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特開2023-114173会計処理装置、会計処理方法、及び会計処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114173
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】会計処理装置、会計処理方法、及び会計処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/12 20230101AFI20230809BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20230809BHJP
【FI】
G06Q40/00 420
G06Q50/08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016374
(22)【出願日】2022-02-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】502276329
【氏名又は名称】株式会社大兼工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮本 正和
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L055BB64
(57)【要約】
【課題】過去の完了工事の実績の有無に関わらず、受注から完了に至るまでの工事の進行過程において、工事毎に予定された利益が確保されているかを的確に把握することができ、これによってきめ細かな採算管理を行うことができる会計処理装置を提供する。
【解決手段】受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータを取得する取得手段と、前記データに基づいて所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)を算出する算出手段と、前記目標利益(〔M/D〕・T)を表示する表示手段とを備えるものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータを取得する取得手段と、
前記データに基づいて所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)を算出する算出手段と、
前記目標利益(〔M/D〕・T)を表示する表示手段と、
を備える会計処理装置。
【請求項2】
前記表示手段は、受注した工事ごとに、前記目標利益(M)、前記工期(D)、前記所定期間(T)及び前記目標利益(〔M/D〕・T)を一行に並べて表示する請求項1に記載の会計処理装置。
【請求項3】
前記データは、受注した工事に関する売上(PQ)、売上原価(VQ)及び固定費(F)をさらに含み、
前記算出手段は、前記固定費(F)と、前記売上(PQ)及び前記売上原価(VQ)の差分より得られる限界利益(MQ)との比率である損益分岐点比率(F/MQ)をさらに算出し、
前記損益分岐点比率(F/MQ)に基づいて、経営状況を判定する判定手段を備える請求項1又は2に記載の会計処理装置。
【請求項4】
前記固定費(F)は、現在の支出の効果が将来において現われると予想される経費としての戦略費(F4)を含む請求項3に記載の会計処理装置。
【請求項5】
前記固定費(F)は、人件費(F1)をさらに含み、
前記算出手段は、前記人件費(F1)と前記限界利益(MQ)との比率である労働分配率(F1/MQ)をさらに算出する請求項3又は4に記載の会計処理装置。
【請求項6】
コンピュータにより会計処理を行う会計処理方法であって、
受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータを取得する取得工程と、
前記データに基づいて所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)を算出する算出工程と、
前記目標利益(〔M/D〕・T)を表示する表示工程と、
を包含する会計処理方法。
【請求項7】
コンピュータに請求項6に記載の会計処理方法を実行させるための会計処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事の進行過程における利益を管理する会計処理装置、会計処理方法、及び会計処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建築工事や電気工事、水道工事等は、受注から完了(竣工)までに比較的長期間を要する。このような工事では、受注額と工事原価との差額を粗利益として計上するようにされており、工事受注当初に算出された予想粗利益額と、工事完了時に精算された確定粗利益額とが大きく乖離する場合がある。
