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  • 特開-モルヒナン誘導体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113976
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】モルヒナン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 489/02 20060101AFI20230809BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230809BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230809BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230809BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20230809BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230809BHJP
【FI】
C07D489/02
A61K31/485
A61P43/00 111
A61P25/04
A61P25/36
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112310
(22)【出願日】2020-06-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療分野研究成果展開事業 産学連携医療イノベーション創出プログラム」、「情動系を調節するオピオイドδ受容体作動薬の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願;平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療研究開発革新基盤創成事業」、「オピオイドδ受容体活性化を機序とする画期的情動調節薬の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124822
【弁理士】
【氏名又は名称】千草 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100146259
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 諭志
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 雅朗
【テーマコード(参考)】
4C086
4H039
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086CB23
4C086GA16
4C086ZA08
4C086ZC39
4C086ZC41
4H039CA10
4H039CB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モルヒナン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】ギ酸等を用いた還元反応による、次の一般式(II)(式中、Rは水素原子等、R及びRは水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基等、R、R、Rは同一又は異なって水素原子等、Rは水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基等、Rは置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基等を表す。)で表されるモルヒナン誘導体を得る製造方法。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基又は置換基を有していてもよいC6-10アリール基を表し、
及びRは水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)又はヒドロキシ保護基を表し、
、R、Rは同一又は異なって水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基を表すか、
とRが結合して置換基を有していてもよいC3-6飽和炭化水素環を表し、RとRが結合して置換基を有していてもよいC3-6飽和炭化水素環又は置換基を有していてもよいC3-6シクロアルケンを表し、
は水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいC6-10アリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)を表し、
は置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、アミノ基を表す。)で表される化合物を、パラジウム触媒及びギ酸若しくはその塩又はギ酸及びトリアルキルアミンの混合物の存在下、溶媒中又は溶媒の非存在下で作用させることによる次の一般式(II)
【化2】
(式中、R~Rは前記と同じものを示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
が水素原子又は置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、Rが水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基又はヒドロキシ保護基である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
が水素原子又はメチル基、Rが置換基を有していてもよいC1-10アルキル基又はヒドロキシ保護基である請求項1又は2のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項4】
が水素原子又はメチル基、Rがメチル基又はシリル系保護基である請求項1~3のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項5】
