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特開2023-114039感光性樹脂支持構造体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114039
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】感光性樹脂支持構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/00 20060101AFI20230809BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230809BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230809BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20230809BHJP
   B41N 1/12 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B41C1/00
C09J7/38
B32B27/00 Z
G03F7/00 502
B41N1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016115
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】井戸 心慈
【テーマコード(参考)】
2H084
2H114
2H196
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
2H084AA30
2H084AA32
2H084BB04
2H084CC01
2H114AA01
2H114AA23
2H114AA30
2H114BA02
2H114DA47
2H114DA49
2H114DA56
2H114GA02
2H196AA02
2H196BA01
2H196EA02
2H196GA08
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK25B
4F100AK25G
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AT00
4F100CB04D
4F100CB04G
4F100DD02B
4F100EJ171
4F100EJ172
4F100EJ17C
4F100GB41
4F100JL113
4J004AA05
4J004AA09
4J004AA10
4J004AA11
4J004AB01
4J004BA02
4J004DB02
4J004FA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、空気溜まりの発生を抑制できるエアー抜け性を有し、かつ、長期間使用した際でも版胴から版が剥がれるリスクを抑えるために、支持体端部にインキ浸透を起こさないような十分なシール性を有する感光性樹脂支持構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】支持体cと粘着剤層dと支持体bとをこの順に積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体を圧着処理する圧着工程と、を含み、前記圧着工程において、前記積層体の圧着部分の濁度の変化率((圧着前の積層体の濁度-圧着後の積層体の濁度)/圧着前の積層体の濁度×100)を2.0%以上とし、前記粘着剤層dは、前記支持体bに接する第1の面とは反対側の第2の面上に開口した凹部を有し、該凹部の深さが10μm以上である、感光性樹脂支持構造体の製造方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体cと粘着剤層dと支持体bとをこの順に積層して積層体を形成する積層工程と、
前記積層体を圧着処理する圧着工程と、を含み、
前記圧着工程において、前記積層体の圧着部分の濁度の変化率((圧着前の積層体の濁度-圧着後の積層体の濁度)/圧着前の積層体の濁度×100)を2.0%以上とし、
前記粘着剤層dは、前記支持体bに接する第1の面とは反対側の第2の面上に開口した凹部を有し、該凹部の深さが10μm以上である、感光性樹脂支持構造体の製造方法。
【請求項2】
前記粘着剤層dが、前記支持体bの、前記支持体c側の面の全面に存在する、請求項1に記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
【請求項3】
前記粘着剤層dが、支持体eを含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
【請求項4】
前記積層工程と前記圧着工程との間に、前記積層体の前記支持体bの、前記粘着剤層dに接する面とは反対側の面上に感光性樹脂層aを積層する感光性樹脂層形成工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
【請求項5】
前記圧着工程において、圧着する際に、前記支持体bの、前記粘着剤層dに接する面とは反対側の面上から前記支持体cの方向に圧力をかける、請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
【請求項6】
前記圧着工程において、前記粘着剤層dの端部から面中心部に向かって少なくとも幅2mmの範囲を圧着する、請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
【請求項7】
前記圧着工程において、前記粘着剤層dの端部から面中心部に向かって少なくとも幅10mmの範囲を圧着する、請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
