(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113893
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】抗CTLA-4抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230808BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230808BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230808BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230808BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230808BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230808BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230808BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12P21/08
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095262
(22)【出願日】2023-06-09
(62)【分割の表示】P 2020503984の分割
【原出願日】2018-07-26
(31)【優先権主張番号】62/537,753
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/588,853
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/645,284
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/685,599
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アイナー・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】エラ・イオッフェ
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・ブローヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ギャビン・サーストン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・オルソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)を発現する免疫細胞を標的とし、CTLA-4活性を調節するために有用であるCTLA-4に結合する抗体およびその抗原結合断片を提供する。
【解決手段】本発明の様々な実施形態では、抗体は、CTLA-4に特異的に結合する完全ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、CTLA-4活性を阻害または中和するために有用であり、よってT細胞を活性化する手段および/または癌もしくはウイルス感染症などの疾患もしくは障害を治療するための手段を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号194のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)内に含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号202のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)内に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体または抗原結合断片が、それぞれ配列番号196、198、200、204、206、および208のアミノ酸配列からなるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3を含む、請求項1に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号194/202のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項2に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合断片が、完全ヒト抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖が、配列番号509のアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
重鎖および軽鎖を含み、前記軽鎖が、配列番号510のアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖が、配列番号509のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が、配列番号510のアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
配列番号509のアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号510のアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含む、CTLA-4に特異的に結合する完全ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
CTLA-4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、HCVRの3つのCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、LCVRの3つのCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含み、前記HCVRが、
(i)配列番号194のアミノ酸配列、
(ii)配列番号194と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(iii)配列番号194と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
(iv)最大10個のアミノ酸置換を有する配列番号194のアミノ酸配列を含み、
前記LCVRが、
(v)配列番号202のアミノ酸配列、
(vi)配列番号202と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(vii)配列番号202と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
(viii)最大10個のアミノ酸置換を有する配列番号202のアミノ酸配列を含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合断片が、最大10個のアミノ酸置換を有する配列番号194のアミノ酸配列を含むHCVRを含む、請求項11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合断片が、最大10個のアミノ酸置換を有する配列番号202のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記HCVRが、配列番号194と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
前記LCVRが、配列番号202と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
前記HCVRが、配列番号194と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
前記LCVRが、配列番号202と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
HCDR1が、配列番号196のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号196とは異なるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、配列番号198のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号198とは異なるアミノ酸配列を含み、HCDR3が、配列番号200のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号200とは異なるアミノ酸配列を含み、LCDR1が、配列番号204のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号204とは異なるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、配列番号206のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号206とは異なるアミノ酸配列を含み、LCDR3が、配列番号208のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号208とは異なるアミノ酸配列を含む、請求項11~17のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
HCDR1が、配列番号196のアミノ酸配列を含み、HCDR2が、配列番号198のアミノ酸配列を含み、HCDR3が、配列番号200のアミノ酸配列を含み、LCDR1が、配列番号204のアミノ酸配列を含み、LCDR2が、配列番号206のアミノ酸配列を含み、LCDR3が、配列番号208のアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
HCVRが、配列番号194のアミノ酸配列を含み、LCVRが、配列番号202のアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体または希釈剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項24】
請求項22に記載のポリヌクレオチドおよび/または請求項23に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項25】
請求項24に記載のベクターを発現する、宿主細胞。
【請求項26】
抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を産生する方法であって、前記抗体または断片の産生を可能にする条件下で、請求項25に記載の宿主細胞を成長させることと、そのように産生された前記抗体または断片を回収することと、を含む、方法。
【請求項27】
許容される担体を含む薬学的組成物として、前記抗体またはその抗原結合断片を製剤化することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
対象における腫瘍または腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、それを必要とする前記対象に、治療有効量の請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項29】
前記腫瘍が、原発性または再発性腫瘍である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍が、定着腫瘍である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記腫瘍が、血液癌、脳癌、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌、骨癌、結腸癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、結腸直腸癌、中皮腫、B細胞リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される疾患または障害を有する対象に存在する、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体またはその抗原結合断片が、初回用量として投与され、続いて1つ以上の二次用量が投与され、各二次用量が、直前の用量の1~12週間後に投与される、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体または抗原結合断片が、約25~600mgの用量で投与される、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体またはその抗原結合断片が、第2の治療剤と組み合わせて前記対象に投与される、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の治療剤が、PD-1阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二重特異性抗体、酸化防止剤などの栄養補助剤、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞毒性剤、放射線、NSAID、コルチコステロイド、ならびに前記疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状を改善するために有用な任意の他の療法からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の治療剤が、PD-1阻害剤である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記PD-1阻害剤が、セミプリマブ、ニボルマブ、またはペンブロリズマブである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記PD-1阻害剤が、前記対象の体重の1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgの用量で投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記PD-1阻害剤が、50~1200mgの用量で投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体またはその抗原結合断片が、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内に投与される、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
非小細胞肺癌の治療を必要とする対象において非小細胞肺癌を治療する方法であって、前記対象に、(a)配列番号194のアミノ酸配列を含むHCVRのCDRおよび配列番号202のアミノ酸配列を含むLCVRのCDRを含む抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片と、(b)抗PD-1抗体またはその抗原結合断片と、を投与することを含む、方法。
【請求項42】
前記抗CTLA-4抗体が、それぞれ、配列番号196-198-200-204-206-208からなる、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗CTLA-4抗体が、配列番号194のアミノ酸配列を含むHCVRと、配列番号202のアミノ酸配列を含むLCVRと、を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗CTLA-4抗体が、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片が、配列番号509のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号510のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記抗PD-1抗体が、セミプリマブである、請求項41~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片が、25~600mgの用量で投与される、請求項41~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記抗PD-1抗体が、50~1200mgの用量で投与される、請求項41~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記CTLA-4抗体またはその抗原結合断片が、初回用量として投与され、続いて1つ以上の二次用量が投与され、各二次用量が、直前の用量の1~12週間後に投与される、請求項41~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体、前記抗原結合断片、または前記薬学的組成物が、抗PD-1抗体と組み合わせて使用される、非小細胞肺癌(NSCLC)の治療における使用のための、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体もしくはその断片、または請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項51】
前記抗CTLA-4抗体が、配列番号194のアミノ酸配列を含むHCVRのCDRと、配列番号202のアミノ酸配列を含むLCVRのCDRと、を含む、請求項50に記載の使用のための抗体もしくはその断片または薬学的組成物。
【請求項52】
前記抗PD-1抗体が、セミプリマブである、請求項50または51に記載の使用のための抗体もしくはその断片または薬学的組成物。
【請求項53】
前記NSCLCが、進行性または転移性NSCLCである、請求項50~52のいずれか一項に記載の使用のための抗体もしくはその断片または薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年6月29日に作成され、178,018バイトを含有するファイル10360WO01-Sequence.txtとしてコンピュータ可読形式で提出された配列表を参照により組み込む。
【0002】
本発明は、免疫調節受容体細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に特異的に結合する抗体および抗体の抗原結合断片、ならびにそれらの抗体を使用する治療および診断方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、CD152としても知られる)は、従来型および制御性T細胞上に発現したI型膜貫通T細胞阻害チェックポイント受容体である。CTLA-4は、その天然リガンドであるB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)に結合する刺激性受容体CD28を打ち負かすことによって、T細胞の活性化を負に制御する。初期T細胞の活性化は、抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合性複合体クラスIまたはII(MHCIまたはMHCII)タンパク質によって提示される特定のペプチドを認識するT細胞受容体(TCR)を刺激することによって達成される(非特許文献1)。活性化されたTCRは、順にシグナル伝達事象のカスケードを開始し、これはアクチベータータンパク質1(AP-1)、活性化T細胞の核因子(NFAT)、または活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)のなどの様々な転写因子の発現を制御するプロモーターによって駆動される、トランスフェクトされたレポーター遺伝子の発現によってモニターすることができる。T細胞応答は次いで、CD28、CTLA-4(細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4)、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)、またはその他の分子などのT細胞上に構成的または誘導的に発現した共刺激性または共阻害性受容体の関与を介してさらに精製される(非特許文献2)。
【0004】
共受容体であるCD28およびCTLA-4は、抗原提示細胞(APC)上で発現した、同じリガンドであるCD80およびCD86について競合する。CTLA-4は、CD28よりも高い親和性でCD80およびCD86に結合し、デコイとして機能し、リガンドを隔離してT細胞活性化の低減をもたらすことによって、CD28の活性化を阻害する(非特許文献3、非特許文献4および非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Goldrath et al.1999,Nature 402:255-262
【非特許文献2】Sharpe et al.2002,Nat.Rev.Immunol.2:116-126
【非特許文献3】Alegre et al.2001,Nat.Rev.Immunol.1:220-228
【非特許文献4】Walker et al.2011,Nat.Rev.Immunol.11:852-863
【非特許文献5】Buchbinder et al.,2016,American Journal of Clinical Oncology,39:98-106
【発明の概要】
【0006】
本発明は、CTLA-4に結合する抗体およびその抗原結合断片を提供する。本発明の抗体は、とりわけ、CTLA-4を発現する免疫細胞を標的とし、CTLA-4活性を調節するために有用である。特定の実施形態では、本発明の抗体は、例えば、T細胞媒介性殺滅が有益または所望である状況下で、CTLA-4活性の阻害もしくは中和および/またはT細胞活性化の刺激に有用である。特定の実施形態では、抗体は、制御性T細胞機能の阻害および/または消耗したT細胞の再活性化に有用である。本発明の抗CTLA-4抗体、またはその抗原結合部分は、例えば、免疫応答を調節するため、および/または抗体を腫瘍細胞もしくは感染細胞などの特定の細胞タイプに標的化するために、多重特異性抗原結合分子の一部として含まれてもよい。抗体は、癌およびウイルス感染症などの疾患または障害の治療において有用である。
【0007】
本発明の抗体は、完全長(例えば、IgG1抗体またはIgG4抗体)であり得、または抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)2、またはscFv断片)のみを含んでもよく、機能性に影響するように、例えば、残存するエフェクター機能を除去するように修飾されてもよい(Reddy et al.,2000,J.Immunol.164:1925-1933)。特定の実施形態では、抗体は、二重特異性であってもよい。
【0008】
第1の態様では、本発明は、CTLA-4に特異的に結合する、単離された組換えモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態では、抗体は、完全にヒトのものである。
【0009】
本発明の例示的な抗CTLA-4抗体は、本明細書の表1および2に列挙される。表1は、例示的な抗CTLA-4抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、および軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のアミノ酸配列識別子を説明する。表2は、例示的な抗CTLA-4抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2 HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3の核酸配列識別子を説明する。
【0010】
本発明は、表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCVR、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0011】
本発明はまた、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCVR、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0012】
本発明はまた、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかと対形成した、表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれかを含む、HCVRおよびLCVRのアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態によると、本発明は、表1に列挙された例示的な抗CTLA-4抗体のいずれかに含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態では、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/298、314/322、330/338、
346/354、362/370、378/386、394/402、410/418、426/434、442/450、458/466、474/482、および490/498からなる群から選択される。特定の実施形態では、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号194/202(例えば、H1H19303P)または290/298(例えば、H1H19319P2)のうちの1つから選択される。特定の実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を提供し、当該HCVRは、最大10個のアミノ酸置換を有する表1に列挙されたアミノ酸配列を含み、当該LCVRは、最大10個のアミノ酸置換を有する表1に列挙されたアミノ酸配列を含む。例えば、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を提供し、当該HCVRは、最大10個のアミノ酸置換を有する配列番号194のアミノ酸配列を含み、当該LCVRは、最大10個のアミノ酸置換を有する配列番号202のアミノ酸配列を含む。別の例示的な実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を提供し、当該HCVRは、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号194のアミノ酸配列を含み、当該LCVRは、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号202のアミノ酸配列を含む。
【0013】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0014】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0015】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0016】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0017】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0018】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0019】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかと対形成した表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかを含むHCDR3およびLCDR3のアミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供す
る。特定の実施形態によると、本発明は、表1に列挙された例示的な抗CTLA-4抗体のいずれかに含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号200/208(例えば、H1H19303P)および296/304(例えば、H1H19319P2)からなる群から選択される。
【0020】
本発明はまた、HCVRおよびLCVRを含む抗体またはその抗原結合断片を提供し、当該HCVRは、1アミノ酸だけ表1に列挙されたアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含むHCDR1、1アミノ酸だけ表1に列挙されたアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含むHCDR2、および1アミノ酸だけ表1に列挙されたアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。特定の実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗体またはその抗原結合断片を提供し、当該LCVRは、1アミノ酸だけ表1に列挙されたアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含むLCDR1、1アミノ酸だけ表1に列挙されたアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含むLCDR2、および1アミノ酸だけ表1に列挙されたアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。例えば、本発明は、HCVRおよびLCVRを含むCTLA-4抗体またはその抗原結合断片を提供し、当該HCVRは、配列番号196のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号196とは異なるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号198のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号198とは異なるアミノ酸配列を含むHCDR2、および配列番号200のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号200とは異なるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。別の例示的な実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗体またはその抗原結合断片を提供し、当該LCVRは、配列番号204のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号204とは異なるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号206のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号206とは異なるアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号208のアミノ酸配列または1アミノ酸だけ配列番号208とは異なるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0021】
本発明はまた、表1に列挙された例示的な抗CTLA-4抗体のいずれかに含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号196-198-200-204-206-208(例えば、H1H19303P)および292-294-296-300-302-304(例えば、H1H19319P2)からなる群から選択される。
【0022】
関連する実施形態では、本発明は、表1に列挙された例示的な抗CTLA-4抗体のいずれかによって定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。例えば、本発明は、配列番号194/202(例えば、H1H19303P)および290/298(例えば、H1H19319P2)からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含有されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む、抗体またはその抗原結合断片を含む。HCVRアミノ酸配列およびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技術は、当該技術分野において周知であり、それらを使用して、本明細書に開示される特定のHCVRアミノ酸配列および/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定することができる。CDRの境界を同定するために使用可能な例示的な規則には、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が含まれる。一般的には、Kabat定義は配列の可変性に基づいており、Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づいており、AbM定義はKabatのアプローチとChothiaのアプローチの間の折衷案である。例
えば、Kabat,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)、Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997)、およびMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照されたい。抗体内のCDR配列を同定するために、公開データベースも利用可能である。
【0023】
本発明は、修飾グリコシル化パターンを有する抗CTLA-4抗体を含む。いくつかの実施形態において、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾、または例えば、抗体依存性細胞毒性(ADCC)機能を増大させるための、オリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠失している抗体が有用であり得る(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照されたい)。他の用途において、ガラクトシル化の修飾は、補体依存性細胞毒性(CDC)を修飾するために行うことができる。
【0024】
本発明は、Fcドメインを含む抗CTLA-4抗体を含み、Fcドメインは、本明細書の他の箇所で説明されるようなIgG1またはIgG4アイソタイプを含む。
【0025】
本発明はまた、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む抗体またはその抗原結合断片とCTLA-4への特異的結合について競合する抗体およびその抗原結合断片を提供し、HCVRおよびLCVRはそれぞれ、表1に列挙されたHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0026】
本発明はまた、その天然リガンド(B7-1/CD80およびB7-2/CD86)へのCTLA-4結合をブロックする単離された抗体およびその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、CTLA-4結合をブロックする抗体またはその抗原結合断片は、CTLA-4上のB7-1/CD80および/もしくはB7-2/CD86と同じエピトープに結合し得るか、またはCTLA-4上のB7-1/CD80および/もしくはB7-2/CD86とは異なるエピトープに結合し得る。
【0027】
本発明はまた、ヒトまたは他の種からのCTLA-4に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態では、抗体は、ヒトCTLA-4および/またはサルCTLA-4に結合し得る。
【0028】
本発明はまた、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗体またはその抗原結合断片とCTLA-4への結合について交差競合する抗体およびその抗原結合断片を提供し、HCVRおよびLCVRはそれぞれ、表1に列挙されたHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0029】
本発明はまた、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗体またはその抗原結合断片と同じエピトープに結合する抗体およびその抗原結合断片を提供し、HCVRおよびLCVRはそれぞれ、表1に列挙されたHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、本発明は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗体またはその抗原結合断片と同じエピトープに結合する抗体およびその抗原結合断片を提供し、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号194/202を有する。
【0030】
本発明はまた、ヒトCTLA-4の細胞外ドメイン内に含有される1つ以上のアミノ酸と相互作用する抗CTLA-4抗体を含む。
【0031】
一実施形態では、本発明は、以下の特徴:(a)ヒトCTLA-4および/またはカニクイザルCTLA-4に特異的に結合すること、(b)CTLA-4のCD80および/またはCD86への結合をブロックすること、(c)CTLA-4誘導性T細胞下方制御をブロックし、T細胞シグナル伝達をレスキューすること、ならびに(d)癌を有する対象において腫瘍成長を抑制し、生存率を増加させることのうちの1つ以上を有する組換えヒトモノクローナル抗体または抗原結合断片を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、アゴニスト様式でCTLA-4に特異的に結合し得、すなわち、CTLA-4結合および/または活性を増強または刺激し得、他の実施形態において、抗体は、アンタゴニスト様式でCTLA-4に特異的に結合し得、すなわち、CTLA-4がそのリガンド(複数可)に結合するのをブロックし得る。
【0033】
特定の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、CTLA-4に対する第1の結合特異性および第2の標的エピトープについての第2の結合特異性を含む二重特異性である。第2の標的エピトープは、CTLA-4上または異なるタンパク質上の別のエピトープであってもよい。特定の実施形態において、第2の標的エピトープは、異なるT細胞、B細胞、腫瘍細胞、またはウイルス感染細胞を含む異なる細胞上にあってもよい。
