(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113996
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】樹脂封止装置及び樹脂封止方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/78 20060101AFI20230809BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20230809BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20230809BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B29C45/78
H01L21/56 R
B29C45/14
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016018
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 栄二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晴久
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5F061
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AD03
4F202AD05
4F202AH33
4F202AH37
4F202AR06
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CN01
4F202CQ01
4F206AA36
4F206AD03
4F206AD05
4F206AG03
4F206AH33
4F206AH37
4F206AR06
4F206JA02
4F206JB12
4F206JB17
4F206JL02
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP14
4F206JQ81
4F206JQ88
5F061AA01
5F061CA21
5F061CA22
5F061DB01
5F061DE06
(57)【要約】
【課題】一定周期の自動運転で継続する場合に、封止金型の表面温度が徐々に低下して成形不良が生じることの防止が可能な樹脂封止装置及び樹脂封止方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂封止方法は、封止時に樹脂Rを適切に熱硬化させる温度として設定される封止金型202の温度を通常設定温度とし、通常設定温度よりも所定温度高い温度として設定される封止金型202の温度を切替設定温度として、封止金型202へワークW及び樹脂Rを搬入して封止した後に成形品Wpとして搬出する単位工程中において、上型204及び下型206の少なくとも一方を所定の開始タイミングで通常設定温度から切替設定温度に設定温度を高く変更して封止金型202の温度を制御し、所定の終了タイミングで切替設定温度から通常設定温度に設定温度を変更して封止金型202の温度を制御する構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型を備える封止金型を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止方法であって、
封止時に前記樹脂を適切に熱硬化させる温度として設定される前記封止金型の温度を通常設定温度とし、前記通常設定温度よりも所定温度高い温度として設定される前記封止金型の温度を切替設定温度として、
前記封止金型へ前記ワーク及び前記樹脂を搬入して封止した後に前記成形品として搬出する単位工程中において、前記上型及び前記下型の少なくとも一方を所定の開始タイミングで前記通常設定温度から前記切替設定温度に設定温度を高く変更して前記封止金型の温度を制御し、所定の終了タイミングで前記切替設定温度から前記通常設定温度に設定温度を変更して前記封止金型の温度を制御すること
を特徴とする樹脂封止方法。
【請求項2】
前記開始タイミングを、前記樹脂を前記封止金型の所定位置にセットする時点に設定すること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止方法。
【請求項3】
前記終了タイミングを、前記樹脂が所定の熱硬化状態となる時点に設定すること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止方法。
【請求項4】
前記所定温度を、1℃~20℃の範囲から選択される温度に設定すること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止方法。
【請求項5】
前記切替設定温度は、前記上型における設定温度を第1切替設定温度とし、前記下型における設定温度を第2切替設定温度としてそれぞれ設定される構成であり、
前記第1切替設定温度が前記第2切替設定温度よりも高い温度に設定されていること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止方法。
【請求項6】
前記開始タイミングは、前記上型における設定タイミングを第1開始タイミングとし、前記下型における設定タイミングを第2開始タイミングとしてそれぞれ設定される構成であり、
前記終了タイミングは、前記上型における設定タイミングを第1終了タイミングとし、前記下型における設定タイミングを第2終了タイミングとしてそれぞれ設定される構成であり、
前記第1開始タイミングから前記第1終了タイミングまでの時間が、前記第2開始タイミングから前記第2終了タイミングまでの時間よりも長い時間に設定されていること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止方法。
