IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エレックス メディカル プロプライエタリー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特開-パターンレーザー 図1
  • 特開-パターンレーザー 図2
  • 特開-パターンレーザー 図3
  • 特開-パターンレーザー 図4
  • 特開-パターンレーザー 図5
  • 特開-パターンレーザー 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113941
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】パターンレーザー
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A61F9/008 120A
A61F9/008 120C
A61F9/008 100
A61F9/008 120D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097644
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2018549370の分割
【原出願日】2016-12-14
(31)【優先権主張番号】2015905168
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】503375669
【氏名又は名称】エレックス メディカル プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELLEX MEDICAL PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シア、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィー、ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】プレヴィン、ビクター
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン、ティモシー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数のレーザー装置を備え、有用性を高めたパターンレーザーを提供する。
【解決手段】各レーザー装置は、光ファイバーの束を構成する光ファイバーに治療レーザービームを放出する。光結合モジュールは、治療レーザービームを対応する光ファイバー内で結合する為に、レーザー装置と光ファイバーとを対応付ける。制御装置は、レーザー装置から出た光ファイバーの束の端部に治療レーザーパターンを形成する為にレーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにしてその動作を制御する。搬送システムは、光ファイバーの束から治療部位に出力を結像する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザーアセンブリと、各レーザーアセンブリが少なくとも治療レーザービームを放出するレーザー治療装置を備えることと、
前記各レーザーアセンブリに対応する光ファイバーと、前記光ファイバーが光ファイバーの束の中で配列されていることと、
前記各レーザーアセンブリと前記光ファイバーに対応する光結合モジュールと、前記光結合モジュールが治療レーザービームを対応する光ファイバー内で結合することと、
前記レーザー装置から出る光ファイバーの束の端部に複数のレーザースポットからなる治療レーザーパターンを形成する為に前記レーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにして前記レーザー装置の動作を制御する制御装置と、
前記光ファイバーの束から治療部位に出力を結像する搬送システムとからなる眼科用パターンレーザー。
【請求項2】
前記搬送システムは、1回の暴露で前記治療レーザーパターンを構成する全ての前記レーザースポットを同時に搬送する、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項3】
前記搬送システムは、前記治療レーザーパターンの全ての前記レーザースポットを逐次的に搬送する、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項4】
前記レーザー治療装置は、500nm~1100nmの波長域の治療レーザービームを放出する、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項5】
前記レーザー治療装置は、510nm~690nmの波長域の治療レーザービームを放出する、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項6】
