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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114018
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】眼鏡用レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
G02C7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016060
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 栄二
(57)【要約】
【課題】屈折矯正のための所定の屈折力が付加された第1の領域と、第1の領域とは異なる屈折力の第2の領域の2種類の焦点距離となる領域を備え、かつ第2の領域が単数又は同心円状の複数のリング状となる眼鏡用レンズにおいて装用感を向上させた眼鏡用レンズを提供すること。
【解決手段】屈折矯正のための所定の屈折力が付加された第1の領域13と、第1の領域13とは焦点距離の異なる同心円状の第2の領域14A~14Cを備えた眼鏡用レンズであって、第2の領域14A~14Cはリング状の非球面形状に構成され、第2の領域14A~14Cは非点収差によって焦点深度が延長されているようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折矯正のための所定の屈折力が付加された第1の領域と、第1の領域とは異なる屈折力が付加された第2の領域をレンズ表面又はレンズ裏面のいずれかに備えた眼鏡用レンズであって、
前記第2の領域はリング状の非球面形状に構成され、前記第2の領域は非点収差によって焦点深度が延長されていることを特徴とする眼鏡用レンズ。
【請求項2】
リング状の前記第2の領域は等幅の帯状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項3】
リング状の前記第2の領域の幅は0.8mm以上で3.0mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項4】
リング状の前記第2の領域はレンズ中心とする半径3mmの円領域よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項5】
リング状の前記第2の領域は複数が同心円状に間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項6】
複数のリング状の前記第2の領域は幅が同一ではないことを特徴とする請求項5に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項7】
隣接する複数のリング状の前記第2の領域の間隔は同一ではないことを特徴とする請求項5又は6に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項8】
隣接する複数のリング状の前記第2の領域の曲率は同一ではないことを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項9】
リング状の前記第2の領域の中心位置はレンズの光学中心と一致することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項10】
前記第1の領域は非球面形状であることを特徴とする請求項請求項1~9のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項11】
前記第2の領域は前記第1の領域に対して絶対値として0.5D以上の非点収差を持つことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項12】
リング状の前記第2の領域はリング中心位置を通る断面方向における曲率がリング形状の周方向の位相によって変化する部分を有していることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項13】
リング状の前記第2の領域はリング中心位置を通る断面方向において隣接する前記第1の領域と段差なく接続されることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項14】
リング状の前記第2の領域はリング中心位置を通る断面方向において、少なくとも前記第2の領域が前記第1の領域と接続される内側の境界位置における傾きが前記第1の領域の傾きと同じであることを特徴とする請求項13に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項15】
リング状の前記第2の領域はリング中心位置を通る断面方向において、前記第2の領域が前記第1の領域と接続される外側の境界位置における傾きが前記第1の領域の傾きと同じであることを特徴とする請求項14に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項16】
前記第2の領域はレンズ裏面に設けられることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項17】