が水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す)、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5。)である請求項1~4のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項6】
が置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)又は置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、から選択される置換基である請求項1~5のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項7】
が置換基を有していてもよいC1-10アルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)のいずれかの置換基である請求項1~6のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項8】
が置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)である請求項1~7のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基がシクロプロピルメチル基である請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
が置換基を有していてもよいC1-10アルキル基である請求項1~7のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の置換基を有していてもよいC1-10アルキル基がメチル基である請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1記載のパラジウム触媒がパラジウム担持触媒である請求項1~11のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載のパラジウム担持触媒がパラジウム/炭素、水酸化パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナ、パラジウム/硫酸バリウムから選択される請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載のパラジウム担持触媒がパラジウム/炭素、水酸化パラジウム/炭素から選択される請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
請求項12~14記載のパラジウム担持触媒の使用量が一般式(I)の化合物に対し5~100モル%である請求項12~14のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項16】
請求項12~14記載のパラジウム担持触媒の使用量が一般式(I)の化合物に対し10~60モル%である請求項12~14のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1記載のギ酸又はその塩における塩がアンモニア、アミン類又はアルカリ金属との塩である請求項1~16のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載のギ酸又はその塩における塩がギ酸カリウムである請求項15記載の製造方法。
【請求項19】
請求項1記載のギ酸とトリアルキルアミンの混合物におけるトリアルキルアミンがトリエチルアミンである請求項1~16のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載のギ酸とトリエチルアミンの混合物のモル比が10:1~1:1である請求項19記載の製造方法。
【請求項21】
請求項20記載のギ酸とトリエチルアミンの混合物のモル比が1:1である請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
請求項1記載の溶媒がアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、水又はこれらの混液から選択される請求項1~21のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項23】
請求項21記載の溶媒がアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、水又はこれらの混液から選択される請求項21記載の製造方法。
【請求項24】
請求項23記載の溶媒がアルコール系溶媒、水又はこれらの混液から選択される請求項23記載の製造方法。
【請求項25】
請求項1~24記載の製造方法がフローケミストリーによるものである請求項1~24記載の製造方法。
【請求項26】
前記一般式(II)で表される化合物が、下記の番号1~58で示される化合物から選択される化合物又はその塩である請求項1~25のいずれか一項記載の製造方法。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブプレノルフィン骨格を有するモルヒナン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブプレノルフィン(Buprenorphine)は、オピオイド受容体に対するオピオイド部分作動薬であり、鎮痛や、オピオイド依存症の治療に用いられる化合物である。鎮痛剤としてはReckitt & Colman社により初めて上市され、オピオイド依存症の治療薬としては高用量の錠剤がアメリカ食品医薬品局(FDA)の認可を受けている化合物である。
【0003】
【化1】
【0004】
ブプレノルフィンは長期投与による副作用としての依存性が指摘されており、国際条約の向精神薬に関する条約におけるスケジュ-ルIII薬物として指定されており、麻薬及び向精神薬取締法における第二種向精神薬となっている。
