであった。ラッパー41の通気度は、15コレスタユニットであった。染み発生率は、100%であり、染み抑制効果は、なし「×」であった。結晶抑制効果はなし「×」であった。
【0137】
[比較例2]
基材シート42として、伝統的紙巻たばこにも使用される一般的なチップペーパーの原紙(TP原紙)を用いた。この基材シート42の坪量は、36g/m2であった。この基材シート42には、樹脂や増粘剤を塗布せず、比較例2のラッパー41は、コーティング層43を持たない。このラッパー41(基材シート42)の不透明度は、79%であった。ラッパー41の白色度は、88%であった。
【0138】
ラッパー41の拡散係数は、0.101cm/sであった。ラッパー41の通気度は、1コレスタユニット未満であった。染み発生率は、100%であり、染み抑制効果は、なし「×」であった。結晶抑制効果はなし「×」であった。
【0139】
[比較例3]
基材シート42として、紙(商品名:NPNP1)を用いた。この基材シート42の坪量は、35g/m2であった。ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)を用いた。このポリビニルアルコールを基材シート42の一方の面にダイコーターを用いて、塗布してラッパー41を形成した。基材シート42に対するポリビニルアルコールの塗布量(塗工量)は、1.2g/m2とした。このラッパー41の不透明度は、83%であった。ラッパー41の白色度は、94%であった。
【0140】
ラッパー41の拡散係数は、0.599cm/sであった。ラッパー41の通気度は、8.5コレスタユニットであった。染み発生率は、100%であり、染み抑制効果は、なし「×」であった。結晶抑制効果はなし「×」であった。
【0141】
[比較例4]
基材シート42として、紙(商品名:NPNP1)を用いた。この基材シート42の坪量は、35g/m2であった。ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、増粘剤であるペクチンを用いた。このペクチンを基材シート42の一方の面にグラビアコーターを用いて、塗布してラッパー41を形成した。基材シート42に対するペクチンの塗布量(塗工量)は、0.7g/m2とした。このラッパー41の不透明度は、82%であった。ラッパー41の白色度は、93%であった。
【0142】
ラッパー41の拡散係数は、0.358cm/sであった。ラッパー41の通気度は、4.8コレスタユニットであった。染み発生率は、100%であり、染み抑制効果は、なし「×」であった。結晶抑制効果はなし「×」であった。
【0143】
[比較例5]
基材シート42として、FXASNPと称される紙を用いた。FXASNPは、フィブリル化された木材パルプを原料として作られた紙である。この基材シート42の坪量は、36g/m2であった。ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、増粘剤であるペクチンを用いた。このペクチンを基材シート42の一方の面にグラビアコーターを用いて、塗布してラッパー41を形成した。基材シート42に対するペクチンの塗布量(塗工量)は、0.2g/m2とした。このラッパー41の不透明度は、75%であった。ラッパー41の白色度は、86%であった。
【0144】
ラッパー41の拡散係数は、1.352cm/sであった。ラッパー41の通気度は、12.6コレスタユニットであった。染み発生率は、100%であり、染み抑制効果は、なし「×」であった。結晶抑制効果はなし「×」であった。
【0145】
[比較例6]
基材シート42は、外側の第1基材シート42と、内側の第2基材シート42Aとを有する。第2基材シート42Aの一方の面には、コーティング層43が設けられている。第1基材シート42として、NPNP1と称される紙を用いた。この基材シート42の坪量は、35g/m2であった。第2基材シート42Aとして、P10000Cを用いた。この基材シート42Aの坪量は、24g/m2であった。
【0146】
ラッパー41のコーティング層43に用いられる塗布物質として、樹脂であるポリ酢酸ビニル(PVAc)を用いた。このポリ酢酸ビニルを基材シート42または基材シート42Aの一方の面にコーターを用いて塗布し、このポリ酢酸ビニルに基材シート42Aまたは基材シート42を重ねてラッパー41を形成した。基材シート42または基材シート42Aに対するポリ酢酸ビニルの塗布量(塗工量)は、1.8g/m2とした。
【0147】
このラッパー41の総坪量は、61g/m2であった。このラッパー41の不透明度は、83%であった。ラッパー41の白色度は88%であった。
【0148】
ラッパー41の拡散係数は、0.245cm/sであった。ラッパー41の通気度は、5.7コレスタユニットであった。染み発生率は、0%であり、染み抑制効果は、有り「〇」であった。結晶抑制効果はなし「×」であった。
【0149】
[考察]
以上説明した、実施例1-8、比較例1-6を考察すると、以下のことが言える。
【0150】
