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特開2023-114064自動走行制御方法、及び、自動走行制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114064
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】自動走行制御方法、及び、自動走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230809BHJP
【FI】
G05D1/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016164
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】北原 成郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 敦
(72)【発明者】
【氏名】天下井 哲生
(72)【発明者】
【氏名】畑本 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥馬 翼
(72)【発明者】
【氏名】竹下 嘉人
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB03
5H301CC03
5H301CC06
5H301EE09
5H301EE13
5H301GG03
(57)【要約】
【課題】GNSSによる位置情報を取得できない走行場所において、安価、かつ、簡単に、走行手段を自動走行させることができるようにした自動走行制御方法、及び、自動走行制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る、全球測位衛星システムによる位置情報を取得できない走行場所において走行手段を自動走行させる自動走行制御方法は、走行場所に走行手段の進行方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の光源からの光情報に基づいて、走行手段を進行方向に沿って自動走行させる。また、本発明に係る自動走行制御装置は、走行場所において走行手段(建設機械3)の進行方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の光源2,2…と、走行手段に設けられて光源の光を検出する光検出手段(カメラ35)と、走行手段に設けられて光検出手段からの情報に基づいて走行手段の自動走行制御を行う制御手段(PC30)とを備えたことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全球測位衛星システムによる位置情報を取得できない走行場所において走行手段を自動走行させる自動走行制御方法であって、
走行場所に走行手段の進行方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の光源からの光情報に基づいて、走行手段を進行方向に沿って自動走行させることを特徴とする自動走行制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の自動走行制御方法を実現するための自動走行制御装置であって、
走行場所において走行手段の進行方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の光源と、
走行手段に設けられて光源の光を検出する光検出手段と、
走行手段に設けられて光検出手段からの情報に基づいて走行手段の自動走行制御を行う制御手段とを備えたことを特徴とする自動走行制御装置。
【請求項3】
光検出手段は、走行手段に設けられたカメラであり、
制御手段は、
カメラで撮影された走行手段の進行方向を撮影した画像から光源の面積を計算する処理と、当該光源の面積が一定の面積以上である場合に走行手段の進行方向を決定する処理と、当該決定した進行方向に走行手段を所定の速度で走行させる処理とを実行する自動走行制御処理手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の自動走行制御装置。
【請求項4】
走行場所において走行手段を所定の速度よりも低速又は高速で走行させたい場所に対応して設置する光源として、走行場所において走行手段を所定の速度で走行させたい場所に対応して設置する光源の色又は形とは異なる色又は形の光源を設置し、
