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特開2023-114088解析装置、制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114088
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】解析装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20230809BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20230809BHJP
   A61M 60/279 20210101ALI20230809BHJP
   A61M 60/37 20210101ALI20230809BHJP
   A61M 60/531 20210101ALI20230809BHJP
   A61M 60/546 20210101ALI20230809BHJP
   A61M 1/34 20060101ALI20230809BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20230809BHJP
   A61M 60/515 20210101ALI20230809BHJP
   B01D 65/00 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M60/113
A61M60/279
A61M60/37
A61M60/531
A61M60/546
A61M1/34 125
A61M1/36 119
A61M60/515
B01D65/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016201
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本 挙
(72)【発明者】
【氏名】日根ノ谷 健
【テーマコード(参考)】
4C077
4D006
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC03
4C077DD07
4C077EE01
4C077EE02
4C077EE03
4C077EE04
4C077HH03
4C077HH06
4C077HH13
4C077HH15
4C077JJ03
4C077JJ16
4C077KK11
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA13
4D006HA02
4D006HA18
4D006JA53A
4D006JA67Z
4D006KE02Q
4D006KE03Q
4D006KE07P
4D006KE08P
4D006KE09P
4D006LA10
4D006PA01
4D006PB09
4D006PB42
4D006PB43
4D006PB52
4D006PC41
4D006PC47
(57)【要約】
【課題】体外循環治療に用いられる濾過器に関する情報を適切に提供することが可能な解析装置、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】解析装置は、少なくとも血液の細胞成分濃度又は蛋白質成分濃度を含む、患者に関する患者情報と、患者から脱血された血液を含む液体が流れるラインに接続される濾過器の仕様に関する仕様情報と、濾過器を用いた患者の治療の施行に関する施行情報とを取得する取得部と、患者情報、仕様情報及び施行情報に基づいて、患者の体外循環治療における濾過器の目詰まりに関する目詰まり情報を算出する算出部と、目詰まり情報に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも血液の細胞成分濃度又は蛋白質成分濃度を含む、患者に関する患者情報と、患者から脱血された血液を含む液体が流れるラインに接続される濾過器の仕様に関する仕様情報と、前記濾過器を用いた患者の治療の施行に関する施行情報とを取得する取得部と、
前記患者情報、前記仕様情報及び前記施行情報に基づいて、患者の体外循環治療における前記濾過器の目詰まりに関する目詰まり情報を算出する算出部と、
前記目詰まり情報に関する情報を出力する出力部と、
を有することを特徴とする体外循環治療の解析装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記患者情報、前記仕様情報及び前記施行情報に基づいて、前記濾過器における前記液体の特定の成分の堆積量を算出し、前記堆積量に基づいて、前記濾過器におけるTMP、又は、前記濾過器から流出する前記液体の前記特定の成分の濃度を前記目詰まり情報として算出する、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記算出部は、さらに、前記目詰まり情報が所定の条件を満たすための、前記濾過器の仕様に関する補正仕様情報、又は、前記濾過器を用いた患者の治療の施行に関する補正施行情報を算出し、
前記出力部は、前記目詰まり情報に関する情報として、前記補正仕様情報又は前記補正施行情報を出力する、請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記患者情報として、年齢、性別、人種、体重、ドライウェイト、現症、既往症、体調又は血液情報を取得する、請求項1~3の何れか一項に記載の解析装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記仕様情報として、膜素材、内径、膜厚、外径、空隙率、平均孔径、孔径分布、有効長、透水性能、分画性能、膜抵抗、吸着性能、比表面積、内部表面積、細孔容積、ヨウ素価、フェノール価、ABS価、メチレンブルー脱色力、滅菌法、膜面積、状態、血液容量、透析液容量、容器内径、糸充填率、糸本数、UFR、クリアランス、ふるい係数、透水性能、分画性能又は抵抗を取得する、請求項1~4の何れか一項に記載の解析装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記施行情報として、前記濾過器の個数、前記濾過器の出入り口の流量、施行時間、濾過流量、治療中の上限TMP又は施行終了条件を取得する、請求項1~5の何れか一項に記載の解析装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記補正施行情報として、前記濾過器の個数、前記濾過器の出入り口の流量、施行時間又は前記濾過器の圧力を算出する、請求項3に記載の解析装置。
【請求項8】
前記算出部は、
以下の式(1)により、時刻tにおける前記濾過器の膜での成分iの堆積量[Vmitの変化速度である堆積速度[ΔVmitを算出し、
【数1】
ここで、PDiは前記膜に進入する成分iの量に対する前記膜に堆積する成分iの量の割合であり、[Pitは時刻tにおいて前記膜に進入する成分iの量に対する前記膜を透過する成分iの量の割合であり、Q3は前記濾過器の濾液出口ポートにおける体積流量であり、[C1itは時刻tにおける成分iの血液中の濃度であり、ρiは成分iの密度である、
以下の式(2)により、時刻t+Δtにおける各成分iの前記堆積量[Vmit+Δtを算出する、
【数2】
請求項2に記載の解析装置。
【請求項9】
前記算出部は、
以下の式(3)により、時刻t+Δtにおける前記濾過器における膜間圧力差[TMP]t+Δtを算出し、
【数3】
ここで、ηは血液粘度であり、K0は膜における全ての成分の堆積量Vmjが0であるときの前記濾過器の圧力損失の係数であり、γjは前記濾過器内の圧力に対する各成分jの堆積量の寄与係数であり、Aは、膜面積である、
前記膜間圧力差に基づいて、前記濾過器におけるTMPを算出する、請求項8に記載の解析装置。
【請求項10】
前記算出部は、
以下の式(4)により、時刻t+Δtにおける前記濾過器から流出する前記液体の各成分iの前記濃度[C2it+Δtを算出する、
【数4】
ここで、Q1は、前記濾過器の入口側ポートにおける体積流量である、
請求項8または9に記載の解析装置。
【請求項11】
体外循環治療の解析装置の制御方法であって、
少なくとも血液の細胞成分濃度又は蛋白質成分濃度を含む、患者に関する患者情報と、患者から脱血された血液を含む液体が流れるラインに接続される濾過器の仕様に関する仕様情報と、前記濾過器を用いた患者の治療の施行に関する施行情報とを取得し、
前記患者情報、前記仕様情報及び前記施行情報に基づいて、患者の体外循環治療における前記濾過器の目詰まりに関する目詰まり情報を算出し、
前記目詰まり情報に関する情報を出力する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