【0003】
ここで、建設業における決算方式としては、完成基準と進行基準とがあるが、上記のような工事を請け負う業界では、完成基準を採用することが多く、工事の完了後に売上や利益を計上する。完成基準では、工事期間中に売上や利益を計上できないので、工事の進行過程における財務を把握することができない状況にある。このような状況において、工事施工業者は、工事受注当初の粗利益額を重視し、工事の進捗につれての採算の変動を十分に把握することができず、いわゆる丼勘定の経営を行っているのが実情である。
【0004】
一方、進行基準の一例として、例えば、特許文献1には、受注した工事の実行出来高の利益率が妥当であるか否かを判定するようにした建設業向け利益率管理装置が開示されている。
【0005】
特許文献1に係る利益率管理装置は、各工事の実行出来高が予め定められた各規定値(例えば、0%、10%、20%、・・・、80%、90%、100%)に達する毎に、利益率を算出するように構成されている。ここで、利益率は、発生原価ファイルに累積記憶されている当該工事の原価を受注額から減算した金額をその受注額で除算することで算出される。
【0006】
そして、特許文献1に係る利益率管理装置においては、受注した工事に関する各形態パラメータ(受注形態、工事形態、工事種類、入札種類等)における各形態値(単独受注、JV受注等;土木工事、建築工事、港湾工事等;鉄道、道路、学校、ダム等;公募、指名等)の組み合わせ(例えば、土木工事+道路+JV親)を作成し、受注した一の工事の組み合わせに等しい組み合わせの他の完了工事の利益率に関する情報を得て、他の完了工事の利益率から進行中の一の工事の利益率が妥当であるかを判定するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-33816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
工事期間中においては、予定された利益が確保されていることを確認することが健全な経営を行う上で重要である。特許文献1に係る利益率管理装置では、進行中の工事の利益率と、当該進行中の工事と類似する形態の過去の完了工事の実績の利益率とを比較することによって、進行中の工事の利益率の妥当性を判定する。このため、進行中の工事と類似する形態の過去の完了工事が存在しない場合、進行中の工事の利益率の妥当性を的確に判定することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、過去の完了工事の実績の有無に関わらず、受注から完了に至るまでの工事の進行過程において、工事毎に予定された利益が確保されているかを的確に把握することができ、これによってきめ細かな採算管理を行うことができる会計処理装置、会計処理方法、及び会計処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る会計処理装置の特徴構成は、
受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータを取得する取得手段と、
前記データに基づいて所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)を算出する算出手段と、
前記目標利益(〔M/D〕・T)を表示する表示手段と、
を備えることにある。
【0011】
本構成の会計処理装置によれば、取得手段によって取得された、受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータに基づいて、所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)が算出手段によって算出され、算出された所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)が表示手段によって表示されるので、例えば1ヶ月あたりの目標利益が具体的に可視化されることによって達成すべき利益を正確に把握することができる。これにより、過去の完了工事の実績の有無に関わらず、受注から完了に至るまでの工事の進行過程において、例えば、月次決算が可能となり、工事毎に予定された利益が確保されているかを的確に把握することができ、これによってきめ細かな採算管理を行うことができる。従って、経営判断の早期化が可能となり、健全な経営に寄与できる。
【0012】
本発明に係る会計処理装置において、
前記表示手段は、受注した工事ごとに、前記目標利益(M)、前記工期(D)、前記所定期間(T)及び前記目標利益(〔M/D〕・T)を一行に並べて表示することが好ましい。
【0013】
