(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113982
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20230809BHJP
F16F 9/58 20060101ALI20230809BHJP
F16F 1/12 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
F16F9/32 N
F16F9/58 A
F16F1/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015993
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安河内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 尚喜
【テーマコード(参考)】
3J059
3J069
【Fターム(参考)】
3J059AD02
3J059AD03
3J059AE01
3J059AE04
3J059AE05
3J059BA01
3J059BB01
3J059BD01
3J059CB05
3J059CC03
3J059EA14
3J059GA02
3J069AA53
3J069CC05
3J069CC15
3J069DD48
3J069EE03
(57)【要約】
【課題】製造コストと重量の増加を招くことなくサポートの変形を防止できる緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されたピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿通されるピストンロッド3と、ピストンロッド3の外周に配置されるコイルスプリング5とコイルスプリング5に装着される環状のロアカラー6とを有するリバウンドスプリング4と、ロアカラー6と軸方向で対向してロアカラーのピストン側端を支承する環状のサポート8とを備え、サポート8がピストンロッド3の外周に装着される筒部8aと、環状であって内周が筒部8aの反ピストン側端に接続されるとともにロアカラー6のピストン側端に軸方向で対向してロアカラー6に当接可能な受部8bとを備え、受部8bに対するロアカラー6の偏心を規制する規制部を設けた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に挿入されたピストンと、
前記シリンダ内に移動自在に挿通されるとともに一端が前記ピストンに連結されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周に配置されるコイルスプリングと、前記コイルスプリングのピストン側端に装着されるとともに前記ピストンロッドの外周に嵌合される環状のロアカラーとを有するリバウンドスプリングと、
前記ピストンロッドの外周に装着されるとともに前記ロアカラーと軸方向で対向して前記ロアカラーのピストン側端を支承する環状のサポートとを備え、
前記サポートは、前記ピストンロッドの外周に装着される筒部と、環状であって内周が前記筒部の反ピストン側端に接続されるとともに前記ロアカラーのピストン側端に軸方向で対向して前記ロアカラーに当接可能な受部とを有し、
前記受部に対する前記ロアカラーの偏心を規制する規制部を設けた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記規制部は、前記受部の外周を反ピストン側へ向けて傾斜させて形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記規制部は、前記受部と前記ロアカラーの外周側とを当接させることで前記偏心を規制する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記規制部は、前記受部と前記ロアカラーの内周側とを当接させることで前記偏心を規制する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記規制部は、前記サポートの断面における前記受部と前記筒部とでなす角度を90度より大きくして形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記規制部は、前記サポートの断面における前記受部と前記筒部とでなす角度を90度より大きくするとともに、前記ロアカラーのピストン側端面を前記ピストン側端に外周側へ向かうほど前記ピストンから徐々に遠ざかる傾斜面とすることで形成されており、