体外循環治療の解析装置の制御プログラムであって、
少なくとも血液の細胞成分濃度又は蛋白質成分濃度を含む、患者に関する患者情報と、患者から脱血された血液を含む液体が流れるラインに接続される濾過器の仕様に関する仕様情報と、前記濾過器を用いた患者の治療の施行に関する施行情報とを取得し、
前記患者情報、前記仕様情報及び前記施行情報に基づいて、患者の体外循環治療における前記濾過器の目詰まりに関する目詰まり情報を算出し、
前記目詰まり情報に関する情報を出力する、
ことを前記解析装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化等の体外循環治療を行うシステムは、患者から脱血した血液を血液回路に流し、濾過器を用いて濾過しつつ、患者の体内に戻す。このような体外循環治療に用いられる濾過器では、使用状況に応じて状態が変化しており、医者又は患者等は、体外循環治療を適切に行うために、濾過器に関する情報を正しく認識する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、推定コンポーネント、予測コンポーネント、最適化コンポーネントを有する、血液透析、血液濾過、血液透析濾過等の腎不全血液療法、特に、在宅血液透析のためのシステムが開示されている。推定コンポーネントの出力は、予測および最適化コンポーネントの両方への入力として使用される。予測および最適化コンポーネントは両方とも、例えば、尿素、ベータ2-ミクログロブリン、およびリンまたはリン酸塩に対して、好適な溶質クリアランスをもたらすであろう、療法処方を決定するために使用することができる。
【0004】
特許文献2には、複数の透析器またはフィルタのうちの各々を用いて、治療を実行するための患者固有の治療パラメータから、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関して、機械固有の治療パラメータを決定する体外血液処理装置が開示されている。体外血液処理装置は、決定された機械固有の治療パラメータから生じる、すべてのタイプの透析器に関する体外血液処理のコストを決定し、表示ユニット上に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-88179号公報
【特許文献2】特表2012-526569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
体外循環治療において、体外循環治療に用いられる濾過器に関する情報が適切に提供されることが求められている。
【0007】
実施形態に係る解析装置、制御方法及び制御プログラムは、体外循環治療に用いられる濾過器に関する情報を適切に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る解析装置は、少なくとも血液の細胞成分濃度又は蛋白質成分濃度を含む、患者に関する患者情報と、患者から脱血された血液を含む液体が流れるラインに接続される濾過器の仕様に関する仕様情報と、濾過器を用いた患者の治療の施行に関する施行情報とを取得する取得部と、患者情報、仕様情報及び施行情報に基づいて、患者の体外循環治療における濾過器の目詰まりに関する目詰まり情報を算出する算出部と、目詰まり情報に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【0009】
実施形態に係る解析装置において、算出部は、患者情報、仕様情報及び施行情報に基づいて、濾過器における液体の特定の成分の堆積量を算出し、堆積量に基づいて、濾過器におけるTMP、又は、濾過器から流出する液体の特定の成分の濃度を目詰まり情報として算出することが好ましい。
【0010】
実施形態に係る解析装置において、算出部は、さらに、目詰まり情報が所定の条件を満たすための、濾過器の仕様に関する補正仕様情報、又は、濾過器を用いた患者の治療の施行に関する補正施行情報を算出し、出力部は、目詰まり情報に関する情報として、補正仕様情報又は補正施行情報を出力することが好ましい。
【0011】
実施形態に係る解析装置において、取得部は、患者情報として、年齢、性別、人種、体重、ドライウェイト、現症、既往症、体調又は血液情報を取得することが好ましい。
【0012】
実施形態に係る解析装置において、取得部は、仕様情報として、膜素材、内径、膜厚、外径、空隙率、平均孔径、孔径分布、有効長、透水性能、分画性能、膜抵抗、吸着性能、比表面積、内部表面積、細孔容積、ヨウ素価、フェノール価、ABS価、メチレンブルー脱色力、滅菌法、膜面積、状態、血液容量、透析液容量、容器内径、糸充填率、糸本数、UFR、クリアランス、ふるい係数、透水性能、分画性能又は抵抗を取得することが好ましい。
【0013】
実施形態に係る解析装置において、取得部は、施行情報として、濾過器の個数、濾過器の出入り口の流量、施行時間、濾過流量、治療中の上限TMP又は施行終了条件を取得することが好ましい。
【0014】
実施形態に係る解析装置において、算出部は、補正施行情報として、濾過器の個数、濾過器の出入り口の流量、施行時間又は濾過器の圧力を算出することが好ましい。
【0015】
実施形態に係る解析装置において、算出部は、以下の式(1)により、時刻tにおける濾過器の膜での成分iの堆積量[Vmitの変化速度である堆積速度[ΔVmitを算出し、
【数1】
ここで、PDiは膜に進入する成分iの量に対する膜に堆積する成分iの量の割合であり、[Pitは時刻tにおいて膜に進入する成分iの量に対する膜を透過する成分iの量の割合であり、Q3は濾過器の濾液出口ポートにおける体積流量であり、[C1itは時刻tにおける成分iの血液中の濃度であり、ρiは成分iの密度である、以下の式(2)により、時刻t+Δtにおける各成分iの堆積量[Vmit+Δtを算出する、
【数2】
ことが好ましい。
【0016】
実施形態に係る解析装置において、算出部は、以下の式(3)により、時刻t+Δtにおける濾過器における膜間圧力差[TMP]t+Δtを算出し、
【数3】
ここで、ηは血液粘度であり、K0は膜における全ての成分の堆積量Vmjが0であるときの濾過器の圧力損失の係数であり、γjは濾過器内の圧力に対する各成分jの堆積量の寄与係数であり、Aは、膜面積である、膜間圧力差に基づいて、濾過器におけるTMPを算出することが好ましい。
【0017】
実施形態に係る解析装置において、算出部は、以下の式(4)により、時刻t+Δtにおける濾過器から流出する液体の各成分iの濃度[C2it+Δtを算出する、
【数4】
ここで、Q1は、濾過器の入口側ポートにおける体積流量であることが好ましい。
【0018】
実施形態に係る制御方法は、体外循環治療の解析装置の制御方法であって、少なくとも血液の細胞成分濃度又は蛋白質成分濃度を含む、患者に関する患者情報と、患者から脱血された血液を含む液体が流れるラインに接続される濾過器の仕様に関する仕様情報と、濾過器を用いた患者の治療の施行に関する施行情報とを取得し、患者情報、仕様情報及び施行情報に基づいて、患者の体外循環治療における濾過器の目詰まりに関する目詰まり情報を算出し、目詰まり情報に関する情報を出力する。
【0019】
実施形態に係る制御プログラムは、体外循環治療の解析装置の制御プログラムであって、少なくとも血液の細胞成分濃度又は蛋白質成分濃度を含む、患者に関する患者情報と、患者から脱血された血液を含む液体が流れるラインに接続される濾過器の仕様に関する仕様情報と、濾過器を用いた患者の治療の施行に関する施行情報とを取得し、患者情報、仕様情報及び施行情報に基づいて、患者の体外循環治療における濾過器の目詰まりに関する目詰まり情報を算出し、目詰まり情報に関する情報を出力することを解析装置に実行させる。
【発明の効果】
【0020】
実施形態に係る解析装置、制御方法及び制御プログラムは、体外循環治療に用いられる濾過器に関する情報を適切に提供することができる。
【0021】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る管理システム1の概略構成を示す図である。
図2】体外循環治療ユニット100を示す模式図である。
図3】解析装置300の概略構成を示す図である。
図4】制御処理の動作の例を示すフローチャートである。
図5】(A)、(B)は、目詰まり情報の算出結果を示すグラフである。
図6】目詰まり情報の変化について説明するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態の一側面に係る解析装置、制御方法及び制御プログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0024】
図1は、実施形態に係る管理システム1の概略構成を示す図である。
【0025】
