(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114097
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】多層熱源ガス化炉及び排ガスの再利用方法
(51)【国際特許分類】
F23G 7/12 20060101AFI20230809BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
F23G7/12 Z
F23G5/50 H ZAB
F23G5/50 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016214
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】597001648
【氏名又は名称】株式会社ビッグバン
(74)【代理人】
【識別番号】100167416
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 大志
【テーマコード(参考)】
3K062
3K161
【Fターム(参考)】
3K062AA14
3K062AB02
3K062AC20
3K062BA01
3K062DB05
3K161CA03
3K161DA63
3K161DA73
3K161EA02
3K161EA29
3K161HA54
(57)【要約】
【課題】本発明は、ガス化炉内における複数の部分燃焼領域を多層化するとともに、ガス化炉で生成された可燃性の排ガスを、燃焼炉で燃焼させ、そのとき発生する熱を熱分解炉に供給することで、熱分解炉の炉内温度を任意に昇温させ、炉内温度の一部または全部を400℃以上に維持できる多層熱源ガス化炉を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る多層熱源ガス化炉は、縦型で、廃棄物を該ガス化炉に投入する廃棄物投入部と、廃棄物投入部から投入された廃棄物を熱風で熱分解しかつ熱分解により生成される生成ガスを部分燃焼する複数の部分燃焼領域を備え、複数の部分燃焼領域にはそれぞれ、複数のサイド熱風管と複数の空気供給管が近接して配置され、部分燃焼の複数領域に調整された空気と熱風が供給されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型のガス化炉であって、
廃棄物を該ガス化炉に投入する廃棄物投入部と、
前記廃棄物投入部から投入された前記廃棄物を熱風で熱分解しかつ熱分解により生成される生成ガスを部分燃焼する複数の部分燃焼領域を備え、
前記複数の部分燃焼領域にはそれぞれ、複数のサイド熱風管と複数の空気供給管が近接して配置され、前記部分燃焼の複数領域に調整された空気と熱風が供給されることを特徴とする多層熱源ガス化炉。
【請求項2】
前記ガス化促進用空気管を通過する空気量は、前記多層熱源ガス化炉内の前記廃棄物が燃焼するために必要な限界酸素濃度を上回らない程度に供給されることを特徴とする請求項1に記載の多層熱源ガス化炉。
【請求項3】
前記ガス化炉から排出された非処理排ガスは排ガス浄化装置を介して浄化され、該浄化された可燃ガスを燃焼させて生成される熱風を、前記サイド熱風管を介して前記複数の部分燃焼領域に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の多層熱源ガス化炉。
【請求項4】
前記複数の部分燃焼領域において、それぞれの部分燃焼領域を開閉することができるマルチプレートを備え、それぞれの前記部分燃焼領域を不完全チャンバ化し、前記部分燃焼領域に存在する前記廃棄物を押圧し、かつ、前記部分燃焼領域に投入された前記廃棄物に触れることにより前記投入された廃棄物の量を検知することができることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の多層熱源ガス化炉。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の多層熱源ガス化炉において、前記浄化された可燃ガスを燃焼させて生成される熱風を前記ガス炉の熱源として再利用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の焼却処理に関するものであり、特に、感染性医療廃棄物のプラスチック容器を熱分解する多層熱源ガス化炉の構造、並びに排ガスを浄化して、ガス化炉の熱源として再利用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場において発生する使用済脱脂綿や注射器、及び検査後の組織などの医療廃棄物は、感染症対策や衛生対策の観点から、焼却処理されることが一般的である。このような医療廃棄物は、二次感染による事故の危険などを鑑み、1989年に旧厚生省により産業廃棄物に指定されている。
