(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114213
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】サーバーラック用の遮熱板および調整用治具
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20230809BHJP
H02B 1/56 20060101ALI20230809BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230809BHJP
H05K 7/18 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
G06F1/20 C
H02B1/56 A
H05K7/20 U
H05K7/18 K
G06F1/20 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016458
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】511089136
【氏名又は名称】センターピア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 芳久
(72)【発明者】
【氏名】相楽 敏孝
(72)【発明者】
【氏名】上野 孝樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 徹
【テーマコード(参考)】
5E322
5G016
【Fターム(参考)】
5E322BA01
5E322BA03
5E322BB03
5E322EA06
5E322FA02
5G016CG13
(57)【要約】
【課題】遮熱効率が良く、製造、運搬および保管に要する費用が低いサーバーラック用の遮蔽板を提供すること。
【解決手段】サーバーラック1に取り付けて用いられる遮熱板11は、遮蔽部12および取付部13を備えた樹脂板を、遮蔽部12と取付部13との境界に設けられた直線状の折り曲げ部14で折り曲げることにより、遮蔽部12が取付部13に対して立ち上がった状態を維持し、サーバーラック1における冷風6の流れと、温風7の流れとを遮蔽部12によって分けることができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバーラックにおける空気の流れを分ける遮熱板であって、
遮蔽部および取付部を備えた樹脂板を、前記遮蔽部と前記取付部との境界に設けられた直線状の折り曲げ部で折り曲げることにより、前記遮蔽部が前記取付部に対して立ち上がった状態を維持できることを特徴とする、サーバーラック用の遮熱板。
【請求項2】
前記遮蔽部には、光透過性がある、
請求項1に記載のサーバーラック用の遮熱板。
【請求項3】
前記遮蔽部の全光線透過率が40%~80%である、
請求項2に記載のサーバーラック用の遮熱板。
【請求項4】
前記遮蔽部、前記取付部および前記折り曲げ部がポリプロピレンである、
請求項3に記載のサーバーラック用の遮熱板。
【請求項5】
前記折り曲げ部が破断線により形成されている、
請求項4に記載のサーバーラック用の遮熱板。
【請求項6】
前記遮蔽部および前記折り曲げ部をそれぞれ二つ有しており、
二つの前記折り曲げ部が平行であり、
二つの前記遮蔽部が、二つの前記折り曲げ部の中心線に対して、線対称である、
請求項1に記載のサーバーラック用の遮熱板。
【請求項7】
前記遮蔽部は、
前記折り曲げ部に平行な方向に設けられた第1の切断ガイド部と、
前記折り曲げ部と交差する方向に設けられた複数の第2の切断ガイド部とを備えており、複数の前記第2の切断ガイド部が平行である、
請求項1に記載のサーバーラック用の遮熱板。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のサーバーラック用の遮熱板における前記遮蔽部と前記取付部との位置関係を調整する調整用治具であって、
長手方向における一方端は、先端に向かって徐々に厚みが小さくなるように形成された鉤状部であり、
前記長手方向における他方端は、先端に向かって徐々に厚みが小さくなるように形成された傾斜部と、前記傾斜部よりも厚みが大きい端面とを備えていることを特徴とする、
