(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114049
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】エレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230809BHJP
B66B 7/06 20060101ALI20230809BHJP
B66B 5/04 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B7/06 L
B66B5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016131
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】金山 泰裕
【テーマコード(参考)】
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3F304BA02
3F304BA22
3F304DA22
3F305BB03
3F305BC19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】乗りかごを保持する高さを柔軟に設定することができるエレベーターを提供する。
【解決手段】エレベーターは、乗りかごと、ストッパーと、ストッパー固定板12と、を備えている。ストッパーは、乗りかごに設けられ、支持部材により乗りかごの幅方向に沿って移動可能に支持される。ストッパー固定板12は、昇降路1に設置され、ストッパーが挿脱可能に挿入される複数の固定孔13を有する。そして、複数の固定孔13は、乗りかごの昇降方向に沿って間隔を空けて設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物に設けられた昇降路内を昇降移動する乗りかごと、
前記乗りかごに設けられ、支持部材により前記乗りかごの幅方向に沿って移動可能に支持されるストッパーと、
前記昇降路に設置され、前記ストッパーが挿脱可能に挿入される複数の固定孔を有するストッパー固定板と、を備え、
複数の前記固定孔は、前記乗りかごの昇降方向に沿って間隔を空けて設けられる
エレベーター。
【請求項2】
前記ストッパー固定板は、前記乗りかごを昇降可能に支持するガイドレールに固定される
請求項1に記載のエレベーター。
【請求項3】
前記乗りかごの昇降速度を検出する調速機を備え、
前記調速機は、
前記昇降路の頂部に設置される上部ガバナプーリと、
前記上部ガバナプーリの上下方向の下方において、前記昇降路のピットに配置される下部ガバナプーリと、
前記上部ガバナプーリ及び下部ガバナプーリに巻き掛けられるガバナロープと、
前記上部ガバナプーリと前記下部ガバナプーリの間に配置され、前記ガバナロープが巻き掛けられるガイドプーリと、有し、
前記ガイドプーリは、前記ガイドレールに固定された支持ブラケットに回転可能に支持され、
前記ストッパー固定板は、前記支持ブラケットに固定される
請求項2に記載のエレベーター。
【請求項4】
前記ガイドプーリは、
上部ガイドプーリと、
前記上部ガイドプーリよりも上下方向の下方に配置される下部ガイドプーリと、を有し、
前記ストッパー固定板は、前記上部ガイドプーリを支持する支持ブラケットと、前記下部ガイドプーリを支持する支持ブラケットのうち少なくとも一方の支持ブラケットに固定される
請求項3に記載のエレベーター。
【請求項5】
前記ストッパー固定板の上下方向の上端部は、前記上部ガイドプーリを支持する支持ブラケットに固定され、
前記ストッパー固定板の上下方向の下端部は、前記下部ガイドプーリを支持する支持ブラケットに固定される
請求項4に記載のエレベーター。
【請求項6】
前記上部ガイドプーリと前記下部ガイドプーリの軸方向は、前記上部ガバナプーリ及び前記下部ガバナプーリの軸方向と交差している