自動走行制御処理手段は、カメラで撮影された走行手段の進行方向を撮影した画像から低速又は高速で走行させたい場所に対応して設置された光源を認識した場合に、低速又は高速で走行させたい場所において走行手段を低速又は高速で走行させることを特徴とする請求項3に記載の自動走行制御装置。
【請求項5】
自動走行制御処理手段による自動走行制御処理は、走行手段を所定距離走行させる毎に行うか、又は、走行手段を所定時間走行させる毎に行うことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の自動走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全球測位衛星システム(以下、GNSSという)による位置情報を取得できない走行場所において走行手段を自動走行させる自動走行制御方法、及び、自動走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GNSSによる位置情報を取得できない走行場所において走行手段を走行させる走行制御方法として、例えば、ロボットや自動搬送車等の移動体(走行手段)を予め設定された経路に沿って自動走行させる走行制御方法(特許文献1参照)や、SLAM技術による位置情報を建設機械の自動運転に活用した走行制御方法が知られている(非特許文献1参照)。
特許文献1には、移動対象場所である作業エリアに設置された複数のカメラを用いて、カメラで撮影された画像データから移動体に搭載された光源の画像を識別して、この光源画像から移動体の相対的位置情報を認識して、当該移動体の位置情報と予め定めた走行経路情報とを比較しながら移動体を自動走行させる方法が開示されている。
非特許文献1には、建設機械に搭載したセンシング装置による計測情報から、建設機械の周辺環境を把握するための「環境地図作成」と「自己位置推定」を同時に行い、これらのデータを基に建設機械の自己位置情報を取得することで、建設機械を自動走行させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-214640号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】大成建設株式会社:2021年6月11日企業情報What's New「国内初 GPS等の位置情報が届かない坑内で無人建設機械を自動運転」https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210611_8304.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、作業エリアに複数のカメラを設置する必要があるとともに、移動体の位置情報を取得する処理が必要となるため、コストが高くなるという課題があった。
また、非特許文献1に開示された方法においても、自己位置推定を行うために、建設機械の3Dスキャンが必要となり、コストが高くなるという課題があった。
本発明は、GNSSによる位置情報を取得できない走行場所において、安価、かつ、簡単に、走行手段を自動走行させることができるようにした自動走行制御方法、及び、自動走行制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動走行制御方法は、全球測位衛星システムによる位置情報を取得できない走行場所において走行手段を自動走行させる自動走行制御方法であって、走行場所に走行手段の進行方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の光源からの光情報に基づいて、走行手段を進行方向に沿って自動走行させることを特徴とする。
また、上記自動走行制御方法を実現するための自動走行制御装置は、走行場所において走行手段の進行方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の光源と、走行手段に設けられて光源の光を検出する光検出手段と、走行手段に設けられて光検出手段からの情報に基づいて走行手段の自動走行制御を行う制御手段とを備えたことを特徴とする。
また、光検出手段は、走行手段に設けられたカメラであり、制御手段は、カメラで撮影された走行手段の進行方向を撮影した画像から光源の面積を計算する処理と、当該光源の面積が一定の面積以上である場合に走行手段の進行方向を決定する処理と、当該決定した進行方向に走行手段を所定の速度で走行させる処理とを実行する自動走行制御処理手段を備えたことを特徴とする。
本発明に係る自動走行制御方法、及び、自動走行制御装置によれば、GNSSによる位置情報を取得できない走行場所において、安価、かつ、簡単に、走行手段を自動走行させることができるようになった。