【0003】
感染性医療廃棄物は医療機関で、定められたプラスチック類の容器に投棄し密閉される。密閉された容器は処理が完了されるまでは開封してはいけないことが法律で決められている。容器内にはガラス類や金属の医療器具類、洗浄液を充填した透析用のフィルター類、包帯等の繊維類等々様々な物質が詰められている。ガラスや金属類の鉱物性の廃棄物は、高温で処理される焼却炉においては炉内温度が鉱物の融点(1200℃付近)以上になることでクリンカー(焼却灰中にある凝固物)の生成が多くなる。つまり最終処分場の負担(費用)に反映する。また水分は気化熱の関係で炉内温度の上昇を妨げる要因になる等の厄介な廃棄物であることから処理費用が高額に設定されている。その点、熱分解炉は炉内温度が低いことでクリンカーが発生しにくいことや焼却灰が微細になることで最終処分場の負担を軽減できる特長がある。しかし熱源が二次元的な部分燃焼によるガス化減容であるがゆえに水分が最も苦手という弱点がある。さらに、二次元的な部分燃焼ではプラスチック容器のような形容物は側面や上面に熱が伝わりにくいことから分解速度が極端に遅くなる最も大きい弱点がある。
【0004】
従来、産業廃棄物等を原料としてガス化を行うガス化装置は公知となっている。このようなガス化装置としては、たとえば、特許文献1に示すような、原料をガス化炉側部から供給するとともに、空気などのガス化材をガス化炉下部から供給して、ガス化炉内でのガス化により生成した生成ガスをガス化炉上部から排出する構造とした固定床アップドラフト型ガス化炉を備えたものがある。また、原料をガス化炉上部から供給するとともに、空気などのガス化材をガス化炉側部から供給して、ガス化炉内でのガス化により生成した生成ガスをガス化炉下部から排出する構造とした固定床ダウンドラフト型ガス化炉を備えたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が提案する固定床アップドラフト型ガス化炉は、構造が簡単、高効率、低コスト、制御が容易などのメリットがあるものの、タール成分が比較的多く発生するという問題がある。
固定床ダウンドラフト型ガス化炉においては、その空間が上から順に炉内に供給された原料を乾燥させる乾燥層、乾燥後の原料を熱分解する熱分解層、原料を部分酸化する部分酸化層などの複数の反応層に分けられ、これらの反応層をガス化炉上部に設けられる投入口から投入される原料が順次通過することによって、ガス化が行われるが、このような構成では、部分酸化層で発生した熱が乾燥層や熱分解層に下方から直接的にしか伝達されないため、投入された原料の一部が高温とならず、乾燥や熱分解が進まない恐れがあった。また、熱分解時に発生するタールを高温の部分酸化層を通過する際にだけ燃焼させることで、生成ガスの改質が行われるため、生成ガスに含まれるタール成分を十分に分解することができないという問題がある。
また、いずれのガス化炉も、無酸素もしくは低酸素状態における部分燃焼である。つまり反応部分はあくまでも二次元(面)での無炎燃焼に近い状態であるがゆえに焼却炉の三次元的な高温の有炎燃焼とは程遠い減容能力でしかない。すなわち、従来の熱分解炉で、内部に医療廃棄物が収容された3~40cm四方のプラスチック容器を熱分解するとすれば、処理時間が長くかかり、費用対効果の面で難がある。
さらに、生成された可燃生成ガスを燃焼炉で燃焼処理し、その廃棄ガスを急冷した後、消石灰等で脱塩処理(中和)を行い、バグフィルター等でダイオキシン類や粉塵を捕集する方式が一般的であるが、燃焼炉の廃棄ガスは高温であり、中和に使用する消石灰や燃焼飛灰等の粉塵量が多い上、廃ガスを急冷することで廃ガス中の水分が飽和状態から一部液化することがフィルターの目詰まりを加速させている。また、廃棄物によっては塩化水素の発生量が多いものもあり液化による塩酸が機器の腐食を促進するという問題がある。
