(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114175
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】アンテナ装置、システム、通信装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20230809BHJP
H04B 1/3822 20150101ALI20230809BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20230809BHJP
H01Q 19/12 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H04B1/3822
H01Q21/06
H01Q19/12
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016376
(22)【出願日】2022-02-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴寛
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J046
5K011
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA08
5J021AA04
5J021AA05
5J021BA01
5J021HA05
5J021HA10
5J046AA05
5J046AA12
5J046AB03
5J046MA09
5K011AA06
5K011DA02
5K011JA01
5K011KA04
5K011KA13
5K011KA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トンネル内でも通信品質が劣化しないアンテナ装置、システム、通信装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】通信装置200と、アンテナユニット400と、通信装置200及びアンテナユニット400を搭載した移動体(車両100)と、を備えるシステムにおいて、アンテナユニットは、複数の受信アンテナ412を有するアンテナアレー410を備える。複数の受信アンテナが、通信相手の送信アンテナと複数の受信アンテナのうちの第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と、送信アンテナの位置との、水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の送信アンテナと反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されるアンテナ装置であって、
複数の受信アンテナを有するアンテナアレーを備え、
前記複数の受信アンテナが、通信相手の送信アンテナと前記複数の受信アンテナのうちの第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置された、アンテナ装置。
【請求項2】
前記反射体はトンネル内壁であり、
前記正規反射位置は、複数のトンネルのうちのいずれかのトンネルの寸法に基づいて算出される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記反射体はトンネル内壁であり、
前記正規反射位置は、複数のトンネルの寸法の平均値に基づいて算出される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記移動体は車両であり、
水平方向の前記反射体がトンネル内壁であり、
垂直方向の前記反射体が路面であり、
前記複数の受信アンテナが、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との水平成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記トンネル内壁との水平方向の距離とし、前記通信相手の前記送信アンテナと路面との垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記路面との垂直方向の距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記移動体は車両であり、
水平方向の前記反射体が前記移動体の側方に位置する他の車両であり、
垂直方向の前記反射体がトンネル内壁であり、
前記複数の受信アンテナが、前記通信相手の前記送信アンテナと前記他の車両との水平成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記他の車両との水平方向の距離とし、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記トンネル内壁との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数の受信アンテナは、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離とし、各成分の最頻値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記複数の受信アンテナは、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離とし、各成分の中央値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記複数の受信アンテナは、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置(Xrefi、Yrefi)と、前記送信アンテナの位置(XTX0、YTX0)の水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離(|Xrefi-XTX0|、|Yrefi-YTX0|)とし、前記移動体と前記通信相手との距離及び使用周波数を用いて算出される前記変動周期(λd/2|Xrefi-XTX0|、λd/2|Yrefi-YTX0|)が安定した領域の値(λd/2|Xref0-XTX0|、λd/2|Yref0-YTX0|)を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍((2j+1)λd/2|Xref0-XTX0|、(2k+1)λd/2|Yref0-YTX0|)の距離ずらして配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
