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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114201
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】農業用ハウス内太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20230809BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20230809BHJP
   H02S 10/00 20140101ALI20230809BHJP
   H02S 20/26 20140101ALI20230809BHJP
【FI】
A01G9/14 Z
A01G9/20 B
H02S10/00
H02S20/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016426
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】522049082
【氏名又は名称】株式会社ヨコタ建築コンサル
(71)【出願人】
【識別番号】504078383
【氏名又は名称】赤津 牧人
(71)【出願人】
【識別番号】522048007
【氏名又は名称】井上 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】赤津 牧人
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋
【テーマコード(参考)】
2B029
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2B029AA01
2B029BB01
2B029BB11
2B029BD11
2B029DB07
2B029DB10
2B029EA02
2B029EA05
2B029KB03
2B029KB05
2B029KB10
2B029MA01
2B029MA06
5F151AA02
5F151AA03
5F151JA13
5F151KA03
5F151KA10
5F251AA02
5F251AA03
5F251JA13
5F251KA03
5F251KA10
(57)【要約】
【課題】年間を通して農作物の高い収穫率と、グリーン電力の高い発電効率を両立可能な農業用ハウス内太陽光発電システムを提供すること。
【解決手段】本発明の農業用ハウス内太陽光発電システム1は、地上に架設したフレーム11と、フレーム11を被覆してハウス空間Sを画設する透光性の被膜12と、を有するハウス本体10と、ハウス空間Sの床面に設置した土間コンクリート20と、ハウス空間S内に設置可能な栽培設備30と、土間コンクリート20の上面に接面して配置した太陽光発電面材40と、太陽光発電面材40が発電する直流電力を交流変換可能な変電手段50と、ハウス空間S内の空気を加温可能な暖房手段60と、太陽光発電面材40と変電手段50、変電手段50と暖房手段60、変電手段50と外部送電網G、をそれぞれ電気的に接続した複数の送電手段70と、を備え、総発電量の少なくとも一部を選択的に外部送電網Gへ送電可能に構成したことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に架設したフレームと、前記フレームを被覆してハウス空間を画設する透光性の被膜と、を有するハウス本体と、
前記ハウス空間の床面に設置した土間コンクリートと、
前記ハウス空間内に設置可能な栽培設備と、
前記土間コンクリートの上面に接面して配置した太陽光発電面材と、
前記太陽光発電面材が発電する直流電力を交流変換可能な変電手段と、
前記ハウス空間内の空気を加温可能な暖房手段と、
前記太陽光発電面材と前記変電手段、前記変電手段と前記暖房手段、前記変電手段と外部送電網、をそれぞれ電気的に接続した複数の送電手段と、を備え、
総発電量の少なくとも一部を選択的に前記外部送電網へ送電可能に構成したことを特徴とする、
農業用ハウス内太陽光発電システム。
【請求項2】
前記土間コンクリートは設置溝を備え、前記太陽光発電面材を前記設置溝内に設置し、前記土間コンクリートの表面と前記太陽光発電面材の表面を面一に構成したことを特徴とする、請求項1に記載の農業用ハウス内太陽光発電システム。
【請求項3】
前記暖房手段が、熱媒体を加熱し、前記土間コンクリート内に配設した送熱管内に前記熱媒体を循環させることで前記土間コンクリートを加熱する床暖房設備であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の農業用ハウス内太陽光発電システム。
