(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114073
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】ストレーナ及びストレーナのスクリーン用ストッパ
(51)【国際特許分類】
B01D 35/02 20060101AFI20230809BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B01D35/02 A
B01D29/10 501Z
B01D29/10 510B
B01D29/10 530A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016180
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000137018
【氏名又は名称】株式会社ベン
(74)【復代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】細川 重章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 玄理
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA07
4D116AA11
4D116BB01
4D116BC25
4D116BC28
4D116BC45
4D116BC48
4D116BC77
4D116DD06
4D116FF12B
4D116KK04
4D116QB03
4D116QB11
4D116QB23
4D116QB26
4D116QB32
4D116QB37
4D116QB44
4D116UU03
4D116UU08
4D116VV01
4D116VV07
4D116ZZ21
(57)【要約】
【課題】 製造効率,操作性及び耐久性の向上を図る。
【解決手段】 流入口2及び流出口3を有した流路Rを備えた本体1と、本体1の流路R内に設けられたスクリーン10と、本体1に設けられスクリーン10の出入用孔4を閉塞する蓋5と、本体1に設けられスクリーン10の開口端部14が保持される端部保持部20と、スクリーン10の底部12を押えるストッパTと、ストッパTの下端部41を保持するストッパ保持部30とを備え、ストッパ保持部30を、本体1の流路Rを形成する壁部の内面側を切除して形成されるとともに流路の前後方向に直交する幅方向に延びる溝で構成し、ストッパTの下端部41を、ストッパ保持部30に差し込んで係止可能に形成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口及び流出口を有した流路を備えた本体と、該本体の流路内に設けられ開口及び底部を有したカップ状のスクリーンと、上記本体の壁部に設けられ上記スクリーンの出し入れを行なうための出入用孔と、該出入用孔を閉塞する着脱可能な蓋と、上記本体の流入口側の流路を形成する壁部の内面側に上記スクリーンの開口端部が挿入されて保持される端部保持部と、上記出入用孔から挿入されるとともに上記スクリーンの底部を押えて上記スクリーンの上記端部保持部からの抜けを規制するストッパと、上記本体の流路を形成し上記出入用孔に対向する側の壁部であって上記端部保持部に保持されたスクリーンの底部よりも流出口側に設けられ上記ストッパの下端部を保持するストッパ保持部とを備えたストレーナにおいて、
上記ストッパ保持部を、上記本体の流路を形成する壁部の内面側を切除して形成されるとともに上記流路の前後方向に直交する幅方向に延びる溝で構成し、
上記ストッパの下端部を、上記ストッパ保持部に差し込んで係止可能に形成したことを特徴とするストレーナ。
【請求項2】
上記ストッパ保持部は、所定の形状に加工されたスロットカッタを上記流出口側からその回転軸が流路の前後方向に沿うように挿入して回転させ、上記本体の壁部の内面を切削加工して形成され、幅方向両端側の底面が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のストレーナ。
【請求項3】
上記出入用孔に対向する側の壁部の内面側を流路側に膨出させた膨出部を形成し、該膨出部に、上記スクリーンの底部側外周面を支承する支承面を形成するとともに、該膨出部に上記ストッパ保持部を形成したことを特徴とする請求項1または2記載のストレーナ。
【請求項4】
上記出入用孔を円形に形成し、上記ストッパの上端部に、上記出入用孔を形成する壁面に衝止する衝止部を設け、該衝止部を上記出入用孔の円周方向に沿って、間隔を隔てて複数設けたことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のストレーナ。