請求項4に記載のエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターには、保守作業時に乗りかごを所定の位置で保持するかご保持装置が設けられている。このような保持装置に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、保守時にかご上で保守作業を行う際、かご上部の主ガイドレールと対向する位置に設置された頂部ストッパーと、頂部ストッパーと主ガイドレールとの間に形成される隙間に上方からセットされるかごロックキーと、かごロックキーの上部と対向するように主ガイドレールの上端部に固定された作動アームとを備えた技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、作動アームがガイドレールの特定の位置に固定されていた。そのため、特許文献1に記載された技術では、乗りかごを保持する位置は作動アームが固定された位置に限定され、作業員の好みの高さに乗りかごを保持することができず、作業性が悪化する、という問題を有していた。
【0006】
本目的は、上記の問題点を考慮し、乗りかごを保持する高さを柔軟に設定することができるエレベーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するため、エレベーターは、建築構造物に設けられた昇降路内を昇降移動する乗りかごと、ストッパーと、ストッパー固定板と、を備えている。ストッパーは、乗りかごに設けられ、支持部材により乗りかごの幅方向に沿って移動可能に支持される。ストッパー固定板は、昇降路に設置され、ストッパーが挿脱可能に挿入される複数の固定孔を有する。そして、複数の固定孔は、乗りかごの昇降方向に沿って間隔を空けて設けられる。
【発明の効果】
【0008】
上記構成のエレベーターによれば、乗りかごを保持する高さを柔軟に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態例にかかるエレベーターを示す概略構成図である。
【
図2】実施の形態例にかかるエレベーターを示す平面図である。
【
図3】実施の形態例にかかるエレベーターの乗りかごを保持した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、エレベーターの実施の形態例について、
図1~
図3を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0011】
1.実施の形態例
まず、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるエレベーターの構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本例のエレベーターの構成例を示す概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、建築構造物内に形成された昇降路の上方に機械室を有しない、いわゆる機械室レスエレベーターである。また、
図1に示す例では、いわゆる2:1ローピング方式のエレベーター100を示す。
【0013】
図1及び
図2に示すように、エレベーター100は、昇降路1内を昇降する乗りかご5と、巻上機4と、主ロープ40と、主ロープ40を介して乗りかご5に懸架される釣合おもり9と、かご側調速機6と、緩衝器30と、制御装置50と、を有している。緩衝器30は、昇降路1における上下方向の下部、すなわち昇降路1のピットに配置されている。そして、緩衝器30は、後述する乗りかご5及び釣合おもり9の上下方向の下方にそれぞれ配置される。
【0014】
乗りかご5は、昇降路1内に立設された一対のかご側ガイドレール2、2により昇降方向に昇降可能に支持されている。
図2に示すように、乗りかご5には、かご側ドア5Aが設けられている。かご側ドア5Aは、建築構造物の乗りかご5が停止する乗り場に設けられた人や物が乗りかごへ出入りするための出入り口21と対向する。ここで、かご側ドア5Aと出入り口21が対向する方向を前後方向Yとして、この前後方向Yと直交し、かつ乗りかご5の昇降方向とも直交する方向を幅方向Xとする。前後方向Yにおける出入り口21側を前側とし、前後方向Yにおける出入り口21とは反対側を後側とする。
【0015】
一対のかご側ガイドレール2、2は、昇降路1における幅方向Xの両側に位置する幅方向壁面1A、1Aに固定されたレールブラケット20により支持されている。
【0016】
また、乗りかご5の上下方向の下部には、不図示のせり上げ用プーリが設けられている。せり上げ用プーリは、乗りかご5の下部において幅方向Xの両端部に配置されている。せり上げ用プーリには、主ロープ40が巻き掛けられる。
【0017】
さらに、乗りかご5には、不図示の非常止め装置と、かご側調速機6に巻き掛けられるガバナロープ10と連結する連結部とを有している。これにより、乗りかご5の昇降速度は、ガバナロープ10を介してかご側調速機6により検出される。そして、乗りかご5の昇降速度が所定の速度を超えると、かご側調速機6は、非常止め装置を作動させる。これにより、乗りかご5は、非常止め装置により停止する。