【請求項4】
複数の前記栽培設備を前記ハウス本体の長手方向に沿って配置して栽培設備アレイを構成し、複数の前記太陽光発電面材を前記栽培設備アレイに沿って配置して太陽光発電面材アレイを構成し、隣り合う太陽光発電面材アレイの間に、前記栽培設備アレイを挟んで設置したことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の農業用ハウス内太陽光発電システム。
【請求項5】
前記土間コンクリートの下面に設置した断熱材と、前記断熱材の下面に敷設した防湿フィルムと、を備えることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の農業用ハウス内太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウス内太陽光発電システムに関し、特に年間を通して農作物の高い収穫率と、グリーン電力の高い発電効率を両立可能な農業用ハウス内太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsでは、温室効果ガス等の影響による気候変動への具体的対策が求められている。こうした世界的趨勢に対応して、日本政府は、2050年までに実質的な二酸化炭素排出量を50%削減するとの数値目標を設定した。
具体的な数値目標の設定に伴い、民間企業でも二酸化炭素排出量の削減に向けた積極的な取り組みが始まっている。これらの取り組みの1つに、太陽光発電や風力発電に代表されるカーボンフリーのグリーン電力の利用がある。
この内、太陽光発電では2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の拡充を契機に、全国に大規模な太陽光発電施設であるメガソーラーが建設され、全国の発電量が急速に伸びた。しかし、大規模な開発の連続により土地が不足し、全国的に太陽光発電パネルを設置可能な場所が不足している。
このような現状に対し、最近では比較的敷地面積の広い農地の上空を利用して太陽光発電を行う営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が普及してきている。
引用文献1~3には、農地に所定の間隔で支柱を立設し、支柱の上部に太陽光発電パネルを架設して構成するソーラーシェアリングタイプの太陽光発電施設が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-10632号公報
【特許文献2】特開2020-184987号公報
【特許文献3】特開2014-236200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には以下の課題がある。
<1>太陽光発電パネルが農作物の上空を覆うため、農作物への日照が遮られ、農作物の生長を妨げることで収穫量を減少させるおそれがある。反対に農作物の生長に十分な日照を確保しようとすると、太陽光発電パネルの受光面積が小さくなるため、満足な発電量を得ることができなくなる。すなわち、農作物の収穫量と太陽光発電パネルによる発電量とがトレードオフの関係になり、両立することができない。このため、「グリーン電力」の名目のために農作物の収穫量を損なうという本末転倒な結果が生じている。
<2>農作物と太陽光発電パネルが露天に晒されるため、台風、積雪、火山灰、黄砂等の自然現象の影響を直接受ける。これによって、農作物が損害を受けたり、太陽光発電パネルや架台が破損するなどの被害が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、以上の従来技術の課題を解決するための農業用ハウス内太陽光発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の農業用ハウス内太陽光発電システムは、地上に架設したフレームと、フレームを被覆してハウス空間を画設する透光性の被膜と、を有するハウス本体と、ハウス空間の床面に設置した土間コンクリートと、ハウス空間内に設置可能な栽培設備と、土間コンクリートの上面に接面して配置した太陽光発電面材と、太陽光発電面材が発電する直流電力を交流変換可能な変電手段と、ハウス空間内の空気を加温可能な暖房手段と、太陽光発電面材と変電手段、変電手段と暖房手段、変電手段と外部送電網、をそれぞれ電気的に接続した複数の送電手段と、を備え、総発電量の少なくとも一部を選択的に外部送電網へ送電可能に構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明の農業用ハウス内太陽光発電システムは、土間コンクリートが設置溝を備え、太陽光発電面材を設置溝内に設置し、土間コンクリートの表面と太陽光発電面材の表面を面一に構成してもよい。