【0007】
本出願の発明者等は、汎用のプラスチック類の融点は、最も高いポリプロピレンで160℃ほどであり、気化温度は400℃近辺である。とすれば、炉内温度の一部又は全部を400℃以上に維持できれば分解速度が一気に加速できると考えた。本発明は、ガス化炉内における複数の部分燃焼領域を多層化するとともに、ガス化炉で生成された可燃性の排ガスを、燃焼炉で燃焼させ、そのとき発生する熱を熱分解炉に供給することで、熱分解炉の炉内温度を任意に昇温させ、炉内温度の一部または全部を400℃以上に維持できる多層熱源ガス化炉を提供することを目的とする。なお、使用する排ガスは低酸素濃度であり、炉内は部分燃焼が進行する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る多層熱源ガス化炉(以下、単に「ガス化炉」という。)は、縦型で、廃棄物を該ガス化炉に投入する廃棄物投入部と、廃棄物投入部から投入された廃棄物を熱風で熱分解しかつ熱分解により生成されるガスを部分燃焼する複数の部分燃焼領域を備え、複数の部分燃焼領域にはそれぞれ、複数のサイド熱風管と複数の空気供給管が近接して配置され、部分燃焼の複数領域に調整された空気と熱風が供給されることを特徴とする。このような構造により、部分燃焼領域に、調整された空気と熱風が供給され廃棄物の熱分解の反応部分が多層化し減容効率を上げることができる。ここで、ガス化促進用空気管を通過する空気量は、前記多層熱源ガス化炉内の前記廃棄物が燃焼するために必要な限界酸素濃度を上回らない程度に供給されることが重要である。
【0009】
なお、ガス化炉から排出された非処理排ガスは排ガス浄化装置を介して浄化され、該浄化された可燃ガスを燃焼させて生成される熱風を、サイド熱風管を介して複数の部分燃焼領域に供給されるようにすると排ガスの再利用につながる。
【0010】
複数の部分燃焼領域において、それぞれの部分燃焼領域を開閉することができるマルチプレートを備え、それぞれの部分燃焼領域を不完全チャンバ化し、部分燃焼領域に存在する廃棄物を押圧し、かつ、部分燃焼領域に投入された廃棄物に触れることにより投入された廃棄物の量を検知することができる。この検知機能により、非処理廃棄物を部分燃焼領域に投入すべきタイミングを把握することができるので、ガス化炉の連続稼働を可能にする。
【0011】
また、本発明は、上述のガス化炉において、浄化された可燃ガスを燃焼させて生成される熱風を前記ガス炉の熱源として再利用する方法である。
【発明の効果】
【0012】
感染性医療廃棄物を収容するために汎用されているプラスチック類の融点は最も高いポリプロピレンでも160℃付近であり、気化温度は400℃付近であるが、本発明により、部分燃焼領域の複数領域に調整された空気と熱風が供給され廃棄物の熱分解の反応部分が多層化し、炉内における400℃以上のスペースを多くなりプラスチック容器全体の熱分解速度が一気に加速され、結果として減容効率を上げるという効果がある。
【0013】
また、生成可燃ガスがガス化炉から燃焼炉に送られる前に、排ガス中の粉塵や塩化水素、ダイオキシン類等の有害物質を水に取り込み、浄化工程を経ることにより、クリーンな生成可燃ガスを生成しこれを燃焼炉で燃焼させて生成する熱風をガス化炉の熱源として有効利用することができるという効果がある。
さらに、当該浄化された可燃ガスを当該ガス化炉以外の発電やボイラーの熱源として利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る多層熱源ガス化炉の基本構成を示す概念図である。
【
図2】本発明に係る多層熱源ガス化炉において、医療廃棄物が炉内で熱分解していく様子を示す図である。
【
図3】本発明に係る多層熱源ガス化炉において、医療廃棄物が炉内で熱分解していく様子を示す、
図2に続く図である。
【
図4】本発明に係る別の多層熱源ガス化炉の基本構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明は下記に示される実施例に限られるものではない。
【実施例0016】
実施例1を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のガス化炉10の基本構成を示す概念図である。