現在でも、ブプレノルフィンのこれらの副作用の軽減を目的とした新しい医薬品の創製を目指した創薬研究は活発に行われており、例えば非特許文献1には、いくつかのブプレノルフィン骨格を有する側鎖誘導体の合成例が報告されている。また、非特許文献2にはブプレノルフィンの側鎖誘導体であるBU08028についての報告がされている。
【0005】
【化2】
【0006】
上記のごとく、ブプレノルフィン骨格を有する側鎖誘導体の変換は興味深いメディシナルケミストリ-の対象であり、非特許文献3には側鎖部位をアミドに変換したオピオイドε受容体作動薬のドラッグデザイン及びその合成法について述べられている。
オピオイド受容体にはμ、δ、κそしてεといったいくつかのサブタイプの存在が知られている。μ受容体に対して強い親和性を示すモルヒネは、古くから鎮痛薬として使用されている。しかし、オピオイドμ受容体アゴニストは、μ受容体を介して依存形成、呼吸抑制等の有害事象を引き起こすことが知られている。
一方δ受容体アゴニストも鎮痛作用を有するが、モルヒネで見られる有害事象には関与しないことが知られている。そのため、δ受容体選択的アゴニストは優れた鎮痛剤として期待されている。
【0007】
例えば特許文献1には、次式(A)、で表わされる化合物が報告されている。
【0008】
【化3】
【0009】
これらの誘導体は、高いδ受容体選択性及び鎮痛作用を有することから、鎮痛薬等の薬剤への適用が期待される。
特許文献1には、参考例10に化合物70を水素雰囲気下、パラジウム/炭素で還元し、ブプレノルフィン骨格を有する化合物71を中間体として合成する例が開示されている。
【0010】
【化4】
【0011】
また非特許文献1には、εオピオイドレセプターアゴニスト活性を有する誘導体の合成例が開示されている。その中でスキーム4には二重結合を分子内に有する化合物3C及び3Gを水素雰囲気下、パラジウム/炭素で還元し、単結合に変換したブプレノルフィン骨格を有する化合物の合成例が開示されている。
【0012】
【化5】
【0013】
特許文献1及び非特許文献1に開示されたブプレノルフィン骨格を有する中間体は最終目的物を得るための製造中間体として有用である。
しかし、従来方法では(i)爆発性のある水素ガスを用いる必要があること、(ii)中圧水素雰囲気下で反応を行う必要があり、オートクレーブなどの特殊な反応容器を必要とする場合があること、その場合工業的規模の製造において巨大な反応容器を有さない施設もあり、実施が困難な場合があった。また、(iii)基質にシクロプロピルメチル基がある場合には、副反応としてシクロプロピルメチル基の脱落あるいはシクロプロピル部分の開環が起こり、除去することが困難な副生物が生じる,などの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2013/035833号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2019/189749号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Bioorganic&Medicinal Chemistry,Vol12,p4133-4145,2004
【非特許文献2】Protective Groups in Organic Synthesis,1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、ブプレノルフィン骨格を有するモルヒナン誘導体製造のための中間体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
斯かる実情の下、本発明者らは、前記中間体の製造方法について鋭意検討を行った結果、水素源としてギ酸塩等を用いることにより、前記(I)~(iii)の問題が改善され、工業生産に適用可能な製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の一の態様は、
次の一般式(I)、
【化6】
(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基又は置換基を有していてもよいC6-10アリール基を表し、
及びRは水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)又はヒドロキシ保護基を表し、
、R、Rは同一又は異なって水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基を表すか、
とRが結合して置換基を有していてもよいC3-6飽和炭化水素環を表し、RとRが結合して置換基を有していてもよいC3-6飽和炭化水素環又は置換基を有していてもよいC3-6シクロアルケンを表し、
は水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいC6-10アリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)を表し、
は置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、アミノ基を表す。)で表される化合物を、パラジウム触媒及びギ酸若しくはその塩又はギ酸及びトリアルキルアミンの混合物の存在下、溶媒中又は溶媒の非存在下で作用させることによる次の一般式(II)
【化7】
(式中、R~Rは前記と同じものを示す。)で表される化合物の製造方法に関する。
[2]また本発明は、Rが水素原子又は置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、Rが水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基又はヒドロキシ保護基である前記 [1]記載の製造方法に関する。
[3]また本発明は、Rが水素原子又はメチル基、Rが置換基を有していてもよいC1-10アルキル基又はヒドロキシ保護基である前記[1]又は[2]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[4]また本発明は、Rが水素原子又はメチル基、Rがメチル基又はシリル系保護基である前記[1]~[3]のいずれか一に記載の製造方法。