前記第1の領域はレンズ裏面に設けられることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の眼鏡用レンズ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の眼鏡用レンズは近視進行抑制レンズであることを特徴とする眼鏡用レンズ。
【請求項19】
請求項1~17のいずれかに記載の眼鏡用レンズは遠視進行抑制レンズであることを特徴とする眼鏡用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折矯正のための所定の屈折力が付加された第1の領域と、屈折矯正に寄与しない第2の領域との異なる2種類の焦点距離となる領域を備えた眼鏡用レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からフレネルレンズ形状のレンズがある。フレネルレンズ形状のレンズではレンズ面を同心円状の領域に分割しレンズの厚み(肉)を薄くしたのこぎり状の断面を備えるレンズであり拡大鏡や照明の効率的な拡散等に使用されてきたが、拡大鏡以外にも例えば特許文献1のような屈折異常の進行の治療に使用されるケースがある。特許文献1のレンズは焦点があう第1屈折領に対して焦点があわない同心円状の第2屈折領を備えており、近視や遠視の進行を抑制するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4891249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のレンズはフレネルレンズ形状で第1屈折領と第2屈折領との境界に明かな段差ができるため装用感がよくない。そのため、屈折矯正のための所定の屈折力が付加された第1の領域と、第1の領域とは異なる屈折力の第2の領域の少なくとも2種類の焦点距離となる領域を備えた眼鏡用レンズであって、第2の領域が単数又は同心円状の複数のリング状となる眼鏡用レンズにおいて、装用感を向上させることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、手段1では、屈折矯正のための所定の屈折力が付加された第1の領域と、第1の領域とは焦点距離の異なる第2の領域を備えた眼鏡用レンズであって、前記第2の領域はリング状の非球面形状に構成され、前記第2の領域は非点収差によって焦点深度が延長されているようにした。
このような、眼鏡用レンズであればフレネルレンズで問題となる段差形状を解消できるため装用性のよいレンズを提供することができる。
【0006】
「第1の領域」は球面形状でも非球面形状でもよく、一方「第2の領域」は非球面形状である。非球面形状でなければ曲率の異なる第1の領域と第2の領域とが段差なく接続できないからである。
リング状の第2の領域は1つでもよく複数でもよく、複数の場合には同心円状に配置されることがよく、3つ以上の同心円であることがよい。
第2の領域は非点収差によって焦点深度が第1の領域に対して延長されている領域である。図1に基づいて焦点深度の概要について説明する。図1は本発明に属する眼鏡用レンズ11と、これを装用する装用者の眼球12との間での眼鏡用レンズ11を通過した光線の光路を眼球12の光軸を通る断面において展開したシミュレーション図である。(※図1は、やはり、私が作成したレジメの1ページ目の図にしてください)屈折矯正のための所定の屈折力が付加された第1の領域13では網膜上に焦点を結ぶことができる。一方、第2の領域14では第1の領域13とは異なる屈折力が与えられるため、第2の領域14を通過して網膜方向に向かう光線は非点収差による焦点深度が発生する。
図1では第2の領域14は一例として第1の領域13に対して相対的にプラスの屈折力を与えた状態であるためこの領域を通過する光線は網膜よりも内側に焦点深度が延長された状態である。光線に直行する像平面における点像分布範囲が、ある一定範囲より小さい焦点範囲を、ここでは焦点深度という。ここでは相対的にプラスの屈折力を与えたため内側に焦点が結ばれ網膜より内側に焦点深度が延長されているが、第2の領域14の屈折力が網膜よりも外に焦点が結ばれるような場合では網膜より外側に焦点深度が延長される場合もある。
このように第1の領域13に対して同心円状に複数の第2の領域14を網膜より内側に焦点深度が延長するように配置することで近視の進行を抑制する効果が期待できる。また、図示しないが第1の領域13に対して第2の領域14に相対的にマイナスの屈折力を与えれば網膜よりも外側に焦点深度が延長することとなる。その場合でも第1の領域13に対して同心円状に複数の第2の領域14を配置することで遠視の進行を抑制する効果が期待できる。
【0007】
また、手段2では、リング状の前記第2の領域は等幅の帯状に形成されているようにした。
帯状を構成する外郭は円形状となり、第2の領域は内側と外側の境界で円で包囲された領域となるため、第2の領域の形状は円と同様に無限の対称軸を有する回転対称となり、レンズにおいて生じる可能性のある不要な各種収差が生じにくい。
また、手段3では、リング状の前記第2の領域の幅は0.8mm以上で3.0mm以下であるようにした。
第2の領域が0.8mmより細いと人の目では焦点深度が延長されていることが認識できない可能性があり、一方で、3.0mm以下でないと第1の領域の屈折矯正を阻害するからである。
また、手段4では、リング状の前記第2の領域はレンズ中心とする半径3mmの円領域よりも外側に配置されるようにした。
レンズ中心付近は屈折矯正のための領域として確保することがよいからである。
【0008】
