(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114013
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】高圧機器用脱落防止構造
(51)【国際特許分類】
H02B 11/12 20060101AFI20230809BHJP
H02B 1/36 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H02B11/12 H
H02B1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016052
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】茂木 稜典
【テーマコード(参考)】
5G012
5G016
【Fターム(参考)】
5G012JJ07
5G016CD27
(57)【要約】
【課題】構造上の制約を緩和しつつ、ボルトレスでの着脱等によって作業負担を軽減できるようにすること。
【解決手段】引出形真空遮断器(1)は、車輪(21)を有する台車(20)上に搭載された遮断器本体(25)と、遮断器本体を底板(11)上に載置した状態で収容するクレードル(10)とを備え、クレードルから遮断器本体の脱落を脱落防止具(30)によって防止している。クレードルは、ガイド(12)に形成されて上下方向に貫通する穴(18)と、底板から上方に突出するピン(17)とを備えている。脱落防止具は、底板上に配置されて車輪の走行経路(R)を横切る方向に延出する本体部(31)と、本体部に形成されて穴に下方から挿入される挿入片部(32)と、本体部に形成されてピンの上端から挿入可能な開口部(33)とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有する台車上に搭載された高圧機器本体と、前記高圧機器本体を底板上に載置した状態で収容するクレードルとを備えた高圧機器にて、前記クレードルから前記高圧機器本体の脱落を脱落防止具によって防止する高圧機器用脱落防止構造であって、
前記クレードルは、前記底板から所定高さに位置するガイドと、前記ガイドに形成した穴と、前記底板から上方に突出するピンと、を備え、
前記脱落防止具は、前記底板上に配置されて前記車輪の走行経路を横切る方向に延出する本体部と、前記本体部に形成されて前記穴に挿入される挿入片部と、前記本体部に形成されて前記ピンが挿入可能な開口部と、を備えていることを特徴とする高圧機器用脱落防止構造。
【請求項2】
前記脱落防止具は、前記穴に前記挿入片部を挿入した状態で、該挿入片部またはその近傍位置を中心として前記本体部を回転操作することで、前記ピンに対する前記開口部の挿入及び挿入解除を可能としたことを特徴とする請求項1に記載の高圧機器用脱落防止構造。
【請求項3】
前記車輪の走行経路を挟んで前記穴と前記ピンとが配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高圧機器用脱落防止構造。
【請求項4】
前記本体部は、延出方向の中間部にクランク状部を備え、
前記クランク状部は、前記車輪の走行経路と重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の高圧機器用脱落防止構造。
【請求項5】
前記本体部は、前記開口部の形成位置近傍から立ち上がるアングル状部を備え、
前記アングル状部は、前記台車の移動経路と重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の高圧機器用脱落防止構造。
【請求項6】
前記本体部は、前記穴に前記挿入片部を挿入した状態で、前記ガイドの下面に接触または近傍配置される規制端部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の高圧機器用脱落防止構造。
【請求項7】
前記本体部における前記開口部の形成領域周辺は前記底板に面接触することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の高圧機器用脱落防止構造。
【請求項8】
前記ガイド及び前記脱落防止具は、線状部材を挿通可能な通し穴をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の高圧機器用脱落防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧機器用脱落防止構造に関し、特に、引出形の高圧機器本体がクレードルから脱落することを防止することができる高圧機器用脱落防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電盤等の盤内に収容される高圧機器として、クレードルに搭載される引出形回路遮断器が利用されている。このような引出形回路遮断器は、遮断器本体が車輪を有する台車に載せられ、配電盤の開口側となる断路位置へ引き出し可能とされ、配電盤側の主回路から断路されるようになっている。断路位置では、盤外まで容易に引き出せないように脱落防止手段が設けられる。脱落防止手段としては、クレードルにボルトを介してストッパを着脱可能に固定する構成や、特許文献1に開示される構成が知られている。