[5]また本発明は、Rが水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す)、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5。)である前記[1]~[4]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[6]また本発明は、Rが置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)又は置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、から選択される置換基である前記[1]~[5]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[7]また本発明は、Rが置換基を有していてもよいC1-10アルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)のいずれかの置換基である前記[1]~[6]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[8]また本発明は、Rが置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)である前記[1]~[7]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[9]本発明は、前記[8]記載の置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基がシクロプロピルメチル基である前記[8]記載の製造方法に関する。
[10]また本発明は、Rが置換基を有していてもよいC1-10アルキル基である前記[1]~[7]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[11]また本発明は、前記[10]記載の置換基を有していてもよいC1-10アルキル基がメチル基である前記[10]記載の製造方法に関する。
[12]また本発明は、前記[1]記載のパラジウム触媒がパラジウム担持触媒である前記[1]~[11]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[13] また本発明は、前記[12]記載のパラジウム担持触媒がパラジウム/炭素、水酸化パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナ、パラジウム/硫酸バリウムから選択される前記[12]記載の製造方法。に関する
[14] また本発明は、前記[13]記載のパラジウム担持触媒がパラジウム/炭素、水酸化パラジウム/炭素から選択される前記[13]記載の製造方法に関する。
[15] また本発明は、前記[12]~[14]記載のパラジウム担持触媒の使用量が一般式(I)の化合物に対し5~100重量%である前記[12]~[14]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[16] また本発明は、前記[12]~[14]記載のパラジウム担持触媒の使用量が一般式(I)の化合物に対し10~60重量%である前記[12]~[14]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[17] また本発明は、前記[1]記載のギ酸又はその塩における塩がアンモニア、アミン類又はアルカリ金属との塩である前記[1]~[16]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[18]また本発明は、前記[17]記載のギ酸又はその塩における塩がギ酸カリウムである前記[17]記載の製造方法に関する。
[19]また本発明は、前記[1]記載のギ酸とトリアルキルアミンの混合物におけるトリアルキルアミンがトリエチルアミンである前記[1]~[16]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[20]また本発明は、前記[19]記載のギ酸とトリエチルアミンの混合物のモル比が10:1~1:1である前記[19]記載の製造方法に関する。
[21]また本発明は、前記[20]記載のギ酸とトリエチルアミンの混合物のモル比が1:1である前記[20]記載の製造方法に関する。
[22]また本発明は、前記[1]記載の溶媒がアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、水又はこれらの混液から選択される前記[1]~[21]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
[23]また本発明は、前記[21]記載の溶媒がアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、水又はこれらの混液から選択される前記[21]記載の製造方法に関する。
[24]また本発明は、前記[23]記載の溶媒がアルコール系溶媒、水又はこれらの混液から選択される前記[23]記載の製造方法に関する。
[25]また本発明は、前記[1]~[24]記載の製造方法がフローケミストリーによるものである前記[1]~[24]記載の製造方法に関する。
[26]また本発明は、前記一般式(II)で表される化合物が、下記の番号1~58で示される化合物から選択される化合物又はその塩である前記[1]~[25]のいずれか一に記載の製造方法に関する。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1はフローケミストリーにおける反応装置の一例を示したものである。
図2図2はフローケミストリーにおける反応装置を連結した例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明をさらに詳しく説明する。
上記一般式(I)及び(II)で表されるモルヒナン誘導体、該化合物の互変異性体、立体異性体(幾何異性体、光学異性体)、若しくはその塩又はそれらの溶媒和物のうち、好ましくは次のものが挙げられる。また、重水素、13Cなどの安定同位体も含まれる。
【0020】