図1に示すように、管理システム1は、一又は複数の体外循環治療ユニット100、一又は複数の端末装置200及び解析装置300等を有する。各端末装置200と、解析装置300とは、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。
【0026】
各体外循環治療ユニット100は、体外循環治療を行うための体外循環血液浄化システムである。体外循環治療とは、外的な操作により血液の量又は成分濃度を変化させる治療である。体外循環治療は、血液透析、血液浄化、血漿交換、投薬、輸液、補液又はこれらの組合せを含む。
【0027】
各端末装置200は、PC(Personal Computer)、ノートPC、タブレットPC、多機能携帯電話(いわゆるスマートフォン)等の情報処理装置である。体外循環治療ユニット100及び端末装置200のセットは、病院又は患者の自宅等に設けられる。解析装置300は、サーバ、PC、ノートPC等の情報処理装置である。ネットワークNは、インターネット又はイントラネット等の有線ネットワークである。ネットワークNは、無線LAN(Local Area Network)、携帯電話ネットワーク等の無線ネットワークでもよい。
【0028】
図2は、体外循環治療ユニット100を示す模式図である。
【0029】
図2に示すように、体外循環治療ユニット100は、血液回路101、濾過器102、置換液容器103、血液ポンプ104、置換液ポンプ105、濾液ポンプ106、第1圧力計107、第2圧力計108、第3圧力計109及び薬液容器110等を有する。
【0030】
血液回路101は、配管系101a、送血ライン101b、返血ライン101c、置換液ライン101d及び濾液ライン101e等を含む。配管系101aは、患者(動物又はヒト)からの採血部、患者への返血部、薬液の供給部、及び、排泄部を有する。送血ライン101b、返血ライン101c、置換液ライン101d及び濾液ライン101eには、血液又は濾液を含む液体が流れる。送血ライン101b、返血ライン101c、置換液ライン101d及び濾液ライン101eとして、例えばポリ塩化ビニル製のチューブが利用される。送血ライン101b、返血ライン101c、置換液ライン101d及び濾液ライン101eとして、他の部材が利用されてもよい。
【0031】
送血ライン101bは、配管系101aの採血部及び濾過器102の入口側ポート102aに接続され、配管系101aの採血部から脱血した血液を、血液ポンプ104を介して濾過器102へ送る。返血ライン101cは、濾過器102の出口側ポート102b及び配管系101aの返血部に接続され、濾過器102から流出した血液を配管系101aの返血部へ送る。置換液ライン101dは、置換液容器103及び返血ライン101cに接続され、置換液容器103から流出した置換液を、置換液ポンプ105を介して返血ライン101cへ送る。なお、置換液ポンプ105を介した返血ライン101cへの置換液の移送は、例えば、三方弁(図示せず)により可能である。濾液ライン101eは、濾過器102の濾液出口ポート102cに接続され、濾液出口ポート102cから流出した老廃物等を含む液体を濾液として濾液ポンプ106を介して器外へ送る。
【0032】
濾過器102は、体外循環治療を行うための血液濾過器であり、血液もしくは血液を処理した液体の量又は成分濃度を変化させる装置である。濾過器102は、濾過器、分離器、濃縮器、吸着器又は反応器を含む。濾過器102は、体外循環治療ユニット100において、患者から脱血された血液を含む液体が流れる送血ライン101b、返血ライン101c及び濾液ライン101eに接続され、各ラインに流れる血液を濾過し、浄化する。濾過器102は、入口側ポート102a、出口側ポート102b、濾液出口ポート102c及び中空膜体102d等を有する。入口側ポート102aは、患者から脱血された血液の流入口である。中空膜体102dは、入口側ポート102aから流入した血液が通過する多数の中空糸膜を束ねて構成される。出口側ポート102bは、中空膜体102dを通過した血液の器外への流出口である。濾液出口ポート102cは、浄化ポートであり、中空膜体102dによって濾過されて、中空膜体102dの外側に透過した老廃物等を含む液体の排出口である。
【0033】
置換液容器103は、置換液ライン101dに置換液を供給する。置換液容器103として、公知の一般的な容器が利用可能である。
【0034】
血液ポンプ104は、送血ライン101bに設けられ、送血ライン101b内の血液の流れを制御する。置換液ポンプ105は、置換液ライン101dに設けられ、置換液ライン101d内の置換液の流れを制御する。濾液ポンプ106は、濾液ライン101eに設けられ、濾液ライン101e内の濾液の流れを制御する。血液ポンプ104、置換液ポンプ105及び濾液ポンプ106は、それぞれ、利用者により駆動量(流量)を変更可能に設けられる。血液ポンプ104、置換液ポンプ105及び濾液ポンプ106として、例えばローラポンプが利用される。血液ポンプ104、置換液ポンプ105及び濾液ポンプ106として、他の公知のポンプが利用されてもよい。
【0035】
第1圧力計107は、送血ライン101bにおいて血液ポンプ104と濾過器102の入口側ポート102aとの間に設けられ、送血ライン101b内の血液圧力を測定する。第2圧力計108は、返血ライン101cにおいて濾過器102の出口側ポート102bと配管系101aの返血部との間に設けられ、返血ライン101c内の血液圧力を測定する。第3圧力計109は、濾過器102において入口側ポート102aと出口側ポート102bの間に設けられ、濾過器102内の血液圧力を測定する。第1圧力計107、第2圧力計108及び第3圧力計109として、例えば半導体ピエゾ抵抗拡散圧力センサ等の公知の水圧計が利用可能である。
【0036】
薬液容器110は、配管系101aの供給部に薬液を供給する。薬液容器110として、公知の一般的な容器が利用可能である。
【0037】
配管系101aの採血部を介して患者から脱血した血液は、送血ライン101bを通って、血液ポンプ104により濾過器102へ送られる。濾過器102へ送られた血液は、入口側ポート102aから中空膜体102dに流入し、出口側ポート102bから返血ライン101cに流出される。一方、入口側ポート102aから中空膜体102dに流入し、中空膜体102dを通過した濾液は、濾液出口ポート102cから流出される。濾液出口ポート102cから流出した濾液は、濾液ライン101eを通って、体外循環治療ユニット100外に排出(廃棄)される。また、置換液容器103から供給された置換液は、置換液ライン101dを通って、置換液ポンプ105により返血ライン101cへ送られる。返血ライン101cに流出された血液及び置換液は、配管系101aの返血部を介して患者に戻される。
【0038】
例えば、体外循環治療ユニット100は、血漿交換法によるアフェレーシスを実施する。その場合、濾過器102は、血漿交換を行うための血漿分離器であり、各ラインに流れる血液から血漿成分及び細胞成分を分離する。中空膜体102dは、血液から血漿成分を分離して通過させる。濾液出口ポート102cは、中空膜体102dによって濾過分離された血漿成分を器外へ流出させ、出口側ポート102bは、細胞成分が濃厚な血液を器外へ流出させる。置換液容器103は、置換液として新鮮凍結血漿製剤(FFP:Frozen Fresh Plasma)を、置換液ライン101dを介して返血ライン101cへ送る。
【0039】
なお、体外循環治療ユニット100は、二重慮過血漿交換法(DFPP:Double Filtration Plasmapheresis)によるアフェレーシスを実施してもよい。その場合、濾過器102は、血漿交換を行うための血漿分離器である。中空膜体102dは、血液から血漿成分を分離して通過させる。濾液出口ポート102cは、中空膜体102dによって濾過分離された血漿成分を排出し、出口側ポート102bは、細胞成分が濃厚な血液を排出する。置換液容器103は省略され、代わりに、濾過器102により分離された血漿成分から病気の原因となる因子成分を分離する因子分離器(不図示)が設けられる。因子分離器の入り口側ポートは、濾液ライン101e(濾液ポンプ106)に接続され、因子分離器の出口側ポートは、置換液ライン101d(置換液ポンプ105)に接続される。因子分離器は、因子成分が除去された血漿成分を、置換液ライン101dを介して返血ライン101cへ送る。
【0040】
また、体外循環治療ユニット100は、血液透析、血液濾過透析、持続的血液濾過透析(CHDF:Continuous Hemodiafiltration)、持続的血液濾過(CHF:Continuous Hemofiltration)又は持続的血液透析(CHD:Continuous Hemodialysis)を実施してもよい。その場合、濾過器102は、血液透析を行うための血液透析器(ダイアライザー)であり、各ラインに流れる血液から老廃物等を分離する。