【0034】
第2の態様において、本発明は、抗CTLA-4抗体またはその部分をコードする核酸分子を提供する。例えば、本発明は、表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0035】
本発明はまた、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0036】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0037】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0038】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0039】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたLCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0040】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたLCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0041】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたLCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0042】
本発明はまた、HCVRをコードする核酸分子を提供し、HCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットは、表1に列挙された例示的な抗CTLA-4抗体のいずれかによって定義されるとおりである。
【0043】
本発明はまた、LCVRをコードする核酸分子を提供し、LCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、表1に列挙された例示的な抗CTLA-4抗体のいずれかによって定義されるとおりである。
【0044】
本発明はまた、HCVRおよびLCVRの両方をコードする核酸分子を提供し、HCVRは、表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、LCVRは、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、表2に列挙されたLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。本発明のこの態様による特定の実施形態において、核酸分子は、HCVRおよびLCVRをコードし、HCVRおよびLCVRは、両方とも表1に列挙された同じ抗CTLA-4抗体に由来する。
【0045】
関連する態様において、本発明は、抗CTLA-4抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することができる組換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上述の核酸分子、すなわち、表1に記載のHCVR配列、LCVR配列、および/またはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。本発明はまた、抗CTLA-4抗体の重鎖または軽鎖を含むポリペプチドを発現することができる組換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上述の核酸分子、すなわち、表1に記載の重鎖または軽鎖配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。本発明の範囲内にはまた、このようなベクターが導入さ
れた宿主細胞、ならびに抗体または抗体断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって抗体またはその一部を産生する方法と、そのように産生された抗体および抗体断片を回収する方法とが含まれる。
【0046】
第3の態様において、本発明は、CTLA-4に特異的に結合する組換えヒト抗体またはその断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物を提供する。関連する態様において、本発明は、抗CTLA-4抗体と第2の治療剤との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態において、第2の治療剤は、抗CTLA-4抗体と有利に組み合わされる任意の薬剤である。抗CTLA-4抗体と有利に組み合わされ得る例示的な薬剤には、限定なしに、CTLA-4シグナル伝達を結合および/もしくは調節する他の薬剤(他の抗体またはその抗原結合断片などを含む)ならびに/またはCTLA-4に直接結合しないが、それにもかかわらず免疫細胞活性化を調節する薬剤が含まれる。本発明の抗CTLA-4抗体を含む追加の併用療法および共製剤は、本明細書の他の箇所に開示されている。
【0047】
第4の態様において、本発明は、対象において免疫応答を調節する方法を提供し、方法は、治療有効量の本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片をそれを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施形態において、本発明は、対象において免疫応答を増強する方法を提供し、方法は、対象に有効量のCTLA-4に結合する本発明の抗体またはその断片を投与することを含む。一実施形態において、本発明は、対象においてT細胞活性化を刺激または増強する方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、T細胞活性がレスキューされるようにT細胞を有効量の本発明の抗体と接触させることを含む、T細胞活性をレスキューする方法を提供する。一実施形態において、本発明は、対象においてT制御性(Treg)細胞を阻害する方法を提供し、方法は、治療有効量の本発明の抗体またはその抗原結合断片をそれを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施形態において、それを必要とする対象は、癌またはウイルス感染症などの疾患または障害に罹患している場合がある。特定の実施形態において、本発明は、T細胞を有効量の本発明の抗体と接触させることを含む、T細胞活性のCTLA-4媒介性阻害をレスキューする方法を提供する。
【0048】
第5の態様において、本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体または抗体の抗原結合部分を使用して、対象において癌またはウイルス感染症などの疾患または障害を治療するための治療方法を提供し、治療方法は、治療有効量の本発明の抗体または抗体の断片を含む薬学的組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。治療される障害は、CTLA-4活性またはシグナル伝達の刺激または阻害によって改善、改良、阻害、または予防される任意の疾患または状態である。特定の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、第2の治療剤と組み合わせてそれを必要とする対象に投与される。第2の治療剤は、別のT細胞共阻害剤に対する抗体、腫瘍細胞抗原に対する抗体、T細胞受容体に対する抗体、ウイルス感染細胞上のエピトープに対する抗体、細胞毒性剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)、化学療法剤、放射線療法、手術、免疫抑制剤、および当該技術分野で知られている他の薬物または療法からなる群から選択され得る。ある特定の実施形態において、第2の治療剤は、本発明の抗体または抗原結合断片と関連した何らかの起こり得る副作用(複数可)が生じるであろう場合、この副作用に対処またはこれを軽減するのを助ける薬剤であり得る。
【0049】
特定の実施形態において、本発明は、腫瘍成長を抑制するための方法を提供する。例えば、本発明は、対象における原発性腫瘍または転移性腫瘍による腫瘍成長を抑制することを提供する。特定の実施形態において、本発明は、癌を有する対象の生存率(例えば、無増悪生存率または全生存率)を高める方法を提供する。癌の例には、これらに限定されないが、血液癌(例えば、リンパ腫、骨髄腫、または白血病などの血液悪性腫瘍)、脳癌(
例えば、多形性膠芽腫)、肺癌(例えば、進行性または転移性NSCLCを含む、非小細胞肺癌)、頭頸部の扁平上皮癌、肝細胞癌、腎細胞癌、黒色腫、中皮腫、卵巣癌、膀胱癌、乳癌、骨癌、結腸直腸癌、腎臓癌、食道癌、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、皮膚癌、子宮頸癌、腸癌、前立腺癌、および結腸癌を含む、原発性および/または再発性癌が含まれる。特定の実施形態において、本発明は、定着腫瘍の成長を阻害または抑制するための方法を提供する。方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の抗CTLA-4抗体を含む薬学的組成物を投与することを含む。特定の実施形態において、抗体は、プログラム死-1(PD-1)阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはREGN2810などの抗PD-1抗体)、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アバルマブ、またはデュルバルマブなどの抗PD-L1抗体)、血管内皮成長因子(VEGF)アンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト、ベバシズマブ)、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤(例えば、ネスバクマブなどの抗Ang2抗体)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、CD20xCD3二重特異性抗体(例えば、REGN1979)、細胞毒、化学療法剤、癌ワクチン、手術、および放射線療法からなる群から選択される第2の治療剤と組み合わせて投与される。癌の治療における使用のための本発明の抗CTLA-4抗体と組み合わせて使用することができる追加の療法/治療剤の追加の例は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0050】
抗体またはその断片は、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内に投与され得る。特定の実施形態において、抗体またはその断片は、腫瘍内に局所的に(腫瘍周囲または腫瘍内に)投与される。抗体またはその断片は、対象の体重の約0.1mg/kg~体重の約100mg/kgの用量で投与され得る。特定の実施形態において、抗体は、それを必要とする対象に約50mg~約1000mgの量で投与される。いくつかの実施形態において、抗体は、約25mg~約600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、抗体は、約50mg~約1200mgの用量で投与される。
【0051】
本発明はまた、CTLA-4結合および/または癌などのシグナル伝達の遮断から利益を得るであろう疾患または障害の治療のための医薬品の製造における、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片の使用を含む。
【0052】
本発明はさらに、(i)CTLA-4をアンタゴナイズすることによって治療可能である疾患もしくは障害(例えば、癌)を治療するための医薬品の製造における、および/または(ii)CTLA-4をアンタゴナイズすることによって治療可能である疾患もしくは障害(例えば、癌)の治療における、抗体および抗原結合断片、またはそれらを含む薬学的組成物の使用を含む。
【0053】
別の態様において、本発明は、対象に抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体を投与することを含む、それを必要とする対象において非小細胞肺癌(進行性または転移性NSCLCを含む)を治療する方法を提供する。いくつかの事例において、抗CTLA-4抗体は、配列番号194のアミノ酸配列を含むHCVRのCDRと、配列番号202のアミノ酸配列を含むLCVRのCDRと、を含む。いくつかの事例において、抗CTLA-4抗体は、それぞれ、配列番号196-198-200-204-206-208からなる群から選択されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。いくつかの事例において、抗CTLA-4抗体は、配列番号194のアミノ酸配列を含むHCVRと、配列番号202のアミノ酸配列を含むLCVRと、を含む。いくつかの事例において、抗CTLA-4抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、セミプリマブである。本発明はまた、癌(例えば、進行性または転移性NSCLCを含む、非小細胞肺癌)の治療のための医薬品の製造におけるそのような抗体の使用を含む。
【0054】
他の実施形態は、後述の詳細な説明の精査から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】実施例7において試験(A)に記載される実験の複数の腫瘍移植後の時点での各治療群における平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示す。CTLA-4
hum/humノックインマウスに、0日目にMC38.Ova細胞(10
6細胞/マウス)をSC移植し、4つの治療群(9マウス/群)に分けた。マウスに、3、7、10、14、および17日目に、10mg/kgの3つのリード抗ヒトCTLA-4抗体(H1H19273P、またはH1H19303P、またはH1H19319)のうちのいずれか1つ、または10mg/kgのhIgG1アイソタイプ対照を腹腔内(IP)投与した。腫瘍体積は、キャリパー測定によって37日間にわたって週に2回モニターした。治療日は矢印で示される。
【
図2】実施例7において試験(A)に記載される実験について24日目の個々の腫瘍体積を示す。24日目は、全ての群における全ての動物が生存していた試験における最後の時点であった。統計的有意性は、試験後のダネットの多重比較での一元配置分散分析によって決定した(****p<0.0001)。
【
図3】実施例7において試験(A)に記載される実験についてのカプラン・マイヤー生存率曲線を示す。
【
図4】実施例7において試験(B)に記載される実験の複数の腫瘍移植後の時点での各治療群における平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示す。CTLA-4
hum/humノックインマウスに、3、6、9、13、および16日目に抗CTLA-4抗体H1H19303PまたはhIgG1アイソタイプ対照IPを投与した。腫瘍体積は、キャリパー測定によって37日間にわたって週に2回モニターした。治療日は矢印で示される。
【
図5】実施例7において試験(B)に記載される実験について20日目の個々の腫瘍体積を示す。統計的有意性は、試験後のDunnettの多重比較での一元配置分散分析によって決定した(****p<0.0001)。
【
図6】実施例7において試験(B)に記載される実験についてのカプラン・マイヤー生存率曲線を示す。
【
図7】実施例7において試験(B)に記載されるように、血清中の総H1H19303PおよびhIgG1アイソタイプ対照抗体の濃度を示す。
【
図8】実施例7において試験(B)に記載されるように、H1H19303P(■)またはアイソタイプ対照(●)に対するマウス抗ヒト抗体(MAHA)の濃度を示す。
【
図9】実施例8に記載される実験の複数の腫瘍移植後の時点での各治療群における平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示す。治療日は矢印で示される。
【
図10】実施例8に記載されるように、治療開始後10日目の個々の腫瘍体積を示す。
【
図11】実施例8に記載される実験についてのカプラン・マイヤー生存率曲線を示す。
【
図12】H1H19303P(REGN4659としても知られる)がCTLA-4
hum/humマウスにおいて定着腫瘍の成長を遅らせることを示す。マウスの脇腹にMc38.Ova細胞(5x10^5細胞/マウス)をsc移植し、腫瘍体積が100mm^3に達した10日目に治療群に無作為化し、REGN4659(25mg/kg、10mg/kg、n=10)またはアイソタイプ対照Ab(25mg/kg、n=10)を10、13、17日目に投与し、27日目まで腫瘍体積をモニターした。
図12は、各治療群における平均腫瘍成長曲線を示す。
【
図13】H1H19303P(REGN4659としても知られる)がCTLA-4
hum/humマウスにおいて定着腫瘍の成長を遅らせることを示す。マウスの脇腹にMc38.Ova細胞(5x10^5細胞/マウス)をsc移植し、腫瘍体積が100mm^3に達した10日目に治療群に無作為化し、REGN4659(25mg/kg、10mg/kg、n=10)またはアイソタイプ対照Ab(25mg/kg、n=10)を10、13、17日目に投与し、27日目まで腫瘍体積をモニターした。
図13は、試験中の全ての動物が生存していた最後の時点である21日目に測定された各治療群における個々の腫瘍体積を示す。
【
図14】hIgG1対照抗体で治療された腫瘍を有するCTLA-4
hum/humマウスにおける腫瘍内および脾臓TregおよびTエフェクター細胞上での全(表面および細胞内)ヒトCTLA-4発現の平均蛍光強度(MFI)を示す。脾臓CD8
+およびCD4
+エフェクター細胞上でのCTLA-4の発現は、アイソタイプ対照染色と区別がつかず(MFI=0)、示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の方法を説明する前に、本発明は、特定の方法および説明される実験条件が変わり得るので、このような方法および条件に限定されないことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを企図するものではないことも理解されるべきである。
【0057】
別段定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は全て、本発明の属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に説明されるものと類似のまたは等価の何らかの方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をこれより説明する。本明細書で言及される全ての出版物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
「CTLA-4」という用語は、CD152としても知られる、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4、免疫チェックポイント受容体、またはT細胞共阻害剤を指す。全長ヒトCTLA-4のアミノ酸配列は、配列番号505(アクセッション番号NP_005205.2)として提供される。「CTLA-4」という用語には、組換えCTLA-4またはその断片が含まれる。用語は、例えば、ヒスチジンタグ、マウスもしくはヒトFc、シグナル配列、またはCD300aの膜貫通および細胞質ドメインに結合したCTLA-4またはその断片も含む(aa 181-299、アクセッション番号NP_009192.2)。例えば、用語は、例えば、全長CTLA-4のC末端にmyc-myc-ポリヒスチジンタグを含む、または全長CTLA-4のC末端にマウスFc(mIgG2a)を含む、例において議論される配列を含む。非ヒト種からのものであると指定されない限り、「CTLA-4」という用語は、ヒトCTLA-4を意味する。
【0059】
CTLA-4は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバー、およびCD28のホモログであるが、リガンドCD80およびCD86に対してより大きな結合親和性を有する。CTLA-4は、Vドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに活性化T細胞および制御性T細胞上に発現した細胞質尾部を含有する223アミノ酸I型膜貫通タンパク質である。CTLA-4受容体は、抗原提示細胞(APC)上に存在するB7-1/CD80およびB7-2/CD86リガンドに結合する。
【0060】
本明細書で使用されるとき、「T細胞共阻害剤」という用語は、T細胞の活性化または抑制を介して免疫応答を調節するリガンドおよび/または受容体を指す。T細胞共シグナル伝達分子としても知られる「T細胞共阻害剤」という用語には、これらに限定されないが、プログラム死-1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、CD-28、2B4、LY108、T細胞免疫グロブリンおよびムチン3(TIM3)、免疫グロブリンおよびITIMを有するT細胞免疫受容体(TIGIT、VSIG9としても知られる)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1、CD305としても知られる)、誘導性T細胞共刺激剤(ICO
S、CD278としても知られる)、T細胞活性化のVドメインIg抑制剤(VISTA)、ならびにCD160が含まれる。
【0061】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリン分子(すなわち、「完全抗体分子」)、ならびにこれらの多量体(例えば、IgM)またはその抗原結合断片を指すよう企図される。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)および重鎖定常領域(CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインからなる)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVRまたは「VL」)および軽鎖定常領域(CL)からなる。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域へとさらに細分することができる。各VHおよびVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。本発明のある特定の実施形態において、抗体(またはその抗原結合断片)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、または天然にもしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0062】
1つ以上のCDR残基の置換または1つ以上のCDRの省略も可能である。抗体は、1つまたは2つのCDRが結合のために省かれる場合がある科学文献に記載されている。Padlan et al.(1995 FASEBJ.9:133-139)は、公開された結晶構造に基づいて、抗体とそれらの抗原との間の接触領域を分析し、CDR残基の約1/5~1/3のみが実際に抗原と接触すると結論づけた。Padlanは、1つまたは2つのCDRが抗原と接触しているアミノ酸を有さない多くの抗体も発見した(Vajdos et al.2002 J Mol Biol 320:415-428も参照されたい)。
【0063】
抗原と連絡していないCDR残基は、先行研究に基づいて、ChothiaのCDRの外側にあるKabatのCDRの領域から、分子モデリングによっておよび/または演繹的に識別することができる(例えば、CDRH2中の残基H60~H65はしばしば必要ではない)。CDRまたはその残基(複数可)が省略される場合、そのCDRまたはその残基(複数可)は、別のヒト抗体配列またはこのような配列のコンセンサスにおける対応する位置を占有するアミノ酸と置換される。CDR内の置換のための位置および置換すべきアミノ酸も演繹的に選択することができる。演繹的な置換は、保存的置換または非保存的置換であり得る。
【0064】
本明細書に開示される完全ヒト抗CTLA-4モノクローナル抗体は、対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含み得る。このような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合断片を含み、ここで、1つ以上のフレームワーク領域および/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)に変異し、もしくは別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)に変異し、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に変異する(このような配列変化を本明細書では纏めて、「生殖系列変異」と称する)。当業者は、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列変異またはそれらの組み合わせを含む多くの抗体および抗体結合断片を容易に産生することができる。ある特定の実施形態において、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基は全
て、抗体が由来した元の生殖系列配列において見出される残基へと再び変異する。他の実施形態において、ある特定の残基のみが元の生殖系列配列へと変異し戻され、例えば、変異した残基はFR1の最初の8個のアミノ酸内に、もしくは変異した残基はFR4の最後の8個のアミノ酸内に認められ、または変異した残基は、CDR1、CDR2もしくはCDR3内にのみ認められる。他の実施形態において、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)の1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が本来由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へ変異する。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へ変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持され、または異なる生殖系列配列の対応する残基へ変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列変異を含有する抗体および抗体結合断片は、結合特異性の改善、結合親和性の増加、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または増強(場合によって)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な方法で得られる抗体および抗体結合断片は、本発明の範囲内に包含される。
【0065】
本発明は、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む完全ヒト抗CTLA-4モノクローナル抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗CTLA-4抗体を含む。
【0066】
「ヒト抗体」および「完全ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用されるとき、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒトmAbは、例えば、CDR、特にCDR3における、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発によってまたはインビボでの体細胞突変異によって導入された変異)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」および「完全ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用されるとき、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトFR配列に移植されたmAbを含むことを意図しない。用語は、非ヒト哺乳動物において、または非ヒト哺乳動物の細胞において組換え産生された抗体を含む。用語は、ヒト対象から単離された、またはヒト対象において生成された抗体を含むことを意図しない。
【0067】
本明細書で使用する「組換え」という用語は、例えばDNAスプライシングおよび遺伝子導入発現を含む組換えDNA技術として当該技術分野で既知の技術または方法によって作製、発現、単離または得られた本発明の抗体またはその抗原結合断片を指す。この用語は、非ヒト哺乳類(トランスジェニック非ヒト哺乳類、例えばトランスジェニックマウスを含む)、もしくは細胞(例えば、CHO細胞)発現系において発現した抗体、または組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体を指す。
【0068】
本明細書で使用される「多重特異性抗原結合分子」という用語は、二重特異性、三重特異性、または多重特異性抗原結合分子、およびその抗原結合断片を指す。多重特異性抗原結合分子は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、または2つ以上の標的ポリペプチドのエピトープに特異的な抗原結合ドメインを含有し得る。多重特異性抗原結合分子は、単一の多機能性ポリペプチドであり得るか、または共有結合的または非共有結合的に互いに会合した2つ以上のポリペプチドの多量体複合体であり得る。「多重特異性抗原結合分子」という用語には、別の機能分子、例えば、別のペプチドま
たはタンパク質と連結または共発現され得る本発明の抗体が含まれる。例えば、抗体またはその断片は、タンパク質またはその断片などの1つ以上の他の分子実体に(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合性会合などによって)機能的に連結して、第2の結合特異性を有する二重特異性または多重特異性抗原結合分子を産生することができる。本発明によれば、「多重特異性抗原結合分子」という用語は、二重特異性、三重特異性、もしくは多重特異性抗体またはその抗原結合断片も含む。特定の実施形態において、本発明の抗体は、別の抗体またはその抗原結合断片に機能的に連結されて、第2の結合特異性を有する二重特異性抗体を産生する。本発明の二重特異性および多重特異性抗体は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0069】
「~が特異的に結合する」もしくは「~に特異的に結合する」という用語、またはこれらに類するものは、抗体もしくはその抗原結合断片が、生理学的条件下で比較的安定的である抗原と複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-8M以下の平衡解離定数を特徴とし得る(例えば、より小さなKDは、より緊密な結合を示す)。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴、およびこれらに類するものを含む。本明細書に記載されるように、抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、CTLA-4に特異的に結合する、BIACORE(商標)によって識別されている。さらに、CTLA-4における1つのドメインおよび1つ以上の追加の抗原に結合する多重特異性抗体またはCTLA-4の2つの異なる領域に結合する二重特異性は、それにもかかわらず、本明細書に使用される「特異的に結合する」抗体とみなされる。
【0070】
「高親和性」抗体という用語は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)または溶液親和性ELISAによって測定されるように、少なくとも10-8M、好ましくは10-9M、より好ましくは10-10M、さらにより好ましくは10-11M、さらにより好ましくは10-12MのKDとして表される、CTLA-4に対する結合親和性を有するmAbを指す。
【0071】
「スローオフレート」、「Koff」、または「kd」という用語は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって測定されるように、1×10-3秒-1以下、好ましくは1×10-4秒-1以下の速度定数で、CTLA-4から解離する抗体を意味する。
【0072】
抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」という用語、およびこれらに類するものは、本明細書で使用される場合、任意の天然に生じる、酵素処理で入手可能な、合成の、または遺伝子操作された、抗原を特異的に結合して複合体を形成するポリペプチドもしくは糖タンパク質を含む。抗体の「抗原結合断片」または「抗体断片」という用語は、本明細書で使用されるとき、CTLA-4に結合する能力を保有する抗体の1つ以上の断片を指す。
【0073】
特定の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片は、細胞毒素、第2の抗CTLA-4抗体、腫瘍特異的抗原に対する抗体、抗癌薬、または癌もしくは慢性ウイルス感染症を含むウイルス感染症を含む疾患もしくは状態を治療するために有用な任意の他の治療部分などの、リガンドまたは治療部分(「免疫結合体」)などの部分に結合され得る。
【0074】
「単離された抗体」は、本明細書で使用されるとき、異なる抗原特異性を有する他の抗体(Ab)を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、CTLA-4に特異的に結合する単離された抗体またはその断片は、CTLA-4以外の抗原に特異的に結合するAbを実質的に含まない)。
【0075】
「遮断抗体」または「中和抗体」は、本明細書で使用されるとき(または「CTLA-4活性を中和する抗体」もしくは「アンタゴニスト抗体」は)、CTLA-4へのその結合がCTLA-4の少なくとも1つの生物学的活性の阻害をもたらす抗体を指すことが意図される。例えば、本発明の抗体は、CD80および/またはCD86へのCTLA-4結合を防止またはブロックし得る。
【0076】
本明細書で使用される「活性化抗体」または「増強抗体」(または「アゴニスト抗体」)は、CTLA-4へのその結合がCTLA-4の少なくとも1つの生物学的活性の増加または刺激をもたらす抗体を指すことが意図される。例えば、本発明の抗体は、リガンド結合(例えば、CD80またはCD86)と一貫した方法でCTLA-4に結合することにより、CTLA-4活性を増加させ、CTLA-4細胞内シグナル伝達をもたらし得る。
【0077】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、スウェーデン国ウプサラ市および米国ニュージャージー州ピスカタウェイ郡区)を使用して、バイオセンサマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によって実時間での生体分子相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。
【0078】
「KD」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体・抗原相互作用の平衡解離定数を指すことが企図される。
【0079】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして既知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、1つ超のエピトープを有し得る。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域へ結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。「エピトープ」という用語は、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位も指す。この用語は、抗体が結合する抗原の領域も指す。エピトープは、構造的または機能的と定義され得る。機能的エピトープは概して、構造エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープは、立体配座的でもあり得、すなわち、非線形アミノ酸から構成され得る。特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの分子の化学的に活性のある表面群である決定基を含み得、特定の実施形態では、特異的三次元構造特徴および/または比電荷特徴を有し得る。
【0080】
「交差競合」という用語は、本明細書で使用する場合、抗原へ結合し、別の抗体またはその抗原結合断片の結合を阻害またはブロックする抗体または抗原結合断片を意味する。この用語は、両方の配向における2つの抗体間の競合、すなわち結合して第2の抗体の結合をブロックする第1の抗体、およびその逆も含む。ある特定の実施形態において、第1の抗体および第2の抗体は、同じエピトープへ結合し得る。あるいは、第1および第2の抗体は、例えば、立体障害を介して、あるものの結合が第2の抗体の結合を阻害またはブロックするように、異なってはいるが重複しているエピトープへ結合し得る。抗体間の交差競合は、当該技術分野で既知の方法によって、例えば、リアルタイムの無標識バイオ層干渉測定アッセイによって測定してもよい。2つの抗体間の交差競合は、自己間結合によるバックグラウンドシグナルよりも低い第2の抗体の結合として表され得る(第1および第2の抗体は、同じ抗体である)。2つの抗体間の交差競合は、例えば、ベースラインの自己間バックグラウンド結合よりも低い第2の抗体の結合%として表され得る(第1および第2の抗体は、同じ抗体である)。
【0081】
「実質的な同一性」または「実質的に同一である」という用語は、核酸またはその断片を指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)での適切なヌクレオチド挿入または欠失と最
適に整列されるとき、以下に議論される、配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによって測定されるように、ヌクレオチド塩基の少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%のヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、特定の場合では、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0082】