前記各レーザーアセンブリは、照準レーザービームを放出する照準レーザー装置をさらに備える、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項7】
前記各レーザーアセンブリは、可視スペクトルの波長の照準レーザービームを放出する照準レーザー装置をさらに備える、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項8】
前記各レーザーアセンブリは、635nmの波長の照準レーザービームを放出する照準レーザー装置をさらに備える、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項9】
前記各レーザーアセンブリは、照準レーザービームを放出する照準レーザー装置をさらに備え、前記光結合モジュールは、前記照準レーザービームと前記治療レーザービームを対応する光ファイバー内で結合する、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項10】
前記光結合モジュールは、コリメートレンズと、ビーム結合器と、焦点レンズとを備え、前記照準レーザービームと前記治療レーザービームとを結合して、結合したビームを前記光ファイバーに導く、請求項9に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項11】
前記光ファイバーは、一定の間隔を有する配列で最密の光ファイバー束内にまとめられ搬送端では光ファイバーアダプターによって終端され且つ入力端では各光ファーバーに分離されて光ファイバーアダプターで個別に終端されている、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項12】
7つの治療レーザー装置と7本の光ファイバーを備え、7本の光ファイバーは、前記搬送端において最密六角形の形状で束化されている、請求項11に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項13】
前記制御装置は、パワーとパルス持続時間とパルス間隔とズームとパターン選択とパターンモードのうちの1つ以上を含むその他のレーザーパラメーターも制御する、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項14】
前記レーザー装置は、レーザーダイオードである、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項15】
装置使用者が前記制御装置に入力可能にするユーザーインターフェイスをさらに備える、請求項1に記載の眼科用パターンレーザー。
【請求項16】
複数のレーザーアセンブリと、各レーザーアセンブリが少なくとも治療レーザービームを放出するレーザー治療装置と照準レーザービームを放出する照準レーザー装置とを備えることと、
前記各レーザーアセンブリに対応する光ファイバーと、前記光ファイバーが光ファイバーの束の中で配列されていることと、
前記各レーザーアセンブリと前記各光ファイバーに対応する光結合モジュールと、前記光結合モジュールが治療レーザービームと照準レーザービームを対応する光ファイバー内で結合することと、
前記レーザー装置から出る前記光ファイバーの束の端部でレーザースポットからなる照準レーザーパターンまたは治療レーザーパターンを形成する為に前記レーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにして前記レーザー装置の動作を制御する制御装置と、
1回の暴露で前記治療レーザーパターンを構成する全ての前記レーザースポットを同時に搬送する為に前記光ファイバーの束から治療部位に出力パターンを結像する搬送システムと、からなる眼科用パターンレーザー。
【請求項17】
一端において最密配列を有する光ファイバーの束を形成し他端において離間された光ファイバーを形成する工程と、
光結合装置を介してレーザーアセンブリを前記光ファイバーの束の各光ファイバーに対応させる工程と、レーザー治療装置から放出されたレーザー放射が光ファイバーで結合されるように各レーザーアセンブリが少なくともレーザー治療装置を備えることと、
前記レーザー装置から出る前記光ファイバーの束の端部で治療レーザーパターンを形成する為に前記レーザー治療装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにして前記レーザー治療装置の動作を制御する工程と、前記光ファイバーの束のパターンを標的部位に結像することによって前記治療レーザーパターンを治療部位に搬送する工程とを備える、レーザーパターンを治療部位に適用する方法。
【請求項18】
前記レーザーアセンブリに含まれる照準レーザーを用いて前記治療部位を選択する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細隙灯アセンブリと請求項1の眼科パターンレーザーの組み合わせ。
【請求項20】