移動体に搭載されるアンテナ装置であって、
複数の送信アンテナを有するアンテナアレーを備え、
前記複数の送信アンテナが、通信相手の受信アンテナと前記複数の送信アンテナのうちの第1の送信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と前記受信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記受信アンテナと前記反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置された、アンテナ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のアンテナ装置と、
前記移動体と
を備えるシステム。
【請求項11】
移動体に搭載される通信装置であって、
複数の受信アンテナを有するアンテナアレーと、
前記通信装置が搭載された移動体と、前記通信装置の通信相手が搭載された移動体の周囲の環境を特定する周囲環境特定部であって、前記移動体と前記通信相手との間の反射体を特定する周囲環境特定部と、
前記反射体上の複数の正規反射位置と前記通信相手の送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されるように前記複数の受信アンテナの位置を制御するアンテナ制御部と
を備える通信装置。
【請求項12】
移動体に搭載される通信装置であって、
複数の送信アンテナを有するアンテナアレーと、
前記通信装置が搭載された移動体と、前記通信装置の通信相手が搭載された移動体の周囲の環境を特定する周囲環境特定部であって、前記移動体と前記通信相手との間の反射体を特定する周囲環境特定部と、
前記反射体上の複数の正規反射位置と前記通信相手の受信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記受信アンテナと前記反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されるように前記複数の送信アンテナの位置を制御するアンテナ制御部と
を備える通信装置。
【請求項13】
コンピュータを、請求項11又は12に記載の通信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置、システム、通信装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、車車間通信における空間ダイバーシティの有効性について記載されている。非特許文献2には、空間ダイバーシティのアンテナ間隔は見通し外通信を前提とし、移動局側で半波長以上、基地局側で10波長以上離せばよいことが記載されている。
[先行技術文献]
[非特許文献]
[非特許文献1]加藤明人、佐藤勝善、藤瀬雅行"ミリ波車車間通信技術-電波伝搬特性-" 通信総合研究所季報, vol.47, no.4, Dec. 2001
[非特許文献2]唐沢好男、"ディジタル移動通信の電波伝搬基礎"コロナ社,改訂版第1刷, Mar. 2016
【発明の概要】
【0003】
本発明の一実施態様によれば、アンテナ装置が提供される。前記アンテナ装置は、移動体に搭載されてよい。前記アンテナ装置は、複数の受信アンテナを有するアンテナアレーを備えてよい。前記複数の受信アンテナは、通信相手の送信アンテナと前記複数の受信アンテナのうちの第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されていてよい。
【0004】
前記反射体はトンネル内壁であってよく、前記正規反射位置は、複数のトンネルのうちのいずれかのトンネルの寸法に基づいて算出されてよい。前記反射体はトンネル内壁であってよく、前記正規反射位置は、複数のトンネルの寸法の平均値に基づいて算出されてよい。前記移動体は車両であってよく、水平方向の前記反射体がトンネル内壁であってよく、垂直方向の前記反射体が路面であってよく、前記複数の受信アンテナが、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との水平成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記トンネル内壁との水平方向の距離とし、前記通信相手の前記送信アンテナと路面との垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記路面との垂直方向の距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されていてよい。前記移動体は車両であってよく、水平方向の前記反射体が前記移動体の側方に位置する他の車両であってよく、垂直方向の前記反射体がトンネル内壁であってよく、前記複数の受信アンテナが、前記通信相手の前記送信アンテナと前記他の車両との水平成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記他の車両との水平方向の距離とし、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記トンネル内壁との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されていてよい。
【0005】