【0008】
本発明の農業用ハウス内太陽光発電システムは、暖房手段が、熱媒体を加熱し、土間コンクリート内に配設した送熱管内に熱媒体を循環させることで土間コンクリートを加熱する床暖房設備であってもよい。
【0009】
本発明の農業用ハウス内太陽光発電システムは、複数の栽培設備をハウス本体の長手方向に沿って配置して栽培設備アレイを構成し、複数の太陽光発電面材を栽培設備アレイに沿って配置して太陽光発電面材アレイを構成し、隣り合う太陽光発電面材アレイの間に、栽培設備アレイを挟んで設置してもよい。
【0010】
本発明の農業用ハウス内太陽光発電システムは、土間コンクリートの下面に設置した断熱材と、断熱材の下面に敷設した防湿フィルムと、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の農業用ハウス内太陽光発電システムは、次の効果の少なくともひとつを備える。
<1>太陽光発電面材をハウス空間の床面に配置した構造であるため、太陽光発電面材によって農作物への日照が遮られることがない。また、太陽光発電面材が農作物の陰になっても、太陽光発電面材がハウス本体内の被膜の乱反射を介して間接的に受光して発電することができる。このため、農作物の高い収穫率と、グリーン電力の高い発電効率を両立することができる。
<2>暖房手段によって、ハウス空間内を一定の温度に維持できるため、気候や季節の影響を受けにくい。また、日中は太陽光によって土間コンクリート内に蓄熱し、夜間これを輻射熱として放出することで、昼夜の寒暖差を縮小することができる。これによって、農作物を、年間を通して安定的に栽培することができる。
<3>太陽光発電面材の熱を土間コンクリート内に伝達することで、太陽光発電面材の高熱化による発電ロスを抑止して、高い発電効率を維持することができる。
<4>グリーン電力の供給と農作物の収穫を両立させることで、SDGsの目標の内「2.飢餓をゼロに」「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「15.陸の豊かさも守ろう」等の達成に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る農業用ハウス内太陽光発電システムの説明図
図2】ハウス本体の説明図
図3】農業用ハウス内太陽光発電システムの内部構造の説明図
図4】栽培設備アレイと太陽光発電面材アレイの説明図
図5A】農業用ハウス内太陽光発電システムの運用方法の説明図(1)
図5B】農業用ハウス内太陽光発電システムの運用方法の説明図(2)
図5C】農業用ハウス内太陽光発電システムの運用方法の説明図(3)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の農業用ハウス内太陽光発電システムについて詳細に説明する。なお、図面の視認性及び一覧性を確保するため、図面上、栽培設備等の規模を縮小すると共にハウス本体等の構造を簡略化して表示している。
【実施例0014】
[農業用ハウス内太陽光発電システム]
<1>全体の構成(図1
農業用ハウス内太陽光発電システム1は、内部にハウス空間Sを有するハウス本体10と、ハウス空間Sの床面に設置した土間コンクリート20と、ハウス空間S内に設置した栽培設備30と、土間コンクリート20の上面に設置した太陽光発電面材40と、変電手段50と、暖房手段60と、送電手段70と、を少なくとも備える。
送電手段70は、太陽光発電面材40と変電手段50、変電手段50と暖房手段60、変電手段50と外部送電網G、をそれぞれ電気的に接続する。なお、設計に応じて、変電手段50と外部送電網Gの間に受変電設備を設置することもできる。
農業用ハウス内太陽光発電システム1は、太陽光発電面材40による総発電量の少なくとも一部を、外部送電網Gへ送電可能な構成に1つの特徴を有する。
外部送電網Gへ送電した電力は、カーボンフリーのグリーン電力として、契約に基づき第三者へ売電したり、自己の所有する工場や事務所に自己託送することで、SDGsの達成に貢献することができる。
【0015】
<2>ハウス本体(図2
ハウス本体10は、農作物32を温度変化や風雨から保護する構造である。
ハウス本体10は、地上に架設したフレーム11と、フレーム11を被覆してハウス空間Sを画設する透光性の被膜12と、を少なくとも備える。
本例ではハウス本体10として、単管パイプを主材として組んだフレーム11を、ポリオレフィンフィルムの被膜12で被覆したパイプハウスを採用し、フレーム11の内部長手方向に沿って、所定の間隔で複数の照明具13を設置する。