【請求項7】
上型及び下型を備える封止金型を用いて、樹脂を加熱及び加圧して成形品に加工する樹脂成形方法であって、
封止時に前記樹脂を適切に熱硬化させる温度として設定される前記封止金型の温度を通常設定温度とし、前記通常設定温度よりも所定温度高い温度として設定される前記封止金型の温度を切替設定温度として、
前記封止金型へ前記樹脂を搬入して加工した後に前記成形品として搬出する単位工程中において、前記上型及び前記下型の少なくとも一方を所定の開始タイミングで前記通常設定温度から前記切替設定温度に設定温度を高く変更して前記封止金型の温度を制御し、所定の終了タイミングで前記切替設定温度から前記通常設定温度に設定温度を変更して前記封止金型の温度を制御すること
を特徴とする樹脂成形方法。
【請求項8】
上型及び下型を備える封止金型を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、
前記封止金型の温度を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
封止時に前記樹脂を適切に熱硬化させる温度として設定される前記封止金型の温度を通常設定温度とし、前記通常設定温度よりも所定温度高い温度として設定される前記封止金型の温度を切替設定温度として、
前記封止金型へ前記ワーク及び前記樹脂を搬入して封止した後に前記成形品として搬出する単位工程中において、前記上型及び前記下型の少なくとも一方を所定の開始タイミングで前記通常設定温度から前記切替設定温度に設定温度を高く変更して前記封止金型の温度を制御し、所定の終了タイミングで前記切替設定温度から前記通常設定温度に設定温度を変更して前記封止金型の温度を制御すること
を特徴とする樹脂封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止装置及び樹脂封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に電子部品が搭載されたワークを封止樹脂(以下、単に「樹脂」と称する場合がある)により封止して成形品に加工する樹脂封止装置及び樹脂封止方法の例として、トランスファ成形方式や圧縮成形方式によるものが知られている。
【0003】
トランスファ成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる二個の上下型の封止領域(キャビティ)に所定量の樹脂を供給するポットを設け、当該各封止領域に対応する位置にワークをそれぞれ配置して、上型と下型とでクランプしポットからキャビティに樹脂を流し込む操作によって樹脂封止する技術である(特許文献1:特開2020-102601号公報参照)。また、圧縮成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる封止領域(キャビティ)に所定量の樹脂を供給すると共に当該封止領域にワークを配置して、上型と下型とでクランプする操作によって樹脂封止する技術である。一例として、上型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、ワーク上の中心位置に一括して樹脂を供給して成形する技術等が知られている。一方、下型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、当該キャビティを含む金型面を覆うフィルム及び樹脂を供給して成形する技術等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来の樹脂封止装置において、封止金型の表面温度は、例えば100℃~200℃の間で均一となるように制御(調整)され、また、封止に用いられる樹脂は、例えば、30℃以下となるように管理される構成が一般的であった。そのため、樹脂封止を行う成形動作を一定周期の自動運転で継続する場合、封止金型に収容される樹脂の温度等の影響によって、当該封止金型の表面温度(特に、樹脂収容部周辺の温度)が徐々に低下して、樹脂封止のために必要な融点温度が確保できず、成形不良(樹脂硬化不足、未充填等)が生じてしまうことが課題となっていた。
【0006】
このような課題に対して、特許文献1に例示される樹脂封止装置においては、カルブロックやキャビティ周辺にそれぞれ温度センサを備えた装置構成としつつ、封止金型に樹脂を収容しない状態での温度情報取得や、封止金型を加熱しない状態での温度情報取得等のプロセスを実施したうえで、封止金型の温度低下を防止しようとする技術が開示されている。しかしながら、装置構造が複雑化し、コストが上昇してしまう課題が生じ得る。さらに、事前に温度情報を取得するプロセスの実施に手間と時間がかかり、生産効率が低下してしまう課題が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、簡素な構成によって、樹脂封止を行う成形動作を一定周期の自動運転で継続する場合にも、封止金型の表面温度が徐々に低下して成形不良が生じることの防止が可能な樹脂封止装置及び樹脂封止方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本発明に係る樹脂封止方法は、上型及び下型を備える封止金型を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止方法であって、封止時に前記樹脂を適切に熱硬化させる温度として設定される前記封止金型の温度を通常設定温度とし、前記通常設定温度よりも所定温度高い温度として設定される前記封止金型の温度を切替設定温度として、前記封止金型へ前記ワーク及び前記樹脂を搬入して封止した後に前記成形品として搬出する単位工程中において、前記上型及び前記下型の少なくとも一方を所定の開始タイミングで前記通常設定温度から前記切替設定温度に設定温度を高く変更して前記封止金型の温度を制御し、所定の終了タイミングで前記切替設定温度から前記通常設定温度に設定温度を変更して前記封止金型の温度を制御することを要件とする。