本構成の会計処理装置によれば、受注した工事ごとに、目標利益(M)、工期(D)、所定期間(T)及び所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)が整理された情報として、視覚的に把握し易くなり、複数の工事についてそれら目標利益(M)等の情報が並べられたテーブルデータにおいて、閲覧、比較等を容易に行うことができる。
【0014】
本発明に係る会計処理装置において、
前記データは、受注した工事に関する売上(PQ)、売上原価(VQ)及び固定費(F)をさらに含み、
前記算出手段は、前記固定費(F)と、前記売上(PQ)及び前記売上原価(VQ)の差分より得られる限界利益(MQ)との比率である損益分岐点比率(F/MQ)をさらに算出し、
前記損益分岐点比率(F/MQ)に基づいて、経営状況を判定する判定手段を備えることが好ましい。
【0015】
本構成の会計処理装置によれば、収益性の指標である損益分岐点比率が算出され、算出された損益分岐点比率に基づいて経営状況が判定されるので、現在の経営状況を正確に知ることができる。これにより、損益分岐点比率が比較的高い場合には、売上増加と同時に固定費削減の意識を根付かせるような対策を講じ、損益分岐点比率が比較的低く、損益分岐点比率と補数の関係にある安全余裕率が比較的高い場合であれば、現在の損益分岐点比率を維持していくことと、さらに利益を増すための設備投資や人員増加等の事業拡大を図るなど、適切な経営判断をするための有益な情報を得ることができる。
【0016】
本発明に係る会計処理装置において、
前記固定費(F)は、現在の支出の効果が将来において現われると予想される経費としての戦略費(F4)を含むことが好ましい。
【0017】
本構成の会計処理装置によれば、戦略費(F4)を含む固定費(F)に基づいて算出される損益分岐点比率(F/MQ)によって適切な経営判断をすることにより、経営の安定化を図りつつ、企業の成長を促すことができる。
【0018】
本発明に係る会計処理装置において、
前記固定費(F)は、人件費(F1)をさらに含み、
前記算出手段は、前記人件費(F1)と前記限界利益(MQ)との比率である労働分配率(F1/MQ)をさらに算出することが好ましい。
【0019】
本構成の会計処理装置によれば、人件費(F1)と限界利益(MQ)との比率である労働分配率(F1/MQ)が算出されるので、利益がどのくらい人件費として分配されたのかを正確に知ることができる。労働分配率が比較的高い場合には、人件費に見合う利益が生み出せておらず、人件費に資金繰りが圧迫されて経営難に陥る前に、何らかの対策を講ずる必要があると気付くことができる。労働分配率が比較的低い場合には、経営的に安定していると考えられるが、人件費削減により労働者のモチベーションが低下しないように配慮する必要があると気付くことができる。こうして、経営の安定化と労働者のモチベーションとの調和を図ることができる。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係る会計処理方法の特徴構成は、
コンピュータにより会計処理を行う会計処理方法であって、
受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータを取得する取得工程と、
前記データに基づいて所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)を算出する算出工程と、
前記目標利益(〔M/D〕・T)を表示する表示工程と、
を包含することにある。
【0021】
本構成の会計処理方法によれば、取得工程において取得された、受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータに基づいて、所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)が算出工程において算出され、算出された所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)が表示工程において表示されるので、例えば1ヶ月あたりの目標利益が具体的に可視化されることによって達成すべき利益を正確に把握することができる。これにより、過去の完了工事の実績の有無に関わらず、受注から完了に至るまでの工事の進行過程において、例えば、月次決算が可能となり、工事毎に予定された利益が確保されているかを的確に把握することができ、これによってきめ細かな採算管理を行うことができる。従って、経営判断の早期化が可能となり、健全な経営に寄与できる。
【0022】
上記課題を解決するための本発明に係る会計処理プログラムの特徴構成は、
コンピュータに上記記載の会計処理方法を実行させることにある。
【0023】