前記複数の受信アンテナは、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離とし、各成分の最頻値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されていてよい。前記複数の受信アンテナは、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離とし、各成分の中央値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されていてよい。前記複数の受信アンテナは、前記通信相手の前記送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置(Xrefi、Yrefi)と、前記送信アンテナの位置(XTX0、YTX0)の水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離(|Xrefi-XTX0|、|Yrefi-YTX0|)とし、前記移動体と前記通信相手との距離及び使用周波数を用いて算出される前記変動周期(λd/2|Xrefi-XTX0|、λd/2|Yrefi-YTX0|)が安定した領域の値(λd/2|Xref0-XTX0|、λd/2|Yref0-YTX0|)を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍((2j+1)λd/2|Xref0-XTX0|、(2k+1)λd/2|Yref0-YTX0|)の距離ずらして配置されていてよい。
【0006】
本発明の一実施態様によれば、アンテナ装置が提供される。前記アンテナ装置は、移動体に搭載されてよい。前記アンテナ装置は、複数の送信アンテナを有するアンテナアレーを備えてよい。前記複数の送信アンテナは、通信相手の受信アンテナと前記複数の送信アンテナのうちの第1の送信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と前記受信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記受信アンテナと前記反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されてよい。
【0007】
本発明の一実施態様によれば、前記アンテナ装置と、前記移動体とを備えるシステムが提供される。
【0008】
本発明の一実施態様によれば、通信装置が提供される。前記通信装置は、移動体に搭載されてよい。前記通信装置は、複数の受信アンテナを有するアンテナアレーを備えてよい。前記通信装置は、前記通信装置が搭載された移動体と、前記通信装置の通信相手が搭載された移動体の周囲の環境を特定する周囲環境特定部であって、前記移動体と前記通信相手との間の反射体を特定する周囲環境特定部を備えてよい。前記通信装置は、前記反射体上の複数の正規反射位置と前記送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記送信アンテナと前記反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されるように前記複数の受信アンテナの位置を制御するアンテナ制御部を備えてよい。
【0009】
本発明の一実施態様によれば、通信装置が提供される。前記通信装置は、移動体に搭載されてよい。前記通信装置は、複数の送信アンテナを有するアンテナアレーを備えてよい。前記通信装置は、前記通信装置が搭載された移動体と、前記通信装置の通信相手が搭載された移動体の周囲の環境を特定する周囲環境特定部であって、前記移動体と前記通信相手との間の反射体を特定する周囲環境特定部を備えてよい。前記通信装置は、前記反射体上の複数の正規反射位置と前記受信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の前記受信アンテナと前記反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されるように前記複数の送信アンテナの位置を制御するアンテナ制御部を備えてよい。
【0010】
本発明の一実施態様によれば、コンピュータを、前記通信装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【0011】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】反射体が路面及び側方反射体等である場合における送信アンテナ-反射体間距離について説明するための説明図である。
【
図4】反射体がトンネルである場合における送信アンテナ-反射体間距離について説明するための説明図である。
【
図5】アンテナユニット400における複数のアンテナ412の配置について説明するための説明図である。
【
図6】アンテナユニット400における複数のアンテナ412の配置について説明するための説明図である。
【
図7】受信アンテナ-トンネル中心内壁間距離と水平方向の電波の変動周期との関係を説明するための説明図である。
【
図8】受信アンテナ高と垂直方向の電波の変動周期との関係を説明するための説明図である。
【
図9】受信アンテナ高と垂直方向の電波の変動周期との関係を説明するための説明図である。
【
図10】正規反射点及び最頻値の決定方法について説明するための説明図である。
【
図11】フレネルゾーンを考慮した場合の送信アンテナ-反射体間距離について説明するための説明図である。
【
図12】長周期レベル変動502、短周期レベル変動504、及び合成波レベル変動506の一例を概略的に示す。
【
図13】長周期レベル変動502の半周期に合わせてアンテナ412を配置した場合の、合成波レベル変動506の受信レベルを説明するための説明図である。
【
図14】通信装置200の他の一例を概略的に示す。
【
図17】通信装置200として機能するコンピュータ1200のハードウェア構成の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
車車間通信において空間ダイバーシティが有効であることが示されている(非特許文献1)が、最適なアンテナアレー構成法については言及されていない。一般的に移動通信における空間ダイバーシティのアンテナ間隔は見通し外通信を前提とし、移動局側で半波長以上、基地局側で10波長以上離せばよいとされている(非特許文献2)。車車間通信は、見通し内通信となるが、見通し内通信の場合、路面及び側方反射体(側壁、側方車両等)等の反射体からの反射波の干渉により、受信点がある路面に垂直な平面内で反射面と垂直となる方向(路面の場合は上方向)に周期的にレベルが変動する。反射体が路面や側方反射体の場合、受信アンテナを先行車背面のどの位置に設置しても送信アンテナ-反射体間距離が一定となりレベル変動周期も一定となるため、最適な受信アンテナ間隔(変動周期の半周期の奇数倍)とすることでレベルが低下するヌル点を避け、通信品質を向上することができる。