【0010】
これによれば、複雑な装置構造や複雑な実施工程によることなく、成形動作を一定周期の自動運転で継続する場合において封止金型の表面温度が徐々に低下してしまうことの防止が可能となる。したがって、樹脂封止を行う際に、封止金型における適切な融点温度の確保が可能となるため、温度不足による成形不良の抑制を図ることができる。また、装置停止の原因となり得る異常発生を低減できるため、稼働率の向上を図ることがきる。
【0011】
また、前記開始タイミングを、前記樹脂を前記封止金型の所定位置にセットする時点に設定することが好ましい。また、前記終了タイミングを、前記樹脂が所定の熱硬化状態となる時点に設定することが好ましい。これによれば、封止金型における表面温度の低下を、効果的に抑制することができる。
【0012】
また、前記所定温度を、1℃~20℃の範囲から選択される温度に設定することが好ましい。これによれば、樹脂の材質や量、あるいは、封止金型の温度低下傾向等に応じて、最適な設定を行うことができる。したがって、成形品質をより良好に保つことができる。
【0013】
また、前記切替設定温度は、前記上型における設定温度を第1切替設定温度とし、前記下型における設定温度を第2切替設定温度としてそれぞれ設定される構成であり、前記第1切替設定温度が前記第2切替設定温度よりも高い温度に設定されていることことが好ましい。また、前記開始タイミングは、前記上型における設定タイミングを第1開始タイミングとし、前記下型における設定タイミングを第2開始タイミングとしてそれぞれ設定される構成であり、前記終了タイミングは、前記上型における設定タイミングを第1終了タイミングとし、前記下型における設定タイミングを第2終了タイミングとしてそれぞれ設定される構成であり、前記第1開始タイミングから前記第1終了タイミングまでの時間が、前記第2開始タイミングから前記第2終了タイミングまでの時間よりも長い時間に設定されていることが好ましい。これらによれば、上型における温度低下の抑制効果を下型より高めることが可能となる。したがって、1サイクル中において大きな温度低下が生じ易い上型において、その抑制を図ることができる。さらに、上型及び下型のそれぞれにおいて、より成形に適した封止金型の表面温度となるように個別調整が可能となり、成形品質を一層、向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る樹脂封止装置は、上型及び下型を備える封止金型を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、前記封止金型の温度を制御する制御部を備え、前記制御部は、封止時に前記樹脂を適切に熱硬化させる温度として設定される前記封止金型の温度を通常設定温度とし、前記通常設定温度よりも所定温度高い温度として設定される前記封止金型の温度を切替設定温度として、前記封止金型へ前記ワーク及び前記樹脂を搬入して封止した後に前記成形品として搬出する単位工程中において、前記上型及び前記下型の少なくとも一方を所定の開始タイミングで前記通常設定温度から前記切替設定温度に設定温度を高く変更して前記封止金型の温度を制御し、所定の終了タイミングで前記切替設定温度から前記通常設定温度に設定温度を変更して前記封止金型の温度を制御することを要件とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡素な構成によって、樹脂封止を行う成形動作を一定周期の自動運転で継続する場合にも、封止金型の表面温度が徐々に低下して成形不良が生じることの防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る樹脂封止装置の例を示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線位置における側面図である。
【
図3】
図1の樹脂封止装置の封止金型の例を示す正面断面図である。
【
図4】本発明の実施形態及び従来の実施形態に係る下型の温度低下傾向を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施形態及び従来の実施形態に係る上型の温度低下傾向を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る封止金型202と当該封止金型202を備える樹脂封止装置1の例を示す平面図(概略図)である。また、
図2は、
図1におけるII-II線位置での側面図である(一部の機構については不図示)。尚、説明の便宜上、図中において矢印により樹脂封止装置1における前後、左右、上下の方向を説明する場合がある。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
本実施形態に係る樹脂封止装置1は、上型204及び下型206を備える封止金型202を用いて、ワーク(被成形品)Wを樹脂封止する装置である。以下、樹脂封止装置1として、下型206でワークWを保持し、対応する配置で上型204に設けられたキャビティ208(金型面204aを一部含む)をリリースフィルム(以下、単に「フィルム」と称する場合がある)Fで覆って、上型204と下型206とのクランプ動作を行い、ワークWを樹脂Rで封止するトランスファ成形方式による樹脂封止装置及び方法を例に挙げて説明する。但し、これに限定されるものではなく、キャビティ208は、上型204のみに、または下型206及び上型204の両方に設けてもよい。また、フィルムFも必須のものではない。
【0019】