【0003】
特許文献1の脱落防止手段は、車輪を支持する主軸に当接して回動する板状のストッパと、ストッパの回動を阻止するピンとを有している。ストッパには、上部端に回動の支点となる支点ピンが固定されている。支点ピンはガイドの楕円状の貫通孔を貫通し、支点ピンのねじ部にはナットが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボルトによってストッパを着脱する脱落防止手段にあっては、着脱の際に締め付け工具による作業が必要になり、作業が煩雑になる上、盤外へボルトが脱落したり紛失したりする、という問題がある。また、特許文献1の脱落防止手段にあっては、車輪の主軸を長くしたり、ガイドに楕円状の貫通孔を形成したり、支点ピン及びサポート板を有するナットでストッパを回動可能に取り付けたりする等、構造上の制約が大きくなる、という問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、構造上の制約を緩和しつつ、作業負担を軽減でき、ボルトレスで着脱できる高圧機器用脱落防止構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における高圧機器用脱落防止構造は、車輪を有する台車上に搭載された高圧機器本体と、前記高圧機器本体を底板上に載置した状態で収容するクレードルとを備えた高圧機器にて、前記クレードルから前記高圧機器本体の脱落を脱落防止具によって防止する高圧機器用脱落防止構造であって、前記クレードルは、前記底板から所定高さに位置するガイドと、前記ガイドに形成した穴と、前記底板から上方に突出するピンと、を備え、前記脱落防止具は、前記底板上に配置されて前記車輪の走行経路を横切る方向に延出する本体部と、前記本体部に形成されて前記穴に挿入される挿入片部と、前記本体部に形成されて前記ピンが挿入可能な開口部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工具を用いない手作業によってクレードルから脱落防止具を着脱することができる。具体的には、クレードルから脱落防止具を取り外す場合、クレードルの穴に挿入片部が挿入された状態で本体部の開口部付近を指先で持ち上げ、ピンに対する開口部の挿入を解除してから挿入片部を穴から抜き出すように本体部を操作すればよい。また、クレードルに脱落防止具を取り付ける場合、クレードルの穴に下方から挿入片部を挿入した後、ピンに対して開口部を挿入するよう本体部を持って操作すればよい。このように、本発明の脱落防止具は、ボルトやボルト用の工具を利用せずにクレードルへの着脱を簡単且つ短時間で行えるようにして作業負担を軽減することができる。しかも、車輪や台車の構成を変更せず、クレードルに穴及びピンの最小限の構成を設ければ脱落防止具を着脱でき、構成上の制約を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る引出形真空遮断器の概略斜視図である。
【
図2】
図2Aは、
図1の部分拡大図であり、
図2Bは、クレードルに対して脱落防止具を着脱する中途状態を示す
図1と同様の拡大図である。
【
図3】
図3Aは、実施の形態の脱落防止具の平面図であり、
図3Bは、実施の形態の脱落防止具の正面図であり、
図3Cは、実施の形態の脱落防止具の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る高圧機器について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。また、以下の説明において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各図において矢印で示した方向を基準として用いる。但し、各構成の向きは、一例にすぎず、任意の向きに変更することができる。
【0011】
なお、以下においては、本発明に係る高圧機器を引出形真空遮断器に適用する場合について説明する。しかしながら、本発明の適用対象は、高圧機器であれば引出形真空遮断器に限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、引出形真空電磁接触器等、引出形の他の遮断器、開閉器、断路器に適用することもできる。
【0012】
図1は、実施の形態に係る引出形真空遮断器の概略斜視図である。