前記細隙灯アセンブリは、ズーム調節を含み、前記治療レーザーパターンのサイズは、前記細隙灯アセンブリの前記ズーム調節によって調節される、請求項19に記載の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、レーザー装置分野に関する。より詳細には、眼病治療の為の眼科用レーザー装置および眼科用レーザー装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー治療は、多くの眼科疾患に対する好適な治療法として広く受け入れられている。例えば、アルゴンレーザーを用いた広範囲網膜光凝固法(PRP:pan retinal photocoagulation)は、糖尿病性網膜症の治療に用いられる。糖尿病性網膜症は、世界的に労働年齢の成人の視力障害の主因となっている。PRP法は、数年来、増殖性糖尿病性網膜症を患っている患者の深刻な失明のリスクを低下する為の有効な治療であった。より最近では、PRP法に代わるより効果的な方法として、パターン走査レーザー法が開発されている。
【0003】
一般的なパターン走査レーザー法は、スタンフォード大学の「網膜のパターンレーザー治療」という名称の特許文献1に開示されている。パターン走査レーザーは、選択可能なパターンで網膜上をある場所からある場所へと順に移動可能な出力スポットを生成する。レーザースポットの方向を変えるためにスキャナーが使用されている。特許文献1の治療システムは、特定のパターンに従ってラスター走査法で動作する。
【0004】
他の例は、Nidek Co. Ltdの「眼科用レーザー治療装置」という名称の特許文献2に開示されている。特許文献2には、手で持って操作することのできる別体のキャビネットとレーザーユニットを収容する主ユニットとを含むシステムが開示されている。主ユニットは、光ファイバーの束により手で持って操作することのできるユニットに接続されている。主ユニットの中のスキャナーは、選択可能な方法でレーザーユニットからファイバーの束の面にレーザービームを導くように制御される。パターンは、手で持って操作することのできるユニット内の光学系により、光ファイバーの束の出口から網膜上に結像される。
【0005】
Anderson氏の「レーザー倒像検眼鏡を用いた多スポット光治療」という名称の特許文献3には、複数のスポットからなるパターンまたは走査パターンを生成するビーム多重化装置が開示されている。ビーム多重化装置は、単一の入力ビームを複数の点に走査するか、または単一の入力ビームを複数の出力ビーム出力に分離するべく複数のレンズとミラーの組み合わせからなると記載されている。
【0006】
Reliant Technologies Incの特許文献4には、サブ走査方向に動かしつつ、主走査方向に沿って光ビームのアレイで走査する方法が開示されている。ロリアントテクノロジー社の実施形態では、光ファーバーの線形アレイを介してレーザービームを伝達して標的全体を線形アレイで機械的に走査することにより走査時間を改良している。この配置は、いくつかの従来技術よりも高速ではあるが、光ビームの方向を物理的に調節する必要がある為、柔軟性に欠ける。
【0007】
Reliant Technologies Incの特許文献5には、別のレーザー治療装置が開示されている。この文献には、複数のレーザービームを組み合わせて単一の治療ビームとすることが開示されている。各レーザービームは、少なくとも1つの異なるパラメーターを備える。特許文献5にかかる発明は、特定のパラメーターの所望のセットを有するレーザービームを生成する為に複数のレーザービームをオンまたはオフにすることができるというものであるが、特許文献5の装置は、パターン走査レーザーを生成しない。
【0008】
上述した従来システムには、多くの欠点がある。ビーム走査に基づくこれらの装置は、一般的に高額なガルバノ走査装置を使用する。ガルバノ走査装置を信頼できる動作状況に維持する為には、多大な維持コストが必要である。特許文献3にかかる装置のミラーやレンズなどのコストを削減する為に別の装置を使用したとしても、網膜上のパターン全体をスポットで走査するにかかる時間が治療法の利用可能性の大きな制約となる。
【0009】
パターンを伝達するのに必要な時間は、伝達されるスポットの数と、スポット当たりの滞在時間とスポット間を走査する時間を合計した時間との掛け算である、パターンを生成するのにかかる時間の制約を受ける。一般的な走査レーザーでは、スポット間の走査時間は、約1ミリ秒であり、一般的なスポット当たりの滞在時間は、約20ミリ秒である。短時間のパルス暴露は、組織に対して熱的な相互作用よりも損傷を引き起こす為、10ミリ秒以下の滞在時間は、好ましくない。また短時間のパルス暴露により治療ウインドウが小さくなるため、医師は、効果の高い光凝固術のための線量測定を予見することができない。一方で、30ミリ秒以上の長い暴露時間は、パターンが10スポット程度の少数に限られる場合を除いて、治療の合計時間を実用的な限界を超えて延長する。
【0010】
よって、眼科分野においてパターン走査レーザーの有用性を高める代替法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7766903号明細書