また、手段5では、リング状の前記第2の領域は複数が同心円状に間隔を空けて配置されているようにした。
また、手段6では、複数のリング状の前記第2の領域は幅が同一ではないようにした。
また、手段7では、隣接する複数のリング状の前記第2の領域の間隔は同一ではないようにした。
また、手段8では、隣接する複数のリング状の前記第2の領域の曲率は同一ではないようにした。
また、手段9では、リング状の前記第2の領域の中心位置はレンズの光学中心と一致するようにした。
これらによって、ユーザーの視野の多くの部分で第1の領域に対してレンズ中心方向から外方に多段階に第2の領域が配置され、第1の領域と第2の領域を交互に配置した視線が通過する領域が形成されることとなる。
図2(a)(b)は本発明に属する一例としての実施の形態の眼鏡用レンズ11である。図2(a)(b)に基づいて手段5~手段9の概要を説明する。図2(a)(b)は図1と同様の符号を付して説明する。尚、図2(a)では第1の領域と第2の領域を区別するために便宜的に第2の領域を塗りつぶしで表現している。屈折矯正のための所定の屈折力が付加された第1の領域13をベースとして、ここでは一例として同心円の中心が光学中心となるように3つのリング状の第2の領域14を配設している。リング状の第2の領域14は眼鏡用レンズ11の中心を除いてこのように間隔を空けて配置することがよい。
各リング状の第2の領域14を中心側から順にリング14A、リング14B、リング14Cとした場合に各リング14A~14Cの幅はそれぞれ同じでもよく、それぞれ異なってもよく、異なっている場合には外方ほど広いほうがよい。各リング14A~14Cの幅は上記のように0.8mm以上で3.0mm以下であることがよい。
各リング14A~14Cの間隔、つまりリング14Aとリング14B又はリング14Bとリング14Cとに挟まれた第1の領域13の間隔はそれぞれ同じでもよく、それぞれ異なってもよく、異なっている場合には外方ほど広いほうがよい。間隔は0.8mm以上で3.0mm以下であることがよい。
人間の瞳孔直径は、周囲の明るさに影響されておおよそ2.0~8.0mmの間で変化するとされている。瞳孔に入射する光束の径に対して、リング、もしくはリング間隔を小さくしておくことで、焦点深度延長をともなう屈折矯正が可能になり、見え方が良くなる。
また、各リング14A~14Cの曲率半径はそれぞれ同じでもよく、それぞれ異なってもよく、異なっている場合には順番に外方ほど曲率半径が大きいあるいは外方ほど曲率半径が小さいことがよい。装用感を重視するのであれば、内方ほど第1の領域13との曲率半径の差が小さいほうがよいし、近視進行抑制効果を高めたいのであれば、内方ほど、第1の領域13よりもより大きい曲率半径を持たせた方がよい。曲率半径が大きい以上のリング14A~14Cの関係は例えば4つ以上のリング状の第2の領域14を備える場合でも同様である。
【0009】
また、手段10では、前記第1の領域は非球面形状であるようにした。
上記では第2の領域は非球面形状の条件であったが、第1の領域はそのような限定はない。しかし、第1の領域も非球面形状であることがよりよい。
また、手段11では、前記第2の領域は前記第1の領域に対して絶対値として0.5D以上の非点収差を持つようにした。
第2の領域が第1の領域に対して0.5D以上の非点収差を持つことによって、装用者の眼球に十分な焦点深度を与えることができるからである。
また、手段12では、リング状の前記第2の領域はリング中心位置を通る断面方向における曲率がリング形状の周方向の位相によって変化する部分を有しているようにした。
これによって、例えば焦点深度を小さくするほうが望ましい方向(方位)や、焦点深度を大きくすることでより見えにくくすることが望ましい方向(方位)等、方向(方位)によって最適な見え方を調整することができる。曲率はいいかえればレンズに与えられる屈折力である。屈折力は曲率(曲率半径)がパラメータだからである。位相はある方向を基準とした角度(方位角)で示すことがよい。変化とは例えば第2の領域に設定される曲率を1の領域に設定される曲率に変更するような場合である。このようにする理由の1つとして、変化させることで装用感の向上を期待することができるからである。
このように構成する理由の他の1つとして次のようなものがある。例えば、図3(a)に示すように、装用時において眼鏡のずり落ちによってリング状の第2の領域(リング14A~14C)の上半分がちょうど視線前面に配置されてしまう場合が頻繁にある。視線前面に第2の領域が配置されてしまうと、例えば焦点深度がプラス側に入っている場合では矯正された所定の屈折力よりも少ない調整での目視状態となってしまうこととなる。
従って、その場合に図3(b)のようにリング14A~14Cの上半分の焦点深度を第1の領域に近いあるいは第1の領域と同じ曲率とすることで、リング14A~14Cの上半分がちょうど視線前面に配置されても正しい調整状態で目視することができる。図3(b)では曲率の絶対値が第1の領域に近いあるいは第1の領域と同じほど色が薄く、曲率の絶対値が第1の領域の曲率の絶対値から遠い値であるほど濃くなるように第2の領域をグラデーションによって表現している。もっとも瞳の正面に配置されやすい最上部付近をもっとも第1の領域に近いあるいは第1の領域と同じとなるような曲率とすることがよい。