配列同一性は、アルゴリズム、例えば、グローバルアラインメントのためのNeedleman Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch 1970,J.Mol.Biol.48:443-453)またはローカルアラインメントのためのSmith Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman 1981,J.Mol.Biol.147:195-197)を使用して計算することができる。別の好ましいアルゴリズムは、Dufresne et al in Nature Biotechnology in 2002(vol.20,pp.1269-71)によって記載され、ソフトウェアGenePAST(GQ Life Sciences,Inc.Boston,MA)で使用される。
【0083】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似の」という用語は、2つのペプチド配列が、既定のギャップ重みを使用してプログラムGAPもしくはBESTFITなどによって最適に整列された場合、少なくとも90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%、98%、または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させないであろう。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換だけ互いに異なる場合、相同性の百分率または程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。この調整を行うための手段は、当業者によく知られている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸基の例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに7)含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、参照により本明細書に組み込まれる、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443 45に開示されるPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負以外の値を有する任意の変化である。
【0084】
ポリペプチドについての配列類似性は、典型的には、配列解析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失、および他の修飾に割り当てられた類似性の測定値を使用して類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間の、または野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメーターとともに使用することができるGAPおよびBESTFITなどのプログラムを含有する。例えば、GCG第6.1版
を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムである、既定パラメーターまたは推奨パラメーターを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列の間の最良重複の領域の整列およびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上述)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメーターを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれる、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410および(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402を参照されたい。
【0085】
「治療有効量」という語句は、所望の効果のために投与されて所望の効果を生じる量を意味する。正確な量は、治療の目的によることになっており、既知の技術を使用して当業者によって確認できるであろう(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照されたい)。
【0086】
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は、ウイルス感染症または癌などの疾患または障害の改善、予防、および/または治療を必要とする動物、好ましくは哺乳動物を指す。用語には、癌、転移性癌、またはウイルス感染症を有するか、またはそのリスクがあるヒト対象が含まれる。
【0087】
本明細書で使用されるとき、「抗癌薬」は、細胞毒、ならびに代謝拮抗剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、有糸分裂阻害剤、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、シクロホスファミド、ミトタン(O,P’-(DDD))、生物製剤(例えば、抗体およびインターフェロン)、および放射性薬剤などの薬剤を含むが、これらに限定されない、癌を治療または改善または阻害するために有用な任意の薬剤を意味する。本明細書で使用されるとき、「細胞毒または細胞毒性剤」は、化学療法剤も指し、細胞に有害である任意の薬剤を意味する。例には、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、テモゾラミド、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、シスプラチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンビアスチン、コイチシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらのアナログまたはホモログが含まれる。
【0088】
本明細書で使用されるとき、「抗ウイルス薬」という用語は、宿主対象におけるウイルス感染症を治療、予防、または改善するために使用される任意の薬物または療法を指す。「抗ウイルス薬」という用語には、これらに限定されないが、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノホビル、リルピビリン、鎮痛剤、およびコルチコステロイドが含まれる。本発明の文脈において、ウイルス感染症には、これらに限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を含むウイルスによって引き起こされる長期または慢性感染症が含まれる。
【0089】
本明細書で使用されるとき、「免疫応答を増強する」という用語は、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞に対するT細胞またはNK細胞などの免疫細胞の活性の増加を指す。本発明の文脈において、用語は、T細胞活性のCTLA-4媒介性阻害のブロック、またはT
細胞の消耗状態のレスキューもしくは逆転を含む。また、制御性T細胞活性の阻害も含まれる。本発明の文脈で使用される免疫応答の増強は、腫瘍細胞の殺滅の増加および/または腫瘍成長の阻害をもたらす。
【0090】
本発明の抗体および抗原結合断片は、CTLA-4に特異的に結合し、T細胞活性化を増強する。抗CTLA-4抗体は、CTLA-4に高親和性または低親和性で結合し得る。特定の実施形態において、本発明の抗体は、遮断抗体であり得、抗体は、CTLA-4に結合し、CTLA-4シグナル伝達を阻害し得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、CTLA-4のCD80および/もしくはCD86への結合をブロックし、ならび/またはT細胞活性化を刺激もしくは増強する。いくつかの実施形態において、抗体は、CTLA-4に結合し、消耗したT細胞のアネルギー状態を逆転させる。特定の実施形態において、抗体は、CTLA-4に結合し、制御性T細胞活性を阻害する。いくつかの実施形態において、抗体は、免疫応答を刺激もしくは増強、および/または癌もしくはウイルス感染症に罹患している対象を治療するために有用であり得る。抗体は、それを必要とする対象に投与された場合、対象におけるHIV、LCMV、またはHBVなどのウイルスによる慢性感染を低減し得る。それらは、対象において腫瘍細胞の成長を阻害するために使用され得る。抗体は、単独で、または癌もしくはウイルス感染症を治療するための当該技術分野で既知の他の治療部分もしくはモダリティでの補助療法として使用され得る。
【0091】
特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体は、多重特異性抗原結合分子であり得、それらは、CTLA-4に対する第1の結合特異性、ならびに別のT細胞共阻害剤からなる群から選択される抗原、およびCTLA-4の異なるエピトープに対する第2の結合特異性を含む。
【0092】
CTLA-4に対する抗体を生成するために、以下のいずれか1つを含む免疫原を使用することができる。特定の実施形態において、本発明の抗体は、完全長の天然CTLA-4(NCBIアクセッション番号NP_005205.2参照)(配列番号505)または組換えCTLA-4ペプチドで免疫化されたマウスから得られる。あるいは、CTLA-4またはその断片は、標準的な生化学的技術を使用して産生され、免疫原として使用され得る。
【0093】
特定の実施形態において、免疫原は、CTLA-4の細胞外ドメインである。本発明の一実施形態において、免疫原は、CTLA-4の細胞外ドメインの断片である。
【0094】
いくつかの実施形態において、免疫原は、E.coliにおいてまたはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの任意の他の真核細胞もしくは哺乳動物細胞において発現した組換えCTLA-4ペプチドであり得る。
【0095】
特定の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合する抗体は、上記の領域の断片、または本明細書に記載される領域のNもしくはC末端のいずれかもしくは両方から約5~約20個のアミノ酸残基だけ指定領域を超えて延在するペプチドを使用して調製され得る。特定の実施形態において、上記の領域またはその断片の任意の組み合わせは、CTLA-4特異性抗体の調製において使用され得る。
【0096】
ペプチドは、タグ付けのために、またはKLHなどの担体分子への接合の目的のために、特定の残基の付加または置換を含むように修飾され得る。例えば、システインは、ペプチドのN末端もしくはC末端のいずれかに付加されてもよく、またはリンカー配列を付加して、例えば、免疫化のためのKLHへの結合のためのペプチドを調製してもよい。
【0097】
本発明の特定の抗CTLA-4抗体は、インビトロアッセイまたはインビボアッセイによって測定されるように、CTLA-4に結合し、その活性を中和することができる。CTLA-4に結合し、その活性を中和する本発明の抗体の能力は、本明細書に記載される、結合アッセイまたは活性アッセイを含む、当業者に知られる任意の標準的な方法を使用して測定され得る。
【0098】
結合活性を測定するための非限定的な、例示的なインビトロアッセイは、本明細書の実施例に示される。実施例3では、ヒトおよびサルCTLA-4についてのヒト抗CTLA-4抗体の結合親和性および動態定数は、表面プラズモン共鳴またはMASS-1によって決定された。実施例4では、その天然リガンドB7-1およびB7-2へのCTLA-4タンパク質結合をブロックする抗CTLA-4抗体の能力を評価するために、競合サンドイッチELISAが使用された。実施例5は、CTLA-4を発現する細胞への抗CTLA-4抗体の結合を記載する。実施例6では、T細胞を活性化し、IL-2放出をレスキューする抗CTLA-4抗体の能力を決定するために、ルシフェラーゼアッセイおよびIL-2放出アッセイが使用された。
【0099】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、癌を有する対象において、またはLCMVなどのウイルスに感染した対象において、インビトロでT細胞活性を増強または刺激することができる。特定の実施形態において、本発明の抗体は、第2のT細胞共阻害剤に対する抗体などの第2の治療剤と組み合わせて使用され、対象において免疫応答を増強し、腫瘍成長を阻害する。
【0100】
CTLA-4に特異的な抗体は、追加の標識もしくは部分を全く含有しなくてもよいか、または標識もしくは部分、例えば、N末端もしくはC末端の標識もしくは部分を含有してもよい。一実施形態では、標識または部分は、ビオチンである。結合アッセイにおいて、標識(存在する場合)の位置は、ペプチドが結合した表面に対するペプチドの向きを決定し得る。例えば、表面がアビジンで被覆されている場合、N末端ビオチンを含有するペプチドは、ペプチドのC末端部分が表面から遠位になるように配向されるであろう。一実施形態において、標識は放射性核種、蛍光色素またはMRI検出可能標識であり得る。特定の実施形態では、このような標識された抗体は、撮像アッセイを含む診断アッセイにおいて使用され得る。
【0101】
本発明の例示的な実施形態
一態様において、本発明は、ヒト細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に結合し、hCTLA-4とリガンドB7-1およびB7-2との間の相互作用をブロックする抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0102】
特定の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、T細胞活性化を誘導する。いくつかの事例において、T細胞は、細胞毒性T細胞である。いくつかの事例において、T細胞は、腫瘍浸潤リンパ球である。
【0103】
特定の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、サルCTLA-4に結合する。いくつかの事例において、抗体または抗原結合断片は、0.5nM未満のEC50でサルCTLA-4発現細胞に結合する。
【0104】
特定の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、5nM未満、1nM未満、または0.5nM未満のEC50でhCTLA-4発現細胞に結合する。
【0105】
様々な実施形態において、抗体または抗原結合断片は、完全ヒト抗体である。
【0106】
特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/298、314/322、330/338、346/354、362/370、378/386、394/402、410/418、426/434、442/450、458/466、474/482、および490/498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体とヒトCTLA-4への結合について競合する。
【0107】
特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/298、314/322、330/338、346/354、362/370、378/386、394/402、410/418、426/434、442/450、458/466、474/482、および490/498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じヒトCTLA-4上のエピトープに結合する。
【0108】
特定の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、(a)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、314、330、346、362、378、394、410、426、442、458、474、および490からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)と、(b)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、322、338、354、370、386、402、418、434、450、466、482、および498からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRと、を含む。
【0109】
特定の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/298、314/322、330/338、346/354、362/370、378/386、394/402、410/418、426/434、442/450、458/466、474/482、および490/498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖および軽鎖CDRを含む。
【0110】
特定の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、それぞれ、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-28-30-32、36-38-40-44-46-48、52-54-56-60-62-64、68-70-72-76-78-80、84-86-88-92-94-96、100-102-104-108-110-112、116-118-120-124-126-128、132-134-136-140-142-144、148-150-152-156-158-160、164-166-168-172-174-176、180-182-184-188-190-192、196-198-200-204-206-208、212-214-216-220-222-224、228-230-232-236-238-240、244-246-248-252-254-256、260-262-264-268-270-
272、276-278-280-284-286-288、292-294-296-300-302-304、308-310-312-300-302-304、316-318-320-324-326-328、332-334-336-340-342-344、348-350-352-356-358-360、364-366-368-372-374-376、380-382-384-388-390-392、396-398-400-404-406-408、412-414-416-420-422-424、428-430-432-436-438-440、444-446-448-452-454-456、460-462-464-468-470-472、476-478-480-484-486-488、および492-494-496-500-502-504からなる群から選択される、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。
【0111】
特定の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/298、314/322、330/338、346/354、362/370、378/386、394/402、410/418、426/434、442/450、458/466、474/482、および490/498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0112】
特定の実施形態において、本発明は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である抗体またはその抗原結合断片を提供する。抗体またはその抗原結合断片は、例えば、ヒトIgG1またはIgG4抗体などの、例えば、IgG1またはIgG4抗体であり得る。これらの抗体の定常領域は、野生型定常領域、または突然変異が導入された定常領域に対応し得る。
【0113】
一態様において、本発明は、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗原結合特異性および第2の標的エピトープに特異的に結合する第2の抗原結合特異性を含む多重特異性抗原結合分子を提供する。
【0114】
一態様において、本発明は、上記実施形態のいずれかの抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体または希釈剤と、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0115】
一態様において、本発明は、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合断片のポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子およびベクターを提供する。特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される抗体のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子および/またはベクターを提供する。特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子および/またはベクターを提供する。特定の実施形態において、本発明は、上記または本明細書で議論されるベクターを発現する細胞を提供する。
【0116】
一態様において、本発明は、治療有効量の本明細書に開示される抗CTLA-4抗体もしくはその抗原結合断片、またはそのような抗体もしくは抗原結合断片を含む薬学的組成物のそれを必要とする対象への投与を介してCTLA-4をアンタゴナイズすることによって治療可能である疾患または障害を治療するための方法を提供する。いくつかの事例において、疾患または障害は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、リンパ球性脈絡髄
膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる慢性ウイルス感染症である。いくつかの事例において、疾患または障害は、血液癌、脳癌、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、皮膚癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、膵臓癌、肝細胞癌、骨癌、結腸癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、結腸直腸癌、中皮腫、B細胞リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される。
【0117】
一態様において、本発明は、対象において免疫応答を増強する方法を提供し、方法は、本明細書に開示される単離された抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物を投与することを含む。特定の実施形態において、本発明は、本明細書に開示される単離された抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物を投与することを含む、対象においてT制御性(Treg)細胞を阻害する方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、対象においてT細胞活性化を増強する方法を提供し、方法は、本明細書に開示される単離された抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物を投与することを含む。特定の実施形態において、対象は、血液癌、脳癌、腎細胞癌(例えば、腎明細胞癌)、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、皮膚癌、子宮頸癌、胃癌、腎臓癌、膵臓癌、肝細胞癌、骨癌、結腸癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、結腸直腸癌、中皮腫、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫)、および黒色腫からなる群から選択される疾患または障害を有する。いくつかの実施形態において、対象は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる慢性ウイルス感染症を有する。特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体は、PD-1阻害剤、LAG3阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二重特異性抗体、酸化防止剤などの栄養補助剤、VEGFアンタゴニスト、癌ワクチン、化学療法剤、細胞毒性剤、手術、放射線、NSAID、コルチコステロイド、ならびに疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状を改善するために有用な任意の他の療法からなる群から選択される第2の治療剤と組み合わせて対象に投与される。
【0118】
一態様において、本発明は、治療有効量の本明細書に開示される抗CTLA-4抗体もしくはその抗原結合断片、またはそのような抗体もしくは抗原結合断片を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象において腫瘍または腫瘍細胞の成長を阻害する方法を提供する。特定の実施形態において、腫瘍は、原発性または再発性である。特定の実施形態において、腫瘍は、定着腫瘍である。特定の実施形態において、対象は、転移性疾患を有し、および/または前療法で治療されている。特定の実施形態において、腫瘍は、血液癌、脳癌、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌、骨癌、結腸癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、結腸直腸癌、中皮腫、リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される疾患または障害を有する対象に存在する。特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、1つ以上の用量として投与され、各用量は、直前の用量の1~12週間後に投与される。特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、対象の体重の約0.1mg/kg~体重の約100mg/kgの用量で投与される。特定の実施形態において、各用量は、約50mg~約1000mgの抗体を含む。特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体は、PD-1阻害剤、LAG3阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二重特異性抗体、酸化防止剤などの栄養補助剤、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞毒性剤、手術、放射線、NSAID、コルチコステロイド、ならびに疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状を改善するために有用な任意の他の療法からなる群から選択される第2の治療剤と組み合わ
せて対象に投与される。一実施形態において、第2の治療剤は、PD-1阻害剤であり、PD-1阻害剤は、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、PD-1阻害剤は、REGN2810、ニボルマブ、またはペンブロリズマブである。特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、皮下、静脈内、腫瘍内、腫瘍周囲、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内に投与される。
【0119】
一態様において、本発明は、T細胞を本明細書に開示される抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片と接触させることを含む、T細胞活性のCTLA-4媒介性阻害をレスキューする方法を提供する。一実施形態において、T細胞は、抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)と組み合わせて本発明の抗CTLA-4抗体と接触させる。
【0120】
一態様において、本発明は、CTLA-4をアンタゴナイズすることによって治療可能である疾患または障害の治療における、本明細書に開示される抗CTLA-4抗体もしくはその抗原結合断片、またはそのような抗体もしくは抗原結合断片を含む薬学的組成物の使用を提供する。いくつかの事例において、疾患または障害は、癌である。
【0121】
一態様において、本発明は、CTLA-4をアンタゴナイズすることによって治療可能である疾患または障害を治療するための医薬品の製造における、本明細書に開示される抗CTLA-4抗体もしくはその抗原結合断片、またはそのような抗体もしくは抗原結合断片を含む薬学的組成物の使用を提供する。いくつかの事例において、疾患または障害は、癌である。
【0122】
抗体の抗原結合断片
別段の具体的な記載がない限り、「抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、2つの免疫グロブリン重鎖と、2つの免疫グロブリン軽鎖と、を含む、抗体分子(すなわち、「完全抗体分子」)ならびにその抗原結合断片を包含すると理解される。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」という用語、およびこれらに類するものは、本明細書で使用される場合、任意の天然に生じる、酵素処理で入手可能な、合成の、または遺伝子操作された、抗原を特異的に結合して複合体を形成するポリペプチドもしくは糖タンパク質を含む。抗体の「抗原結合断片」または「抗体断片」という用語は、本明細書で使用されるとき、CTLA-4に特異的に結合する能力を保有する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、dAb断片、CDRを含有する断片、または単離されたCDRを含み得る。ある特定の実施形態において、「抗原結合断片」という用語は、多重特異性抗原結合分子のポリペプチド断片を指す。抗体の抗原結合断片は、例えば、DNAコード抗体可変ドメインおよび(場合により)定常ドメインの操作および発現を包含するタンパク質消化技術または組換え遺伝子操作技術などの何らかの適切な標準的技術を用いて、完全抗体分子から得られ得る。このようなDNAは既知であり、および/または例えば市販の供給源、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを好適な配置へと配置するか、またはコドンを導入し、システイン残基を創造し、アミノ酸を修飾、付加、もしくは欠失などするために、化学的に、または分子生物学技術を使用することによって配列決定および操作され得る。
【0123】
抗原結合断片の非限定例としては、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイ
ン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュール免疫薬剤(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子も、本明細書で使用される「抗原結合断片」という表現内に包含される。
【0124】
抗体の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、任意の大きさまたはアミノ酸組成物であり得、概して、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているかまたは1つ以上のフレームワーク配列とともにインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインと結合したVHドメインを有する抗原結合断片において、VHドメインおよびVLドメインは、何らかの適切な配置で互いに対して配置され得る。例えば、可変領域は二量体であり、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含有し得る。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体のVHドメインまたはVLドメインを含み得る。
【0125】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本発明の抗体の抗原結合断片内に認められ得る可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的な立体配置には、(i)VH-CH1、(ii)VH-CH2、(iii)VH-CH3、(iv)VH-CH1-CH2、(v)VH-CH1-CH2-CH3、(vi)VH-CH2-CH3、(vii)VH-CL、(viii)VL-CH1、(ix)VL-CH2、(x)VL-CH3、(xi)VL-CH1-CH2、(xii)VL-CH1-CH2-CH3、(xiii)VL-CH2-CH3、および(xiv)VL-CLが含まれる。先に列挙した例示的な立体配置のいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの何らかの立体配置において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよく、または完全もしくは部分的ヒンジ領域もしくはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可撓性または半可撓性の結合をもたらす少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれより多数の)アミノ酸からなり得る。そのうえ、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いとのおよび/または1つ以上の単量体VHドメインもしくはVLドメイン(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)との非共有結合において、先に列挙した可変ドメイン立体配置および定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0126】
完全抗体分子と同様に、抗原結合断片は、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合断片は、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むことになっており、各可変ドメインは、別個の抗原へまたは同じ抗原上の異なるエピトープへ特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む、任意の多重特異性抗体フォーマットは、当該技術分野で利用可能な通例の技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合断片という背景における使用に適合され得る。
【0127】
ヒト抗体の調製
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成するための方法は、当該技術分野で知られている。任意のそのような既知の方法は、CTLA-4に特異的に結合するヒト抗体を作製するために、本発明の文脈において使用することができる。
【0128】
モノクローナル抗体を生成するためにVELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、US6,596,541,Regeneron Pharmaceuticals,VELOCIMMUNE(登録商標)を参照されたい)または任意の他の既知の方法を使
用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有するCTLA-4に対する高親和性キメラ抗体がまず単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に対する応答においてヒト可変領域と、マウス定常領域と、を含む、抗体を産生するように、ヒト重鎖可変領域と、ヒト軽鎖可変領域と、を含む、ゲノムが内在性マウス定常領域座に動作可能に連結されたトランスジェニックマウスの生成を包含する。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域をコードするDNAに動作可能に連結する。次に、完全ヒト抗体を発現することができる細胞においてDNAを発現させる。
【0129】
概して、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに関心対象の抗原を負荷し、抗体を発現するマウスからリンパ細胞(B細胞など)を回収する。リンパ細胞を骨髄腫細胞株と融合させて不死化ハイブリドーマ細胞株を調製し得、関心対象の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するためにこのようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し得、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域へ連結することができる。このような抗体タンパク質は、CHO細胞などの細胞において産生され得る。代替的に、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを抗原特異的リンパ球から直接単離することができる。
【0130】
まず、ヒト可変領域とマウス定常領域とを有する高親和性キメラ抗体を単離する。以下の実験セクションと同様に、抗体は、親和性、選択性、エピトープなどを含む所望の特徴について特徴付けられ、かつ選択される。マウス定常領域は、本発明の完全ヒト抗体、例えば、野生型または修飾IgG1もしくはIgG4を生成するために所望のヒト定常領域と置換される。選択された定常領域は特異的用途に応じて変化し得るが、高親和性抗原結合特徴および標的特異性特徴は、可変領域に存在する。
【0131】
生物学的等価物
本発明の抗CTLA-4抗体および抗体断片は、記載された抗体のものとは異なるが、CTLA-4に結合する能力を保有するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。このような変異体抗体および抗体断片は、親配列と比較してアミノ酸の1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、説明された抗体の生物学的活性とは本質的に等価である生物学的活性を呈する。同様に、本発明の抗体コードDNA配列は、開示された配列と比較して、ヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗体または抗体断片と本質的に生物学的に等価である抗体または抗体断片をコードする配列を包含する。