【特許文献2】米国特許第8512319号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007121069号明細書
【特許文献4】米国特許第7090670号明細書
【特許文献5】国際公開第WO03/049892号
【発明の概要】
【0012】
一の形態において、本願発明は、必ずしも唯一の、または最も広い形態ではないが、本願発明は、眼科用パターンレーザーに関し、複数のレーザーアセンブリと、各レーザーアセンブリが少なくとも治療レーザービームを放出する治療レーザー装置を含むことと、各レーザーアセンブリに対応する光ファイバーと、前記光ファーバーがファイバーの束の中に配列されていることと、各レーザーアセンブリと各光ファイバーに対応する光結合モジュールと、前記光結合モジュールが治療用レーザービームを対応する光ファイバー内で結合することと、レーザー装置から出る前記光ファイバーの端部で複数のレーザースポットからなる治療レーザーパターンを形成する為に前記レーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにすることによって前記レーザー装置の動作を制御する制御装置と、前記光ファイバーの束から治療部位に前記出力を結像する搬送システムと、からなる。
【0013】
本願発明の好ましい態様において、搬送システムは、1回の暴露で治療レーザーパターンを構成する全てのレーザースポットを同時に搬送する。代替的な形態では、治療レーザーパターンを構成するレーザースポットは、逐次的に搬送される。
【0014】
本願発明の別の好適な形態では、各レーザーアセンブリは、治療レーザーだけではなく照準レーザーも備える。治療レーザーは、好ましくは、500nm~1100nmの範囲で動作し、最も好ましくは、510nm~690nmの範囲で動作する。照準レーザーは、好ましくは、スペクトルの可視部にあり、最も好ましくは、635nmで動作する。光結合モジュールは、照準レーザービームと治療レーザービームとを各光ファイバー内で結合する。
【0015】
光ファイバーは、好ましくは、搬送端において最密(close packed)の光ファイバーの束にまとめられ、入力端において分離されている。
制御装置は、好ましくは、パワー、パルス持続時間、パルス間の時間、ズーム、選択パターン、およびパターンモード(連続式または逐次式)などの他のレーザーパラメーターも制御する。
【0016】
別の形式では、本願発明は、眼科パターンレーザーに関し、複数のレーザーアセンブリと、各レーザーアセンブリが少なくとも治療レーザービームを放出する治療レーザー装置と照準レーザービームを放出する照準レーザー装置とを備えることと、各レーザーアセンブリに対応する光ファイバーと、光ファイバーが光ファイバーの束内で配列されていることと、各レーザーアセンブリと各光ファイバーに対応する光結合モジュールと、光結合モジュールが治療レーザービームと照準レーザービームを対応する光ファイバー内で結合することと、レーザー装置から出る光ファイバーの束の端部において複数のレーザースポットからなる照準レーザーパターンまたは治療レーザーパターンを形成する為に、レーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにしてレーザー装置の動作を制御する制御装置と、1回の暴露で選択された治療レーザーパターンを構成する全てのレーザースポットを同時に搬送する為に、光ファイバーの束から治療部位に出力パターンを結像する搬送システムと、からなる。
【0017】
別の形式では、本願発明は、治療部位にレーザーパターンを適用する方法に関し、方法は、一端において最密にされ且つパターン配列を有し他端において分離された光ファイバーを有する光ファイバーの束を形成する工程と、光多重化装置によって光ファイバーの束の各光ファイバーとレーザーアセンブリとを対応させる工程と、治療レーザー装置から放出されたレーザーが光ファイバー内で結合されるように各レーザーアセンブリは少なくとも治療レーザー装置を含み、レーザー装置から出る光ファイバーの束の端部において治療レーザーパターンを形成する為に治療レーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにして治療レーザー装置の動作を制御する工程と、光ファイバーの束のパターンを結像して治療部位に治療レーザーパターンを搬送する工程、とからなる。
【0018】
方法は、レーザーアセンブリに含まれる照準レーザーを用いて治療部位を選択する工程をさらに含む。
本願発明の追加的な特徴及び優れた点は、以下の詳細な説明で説明する。
【0019】
本願発明の理解を助け、且つ当業者が本願発明を実施可能にする為に、本願の好ましい実施形態が、ほんの一例として添付の図面について説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】パターンレーザーを示すブロック図。
図2図1のパターンレーザーの接続モジュールを示す略式図。
図3図1のパターンレーザーの光ファイバーを示す略式図。
図4】治療パターンの例を示す図。
図5】本願発明の使用する為の細隙灯アセンブリを示す図。