先ず、成形対象であるワークWは、基材Waに一つもしくは複数の電子部品Wbが所定配置で搭載された構成を備えている。より具体的には、基材Waの例として、長方形状、円形状等に形成された樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、キャリアプレート、リードフレーム、ウェハ等の板状部材が挙げられる。また、電子部品Wbの例として、半導体チップ、MEMSチップ、受動素子、放熱板、導電部材、スペーサ、及びこれらの組合せ等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0020】
基材Waに電子部品Wbを搭載する方法の例として、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装等による搭載方法がある。あるいは、樹脂封止後に成形品Wpから基材(ガラス製や金属製のキャリアプレート)Waを剥離する構成の場合には、熱剥離性を有する粘着テープや紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂を用いて電子部品Wbを貼付ける方法もある。
【0021】
一方、樹脂Rの例として、タブレット状(一例として、円柱状)の熱硬化性樹脂(例えば、フィラー含有のエポキシ系樹脂等)が用いられる。尚、樹脂Rは、上記の状態に限定されるものではなく、円柱状以外の形状であってもよく、エポキシ系熱硬化性樹脂以外の樹脂であってもよい。
【0022】
また、フィルムFの例として、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れたフィルム材、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。本実施形態においては、フィルムFとしてロール状のフィルムが用いられる。尚、他の例として、短冊状のフィルムを用いる構成としてもよい(不図示)。
【0023】
以上、一般的なワークW及び樹脂Rを用いる場合を説明したが、ワークWが無く、樹脂Rのみで所定の形状に成形する場合もある(その場合、樹脂成形装置及び方法と称する)。
【0024】
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1の概要について説明する。
図1に示すように、樹脂封止装置1は、樹脂封止対象のワークW及び樹脂Rの供給を主に行う供給ユニット100A、ワークWを樹脂封止して成形品Wpへの加工を主に行うプレスユニット100B、樹脂封止後の成形品Wpの収納を主に行う収納ユニット100Cを主要構成として備えている。尚、各ユニットにおける各機構の制御を行う制御部150が供給ユニット100Aに配置されているが、他のユニットに配置される構成としてもよい。
【0025】
また、樹脂封止装置1は、各ユニット間を移動して、ワークW、樹脂R、及び成形品Wpの搬送を行う搬送機構100Dを備えている。一例として、搬送機構100Dは、ワークW及び樹脂Rをプレスユニット100Bへ搬入するインローダ122、成形品Wpをプレスユニット100Bから搬出するアウトローダ124、並びに、インローダ122及びアウトローダ124に共用のガイドレール126を備えている。尚、搬送機構100Dは、上記の構成に限定されるものではなく、適宜、公知のピックアップ等を併用する構成としてもよい(不図示)。また、ローダを備える構成に代えて、多関節ロボットを備える構成としてもよい(不図示)。
【0026】
ここで、インローダ122は、供給ユニット100AにおいてワークW及び樹脂Rを受け取って、プレスユニット100Bへ搬送する作用をなす。インローダ122の構成例として、左右方向に沿って二列並設されてそれぞれ一個のワークWを保持可能なワーク保持部122A、122Bが設けられている。また、二列のワーク保持部122A、122Bの間の位置に、複数個(一例として、四個の場合を例に挙げているが、これに限定されるものではなく、あるいは、単数でもよい)の樹脂Rを前後方向に沿って保持可能な樹脂保持部122Cが設けられている。尚、ワーク保持部122A、122B、及び樹脂保持部122Cには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0027】
本実施形態に係るインローダ122は、左右方向及び前後方向に移動して、ワークW及び樹脂Rを封止金型202内へ搬入し、下型206の所定位置に載置する構成としている。但し、これに限定されるものではなく、左右方向に移動してユニット間の搬送を行うローダと、前後方向に移動して封止金型202への搬入を行うローダとを別個に備える構成としてもよい(不図示)。
【0028】
また、アウトローダ124は、プレスユニット100Bにおいて成形品Wp(カル部、ランナ部等の不要樹脂部分を含む)を受け取って、収納ユニット100Cへ搬送する作用をなす。アウトローダ124の構成例として、左右方向に二列並設されてそれぞれ一個の成形品Wpを保持可能な成形品保持部124A、124Bが設けられている。尚、成形品保持部124A、124Bには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0029】
本実施形態に係るアウトローダ124は、左右方向及び前後方向に移動して、成形品Wpを封止金型202外へ搬出し、成形品テーブル114へ載置する構成としている。但し、これに限定されるものではなく、前後方向に移動して封止金型202からの搬出を行うローダと、左右方向に移動してユニット間の搬送を行うローダとを別個に備える構成としてもよい(不図示)。
【0030】
尚、樹脂封止装置1は、ユニットの構成を変えることによって、全体の構成態様を変更することができる。例えば、
図1に示す構成は、プレスユニット100Bを二台設置した例であるが、プレスユニット100Bを一台のみ設置する、あるいは三台以上設置する構成等も可能である。また、他のユニットを追加設置する構成等も可能である(いずれも不図示)。