【0132】
2つの抗原結合タンパク質または抗体は、例えば、それらが類似の実験条件下で単回用量または複数回用量のいずれかで同じモル用量で投与された場合に、吸収速度および吸収の程度が有意差を示さない薬学的等価物または薬学的選択肢である場合、生物学的等価物とみなされる。いくつかの抗体は、これらの吸収の程度は等価であるが吸収速度は等価ではなく、吸収速度のこのような差が意図的であり、標識することに反映されているので生物学的に等価とみなされ得る場合、等価物または薬学的選択肢とみなされることになっており、例えば長期使用に及ぼす有効な身体薬剤濃度の達成に必須ではなく、研究した特定の薬剤製品にとって医学的に有意ではないとみなされる。
【0133】
一実施形態において、2つの抗原結合タンパク質は、これらの安全性、純度、または効力において臨床的に意味のある差がない場合、生物学的に等価である。
【0134】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、免疫原性の臨床的に有意な変化または有効性の減退を含む有害作用のリスクの期待される上昇なしで参照生成物と生物学的生成物の間での切り替えなしで持続される療法と比較して、患者が1回以上切り替えられるこ
とができる場合、生物学的に等価である。
【0135】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらが両方とも、条件または使用条件についての共通の機序または作用機序によって、このような機序が既知である程度まで作用する場合、生物学的に等価である。
【0136】
生物学的等価性は、インビボおよび/またはインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性測定法には、例えば、(a)抗体またはその代謝産物の濃度が血液、血漿、血清または他の生物学的流体中で時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボでの試験、(b)ヒト生物学的利用能データと相関した、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験、(c)抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定されるヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験、および(d)抗体の安全性、効能、または生物学的利用能もしくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験が含まれる。
【0137】
本発明の抗体の生物学的に等価な変異体は、例えば、残基もしくは配列の様々な置換を生じさせること、または生物活性に必要とされない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失させることによって構築され得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際の不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失または他のアミノ酸で置換することができる。他の文脈において、生物学的に等価の抗体には、抗体のグリコシル化特徴を修飾するアミノ酸変化、例えばグリコシル化を排除または除去する変異を含む抗体変異体が含まれ得る。
【0138】
Fcバリアントを含む抗CTLA-4抗体
本発明の特定の実施形態によると、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体への抗体結合を増強または減少させる1つ以上の突然変異を含むFcドメインを含む、抗CTLA-4抗体が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのCH2またはCH3領域に突然変異を含む抗CTLA-4抗体を含み、突然変異(複数可)は、酸性環境において(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲であるエンドソームにおいて)FcRnに対するFcドメインの親和性を増加させる。そのような突然変異は、動物に投与されたときに抗体の血清半減期の増加をもたらし得る。そのようなFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EまたはQ)、250位および428位(例えば、LまたはF)、252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾、または428位および/もしくは433位(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)および/もしくは434位(例えば、A、W、H、F、またはY[N434A、N434W、N434H、N434F、またはN434Y])での修飾、または250位および/もしくは428位での修飾、または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位での修飾が含まれる。一実施形態において、修飾は428L(例えばM428L)および434S(例えばN434S)の修飾、428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)の修飾、433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の修飾、252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)の修飾、250Qおよび428Lの修飾(例えば、T250QおよびM428L)、307および/または308の修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。さらに別の実施形態において、修飾は、265A(例えば、D265A)および/または297A(例えば、N297A)修飾を含む。
【0139】
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L)、252Y、254T、および256E(例えば、M252Y、S254T、およびT256E)、428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S)、257I
および311I(例えば、P257IおよびQ311I)、257Iおよび434H(例えば、P257IおよびN434H)、376Vおよび434H(例えば、D376VおよびN434H)、307A、380A、および434A(例えば、T307A、E380A、およびN434A)、ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群から選択される突然変異の1つ以上の対または群を含む、Fcドメインを含む抗CTLA-4抗体を含む。一実施形態において、本発明は、ダイマー安定化を促進するためにIgG4のヒンジ領域にS108P突然変異を含むFcドメインを含む抗CTLA-4抗体を含む。前述のFcドメイン変異、および本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組み合わせが、本発明の範囲内で熟慮される。
【0140】
本発明はまた、キメラ重鎖定常(CH)領域を含む抗CTLA-4抗体を含み、キメラCH領域は、2つ以上の免疫グロブリンアイソタイプのCH領域に由来するセグメントを含む。例えば、本発明の抗体は、ヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子、またはヒトIgG4分子に由来するCH3ドメインの一部または全部と組み合わされた、ヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子、またはヒトIgG4分子に由来するCH2ドメインの一部または全部を含む、キメラCH領域を含み得る。特定の実施形態によると、本発明の抗体は、キメラヒンジ領域を有するキメラCH領域を含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列(EU番号付けによる位置228~236のアミノ酸残基)と組み合わされた、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」アミノ酸配列(EU番号付けによる位置216~227のアミノ酸残基)を含み得る。特定の実施形態によると、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4上部ヒンジに由来するアミノ酸残基と、ヒトIgG2下部ヒンジに由来するアミノ酸残基と、を含む。本明細書に記載されるようなキメラCH領域を含む抗体は、特定の実施形態では、抗体の治療特性または薬物動態学的特性に悪影響を与えることなく、修飾Fcエフェクター機能を呈し得る。(例えば、その開示がその全体として参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20140243504号を参照されたい)。
【0141】
抗体の生物学的特徴
概して、本発明の抗体は、CTLA-4に結合することによって機能する。本発明は、可溶性モノマーまたはダイマーCTLA-4分子に高親和性で結合する抗CTLA-4抗体およびその抗原結合断片を含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書の実施例3で定義されるアッセイフォーマットを使用する、表面プラズモン共鳴によって測定されるように、約20nM未満のKDでヒトおよびサルCTLA-4に(例えば、25℃で)結合する抗体および抗体の抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例3で定義されるアッセイフォーマットを使用する、表面プラズモン共鳴、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、または約1nM未満のKDでモノマーCTLA-4に結合する。
【0142】
本発明はまた、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマットを使用する、25℃での表面プラズモン共鳴、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約4分超の解離半減期(t1/2)でCTLA-4に結合する抗体およびその抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例3で定義されるアッセイフォーマット(例えば、mAb捕捉フォーマット)を使用する、25℃での表面プラズモン共鳴、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約5分超、約10分超、約15分超、約20分超、約30分超、約40分超、約100分超、約200分超、約300分超、または約500分超のt
1/2でCTLA-4に結合する。
【0143】
本発明はまた、例えば、実施例4に示される、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、または実質的に類似のアッセイを使用して決定されるように、約320nM未満のIC50でhB7-1(CD80)および/またはhB7-2(CD86)へのhCTLA-4結合をブロックする抗体またはその抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例4で定義される、競合サンドイッチELISA、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約200nM未満、約100nM未満、約70nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のIC50でヒトB7-1および/またはヒトB7-2へのhCTLA-4結合をブロックする。
【0144】
本発明はまた、例えば、実施例4で定義される、競合サンドイッチELISA、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、hCTLA-4のヒトB7-1および/またはヒトB7-2への結合を少なくとも85%ブロックする抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0145】
本発明はまた、本明細書の実施例5で定義される電気化学発光アッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約6nM未満のEC50でヒトCTLA-4発現細胞に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例5におけるアッセイフォーマットを使用する、電気化学発光アッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約4nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のEC50でhCTLA-4発現細胞に結合する。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例5のアッセイフォーマットを使用する、電気化学発光アッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、対照細胞への結合の約10倍超の比で、約15倍超の比で、または対照細胞への結合の約20倍超の比でhCTLA-4発現細胞に結合する。
【0146】
本発明はまた、本明細書の実施例5で定義される電気化学発光アッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約0.5nM未満のEC50でカニクイザルCTLA-4発現細胞に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例5で定義されるアッセイフォーマットを使用する、電気化学発光アッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約0.5nM未満、または約0.2nM未満のEC50でmfCTLA-4発現細胞に結合する。
【0147】
本発明はまた、本明細書の実施例6で定義されるT細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、8nM未満のEC50でCTLA-4誘導性T細胞下方制御を(CTLA-4/CD80およびCTLA-4/CD86相互作用をブロックすることによって)ブロックする抗体またはその抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例6で定義されるアッセイフォーマットを使用する、T細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約6nM未満、約5nM未満、約3nM未満、約2.5nM未満、約2nMのEC50でCTLA-4誘導性T細胞下方制御をブロックする。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトおよびサルCTLA-4の両方のCTLA-4誘導性T細胞下方制御をブロックする。
【0148】
本発明はまた、本明細書の実施例6で定義されるT細胞/APC IL-2放出アッセ
イ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約50nM未満のEC50でIL-2放出のCTLA-4媒介性阻害を(CTLA-4/CD80およびCTLA-4/CD86相互作用をブロックすることによって)レスキューする抗体またはその抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例6で定義されるアッセイフォーマットを使用する、T細胞/APC IL-2放出アッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるように、約45nM未満、約35nM未満、約25nM未満、または約20nM未満のEC50でIL-2放出のCTLA-4媒介性阻害をレスキューする。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトおよびサルCTLA-4の両方についてIL-2放出のCTLA-4誘導性T細胞下方制御および/またはCTLA-4媒介性阻害をブロックする。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、アイソタイプ対照抗体で観察されるものの4~6倍の速度で、IL-2産生によって実証されるように、CTLA-4誘導性T細胞下方制御をブロックする。
【0149】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、それを必要とする対象に予防的に投与される場合、腫瘍の成長を阻害するか、または癌の進行を遅らせるために有用であり、対象の生存率を増加させ得る。例えば、本発明の抗体の投与は、原発性腫瘍の縮小をもたらし得、二次性腫瘍の転移または発生を防止し得る。特定の実施形態において、本発明の抗体は、それを必要とする対象に治療的に投与される場合、腫瘍の成長を阻害するために有用であり、対象の生存率を増加させ得る。例えば、治療有効量の本発明の抗体の対象への投与は、対象における定着腫瘍の縮小および消失をもたらし得る。特定の実施形態において、本発明の1つ以上の抗体は、局所的に(腫瘍内または腫瘍周囲に)投与され、注射された腫瘍病変および遠位腫瘍病変における腫瘍成長の阻害をもたらす(アブスコパル効果)。
【0150】
様々な実施形態において、本発明は、CTLA-4に結合する単離された組換えモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその抗原結合断片は、以下の特徴:(i)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、314、330、346、362、378、394、410、426、442、458、474、および490からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCVRを含むこと、(ii)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、322、338、354、370、386、402、418、434、450、466、482、および498からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCVRを含むこと、(iii)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、312、320、336、352、368、384、400、416、432、448、464、480、および496からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR3ドメイン、ならびに配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、304、328、344、360、376、392、408、424、440、456、472、488、および504からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR3ドメインを含むこと、(iv)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、19
6、212、228、244、260、276、292、308、316、332、348、364、380、396、412、428、444、460、476、および492からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR1ドメイン、配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、310、318、334、350、366、382、398、414、430、446、462、478、および494からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR2ドメイン、配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、300、324、340、356、372、388、404、420、436、452、468、484、および500からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR1ドメイン、ならびに配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、326、342、358、374、390、406、422、438、454、470、486、および502からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR2ドメインを含むこと、(v)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定されるように、約20nM未満の結合解離平衡定数(KD)でダイマーヒトおよびサルCTLA-4に結合すること、(vi)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定されるように、約4分超の解離半減期(t1/2)でダイマーヒトおよびサルCTLA-4に結合すること、(vii)細胞接着アッセイを使用して決定されるように、約320nM未満のIC50でhB7-1(CD80)および/またはhB7-2(CD86)へのhCTLA-4結合をブロックすること、(viii)競合サンドイッチELISAによって測定されるように、hCTLA-4のヒトB7-1および/またはヒトB7-2への結合を少なくとも85%ブロックすること、(ix)電気化学発光アッセイによって測定されるように、約6nM未満のEC50でヒトCTLA-4発現細胞に結合すること、(x)対照細胞への結合についての10倍超の比でhCTLA-4発現細胞に結合すること、(xi)電気化学発光アッセイによって測定されるように、約0.5nM未満のEC50でサルCTLA-4発現細胞に結合すること、(xii)T細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイによって測定されるように、8nM未満のEC50でCTLA-4誘導性T細胞下方制御をブロックすること、(xiii)ヒトおよびサル両方のCTLA-4のCTLA-4誘導性T細胞下方制御をブロックすること、(xiv)T細胞/APC IL-2放出アッセイにおいて決定されるように、約50nM未満のEC50でIL-2放出のCTLA-4媒介性阻害をレスキューすること、(xv)ヒトおよびサル両方のCTLA-4についてのCTLA-4誘導性T細胞下方制御および/またはIL-2放出のCTLA-4媒介性阻害をブロックすること、(xvi)IL-2産生によって示されるように、アイソタイプ対照抗体において観察されるものの4~6倍の速度で、CTLA-4誘導性T細胞下方制御をブロックすること、(xvii)癌を有する患者において腫瘍の成長を抑制し、生存率を増加させること、ならびに(xviii)完全にヒトであることのうちの1つ以上を示す。
【0151】
本発明の抗体は、上述の生物学的特徴の1つ以上、またはこれらの何らかの組み合わせを有することができる。本発明の抗体の他の生物学的特徴は、本明細書における実施例を含む本開示の再吟味から当業者に明らかとなるであろう。
【0152】
種の選択性および種の交差反応性
本発明の特定の実施形態によれば、抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4に結合するが、他の種からのCTLA-4には結合しない。あるいは、本発明の抗CTLA-4抗体は、特定の実施形態において、ヒトCTLA-4および1つ以上の非ヒト種からのCTLA-4に結合する。例えば、本発明の抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4に結合してもよく、場合によっては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、またはチンパンジーCTLA-4のうちの1つ以上に結合しても、しなくてもよい。特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体は、同じ親和性または異なる親和性で、ヒトおよびカニクイザルCTLA-4に結合し得るが、ラットおよびマウスCTLA-4には結合しない。
【0153】
エピトープマッピングおよび関連技術
本発明は、例えば、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインを含むCTLA-4分子の1つ以上のドメイン内に見られる1つ以上のアミノ酸と相互作用する抗CTLA-4抗体を含む。抗体が結合するエピトープは、CTLA-4分子の上述ドメインのいずれか内に位置する3つ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上)のアミノ酸の単一連続配列(例えば、ドメイン中の線状エピトープ)からなってもよい。あるいは、エピトープは、CTLA-4分子の上述ドメインのいずれかまたは全ての内に位置する複数の非連続アミノ酸(またはアミノ酸配列)(例えば、立体配座エピトープ)からなってもよい。
【0154】
当業者に知られている様々な技術を使用して、抗体がポリペプチドまたはタンパク質の内部にある「1つ以上のアミノ酸と相互作用する」かどうかを判定することができる。例示的な技術としては、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY)に説明されているような通例の交差遮断アッセイが挙げられる。他の方法には、アラニン走査突然変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke(2004)Methods Mol.Biol.248:443-63)、ペプチド切断分析結晶学的研究、およびNMR分析が含まれる。加えて、エピトープ切除、エピトープ抽出、および抗原の化学修飾などの方法を利用することができる(Tomer(2000)Prot.Sci.9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチドの内部にあるアミノ酸を識別するために用いることができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般的にいえば、水素/重水素交換法は、関心対象のタンパク質を重水素標識した後、抗体を重水素標識タンパク質へ結合させることを包含する。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移し、抗体複合体によって保護されたアミノ酸の内部にある交換可能なプロトンは、界面の一部ではないアミノ酸の内部にある交換可能なプロトンよりも低速で重水素から水素への逆交換を受ける。結果として、タンパク質/抗体界面の一部を形成するアミノ酸は、重水素を保持することができ、それゆえ、界面に含まれないアミノ酸と比較して相対的に大きな質量を呈する。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析へ供し、それにより、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267:252-259、Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照されたい。
【0155】
「エピトープ」という用語は、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、タンパク質の三次元折り畳みによって並置された連続的なアミノ酸または非連続的なアミノ酸の両方から形成されることができる。連続的なアミノ酸
から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露の際に保持されるのに対し、三次元折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒を用いた処理の際に失われる。エピトープは、典型的には、独特の空間的立体配座で少なくとも3個、より通常は少なくとも5個または8~10個のアミノ酸を含む。
【0156】
抗原構造ベースの抗体プロファイリング(ASAP)としても知られている修飾支援プロファイリング(MAP)とは、化学的にまたは酵素により修飾された抗原表面に対する各抗体の結合特性の類似性により、同じ抗原に対する多数のモノクローナル抗体(mAb)をカテゴリー分類する方法である(その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれるUS2004/0101920を参照されたい)。各カテゴリーは、別のカテゴリーによって表されるエピトープとは明確に異なるか、または部分的に重複するかのいずれかの独特のエピトープを反映し得る。この技術は、特徴付けが遺伝的に異なる抗体に的を絞ることができるように、遺伝的に同一の抗体の迅速なフィルタリングを可能にする。ハイブリドーマスクリーニングへ適用する場合、MAPは、所望の特徴を有するmAbを産生する稀なハイブリドーマクローンの識別を容易にし得る。MAPを使用して、本発明の抗体を、異なるエピトープに結合する抗体の群に選別することができる。
【0157】
特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、配列番号505で例示される、天然形態、もしくは組換え産生のいずれかの、CTLA-4で例示される領域のうちのいずれか1つ以上内のエピトープ、またはその断片に結合する。
【0158】
本発明は、表1において本明細書に記載される特定の例示的な抗体のうちのいずれかと同じエピトープ、もしくはエピトープの一部分に結合する抗CTLA-4抗体、または表1に記載される例示的な抗体のうちのいずれかのCDR配列を有する抗体を含む。同様に、本発明はまた、表1において本明細書に記載される特定の例示的な抗体のうちのいずれかとCTLA-4もしくはCTLA-4断片への結合について競合する抗CTLA-4抗体、または表1に記載される例示的な抗体のうちのいずれかのCDR配列を有する抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書に例示される1つ以上の抗体(例えば、H1H19303PまたはH1H19319P2)とCTLA-4への結合について交差競合する抗CTLA-4抗体を含む。
【0159】
当該技術分野で知られている通例の方法を使用することによって、抗体が、参照抗CTLA-4抗体と同じエピトープに結合するか、またはこれと結合について競合するかを容易に決定することができる。例えば、試験抗体が本発明の参照抗CTLA-4抗体と同じエピトープに結合するかを決定するために、参照抗体は、飽和条件下でCTLA-4タンパク質またはペプチドに結合させる。次に、CTLA-4分子に結合する試験抗体の能力が評価される。試験抗体が、参照抗CTLA-4抗体との飽和結合後にCTLA-4に結合することができる場合、試験抗体は、参照抗CTLA-4抗体とは異なるエピトープに結合すると結論づけることができる。その一方で、試験抗体が、参照抗CTLA-4抗体との飽和結合後にCTLA-4タンパク質に結合することができない場合、試験抗体は、本発明の参照抗CTLA-4抗体によって結合したエピトープと同じエピトープに結合し得る。
【0160】
抗体が参照抗CTLA-4抗体と結合について競合するかを決定するために、上記の結合方法論が2つの配向で行われる。第1の配向では、参照抗体は、飽和条件下でCTLA-4タンパク質に結合させ、続いてCTLA-4分子への試験抗体の結合の評価が行われる。第2の配向では、試験抗体は、飽和条件下でCTLA-4分子に結合させ、続いてCTLA-4分子への参照抗体の結合の評価が行われる。両方の配向において、第1の(飽和)抗体のみがCTLA-4分子に結合することができる場合、試験抗体および参照抗体は、CTLA-4への結合について競合すると結論づけられる。当業者によって認識され
ることになっているように、参照抗体との結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同一のエピトープへ結合する必要はないかもしれないが、重複しているまたは隣接しているエピトープを結合することによって、参照抗体の結合を立体的にブロックするかもしれない。
【0161】
2つの抗体は、それぞれが抗原へのその他の結合を競合的に阻害する(ブロックする)場合、同じかまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、1倍、5倍、10倍、20倍または100倍過剰量の一方の抗体は、競合結合において測定されるように、少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%またはさらには99%ほど、もう一方の抗体の結合を阻害する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990 50:1495-1502を参照されたい)。あるいは、一方の抗体の結合を低減または排除する抗原における本質的にすべてのアミノ酸変異がもう一方の抗体の結合を低減または排除する場合、2つの抗体は同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を低減または排除するいくつかのアミノ酸変異がもう一方の結合を低減または排除する場合、2つの抗体は重複しているエピトープを有する。
【0162】
次に、試験抗体の結合の観察された欠失が、実際に、参照抗体と同じエピトープへの結合によるものであるか、それとも立体遮断(または別の現象)が、観察された結合の欠失の原因であるのかを確認するために、さらなる通例の実験(例えば、ペプチド変異および結合分析)を実施することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリーまたは当該技術分野で利用可能な任意の他の定量的または定性的な抗体結合アッセイを使用して実施することができる。
【0163】
免疫結合体
本発明は、癌を治療するための細胞毒または化学療法剤などの治療部分(「免疫結合体」)に結合したヒト抗CTLA-4モノクローナル抗体を包含する。本明細書で使用されるとき、「免疫結合体」という用語は、放射性物質、サイトカイン、インターフェロン、標的部分もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチドもしくはタンパク質、または治療剤に化学的または生物学的に連結した抗体を指す。抗体は、その標的に結合することができる限り、分子に沿った任意の位置で、細胞毒素、放射性物質、サイトカイン、インターフェロン、標的部分もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチド、または治療剤に連結され得る。免疫結合体の例としては、抗体薬剤結合体および抗体-毒素融合タンパク質が挙げられる。一実施形態において、薬剤は、CTLA-4に対する第2の異なる抗体であってもよい。特定の実施形態において、抗体は、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞に特異的な薬剤に結合し得る。一実施形態において、抗体は、T細胞に特異的な薬剤に結合される。抗CTLA-4抗体に結合し得る治療部分のタイプは、治療される状態および達成される所望の治療効果を考慮するであろう。免疫結合体を形成するために好適な薬剤の例は、当該技術分野で知られており、例えば、WO05/103081を参照されたい。
【0164】
多重特異性抗体
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性または多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、または2つ以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有し得る。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69、Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照されたい。
【0165】
一態様において、本発明は、多重特異性抗原結合分子またはその抗原結合断片を含み、免疫グロブリンの1つの特異性は、CTLA-4の細胞外ドメインまたはその断片に特異的であり、免疫グロブリンの他の特異性は、CTLA-4の細胞外ドメインの外側、もし
くは第2の治療標的の結合に特異的であるか、または治療部分に結合している。
【0166】
本発明の多重特異性抗原結合分子のいずれか、またはその変異体は、当業者に既知であることになっているように、標準的な分子生物学的技術(例えば、組換えDNAおよびタンパク質発現技術)を用いて構築され得る。
【0167】
いくつかの実施形態において、CTLA-4特異的抗体は、CTLA-4の異なるドメインに結合する可変領域が一緒に連結されて、単一の結合分子内に二重ドメイン特異性を付与する二重特異性フォーマット(「二重特異性」)で生成される。適切に設計された二重特異性は、特異性および結合活性の両方を増加させることを通じて全体的なCTLA-4阻害有効性を増強し得る。個々のドメインに対して特異性を有する可変領域(例えば、N末端ドメインのセグメント)、または1つのドメイン内の異なる領域へ結合することができる可変領域は、各領域を別個のエピトープへ、または1つのドメイン内の異なる領域へ、同時に結合させる構造的足場の上で対形成している。二重特異性についての一例において、1つのドメインに対する特異性を備えた結合剤由来の重鎖可変領域(VH)は、第2のドメインに対する特異性を備えた一連の結合剤由来の軽鎖可変領域(VL)と組み合わされて、VHに対する元の特異性を破壊することなく、元のVHと対形成することができる非同族VLのパートナーを識別する。このように、単一のVLセグメント(例えば、VL1)を2つの異なるVHドメイン(例えば、VH1およびVH2)と組み合わせて、2つの結合「アーム」(VH1-VL1およびVH2-VL1)から構成される二重特異性を生じることができる。単一のVLセグメントの使用は、このシステムの複雑性を低減させ、それにより、二重特異性を生成するために使用されるクローニング過程、発現過程、および精製過程における効率を単純化し、増大させる(例えば、USSN13/022759およびUS2010/0331527を参照されたい)。
【0168】
あるいは、これに限定されないが、例えば、第2の異なる抗CTLA-4抗体などの、2つ以上のドメインおよび第2の標的を結合する抗体は、本明細書に記載される技術または当業者に既知の他の技術を使用して、二重特異性フォーマットで調製され得る。異なる領域に結合する抗体可変領域は、単一の結合分子内に二重抗原特異性を付与するために、例えば、CTLA-4の細胞外ドメイン上の関連部位に結合する可変領域と一緒に連結され得る。この性質の適切に設計された二重特異性は、二重の機能を果たす。細胞外ドメインに対する特異性を備えた可変領域は、細胞外ドメインの外側に対する特異性を備えた可変領域と組み合わされ、各可変領域が別々の抗原へ結合することを可能にする構造的足場の上で対形成する。