【請求項8】
前記圧着工程における圧着時の圧力を300g/cm2以上5000g/cm2以下とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法で感光性樹脂構造体を製造する製造工程と、前記製造工程で製造した前記感光性樹脂支持構造体とネガフィルムとを配置し、前記ネガフィルムの背面側から活性光線を照射する露光工程と、前記露光工程において前記活性光線が照射されなかった領域の感光性樹脂組成物を除去する現像工程と、を含む、感光性樹脂レリーフ版の製造方法。
【請求項10】
支持体cと粘着剤層dと支持体bとがこの順に積層された積層体を含み、前記積層体の一部に圧着部分を有し、前記積層体の圧着部分の濁度が30%以下であり、
前記圧着部分と未圧着部分との濁度の差((未圧着部分の積層体の濁度-圧着部分の積層体の濁度)/未圧着部分の積層体の濁度×100)が2.0%以上であり、
前記粘着剤層dは、前記支持体bに接する第1の面とは反対側の第2の面上に開口した凹部を有し、該凹部の深さが10μm以上である、感光性樹脂支持構造体。
【請求項11】
前記粘着剤層dが、前記支持体bの、前記支持体c側の面の全面に存在する、請求項10に記載の感光性樹脂支持構造体。
【請求項12】
前記粘着剤層dが、支持体eを含む、請求項10又は11に記載の感光性樹脂支持構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂支持構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂を用いたレリーフ版の製造の多くは、一定版厚に成型した感光性樹脂組成物層に活性光線を照射し、印刷版のレリーフ部分となる感光性樹脂組成物層のみを光重合反応により硬化させる露光工程を行った後、レリーフ部分以外の未硬化の感光性樹脂組成物を所定の洗浄液(現像液)で溶解除去し、あるいは膨潤分散させて機械的に除去することにより、硬化部分のみをレリーフとして版表面に出現させる現像工程を含む。
【0003】
上記のような感光性樹脂を用いたレリーフ版は、フレキソ印刷用途や型取り用途に広く使用されている。
レリーフ形成には感光性樹脂組成物の光硬化物を固定する支持体が用いられる。前記のいずれの用途においても、得られたレリーフ版は着脱可能な粘着剤によりその支持体背面を用途に応じた対象物に貼り付け、固定して用いられる。ここで、支持体はレリーフ版の易取り扱い性、機械的強度、或いは寸法精度を確保する役割も果たしている。
このような支持体として、例えば、特許文献1においては、支持体の感光性樹脂と接する面とは反対の面に、予め粘着剤層を有する支持構造体が開示されている。また、レリーフ版を対象物に貼り付けるその他の方法としては、支持体背面と対象物とを両面テープで貼り合わせる方法も存在する。
【0004】
特許文献1は、支持体上に接着剤層(本発明における粘着剤層)、及びその保護膜が設けられている支持構造体を開示している。そして、特許文献1に記載の支持構造体は、接着剤層が支持体と接している面とは反対の面上に保護膜を剥がした状態で連通する空気の通過路を有していることを特徴とする。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている感光性樹脂支持構造体は、支持体の背面からの露光手段に依って支持体上に高精細なレリーフを形成させる用途(例えば、特許文献2に開示されている型取り版の製版方法、特許文献3に開示されているフレキソ印刷版を目的の位置に貼りつける際の合マークの形成方法、特許文献4に開示されている印刷版の情報を支持体上に形成させる用途)では、接着剤層や粘着剤層が有する空気の通過路部分とその他の部分とで感光性樹脂組成物の硬化性が異なることから目的のレリーフ形状が得られない場合がある。
【0006】
特許文献5は、粘着剤層が有する空気の通過路部分とその他の部分との紫外線透過率の差異を減じることにより、感光性樹脂組成物の硬化性を均一化した感光異性樹脂支持構造体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3094647号公報
【特許文献2】特開2004-317978号公報
【特許文献3】特開昭61-32058号公報
【特許文献4】特開2000-181051号公報
【特許文献5】特開2007-139911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献5に開示されている感光性樹脂支持構造体は、版胴に貼り付けた状態で洗浄剤液による洗浄を行う際、前記粘着剤層が有する空気の通過路部分に洗浄剤液が浸透してしまい、十分なシール性が得られず、感光性樹脂支持構造体が版胴から剥離するおそれがあり、改善の余地がある。
【0009】
そのため、洗浄剤液の浸透を防ぐために、粘着機能を有する感光性樹脂支持構造体であって、空気の通路部分を有し、空気溜まりの発生を抑制し、かつ、十分なシール性を有し、版胴からの版剥離抑制を実現した感光性樹脂支持構造体が求められている。
【0010】
そこで、本発明においては、空気溜まりの発生を抑制できるエアー抜け性を有し、かつ、長期間使用した際でも版胴から版が剥がれるリスクを抑えるために、支持体端部にインキ浸透を起こさないような十分なシール性を有する感光性樹脂支持構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の構成の感光性樹脂支持構造体とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
【0012】
〔1〕
支持体cと粘着剤層dと支持体bとをこの順に積層して積層体を形成する積層工程と、
前記積層体を圧着処理する圧着工程と、を含み、
前記圧着工程において、前記積層体の圧着部分の濁度の変化率((圧着前の積層体の濁度-圧着後の積層体の濁度)/圧着前の積層体の濁度×100)を2.0%以上とし、