図1に示すように、引出形真空遮断器1は、クレードル10と、台車20と、遮断器本体(高圧機器本体)25と、脱落防止具30とを備えている。引出形真空遮断器1は、特に限定されるものでないが、不図示の配電盤の盤内にて、主回路導体3の前方に収容された状態で使用される。
【0013】
クレードル10は、底板11と、底板11の左右両側に連なって形成されるコ字状をなす一対のガイド12と、各ガイド12の後方から立設する左右一対の側壁13とを備えている。左右一対の側壁13には絶縁バー15が架け渡されており、かかる絶縁バー15を介して主回路導体3が所定位置に支持されている。主回路導体3にて後側に位置する端子に母線(不図示)が接続される。
【0014】
台車20は、クレードル10の底板11上に載置され、台車20上に遮断器本体25が搭載されている。言い換えると、クレードル10は、底板11上に台車20を介して遮断器本体25を載置した状態で収容している。
【0015】
台車20は、左右両側に車輪21(右側の車輪は不図示)を有し、クレードル10の底板11上で前後方向に走行するために設けられている。遮断器本体25の前面にはハンドル26が設けられ、ハンドル26を作業者が把持して操作することで台車20に搭載された遮断器本体25を前後に走行させる。底板11上で台車20に搭載された遮断器本体25を後方に押し込むと、遮断器本体25が主回路導体3の接触子に接続される運転位置に移動される。かかる運転位置から台車20に搭載された遮断器本体25を前方に引き出すと、遮断器本体25が主回路導体3の接触子から離れて断路され、遮断器本体25のメンテナンス作業等が行えるようになる。
【0016】
クレードル10の各ガイド12は、底板11から所定高さに位置して前後方向に延出し、且つ底板11上の車輪21の上方に配置され、台車20の走行にて車輪21の跳ね上がりを規制している。底板11と各ガイド12は、1枚の金属板を折り曲げて構成される。各ガイド12は、底板11の左右の端部に連なって立ち上がる側板12aと、側板12aの上端に連なって底板11の上方に所定間隔を隔てて配置されるガイド板12bとを備えている。
【0017】
底板11の前端寄りとなる領域の左右方向中央を挟む二箇所位置には、上方に突出するピン17が設けられている。ここで、遮断器本体25を盤外からクレードル10内に搬入する装置として、台車20に搭載された遮断器本体25を昇降するリフター(不図示)が用いられる。リフターは、台車20に搭載された遮断器本体25が載置される昇降板を備え、該昇降板に形成された位置合わせ穴に各ピン17が挿入される。かかる位置合わせ穴への各ピン17の挿入によって、昇降板と底板11との相対位置が固定され、クレードル10内の所定位置に遮断器本体25を搬入可能となる。
【0018】
各ガイド12の前端寄りとなる領域の側板12a及びガイド板12bの境界部分には、上下方向に貫通する穴18が形成されている。クレードル10における左側のピン17及び穴18を介し、脱落防止具30が装着されている。
【0019】
続いて、
図2及び
図3を参照して、脱落防止具30の構成について説明する。
図2Aは、
図1の部分拡大図であり、クレードル10に脱落防止具30が装着された状態を示す。
図2Bは、クレードルに対して脱落防止具を着脱する中途状態を示す
図1と同様の拡大図である。
【0020】
図2Aに示すように、脱落防止具30は、底板11上に配置される本体部31と、本体部31に形成されて穴18に下方から挿入される挿入片部32と、本体部31に形成されてピン17の上端から挿入可能な開口部33とを備えている。ここで、
図2Aにて、二点鎖線で示す矢印は、前後方向に走行する台車20における車輪21の走行経路Rとされる。かかる走行経路Rを左右方向から挟んで脱落防止具30の装着に利用されるピン17と穴18とが配置されている。
【0021】
脱落防止具30は、本実施の形態では、一枚の金属板を切り欠き、穴開け、折り曲げ加工することによって形成される。本体部31は、車輪21の走行経路Rを横切る方向となる左右方向に延出して配設されている。
【0022】
図3Aは、実施の形態の脱落防止具の平面図であり、
図3Bは、実施の形態の脱落防止具の正面図であり、
図3Cは、実施の形態の脱落防止具の左側面図である。
図3A及び
図3Bにも示すように、本体部31は、クランク状部35と、クランク状部35の右側に形成されるアングル状部36と、クランク状部35の左側に形成される立ち上がり部37とを備えている。よって、クランク状部35は、本体部31の延出方向(左右方向)中間部を形成している。
【0023】
クランク状部35は、底板11の上面に面接触して載置される第1水平面部35aと、底板11とガイド12のガイド板12bとの間に配置される第2水平面部35bとを備えている。また、クランク状部35は、第1水平面部35aの左端と第2水平面部35bの右端との間に延びる第1鉛直面部35cとを備えている。