また、例えば図4Aに示すようにすべてのリング14A~14Cの上半分を第1の領域に近いあるいは第1の領域と同じ曲率で構成するとよい。また、リング14A~14Cの上半分だけの曲率を変化させるのではなく、例えば図4Bに示すように内側と外側のリング14A,14Bの変化させた曲率がそれぞれ異なる位相位置に配置されるようにしてもよい(つまり、方位によって変化させてもよい)。図4Bでは90度位相のずれた4つの方向(ある方向を基準として90度ずつ回転させた方位角方向)に変化させた曲率を配置させ、内側と外側のリング14A,14Bで45度ずれた位相となるように配置させているが、これ以外の数となる位置に変化させた曲率を配置させてもよく。内外のリング14A,14Bの配置もこれに限定されるものではない。図4Bでは図において寸断された部分は第1の領域と同じ曲率であることを示しているが、この寸断された部分の曲率は自由に設定でき、第1の領域と同じ曲率でなくともよい。また、14Aと14Bの間に13の領域を設けなくても良い。図4Aの作図における第2の領域のグラデーションついても図3(b)の場合と同義である。
【0010】
また、手段13では、リング状の前記第2の領域がリング中心位置を通る断面方向において隣接する前記第1の領域と段差なく接続されているようにした。
第1の領域と第2の領域とは屈折力が異なるため、それぞれカーブ形状も異なっている。そのためカーブ形状の異なる2つの領域を段差なく接続することでレンズ面の段差形状が解消されて装用性のよいレンズを提供することができる。
「段差なく接続」とは、滑らかに第1の領域のカーブと第2の領域のカーブが接続されるだけでなく、例えば第1の領域と第2の領域のカーブとが交差して不連続に接続されてもよい。
また、手段14では、リング状の前記第2の領域はリング中心位置を通る断面方向において、少なくとも前記第2の領域が前記第1の領域と接続される内側の境界位置における傾きが前記第1の領域の傾きと同じであるようにした。
これによって、少なくとも第2の領域の内側境界において滑らかに第1の領域のカーブと第2の領域のカーブが接続されるため装用性のよいレンズを提供することができる。
また、手段15では、リング状の前記第2の領域はリング中心位置を通る断面方向において、前記第2の領域が前記第1の領域と接続される外側の境界位置における傾きが前記第1の領域の傾きと同じであるようにした。
これによって、第2の領域の外側境界において滑らかに第1の領域のカーブと第2の領域のカーブが接続されるため装用性のよいレンズを提供することができる。
また、手段16では、前記第2の領域はレンズ裏面に設けられるようにした。
また、手段17では、前記第1の領域はレンズ裏面に設けられるようにした。
また、手段18では、手段1~17のいずれかに記載の眼鏡用レンズを近視進行抑制レンズであるようにした。
また、手段19では、手段1~17のいずれかに記載の眼鏡用レンズを遠視進行抑制レンズであるようにした。
手段18と手段19はこの発明の眼鏡レンズの具体的な用途の一例を挙げている。
【0011】
上述の各手段に示した発明は、任意に組み合わせることができる。例えば、手段1に示した発明の全てまたは一部の構成に手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加える構成としてもよい。特に、手段1に示した発明に、手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加えた発明とするとよい。また、手段1から手段19に示した発明から任意の構成を抽出し、抽出された構成を組み合わせてもよい。手段13~手段15における接続の滑らかさも、適宜調整してもよい。本願の出願人は、これらの構成を含む発明について権利を取得する意思を有する。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の眼鏡用レンズであれば、フレネルレンズで問題となる段差形状が解消されて装用性のよいレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の眼鏡用レンズにおける焦点深度の概要を説明する説明図。
図2】実施の形態1の眼鏡用レンズの第2の領域の配置位置を説明する(a)は背面図、(b)は光学中心での縦断面図。
図3】(a)は装用時において眼鏡のずり落ちによってリング状の第2の領域の上半分がちょうど視線前面に配置されている状態の説明図、(b)はリング状の第2の領域の上半分の焦点深度が第1の領域に近いあるいは第1の領域と同じ曲率とされている場合に(a)と同様に眼鏡がずり落ちた状態の説明図。
図4A】リング状の第2の領域が同心円状に複数配置されている場合に、すべてのリング状の第2の領域の上半分を第1の領域に近いあるいは第1の領域と同じ曲率で構成することを説明する説明図。
図4B】リング状の第2の領域が同心円状に複数配置されている場合に、第2の領域に設定された第1の領域の曲率となる部分が内外のリング状の第2の領域においてずれて配置されている状態の説明図。
図5】実施の形態1における光学中心での断面における光学中心から第2の領域までの距離を説明する断面図。
図6】(a)~(c)は実施の形態1において第1の領域と第2の領域の接続手法を説明する説明図。
図7】(a)~(d)は実施の形態2において第1の領域と第2の領域の接続手法を説明する説明図。
図8】(a)~(c)は比較例において第1の領域と第2の領域の接続手法を説明する説明図。
図9】実施の形態3において方位角に応じて曲率の絶対値が第1の領域の曲率の絶対値から遠い値であるほど濃くなるように第2の領域をグラデーションによって表現した同心円状の第2の領域の配置イメージ図。