また、走行場所において走行手段を所定の速度よりも低速又は高速で走行させたい場所に対応して設置する光源として、走行場所において走行手段を所定の速度で走行させたい場所に対応して設置する光源の色又は形とは異なる色又は形の光源を設置し、自動走行制御処理手段は、カメラで撮影された走行手段の進行方向を撮影した画像から低速又は高速で走行させたい場所に対応して設置された光源を認識した場合に、低速又は高速で走行させたい場所において走行手段を低速又は高速で走行させることを特徴とするので、建設機械の走行速度を変更させる自動走行制御を実現できるようになった。
また、自動走行制御処理手段による自動走行制御処理は、走行手段を所定距離走行させる毎に行うか、又は、走行手段を所定時間走行させる毎に行うことを特徴とするので、所定距離毎、又は、所定時間毎に、走行手段を停止させる自動走行制御や、走行手段を連続走行させる自動走行制御を実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】トンネル坑内をトンネル坑口から切羽に向けて見た斜視図(実施形態1)。
図2】建設機械を自動走行制御してトンネル坑口と切羽との間で往復させる様子を示す模式図(実施形態1)。
図3】走行制御装置の構成を示すブロック構成図(実施形態1)。
図4】走行制御装置による制御フローを示す図(実施形態1)。
図5】建設機械を自動走行制御してトンネル坑口と切羽との間で往復させる様子を示す模式図(実施形態2)。
図6】走行制御装置による制御フローを示す図(実施形態2)。
図7】自動走行制御処理の説明図(実施形態3)。
図8】走行制御装置による制御フローを示す図(実施形態4)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
実施形態1に係る走行制御方法は、GNSSによる位置情報を取得できない走行場所において走行手段を自動走行させる自動走行制御方法であって、走行場所に走行手段の進行方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の光源からの光情報に基づいて、走行手段を進行方向に沿って自動走行させる自動走行制御方法であり、また、当該走行制御方法を実現するための自動走行制御装置は、走行場所において走行手段の進行方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の光源と、走行手段に設けられて光源の光を検出する光検出手段と、走行手段に設けられて光検出手段からの情報に基づいて走行手段の自動走行制御を行う制御手段とを備えた構成とした。
【0009】
以下、GNSSが、例えば全地球測位システム(以下、GPSという)であり、当該GPSによる位置情報を取得できない走行場所がトンネル施工中のトンネル坑内1における走行面1Rである場合を例にして説明する。
【0010】
図1図2に示すように、トンネル坑内1においては、通常、トンネル坑口1Aと切羽1Bとの間のトンネル壁面1Cに、トンネル坑口1Aから切羽1Bに向かう方向に沿って所定の間隔を隔てて、複数の光源2,2…が設けられている。
実施形態1においては、当該複数の光源2,2…からの光情報に基づいて、走行手段としての建設機械3を進行方向に沿って自動走行させる。
尚、光源2は、蛍光灯、白熱灯、LED等である。
また、隣り合う光源2,2間の所定の間隔は、例えば、数十cm間隔、あるいは、数m間隔である。また、各所定の間隔は、等間隔であることが好ましいが、必ずしも等間隔で無くともよい。
また、実施形態1では、図3に示すように、当該複数の光源2,2…からの光情報に基づいて、建設機械3をトンネル坑内1の走行面1R上で自動走行させるために、当該建設機械3に、当該複数の光源2,2…からの光情報を取得するための光検出手段としてのカメラ35と、当該カメラ35により取得された光情報を入力して建設機械3の自動走行を制御する制御手段としてのPC(パーソナルコンピュータ)30とを搭載した構成とした。
また、建設機械3の自動走行を監視する監視室4には、監視用の制御手段としてのPC(パーソナルコンピュータ)40を備えた構成とした。
【0011】
尚、建設機械3に搭載されたPC30と監視室4の監視用のPC40との間での情報無線通信は、例えば、PC30側に設けられたWiFiルーター、トンネル坑内1に設けられたアクセスポイント、PC40側に設けられたWiFiルーター等の無線通信システムを介して行われる。
【0012】
例えば、図2に示すように、建設機械3を用いて、切羽1Bで発生したズリ等をトンネル坑外に搬出する場合について説明する。