【0018】
また、
図2に示すように、乗りかご5の上下方向の上部には、2つのかごストッパー15が設けられている。かごストッパー15は、乗りかご5の幅方向Xの両端部に設置されている。そして、かごストッパー15は、乗りかご5の上部に設けた支持部材15Aに幅方向Xに沿って摺動可能(移動可能)に支持されている。このかごストッパー15は、保守作業時に支持部材15Aを摺動し、乗りかご5の幅方向Xの両端部から外側に向けて突出する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、巻上機4は、昇降路1の上下方向の頂部に設置されたマシンビーム4Aに設置される。
図2に示すように、マシンビーム4Aは、昇降路1の幅方向Xの一端部側に配置される。そして、マシンビーム4Aは、乗りかご5が昇降移動する昇降領域と、昇降路1における幅方向の一端部側の幅方向壁面1Aとの間に配置される。
【0020】
釣合おもり9は、おもり側プーリ9Bを有している。おもり側プーリ9Bは、釣合おもり9の上下方向の上端部に設置されている。このおもり側プーリ9Bには、主ロープ40が巻き掛けられる。
【0021】
釣合おもり9は、昇降路1内に立設された一対のおもり側ガイドレール3A、3Bにより昇降路に昇降可能に支持されている。一対のおもり側ガイドレール3A、3Bは、昇降路1における幅方向Xの一端部側に配置される。
【0022】
第1おもり側ガイドレール3Aは、マシンビーム4Aよりも前後方向Yの前側に配置される。そして、第1おもり側ガイドレール3Aは、かご側ガイドレール2を支持するレールブラケット20に支持される。第2おもり側ガイドレール3Bは、マシンビーム4Aよりも前後方向Yの後側に配置される。そして、第2おもり側ガイドレール3Bは、昇降路1における前後方向Yの後端側に位置する後側壁面1Bに固定されたレールブラケット20に支持される。そのため、第1おもり側ガイドレール3Aと第2おもり側ガイドレール3Bは、巻上機4及びマシンビーム4Aを前後方向に沿って挟むようにして配置される。そのため、釣合おもり9は、上下方向から見た投影面において巻上機4の下方に配置される。また、第2おもり側ガイドレール3Bは、乗りかご5よりも前後方向Yの後側に配置されている。
【0023】
かご側調速機6は、マシンビーム4Aと同様に、昇降領域と幅方向壁面1Aとの間に配置される。かご側調速機6は、かご側ガイドレール2を間に挟んでマシンビーム4A及び巻上機4よりも前後方向Yの前側に配置される。
【0024】
また、かご側調速機6は、上部ガバナプーリ6Aと、上部ガイドプーリ7と、下部ガイドプーリ8と、ガバナロープ10と、下部ガバナプーリ11と、を有している。上部ガバナプーリ6Aは、昇降路1の頂部において、マシンビーム4の近傍に配置される。この上部ガバナプーリ6Aには、ガバナロープ10が巻き掛けられる。
【0025】
下部ガバナプーリ11は、上部ガバナプーリ6Aの上下方向の下方、すなわち昇降路1のピットに配置される。この下部ガバナプーリ11は、かご側ガイドレール2に固定された支持ブラケット11Aに回転可能に支持されている。そして、この下部ガバナプーリ11には、ガバナロープ10が巻き掛けられる。
【0026】
上部ガバナプーリ6Aと下部ガバナプーリ11の間には、上部ガイドプーリ7と下部ガイドプーリ8が配置されている。上部ガイドプーリ7及び下部ガイドプーリ8は、上部ガバナプーリ6Aの近傍において、巻上機4の近傍に設置される。また、下部ガイドプーリ8は、上部ガイドプーリ7よりも上下方向の下方に配置される。そして、上部ガバナプーリ6Aから延在するガバナロープ10は、上部ガイドプーリ7と下部ガイドプーリ8の間を一周巻きかけて、下部ガバナプーリ11に達する。
【0027】
また、上部ガイドプーリ7と下部ガイドプーリ8の軸方向は、上部ガバナプーリ6A及び下部ガバナプーリ11の軸方向と交差している。そのため、ガバナロープ10が延在する向きは、上部ガイドプーリ7と下部ガイドプーリ8により変更される。このように、上部ガイドプーリ7と下部ガイドプーリ8を設けたことで、ガバナロープ10が延在する向きを所望の向きに変更することができる。
【0028】
上部ガイドプーリ7は、かご側ガイドレール2に固定された支持ブラケット7Aに回転可能に支持され、同様に、下部ガイドプーリ8は、かご側ガイドレール2に固定された支持ブラケット8Aに回転可能に支持されている。なお、支持ブラケット7A、8A、11Aは、かご側ガイドレール2から前後方向Yに沿って前側に突出している。