調整用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバーの冷却効率を向上させるために用いられるサーバーラック用の遮熱板および調整用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のサーバーを収納したデータセンターにおいて、サーバー冷却用の冷風をサーバーラックに供給し、サーバーラック内のサーバーを冷却した後の温風を排出する空調システムが用いられる。当該システムでは、前面から供給された冷風でサーバーラック内のサーバーを冷却し、冷却後の高温の温風を排出する空気の流れが、サーバーラックの天板や背面に設けられたファンによって形成される。サーバー冷却用の冷風に冷却後の温風が混入することによるサーバーの冷却効率の低下を防ぐため、サーバーラック内における冷風用の空間(通路、コールドアイル)と、温風用の空間(通路、ホットアイル)とを分ける遮熱板が用いられる。
例えば、特許文献1には、キャビネット(サーバーラック)におけるサーバーなどの電気機器を配置しない空間部分に取り付ける、キャビネット内部の空気の流れを分ける平板状の遮熱板(熱遮蔽板)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、熱伝導率が高い金属製の遮熱板が用いられていたため、コールドアイルとホットアイルとを分けた場合でも、遮熱板を介して温風の熱が冷風に伝わって冷却効率が低下する虞があった。また、金属製の遮熱板には、製造、運搬および保管に要する費用が高いという問題もあった。
そこで、本発明は、遮熱効率が良く、製造、運搬および保管に要する費用が低いサーバーラック用の遮熱板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するための手段として以下の構成を備えている。
[1]サーバーラックにおける空気の流れを分ける遮熱板であって、遮蔽部および取付部を備えた樹脂板を、前記遮蔽部と前記取付部との境界に設けられた直線状の折り曲げ部で折り曲げることにより、前記遮蔽部が前記取付部に対して立ち上がった状態を維持できることを特徴とする、サーバーラック用の遮熱板。
樹脂板を用いた遮熱板とすることで、金属板よりも断熱性が高く、設計変更が容易になる。また、取り付けの際に折り曲げ部を折り曲げる前は、平板状であるため、複数のサーバーラック用の遮熱板を積み重ねた状態で、運搬および保管することができる。
【0006】
[2]前記遮蔽部には、光透過性がある、[1]に記載のサーバーラック用の遮熱板。
[3]前記遮蔽部の全光線透過率が40%~80%である、[2]に記載のサーバーラック用の遮熱板。
遮蔽部として光透過性がある樹脂板を用いることにより、遮熱部の向こう側にあるサーバーラック内の配線などを確認することができる。このため、熱遮蔽板の取り付けや、取り付け後の作業性が向上する。また、遮蔽部として、全光線透過率が40%~80%程度の半透明(乳白色)の樹脂板を用いることが、サーバーラック内の配線などの確認の容易性を確保しつつ、樹脂板設置による外観向上の点から好ましい。
【0007】
[4]前記遮蔽部、前記取付部および前記折り曲げ部がポリプロピレンである、[3]に記載のサーバーラック用の遮熱板。
[5]前記折り曲げ部が破断線により形成されている、[4]に記載のサーバーラック用の遮熱板。
遮蔽部、取付部および折り曲げ部をポリプロピレンとすることで、破断線により形成した折り曲げ部を折り曲げる際に適度に延びるため樹脂板の割れを抑制できる。
【0008】
[6]前記遮蔽部および前記折り曲げ部をそれぞれ二つ有しており、二つの前記折り曲げ部が平行であり、二つの前記遮蔽部が、二つの前記折り曲げ部の中心線に対して、線対称である、[1]に記載のサーバーラック用の遮熱板。
遮蔽部を二つ設けることにより、サーバーラックに取り付けられた状態において、対向して配置した遮蔽部の間に空気の空間を形成できるため、サーバーラック用の遮蔽板の断熱性が向上する。
【0009】
[7]前記遮蔽部は、前記折り曲げ部に平行な方向に設けられた第1の切断ガイド部と、前記折り曲げ部と交差する方向に設けられた複数の第2の切断ガイド部とを備えており、複数の前記第2の切断ガイド部が平行である、[1]に記載のサーバーラック用の遮熱板。