前記ロアカラーの前記傾斜面の傾斜角度は、前記サポートの断面における前記角度から90度を差し引いた角度よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記規制部は、前記サポートの断面における前記受部と前記筒部とでなす角度を90度より大きくするとともに、前記ロアカラーのピストン側端面を前記ピストン側端に外周側へ向かうほど前記ピストンから徐々に遠ざかる傾斜面とすることで形成されており、
前記ロアカラーの前記傾斜面の傾斜角度は、前記サポートの断面における前記角度から90度を差し引いた角度よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から緩衝器にあっては、シリンダ端部を封止しピストンロッドを軸支するロッドガイドとピストンロッドの中間部に溶接されてフランジ状の受部を有するサポートとの間に、両端に樹脂カラーを装着したコイルスプリングでなるリバウンドスプリングを介装している。このリバウンドスプリングは、緩衝器の伸長時において互いに接近するロッドガイドとサポートにおける受部との間で挟まれて圧縮せしめられることで、緩衝器の伸長を抑制するばね力を発揮して、緩衝器の最大伸切時の衝撃を緩和するようになっている。
【0003】
そして、たとえば、特許文献1に開示されたリバウンドスプリングにあっては、コイルスプリングと、コイルスプリングの両端内周のそれぞれ嵌合される樹脂製のアッパーカラーとロアカラーとを備えて構成されている。
【0004】
ロアカラーは、コイルスプリングをピストンロッドの外周に固定する役割を持ち、対するアッパーカラーはピストンロッドとの間に隙間を介して臨んでいてピストンロッドに対して変位するようになっている。このように、コイルスプリングは、ピストン側端がロアカラーによって固定されるが反ピストン側端が自由端とされており、アッパーカラーがロッドガイド或いはロッドガイドの下端に設けられるクッションゴムに当接すると収縮してばね力を発揮して緩衝器の伸長を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、
図7に示すように、前述したサポート100は、ピストンロッド101に溶接されて固定される筒部100aと、内周が筒部100aの反ピストン側端に連なるフランジ状の受部100bとを備えて構成されており、受部100bと筒部100aとでなす角度は直角となっている。
【0007】
前述したように、緩衝器の伸長時にリバウンドスプリング102が収縮するとばね力を発揮してロアカラー103を前述のように構成されたサポート100の受部100bに対して押しつけるが、緩衝器に横力が作用してロッド104に横力が作用すると、リバウンドスプリング102がサポート100に対して偏心する場合がある。このようにリバウンドスプリング102がサポート100に対して偏心するとロアカラー103もサポート100に対して径方向へずれてしまう。
【0008】
このようにロアカラー103がサポート100に対して偏心して径方向にずれてしまうと、リバウンドスプリング102が圧縮させられることによって発生するばね力の作用線が受部100bの外周側へずれて受部100bに大きなモーメントが作用するようになる。すると、
図7中の破線で示したようにサポート100の受部100bの外周が筒部側へ向けて曲がるように変形して、ロアカラー103のサポート100に当接するシート部103aやリバウンドスプリング102に嵌合している嵌合部103bを傷めてしまう可能性がある。このようなサポート100の変形を防止するには、サポート100の肉厚を厚くする必要があるが、そうすると、緩衝器の製造コストと重量が増加してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、製造コストと重量の増加を招くことなくサポートの変形を防止できる緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を解決するために、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ1内に摺動自在に挿入されたピストンと、シリンダ内に移動自在に挿通されるとともに一端がピストンに連結されるピストンロッドと、ピストンロッドの外周に配置されるコイルスプリングとコイルスプリングのピストン側端に装着されるとともにピストンロッドの外周に嵌合される環状のロアカラーとを有するリバウンドスプリングと、ピストンロッドの外周に装着されるとともにロアカラーと軸方向で対向してロアカラーのピストン側端を支承する環状のサポートとを備え、サポートがピストンロッドの外周に装着される筒部と、環状であって内周が筒部の反ピストン側端に接続されるとともにロアカラーのピストン側端に軸方向で対向してロアカラーに当接可能な受部とを備え、受部に対するロアカラーの偏心を規制する規制部を設けたことを特徴としている。
【0011】