比較例1のラッパー41の拡散係数は1cm/s以上であり、実施例1-8の例と比べて高い。比較例2のラッパー41の拡散係数は0.101cm/sであり、実施例1-8の例と比べて高い。比較例3-6のラッパー41の拡散係数は0.245cm/s以上であり、実施例1-8の例と比べて高い。比較例1-6の拡散係数の下限は比較例2の0.101cm/sである。このため、染み抑制効果および結晶抑制効果を持つためには、ラッパー41の拡散係数は、少なくとも0.101cm/s未満であることが必要であることが認識される。特に、実施例1-8のように、拡散係数が0cm/s~0.022cm/sのラッパー41は、染み抑制効果および結晶抑制効果を持つ例として、認識される。ラッパー41の拡散係数の上限値は、0.022cm/sと0.101cm/sとの間である、といえる。
以上のことから、染み抑制効果および結晶抑制効果を持つためには、ラッパー41の拡散係数が大きく寄与することが認識される。ラッパー41の拡散係数は0cm/s以上であり、拡散係数の上限値は0.022cm/sと0.10cm/sとの間にあることがわかった。
【0151】
実施例1-8の通気度は、実施例の6/8が1コレスタユニット以下であり、最高値が実施例5の2.3コレスタユニットであった。比較例1-6の通気度は、比較例2のみが1コレスタユニット未満であったが、比較例の5/6が4.8コレスタユニット以上であった。このため、実施例1-8の通気度は、比較例の通気度に比べて低いといえる。すなわち、拡散係数との関係があるが、通気度はたとえば1コレスタユニット以下の値であることが好適である、と推定される。
【0152】
コーティング層43は、必ずしも必要ではないが、コーティング層43の材質は問わず、コーティング層43は、非金属の樹脂(ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル)又は増粘剤(アラビアガム)であれば良いことが分かった。このことは、コーティング層43となるコーティング剤は、基材シート42のミクロポア内に侵入可能で、かつ当該ミクロポア内で固まってミクロポアを閉塞できる組成物であれば、どのような組成物でも構わないということを示唆している。また、実施例1-4のように、基材シート42を有し、基材シート42Aを有していない2層又は1層のラッパー41の通気度の目安としては、1コレスタユニット未満であることが分かった。
【0153】
なお、比較例6について、基材シート42としてNPNP1を用い、基材シート42AとしてP10000Cを用いる例について説明した。コーティング層43の塗布量が異なるが、実施例5とは、用いる基材シート42が異なっている。NPNP1は、TP原紙に比べて拡散係数及び通気度を大きくすることに寄与していると想定される。このため、ラッパー41は、内側の基材シート42Aだけでなく、外側の基材シート42の選択も重要であるといえる。
【0154】
本件出願の発明の他の実施態様を説明する。
[1]
揮発性香料を含むたばこ充填材と、前記たばこ充填材を取り囲むラッパーと、を有するたばこ部と、
フィルター部と、
前記たばこ部の前記フィルター部に対向する第1端面とは反対側の第2端面を覆うように設けられ、通気性を有する付加セグメントと、
を備える非燃焼加熱型香味吸引物品。
[2]
前記付加セグメントは、フィルターである[1]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。[3]
前記付加セグメントは、中心に中空部を有するセンターホールセグメントである[1]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[4]
前記付加セグメントは、前記たばこ部と、前記フィルター部と、を連結する連結部を延長して形成した突出部である[1]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[5]
前記連結部は、ペーパーである[1]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[6]
前記たばこ部と、前記フィルター部と、を連結する連結部を備える[1]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[7]
[1]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品と、
前記非燃焼加熱型香味吸引物品に加熱するヒータと、
を備える電気加熱型香味吸引システム。
[8]
前記ヒータは、前記非燃焼加熱型香味吸引物品を30℃~400℃で加熱する[7]に記載の電気加熱型香味吸引システム。
[A]
たばこ充填物と、揮発性香料と、を含むたばこ充填材と、
前記たばこ充填材を取り囲むラッパーと、
を有するたばこ部を備え、
前記ラッパーの拡散係数は0cm/s以上であり、前記拡散係数の上限値は0.022cm/sと0.10cm/sとの間にある、非燃焼加熱型香味吸引物品。
[B]