【請求項5】
上記ストッパ保持部を、底面が円弧状の溝で構成し、
上記ストッパの下端部側の外縁を、上記溝の底面と同じ円弧状に形成したことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のストレーナ。
【請求項6】
上記ストッパを、棒状部材で形成されるとともに下端部側がU字状に折曲形成され両側に同じ高さに形成され上記スクリーンの底部に当接可能な一対の当接杆を有した主体を備えて構成したことを特徴とする請求項5記載のストレーナ。
【請求項7】
上記出入用孔を円形に形成し、上記ストッパの上端部に、上記出入用孔を形成する壁面に衝止する衝止部を設け、該衝止部を上記一対の当接杆の上端部で構成したことを特徴とする請求項6記載のストレーナ。
【請求項8】
上記一対の当接杆の上端側であって、該一対の当接杆間に、棒状部材で形成された横杆を架設したことを特徴とする請求項6または7記載のストレーナ。
【請求項9】
上記請求項6乃至8何れかに記載のストレーナのスクリーン用ストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水,油等の流体の流れる管路において、この流体内に含まれるゴミ等の異物を濾過するスクリーンを備えたストレーナ及びストレーナのスクリーン用ストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のストレーナとしては、例えば、本願出願人が先に提案したストレーナが知られている(特許第4272907号公報に掲載)。
図9(a)に示すように、このストレーナSaは、流入口101及び流出口102を有した流路Rを備えた鉄の鋳物製の本体100と、本体100の流路R内に設けられ開口111及び底部112を有したカップ状のスクリーン110と、本体100の壁部に設けられスクリーン110の出し入れを行なうための出入用孔103と、この出入用孔103を閉塞する着脱可能な蓋104と、本体100の流入口101側の流路Rを形成する壁部の内面側にスクリーン110の開口端部113が挿入されて保持される端部保持部105と、出入用孔103から挿入されるとともにスクリーン110の底部112を押えてスクリーン110の端部保持部105からの抜けを規制するストッパTaと、本体100の流路Rを形成し出入用孔103に対向する側の壁部であって端部保持部105に保持されたスクリーン110の底部112よりも流出口102側に設けられストッパTaの下端部130を保持するストッパ保持部120とを備えている。
【0003】
ストッパTaは、例えばステンレスのロッドであり、下端部130に雄ネジ部131を有するとともに上端部に締め付け具により回転させられるボルト頭132を有して構成されている。また、ストッパ保持部120は、ストッパTaの雄ネジ部131が螺合する雌ネジ部121で形成されている。この雌ネジ部121は、本体100の壁部に設けられた真鍮製のブッシュ123に形成されている。ストッパTaには上端部側に向けて末広がりの上下一対の円錐台部133が設けられており、ストッパTaを雌ネジ部121にねじ込んだ際に、円錐台部133のテーパ面をスクリーン110の底部112に形成したテーパ面に押圧して、スクリーン110の開口端部113を端部保持部105に押圧し、スクリーン110の端部保持部105からの抜けを規制するようにしている。
【0004】
ストッパ保持部120において、ブッシュ123は、外側に雄ネジ124が形成され、一端にボルト頭125を有し、他端側に雄ネジ124と同軸の雌ネジ部121を形成してなり、
図9(b)に示すように、本体100の所要箇所に外側から貫通孔126をドリルDにより開けて、この貫通孔126にタップ(図示せず)により雌ネジ127を形成し、この雌ネジ127に雄ネジ124をねじ込むことにより、本体100に固定されている。
【0005】
このように、雌ネジ部121をブッシュ123に形成してこのブッシュ123を本体100に取付けることにより雌ネジ部121を機能させるようにしているのは、次の理由による。即ち、本来ならば、雌ネジ部121を本体100の壁部の内面側に直接形成するのが望ましいが、その場合には、出入用孔103からドリル(図示せず)を入れてこのドリルにより本体100の壁部の内面側に穴を開け、この穴にタップ(図示せず)により雌ネジ部121を形成しなければならない。