図2及び3は、ガス化炉10において、医療廃棄物Bが炉内で熱分解していく様子を示す図である。なお、実施例1において、処理する廃棄物は医療用廃棄物であるが、以下、単に「廃棄物B」といい説明する。
【0017】
まず、実施例1に係るガス化炉10の基本構成を説明する。
図1を参照すると、ガス化炉10は、縦型のガス化炉であって、上位に廃棄物投入部100と、中位に廃棄物Bを熱分解してガス化させる第1の部分燃焼領域106と第2の部分燃焼領域107と、下位に該部分燃焼領域の空間内を加熱し廃棄物投入部100から投入された廃棄物Bに熱風を送り込んで部分燃焼させる加熱部105とを備える。なお、第1の部分燃焼領域106と第2の部分燃焼領域107との空間の境界、ならびに第2の部分燃焼領域107の上境には、便宜的に図面上に一点鎖線を引いて空間の領域を示している。灰化部108は加熱部105の下部に位置する。
また、廃棄物投入部100の所定の側壁に廃棄物投入扉101が開閉自在に設けられており、廃棄物Bは、廃棄物投入扉101が開くことにより廃棄物投入部100に収容される。さらに、廃棄物投入部100の底面には、ガス化炉投入扉102が開閉自在に設けられており、収容された廃棄物Bは、ガス化炉投入扉102が開くことにより、ガス化炉10内の部分燃焼領域に投入されることになる。
【0018】
実施例1においては、まず、着火用兼昇温用燃焼炉12でLPガスを燃やして熱風を生成する。加熱部105は、孔が無数に穿たれた金属製パイプを格子状に組んだもので、この孔を介して投入された廃棄物Bに着火用兼昇温用燃焼炉12で生成された熱風を供給する。なお、加熱部105には、着火用兼昇温用燃焼炉12から切り替えバルブ(図示していない)を介して空気を供給することができる。
第1の部分燃焼領域106と第2の部分燃焼領域107は筒状体のガス化炉10の中央部に位置し、ガス化炉10の排出口109から排出された非処理排ガスを、排ガス浄化装置2、3を介して浄化し、該浄化した可燃ガスを着火用兼昇温用燃焼炉12において燃焼させて生成する熱風を供給するサイド熱風管120と、部分燃焼領域に空気を供給する空気供給管121とを備える。なお、サイド熱風管120と空気供給管121とは、着火用兼昇温用燃焼炉12から、熱風と空気の熱源を供給されることになる。すなわち、第1の部分燃焼領域106と第2の部分燃焼領域107とに、それぞれ、複数のサイド熱風管120と複数の空気供給管121とが近接して配置され、部分燃焼領域の複数領域に調整された空気と熱風が供給される。
こうして、廃棄物Bの熱分解の反応部分が多層化し減容効率を上げることができる。
【0019】
また、ガス化炉10は、第1の部分燃焼領域106と第2の部分燃焼領域107との空間の境界を開閉することができる第1のマルチプレート104と、第2の部分燃焼領域107の空間の上境を開閉することができる第2のマルチプレート103とを備え、第1の部分燃焼領域106及び第2ガス化部107を不完全チャンバ化することができ、また、部分燃焼領域に投入された廃棄物Bを押圧することもできる。なお、「不完全チャンバ化」とは、マルチプレートに複数の孔が穿たれていて、生成される排ガスは該孔を介して上層に移動することができ、部分燃焼領域を完全に閉鎖するわけではないため、便宜的にこのように示している。さらに、部分燃焼領域に投入された廃棄物Bに触れることにより、投入された廃棄物Bの量を検知することができる。この検知機能により、非処理廃棄物Bを部分燃焼領域に投入すべきタイミングを把握することができるので、ガス化炉10の連続稼働を可能にする。
このように、第1のマルチプレート104と第2のマルチプレート103の名に示す「マルチ」とは、「仕切り」、「押圧」、「部分燃焼領域に収容されている廃棄物の現投入量の検知」という三つの機能を有することによると理解されたい。
【0020】
廃棄物Bの熱分解及び部分燃焼により生成した排ガスは、排気口509を介して、冷却塔兼第1の生成可燃ガス浄化装置2及び第2の生成可燃ガス浄化装置3に流入し、ここで冷却浄化した後、ガスホルダ4に保管されることになる。浄化した可燃ガスはガスホルダ4から着火用兼昇温用燃焼炉12に供給され、ガス化炉10の燃焼に再利用されることになるが、発電や別のボイラーX等の熱源として利用してもよい。
【0021】
図2を参照する。
図2は、ガス化炉10において、廃棄物Bが炉内で熱分解していく様子を示す図である。