前記粘着剤層dは、前記支持体bに接する第1の面とは反対側の第2の面上に開口した凹部を有し、該凹部の深さが10μm以上である、感光性樹脂支持構造体の製造方法。
〔2〕
前記粘着剤層dが、前記支持体bの、前記支持体c側の面の全面に存在する、〔1〕に記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
〔3〕
前記粘着剤層dが、支持体eを含む、〔1〕又は〔2〕に記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
〔4〕
前記積層工程と前記圧着工程との間に、前記積層体の前記支持体bの、前記粘着剤層dに接する面とは反対側の面上に感光性樹脂層aを積層する感光性樹脂層形成工程をさらに含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
〔5〕
前記圧着工程において、圧着する際に、前記支持体bの、前記粘着剤層dに接する面とは反対側の面上から前記支持体cの方向に圧力をかける、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
〔6〕
前記圧着工程において、前記粘着剤層dの端部から面中心部に向かって少なくとも幅2mmの範囲を圧着する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
〔7〕
前記圧着工程において、前記粘着剤層dの端部から面中心部に向かって少なくとも幅10mmの範囲を圧着する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
〔8〕
前記圧着工程における圧着時の圧力を300g/cm2以上5000g/cm2以下とする、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の感光性樹脂支持構造体の製造方法。
〔9〕
〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の製造方法で感光性樹脂構造体を製造する製造工程と、前記製造工程で製造した前記感光性樹脂支持構造体とネガフィルムとを配置し、前記ネガフィルムの背面側から活性光線を照射する露光工程と、前記露光工程において前記活性光線が照射されなかった領域の感光性樹脂組成物を除去する現像工程と、を含む、感光性樹脂レリーフ版の製造方法。
〔10〕
支持体cと粘着剤層dと支持体bとがこの順に積層された積層体を含み、前記積層体の一部に圧着部分を有し、前記積層体の圧着部分の濁度が30%以下であり、
前記圧着部分と未圧着部分との濁度の差((未圧着部分の積層体の濁度-圧着部分の積層体の濁度)/未圧着部分の積層体の濁度×100)が2.0%以上であり、
前記粘着剤層dは、前記支持体bに接する第1の面とは反対側の第2の面上に開口した凹部を有し、該凹部の深さが10μm以上である、感光性樹脂支持構造体。
〔11〕
前記粘着剤層dが、前記支持体bの、前記支持体c側の面の全面に存在する、〔10〕に記載の感光性樹脂支持構造体。
〔12〕
前記粘着剤層dが、支持体eを含む、〔10〕又は〔11〕に記載の感光性樹脂支持構造体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、粘着機能を有する感光性樹脂支持構造体が空気の通路部分を有している構成である場合において、空気溜まりの発生を抑制した十分なエアー抜け性を実現するとともに、インキの浸透が一切ないシール性も実現した感光性樹脂支持構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】感光性樹脂支持構造体を形成する構造体の一例の概略断面図を示す。
図2】感光性樹脂支持構造体における粘着剤層と被着体とが接触する状態の一例の概略断面図を示す。
図3】(A)被着体に接触前の感光性樹脂支持構造体を形成する構造体の概略断面図を示す。(B)被着体に接触後の感光性樹脂支持構造体の概略断面図を示す。
図4】本発明の感光性樹脂支持構造体の一例の概略断面図を示す。
図5】本発明の感光性樹脂支持構造体の一例の概略上面図を示す。
図6】感光性樹脂支持構造体のシール性を評価する装置の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0016】
〔感光性樹脂支持構造体の製造方法〕
本実施形態の感光性樹脂支持構造体の製造方法は、
支持体cと粘着剤層dと支持体bとをこの順に積層して積層体を形成する積層工程と、
前記積層体を圧着処理する圧着工程と、を含み、
前記圧着工程において、前記積層体の圧着部分の濁度の変化率((圧着前の積層体の濁度-圧着後の積層体の濁度)/圧着前の積層体の濁度×100)を2.0%以上とし、
前記粘着剤層dは、前記支持体bに接する第1の面とは反対側の第2の面上に開口した凹部を有し、該凹部の深さが10μm以上である。
このような製造方法により得られる感光性樹脂支持構造体は、例えば、粘着機能を有する感光性樹脂支持構造体が空気の通路部分を有している構成である場合において、空気溜まりの発生を抑制した十分なエアー抜け性を実現するとともに、インキの浸透が一切ないシール性も実現できる。
【0017】
支持体bの厚さは、10μm以上、500μm以下であることが好ましく、50μm以上、250μm以下であることがより好ましい。
支持体cの厚さは、10μm以上、500μm以下であることが好ましく、50μm以上、250μm以下であることがより好ましい。
粘着剤層dの厚さは、10μm以上、200μm以下であることが好ましく、20μm以上、100μm以下であることがより好ましい。
【0018】
支持体b及び粘着剤層dの面積は等しいことが好ましく、支持体cの面積は、支持体b及び粘着剤層dの面積よりも大きいことが好ましい。
【0019】