【0169】
本発明の文脈において使用することのできる例示的な二重特異性抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメインおよび第2のIgCH3ドメインの使用を包含し、第1および第2のIgCH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸ほど互いに異なっており、少なくとも1つのアミノ酸の相違は、このアミノ酸の相違を欠失する二重特異性抗体と比較して、プロテインAへの二重特異性抗体の結合を低減させる。一実施形態において、第1のIgCH3ドメインはプロテインAを結合し、第2のIgCH3ドメインはH95R修飾(IMGTエクソン番号付けによるものであり、EU番号付けによるH435R)などのプロテインA結合を低減または消失させる変異を含有する。第2のCH3は、Y96F修飾(IMGTによるものであり、EUによるY436F)をさらに含み得る。第2のCH3内に認められ得るさらなる修飾には、IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによるものであり、EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I)、IgG2抗体の場合、N44S、K52N、およびV82I(IMGTであって、EUによるN384S、K392N、およびV422I)、ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV
82I(IMGTによるものであり、EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)が含まれる。上記に記載される二重特異性抗体フォーマットの変形は、本発明の範囲内で熟慮される。
【0170】
本発明の文脈において使用することのできる他の例示的な二重特異性フォーマットには、例えば、scFv系フォーマットまたはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、Quadroma、ノブズ-イントゥ-ホールズ(knobs-into-holes)、共通の軽鎖(例えば、ノブズ-イントゥ-ホールズを備えた共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用型Fab(DAF)-IgG、およびMab2二重特異性フォーマットが含まれるが、これらに限定されない(上述のフォーマットの総説については、例えば、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。二重特異性抗体は、ペプチド/核酸結合を用いて構築することもでき、例えば、直交化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチド結合体を生成し、これが次に、規定される組成物、原子価および幾何学的形状を有する多量体複合体へと自己集合する。(例えば、Kazane et al.,J.Am.Chem.Soc.[Epub:Dec.4,2012]を参照のこと)。
【0171】
治療用の投与および製剤
本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を含む治療組成物を提供する。本発明に従った治療用組成物は、改善された移動、送達、寛容、およびこれらに類するものを提供するために、製剤へと組み込まれた適切な担体、賦形剤、および他の薬剤とともに投与されることになっている。多くの適切な製剤は、製薬化学者全員に既知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて認めることができる。これらの製剤には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)など)を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油エマルションおよび油中水エマルション、エマルションカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci
Technol 52:238-311も参照されたい。
【0172】
抗体の用量は、投与されることになっている対象の年齢およびサイズ、標的疾患、容態、投与経路、ならびにこれらに類するものによって変わり得る。本発明の抗体が成人患者において疾患もしくは障害を治療するため、またはそのような疾患を予防するために使用される場合、本発明の抗体を通常は体重1kgあたり約0.1~約60mg、より好ましくは体重1kgあたり約5~約60、約20~約50、約10~約50、約1~約10、または約0.8~約11mgの単一用量で投与することが有利である。状態の重症度に応じて、治療の頻度および期間を調整することができる。特定の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも約0.1mg~約800mg、約1~約500mg、約5~約300mg、または約10~約200mg、~約100mg、または~約50mgの初回用量として投与することができる。特定の実施形態において、初回用量に続いて、一次投与とほぼ同じか、またはそれ未満であり得る量の二次または複数の後続用量の抗体またはその抗原結合断片の投与が行われ得、後続用量は、少なくとも1日~3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、または少なくとも14週間離れてい
る。
【0173】
種々の送達系、例えば、リポソームにおける封入、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが既知であり、本発明の薬学的組成物を投与するために使用することができる(例えば、Wu et
al.(1987)J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照されたい)。導入方法には、皮内経路、経皮経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、例えば、注入もしくはボーラス注射による、上皮もしくは粘膜皮膚の裏打ち(例えば、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜など)を通じての吸収による何らかの簡便な経路によって投与され得、他の生物学的に活性のある薬剤とともに投与され得る。投与は全身または局所であり得る。薬学的組成物を、ベシクル、特にリポソーム中で送達することもできる(例えば、Langer(1990)Science 249:1527-1533を参照されたい)。
【0174】
本発明の抗体を送達するためのナノ粒子の使用もまた、本明細書において熟慮される。抗体結合ナノ粒子は、治療用途および診断用途の両方に使用され得る。抗体結合ナノ粒子ならびに調製方法および使用方法は、参照により本明細書に組み込まれるArruebo,M.,et al.2009(“Antibody-conjugated nanoparticles for biomedical applications“in
J.Nanomat.Volume 2009,Article ID 439389,24 pages,doi:10.1155/2009/439389)によって詳細に記載されている。ナノ粒子は、腫瘍細胞または自己免疫疾患組織細胞またはウイルス感染細胞を標的とするために開発され、薬学的組成物中に含有される抗体と結合され得る。薬物送達のためのナノ粒子は、例えば、各々がその全体として本明細書に組み込まれるUS8257740、またはUS8246995にも説明されている。
【0175】
特定の状況において、薬学的組成物は、徐放系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、徐放系を組成物の標的の近傍に配置することができ、したがって全身用量のほんの一部しか必要としない。
【0176】
注射可能な調製物には、静脈内注射、皮下注射、腫瘍内注射、腫瘍周囲注射、皮内注射、頭蓋内注射、腹腔内注射、および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形が含まれ得る。これらの注射可能な調製物は、公共的に既知の方法によって調製され得る。例えば、注入可能な調製物は、例えば、注入用に従来どおり使用される滅菌水性媒体または油性媒体中に上述の抗体またはその塩を溶解、懸濁または乳化させることによって調製され得る。注入用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース含有等張液、および他の補助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。このように調製された注射は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0177】
本発明の薬学的組成物は、標準的な針および注射器を用いて皮下にまたは静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、本発明の薬学的組成物を送達する上での適用を容易に有する。このようなペン送達デバイスは、再利用可能または使い捨て可能であり得る。再利用可能なペン送達デバイスは、概して、薬学的組成
物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。一度、カートリッジ内の薬学的組成物が全て投与され、カートリッジが空になると、この空のカートリッジは容易に廃棄することができ、薬学的組成物を含有する新しいカートリッジと容易に交換することができる。次に、ペン送達デバイスは再利用することができる。使い捨てのペン送達デバイスにおいて、交換可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てペン送達デバイスは、このデバイス内の貯蔵器の中に保持された薬学的組成物が事前に充填されている。一度、貯蔵器が薬学的組成物に関して空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0178】
数多くの再利用可能なペン送達デバイスおよび自動注射送達デバイスは、本発明の薬学的組成物の皮下送達における用途を有する。例としては、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,英国ウッドストック町)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems,スイス国ブルクドルフ市)、HUMALOG MIX75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.,インディアナ州インディアナポリス市)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk,デンマーク国コペンハーゲン市)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,デンマーク国コペンハーゲン市)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson,ニュージャージー州フランクリンレイク地区)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis,ドイツ国フランクフルト市)が挙げられるが、確かにこれらに限定されず、ほんの数種類しか挙げていない。本発明の薬学的組成物の皮下送達における用途を有する使い捨てペン送達装置の例としては、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注射装置(Amgen,カリフォルニア州サウザンドオークス市)、PENLET(商標)(Haselmeier,ドイツ国シュトゥットガルト市)、EPIPEN(Dey,L.P.)およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs,イリノイ州アボットパーク地区)が挙げられるが、ほんの数種類しか挙げていない。
【0179】
有益なことに、上記に記載される経口または非経口での使用のための薬学的組成物は、有効成分の用量に適合するために好適な単位用量の投薬形態へと調製される。そのような単位用量の剤形には、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射(アンプル)、坐剤などが含まれる。含有される抗体の量は、概して、単位用量の剤形あたり約5~約500mgであり、特に注射の形態では、抗体は、他の剤形について約5~約100mg、および約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0180】
抗体の治療的使用
本発明の抗体は、とりわけ、CTLA-4発現、シグナル伝達、もしくは活性に関連するか、またはこれによって媒介されるか、あるいはCTLA-4とCTLA-4リガンドB7-1/CD80および/もしくはB7-2/CD86との相互作用をブロックするか、またはそうでなければCTLA-4活性および/もしくはシグナル伝達を阻害することによって治療可能である、任意の疾患または障害の治療、予防、および/または改善に有用である。本発明の1つ以上の抗体は、疾患または障害の症状または容態の1つ以上の重症度を緩和または予防または低下させるために投与され得る。例えば、本発明は、本明細書に記載される抗CTLA-4抗体(または抗CTLA-4抗体を含む薬学的組成物)を、そのような治療を必要とする患者に投与することによって、癌(腫瘍成長阻害)および/またはウイルス感染症を治療するための方法、ならびに癌(腫瘍成長阻害)および/またはウイルス感染の治療における使用のための抗CTLA-4抗体(または抗CTLA-4抗体を含む薬学的組成物)を提供する。本発明の抗体は、癌またはウイルス感染症など
の疾患もしくは障害もしくは状態の治療、予防、および/もしくは改善、ならびに/またはそのような疾患、障害、もしくは状態と関連した少なくとも1つの症状の改善に有用である。本明細書に記載される治療方法の文脈において、抗CTLA-4抗体は、単剤療法として(すなわち、唯一の治療剤として)、または1つ以上の追加の治療剤(この例は本明細書の他の箇所に記載される)と組み合わせて投与され得る。
【0181】
本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体は、これらに限定されないが、血液癌、脳癌(多形膠芽腫)、腎細胞癌(例えば、腎明細胞癌)、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、腎臓癌、子宮頸癌、皮膚癌、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、肝細胞癌、骨癌、結腸癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、結腸直腸癌、中皮腫、および黒色腫を含む、原発性または再発性癌に罹患している対象を治療するために有用である。
【0182】
本明細書で使用されるとき、「血液癌」という用語には、血液、骨髄、リンパ、またはリンパ系に影響を及ぼす血液悪性腫瘍が含まれる。そのようなものとして、用語には、リンパ性および骨髄性細胞系列からの細胞の悪性腫瘍が含まれる。骨髄性細胞株は通常、顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ、およびマスト細胞を産生し、リンパ性細胞株は、B、T、NK、および形質細胞を産生する。したがって、用語には、上記細胞の悪性腫瘍、すなわち、リンパ腫、骨髄腫、リンパ性白血病、および骨髄性白血病が含まれる。例には、これらに限定されないが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫)、および骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)が含まれる。
【0183】
抗体は、癌の初期または後期症状を治療するために使用され得る。一実施形態において、本発明の抗体またはその断片は、進行性または転移性癌を治療するために使用され得る。抗体は、固形腫瘍および血液癌の両方の腫瘍成長を低減または阻害または縮小するために有用である。特定の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片での治療は、対象における腫瘍の40%超の退縮、50%超の退縮、60%超の退縮、70%超の退縮、80%超の退縮、または90%超の退縮をもたらす。特定の実施形態において、抗体は、腫瘍の再発を防止するために使用され得る。特定の実施形態において、抗体は、癌を有する対象において無増悪生存期間または全生存期間を延長するために有用である。いくつかの実施形態において、抗体は、癌に罹患している患者において長期生存率を維持しながら、化学療法または放射線療法による毒性を低減するために有用である。特定の実施形態において、本発明の1つ以上の抗体は、1つ以上の腫瘍病変(腫瘍内または腫瘍周囲)に局所的に注入され、対象において注入された腫瘍および1つ以上の隣接または遠位腫瘍における腫瘍成長の阻害をもたらす(アブスコパル効果)。
【0184】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、慢性ウイルス感染症に罹患している対象を治療するために有用である。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、宿主におけるウイルス力価を低下させるか、または消耗したT細胞をレスキューするために有用である。特定の実施形態において、本発明の抗体またはその断片は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)による慢性ウイルス感染症を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはヒト乳頭腫ウイルス(HPV)またはB/C型肝炎ウイルス(HBV/HCV)による感染症を有する患者に治療用量で投与され得る。関連する実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、カニクイザルなどのサル対象においてサル免疫不全ウイルス(SIV)による感染症を治療するために使用され得る。
【0185】
特定の実施形態において、本発明の遮断抗体は、癌またはウイルス感染症に罹患してい
る対象に治療有効量で投与され得る。
【0186】
特定の実施形態において、本発明の1つ以上の抗体は、全身曝露を最小限にし、抗体の全身曝露による毒性を予防/改善するために、癌を有する対象において腫瘍または腫瘍病変の近く(腫瘍内または腫瘍周辺)に局所投与される。
【0187】
本明細書では、癌およびウイルス感染症などの疾患または障害を発症するリスクのある患者に予防的に本発明の1つ以上の抗体を使用することも企図される。
【0188】
本発明のさらなる実施形態において、本抗体は、癌、またはウイルス感染症に罹患している患者を治療するための薬学的組成物の調製のために使用される。本発明の別の実施形態において、本抗体は、癌またはウイルス感染症を治療するために有用な、当業者に知られる任意の他の薬剤または任意の他の療法と共に補助療法として使用される。
【0189】
併用療法および製剤
併用療法には、本発明の抗CTLA-4抗体、および本発明の抗体と、または本発明の抗体の生物学的に活性な断片と有益に組み合わされ得る任意の追加の治療剤が含まれ得る。
【0190】
本発明の抗体は、例えば、血液癌、脳癌(例えば、多形膠芽腫)、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌、骨癌、皮膚癌、子宮頸癌、胃癌、腎臓癌、結腸癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、結腸直腸癌、中皮腫、および黒色腫を含む、癌を治療または阻害するために使用される1つ以上の抗癌薬または療法と相乗的に組み合わされ得る。本明細書では、本発明の抗CTLA-4抗体を免疫刺激療法および/または免疫支持療法と組み合わせて使用して、腫瘍成長を阻害し、および/または癌患者の生存率を高めることが企図される。免疫刺激療法には、抑制された免疫細胞の「ブレーキを緩める」か、または免疫応答を活性化するために「アクセルを踏む」かのいずれかによって免疫細胞活性を増強する直接免疫刺激療法が含まれる。例には、他のチェックポイント受容体の標的化、ワクチン接種、およびアジュバントが含まれる。免疫支持モダリティは、免疫原性細胞死、炎症を促進することによって腫瘍の抗原性を増加させるか、または抗腫瘍免疫応答を促進する他の間接的効果を有し得る。例には、放射線、化学療法、抗血管新生剤、および手術が含まれる。
【0191】
様々な実施形態において、本発明の1つ以上の抗体は、PD-1阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、BGB-A317、またはREGN2810などの抗PD-1抗体)、PD-L1阻害剤(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、またはREGN3504などの抗PD-L1抗体)、LAG3阻害剤、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、CD28阻害剤、CSF1R阻害剤、CXCR阻害剤、CCR4阻害剤、CCR8阻害剤、CD40阻害剤、OX40阻害剤、GITR阻害剤、別のT細胞共阻害剤またはリガンドのアンタゴニスト(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160、またはVISTA)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮成長因子(VEGF)アンタゴニスト[例えば、アフリベルセプトまたはUS 7,087,411に記載される他のVEGF阻害融合タンパク質などの「VEGF-Trap」、あるいは抗VEGF抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、ベバシズマブ、またはラニビズマブ)またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスバクマブ)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブなどの抗CD20抗体)、腫瘍特異的抗原に対する抗体[例えば
、CA9、CA125、メラノーマ関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異的抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9]、ワクチン(例えば、Bacillus Calmette-Guerin、癌ワクチン)、抗原提示を高めるアジュバント(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、二重特異性抗体(例えば、CD3xCD20二重特異性抗体、またはPSMAxCD3二重特異性抗体)、細胞毒、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、手術、放射線療法、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15などのサイトカイン、抗体-薬物結合体(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド、および非ステロイド系抗炎症薬)、抗酸化剤などの栄養補助剤、または癌を治療するための任意の他の療法ケアと組み合わせて使用され得る。特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体は、樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどを含む癌ワクチンと組み合わせて使用され、抗腫瘍応答を増強し得る。本発明の抗CTLA-4抗体と組み合わせて使用することができる癌ワクチンの例には、黒色腫および膀胱癌のためのMAGE3ワクチン、乳癌のためのMUC1ワクチン、脳癌(多形膠芽腫を含む)のためのEGFRv3(例えば、リンドペピムト)、または(CEA+癌のための)ALVAC-CEAが含まれる。
【0192】
特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体は、長期持続性抗腫瘍応答を生じる方法および/または癌を有する患者の生存率を高める方法において放射線療法と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体は、癌患者に放射線療法を投与する前、それと同時、またはその後に投与され得る。例えば、放射線療法は、腫瘍病変に1つ以上の用量で投与され、続いて1つ以上の用量の本発明の抗CTLA-4抗体の投与が行われ得る。いくつかの実施形態において、放射線療法は、患者の腫瘍の局所免疫原性を増強(補助放射線)および/または腫瘍細胞を殺滅(剥離放射線)するために腫瘍病変に局所投与され、続いて本発明の抗CTLA-4抗体の全身投与が行われ得る。例えば、頭蓋内放射線は、本発明の抗CTLA-4抗体の全身投与と組み合わせて脳癌(例えば、多形膠芽腫)を有する患者に投与され得る。特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体は、放射線療法および化学療法剤(例えば、テモゾロミド)またはVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)と組み合わせて投与され得る。特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体は、放射線療法および化学療法剤(例えば、テモゾロミド)またはPD-1阻害剤(例えば、REGN2810、ニボルマブ、またはペンブロリズマブなどの抗PD-1抗体)と組み合わせて投与され得る。
【0193】
特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体は、LCMV、HIV、HPV、HBV、またはHCVによって引き起こされる慢性ウイルス感染症を治療するために1つ以上の抗ウイルス剤と組み合わせて投与され得る。抗ウイルス剤の例には、これらに限定されないが、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノホビル、リルピビリン、およびコルチコステロイドが含まれる。
【0194】
追加の治療的に活性な薬剤(複数可)/成分(複数可)は、本発明の抗CTLA-4抗体の投与前、それと同時、またはその後に投与され得る。本開示の目的のために、そのような投与レジメンは、第2の治療活性成分「と組み合わせた」抗CTLA-4抗体の投与であると考えられる。
【0195】
追加の治療活性成分(複数可)は、本発明の抗CTLA-4抗体の投与前に対象に投与され得る。例えば、第1の成分が、第2の成分の投与から1週間前、72時間前、60時間前、48時間前、36時間前、24時間前、12時間、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前、15分前、10分前、5分前、または1分未満で投与される場合、第1の成分は、第2の成分の「前に」投与されるとみなされ得る。他の実施形態において、追加の治療活性成分(複数可)は、本発明の抗CTLA-4抗体の投与後に対象に投与され得る。例えば、第1の成分が第2の成分の投与から1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後に投与される場合、第1の成分は、第2の成分の「後に」投与されるとみなされ得る。さらに他の実施形態において、追加の治療活性成分(複数可)は、本発明の抗CTLA-4抗体の投与と同時に対象に投与され得る。本発明の目的のための「同時」投与には、例えば、対象への抗CTLA-4抗体および追加の治療活性成分の、(例えば、共製剤化された)単一の剤形での、または互いに約30分以内に対象へ投与される別個の剤形での投与が含まれる。別個の剤形で投与される場合、各剤形は、同じ経路を介して投与され得(例えば、抗CTLA-4抗体および追加の治療活性成分の両方は、静脈内、皮下などで投与され得)、あるいは、各剤形は、異なる経路を介して投与され得る(例えば、抗CTLA-4抗体は、静脈内投与され得、追加の治療活性成分は、皮下投与され得る)。いずれの事象においても、単回剤形で、同じ経路による別個の剤形で、または異なる経路による別個の剤形でこの成分を投与することはすべて、本開示の目的のために、「同時投与」とみなされる。本開示の目的のために、追加の治療活性成分の投与「の前の」、「と同時の」、または「の後の」抗CTLA-4抗体の投与は、追加の治療活性成分「と組み合わせた」抗CTLA-4抗体の投与と考えられる。
【0196】
本発明には、本発明の抗CTLA-4抗体が、様々な投与量組み合わせを使用して本明細書の他の箇所に記載される追加の治療活性成分(複数可)の1つ以上と共製剤化される、薬学的組成物が含まれる。
【0197】
抗CTLA-4抗体およびPD-1阻害剤を含む共製剤の投与を含む、本発明の抗CTLA-4抗体がPD-1阻害剤(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、US 2015/0203579に開示される抗PD-1抗体)と組み合わせて投与される例示的な実施形態において、個々の成分は、様々な投与量組み合わせを使用して対象に投与され、および/または共製剤化され得る。よって、本発明は、癌またはウイルス感染症の治療における同時、別個、および/または連続使用のための、(i)本発明の抗CTLA-4抗体と、(ii)PD-1阻害剤(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、US2015/0203579に開示される抗PD-1抗体)との組み合わせを含む。例えば、抗CTLA-4抗体およびPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)はそれぞれ、0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.0mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、および10.0mg/kgからなる群から選択される量で、対象に投与され、および/または共製剤に含有され得る。一実施形態において、抗CTLA-4抗体およびPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)はそれぞれ、約50mg~約600mgの量、例えば、50mg、100mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、および600mgからなる群から選択される量で対象に投与され、および/または共製剤に含有され
得る。組み合わせ/共製剤は、例えば、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ケ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回などを含む、本明細書の他の箇所に開示される投与レジメンのいずれかに従って対象に投与され得る。本発明の抗CTLA-4抗体は、例えば、約3~5、または約3.0mg/kgの用量のPD-1阻害剤(例えば、US 2015/0203579に開示される抗PD-1抗体)と同時に、約0.8~約11、約1~約10、約3~約10、約1、約3、または約10mg/kgの用量で投与され得る。同時投与は、例えば、14日、21日、または28日毎に行われ得る。
【0198】
抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、およびVEGFアンタゴニストを含む共製剤の投与を含む、本発明の抗CTLA-4抗体が抗PD-1抗体およびVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトなどのVEGFトラップ)と組み合わせて投与される例示的な実施形態において、個々の成分は、様々な投与量組み合わせを使用して対象に投与され、および/または共製剤化され得る。例えば、抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体は、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mg、および10.0mgからなる群から選択される量で対象に投与され、および/または共製剤に含有され得、VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトなどのVEGFトラップ)は、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2.0mg、2.1mg、2.2mg、2.3mg、2.4mg、2.5mg、2.6mg、2.7mg、2.8mg、2.9mg、および3.0mgからなる群から選択される量で対象に投与され、および/または共製剤に含有され得る。組み合わせ/共製剤は、例えば、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1か月に1回、2か月に1回、3か月に1回、4か月に1回、5か月に1回、6か月に1回などを含む、本明細書の他の箇所に開示される投与レジメンのいずれかに従って対象に投与され得る。
【0199】
投与レジメン
本発明の特定の実施形態によれば、複数用量の抗CTLA-4抗体(または抗CTLA-4抗体と本明細書で言及される追加の治療活性剤のいずれかとの組み合わせを含む薬学的組成物)は、定義される時間経過にわたって対象に投与し得る。本発明のこの態様による方法は、対象に複数用量の本発明の抗CTLA-4抗体を順次に投与することを含む。本明細書で使用されるとき、「順次に投与すること」は、各用量の抗CTLA-4抗体が対象に異なる時点、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間、または数か月)によって離れた異なる日に投与されることを意味する。本発明には、患者に単一の1次用量の抗CTLA-4抗体、続いて1つ以上の2次用量の抗CTLA-4抗体、任意に続いて1つ以上の3次用量の抗CTLA-4抗体を順次に投与することを含む方法が含まれる。抗CTLA-4抗体は、対象の0.1mg/kg~100mg/kg体重の用量で投与され得る。
【0200】
「1次用量」、「2次用量」、および「3次用量」という用語は、本発明の抗CTLA-4抗体の投与の時系列を指す。したがって、「1次用量」とは、治療レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも称する)であり、「2次用量」とは、1次用量後に投与される用量であり、「3次用量」とは、2次用量後に投与される用量である。1次用量、2次用量、および3次用量は全て、同じ量の抗CTLA-4抗体を含有し得るが、概して、投与頻度に関して互いに異なり得る。しかしながら、特定の実施形態にお
いて、1次用量、2次用量、および/または3次用量に含有される抗CTLA-4抗体の量は、治療経過中、互いに異なる(例えば、適宜上下に調整される)。ある特定の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、または5回)の用量が治療レジメンの開始時において「負荷用量(loading dose)」として投与され、続いてより低い頻度に基づいて投与される後続用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
【0201】
特定の実施形態において、1次、2次、および/または3次用量に含有される抗CTLA-4抗体の量は、最適量以下または治療量以下であり得る。本明細書で使用されるとき、「治療量以下」または「最適量以下」という用語は、治療効果をもたらすには低すぎるレベルまたは癌などの疾患の治療に必要なレベル未満で投与される抗体用量を指す。
【0202】
本発明の特定の例示的な実施形態において、各2次および/または3次用量は、直前の用量の1~26(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、15、15と1/2、16、16と1/2、17、17と1/2、18、18と1/2、19、19と1/2、20、20と1/2、21、21と1/2、22、22と1/2、23、23と1/2、24、24と1/2、25、25と1/2、26、26と1/2、またはそれ以上)週間後に投与される。「直前の用量」という句は、本明細書で使用されるとき、一連の複数の投与において、何ら介入用量なく順に直後の用量の投与の前に患者に投与される抗CTLA-4抗体の用量を意味する。
【0203】
本発明のこの態様による方法は、任意の数の抗CTLA-4抗体の2次および/または3次用量を患者に投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態において、単回の2次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回またはそれ以上)の2次用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態において、単回の3次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回またはそれ以上)の3次用量が患者に投与される。
【0204】
複数回の二次用量を伴う実施形態において、各二次用量は他の二次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各2次用量は、直前の投与の1~2週間後または1~2ヶ月後に患者に投与されてもよい。同様に、複数回の3次用量を含む実施形態において、各3次用量は他の3次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各3次用量は、直前の投与の2~12週間後に患者に投与されてもよい。本発明のある特定の実施形態において、2次用量および/または3次用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの経過にわたって変わり得る。投与頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師によって治療経過の間に調整され得る。
【0205】
抗体の診断的使用
本発明の抗CTLA-4抗体は、例えば、診断目的のために、試料中のCTLA-4を検出および/または測定するために使用され得る。いくつかの実施形態は、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症などの疾患または障害を検出するためのアッセイにおける、本発明の1つ以上の抗体の使用を企図する。CTLA-4についての例示的な診断アッセイは、例えば、対象(例えば、患者)から得られた試料を、本発明の抗CTLA-4抗体と接触させることを含み得、抗CTLA-4抗体は、検出可能な標識もしくはレポーター分子で標識されるか、または対象試料からCTLA-4を選択的に単離するために捕捉リガンドとして使用される。あるいは、標識されていない抗CTLA-4抗体は、それ自体が検出可能に標識された2次抗体と組み合わせて診断用途において使用することができる。検出可能な標識もしくはレポーター分子は、3H、14C、32P、35S、もしくは125