このように構成された緩衝器によれば、サポートの肉厚を厚くしなくとも強度を向上できるので、緩衝器の伸長時にリバウンドスプリングが収縮しつつサポートに対して偏心してもリバウンドスプリングから受けるばね力でサポートにおける受部の外周が筒部側へ曲がってしまうような変形を抑制できる。
【0012】
また、規制部は、受部の外周を反ピストン側へ向けて傾斜させて形成されてもよい。
【0013】
さらに、規制部は、受部とロアカラーの外周側とを当接させることで偏心を規制してもよい。このように構成された緩衝器では、コイルスプリングから繰り返しばね力を受けてもロアカラーの疲労を軽減できる。
【0014】
そしてさらに、規制部は、受部とロアカラーの内周側とを当接させることで偏心を規制してもよい。このように構成された緩衝器では、受部の変形抑制効果を高める得る。
【0015】
そして、サポートの断面における受部と筒部とでなす角度が90度より大きくして規制部を形成してもよい。
【0016】
また、規制部は、サポートの断面における受部と筒部とでなす角度を90度より大きくするとともに、ロアカラーのピストン側端面を傾斜面とすることで形成されており、、ピストン側端面における傾斜角度がサポートの断面における筒部と受部とでなす角度θから90度を差し引いた角度よりも小さい角度となっていてもよい。このように構成された緩衝器によれば、コイルスプリングから繰り返しばね力を受けてもロアカラーの疲労を軽減できる。
【0017】
また、規制部は、サポートの断面における受部と筒部とでなす角度を90度より大きくするとともに、ロアカラーのピストン側端面を傾斜面とすることで形成されており、ピストン側端面における傾斜角度がサポートの断面における筒部と受部とでなす角度から90度を差し引いた角度よりも大きい角度となっていてもよい。このように構成された緩衝器によれば、受部の変形抑制効果を高める得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の緩衝器によれば、製造コストと重量の増加を招くことなくサポートの変形を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における緩衝器のサポート部分の拡大縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態における緩衝器のリバウンドスプリングの拡大縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態の第1変形例における緩衝器のサポート部分の拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の第2変形例における緩衝器のサポート部分の拡大縦断面図である。
【
図6】(a)は、本発明の一実施の形態の第3変形例における緩衝器のサポート部分の拡大縦断面図である。(b)は、本発明の一実施の形態の第4変形例における緩衝器のサポート部分の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態について説明する。一実施の形態における緩衝器Dは、
図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1に摺動自在に挿入されたピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿通されるとともに一端が前記ピストンに連結されるピストンロッド3と、コイルスプリング5とコイルスプリング5のピストン側端5aに装着されるロアカラー6とを有するリバウンドスプリング4と、ロアカラー6と軸方向で対向してロアカラー6のピストン側端を支承する環状のサポート8とを備えている。
【0021】
以下、各部について詳細に説明する。シリンダ1は、有底筒状とされており、
図1中上端には、環状のロッドガイド9が取り付けられている。このロッドガイド9は、シリンダ1の上端開口部を封止するとともに内周にピストンロッド3が挿通されていて、当該ピストンロッド3を摺動自在に軸支している。また、ロッドガイド9の大気側となる
図1中上方には、ピストンロッド3の外周に摺接するシール部材10が重ねられた状態でシリンダ1に固定されており、ピストンロッド3の外周がシールされている。シール部材10は、シリンダ1とロッドガイド9の外周との間もシールしており、シリンダ1内は液密に封止されている。
【0022】
そして、シリンダ1内は、当該シリンダ1内に挿入されたピストン2によって、
図1中でピストン2の上方の伸側室R1と
図1中でピストン2の下方の圧側室R2とに区画されており、伸側室R1と圧側室R2内には作動油等の液体が充填されている。また、この緩衝器Dの場合、シリンダ1内には、ピストン2よりも下方にフリーピストン11が摺動自在に挿入されており、当該シリンダ1内にフリーピストン11の下方に気体が充填される気室Gが形成されている。
