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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114102
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】被覆材固定ピン
(51)【国際特許分類】
   F16B 15/00 20060101AFI20230809BHJP
   F16B 5/00 20060101ALI20230809BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20230809BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
F16B15/00 C
F16B5/00 C
E04B1/61 507Z
E04F13/08 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016229
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】591250282
【氏名又は名称】株式会社タイルメント
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】京本 潤
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 将人
(72)【発明者】
【氏名】橘田 智
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 正樹
【テーマコード(参考)】
2E110
2E125
3J001
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AA61
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110CA03
2E110DA06
2E110DA08
2E110DC01
2E110GA42W
2E110GB12W
2E110GB32W
2E110GB42Z
2E110GB43Z
2E125BD03
2E125BE01
2E125CA91
3J001FA02
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001JD01
3J001KB04
(57)【要約】
【課題】下地に対して所定厚さの被覆材をしっかりと弾性的に固定、保持することの出来る被覆材固定ピンを提供する。
【解決手段】下地に対して取り付けられるベース12に、断熱材20内への差込みによって断熱材20を固定的に保持する針状挿入部14の複数を、ベース12から上方に立ち上がり、更に外方に湾曲して延び出してなる形態において放射状に配設し、それら複数の針状挿入部14の先端側部位が、相互に接近するように拘束リング16によって集束せしめるようにして固定ピン10を構成し、かかる固定ピン10の拘束リング16にて集束された複数の針状挿入部14が断熱材20に差し込まれる際に、拘束リング16による針状挿入部14の規制が解除されるようにして、それら複数の針状挿入部14が拡開されつつ断熱材20内に差し込まれ得るようにし、断熱材20が下地に固定されるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地の表面を覆うように配置される所定厚さの被覆材を固定せしめるためのピン部材にして、
該下地に対して位置固定に取り付けられる盤状のベースと、該ベースに立設されて、前記被覆材内への差込みによって該被覆材を固定的に保持する、弾性を有する複数の針状挿入部であって、それら複数の針状挿入部が、該ベースから上方に立ち上がり、更に外方に湾曲して延び出してなる形態において、放射状に配設されてなるものと、かかる複数の針状挿入部の先端側部位に対して離脱可能に取り付けられて、それら針状挿入部の先端側部位が相互に接近するように集束せしめ、それら針状挿入部の外方への拡開を規制する拘束リングとを有し、
該拘束リングにて集束された該複数の針状挿入部が、前記被覆材に差し込まれる際に、該拘束リングによる該複数の針状挿入部に対する規制が解除されるように構成して、それら複数の針状挿入部が拡開されつつ該被覆材内に差し込まれ得るようにしたことを特徴とする被覆材固定ピン。
【請求項2】
前記拘束リングが円環板形状を呈するものであって、その内孔内に、前記複数の針状挿入部が挿通されてなる形態において、それら針状挿入部の先端側部位が集束せしめられ得るようになっていることを特徴とする請求項1に記載の被覆材固定ピン。
【請求項3】
前記針状挿入部が細幅の帯状平板からなり、且つ該帯状平板が、板面に沿って湾曲せしめられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被覆材固定ピン。
【請求項4】
前記帯状平板の先端が、先細三角形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の被覆材固定ピン。
【請求項5】
前記針状挿入部の先端側部位に、係合手段が設けられ、該係合手段に対して、前記拘束リングが離脱可能に係合することによって、前記複数の針状挿入部が集束せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の被覆材固定ピン。
