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特開2023-114091FRP再生ペレット、及びその製造方法
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  • 特開-FRP再生ペレット、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114091
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】FRP再生ペレット、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/06 20060101AFI20230809BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20230809BHJP
【FI】
C08J11/06
B09B3/00 301W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016205
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】390014029
【氏名又は名称】株式会社八木熊
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 晴司
(72)【発明者】
【氏名】内田 和也
(72)【発明者】
【氏名】替田 智文
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA07
4D004AB10
4D004CA04
4D004CA14
4D004CA29
4D004CB13
4F401AA24
4F401AB06
4F401CA14
4F401CA79
4F401FA08Z
(57)【要約】
【課題】 CO排出量を抑制して環境負荷を軽減することができ、再生樹脂を用いながらもバージン原料と同等の機械的強度を有するFRP再生ペレット、及びその効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】 熱可塑性FRP廃棄物を原料に利用したFRP再生ペレットにおいて、熱可塑性樹脂から成るマトリックス樹脂全体の80wt%以上を再生樹脂とし、かつ、強化繊維の平均繊維長を300μm~700μm、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合を5%以上、繊維体積含有率を10%~40%とする構成を採用した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性FRP廃棄物を原料に利用したFRP再生ペレットにおいて、
熱可塑性樹脂から成るマトリックス樹脂全体の80wt%以上が再生樹脂であり、かつ、強化繊維の平均繊維長が300μm~700μm、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合が5%以上、繊維体積含有率が10%~40%であるFRP再生ペレット。
【請求項2】
前記強化繊維の最大繊維長が1000μm~3000μmである、請求項1記載のFRP再生ペレット。
【請求項3】
前記強化繊維が炭素繊維であり、マトリックス樹脂がポリアミド系樹脂である、請求項1または2に記載のFRP再生ペレット。
【請求項4】
熱可塑性FRP廃棄物を原料に利用したFRP再生ペレットの製造方法において、
連続繊維状の強化繊維を含有する熱可塑性FRP廃棄物を粉砕機に投入して、強化繊維の平均繊維長が1000μm~5000μm、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合が50%以上となるように粉砕処理する工程と、
前記粉砕処理された熱可塑性FRP廃棄物を押出成形機に投入して溶融させ、スクリューによって押出混錬することにより、マトリックス樹脂全体の80wt%以上が再生樹脂となるように、かつ、強化繊維の平均繊維長が300μm~700μm、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合が5%以上となるように樹脂成形体を押出し造粒する工程を含む、FRP再生ペレットの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性FRP廃棄物が、連続繊維状の強化繊維を一方向に揃えて並べたUDシート、UDテープ、またはこれらの積層体、或いはストランド状の強化繊維を織り立てた織物に樹脂を含侵させた成形体である、請求項4記載のFRP再生ペレットの製造方法。
【請求項6】