【0041】
濾過器102は、不図示の透析液ラインを介して置換液容器103に接続される透析液入口ポートをさらに有する。透析液ラインには、透析液ライン内の透析液の流れを制御する不図示の透析液ポンプが設けられる。透析液ポンプは、血液ポンプ104、置換液ポンプ105又は濾液ポンプ106と同様のポンプであり、利用者により駆動量(流量)を変更可能に設けられる。入口側ポート102aには、さらに置換液ライン101dを介して置換液容器103が接続される。中空膜体102dは、入口側ポート102aから流入した血液及び/又は補液と、透析液入口ポートから流入した透析液とを通過させる。出口側ポート102bは、中空膜体102dを通過した血液及び/又は補液を器外へ流出させる。濾液出口ポート102cは、中空膜体102dの外側に透過した老廃物等を含む液体、補液及び/又は中空膜体102dの外側を通る透析液を器外へ流出させる。
【0042】
置換液容器103は、置換液として透析液を、透析液ラインを介して透析液入口ポートへ供給し、且つ/又は、置換液として補液を、置換液ライン101dを介して入口側ポート102a及び返血ライン101cへ供給する。なお、置換液容器103の代わりに、透析液及び/又は補液を常時供給可能な透析液供給装置が用いられてもよい。
【0043】
また、体外循環治療ユニット100は、腹水濾過濃縮再静注法(CART:Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)を実施してもよい。その場合、濾過器102は、腹水濾過を行うための腹水濾過器であり、各ラインに流れる血液(腹水)から細菌成分、癌細胞成分及び血球成分を分離する。置換液容器103は省略され、代わりに、濾過器102により細菌成分、癌細胞成分及び血球成分が除去された腹水に対してアルブミンなどの有用成分を濃縮する濃縮器(不図示)が設けられる。濃縮器の入り口側ポートは、濾過器102の出口側ポートに接続され、濃縮器の出口側ポートは、返血ライン101cに接続される。
【0044】
図3は、解析装置300の概略構成を示す図である。
【0045】
解析装置300は、入力装置301、表示装置302、通信装置303、記憶装置304及び処理回路310等を有する。入力装置301、表示装置302、通信装置303、記憶装置304及び処理回路310は、CPU(Central Processing Unit)バス等を介して相互に接続される。
【0046】
入力装置301は、タッチパネル式の入力デバイス又はキーボード、マウス等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。
【0047】
表示装置302は、出力部の一例である。表示装置302は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0048】
通信装置303は、出力部の一例である。通信装置303は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルに従った有線通信インタフェース回路を有する。通信装置303は、イーサネット(登録商標)等の通信規格に従って、ネットワークNと通信接続する。通信装置303は、ネットワークNを介して端末装置200から受信したデータを処理回路310に送り、処理回路310から受け取ったデータを、ネットワークNを介して端末装置200に送信する。なお、通信装置303は、無線信号を送受信するアンテナと、無線LAN等の通信プロトコルに従った無線通信インタフェース回路とを有し、無線LAN等の通信規格に従って、ネットワークNと通信接続してもよい。
【0049】
記憶装置304は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置304には、制御装置50の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置304にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。コンピュータプログラムは、所定のサーバ等からインストールされてもよい。
【0050】
処理回路310は、予め記憶装置304に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路310は、例えばCPUである。処理回路310として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。処理回路310は、入力装置301、表示装置302、通信装置303及び記憶装置304等と接続され、各装置を制御する。処理回路310は、患者の体外循環治療における濾過器102の目詰まりに関する目詰まり情報を算出し、目詰まり情報に関する情報を表示装置302又は通信装置303から出力する。
【0051】
処理回路310は、記憶装置304に記憶されたコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムに従って動作する。これにより、処理回路310は、取得部311、算出部312及び制御部313として機能する。
【0052】
図4は、解析装置300の制御処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0053】
以下、図4に示したフローチャートを参照しつつ、解析装置300の制御処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置304に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路310により解析装置300の各要素と協働して実行される。
【0054】
最初に、取得部311は、患者に関する患者情報と、濾過器102の仕様に関する仕様情報と、患者の治療の施行に関する施行情報と、患者の治療における目標に関する目標情報とを取得する(ステップS101)。取得部311は、取得した患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は目標情報を記憶装置304に記憶する。
【0055】
患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は目標情報は、各端末装置200を用いて、医者又は患者等の利用者により入力される。取得部311は、通信装置303を介して各端末装置200から患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は目標情報を受信することにより取得する。なお、取得部311は、通信装置303を介して、端末装置200と異なるサーバ等から患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は目標情報を受信することにより取得してもよい。また、患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は目標情報は、入力装置301を用いて利用者により入力され、取得部311は、入力装置301から患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は目標情報を取得してもよい。また、取得部311は、各情報が撮像された画像を各装置から取得し、公知のOCR(Optical character recognition)技術を利用して画像から文字を認識することにより、各情報を取得してもよい。
【0056】
治療は、体外循環治療ユニット100を用いた体外循環治療、即ち体外循環治療ユニット100に含まれる濾過器102を用いた治療である。患者は、体外循環治療ユニット100(濾過器102)を用いた治療の実施対象である。
【0057】
取得部311は、患者情報として、年齢、性別、人種、体重、ドライウェイト、現症、既往症、体調又は血液情報等を取得する。取得部311は、入力装置301を用いて又は通信装置303を介して、患者を識別可能な識別情報(氏名、ID)等を取得し、患者毎に患者情報が予め登録された患者データベースから、取得した識別情報に対応付けて記憶された患者情報を取得してもよい。取得部311は、患者情報のうちの一部の情報を、各患者情報の代表値が登録された代表値データベースから取得してもよい。これにより、取得部311は、患者情報が不足していても、患者情報を良好に取得することができる。また、取得部311は、患者情報のうちの一部の情報を、他の情報に基づいて推定してもよい。
【0058】
体調は、血圧、脈拍、心拍数、体温又は医師の診断結果を含む。
【0059】