しかし、このように出入用孔103から雌ネジ部121を加工することは、出入用孔103の大きさに限度があるので、穴を開けるドリルの保持ヘッド(図示せず)がこの出入用孔103にぶつかったり、雌ネジ部121を形成するタップの保持ヘッドが出入用孔103にぶつかって、穴や雌ネジ部121を形成することが極めて困難になっており、やむを得ず、ブッシュ123を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この従来のストレーナSaにおいては、ブッシュ123を本体100に取付けているので、部品点数が増し、製造工数も多くなって作業も煩雑になり、それだけコスト高にもなって、製造効率が悪くなっているという問題があった。また、スクリーン110の取付け取外しの際には、ストッパTaも取付け取外しするが、従来のストレーナSaにおいては、ストッパTaの雄ネジ部131を雌ネジ部121にねじ込みあるいは緩めて本体100に取付け取外しするので、それだけ、取付け取外し作業も煩雑になって、操作性を損ねているという問題もあった。
【0008】
更には、本体100は鉄の鋳物製であることから、流体が水の場合には、ブッシュ123の雄ネジ124と接触する本体100の雌ネジ127の部分が錆びることがあり、その分耐久性に劣るという問題もあった。そのため、流路Rを形成する本体100の壁部内面をコーティングすることも行うが、雌ネジ127部分においてはコーティングが十分に行き届かないので、どうしても、発錆が生じやすくなる。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、製造効率,操作性及び耐久性の向上を図ったストレーナ及びストレーナのスクリーン用ストッパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するため、本発明のストレーナは、流入口及び流出口を有した流路を備えた本体と、該本体の流路内に設けられ開口及び底部を有したカップ状のスクリーンと、上記本体の壁部に設けられ上記スクリーンの出し入れを行なうための出入用孔と、該出入用孔を閉塞する着脱可能な蓋と、上記本体の流入口側の流路を形成する壁部の内面側に上記スクリーンの開口端部が挿入されて保持される端部保持部と、上記出入用孔から挿入されるとともに上記スクリーンの底部を押えて上記スクリーンの上記端部保持部からの抜けを規制するストッパと、上記本体の流路を形成し上記出入用孔に対向する側の壁部であって上記端部保持部に保持されたスクリーンの底部よりも流出口側に設けられ上記ストッパの下端部を保持するストッパ保持部とを備えたストレーナにおいて、
上記ストッパ保持部を、上記本体の流路を形成する壁部の内面側を切除して形成されるとともに上記流路の前後方向に直交する幅方向に延びる溝で構成し、
上記ストッパの下端部を、上記ストッパ保持部に差し込んで係止可能に形成した構成としている。
【0011】
これにより、このストレーナの本体を作製するときは、本体の壁部の内面側の所要部位にストッパ保持部を形成する。この場合、ストッパ保持部は、流路の前後方向に直交する幅方向に延びる溝で構成され、ドリル穴ではないので、例えば、周知のスロットカッタを流出口から挿入して容易に加工することができる。一方、ストッパは、その下端部をストッパ保持部の溝に係合する形状にして形成する。そのため、従来のように、本体に雌ネジを形成し、これに螺合する雄ネジ及び中心の雌ネジ部を有したブッシュを設けなくても良いので、それだけ、部品点数が減り、製造工数も少なくなることから、製造効率を向上させることができる。
【0012】
また、スクリーンを本体に装着するときは、蓋を取外して出入用孔を開にする。この状態で、スクリーンを出入用孔から本体内に入れてスクリーンの開口端部を端部保持部に挿入し、次に、ストッパを出入用孔から挿入し、その下端部をストッパ保持部に差し込んで係止し、スクリーンの底部を押える。その後、蓋を被せて出入用孔を閉にする。この場合、ストッパは、その下端部を溝からなるストッパ保持部に差し込むだけで良いので、従来の雌ネジ部にねじ込んで装着する場合に比較して、装着を極めて容易に行うことができ、操作性を向上させることができる。一方、スクリーンの洗浄や交換のために、スクリーンを取外すときは、蓋を取外して出入用孔を開にする。この状態で、ストッパを出入用孔から持ち上げて、その下端部をストッパ保持部から抜いて取外す。この場合も、ストッパは、その下端部を溝からなるストッパ保持部から抜くだけで良いので、従来の雌ネジ部から緩めて取り出す場合に比較して、取外しを極めて容易に行うことができ、この点でも操作性を向上させることができる。
【0013】
そして、このストレーナの使用の際、流入口から流路を通って流出口へ向けて流体が流れると、この流体に混在する異物がスクリーンで濾過されていく。この場合、流体が水の場合には、経時的使用により、従来においては、本体が鉄の鋳物製であると、流路を構成する本体の壁部の内面をコーティングしても、ブッシュの雄ネジと接触する本体の雌ネジの部分が錆びることがあったが、本発明では、ネジ手段がなく、ストッパ保持部は溝なので、発錆の心配がほとんどなく、それだけ、耐久性を向上させることができる。