図6】ズーミングの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の実施形態は、パターンレーザー、およびパターンレーザーの使用方法に関する。パターンレーザーの要素は、本願発明の実施形態の理解に必要とされる具体的詳細を示すものであるが、本明細書の記載内容を利用する当業者がすぐに理解しうるように過度に詳細を開示することにより発明の内容を不明瞭にすることのないように、図面には簡潔に略形式で示されている。
【0022】
本明細書では、第1および第2、左および右などの形容詞的な用語は、実際の関係または順序を必ずしも必要または示唆することなく、単に1つの要素を他の要素を区別するためだけに使用される。「からなる(comprises)」または「含む(includes)」という用語は、非排他的な包含を定義することを目的としており、例えば、要素のリストから構成される工程、方法、項目、または装置が、単にそれらの要素だけを含むのではなく、明確にリストに挙げられていない他の要素、例えば、上記工程、方法、項目または装置に本来的に備わっている要素等も含んでもよいことを意味する。
【0023】
図1には、PRPおよび他の用途に有用なパターンレーザー10のブロック図が示されている。パターンレーザー10は、以下で詳細に説明するが、レーザー光ファイバー発進モジュール11を備える。レーザー光ファイバー発進モジュール11から出た光ファイバーは、束12から治療部位に出力を結像する搬送システム13に接続されている最密の束12にまとめられている。レーザー光ファイバー発進モジュール11におけるレーザーの動作は、制御装置14により制御される。ユーザーインターフェイス15は、装置使用者が制御装置14に入力を与え、レーザーの動作を制御してパターンを形成することを可能にする。ユーザーインターフェイス15は、搬送システム13の制御も可能にしうる。パターンレーザー10の電力は、電力サプライ16によって提供される。
【0024】
図2には、レーザー光ファイバー発進モジュール11がさらに詳細に示されている。説明容易化の為に、パターンレーザー10は、7対の治療レーザーと照準レーザーと、出力端において一定の間隔で配置された最密(例えば充填六角形など)束を形成する7本の対応光ファイバーとからなるものとして説明する。コスト以外では、光ファイバーとレーザーの本数には、実質的には制限がないものと理解しうる。モジュール11は、7つのダイオードレーザーアセンブリ111を含み、各アセンブリは、照準ダイオード111aと治療ダイオード111bとを含み、実用的な配置に好適に収容されている。レーザーダイオードアセンブリ111の各対には、対応する対応光ファイバー121が存在する。光学結合器112は、光ファイバー121にレーザーダイオードアセンブリ111からの出力を結合する。光学結合器112は、照準ダイオード111aと治療ダイオード111bから放出された複数の発散レーザービーム用のコリメートレンズ112aと112bとを備える。コリメート処置されたビーム112mは、ビームスプリッター112cで2つの経路に分離される。ビームの大半は、照準レーザー経路112pに向かって反射される。一部のビーム112qは透過されて治療ダイオード111bの出力をモニターする出力検出器112dに投射される。反射されたビーム112pは、ビーム結合器112eによって照準ビーム112nと結合されて同一光路112rに入る。結合されたビームは、照準レーザーが照準レーザーと治療レーザーとがいつも同じ光路をとって装置使用者が治療部位を標的にできるように、焦点レンズ112によって入力端で光ファイバー121の上にフォーカスされる。光結合装置112は、一度設定されるとロックされる為、追加の調節をしなくともよい。
【0025】
好適な治療レーザーダイオード111bは、限定ではないが、多くの眼科用途では可視スペクトルのうちのグリーンの領域で動作する。好適なレーザーダイオードは、510nm~690nmの波長域で動作する。本願発明はこの特定のレーザーダイオード、即ち特定の波長域に限定されない。ある用途に対しては、利用可能なスペクトルのうち任意の波長で動作するレーザーダイオードが好ましい場合がある。発明者は、コンパクトな軽量デザインで低コストであり且つ多数の異なる動作波長で簡単に利用できることから、レーザーダイオードが最も好ましいことを見いだしている。しかしながら、レーザー源は、ダイオードレーザーに限定されない。635nmで動作する赤色レーザーは、照準レーザー111aの良い選択肢である
光ファイバー121は、図3に示すように光ファイバーの束12の形状に形成される。この実施形態では、束12は、7本の光ファイバーを有しているが、発明者は、これ以上の数も可能であるものの3~19本の間の任意の本数の光ファイバーで束を形成しうると考えている。光ファイバーの束は、限定ではないが、充填六角形状などで一定の間隔をあけて配置されるのが好ましい。光ファイバーは、単一モードまたは多モードであってよい。好ましい光ファイバーは、10μmから200μmの範囲のコア直径を有する多モード光ファイバーである。束12は、接着剤またはその他の結合手段によって遠位端122で1つにまとめられて、最密先端部123を形成する。最密先端部123は、好ましくは、SMA,ST,FCなどの光ファイバーコネクタに埋め込まれる。好ましい充填は、六角形であるが、束内の好ましい束の本数は、7本または19本である。束は、近位端124の近傍で単一光ファイバー121に分離され、各光ファイバーは、好適な光ファイバーコネクタの中に終端して上述の光結合装置112に係合する。
