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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114218
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】床用目地装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016468
(22)【出願日】2022-02-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001FA11
2E001FA18
2E001FA54
2E001FA71
2E001GA12
2E001HA01
2E001HB01
2E001LA18
2E001PA03
2E001PA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】係合ピンにかかる荷重を分散でき、中央維持装置と棒状部材とが干渉することを防止できる床用目地装置を提供する。
【解決手段】躯体との間の目地部を塞ぐ床用目地装置は、一方に設けられた第1の目地プレート支持部5と、他方に設けられた第2の目地プレート支持部6と、一端部が第1の目地プレート支持部に支持され、他端部が第2の目地プレート支持部に支持され前記目地部を塞ぐ目地プレート7と、一方の躯体に一端部が前後方向に回動可能に取り付けられ、他端部が他方の躯体に前後方向に回動可能に取り付けられ、その略中央部が目地部の略中央部に位置する複数個の中央維持装置9と、中央維持装置に接続され、前後方向に延在する桁部材10と、前記桁部材に設けられ、挿入部材8が上下方向に摺動可能に挿入される被挿入部材とで構成され、前記中央維持装置は、リンク機構と前記桁部材が接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体と他方の躯体との間の目地部を塞ぐ床用目地装置において、前記一方の躯体に設けられた第1の目地プレート支持部と、前記他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、一端部が第1の目地プレート支持部に支持され、他端部が前記第2の目地プレート支持部に支持され前記目地部を塞ぐ目地プレートと、前記目地プレートの底部の略中央部に設けられ下方へ延在する棒状の挿入部材と、前記一方の躯体に一端部が前後方向に回動可能に取り付けられ、他端部が前記他方の躯体に前後方向に回動可能に取り付けられ、その略中央部が前記目地部の略中央部に位置する複数個の中央維持装置と、前記中央維持装置に接続され、前後方向に延在する桁部材と、前記桁部材に設けられ、前記挿入部材が上下方向に摺動可能に挿入される被挿入部材とで構成され、前記中央維持装置は、複数個の枢支部を有し、正面視において、なす角を形成する左右一対の長杆が略逆山形形状に接続されたリンク機構又は左右方向に移動する1対のラック及び該1対のラックの間に介在するピニオンのいずれか一方であり、前記ピニオンの中心部と前記桁部材が接続されている床用目地装置。
【請求項2】
前記目地プレートは、浅皿状の目地プレート本体と、前記目地プレート本体に充填された充填部材と、前記充填部材の上部を覆うように設けられた化粧部材と、前記目地プレート本体の一端部及び他端部にヒンジ部材を介してそれぞれ設けられたカバープレートとで構成されることを特徴とする請求項1に記載の床用目地装置。
【請求項3】
前記カバープレートの上面には、前記化粧部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の床用目地装置。
【請求項4】
前記化粧部材は人工芝であることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の床用目地装置。
【請求項5】
前記第1の目地プレート支持部及び前記第2の目地プレート支持部の前記目地部と反対側の端部には、前記目地部が地震によって狭くなった際に前記目地プレートが乗り上げる乗り上げ傾斜面と、この乗り上げ傾斜面に連続し、前記目地プレートを支持する目地プレート受け部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の床用目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は躯体の間の目地部を塞ぐ床用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地装置としては、例えば「目地部を介した左右の床躯体に、該目地部の幅寸法のほぼ半分の寸法で反目地部側に傾斜面が形成された左右の目地プレート支持凹部と、この左右の目地プレート支持凹部を覆うように並列された複数個の目地プレートと、前記左右の目地プレート支持凹部の下部位置の目地部側の前記左右の床躯体にほぼ水平状態で固定された少なくとも一対のガイドレール、この少なくとも一対のガイドレールに両端部がスライド移動可能に取付けられ、中央部が枢支された少なくとも2個以上のX字状の支持リンク、この少なくとも2個以上のX字状の支持リンクの中央枢支部に枢支ピンで枢支された中央維持バー、前記複数個の目地プレートのほぼ中央部の両側寄りの部位にそれぞれ固定された、前記中央維持バーに形成されたピン挿入孔へスライド移動可能に挿入される目地プレートを移動させる係合ピンとからなる目地プレート中央維持機構とを備えることを特徴とする床用目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような床用目地装置では、係合ピンや中央維持バー等に荷重が過剰にかかってしまうという欠点があった。また、目地部が狭くなった際に中央維持機構と係合ピンが干渉するおそれもあった。