【請求項6】
前記針状挿入部の4個が、90°の位相差において、前記ベースに一体的に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の被覆材固定ピン。
【請求項7】
少なくとも前記針状挿入部が、樹脂にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の被覆材固定ピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材固定ピンに係り、特に、建築物や大型空調機等の所定位置に、断熱材や吸音材の如き所定厚さの被覆材を配設、保持せしめる際に用いられる固定ピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の建築施工において、かかる建築物の断熱効果や防音効果を高めるための内装工事を行う場合には、内壁や外壁の下地材に対して、グラスウールやロックウール等をシート状に成形してなる所定厚さの断熱材や吸音材の如き被覆材が、配設されることとなる。また、ユニット型の空気調和機や大型の空気清浄機等においても、騒音防止のために、通常、外面パネルの内側等に対して、上述のものと同様な材質等からなる吸音材が、被覆材として配設されるようになっている。
【0003】
そして、そのような断熱材や吸音材の如き被覆材は、内壁や外壁、機器等の下地面に固定的に取り付けられる必要があるのであるが、多くの場合、かかる被覆材は、下地材や外面パネルに立設せしめられた細長い釘状の取付けピンに刺し通され、更に、実開昭61-30711号公報において、従来技術として指摘されている、第4図や第5図に示される如く、被覆材の表面に突出させた取付けピンの先端を折り曲げて、固定せしめたり、或いは、そのような被覆材の表面から突出する取付けピンの先端に対して、抑えキャップを取り付けて、この抑えキャップにて押さえ付けた状態とすることにより、下地面に対して被覆材を固定、保持せしめ得るようになっている。
【0004】
しかしながら、そのような従来の取付けピンを用いた固定構造においては、取付けピンが被覆材を貫通して、その先端が、被覆材の表面(外面)から所定長さ突出せしめられるようになるものであるところから、その露呈するピン先端にて作業者が負傷する等、その固定作業の安全性において、問題を内在していることに加えて、美観的にも好ましくないものであった。また、取付けピンによって、被覆材の内外面が接続されることとなるところから、取付けピンを通じての熱伝導によって、被覆材である断熱材の断熱効果が低下するという問題もあり、更には、取付けピンの露出する先端部を折り曲げたり、その先端部に抑えキャップを取り付けたりする等の作業が必要となるのであって、そのために、被覆材の下地に対する取付け作業が手間のかかる面倒なものとなる問題も、内在するものであった。しかも、抑えキャップを用いる場合にあっては、そのような抑えキャップを予め準備する必要があり、それによって、部品点数が増加することとなることによって、被覆材の固定、保持のためのコストが増大する問題も、内在している。
【0005】
このため、上記の実開昭61-30711号公報においては、基板に2本の釘を平行して起立させ、その先端部を折り曲げてなる構造のイカリ鋲が提案され、それを用いて、ダクト等の表面に断熱材を取り付けるようにした構成が明らかにされているのであるが、被覆材の取付け効果において、今一つ十分なものではなかったのである。
【0006】
すなわち、かかるイカリ鋲は、基板に立設された2本の釘を、折曲してなる形態において、断熱材に押し込み、その押込み力にて、その折曲した2本の釘を、更に大きく折曲せしめて、その大きく折曲した状態の2本の釘にて、断熱材を引っ掛けて(係止して)、固定せしめるようにするものであるところから、壁面やパネル面の如き下地面に対して、断熱材をしっかりと押し付けつつ取り付けることが難しく、断熱材と下地面との間に、幾ばくかの隙間が生じる恐れがあった。特に、その問題は、クッション性のある断熱材や防音材等を対象とする場合にあっては、しっかりと押さえ込むことが更に困難となるために、より顕著となるのである。加えて、そのようなイカリ鋲における折り曲げられた2本の釘は、それらの尖鋭な先端部が上方を向いているために、2本の釘が大きく折曲するに先立って、断熱材を貫通して、その表面に露出してしまう恐れがあり、その場合においては、作業者が傷つく等の作業安全上の問題も惹起する恐れがあるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61-30711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、下地に対して所定厚さの被覆材をしっかりと弾性的に固定、保持することの出来る被覆材固定ピンを提供することにあり、また、他の課題とするところは、被覆材を貫通することなく、従って被覆材の表面に突出させることなく、下地に対して、被覆材をしっかりと固定、保持することの出来る実用的な被覆材固定ピンを提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明にあっては、上述した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載及び図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0010】