前記圧着工程において、前記積層体の圧着部分の濁度の変化率は、2.0%以上5.0%以下であることが好ましく、2.0%以上4.0%以下であることがより好ましく、2.0%以上3.5%以下であることが更に好ましく、2.1%以上3.2%以下であることが特に好ましい。前記圧着工程において、前記積層体の圧着部分の濁度の変化率が前記範囲内であると、得られる感光性樹脂支持構造体は、支持体cと粘着剤層dとの密着性が上がるために、より長期間シール性に優れた状態を維持することができる傾向にある。
前記圧着工程において、前記積層体の圧着部分の濁度の変化率を上述した特定の範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、ローラー等で圧着する力を調整する方法が挙げられる。
なお、本実施形態において、前記積層体の圧着部分の濁度の変化率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0020】
前記粘着剤層dにおいて、前記凹部の深さは、10μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上35μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。前記粘着剤層dにおいて、前記凹部の深さが前記範囲内であると、感光性樹脂支持構造体は、エアー溜まりが少なく、シール性が良好になる傾向にある。
前記粘着剤層dにおいて、前記凹部の深さを上述した特定の範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、事前にライナーの凹凸サイズを所定のサイズに加工する方法が挙げられる。
なお、本実施形態において、前記凹部の深さは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
前記粘着剤層dは、前記支持体bの、前記支持体c側の面の全面に存在することが好ましい。前記粘着剤層dが、このように支持体bの、支持体c側の面の全面に存在すると、感光性樹脂支持構造体は、シール性に優れる傾向にある。
【0022】
前記粘着剤層dは、支持体eを含んでいてもよい。具体的には、例えば、前記粘着剤層dは、2つの粘着剤層d1及びd2の間に支持体eを含む粘着剤層(例えば、両面テープ)であってもよい。
【0023】
前記積層工程と前記圧着工程との間に、前記積層体の前記支持体bの、前記粘着剤層dに接する面とは反対側の面上に感光性樹脂層aを積層する感光性樹脂層形成工程をさらに含むことが好ましい。
したがって、本実施形態の感光性樹脂支持構造体は、感光性樹脂層aを含む場合も包含する。図4に、本実施形態の感光性樹脂支持構造体の一例の概略断面図を示し、図5に、本実施形態の感光性樹脂支持構造体の一例の概略上面図を示す。図4に示すとおり、本実施形態の感光性樹脂支持構造体は、下から順に支持体c、粘着剤層d及び支持体bが積層された積層体を有し、さらに、支持体bの、前記粘着剤層dに接する面とは反対側の面上に感光性樹脂層aを有することが好ましい。
【0024】
前記圧着工程において、圧着する際に、前記支持体bの、前記粘着剤層dに接する面とは反対側の面上から前記支持体cの方向に圧力をかけることが好ましい。このように圧力をかけることにより、作業台などで作業した場合等に、例えば、図4に示すような感光性樹脂aが作業台に触れないため、傷や汚れなどが付くリスクを低減できる傾向にある。
【0025】
前記圧着工程において、前記積層体の圧着する部分は、前記粘着剤層dの端部から面中心部に向かって少なくとも幅2mmの範囲であることが好ましく、少なくとも幅10mmの範囲であることがより好ましい。ここで、端部とは、例えば、図5に示す感光性樹脂支持構造体のように、支持体bの表面の面積の方が支持体cより小さく、粘着剤層dが、支持体bと接する面の全面に存在する場合、支持体bの外周部分fが端部である。
【0026】
前記圧着工程における圧着時の圧力は、500g/cm2以上5000g/cm2以下とすることが好ましく、800g/cm2以上2000g/cm2以下であることがより好ましい。
【0027】
前記圧着工程における圧着時の温度は、0℃以上、50℃以下とすることが好ましく、10℃以上、40℃以下であることがより好ましく、20℃以上、30℃以下であることがさらに好ましい。
【0028】
前記圧着工程における圧着する具体的な方法としては、特に限定されないが、例えば、前記積層体に対してローラー、指、爪、へらにより荷重をかける方法、などが挙げられる。
【0029】
〔感光性樹脂支持構造体〕
本実施形態の感光性樹脂支持構造体は、支持体cと粘着剤層dと支持体bとがこの順に積層された積層体を含み、前記積層体の一部に圧着部分を有し、前記積層体の圧着部分の濁度が30%以下であり、
前記圧着部分と未圧着部分との濁度の差((未圧着部分の積層体の濁度-圧着部分の積層体の濁度)/未圧着部分の積層体の濁度×100)が2.0%以上であり、
前記粘着剤層dは、前記支持体bに接する第1の面とは反対側の第2の面上に開口した凹部を有し、該凹部の深さが10μm以上である。
本実施形態の感光性樹脂支持構造体は、このような特徴を有することにより、例えば、空気溜まりの発生を抑制した十分なエアー抜け性を有するとともに、インキの浸透が一切ないシール性も有する。
なお、本実施形態の感光性樹脂支持構造体において、未圧着部分の積層体の濁度とは、積層体の濁度の最大値をいい、圧着部分の積層体の濁度とは積層体の濁度の最小値をいう。
【0030】
なお、本実施形態において、前記積層体の濁度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0031】
前記積層体において、圧着部分と未圧着部分との濁度の差((未圧着部分の積層体の濁度-圧着部分の積層体の濁度)/未圧着部分の積層体の濁度×100)は、2.0%以上5.0%以下であることが好ましく、2.0%以上4.0%以下であることがより好ましく、2.0%以上3.5%以下であることが更に好ましく、2.1%以上3.2%以下であることが特に好ましい。