本構成の会計処理プログラムによれば、コンピュータにインストールされることによって、上記の会計処理方法の実施により奏する作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る会計処理装置を備えた会計処理システムの概略構成図である。
図2図2は、ディスプレイ部に表示される収支管理表画面の一例を示す図である。
図3図3は、入力データに基づく演算処理の手順を示すフローチャート(1)である。
図4図4は、ディスプレイ部に表示される収益構造図式化画面の一例を示す図である。
図5図5は、ディスプレイ部に表示される経営判断指標画面の一例を示す図である。
図6図6は、入力データに基づく演算処理の手順を示すフローチャート(2)である。
図7図7は、限界利益(MQ)、固定費(F)及び経常利益(G)の推移の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、建設業向けの会計処理装置、会計処理方法、及び会計処理プログラムを例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、金額の単位は「円」である。
【0026】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る会計処理装置10を備えた会計処理システム1の概略構成図である。図1に示す会計処理システム1は、会計処理装置10とサーバ25とを備えている。
【0027】
<会計処理装置>
会計処理装置10は、工事の進行過程における利益を管理する機能を有する。会計処理装置10は、装置本体11、入力部13及びディスプレイ部15を備えている。装置本体11は、演算処理部31、記憶部33、入出力インターフェイス部35及び通信インターフェイス部37を有するコンピュータを主体に構成される。入力部13及びディスプレイ部15は、入出力インターフェイス部35を介して演算処理部31に接続されている。演算処理部31は、通信インターフェイス部37及びネットワーク20を介してサーバ25に接続されている。ネットワーク20としては、インターネットやLAN(ローカルエリアネットワーク)等が挙げられる。サーバ25には、工事毎の採算に関するデータ、例えば、見積に関するデータや、実行予算に関するデータ、過去の実績データ等が記録されており、これらデータは、ネットワーク20及び通信インターフェイス部37を介して演算処理部31に読み込み可能とされている。
【0028】
入力部13は、例えば、キーボード、マウス、スキャナ等から構成されており、工事毎の採算に関するデータ(例えば、見積に関するデータや、実行予算に関するデータ、過去の実績データ等)をユーザによる手入力又は読取装置を用いた自動入力にて入力可能とされている。ディスプレイ部15には、後述する収支管理表画面40(図2参照)が表示される。ユーザは、収支管理表画面40を通じて、複数の工事の採算に関するデータの入力、閲覧、比較等を行うことができる。また、ディスプレイ部15には、後述する収益構造図式化画面60(図4参照)や経営判断指標画面70(図5参照)が表示される。ユーザは、収益構造図式化画面60や経営判断指標画面70を通じて、任意の時点における経営状況を把握することができる。
【0029】
<取得手段、算出手段、判定手段>
演算処理部31は、取得手段31a、算出手段31b、判定手段31c及び画像生成手段31dを含む。取得手段31a、算出手段31b、判定手段31c及び画像生成手段31dは、記憶部33に記憶されている本発明の会計処理プログラムを含む所定プログラムが演算処理部31におけるCPU(中央演算処理装置)で実行されることによりその機能が発揮される。
【0030】
取得手段31aは、ユーザによって入力部13から入力されたデータ、又はサーバ25からネットワーク20を介して入力されたデータから必要なデータを取得する。算出手段31bは、取得手段31aによって取得されたデータに基づいて必要な演算を行う。判定手段31cは、算出手段31bによる演算結果に基づいて所定の判定を行う。画像生成手段31dは、算出手段31bによる演算結果や、判定手段31cによる判定結果等をディスプレイ部15に表示させるための画像信号を生成する。
【0031】
<表示手段>
なお、本実施形態において、ディスプレイ部15及び画像生成手段31dを含む構成が本発明の「表示手段」に相当する。
【0032】
記憶部33には、演算処理部31で実行される所定プログラムや、演算処理部31での演算に必要なデータ、後述する収支管理表画面40、収益構造図式化画面60及び経営判断指標画面70に表示されるデータ等が記憶される。
【0033】
<収支管理表画面>