【0014】
しかしながら、反射体が例えばトンネルの場合、送信アンテナ位置とトンネル内壁上の正規反射位置間の距離を送信アンテナ-反射体間距離と仮定すると、切断面が円形となることから受信アンテナを設置する位置に伴い送信アンテナ-反射体間距離が変化し、レベル変動周期も変化する。ゆえに、最適な受信アンテナ間隔を決定できず、ダイバーシティで用いる全てのアンテナ位置で塗る点となり通信品質が劣化してしまう場合があった。本実施形態に係るシステム10は、トンネル内等の環境をも考慮したアンテナアレー構成を備える。
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1及び
図2は、本実施形態に係るシステム10の一例を概略的に示す。システム10は、通信装置200と、アンテナユニット400と、通信装置200及びアンテナユニット400を搭載した移動体とを備える。
図1及び
図2における車両100は、移動体の一例である。車両100は、自動車であってよい。
【0017】
図1は、車両100の正面を概略的に示し、
図2は、車両100の背面を概略的に示す。車両100の正面には、アンテナ300が配置されている。車両100の背面には、アンテナユニット400が配置されている。
【0018】
アンテナユニット400は、アンテナアレーを備える。
図2では、アンテナユニット400が、複数のアンテナ412によって構成されるアンテナアレー410を有する場合を例示している。アンテナユニット400は、アンテナ装置の一例であってよい。アンテナユニット400を備える通信装置200が、アンテナ装置の一例であってもよい。
【0019】
通信装置200は、アンテナ300及びアンテナユニット400を用いて、通信装置200が搭載されている車両100(自車と記載する場合がある。)とは異なる他の車両100に搭載された通信装置200と通信する。通信装置200は、例えば、アンテナ300を用いて、自車の前方を走行する他の車両100にデータを送信し、アンテナユニット400を用いて、自車の後方を走行する他の車両100からデータを受信する。アンテナ412は、受信アンテナの一例であってよい。アンテナ300は、送信アンテナの一例であってよい。
【0020】
図3は、反射体が路面及び側方反射体等である場合における送信アンテナ-反射体間距離について説明するための説明図である。反射体が路面である場合、
図3の横方向が現実の高さ方向となるが、送信アンテナと路面との距離が一定である状況において、受信アンテナと路面との距離が変化しても、送信アンテナ-反射体間距離は一定となる。反射体が側方反射体(例えば、高速道路の側壁)である場合、
図3の横方向が現実の横方向となるが、送信アンテナと側方反射体との距離が一定である状況において、受信アンテナと側方反射体との距離が変化しても、送信アンテナ-反射体間距離は一定となる。このため、送信アンテナが送信し、受信アンテナが受信する、反射体による反射波の変動周期も一定となる。
【0021】
図4は、反射体がトンネルである場合における送信アンテナ-反射体間距離について説明するための説明図である。
図4は、後方車両の送信アンテナと、前方車両の受信アンテナの位置関係を概略的に示している。ここでは、送信アンテナ位置とトンネル内壁上の正規反射位置間の距離を、送信アンテナ-反射体間距離と仮定する。
【0022】
図4に例示するように、送信アンテナとトンネル内壁との距離が一定である状況において、受信アンテナとトンネル内壁との距離が変化すると、送信アンテナ-反射体間距離も変化する。このため、このため、送信アンテナが送信し、受信アンテナが受信する、反射体による反射波の変動周期も変化する。
【0023】
図5及び
図6は、アンテナユニット400における複数のアンテナ412の配置について説明するための説明図である。本例において、送信アンテナと受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置を(X
refi、Y
refi)(i=1、2、・・・)と記載する。本例において、送信アンテナ位置を(X
TX0、Y
TX0)と記載する。
【0024】
本実施形態に係る複数のアンテナ412は、通信相手の送信アンテナと、複数のアンテナ412のうちのいずれかのアンテナ412(第1の受信アンテナ412と記載する場合がある。)との間の反射体上の複数の正規反射位置と送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の送信アンテナと反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置される。本例において、車間距離、使用周波数の波長とともに算出される変動周期(λd/2|Xrefi-XTX0|、λd/2|Yrefi-YTX0|)が安定した領域の値を、(λd/2|Xref0-XTX0|、λd/2|Yref0-YTX0|)と記載する。
【0025】
具体的に、複数のアンテナ412は、通信相手の送信アンテナと第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置(Xrefi、Yrefi)と、当該送信アンテナの位置(XTX0、YTX0)の水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナと反射体との距離(|Xrefi-XTX0|、|Yrefi-YTX0|)とし、車両100と通信相手との距離及び使用周波数を用いて算出される変動周期(λd/2|Xrefi-XTX0|、λd/2|Yrefi-YTX0|)が安定した領域の値(λd/2|Xref0-XTX0|、λd/2|Yref0-YTX0|)を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍((2j+1)λd/2|Xref0-XTX0|、(2k+1)λd/2|Yref0-YTX0|)(j、k=0、1、2・・・)の距離ずらして配置されてよい。
【0026】
例えば、複数のアンテナ412は、当該反射体が、車両100が走行することが想定されるトンネルの内壁であるものとして算出した距離、ずらして配置される。これにより、車両100がトンネル内を走行した場合の、通信品質を向上することができる。
【0027】