【0032】
前記粘着剤層dは、前記支持体bの、前記支持体c側の面の全面に存在することが好ましい。前記粘着剤層dが、このように支持体bの、支持体c側の面の全面に存在すると、感光性樹脂支持構造体は、シール性に優れる傾向にある。
【0033】
前記粘着剤層dは、支持体eを含んでいてもよい。具体的には、例えば、前記粘着剤層dは、2つの粘着剤層d1及びd2の間に支持体eを含む粘着剤層(例えば、両面テープ)であってもよい。
【0034】
本実施形態の感光性樹脂支持構造体は、例えば、図1の概略断面図に示すように、支持体2(支持体bに相当)と、前記支持体2上に粘着剤層3(粘着剤層dに相当)とを有する感光性樹脂支持構造体を形成する構造体1を用いて形成される。
図1に示すように、前記粘着剤層3は、前記支持体2に接する第1の面3aとは反対側の第2の面3b上に開口した凹部3hを有していることが好ましい。
図1に示すように、前記粘着層3の第2の面3b上には、凸部を有するライナー4(支持体cを積層する前に一時的に設置するもの)が積層されていてもよく、前記粘着層3の凹部3hは、ライナー4の凸部により形成された状態となっていることが好ましい。
上記構成を有する構造体1を用いることにより、空気溜まりの発生を抑制した十分なエアー抜け性が得られ、かつ、十分なシール性も実現できる感光性樹脂支持構造体が形成できる。
図1に示すように、支持体2の、前記粘着剤層3が接する面とは反対側の面には、接着剤層5が設けられていてもよい。
【0035】
本実施形態の感光性樹脂支持構造体は、前記積層体の前記支持体bの、前記粘着剤層dに接する面とは反対側の面上に感光性樹脂層aを含んでいてもよい。
本実施形態の感光性樹脂支持構造体に使用されうる感光性樹脂は、活性光線の照射によりラジカル反応を起こし、重合及び硬化する既知の感光性樹脂であることが好ましい。
このような感光性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、不飽和ポリエステルや不飽和ポリウレタンなどからなるプレポリマーにエチレン性不飽和化合物及び光重合開始剤を混合した液状感光性樹脂、或いは例えばスチレンブタジエン共重合ゴム、スチレンイソプレン共重合ゴム、メタクリル酸メチル樹脂、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、水溶性ポリアミド、不飽和ポリウレタン、乳化重合で合成された親水性共重合体などから選ばれるポリマーをバインダーとしてこれにエチレン性不飽和化合物、光重合開始剤を加えてなる固体状感光性樹脂が挙げられる。
【0036】
感光性樹脂の感光特性は、露光工程で使用する活性光線の種類に応じ、公知の光開始剤(八代啓一、「光硬化技術データブック」、2000年テクノネット社発行、122~133頁)の中から材料を選択して調整することが可能であり、前記活性光線の有効波長領域とは、露光光源の照射光波長分布の内、その中心波長領域のことである。
本実施形態の感光性樹脂支持構造体が、例えば、フレキソ印刷版や型取り版においてその効果を充分に発揮するためには、これらのレリーフ版の製造に用いられる露光光源として挙げられる、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ等に対して後述する光透過特性を有していることが好ましく、すなわち300~400nmの範囲に中心波長領域を示す活性光線に対する光透過特性を有していることが好ましい。
【0037】
(支持体b)
本実施形態の感光性樹脂支持構造体に用いる支持体bは、これに感光性樹脂層aを積層して硬化した後に最終的に得られるレリーフ版を補強し所定の形状に保つ機能を有しているものであることが好ましい。このような支持体bは、一般に支持体として慣用されているものの中から目的に応じて適宜選択できる。
支持体bの材質については特に制限されるものではないが、本実施形態の感光性樹脂支持構造体が支持体b側からの露光により画像形成を行うためには、350nm波長の活性光線に対して後述する所定の透過性を有していることが好ましい。
好ましく適用可能な支持体bは、材料自体の厚み精度が比較的良好なプラスチックフィルム又はシートであり、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等が挙げられる。
支持体bがプラスチックフィルムの場合、支持体の厚みは、10μm~500μmの範囲内であることが好ましいが、レリーフ版を支持するために十分な強度を得る観点、及び経済性の観点から、厚さ50μm~250μmであることがより好ましい。このような厚さのプラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルムが好ましい。
【0038】
(接着剤層)
支持体bの、前記粘着剤層dが接する面とは反対側の面であって、感光性樹脂層aが積層される側の面には、感光性樹脂層aとの接着性を高めるために接着剤層が設けられていてもよい。
この接着剤層は、支持体bに接着性材料を塗布したり、或いはコロナ処理等により支持体bの表面を変性したりする等して形成されることが好ましい。
上記接着性材料としては、特に限定されず、例えば、感光性樹脂版用の支持体の接着剤として公知のものを用いることができ、例えば、特公昭48-6563号公報や、特公昭49-43561号公報などに記載のものの中から感光性樹脂の化学的性質などを勘案して適宜選択することができる。
この接着剤層には、ハレーションの防止や紫外線透過波長域の調整を目的として染料や紫外線吸収剤を添加してもよい。
接着剤層の厚みは、0.1~10μmの範囲内が好ましい。
【0039】
(粘着剤層d)
本実施形態の感光性樹脂支持構造体に用いる粘着剤層dは、支持体bの上に感光性樹脂層aの硬化物によるレリーフが積層された版を用途により異なる被着体(支持体cに相当)の表面に貼着するためのものであることが好ましい。粘着剤層dは、支持体bの感光性樹脂層aを形成する側の面とは反対側の面上に配される。
