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  • 特開-除細動器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114181
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】除細動器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
A61N1/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016386
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 優司
(72)【発明者】
【氏名】久野 良介
(72)【発明者】
【氏名】岩井 史
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ18
4C053JJ23
(57)【要約】
【課題】バッテリからの供給電流が小さいセルフテストにおいても、ユーザや管理者等がバッテリの異常を容易に認識できる除細動器を提供する。
【解決手段】除細動器は、プロセッサ103と、コンピュータ可読命令を記憶するメモリ104と、を備え、コンピュータ可読命令がプロセッサ103により実行されることにより、プロセッサ103は、除細動器に電力を供給するバッテリのバッテリ使用量を算出し、バッテリ使用量に関する情報をバッテリメモリ11Bに書き込み、バッテリの供給電力の電圧値が閾値以下である場合に、バッテリの残量がないことを示すバッテリ情報をバッテリメモリ11Bに書き込む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の心臓に除細動用の電気ショックを与えるように構成された除細動器であって、
前記除細動器は、
プロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
前記除細動器に電力を供給するバッテリのバッテリ使用量を算出し、
前記バッテリ使用量に関する情報をバッテリメモリに書き込み、
前記バッテリの供給電力の電圧値が閾値以下である場合に、前記バッテリの異常に関するバッテリ情報を前記バッテリメモリに書き込む、
除細動器。
【請求項2】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
第一電流を前記バッテリから前記除細動器に供給させることにより、前記電圧値を取得する第一セルフテストを実施し、
前記第一電流より電流量が大きな第二電流を前記バッテリから前記除細動器に供給させることにより、前記電圧値を取得する第二セルフテストを実施し、
前記第二セルフテストの実行時に、前記電圧値が前記閾値以下である場合に、前記バッテリの異常に関する前記バッテリ情報を前記バッテリメモリに書き込む、
請求項1に記載の除細動器。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第二セルフテストを実施する間隔が前記第一セルフテストを実施する間隔よりも長くなるように制御する、
請求項2に記載の除細動器。
【請求項4】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
前記バッテリメモリに前記バッテリの異常に関する前記バッテリ情報が記録されている場合には、前記電圧値によらずに、前記バッテリに異常があると判定する、
請求項2または3に記載の除細動器。
【請求項5】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
前記バッテリの供給電力の前記電圧値が前記閾値以下である場合に、前記バッテリ使用量が所定値以上であることを表す前記バッテリ情報を前記バッテリメモリに書き込む、
請求項2から4のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項6】
前記除細動器は、
前記バッテリから電力が供給され、電気ショックを与えるための電力を蓄えるコンデンサ、をさらに備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
前記第一セルフテストにおいて、前記バッテリから前記コンデンサに電力を供給せず、
前記第二セルフテストにおいて、前記バッテリから前記コンデンサに電気ショックを与えるための電力を供給する、
請求項2から5のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項7】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
前記バッテリ情報を管理サーバに送信する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項8】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