【0026】
レーザーダイオードアセンブリ111の動作を制御することによって様々な出力パターンを形成しうる。制御装置14は、各レーザーダイオードを個別にオンまたはオフしうる。したがって、選択されたすべてのレーザー装置を同時にオンまたはオフすることによってスポットパターンを同時に形成したり、選択されたレーザーダイオードを順番に逐次的にオンまたはオフすることによってスポットパターンを順番に逐次的に形成することができる。制御装置は、どのくらい長くレーザーダイオードをオンまたはオフで維持するかなどのパラメーターだけでなく、各レーザーダイオードのパワー出力も変化させることができる。図4に、好ましい実施形態として複数の可能なパターンを示す。図4(a)に示すように、全てのレーザーダイオードがオンにされた時には、出力は、7本すべての光ファイバーから生じる。制御装置によって適当なレーザーが1本オンにされていない場合には、図4(b)に示すように中央のファイバーが暗い。4本のレーザーダイオードがオンにされている場合には、図4(c)、図4(d)、または図4(e)のパターンが形成される。3本のレーザーダイオードのみがオンにされている場合には、図4(f)、図4(g)、または図4(h)のパターンを形成することができ、1本のレーザーダイオードのみがオンにされている場合には、図4(i)に示すように1個のパターンを形成することができる。図4に示したパターンは、形成して利用しうるパターンのうちの単なる一部である。
【0027】
選択されたパターンを構成するレーザーダイオードは、同時的にまたは逐次的にオンになるように制御されうる。逐次モード設定では、パターン化レーザーで標的治療部位が走査される。
【0028】
パターンは、治療法が選択された際に、制御装置14によって自動的に作成されるか、またはユーザーインターフェイス15を用いて装置使用者によって手動で選択される。
ユーザーインターフェイス15は、好ましくは、装置使用者が、予め設定された用途範囲で選択ができるようにタッチスクリーンであってよい。ユーザーインターフェイス15には、装置使用者が光ファイバーを個別にタッチして出力可能にする光ファイバーの束の先端部123を表示する手動モードを含んでよい。ユーザーインターフェイスで、パルス持続時間、パルス間隔、パワーレベル、パターンの選択、パターンの搬送形式などのその他の因子も管理することができる。
【0029】
本願発明が大変優れている点の1つは、本願発明が、1ミリ秒から1000ミリ秒の範囲の臨床上最適なパルス持続時間で全てのパターンスポットを単一アレイとして同時に搬送することができる点である。多くの医師が、治療ウインドウが最適であるこの暴露時間内に生じる凝固ダイナミクスについて熟知している。本願発明によれば、最適な手術を簡単に行うことができ、且つ、全てのレーザー源を同時にオンにすることができるため、パターンに含まれる各スポットあたりの滞在時間に由来する制約を排除することができる。従来のパターン走査レーザーを用いて、各スポットの滞在時間を最適な50ミリ秒にして10つのスポットパターンを搬送する際には、各パターンを搬送するごとに500ミリ秒以上の時間がかかるが、本願発明の10つのスポットパターンを50ミリ秒の滞在時間で使用した場合には、パターンの搬送にかかる時間は、同時モードの場合でわずか50ミリ秒である。
【0030】
本願発明の別の効果によれば、アレイをブロックとして未暴露部位に移動させて次の暴露を逐次的に実施することができるため、この工程を繰り返すことによって、大きな領域を迅速にカバーすることができる。
【0031】
上記の眼科パターンレーザーは、治療パターンを形成する為に、走査やディザリングのいずれの形式も使用していないことが理解しうるであろう。治療のパターンは、光ファイバーの束内の各光ファイバーに接続されている治療レーザーを個別にオンまたはオフにすることによって決定される。
【0032】
図5では、光ファイバーの束12が細隙灯アセンブリなどの搬送システム13に接続されている。細隙灯搬送システムは、細隙灯照明器131と、ズーミングモジュール132と、ビームコリメーター133と、ミラー134と、焦点レンズ135とから構成されている。眼科医138は、レーザービームがミラー134によって視路に引き入れられた際に、細隙灯顕微鏡の接眼レンズ136を通して患者の眼の後部と網膜の治療部位へのレーザーパターンが搬送されたことを観察することができる。光ファイバーの束12の遠位端122は、所望に従ってスポットサイズとパターン間隔とを拡大することができるズームモジュール132に接続される。装置使用者は、所望に従って光ファイバーの束の出力を正確に配置する為に、ファイバーの束12の遠位端122を操作することができる。多くの医師は、細隙灯に慣れ親しんでいるため、細隙灯はパターンレーザーの利便性を高めうる。他の用途においては、眼科医によって一般に使用される細隙灯顕微鏡やレーザー倒像検眼鏡(LIO:laser indirect ophthalmoscope)に搭載されうる細隙灯アダプターなどの、その他の搬送システムも想定される。