図2は、ディスプレイ部15に表示される収支管理表画面40の一例を示す図である。図2に示す収支管理表画面40は、紙面の都合で三分割されているが、図中のA-A線及びB-B線において合わされ、ディスプレイ部15上に一画面として表示される。図2において、収支管理表画面40の最上段には、左側から順に、工事番号入力・表示欄41、工事形態入力・表示欄42、顧客名入力・表示欄43、工事名入力・表示欄44、工期開始日入力・表示欄45、工期終了日入力・表示欄46、工期表示欄47、売価入力・表示欄48、目標利益入力・表示欄49、1日あたりの目標利益表示欄50、当月工数表示欄51、当月分売価表示欄52、当月分目標利益表示欄53、当月までの累計工数表示欄54、当月までの累計売価表示欄55、当月までの累計目標利益表示欄56が設けられている。
【0034】
図2に示す収支管理表画面40においては、工事毎に発生する原価(工事費)を着工前に想定して目標利益等を組む実行予算に基づいて必要な項目が入力される。演算処理部31は、入力されたデータに基づいて、必要な演算を行い、その演算結果を収支管理表画面40における関係する欄に表示させる。
【0035】
<収支管理表画面に入力されたデータに基づく演算処理の手順>
図3は、入力データに基づく演算処理の手順を示すフローチャート(1)である。なお、図3のフローチャートにおいて、記号「S」はステップを表す(図6のフローチャートにおいても同様)。
【0036】
<S1:入力データ表示工程>
収支管理表画面40(図2参照)において、工事番号入力・表示欄41、工事形態入力・表示欄42、顧客名入力・表示欄43、工事名入力・表示欄44、工期開始日入力・表示欄45及び工期終了日入力・表示欄46に必要なデータが入力され、さらに、売価入力・表示欄48に工事の受注額(請負額)である売価(P)が入力されるとともに、目標利益入力・表示欄49に目標利益(M)が入力されるに伴い、画像生成手段31dは、入力された各データを、収支管理表画面40における対応する欄に表示させる。
【0037】
<S2:データ取得工程>
取得手段31aは、目標利益入力・表示欄49に入力された目標利益(M)を演算に必要なデータとして取得するとともに、工期開始日入力・表示欄45に入力された工期開始日と、工期終了日入力・表示欄46に入力された工期終了日との差分に基づく工期(D)を演算に必要なデータとして取得する。例えば、図2における工事番号「1」の案件について、取得手段31aは、目標利益入力・表示欄49に入力された金額「42,938,000」を演算に必要な目標利益(M)として取得する。また、取得手段31aは、工期開始日入力・表示欄45に入力された工期開始日「2021.03.26」と、工期終了日入力・表示欄46に入力された工期終了日「2022.02.28」との差分に基づいて、工事に必要な日数(工数)としての「340」を演算に必要な工期(D)として取得する(図2における工事番号「2」以降の案件についても同様。)。
【0038】
<S3:工期表示工程>
画像生成手段31dは、取得した工期(D)のデータを、収支管理表画面40における工期表示欄47に表示させる(図2における工事番号「2」以降の案件についても同様。)。
【0039】
<S4:1日あたりの目標利益の算出・表示工程>
算出手段31bは、ステップS2において取得した目標利益(M)と工期(D)とに基づいて、1日あたりの目標利益(M/D)を算出する。画像生成手段31dは、算出結果を収支管理表画面40における1日あたりの目標利益表示欄50に表示させる。例えば、図2における工事番号「1」の案件について、算出手段31bは、目標利益(M)の金額「42,938,000」と、工期(D)の日数「340」とに基づいて、1日あたりの目標利益(42,938,000/340)を算出する。画像生成手段31dは、算出結果(126,288)を収支管理表画面40における1日あたりの目標利益表示欄50に表示させる(図2における工事番号「2」以降の案件についても同様。)。
【0040】
<S5:当月分の目標利益等の算出・表示工程>
算出手段31bは、所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)、本例の場合、当月(月次決算を行う対象となる月度であり、本例では8月度とする。)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)を算出する。すなわち、算出手段31bは、ステップS4において算出された1日あたりの目標利益(M/D)と、当月の期間日数である当月工数(T)とに基づいて、当月分の目標利益(〔M/D〕・T)を算出する。画像生成手段31dは、算出結果を収支管理表画面40における当月分目標利益表示欄53に表示させる。例えば、図2における工事番号「1」の案件について、算出手段31bは、1日あたりの目標利益(M/D)の金額「126,288(計算上は42,938,000/340≒126,288.235)」と、当月(8月度)工数(T)の日数「31」とに基づいて、当月分(8月度)の目標利益(126,288.235×31)を算出する。画像生成手段31dは、算出結果(≒3,914,935)を収支管理表画面40における当月分目標利益表示欄53に表示させる(図2における工事番号「2」以降の案件についても同様。)。