【0024】
第1水平面部35aの右側領域には上述した開口部33が形成される。よって、本体部31における開口部33の形成領域周辺が底板11の上面に面接触するよう設けられる。開口部33は、ピン17に対して若干の隙間を介して受容可能な開口形状に形成され、本実施の形態では丸穴状に形成される。
【0025】
第2水平面部35bは、底板11から上方に所定距離離れ、ガイド12のガイド板12bから下方に所定距離離れて配置される。好ましくは、底板11とガイド板12bとの中間に第2水平面部35bが位置するよう形成される。
【0026】
第2水平面部35bには通し穴35dが貫通して形成され、かかる通し穴35dの概ね上方位置にてガイド板12bにも通し穴12cが形成されている。各通し穴35d、12cには不図示の線状部材が挿通可能とされる。各通し穴35d、12cに線状部材を通してループ状に形成することで、脱落防止具30がクレードル10から大きく離脱したり落下することを防止できる。線状部材としては、種々の構成が採用され、例えば、紐や帯状体、ワイヤ、チェーンを利用することができる。
【0027】
第1鉛直面部35cは、車輪21の走行経路Rと重なる位置に配置されている。より具体的には、脱落防止具30及び車輪21を前方から見た状態で、車輪21の左右方向中央部と第1鉛直面部35cとの位置が同一または略同一となるように配置される(
図3B参照)。よって、
図2Aに示す状態から、車輪21が前進して本体部31に当接する場合、第1鉛直面部35cと第2水平面部35bとで形成されるコーナー部分に、車輪21の前端が当接するようになる。
【0028】
アングル状部36は、第1水平面部35aにおける開口部33の形成位置近傍から立ち上がって形成されている。アングル状部36は、第1水平面部35aの右端から上方に延びる第2鉛直面部36aと、第2鉛直面部36aの上端から左方向に水平に延びる第3水平面部36bとを備えている。
【0029】
第2鉛直面部36aの上下長さは、第3水平面部36bの高さ位置が第2水平面部35bより高くなるように設定されている。よって、アングル状部36の第3水平面部36bは、車輪21の走行経路Rより内側(右側)となる台車20の移動経路と重なる位置に配置される。アングル状部36の後端位置は、クランク状部35の後端位置より前方に形成され、かかる後端同士の前後差は、車輪21の前端と台車20の前端との前後差と同一に設定される。よって、台車20の前進によって車輪21がクランク状部35に当接すると同時に、台車20がアングル状部36に当接するようになる。
【0030】
立ち上がり部37は、第2水平面部35bの左端から上方に延び、ガイド12の側板12aの内面に沿って配置される。立ち上がり部37の上端には、上述した挿入片部32が上方に突出して形成される。挿入片部32は、立ち上がり部37の前後幅より小さく形成され、立ち上がり部37の前後方向中央部に形成される(
図3C参照)。挿入片部32がガイド12に形成された穴18に挿入された状態で、立ち上がり部37の上端は、ガイド12におけるガイド板12bの下面に接触または近傍配置される。ここで、立ち上がり部37の上端は規制端部37aとされ、かかる規制端部37aとガイド板12bとによって、立ち上がり部37を含む本体部31の左側領域の上方への移動が規制される。
【0031】
次に、クレードル10に対して脱落防止具30を着脱する作業要領について説明する。クレードル10から脱落防止具30を取り外す場合、先ず、
図2Aに示す状態から第3水平面部36bを指先で持ち上げる。この持ち上げによって、
図2Bに示すように、挿入片部32またはその近傍位置を中心として本体部31が回転操作され、ピン17に対する開口部33の挿入状態が解除される。また、クランク状部35の第1水平面部35aは底板11の上面から離れた状態となる。
【0032】
この状態で、本体部31が全体的に下降するよう操作する。この下降操作によって、穴18から挿入片部32が抜け出し、クレードル10から脱落防止具30が取り外される。
【0033】
クレードル10に脱落防止具30を取り付ける場合、挿入片部32より第3水平面部36bが高くなるよう傾けつつ、
図2Bに示すように、穴18の下側から挿入片部32を挿入した状態とする。この状態から、挿入片部32またはその近傍位置を中心として本体部31を回転操作し、第1水平面部35aを底板11の上面に載置する。かかる回転操作によって、ピン17に対して開口部33を挿入した状態にでき、
図2Aに示すように、クレードル10に脱落防止具30が取り付けられる。
【0034】