【0033】
図4について上述したように、装置使用者は、レーザースポットのパターンを変更するだけでなく、ズームモジュール132を調節してスポットパターンのサイズを変更することもできる。ズームを調節することによる効果は、図6に示されている。パターンサイズは、例えば、2倍、4倍、6倍、10倍、20倍などといった固定されたステップにより、または連続的に調節しうる。スポットサイズとパターンサイズは両方とも変更しうる。
【0034】
本願発明の様々な実施形態についての上記説明は、当業者に開示することを目的として提供されている。そして、排他的であったり、本願発明を開示された1つの実施形態に限定することは意図されていない。上記説明を読んだ当業者であれば、上述したように本願発明の多数の代替形態と変更形態とを理解するであろう。したがって、いくつかの代替的な実施形態を具体的に説明したが、当業者であれば、他の実施形態を理解し、または比較的簡単に実施しうるであろう。したがって、本願発明は、ここで説明した本願発明の全ての実施形態と変更形態と変化形態および上述した本願発明の主旨および範囲内に入るすべての実施形態とを包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザーアセンブリと、各レーザーアセンブリが少なくとも治療レーザービームを放出する治療レーザー装置を備えることと、
前記各レーザーアセンブリに対応する光ファイバーと、前記光ファイバーが光ファイバーの束の中で配列されていることと、
前記各レーザーアセンブリと前記光ファイバーに対応する光結合モジュールと、前記光結合モジュールが治療レーザービームを対応する光ファイバー内で結合することと、
前記レーザー装置から出る光ファイバーの束の端部に複数のレーザースポットからなる治療レーザーパターンを形成する為に前記レーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにして前記レーザー装置の動作を制御する制御装置と、
前記光ファイバーの束から治療部位に出力を結像する搬送システムとからなる眼科用パターンレーザー。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
本願発明の様々な実施形態についての上記説明は、当業者に開示することを目的として提供されている。そして、排他的であったり、本願発明を開示された1つの実施形態に限定することは意図されていない。上記説明を読んだ当業者であれば、上述したように本願発明の多数の代替形態と変更形態とを理解するであろう。したがって、いくつかの代替的な実施形態を具体的に説明したが、当業者であれば、他の実施形態を理解し、または比較的簡単に実施しうるであろう。したがって、本願発明は、ここで説明した本願発明の全ての実施形態と変更形態と変化形態および上述した本願発明の主旨および範囲内に入るすべての実施形態とを包含することが意図されている。
本開示に含まれる技術的思想を以下に記載する。
(付記1)
複数のレーザーアセンブリと、各レーザーアセンブリが少なくとも治療レーザービームを放出する治療レーザー装置を備えることと、
前記各レーザーアセンブリに対応する光ファイバーと、前記光ファイバーが光ファイバーの束の中で配列されていることと、
前記各レーザーアセンブリと前記光ファイバーに対応する光結合モジュールと、前記光結合モジュールが治療レーザービームを対応する光ファイバー内で結合することと、
前記レーザー装置から出る光ファイバーの束の端部に複数のレーザースポットからなる治療レーザーパターンを形成する為に前記レーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにして前記レーザー装置の動作を制御する制御装置と、
前記光ファイバーの束から治療部位に出力を結像する搬送システムとからなる眼科用パターンレーザー。
(付記2)
前記搬送システムは、1回の暴露で前記治療レーザーパターンを構成する全ての前記レーザースポットを同時に搬送する、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記3)
前記搬送システムは、前記治療レーザーパターンの全ての前記レーザースポットを逐次的に搬送する、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記4)
前記治療レーザー装置は、500nm~1100nmの波長域の治療レーザービームを放出する、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記5)
前記治療レーザー装置は、510nm~690nmの波長域の治療レーザービームを放出する、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記6)