【0041】
こうして、取得手段31aによって取得された、受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータに基づいて、所定期間(T)あたり、本例の場合、当月(8月度)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)が算出手段31bによって算出され、算出された当月分の目標利益(〔M/D〕・T)が画像生成手段31dによりディスプレイ部15によって表示されるので、1ヶ月あたりの目標利益が具体的に可視化されることによって8月度において達成すべき利益を正確に把握することができる。これにより、過去の完了工事の実績の有無に関わらず、受注から完了に至るまでの工事の進行過程において、工事毎に予定された利益が確保されているかを的確に把握することができ、これによってきめ細かな採算管理を行うことができる。従って、経営判断の早期化が可能となり、健全な経営に寄与できる。
【0042】
さらに、図2における工事番号「1」の案件について、算出手段31bは、当月売価(169,000,000/340×31)を算出する。画像生成手段31dは、算出結果(≒15,408,824)を当月分売価表示欄52に表示させる。図2における工事番号「2」以降の案件についても、同様に、当月分売価を算出し、当月分売価表示欄52に表示させる。
【0043】
図2における工事番号「1」の案件について、算出手段31bは、当月までの累計工数(220)を算出する。画像生成手段31dは、算出結果(220)を当月までの累計工数表示欄54に表示させる。図2における工事番号「2」以降の案件についても、同様に、当月までの累計工数を算出し、当月までの累計工数表示欄54に表示させる。
【0044】
図2における工事番号「1」の案件について、算出手段31bは、当月までの累計売価(169,000,000/340×220)を算出する。画像生成手段31dは、算出結果(≒109,352,941)を当月までの累計売価表示欄55に表示させる。図2における工事番号「2」以降の案件についても、同様に、当月までの累計売価を算出し、当月までの累計売価表示欄55に表示させる。
【0045】
図2における工事番号「1」の案件について、算出手段31bは、当月までの累計目標利益(42,938,000/340×220)を算出する。画像生成手段31dは、算出結果(≒27,783,412)を当月までの累計目標利益表示欄56に表示させる。図2における工事番号「2」以降の案件についても、同様に、当月までの累計目標利益を算出し、当月までの累計目標利益表示欄56に表示させる。
【0046】
図2における各表示欄は、一行に並べて表示されているので、受注した工事ごとに、工期(D)、売価(P)、目標利益(M)、1日あたりの目標利益(M/D)、当月工数(T)、当月分売価、当月分目標利益(〔M/D〕・T)、当月までの累計工数、当月までの累計売価、当月までの累計目標利益が整理された情報として、視覚的に把握し易くなり、複数の工事についてそれら目標利益(M)等の情報が並べられたテーブルデータにおいて、閲覧、比較等を容易に行うことができる。
【0047】
<収益構造図式化画面>
図4は、ディスプレイ部15に表示される収益構造図式化画面60の一例を示す図である。図4に示す収益構造図式化画面60は、企業の収益構造を図式化したものであり、企業の収益がどのように変化するかを俯瞰的に把握し、企業戦略を立てるために活用するものである。収益構造図式化画面60に表れるブロックパズル状の図形は、売上(PQ)を示す第一ブロック61、売上原価(VQ)を示す第二ブロック62、限界利益(MQ)を示す第三ブロック63、固定費(F)を示す第四ブロック64、経常利益(G)を示す第五ブロック65の合計5つのブロックから構成されている。収益構造図式化画面60によれば、収益構造を可視化することによって収益状態を直観的に理解することができるとともに、収益構造の変化を容易に把握することができる。また、売上(PQ)、売上原価(VQ)、限界利益(MQ)、固定費(F)が変化したときに、どのように経常利益(G)が変化するかというシミュレーションを容易に行うことができ、損益計画の立案に活用することができる。こうして、企業の損益状況を把握することにより、目標売上高、目標利益の達成のための立案計画をスムーズに進めることができる。なお、「Q」は、「数量」を表す。
【0048】
<経営判断指標画面>