【0031】
(供給ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備える供給ユニット100Aについて説明する。
【0032】
供給ユニット100Aは、一例として、ワークWの収容に用いられるワークストッカ102と、ワークWを載置するワークテーブル104とを備えている。尚、ワークストッカ102には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられ、複数個のワークWを一括して収容可能となっている。この構成により、公知のプッシャ等(不図示)を用いてワークWがワークストッカ102から取り出され、ワークテーブル104上に載置される(一例として、二個一組のワークWが並列で載置される)。次いで、ワークテーブル104上に載置されたワークWが、インローダ122によって保持されてプレスユニット100Bへ搬送される。
【0033】
また、供給ユニット100A(他のユニットとしてもよい)は、ワークテーブル104の側方位置において、樹脂Rを供給する樹脂供給機構140を備えている。一例として、樹脂供給機構140は、ホッパ、フィーダ等を有して樹脂Rを供給する供給部142と、エレベータ等の移送機構を有して供給部142から供給された複数個の樹脂Rを所定位置に保持する受渡し部144とを備えている。この構成により、受渡し部144に保持された複数個の樹脂Rが、インローダ122によって保持されてプレスユニット100Bへ搬送される。
【0034】
(プレスユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるプレスユニット100Bについて説明する。ここで、
図3は、樹脂封止装置1の封止金型202の正面断面図(概略)である。
【0035】
プレスユニット100Bは、後述する封止金型202を開閉駆動することによりワークWをクランプして樹脂封止するプレス装置250を備えている。
【0036】
図2に示すように、プレス装置250は、上型204と下型206とを有して一対のプラテン252、254間に配設される封止金型202と、一対のプラテン252、254が架設される複数の連結機構256と、プラテン254を可動(昇降)させる駆動源(例えば、電動モータ)260と、駆動伝達機構(例えば、ボールねじやトグルリンク機構)262と、を備えている。尚、本実施形態においては、上型204が固定プラテン252に組み付けられ、下型206が可動プラテン254に組み付けられている。但し、この構成に限定されるものではなく、上型204を可動プラテンに組み付け、下型206を固定プラテンに組み付けてもよく、あるいは、上型204、下型206共に可動プラテンに組み付けてもよい(不図示)。
【0037】
また、プレスユニット100Bは、ロール状のフィルムFを封止金型202の内部へ搬送(供給)するフィルム供給機構201を備えている。尚、前述の通り、ロール状のフィルムに代えて短冊状のフィルムを用いる構成としてもよい(不図示)。
【0038】
次に、封止金型202の下型206について詳しく説明する。
図2、
図3に示すように、下型206は、下型モールドベース212、下型チェイスブロック216等が組み付けられて構成されており、上面が金型面206aとなる。一例として、下型チェイスブロック216は、下型モールドベース212の上に固定されており、下型モールドベース212は、可動プラテン254の上に固定されている。
【0039】
ここで、下型206には、樹脂Rがセット(収容)される「所定位置」としての樹脂収容部(本実施形態では、タブレット状の樹脂Rが収容される筒状のポット240)が前後方向に沿って複数個(一例として、四個の場合を例に挙げているが、これに限定されるものではなく、あるいは、単数でもよい)が設けられている。当該ポット240は、下型チェイスブロック216及び下型モールドベース212に連続する貫通孔として形成されている。また、ポット240内には公知のトランスファ駆動機構(不図示)により押動されるプランジャ242が配設されている。この構成により、プランジャ242が押動されて、ポット240内の樹脂Rがキャビティ208(後述)内へ供給される。
【0040】
また、本実施形態においては、下型チェイスブロック216上に、一個もしくは複数個のワークWを保持するワーク保持部205が設けられている。より具体的には、
図3に示すように、所定個(一個もしくは複数個)のポット240を左右方向に挟む配置で一組のワーク保持部205(第1ワーク保持部205A及び第2ワーク保持部205B)が前後方向に所定セット(一セットもしくは複数セット)配設されている。一例として、このワーク保持部205は、吸引装置に連通する吸引路を備えて(いずれも不図示)、ワークWを吸着して保持する構成となっている。尚、吸引路を備える構成に代えてもしくはこれと共に、ワークWの外周を挟持する保持爪を備える構成としてもよいし、単にワークWの孔をパイロットピンに差し込んで載置するだけでもよい(不図示)。
【0041】
また、本実施形態においては、下型206を設定温度に加熱する下型加熱機構が設けられている。この下型加熱機構は、下型ヒータ209、温度センサ(不図示)等(温度センサを内蔵した管状ヒータでもよい)を備えており、制御部150によって下型206が設定温度となるように加熱の制御が行われる。一例として、下型ヒータ209には、公知の電熱線ヒータ、シーズヒータ等が用いられて、下型モールドベース212に配設されている。これにより、下型チェイスブロック216等を介してワーク保持部205及び樹脂収容部(ポット240)の周囲に熱伝導され、ワーク保持部205に保持されたワークWや、樹脂収容部(ポット240)内の樹脂Rを設定温度(例えば、150℃~200℃)まで加熱することができる。
【0042】
次に、封止金型202の上型204について詳しく説明する。
図2、