【0023】
ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路2aと、通路2aの途中に設けた減衰力発生要素としての減衰弁2bが設けられている。緩衝器Dが伸長作動して、ピストン2によって伸側室R1が圧縮されると、伸側室R1の液体が通路2aを通過して圧側室R2へ移動する。すると、減衰弁2bが液体の流れに抵抗を与えるので、伸側室R1の圧力が上昇し、伸側室R1と圧側室R2の圧力に差が生じる。また、緩衝器Dが収縮作動する場合には、ピストン2によって圧側室R2が圧縮され、圧側室R2の液体が通路2aを通過して伸側室R1へ移動する。すると、減衰弁2bが液体の流れに抵抗を与えるので、圧側室R2の圧力が上昇し、圧側室R2と伸側室R1の圧力に差を生じる。
【0024】
このように、緩衝器Dの伸長作動時には伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力の差圧がピストン2に作用し、緩衝器Dは、ピストン2の
図1中上方への移動が妨げる減衰力を出力するる。他方、緩衝器Dの収縮作動時には、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも高くなり、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力の差圧がピストン2に作用し、緩衝器Dは、ピストン2の
図1中下方への移動を妨げる減衰力を出力する。
【0025】
なお、この緩衝器Dの場合、伸縮作動を呈すると、シリンダ1内にピストンロッド3が出入りするため、シリンダ1内でピストンロッド3の押しのける体積が変化する。この体積変化は、フリーピストン11がシリンダ1内で上下動して気室Gの体積を変化させることで補償される。このように、緩衝器Dは、所謂、片ロッドの単筒型緩衝器とされているが、シリンダ1外に外筒やタンクを設けて、外筒とシリンダ1との間或いはタンク内に気体と液体を充填したリザーバを形成して、当該リザーバでピストンロッド3の押しのけ容積の変化を補償する復筒型緩衝器とされてもよい。また、緩衝器Dは、ピストンロッド3が伸側室R1と圧側室R2に挿通される両ロッド型の緩衝器とされてもよい。
【0026】
また、ピストン2に設けた減衰弁2bは、この場合、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れと、反対に圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れの両方を許容する絞りとされているが、通路2aを複数設けておき、その一部に伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する減衰弁を設け、残りの全部に圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する減衰弁を設けるようにしてもよい。さらに、通路2aおよび減衰弁2bは、ピストン2以外に設けることも可能であり、たとえば、ピストンロッド3に設けたり、シリンダ1外に設けたりすることも可能である。
【0027】
ピストンロッド3は、
図1中下端となる先端にピストン2が装着されており、
図1中上端がロッドガイド9の内周を通してシリンダ1外に突出されている。また、ピストンロッド3の
図1中下方の外周には、サポート8が溶接によって固定されている。
【0028】
サポート8は、
図1および
図2に示すように、ピストンロッド3の外周に装着される筒部8aと、環状であって内周が筒部8aの反ピストン側端に接続される受部8bとを備えており、パイプ材を軸方向の中間部分で拡径変形させて形成されている。また、サポート8の断面における受部8bと筒部8aとでなす角度θが90度より大きく、110度となっており、受部8bは、外周へ向かうほどピストンロッド3から徐々に離間するように傾斜していて反ピストン側にテーパ状の傾斜面8b1を備えている。このように構成されたサポート8は、筒部8a内にピストンロッド3を挿入して、筒部8aをピストンロッド3の外周の所定位置に嵌合させたのち、筒部8aがプロジェクション溶接によってピストンロッド3の外周に装着されることで、ピストンロッド3に固定される。本実施の形態の緩衝器Dでは、サポート8の断面における受部8bと筒部8aとでなす角度θが90度より大きくすることで、サポート8の受部8bに対するロアカラー6の偏心を規制する規制部を形成している。なお、規制部を受部8bと筒部8aとでなす角度θを90度より大きな角度とすることで形成する場合、前記角度θは、任意の90度よりも大きな角度であればよいが、ロアカラー6を支持する観点からは、角度θから90度を差し引いた角度が10度から35度までの範囲に設定されるのが好ましい。
【0029】