第1および第2の切断ガイド部に沿って切り欠き部を形成することにより、遮蔽部のラック内の配線などに対応した形状とすることができる。第2の切断ガイド部に加えて、折り曲げ部から離れた位置に第1の切断ガイド部を備えているため、切り欠き部を形成した後における遮蔽部の一体性を維持できる。
【0010】
[8][1]~[7]のいずれか一項に記載のサーバーラック用の遮熱板における前記遮蔽部と前記取付部との位置関係を調整する調整用治具であって、長手方向における一方端は、先端に向かって徐々に厚みが小さくなるように形成された鉤状部であり、前記長手方向における他方端は、先端に向かって徐々に厚みが小さくなるように形成された傾斜部と、前記傾斜部よりも厚みが大きい端面とを備えていることを特徴とする、調整用治具。
一方端の鉤状部と、他方端の傾斜部および端面とを用いて、サーバー内の狭い空間における遮蔽部の位置を調整することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遮蔽板は樹脂板で構成されているため、サーバーラック用の遮熱板の断熱性を向上させるとともに、サーバーラックに応じて低コストで製造することができる。また、サーバーラックに設置する前において、遮蔽板を積み重ねることができるため、運搬および保管に要するコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】床下送風路からサーバー用のラックに冷風を供給する冷却システムの模式図である。
【
図2】ラック内におけるサーバー冷却の模式図である。
【
図3A】遮熱板の無いラック内の温風と冷風との流れを示す模式平面図である。
【
図3B】遮熱板を有するラック内の温風と冷風との流れを示す模式平面図である。
【
図6】本発明の遮熱板によるラック内における冷風と温風の流れの分断を示す模式平面図である。
【
図7】本発明の遮熱板が設けられたラックの正面図である。
【
図8】遮熱板における遮蔽部の位置調整に用いられる調整用治具の斜視図である。
【
図9A】治具を用いて遮蔽部を引き出す操作を模式的に示す一部断面図である。
【
図9B】治具を用いて遮蔽部を押し込む操作を模式的に示す一部断面図である。
【
図10B】参考例の治具を用いた場合の
図10Aに対応する領域の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施態様について、図面を参照して以下に説明する。各図に示す座標は、方向や部材の位置関係を示すためのものである。
【0014】
図1はサーバー用のラック1を載置するデータセンター内におけるサーバー冷却システムの模式図である。データセンターでは、複数のサーバーが配置されたラック1の間に、二重床における上側の床3に網板(グレーチング)などで構成される通気部2が設けられる。そして、クーラー4から床下送風路5の通気部2を介してラック1に供給された冷風6がサーバーの冷却に用いられる。
【0015】
図2はラック1内におけるサーバー8の冷却を模式的に示す図である。同図に示すように、ラック1内のサーバー8は、吸気口9から取り入れた冷風6を用いてサーバー8を構成する機器を冷却し、排気口10から冷却後の温風7を排出する。このラック1の前面から背面(Z1からZ2方向)への空気の流れは、例えば、ラック1の天井や背面に設けられた図示しないファンにより形成される。ファンを有さないラック1の場合、吸気口9からの冷風6の取入れおよび排気口10からの温風7の排出を効率よく行うため、ラック1の筐体にパンチングメタルなどが用いられる。
【0016】
図3Aは、遮熱板の無いラック1内における冷風6と温風7との流れを示す模式平面図である。この場合、ラック1内が冷風6用の空間(コールドアイル)と、温風7用の空間(ホットアイル)とが分離されていない。したがって、ラック1内の隙間やデットスペースからサーバー8の吸気口9側に回り込んだ温風7が冷風6に混入し、冷風6とともに吸気口9に取り入られる。このため、ラック1内における冷風6への温風7の混入によってサーバー8の冷却効率が低下する。
【0017】
図3Bは、遮熱板50を有するラック1内の冷風6と温風7との流れを示す模式平面図である。遮熱板50は、サーバー8の前面(Z1)側に集中している隙間やデットスペースを遮断して、ラック1内を冷風6用の空間と温風7用の空間とに分離する。遮熱板50を設けることにより、ラック1内において温風7が冷風6に混入することによる、サーバー8の冷却効率の低下を防止できる。