Iなどの放射性同位体、フルオレセインイソチオシアナートもしくはローダミンなどの蛍光部分もしくは化学発光部分、またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素であり得る。試料中のCTLA-4を検出または測定するために使用することのできる具体的な例示的アッセイには、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれる。
【0206】
本発明によるCTLA-4診断アッセイにおいて使用することができる試料には、正常または病理学的条件下で、検出可能な量のCTLA-4タンパク質、またはその断片のいずれかを含有する、患者から入手可能な任意の組織または流体試料が含まれる。概して、健常な患者(例えば、癌または自己免疫疾患に罹患していない患者)から得られた特定の試料中のCTLA-4のレベルは、CTLA-4のベースラインまたは標準レベルをまず確立するために測定されるであろう。次いで、CTLA-4のこのベースラインレベルは、癌関連状態、またはそのような状態と関連した症状を有すると疑われる個体から得られた試料において測定されるCTLA-4のレベルと比較することができる。
【0207】
CTLA-4に特異的な抗体は、追加の標識もしくは部分を全く含有していなくてもよく、またはN末端もしくはC末端標識もしくは部分を含有していてもよい。一実施形態では、標識または部分は、ビオチンである。結合アッセイにおいて、標識(存在する場合)の位置は、ペプチドが結合した表面に対するペプチドの向きを決定し得る。例えば、表面がアビジンで被覆されている場合、N末端ビオチンを含有するペプチドは、ペプチドのC末端部分が表面から遠位になるように配向されるであろう。
【0208】
本発明の態様は、患者における癌またはウイルス感染症の予後を予測するためのマーカーとしての開示される抗体の使用に関する。本発明の抗体は、患者における癌の予後を評価し、生存率を予測する診断アッセイにおいて使用され得る。
【実施例0209】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作製および使用するかに関する完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本発明とみなすことの範囲を限定することを企図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力はなされたが、いくつかの実験上の誤差および偏差が考慮されるべきである。別段に示されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、室温は約25℃であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0210】
実施例1:CTLA-4に対するヒト抗体の生成
CTLA-4に対するヒト抗体は、ヒトCTLA-4タンパク質(Cat.番号:7268-CT、R&D Systems)またはhCTLA-4をコードするDNA(アクセッション番号:NM_005214.4)のいずれかを用いて生成した。免疫原は、US 8502018 B2に記載されるように、免疫応答を刺激するアジュバントと共に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作されたマウス)に直接投与した。抗体免疫応答を、CTLA-4特異的イムノアッセイによってモニターした。所望の免疫応答が達成されたとき、脾細胞を採取し、マウス骨髄腫細胞と融合させて、それらの生存率を維持し、ハイブリドーマ細胞株を形成した。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、CTLA-4特異的抗体を産生する細胞株を同定した。この技術および上記の免疫原を使用して、いくつかの抗CTLA-4キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびマウス定常ドメインを有する抗体)が得られ、この様式でVELOCIMMUNE(登録商標)マウスから生成された例示的な抗体を、H1M20370N、H1M2
0372N、H1M20393N、H2M20361N、H2M20368N、H2M20369N、H2M20373N、H2M20375N、H2M20379N、H2M20385N、H2M20386N、およびH2M20387Nと指定した。
【0211】
抗CTLA-4抗体はまた、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる、米国特許第7,582,298号に記載されるように、骨髄腫細胞への融合なしに(免疫化マウスのいずれかからの)抗原陽性B細胞から直接単離された。この方法を使用して、いくつかの完全ヒト抗CTLA-4抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびヒト定常ドメインを有する抗体)が得られ、この様式で生成された例示的な抗体を、以下:H1H19264P、H1H19269P、H1H19273P、H1H19274P、H1H19278P、H1H19279P、H1H19280P、H1H19281P、H1H19283P、H1H19284P、H1H19291P、H1H19294P、H1H19303P、H1H19305P、H1H19307P、H1H19312P、H1H19313P、H1H19314P2、H1H19319P2、およびH1H19327P2と指定した。
【0212】
この実施例の方法に従って生成された例示的な抗体の生物学的特性を、以下に記載の実施例において詳細に記載する。
【0213】
実施例2:重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸およびヌクレオチド配列
表1は、本発明の選択された抗CTLA-4抗体の重鎖および軽鎖可変領域ならびにCDRのアミノ酸配列識別子を示す。対応する核酸配列識別子を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0214】
抗体は、典型的には、本明細書において以下の命名法:Fc接頭辞(例えば、「H1M」、「H4H」など)、続いて数値識別子(例えば、表1に示すように、「19264」、「20370」など)、続いて「P」、「P2」、または「N」接尾辞に従って呼ばれる。よって、この命名法に従って、抗体は、本明細書において、例えば、「H1M20370N」、「H1H19264P」、「H1H19314P2」などと呼ばれ得る。本明細書で使用される抗体名のH1H接頭辞は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H1H」抗体は、ヒトIgG1Fcを有し、「H1M」抗体は、マウスIgG1Fcを有し、「H2M」抗体は、マウスIgG2Fcを有する(抗体名の最初の「H」によって示されるように全ての可変領域は完全ヒト型である)。当業者によって認識されるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体は、ヒトIgG1またはヒトIgG4などを有する抗体に変換することができる)が、任意の事象において、表1に示す数値識別子によって示される可変ドメイン(CDRを含む)は同じままであり、抗原に対する結合特性は、Fcドメインの性質にかかわらず、同一であるか、また
は実質的に類似していると予想される。
【0215】
対照構成体:
2つの対照構成体(抗CTLA4抗体)は、比較目的で以下の実験に含まれた。
COMP1:WO 01/14424 A2(Bristol Myers Squibb)に記載され、hIgG1 Fcで産生された、「10D1」の対応するドメインのアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変ドメインを有するヒト抗CTLA-4抗体。
COMP2:US 2014/099325 A1(Pfizer)に記載され、hIgG2 Fcで産生された、「11.2.1」の対応するドメインのアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変ドメインを有するヒト抗CTLA-4抗体。
【0216】
実施例3:ヒトモノクローナル抗CTLA-4抗体の表面プラズモン共鳴由来の結合親和性および動態定数
ヒト抗CTLA-4抗体の結合親和性および動態定数を、25℃での表面プラズモン共鳴(Biacore 4000(GE,Pittsburgh,PA)またはMASS-1(Sierra Sensors,Greenville,RI))によって決定した(表3および4)。ヒトIgG1として発現した抗体(すなわち、「H1H」)は、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE)とのアミンカップリングによって誘導体化されたCM5センサー表面(GE)上に捕捉した。マウスIgG1またはマウスIgG2として発現した抗体(すなわち、「H1M」、「H2M」)を、ポリクローナルヤギ抗マウスFc抗体(GE)とのアミンカップリングによって誘導体化された高容量アミンセンサー表面(Sierra Sensors)上に捕捉した。c末端myc-myc-ポリヒスチジンタグ(mmh)で発現した様々な濃度の可溶性ヒト(h)CTLA-4(配列番号506)またはカニクイザル(mf)CTLA-4(配列番号507)タンパク質を、抗CTLA-4 mAb捕捉センサー表面にわたって30または50uL/分の流量で注入した。CTLA-4は、システイン残基157の細胞外ドメインにおける1つのジスルフィド結合によって相互接続されたホモダイマーである。
【0217】
全ての結合試験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05体積/体積%界面活性剤P20(HBS-ETランニングバッファー)で構成されるバッファーにおいて行った。捕捉されたモノクローナル抗体へのhCTLA4.mmhまたはmfCTLA4.mmhの会合を4または5分間モニターし、HBS-ETランニングバッファーにおけるhCTLA4.mmhまたはmfCTLA4.mmhの解離を10分間モニターした。
【0218】
Scrubber 2.0c曲線適合ソフトウェアを用いてリアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルへあてはめることによって、動的結合(k
a)速度定数および動的解離(k
d)速度定数を測定した。結合平衡解離定数(K
D)および解離半減期(t1/2)を、動的速度定数から以下のように計算した:
【数1】
【0219】
表3に示すように、本発明の全ての抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4に結合し、多くがhCTLA-4.mmhに対してナノモル親和性を有し、カニクイザルCTLA-4タンパク質に対して交差反応性を示した。マウスまたはラットCTLA-4タンパク質に対する交差反応性は観察されなかった(データは示されない)。
【表3】
【表4】
【0220】
実施例4:抗CTLA-4抗体はヒトCTLA-4とその天然リガンド、B7-1およびB7-2との間の相互作用をブロックする
CTLA-4(細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4)は、従来型および制御性T細胞上に発現したI型膜貫通T細胞阻害チェックポイント受容体である。CTLA-4は、その天然リガンドであるB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)に結合する刺激性受容体CD28を打ち負かすことによって、T細胞の活性化を負に制御する。この例では、抗CTLA-4抗体がプレート結合B7-1およびB7-2へのCTLA-4タンパク質結合をブロックする能力を、競合サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して評価した。様々な濃度の抗CTLA-4抗体を、一定の量のダイマーCTLA-4タンパク質と予め混合し、抗体の存在による、プレート固定化B7-1またはB7-2へのCTLA-4結合の低減をモニターした。
【0221】
簡潔に、アッセイは、以下の手順を使用して行った:c末端ヒトIgG1および6xヒスチジン(hIgG1-6xHis、R&D Systems,Minneapolis,MN)で発現した、ヒトB7-1およびB7-2タンパク質を、PBS中2μg/mL
で、96ウェルマイクロタイタープレート上、一晩(ON)4℃で別個に被覆した。その後、非特異的結合部位を、PBS中のBSAの0.5(重量/体積)%溶液を使用してブロックした。別個に、一定量の200pMまたは400pMの組換えhCTLA-4-mFcタンパク質(マウスIgG2aのc末端Fc部分で発現したヒトCTLA-4細胞外ドメイン、配列番号508)を、連続希釈抗CTLA-4抗体、または抗体が存在しない溶液に添加した。この例では、抗CTLA-4抗体の用量は、1.7pM~最大100nMまたは1.0uMのいずれかの範囲であった。次に、室温(RT)で1時間後、200pMの一定濃度のhCTLA-4-mFcタンパク質を含む抗体-タンパク質複合体を、hB7-1-hIgG1-6Hisで被覆したマイクロタイタープレートに移し、400pMの一定濃度のhCTLA-4-mFcを含む抗体-タンパク質複合体を、hB7-2-hIgG1-6His被覆プレートに移した。RTでのその後の1時間のインキュベーション後、ウェルを洗浄し、プレート結合hCTLA-4-mFcを、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)(JacksonImmunoResearch,West Grove,PA)と結合した抗マウスFcγ断片特異的ヤギポリクローナル抗体で検出した。プレートは、TMB基質溶液(BD Biosciences,San Jose,CA)を製造業者の指示に従って使用して開発し、吸光度は、Victorプレートリーダー(PerkinElmer(商標),Waltham,MA)で450nmで測定した。
【0222】
全てのデータ分析は、Prism(商標)ソフトウェア(GraphPad,LaJolla,CA)内のS字型用量応答モデルを使用して行った。計算は以下のように行った:hB7-1またはB7-2へのhCTLA-4結合を50%低減するために必要な抗体の濃度として定義されるIC50を遮断効力の指標として使用した。試験された抗体の最大濃度(100nMまたは1.0uM)での遮断パーセントは、それぞれ、アッセイのベースラインに対して、200pMまたは400pMのhCTLA-4-mFcのhB7-1またはhB7-2への結合をブロックする抗体の能力として計算した。抗体の不在下で200pMまたは400pMのhCTLA-4-mFcを含む試料の結合シグナルは、100%結合または0%遮断として参照し、hCTLA-4-mFcまたは抗体を含まない試料バッファーのベースラインシグナルは、0%結合または100%遮断として参照した。
【0223】
表4の結果が示すように、本発明の抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4のその天然リガンドであるB7-1またはB7-2への結合をブロックする広範な能力を示す。例示的な抗体H1H19273PおよびH1H19313Pは、ピコモルIC
50値で、および1.0uM最大抗体濃度での約100%の遮断パーセントでCTLA-4のB7-1またはB7-2への結合を強力にブロックする。H1H20373Nなどのいくつかの抗体は、B7-1よりもB7-2へのCTLA-4結合のより強いブロッカーであり、いくつかの抗体は、いずれかのリガンドの最小の遮断能力を示した(H1H19314P2)。
【表5】
【表6】
【0224】
実施例5:抗CTLA-4抗体はヒトCTLA-4操作細胞株への特異的かつ強力な結合を示す
この例では、抗ヒト(h)CTLA-4抗体がヒトCTLA-4発現細胞株に特異的に結合する能力を、電気化学発光(ECL)ベースの検出を使用して決定した。
【0225】
簡潔には、Velocimmune(登録商標)マウス(VI線維芽細胞)から単離されたマウス胚性線維芽細胞に、ヒトCTLA-4(アミノ酸M1-N223、NCBIアクセッション番号NM_005214.4)を安定にトランスフェクトした。非トランスフェクトVI線維芽細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)によるCTLA-4の検出可能な発現を有さず、結合対照として含まれていた。加えて、不死ヒトJurkatT細胞(ATCC,Manassas,VA)にNFAT-Lucレンチウイルスレポーター(Qiagen,Germantown,MD)およびh、m、またはmf CTLA-4キメラ構成体を形質導入することによって生成されたレポーターT細胞株もこのアッセイで評価した。キメラ構成体は、hCD300a(aa 181-299、アクセッション番号NP_009192.2)の膜貫通および細胞質ドメインに融合したhCTLA-4(aa 1-161、アクセッション番号NP_005205.2)、マウスCTLA-4(ms CTLA-4、アミノ酸1-161、アクセッション番号NM_009843.4)、またはmf CTLA-4(aa 1~161、アクセッション番号XP_005574071.1)のいずれかの細胞外ドメインを含んだ。
【0226】
約2.0x104個のVI線維芽細胞/hCTLA-4細胞または1.0x104個のJurkat/NFATキメラ細胞を、96ウェル炭素電極プレート(MULTI-ARRAYハイバインドプレート、Meso Scale Discovery(MSD、Rockville,MD))に別個に播種し、1時間(h)37℃でインキュベートした。非特異的結合部位を、PBS中の2(重量/体積)%BSAによって1時間室温(RT)でブロックした。1.7pM~150nMの範囲の抗CTLA-4またはアイソタイプ対照抗体の段階希釈物、または抗体を含有しないバッファーを、プレート結合細胞に1時間、RTで添加した。次いで、細胞洗浄ヘッドを備えるAquaMax2000プレート洗浄機(MDS Analytical Technologies,Sunnyvale,CA)を用いて、プレートを洗浄し、未結合抗体を除去した。プレート結合抗体を、重鎖および軽鎖に特異的なSULFO-TAG(商標)結合ヤギポリクローナル抗ヒトI
gG抗体(Jackson Immunoresearch,West Grove,PA)またはFcγ断片に特異的なSULFO-TAG(商標)結合ヤギポリクローナル抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch)のいずれかで、1時間、RTで検出した。
【0227】
洗浄後、プレートを製造業者の推奨手順に従ってリードバッファー(MSD)で顕色させ、発光シグナルをSECTOR Imager 600(MSD)で記録した。相対光量単位(RLU)で測定される発光強度を、濃度の範囲での各抗体の結合強度を示すために記録した。同じ濃度での親細胞と比較したCTLA-4操作細胞への0.4nMまたは0.6nM抗体結合で検出されたシグナルの比を、CTLA-4結合の特異性の指標として報告した。
【0228】
加えて、直接結合シグナル(RLU)を抗体濃度の関数として分析し、データをGraphPad Prism(商標)ソフトウェア(GraphPad,LaJolla,CA)を用いてS字型(4パラメータロジスティック)用量応答モデルにあてはめた。最大結合シグナルの50%が検出される抗体の濃度として定義されるEC50値を、CTLA-4操作細胞への結合有効性を示すために決定した。
【0229】
表5の結果が示すように、本発明の抗CTLA-4抗体の大部分は、hCTLA-4操作細胞株に特異的に結合した。H1H19303PおよびH1H19280Pなどのいくつかの例示的な抗体は、ピコモルEC50値で、および対照細胞株への結合よりも20~23倍の比で結合した。
【0230】
一連の抗体を、マウスおよびカニクイザル操作細胞株に対する交差反応性についてさらに評価した。表6の結果が示すように、抗CTLA-4抗体H1H19303P、H1H19273P、H1H19319P2、およびH1H19319Pは、Jurkat/NFAT Luc/ヒトおよびカニクイザルCTLA-4/hCD300キメラ細胞株に、ピコモルEC
50値で、強力に結合する。マウスCTLA-4キメラ細胞に対する交差反応性は観察されなかった。
【表7】
【表8】
【0231】
【0232】
実施例6:抗CTLA-4抗体は操作されたレポーターT細胞/APCバイオアッセイシステムにおいてT細胞活性化を誘導する
この例では、T細胞/抗原提示細胞(APC)ベースのルシフェラーゼレポーターバイオアッセイを、CTLA-4/CD80またはCTLA-4/CD86相互作用およびT細胞活性化をブロックする効果を評価するために開発した。1つのバイオアッセイフォーマットでは、T細胞/APCシステムに対する抗CTLA-4抗体投与の効果を、ルシフェラーゼ活性を測定することによって評価した。第2のアッセイでは、抗CTLA-4抗体がインターロイキン(IL)-2放出を誘導する能力を評価した。
【0233】
上記の例に記載されるように、この例で試験された抗CTLA-4抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)を介してヒトおよびカニクイザル(Macaca fasciularis)CTLA-4への結合を示し、ヒトCTLA-4を発現するように操作された細胞株への特異的かつ強力な結合を示した。これらの選択されたCTLA-4抗体は、CTLA-4のB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)への結合をブロックすることも以前に示された。
【0234】
背景
T細胞の活性化は、抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合性複合体クラスIまたはII(MHCIまたはMHCII)タンパク質によって提示される特定のペプチドを認識
するT細胞受容体(TCR)を刺激することによって達成される(Goldrath et al.1999)。活性化されたTCRは、順にシグナル伝達事象のカスケードを開始し、これはアクチベータータンパク質1(AP-1)、活性化T細胞の核因子(NFAT)、または活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)などの様々な転写因子によって駆動される、レポーター遺伝子によってモニターすることができる。T細胞応答は次いで、CD28、CTLA-4(細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4)、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)、または他の分子などのT細胞上に構成的または誘導的のいずれかで発現した共受容体の関与を介してさらに精製される(Sharpe et al.2002)。共受容体であるCD28およびCTLA-4は、CTLA-4がCD28よりも高い親和性を有する抗原提示細胞(APC)上で発現した同じリガンドであるCD80およびCD86について競合する。CTLA-4は、デコイとして機能し、リガンドを隔離してT細胞活性化の低減をもたらすことによって、CD28の活性化を阻害する。(Alegre et al.2001およびWalker et al.2011)。
【0235】
NFAT-ルシフェラーゼ活性
細胞株操作:レポーターT細胞は、細胞表面にTCRおよびCD28を内因的に発現する不死ヒトJurkat T細胞(ATCC)に、NFAT-Lucレンチウイルスレポーター(Qiagen,Rockville,MD)を製造業者の指示に従って形質導入することによって操作した。レンチウイルスは、最小限のCMV(サイトメガロウイルス)プロモーターおよびNFAT転写応答エレメント(TRE)のタンデムリピートおよびピューロマイシン耐性遺伝子の制御下でホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードする。
【0236】
抗生物質選択およびシングルクローニング後、Jurkat/NFAT-Lucクローン株3C7(Jurkat/NFAT-Luc cl.3C7)にレンチウイルスコードヒト(h)またはサル(mf-カニクイザル)CTLA-4キメラタンパク質を形質導入した。キメラ構成体は、hCD300a(aa 181-299、アクセッション番号NP_009192.2)の膜貫通および細胞質ドメインに融合したhCTLA-4(aa
1-161、アクセッション番号NP_005205.2)またはmf CTLA-4(aa 1~161、アクセッション番号XP_005574071.1)の細胞外ドメインを含む。CD300aは、免疫細胞上で見られ、その免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を介して阻害シグナルを伝達する(DeBell et al.2012)。得られた安定したT細胞株であるJurkat/NFAT-Luc/hCTLA-4-hCD300aおよびJurkat/NFAT-Luc/mfCTLA-4-hCD300aは、選択され、500μg/mLのG418および1μg/mLのピューロマイシンを補足したRPMI+10%FBS+ペニシリン+ストレプトマイシン+グルタミンにおいて維持された。
【0237】
細胞表面上でCD20、Fcガンマ受容体(FcγR)、CD80、およびCD86を内因的に発現するヒトRaji B細胞(ATCC,Manassas,VA)は、ルシフェラーゼベースのバイオアッセイにおいてAPC細胞として使用した。Raji細胞は、HEPESおよびピルビン酸ナトリウムを補足したRPMI+10%FBS+ペニシリン+ストレプトマイシン+グルタミンにおいて維持した。
【0238】
T細胞/APC刺激:レポーターT細胞は、Jurkat T細胞上に発現するCD3およびRaji B細胞上のCD20を標的とするT細胞活性化抗CD20xCD3二重特異性抗体(REGN2281)を介して刺激される。REGN2281の二重特異性結合モードは、Jurkat/NFAT-LucT細胞において、NFAT結合レポーター遺伝子、ルシフェラーゼの増加をもたらす。
【0239】
しかしながら、Jurkat/NFAT-Luc/CTLA-hCD300aキメラ細胞では、Raji細胞上で発現した、CTLA-4-hCD300aキメラ受容体とそのリガンドであるCD80/CD86との相互作用によって伝達される阻害シグナルのために、REGN2281でのレポーター遺伝子の最大活性化が弱められている。このバイオアッセイでは、CTLA-4/CD80およびCD86軸をブロックする抗CTLA-4抗体は、理論的には、キメラCTLA-4タンパク質のCD300a尾部を介して送達される阻害シグナルを無効化することによってJurkatレポーター細胞においてNFAT-Luc活性をレスキューするであろう。
【0240】
このアッセイフォーマットでは、抗CTLA-4抗体は、Raji細胞上のFcγRへの抗体Fcのアンカーリングによって引き起こされる、Jurkatにおけるアゴニストシグナルを同時に誘導することができる。飽和レベルのIgG分子またはFcγR特異的抗体でのFcγRの遮断は、CTLA-4抗体のアゴニスト効果を低減し得る。したがって、Fcブロックステップが、Raji細胞上のFcγRへのCTLA-4 mabの結合を阻害するためにアッセイに含まれた。
【0241】
ルシフェラーゼアッセイ:スクリーニングの24時間前に、5x105個のレポーターT細胞および7.5x105個のRaji APCを、アッセイ培地(10%FBSおよびペニシリン+ストレプトマイシン+グルタミン(PSG)を補足したRPMI1640)において培養した。翌日、抗CTLA-4抗体およびアイソタイプ一致陰性対照(1:3に段階希釈、用量範囲15pM~100nM)を、Raji細胞の内因性FcγRIIb受容体を占めるために100pMのREGN2281および10nMのFcブロックまたは10nMのヒトIgG4アイソタイプ対照の存在下で試験した。段階希釈抗体を、固定濃度の100pMのREGN2281/10nMのFcブロックまたは100pMのREGN2281/10nMのhIgG4アイソタイプ対照を含有する96ウェル白色平底プレート(Nunc/Thermo Fisher,Pittsburgh,PA)において対応するウェルに添加した。レポーターT細胞およびRaji APCを2x106/mLで再懸濁し、T細胞を最終濃度5x104細胞/ウェルでプレートにまず添加した。プレートを37℃/5%CO2で15~30分間インキュベートし、続いて5×104細胞/ウェルの最終濃度でRaji細胞を添加した。NFAT-Luc活性を検出するために100μL ONE-Glo(商標)(Promega,Madison WI)の添加前に、試料を37℃/5%CO2でさらに4~6時間インキュベートした。放射光は、マルチラベルプレートリーダーVictor(PerkinElmer,Waltham,MA)で相対光量単位(RLU)で捕捉した。全ての段階希釈物を二重に試験した。
【0242】
CTLA-4抗体のEC50値は、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad,La Jolla,CA)を使用して、10点用量応答曲線上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。誘導倍率は、各試料の相対RLU値を、1に設定されたCTLA-4抗体を含有しない試料の平均に正規化することによって計算した。
【0243】
結果:表7に記録されるように、抗CTLA-4抗体が、REGN2281+/-Fcブロックの存在下で、親Jurkat/NFAT-Luc cl 3C7細胞およびRaji APCに添加された場合、レポーター遺伝子活性(ルシフェラーゼ)の増加は観察されなかった。しかしながら、抗CTLA-4抗体が、REGN2281+/-Fcブロックの存在下で、Jurkat/NFAT-Luc/hおよびmf CTLA-4/hCD300キメラ細胞株/Raji APCシステムに添加された場合、増加するルシフェラーゼ活性が記録された。このバイオアッセイフォーマットでは、抗CTLA-4抗体は、Jurkatレポーター細胞上のCTLA-4とRaji細胞で内因的に発現したCD80/CD86との相互作用をブロックし、ルシフェラーゼタンパク質の誘導をもたらす。このアッセイで試験された抗CTLA-4抗体は、ルシフェラーゼ活性を増加させ、最
大値は、Fcブロックの存在下、1.77nM~7.67nMの範囲のEC50で観察された。表7に示すように、H1H19303Pは、試験においてコンパレータ1および2よりも良好であった。
【0244】
CTLA-4 T細胞/APCヒトインターロイキン2(hIL-2)放出アッセイ
細胞株操作:Jurkat/NFAT-Lucクローン株3C7(上述のとおり)に、hCTLA-4完全長タンパク質(アクセッション番号NP_005205.2)をコードする内製型レンチウイルスsupを形質導入した。得られた安定したT細胞株(Jurkat/NFAT-Luc/hCTLA-4 wt)は、フローサイトメトリーによって高発現について選別され、500μg/mLのG418および1μg/mLピューロマイシンを補足したRPMI+10%FBS+PSGにおいて維持された。
【0245】
ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞(ATCC)にヒトCD20をトランスフェクトし、4xG4Sリンカーを介して緑色蛍光タンパク質(GFP、aa 2-240、アクセッション番号WP_031943942.1)に融合したhCD80(aa 1-288、アクセッション番号NP_005182.1)またはhCD86(aa 1-329、アクセッション番号NP_787058.4)を過剰発現するためにレンチウイルスsupの形質導入に使用した。限界希釈によるシングルクローニング後、結果として以下のクローン株:HEK293/hCD20/hCD80-GFPクローン1F4およびHEK293/hCD20/hCD86-GFPクローン4G5が生成された。細胞株は、500μg/mL G418を補足したDME+10%FBS+PSG+非必須アミノ酸(NEAA、Irvine Scientific,Santa Ana,CA)において維持した。
【0246】
T細胞/APC刺激:操作されたT細胞は、上述のように、二重特異性抗体REGN2281を活性化するT細胞を介して刺激される。REGN2281のCD3への結合は、TCRと複合してCD3サブユニットのクラスター化をもたらし、T細胞を活性化し、ひいてはhIL-2を放出する。IL-2の放出は、操作されたHEK293細胞上に位置するそのリガンドであるCD80またはCD86とのCD28相互作用によってさらに強めることができる。Jurkat/NFAT-Luc/hCTLA-4細胞の最大活性化は、HEK293細胞上のリガンドCD80/CD86の結合についてのCTLA-4とCD28との競合のために弱められている(Carreno et al.2000)。
【0247】
このバイオアッセイでは、CTLA-4/CD80またはCD86相互作用をブロックする抗体は、阻害性CTLA-4アームを無効化することによって操作されたJurkat細胞におけるIL-2放出をレスキューするであろう。
【0248】
IL-2放出アッセイ:スクリーニングの24時間前に、操作されたT細胞をアッセイ培地(RPMI1640+10%FBS+PSG)において5x105細胞/mLまで培養した。翌日、HEK293細胞をD-PBS(Irvine Scientific)で洗浄し、トリプシン(Specialty Media)で剥離し、アッセイ培地でブロックした。次に、HEK293細胞を、細胞成長を停止させるために50μg/mLのマイトマイシンCを含有するアッセイ培地で、37℃/5%CO2で1時間処理した。その後、細胞をアッセイ培地で徹底的に洗浄して、遊離マイトマイシンCを除去した。
【0249】
抗CTLA-4抗体およびそれらのアイソタイプ対照は、15pM~100nMの範囲の10点希釈物で、アッセイ培地において1:3に段階希釈した。段階希釈抗体を、300pMの固定濃度のREGN2281を含有する96ウェル丸底プレート(Nunc)において対応するウェルに添加した。レポーターT細胞を最終濃度1x105細胞/ウェルでプレートに添加した。プレートを、37℃/5%CO2で15~30分間インキュベー
トし、続いて2.5×103細胞/ウェルの最終濃度でHEK293細胞を添加した。プレートを37℃/5%CO2で72時間インキュベートし、上清をIL-2測定のために収集し、使用した。IL-2レベルは、AlphaLISAキット(PerkinElmer)を使用して、製造業者のプロトコルに従って測定した。測定値は、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer)で取得した。全ての段階希釈物を二重に試験した。
【0250】
CTLA-4 mAbのEC50値は、GraphPad Prismを使用して、10ポイントの用量応答曲線上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。誘導倍率は、各試料の相対IL-2値を、抗CTLA-4抗体を含有しない試料に正規化することによって計算した。表9は、100nMで到達した誘導倍率およびhIL-2放出アッセイにおいて到達した計算EC50値を示す。
【0251】
結果:表8の結果が示すように、このアッセイで試験された抗CTLA-4抗体は、Jurkat/NFAT-Luc/CTLA-4キメラ//Raji APCシステムにおいてIL-2産生を誘導した。100nM濃度では、抗CTLA-4抗体は、CTLA-4陰性レポーターT細胞を使用したアッセイシステムで観察されるものの4~6倍の範囲の活性倍率でIL-2産生を誘導する。表8に示すように、H1H19303Pは、試験においてコンパレータ1および2よりも良好であった。
【0252】
概要
要約すると、選択された抗CTLA-4抗体は、T細胞活性化に対する抗体の活性を評価するように設計された2つの操作されたT細胞/APCバイオアッセイシステムにおいて試験した。1つのフォーマットでは、抗CTLA-4抗体は、NFAT-ルシフェラーゼ活性の増加によって測定されるようにT細胞を活性化し、抗体がCTLA-4とリガンドCD80およびCD86との間の相互作用をブロックすることを示した。第2のフォーマットでは、抗CTLA-4抗体は、IL-2の産生を誘導し、抗CTLA-4抗体がCTLA-4/CD80およびCTLA-4/CD86相互作用をブロックし、それによってIL-2放出をレスキューすることができることを示した。
【表10】
【表11】
【0253】
実施例7:腫瘍に対する抗CTLA-4抗体の有効性
この実施例は、CTLA-4遺伝子についてヒト化されたマウスにおいて成長したMC38.Ova腫瘍に対する本発明の例示的な抗CTLA-4抗体の抗腫瘍有効性を記載する。
【0254】
ヒトCTLA-4hum/humノックインマウスは、マウスが内因性Ctla4遺伝子座からマウスCTLA-4膜貫通および細胞質ドメインに融合したヒトCTLA-4細胞外ドメインを含むキメラタンパク質を発現する、VelociGene(商標)技術を使用してC57BL/6株バックグラウンドで操作された(Valenzuela et
al 2003;Nat.Biotechnol.21:652-659)。MC38.Ova細胞株は、膜貫通ニワトリ卵白アルブミン抗原(Ova)を発現するようにMC38細胞の安定したレンチウイルス形質導入によって操作された。
【0255】
試験(A)
CTLA-4hum/humノックインマウスに、0日目にMC38.Ova細胞(106細胞/マウス)を皮下(SC)移植し、3、7、10、14、および17日目に10mg/kgのH1H19273P、もしくはH1H19303P、もしくはH1H19319のいずれか、または10mg/kgのhIgG1アイソタイプ対照IPを投与した。腫瘍体積および無腫瘍動物を最大37日間モニターした。
【0256】
3つの抗CTLA-4抗体は全て、アイソタイプ対照での治療と比較して、10mg/kgで試験された部分的な腫瘍成長阻害を示した(
図1)。H1H19303Pでの治療は、24日目までに10mg/kg用量群において9匹中8匹(89%)の無腫瘍マウスをもたらした(
図2)。H1H19319PまたはH1H19273Pのいずれかでの治療も同様に有効であり、24日目までにそれぞれ9匹中7匹のマウス(78%)および9匹中5匹のマウス(56%)において完全な腫瘍成長阻害をもたらした。24日目のアイ
ソタイプ対照治療群において、どの動物も無腫瘍であった。24日目の腫瘍体積は、アイソタイプ対照が投与された群と比較して、各抗CTLA-4抗体治療群について有意により小さかった(p<0.0001)。
【0257】
24日目に無腫瘍であることが観察されたマウスを、移植後37日間モニターした。生存率は、アイソタイプ対照が投与されたマウスと比較して、抗ヒトCTLA-4抗体のいずれかで治療されたマウスにおいて有意により高かった(p<0.0001)(