前記バッテリを含むバッテリパックが前記除細動器に装着されたことを検知し、
前記バッテリパックが前記除細動器に装着されたことを検知した時から所定時間の間、前記バッテリ情報を前記バッテリメモリへ書き込まない、
請求項1から7のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項9】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
前記バッテリを含むバッテリパックが前記除細動器に装着されたことを検知し、
前記バッテリパックが前記除細動器に装着されたことを検知した時から所定時間の間、前記閾値と前記電圧値の比較判定を行わない、
請求項1から8のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項10】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
前記バッテリから供給される電流値を時間積分することで、前記バッテリ使用量の変化量を算出する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の除細動器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、除細動器に関する。
【背景技術】
【0002】
心室細動によって突然の心停止を起こした患者の心臓に除細動用の強い電気ショックを与えることで患者の心臓の機能を回復させる除細動器が、現在急速に普及している。また、除細動器の故障等は心停止を起こした患者の生命の危機に直結するため、定期的に故障の有無を自己診断するセルフテスト機能が搭載された除細動器が知られている。例えば、特許文献1には、第一の頻度または第二の頻度でセルフテストを実施する除細動器が開示されている。また、特許文献2には、バッテリの故障を検出するセルフテストを実施する除細動器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-500286号公報
【特許文献2】特開2006-043270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された除細動器では、セルフテストを実施する頻度を動的に制御することで、セルフテストの実施によるバッテリの電力消費を抑制しつつ、除細動器の故障を検出する。また、特許文献2に開示された除細動器では、セルフテストの実施によりバッテリ異常を検出した場合、保守センターにバッテリ異常に関する情報を通知する。
【0005】
しかしながら、バッテリからの供給電流が小さい第一セルフテストを実施し、かつ、第一セルフテストを実施する間隔よりも長い間隔で、バッテリの供給電流が大きい第二セルフテストを実施する場合、第二セルフテストで内部インピーダンスが大きい等のバッテリ異常が検出されても、次の第一セルフテストではバッテリからの供給電流が小さいことから、電圧降下が小さく、バッテリ異常が検出されない場合がある。そのため、ユーザや管理者等は第一セルフテストでバッテリ異常を認識できるものの、バッテリ異常をユーザや管理者等に対して、より容易に認識させることが望まれている。
【0006】
本開示は、バッテリからの供給電流が小さいセルフテストにおいても、ユーザや管理者等がバッテリの異常を容易に認識できる除細動器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る除細動器は、
プロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されることにより、前記プロセッサは、
前記除細動器に電力を供給するバッテリのバッテリ使用量を算出し、
前記バッテリ使用量に関する情報をバッテリメモリに書き込み、
前記バッテリの供給電力の電圧値が閾値以下である場合に、前記バッテリの残量がないことを示すバッテリ情報を前記バッテリメモリに書き込む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、バッテリからの供給電流が小さいセルフテストにおいても、ユーザや管理者等がバッテリの異常を容易に認識できる除細動器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る除細動器の外観図である。
図2】本開示の実施形態に係る除細動器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
<除細動器の構成>
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係る除細動器の外観図である。本開示の実施形態に係る除細動器1は、除細動器本体10(筐体本体)と、除細動器本体10を覆う蓋部12と、を備え、バッテリパック11、ケーブル13、電極パッド14、15と接続可能に構成される。