血液情報は、例えば、患者血液中の細胞成分の種類、分子量、実効サイズ又は濃度を含む。細胞成分とは、体内の血液中に存在する細胞のことをいう。細胞は、少なくとも赤血球を含む。また、細胞は、白血球もしくはそのサブクラス、血小板、その他の細胞又は細胞の破片を含む。細胞は、濾過器102の膜(中空膜体102d)の孔より大きいため、濾過器102の膜表面に堆積する。これにより、濾過器102において、患者血液の流動抵抗が増大し、目詰まりが発生する。その結果、濾過器102において、膜の孔の見かけの大きさが変化し、分画の度合いが変化する。
【0060】
血液情報は、患者血液中の蛋白質成分の種類、分子量、実効サイズ又は濃度を含んでもよい。蛋白質成分とは、体内の血液中に存在する蛋白質のことをいう。蛋白質は、少なくともTP(総蛋白)を含む。また、蛋白質は、アルブミン、グロブリンもしくはそのサブクラス、炎症系蛋白質又はその他の蛋白質を含む。蛋白質は、濾過器102の膜(中空膜体102d)の孔と同程度の大きさ又はその孔より小さい大きさを有するため、濾過器102の膜内部に堆積する。これにより、濾過器102において、患者血液の流動抵抗が増大し、目詰まりが発生する。その結果、濾過器102において、膜の孔の見かけの大きさが変化し、分画の度合いが変化する。
【0061】
このように、血液情報は、少なくとも血液の細胞成分濃度又は蛋白質成分濃度を含む。
【0062】
血液情報は、患者血液中の治療成分の種類、分子量、実効サイズ又は濃度を含んでもよい。治療成分とは、治療において制御する成分のことをいう。治療成分は、尿素又はアルブミンのように体内に存在する成分と、薬物のように体外から投与される成分とを含む。薬物は、ヘパリン、パーサビブ等の静注薬と、降圧薬、リン吸着薬等の服用薬とを含む。また、治療成分は、体内アルブミンと投与アルブミン、又は、昨日飲んだ薬物と今日飲んだ薬物のように仮想的な成分を含んでもよい。治療成分が仮想的な成分を含む場合、ヘパリンのように分子量分布を有する成分が扱われるため、ビン法やモーメント法を利用して、各区間の濃度や、濃度のモーメントが仮想的な成分としてシミュレーションされる。体外循環治療では、特定の治療成分を体内に残し又は体内から除去する必要がある。しかしながら、体外循環治療において体内に残る治療成分又は体内から除去される治療成分(の量)は、目詰まりによる分画の度合いの変化の影響を受ける。
【0063】
血液情報は、患者の体内血液量又は血液粘度を含んでもよい。
【0064】
血液情報は、血球計数データ(血液一般検査結果)を含んでもよい。血球計数データ(血液一般検査)は、ヘマトクリット、RBC(赤血球数)、WBC(白血球数)、MCV(平均赤血球容積)、PLT(血小板数)、Hb(ヘモグロビン、HGB、血色素)、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球血色素濃度)等である。
【0065】
血液情報は、白血球像結果を含んでもよい。白血球像結果は、白血球分画の各成分の比率等である。
【0066】
血液情報は、血液凝固系検査結果を含んでもよい。血液凝固系検査結果は、フィブリノゲン、FDP(血中フィブリン分解産物)もしくはDダイマー(血中フィブリン分解産物)の濃度情報、プロトロンビン時間活性度(PT、PT活性度)、プロトロンビン時間INR(PT INR)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、アンチトロンビンIII(ATIII)等である。
【0067】
血液情報は、生化学検査結果を含んでもよい。生化学検査結果は、TP(総蛋白)、CRP(C反応性蛋白)、アルブミン(ALB)、尿素窒素(UN、BUN)、クレアチニン(CRE)、尿酸(UA)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)もしくは無機リンの濃度情報、A/G比、総ビリルビン(T-Bil)、直接ビリルビン(D-Bil)、間接ビリルビン、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST(GOT))、アラニントランスアミナーゼ(ALT(GPT))、アルカリホスファターゼ(ALP、ALP_IFCC)、γ-GTP(ガンマ・グルタミルトランスペプチターゼ)、ロイシンアミノペプチタ-ゼ(LAP)、乳酸脱水素酵素(LD_IFCC)、クレアチンキナーゼ(CK(CPK))、CK-MB(CKアイソザイムMB)、アミラーゼ(AMY)、血中アミラーゼ、尿中アミラーゼ、鉄(Fe、血清鉄)、総鉄結合能(TIBC)、クロール(Cl)、総コレステロール(T-Cho)、中性脂肪(TG)、HDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)、nonHDLコレステロール、LDH、コリンエステラーゼ(Ch-e)、e-GFR(水産子宮体濾過良)、タンパク分画、TTT、ZTT等である。
【0068】
血液情報は、糖尿病関連検査結果を含んでもよい。糖尿病関連検査結果は、GLU(グルコース、血糖)、血糖、空腹時血糖(グルコース・BS)、HbA1c(ヘモグロビンA1C)、HbA1c(N)、HbA1c(NGSP)、IRI(インスリン)、CPR(Cペプチド)等である。
【0069】
血液情報は、腫瘍マーカー検査結果を含んでもよい。腫瘍マーカー検査結果は、AFP(αフェトプロテイン)、CEA(癌胎児性蛋白)、PSA(前立腺特異抗原)、CA19-9(糖鎖光源CA19-9)、CA15-3、CA125、SCC(扁平上皮癌関連抗原)、エラスターゼ1、シフラ21-1等である。
【0070】
血液情報は、甲状腺ホルモン検査結果を含んでもよい。甲状腺ホルモン検査結果は、FT3(遊離トリヨードサイロニン)、FT4(遊離サイロキシン)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)等である。
【0071】
血液情報は、感染症検査結果を含んでもよい。感染症検査結果は、HBs-Ag(B型肝炎ウイルス抗原)、HBs抗原、HBs抗体、HCV-Ab(C型肝炎ウイルス抗体)、HCV抗体、HIV-Ab(HIVウイルス抗体)、TPPA(トレポネーマパリダム抗体)、RPR定性(RPRカードテスト)等である。
【0072】
血液情報は、免疫検査結果を含んでもよい。免疫検査結果は、CRP(定量)、RF定量、ASO等である。
【0073】
血液情報は、その他の血液検査結果を含んでもよい。また、血液情報は、上記した各成分の物質産生速度又は物質除去速度を含んでもよい。血液情報が上記した各要素を含むことにより、解析装置300は、濾過器102の目詰まりの発生の有無を精度良く判定することができる。
【0074】
取得部311は、仕様情報として、膜素材、内径、膜厚、外径、空隙率、平均孔径、孔径分布、有効長、透水性能、分画性能、膜抵抗、吸着性能、比表面積、内部表面積、細孔容積、ヨウ素価、フェノール価、ABS価、メチレンブルー脱色力、滅菌法、膜面積、状態(ドライ/ウェット)、血液容量(1次側容量)、透析液容量(2次側容量)、容器内径、糸充填率、糸本数、UFR、クリアランス(尿素、クレアチニン、リン酸、ビタミンB12)、ふるい係数(β2-MG、Alb)、透水性能、分画性能又は抵抗を取得する。取得部311は、入力装置301を用いて又は通信装置303を介して、濾過器102を識別可能な識別情報を取得し、濾過器102毎に仕様情報が予め登録された濾過器データベースから、取得した識別情報に対応付けて記憶された仕様情報を取得してもよい。取得部311は、仕様情報のうちの一部の情報を、他の情報に基づいて推定してもよい。仕様情報が上記した各要素を含むことにより、解析装置300は、濾過器102の目詰まりの発生の有無を精度良く判定することができる。
【0075】
施行情報は、体外循環治療ユニット100を用いた体外循環治療の施行に関する情報である。取得部311は、施行情報として、体外循環治療ユニット100に含まれる濾過器102の個数、濾過器102の出入り口の流量、置換液容器103から供給される置換液の成分及びその濃度、施行時間、濾過流量、治療中の上限TMP(膜間圧力差)又は施行終了条件を取得する。濾過器102の出入り口の流量は、血液ポンプ104による入口側ポート102aにおける流量、置換液ポンプ105による出口側ポート102b及び置換液容器103における流量、濾液ポンプ106による濾液出口ポート102cにおける流量、透析液ポンプによる透析液入口ポートにおける流量を含む。体外循環治療ユニット100におけるTMPは、例えば第1圧力計107による圧力の測定値と第2圧力計108による圧力の測定値との平均値から第3圧力計109による圧力の測定値を減算した値である。施行終了条件は、施行時間、濾過器102の各ポートにかかる圧力又は特定の成分の除去量等について、施行を終了させるための条件である。体外循環治療ユニット100において血液回路101内の圧力が制御される場合、施行情報は、濾過器102の各ポートにかかる圧力を含んでもよい。