図3)。抗CTLA-4抗体群からの全ての無腫瘍マウスにおいて腫瘍再発は観察されなかった。抗体治療の結果として体重減少の証拠は観察されなかった。
【0258】
要約すると、3つの抗ヒトCTLA-4抗体(H1H19273P、H1H19303P、およびH1H19319)のそれぞれでの治療は、アイソタイプ対照と比較して、腫瘍成長の低減、腫瘍クリアランスの改善、および生存率の改善をもたらした。このモデルにおける3つの抗ヒトCTLA-4抗体のそれぞれの有効性は同等であった。
【0259】
試験(B)
この試験に使用される例示的な抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号196-198-200-204-206-208のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3および配列番号194/202のHCVR/LCVRを含む(H1H19303Pとしても知られる)。H1H19303P(REGN4659としても知られる)の全長重鎖アミノ酸配列は配列番号509に示され、H1H19303Pの全長軽鎖アミノ酸配列は配列番号510に示される(表9)。
【表12】
【0260】
抗CTLA-4抗体の投与および抗腫瘍活性の分析
H1H19303Pの抗腫瘍活性は、MC38.Ova腫瘍保有CTLA-4
hum/humノックインマウスにおいて異なる用量で試験した。hIgG1アイソタイプ対照は、陰性対照として含まれた。CTLA-4
hum/humノックインマウスの後脇腹に、0日目に1x10
6個のMC38.Ova細胞をSC移植し、4つの治療群に分けた(表10)。3、6、9、13、および16日目に、マウスにH1H19303PまたはhIgG1アイソタイプ対照IPを投与した。腫瘍の体積は、37日間にわたって1週間に2回キャリパーによって測定した。腫瘍保有マウスを、37日目または以下のエンドポイント:腫瘍体積>2000mm
3または腫瘍潰瘍のいずれかでCO
2で屠殺した。生存率試験のために無腫瘍マウスを最長107日間追跡した。
【表13】
【0261】
血液試料は、実験開始の2日前(-2日目)ならびに6、13、および20日目の抗体投与の2時間前に、顎下静脈から収集した。血清試料は、血清抗体レベルのその後の測定のために凍結し、保存した。
【0262】
統計分析を、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン6)を用いて行った。動物群間の腫瘍体積の差についての統計的有意性は、ダネットの多重比較事後検定での一元配置分散分析によって決定した。無腫瘍生存率についての統計的有意性は、ログランク(マンテル-コックス)検定によって決定した。各群が対照群と有意に異なるかを決定するために、2群マンテル-コックス分析は、比較数(k=6)について調整された有意性レベル(α=0.05)で、ボンフェローニ法(α調整=0.05/6)を使用して実行した。
【0263】
総ヒトIgG抗体の血清濃度
総H1H19303PおよびhIgG1アイソタイプ対照抗体の血清濃度は、ヒトFcγの検出に特異的なサンドイッチELISAを使用して決定した。6、13、および20日目に収集された血清試料は、10mg/kgのH1H19303PおよびhIgG1対照群について分析し、6および20日目に収集された試料は、H1H19303Pの2mg/kgおよび5mg/kgの用量群について分析した。簡潔には、PBS中1μg/mLのヤギ抗ヒトFcγポリクローナル抗体をマイクロタイタープレートに4℃で一晩受動的に吸着させ、続いてPBS中5%BSAでの非特異的結合ブロックを行った。このアッセイにおいてキャリブレーションに使用される標準物は、2.7~350ng/mLの範囲の濃度(1:2段階希釈)でのH1H19303P、またはアイソタイプ対照抗体であった。標準物および血清試料の段階希釈物を希釈バッファーで調製した(PBS中0.5%BSA)。次いで、試料を抗hFcγ被覆プレートに添加し(100μL/ウェル)、室温で1時間インキュベートした。その後、プレート捕捉ヒトIgG抗体を、希釈バッファー中の160ng/mLのHRP結合抗hFcγポリクローナル抗体を使用して検出した。色原性HRP基質である3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を使用してHRP活性を検出し、得られたOD450をPerkin Elmer Victor X4 Multimode Plate Readerで読み取った。キャリブレーション(2.7ng/mL)に使用される標準物(H1H19303P、またはアイソタイプ対照抗体)の最低濃度は、アッセイのダイナミックレンジ内であり、このアッセイのLLOQとして定義された。データを、GraphPad Prismソフトウェア
を使用して非線形回帰によって分析した。2回の反復実験の平均濃度を分析に使用した。
【0264】
マウス抗ヒト抗体の血清濃度
抗H1H19303Pまたは抗IgG1対照抗体マウスIgG力価は、注入された抗体のそれぞれの検出に特異的なサンドイッチELISAを使用して決定した。6、13、および20日目に収集された血清試料は、10mg/kgのH1H19303PおよびhIgG1対照群について分析し、6および20日目に収集された試料は、H1H19303Pの2mg/kgおよび5mg/kgの用量群について分析した。簡潔には、PBS中1μg/mLのH1H19303Pまたは抗IgG1対照抗体をマイクロタイタープレートに4℃で一晩受動的に吸着させ、続いてPBS中5%ウシ血清アルブミン(BSA)での非特異的結合ブロックを行った。血清試料の段階希釈物は、1:500から開始する希釈バッファー(PBS中0.5%BSA)で調製した。したがって、対応する希釈係数(500)は、アッセイの検出下限(LOD)として定義された。次いで、試料をH1H19303Pまたは抗IgG1対照抗体被覆プレート(100μL/ウェル)に添加し、4℃で16~18時間インキュベートした。アッセイバックグラウンドを決定するために、希釈バッファーのみを添加したウェルを含めた。その後、プレート捕捉マウスIgGを、40ng/mLで西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウスFcγポリクローナル抗体を使用して検出した。色原性HRP基質であるTMBを使用してHRP活性を検出し、450nmでの得られた光学密度(OD450)をPerkin Elmer Victor X4 Multimode Plate Readerで読み取った。結合シグナル対希釈係数のデータを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して非線形回帰によって分析し、力価を計算した。MAHA力価は、アッセイのバックグラウンドシグナルの2倍に相当する結合シグナルに対応する血清試料の計算希釈係数として定義された。
【0265】
結果
CTLA-4hum/humノックインマウスに、0日目にMC38.Ova細胞をSC移植し、3、6、9、13、および16日目に2、5、もしくは10mg/kgのH1H19303Pまたは10mg/kgのhIgG1アイソタイプ対照IPを投与した。腫瘍体積を37日間モニターし、無腫瘍動物を最長107日間モニターした。
【0266】
H1H19303Pは、アイソタイプ対照での治療と比較して、試験された全ての用量で部分的な腫瘍成長阻害を示した(
図4)。H1H19303Pでの治療は、20日目までに5mg/kgおよび10mg/kgの両方の用量群において8匹中5匹(63%)の無腫瘍マウス、2mg/kgの用量群において8匹中2匹(25%)の無腫瘍マウスをもたらした。20日目の腫瘍体積は、アイソタイプ対照が投与された群と比較して、H1H19303P治療群について有意により小さかった(p<0.0001)(
図5)。
【0267】
20日目に無腫瘍であることが観察されたマウスを、移植後最長107日間モニターした。生存率は、アイソタイプ対照が投与されたマウスと比較して、H1H19303Pで治療されたマウスにおいて有意により高かった(p<0.0001)(
図6)。全ての用量群からの25匹の無腫瘍マウスのうちの24匹において腫瘍再発は観察されなかった。抗体治療の結果として体重減少の証拠は観察されなかった。
【0268】
要約すると、H1H19303Pでの予防的処置は、アイソタイプ対照と比較して、腫瘍成長を用量依存的に有意に低減し、腫瘍クリアランスを改善し、生存率を改善した。
【0269】
ELISAによる血清抗体濃度およびMAHAの評価
6、13、および20日目に収集された血清試料を、ELISAを使用してH1H19303Pおよびアイソタイプ対照の濃度、ならびにMAHA力価について分析した。血清
中のH1H19303PおよびhIgG1アイソタイプ対照抗体の濃度は、ヒトIgGの検出に特異的なサンドイッチELISAを使用して決定した(
図7)。H1H19303PまたはIgG1対照抗体に対する特定のマウスIgG力価は、各抗体の検出に特異的なサンドイッチELISAを使用して決定した(
図8)。
【0270】
6日目に、H1H19303Pおよびアイソタイプ対照が試験された全ての用量で血清中に検出され、それぞれ、H1H19303Pの10、5、および2mg/kg用量で39.8±24、33.5±8.9、および10.4±2.9の平均血清濃度が観察された(表11)。
【表14】
【表15】
【0271】
6日目後、6、9、13、および16日目の抗体の追加投与にもかかわらず、20日目までに全ての用量群についてH1H19303Pの血清濃度の低減が観察された(表11)。10mg/kgの用量群について、アイソタイプ対照と比較して、急速な抗体クリアランスが観察された。H1H19303Pの血清濃度の低減は、MAHAの発生に起因する可能性がある(
図8、表12)。MAHA力価は、H1H19303Pの全ての用量について6日後に測定された全ての時点で観察された。しかしながら、アイソタイプ対照のMAHA力価は、試験された全ての時点で検出限界であった。
【0272】
結論
10mg/kg、5mg/kg、または2mg/kgの用量でのH1H19303Pの腹腔内投与は、MC38.Ova腫瘍細胞が移植されたCTLA-4hum/humノックインマウスにおいて、hIgG1対照と比較して、腫瘍成長の低減、腫瘍クリアランスの改善、および生存率の改善をもたらした。H1H19303Pの血清濃度は、時間と共に減少し、6日目後の時点での抗H1H19303P MAHAの発生と対応した。
【0273】
実施例8:MC38.Ova腫瘍を保有するPD-1hum/humノックインマウスに
おける抗マウスCTLA-4抗体および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)での併用治療の有効性
この実施例は、PD-1遺伝子についてヒト化されたマウスにおける抗PD-1抗体と組み合わせた抗CTLA-4抗体の抗腫瘍有効性を記載する。この試験で使用される抗PD-1抗体は、REGN2810(セミプリマブとしても知られる)であり、米国特許第9,987,500号にH4H7798Nとして記載される。PD-1hum/humノックインマウスは、米国特許出願公開第US2015/0203579号に記載されている。
【0274】
PD-1
hum/humノックインマウスに、MC38.Ova細胞(5x10
5細胞/マウス)を皮下移植した。平均腫瘍サイズが100mm
3に達したとき(治療の0日目)、マウスを4つの治療群に無作為化した。マウスに、0、3、7、10、および14日目に、10mg/kgのアイソタイプ対照抗体、抗マウスCTLA-4-mIgG2a抗体(クローン9D9)、抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)、または抗マウスCTLA-4および抗ヒトPD-1抗体(10mg/kg+10mg/kg)IPのいずれかを投与した。腫瘍体積および無腫瘍動物を最長22日間モニターした。腫瘍体積は、22日間にわたって1週間に2回キャリパー測定によってモニターした。抗CTLA-4抗体または抗PD-1抗体での単剤療法は、アイソタイプ対照での治療と比較して、10mg/kgで試験された部分的な腫瘍成長阻害を示した(
図9)。これは全ての群において全ての動物が生きていた試験における最後の時点であったため、治療開始後10日目の個々の腫瘍体積(
図10)を統計分析に使用した。統計的有意性は、試験後のダネットの多重比較での一元配置分散分析によって決定した(**p<0.01、****p<0.0001)。抗CTLA-4および抗PD-1抗体治療の組み合わせは、いずれかの抗体での単剤療法と比較して、より有効な腫瘍成長阻害をもたらし、抗PD-1治療群よりもコンボ治療群において10日目に統計的に有意なより小さい腫瘍を有した(****p<0.0001、
図10)。抗CTLA-4治療群における8匹の動物のうちの1匹およびコンボ治療群における8匹の動物のうちの2匹は、22日目までに無腫瘍となった。抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体の組み合わせでの治療も、対照群と比較して動物生存率において有意な差をもたらした(マンテル-コックス検定、****p<0.0001、
図11)。抗体治療の結果として体重減少の証拠は観察されなかった。
【0275】
要約すると、抗mCTLA-4および抗PD-1(REGN2810)抗体の組み合わせでの治療は、いずれかの抗体での単剤療法と比較して、腫瘍成長の低減および生存率の改善をもたらした。
【0276】
実施例9:ヒトCTLA-4hum/humマウスにおける定着MC38.Ova腫瘍モデルでのREGN4659治療の抗腫瘍有効性
実験設計
60匹のCTLA-4hum/humマウスの脇腹に、0日目に5x105個のMC38.Ova細胞を皮下移植した。10日目に、100mm3の平均腫瘍体積を有する30匹のマウスを選択し、3つの治療群に無作為化した(N=10/群)。10、13、および17日目に、マウスに以下の抗体:群1、25mg/kgのhIgG1アイソタイプ対照Ab(REGN1932)、群2、25mg/kgの抗hCTLA-4 Ab(REGN4659、H1H19303P)、群3、10mg/kgの抗hCTLA-4 Ab(REGN4659、H1H19303P)を投与した。
【0277】
全ての抗体は、IP注射によって投与された。腫瘍体積は、実験の期間(27日)にわたってキャリパー測定によってモニターされた。
【0278】
結果
定着MC38.Ova腫瘍のREGN4569治療は、部分的な腫瘍成長阻害をもたらした(
図12)。
【0279】
REGN4659単剤療法は、10mg/kgおよび25mg/kgの両方の用量で、腫瘍成長の低減において同様に有効であった(
図13)。
【0280】
試験後のテューキーの多重比較での一元配置分散分析(ANOVA)は、全ての治療群における動物が生きていた最後の日である21日目の各REGN4569単剤療法群とhIgG1アイソタイプ対照群との間の平均腫瘍体積における有意な差(p<0.05)を明らかにした(
図13)。
【0281】
実施例10:CTLA-4hum/humマウスにおける定着皮下MC38.Ova腫瘍のREGN4659治療後の腫瘍内および周囲T細胞の分析
実験設計
40匹のCTLA-4hum/humマウスの脇腹に、0日目に5x105個のMC38.Ova細胞を皮下移植した。10日目に、100mm3の平均腫瘍体積を有する20匹のマウスを選択し、2つの治療群に無作為化した(N=10/群)。10および13日目に、マウスに以下の抗体:群1、25mg/kgのhIgG1アイソタイプ対照Ab(REGN1932)、群2、25mg/kgの抗hCTLA-4 Ab(REGN4659、H1H19303P)を投与した。全ての抗体は、IP注射によって投与した。腫瘍体積は、キャリパー測定によってモニターした。17日目に、腫瘍がhIgG1群において355+/-35mm3(平均+/-SEM)、REGN4659治療群において180+/-43mm3(平均+/-SEM)に達したとき、全てのマウスを屠殺した。腫瘍および脾臓は、フローサイトメトリーによるリンパ球分析のために採取した。腫瘍および脾臓の単一細胞懸濁液を調製した。細胞を、FcgRIIbおよびFcgRIIIへのFc結合をブロックする24G.2(Bioxcell)で処理し、その後、生存率についてLIVE/DEAD(商標)Fixable Aqua Dead Cell色素(Invitrogen)で、次いでCD45(クローン30-F11、Biolegend)、C90.2(クローン30-H12、Biolegend)、CD8(クローン53-6.7、Biolegend)、CD4(GK1.5、Biolegend)、CD11b(クローンM1/70、Biolegend)、およびヒトCTLA-4(クローンBNI3、BD)に対する抗体のカクテルで染色した。細胞内染色について、試料を固定し、透過処理し、FoxP3(クローンFJK-16s、Invitrogen)およびヒトCTLA-4に対する抗体で染色した。次いで、試料をFACS Cantoフローサイトメーター(BD)で分析した。
【0282】
結果
T細胞サブセットを、移植およびREGN4659抗体治療後17日目のMC38.Ova腫瘍保有マウスの腫瘍および脾臓において分析した。腫瘍部位および脾臓における周囲でのTeffおよびTreg集団の評価は、hIgG1アイソタイプを有するREGN4659(配列番号509はH1H19303Pの完全長重鎖アミノ酸配列であり、REGN4659としても知られる)が、MC38.Ova腫瘍保有CTLA-4
hum/humマウスにおける治療抗体の2回のみ投与後の腫瘍部位においてTregの低減を媒介することを示した(表12)。CD4
+エフェクター細胞およびCD8
+細胞の増殖は腫瘍部位で観察されるが、REGN4659での治療は脾臓においてTregを増殖した。これらのデータは、REGN4659が、腫瘍内エフェクターT細胞の活性化に伴って腫瘍内Tregを選択的に低減させることによって、CTLA-4
hum/humマウスにおけるMC38.Ova腫瘍モデルで抗腫瘍活性を促進することを示す。脾臓TregまたはTエフェクター細胞と比較した腫瘍内Treg数に対するREGN4659の異なる結果は、CTLA-4の発現レベルの差に起因し得る。この疑問に答えるために、T細胞
上でのCTLA-4発現レベル(表面および細胞内)をhIgG1対照治療群からのFACSによって測定した。腫瘍内Tregでの総CTLA-4の発現は、腫瘍内CD8
+およびCD4
+エフェクター細胞よりも約3倍高く、脾臓からのTregよりも約8倍高かった(
図14)。発現のこの差は、マウスFcg受容体に対するヒトIgG1定常領域を有する抗体の高い結合親和性を考慮すると、FcgR依存メカニズムによる腫瘍Tregの選択的喪失を説明し得る。
【表16】
【0283】
表13は、CD4+FoxP3-(CD4+エフェクター)であるCD45+細胞のパーセンテージ、CD8+であるCD45+のパーセンテージ、およびFoxP3+(CD4+Treg)であるCD4+細胞のパーセンテージを示す。対応のないt検定分析は、REGN4659群とアイソタイプ対照治療群との間での腫瘍におけるCD4+エフェクター、CD8+、CD4+Treg、ならびに膵臓におけるCD4+エフェクターおよびCD4+Tregの有意な差を明らかにした(**P<0.005、***p<0.001)。
【0284】
実施例11:REGN4659で治療された腫瘍保有マウスの脾臓におけるT細胞機能および全体的な全身性免疫活性化の変化
実験設計
20匹のCTLA-4hum/humマウスの脇腹に、0日目に5x105個のMC38.Ova細胞を皮下移植し、2つの治療群に無作為化した(N=9/群)。3、7、11、14、および17日目に、マウスに10mg/kgのhIgG1アイソタイプ対照Ab(REGN1932)または10mg/kgの抗hCTLA-4 Ab(REGN4659、H1H19303P)のいずれかを投与した。全ての抗体は、IP注射によって投与された。腫瘍体積は、キャリパー測定によってモニターした。24日目(腫瘍が大きくなりすぎたとき)から開始して37日目(実験の終わり)までにマウスを屠殺した。REGN4659群において、9匹中8匹のマウスが無腫瘍となったが、対照群において、24日目に無腫瘍のマウスはいなかった。マウス遺伝子の発現レベル(マウスシクロフィリンB RNA発現に正規化)をTaqmanリアルタイムPCRによって測定した。対応のないt検定は、アイソタイプ対照群と比較してREGN4659群におけるFoxP3、CD3e、パーフォリン、IFNg、TNFa、PD-L1、PD-L2の相対レベルの統計的に有意な増加を示した。
【0285】
結果
REGN4659治療マウスの脾臓のTaqman分析は、FoxP3、CD3e、パーフォリン、IFNg、TNFa、PD-L1、PD-L2についての転写レベルの増加を明らかにし、REGN4659のT細胞エフェクター機能および全体的な免疫増強機能の
増加を示した。マウス遺伝子の発現レベル(マウスシクロフィリンB RNA発現に正規化)を表14に示す。対応のないt検定は、アイソタイプ対照群と比較してREGN4659群におけるFoxP3、CD3e、パーフォリン、IFNg、TNFa、PD-L1、およびPD-L2の相対レベルの統計的に有意な増加を示した。
【表17】
【0286】
実施例12:進行性または転移性非小細胞肺癌を有する患者の治療における、セミプリマブ(抗PD-1抗体)と組み合わせた抗CTLA-4抗体(REGN4659)のヒト臨床試験
この試験は、進行性または転移性非小細胞肺癌(NSCLC)の治療におけるREGN4659(すなわち、実施例1~7および9~11のH1H19303P)単独、高用量セミプリマブ単独(コホートC)、およびREGN4659とセミプリマブとの組み合わせを評価する非盲検、フェーズI、ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験である。試験は、用量漸増フェーズおよび用量拡大フェーズの両方を含む。
【0287】
セミプリマブ(REGN2810、実施例8)は、PD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を強力にブロックする、PD-1受容体に対する高親和性、完全ヒト、ヒンジ安定化IgG4P抗体である。
【0288】
試験目的
用量漸増フェーズの主な目的は、非小細胞肺癌(NSCLC)を有する治療経験のある患者における、REGN4659単独、高用量セミプリマブ単独、およびREGN4659とセミプリマブとの組み合わせの安全性、忍容性、および薬物動態(PK)を評価することである。用量拡大フェーズの主な目的は、抗PD-1/PD-L1免疫療法の経験があるNSCLC患者における客観的奏効率(ORR)によって測定されるREGN4659とセミプリマブとの組み合わせの予備的な抗腫瘍活性を評価することと、抗PD-1/PD-L1免疫療法の経験があるNSCLC患者におけるREGN4659およびセミプリマブの安全性、忍容性、およびPKを評価することである。
【0289】
試験の二次的な目的は、(i)用量漸増フェーズにおいてNSCLCを有する治療の経験がある患者におけるORRによって測定される高用量セミプリマブ単剤療法およびREGN4659とセミプリマブとの組み合わせの予備的な抗腫瘍活性を評価することと、(ii)用量漸増および拡大中の複数の基準によってREGN4659とセミプリマブとの抗腫瘍活性を評価することと、(iii)ICOS+CD4 T細胞を含む、T細胞活性化の末梢血バイオマーカーの変化によって測定される、REGN4659およびセミプリマブの全身性薬物動態効果を評価することである。
【0290】
試験設計
この試験は、進行性または転移性NSCLCの治療におけるREGN4659単独、高用量セミプリマブ単独(コホートC)、およびREGN4659とセミプリマブとの組み
合わせを評価する非盲検、フェーズI、ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験である。この試験には2つのフェーズ:NSCLCでの治療経験のある患者(前化学療法および/または抗PD-1/PD-L1免疫療法)における用量漸増フェーズ、およびNSCLCでの抗PD-1/PD-L1免疫療法経験のある患者における用量拡大フェーズがある。
【0291】
この試験は、最長28日のスクリーニング期間(-28日目~-1日目)、続いて最大17回の42日治療サイクル(最長102週間の治療)、および24週間のフォローアップ期間を含む。患者は、102週間の治療期間が完了するか、または明白な疾患進行、許容できない毒性、同意の撤回、もしくは別の試験中止基準が満たされるまで、治療を受けるであろう。最短24週間の治療後、完全奏効(CR)が確認された患者は、治療を中止し、全ての関連試験評価を進めることを選択してもよい。用量漸増では、医学的に禁忌ではない限り、腫瘍生検が行われると予想される。腫瘍生検は、用量拡大コホートの一部として必須である。応答を経験し、その後進行する患者について、進行時に腫瘍生検が要求されるが、必須ではない。
【0292】
試験で定義された基準を満たし、定義された来院を続けた後、CR、部分奏効(PR)、または安定疾患(SD)の治療期間を完了後6か月以内に進行する患者は、関連試験適格基準の再確認後に試験治療を再開することができる。患者は、最長102週間の追加の療法を受けることができる。再開された用量および薬物(複数可)は、概して、患者に最初に投与されたものと同じか、または依頼者と責任医師との間での議論後に拡大コホート(複数可)について選択される用量レベルであるべきである。
【0293】
2つの用量のセミプリマブ(1050mg Q3W)に忍容性があるが、その後PDを示すコホートCにおける患者は、組み合わされたCTLA-4およびPD-1遮断を使用して応答を得る試みにおいてその時点まで安全に投与される最高の組み合わせ用量のセミプリマブおよびREGN4659を添加する選択肢を有するであろう。
【0294】
用量漸増:8つの用量漸増コホートが計画される。REGN4659の3つの用量レベル(25、75、および250mg静脈内[IV]固定用量)は、Q3Wで投与された2つの用量レベル(350および1050mgIV固定用量)でセミプリマブと組み合わせた3、6、および12週間毎(Q3W、Q6W、Q12W)の様々なスケジュールで調査されるであろう。1050mgのセミプリマブとの組み合わせコホートを開始する前に、1050mgのセミプリマブQ3W単剤療法のコホートが調査されるであろう(コホートC)。アスタリスクで指定された用量漸増コホート(コホート1*、2*、および4*)について、REGN4659単剤療法の単一導入用量は、セミプリマブとの組み合わせ前にREGN4649の安全性を評価するために併用療法に3週間先行するであろう。8つのコホートのうちの6つ(1*、C、2*、2、3、および4*)は、用量制限毒性(DLT)評価に使用されるであろう。DLT評価可能なコホートに加えて、2つの追加の用量コホート(5および6)は、それぞれ安全性およびPK/薬学動態評価のために6人の患者を登録するであろう。コホート5および6は、それぞれ、コホート2および3の忍容性が確立された後に登録されるであろう。REGN4659のより高い用量強度(コホート2および3)が忍容性である場合でも、コホート5および6の用量組み合わせは潜在的に興味深い。しかしながら、コホート5および6におけるREGN4659のより低い曝露のために、コホート2および3が忍容性である場合、これらのコホートはDLT評価を必要としないであろう。6人の患者が登録されるコホートCを除き、各用量コホートにおいて最低3人の患者がDLTについて評価可能となる必要があるであろう。患者の安全性を維持しながらフェーズ1用量漸増の効率を最大化するために、DLTについて評価可能となる前に患者が中止する場合に備えて、各用量コホート(コホートCを除く)には4人の患者が登録されるであろう。コホート3および6(高用量セミプリマブとの組み合わせ
コホート)は、コホートCにおける6人の患者全員がDLT期間を完了するまで開始されないであろう。組み合わせの最大耐量(MTD)が達成されるか、または全ての用量コホートが試験されるまで、用量漸増は、用量コホートを通して進行するであろう。しかしながら、用量漸増の完了前であっても、任意のコホートについて忍容性および薬物動態活性が評価されたら、用量コホート(複数可)は拡大について選択され得る。
【0295】
用量制限毒性:(試験薬物毒性のために)用量#2をウィンドウ内で投与することができないことに加えて、DLTは、疾患進行または併発疾患に明らかに関連すると考えられる事象を除き、以下の試験毒性の発生時に考慮されるであろう。
非血液毒性:
(i)グレード≧2ブドウ膜炎(潜在的なirAEとみなされる)
(ii)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)もしくはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>正常上限(ULN)の5倍、および/または総ビリルビン>ULNの3倍肝転移を有する患者について、ベースラインでグレード2の場合、AST、ALT、および/または総ビリルビン>ベースライン値の2倍
(iii)(以下を除く、他の免疫調節性薬物での経験によって定義される)irAEを含む、任意のグレード≧3非血液毒性
(a)治療医師によって処方される、最大限の支持療法措置にもかかわらず、持続的(>72時間)でない限り、グレード3悪心、嘔吐、または下痢
(b)臨床的に重要ではないとみなされ、有害事象(AE)の基準を満たさないグレード≧3検査異常
血液毒性:
(i)7日超持続するグレード4好中球減少症
(ii)グレード4血小板減少症
(iii)出血を伴うグレード3血小板減少症
(iv)グレード≧3発熱性好中球減少症(発熱≧38.5℃、および絶対好中球数<1.0×109/L)または文書化された感染症でのグレード≧3好中球減少症
(v)グレード4貧血症
(vi)7日超持続するか、または輸血が必要なグレード3貧血症
【0296】
DLT評価後、個々のコホートにおいて安全性の問題が発生する場合、登録は、責任医師と依頼者との間での議論後に一時停止され得る。一時停止を引き起こす安全性の問題には、早期または後期安全性事象が含まれ得る。
【0297】
用量拡大:用量コホート(複数可)は、忍容性および薬学動態活性(周辺ICOS+T細胞の増加を含むが、これに限定されない)が、拡大されないコホートCを除く全てのコホートについて評価されると、拡大について選択され得る。用量拡大コホート(複数可)は、抗PD-1/PD-L1療法を受けながら進行した抗PD-1/PD-L1免疫療法の経験があるNSCLCを有する患者を登録し、この集団における併用療法の忍容性および活性を決定するであろう。NSCLCを有する患者において最適な併用レジメンを特定するために、最大3つの別個の用量レジメンが用量拡大について選択されるであろう。拡大コホート(複数可)は、Simon 2ステージ設計に基づいて、それぞれ最大27人の患者を登録するであろう。個々の拡大コホートにおいて安全性の問題が発生する場合、登録は、責任医師と依頼者との間での議論後に一時停止され得る。一時停止を引き起こす安全性の問題には、早期または後期安全性事象が含まれ得る。
【0298】
試験期間
試験の期間は、スクリーニング期間または追跡期間を含まず、約102週間である。
【0299】
集団
サンプルサイズ:最大約53人の成人患者が用量漸増中に登録されると予想され、各コホートにおける最大27人の患者に対するが最大3つの拡大コホートは、米国において最大約15部位での用量拡大中に登録されると予想される。登録される患者の総数は、用量漸増中に観察されたDLT、PK/薬物動態分析、開いた拡大コホートの数、およびSimon 2ステージ拡大コホートのステージ1における有効性に依存するであろう。
【0300】
対象集団:この試験の対象集団は、切除不能なIIIB期またはIV期扁平上皮または非扁平上皮NSCLCと診断された≧18歳の男性および女性である。
【0301】
参加基準:患者は、試験における参加に適格であるために以下の基準を満たさなければならない。
1.男性および女性≧18歳
2.組織学的または細胞学的に文書化された扁平上皮または非扁平上皮NSCLCを有し、切除不能なIIIB期またはIV期の疾患を有する患者
3.用量漸増(コホートCを除く):2つ以下の細胞毒性化学療法を含む3つ以下の全身療法を受けたことがあり、臨床的利益をもたらすことが期待される利用可能な療法がない、治療経験のある患者前PD-1/PD-L1免疫療法を受けた患者は、治療関連AEのために永久的に中止したことがあってはならない。標的化可能な突然変異(上皮成長因子受容体[EGFR]、ALK、およびROS1を含む)を有する患者は、用量漸増中に許容されるが、少なくとも1つの標的療法を追加で受けていなければならない。
a.注:1)アジュバントもしくはネオアジュバント化学療法または免疫療法(手術および/または放射線療法後)または2)III期疾患のための後続免疫療法あり、もしくはなしでの根治的化学放射線療法が許容され、療法を完了して6ヶ月超後に再発性または転移性疾患を発症した患者における療法の選択肢を評価する際には含まれない。
4.用量漸増コホートC:プラチナダブレット含有レジメンを含む1~2つの前細胞毒性化学療法を受けたことがある抗PD-1/PD-L1ナイーブ患者標的化可能な突然変異(EGFR、ALK、およびROS1を含む)を有する患者は、用量漸増中に許容されるが、少なくとも1つの標的療法を追加で受けていなければならない。
a.注:1)アジュバントもしくはネオアジュバント化学療法または2)III期疾患のための根治的化学放射線療法が許容され、療法を完了して6ヶ月超後に再発性または転移性疾患を発症した患者における療法の選択肢を評価する際には含まれない。
5.拡大コホート(複数可):III期もしくはIV期疾患のための療法を受けている間、または療法を中止してから6か月以内に進行した、抗PD-1/PD-L1の経験がある患者は、治療関連AEのために抗PD-1/PD-L1療法を永久的に中止したことがあってはならない。患者は、1つの抗PD-1/PD-L1免疫療法を受けていなければならない。患者はまた、1つの化学療法を受けていてもよい。以下の注記に記載される場合を除き、化学療法および免疫療法の前併用は、いずれの療法の追加治療も受けていない限り許容される。
a.注:1)アジュバントもしくはネオアジュバント化学療法または免疫療法(手術および/または放射線療法後)または2)III期疾患のための後続免疫療法あり、もしくはなしでの根治的化学放射線療法が許容され、療法を完了して6ヶ月超後に再発性または転移性疾患を発症した患者における療法の選択肢を評価する際には含まれない。
6.以前に照射されていないアーカイブまたは新しく取得されたホルマリン固定腫瘍組織7.拡大コホート(複数可):RECIST 1.1基準によるコンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)によって少なくとも1つのX線で測定可能な病変標的病変は、その部位に文書化された(X線撮影された)疾患の進行がある場合、以前に照射されたフィールドに位置していてもよい。
8.Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス≦1
9.少なくとも3か月の予測される余命
10.以下に定義される適切な臓器および骨髄機能:
ヘモグロビン≧9.0g/dL(注:スクリーニング検査評価前の14日以内にヘモグロビン<9.0g/dLの輸血を受けた患者は適格ではない)
絶対好中球数≧1.5×109/L
血小板数≧75,000/mm3
糸球体濾過量(GFR)>30mL/分/1.73m2
総ビリルビン≦1.5×ULN(肝転移の場合≦3×ULN)、臨床的に確認されたギルバート症候群と診断された患者を除く
AST)およびALT≦3×ULNまたは肝転移の場合≦5×ULN
アルカリホスファターゼ≦2.5×ULN(または肝臓もしくは骨転移の場合、≦5.0×ULN)
Hyの法則の基準を満たさない(ALTおよび/またはAST>3×ULNおよびビリルビン>2×ULN)
11.クリニック訪問および試験関連手順を順守する意思があり、順守することができる12.試験患者または法定代理人によって署名されたインフォームドコンセントを提供する
【0302】
除外基準:以下の基準のいずれかを満たす患者は試験から除外される。
1.拡大コホート(複数可)のみ:生涯で≦100本のタバコの喫煙として定義される、喫煙したことがない患者
2.活動性または未治療の脳転移または脊髄圧迫中枢神経系(CNS)転移が適切に治療され、患者が登録前の少なくとも2週間に(CNS治療に関連する残存徴候または症状を除き)神経学的にベースラインまで回復した場合、患者は適格である。患者は、(免疫抑制用量の)コルチコステロイド療法がオフでなければならない。
3.拡大コホート(複数可)のみ:EGFRおよびALK遺伝子突然変異またはROS1融合について陽性と試験された腫瘍を有する患者全ての患者は、腫瘍がEGFR突然変異、ALK再配列、およびROS1融合について評価されるべきある。
4.登録前2週間以内の放射線療法、および放射線による任意のAEからベースラインまで回復しなかった
5.抗CTLA-4抗体での前治療を受けた患者
6.インフォームドコンセント前の1年の脳炎、髄膜炎、または抑制されていない発作
7.間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症、組織化肺炎)または管理を補助するために免疫抑制用量のグルココルチコイドを必要とする活動性、非感染性肺臓炎の病歴肺炎が登録前の≧6ヶ月に回復した限り、照射野における放射線肺臓炎の病歴は許容される。
8.免疫関連治療に起因する有害事象(irTEAE)のリスクを示し得る、全身性免疫抑制治療での治療を必要とする重篤な自己免疫疾患の進行中または最近の証拠以下は排除しない:白斑、回復した小児喘息、I型糖尿病、ホルモン補充のみを必要とする残存甲状腺機能低下症、または全身治療を必要としない乾癬
9.無作為化の14日以内にコルチコステロイド療法(>10mgプレドニゾン/日または同等物)を必要とする状態を有する患者生理学的補充投与は、免疫抑制の目的で投与されていない限り、>10mgのプレドニゾン/日または同等物であっても許容される。吸入または局所ステロイドは、自己免疫障害の治療のためではない場合に限り許容される。10.拡大コホート(複数可)のみ:潜在的に治癒的な療法を受けた非黒色腫皮膚癌、または治療された子宮頸上皮内癌もしくは任意の他の腫瘍を除き、進行中であるか、または治療を必要とする別の悪性腫瘍、および患者は試験参加前の少なくとも2年間完全寛解にあるとみなされ、試験期間中に追加の療法は必要ない
11.ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎、もしくはC型肝炎感染での抑制されていない感染症、または免疫不全の診断
注:
患者は、スクリーニング時にC型肝炎ウイルス(HCV)およびB型肝炎ウイルス(
HBV)について検査される。
感染を制御している既知のHIV感染症(自発的にまたは安定した抗ウイルスレジメンで350を超える検出不能なウイルス負荷(HIV RNA PCR)およびCD4カウント)を有する患者は許容される。抑制されたHIV感染症を有する患者について、現地の基準によってモニタリングが行われる。
感染を抑制しているB型肝炎(HepBsAg+)を有する(血清B型肝炎ウイルスDNA PCRが検出限界を下回り、かつB型肝炎の抗ウイルス療法を受けている)患者は許容される。抑制された感染症を有する患者は、HBV DNAの定期的なモニタリングを受けなければならない。患者は、試験薬の最終投与を超えて少なくとも6か月間抗ウイルス療法を継続していなければならない。
C型肝炎ウイルス抗体陽性(HCV Ab+)であり、抑制された感染症(自発的に、または抗HCV療法の成功した以前の経過に応じてPCRによって検出不能なHCV RNA)を有する患者は許容される。
