(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113951
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】非タバコ植物を用いた電子タバコカートリッジ
(51)【国際特許分類】
A24B 15/167 20200101AFI20230808BHJP
【FI】
A24B15/167
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098678
(22)【出願日】2023-06-15
(62)【分割の表示】P 2021103019の分割
【原出願日】2017-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タバコの成分を含まない植物の芳香や味わいを楽しむことができる非タバコ植物を用いた電子タバコカートリッジ用充填物の製造方法を提供する。
【解決手段】芳香の元になる非タバコ植物等を乾燥粉砕する乾燥粉砕工程M1と、非タバコ植物等を秤量する秤量工程M2、前記秤量した非タバコ植物等を乾式混合する乾式混合工程M3、エアロゾルフォーマ等を加え湿式混合する湿式混合工程1M4、更に水を加え湿式混合しスラリーとする湿式混合工程2M5、得られたスラリーをシート化するシート作成工程M6、シート化されたスラリーを所望の形状に成形するシート成形工程M7、得られた成形シートを乾燥する乾燥工程M8、更に得られた成形シートを所望の形状に成形する充填物成形工程M9を有する、非タバコ植物を使用した電子タバコカートリッジ用充填物の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコ植物或いは非タバコ植物の乾燥粉砕物にエアロゾルフォーマと水を添加し混合してタバコ植物或いは非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、水混合物を得る工程(M5工程)と、
前記タバコ植物或いは非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、水混合物を有する含水シートを作成する工程(M6工程)、前記含水シートを成形し成形含水シートを得る成形工程(M7工程)があり、
前記成形含水シートを乾燥し、所望の含水量にした乾燥シートを得る乾燥工程(M8工程)と、
前記乾燥シートを平板状、片状、短冊状、棒状、繊維状、フレーク状、粉体、顆粒、ペレット、ストランド、多孔質状、ブロック状、およびペースト状のいずれかの形状に成形する工程(M9工程)を有し、
前記M5工程では、複数回に分けて水を投入する、
ことを特徴とする、タバコ植物或いは非タバコ植物を使用した電子タバコカートリッジ用充填物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非タバコ植物を用いた電子タバコカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タバコの禁煙の傾向に合わせるために、火炎を用いることなく、タバコの成分を含むカートリッジを加熱して、気化したタバコ成分を吸引することで、タバコを楽しむための電子タバコ製品が普及し始めている。このような電子タバコ用カートリッジに充填するタバコ充填物の製造方法としては、タバコ葉を粉末化して、水性スラリーとしたのちにシート化し、オイルやグリセリンをシートに加えて、乾燥させる方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、嗜好の多様化からタバコ成分を含まない植物の芳香や味わいを電子タバコ同様に火炎を用いずに楽しむためのカートリッジ製品が求められている。しかしながら、従来の技術には、タバコ以外の植物を用いた電子タバコカートリッジ用充填物についての製造方法は開示されていない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、タバコの成分を含まない植物の芳香や味わいを楽しむことができる非タバコ植物を用いた電子タバコカートリッジ用充填物の製造方法、および非タバコ植物を用いた電子タバコカートリッジ用充填物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、非タバコ植物を使用した電子タバコカートリッジ用充填物の製造方法は、非タバコ植物乾燥粉砕物にエアロゾルフォーマと水を添加し混合し、非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、水混合物を得る工程と、前記非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、水混合物を有する含水シートを作成する工程、前記含水シートを成形し成形含水シートを得る成形工程があり、前記成形含水シートを乾燥し、所望の含水量にした乾燥シートを得る乾燥工程と、前記乾燥シートを成形し所望の形態とする工程を有することを特徴とする非タバコ植物を使用することに特徴を有する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、非タバコ植物にエアロゾルフォーマと水を添加し混合する工程の後に、更に水を添加し混合し非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、水混合物を得る工程を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記非タバコ植物にエアロゾルフォーマと水を添加し混合する工程において低級モノアルコールを添加することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記低級モノアルコールの添加量は、前記非タバコ植物100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4に記載の発明において、前記含水シートを成形し成形含水シートを得る成形工程において、プレスロールを用い、複数回のプレスをおこなう際に、途中で、水を加えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5に記載の発明において、前記乾燥工程において、乾燥温度を50℃未満で行うことに特徴を有する。