【0076】
取得部311は、施行情報として、薬物濃度を取得してもよい。薬物濃度は、薬液容器110から供給される各薬物の濃度である。治療が複数回にわたって施行される場合、取得部311は、施行回毎の施行情報を取得してもよい。取得部311は、施行情報のうちの一部の情報を、他の情報に基づいて推定してもよい。施行情報が上記した各要素を含むことにより、解析装置300は、濾過器102の目詰まりの発生の有無を精度良く判定することができる。
【0077】
目標情報は、体外循環治療ユニット100を用いた体外循環治療における目標に関する情報である。取得部311は、目標情報として、治療時間、施行目標又は治療目標を取得する。施行目標は、治療時間が経過した時点又は所定時間経過毎の濾過器102におけるTMPの上限及び下限である。治療目標は、治療時間が経過した時点又は所定時間経過毎の濾過器102から流出する液体の特定の成分の濃度の上限及び下限である。治療目標は、治療時間が経過した時点もしくは所定時間経過毎の濾過器102内の特定の成分の濃度、残存量又は除去量でもよい。治療目標は、治療時間が経過した時点もしくは所定時間経過毎の患者の体内の特定の成分の濃度、残存量、除去量又は投与量でもよい。治療が複数回にわたって施行される場合、取得部311は、施行回毎の目標情報を取得してもよい。なお、取得部311は、目標情報を取得しなくてもよい。
【0078】
次に、算出部312は、取得部311が取得した患者情報、仕様情報及び施行情報に基づいて、濾過器102における、患者から脱血された血液を含む液体の特定の成分の堆積量を算出する(ステップS102)。特定の成分は、細胞成分又は蛋白質成分等である。
【0079】
算出部312は、完全混合モデル、コンパートメントモデル又は他の公知のモデルを用いて体内動態をシミュレーションし、患者の体内での各成分の濃度から、濾過器102の各入出口での各成分の濃度を算出する。
【0080】
算出部312は、以下の式(5)により、時刻tにおける濾過器102の膜(中空膜体102d)での成分iの堆積量[Vmitの変化速度である堆積速度[ΔVmitを算出する。
【数5】
【0081】
ここで、PDiは、濾過器102の膜における成分iの堆積率、即ち膜に進入する成分iの量に対する膜に堆積する成分iの量の割合である。堆積率PDiは、成分iの種別、濾過器102の仕様及び体外循環治療の施行方法によって定まり、成分iの種別、仕様情報及び施行情報に基づいて算出される。例えば、解析装置300は、成分毎の堆積率が仕様情報及び/又は施行情報と関連付けられて記憶されたテーブルを記憶装置304に予め記憶しておき、算出部312は、そのテーブルを参照して成分iの堆積率PDiを特定する。
【0082】
[Pitは、時刻tにおける濾過器102の膜における成分iの透過率、即ち時刻tにおいて膜に進入する成分iの量に対する膜を透過する成分iの量の割合である。透過率[Pitは、膜に堆積している各成分の堆積量によって変化し、時間の経過とともに変化する。時刻tにおける濾過器102の膜における成分iの透過率[Pitは、以下の式(6)により、算出される。
【数6】
【0083】
ここで、Pi0は、膜における全ての成分の堆積量Vmiが0であるときの成分iの透過率(初期透過率)である。Nは、濾過器102を透過する各成分jの総数である。βjは、膜の透過率に対する各成分jの堆積量の寄与係数である。初期透過率Pi0及び寄与係数βjは、各成分の種別、濾過器102の仕様及び体外循環治療の施行方法によって定まり、各成分の種別、仕様情報及び施行情報に基づいて算出される。例えば、解析装置300は、成分毎の初期透過率及び寄与係数が仕様情報及び/又は施行情報と関連付けられて記憶されたテーブルを記憶装置304に予め記憶しておく。算出部312は、そのテーブルを参照して各成分の初期透過率Pi0及び寄与係数βjを特定する。[Vmjtは、時刻tにおける濾過器102の膜(中空膜体102d)での各成分jの堆積量である。治療開始時の各成分jの堆積量[Vmjt、即ち堆積量[Vmjtの初期値は0である。
【0084】
式(5)に戻って、Q3は、濾液ポンプ106による濾液出口ポート102cにおける体積流量である。体積流量Q3は、施行情報から特定される。
【0085】
[C1itは、時刻tにおける成分iの血液中の濃度である。濃度[C1itは、血液情報及び体内動態から算出される。体内動態は、完全混合槽を仮定したコンパートメントモデル等で定式化される。濃度[C1itは、2コンパートメントモデルでは、以下の式(7)により算出される。
【数7】
【0086】
ここで、VBは、体内の血液体積(コンパートメント1)である。kEiは、体内の血液のコンパートメント(コンパートメント1)と体内の血液以外のコンパートメント(コンパートメント2)の間の成分iの移動の速度定数である。[CEitは、時刻tにおける体内の血液以外のコンパートメント(コンパートメント2)での成分iの濃度である。治療開始時の濃度[C1it及び濃度[CEit、即ち濃度[C1it及び濃度[CEitの初期値は患者情報から特定される。濃度[CEitは、以下の式(8)により算出される。
【数8】
【0087】
QAは、置換液ポンプ105による置換液容器103(出口側ポート102b)における流量である。置換液の流量QAは、施行情報から特定される。CAiは、置換液容器103から置換液として供給される成分iの濃度である。kRiは、成分iがコンパートメント1から除去される速度定数である。
【0088】
式(5)に戻って、ρiは、成分iの密度である。
【0089】
算出部312は、式(7)、(8)を用いて、治療開始から時間Δt毎に各成分iの濃度[C1itを算出し、式(5)を用いて、算出した各成分iの濃度[C1itに基づいて時刻tにおける各成分iの堆積速度[ΔVmitを算出する。算出部312は、算出した堆積速度[ΔVmitから、以下の式(9)を用いて、時刻t+Δtにおける各成分iの堆積量[Vmit+Δtを算出する。
【数9】
【0090】
なお、解析装置300は、成分毎の堆積量が患者情報、仕様情報及び/又は施行情報と関連付けられて記憶されたテーブルを記憶装置304に予め記憶しておき、算出部312は、そのテーブルを参照して各成分の堆積量を特定してもよい。
【0091】
また、算出部312は、患者情報、仕様情報及び/又は施行情報が入力された場合に、成分毎の堆積量を出力するように事前学習された学習モデルを用いて、各成分の堆積量を算出してもよい。例えば、学習モデルは、ディープラーニング等の教師あり学習により事前学習される。その場合、複数の患者情報、仕様情報及び/又は施行情報と、各情報に従って体外循環治療が施行されたときの各成分の堆積量とが教師データとして用いられる。学習モデルは、各情報が入力された場合に、各情報に従って体外循環治療が施行されたときの各成分の堆積量を出力するように学習され、記憶装置304に予め記憶される。算出部312は、取得部311が取得した患者情報、仕様情報及び/又は施行情報を学習モデルに入力し、学習モデルから出力された各成分の堆積量を取得する。
【0092】
次に、算出部312は、算出した各成分の堆積量に基づいて、患者の体外循環治療における濾過器102の目詰まりに関する目詰まり情報を算出する(ステップS103)。濾過器102の膜に血中成分が堆積することにより、濾過器102の膜に目詰まりが発生し、濾過器102におけるTMP(圧力)が増大する。また、濾過器102の膜に血中成分が堆積することにより、濾過器102の膜に目詰まりが発生し、濾過器102から流出する各成分の濃度が変動する。算出部312は、算出した各成分の堆積量に基づいて、濾過器102におけるTMP、又は、濾過器102から流出する液体の特定の成分の濃度を目詰まり情報として算出する。算出部312は、施行情報に示される施行時間が経過した時点もしくは所定時間経過毎の、濾過器102におけるTMP又は特定の成分の濃度を目詰まり情報として算出する。
【0093】
算出部312は、以下の式(10)により、時刻t+Δtにおける各成分iの堆積量[Vmit+Δtに基づいて、時刻t+Δtにおける濾過器102における膜間圧力差[TMP]t+Δtを算出する。
【数10】
【0094】
ここで、ηは、血液粘度であり、患者情報に含まれるヘマトクリット及びTP(総蛋白)から算出(予測)される。K0は、膜における全ての成分の堆積量Vmjが0であるときの濾過器102の圧力損失の係数である。γjは、濾過器102内の圧力に対する各成分jの堆積量の寄与係数である。圧力損失の係数K0及び寄与係数γjは、濾過器102の仕様及び体外循環治療の施行方法によって定まり、仕様情報及び施行情報に基づいて算出される。例えば、解析装置300は、圧力損失の係数及び寄与係数γjが仕様情報及び/又は施行情報と関連付けられて記憶されたテーブルを記憶装置304に予め記憶しておき、算出部312は、そのテーブルを参照して圧力損失の係数K0及び寄与係数γjを特定する。Aは、膜面積である。算出部312は、仕様情報から膜面積Aを特定する。算出部312は、算出した瞬間圧力差[TMP]t+Δtに基づいて、濾過器102におけるTMPを算出する。