前記被着体(支持体cに相当)とは、特に限定されないが、例えば、支持体bの上に感光性樹脂組成物層の硬化物によるレリーフが積層された印刷版を印刷工程に用いる際の、キャリアシートが挙げられる。
具体的な形態としては、図2に示すように、感光性樹脂層の硬化物による版が形成された、支持体2上に接着剤層3を有する本実施形態の感光性樹脂支持体の凹部の形成面側が、所定のキャリアシートを介して版胴と接触した状態が挙げられる。
粘着剤層dを構成する粘着剤は、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、酢酸ビニル系粘着剤などの公知の粘着剤(山口章三郎監修「接着・粘着の事典」、1986年朝倉書店発行、118~169頁)が挙げられ、これらの中から活性光線に対する透明性、支持体bやライナーとの粘着力及び剥離強さ、現像液に対する耐溶剤性などを考慮して適宜選ばれる。
なかでも本実施形態の感光性樹脂支持構造体に好適に利用可能な粘着剤としては、印刷版の貼着位置の修正作業あるいはデザイン変更による差し替えを可能とするために永久粘着しない再剥離型感圧粘着剤が好ましく、アクリル系感圧粘着剤、ゴム系感圧粘着剤、シリコン系感圧粘着剤が好適である。
【0040】
<凹部>
粘着剤層dは、レリーフ版を被着体表面に貼着する際、粘着剤層dの表面と、被着体の面との間に空気溜まりを生じさせないために、支持体bと接する第1の面とは反対の第2の面上に、ライナーを剥がした状態において開口した連通する空気の通過路である凹部が設けられている。
凹部は、粘着剤層dの一の端部から他の端部に連続的に形成されているものであることが好ましい。これにより、被着体の面との間の空気溜まりの発生を効果的に防止できる。
凹部により形成される空気の通過路の断面形状は、特に限定されないが、例えば、矩形状、くさび形状、半円形状のもの等が挙げられる。凹部の深さは10μm以上であり、粘着剤層dの厚みより浅くてもよい。
凹部により形成される空気の通過路を有する構造としては、路が連通していることが好ましいが、特に空気通過路の平面パターン等によって特に制限されるものではなく、例えば、ストライプ状、格子状、網目状、曲線状に形成してもよく、また粘着剤層d自体を連通多孔質体、繊維状粘着剤の積層体、或いはこれらの組み合わせとすることにより、目的の通気性を実現してもよい。
なお、粘着剤層dのなかには補強を目的として薄いフィルム層を設けてもよい。
【0041】
<粘着剤層dの形成方法>
本実施形態の感光性樹脂支持構造体において、開口した連通する空気の通過路である凹部を有する粘着剤層dを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
例えば、空気の通過路のパターンとなるライナー賦形用ロールに所定のパターンを賦形加工し、ライナーを前記賦形ロールでパターン加工し、当該ライナーに粘着剤を塗布し、乾燥し、支持体bを貼り合わせて粘着剤層dを形成する方法が挙げられる。
なお、粘着剤を塗布する際には、粘着剤を揮発性の溶媒に溶解又は分散させた状態としてもよく、溶融した状態としてもよい。
また、粘着剤層dのその他の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、支持体ロールの流れ方向に対して周期性のある紋様で粘着剤をノズル抽出する方法や、ノズルより打点式に突出させる方法や、一旦粘着剤を支持体の全面に塗布した後所望の断面形状とピッチを有する爪で粘着剤をかきとる方法や、所望の凸版形状とパターンを有するロールで粘着剤面にインプレスする方法や、粘着剤を発泡剤により発泡・多孔質化しこれを支持体に塗工する方法や、粘着剤を繊維状に押し出しこれを支持体2に積層する方法が挙げられる。
上述した方法は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
本実施形態の感光性樹脂支持構造体を、生産性に優れる長尺シートとして製造するためには、上記した何れかの方法によって、支持体シートに連続的に粘着剤層の空気通過路である凹部を形成することが好ましい。
本実施形態の感光性樹脂支持構造体を形成する構造体は、例えば、粘着剤層dが支持体bと積層されており、さらに粘着剤層dにライナーが積層された構造体が挙げられる。このような構造体を積み重ねて保存した際に、粘着剤層dの凹凸形状の転写や、コールドフローによる構造体端部からの粘着剤のはみ出し、空気の通路の閉塞が生じるおそれがある。そこで本実施形態の感光性樹脂支持構造体においては、粘着剤層dの厚み、空気通過路である凹部の開口幅、深さを、使用する粘着剤の粘着力、柔軟性に応じて、十分な強度を保ち、上述した現象を生じないように適宜選択することが好ましい。
【0043】
(ライナー)
本実施形態の感光性樹脂支持構造体を形成する構造体においては、前記粘着剤層dの第2の面上に、凸部を有するライナーが積層されていてもよく、前記粘着剤層dの凹部は、前記凸部により形成されていることが好ましい。
ライナーは、取扱い中或いは製版及び版取り付けの工程で粘着剤層dを保護するために、粘着剤層dに積層される。
ライナーは、製版工程で使われる水系、アルコール系、炭化水素系等の現像液に対して耐性を有しているものがよい。そのようなライナーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン-エチレンコポリマー、軟質ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アクリル樹脂から作られる透明プラスチックフィルムが挙げられる。ライナーの厚さは、5μm~200μmであることが好ましい。
【0044】