リバウンドスプリング4は、前述した通り、内方にピストンロッド3が挿通されてピストンロッド3の外周に配置されるコイルスプリング5と、コイルスプリング5の
図1中下端となるピストン側端5aに装着されてピストンロッド3の外周に嵌合される環状のロアカラー6と、コイルスプリング5の
図1中上端となる反ピストン側端に装着されてピストンロッド3の外周に配置される環状のアッパーカラー7とを備えて構成されている。
【0030】
コイルスプリング5は、
図1および
図3に示すように、下端のピストン側端5aに座巻部を備えるとともに、
図1および
図3中の上端の反ピストン側端5bに座巻部を備えている。
【0031】
ロアカラー6は、この場合、硬質の樹脂材料で形成され、
図3に示すように、環状のシート部6aと、シート部6aのコイルスプリング側端の内周側から立ち上がり外径がシート部6aより小径な筒状の嵌合部6bと、シート部6aの内周に設けた複数の突条6cとを備えて構成されている。このように構成されたロアカラー6は、コイルスプリング5のピストン側端5aの内周に嵌合部6bを圧入することでコイルスプリング5に装着される。なお、ロアカラー6の嵌合部6bの先端は外径が先細りの形状となっていて、当該嵌合部6bをコイルスプリング5のピストン側端5a内にスムーズに挿入できるので、ロアカラー6のコイルスプリング5への装着作業が容易になる。
【0032】
ロアカラー6のピストン側端面6dとなるシート部6aの
図2中下端面は、外周側へ向かうほどピストン2から徐々に遠ざかる傾斜面となっており、本実施の形態の緩衝器Dで傾斜面の傾斜角度αは、サポート8の断面における筒部8aと受部8bとでなす角度θから90度を差し引いた20度よりも小さい角度となっている。
【0033】
なお、突条6cは、この実施の形態では、ロアカラー6の内周に周方向に等間隔を持って3つ設けられており、内周に挿入されたピストンロッド3の外周に緊迫力をもって当接してロアカラー6をピストンロッド3の外周に固定する。なお、突条6cの設置数は、三つ以上であればよく、任意に変更できる。
また、このロアカラー6は、傾斜面でなるピストン側端面6dを前記したサポート8の受部8bに当接させていて、リバウンドスプリング4のピストンロッド3に対する
図1中下方への移動が規制されている。
【0034】
ロアカラー6のピストン側端面6dにおける傾斜角度αは、サポート8の断面における筒部8aと受部8bとでなす角度θから90度を差し引いた20度よりも小さい角度なので、何ら荷重が作用しない状態では、ロアカラー6のピストン側端面6dの外周がサポート8の受部8bに線接触している。
【0035】
アッパーカラー7は、この場合、硬質の繊維強化樹脂で形成され、
図3に示すように、環状のシート部7aと、シート部7aのコイルスプリング側端の内周側から下方へ向けた立ち上がり外径がシート部7aより小径な筒状の嵌合部7bと、シート部7aの内周に内方へ向けて設けた複数の環状の突起7cとを備えて構成されている。
【0036】
このように構成されたアッパーカラー7は、コイルスプリング5の反ピストン側端5bの座巻の内周に嵌合部7bを圧入することでコイルスプリング5に装着される。このアッパーカラー7の嵌合部7bの先端の外径が先細りとなる形状となっており、当該嵌合部7bをコイルスプリング5の反ピストン側端5b内にスムーズに挿入できるので、アッパーカラー7のコイルスプリング5への装着作業が容易になる。
【0037】
そして、前述のように構成された緩衝器Dでは、ピストン2が
図1中上方へ移動する伸長作動時に、アッパーカラー7がロッドガイド9に当接して、コイルスプリング5が圧縮されると、コイルスプリング5がピストン2の
図1中上方への移動を妨げるばね力を発生する。また、緩衝器Dは、伸長作動時には、上述したように伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力に差を生じさせて、ピストン2の
図1中上方への移動を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dが伸長作動時にリバウンドスプリング4が圧縮される状況では、緩衝器Dが発揮する力は、リバウンドスプリング4が発生するピストン2の移動を妨げるばね力と、前記圧力差によってピストン2の移動を妨げる減衰力の総和となる。
【0038】
このように、緩衝器Dが伸長作動して、アッパーカラー7がロッドガイド9に当接するとコイルスプリング5が収縮してばね力を発生するので、ロアカラー6が当該ばね力によってサポート8の受部8bに押圧される。
【0039】