【0018】
しかし、従来の遮熱板50は熱伝導率が高い金属で形成されているため、遮熱板50を介して温風7の熱が冷風6に伝わる虞があった。すなわち、冷風6用の空間と温風7用の空間とを分離する遮熱板50が温風7によって加熱されて熱くなり、遮熱板50の熱が冷風6に熱が伝わることで、サーバー8の冷却効率が低下する虞があった。また、金属製の遮熱板50は、製造および保管のコストが高いという問題もあった。そこで、発明者らは、金属よりも熱伝導率が低く、加工が容易な樹脂板により遮熱板11を形成することとした。
【0019】
図4、
図5は、遮熱板11を示す平面図、斜視図である。熱伝導率が低い樹脂板により遮熱板11を形成することで、遮熱板11を介して温風7の熱が冷風6に伝わることによってサーバー8の冷却効率が低下することを抑制できる。また、加工が容易な樹脂板を用いた遮熱板11は、従来の金属製の遮熱板50よりも、低コストで製造することが可能である。また、ラック1の状態に応じて、遮熱板11の形状などを調整することが容易である。
【0020】
なお、
図5では、サーバー8のX1側に設けられる遮熱板11(
図6および
図7参照)に対応させてXYZ座標を示した。サーバー8のX2側に設けられる遮熱板11の場合、参照用の座標のX軸におけるX1とX2とが反対になる。
【0021】
遮熱板11は、遮蔽部12と取付部13との境界に設けられた直線状の折り曲げ部14において、折り曲げ可能に構成されている。折り曲げ部14で折り曲げることにより、遮蔽部12が取付部13に対して立ち上がった状態となり、当該状態を維持できる。ここで、立ち上がった状態とは、遮蔽部12の面が取付部13面に対して傾いた状態をいう。遮熱板11は、各遮蔽部12の面を取付部13の面に対して略直角となった状態を維持できるように構成されている。
図5に示すように、遮熱板11は、二つの遮蔽部12の面が平行になった、Y軸方向から見たときにコの字状の状態で使用される。
【0022】
遮熱板11は、折り曲げ部14で折り曲げられる前の段階では、取付部13の両側に遮蔽部12を備えた平板である。このため、遮熱板11を複数重ねた状態で運搬、保管することが可能である。したがって、金属製の遮熱板50と比較して、運搬、保管に要するスペースが少なくなるため、これらに要する費用を抑えることができる。
【0023】
遮熱板11は、サーバー8の取り付けに用いられる取付部13の両側のそれぞれに遮蔽部12および折り曲げ部14を有している。二つの折り曲げ部14は平行であり、二つの折り曲げ部14の中心線LCに対して、二つの遮蔽部12が線対称に形成されている。
【0024】
遮蔽部12は、遮熱板11において、取付部13の両側に位置する矩形状の領域である。折り曲げ部14で折り曲げられる前においては、遮蔽部12と取付部13とは、平面状の一枚の板における、折り曲げ部14によって分けられた隣接する領域である。遮熱板11が取り付けられた状態においては、折り曲げ部14によって折り曲げられることにより、遮蔽部12が取付部13に対して立ち上がった状態となる。立ち上がった状態の遮蔽部12がラック1のコールドアイルとホットアイルとを分ける壁となる。
【0025】
なお、取付部13の片側にのみ遮蔽部12および折り曲げ部14が形成された構成としてもよい。ただし、後述するように、遮熱効率のよい遮熱板11とするためには、遮蔽部12を二つ備えていることが好ましい。
【0026】
取付部13は、遮熱板11において、遮蔽部12の間に位置する矩形状の領域である。取付部13には取付穴131が形成されており、取付穴131を用いて、ラック1(
図6および
図7参照)のマウントレールに取り付けられる。
【0027】
折り曲げ部14は、Y軸方向に遮熱板11の全体にわたって設けられた直線であり、取付部13に対して遮蔽部12を折り曲げるためのガイドとして機能する。折り曲げ部14は、遮蔽部12と取付部13とを折り曲げること、および、折り曲げた状態を維持することが可能である。折り曲げ部14は、例えば、遮熱板11の厚み方向の途中まで形成された切り込みやミシン目などにより形成される。
【0028】
切り込みにより折り曲げ部14を形成すれば、遮蔽部12と取付部13との境界における切り込みが形成された面とは反対側にのみ遮蔽部12を折り曲げ可能となる。ミシン目により折り曲げ部14を形成すれば、取付部13のいずれ側の面にも遮蔽部12を折り曲げることができる。