【0095】
算出部312は、以下の式(11)により、時刻t+Δtにおける各成分iの堆積量[Vmit+Δtに基づいて、時刻t+Δtにおける濾過器102から流出する液体の各成分iの濃度[C2it+Δtを算出する。
【数11】
【0096】
ここで、Q1は、血液ポンプ104による入口側ポート102aにおける体積流量である。体積流量Q1は、施行情報から特定される。
【0097】
なお、解析装置300は、目詰まり情報が患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は成分毎の堆積量と関連付けられて記憶されたテーブルを記憶装置304に予め記憶しておき、算出部312は、そのテーブルを参照して目詰まり情報を特定してもよい。
【0098】
また、算出部312は、患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は成分毎の堆積量が入力された場合に、目詰まり情報を出力するように事前学習された学習モデルを用いて、目詰まり情報を算出してもよい。例えば、学習モデルは、ディープラーニング等の教師あり学習により事前学習される。その場合、複数の患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は成分毎の堆積量と、各情報に従って体外循環治療が施行されたときの目詰まり情報とが教師データとして用いられる。学習モデルは、各情報が入力された場合に、各情報に従って体外循環治療が施行されたときの目詰まり情報を出力するように学習され、記憶装置304に予め記憶される。算出部312は、取得部311が取得した患者情報、仕様情報、施行情報及び/又は算出部312が算出した成分毎の堆積量を学習モデルに入力し、学習モデルから出力された目詰まり情報を取得する。
【0099】
なお、算出部312は、施行情報に示される施行時間が経過した時点もしくは所定時間経過毎の、濾過器102内の特定の成分の濃度、残存量又は除去量を目詰まり情報として算出してもよい。また、算出部312は、施行情報に示される施行時間が経過した時点もしくは所定時間経過毎の、患者の体内の特定の成分の濃度、残存量又は除去量を目詰まり情報として算出してもよい。
【0100】
上記したように、細胞が濾過器102の膜表面に堆積し、蛋白質が濾過器102の膜内部に堆積することにより、濾過器102において目詰まりが発生する。算出部312は、まず濾過器102における各成分の堆積量を算出し、算出した堆積量に基づいて目詰まり情報を算出することにより、目詰まり情報を精度良く算出することができる。
【0101】
次に、算出部312は、目詰まり情報が所定の条件を満たすための、濾過器102の仕様に関する補正仕様情報、又は、濾過器102を用いた患者の治療の施行に関する補正施行情報を算出する(ステップS104)。補正仕様情報は、仕様情報に含まれる各要素の少なくとも一部を含む。補正施行情報は、施行情報に含まれる各要素の少なくとも一部を含む。例えば、算出部312は、補正施行情報として、濾過器102の個数、濾過器102の出入り口の流量、施行時間又は濾過器102の各ポートにかかる圧力を算出する。補正施行情報が上記した各要素を含むことにより、解析装置300は、指定された患者に対して、指定された濾過器102を使用して体外循環治療を施行する際の適切な施行方法を利用者に提供することができる。治療が複数回にわたって施行される場合、算出部312は、施行回毎に補正施行情報を算出してもよい。その場合、補正施行情報は、次の施行までの間隔をさらに含んでもよい。これにより、利用者は、中期的な治療計画を立てることができ、さらに、投薬治療等の他の治療と組み合わせて体外循環治療を施行することができる。
【0102】
算出部312は、目詰まり情報が、所定の条件として、ステップS101で取得した目標情報を満たすための補正仕様情報又は補正施行情報を算出する。算出部312は、算出した目詰まり情報が既に目標情報を満たしている場合、補正仕様情報又は補正施行情報を算出せず、算出した目詰まり情報が目標情報を満たしていない場合に限り、補正仕様情報又は補正施行情報を算出する。
【0103】
例えば、解析装置300は、補正仕様情報又は補正施行情報に含まれる各要素について、予め優先順位及び許容範囲を設定しておく。算出部312は、優先順位が高い順に各要素を許容範囲内で変更するように仕様情報又は施行情報を変更し、目詰まり情報が目標情報を満たすか否かを判定する。算出部312は、目詰まり情報が目標情報を満たした最初の各要素が含まれるように補正仕様情報又は補正施行情報を設定する。なお、算出部312は、目詰まり情報が目標情報を満たした順に所定数の補正仕様情報又は補正施行情報を設定してもよい。
【0104】
また、算出部312は、最急降下法、最小勾配法、共役勾配法等の公知の最適化問題の解法を利用して、目詰まり情報の所定の要素が最良の値を有するように、補正仕様情報又は補正施行情報に含まれる各要素を変更してもよい。例えば、算出部312は、目詰まり情報に示される濾過器102におけるTMPが所定範囲内(例えば60mmHg以下)で、所定時間内(例えば5時間)に、所定の成分の濃度が最大となるように(例えばアルブミン置換率が最大となるように)各要素を変更する。また、例えば、算出部312は、施行時間又は濾過処理量(単位時間毎の濾過流量の合計)のうちの一方が目標情報を満たしつつ、他方が最良の値(施行時間が最小又は濾過処理量が最大)を有するように、各要素を変更する。また、例えば、算出部312は、施行時間又は濾過器102におけるTMPのうちの一方が目標情報を満たしつつ、他方が最良の値を有するように(施行時間が最小又はTMPが最小)、各要素を変更する。
【0105】
次に、制御部313は、目詰まり情報に関する情報を、通信装置303を介して各端末装置200に送信することにより出力し(ステップS105)、一連のステップを終了する。目詰まり情報に関する情報を受信した各端末装置200は、受信した情報を表示する。なお、制御部313は、目詰まり情報に関する情報を表示装置302に表示することにより出力してもよい。
【0106】
制御部313は、目詰まり情報に関する情報として、補正使用情報又は補正施行情報を出力する。これにより、利用者は、補正使用情報又は補正施行情報を参照し、体外循環治療において患者に適した濾過器102又は治療の施行方法を選択することが可能となり、患者に適切な体外循環治療を施すことが可能となる。
【0107】
また、制御部313は、目詰まり情報に関する情報として、目詰まり情報自体を出力してもよい。これにより、利用者は、体外循環治療のシミュレーション結果を把握することが可能となり、適切な結果が得られない場合に濾過器102又は治療の施行方法を適宜変更することが可能となる。この場合、ステップS104の処理は省略されてもよい。
【0108】
また、算出部312は、算出した目詰まり情報に基づいて、体外循環治療における治療効果(治療後の患者の体重、所定の成分の濃度、除去量、除去率又はクリアランス等)を推定してもよい。その場合、制御部313は、目詰まり情報に関する情報として、推定した治療効果を出力してもよい。
【0109】
また、ステップS103~S105の処理は、所定時間経過毎に、繰り返し実行されてもよい。これにより、利用者は、体外循環治療を施行しながらリアルタイムに目詰まり情報、補正使用情報又は補正施行情報を参照することができる。
【0110】
また、解析装置300は、通信装置303を介して体外循環治療ユニット100と通信接続し、算出した補正施行情報に基づいて、体外循環治療ユニット100を制御してもよい。その場合、体外循環治療ユニット100は、通信装置303と同様の通信装置を有する。制御部313は、例えば補正施行情報に従って、血液ポンプ104、置換液ポンプ105、濾液ポンプ106による流量を制御する。これにより、体外循環治療ユニット100は、人手を介さずに、体外循環治療の施行方法を適切に変更することができる。体外循環治療ユニット100は、解析装置300により、適切な濾過器102を用いて適切な施行方法により体外循環治療を施行することができ、施行時間、消費電力、解析装置300との間の通信量の低減を図ることできる。
【0111】
図5(A)、(B)は、図2に示した体外循環治療ユニット100における目詰まり情報の算出結果(シミュレーション結果)を示すグラフである。
【0112】