サポート8の断面において筒部8aと受部8bとのなす角度θが90度よりも大きくなっているので、パイプ材を途中で曲げ成型して形成されるサポート8における内部応力が低減されてサポート8の耐久性が向上する。また、サポート8の断面において筒部8aと受部8bとのなす角度θが90度よりも大きく受部8bが皿ばね状の形状となっており、受部8bを筒部8a側へ向けて拡径させるような荷重に対するサポート8の強度は、前記角度θが90度である場合に比較して格段に高くなる。よって、サポート8の肉厚を厚くしなくともサポート8における耐久性および強度が向上するので、コイルスプリング5からばね力を受けた場合に受部8bが拡径する変形が抑制されて、従来のサポート100のように受部8bの外周が筒部8a側へ向けて曲がるような変形を阻止できる。
【0040】
以上のように、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されたピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿通されるとともに一端がピストン2に連結されるピストンロッド3と、ピストンロッド3の外周に配置されるコイルスプリング5とコイルスプリング5のピストン側端5aに装着されるとともにピストンロッド3の外周に嵌合される環状のロアカラー6とを有するリバウンドスプリング4と、ピストンロッド3の外周に装着されるとともにロアカラー6と軸方向で対向してロアカラーのピストン側端を支承する環状のサポート8とを備え、サポート8がピストンロッド3の外周に装着される筒部8aと、環状であって内周が筒部8aの反ピストン側端に接続されるとともにロアカラー6のピストン側端に軸方向で対向してロアカラー6に当接可能な受部8bとを備え、受部8bに対するロアカラー6の偏心を規制する規制部が設けられている。
【0041】
このように構成された緩衝器Dによれば、規制部によってロアカラー6がサポート8に対して偏心が規制されて径方向へずれないので、リバウンドスプリング4の圧縮時に受部8bに大きなモーメントが作用するのを防止できる。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、サポート8の肉厚を厚くしなくとも緩衝器Dの伸長時にリバウンドスプリング4から受けるばね力で受部8bの外周が筒部8a側へ曲がってしまうような変形を抑制できる。以上より、本実施の形態の緩衝器Dによれば、サポート8の肉厚を厚くしなくともサポート8の耐久性と強度を向上させて曲げ変形を抑制できるので、製造コストの増加および重量の増加を招くことなくサポート8の変形を防止できる。
【0042】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、サポート8の断面における受部8bと筒部8aとでなす角度を90度より大きくして規制部を形成している。このように構成された緩衝器Dによれば、サポート8の断面における受部8bと筒部8aとでなす角度を90度より大きくすることでサポート8の強度を向上できるとともに受部8bに対するロアカラー6の偏心を規制する規制部を形成できるので、製造コストを低減できる。
【0043】
ここで、従来のサポート100でロアカラー6を支持すると、嵌合部6bがコイルスプリング5のピストン側端5aの座巻部分の内周に嵌合されていて、嵌合部6bには常に縮径方向への緊迫力が作用し、リバウンドスプリング4のばね力を受けるとサポート100の受部100bも曲げ変形してロアカラー6のシート部6aの外周を内周に対してピストン2側に向けて曲げようとするモーメントが作用する。よって、従来のサポート100の構造では、コイルスプリング5から縮径方向の緊迫力を受けている嵌合部6bと、コイルスプリング5が圧縮されることで発生するばね力を受けることによってモーメントを受けるシート部6aとの間に大きな引張力が作用してロアカラー6を疲労させてしまう。ところが、本実施の形態の緩衝器Dでは、サポート8の断面における受部8bと筒部8aとでなす角度θを90度より大きくするとともに、ロアカラー6のピストン側端面6dを傾斜面として規制部を形成し、ピストン側端面6dにおける傾斜角度αがサポート8の断面における筒部8aと受部8bとでなす角度θから90度を差し引いた角度よりも小さい角度となっている。よって、ロアカラー6のピストン側端面6dの外周がサポート8の受部8bに当接している。このように構成された緩衝器Dでは、リバウンドスプリング4からロアカラー6のシート部6aに軸方向の荷重が作用すると、ロアカラー6は、シート部6aの内周側が受部8bに接近するようなモーメントを受けるので、嵌合部6bがコイルスプリング5から受ける緊迫力によって嵌合部6bとシート部6aとの間に作用する引張力を当該モーメントによって緩和できる。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、コイルスプリング5から繰り返しばね力を受けてもロアカラー6の疲労を軽減できる。なお、図示したところでは、ロアカラー6のピストン側端面6dをテーパ面とすることで、傾斜面としているが、このようにしてもロアカラー6のピストン側端6dの外周がサポート8の受部8bに当接するように設定できれば傾斜面はテーパ面以外にも湾曲面とされてもよい。