前記押出成形機を用いた造粒工程において、粉砕された熱可塑性FRP廃棄物と共に、熱可塑性樹脂の再生樹脂ペレットを投入する、請求項4または5に記載のFRP再生ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生樹脂を原料とするFRP再生ペレット、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建材や工業製品等を廃棄する際に大量に排出されるFRP(繊維強化プラスチック)廃棄物は、環境負荷を軽減するためにサーマルリサイクルやマテリアルリサイクルによって再利用される(例えば、特許文献1~3参照)。またマテリアルリサイクルにおいては、FRP廃棄物から樹脂成分を除去して強化繊維(炭素繊維やガラス繊維等)のみを取り出し、これをバージン樹脂と混ぜて再利用される。
【0003】
マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂から成るFRP廃棄物の場合には、FRP廃棄物を焼却処理して炭化させた樹脂成分を除去する方法や、薬品等で化学的に樹脂成分を除去する方法、FRP廃棄物を粉砕して樹脂成分と強化繊維をふるいで機械的に分離する方法などが知られているが、何れの方法も樹脂成分を原料として再利用できないため、CO排出量の抑制に限界がある。
【0004】
一方、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂から成るFRP廃棄物に関しては、FRP廃棄物を加熱溶融させてペレット化することで樹脂成分を再生樹脂として再利用できる。しかしながら、再生樹脂はバージン樹脂と比較して劣化や熱による分解等により物性が低下しまう欠点がある。そのため、バージン原料よりも機械的強度の面で不利になることから、再生原料の用途が限定されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-93511号公報
【特許文献2】特開平6-166032号公報
【特許文献3】特開2003-33915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを課題としており、要約するとCO排出量を抑制して環境負荷を軽減することができ、再生樹脂を用いながらもバージン原料と同等の機械的強度を有するFRP再生ペレット、及びその効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決する手段として、熱可塑性FRP廃棄物を原料に利用したFRP再生ペレットにおいて、熱可塑性樹脂から成るマトリックス樹脂全体の80wt%以上を再生樹脂とし、かつ、強化繊維の平均繊維長を300μm~700μm、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合を5%以上、繊維体積含有率を10%~40%とする構成を採用した。なお本明細書中において「再生樹脂」は、マテリアルリサイクルされた樹脂を意味し、「バージン樹脂」は、一度もマテリアルリサイクルされていない非再生樹脂を意味する。
【0008】
また上記強化繊維については、機械的強度を高めるために最大繊維長を1000μm~3000μmとするのが好ましい。
【0009】
また上記強化繊維については、炭素繊維を使用するのが好ましく、上記マトリックス樹脂については、ポリアミド系樹脂を使用するのが好ましい。
【0010】
また本発明では、上記熱可塑性FRP廃棄物を原料に利用したFRP再生ペレットの効率的な製造方法として、連続繊維状の強化繊維を含有する熱可塑性FRP廃棄物を粉砕機に投入して、強化繊維の平均繊維長が1000μm~5000μm、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合が50%以上となるように粉砕処理する工程と、前記粉砕処理された熱可塑性FRP廃棄物を押出成形機に投入して溶融させ、スクリューによって押出混錬することにより、マトリックス樹脂全体の80wt%以上が再生樹脂となるように、かつ、強化繊維の平均繊維長が300μm~700μm、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合が5%以上となるように樹脂成形体を押出し造粒する工程を含む方法を採用できる。
【0011】
また上記熱可塑性FRP廃棄物には、連続繊維状の強化繊維を一方向に揃えて並べたUDシート、UDテープ、またはこれらの積層体、或いはストランド状の強化繊維を織り立てた織物に樹脂を含侵させた成形体を好適に採用できる。
【0012】