本明細書において、R~Rで示される置換基を有していてもよいC1-10アルキル基におけるC1-10アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基が挙げられ、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基が挙げられ、さらに好ましくはメチル基が挙げられる。また、これらのアルキル基は重水素化されていてもよく、重水素化されたアルキル基としてはメチル-d3、エチル-1,1-d2、エチル-d5等が挙げられる。
置換基としては段落[0048]に記載のものが挙げられるが、好ましくはハロゲン原子、より好ましくはフッ素原子が挙げられ、フッ素原子で置換されたアルキル基としてはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロメチル基等が挙げられる。
【0021】
、R及びRで示される置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)におけるシクロアルキルアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基等のC3-6シクロアルキル基で置換されたメチル基、エチル基等が挙げられ、好ましくはシクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロブチルメチル基及びシクロブチルエチル基等が挙げられるが、より好ましくはシクロプロピルメチル基である。また、シクロアルキルアルキル基は重水素化されていてもよく、例えば(シクロプロピル-d5)メチル基、シクロプロピルメチル-d2基等が挙げられる。
【0022】
、R~Rで示される置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基におけるC3-6シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはシクロプロピル基が挙げられる。
【0023】
とR又はRとRが結合して形成される置換基を有していてもよいC3-6飽和炭化水素環におけるC3-6飽和炭化水素環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0024】
とRが結合して置換基を有していてもよいC3-6シクロアルケンにおけるC3-6シクロアルケンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
【0025】
、R、R、R及びRで示される置換基を有していてもよいアラルキル基(アリ-ル部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)におけるアラルキル基としては、フェニル基又はナフチル基等で置換されたメチル基、エチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基で置換されたメチル基(ベンジル基)が挙げられる。
【0026】
、R及びRで示される置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)におけるヘテロアリールアルキル基としては、ヘテロアリールの環構成原子数が5~10の(ピリジン-2-イル)メチル基、(ピリジン-3-イル)メチル基、(ピリジン-4-イル)メチル基、2-(ピリジン-2-イル)エチル基、(フラン-2-イル)メチル基、(フラン-3-イル)メチル基、(イミダゾール-2-イル)メチル基、(イミダゾール-4-イル)メチル基、(イミダゾール-5-イル)メチル基、(チアゾール-2-イル)メチル基、(チアゾール-4-イル)メチル基、(チアゾール-5-イル)メチル基、(チオフェン-2-イル)メチル基、2-(チオフェン-2-イル)エチル基又は(1H-テトラゾール-5-イル)メチル基等の単環式ヘテロアリールアルキル基、(キノリン-3-イル)メチル基、(インドール-3-イル)メチル基等の2環式ヘテロアリールアルキル基が挙げられる。
【0027】
、R~Rで示される置換基を有していてもよいC6-10アリ-ル基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられる。
【0028】
及びR示される置換基を有していてもよいヘテロアリール基におけるヘテロアリール基としては環構成原子数が5~10のピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、ピリミジニル基、ピラジニル基又はチアゾリル基等の単環式ヘテロアリール基、キノリル基、インドリル基等の2環式ヘテロアリール基が挙げられる。
【0029】
及びRで示されるヒドロキシ保護基としては、ヒドロキシ保護基としては一般公知のもの(例えば、非特許文献2記載のヒドロキシ保護基)が挙げられ、ベンジル基、4-メトキシベンジル基又はトリチル基等の置換基を有していてもよいアラルキル基;アセチル基等のアシル基;トリメチルシリル基又はtert-ブチルジメチルシリル等の置換基を有するシリル基等が挙げられる。
【0030】
本明細書中で説明される置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基等の直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化メチル基;2-プロペニル基等のC2-6アルケニル基;シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のC3-8シクロアルキル基;フェニル基等のC6-10アリール基;ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基等のヘテロアリール基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;C1-6アルキルアミノ基、ジ-C1-6アルキルアミノ基、アシルアミノ基等の置換基を有していてもよいアミノ基、保護基を有していてもよいアミノ基;ホルミル基、アセチル基、シクロプロピルカルボニル基、ベンゾイル基等のアシル基;ヒドロキシ基、グアニジル基又はシアノ基等が挙げられる。
【0031】