切羽1Bで発生したズリ等をトンネル坑外に搬出する搬出処理においては、トンネル坑口1Aと切羽1Bとの間で、建設機械3を何回も往復させるため、本発明による自動走行制御方法及び自動走行制御装置を採用することが効果的である。
【0013】
尚、図2に示すように、建設機械3をトンネル坑口1Aと切羽1Bとの間で往復させる場合、トンネル坑口1A付近の往路出発位置、及び、切羽1B付近の復路出発位置を予め決めておき、これら出発位置において建設機械3を所望の進行方向D1,D2に向けた所定の状態で、出発位置近傍の光源2、及び、進行方向に位置する複数の光源2,2…が撮影できるように、カメラ35を建設機械3の所定の位置に設置しておく。例えば、建設機械3の進行方向を撮影できるように、カメラ35を建設機械3に設置する。具体的には、建設機械3の前側上方位置にカメラ35を設置する。
また、光源2は、図1に示すようにトンネル坑口1A側から見て右側のトンネル壁面1Cに設けられていたり、あるいは、図2に示すようにトンネル坑口1A側から見て左側のトンネル壁面1Cに設けられていたり、あるいは、トンネル坑口1A側から見て左右両方のトンネル壁面1Cに設けられている。
そこで、カメラ35は、建設機械3が往路出発位置、又は、復路出発位置に位置決めされた場合に、例えば進行方向のトンネル坑内1の全体画像を撮影できる広角レンズカメラを用いることが好ましい。
【0014】
まず、建設機械3のエンジンを始動させた後、運転手による運転操作、又は、PC30からPC40へと伝送される映像情報に基づく監視室4からの遠隔操作によって、建設機械3をトンネル坑口1A付近の往路出発位置まで移動させた後、建設機械3の自動走行制御処理を開始させる。
例えば、監視室4からPC30への開始指示、又は、PC30への直接の開始指示に基づいて、PC30が例えば図4に示すような建設機械3の自動走行制御処理を実行する。
【0015】
以下、図4に基づいて、実施形態1に係る建設機械3の自動走行制御処理の一例について説明する。
まず、PC30が、往路出発位置に位置決めされた建設機械3に搭載されたカメラ35を作動させることにより、建設機械3の進行方向D1のトンネル坑内1を撮影する(ステップS1)。
次に、カメラ35で撮影されたデジタル画像を入力したPC30が、当該画像中における光源2,2…の面積を計算する(ステップS2)。即ち、画像中の輝度が所定値以上の部分が光源2,2…であると判定して、デジタル画像内の当該光源2,2…の面積を画素の数から算出する。
そして、算出された光源2,2…の面積が予め決められた一定の面積以上であるか否かを判定する(ステップS3)。算出された光源2,2…の面積が予め決められた一定の面積以上であれば(ステップS3でYes)、ステップS4に進んで、建設機械3の進行方向決定処理を行い、その後、ステップS5に進んで、ステップS4で決定された進行方向に、予め決められた所定速度で、予め決められた距離Xだけ建設機械3を走行させる。即ち、PC30が建設機械3のアクセル開度を調整することにより、建設機械3を自動走行させる。そして、建設機械3を距離Xだけ移動させた後、建設機械3を一時停止させる(ステップS6)。
尚、ステップS4で決定する進行方向は、PC30が、画像中の光源2の面積が大きい位置から光源2の面積が小さい位置に向かうベクトルを算出することによって、求めることができる。当該ベクトルの算出方法としては、画像中の各光源が描く図形の中心を求め、各中心同士を最小二乗法を使って結ぶ方法等がある。
【0016】
また、画像中の光源の面積2,2…が予め決められた一定の面積よりも小さければ(ステップS3でNo)、PC30は、建設機械3の進行方向の向きが許容する範囲内に向いていないと判定して、監視室のPC40に自動走行不可の情報を送信する。
監視室4のPC40は、PC30から自動走行不可の情報を受信した場合、PC30に自動走行制御処理の終了を指示して、PC30による制御モードを、操作室4から建設機械3を遠隔操作する遠隔操作モードに切り替える(ステップS7)。
遠隔操作モードにおいては、図3に示すように、監視室4の監視者は、建設機械3のカメラ35によって逐次撮影されてPC30を介してPC40に送信されてくる映像情報を見ながら建設機械3に遠隔操作するための制御情報をPC30に送信する。これより、PC30は、監視室4から送られてくる制御情報及び当該PC30のメモリに搭載された遠隔操作制御プログラムの手順に従って、建設機械3を制御する。
そして、監視室4の監視者は、遠隔操作により建設機械3の向きが修正されたことを確認した後、PC40を介してPC30に自動走行制御処理の再開を指示する。自動走行制御処理の再開指示を受けたPC30は、ステップS3でYesならば、ステップS4,ステップS5を実行し、ステップS3でNoならば、監視室のPC40に自動走行不可の情報を送信する。