【0029】
図6は、ラック1内の冷風6と温風7の流れの遮熱板11による分断を示す模式平面図である。なお、
図6では、説明の便宜上、マウントレール(マウントアングル、ラックフレーム)を省略して、ラック1、冷風6、温風7、サーバー8、吸気口9、排気口10および遮熱板11の関係を模式的に示している。
【0030】
同図に示すように、遮熱板11の取付部13がラック1のマウントレールに取り付けられた状態では、折り曲げ部14において折り曲げて、取付部13の両側の遮蔽部12を立ち上げた状態とする。これにより、冷風6の空間(コールドアイル)と温風7の空間(ホットアイル)との間に、遮蔽部12の壁が二つ形成される。遮蔽部12を二重に形成することで、冷風6と温風7との間に空気層15が形成されるため、遮熱板11による断熱性が向上する。このように、二つの遮蔽部12を設けることで遮熱板11の断熱性が良くなるから、冷風6に対する温風7の影響を抑えて、サーバー8を効率よく冷却することが可能になる。
【0031】
図7は遮熱板11が設けられたラック1の正面図である。同図に示すように、遮蔽部12には、折り曲げ部14に平行な方向に設けられた第1の切断ガイド部121と、折り曲げ部14と交差する方向に設けられた複数の第2の切断ガイド部122とを備えている。遮熱板11がラック1に取り付けられた状態では、第1の切断ガイド部121がY軸方向に平行となり、複数の第2の切断ガイド部122はいずれもX軸方向に平行となる。
【0032】
第1の切断ガイド部121および第2の切断ガイド部122は、取付作業の担当者が力を加えることにより、当該部分で破断可能に構成されている。例えば、部分的に切断された部分が点線状に連なった破断線(ミシン目)や、厚み方向の途中まで形成された切り込みとして形成されている。このため、遮熱板11が設けられたラック1内部の配線状況に応じて、部分的に遮蔽部12を取り外すことができる。
【0033】
図4に示すように、遮蔽部12における第1の切断ガイド部121および第2の切断ガイド部122は、二つの折り曲げ部14の中心線LCに対して、線対称に形成されている。このため、
図7に示す遮熱板11が設けられた状態において対向する遮蔽部12には、Z軸に沿って見たときに、同じ位置に第1の切断ガイド部121および第2の切断ガイド部122が形成されている。したがって、Z軸に沿って見たときに、対向する部位を取り除くことができる。
【0034】
遮蔽部12には、X軸に平行な複数の第2の切断ガイド部122に加えて、折り曲げ部14から距離をあけてY軸に平行な第1の切断ガイド部121が設けられている。例えば、
図7に斜線を付して示した部分P1をその周りの第1の切断ガイド部121および第2の切断ガイド部122に沿って取り除いた場合、部分P1のX2側に部分P2が残される。このため、遮蔽部12の一部を取り除いた後において、遮蔽部12の残る部分を一体性よく保持することができる。
【0035】
折り曲げ部14と第1の切断ガイド部121とのZ軸方向の距離Lは、遮蔽部12の一部を取り除いた後の遮蔽部12を一体性よく保持するとともに、一部を取り外すときに遮蔽部12に裂けが生じることを防ぐ観点から、遮蔽部12のZ軸方向の幅Dに対して1/10以上が好ましく、2/10以上がさらに好ましい。また、距離Lは、遮蔽部12の一部を適切な範囲で取り外す観点から、幅Dに対して5/10以下が好ましく、4/10以下がさらに好ましい。
【0036】
遮熱板11における遮蔽部12および取付部13は、光透過性がある樹脂板を用いて形成されている。このため、遮蔽部12を介して、ラック1内における配線を容易に確認することが可能である。樹脂板に用いられる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、軟質塩化ビニル、ポリカーボネート、PET樹脂などが挙げられる。破断線(ミシン目)で形成された折り曲げ部14で折り曲げた際に遮熱板11に割れが生じる虞が小さい点において、ポリプロピレンの樹脂板が好ましい。
【0037】