【0044】
また、
図4に示すように、サポート8の断面における受部8bと筒部8aとでなす角度θを90度より大きくするとともに、ロアカラー6のピストン側端面6dを傾斜面として規制部を形成し、ピストン側端面6dにおける傾斜角度αがサポート8の断面における筒部8aと受部8bとでなす角度θから90度を差し引いた角度よりも大きくする場合、ロアカラー6のピストン側端面6dの内周がサポート8の受部8bに当接する構造となる。このように構成された緩衝器Dでは、コイルスプリング5が圧縮されることによって発生するばね力をロアカラー6の内周を通じてサポート8の受部8bに伝達するので、リバウンドスプリング4から受ける荷重の作用線は、サポート8の筒部8aの肉厚或いは筒部8aの外周の近傍を通ることになり、受部8bの外周を筒部8a側へ向けて曲げるモーメントを非常に少なくでき、受部8bの変形抑制効果を高める得る。
【0045】
なお、サポート8の断面における受部8bと筒部8aとでなす角度θを90度より大きくするとともに、ロアカラー6のピストン側端面6dを傾斜面として規制部を形成し、ピストン側端面6dにおける傾斜角度αをサポート8の断面における筒部8aと受部8bとでなす角度θから90度を差し引いた角度と等しくする場合、コイルスプリング5から繰り返しばね力を受けてもロアカラー6の疲労を軽減でき、受部8bの変形抑制効果を高める得る。ただし、このように、傾斜角度αと角度θから90度を差し引いた角度とを等しくするには、ロアカラー6とサポート8の寸法管理を厳密にする必要がある。よって、ロアカラー6とサポート8の量産性を考慮すると、ロアカラー6の疲労を軽減したい場合には、傾斜角度αと角度θから90度を差し引いた角度とを等しくするよりも、傾斜角度αを角度θから90度を差し引いた角度よりも小さい角度とする方が製造を容易とできる点で優れ、受部8bの変形抑制効果を高めたい場合には、傾斜角度αと角度θから90度を差し引いた角度とを等しくするよりも、傾斜角度αを角度θから90度を差し引いた角度よりも大きな角度とする方が製造を容易とできる点で優れる。
【0046】
前述したところでは、ロアカラー6のピストン側端面6dを傾斜面としているが、
図5に示すように、ピストン側端面6dを階段状にして、シート部6aの外径が段階的に大きくなるようにしてもよい。このようにピストン側端面6dを階段状にすると、段部の縁を通る仮想面Vは傾斜面となる。よって、仮想面Vの傾斜角度をサポート8の断面における筒部8aと受部8bとでなす角度θから90度を差し引いた角度よりも小さくすれば、シート部6aの外周側が受部8bに当接するので、ロアカラー6の疲労を軽減できる。また、仮想面Vの傾斜角度をサポート8の断面における筒部8aと受部8bとでなす角度θから90度を差し引いた角度よりも大きくすれば、シート部6aの内周側が受部8bに当接するので、受部8bの変形抑制効果を高め得る。このように、ロアカラー6のピストン側端面6dを傾斜面とする範疇には、ロアカラー6のピストン側端面6dを階段状にして段部の縁を通る仮想面Vを傾斜面とすることも含まれる。
【0047】
なお、ロアカラー6におけるシート部6aのピストン側端面6dは、傾斜面ではなく、傾斜しない面或いは
図2或いは
図4に示した傾斜面とは逆向きに傾斜する逆傾斜の傾斜面となっていてもよく、この場合も、ロアカラー6のピストン側端面6dの外周がサポート8の受部8bに当接するのでコイルスプリング5から繰り返しばね力を受けてもロアカラー6の疲労を軽減できる。
【0048】
また、
図6(a)に示すように、サポート8の断面において、受部8bの外周部8b2のみを傾斜させて、当該受部8bの外周部8b2と筒部8aとでなす角度を90度より大きくして、ロアカラー6の受部8bに対する偏心を規制する規制部を形成してもよい。さらには、
図6(b)に示すように、受部8bの外周部8b2を折り返した形状として、当該受部8bの外周部8b3と筒部8aとでなす角度を180度以上に設定して、外周部8b3をロアカラー6のシート部6aの外周に対向させて、ロアカラー6の受部8bに対する偏心を規制する規制部を形成してもよい。
【0049】
また、ロアカラー6のピストン側端面6dに受部8bとの打音を抑制する等の目的で、溝や凹部を設けられていてもよい。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・シリンダ、2・・・ピストン、3・・・ピストンロッド、4・・・リバウンドスプリング、5・・・コイルスプリング、6・・・ロアカラー、6d・・・ロアカラーのピストン側端面、8・・・サポート、8a・・・筒部、8b・・・受部(規制部)、8b2,8b3・・・受部の外周部(規制部)