図3に示すように、上型204は、上型モールドベース210、上型チェイスブロック214等が組み付けられて構成されており、下面が金型面204aとなる。一例として、上型チェイスブロック214は、上型モールドベース210の下に固定されており、上型モールドベース210は、固定プラテン252の下に固定されている。
【0043】
ここで、上型204には、下型206のポット240の直上位置(ここでは、直上における所定広さの領域を指す)において、下面にカル246及びランナ248(の一部)が穿設されたカルブロック244が設けられている。また、ワークWの所定部位(電子部品Wbが搭載された部位)が収容されるキャビティ208が設けられている。尚、上型204における上記のカル246及びランナ248を、樹脂Rが収容(この場合は、通過もしくは充填)される「所定位置(樹脂収容部)」に設定して後述の制御を実施してもよい。
【0044】
本実施形態に係るキャビティ208は、下型206における一組のワーク保持部205(第1ワーク保持部205A及び第2ワーク保持部205B)が所定セット(一セットもしくは複数セット)配設された位置に対応して、平面視でカルブロック244を左右方向に挟む配置で一組のキャビティ208(第1キャビティ208A及び第2キャビティ208B)が前後方向に所定セット(一セットもしくは複数セット)配設されている。
【0045】
また、本実施形態においては、上型204を設定温度に加熱する上型加熱機構が設けられている。この上型加熱機構は、上型ヒータ207、温度センサ(不図示)等(温度センサを内蔵した管状ヒータでもよい)を備えており、制御部150によって上型204が設定温度となるように加熱の制御が行われる。一例として、上型ヒータ207には、公知の電熱線ヒータ、シーズヒータ等が用いられて、上型モールドベース210に配設されている。これにより、上型チェイスブロック214等を介してキャビティ208及び樹脂流路(カル246、ランナ248等)の周囲に熱伝導され、キャビティ208及び樹脂流路246、248内の樹脂Rを設定温度(例えば、150℃~200℃)に加熱することができる。
【0046】
ここで、制御部150が行う封止金型202の温度制御について説明する。尚、以下で用いる用語として、封止時に樹脂Rを適切に熱硬化させる温度(樹脂Rの材質、量による)として設定される封止金型202の温度を「通常設定温度」と定義する。また、当該「通常設定温度」よりも所定温度(後述)高い温度として設定される封止金型202の温度を「切替設定温度」と定義する。
【0047】
上記温度制御の具体例として、制御部150は、封止金型202へワークW及び樹脂Rを搬入して封止した後に成形品Wpとして搬出する単位工程(1サイクル)中において、所定の「開始タイミング」で「通常設定温度」から「切替設定温度」に設定温度を変更して封止金型202の温度を制御する。次いで、所定の「終了タイミング」で「切替設定温度」から「通常設定温度」に設定温度を変更して封止金型202の温度を制御する。
【0048】
上記の「開始タイミング」は、一例として、樹脂Rを封止金型202の「所定位置」(本実施形態では、下型206の樹脂収容部(ポット240))にセット(収容)される時点(タイミング)に設定される。但し、これに限定されるものではなく、上記設定に代えて、もしくは、上記設定と共に(すなわち、それぞれ別個に)、上型204の樹脂収容部(カル246、ランナ248)に樹脂Rが収容(通過もしくは充填)される時点(タイミング)に設定される構成としてもよい。
【0049】
また、上記の「終了タイミング」は、一例として、樹脂Rが所定の熱硬化状態(本実施形態では、加圧下での加熱が所定時間行われた状態)となる時点(タイミング)に設定される。但し、これに限定されるものではない。
【0050】
また、上記の「所定温度」は、一例として、1℃~20℃の範囲から選択される温度として設定される。但し、これに限定されるものではない。尚、当該温度は、樹脂Rの材質や量、あるいは、封止金型202の大きさ等に応じて、適宜、設定される。
【0051】
以上、説明した構成によれば、前述の課題解決を図ることができる。すなわち、樹脂封止を行う成形動作を一定周期の自動運転で継続する場合において、封止金型202の表面温度が、収容される樹脂Rの温度の影響によって徐々に低下し、樹脂封止のために必要な融点温度が確保できず、成形不良(樹脂硬化不足、未充填等)が生じてしまう課題の解決を図ることができる。
【0052】
具体的には、前述の通り、「開始タイミング」で「通常設定温度」から「切替設定温度」に設定温度を変更して封止金型202の温度を制御し、所定の「終了タイミング」で「切替設定温度」から「通常設定温度」に設定温度を変更して封止金型202の温度を制御する工程を、成形サイクル毎に繰り返す構成を備えている。これによって、封止金型202の表面温度が徐々に低下してしまうことの防止が可能となる。ここで、本願発明者らが、成形サイクル(1サイクル)を一定周期で繰り返した場合の温度低下傾向を把握するために行った実験の結果を
図4、
図5に示す。
図4は下型206における結果であり、
図5は上型204における結果である。いずれの図においても、実線が本実施形態の構成による結果であり、破線が従来の実施形態の構成による結果である。
【0053】
上記の実験結果にも明示されるように、本実施形態によれば、成形動作を一定周期の自動運転で継続する場合であっても、封止金型202による樹脂封止を行うために樹脂Rに応じた適切な融点温度の確保が可能となり、温度不足による成形不良の抑制を図ることができる。また、装置停止の原因となり得る異常発生を低減できるため、稼働率の向上を図ることがきる。また、本実施形態の適用に関しては、特に、一回の封止に用いられる樹脂Rの量が多い製品(成形品)である程、本実施形態は有効な手段となる。
【0054】
また、前述の特許文献1に例示される装置と比較して、本実施形態では上型チェイスブロック214に温度センサを設ける必要がないため、装置の簡素化及びコストダウンを図ることができる。