図5は、ディスプレイ部15に表示される経営判断指標画面70の一例を示す図である。図5に示す経営判断指標画面70において、上半分の左側部分には、収益構造図式化画面60における収益構造図が変形して各ブロック61~65が表の項目欄として表れている。上半分の中央部分には、各ブロック61~65に表示された売上(PQ)、売上原価(VQ)、限界利益(MQ)、固定費(F)、経常利益(G)の各金額及び割合(%)が表示されている。上半分の右側部分には、固定費(F)が、5つの要素、人件費(F1)、経費(F2)、金利(F3)、戦略費(F4)及び減価償却費(F5)に分解されて、それぞれの金額及び割合(%)が表示されている。なお、戦略費(F4)とは、本発明においては、現在の支出の効果が将来において現われると予想される経費とする。ここで、ブロック61の売上(PQ)の入力・表示欄に記載されている金額(400,418,785円)は、図2における複数の工事の売価入力・表示欄48に記載されている売価(P)の合計金額である。ブロック62の売上原価(VQ)の入力・表示欄に記載されている金額(312,610,126円)は、図2における複数の工事の図2において表示が省略されている売上原価(V)の合計金額である。ブロック63の限界利益(MQ)の入力・表示欄に記載されている金額(87,808,659円)は、売上(PQ)と売上原価(VQ)との差分である。
【0049】
<経営判断指標画面に入力されたデータに基づく演算処理の手順>
図6は、入力データに基づく演算処理の手順を示すフローチャート(2)である。
【0050】
<S11:入力データ表示工程>
画像生成手段31dは、経営判断指標画面70における、各ブロック61~65に対応する売上(PQ)、売上原価(VQ)、限界利益(MQ)、固定費(F、F1~F5)及び経常利益(G)の各欄に、入力されたデータ(金額及び割合)を表示させる。
【0051】
<S12:データ取得工程>
取得手段31aは、売上(PQ)、売上原価(VQ)、限界利益(MQ)、固定費(F、F1~F5)及び経常利益(G)の各欄に入力された各金額を演算に必要なデータとして取得する。
【0052】
<S13:経営判断指標の算出・表示工程>
算出手段31bは、ステップS12において取得した売上(PQ)、売上原価(VQ)、限界利益(MQ)、固定費(F、F1~F5)及び経常利益(G)の各欄に入力された各金額に基づいて、経営判断指標、ここでは、経営安全率(G/MQ)、損益分岐点比率(F/MQ)、限界利益率(MQ/PQ)、原価率(VQ/PQ)及び労働分配率(F1/MQ)を算出する。画像生成手段31dは、算出結果を対応する表示欄に表示させる。図5に示す例では、経営安全率(39.4%)、損益分岐点比率(60.64%)、限界利益率(21.9%)、原価率(78.1%)及び労働分配率(44.16%)を対応する表示欄に表示させる。
【0053】
<S14:判定及び判定結果表示工程>
判定手段31cは、ステップS13において算出された各経営判断指標に基づいて経営状況を判定する。画像生成手段31dは、判定結果を図5における経営判断指標画面70の各経営判断指標に対応する欄に表示させる。本例では、判定結果が「優」であれば、星マークの数が三つであり、判定結果が「良」であれば、星マークの数が二つであり、判定結果が「可」であれば、星マークの数が一つである。
【0054】
判定結果は、星マークの数以外に、記号によっても示され、この場合、例えば、損益分岐点比率の判定基準は、以下のように設定される(他の経営判断指標についても同様に判定基準を設定可能)。
S : ~59 超優良企業
A :60~79 優良企業
B :80~89 普通企業
C :90~99 危険水域
D :100~199 赤字企業
DD :200~ 倒産路線
【0055】
図5に示す例では、損益分岐点比率に関して、「優良企業」との判定結果が示されている。
【0056】
こうして、収益性の指標である損益分岐点比率が算出され、算出された損益分岐点比率に基づいて経営状況が判定されるので、現在の経営状況を正確に知ることができる。これにより、損益分岐点比率が比較的高い場合には、売上増加と同時に固定費削減の意識を根付かせるような対策を講じ、損益分岐点比率が比較的低く、損益分岐点比率と補数の関係にある安全余裕率が比較的高い場合であれば、現在の損益分岐点比率を維持していくことと、さらに利益を増すための設備投資や人員増加等の事業拡大を図るなど、適切な経営判断をするための有益な情報を得ることができる。
【0057】
また、人件費(F1)と限界利益(MQ)との比率である労働分配率(F1/MQ)が算出される。これにより、利益がどのくらい人件費として分配されたのかを正確に知ることができる。労働分配率が比較的高い場合には、人件費に見合う利益が生み出せておらず、人件費に資金繰りが圧迫されて経営難に陥る前に、何らかの対策を講ずる必要があると気付くことができる。労働分配率が比較的低い場合には、経営的に安定していると考えられるが、人件費削減により労働者のモチベーションが低下しないように配慮する必要があると気付ことができる。こうして、経営の安定化と労働者のモチベーションとの調和を図ることができる。