そこで、本発明は、先ず、前記した課題を解決すべく、下地の表面を覆うように配置される所定厚さの被覆材を固定せしめるためのピン部材にして、該下地に対して位置固定に取り付けられる盤状のベースと、該ベースに立設されて、前記被覆材内への差込みによって該被覆材を固定的に保持する、弾性を有する複数の針状挿入部であって、それら複数の針状挿入部が、該ベースから上方に立ち上がり、更に外方に湾曲して延び出してなる形態において、放射状に配設されてなるものと、かかる複数の針状挿入部の先端側部位に対して離脱可能に取り付けられて、それら針状挿入部の先端側部位が相互に接近するように集束せしめ、それら針状挿入部の外方への拡開を規制する拘束リングとを有し、該拘束リングにて集束された該複数の針状挿入部が、前記被覆材に差し込まれる際に、該拘束リングによる該複数の針状挿入部に対する規制が解除されるように構成して、それら複数の針状挿入部が拡開されつつ該被覆材内に差し込まれ得るようにしたことを特徴とする被覆材固定ピンを、その要旨とするものである。
【0011】
なお、かかる本発明に従う被覆材固定ピンの好ましい態様の一つによれば、前記拘束リングが円環板形状を呈するものであって、その内孔内に、前記複数の針状挿入部が挿通されてなる形態において、それら針状挿入部の先端側部位が集束せしめられ得るようになっている。
【0012】
また、本発明に従う被覆材固定ピンの好ましい別の態様の一つによれば、前記針状挿入部が細幅の帯状平板からなり、且つ該帯状平板が、板面に沿って湾曲せしめられていることを特徴としており、更にまた、そのような帯状平板の先端が、先細三角形状に形成されていることを特徴としているものである。
【0013】
加えて、本発明にあっては、望ましくは、前記針状挿入部の先端側部位に、係合手段が設けられ、該係合手段に対して、前記拘束リングが離脱可能に係合することによって、前記複数の針状挿入部が集束せしめられるようになっている。
【0014】
そして、本発明に従う被覆材固定ピンにおける有利な態様の一つによれば、前記針状挿入部の4個が、90°の位相差において、前記ベースに一体的に配設されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に従う被覆材固定ピンの別の望ましい態様の一つによれば、少なくとも前記針状挿入部が、樹脂にて構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従う被覆材固定ピンにあっては、ベースから立ち上がった後、ピン側方となる外方に湾曲して延び出す複数の針状挿入部の先端側部位が、それぞれの弾性に抗して、拘束リングにて集束せしめられてなる形態において、それら針状挿入部が被覆材に差し込まれる際に、そのような拘束リングによる集束が解除されるようにして、複数の針状挿入部が、その弾性復元作用にて漸次拡開されつつ、被覆材内に差し込まれるようになっているところから、それら複数の針状挿入部は、被覆材に対して、より容易に且つ深く差し込まれ得ることとなるのであり、しかも、それら複数の針状挿入部は弾性を有するものであるところから、その弾性特性によって、被覆材を弾性的に下地側に押さえ込むようにして、保持し得ることとなるのであり、これによって、被覆材がクッション性のある断熱材であっても、それを、しっかりと、下地に対して固定、保持することが可能となったのである。
【0017】
また、そのような本発明に従う被覆材固定ピンにあっては、従来の鋲乃至は固定ピンとは異なり、被覆材に差し込まれる針状挿入部の先端に、抑えキャップを取り付ける構成を採用するものではないところから、部品点数が少なくなることに加えて、その挿入部の先端が被覆材を貫通して外部に露出するものではないところから、下地に対する被覆材の取付け作業において、作業者が負傷する等の作業安全上の問題も、全く解消され得るのであり、しかも、被覆材の表面を美麗にして、外観の向上を図り得ることとなると共に、針状挿入部を通じての熱伝導によるところの断熱効果の低下の恐れも、全く解消され得ることとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に従う被覆材固定ピンの一例を示す斜視説明図であって、拘束リングによる規制を解除して、針状挿入部が外方に拡開してなる形態を示している。
図2図1に示される被覆材固定ピンの正面説明図である。
図3図1に示される被覆材固定ピンについての説明図であって、(a)は、その平面説明図であり、(b)は、図2におけるA-A断面説明図である。
図4図1に示される被覆材固定ピンにおいて、その複数の針状挿入部の先端側部位を拘束リングにて集束せしめてなる形態を示す斜視説明図である。
図5図4に示される形態における、図2に対応する正面説明図である。
図6図5におけるB-B断面説明図である。
図7図4に示されてなる形態の被覆材固定ピンが、下地に固定されてなる形態において、その複数の針状挿入部が被覆材に差し込まれる直前の状態を、断面形態において示す正面説明図である。
図8図1に示される被覆材固定ピンにて、目的とする被覆材を下地に固定、保持せしめてなる状態を、断面形態において示す正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0020】