【0014】
本発明の構成において、上記ストッパ保持部は、所定の形状に加工されたスロットカッタを上記流出口側からその回転軸が流路の前後方向に沿うように挿入して回転させ、上記本体の壁部の内面を切削加工して形成され、幅方向両端側の底面が円弧状に形成されていることが有効である。これにより、ストッパ保持部を形成するときは、スロットカッタを流出口から内部に挿入し、スロットカッタを本体の内壁面に押し当て、あるいは、押し当てながら幅方向左右に移動させて所要の溝に加工することができる。そのため、製造効率を確実に向上させることができる。
【0015】
また、必要に応じ、上記出入用孔に対向する側の壁部の内面側を流路側に膨出させた膨出部を形成し、該膨出部に、上記スクリーンの底部側外周面を支承する支承面を形成するとともに、該膨出部に上記ストッパ保持部を形成した構成としている。これにより、膨出部にストッパ保持部を形成するので、膨出部は内壁面の一般面より高さが高くなっていることから、ストッパ保持部としての溝を加工し易く、この点でも製造効率を向上させることができる。また、溝によって、本体の壁部の厚さを薄くすることがなく、強度上も好ましい。更に、スクリーンの底部側外周面を膨出部に形成した支承面で支承するので、スクリーンの保持を確実にすることができる。
【0016】
更に、上記出入用孔を円形に形成し、上記ストッパの上端部に、上記出入用孔を形成する壁面に衝止する衝止部を設け、該衝止部を上記出入用孔の円周方向に沿って、間隔を隔てて複数設けた構成としている。これにより、このストレーナの使用の際、流入口から流路を通って流出口向けて流体が流れると、この流体に混在する異物がスクリーンで濾過されていく。この場合、流体によって、流出口側にスクリーンが押されるが、衝止部が出入用孔を形成する壁面に当接するので、ストッパ保持部の保持と相まってスクリーンの押さえを確実にすることができる。また、出入用孔は円形になっていることから、衝止部が1つであると、ストッパは、ストッパ保持部を支点として幅方向に揺動しようとするが、衝止部は間隔を隔てて複数あるので、これらが出入用孔を形成する壁面に衝止すると、幅方向への揺動を押えることができ、そのため、ストッパが安定し、スクリーンの押さえを確実に行うことができる。
【0017】
更にまた、上記ストッパ保持部を、底面が円弧状の溝で構成し、上記ストッパの下端部側の外縁を、上記溝の底面と同じ円弧状に形成した構成としている。これにより、スロットカッタを左右に移動させることなく、本体の内壁面に押し当てるだけで溝を形成することができ、それだけ製造を容易にすることができる。また、ストッパの下端部が溝の底面に沿って係合するので、ストッパを安定して支持することができる。
【0018】
また、必要に応じ、上記ストッパを、棒状部材で形成されるとともに下端部側がU字状に折曲形成され両側に同じ高さに形成され上記スクリーンの底部に当接可能な一対の当接杆を有した主体を備えて構成している。ストッパを、棒状部材を折曲形成することで作製できるので、製造を極めて容易に行うことができ、より一層製造効率を向上させることができる。
【0019】
更に、必要に応じ、上記出入用孔を円形に形成し、上記ストッパの上端部に、上記出入用孔を形成する壁面に衝止する衝止部を設け、該衝止部を上記一対の当接杆の上端部で構成している。衝止部を容易に形成することができ、この点でも製造を極めて容易に行うことができる。
【0020】
更にまた、上記一対の当接杆の上端側であって、該一対の当接杆間に、棒状部材で形成された横杆を架設した構成としている。これにより、ストッパの取付け取外しの際に、横杆を把持して行うことができるので、より一層操作性を向上させることができる。また、当接杆を補強することができ、ストッパの強度を向上させることができる。
【0021】
また、上記目的を達成するため、本発明のストレーナのスクリーン用ストッパは、上述した、ストッパ保持部を、底面が円弧状の溝で構成したものに適用する構成のものであり、棒状部材をU字状に折曲形成した主体を備えて構成されたものである。上述したように、製造が容易なので製造効率を向上させることができ、操作性も向上させることができる。