【0058】
さらに、損益分岐点比率(F/MQ)は、戦略費(F4)を含む固定費(F)に基づいて算出される。このようにして算出された損益分岐点比率(F/MQ)によって適切な経営判断をすることにより、経営の安定化を図りつつ、企業の成長を促すことができる。
【0059】
<限界利益(MQ)等の推移>
図7は、限界利益(MQ)、固定費(F)及び経常利益(G)の推移の一例を示すグラフである。図7において、縦軸は金額(単位:億円)を示し、横軸は年度を示す。図7のグラフは、会計処理装置10を用いて本発明の会計処理方法を実施した企業の限界利益(MQ)、固定費(F)及び経常利益(G)の過去13年間の変化を示している。このように、限界利益(MQ)、固定費(F)及び経常利益(G)をグラフ化することにより、限界利益(MQ)、固定費(F)及び経常利益(G)の変化を容易に把握することができる。図7に示す例では、経常利益(G)が順調に増加しており、利益優先の企業体質に転換されたことが分かる。
【0060】
以上、本発明の会計処理装置、会計処理方法、及び会計処理プログラムについて、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0061】
上記実施形態においては、月次決算として、8月度決算を例示したため、所定期間(T)として31日に設定する例を示した。1月度決算、3、5、7、10、12月度決算の場合も同様に、所定期間(T)として31日に設定される。2月度決算の場合は所定期間(T)として28日又は29日に設定され、4、6、9、11月度決算の場合は所定期間(T)として30日に設定される。また、月次決算に限定されるものではなく、四半期決算や、半期決算であってもよい。その他、所定期間(T)としては、5日、10日、15日、20日等、任意の日数に設定することができる。
【0062】
上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0063】
本発明の会計処理プログラムを含むコンピュータプログラムは、会計処理装置10に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよい。この場合、利用者がネットワークを介してアプリケーションプログラムサーバにアクセスすることで利用可能となるいわゆるクラウドサービスの形態であってもよいし、利用者が必要に応じてアプリケーションプログラムの全部または一部をダウンロードする形態とすることも可能である。また、本発明の会計処理プログラムを含むコンピュータプログラムを、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、プログラム製品として構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の会計処理装置、会計処理方法、及び会計処理プログラムは、例えば、建築工事や電気工事、水道工事、ITサービス業等のような、受注から完了(竣工)までに比較的長期間を要する工事等の進行過程における利益を管理する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 会計処理装置
15 ディスプレイ部(表示手段)
31a 取得手段
31b 算出手段
31c 判定手段
31d 画像生成手段(表示手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータを取得する取得手段と、
前記データに基づいて所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)を算出する算出手段と、
前記目標利益(〔M/D〕・T)を表示する表示手段と、
を備える会計処理装置であって、
前記表示手段は、受注した工事ごとに、前記目標利益(M)、前記工期(D)、前記所定期間(T)及び前記目標利益(〔M/D〕・T)を一行に並べて表示する会計処理装置
【請求項2】
コンピュータにより会計処理を行う会計処理方法であって、
受注した工事に関する目標利益(M)及び工期(D)を含むデータを取得する取得工程と、
前記データに基づいて所定期間(T)あたりの目標利益(〔M/D〕・T)を算出する算出工程と、
前記目標利益(〔M/D〕・T)を表示する表示工程と、
を包含する会計処理方法であって、
前記表示工程において、受注した工事ごとに、前記目標利益(M)、前記工期(D)、前記所定期間(T)及び前記目標利益(〔M/D〕・T)を一行に並べて表示する会計処理方法
【請求項3】
コンピュータに請求項2に記載の会計処理方法を実行させるための会計処理プログラム。