先ず、図1には、本発明に従う被覆材固定ピンの一例が、拘束リングによる規制を解除して、複数の針状挿入部を外方に拡開させてなる状態下、斜視図の形態において、示されている。そこにおいて、固定ピン10は、円盤形状のベース12と、このベース12上に立設されて、外方に湾曲して延びる帯板形状の4個の針状挿入部14と、この針状挿入部14の基部に遊嵌された所定幅の円環板形状の拘束リング16とから、構成されている。また、そこで、4個の針状挿入部14は、ベース12に対して一体的に固設されてなる構造において、放射状に配設されている。なお、ここでは、それらベース12、針状挿入部14及び拘束リング16は、何れも、ポリプロピレン等の所定の合成樹脂を材質として、形成されている。
【0021】
より詳細には、図2図3からも明らかな如く、ベース12は、所定厚さの樹脂製の円盤にて構成されており、その厚さ方向に貫通する貫通孔12aの複数が、所定間隔を隔てて分布するように設けられている。この貫通孔12aは、後述するように、固定ピン10を下地表面の所定位置に接着剤にて固定する際に、接着剤が侵入するようにして、下地面に対してベース12、ひいては固定ピン10が強固に固着、保持せしめられるようにするためのものである。
【0022】
そして、かかるベース12の上面の中心部には、4個の針状挿入部14が、放射状に位置するように、ここでは、90°の位相差において、ベース12に対して一体的に配設されている。そこで、各針状挿入部14は、図1~3から明らかな如く、ベース12から上方に立ち上がり、更に、上方に湾曲してベース12側方となる外方に延び出してなる形態において、設けられている。また、各針状挿入部14は、樹脂材質とされていることによって、樹脂弾性特性を有し、変形作用を受けても、その弾性復元作用によって、図1に示される如き拡開形態が、復元され得るようになっている。更に、そのような針状挿入部14は、ここでは、所定厚さの細幅の帯状平板からなり、且つそのような帯状平板が、板面に沿って湾曲せしめられてなる形態とされていると共に、かかる帯状平板の先端が、先細三角形状に形成されて、後述するように、被覆材内への差し込みを容易に行い得るようになっているのである。加えて、そのような針状挿入部14の先端側部位には、その先細三角形状に近接した位置において、幅方向の両側が切り欠かれて、係合凹部14a,14aが、係合手段として形成されている。そして、この2つの係合凹部14a,14aに対して、後述するように、拘束リング16の内周の角部が離脱可能に係合することによって、集束せしめられるようになっているのである。
【0023】
また、拘束リング16は、所定幅の円環板形状を呈する樹脂製品であって、図1に示される如く、4個の針状挿入部14の基部、換言すれば、ベース12に対する起立部位の外周に位置するように、遊嵌乃至は外挿されてなる形態において、配置せしめられている。この拘束リング16は、4個の針状挿入部14の先端側部位に対して(ここでは、針状挿入部14の両側の係合凹部14a,14aに係合するようにして)、離脱可能に取り付けられて、それら針状挿入部14が、その弾性力に抗して、それらの先端側部位が相互に接近するように集束せしめられ、それら針状挿入部14の弾性復元作用に基づくところの外方への拡開を規制するように、構成されているのである。なお、かくの如き拘束リング16は、その内孔内に、4個の針状挿入部14が挿通されてなる形態において、かかる針状挿入部14の先端側部位に移動せしめられるものであるところから、それら4個の針状挿入部14の基部の外形が接する最大径よりも充分に大きな内径を有するように、構成されている。
【0024】
従って、かくの如き構成の固定ピン10において、拘束リング16が、針状挿入部14の起立方向、換言すれば、ベース12から離隔する方向(図2において、上方)に移動せしめられて、その内孔内に位置する4個の針状挿入部14の先端側部位が、相互に接近するように集束されてなる形態において、かかる針状挿入部14の係合凹所14aに拘束リング16の内孔の角部が係合せしめられることによって、それら針状挿入部14が、その弾性復元作用に抗して、それぞれの外方への拡開が規制されることとなるのであり、その形態が、図4、更には図5及び図6に示されている。
【0025】
すなわち、拘束リング16の針状挿入部14の起立方向への移動によって、図4図5に示される如く、湾曲状態にある各針状挿入部14は、それらの弾性変形による付勢力に抗して、水平方向の状態から垂直方向(起立方向)の状態に変形せしめられるようになるのであり、これによって、4個の針状挿入部14の先端側部位が相互に近接するようにして、集束せしめられることとなる。そして、その集束状態が、各針状挿入部14の両側の係合凹部14a,14aに拘束リング16の内周縁部の角部が係合することによって、一時的に保持され得るようになっているのである。
【0026】
また、そのような構成の固定ピン10を用いて、断熱材の如き、所定厚さの被覆材を、目的とする下地の表面を覆うように配置して、固定せしめるに際しては、先ず、図7に示される如く、下地18の表面の所定位置に、固定ピン10が、そのベース12を介して、従来と同様にして接着剤にて固着(固定)せしめられることとなる。
【0027】