上述の正規反射位置は、現存する複数のトンネルのうちのいずれかのトンネルの寸法に基づいて算出されてよい。正規反射位置は、現存する複数のトンネルの寸法の平均値に基づいて算出されてもよい。正規反射位置は、トンネルの寸法として理論的に設定された寸法に基づいて算出されてもよい
【0028】
なお、複数のアンテナ412は、水平方向及び垂直方向のいずれかに、トンネルよりも近接した反射体が存在することを想定して、ずらして配置されてもよい。水平方向のこのような反射体の例として、車両100の側方を走行する側方車や、側壁等が挙げられる。垂直方向のこのような反射体の例として、路面等が挙げられる。本例において、このような近接反射体の水平成分をXnearと記載し、垂直成分をYnearと記載する。
【0029】
例えば、複数のアンテナ412は、水平方向の反射体をトンネル内壁とし、垂直方向の反射体を路面として算出した距離、ずらして配置されてもよい。例えば、複数のアンテナ412は、通信相手の送信アンテナと第1の受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と当該送信アンテナの位置との水平成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナと当該トンネル内壁との水平方向の距離とし、当該送信アンテナと路面との垂直成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナと路面との垂直方向の距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されてよい。この場合、水平方向及び垂直方向の反射体をトンネル内壁とする場合に対して、送信アンテナ-反射体間距離を送信アンテナ-近接反射体間距離|Xnear-XTX0|とし、各成分の変動周期をλd/2|Xnear-XTX0|としてよい。これにより、垂直方向に最も近接する反射体がトンネル内壁ではなく、路面となるような位置にアンテナユニット400が設置される場合において、通信品質向上に貢献することができる。
【0030】
例えば、複数のアンテナ412は、水平方向の反射体を、車両100の側方に位置する他の車とし、垂直方向の反射体をトンネル内壁として算出した距離、ずらして配置されてもよい。例えば、複数のアンテナ412は、通信相手の送信アンテナと他の車両との水平成分毎の差分を、各成分の送信アンテナと他の車両との水平方向の距離とし、当該送信アンテナと第1の受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と当該送信アンテナの位置との垂直成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナとトンネル内壁との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されてよい。この場合、水平方向及び垂直方向の反射体をトンネル内壁とする場合に対して、送信アンテナ-反射体間距離を送信アンテナ-近接反射体間距離|Ynear-YTX0|とし、各成分の変動周期をλd/2|Ynear-YTX0|としてよい。
【0031】
図7は、受信アンテナ-トンネル中心内壁間距離と水平方向の電波の変動周期との関係を説明するための説明図である。
図7に示すグラフは、半径5.6mのトンネル内で、送信アンテナ位置を固定とし、受信アンテナの水平方向の道路端からの距離を変化させた場合における、受信アンテナが受信する反射波の変動周期の変化を示す。
【0032】
図8及び
図9は、受信アンテナ高と垂直方向の電波の変動周期との関係を説明するための説明図である。
図8は、近接反射体(路面)を考慮しない場合を示し、
図9は、近接反射体(路面)を考慮した場合を示す。グラフは、半径5.6mのトンネル内で、送信アンテナ位置を固定とし、受信アンテナの高さを変化させた場合における、受信アンテナが受信する反射波の変動周期の変化を示す。
【0033】
変動周期が安定した領域の値は、各成分の最頻値であってよい。すなわち、複数のアンテナ412は、通信相手の送信アンテナと第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と当該送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナと当該反射体との距離とし、各成分の最頻値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されてよい。
【0034】
また、変動周期が安定した値は、各成分の中央値であってもよい。すなわち、複数のアンテナ412は、通信相手の送信アンテナと第1の受信アンテナとの間の反射体上の複数の正規反射位置と当該送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナと反射体との距離とし、各成分の中央値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されてよい。特に各成分の最頻値の度数が予め定められた割合よりも少ない場合に、各成分の中央値を用いたほうが望ましい場合がある。予め定められた割合の例として、15%程度が挙げられるが、各条件に合わせて実験的に求められてよい。
【0035】
図10は、正規反射点及び最頻値の決定方法について説明するための説明図である。ここでは、送信アンテナと受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置をRef
i(X
refi、Y
refi)と記載する。
【0036】
まず、トンネル中心を原点Oとし、原点Oと送信アンテナ中心の点TX0(XTX0、YTX0)、受信アンテナ中心の点RX0(XRX0、YRX0)を結ぶ直線と弧の交点TX1(XTX1、YTX1)、RX1(XRX1、YRX1)、及び原点に対象となる点TX2(XTX2、YTX2)、RX2(XRX2、YRX2)を算出する。
【0037】