このように、建設機械3の自動走行制御処理を行い、自動走行不可であれば、監視室4から建設機械3を遠隔操作する。
尚、切羽1B付近での建設機械3の折返し処理は、運転手による運転操作、又は、監視室4から遠隔操作によって行えばよい。
【0017】
即ち、制御手段としての当該PC30は、カメラ35で撮影された建設機械3の進行方向を撮影した画像から光源2,2…の面積を計算する処理と、当該光源2,2…の面積が一定の面積以上である場合に建設機械の進行方向を決定する処理と、当該決定した進行方向に建設機械3を所定の速度で走行させる処理とを実行する自動走行制御手段を備える。
当該自動走行制御手段は、当該PC30のメモリに搭載された自動走行制御処理プログラムと、当該自動走行制御処理プログラムの手順に従って上述した各処理を実行する当該PC30のプロセッサ等のハードウエア資源とにより構成される。
尚、実施形態1においては、図4のステップS1,ステップS2,ステップS3,ステップS4,ステップS5,ステップS6の一連の自動走行制御処理を、建設機械3の自動走行開始時に実行し、さらに、建設機械3を距離Xだけ移動させる毎に実行する。当該距離Xは、例えば数十cm、数メートル等のように任意に決めればよい。
【0018】
実施形態1によれば、GPSによる位置情報を取得できないトンネル坑内1において、安価、かつ、簡単に、建設機械3を自動走行させることができる。
特に、トンネル坑内1においては、通常、トンネル坑口1Aと切羽1Bとの間のトンネル壁面1Cに、トンネル坑口1Aから切羽1Bに向かう方向に沿って所定の間隔を隔てて複数の光源2,2…が設けられており、実施形態1においては、当該複数の光源2,2…を利用するので、本発明の自動走行制御を実現するにあたって複数の光源2,2…を設置する作業手間及び複数の光源2,2…を新規に購入するコストを削減でき、建設機械3の自動走行制御方法及び自動走行制御装置を、安価、かつ、簡単に実現できるようになる。
また、PC30により実行される自動走行制御処理プログラムは、簡単な画像認識処理プログラムで実現できるので、建設機械3の自動走行制御方法及び自動走行制御装置を、安価、かつ、簡単に実現できるようになる。
また、実施形態1によれば、建設機械3を所定距離走行させる毎に、建設機械3を一時停止させるので、安全性を考慮した自動走行制御を実現できるようになる。
【0019】
実施形態2
光源の色を判定して、建設機械3の走行速度を変更するようにしてもよい。
例えば、図5に示すように、トンネル坑内1において、建設機械3を上述した所定の速度よりも低速で走行させたい場所である区間Lに対応して設置する光源として、建設機械3を所定の速度で走行させたい場所である区間L以外の区間に対応して設置する光源2とは異なる色の光源2Aを設置する。
例えば、光源2を白色光源、光源2Aを赤色光源とする。
そして、PC30に、建設機械3の走行速度変更処理を行なわせるようにする。
即ち、この場合、PC30として、カメラ35で撮影された画像から低速で走行させたい場所に対応して設置された光源2Aを認識する処理、及び、当該光源2Aの認識処理で当該光源2Aを認識した場合に、建設機械3を低速で一定距離だけ走行させる処理を実行するための自動走行制御処理プログラムを備えた構成のものを用いる。
【0020】
以下、図6に基づいて、実施形態2に係る建設機械3の自動走行制御処理の一例について説明する。
まず、カメラ35で撮影されたデジタル画像を入力したPC30が、光源2,2…を検知できたか否かを判定する(ステップS11)。光源2,2…を検知できたと判定した場合(ステップS11でYes)、光源色判定処理(ステップS12)に進む。
即ち、ステップS11においては、カメラ35で撮影されたデジタル画像を入力したPC30が、実施形態1で説明したステップS2~ステップS4を実行した場合、光源色判定処理(ステップS12)に進む。
また、ステップS11においては、カメラ35で撮影されたデジタル画像を入力したPC30が、実施形態1で説明したステップS3においてNoと判定した場合には、監視室のPC40に自動走行不可の情報を送信する。監視室4のPC40は、PC30から自動走行不可の情報を受信した場合、PC30に自動走行制御処理の終了を指示して、PC30による制御モードを、操作室4から建設機械3を遠隔操作する遠隔操作モードに切り替える(ステップS17)。
【0021】
ステップS12の光源色判定処理では、カメラ35で撮影されたデジタル画像を入力したPC30が、画像中の光源の色が低速を示す色(例えば赤色)であるか否かを判定する。