図10】実施の形態4において曲率の絶対値が第1の領域の曲率の絶対値から遠い値であるほど濃くなるように第2の領域をグラデーションによって表現した同心円状の第2の領域の配置イメージ図。
図11】実施例1において眼鏡用レンズと眼球の配置関係を説明する説明図。
図12】実施例1において(a)は眼鏡用レンズにおける屈折度数の光学特性を説明するグラフ、(b)は眼鏡用レンズにおけるプリズム度数の光学特性を説明するグラフ。
図13】実施例2において(a)は眼鏡用レンズにおける屈折度数の光学特性を説明するグラフ、(b)は眼鏡用レンズにおけるプリズム度数の光学特性を説明するグラフ。
図14】実施例3において(a)は眼鏡用レンズの上方向における屈折度数の光学特性を説明するグラフ、(b)は眼鏡用レンズの上方向におけるプリズム度数の光学特性を説明するグラフ。
図15】実施例3において(a)は眼鏡用レンズの下方向における屈折度数の光学特性を説明するグラフ、(b)は眼鏡用レンズの下方向におけるプリズム度数の光学特性を説明するグラフ。
図16】実施例4において(a)は眼鏡用レンズの上方向における屈折度数の光学特性を説明するグラフ、(b)は眼鏡用レンズの上方向におけるプリズム度数の光学特性を説明するグラフ。
図17】実施例4において(a)は眼鏡用レンズの下方向における屈折度数の光学特性を説明するグラフ、(b)は眼鏡用レンズの下方向におけるプリズム度数の光学特性を説明するグラフ。
図18】比較例において(a)は眼鏡用レンズにおける屈折度数の光学特性を説明するグラフ、(b)は眼鏡用レンズにおけるプリズム度数の光学特性を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、眼鏡用レンズの具体的な実施の形態について図面に従って説明をする。
(実施の形態1)
実施の形態1の眼鏡用レンズ11は、コンピュータを内蔵した加工装置であるNC装置に加工データを入力してプログラムによってコンピュータを制御することで前駆体レンズとしてのセミフィニッシュトブランクを切削加工して作製される。図2及び図5に示すように、眼鏡用レンズ11はフレーム入れ加工をする前のいわゆる丸レンズと称される円形の外形のメニスカスレンズ形状であるSV(単焦点)レンズである。眼鏡用レンズ11はメーカーあるいは眼鏡店でユーザーの要望に応じたフレーム形状(玉型形状)にカットされる。実施の形態1の眼鏡用レンズ11は内面(凹面)に装用者の処方に従って矯正度数が与えられた第1の領域13と、焦点深度が延長される同心円状に配置された3つのリング状の第2の領域14が形成されている。3つのリング状の第2の領域14は光学中心寄りの内側から順にリング14A、14B、14Cとする。
【0015】
眼鏡用レンズ11の加工データを算出して眼鏡レンズを加工する一例を示す。S度数、プリズム等の装用者固有のレンズ度数に関するデータは装用者に応じて設定される。
基本的に表面(凸面)を球面として、内面(凹面)についてユーザーの処方に従った矯正ゾーンである第1の領域13の形状データと、光学中心を円形状のリングの中心とする延長ゾーンである第2の領域14の形状データとを合成した加工データを用いてNC装置によって加工する。
眼鏡レンズ1を加工する際には、レンズ表面の幾何中心を通り、表面に垂直な直線方向にサグ量を与えるようにする。つまり、加工データはサグデータである。図5は光学中心を通る直線を断面とした断面図である。この方向からの形態では同心円状に配置された3つのリング状の第2の領域14が第1の領域13と交互に配置された図となる。図5に示すように、加工位置を示す三次元座標において、レンズの厚み方向をZ軸とし、レンズとして装用した際の垂直方向をY軸方向とし、Y軸方向に直交する奥行き方向をX軸方向とする。
以下、このように配置される第1の領域13と第2の領域14を加工する際の加工データの設計手法の一例について番号を付して説明する。以下では図5においてもっとも光学中心に近い位置のリング14Aを計算の例として説明するが、他の位置についても中心からの距離が異なるだけで同様の計算がされる。
(1)レンズ光学中心から径方向dの距離は、d=sqrt(X+Y)で示される。この式に従ってレンズ光学中心からリング14Aまでの距離を求める。距離はリング14Aと交差する幅方向の2つの境界までの距離d1と距離d2とする。
(2)まず、矯正ゾーンである第1の領域13のサグ値を求める。サグ値は中心からの距離dとレンズ光学中心において屈折矯正に必要な屈折力を持たせるための曲率Ccとの関数である。第1の領域13のサグ値Zcは下記数1の式のように一般化できる。数1においてf(Cc,d)の前半は、Ccを曲率とする球面の光学中心を通る断面の曲線を表し、f(Cc,d)の後半は任意に追加される非球面量である。A1~A4は任意の非球面係数である。
【0016】
【数1】
【0017】
(3)次に、延長ゾーンであるリング14Aのサグ値を上記と同様に求める。リング14Aでは曲率、非球面係数は第1の領域13とは異なり、それぞれCf、B1~B4とする。第1の領域13のサグ値Zcと同様にリング14Aのサグ値Zfは下記数2の式のように一般化できる。数1と同様にf(Cf,d)の前半は、Cfを曲率とする球面の光学中心を通る断面の曲線を表し、Cfの後半は任意に追加される非球面量である。B1~B4は任意の非球面係数である。Cfはリング14Aが第1の領域13よりも相対的に正の屈折力側に焦点深度を持つ、とするならばCc>Cfであり、負の屈折力側に焦点深度を持つ、とするならばCc>Cfである。
【0018】
【数2】
【0019】