【0012】
バッテリパック11は、バッテリセル11A(図2参照)を内蔵し、除細動器本体10および電極パッド14、15を作動させるための電力を除細動器本体10に供給する。また、バッテリパック11は、除細動器本体10の裏面側に取り外し可能な構造で接続されている。蓋部12は、除細動器本体10を覆う構造となっている。
【0013】
除細動器本体10に設けられている電源ボタンが押下されることで除細動器1の主電源がОNとなる。なお、除細動器1は、蓋部12が開状態では除細動器1の主電源がОNとなり、閉状態では除細動器1の主電源がОFFとなる自動体外式除細動器(AED)であってもよい。
【0014】
ケーブル13は、除細動器本体10と電極パッド14、15を電気的に接続する。電極パッド14、15は、傷病者(対象者)に貼付されることで、傷病者への心電図解析および電気ショック等の処置を可能とする。
【0015】
除細動器本体10は、ユーザインターフェースとして、画面表示部100と、音出力部101と、インジケータ102と、を備える。
【0016】
画面表示部100は、イラストや文字等を表示可能なティスプレイであり、電極パッド14、15の貼付方法や、電気ショックの処置方法や、除細動器1の状態が正常または異常であるという情報等を、救助者に対して視覚的に表示する。
【0017】
音出力部101は、スピーカーであり、電極パッド14、15の貼付方法や、電気ショックの処置方法や、除細動器本体10の内部に高電圧が充電されている状態を表す警告音や、電気ショックが実施されるまでのタイミング音や、除細動器1の状態が正常または異常であるという情報等を、救助者に対して聴覚的に通知する。
【0018】
インジケータ102は、点灯または点滅可能なランプ等から構成され、除細動器1の状態が正常または異常であるという情報等を、救助者に対して視覚的に表示する。
【0019】
図2は、本開示の実施形態に係る除細動器の構成を示すブロック図である。バッテリパック11は、バッテリセル11Aと、バッテリメモリ11Bを有する。除細動器本体10は、画面表示部100と、音出力部101と、インジケータ102と、プロセッサ103と、メモリ104と、高圧ユニット105と、心電図解析部106と、電流センサ107と、電圧センサ108と、外部通信部109を有する。
【0020】
プロセッサ103は、電源ボタンが押下されて除細動器1の主電源がОN状態になることで、メモリ104に記憶されるプログラム等を読み出し、プログラム等を実行し、除細動器1の各種動作を制御する。
【0021】
プロセッサ103は、メモリ104にあらかじめ記録されている、電極パッド14、15の貼付方法や、電気ショックの処置方法や、除細動器1の状態が正常または異常であるという情報等の画像データを読み出し、読み出した画像データを画面表示部100に送信する。画面表示部100は、受信した画像データを画面表示する。
【0022】
プロセッサ103は、除細動器1の状態が正常または異常であるという情報を救助者に通知するため、インジケータ102のランプ等の制御信号をインジケータ102に送信する。
インジケータ102は、受信した制御信号を基づいて点灯、消灯、または点滅する。
【0023】
プロセッサ103は、メモリ104にあらかじめ記録されている、電極パッド14、15の貼付方法や、電気ショックの処置方法や、除細動器本体10の内部に高電圧が充電されている状態を表す警告音や、電気ショックが実施されるまでのタイミング音や、除細動器1の状態が正常または異常であるという情報等の音データを読み出し、読み出した音データを音出力部101に送信する。
音出力部101は、受信した音データに基づいて、音を出力する。
【0024】
プロセッサ103は、バッテリセル11Aによって高圧ユニット105の内部コンデンサを充電し、電極パッド14、15から放電するように、バッテリセル11Aと、内部コンデンサとを制御する。
電流センサ107と、電圧センサ108は、バッテリセル11Aから除細動器本体10に供給される電流値Isと電圧値Vsを測定する。
【0025】
プロセッサ103は、電極パッド14、15が傷病者に貼付されているかを判定し、心電図解析部106に心電図解析を実施させるように、電極パッド14、15と、心電図解析部106とを制御する。
【0026】
メモリ104は、除細動器1の各種動作を制御するためのプログラム等を記憶する。
心電図解析部106は、電極パッド14、15を通じて傷病者の心電図解析を実施する。
【0027】
プロセッサ103は、除細動器1が正常に動作するか否か、つまり除細動器1の状態が正常か異常かを自己診断するセルフテストを実施する。プロセッサ103は、セルフテストの結果をメモリ104に書込むとともに、外部通信部109から外部サーバへ送信する。
<セルフテスト>
【0028】