そして、固定ピン10は、その4個の針状挿入部14の先端側部位が相互に接近するように、拘束リング16にて集束せしめられてなる状態下において、その上方に配置された所定厚さの断熱材20が、白抜きの矢印にて示される方向に押し付けられるようにすることによって、各針状挿入部14は、それぞれ、その先端の三角形状部位から断熱材20内に入り込むようになると共に、断熱材20の固定ピン10対向面(図7では下面)によるベース12側(図7において、下方)への押圧作用にて、各針状挿入部14の先端側部位(係合凹部14a)に対する拘束リング16の係合状態が解除されるようになる。これによって、それら針状挿入部14に対する規制(拘束)が解除されることにより、それら針状挿入部14が、その弾性復元力によって外方に拡開されつつ、断熱材20内に、より容易に且つ深く差し込まれることとなるのである。
【0028】
添付の図8には、かくの如くして差し込まれた固定ピン10によって、断熱材20を、下地18に対して固定、保持せしめてなる最終的な形態が示されている。そこにおいて、下地18にベース12が固着せしめられることによって固定された固定ピン10における4個の針状挿入部14は、拘束リング16による規制の解除が進行するに従って、その弾性的復元作用によって、漸次、外方に湾曲して延び出し、最終的に、図1図2に示される如き、元の形態に戻った状態において、断熱材20内に容易に入り込むこととなるのである。これにより、それら針状挿入部14は、断熱材20内に深く入り込むようになると共に、その弾性特性によって、それら針状挿入部14よりも下地18側に位置する断熱材20部分を、下地18に対して押し付けるようにして、保持するようになるところから、クッション性のある断熱材20であっても、それを、しっかりと、下地18に対して固定、保持し得ることとなるのである。
【0029】
かくして、かくの如き固定ピン10を用いた断熱材20の固定構造によれば、拘束リング16にて集束された複数の針状挿入部14を、断熱材20に差し込み、その際に、拘束リング16による針状挿入部14に対する規制を解除するようにして、それら針状挿入部14が拡開されつつ断熱材20内に弾性的に差し込まれるようにすることによって、かかる断熱材20を下地18に対してしっかりと固定、保持せしめることが出来ることとなるところから、従来の鋲乃至は固定ピンとは異なり、押さえキャップを組み合わせて用いる必要がないために、部品点数が少なくなることは勿論、針状挿入部14の先端が断熱材20を貫通して外部に露出することがないために、その露出した先端にて、作業者が負傷する等の作業安全上の問題も、全く解消され得るに至ったのであり、しかも、断熱材20の表面を美麗にして、外観の向上が図られ得ることとなると共に、針状挿入部14を通じての熱伝導による断熱効果の低下の問題も、全く惹起されることはないのである。
【0030】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものでないことが、理解されるべきである。
【0031】
例えば、例示の実施形態においては、針状挿入部14が、細幅の帯状平板にて構成されており、これによって、拘束リング16との間の係合や断熱材20の押圧、保持が効果的に行われ得るようになっているのであるが、円形断面の棒材乃至は針材等にて構成することも可能である。そして、かかる針状挿入部14は、例示の如く、4個設けて、対称的に配置することが望ましいのであるが、その個数は、適宜に選定されるものであって、複数個であれば、何れの個数であっても、何等差支えない。
【0032】
また、針状挿入部14の先端部が、例示の具体例では、先細三角形状とされており、それによって、針状挿入部14が帯板形状を呈していても、断熱材20内への差し込みが容易に行われ得るようになっているが、それに限定されるものでは決してなく、針状挿入部14の断面形状に応じて適宜の先細形状が採用され得るところであり、また先細形状とする必要がない場合もあることに、留意されるべきである。
【0033】
さらに、複数の針状挿入部14の先端側部位に対して、拘束リング16を離脱可能に取り付ける構造にあっても、係合手段として、両側部に設けた切欠きからなる係合凹部14aを用いることに限定されるものではなく、針状挿入部14の裏側に幅方向に設けた溝部等、公知の各種の係止構造を、係合手段として採用することが可能である。
【0034】
更にまた、ベース12、針状挿入部14及び拘束リング16は、例示の実施形態においては、何れも、樹脂材質のものとされているが、そのうち、少なくとも、針状挿入部14が樹脂製とされて、その樹脂バネを利用するようにした構造が、有利に採用されることとなる。尤も、それらベース12、針状挿入部14及び拘束リング16は、そのような樹脂材質に限定されるものでは決してなく、金属材質のものとすることも可能であることは、勿論である。
【0035】
加えて、例示の実施形態では、ベース12が、円盤形状において設けられているのであるが、そのような形状に制限されるものでは決してなく、矩形等の角形形状や楕円形状等の各種の形状を採用することが可能である。
【0036】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0037】
10 固定ピン 12 ベース
14 針状挿入部 14a 係合凹部
16 拘束リング 18 下地
20 断熱材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8