(4)次に、第1の領域13と第2の領域14であるリング14Aとの接続手法について図面に基づいて説明する。
図6(a)のようにカーブR1をベースとしてリング14Aが設定されるある領域FEにカーブR2を接合する場合を考える。領域FEの光学中心側の境界は位置d1となり外側の境界は位置d2となる。カーブR1とカーブR2は曲率が違うため両者が一致することはない。図6(b)のようにカーブR1に対してカーブR2を平行移動して接近させ、位置d1で交叉させて両者の座標を一致させる。次いで位置d1を基準としてカーブR2を傾けて(回転させて)位置d2でカーブR1に対してカーブR2を交叉させて両者の座標を一致させる(図6(c)の状態)。これによってカーブR1をベースとするレンズ面に対して異なるカーブR2を段差なく接続させることができる。光学中心を通る断面について第1の領域13とリング14Aをこの図6(c)のようなカーブ面となるようにサグ値を決定する。光学中心から全方向に向かってこのようにリング14Aを傾けるように設計することでリング14Aは非球面化することとなる。
一方、このような接続手法を採用しないと、例えば図8(a)~(c)に示すようにd1又はd2のいずれか(あるいは両方)でフレネルレンズのように段差ができてしまうこととなる。図8ではリング14Aの内側の境界線となる距離d1において段差ができてしまった状態を示している。
【0020】
このような設計思想に基づいて具体的に光学中心を通る断面方向のXY座標に対応するZ座標の決定方法について説明する。
イ)d<d1 のとき又はd>d1 のとき
Z=f(Cc,d) 、つまりサグ値は上記数1の式で示される。
ロ)d1≦d≦d2のとき
サグ値は下記数3の式で示される。数3の式は数2の式とこれをキャンセルする2つの式を足したものである。数3の式において第1項は数2の式であり曲率Cfの曲面(非球面係数がなければ球面)形状を表す。第2項は、d1の地点での曲率Cfの曲面と曲率Ccの曲面サグ差をキャンセルする項となる。第3項は、d1-d2区間の、曲率Cfの曲面の傾きと曲率Ccの曲面の傾きの差をキャンセルする項となる。
【0021】
【数3】
【0022】
実施の形態1では数3の式に基づいて眼鏡用レンズ11の裏面を加工する。このような眼鏡用レンズ1では、第1屈折領と第2屈折領との境界に段差ができないため装用感が向上することとなる。
【0023】
(実施の形態2)
実施の形態2は実施の形態1とは異なる設計手法(特に第1の領域13と第2の領域14との接続手法)によって眼鏡用レンズ11の加工データを算出する例である。
実施の形態2においては実施の形態1の上記(1)~(3)については同様であるため説明を省略し、実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。実施の形態1の(4)以下の説明に対応する内容について(5)として以下に説明する。
(5)
図7(a)のようにカーブR1をベースとしてリング14Aが設定されるある領域FEにカーブR2を接合する場合を考える。領域FEの光学中心側の境界は位置d1となり外側の境界は位置d2となる。カーブR1とカーブR2は曲率が違うため両者が一致することはない。実施の形態1の図6(b)と同様にカーブR1に対してカーブR2を平行移動して接近させ、位置d1で交叉させて両者の座標を一致させる(図7(b)の状態)。次いで位置d1を基準として矢印のようにカーブR2を傾けて(回転させて)カーブR1の傾きと位置d1(あるいは位置d1付近)において一致させる(図7(c)の状態)。これによって領域FEのカーブとなるカーブR2はそれよりも光学中心側(内側)のカーブR1と滑らかに接続されることとなる。光学中心から全方向に向かってこのようにリング14Aを傾けるように設計することでリング14Aは非球面化することとなる。
そして、図7(d)のように位置d2でカーブR1とカーブR2を切断し、位置d2で領域FEのカーブR2にカーブR1を接続させる。
【0024】
このような設計思想に基づいて具体的に光学中心を通る断面方向のXY座標に対応するZ座標の決定方法について説明する。
イ)d<d1 のとき
Z=f(Cc,d) 、つまりサグ値は上記数1の式で示される。
ロ)d1≦d≦d2のとき
サグ値は下記数4の式で示される。数4の式は数2の式とこれをキャンセルする2つの式を足したものである。数4の式において第1項は数2の式であり曲率Cfの曲面(非球面係数がなければ球面)形状を表す。第2項は、d1の地点での曲率Cfの曲面と曲率Ccの曲面サグ差をキャンセルする項となる。これらについては実施の形態1と同様である。
第3項は、d1地点で微分値を求めることでd1地点での傾きの差をキャンセルする項となる。ここではd1地点での傾きの差が極めて小さいということで0.001という小さな数値を具体的に一例として使用した。
ハ)d>d2のとき
サグ値は下記数5の式で示される。d>d2では第1の領域13のカーブを使用するが、上記図7(d)での説明のようにカーブR1はカーブR2とはZ軸方向の位置がずれこととなるため、大括弧[ ]で示された第2項を引いてもともとのカーブR1のZ軸方向の値をキャンセルしている。
【0025】
【数4】
【0026】
【数5】
【0027】
実施の形態2では、カーブR1をベースとするレンズ面に対して異なるカーブR2を段差なく接続させることができる。実施の形態1との違いは領域FEの内側境界線となる位置d1付近で滑らかにカーブR1とカーブR2が接続されるため、実施の形態1よりも更に装用感が向上することが期待できる。
【0028】