また、U字状なので強度も高く耐久性も向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、ネジ手段を使用することなくストッパ保持手段を本体に容易に形成できるようになり、ネジ手段を使用することなくストッパの取付け取外しも行なうことができるようになるので、製造効率,操作性及び耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係るストレーナを示す断面斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るストレーナを示し、(a)は側面断面図、(b)は流出口側から見た正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るストレーナを示す蓋を開けた状態の平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るストレーナにおいて、本体にストッパ保持部を加工するときの状態を示す側面断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るストレーナのスクリーン用ストッパを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るストレーナにおいて、ストッパを取付けるときの状態を示し、(a)は要部斜視図、(b)は流入口側から見た要部断面図である。
【
図7】本発明の別の実施の形態に係るストレーナを示す要部図である。
【
図8】本発明の別の実施の形態に係るスクリーン用ストッパを示す図である。
【
図9】従来のストレーナの一例を示し、(a)は側面断面図、(b)は本体を加工するときの状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るストレーナ及びこれに用いるストレーナのスクリーン用ストッパについて詳細に説明する。
図1乃至
図6には、本発明の実施の形態に係るストレーナSを示している。このストレーナSの基本的構成は、流入口2及び流出口3を有した流路Rを備えた本体1と、この本体1の流路R内に設けられ開口11及び底部12を有したカップ状のスクリーン10とを備えてなる。
【0025】
詳しくは、本体1は、その流路Rを直線形状とする管体であって例えば鉄の鋳物で形成されている。本体1の流入口2及び流出口3の外縁には、夫々、ボルト及びナットで締め付けて他の管体へ取付けられるフランジが一体形成されている。本体1の側壁部には、スクリーン10の出し入れを行なうための出入用孔4が設けられているとともに、この出入用孔4を閉塞する着脱可能な蓋5が備えられている。出入用孔4は円形に形成されている。
【0026】
蓋5は本体1と同様の鋳物で形成されている。本体1の出入用孔4の周囲には蓋5を固定するための複数の雌ネジ6が形成され、蓋5にはこの雌ネジ6に対応する位置に孔(図示せず)が形成され、この孔にナット7付のボルト8を挿通して雌ネジ6にボルト8をねじ込み、ナット7を締め付けることにより蓋5を固定できるようにしている。また、蓋5と本体1との当接面には、シール用のO-リング9が備えられている。
【0027】
スクリーン10は、例えばステンレス等の金属で形成されるカップ体13を備えている。このカップ体13には小孔が多数設けられ、その内側には、流路Rを流れる流体に含まれるゴミ等の異物を濾過して分離するネット13aが備えられる。カップ体13の開口端部14の外周及び底部12の外周は、ステンレス製のリング状の補強体15,16で補強されている。17はカップ体13の外側面に設けられ出入用孔4からスクリーン10を出し入れする際に把持する把手である。
【0028】
また、本体1の流入口2側の流路Rを形成する壁部の内面側には、スクリーン10の開口端部14が挿入されて保持される端部保持部20が形成されている。スクリーン10の開口端部14を構成する補強体15の外周には、シール用のO-リング21が装着されており、このO-リング21を端部保持部20の内周に弾接させて流体がスクリーン10の外を通ることを阻止している。
【0029】
更に、本体1の流出口3側の流路Rを形成し出入用孔4に対向する側の壁部の内面側には、流路R側に膨出させた膨出部22が形成されており、この膨出部22に、スクリーン10の底部12側の補強体16の外周面18を支承する支承面23が形成されている。
【0030】
また、本ストレーナSは、出入用孔4から挿入されるとともにスクリーン10の底部12を押えてスクリーン10の端部保持部20からの抜けを規制する本発明の実施の形態に係るストッパTと、本体1の流路Rを形成し出入用孔4に対向する側の壁部であって端部保持部20に保持されたスクリーン10の底部12よりも流出口3側に設けられストッパTの下端部41を保持するストッパ保持部30とが備えられている。
【0031】
ストッパ保持部30は、本体1の流路Rを形成する壁部であって、上記の膨出部22の内面側を切除して形成されるとともに、流路Rの前後方向に直交する幅方向に延びる溝で構成されている。詳しくは、