次に、TX1とRX1、TX2とRX2とを結ぶ各直線L1i(Y=a1iX+b1i)に対して受信アンテナ中心の線対称となる点RX0i′(XRX0+Xi′、YRX0+Yi′)を算出する。ここで、a1iXRX0+b1i≧YRX0かつ(YRX0-b1i)/a1i≧XRX0の場合、Xi′=+mia1i、Yi′=+mi、a1iXRX0+b1i≧YRX0かつ(YRX0-b1i)/a1i<XRX0の場合、Xi′=-mia1i、Yi′=+mi、a1iXRX0+b1i<YRX0かつ(YRX0-b1i)/a1i≧XRX0の場合、Xi′=+mia1i、Yi′=-mi、a1iXRX0+b1i<YRX0かつ(YRX0-b1i)/a1i<XRX0の場合、Xi′=-mia1i、Yi′=-miであり、miは直線L1iと受信アンテナ中心RX0との距離である。
【0038】
次に、送信アンテナ中心TX0と点RX0i′を通る直線L2i(Y=a2iX+b2i)と直線L1iの交点Refi′(Xrefi′、Yrefi′)を算出する。次に、交点Refi′の値から反射点の角度θrefiを算出し、交点Refi′と原点Oを結ぶ直線とトンネル内壁との交点である正規反射位置Refi(Xrefi、Yrefi)を算出する。
【0039】
水平及び垂直の成分毎に、トンネル内における、受信アンテナ設置検討範囲に受信アンテナ中心があるとして、上記計算を繰り返し、算出したすべての送信アンテナ-反射体間距離から最頻値を抽出する。なお、最頻値に代えて、中央値を抽出してもよい。特に各成分の最頻値の度数が予め定められた割合よりも少ない場合に、各成分の中央値を用いたほうが望ましい場合がある。予め定められた割合の例として、15%程度が挙げられるが、各条件に合わせて実験的に求められてよい。
【0040】
図11は、フレネルゾーンを考慮した場合の送信アンテナ-反射体間距離について説明するための説明図である。見通し内通信においては、第一フレネルゾーンの60%以上が確保されていることが望まれる。
【0041】
反射体が路面や側壁等のような平面の場合、正規反射位置Refi(Xrefi、Yrefi)の上下に位置する第一フレネルゾーン端位置Refi′′(Xrefi′′、Yrefi′′)においても送信アンテナ-反射体間距離は同じ(Xrefi=Xrefi′′、Yrefi=Yrefi′′)となるが、反射体がトンネルのような曲面の場合、正規反射位置より第一フレネルゾーン端位置の方が、送信アンテナ-反射体間距離が近くなる(Xrefi>Xrefi′′、Yrefi>Yrefi′′)ことがある。
【0042】
そのため、上述した、複数のアンテナ412同士の距離を算出する場合において、Refi(Xrefi、Yrefi)をRefi′′(Xrefi′′、Yrefi′′)に置き換えて算出してもよい。なお、第一フレネルゾーン端位置を、フレネル半径100%ではなく、フレネル半径60%など任意の割合を乗じた位置としてもよい。
【0043】
図12は、長周期レベル変動502、短周期レベル変動504、及び合成波レベル変動506の一例を概略的に示す。
図13は、長周期レベル変動502の半周期に合わせてアンテナ412を配置した場合の、合成波レベル変動506の受信レベルを説明するための説明図である。
【0044】
各成分について、送信アンテナ-反射体間距離が異なる反射波や、反射体や正規反射点間で複数回反射する反射波が受信アンテナに到来する場合、
図12に例示するように、差異長周期L
maxの受信レベル変動を生じさせる反射波に対して、レベル差の小さい(例えば5dB以内)、異なる受信レベル変動を生じさせる反射波が合成されると、最長周期L
maxの受信レベル変動で極大となる点においてレベル低下が生じる。よって、最長周期L
maxの半周期の奇数倍(2p-1)L
max/2(p=1、2、・・・)でのアンテナダイバーシティ構成とすると、両アンテナともに受信レベルが低下し得る。
【0045】
合成波の細かな変動周期はレベル差の小さい異なる受信レベル変動を生じさせる反射波の最短周期Lminとなることから、最長周期Lmaxに基づく配置に加えて、最短周期Lminの半周期の奇数倍(2q-1)Lmin/2(q=1、2、・・・)で周囲にアンテナを配置するダイバーシティ構成とすると、全アンテナで同時にレベル低下することを防ぎ、通信品質の向上に貢献することができる。
【0046】
図14は、通信装置200の他の一例を概略的に示す。
図14に示す通信装置200は、アンテナ600と、アンテナユニット700とを用いた通信を実行する。アンテナ600は、例えば、アンテナ300と同様、車両100の前面に配置されてよい。アンテナユニット700は、例えば、アンテナユニット400と同様、車両100の背面に配置されてよい。アンテナアレー710は、複数のアンテナ712を含んでよい。
【0047】
通信装置200は、通信部202、アンテナ制御部204、及び周囲環境特定部206を備える。通信部202は、アンテナ600及びアンテナユニット700を用いた通信を実行する。また、通信部202は、通信装置200を搭載する車両100の制御装置と通信してよい。車両100の制御装置は、カーナビゲーションシステムを含んでよい。
【0048】
アンテナ制御部204は、アンテナアレー710を制御する。複数のアンテナ712は、位置が変更可能に構成されていてよい。複数のアンテナ712は、横方向に位置が変更可能に構成されていてよい。複数のアンテナ712は、縦方向に位置が変更可能に構成されていてよい。複数のアンテナ712は、横方向及び縦方向に位置が変更可能に構成されていてよい。
【0049】
周囲環境特定部206は、通信装置200を搭載した車両100と、通信装置200の通信相手が搭載された車両の周囲の環境を特定する。周囲環境特定部206は、例えば、車両100の制御装置から取得した、車両100が走行している位置の地図情報を用いて、周囲の環境を特定する。周囲環境特定部206は、例えば、車両100の制御装置から取得した、車両100の周囲を撮像した撮像画像を用いて、周囲の環境を特定する。周囲環境特定部206は、周囲の反射体の存在を特定してよい。反射体の例として、側壁、ビル及び住宅等の建物、他の車両、及びトンネル等が挙げられる。
【0050】
アンテナ制御部204は、周囲環境特定部206による特定結果に基づいて、複数のアンテナ712の位置を制御してよい。例えば、アンテナ制御部204は、複数のアンテナ412がデフォルトの位置に配置されている状態で車両100がトンネル内に入り、トンネル内壁が反射体となる場合に、反射体上の複数の正規反射位置と通信相手の送信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナと反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されるように複数の受信アンテナの位置を制御する。ずらす距離の計算は、事前に行っておいて、ずらす距離を保持しておくようにしてもよい。複数のアンテナ412のデフォルトの位置は、任意の手法で決定されてよい。