除細動器1の状態が正常か異常かを自己診断するセルフテストについて詳細に説明する。
プロセッサ103は、少なくとも第一セルフテストおよび第二セルフテストの二種類のセルフテストを実施する。
【0029】
第一セルフテストおよび第二セルフテストでは、バッテリセル11Aのバッテリ残量チェックと、バッテリセル11Aのバッテリ電圧チェックの少なくとも二種類のチェック項目を実施する。さらに、バッテリ残量チェックと電圧チェックのチェック結果から、除細動器の状態が正常であるか否か総合判定する。
(バッテリ残量チェック)
【0030】
まず、プロセッサ103は、セルフテスト開始時にバッテリ残量チェックを行う。具体的には、プロセッサ103は、バッテリメモリ11Bに記録されているバッテリセル11Aのバッテリ残量Irとバッテリセル11Aのフル電池容量Ifを読み出す。ここで、フル電池容量Ifは、例えば2000mAhである。
【0031】
次に、プロセッサ103は、バッテリ残量Irとフル電池容量Ifとの比較によりバッテリ残量割合Irrを算出し、算出したバッテリ残量割合Irrと所定閾値Ithとの比較によりバッテリ残量チェックを行う。ここで、所定閾値Ithは、例えば5%である。バッテリ残量割合Irrが所定閾値Ithを超えている場合、プロセッサ103はバッテリ残量が正常であると判定する。バッテリ残量割合Irrが所定閾値Ith以下の場合、プロセッサ103はバッテリ残量Irが異常であると判定する。判定後、プロセッサ103は、バッテリ残量Irの判定結果をメモリ104に記録する。
【0032】
また、プロセッサ103は、セルフテスト終了時にバッテリ残量チェックを行う。具体的には、プロセッサ103は、バッテリセル11Aから除細動器本体10に供給される電流値Isを測定する。プロセッサ103は、測定された電流値Isを時間積分することでバッテリ使用変化量ΔIuを算出する。プロセッサ103は、セルフテスト開始時のバッテリ残量Irからバッテリ使用変化量ΔIuを減算することでセルフテスト終了時のバッテリ残量Irを算出する。さらに、プロセッサ103は、算出したバッテリ残量Irとフル電池容量Ifとの比較によりセルフテスト終了時のバッテリ残量割合Irrを算出し、算出したバッテリ残量割合Irrと所定閾値Ithとの比較によりバッテリ残量チェックを行う。バッテリ残量割合Irrが所定閾値Ithを超えている場合、プロセッサ103はバッテリ残量Irが正常と判定する。バッテリ残量割合Irrが所定閾値Ith以下の場合、プロセッサ103はバッテリ残量Irが異常と判定する。プロセッサ103は、セルフテスト終了時のバッテリ残量Irをバッテリメモリ11Bに記録し、バッテリ残量の判定結果をメモリ104に記録する。
【0033】
なお、バッテリ残量Irとバッテリ残量割合Irrの替わりに、バッテリ使用量Iuとバッテリ使用割合Iurをバッテリ残量チェックの判定対象としてもよいし、プロセッサ103は、バッテリ残量割合Irrとバッテリ使用割合Iurの両方をバッテリメモリ11Bに記録してもよい。
また、メモリ104は、各バッテリの識別情報と各バッテリのフル電池容量Ifを関連付けて記憶し、バッテリメモリ11Bがバッテリの識別情報を保持する構成であってもよい。この場合、プロセッサ103はバッテリメモリ11Bからバッテリ残量Irとバッテリの識別情報を取得し、取得した識別情報を基に対応するバッテリのフル電池容量Ifをメモリ104から読み出してもよい。
【0034】
このように、バッテリ残量チェックを実施することにより、除細動器1を可動するために必要な電力がバッテリセル11Aに残っていない等のバッテリ異常を検出することができる。
(バッテリ電圧チェック)
【0035】
プロセッサ103は、上記測定した電圧値Vsと所定閾値Vthとの比較によりバッテリ電圧チェックを行う。電圧値Vsが所定閾値Vthを超えている場合、プロセッサ103はバッテリ電圧が正常と判定する。電圧値Vsが所定閾値Vth以下の場合、プロセッサ103はバッテリ電圧が異常と判定する。プロセッサ103は、バッテリ電圧の判定結果をメモリ104に記録する。
【0036】
このように、バッテリ電圧チェックを実施することにより、バッテリセル11Aの内部インピーダンスが大きい等のバッテリ異常を検出することができる。
(除細動器の状態判定)
【0037】
プロセッサ103は、メモリ104に記録されているバッテリ残量の判定結果及びバッテリ電圧の判定結果を読み出し、少なくともバッテリ残量の判定結果及びバッテリ電圧の判定結果から、除細動器1の状態が正常か異常かを総合的に判定する。例えば、バッテリ残量の判定結果及びバッテリ電圧の判定結果が正常の場合、プロセッサ103は除細動器1の状態が正常と判定し、バッテリ残量の判定結果とバッテリ電圧の判定結果の少なくとも一方が異常の場合、プロセッサ103は除細動器1の状態が異常と判定する。プロセッサ103は、バッテリ電圧の判定結果をメモリ104に記録する。
【0038】