前記各レーザーアセンブリは、照準レーザービームを放出する照準レーザー装置をさらに備える、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記7)
前記各レーザーアセンブリは、可視スペクトルの波長の照準レーザービームを放出する照準レーザー装置をさらに備える、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記8)
前記各レーザーアセンブリは、635nmの波長の照準レーザービームを放出する照準レーザー装置をさらに備える、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記9)
前記各レーザーアセンブリは、照準レーザービームを放出する照準レーザー装置をさらに備え、前記光結合モジュールは、前記照準レーザービームと前記治療レーザービームを対応する光ファイバー内で結合する、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記10)
前記光結合モジュールは、コリメートレンズと、ビーム結合器と、焦点レンズとを備え、前記照準レーザービームと前記治療レーザービームとを結合して、結合したビームを前記光ファイバーに導く、付記9に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記11)
前記光ファイバーは、一定の間隔を有する配列で最密の光ファイバー束内にまとめられ搬送端では光ファイバーアダプターによって終端され且つ入力端では各光ファーバーに分離されて光ファイバーアダプターで個別に終端されている、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記12)
7つの治療レーザー装置と7本の光ファイバーを備え、7本の光ファイバーは、前記搬送端において最密六角形の形状で束化されている、付記11に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記13)
前記制御装置は、パワーとパルス持続時間とパルス間隔とズームとパターン選択とパターンモードのうちの1つ以上を含むその他のレーザーパラメーターも制御する、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記14)
前記レーザー装置は、レーザーダイオードである、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記15)
装置使用者が前記制御装置に入力可能にするユーザーインターフェイスをさらに備える、付記1に記載の眼科用パターンレーザー。
(付記16)
複数のレーザーアセンブリと、各レーザーアセンブリが少なくとも治療レーザービームを放出する治療レーザー装置と照準レーザービームを放出する照準レーザー装置とを備えることと、
前記各レーザーアセンブリに対応する光ファイバーと、前記光ファイバーが光ファイバーの束の中で配列されていることと、
前記各レーザーアセンブリと前記各光ファイバーに対応する光結合モジュールと、前記光結合モジュールが治療レーザービームと照準レーザービームを対応する光ファイバー内で結合することと、
前記レーザー装置から出る前記光ファイバーの束の端部でレーザースポットからなる照準レーザーパターンまたは治療レーザーパターンを形成する為に前記レーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにして前記レーザー装置の動作を制御する制御装置と、
1回の暴露で前記治療レーザーパターンを構成する全ての前記レーザースポットを同時に搬送する為に前記光ファイバーの束から治療部位に出力パターンを結像する搬送システムと、からなる眼科用パターンレーザー。
(付記17)
一端において最密配列を有する光ファイバーの束を形成し他端において離間された光ファイバーを形成する工程と、
光結合装置を介してレーザーアセンブリを前記光ファイバーの束の各光ファイバーに対応させる工程と、治療レーザー装置から放出されたレーザー放射が光ファイバーで結合されるように各レーザーアセンブリが少なくとも治療レーザー装置を備えることと、
前記レーザー装置から出る前記光ファイバーの束の端部で治療レーザーパターンを形成する為に前記治療レーザー装置の1つ以上を選択的にオンまたはオフにして前記治療レーザー装置の動作を制御する工程と、前記光ファイバーの束のパターンを標的部位に結像することによって前記治療レーザーパターンを治療部位に搬送する工程とを備える、レーザーパターンを治療部位に適用する方法。
(付記18)
前記レーザーアセンブリに含まれる照準レーザーを用いて前記治療部位を選択する工程をさらに含む、付記17に記載の方法。
(付記19)
細隙灯アセンブリと付記1の眼科パターンレーザーの組み合わせ。
(付記20)
前記細隙灯アセンブリは、ズーム調節を含み、前記治療レーザーパターンのサイズは、前記細隙灯アセンブリの前記ズーム調節によって調節される、付記19に記載の組み合わせ。