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6に記載の発明において、前記非タバコ植物の使用部位は、少なくとも、根、茎、葉、花、実、種子、樹木の幹、樹木の枝のいずれか一つを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7に記載の発明において、非タバコ植物抽出物を添加することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項1~8に記載の発明において、前記非タバコ植物抽出物を添加する工程が、非タバコ植物にエアロゾルフォーマと水を添加し混合し、非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、水混合物を得る工程以前の工程、非タバコ植物抽出物を、非タバコ植物にエアロゾルフォーマと水を添加し混合し、非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、水混合物を得る工程、更に水を添加し混合し非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、水混合物を得る工程のいずれかの工程であることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1~9に記載の発明において、前記乾燥工程の後、乾燥させたシートから平板状、片状、短冊状、棒状、繊維状、フレーク状、粉体、顆粒、ペレット、ストランド、多孔質状、ブロック状、およびペースト状のいずれかの形状に成形する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の非タバコ植物を使用した電子タバコカートリッジ用充填物の製造方法によれば、非タバコ植物による天然の芳香や味わいを簡単に楽しむことができる電子タバコカートリッジ用充填物を製造できる。
本発明の非タバコ植物を使用した電子タバコカートリッジ用充填物によれば、非タバコ植物による天然の芳香や味わいを簡単に楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用した実施形態における電子タバコカートリッジ用充填物の製造方法の工程を示す流れ図である。
【
図4】電子タバコカートリッジの部分透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
図1は、本発明を適用した実施形態における電子タバコカートリッジ用充填物の製造方法の工程を示す流れ図である。
【0020】
この方法は、芳香の元になる非タバコ植物等を乾燥・粉砕する乾燥・粉砕工程(M1)と、前記非タバコ植物等を秤量する秤量工程(M2)、前記秤量した非タバコ植物等を乾式混合する乾式混合工程(M3)、エアロゾルフォーマ等を加え湿式混合する湿式混合工
程1(M4)、更に水を加え湿式混合しスラリーとする湿式混合工程2(M5)、得られたスラリーをシート化するシート作成工程(M6)、シート化されたスラリーを所望の形状に成形するシート成形工程(M7)、得られた成形シートを乾燥する乾燥工程(M8)、更に得られた成形シートを所望の形状に成形する充填物成形工程(M9)を有する。
【0021】
各工程を順に説明する。発明の説明のために上記工程に分割して説明したが、2以上の工程を同時に行う工程をも含むものである。なお、原料となる非タバコ植物の詳細は後述する。
【0022】
まず、乾燥・粉砕工程(M1)は、原料となる非タバコ植物の使用部位(例えば、葉、種子、乾燥果実、茎、樹皮、根など)を電子タバコカートリッジの充填物とするために所望の粉砕物に加工する。その際、後に添加する、エアロゾルフォーマ、水その他の成分を吸収或いは担持したりするのに都合の良いような、水分量を調整するのも好ましい。
【0023】
秤量工程(M2)においては、原料となる非タバコ植物を所望の量に秤量する工程である。
【0024】
乾式混合工程(M3)においては、前記秤量された非タバコ植物を乾式に混合しておく工程である。
【0025】
湿式混合工程1(M4)においては、エアロゾルフォーマその他の液体要素が添加されそれらの混合を進める工程である。
【0026】
湿式混合工程2(M5)においては、更に液体要素が添加され、スラリーとする。
【0027】
シート作成工程(M6)においては、水性スラリーを可溶性部分と繊維性部分とに分離して、繊維性部分から、たとえば製紙工程を用いてシートを形成する。製紙工程はたとえば、簀子または網(フォードリニアワイヤなどのワイヤメッシュ)などを用いる(以下、簀子と記すがその他の網などを使用する場合も同様である)。この製紙工程は、水性スラリーを簀子の上からまんべんなく投下または水性スラリー中に簀子を入れて紙漉き同様に漉き取ることで、簀子の上に残った部分が繊維性部分のシートとなる。
【0028】
シート成形工程(M7)においては、シート作成工程において作成したものを所望の厚さ等に成形する際には、プレスローラを使用する方法などが採用される。
乾燥工程(M8)においては、成形されたシートを所望の含水量等に調整する工程である。
【0029】
充填物成形工程(M9)は、上記のように得られたものを充填物の形にする工程である。
【0030】
以下、紅茶等を用いた場合の製造工程を詳細に説明するが、これらは、紅茶等に限定されず、本明細書中に記載のタバコ植物及び非タバコ植物に適用できることは言うまでもない。
【実施例0031】