また上記押出成形機を用いた造粒工程において、粉砕された熱可塑性FRP廃棄物と共に、熱可塑性樹脂の再生樹脂ペレットを投入するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のFRP再生ペレットは、マトリックス樹脂全体の80wt%以上を再生樹脂とし、更に強化繊維の平均繊維長を300μm~700μmとして、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合を5%以上、繊維体積含有率を10%~40%としたことで、繊維長の大きい強化繊維の残存量が大きくなるため、再生原料であってもバージン原料と同等の機械的強度を維持することができる。
【0014】
また本発明のFRP再生ペレットは、FRP廃棄物のマトリックス樹脂を再生樹脂として再利用できるため、樹脂成分を除去して強化繊維のみを再利用する方法よりもCO排出量を抑えることができる。特に素材から製品化するまでのCO排出量が同程度のCFRPとアルミを比較した場合、リサイクルして製品化するまでのCO排出量はアルミよりも本発明のCFRPの方が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1のFRP再生ペレットにおける強化繊維の繊維長分布を表すグラフ及び顕微鏡写真である。
図2】実施例1のFRP再生ペレットの製造方法における粉砕したFRP廃棄物の強化繊維の繊維長分布を表すグラフ及び顕微鏡写真である。
図3】比較例1のFRP再生ペレットにおける強化繊維の繊維長分布を表すグラフ及び顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「FRP再生ペレットの構成」
[1]基本構成
本発明のFRP再生ペレットの実施形態について以下に説明する。まず本発明のFRP再生ペレットは、マトリックス樹脂と強化繊維とから成る粒状体であり、マトリックス樹脂全体の80wt%以上(好ましくは90wt%以上、更に好ましくは100%)には再生樹脂が使用される。また再生樹脂については、熱可塑性FRP廃棄物や再生樹脂ペレット等を原料とする。上記強化繊維については、平均繊維長が300μm~700μm(好ましくは400μm~600μm)、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合が5%以上(好ましくは10%以上)、繊維体積含有率が10%~40%(好ましくは20%~30%)となるようにする。
【0017】
[2]マトリックス樹脂の材料
上記FRP再生ペレットのマトリックス樹脂としては、ナイロン樹脂等のポリアミド系樹脂を好適に使用できるが、その他の熱可塑性樹脂、例えば、汎用樹脂としてはポリオレフィン系樹脂(ポリエチレンやポリプロピレン等)や、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、またエンプラとしてはポリカーボネートやPEEK樹脂、PES樹脂、PSU樹脂などを単体で、或いは複数種類組み合わせてポリマーアロイとして使用することもできる。
【0018】
上記FRP再生ペレットは、マトリックス樹脂全体の80wt%以上が再生樹脂から構成されるが、20wt%未満のバージン樹脂を混ぜて使用することもできる。その場合、再生樹脂と同じ種類のバージン樹脂を使用することが好ましいが、再生樹脂に対して相溶性を有する異種のバージン樹脂を使用することもできる。なお再生樹脂の割合をマトリックス樹脂全体の80wt%以上(好ましくは90wt%以上、更に好ましくは100%)とするのはバージン樹脂の使用を減らして環境負荷を軽減するためである。また再生樹脂の機械的特性は、劣化等の影響の大小により一定にならないが、基本的に同種のバージン樹脂と比較して劣る傾向にある。
【0019】
[3]強化繊維の材料
上記FRP再生ペレットの強化繊維としては、トウ状の炭素繊維を用いるのが好ましいが、その他の繊維材料、例えば、ガラス繊維やアラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、麻繊維などの無機繊維、有機繊維、化学繊維、合成樹脂繊維または天然繊維などを単体で、或いは複数種類を組み合わせて使用することができる。また強化繊維には、長繊維状、ファイバー状、ストランド状(多数のフィラメントを集束したもの、トウを含む)または糸状のものを使用することができる。
【0020】
なお上記強化繊維の平均繊維長を300μm~700μm(好ましくは400μm~600μm)とするのは、平均繊維長が短すぎると再生FRPの機械的強度をバージン樹脂を用いたFRPと同程度に維持できないためであり、平均繊維長が長すぎると成形性が悪化するためである。また上記強化繊維の最大繊維長は、機械的強度と成形性を考慮して1000μm~3000μm(好ましくは1000μm~2500μm)となるようにするのが好ましい。強化繊維の平均繊維長や最大繊維長は、FRP廃棄物の切断または粉砕時に装置や加工条件を変えることで調整することができ、押出成形時のスクリューや押出条件を変えることによっても調整できる。