本実施形態における好適なモルヒナン誘導体(II)は、以下の化合物番号1~58のものが挙げられる。
【0032】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0033】
モルヒナン誘導体(IV)の酸付加塩としては、例えば塩酸、硫酸などの鉱酸との塩、ギ酸、シュウ酸、酢酸、クエン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩が挙げられる。
【0034】
斯かる置換基において、より好ましい置換基の組合せとしては、RとしてはC1-10アルキル基、シクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、好ましくはシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)かつRとしては水素原子又はメチル基、Rとしては水素原子、C1-10アルキル基、ヒドロキシ保護基、好ましくはC1-10アルキル基、ヒドロキシ保護基かつR~Rとしては同一又は異なって水素原子、C1-10アルキル基、好ましくは水素原子、Rとしては水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルアルキル基(シクロアルキル部分の炭素原子数は3~6で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す)、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基(ヘテロアリールはN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を環構成原子として含み、アルキレン部分の炭素原子数は1~5。)かつRとしては置換基を有していてもよいアラルキル基(アリール部分の炭素原子数は6~10で、アルキレン部分の炭素原子数は1~5を示す)が挙げられる。
【0035】
一般式(I)で示される化合物は、一般公知の方法、例えば特許文献1、特許文献2あるいは非特許文献1等に記載の方法により製造することができる。
【0036】
一般式(II)で示されるブプレノルフィン骨格を有するモルヒナン誘導体の製造は、一般式(I)の化合物をパラジウム触媒及びギ酸若しくはその塩又はギ酸及びトリアルキルアミンの混合物の存在下、溶媒中又は溶媒の非存在下で作用させることにより行うことができる。
【0037】
【化32】
(式中、R~Rは前記と同じものを示す。)
【0038】
本反応で用いられるパラジウム触媒としては、パラジウム担持触媒を用いることができる。パラジウム担持触媒とは、パラジウムが担体に担持された触媒を意味する。
パラジウム担持触媒としては、パラジウム/炭素、水酸化パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナ、パラジウム/硫酸バリウム等が挙げられ、好ましくはパラジウム/炭素又は水酸化パラジウム/炭素が挙げられる。
本反応で用いられるパラジウム触媒の使用量は、一般式(I)の化合物に対し5~100重量%、好ましくは10~60重量%用いることができる。
【0039】
本反応で用いられるギ酸塩としては、ギ酸リチウム、ギ酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸セシウム等の金属塩、ギ酸アンモニウム等を用いることができ、好ましくはギ酸カリウムである。
【0040】
本反応で用いられるトリアルキルアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルピぺリジン等が挙げられ、好ましくはトリエチルアミンである。
トリアルキルアミンの使用量は、ギ酸に対し10:1~1:1の範囲で用いることができ、好ましくは5:1、より好ましくは1:1である。
【0041】
本反応で用いられる溶媒としては、メタノ-ル、エタノ-ル、2,2,2-トリフルオロエタノ-ル、1-プロパノ-ル、2-プロパノ-ル等のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒及び水等が挙げられ、好ましくはアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、水又はこれらの混液が挙げられ、より好ましくはアルコール系溶媒あるいはその水との混合溶媒が挙げられる。好ましいアルコール系溶媒としてはエタノールが挙げられる。アルコール系溶媒と水の混合比は任意であるが、アルコール/水=50/1~1/1の範囲で用いることができる。
また、無溶媒条件で反応を行うことも可能である。溶媒を使う場合には、溶媒の使用量には特に制限はないが、化合物(I)に対して1から10重量倍の範囲が好ましい。
反応温度としては、0℃~120℃、好ましくは室温~100℃、より好ましくは40℃~90℃、さらに好ましくは50℃~70℃の範囲で行われ、反応時間は5分間から300時間、好ましくは1時間から20時間で終了する。
【0042】
本発明はバッチ法あるいはフローケミストリーを用いて実施することができる。バッチ法は、化合物の製造において反応容器に一回ごとに原料を入れ反応を行い、反応終了後に単離生成して都度反応物を得る方法であり、一般的に行われる方法であり、前記反応条件に基づき行うことができる。
一方、フローケミストリーを用いる方法では、一般公知の方法により行うことができるが、例えば、カラム等の反応装置の一端から出発原料等を連続的に投入し、生成物を他端から連続的に得ることができる。本発明においては、(a)反応装置内に触媒を充填する工程、(b)化合物(I)とギ酸若しくはその塩又はギ酸及びトリアルキルアミンの混合物を溶媒に溶解して溶液を調整する工程、(c)この溶液をパラジウム触媒を充填した反応装置に特定の温度下で送液する工程、(d)溶液を回収し必要に応じて溶媒を留去する工程、により目的化合物(II)を得ることができる。
フローケミストリーに用いることができる反応装置としては市販のものが挙げられ、例えば、カートリッジ、カラム、マイクロリアクター等の反応装置を用いることができる。
また、(b)の溶液は送液ポンプ等を用いて反応装置へ送液することができる。この場合の送液速度は溶液の濃度により適宜調整することができるが、例えば0.1mL/分~200mL/分、好ましくは0.3mL/分~150mL/分の範囲で設定することができる。