ただし、ハウス本体10の構造は上記に限らず、例えば被膜12にポリ塩化ビニルフィルムを用いたビニールハウスや、被膜12にガラスを用いたガラス温室等であってもよい。要は被膜12が透光性を有し、かつ農作物32を保護可能な構成を備えていればよい。
【0016】
<3>土間コンクリート(図3
土間コンクリート20は、農業用ハウスの床面を構成する構造である。
土間コンクリート20は、ハウス空間S内の床面全面にわたって設置することが望ましい。
本例では土間コンクリート20が太陽光発電面材40を収納するための設置溝21を備える。設置溝21の深さは、太陽光発電面材40の厚みに対応する。
これによって、太陽光発電面材40を設置溝21内に設置した状態において、土間コンクリート20の表面と太陽光発電面材40の表面が面一になるため、ハウス空間S内の歩行や作業が容易になると共に、太陽光発電面材40の破損を防ぐことができる。
また、本例では、土間コンクリート20の下面に断熱材80を配置し、断熱材80の下に防湿フィルム90を敷設する。
これによって、防湿フィルム90下の地面からの寒気や湿気を遮断して、暖房手段60によるハウス空間S内の暖房効率を高めることができる。
【0017】
<3.1>土間コンクリートの構築
土間コンクリート20は例えば以下の工程で構築する。
農地に砂利地業を行い、砂利地業上に防湿フィルム90を敷設する。
防湿フィルム90上に断熱材80を設置し、断熱材80の外周に型枠を設置する。
断熱材80上にラス金網などの引張材22を配置する。引張材22は、スペーサに載せて断熱材80との間に空間を設け、コンクリートの被り厚を確保する。
型枠内にコンクリートを打設して養生し、土間コンクリート20を構築する。
【0018】
<3.2>蓄熱機能
土間コンクリート20は、太陽光による蓄熱機能を備える。
コンクリートは蓄熱性が高いため、日中に土間コンクリート20の表面が太陽光を受光することで、コンクリートの内部に蓄熱し、輻射熱として長時間にわたってハウス空間S内に放熱することで、ハウス空間Sの暖房効率を高めることができる。
また、本例では、太陽光発電面材40の底面が土間コンクリート20の設置溝21の底に接面しているため、受光による太陽光発電面材40の加熱を土間コンクリート20内に伝達することで、太陽光発電面材40の高温化を防ぎ、発電効率の低下を防止することができる。
【0019】
<4>栽培設備(図3
栽培設備30は、農作物32を栽培するための設備である。
栽培設備30は、本例では栽培設備30として、農作物32を植設した高置式のプランタ31による土壌栽培設備を採用する。ただし栽培設備30はこれに限らず、例えば水耕栽培設備であってもよい。
本例では農作物32はトマトである。ただしこれに限らず、キュウリ、ナス、イチゴなどの他の果菜類や、小松菜、ホウレンソウ、レタスなどの葉菜類等を採用することができる。
農業用ハウスにおける栽培設備30の構造は公知なのでここでは詳述しない。
本例では、複数の栽培設備をハウス本体の長手方向に沿って配置して栽培設備アレイを構成する(図4)。
【0020】
<5>太陽光発電面材(図3
太陽光発電面材40は、太陽光から電力を発電する装置である。
本例では、太陽光発電面材40として、路面敷設用の高強度結晶シリコン型太陽光発電パネルを採用する。ただし太陽光発電面材40は、太陽光発電パネルに限らず、可撓性を有する太陽光発電シートであってもよい。
太陽光発電面材40は、受光面を上に向けて土間コンクリート20の設置溝21内に配置する。
本例では、複数の太陽光発電面材40を栽培設備アレイ30aに沿って配置して太陽光発電面材アレイ40aを構成し、隣り合う太陽光発電面材アレイ40aの間に、栽培設備アレイ30aを挟む(図4)。
本発明の農業用ハウス内太陽光発電システム1は、太陽光発電面材40をハウス空間S内の床面に配置する構造であるため、従来技術のソーラーシェアリングのように、農作物32への日照が太陽光発電面材40に遮られることがない。
また、農作物32の陰になって、太陽光発電面材40が太陽光を直接受光できない場合であっても、透光性の被膜12内の乱反射を介して、太陽光発電面材40が間接的に受光して発電することができる。
【0021】
<6>変電手段
変電手段50は、太陽光発電面材40が発電した電力を交流変化するための構成要素である。
本例では変電手段50として、MPPT(最大電力点追従制御)機能や系統連系保護機能を備えたパワーコンディショナーを採用する。
変電手段50は、太陽光発電面材40が発電した直流電力(DC)を、交流電力(AC)に変換して暖房手段60や照明具13等に送電すると共に、余剰電力を外部送電網Gへ送電する。
【0022】
<7>暖房手段
暖房手段60は、ハウス空間S内の空気を加温するための構成要素である。