ライナーの、粘着剤層dと接する面とは反対の面は、製版時の真空引きをよくするために均一に粗面化されていることが好ましい。粗面化は過度に施す必要はなく、例えばJIS規格による10点平均粗さ(Rz)で0.1μm程度あれば十分である。粗面化する方法としては、特に限定されないが、例えば、サンドブラスト法、ケミカルエッチング法が挙げられる。また、例えば、保護膜に用いるフィルム及びシートを製膜する際に表面を粗面化する、樹脂マット法などを挙げることもできる。
【0045】
粘着剤層dの粘着力は、必要に応じ適宜調整されるが、支持体bとの粘着力(例えば、図1中の第1の面3aにおける粘着力)は、幅25mmの試験片を温度20℃に1週間放置して粘着力を安定させた後、180度の方向に300mm/分の速度で剥離した場合の粘着力(180度粘着力)で好ましくは100g/25mm以上、より好ましくは200g/25mm以上である。当該180度粘着力が200g/25mm以上であれば、レリーフ厚が3mm以上の厚肉版においても実用上剥がれなどを抑制できる傾向にある。
粘着剤層dの、レリーフ版貼着対象面となる被貼着面に対する粘着力(例えば、図1中の第2の面3bにおける粘着力)は、一旦貼着したレリーフ版を剥がす場合、支持体b側に対する粘着力の方が小さいと粘着剤層dが支持体b側から剥離して被貼着面に転写するおそれがあるため、支持体bに対する粘着力と同程度以下であることが好ましい。支持体bと被貼着面が同様の材質の場合、粘着剤層dと支持体bの粘着力を、粘着剤層dと被貼着面の粘着力より高く設定するために、支持体bの表面に予め公知のアンカーコート層を設けたり、或いは粘着剤を塗布した支持体をコロナ処理して粘着力を増大したりすることが好ましい。
【0046】
粘着剤層dとライナーの粘着力は、ライナーの剥離を可能とするため、前述の支持体bとの粘着力より小さく調整することが好ましく、取扱い中或いは製版工程中にライナーが剥離することのないようにする、及びライナーの剥離を容易するという観点から、好ましくは180度粘着力で1~200g/25mm、より好ましくは5~100g/25mm、さらに好ましくは10~50g/25mmに調整する。
支持体bとライナーが同様の材質の場合、粘着剤層dとライナーの粘着力を粘着剤層dと支持体bの粘着力より低く設定するために、ライナーの粘着剤層dと接する側の面に、離型剤層が設けることが有効である。
離型剤としては粘着テープなどに通常用いられる公知の、例えばシリコン系の離型剤やフッ素樹脂が用いられ得る。
【0047】
〔感光性樹脂レリーフ版の製造方法〕
本実施形態の感光性樹脂支持構造体は、活性光線を感光性樹脂組成物層に照射する露光工程を含む感光性樹脂レリーフ版の製造に用いられることが好ましい。
本実施形態の感光性樹脂支持構造体を用いた感光性樹脂レリーフ版の製造方法について説明する。
感光性樹脂レリーフ版の製造方法としては、露光工程、現像工程、その後に必要に応じて後露光工程、乾燥工程を行うことが好ましく、その露光工程においては、ネガフィルム、本実施形態の感光性樹脂支持構造体(感光性樹脂層を含む)を配置し、ネガフィルムの背面側から活性光線を照射する工程を含むことがより好ましく、照射する活性光線が300~400nmの領域に中心波長を有することがさらに好ましい。
【0048】
露光工程おけるその他の所作については何ら制限されるものではなく、例えば、露光工程で使用する活性光線の散乱光を減じて平行性を高めるための処置を施してもよく、感光性樹脂層aの支持体bと接する面とは反対の面に保護フィルムを密着させ、支持体側ネガフィルムとは異なる画像のネガフィルムを介して300~400nmの領域に中心波長を有する活性光線を照射する工程を含んでもよい。
【0049】
露光工程の後には、活性光線が照射されていない領域の感光性樹脂組成物を除去するために現像工程が行われることが好ましく、その現像方法は未硬化の感光性樹脂組成物を除去できる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、感光性樹脂組成物の溶解、分散、膨潤を可能にする液体(現像液)を用いる方法、未硬化の感光性樹脂組成物が流動性を有する環境においては、高圧水、圧気で除去する方法、不織布などによって拭取る方法などを挙げることができる。
【0050】
従来の感光性樹脂支持構造体は、液体を用いる現像工程に適用する場合、その現像工程中に粘着剤層に設けられた空気通過路である凹部に現像液が浸み込む傾向にある。この場合、版を取り付けるためにライナーをはがした際に、浸み込んだ現像液が異臭を放つなどして環境衛生上好ましくない状態になったり、粘着剤層に作用して性能に変動をきたしたり、感光性樹脂支持構造体が被着体から剥離したりするおそれがある。
一方、本実施形態の感光性樹脂支持構造体は、積層体の濁度が30%以下であり、前記粘着剤層dが、前記支持体bに接する第1の面とは反対側の第2の面上に開口した凹部を有し、該凹部の深さが10μm以上であることにより、空気溜まりの発生を抑制した十分なエアー抜け性を実現するとともに、十分なシール性も実現できる。
【実施例0051】
以下、具体的な実施例及び比較例によって本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0052】
〔実施例1~12〕、〔比較例1~16〕
図3(A)に示すような感光性樹脂支持構造体を形成する構造体を以下のとおり作製した。
まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の長方形のライナー4をエンボス加工することにより、ライナー4の表面に格子状に所定の高さの凹凸部を形成した。
次に、前記ライナー4上に粘着剤を塗布し、乾燥させ、厚さ57μmの粘着剤層3を形成した。ここで、粘着剤層3の大きさ及び形状は、50mm×150mmの長方形とした。また、ライナー4の粘着剤層3と接する面の凸部の高さを適宜調整することにより、粘着剤層3における凹部の深さを表1に示すとおりに制御した。ただし、比較例1~4では、凹凸部を形成していないライナー4を用いることにより、凹部を有さない粘着剤層3を形成した。