プロセッサ103は、除細動器1の状態が正常か異常かの判定結果を、画面表示部100やインジケータ102に表示し、音出力部101から出力し、外部通信部109から外部サーバへ送信する。
【0039】
このように、除細動器1の状態判定を実施することにより、ユーザや管理者等が除細動器1の状態が正常か異常かを認識することができる。
(第一、第二セルフテスト)
【0040】
第一セルフテストは、上述のバッテリセル11Aのバッテリ残量チェックと電圧チェックの少なくとも二種類のチェック項目が、例えば一日に一回などの間隔で、定期的に実施される。
また、第一セルフテストでは、プロセッサ103が第一電流をバッテリセル11Aから除細動器本体10に供給させて、電流値Isを測定することで、バッテリ残量チェックが実施される。
【0041】
第二セルフテストは、上述のバッテリセル11Aのバッテリ残量チェックと電圧チェックの少なくとも二種類のチェック項目が、例えば一月に一回など、第一セルフテストよりも長い間隔で定期的に実施される。
また、第二セルフテストでは、プロセッサ103が第一電流より電流量が大きな第二電流をバッテリセル11Aから除細動器本体10に供給させて、電流値Isを測定することで、バッテリ残量チェックが実施される。
【0042】
第一セルフテストと第二セルフテストを比較すると、バッテリセル11Aから除細動器本体10への供給電流(第一電流と第二電流)の大きさや、実施する間隔が異なる。
【0043】
具体的には、第二セルフテストではバッテリセル11Aから高圧ユニット105への充電を実施し、高圧ユニット105が適切に充電できるかをテストしているのに対して、第一セルフテストではバッテリセル11Aから高圧ユニット105への充電を実施しない。そのため、第二電流の方が第一電流よりも大きくなる。また、第二セルフテストではバッテリセル11Aの電力を多く消費するため頻繁に実施することができず、第二セルフテストを実施する間隔は、第一セルフテストを実施する間隔よりも長く設定される。
(実施例)
【0044】
バッテリセル11Aが正常な場合(内部インピーダンスが小さい)における本実施形態に係る除細動器1のセルフテスト結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、バッテリセル11Aが正常な場合に第一セルフテストを実施すると、バッテリセル11Aから高圧ユニット105への充電を実施せずに、電流量が小さい第一電流をバッテリセル11Aから除細動器本体10に供給する。そのため、バッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irr(以下、バッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irrをバッテリ情報ともいう)は正常な値となる。また、第一電流の電流量が小さく、電圧センサ108における電圧値Vsの電圧降下は小さいため、電圧値Vsは所定閾値Vth以下とならず、バッテリ電圧の閾値判定結果は正常となる。したがって、除細動器1の状態判定結果は正常となる。
【0047】
セルフテストの結果から、除細動器1の状態が正常である情報がメモリ104に、バッテリセル11Aが正常であることを示すバッテリ情報(表1では、バッテリ使用割合Iurが1%から6%、バッテリ残量割合Irrが94%から99%)がバッテリメモリ11Bに書き込まれる。
【0048】
バッテリセル11Aが正常な場合に第二セルフテストを実施すると、バッテリセル11Aから高圧ユニット105への充電を実施するため、電流量が大きい第二電流をバッテリセル11Aから除細動器本体10に供給する。しかしながら、第二セルフテストを実施する間隔が長い(頻度が低い)ため、バッテリ使用変化量ΔIuは小さく、バッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irrは正常な値となる。また、バッテリセル11Aが正常でありバッテリセル11Aの内部インピーダンスは小さいことから、電圧センサ108における電圧値Vsの電圧降下は小さく、電圧値Vsは所定閾値Vth以下とならないため、バッテリ電圧の閾値判定結果は正常となる。したがって、除細動器1の状態判定結果は正常となる。
【0049】
セルフテストの結果から、除細動器1の状態が正常である情報がメモリ104に、バッテリセル11Aが正常であることを示すバッテリ情報(表1では、バッテリ使用割合Iurが5%、バッテリ残量割合Irrが95%)がバッテリメモリ11Bに書き込まれる。
【0050】