【0055】
尚、上記の実施形態は一例に過ぎない。別の実施形態として、上型204における「開始タイミング」を「第1開始タイミング」とし、下型206における「開始タイミング」を「第2開始タイミング」として、それぞれ異なる時点(タイミング)に設定してもよい。また、上型204における「終了タイミング」を「第1終了タイミング」とし、下型206における「終了タイミング」を「第2終了タイミング」として、それぞれ異なる時点(タイミング)に設定してもよい。具体例として、「第1開始タイミング」から「第1終了タイミング」までの時間を、「第2開始タイミング」から「第2終了タイミング」までの時間よりも長い時間に設定する構成が考えられる。
【0056】
さらに別の実施形態として、「切替設定温度」は、上型204における設定温度を「第1切替設定温度」とし、下型206における設定温度を「第2切替設定温度」として、それぞれ異なる温度に設定してもよい。具体例として、「第1切替設定温度」を、「第2切替設定温度」よりも高い温度に設定する構成が考えられる。
【0057】
本願発明者らの研究により、例えば、上型204にカル246やランナ248を有するカルブロック244が設けられた構成等を用いて、樹脂封止を行う成形動作を一定周期の自動運転で継続した場合には、下型206よりも上型204において成形サイクル(1サイクル)中での温度低下が顕著に生じ得ることが究明された(
図4、
図5参照)。この問題に対し、上記いずれの実施形態においても、上型204における温度低下の抑制効果を下型206より高めることが可能となるため、その解決を図ることができる。考察すると、金型クランプ後、樹脂(タブレット)Rが上型204のカル246に当たり溶融してプランジャ242により加圧されるため、下型206以上に上型204が樹脂Rの流動により温度低下していくものと思われる。さらに、上型204及び下型206のそれぞれにおいて、より成形に適した封止金型202の表面温度となるように調整することが可能となるため、成形品質を一層、向上させることができる。また、大きな樹脂(タブレット)Rの場合は、樹脂Rをポット240内に投入して十分に溶融後プランジャ242で加圧させたい場合は、上型204よりも下型206の温度を高く設定してもよいし、上下型を同じ温度に設定してもよい。
【0058】
次に、封止金型202の構成に関する別の実施形態について説明する。上記の実施形態においてキャビティ208は上型204に設けられていたが、下型206に設けられる構成としてもよいし、上型204と下型206の双方に設けられる構成としてもよい。この場合、ポット240が下型206に設けられているため、上型204のカル246から下型206にランナを連通させる構成等を採用し得る。あるいは、リードフレーム等のワークであれば、当該ワークを上下に貫通する孔によって樹脂を上下に通過させる構成等を採用し得る(いずれも不図示)。
【0059】
(収納ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備える収納ユニット100Cについて説明する。
【0060】
収納ユニット100Cは、一例として、成形品Wpを載置する成形品テーブル114と、成形品Wpからカル部、ランナ部、ゲート部等の不要樹脂部分を除去するゲートブレイク部116と、不要樹脂部分が除去された成形品Wpの収容に用いられる成形品ストッカ112とを備えている。尚、成形品ストッカ112には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられ、複数個の成形品Wpを一括して収容可能となっている。この構成により、アウトローダ124等を用いてプレスユニット100Bから搬送された成形品Wp(不要樹脂部分を介して連結された状態)が、成形品テーブル114上に載置される。次いで、公知のピックアップ等(不図示)を用いてゲートブレイク部116に移送されて不要樹脂部分が除去された後、公知のプッシャ等(不図示)を用いて成形品ストッカ112に収容される。
【0061】
(樹脂封止動作)
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1を用いて樹脂封止を行う動作(すなわち、本実施形態に係る樹脂封止方法)について説明する。ここでは、一個の上型204に一組のキャビティ208を複数セット(一セットでもよい)設けると共に、対応する一個の下型206に一組のワーク保持部205を複数セット(一セットでもよい)設けて、当該ワーク保持部205にワークW(例えば、短冊状等のワーク)を配置して一括して樹脂封止を行い、同時に複数個の成形品Wpを得る構成を例に挙げる。但し、この構成に限定されるものではない。
【0062】
準備工程として、上型ヒータ207によって、上型204を設定温度(例えば、150℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(上型加熱工程)を実施する。また、下型ヒータ209によって、下型206を設定温度(例えば、150℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(下型加熱工程)を実施する。さらに、フィルム供給機構201によってフィルムFを搬送して(送り出して)封止金型202における所定位置(上型204と下型206との間の位置)にフィルムFを供給する工程(フィルム供給工程)を実施する。
【0063】
次いで、公知のプッシャ等(不図示)によって、ワークストッカ102からワークWを一つずつ搬出し、ワークテーブル104の上面に載置する工程を実施する(尚、公知のピックアップ機構等を併用してもよい)。また、公知のフィーダ、エレベータ等(不図示)によって、供給部142からタブレット状の樹脂Rを一つずつ搬出し、受渡し部144の所定位置に複数個(一例として、四個)の樹脂Rを保持する工程を実施する。