(実施の形態3)
実施の形態3は実施の形態1や実施の形態2の眼鏡用レンズ11のバリエーションである。実施の形態1と実施の形態2は光学中心から全方向に向かって第2の領域14に一様な傾きを設ける例であったが、実施の形態3では第2の領域14(リング14A~14C)の曲率Cfを方位によって変化させるようにしたものである。
図9は曲率の絶対値が第1の領域の曲率の絶対値から遠い値であるほど濃くなるように第2の領域をグラデーションによって表現した第2の領域の配置イメージ図である。
レンズ光学中心からあるX軸方向を起点とした方位角をとる。図では一例として装用時の水平方向を0として方位角θとする。
第1の領域13(矯正ゾーン)の曲率Ccと第2の領域14(FEゾーン)の曲率Cfとの差分をdCとし、dC(Cc- Cf)とする。
各方位角での曲率をCで表すと、下記数6の式となる。つまり、数6の式は第2の領域14の基準となる曲率Cfを任意の方位角θに応じて変更するための式である。この式を実施の形態1又は実施の形態2に適用することによって第2の領域14における焦点深度を方位角θに応じて変更させることができる。
図9はレンズの3つの同心円状の第2の領域14において、下方向で最も大きい焦点深度を持ち、レンズの上方向で焦点深度の延長量が0、つまり第1の領域13と同じ焦点深度となっているイメージ図である。実施の形態3でも上記と同様に装用感が向上することが期待でき、眼鏡のずり落ちの際に視野が焦点深度が延長された状態で近方視することがない。
【0029】
【数6】
【0030】
(実施の形態4)
実施の形態4は実施の形態1~実施の形態3の眼鏡用レンズ11のバリエーションである。実施の形態1~実施の形態3では複数の第2の領域14(リング14A~14C)は間に曲率が一定の第1の領域13を挟んで同心円状に配置する例であったが、実施の形態4ではリング14A~14Cにおいて変化させる曲率の方位を内外のリング14A~14Cにおいてずらすことで、リング状のリング14A~14Cを隣接して同心円状に配置させるようにした例である。実施の形態4ではリング14A~14C間に第1の領域13が挟まれない例である。図10は曲率の絶対値が第1の領域の曲率の絶対値から遠い値であるほど濃くなるように第2の領域をグラデーションによって表現した第2の領域の配置イメージ図である。
上記実施の形態3と同様に第1の領域13(矯正ゾーン)の曲率Ccとリング14A~14C(FEゾーン)の曲率Cfとの差分をdCとし、dC(Cc- Cf)とし、任意の方位角θとすると、もっとも内側のリング14Aの曲率Cは方位に応じて、
C=Cf+dC*(cosθ)とされる。
同様にリング14Bの曲率Cは方位に応じて、
C=Cf+dC*{1-(cosθ)}とされる。
同様にリング14Cの曲率Cは方位に応じて、
C=Cf+dC*(cosθ)とされる。
実施の形態4でも上記と同様に装用感が向上することが期待できる。
【0031】
(実施例1)
実施例1は上記の実施の形態1に対応した実施例である。
図11に示すように、視野角40度で実施の形態1の眼鏡用レンズ11を作製し、これを目視するシミュレーションを実行した。
作製した眼鏡用レンズ11の第1の領域13の屈折力は-2.00Dである。矯正ゾーンと交互配置された3つのリング14A~14Cは矯正ゾーンに対して相対的に+2.5D正の等価屈折力を持つレンズを作製した。レンズ表面の曲率=0.00612、
第1の領域13の曲率=0.00947、リング14A~14Cの曲率=0.00281とした。
第2の領域14の光学中心からの距離(位置)は次の通りである。
d<5mm 第1の領域13
d=5mm~7mm リング14A
d=7mm~9mm 第1の領域13
d=9m~11m リング14B
d=11mm~13mm 第1の領域13
d=13mm~15mm リング14C
d>15mm 第1の領域13
この眼鏡用レンズ11をシミュレーションした結果を図12(a)(b)に示す。
図12(a)は縦軸が水平方向から40度まで俯仰した角度であり、横軸が屈折度数となる回旋点基準で変位(眼球を回転)させたグラフである。図12(a)の3種類のカーブについてグラフ上の表したものであり、Aは円周方向の屈折力、Bは放射線方向の屈折力、Cは等価球面度数(=0.5*(A+B))をそれぞれ示すグラフである。カーブは基本的に第1の領域13の特性を示し、途中で途切れて側方にずれている部分がリング14A~14Cの特性を示している。
図12(a)のグラフからいずれの見え方もリング14A~14Cにおいては角度の変化に伴って屈折度数が緩やかに変化しており、このゾーンでの急激な屈折力の変化がないため、装用感がよいことがわかる。
図12(b)は縦軸が水平方向から40度まで俯仰した角度であり、横軸はプリズム度数となる回旋点基準で変位させたグラフである。プリズムはプラスが基底が上方となる。図12(b)でもカーブは基本的に第1の領域13の特性を示し、途中で途切れている部分が途中でリング14A~14Cの特性を示している。Dのカーブは水平~40度俯仰する間のプリズムの変化であり、Eのカーブは、プリズムジャンプの量を表している。図12(b)からプリズム度数も変化が穏やかで装用感がよいことがわかる。
【0032】
(実施例2)
実施例2は上記の実施の形態2に対応した実施例である。