このシミュレーションでは、ヘマトクリット(赤血球体積分率)が35%であり且つTP(総蛋白質濃度)が6g/dLである患者に対して、単純血漿交換法で体内のアルブミンを除去し、置換液としてアルブミンを添加することが想定されている。置換液のアルブミン濃度は5.05mg/dLであり、濾過器102の膜面積は0.5m2であり、施行時間は5時間である。対象成分は、アルブミン(体内由来のアルブミン)、置換液アルブミン(置換液由来のアルブミン)、C反応性蛋白質(CRP)、フィブリノゲン、リン、バンコマイシンである。また、このシミュレーションでは、TMPが60mmHg以下であることを目標としている。
【0113】
図5(A)は、濾過器102におけるTMPの算出結果を示すグラフである。図5(A)の横軸は時間[分]であり、縦軸はTMP[mmHg]である。図5(A)に示すように、TMPは時間とともに増大し、255分を経過した時点で60mmHgを超えている。図5(B)は、濾過器102から流出する液体のバンコマイシンの濃度の算出結果を示すグラフである。図5(B)の横軸は時間[分]であり、縦軸は濃度[mg/mL]である。図5(B)に示すように、対象成分の濃度は時間とともに低減する。このように、体外循環治療においては、時間の経過とともに濾過器102における目詰まりの度合いが大きくなり、それに伴い、TMPが増大し、対象成分の濃度が低減する。
【0114】
図6は、患者情報、仕様情報又は施行情報が異なる場合の目詰まり情報の変化について説明するための表である。
【0115】
図6の表は、患者情報、仕様情報又は施行情報が相互に異なる条件1~7で体外循環治療が行われた場合の目詰まり情報を示す。図6に示される目詰まり情報は、TMPが60mmHgを超えるまでの時間(目詰まり発生時間)[分]、アルブミン交換率[%]、リン濃度[mg/mL]、バンコマイシン濃度[mg/mL]である。アルブミン交換率は1-{(アルブミン濃度)/(置換液アルブミン濃度+アルブミン濃度)}で算出される。各条件1~7では、患者情報における置換液アルブミン、CRP、フィブリノゲンの濃度、仕様情報における膜面積、施行情報における濾過器102の交換有無、血液ポンプ104、置換液ポンプ105又は濾液ポンプ106の流量が異なっている。
【0116】
条件1では、目詰まりの発生有無を考慮せずに目詰まり情報が算出されている。条件1において、アルブミン交換率は90.6%であり、リン濃度は0.0247mg/mLであり、バンコマイシン濃度は0.147mg/mLである。
【0117】
条件2は条件1と同一であるが、条件2では、目詰まりの発生有無を考慮して目詰まり情報が算出されている。条件2では、TMPが60mmHgを超えるまでの時間は300分超であり、アルブミン交換率は83.6%であり、リン濃度は0.0372mg/mLであり、バンコマイシン濃度は0.178mg/mLである。即ち、目詰まりの発生有無を考慮した場合、目詰まりの発生有無を考慮しない場合より、アルブミン交換率は低くなり、リン濃度及びバンコマイシン濃度は高くなる。利用者は、目詰まりの発生有無を考慮することにより、実環境で体外循環治療が施行される場合に近いシミュレーション結果を得ることができ、体外循環治療の環境を予め適切に設定することができる。
【0118】
条件3は、条件2より患者炎症反応が小さくなる条件であり、条件3では、条件2より置換液アルブミン及びCRPの濃度が高い。条件3では、TMPが60mmHgを超えるまでの時間は255分であり、アルブミン交換率は80.3%であり、リン濃度は0.0382mg/mLであり、バンコマイシン濃度は0.179mg/mLである。即ち、条件3では、目詰まりが発生してしまって治療を5時間施行することができず、且つ、アルブミン交換率が低く、治療効果が低い。
【0119】
条件4では、条件3より血液ポンプ104、置換液ポンプ105及び濾液ポンプ106の流量が小さい。条件4では、TMPが60mmHgを超えるまでの時間は300分超であり、アルブミン交換率は79.0%であり、リン濃度は0.0388mg/mLであり、バンコマイシン濃度は0.181mg/mLである。即ち、条件4では、目詰まりが発生することなく治療を5時間施行できるが、アルブミン交換率は条件3と同程度であり、治療効果は低い。
【0120】
条件5では、条件3より濾過器102の膜面積が大きい。条件5では、TMPが60mmHgを超えるまでの時間は300分超であり、アルブミン交換率は83.5%であり、リン濃度は0.0373mg/mLであり、バンコマイシン濃度は0.1781mg/mLである。即ち、条件5では、目詰まりが発生することなく治療を5時間施行でき、アルブミン交換率が高く、治療効果が高い。このように、利用者は、患者に対する治療の条件を満たす適切な濾過器102を選択することができる。
【0121】
条件6は、条件5より患者炎症反応が大きくなる条件であり、条件6では、条件5よりCRP及びフィブリノゲンの濃度が高い。条件6では、TMPが60mmHgを超えるまでの時間は136分であり、アルブミン交換率は64.3%であり、リン濃度は0.0414mg/mLであり、バンコマイシン濃度は0.182mg/mLである。即ち、条件6では、目詰まりが発生してしまって治療を5時間施行することができず、且つ、アルブミン交換率が低く、治療効果が低い。
【0122】
条件7は、条件5より患者炎症反応が大きくなる条件である。条件7では、CRP及びフィブリノゲンの濃度が条件6と同じであるが、治療中に濾過器102が交換される(1つ目の濾過器で治療を2時間施行し、30分で濾過器を交換し、2つ目の濾過器で治療を3時間施行する)。条件7では、TMPが60mmHgを超えるまでの時間は300分超であり、アルブミン交換率は83.3%であり、リン濃度は0.0358mg/mLであり、バンコマイシン濃度は0.174mg/mLである。即ち、条件7では、目詰まりが発生することなく治療を5時間施行でき、アルブミン交換率が高く、治療効果が高い。このように、利用者は、患者に対する治療の条件に応じた適切な濾過器102及び治療の施行方法を把握することができる。
【0123】
以上詳述したように、解析装置300は、患者情報、仕様情報及び施行情報に基づいて、患者の体外循環治療に用いられる濾過器102の目詰まりに関する情報を提供することができる。これにより、利用者は、濾過器102の目詰まりの影響を考慮して、患者の体外循環治療を施行することができ、体外循環治療において、より高い治療効果及び投薬効果を得ることができる。
【0124】
解析装置300は、患者情報を用いて、濾過器102の目詰まりに関する情報を算出することにより、個人差、病態差、日間差等の、各患者の状況に応じて適切に体外循環治療を施行することができる。
【0125】
また、利用者は、解析装置300から出力された目詰まり情報、補正仕様情報又は補正施行情報に基づいて患者情報、仕様情報又は施行情報を補正し、補正した各情報を用いて、さらに解析装置300に各情報を算出させることができる。解析装置300は、利用者からのフィードバックに基づいて、目詰まり情報、補正仕様情報又は補正施行情報をより精度良く算出することができる。
【0126】
また、解析装置300は、シミュレーションにより各成分の濃度を算出するため、仮想的な成分を扱うことが可能となり、例えば同じアルブミンでも、体内由来のアルブミンと置換液由来のアルブミンとを区別することが可能となる。同様に、解析装置300は、同一成分について患者に投与されたタイミングを区別することが可能となり、例えば同じ薬でも、その日に投与された薬と、前日に投与された薬とを区別することが可能となる。また、解析装置300は、ヘパリンのような分子量分布を有する成分の分子量分布の変化についても、ビン法やモーメント法を用いて、適切にシミュレーションを行うことができる。また、解析装置300は、シミュレーション以外では算出できない各要素についても適切に算出することができる。
【0127】
また、医者が病院で体外循環治療を施行する場合だけでなく、患者自身が体外循環治療を施行する場合も、解析装置300は、体外循環治療に関する適切な設定を患者に提供するため、患者は自宅で体外循環治療を適切に施行することができる。
【0128】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、実施形態は、これに限定されない。解析装置300は、一台の装置で構成されるものに限定されず、複数の装置で構成されてもよい。その場合、クラウドコンピューティングの形態で解析処理のサービスが提供されるように、ネットワーク上に複数の解析装置が分散して配置され、各解析装置が協働して制御処理を分担してもよい。
【符号の説明】
【0129】
302 表示装置
303 通信装置
311 取得部
312 算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6