図4に示すように、ストッパ保持部30は、所定の形状に加工されたスロットカッタCを流出口3側からその回転軸Caが流路Rの前後方向に沿うように挿入して回転させ、本体1の壁部の内面を切削加工して形成され、幅方向両端側の底面が円弧状に形成されている。即ち、ストッパ保持部30は、スロットカッタCを流出口3から内部に挿入し、スロットカッタCを本体1の膨出部22の内壁面に押し当て、あるいは、押し当てながら幅方向左右に移動させて所要の溝形状に加工形成される。実施の形態では、ストッパ保持部30は、スロットカッタCを左右に移動させることなく、本体1の内壁面に押し当てて形成され、底面が円弧状の溝で構成されている。尚、流路Rを構成する本体1の壁部の内面は、そのままでも良いが、静電塗装などでコーティングしても良い。
【0032】
本発明の実施の形態に係るストッパTは、その下端部41がストッパ保持部30に差し込んで係止可能に形成されている。詳しくは、ストッパTは、
図5にも示すように、ステンレス製の棒状部材で形成されるとともに下端部41側がU字状に折曲形成され両側に同じ高さに形成され、スクリーン10の底部12に当接可能な一対の当接杆42を有した主体40を備えて構成されている。ストッパTのU字状の下端部41側の外縁は、ストッパ保持部30の溝の底面と同じ円弧状に形成されている。
【0033】
また、ストッパTの上端部には、出入用孔4を形成する壁面に衝止する衝止部43が設けられ、この衝止部43は、出入用孔4の円周方向に沿って、間隔を隔てて複数設けられている。実施の形態では、この衝止部43は、一対の当接杆42の上端部で構成されている。
【0034】
更に、一対の当接杆42の上端側であって、この一対の当接杆42間には、ステンレス製の棒状部材で形成された横杆44が溶接により架設されている。横杆44は、主体40の流入口2側に向けて凸になるように湾曲形成されている。当接杆42を補強することができ、ストッパTの強度を向上させることができる。
【0035】
従って、実施の形態に係るストレーナSの本体1の作製において、ストッパ保持部30を作製するときは、
図4に示すように、所定の形状に加工されたスロットカッタCを流出口3側からその回転軸Caが流路Rの前後方向に沿うように挿入して回転させ、本体1の出入用孔4に対向する側に設けた膨出部22の内側面にスロットカッタCを押し当てて切削加工により溝を形成する。溝は、スロットカッタCの刃型に対応して、底面が円弧状に形成される。この場合、スロットカッタCを流出口3から挿入して膨出部22に押し当てるだけで良いので、従来のように、本体に雌ネジを形成し、これに螺合する雄ネジ及び中心の雌ネジ部を有したブッシュを設けなくても良いので、それだけ、部品点数が減り、製造工数も少なくなることから、製造効率を向上させることができる。また、膨出部22にストッパ保持部30を形成するので、膨出部22は内壁面の一般面より高さが高くなっていることから、ストッパ保持部30としての溝を加工し易く、この点でも製造効率を向上させることができる。また、溝によって、本体1の壁部の厚さを薄くすることがなく、強度上も好ましい。
【0036】
一方、ストッパTは、
図5に示すように、その下端部41をストッパ保持部30の溝に係合する形状にして形成する。即ち、ストッパTを、棒状部材をU字状に折曲形成して主体40を作製する。この際、主体40の下端部41側の外縁を、溝の底面と同じ円弧状に形成する。それから、横杆44を溶接により主体40に架設する。この場合、主体40をU字状に折曲することで作製でき、しかも衝止部43も同時に作製できるので、製造を極めて容易に行うことができ、製造効率を向上させることができる。
【0037】
また、スクリーン10を本体1に装着するときは、
図1,
図2,
図3及び
図6に示すように、蓋5を取外して出入用孔4を開にする。この状態で、スクリーン10をその把手17を持って出入用孔4から本体1内に入れてスクリーン10の開口端部14を端部保持部20に挿入し、スクリーン10の底部12側外周面18を膨出部22に形成した支承面23で支承する。次に、ストッパTを横杆44を持って出入用孔4から挿入し、その下端部41をストッパ保持部30に差し込んで係止し、スクリーン10の底部12を押える。その後、蓋5を被せて出入用孔4を閉にする。
【0038】
この場合、ストッパTは、その下端部41を溝からなるストッパ保持部30に差し込むだけで良いので、従来の雌ネジ部にねじ込んで装着する場合に比較して、装着を極めて容易に行うことができ、操作性を向上させることができる。また、ストッパTの横杆44を把持して装着することができ、この点でも、操作性を向上させることができる。この際、横杆44は、主体40の流入口2側に向けて凸になるように湾曲形成されているので、持ち易いとともに、手が出入用孔4等に当たりにくく、より一層操作性を向上させることができる。
【0039】