バッテリセル11Aが異常(内部インピーダンスが大きい)な場合における本実施形態に係る除細動器1のセルフテスト結果を説明するため、比較対象として、バッテリセル11Aが異常(内部インピーダンスが大きい)な場合における従来の除細動器1のセルフテスト結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2に示すように、バッテリセル11Aが異常な場合である二回目の第一セルフテストを実施すると、バッテリセル11Aから高圧ユニット105への充電を実施せず、電流量が小さい第一電流をバッテリセル11Aから除細動器本体10に供給する。そのため、バッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irrは正常な値となる。また、第一電流の電流量が小さく、電圧センサ108における電圧値Vsの電圧降下は小さいため、電圧値Vsは所定閾値Vth以下とならず、バッテリ電圧の閾値判定結果は正常となる。したがって、除細動器1の状態判定結果は正常となる。
【0053】
セルフテストの結果から、除細動器1の状態が正常である情報がメモリ104に、バッテリセル11Aが正常であることを示すバッテリ情報(表2では、バッテリ使用割合Iurが2%、バッテリ残量割合Irrが98%)がバッテリメモリ11Bに書き込まれる。このように、バッテリセル11Aが異常な場合であっても、第一セルフテストでは第一電流の電流量が小さく、電圧センサ108における電圧値Vsの電圧降下は小さいため、バッテリセル11Aのバッテリ電圧の異常を検出せず、除細動器1の状態が正常である情報が書き込まれる。
【0054】
第二セルフテストでは、バッテリセル11Aから高圧ユニット105への充電を実施するため、電流量が大きい第二電流をバッテリセル11Aから除細動器本体10に供給する。しかしながら、第二セルフテストを実施する間隔が長い(頻度が低い)ため、バッテリ使用変化量ΔIuは小さく、バッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irrは正常な値となる。また、バッテリセル11Aは内部インピーダンスが大きく異常であるため、電圧センサ108における電圧値Vsの電圧降下は大きく、電圧値Vsは所定閾値Vth以下となり、バッテリ電圧の閾値判定結果は異常となる。したがって、除細動器1の状態判定結果は異常となる。
【0055】
セルフテストの結果から、除細動器1の状態が異常である情報がメモリ104に、バッテリセル11Aが正常であることを示すバッテリ情報(表2では、バッテリ使用割合Iurが5%、バッテリ残量割合Irrが95%)がバッテリメモリ11Bに書き込まれる。
【0056】
このように、第二セルフテストは大きな電流量でテストを実施するため、第一セルフテストでは検出できないバッテリセル11Aのバッテリ電圧の異常を検出できる。
【0057】
ところで、表2に示すように、従来の除細動器1のセルフテストでは、第二セルフテストで除細動器1の状態が異常である情報がメモリ104に書き込まれた後に、第一セルフテストを実施すると、バッテリセル11Aが実際には異常であるにもかかわらず、除細動器1の状態が正常である情報がメモリ104に上書きされる。これは周辺温度の異常等で一時的に第二セルフテストの結果が異常となった場合もあり得る為、最新のテスト結果を反映するために上書きを行うことに起因する。しかしながら、バッテリセル11Aの内部インピーダンス異常を把握することは難しくなる。
【0058】
このような不都合を改善したのが、本実施形態に係る除細動器1である。バッテリセル11Aが異常(内部インピーダンスが大きい)な場合における本実施形態に係る除細動器1のセルフテスト結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示すように、第一セルフテストでは、バッテリセル11Aから高圧ユニット105への充電を実施せず、電流量が小さい第一電流をバッテリセル11Aから除細動器本体10に供給する。そのため、バッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irrは正常な値となる。また、第一電流の電流量が小さく、電圧センサ108における電圧値Vsの電圧降下は小さいため、電圧値Vsは所定閾値Vth以下となり、バッテリ電圧の閾値判定結果は正常となる。したがって、除細動器1の状態判定結果は正常となる。
【0061】
セルフテストの結果から、除細動器1の状態が正常である情報がメモリ104に、バッテリセル11Aが正常であることを示すバッテリ情報がバッテリメモリ11Bに書き込まれる。
【0062】
第二セルフテストでは、バッテリセル11Aから高圧ユニット105への充電を実施するため、電流量が大きい第二電流をバッテリセル11Aから除細動器本体10に供給する。しかしながら、第二セルフテストを実施する間隔が長いため、第二電流が流れるときのバッテリ使用変化量ΔIuは小さく、バッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irrは正常な値となる。ここで、バッテリセル11Aが異常で内部インピーダンスが大きいため、電圧センサ108における電圧値Vsの電圧降下は大きく、電圧値Vsは所定閾値Vth以下となり、バッテリ電圧の閾値判定結果は異常となる。したがって、除細動器1の状態判定結果は異常となる。
【0063】