【0021】
[4]強化繊維の繊維長分布
上記強化繊維の繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合を5%以上(好ましくは10%以上)とする理由は、1000μm超の繊維本数の割合が少な過ぎると再生FRPの機械的強度をバージン樹脂を用いたFRPと同程度に維持できないためであり、多過ぎると成形性が悪化するためである。また上記強化繊維の繊維長分布における200μm以下の繊維本数の割合を10%以下(好ましくは5%以下)とするのが好ましい。これは200μm以下の繊維本数の割合が多すぎると再生FRPの機械的強度をバージン樹脂を用いたFRPと同程度に維持できないためである。
【0022】
上記強化繊維の繊維長分布における500μm~1000μmの繊維本数の割合を10%以上(好ましくは20%以上)とするのが好ましい。これは500μm~1000μmの繊維本数の割合が少なすぎると再生FRPの機械的強度をバージン樹脂を用いたFRPと同程度に維持できないためである。また同様の理由で上記強化繊維の繊維長分布における500μm超の繊維本数の割合を20%以上(好ましくは30%以上)とするのが好ましい。またFRP再生ペレットの成形性を確保する点で、上記強化繊維の繊維長分布における200μm~500μmの繊維本数の割合を40%~80%(好ましくは50%~70%)とするのが好ましい。
【0023】
[5]強化繊維の繊維体積含有率
上記FRP再生ペレットの繊維体積含有率(Vf)を10%~40%(好ましくは20%~30%)とする理由は、繊維体積含有率が小さすぎると再生FRPの機械的強度をバージン樹脂を用いたFRPと同程度に維持できないためであり、繊維体積含有率が大きすぎると成形性が悪化するためである。なおFRP再生ペレットは、使用時に他の樹脂ペレットを混ぜて使用することもでき、その場合には最終成形品の繊維体積含有率が10%~40%となるようにするのが好ましい。
【0024】
「FRP再生ペレットの製造方法」
[1]FRP廃棄物の粉砕工程
次に上記FRP再生ペレットの効率的な製造方法について以下に説明する。まず連続繊維状の強化繊維を含有する熱可塑性FRP廃棄物を粉砕機に投入して、強化繊維の平均繊維長が1000μm~5000μm(好ましくは1000μm~2000μm)、繊維長分布における1000μm以上の繊維本数の割合が50%以上(好ましくは60%以上)となるように粉砕処理する。この際使用する粉砕機には、圧縮や衝撃、せん断、摩擦等を粉砕原理とするものを使用することができ、例えば、ローラーミルやハンマーミル、ボールミル等を使用することができる。また粉砕工程では、破砕粒度が10mm以下となるように粉砕するのが好ましく、熱可塑性FRP廃棄物が大きい場合には粗砕と中砕の二段階で粉砕処理を行うこともできる。
【0025】
上記粉砕工程において、強化繊維の平均繊維長を1000μm~5000μm(好ましくは1000μm~2000μm)とする目的は、以後の成形・造粒工程で平均繊維長が短くなることを踏まえて、造粒後のFRP再生ペレットの強化繊維の平均繊維長が300μm~700μm(好ましくは400μm~600μm)に収まるようにするためである。また上記粉砕工程において、繊維長分布における1000μm以上の繊維本数の割合を50%以上(好ましくは60%以上)とする目的は、以後の成形・造粒工程で1000μm以上の繊維本数の割合が減少することを踏まえて、造粒後のFRP再生ペレットの強化繊維の繊維長分布における1000μm以上の繊維本数の割合が5%以上(好ましくは10%以上)となるようにするためである。
【0026】
[2]成形および造粒工程
次に上記粉砕処理された熱可塑性FRP廃棄物を押出成形機に投入して溶融させ、スクリューによって押出混錬することにより樹脂成形体を押出し造粒する。この際、樹脂成形体のマトリックス樹脂全体の80wt%以上(好ましくは90wt%以上、更に好ましくは100%)が再生樹脂となるように、かつ、強化繊維の平均繊維長が300μm~700μm(好ましくは400μm~600μm)、繊維長分布における1000μm超の繊維本数の割合が5%以上(好ましくは10%以上)となるように押出し造粒する。
【0027】
上記押出成形機としては、プラスチック成形で用いられる一軸押出機や二軸押出機を使用することができ、スクリューのタイプとしては、混錬時間が長く強化繊維の繊維長が短くなり易い長尺なものから、混錬時間が短く強化繊維の繊維長が長いまま残り易い短尺のものまで適宜選択して使用できる。またスクリューの太さや形状も同様に適宜選択できる。また押出成形の条件としては、加熱温度やスクリューの回転数などを目的の繊維長分布となるように適宜調整できる。
【0028】
[3]熱可塑性FRP廃棄物