クレードル10に脱落防止具30を取り付けた状態では、ガイド12の穴18に挿入片部32が挿入され、脱落防止具30の開口部33にピン17が挿入されるので、脱落防止具30の前後及び左右方向の移動が規制される。また、脱落防止具30が底板11上に載置されることで、脱落防止具30の下方への移動が規制され、規制端部37aがガイド板12bの下面に接触または近傍配置されることで、脱落防止具30の上方への移動が規制される。よって、脱落防止具30は直交三軸方向への移動が規制された状態で取り付けられ、意図的な上述の回転操作がない限り、クレードル10への装着状態が維持される。従って、クレードル10が振動するような力が加わる場合でも、脱落防止具30が不用意に取り外されずに装着状態を安定して維持することができる。
【0035】
クレードル10に脱落防止具30を取り付けた状態で、底板11にて車輪21の走行経路Rや台車20の移動経路の所定高さに本体部31が位置するようになる。よって、脱落防止具30は、台車20に搭載された遮断器本体25が前方に移動しようとする場合のストッパとなり、脱落防止具30によってクレードル10から遮断器本体25の脱落を防止することができる。
【0036】
以上のように、上記実施の形態によれば、上述のようにボルトやボルト用の工具を用いない手作業によってクレードル10から脱落防止具30を着脱することができる。これにより、脱落防止具30の着脱を簡単且つ短時間で行うことができ、作業負担の軽減を図ることができる。
【0037】
また、上記実施の形態の脱落防止具30を用いるにあたり、車輪21や台車20の構成変更を不要にでき、また、既存のピン17を利用している。よって、脱落防止具30を用いるためのクレードル10の構成は、ガイド12の穴18だけとなり、クレードル10等での構成変更を最小限として構成上の制約を緩和することができる。
【0038】
更に、脱落防止具30は挿入片部32を中心とする本体部31の回転操作によって着脱できるので、着脱作業の容易化と、脱落防止具30における装着状態の安定維持とを両立することができる。
【0039】
また、車輪21の走行経路Rを挟んで位置するピン17及び穴18を介して脱落防止具30を装着したので、脱落防止具30による車輪21の前方への移動を規制するための強度を良好に発揮することができる。
【0040】
更に、クランク状部35の第1鉛直面部35cが車輪21の走行経路Rに重なるので、上下両側で屈曲して剛性の高い部分に車輪21が当接するようになり、これによっても、車輪21の前方への移動を規制するための強度を良好に発揮することができる。
【0041】
また、アングル状部36が台車20の移動経路に重なるので、台車20に対しても上下両側で屈曲して剛性の高い部分に当接するようになり、台車20の前方への移動を規制するための強度を良好に発揮することができる。
【0042】
更に、第1水平面部35aが底板11に面接触するので、底板11に本体部31を載置した状態を安定して維持することができる。
【0043】
本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更(位置や向きを含む)、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0044】
例えば、本体部31は、クランク状部35、アングル状部36及び立ち上がり部37を備えた構成としたが、これに限られるものでなく、挿入片部32及び開口部33を形成する限りにおいて種々の変更が可能である。例を挙げると、本体部31は、クランク状部35に代え、立ち上がり部37の基端から開口部33近傍まで直線方向や湾曲する方向に延びる形状に形成してもよい。また、本体部31は、アングル状部36の第3水平面部36bの向きを実施の形態とは異なる右向きとしたり、第3水平面部36bを省略した構成としてもよい。
【0045】
また、台車20の左側の車輪21に応じて脱落防止具30がクレードル10の左側に設けられる場合を説明したが、左右両方の車輪21や右側だけの車輪21に応じて脱落防止具30を設ける構成としてもよい。
【0046】
また、ピン17は脱落防止具30とリフターとで共用されるものとしたが、脱落防止具30だけで利用されるピンを底板11に設けてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態は、左右方向にて走行経路Rを挟んでピン17と穴18とが配置される構成としたが、これに限定されるものでない。走行経路Rを挟まずにピン17と穴18とが配置される構成としても、本体部31が走行経路Rを横切る方向に延出する領域を有すればよい。
【符号の説明】
【0048】
1 :引出形真空遮断器(高圧機器)
10 :クレードル
11 :底板
12 :ガイド
12c :通し穴
17 :ピン
18 :穴
20 :台車
21 :車輪
25 :遮断器本体(高圧機器本体)
30 :脱落防止具
31 :本体部
32 :挿入片部
33 :開口部
35 :クランク状部
35d :通し穴
36 :アングル状部
37a :規制端部
R :走行経路