前記ラッパーの前記拡散係数は、0cm/sから0.022cm/sである、[A]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[C]
前記ラッパーは、前記拡散係数の紙製及び/又は不織布製の基材シートを有する、[A]又は[B]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[D]
前記ラッパーは、紙製及び/又は不織布製の基材シートと、前記基材シートに設けられる非金属のコーティング層と、を有し、
前記拡散係数は、前記基材シート及び前記コーティング層により規定される、[A]又は[B]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[E]
前記ラッパーは、一方の端部と、前記一方の端部とは反対側に設けられ前記一方の端部に対して貼り合わされる他方の端部と、を有し、
前記一方の端部および前記他方の端部の少なくとも一方に対応する部分の前記コーティング層には、濡れ性を改善する表面処理が施され、
前記表面処理が施された面は、前記一方の端部と前記他方の端部との間の接着面をなす、[D]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[F]
前記ラッパーは、一方の端部と、前記一方の端部とは反対側に設けられ前記一方の端部に対して貼り合わされる他方の端部と、を有し、
前記一方の端部および前記他方の端部のいずれか一方に対応する部分には、前記コーティング層が形成されない非形成領域を有し、
前記非形成領域は、前記一方の端部と前記他方の端部との間の接着面をなす、[D]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[G]
前記ラッパーの通気度は、1コレスタユニット未満である、[A]乃至[D]のいずれか1に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[H]
前記たばこ充填物は、たばこ葉の刻み、及び、たばこ再生シートの少なくとも一方を含む、[A]乃至[D]のいずれか1に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[I]
前記たばこ部に隣接して設けられたフィルター部と、
前記たばこ部の前記フィルター部に対向する第1端面とは反対側の第2端面を覆うように設けられ、通気性を有する付加セグメントと、
を備える、[A]乃至[D]のいずれか1に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[J]
前記ラッパーは、不透明度が72%以上、白色度が80%以上、坪量が50g/m2以下である、[A]乃至[D]のいずれか1に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[K]
前記ヒータは、前記非燃焼加熱型香味吸引物品を30℃~400℃で加熱する、[J]に記載の電気加熱型香味吸引システム。
[L]
前記たばこ充填材は、前記たばこ充填物の重量に対して5重量%~30重量%のエアロゾル生成基材を含む、[A]乃至[D]のいずれか1に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[M]
前記エアロゾル生成基材は、グリセリンを含む、[L]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品。
[N]
拡散係数が0cm/s以上であり、前記拡散係数の上限値が0.022cm/sと0.10cm/sとの間にあるラッパーを形成すること、
前記ラッパーの一方の端部と、前記一方の端部とは反対側に設けられ前記一方の端部に対して貼り合わされる他方の端部とを接着剤で接着して揮発性香料を含むたばこ充填材を前記ラッパーで取り囲むこと
を含む、非燃焼加熱型香味吸引物品の製造方法。
[O]
前記ラッパーを形成することは、前記ラッパーの紙製及び/又は不織布製の基材シートの、前記たばこ充填材に当接する面側にコーティング層を形成することを含み、
前記ラッパーの前記一方の端部と前記他方の端部とを接着剤で接着することは、前記ラッパーの前記一方の端部と前記他方の端部との少なくとも一方に対応する部分の前記コーティング層に濡れ性を改善する表面処理を施すこと、及び、前記表面処理を施した面を前記接着剤の接着面とすることを含む、
[N]に記載の非燃焼加熱型香味吸引物品の製造方法。
【0155】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
11…電気加熱型香味吸引システム、12…本体、14…ロッド、23…たばこ充填材、24…たばこ部、第1端面24A、第2端面24B、25…吸口、26…フィルター部、27…連結部、41…ラッパー、42…基材シート、43…コーティング層、41A…一方の端部、41B…他方の端部、44…重ね合わせ部、45…接着剤、46…非形成領域、47…接着面、51…付加セグメント、51A…中空部。