本実施形態において光透過性がある樹脂板とは、作業時においてラック1内における配線を確認可能な程度の透明性を備えたものをいう。全光線透過率(測定方法ISO 13468-1)が40%以上の樹脂板であれば、ラック1内における配線を確認することができる。外観および作業性の観点から好ましい光透過性を備えた樹脂板として、例えば、全光線透過率が40%~80%程度の乳白色の半透明の樹脂板が挙げられる。
【0038】
光透過性のある樹脂板の加工により、遮蔽部12および取付部13が光透過性を備えた遮熱板11を製造することができる。ただし、遮熱板11が取り付けられた状態において、コールドアイルとホットアイルとを分ける壁となるのは遮蔽部12である。このため、ラック1内の配線を確認する観点では、遮蔽部12が光透過性を備えていればよく、取付部13は光透過性を備えていなくてもよい。
【0039】
図8は遮熱板11の調整に用いる治具20の斜視図である。同図に示す治具20は、遮熱板11における遮蔽部12と取付部13との位置関係を調整するために用いられる。治具20の長手方向における一方端は、先端に向かって徐々に厚みが小さくなるように形成された先が曲がった鉤状部21であり、治具20の長手方向における他方端は、端面22と傾斜部23とを備えている。端面22は傾斜部23よりも厚みが大きい。傾斜部23は、端面22の一部から先端に向かって徐々に厚みが小さくなるように形成され、端面22に対して傾いた斜面24を備えている。
【0040】
図9Aに示すように、治具20の鉤状部21を遮蔽部12の先端にひっかけて引き出すことにより、遮蔽部12をZ1方向に引き出す方向に、取付部13との位置関係を調整することができる。
【0041】
また、
図9Bに示すように、治具20の端面22と傾斜部23の斜面24とを遮蔽部12の先端にあてて押し込むことにより、遮蔽部12をZ2方向に押し込む方向に、取付部13との位置関係を調整することができる。
【0042】
図10Aは、
図9Bにおける領域Aを拡大して示す一部断面図であり、
図10Bは、参考例として端面22のみを備えた治具30を用いた場合における、
図10Aに対応する領域を示す一部断面図である。
【0043】
図10Bに示すように、端面22のみを備えた治具30を用いた場合、遮蔽部12の先端が治具30の端面22との接点C1において接する。このため、治具30の端面22により遮蔽部12の先端を押し込んだときに、遮蔽部12の先端が端面22上を滑りやすい。
【0044】
対して、本実施形態の治具20は、端面22から突出する傾斜部23が設けられており、Y軸方向からみたときに端面22と傾斜部23の斜面24とが鈍角を形成している。このため、遮蔽部12の先端は、治具20の端面22との接点C1および治具20の傾斜部23の斜面24との接点C2において接することになる。治具20により遮蔽部12の先端を押し込むことにより、接点C1および接点C2の2点において、遮蔽部12の先端を挟み込むように遮蔽部12に力を加えることができる。したがって、治具20は治具30よりも、遮蔽部12の先端を押し込んだときに遮蔽部12の先端が滑りにくい。このように、治具20を用いることにより、遮蔽部12の先端に対して効率的に力を加えることができるため、遮蔽部12の位置の調整が容易であり、作業性が向上する。
【0045】
なお、
図9Aおよび9Bでは、対向する遮蔽部12のうちの手前側(Z1側)の遮蔽部12の位置を調整する場合について示した。しかし、手前側(Z1側)の遮蔽部12の折り曲げ部14を折り曲げる前における奥側(Z2側)の遮蔽部12の位置の調整にも同様に治具20を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明はデータセンターのサーバーラックにおいて、冷風と温風とを遮断することにより、サーバーの冷却効率を向上することができる遮熱板として有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 :ラック(サーバーラック)
2 :通気部
3 :床
4 :クーラー
5 :床下送風路
6 :冷風
7 :温風
8 :サーバー
9 :吸気口
10 :排気口
11 :遮熱板
12 :遮蔽部
13 :取付部
14 :折り曲げ部
15 :空気層
20、30:治具
21 :鉤状部
22 :端面
23 :傾斜部
24 :斜面
50 :遮熱板
121 :第1の切断ガイド部
122 :第2の切断ガイド部
131 :取付穴
LC :中心線
L :距離
D :幅
P1、P2:部分
A :領域
C1、C2:接点