また、フローケミストリーを用いた場合の反応温度としては、0℃~120℃、好ましくは室温~100℃、より好ましくは40℃~90℃、さらに好ましくは50℃~70℃の範囲で行われ、反応時間は原料の量やカートリッジ等反応装置の大きさにもよるが、数秒から10時間、好ましくは数秒からから5時間である。
本発明のフローケミストリーは、例えば図1のように示される。また、反応量が多い場合には、反応装置を例えば図2のように連結して実施することも可能である。
【実施例0043】
次に、実施例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例化合物の命名はケンブリッジソフト社製 ChemDraw ver.15を用いて描画した構造式を同ソフトウェア搭載の命名アルゴリズムによって英語名として変換した後に日本語翻訳した。
【実施例0044】
(4R,4aS,6S,7R,7aR,12bS)―N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7-ヒドロキシ-9-メトキシ-1,2,3,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミドの製造
【0045】
【化33】
100Lの反応装置へ、(4R,4aR,7R,7aR,12bS,14S)―N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7-ヒドロキシ-9-メトキシ-1,2,3,4,7,7a-ヘキサヒドロ-7,4a-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-14-カルボキサミド(2.84kg,1当量)、エタノール(29L)と水(29L)を加えた。得られた溶液へ、ギ酸カリウム(9.77kg,20当量)および10%パラジウム/炭素(1.45kg)を加え75―80度で8時間攪拌した。
反応混合物を室温まで冷却後、セライトパッドで濾過し不溶物を除去した。パッドをエタノールで洗浄し、濾液と洗液を合わせ、減圧下にてエタノールを濃縮した。残った水層を酢酸エチル(10L×3回)で抽出した。合わせた有機層を水(10L×2回)で洗浄、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾別後、減圧下で濃縮し、表題化合物粗体(2.81kg)を得た。
得られた粗体をn-ヘプタンおよび酢酸エチルの3:1混合溶液で結晶化し、表題化合物(2.62kg,92%収率,98.03%純度)を白色個体として得た。

得られた化合物のプロトンNMRは特許文献1記載の化合物70(参考例10)の値と一致した。
【実施例0046】
実施例1のギ酸カリウムをギ酸/トリエチルアミンに変更し、同様に以下の実験を行った。 1000Lの反応装置へ、(4R,4aR,7R,7aR,12bS,14S)―N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7-ヒドロキシ-9-メトキシ-1,2,3,4,7,7a-ヘキサヒドロ-7,4a-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-14-カルボキサミド(9.00kg,1当量)、エタノール(202.5L)、テトラヒドロフラン(67.5L)及び水(54.0L)を加えた。得られた溶液へ、ギ酸(16.5kg,20当量)及びトリエチルアミン(36.8kg,20当量)を加え、室温で30分攪拌し、透明な溶液とした。反応混合物に10%パラジウム/炭素(3.64kg)を加え60-70度で2時間攪拌した。
反応混合物を室温まで冷却後、セライトパッドで濾過し不溶物を除去した。パッドをエタノールで洗浄し、濾液と洗液を合わせ、減圧下にて60Lまで濃縮した。残った水層に水(45L)を加え、酢酸エチル(45L×3回)で抽出した。合わせた有機層を8%炭酸水素ナトリウム水溶液(90L)及び水(82L)で洗浄し、有機層を10Lまで濃縮した。酢酸エチル(27L)を加え60-70度で30分攪拌後、n-ヘプタン(81L)をそのままの温度で加えた。得られた混合液を60-70度で30分攪拌し、その後10-20度まで冷却し、6時間攪拌した。混合液中の固体を濾別し、乾燥することで表題化合物粗体(7.95kg,88%収率、98.10%純度)を白色個体として得た。

得られた化合物のプロトンNMRは特許文献1記載の化合物70(参考例10)の値と一致した。
【実施例0047】
実施例2の製造をスローケミストリーを用い以下のように実験を行った。
1000Lの反応装置へ、(4R,4aR,7R,7aR,12bS,14S)―N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7-ヒドロキシ-9-メトキシ-1,2,3,4,7,7a-ヘキサヒドロ-7,4a-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-14-カルボキサミド(9.0kg,1当量)、エタノール(202L)、テトラヒドロフラン(67L)、水(54L)、ギ酸(16.65kg,20当量)及びトリエチルアミン(36.54kg,20当量)を加え、室温で30分攪拌し透明な溶液とした。19個の固定床反応装置にそれぞれ10%パラジウム/炭素(0.18kg,合計3.42kg)を充填した。その後70-80度に加温した各固定相反応装置へ上記混合溶液を流速126mL/分の流速にてそれぞれ3時間ずつ送液した。各反応液を合わせ、60Lまで濃縮した。残った水層に水(45L)を加え、酢酸エチル(45L×2回)で抽出した。合わせた有機層を8%炭酸水素ナトリウム水溶液(90L)及び水(90L)で洗浄し、有機層を10Lまで濃縮した。酢酸エチル(27L)を加え60-70度で30分攪拌後、n-ヘプタン(81L)をそのままの温度で加えた。得られた混合液を65-70度で30分攪拌し、その後10-20度まで冷却し、6時間攪拌した。混合液中の固体を濾別し、乾燥することで表題化合物粗体(8.08kg、90%収率、99.55%純度)を白色固体として得た。

得られた化合物のプロトンNMRは特許文献1記載の化合物70(参考例10)の値と一致した。
図1
図2