上記熱可塑性FRP廃棄物には、連続繊維状の強化繊維を一方向に揃えて並べたUDシート、UDテープ、またはこれらの積層体、或いはストランド状の強化繊維を織り立てた織物に樹脂を含侵させた成形体を好適に採用できるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
上記押出成形機を用いた造粒工程において、粉砕された熱可塑性FRP廃棄物のみでは目的とする繊維体積含有率にならない場合には、熱可塑性樹脂や強化繊維を材料として新たに加えてもよい。また熱可塑性樹脂を追加する際には、熱可塑性樹脂の再生樹脂ペレットを投入するのが好ましい。
【実施例0030】
[効果の実証試験]
次に本発明のFRP再生ペレットの効果を検証するために行った実証試験について説明する。本試験では、マトリックス樹脂の種類(バージン樹脂・再生樹脂)および強化繊維の繊維長分布が異なる実施例1(再生材料)及び比較例1(バージン材料)の短冊状(長さ80mm、幅10mm、厚さ4mm)のサンプルを作成した。そして各サンプルについて、機械的特性(曲げ強度・引張強度)の試験を行った。
【0031】
[繊維長および機械的特性の測定方法]
本試験における繊維長および機械的特性の測定方法について説明する。繊維長の測定方法としては、サンプルから樹脂成分を除去し、強化繊維のみを残した状態でデジタルマイクロスコープ(キーエンス VHX-5000)により顕微鏡写真を撮り、その写真からランダムで選定した領域の100本分の繊維長を測定した。曲げ強度の測定方法としては、万能試験機(島津製作所 RTF-1350)を使用し、JIS K7171に準拠して23℃管理下、試験速度20mm/minでサンプルの測定を行った。引張強度の測定方法としては、万能試験機(島津製作所 AGX-300kNV)を使用し、JIS K7161に準拠して23℃管理下、試験速度1mm/minでサンプルの測定を行った。
【0032】
「実施例1」
本実施例では、マトリックス樹脂がポリアミド系樹脂(PA6)、強化繊維がトウ状の炭素繊維から成る、繊維体積含有率25%のFRP再生ペレットを主原料としてサンプルを作製した。マトリックス樹脂には100%再生樹脂を使用した。本サンプルの強化繊維の繊維長分布を調べたところ、図1に示すように平均繊維長525μm、最大繊維長2265μm、最小繊維長141μm、1000μm超の繊維本数の割合が10%、500μm~1000μmの繊維本数の割合が23%(500μm超の繊維本数の割合が33%)、200μm~500μmの繊維本数の割合が63%であった。本実施例のサンプルについて機械的特性を調べたところ、曲げ強度319.6MPa、引張強度198.6MPaであった。
【0033】
本サンプルの製造方法に関しては、熱可塑性FRP廃棄物を粉砕機で粉砕処理してサンプルの主原料とし、これに再生樹脂ペレットを加えて押出成形機に投入し、サンプルの成形・造粒を行った。熱可塑性FRP廃棄物には、連続繊維状の炭素繊維を織り立てた織物シートに樹脂を含侵させた繊維体積含有率45%のCFRPシートを使用した。また上記熱可塑性FRP廃棄物の粉砕物の繊維長分布を調べたところ、図2に示すように平均繊維長1423μm、最大繊維長5735μm、最小繊維長471μm、1000μm超の繊維本数の割合が62%、500μm~1000μmの繊維本数の割合が37%(500μm超の繊維本数の割合が99%)、200μm~500μmの繊維本数の割合が1%であった。
【0034】
「比較例1」
本比較例では、マトリックス樹脂がポリアミド系樹脂(PA6)、強化繊維がトウ状の炭素繊維から成る、繊維体積含有率25%のFRP再生ペレットを主原料としてサンプルを作製した。マトリックス樹脂には100%バージン樹脂を使用した。本サンプルの強化繊維の繊維長分布を調べたところ、図3に示すように平均繊維長256μm、最大繊維長648μm、最小繊維長80μm、1000μm超の繊維本数の割合が0%、500μm~1000μmの繊維本数の割合が2%、200μm~500μmの繊維本数の割合が63%、0μm~200μmの繊維本数の割合35%であった。本実施例のサンプルについて機械的特性を調べたところ、曲げ強度317.0MPa、引張強度180.5MPaであった。
【0035】
[試験結果のまとめ]
本試験の結果をまとめると、再生樹脂を使用した実施例1とバージン樹脂を使用した比較例1の各サンプルは、曲げ強度及び引張強度においてほぼ同等の機械的強度を有することが確認できた。再生樹脂がバージン樹脂よりも機械的強度が劣ること、並びに各サンプルの繊維体積含有率が同じであること、を踏まえると、強化繊維の繊維長分布において実施例1のサンプルのように繊維長が比較的長い強化繊維を残すことで機械的強度の維持できたと考えられる。下記の表1は、各サンプルの繊維長と機械的強度の結果をまとめたものである。
【表1】
図1
図2
図3