【0051】
アンテナ制御部204は、周囲環境特定部206による特定結果によって、水平方向に最も近接する反射体がトンネル内壁であり、垂直方向に最も近接する反射体が路面である場合、通信相手の送信アンテナと第1の受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と当該送信アンテナの位置との水平成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナと当該トンネル内壁との水平方向の距離とし、当該送信アンテナと路面との垂直成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナと路面との垂直方向の距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置するように複数のアンテナ412の位置を制御してよい。
【0052】
アンテナ制御部204は、周囲環境特定部206による特定結果によって、水平方向に最も近接する反射体が他の車両であり、垂直方向に最も近接する反射体がトンネル内壁である場合、通信相手の送信アンテナと他の車両との水平成分毎の差分を、各成分の送信アンテナと他の車両との水平方向の距離とし、当該送信アンテナと第1の受信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と当該送信アンテナの位置との垂直成分毎の差分を、各成分の当該送信アンテナとトンネル内壁との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置するように複数のアンテナ412の位置を制御してよい。
【0053】
上記実施形態では、送信アンテナが単独で、受信アンテナが複数である場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、送信・受信が入れ替わってもよい。すなわち、車両100は、送信用の、複数のアンテナを含むアンテナアレーを有するアンテナユニットと、受信用の1つのアンテナとを備えてもよい。
【0054】
図15及び
図16は、システム10の他の一例を概略的に示す。ここでは、
図1及び
図2に示すシステム10とは異なる点を主に説明する。システム10は、通信装置200と、アンテナユニット800と、通信装置200及びアンテナユニット800を搭載した移動体とを備える。
図15及び
図16における車両100は、移動体の一例である。
【0055】
図15は、車両100の正面を概略的に示し、
図16は、車両100の背面を概略的に示す。車両100の正面には、アンテナユニット800が配置されている。車両100の背面には、アンテナ900が配置されている。
【0056】
アンテナユニット800は、アンテナアレー810を備える。
図15では、アンテナユニット800が、複数のアンテナ812によって構成されるアンテナアレー810を有する場合を例示している。アンテナユニット800は、アンテナ装置の一例であってよい。アンテナユニット800を備える通信装置200が、アンテナ装置の一例であってもよい。
【0057】
通信装置200は、アンテナ900及びアンテナユニット800を用いて、通信装置200が搭載されている車両100(自車と記載する場合がある。)とは異なる他の車両100に搭載された通信装置200と通信する。通信装置200は、例えば、アンテナユニット800を用いて、自車の前方を走行する他の車両100にデータを送信し、アンテナ900を用いて、自車の後方を走行する他の車両100からデータを受信する。アンテナ812は、送信アンテナの一例であってよく、アンテナ900は、受信アンテナの一例であってよい。
【0058】
複数のアンテナ812は、通信相手の受信アンテナと複数のアンテナ812のうちの第1のアンテナ812との間の反射体上の複数の正規反射位置と当該受信アンテナの位置との水平成分及び垂直成分毎の差分を、各成分の当該受信アンテナと反射体との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されてよい。
【0059】
複数のアンテナ812は、水平方向の反射体をトンネル内壁とし、垂直方向の反射体を路面として算出した距離、ずらして配置されてもよい。例えば、複数のアンテナ812は、通信相手の受信アンテナと第1の送信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と当該受信アンテナの位置との水平成分毎の差分を、各成分の当該受信アンテナと当該トンネル内壁との水平方向の距離とし、当該受信アンテナと路面との垂直成分毎の差分を、各成分の当該受信アンテナと路面との垂直方向の距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されてよい。
【0060】
複数のアンテナ812は、水平方向の反射体を、車両100の側方に位置する他の車とし、垂直方向の反射体をトンネル内壁として算出した距離、ずらして配置されてもよい。例えば、複数のアンテナ812は、通信相手の受信アンテナと他の車両との水平成分毎の差分を、各成分の当該受信アンテナと他の車両との水平方向の距離とし、当該受信アンテナと第1の送信アンテナとの間のトンネル内壁上の複数の正規反射位置と当該受信アンテナの位置との垂直成分毎の差分を、各成分の当該受信アンテナとトンネル内壁との距離とし、変動周期が安定した領域の値を用いて、各成分の変動周期の半周期の奇数倍の距離ずらして配置されてよい。
【0061】