【0064】
次いで、インローダ122をワークテーブル104の直上に移動させる(同位置で予め待機していてもよい)。その位置で、ワークテーブル104を上昇させ(もしくは、インローダ122を下降させ)、ワーク保持部122A、122BによってワークWを保持する(本実施形態では、ワーク保持部122A、122Bがそれぞれ一個のワークWを保持する)工程を実施する。
【0065】
次いで、インローダ122を受渡し部144の直上に移動させる。その位置で、受渡し部144を上昇させ(もしくは、インローダ122を下降させ)、樹脂保持部122Cによって樹脂Rを保持する(本実施形態では、樹脂保持部122Cが四個の樹脂Rを保持する)工程を実施する。
【0066】
次いで、インローダ122によって、一回の工程で複数個(本実施形態では、二個)のワークW及び複数個(本実施形態では、四個)の樹脂Rをプレスユニット100Bの封止金型202内へ搬送し、下型206における各ワーク保持部205(本実施形態では、ワーク保持部205A、205B)にそれぞれワークWを載置する工程と、下型206における複数個(本実施形態では、四個)の樹脂収容部(ポット240)にそれぞれ樹脂Rを収容する工程と、を実施する。尚、搬送途中において、インローダ122に設けられたヒータ(不図示)によってワークWや樹脂Rを予備加熱する工程(予備加熱工程)を実施してもよい。
【0067】
次いで、封止金型202の型閉じを行い、上型204と下型206とでワークWをクランプして樹脂封止することによって成形品Wpを形成する工程(樹脂封止工程)を実施する。
【0068】
ここで、本実施形態では、封止金型202へワークW及び樹脂Rを搬入して封止した後に成形品Wpとして搬出する単位工程(1サイクル)中において、所定の「開始タイミング」で「通常設定温度」から「切替設定温度」に設定温度を変更して封止金型202の温度を制御する。次いで、所定の「終了タイミング」で「切替設定温度」から「通常設定温度」に設定温度を変更して封止金型202の温度を制御する。尚、「通常設定温度」及び「切替設定温度」、並びに、「開始タイミング」及び「終了タイミング」の設定に関しては、前述の通りであり、繰り返しの説明を省略する。
【0069】
上記のようにワークWに対して樹脂Rを加熱加圧することにより、樹脂Rが熱硬化して樹脂封止(圧縮成形)が行われて成形品Wpが形成される。
【0070】
次いで、封止金型202の型開きを行い、アウトローダ124によって、一回の工程で複数個(本実施形態では、二個)の成形品Wp(カル部、ランナ部等の不要樹脂部分を含み、それらを介して連結された状態)を封止金型202内から取り出す工程を実施する。
【0071】
これと並行して(もしくは、その後に)、フィルム供給機構201によってフィルムFを搬送することにより、使用済みフィルムFを送り出す工程を実施する。
【0072】
次いで、アウトローダ124によって、成形品Wp(カル部、ランナ部等を含む)を成形品テーブル114上へ載置する工程を実施する(尚、公知のピックアップ機構等を併用してもよい)。次いで、ゲートブレイク部116において成形品Wpからカル部、ランナ部等の不要樹脂部分を除去する工程を実施する。次いで、公知のプッシャ等(不図示)によって、成形品Wp(不要樹脂部分が除去された状態)を一つずつ成形品ストッカ112へ搬入する工程を実施する。尚、これらの工程の前に、成形品Wpのポストキュアを行う工程を実施してもよい。
【0073】
以上が樹脂封止装置1を用いて行う樹脂封止の主要動作である。但し、上記の工程順は一例であって、支障がない限り先後順の変更や並行実施が可能である。例えば、本実施形態においては、二台のプレスユニット100Bを備える構成であるため、上記の動作を並行して実施することで、効率的な成形品形成が可能となる。
【0074】
以上、説明した通り、本発明に係る樹脂封止装置及び樹脂封止方法によれば、複雑な装置構造や複雑な実施工程によることなく、成形動作を一定周期の自動運転で継続する場合において封止金型の表面温度が徐々に低下してしまうことの防止が可能となる。したがって、樹脂封止を行う際に、封止金型における適切な融点温度の確保が可能となるため、温度不足による成形不良の抑制を図ることができる。また、装置停止の原因となり得る異常発生を低減できるため、稼働率の向上を図ることがきる。
【0075】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。具体的に、上記の実施形態においては、トランスファ成形方式による構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、圧縮成形方式による構成に適用することも可能である。例えば、下型にキャビティが設けられた封止金型を備える圧縮成形装置の場合、直接もしくはフィルムを介して樹脂がキャビティ内にセット(収容)される構成を採用し得る。したがって、当該キャビティを、樹脂がセットされる「所定位置」として上記の実施形態を適用し得る。一方、上型にキャビティが設けられた封止金型を備える圧縮成形装置の場合、一例として、ワーク上に樹脂が載置された状態で当該ワークが下型のワーク保持部に保持され、次いで、型閉じによって当該ワーク上の樹脂が、直接もしくはフィルムを介してキャビティ内にセット(収容)される構成を採用し得る。したがって、当該ワーク保持部もしくは当該キャビティを、樹脂がセットされる「所定位置」として上記の実施形態を適用し得る。あるいは、他の例として、樹脂ローダ上に載置された樹脂を、直接もしくはフィルムを介してキャビティ底部に押圧して貼着させることによってキャビティ内にセット(収容)される構成を採用し得る。したがって、当該キャビティを、樹脂がセットされる「所定位置」として上記の実施形態を適用し得る。
【符号の説明】
【0076】
1 樹脂封止装置
202 封止金型
204 上型
206 下型
R 封止樹脂
W ワーク