図2(a)は、ガス化炉10の廃棄物投入部100に廃棄物Bが収容された状態を示し、加熱部105は、着火用燃焼炉11でLPガスが燃やされて熱風を生成し、該熱風が炉内に供給され、暖気運転中の状態である。
図2(b)は、廃棄物投入部100に設けられたガス化炉投入扉102が開いて、廃棄物Bがガス化炉10内の部分燃焼領域に投入された最初の状態を示している。
図2(c)を参照すると、廃棄物Bがガス化炉10内の部分燃焼領域に投入されて、投入量が第1の部分燃焼領域106の所定位置まで達すると、ガス化炉投入扉102が閉じ、第1マルチプレート104が作動する。
図2(c)においては、第1マルチプレート104は、投入された廃棄物Bを下方向に押圧している。つまり、まず、加熱部105から熱風が供給され、廃棄物Bは熱分解し始めるが、
図2(d)に示すとおり、第1マルチプレート104の廃棄物Bへの下方向の押圧により廃棄物Bの減容が進行していることが理解できるであろう。
図2(d)において、廃棄物投入部100に新たな廃棄物Bが収容され、再投入のスタンバイ状態となっている。また、減容の進行に伴い、廃棄物Bの熱分解によりガス化及び該ガスの部分燃焼も進行し、排ガスは排気口109から第1の生成可燃ガス浄化装置2及び第2の生成可燃ガス浄化装置3に流入し、ここで冷却浄化した後、クリーンな可燃ガスとしてガスホルダ4に保管されつつあり、浄化された可燃ガスの一部は、ガスホルダ4から着火用兼昇温用燃焼炉12に供給され、第1の部分燃焼領域106の燃焼に再利用され始める。なお、生成可燃ガスが再利用されるまでは、昇温用燃焼炉12においてLPガスを燃やした熱風を第1の部分燃焼領域106に供給することができる。
【0022】
図3を参照する。
図3は、本発明に係るガス化炉において、医療廃棄物が炉内で熱分解していく様子を示す、
図2に続く図である。
図3(a)は、廃棄物投入部100に設けられたガス化炉投入扉102が開いて、新たな廃棄物Bがガス化炉10内の部分燃焼領域に再投入された状態を示している。すなわち、第1マルチプレート104の一部が、投入された廃棄物Bのうち任意の廃棄物Bに触れ、マルチプレートの角度により、部分燃焼領域に投入された廃棄物Bの量を検知して、部分燃焼領域にまだ十分に投入されうると認識された場合、自動的に新たな廃棄物Bがガス化炉10内の部分燃焼領域106に再投入されるということである。なお、廃棄物Bの再投入がなされるべき角度は任意に決定することができる。
図3(b)を参照すると、新たな廃棄物Bがガス化炉10内の部分燃焼領域に投入されて、投入量が第2ガス化部103の所定位置まで達すると、ガス化炉投入扉102が閉じ、第2マルチプレート103が作動する。
図3(b)においては、第2マルチプレート103は、投入された廃棄物Bを下方向に押圧している。つまり、加熱部105により、廃棄物Bは燃焼しているが、
図3(b)及び(c)に示すとおり、第2マルチプレート103の廃棄物Bへの下方向の押圧により廃棄物Bの減容が進行していることが理解できるであろう。また、減容のさらなる進行に伴い、廃棄物Bの熱分解によるガス化が進行し、排ガスは排気口109から第1の生成可燃ガス浄化装置2及び第2の生成可燃ガス浄化装置3に流入し、ここで冷却浄化した後、クリーンな可燃ガスとしてガスホルダ4に保管され、浄化された可燃ガスは、ガスホルダ4から着火用兼昇温用燃焼炉12に供給燃焼して、熱風が第1の部分燃焼領域106のみならず第2ガス化部107の燃焼に再利用され始める。なお、生成可燃ガスが不足した場合や再利用できる状態になるまでは、昇温用燃焼炉12においてLPガスを燃やした熱風を第1の部分燃焼領域106及び第2の部分燃焼領域107に供給することができる。
図3(c)において、廃棄物投入部100にさらに新たな廃棄物Bが収容され、再投入のスタンバイ状態となっている。
図3(d)は、廃棄物投入部100に設けられたガス化炉投入扉102が開いて、さらに新たな廃棄物Bがガス化炉10内の部分燃焼領域に再投入された状態を示している。すなわち、第2マルチプレート103の一部が、投入された廃棄物Bのうち任意の廃棄物Bに触れ、マルチプレートの角度により、部分燃焼領域に投入された廃棄物の量を検知して、部分燃焼領域にまだ十分に投入されうると認識された場合、自動的に新たな廃棄物Bがガス化炉10内の部分燃焼領域107に再投入されるということである。なお、廃棄物の再投入がなされるべき角度は任意に決定することができる。