この光源色判定処理では、実際には、画像中の全光源2,2…のそれぞれの面積を計算し、最大面積の光源を特定する。そして、最大面積の光源が低速を示す色であった場合に、ステップS13に進んで、上述したステップS4で決定された進行方向に、予め決められた所定速度よりも低速で予め決められた距離XXだけ建設機械3を走行させる処理を行う。その後、建設機械3を一時停止させる(ステップS14)。
即ち、光源色判定処理(ステップS12)は、カメラ35で撮影されたデジタル画像中の各々の光源の面積を計算するステップと、最大面積の光源を特定するステップと、最大面積の光源の色が低速を示す色であるか否かを判定するステップとを備える。
また、光源色判定処理(ステップS12)において、PC30は、最大面積の光源の色が低速を示す色ではないと判定した場合には、ステップS15に進んで、上述したステップS4で決定された進行方向に、予め決められた所定速度で距離Xだけ建設機械3を走行させる処理を行う。その後、建設機械3を一時停止させる(ステップS16)。
【0022】
実施形態2によれば、建設機械3の走行速度を変更させる自動走行制御を実現できるようになる。例えば、図5に示すように、建設機械3を上述した所定の速度よりも低速で走行させたい場所である区間Lにおいて、建設機械3を上述した所定の速度よりも低速で走行させる自動走行制御が可能となる。
【0023】
また、実施形態2においては、図6のステップS11,ステップS12,ステップS13,ステップS14の一連の自動走行制御処理を、建設機械3を距離XXだけ移動させる毎に実行したり、あるいは、図6のステップS11,ステップS12,ステップS15,ステップS16の一連の自動走行制御処理を、建設機械3を距離Xだけ移動させる毎に実行する。
当該実施形態2においても、距離Xや距離XXは、任意に決めれば良いが、距離Xや距離XXの長さを短く設定すれば、PC30に、建設機械3を所定の速度で走行させる区間と低速で走行させる区間との境界位置をより正確かつ確実に認識させることができ、建設機械3の速度変更処理を適切に行うことができるようになる。
また、実施形態2においても、建設機械3を所定距離走行させる毎に、一時停止させるので、安全性を考慮した自動走行制御を実現できるようになる。
【0024】
また、実施形態2におけるステップS12の光源色判定処理において、低速を示す色の光源2Aの面積の割合に応じて、ステップS13で走行させる距離を変更するようにしてもよい。
【0025】
尚、実施形態2においては、建設機械3を上述した所定の速度よりも高速で走行させたい場所に対応して設置する光源として、建設機械3を所定の速度で走行させたい場所に対応して設置する光源2とは異なる色の光源を設置するようにしてもよい。
また、建設機械3を上述した所定の速度よりも低速又は高速で走行させたい場所に対応して設置する光源として、建設機械3を所定の速度で走行させたい場所に対応して設置する光源2とは異なる形の光源を設置するようにしてもよい。
【0026】
実施形態3
実施形態1,2では、建設機械3を距離Xだけ移動させる毎、あるいは、距離XXだけ移動させる毎に、自動走行制御処理を実行する例を示したが、図7に示すように、距離X又は距離XXの位置から距離aだけ手前の位置、即ち、距離Xの起点位置から(X-a)だけ進んだ時点、又は、距離XXの起点位置から(XX-a)だけ進んだ時点において、自動走行制御処理を実行するようにしてもよい。このようにすれば、建設機械3を連続自動走行させることが可能となる。
【0027】
実施形態3による自動走行制御処理、例えば建設機械3の走行速度を変更させる自動走行制御処理について説明する。
この場合、例えば、図6における光源色判定処理(ステップS12)において、Noと判断された場合には、所定速度で距離Xを走行させる処理を行うとともに、距離Xの起点位置から(X-a)だけ進んだ時点において、光源検知判定処理(ステップS11)、光源色判定処理(ステップS12)を行う。そして、この際の光源検知判定処理(ステップS11)において、Noと判断された場合には、建設機械3を一時停止させて、遠隔操作モードに切り替える。
また、図6における光源色判定処理(ステップS12)において、Yesと判断された場合には、低速で距離XXを走行させる処理を行うとともに、距離XXの起点位置から(XX-a)だけ進んだ時点において、光源検知判定処理(ステップS11)、光源色判定処理(ステップS12)の処理を行う。そして、この際の光源検知判定処理(ステップS11)において、Noと判断された場合には、建設機械3を一時停止させて、遠隔操作モードに切り替える。
実施形態3によれば、建設機械3を連続自動走行させることができるとともに、建設機械3の走行速度を変更させることができる。