紅茶の葉を70℃で乾燥させ、粉砕する。乾燥・粉砕後には、水分量は2質量%であった。同様に、マメ科カンゾウ、蓮の葉、高麗ニンジンを乾燥させ、粉砕する。水分量は、同様に、2質量%としている。
なお乾燥温度は、60℃以上、80℃以下が好ましい。この範囲であると、必要とする香味成分の散逸を避けながら、所望の水分量へ到達しやすい。なお、65℃以上であると
更に所望の水分量へ到達しやすく、75℃以下であると必要とする香味成分の散逸を更に防止できる。
なお、乾燥・粉砕後の水分量は5質量%以下とするのが好ましい。このようにすると、のちの工程でのスラリー化が容易となる。3質量%以下であるとさらに好ましい。また、上記水分量は、好ましくは0.1質量%以上であると、水等とのなじみがよい状態を保つことができる。
【0032】
上記のように、おのおの、乾燥・粉砕したものを、80メッシュのふるいを通過したものを使用した。
紅茶葉の乾燥粉砕物 100質量部
マメ科カンゾウの乾燥粉砕物 20質量部
蓮の葉の乾燥粉砕物 10質量部
高麗人参の乾燥粉砕物 5質量部
を混合機に投入し、5分間乾式混合を行った。
【0033】
上記、乾式混合物に、
ポリプロピレングリコール 30質量部
グリセリン 20質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 5質量部
メンソール 3質量部
エタノール 3質量部
水 20質量部
を、前記混合機に投入し、5分間湿式混合した。
【0034】
更に、水180質量部を追加して投入し、10分間湿式混合を継続した。
【0035】
ここで、エタノール等の低級モノアルコールを添加すると、ポリプロピレングリコール、グリセリンと上記乾燥粉砕物の混ざりを改善することができるため、好ましい実施態様の一つとなる。すなわち、タバコ植物或いは非タバコ植物の乾燥粉砕物を用いて、スラリーとする際に低級モノアルコール、好ましくはエタノールを添加しスラリーとする工程があると好ましい。
【0036】
前記低級モノアルコールの添加量は、乾燥粉砕物100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましい。0.1質量部以上とすると、混ざりの改善効果があり、10質量部以下とすると、低級モノアルコールの残留を抑制することができる。更に好ましくは、0.5質量部以上5質量部以下であり、混ざりの改善効果と低級モノアルコールの残留抑制を好ましく両立できる。
【0037】
水を最初に投入して混合物を形成する理由は、上記混合物の分散を予め進め、そののちに追加の水で、希釈・混合することにより分散性の良好なスラリーを得ることができるからであり、複数回に分けて水を投入することも好ましい。複数回に分けて投入する際は、前に投入した水の量を少なくし、後に投入する水の量を多くする組み合わせをとることが好ましい。このようにすると、前に水を投入した際の分散性向上の度合いが高く、後に投入する水の量を多くすると均一なスラリーとなるからである。
【0038】
上記のように得られたスラリーからシートを形成する工程においては、上記スラリーを適当な簀子を備えた枠体に指定の量を投入し含水シートを作成した。この時、本実施の例では、含水シートにはおよそ、上記スラリーの含水量を、100とすると、95程度の水分量となる。
【0039】
引き続き、上記含水シートを所定のクリアランスを設定したプレスロールに3回通過させ成形を行い、その後に、前記3回通過させた含水シートに100質量部に対し、7質量部相当の水を上記含水シートに追加し更に上記プレスロールを5回通過させた。好ましくは、含水シート100質量部に対し、水2質量部以上15質量部以下である。このように、含水シートの成形を複数回行う際に、途中で、水を加えることにより含水シートに含まれる水をある範囲にそろえやすいという効果を有し、後の乾燥工程の条件をそろえることができるという効果があるとともに、最終生成物の品質をそろえることができるという効果がある。この工程において、成形含水シートの含水量が50質量%未満となり、必要に応じて、この工程において、エアロゾルフォーマを添加してもよい。
【0040】
更に、上記の様に得られた、成形含水シートを35℃の環境下で、300分乾燥させて含水量20質量%の電子タバコ充填物用成形シートを作成した。乾燥温度については、50℃未満とするのが香味を保つために好ましい。更に好ましくは45℃未満であり、更には40℃未満である。シートの厚みは、適宜調整されるが、本例では厚み、0.5mmとした。
【0041】
充填物成形工程(M9)は、乾燥したシートをカートリッジに充填し易く、かつ、電子タバコ使用時に、発生したエアロゾルが吸引され易い形状に成形する。たとえば、正方形や長方形、または菱形などの平板状としたり、短辺に対して長辺が2~20倍程度となる片状や、短冊状、棒状、繊維状(ストレート状、ウエーブ状などを含む)などとしたり、不定型なフレーク状としたりすることが好ましい。大きさは、ほぼ一定の大きさでもよいし、ランダムな大きさでもよい。ただしいずれも最大長部分が1~20mm程度とすることが好ましい。これは、最大長部分があまり大き過ぎると、カートリッジへの充填の際に大きすぎて取り扱いが面倒になるおそれがあるためである。
【0042】
成形工程で非タバコ植物は切断されることになるが、湿式混合工程1(M4)及び湿式混合工程2(M5)において、非タバコ植物材とエアロゾルフォーマは十分に混合されているから、切断片の一つひとつにおいても、繊維表面の少なくとも一部はエアロゾルフォーマによって被覆された状態となっている。
【0043】
また、充填物の形状はたとえば、粉体、顆粒、ペレット、ストランド、多孔質状などの形態としてもよい。多孔質状にするためには、たとえば、複数の針で乾燥したシートを何度か突き刺すなどすることで形成できる(その他の方法であってもよい)。
【0044】
また、ブロック状に固めてもよいし、若干加水またはオイルを足してペースト状にしてもよい。
【0045】
その後、成形した充填物は、カートリッジに充填することで、電子タバコ本体に使用する非タバコ植物を使用したカートリッジとして提供される。