実施例2も実施例1と同様に図11に示すように、視野角40度で実施の形態1の眼鏡用レンズ11を作製し、実施例1と同様にこれを目視するシミュレーションを実行した。作製した眼鏡用レンズ11の各種数値条件は実施例1の眼鏡用レンズ11と同じである。図13(a)(b)のグラフに実施例2のシミュレーション結果を示す。これらの結果から実施例1と同様に装用感は穏やかである。実施例2では特に図13(b)に示すように第1の領域13とリング14A~14Cとの境界でプリズム度数の差が小さい。
【0033】
(実施例3)
実施例3は上記の実施の形態3に対応した実施例である。
第1の領域13(矯正ゾーン)の曲率Cc=0.00947、第2の領域14(FEゾーン)の曲率Cf=0.00281とした。他の数値条件は実施例1と同様にして実施の形態3の眼鏡用レンズ11を作製し、実施例1と同様にこれを目視するシミュレーションを実行した。
図14(a)(b)のグラフと図15(a)(b)のグラフに実施例3のシミュレーション結果を示す。図14(a)(b)のグラフはレンズの光学中心から上半分の屈折度数とプリズム度数の光学特性であり、図15(a)(b)のグラフはレンズの光学中心から下半分の屈折度数とプリズム度数の光学特性である。
実施例3の眼鏡用レンズ11では、レンズ上方の第2の領域14(FEゾーン)では焦点深度延長効果がなく、通常単焦点レンズと同等の見え方が実現できるので、実施例1やよりもさらに装用感がよい。
【0034】
(実施例4)
実施例4は上記の実施の形態4に対応した実施例である。
実施例3と同様に第1の領域13(矯正ゾーン)の曲率Cc=0.00947、第2の領域14(FEゾーン)の曲率Cf=0.00281とした。他の数値条件は実施例1と同様にして実施の形態3の眼鏡用レンズ11を作製し、実施例1と同様にこれを目視するシミュレーションを実行した。
図16(a)(b)のグラフと図17(a)(b)のグラフに実施例3のシミュレーション結果を示す。図16(a)(b)のグラフはレンズの光学中心から上半分の屈折度数とプリズム度数の光学特性であり、図17(a)(b)のグラフはレンズの光学中心から下半分の屈折度数とプリズム度数の光学特性である。
実施例43の眼鏡用レンズ11では、レンズ上方の第2の領域14(FEゾーン)が各方位で寸断されることによって同心円状の空間の歪みが寸断され実施例1よりも装用感が向上する。
【0035】
(比較例)
比較例は図8のように第2の領域の内側境界線で段差ができてしまう場合のシミュレーションである。
作製した眼鏡用レンズ11の第1の領域13の屈折力は-2.00Dである。矯正ゾーンと交互配置された3つのリング14A~14Cは矯正ゾーンに対して相対的に+2.5D正の等価屈折力を持つレンズを作製した。レンズ表面の曲率=0.00612、
第1の領域13の曲率=0.00947、リング14A~14Cの曲率=0.614とした。
第2の領域14の光学中心からの距離(位置)は次の通りである。
d<5mm 第1の領域13
d=5mm~7mm リング14A
d=7mm~9mm 第1の領域13
d=9m~11m リング14B
d=11mm~13mm 第1の領域13
d=13mm~15mm リング14C
d>15mm 第1の領域13
実施例1~4と同様にこれを目視するシミュレーションを実行した。
図18(a)(b)のグラフに比較例のシミュレーション結果を示す。比較例の眼鏡用レンズ11でもリング14A~14Cで正の屈折力を発揮するが、第1の領域13との境界におけるリング14A~14Cとのプリズム度数の大きな差により、眼鏡用レンズとしては著しく装用感の悪いレンズである
【0036】
上記実施の形態は本発明の原理及びその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記実施の形態におけるリング状の第2の領域14の数や幅等については一例であり、他の形態で実施してもよい。実施例も同様であり、数値は適宜変更可能である。
・実施の形態2において、例えばd2に接続させるカーブR1を傾けて第2の領域14を構成するカーブR2に滑らかに接続するようにしてもよい。
・実施の形態1~4について焦点深度がプラス側に入っている場合で説明したが、焦点深度がマイナス側に入っている場合についても同様の設計思想で設計することができる。また、上記では矯正した屈折力はマイナスレンズであったが、プラスレンズであってもよい。
・上記実施の形態4では第1の領域13と第2の領域14を交互に配置するのではなく、第2の領域14である3つのリング14A~14Cの周方向、つまり位相に応じて曲率を変化させるようにしていた。そして隣接するリング形状の第2の領域14同士の曲率がずれるように配置させていた。この配置はリング形状の第2の領域14が3つ以上の場合には、
奇数位置のリング形状の第2の領域14では
第1,3,5,7・・・の位置 C=Cf+dC*(cosθ)
偶数位置のリング形状の第2の領域14では
第2,4,6・・・の位置 C=Cf+dC*{1-(cosθ)
とすることで一般化することができる。ここでは180度位相がずれた例であるが他の角度で位相をずらしてもよい。
【0037】
本願発明は上記の実施の形態に記載の構成に限定されない。各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素、又は発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材とてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
11…眼鏡用レンズ、13…第1の領域、14A~14C…第2の領域。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18