図3(e)を参照すると、さらに新たな廃棄物Bがガス化炉10内の部分燃焼領域に投入されて、投入量が第2の部分燃焼領域107の所定位置まで達すると、ガス化炉投入扉102が閉じ、第2マルチプレート103が作動する。
このように、廃棄物Bの熱分解によるガス化及び該ガスの部分燃焼が進行し、排ガスは排気口109から第1の生成可燃ガス浄化装置2及び第2の生成可燃ガス浄化装置3に流入し、ここで冷却浄化した後、クリーンな可燃ガスとしてガスホルダ4に保管され、浄化された可燃ガスは、ガスホルダ4から着火用兼昇温用燃焼炉12に供給燃焼して、熱風が第1の部分燃焼領域106及び第2ガス化部107の燃焼に再利用される。
なお、ガスホルダ4に保管された生成可燃ガスを、着火用燃焼炉11に供給し、ここで燃焼して生成される熱風を第1の部分燃焼領域106に供給することも可能である。
【0023】
灰化部105は、廃棄物Bが灰化されて生成された灰の脱炭素及び微細化のための撹拌管本体と灰排出口(図示していない)とを備えるようにしてもよい。
【0024】
実施例1に係るガス化炉10において、部分燃焼領域は第1の部分燃焼領域106と第2の部分燃焼領域107として構成しているが、二つに限定されず、三つあるいはそれ以上の部分燃焼領域を構成してもよい。例えば、三つの部分燃焼領域が構成される場合は、三基のマルチプレートを備えることになり、三つの部分燃焼領域へそれぞれ、複数のサイド熱風管120と複数の空気供給管121とが近接して配置され、複数の部分燃焼領域の調整された空気と熱風が供給されて、廃棄物Bの熱分解の反応部分が多層化し減容効率を上げることができる。ガス化炉が四つ以上の部分燃焼領域を備える場合、ガス化炉の高さを上げて、上述した構造と同様に各部が配置されることは理解されるであろう。
着火用燃焼炉51でLPガスを燃やして熱風を生成する。加熱部505は、孔が無数に穿たれた金属製パイプを格子状に組んだもので、この孔を介して投入された廃棄物Bに着火用燃焼炉51で生成された熱風を供給する。
第1の部分燃焼領域506と第2の部分燃焼領域507は筒状体のガス化炉50の中央部に位置し、ガス化炉50の排出口509から排出された非処理排ガスを、排ガス浄化装置2、3を介して浄化し、該浄化した可燃ガスを着火用兼昇温用燃焼炉52において燃焼させて生成する熱風を供給するサイド熱風管520と、部分燃焼領域に空気を供給する空気供給管521とを備える。なお、サイド熱風管520と空気供給管521とは、着火用兼昇温用燃焼炉52から、熱風と空気の熱源を供給されることになる。すなわち、第1の部分燃焼領域506と第2の部分燃焼領域507とに、それぞれ、複数のサイド熱風管520と複数の空気供給管521とが近接して配置され、部分燃焼領域の複数領域に調整された空気と熱風が供給される。こうして、廃棄物Bの熱分解の反応部分が多層化し減容効率を上げることができる。
また、ガス化炉50は、第1の部分燃焼領域506と第2の部分燃焼領域507との空間の境界を開閉することができる第1のマルチプレート504と、第2の部分燃焼領域507の空間の上境を開閉することができる第2のマルチプレート503とを備え、第1の部分燃焼領域506及び第2ガス化部507を不完全チャンバ化することができ、また、部分燃焼領域に投入された廃棄物Bを押圧することもできる。なお、「不完全チャンバ化」とは、マルチプレートに複数の孔が穿たれていて、生成される排ガスは該孔を介して上層に移動することができ、部分燃焼領域を完全に閉鎖するわけではないため、便宜的にこのように示している。さらに、部分燃焼領域に投入された廃棄物Bに触れることにより、投入された廃棄物Bの量を検知することができる。この検知機能により、非処理廃棄物Bを部分燃焼領域に投入すべきタイミングを把握することができるので、ガス化炉50の連続稼働を可能にする。
このように、第1のマルチプレート504と第2のマルチプレート503の名に示す「マルチ」とは、「仕切り」、「押圧」、「部分燃焼領域に収容されている廃棄物の現投入量の検知」という三つの機能を有することによると理解されたい。
以上、本発明に係る多層熱源ガス化炉及び浄化された可燃ガスの再利用方法における好ましい実施形態を説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。