【0029】
2つのストッパー固定板12は、略平板状の部材で形成されている。かごストッパー固定板12には、複数の固定孔13が形成されている。複数の固定孔13は、上下方向に沿って間隔を空けて形成されている。この固定孔13には、ストッパー15が挿脱可能に挿入される。
【0030】
2つのストッパー固定板12のうち一方のストッパー固定板12は、上部ガイドプーリ7及び下部ガイドプーリ8を支持する支持ブラケット7A、8Aに固定される。具体的には、ストッパー固定板12の上下方向の上端部は、上部ガイドプーリ7を支持する支持ブラケット7Aに固定ボルト14を介して固定される。そして、ストッパー固定板12の上下方向の下端部は、下部ガイドプーリ8を支持する支持ブラケット8Aに固定ボルト14を介して固定される。そのため、ストッパー固定板12は、2つの支持ブラケット7A、8Aの間に配置される。
【0031】
このように、上部ガイドプーリ7及び下部ガイドプーリ8を支持する支持ブラケット7A、8Aを用いることで、ストッパー固定板12を固定するためのブラケットを新たに設ける必要がなくなる。これにより、部品点数の削減を図ることができ、ストッパー固定板12の設置作業の簡略化を図ることができる。
【0032】
ストッパー固定板12を2つの支持ブラケット7A、8Aの両方に固定される例を説明したが、これに限定されるものではなく、2つの支持ブラケット7A、8Aのうち少なくとも一方に固定されていればよい。なお、本例のストッパー固定板12のように、上下方向の上端部と下端部の両方を固定することで、ストッパー固定板12を昇降路1内に強固に固定することができる。これにより、ストッパー固定板12の固定孔13にストッパー15を挿入して乗りかご5を保持する際に、確実に乗りかご5を保持することができ、保守作業の安全性を高めることができる。
【0033】
また、2つのストッパー固定板12のち他方のストッパー固定板12は、幅方向Xの他端部側に配置されたかご側ガイドレール2に固定される。
【0034】
2.乗りかごの保持方法
次に、上述した構成を有するエレベーター100における乗りかご5の保持方法について
図3を参照して説明する。
図3は、乗りかごを保持した状態を示す平面図である。
【0035】
保守作業を行う際、まず乗りかご5を昇降路1の上部まで上昇させる。次に、
図3に示すように、作業員は、ストッパー15を、支持部材15Aを摺動させて乗りかご5の幅方向Xの両端部から外側に突出させる。そして、ストッパー15をストッパー固定板12に設けた複数の固定孔13のうちいずれかの固定孔13に挿入する。これにより、乗りかご5は、ストッパー15とストッパー固定板12により所定の位置に保持される。その結果、作業員の意図に反して乗りかご5が昇降運転することを防止することができる。
【0036】
上述したように、固定孔13は、上下方向に沿って複数形成されている。そのため、ストッパー15を複数の固定孔13のうち所望の固定孔13に挿入することで、作業員が作業を行いやすい高さで乗りかご5を保持することができる。このように、本例のエレベーター100によれば、乗りかご5を保持する高さを柔軟に設定することができる。
【0037】
なお、ストッパー固定板12は、作業を行う際に、支持ブラケット7A、8Aに固定し、作業が終わると、支持ブラケット7A、8Aから取り外してもよい。あるいは、ストッパー固定板12を常時支持ブラケット7A、8Aに固定してもよい。
【0038】
本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0039】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…昇降路、 1A…幅方向壁面、 1B…後側壁面、 2…かご側ガイドレール、 3A…第1おもり側ガイドレール、 3B…第2おもり側ガイドレール、 4…巻上機、 4A…マシンビーム、 5A…かご側ドア、 6…かご側調速機、 6A…上部ガバナプーリ、 7…上部ガイドプーリ、 7A、8A、11A…支持ブラケット、 8…下部ガイドプーリ、 10…かご側ガバナロープ、 11…下部ガバナロープ、 12…ストッパー固定板、 13…固定孔、 14…固定ボルト、15…ストッパー、 15A…支持部材、 20…レールブラケット、 21…出入り口、 40…主ロープ、 100…エレベーター、 M1…空間