12.試験薬の開始前14日以内に全身療法を必要とする活動性感染症
13.試験療法での治療の開始前の少なくとも3か月にベースラインまで回復しなかった免疫調節剤(抗PD1/PD-L1療法、他のチェックポイント阻害剤療法、およびPI
3K-δ阻害剤を含むが、これらに限定されない)からの治療関連免疫媒介性AE発症時点に関係なく、薬剤の永久的な中止を必要とするPD-1/PD-L1経路のブロッカーでの前治療に関連する免疫媒介性AEを経験した場合、患者はセミプリマブでの治療から除外される。注:ホルモン補充で抑制されているあらゆるグレードの甲状腺機能低下症またはI型糖尿病の経験がある患者は許容される。
14.あらゆる時点でのイデラリシブ(ZYDELIG(登録商標))での前治療
15.現在、別の試験で治療を受けているか、または試験薬剤の試験に参加し、治療を受けたことがあるか、または試験療法の最初の投与の4週間以内に試験デバイスを使用したか、または試験療法の最初の投与の3週間以内に承認された全身療法での治療を受けたか、または試験療法の最初の投与の5つの半減期内に任意の前全身療法を受けたことがあるか、いずれか長いほうである(抗PD-1/PD-L1療法を除く)。以前にベバシズマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、または7日超の半減期を有する他の非免疫調節抗体で治療された患者は、最後の治療から少なくとも28日が経過した場合、依頼者との議論後に許容される。抗PD-1/PD-L1の経験がある患者について、薬物の半減期または承認状況に関係なく、前抗PD-1/PD-L1療法が、試験療法の最初の投与の3週間以内に行われていることはできない。
16.計画された試験薬の開始の30日以内の生ワクチンの接種
17.最初の投与前の4週間以内の大手術または重篤な外傷
18.ドキシサイクリンまたは類似の化合物(すなわち、テトラサイクリン)に対する既知の感受性
19.いずれかのタンパク質治療剤(例えば、組換えタンパク質、ワクチン、静脈内免疫グロブリン、モノクローナル抗体、受容体トラップ)に対する文書化されたアレルギーまたは過敏反応
20.違法薬物の現行使用を含む、試験の要件を伴う参加を妨げるであろう既知の精神障害または薬物乱用障害
21.以前の同種幹細胞移植
22.責任医師の意見として試験への参加が患者の最善の利益にならないであろう任意の医学的状態
23.妊娠中または授乳中の女性
24.ベースライン(投与前のサイクル1、1日目)訪問時の血清hCG妊娠検査陽性
25.最初の治療の最初の投与/開始前、試験中、および最後の投与後少なくとも6か月間、非常に効果的な避妊を実施することを望まない、出産の可能性のある性的に活発な男性および女性*非常に効果的な避妊手段には以下が含まれる:
スクリーニング前の2回以上の月経周期の排卵阻害に関連する組み合わされた(エス
トロゲンおよびプロゲストゲン含有)ホルモン避妊(経口、膣内、経皮)またはプロゲストゲンのみのホルモン避妊(経口、注射、埋め込み)の安定した使用、
子宮内デバイス(IUD)、子宮内ホルモン放出システム(IUS)、
両側卵管結紮、
精管切除パートナー、
およびまたは性的禁欲†、‡。
*閉経後の女性は、出産の可能性を考慮しないためには、少なくとも12ヶ月間にわたって無月経でなければならない。文書化された子宮摘出または卵管結紮を有する女性には、妊娠検査および避妊は必要ない。
†性的禁欲は、試験治療に関連するリスクの全期間中に異性間性交を控えると定義される場合のみ、非常に効果的な方法とみなされる。‡定期禁欲(カレンダー、シンプトサーマル、排卵後法)、抜去(膣外射精)、殺精子剤のみ、および授乳性無月経法(LAM)は、許容される避妊法ではない。女性用コンドームおよび男性用コンドームは一緒に使用されるべきではない。
26.臨床現場試験チームのメンバーおよび/またはその近親者
【0303】
治療
REGN4659:3つの用量レベル(25、75、および250mgのIV固定用量)が様々なスケジュール(Q3W、Q6W、Q12W)で調査されるであろう。
【0304】
セミプリマブ:Q3Wで投与される2つの用量レベル(350および1050mgのIV固定用量)。
【0305】
一次エンドポイント
用量漸増フェーズでは:DLT、治療中に発現した有害事象(TEAE)、irAE、重篤な有害事象(SAE)、死亡、検査異常率(有害事象共通用語基準[CTCAE]によるグレード3以上)。
【0306】
用量拡大フェーズでは:固形腫瘍における奏効評価基準(RECIST)1.1に基づく客観的奏効率(ORR)、およびTEAE、irAE、SAE、死亡、検査異常率(CTCAEによるグレード3以上)。
【0307】
二次エンドポイント
(i)RECIST 1.1に基づくORR(用量漸増)、(ii)免疫ベース療法に基づくORR奏効評価基準(iRECIST)、(iii)RECIST 1.1、iRECISTに基づく最も良好な全奏効(BOR)、奏効期間(DOR)、疾患制御率、および無増悪生存率(PFS)、ならびに(iv)全生存率(OS)を含む複数の奏効基準に基づく腫瘍測定。
【0308】
各用量コホート内でのフローサイトメトリーによる絶対ICOS+CD4 T細胞および他の活性化のマーカーの変化%の定量化。
【0309】
手順および評価
REGN4659およびセミプリマブの安全性および忍容性は、AEの臨床評価によって、ならびにバイタルサイン(温度、血圧、脈拍、および呼吸)、身体検査(完全および限定)、12リード心電図(ECG)、および標準的な血液、化学、および尿分析を含む検査評価を含む、臨床評価の繰り返し測定によってモニターされるであろう。
【0310】
抗腫瘍活性は、CT/MRIによって評価されるであろう。
【0311】
血清および抗薬物抗体(抗REGN4659または抗セミプリマブ)試料中の機能的REGN4659および機能的セミプリマブの決定のための血液試料が収集されるであろう。
【0312】
血清、血漿、末梢血単核細胞(PBMC)、および腫瘍生検が、バイオマーカーの分析のために収集されるであろう。ゲノムDNA試料が収集されるであろう。REGN4659およびセミプリマブ治療曝露、臨床活動、または基礎疾患に関する推測される薬物動態、予測、および予後バイオマーカーが、血清、血漿、PBMC、および腫瘍組織において調査されるであろう。
【0313】
統計計画
用量漸増フェーズ:試験の用量漸増フェーズについて正式な統計的仮説はなく、このフェーズの分析は、本質的に記述的かつ探索的であろう。各用量漸増コホート(コホート1*、2*、2、3、および4*)について、改変された3+3設計(「4+3」)に基づいて、約35人のDLT評価可能な患者が計画される。コホート5および6について12人の患者が計画される(コホートあたり6人の患者)。これらの用量漸増コホートの実際のサンプルサイズは、文書化されたDLT、得られたコホートサイズ、および実装された用量レベルの数に依存するであろう。
【0314】
用量拡大フェーズ:抗PD-1/PD-L1免疫療法の経験があり、抗PD-1/PD-L1療法を受けながら進行しているNSCLCを有する患者における各拡大コホートについて、これらの患者における利用可能な有効性データがほとんどないため、依頼者は、5%超の測定可能な任意のORRが臨床的に意味のある治療効果を表すと考える。各拡大コホートについて27人の患者のサンプルサイズは、5%の片側有意性レベルおよび80%のパワーでSimon 2ステージMinimax設計を使用して決定される。
【0315】
一次有効性分析:拡大コホートについてRECIST 1.1によって決定される最良の全体的な応答は、両側95%信頼区間と共に、記述統計を使用して要約されるであろう。
【0316】
ORRは、95%信頼区間と共に、記述統計によって要約されるであろう。BORについて評価可能ではない患者は、ノンレスポンダーとみなされるであろう。
【0317】
拡大コホートについて、レスポンダーの数がSimon 2ステージ設計において指定されるレスポンダーの最小数以上である場合、治療は効果的であり、さらなる調査の価値があるとみなされる。
【0318】
有効性の二次分析には、iRECISTによって測定されるORR、DOR、疾患制御率、およびPFSが含まれる。これらの二次有効性エンドポイントは、用量漸増および拡大コホートによって記述的に要約されるであろう。
【0319】
薬物曝露、AE、検査データ、およびバイタルサインを含む安全性観察および測定は、表およびリストに要約され、提示されるであろう。
【0320】
用量漸増段フェーズについて:DLT評価期間中に観察されるDLTは、用量コホート毎に要約されるであろう。
【0321】
結果
用量漸増フェーズでは、REGN4659およびセミプリマブは、治療経験があるNSCLCを有する患者において、単独および組み合わせて十分に忍容性があるであろう。用
量拡大フェーズでは、REGN4659は、セミプリマブと組み合わせて十分に忍容性があり、抗PD-1/PD-1免疫療法の経験があるNSCLCを有する患者において測定可能な抗腫瘍応答を示すであろう。
【0322】
例示的な実施形態
本発明はまた、以下の項目に関する。
【0323】
項目1.ヒト細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に結合し、hCTLA-4とリガンドB7-1および/またはリガンドB7-2との間の相互作用をブロックする抗体またはその抗原結合断片。
項目2.T細胞活性化を誘導する、項目1の抗体または抗原結合断片。
項目3.T細胞が、細胞毒性T細胞である、項目2の抗体または抗原結合断片。
項目4.T細胞が、腫瘍浸潤リンパ球である、項目2または3の抗体または抗原結合断片。
項目5.抗体または抗原結合断片が、サルCTLA-4に結合する、項目1~4のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目6.抗体または抗原結合断片が、5nM未満のEC50でCTLA-4発現細胞に結合する、項目1~5のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目7.抗体または抗原結合断片が、1nM未満のEC50でCTLA-4発現細胞に結合する、項目1~6のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目8.抗体または抗原結合断片が、0.5nM未満のEC50でヒトCTLA-4発現細胞に結合する、項目1~7のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目9.0.5nM未満のEC50でサルCTLA-4発現細胞に結合する、項目1~8のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目10.完全ヒト抗体である、項目1~9のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目11.抗体またはその抗原結合断片が、(a)配列番号2および10、(b)配列番号18および26、(c)配列番号34および42、(d)配列番号50および58、(e)配列番号66および74、(f)配列番号82および90、(g)配列番号98および106、(h)配列番号114および122、(i)配列番号130および138、(j)配列番号146および154、(k)配列番号162および170、(l)配列番号178および186、(m)配列番号194および202、(n)配列番号210および218、(o)配列番号226および234、(p)配列番号242および250、(q)配列番号258および266、(r)配列番号274および282、(s)配列番号290および298、(t)配列番号306および298、(u)配列番号314および322、(v)配列番号330および338、(w)配列番号346および354、(x)配列番号362および370、(y)配列番号378および386、(z)配列番号394および402、(a’)配列番号410および418、(b’)配列番号426および434、(c’)配列番号442および450、(d’)配列番号458および466、(e’)配列番号474および482、ならびに(f’)配列番号490および498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体とヒトCTLA-4への結合について競合する、項目1~10のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目12.抗体またはその抗原結合断片が、(a)配列番号2および10、(b)配列番号18および26、(c)配列番号34および42、(d)配列番号50および58、(e)配列番号66および74、(f)配列番号82および90、(g)配列番号98および106、(h)配列番号114および122、(i)配列番号130および138、(j)配列番号146および154、(k)配列番号162および170、(l)配列番号178および186、(m)配列番号194および202、(n)配列番号210および218、(o)配列番号226および234、(p)配列番号242および250、(
q)配列番号258および266、(r)配列番号274および282、(s)配列番号290および298、(t)配列番号306および298、(u)配列番号314および322、(v)配列番号330および338、(w)配列番号346および354、(x)配列番号362および370、(y)配列番号378および386、(z)配列番号394および402、(a’)配列番号410および418、(b’)配列番号426および434、(c’)配列番号442および450、(d’)配列番号458および466、(e’)配列番号474および482、ならびに(f’)配列番号490および498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じヒトCTLA-4上のエピトープに結合する、項目1~11のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目13.抗体または抗原結合断片が、(a)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、314、330、346、362、378、394、410、426、442、458、474、および490からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)と、(b)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、322、338、354、370、386、402、418、434、450、466、482、および498からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRと、を含む、項目1~12のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
項目14.抗体または抗原結合断片が、(a)配列番号2および10、(b)配列番号18および26、(c)配列番号34および42、(d)配列番号50および58、(e)配列番号66および74、(f)配列番号82および90、(g)配列番号98および106、(h)配列番号114および122、(i)配列番号130および138、(j)配列番号146および154、(k)配列番号162および170、(l)配列番号178および186、(m)配列番号194および202、(n)配列番号210および218、(o)配列番号226および234、(p)配列番号242および250、(q)配列番号258および266、(r)配列番号274および282、(s)配列番号290および298、(t)配列番号306および298、(u)配列番号314および322、(v)配列番号330および338、(w)配列番号346および354、(x)配列番号362および370、(y)配列番号378および386、(z)配列番号394および402、(a’)配列番号410および418、(b’)配列番号426および434、(c’)配列番号442および450、(d’)配列番号458および466、(e’)配列番号474および482、ならびに(f’)配列番号490および498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖および軽鎖CDRを含む、項目1~13のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目15.抗体または抗原結合断片が、(a)それぞれ配列番号4、6、8、12、14、および16、(b)それぞれ配列番号20、22、24、28、30、および32、(c)それぞれ配列番号36、38、40、44、46、および48、(d)それぞれ配列番号52、54、56、60、62、および64、(e)それぞれ配列番号68、70、72、76、78、および80、(f)それぞれ配列番号84、86、88、92、94、および96、(g)それぞれ配列番号100、102、104、108、110、および112、(h)それぞれ配列番号116、118、120、124、126、および128、(i)それぞれ配列番号132、134、136、140、142、および144、(j)それぞれ配列番号148、150、152、156、158、および160、(k)それぞれ配列番号164、166、168、172、174、および176、(l)それぞれ配列番号180、182、184、188、190、および192、(m)それぞれ配列番号196、198、200、204、206、および208、(n)それぞれ配列番号212、214、216、220、222、および224、(o)それぞれ配列番号228、230、232、236、238、および240、(p)それぞれ配列番
号244、246、248、252、254、および256、(q)それぞれ配列番号260、262、264、268、270、および272、(r)それぞれ配列番号276、278、280、284、286、および288、(s)それぞれ配列番号292、294、296、300、302、および304、(t)それぞれ配列番号308、310、312、300、302、および304、(u)それぞれ配列番号316、318、320、324、326、および328、(v)それぞれ配列番号332、334、336、340、342、および344、(w)それぞれ配列番号348、350、352、356、358、および360、(x)それぞれ配列番号364、366、368、372、374、および376、(y)それぞれ配列番号380、382、384、388、390、および392、(z)それぞれ配列番号396、398、400、404、406、および408、(a’)それぞれ配列番号412、414、416、420、422、および424、(b’)それぞれ配列番号428、430、432、436、438、および440、(c’)それぞれ配列番号444、446、448、452、454、および456、(d’)それぞれ配列番号460、462、464、468、470、および472、(e’)それぞれ配列番号476、478、480、484、486、および488、ならびに(f’)それぞれ配列番号492、494、496、500、502、および504からなる群から選択されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3ドメインを含む、項目1~14のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目16.抗体または抗原結合断片が、(a)配列番号2および10、(b)配列番号18および26、(c)配列番号34および42、(d)配列番号50および58、(e)配列番号66および74、(f)配列番号82および90、(g)配列番号98および106、(h)配列番号114および122、(i)配列番号130および138、(j)配列番号146および154、(k)配列番号162および170、(l)配列番号178および186、(m)配列番号194および202、(n)配列番号210および218、(o)配列番号226および234、(p)配列番号242および250、(q)配列番号258および266、(r)配列番号274および282、(s)配列番号290および298、(t)配列番号306および298、(u)配列番号314および322、(v)配列番号330および338、(w)配列番号346および354、(x)配列番号362および370、(y)配列番号378および386、(z)配列番号394および402、(a’)配列番号410および418、(b’)配列番号426および434、(c’)配列番号442および450、(d’)配列番号458および466、(e’)配列番号474および482、ならびに(f’)配列番号490および498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目1~15のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目17.(a)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、314、330、346、362、378、394、410、426、442、458、474、および490からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)と、(b)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、322、338、354、370、386、402、418、434、450、466、482、および498からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRと、を含む、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片。
項目18.抗体が、(a)配列番号2および10、(b)配列番号18および26、(c)配列番号34および42、(d)配列番号50および58、(e)配列番号66および74、(f)配列番号82および90、(g)配列番号98および106、(h)配列番号114および122、(i)配列番号130および138、(j)配列番号146および154、(k)配列番号162および170、(l)配列番号178および186、
(m)配列番号194および202、(n)配列番号210および218、(o)配列番号226および234、(p)配列番号242および250、(q)配列番号258および266、(r)配列番号274および282、(s)配列番号290および298、(t)配列番号306および298、(u)配列番号314および322、(v)配列番号330および338、(w)配列番号346および354、(x)配列番号362および370、(y)配列番号378および386、(z)配列番号394および402、(a’)配列番号410および418、(b’)配列番号426および434、(c’)配列番号442および450、(d’)配列番号458および466、(e’)配列番号474および482、ならびに(f’)配列番号490および498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖および軽鎖CDRを含む、項目17の抗体または抗原結合断片。
項目19.抗体または抗原結合断片が、(a)それぞれ配列番号4、6、8、12、14、および16、(b)それぞれ配列番号20、22、24、28、30、および32、(c)それぞれ配列番号36、38、40、44、46、および48、(d)それぞれ配列番号52、54、56、60、62、および64、(e)それぞれ配列番号68、70、72、76、78、および80、(f)それぞれ配列番号84、86、88、92、94、および96、(g)それぞれ配列番号100、102、104、108、110、および112、(h)それぞれ配列番号116、118、120、124、126、および128、(i)それぞれ配列番号132、134、136、140、142、および144、(j)それぞれ配列番号148、150、152、156、158、および160、(k)それぞれ配列番号164、166、168、172、174、および176、(l)それぞれ配列番号180、182、184、188、190、および192、(m)それぞれ配列番号196、198、200、204、206、および208、(n)それぞれ配列番号212、214、216、220、222、および224、(o)それぞれ配列番号228、230、232、236、238、および240、(p)それぞれ配列番号244、246、248、252、254、および256、(q)それぞれ配列番号260、262、264、268、270、および272、(r)それぞれ配列番号276、278、280、284、286、および288、(s)それぞれ配列番号292、294、296、300、302、および304、(t)それぞれ配列番号308、310、312、300、302、および304、(u)それぞれ配列番号316、318、320、324、326、および328、(v)それぞれ配列番号332、334、336、340、342、および344、(w)それぞれ配列番号348、350、352、356、358、および360、(x)それぞれ配列番号364、366、368、372、374、および376、(y)それぞれ配列番号380、382、384、388、390、および392、(z)それぞれ配列番号396、398、400、404、406、および408、(a’)それぞれ配列番号412、414、416、420、422、および424、(b’)それぞれ配列番号428、430、432、436、438、および440、(c’)それぞれ配列番号444、446、448、452、454、および456、(d’)それぞれ配列番号460、462、464、468、470、および472、(e’)それぞれ配列番号476、478、480、484、486、および488、ならびに(f’)それぞれ配列番号492、494、496、500、502、および504からなる群から選択されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3ドメインを含む、項目17または18の抗体または抗原結合断片。
項目20.抗体または抗原結合断片が、(a)配列番号2および10、(b)配列番号18および26、(c)配列番号34および42、(d)配列番号50および58、(e)配列番号66および74、(f)配列番号82および90、(g)配列番号98および106、(h)配列番号114および122、(i)配列番号130および138、(j)配列番号146および154、(k)配列番号162および170、(l)配列番号178および186、(m)配列番号194および202、(n)配列番号210および2
18、(o)配列番号226および234、(p)配列番号242および250、(q)配列番号258および266、(r)配列番号274および282、(s)配列番号290および298、(t)配列番号306および298、(u)配列番号314および322、(v)配列番号330および338、(w)配列番号346および354、(x)配列番号362および370、(y)配列番号378および386、(z)配列番号394および402、(a’)配列番号410および418、(b’)配列番号426および434、(c’)配列番号442および450、(d’)配列番号458および466、(e’)配列番号474および482、ならびに(f’)配列番号490および498からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目17~19のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目21.抗体が、配列番号509のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号510のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む、項目17~20のいずれか1つの抗体または抗原結合断片。
項目22.項目1~21のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体または希釈剤と、を含む、薬学的組成物。
項目23.項目1~21のいずれか1つに記載の抗体のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
項目24.項目1~21のいずれか1つに記載の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
項目25.項目23のポリヌクレオチドおよび/または項目24のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
項目26.項目25のベクターを発現する、宿主細胞。
項目27.阻害を必要とする対象における腫瘍または腫瘍細胞の成長を阻害するための使用のための、項目1~21のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、または項目22の薬学的組成物。
項目28.腫瘍が、原発性または再発性腫瘍である、項目27に記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目29.腫瘍が、定着腫瘍である、項目27に記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目30.腫瘍が、血液癌、脳癌、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、皮膚癌、腎臓癌、子宮頸癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、肝細胞癌、骨癌、結腸癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、結腸直腸癌、中皮腫、B細胞リンパ腫、骨髄腫、および黒色腫からなる群から選択される疾患または障害を有する対象に存在する、項目27~29のいずれか1つに記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目31.抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物が、初回用量として投与され、続いて1つ以上の二次用量が投与され、各二次用量が、直前の用量の1~12週間後に投与される、項目27~30のいずれか1つに記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目32.抗体もしくはその抗原結合断片または薬学的組成物が、約25~600mgの用量で対象に投与される、項目31に記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目33.抗体またはその抗原結合断片が、第2の治療剤と組み合わせて対象に投与される、項目27~32のいずれか1つに記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目34.第2の治療剤が、LAG3阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二重特異性抗体、酸化防止剤などの栄養補助剤、VEGFアンタゴニスト、癌ワクチン、化学療法剤、細胞毒性剤、放射線、手術、ならびに疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状を改善するために有用な任意の他の療法からなる群から選択される、項目33に記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、また
は薬学的組成物。
項目35.第2の治療剤が、PD-1阻害剤である、項目33または34に記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目36.PD-1阻害剤が、セミプリマブ、ニボルマブ、またはペンブロリズマブである、項目33~35のいずれか1つに記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目37.PD-1阻害剤が、対象の体重の1、3、または10mg/kgの用量で投与される、項目36に記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目38.PD-1阻害剤が、50~1200mgの用量で投与される、項目33~35のいずれか1つに記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目39.抗体もしくはその抗原結合断片または薬学的組成物が、皮下、静脈内、腫瘍内、腫瘍周囲、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内に投与される、項目27~38のいずれか1つに記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目40.治療を必要とする対象においてCTLA-4をアンタゴナイズすることによって治療可能である疾患または障害の治療における使用のための、項目1~21のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、または項目22の薬学的組成物。
項目41.疾患または障害が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる慢性ウイルス感染症である、項目40に記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目42.疾患または障害が、血液癌、脳癌、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、子宮頸癌、胃癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌、骨癌、結腸癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、結腸直腸癌、中皮腫、B細胞リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される、項目40に記載の使用のための、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物。
項目43.抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を産生する方法であって、抗体またはその抗原結合断片の産生を可能にする条件下で項目26の宿主細胞を成長させることと、そのように産生された抗体またはその抗原結合断片を回収することと、を含む、方法。
項目44.許容される担体を含む薬学的組成物として抗体またはその抗原結合断片を製剤化することをさらに含む、項目43の方法。
項目45.治療を必要とする対象での非小細胞肺癌の治療における抗PD-1抗体と組み合わせた使用のための抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片。
項目46.抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片が、項目1~21のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片である、項目45に記載の使用のための抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片。
項目47.抗CTLA-4抗体が、配列番号194のアミノ酸配列を含むHCVRのCDRと、配列番号202のアミノ酸配列を含むLCVRのCDRと、を含む、項目45または46に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目48.抗CTLA-4抗体が、配列番号196の配列のHCDR1、配列番号198の配列のHCDR2、配列番号200のHCDR3、配列番号204の配列のLCDR1、配列番号206の配列のLCDR2、および配列番号208の配列のLCDR3を含む、項目45~47のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目49.抗CTLA-4抗体が、配列番号194のアミノ酸配列を含むHCVRと、配列番号202のアミノ酸配列を含むLCVRと、を含む、項目45~48のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目50.抗CTLA-4抗体が、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む、項目45~49のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目51.抗CTLA-4抗体が、配列番号509のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号510のアミノ酸配列の軽鎖と、を含む、項目45~50のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目52.抗PD-1抗体が、セミプリマブである、項目45~51のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目53.抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片が、25~600mgの用量で投与される、項目45~52のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目54.抗PD-1抗体が、50~1200mgの用量で投与される、項目45~53のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目55.抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片が、初回用量として投与され、続いて1つ以上の二次用量が投与され、各二次用量が、直前の用量の1~12週間後に投与される、項目45~54のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目56.非小細胞肺癌(NSCLC)が、進行性または転移性NSCLCである、項目45~55のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
項目57.治療を必要とする対象での非小細胞肺癌の治療における抗PD-1抗体と組み合わせた使用のための、項目22の薬学的組成物。
【0324】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な変更が前述の記載から当業者には明らかとなるであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号194のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)内に含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号202のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)内に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む、抗体またはその抗原結合断片。