さらに粘着剤層3の、ライナー4側とは反対の面上に厚さ188μmの支持体2を貼り付け、積層体を形成した。ここで、粘着剤層3は、支持体2の、ライナー4側の面の全面に存在していた。
得られた積層体の支持体2の、粘着剤層3に接する面とは反対側の面上に感光性樹脂層aを積層した。
次に、図3(B)に示すとおり、50mm×150mmの感光性樹脂支持構造体を形成する構造体1からライナー4を剥離し、粘着剤層3を露出させ、所定の被着体10(ペットフィルム:支持体cに相当)に貼り付けた。
具体的には、まず、感光性樹脂支持構造体を形成する構造体1からライナー4を剥離した面の周辺部位を被着体10に貼り付け、その後、感光性樹脂支持構造体を形成する構造体1からライナー4を剥離した面の中心部位を被着体10に貼り付けて、積層体を得た。
次に、支持体2の、前記粘着剤層3に接する面とは反対側の面上から被着体10の方向に、ローラーにより表1に示す圧力をかけて圧着した。ここで、積層体の圧着する部分は、粘着剤層3の端部から面中心部に向かって幅5mmの範囲とし、積層体の圧着部分の濁度の変化率((圧着前の積層体の濁度-圧着後の積層体の濁度)/圧着前の積層体の濁度×100)を表1に示すとおりとなるよう調整した。また、圧着の際のローラーの速度は、5cm/秒とした。ただし、比較例1、5、9~12及び14は圧着を行わなかった。
以上のようにして粘着剤層の凹部深さが0~30μmの各感光性樹脂支持構造体を製造し、下記の方法により測定を実施した。
【0053】
(粘着剤層の凹部の深さの測定)
感光性樹脂支持構造体を形成する構造体1からライナー4を剥離し、露出した粘着剤層3に対し、形状解析レーザー顕微鏡((株)キーエンス製 VK-X1000)を用いて、粘着剤層の凹部3hの深さHを測定した。解析はvk解析アプリケーションを用いて行った。
測定においては、粘着剤層3の端部から5cm以上内側の任意の3点を選択し、それらの測定値の平均値を算出し、凹部の深さの測定値とした。
なお、図3(A)中、(1)が支持体2の厚み、粘着剤層3の厚み、及びライナー4の厚みの合計に相当する。また、図3(A)中、(2)がライナー4の凹凸の高さを含めた厚みに相当する。
【0054】
〔特性の評価〕
前記実施例及び比較例の感光性樹脂支持体の特性を下記のようにして評価した。評価結果を表1に示す。
【0055】
(シール性)
前記実施例及び比較例の感光性樹脂支持体(50mm×150mmの長方形)の一方の短辺部(インキを浸透させない側)付近にパンチャーで穴を空け、他方の短辺部(インキを浸透させる側)の圧着部分(5mm幅)と未圧着部分の境界にマジックで点線を引いて測定サンプルを作製した。
図6に示すとおり、穴11に棒12を通した測定サンプル13をビーカー14に設置した。その際、図6に示すとおり、測定サンプル13において圧着部分(5mm幅)の境界15が見えるように設置し、他方の短辺部の端部から3mmまでの部分が液体16に浸漬するようにした。浸漬時間は10分間とした。液体16は、版洗浄剤(サカタインクス製 IC-01)であり、浸透の状態を可視化できるように墨インキで色付けした。浸漬後、測定サンプル13を25℃の恒温槽で3時間静置した。
測定箇所は版洗浄剤の侵入口から凹部に沿って版洗浄剤の侵入が停止した箇所までとし、版洗浄剤(インキ)の侵入が確認出来ない場合を〇とし、少しでも版洗浄剤(インキ)の侵入が確認された場合には×として評価した。
【0056】
(エアー抜け性)
図3(B)に示すとおり、50mm×150mmの感光性樹脂支持構造体を形成する構造体1からライナー4を剥離し、粘着剤層3を露出させ、所定の被着体10に貼り付けた。
具体的には、まず、感光性樹脂支持構造体を形成する構造体1からライナー4を剥離した面の周辺部位を被着体10に貼り付け、その後、感光性樹脂支持構造体を形成する構造体1からライナー4を剥離した面の中心部位を被着体10に貼り付けた。
感光性樹脂支持構造体の粘着剤層3と被着体10との境界で閉じ込められたエアーが、感光性樹脂支持構造体を形成する構造体1からライナー4を剥離した面の中心部位を被着体10に貼り付けた際に抜けるか否かを、エアーが溜まっている箇所の厚みを測定することにより評価した。
前記エアーが溜まっている箇所の厚みが周辺部位よりも50μm以上高い場合は×とし、
50μm未満である場合は〇として評価した。
【0057】
(濁度の変化率の測定)
前記実施例及び比較例の感光性樹脂支持体における積層体の圧着部分の濁度と圧着前の積層体の濁度とをHAZE METER NDH5000(日本電飾工業株式会社)を用いて測定し、積層体の圧着前後の濁度の変化率((圧着前の積層体の濁度-圧着後の積層体の濁度)/圧着前の積層体の濁度×100)を算出した。
【0058】
(積層体の濁度の測定)
前記実施例及び比較例の感光性樹脂支持体における積層体の圧着部分の濁度をHAZE METER NDH5000(日本電飾工業株式会社)を用いて測定した。ただし、比較例1、5、9~12及び14は圧着を行わなかったので、積層体の未圧着部分の濁度を測定して、表1に示した。
【0059】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の感光性樹脂支持構造体は、粘着機能を有する支持構造体の利便性が求められ、かつ感光性樹脂支持構造体が空気の通路部分を有している構成である場合において、空気溜まりの発生を抑制、十分なシール性が求められる分野、例えば、フレキソ印刷版製造分野、型取り版製造分野において産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0061】
1 感光性樹脂支持構造体を形成する構造体
2 支持体
3 粘着剤層
3a 第1の面
3b 第2の面
3h 凹部
4 ライナー
5 接着剤層
10 被着体
a 感光性樹脂層a
b 支持体b
c 支持体c
d 粘着剤層d
e 感光性樹脂支持構造体
f 端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6