この場合、プロセッサ103が算出したバッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irrではなく、バッテリセル11Aが異常であることを示すバッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irr(表3では、バッテリ使用割合Iurが100%、バッテリ残量割合Irrが0%)がバッテリメモリ11Bに書き込まれる。したがって、除細動器1の状態が異常である情報がメモリ104に、バッテリセル11Aが異常であることを示すバッテリ情報がバッテリメモリ11Bに書き込まれる。
【0064】
表3に示すように、本実施形態に係る除細動器1のセルフテストでは、第二セルフテスト(表3における3回目のセルフテスト)でバッテリセル11Aが異常であることを示すバッテリ情報がバッテリメモリ11Bに書き込まれている。そのため、その後に第一セルフテスト(表3における4回目のセルフテスト)を実施すると、セルフテスト開始時に実施されるバッテリ残量チェックで、バッテリ残量割合Irrが所定閾値Ith以下であることから、バッテリ残量が異常であると判定される。その結果、除細動器1の状態が異常である情報がメモリ104に上書きされる。
【0065】
これにより、バッテリからの供給電流(第一電流)の電流量が小さい第一セルフテストにおいても、ユーザや管理者等が除細動器1の状態が異常である情報を容易に認識することができる。なお、4回目のセルフテストは、第一セルフテストであり第一電流の電流量が小さいため、バッテリ使用変化量ΔIuは少ない。しかしながら、バッテリセル11Aが異常であることを示すバッテリ情報が既にバッテリメモリ11Bに書き込まれているため、4回目のセルフテストにおいても、バッテリセル11Aが異常であることを示すバッテリ情報がバッテリメモリ11Bに書き込まれる。
【0066】
上述の例ではバッテリセル11Aの電圧異常を検出した場合、プロセッサ103はバッテリセル11Aが異常であることを示すバッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irr(表3では、バッテリ使用割合Iurが100%、バッテリ残量割合Irrが0%)がバッテリメモリ11Bに書き込んだが必ずしもこれに限られない。例えばプロセッサ103は、電圧異常時に特定の値(例えば“1”)が設定されるフラグをバッテリメモリ11Bに書き込んでもよい。しかしながら異常を示すバッテリ使用割合Iurまたはバッテリ残量割合Irrをバッテリメモリ11Bに書き込んだ場合、バッテリパック11が異なる型番の除細動器で使用された場合でも、バッテリ残量が異常となり、バッテリパック11の異常を把握することができる。換言すると異常を示すバッテリ使用割合Iurまたはバッテリ残量割合Irrをバッテリメモリ11Bに書き込んだ場合、バッテリメモリ11Bの値を用いるバッテリ残量チェック機能を有する除細動器では異常が常に検出できる。
【0067】
なお、正常なバッテリパック11の装着時に、装着状態が十分ではない場合、一時的に内部インピーダンス異常が生じているように扱われる場合が生じ得る。そこで、プロセッサ103は、バッテリパック11が除細動器1に装着されたことを検知した場合、検知した時から所定時間の間、第一セルフテストまたは第二セルフテストは実施するが、バッテリ情報をバッテリメモリ11Bへ書き込まなくてもよい、または、電圧値Vsと所定閾値Vthとの比較判定を行わなくてもよい。これにより、バッテリパック11が装着された際にバッテリ抜けが発生しても、誤ってバッテリセル11Aが異常であることを示すバッテリ情報がバッテリメモリ11Bに書き込まれることを回避できる。
【0068】
また、第一セルフテスト、第二セルフテストにおいて、プロセッサ103は、バッテリ情報を外部通信部109から外部サーバ110へ送信してもよい。
これにより、ユーザや管理者等がバッテリセル11Aのバッテリ使用割合Iur、バッテリ残量割合Irrを容易に認識することができる。
【0069】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0070】
例えば上述の説明では除細動器1がAED(全自動体外式除細動器)であるものとして説明したが必ずしもこれに限られず、例えば半自動式の体外式除細動器であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 除細動器
10 除細動器本体(筐体本体)
11 バッテリパック
11A バッテリセル
11B バッテリメモリ
12 蓋部
13 ケーブル
14、15 電極パッド
100 画面表示部
101 音出力部
102 インジケータ
103 プロセッサ
104 メモリ
105 高圧ユニット
105A 内部コンデンサ
106 心電図解析部
107 電流センサ
108 電圧センサ
109 外部通信部
110 外部サーバ
図1
図2