本例では暖房手段60として、蓄電池61と、ヒートポンプ給湯器62と、送熱管63の組み合わせによって、土間コンクリート20を介してハウス空間S内を加熱する、床暖房設備を採用する。
詳細には、土間コンクリート20の成型時、型枠内全体に送熱管63を折り返して配置しておくことで、土間コンクリート20内に送熱管63をループ状に配管する。送熱管63内には水等の熱媒体64を充填する。
変電手段50から送電した電気を蓄電池61に蓄え、この電力を用いてヒートポンプ給湯器62で熱媒体64を加熱し、この熱媒体64を送熱管63内に循環させることで土間コンクリート20を加熱して、土間コンクリート20の表面からハウス空間S内の空気を加温する。
ただし暖房手段60は、床暖房設備に限らず、例えばヒートポンプ式エアコン等であってもよい。また、床暖房設備も熱媒体64の循環によらず、土間コンクリート20内に配置した面状発熱体を加熱する方式等であってもよい。
【0023】
<8>農業用ハウス内太陽光発電システムの運用方法
本発明の農業用ハウス内太陽光発電システム1は、土間コンクリート20、太陽光発電面材40、及び暖房手段60の組み合わせにより、年間を通して高い収穫率と高い発電効率を両立させることができる。
農業用ハウス内太陽光発電システム1は、例えば以下のように運用する。
【0024】
<8.1>寒冷期(図5A
冬の寒冷期には、太陽光発電面材40による発電量の総量又は大部分を、暖房手段60の稼働に使用し、暖房手段60及び土間コンクリート20の輻射熱により、ハウス空間S内の気温を、農作物32の栽培に適した15~20℃に維持する。
なお、太陽光発電面材40の発電量が十分でない場合には、太陽光発電面材40の発電量に加え、外部から電力を追加供給してもよい。
寒冷期には、日照時間の短縮により農作物32の生長が抑制されるため、農作物32の葉面積が小さくなる。このため、農作物32の葉によって受光を遮られる面積が減ることで、太陽光発電面材40の受光量が増え、日照時間の短縮による発電量の減少を補うことができる。
また、降雪がある場合であっても、暖房手段60及び土間コンクリート20の輻射熱によって、ハウス空間S内の気温が常に15~20℃度程度に維持されることにより、ハウス本体10の被膜12上に付着した雪がすぐに溶解することで、ハウス本体10上に雪が積もることを防ぐことができる。これによって、積雪地域であっても、太陽光発電面材40が常に太陽光を確保でき、発電量の低減を回避することができる。
【0025】
<8.2>温暖期(図5B
春と秋を含む温暖期には、太陽光発電面材40による発電量の一部を、暖房手段60の稼働に使用して、暖房手段60及び土間コンクリート20の輻射熱により、ハウス空間S内の気温を、農作物32の栽培に適した15~20℃に維持する。
温暖期には、寒冷期に比べ日照時間が長くなり、太陽光発電面材40による発電量が増える反面、外気温が高くなるため、暖房手段60に係る必要電力量が減少する。
このため、太陽光発電面材40による発電量の内、暖房手段60に使用しない残量を、送電手段70を介して外部送電網Gに送電して、売電又は自己託送に利用することができる。
【0026】
<8.3>暑熱期(図5C
7月~8月の暑熱期には、日照時間が最も長くなり、外気温が高くなると共に、ハウス空間S内の気温が極めて高温になる。
従って、この期間はハウス空間S内から栽培設備30を撤去して、農業用ハウス全体を完全な発電施設として使用し、発電量の総量を外部送電網Gに送電して、売電又は自己託送に利用することができる。
暑熱期には、太陽光発電面材40に強い日差しが直射するが、熱を太陽光発電面材40の下面から土間コンクリート20の内部に伝達することで、太陽光発電面材40の温度上昇による発電効率の低下を回避することができる。
この他、栽培設備30用の給水管を利用して、加熱した太陽光発電面材40及び土間コンクリート20の表面に散水する方法や、暖房手段60の送熱管63内に水を循環させて土間コンクリート20内の熱を回収する方法によって、太陽光発電面材40の表面温度を低下させて発電効率を維持することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 農業用ハウス内太陽光発電システム
10 ハウス本体
11 フレーム
12 被膜
13 照明具
20 土間コンクリート
21 設置溝
22 引張材
30 栽培設備
30a 栽培設備アレイ
31 プランタ
32 農作物
40 太陽光発電面材
40a 太陽光発電面材アレイ
50 変電手段
60 暖房手段
61 蓄電池
62 ヒートポンプ給湯器
63 送熱管
64 熱媒体
70 送電手段
80 断熱材
90 防湿フィルム
S ハウス空間
G 外部送電網
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C