そして、このストレーナSを使用する際は、流入口2から流路Rを通って流出口3に向けて流体が流れるが、この状態で、流体に混在する異物がスクリーン10で濾過されていく。この場合、スクリーン10の底部12側外周面18を膨出部22に形成した支承面23で支承するので、スクリーン10の保持を確実にすることができる。また、ストッパTの主体40の下端部41側の外縁を、溝の底面と同じ円弧状に形成したので、主体40の下端部41が溝の底面に沿って係合することになり、そのため、ストッパTを安定して支持することができ、スクリーン10の保持を確実に行うことができる。
【0040】
また、この場合、流体によって、流出口3側にスクリーン10が押されるが、衝止部43が出入用孔4を形成する壁面に当接するので、ストッパ保持部30の保持と相まってスクリーン10の押さえを確実にすることができる。更に、出入用孔4は円形になっていることから、衝止部43が1つであると、ストッパTは、ストッパ保持部30を支点として幅方向に揺動しようとするが、衝止部43は間隔を隔てて複数あるので、これらが出入用孔4を形成する壁面に衝止すると、幅方向への揺動を押えることができ、そのため、ストッパTが安定し、スクリーン10の押さえを確実に行うことができる。
【0041】
更に、流体が水の場合には、経時的使用により、従来においては、本体が鉄の鋳物製であると、流路Rを構成する本体1の壁部の内面をコーティングしても、ブッシュの雄ネジと接触する本体の雌ネジの部分が錆びることがあったが、本発明では、ネジ手段がなく、ストッパ保持部30は溝なので、発錆の心配がほとんどなく、それだけ、耐久性を向上させることができる。
【0042】
更にまた、スクリーン10の洗浄や交換のために、スクリーン10を取外すときは、蓋5を取外して出入用孔4を開にする。この状態で、ストッパTをその横杆44を持って出入用孔4から持ち上げて、その下端部41をストッパ保持部30から抜いて取外す。この場合も、ストッパTは、その下端部41を溝からなるストッパ保持部30から抜くだけで良いので、従来の雌ネジ部から緩めて取り出す場合に比較して、取外しを極めて容易に行うことができ、操作性を向上させることができる。また、ストッパTの横杆44を把持して装着することができ、この点でも、操作性を向上させることができる。この際、横杆44は、主体40の流入口2側に向けて凸になるように湾曲形成されているので、持ち易いとともに、手が出入用孔4等に当たりにくく、より一層操作性を向上させることができる。再び、スクリーン10を装着するときは、上記と同様である。
【0043】
図7には、別の実施の形態に係るストレーナSを示している。これは、上記と略同様に形成されるが、上記と異なって、ストッパ保持部30の溝の底面が平面状に形成されている。スロットカッタCを流出口3から内部に挿入し、スロットカッタCを本体1の膨出部22の内壁面に押し当てながら幅方向左右に移動させて、形成している。一方、ストッパTも、これに合わせて、その下端部41を、直線状に形成している。これによっても上記と同様の作用,効果を奏する。
【0044】
図8には、ストッパTの別の例を示す。これは、下面が円弧状の下端部41を有し上記のストッパ保持部30の底面が円弧状の溝に係合する半月状の下端部材50と、下端部材50の中央に立設され、スクリーン10の底部12に当接する一本の当接部材51と、当接部材51の上端に設けられた横杆52と、横杆52の左右両端に夫々立設された棒状の一対の衝止部53とから構成されている。これによっても上記と同様の作用,効果を奏する。
【0045】
尚、上記実施の形態において、ストッパTの形状やストッパ保持部30の溝の形状は、上述したものに限定されるものではなく適宜変更して差支えない。例えば、ストッパ保持部30の溝の形状としては、スロットカッタCを流出口3から内部に挿入し、スロットカッタCを本体1の内壁面に押し当てながら幅方向左右に移動させて、幅方向両端側の底面が円弧状で途中が平面状の細長い溝に形成しても良く、適宜変更して差支えない。当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
S ストレーナ
1 本体
2 流入口
3 流出口
R 流路
4 出入用孔
5 蓋
6 雌ネジ
7 ナット
8 ボルト
9 O-リング
10 スクリーン
11 開口
12 底部
13 カップ体
13a ネット
14 開口端部
15 補強体
16 補強体
17 把手
18 外周面
20 端部保持部
21 O-リング
22 膨出部
23 支承面
30 ストッパ保持部
C スロットカッタ
Ca 回転軸
T ストッパ
40 主体
41 下端部
42 当接杆
43 衝止部
44 横杆
50 下端部材
51 当接部材
52 横杆
53 衝止部