尚、実施形態3においては、建設機械3を一定の所定速度で連続自動走行させることも可能となる。
【0028】
実施形態4
実施形態1~3においては、建設機械3を所定距離走行させる毎に、自動走行制御処理を行う例を示したが、建設機械3を所定時間走行させる毎に、自動走行制御処理を行うようにしてもよい。
【0029】
実施形態4による自動走行制御処理、例えば建設機械3の走行速度を変更させる自動走行制御処理について説明する。
この場合、図8に示すように、上述したステップS11と同じ光源検知判定処理(ステップS21)、ステップS12と同じ光源色判定処理(ステップS22)を行う。
そして、光源色判定処理(ステップS22)でYesの場合、所定速度よりも低速で建設機械3を走行させる処理(ステップS23)を行う。
また、光源色判定処理(ステップS22)でNoの場合、所定速度で建設機械3を走行させる処理(ステップS24)を行う。
そして、所定速度よりも低速で建設機械3を走行させる処理(ステップS23)の開始後、又は、所定速度で建設機械3を走行させる処理(ステップS24)の開始後、所定時間経過(ステップS25)した後に、光源検知判定処理(ステップS21)、光源色判定処理(ステップS22)を行う。この際の光源検知判定処理(ステップS21)において、Noと判断された場合には、建設機械3を一時停止させて(ステップS26)、遠隔操作モードに切り替える(ステップS27)。
実施形態4においても、実施形態3と同様に、建設機械3を連続自動走行させることができるとともに、建設機械3の走行速度を変更させることができる。
尚、実施形態4においては、建設機械3を一定の所定速度で連続自動走行させることも可能となる。
【0030】
尚、実施形態4においては、光源検知判定処理(ステップS21)において、Noと判断された場合に、建設機械3を一時停止させるようにした例を示したが、所定時間経過(ステップS25)毎に、建設機械3を一時停止させてもよい。このようにすれば、実施形態4においても、安全性を考慮した自動走行制御を実現できるようになる。
【0031】
即ち、本発明に係る自動走行制御装置においては、自動走行制御処理手段による自動走行制御処理は、建設機械3を所定距離走行させる毎に行うか、又は、建設機械3を所定時間走行させる毎に行うようにすればよい。
この場合、所定距離走行毎に、又は、所定時間経過毎に、建設機械3を一時停止させるようにすれば、安全性を考慮した自動走行制御を実現できるようになり、建設機械3を連続走行させるようにすれば、効率的な自動走行制御を実現できるようになる。
【0032】
実施形態5
建設機械3に、カメラ35とともに、図外の光センサーを搭載するようにして、当該光センサーから得られる受光強度の情報により、建設機械3と光源2との距離を取得して、トンネル壁面1Cと建設機械3との間の距離を一定に保つ制御を行うことにより、より正確かつ安全な自動走行制御を実現できるようになる。
【0033】
尚、各実施形態においては、建設機械3の進行方向決定処理(ステップS4)を行うために、建設機械3の進行方向を撮影できるように、カメラ35を建設機械3に設置するようにしたが、カメラ35がトンネル壁面1C側を向くように、カメラ35を建設機械3に設置するようにしてもよい。
このように、カメラ35をトンネル壁面1C側に向けて設置した場合、建設機械3の進行方向決定処理(ステップS4)を行うことが困難になるが、例えば、上述した実施形態5のように、トンネル壁面1Cと建設機械3との間の距離を一定に保つ制御を行うことによって、建設機械3の進行方向を制御できるようになる。
【0034】
また、監視室4での監視は行わなくてもよい。この場合、図4のステップS3でNo、図6のステップS11でNo、図8のステップS21でNoの場合には、PC30が、自動走行不可を示す警報、表示などの報知を行うようにすればよい。
【0035】
また、本発明によれば、GNSSによる位置情報を取得できない走行場所において走行手段を自動走行させることができるので、走行手段は走行可能な構成であればどのようなものであってもよく、また、走行場所もGNSSによる位置情報を取得できない走行場所であればどのような場所であってもかまわない。
また、壁面の光源はLEDバルーン等の投光器であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 トンネル坑内、1R トンネル坑内における走行面(走行場所)、
2,2A 光源、3 建設機械(走行手段)、30 PC(制御手段)、
35 カメラ(光検出手段)、D1,D2 進行方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8