図17は、通信装置200として機能するコンピュータ1200のハードウェア構成の一例を概略的に示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200を、本実施形態に係る装置の1又は複数の「部」として機能させ、又はコンピュータ1200に、本実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、及び/又はコンピュータ1200に、本実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0062】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、及びグラフィックコントローラ1216を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、記憶装置1224、DVDドライブ、及びICカードドライブのような入出力ユニットを含み、それらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。DVDドライブは、DVD-ROMドライブ及びDVD-RAMドライブ等であってよい。記憶装置1224は、ハードディスクドライブ及びソリッドステートドライブ等であってよい。コンピュータ1200はまた、ROM1230及びキーボードのようなレガシの入出力ユニットを含み、それらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続されている。
【0063】
CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又はそれ自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示されるようにする。
【0064】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。記憶装置1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納する。DVDドライブは、プログラム又はデータをDVD-ROM等から読み取り、記憶装置1224に提供する。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込む。
【0065】
ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをUSBポート、パラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0066】
プログラムは、DVD-ROM又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもある記憶装置1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0067】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、記憶装置1224、DVD-ROM、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0068】
また、CPU1212は、記憶装置1224、DVDドライブ(DVD-ROM)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0069】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0070】
上で説明したプログラム又はソフトウエアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0071】
本実施形態におけるフローチャート及びブロック図におけるブロックは、オペレーションが実行されるプロセスの段階又はオペレーションを実行する役割を持つ装置の「部」を表わしてよい。特定の段階及び「部」が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、及び/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/又はアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)及び/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及びプログラマブルロジックアレイ(PLA)等のような、論理積、論理和、排他的論理和、否定論理積、否定論理和、及び他の論理演算、フリップフロップ、レジスタ、並びにメモリエレメントを含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0072】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0073】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0074】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路が、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を生成するために当該コンピュータ可読命令を実行すべく、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路に提供されてよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0075】
上記実施形態では、移動体の例として車両100を示したが、これに限らない。移動体の他の例として、鉄道車両及び無人航空機等が挙げられる。
【0076】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0077】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0078】
10 システム、100 車両、200 通信装置、202 通信部、204 アンテナ制御部、206 周囲環境特定部、300 アンテナ、400 アンテナユニット、410 アンテナアレー、412 アンテナ、502 長周期レベル変動、504 短周期レベル変動、506 合成波レベル変動、600 アンテナ、700 アンテナユニット、710 アンテナアレー、712 アンテナ、800 アンテナユニット、810 アンテナアレー、812 アンテナ、900 アンテナ、1200 コンピュータ、1210 ホストコントローラ、1212 CPU、1214 RAM、1216 グラフィックコントローラ、1218 ディスプレイデバイス、1220 入出力コントローラ、1222 通信インタフェース、1224 記憶装置、1230 ROM、1240 入出力チップ