【0004】
さらに、目地部の幅の1.5倍以上の長さの支持リンクを目地部に斜めに架け渡す必要があり、目地プレートのピッチに対して中央維持機構ピッチが大きくなってしまい、不安定に成らざるを得ない欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-7287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、係合ピン等にかかる荷重を分散できるとともに、中央維持装置と棒状部材とが干渉することを防止でき、かつ、地震による揺れ動きを確実に吸収できる床用目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の床用目地装置は、一方の躯体と他方の躯体との間の目地部を塞ぐ床用目地装置において、前記一方の躯体に設けられた第1の目地プレート支持部と、前記他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、一端部が第1の目地プレート支持部に支持され、他端部が前記第2の目地プレート支持部に支持され前記目地部を塞ぐ目地プレートと、前記目地プレートの底部の略中央部に設けられ下方へ延在する棒状の挿入部材と、前記一方の躯体に一端部が前後方向に回動可能に取り付けられ、他端部が前記他方の躯体に前後方向に回動可能に取り付けられ、その略中央部が前記目地部の略中央部に位置する複数個の中央維持装置と、前記中央維持装置に接続され、前後方向に延在する桁部材と、前記桁部材に設けられ、前記挿入部材が上下方向に摺動可能に挿入される被挿入部材とで構成され、前記中央維持装置は、複数個の枢支部を有し、正面視において、なす角を形成する左右一対の長杆が略逆山形形状に接続されたリンク機構又は左右方向に移動する1対のラック及び該1対のラックの間に介在するピニオンのいずれか一方であり、前記ピニオンの中心部と前記桁部材が接続されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の床用目地装置の前記目地プレートは、浅皿状の目地プレート本体と、前記目地プレート本体に充填された充填部材と、前記充填部材の上部を覆うように設けられた化粧部材と、目地プレート本体の一端部及び他端部にヒンジ部材を介してそれぞれ設けられたカバープレートとで構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の床用目地装置の前記カバープレートの上面には、前記化粧部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の床用目地装置の前記化粧部材は人工芝であることを特徴とする。
請求項5に記載の床用目地装置の前記第1の目地プレート支持部及び前記第2の目地プレート支持部の前記目地部と反対側の端部には、前記目地部が地震によって狭くなった際に前記目地プレートが乗り上げる乗り上げ傾斜面と、この乗り上げ傾斜面に連続し、前記目地プレートを支持する目地プレート受け部がそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、中央維持装置が、その正面視において、なす角を形成する左右一対の長杆が略逆山形形状に接続されたリンク機構又は左右方向に移動する1対のラック及び前記1対のラックの間に介在するピニオンのいずれか一方なので、目地部の寸法が変化し、これに追動して中央維持装置の前記略逆山形形状の左右一対の長杆のなす角が変位しても、又は前記1対のラックが互いに異なる方向に移動しても、挿入部材等に干渉することがない。したがって、スムーズに地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)挿入部材は筒状の被挿入部材に挿入された状態で設けられているので、地震時にかかる荷重を適切に分散することができる。
(3)請求項2乃至請求項4に記載の各発明においても、前記(1)~(2)と同様の作用効果を得られるとともに、化粧部材等を設けることで美観を向上させることができる。
(4)請求項5に記載の発明においても、前記(1)~(3)と同様の作用効果を得られるとともに、躯体の床面を傷つけることなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至図6は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図7及び図8は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の床用目地装置の平面図。
図2図1の2-2線に沿う断面図。
図3図1の3-3線に沿う断面図。
図4】目地プレートの説明図。
図5】地震で目地部が狭くなった状態の説明図。
図6】地震で目地部が広くなった状態の説明図。
図7】第2の実施形態の床用目地装置の平面図。
図8図7の8-8線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1乃至図6に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4と目地部2を塞ぐ床用目地装置である。すなわち、図1を参照にすると、1は目地部2を介して左右に設けられた一方の躯体3と他方の躯体4間に設置される床用目地装置である。
【0016】
なお、左右方向とは図1における左右方向であり、前後方向とは図1における上(後)下(前)方向をいい、上下方向とは図2における上下方向をいう。また正面視は、図2を基準とする。
【0017】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0018】
この床用目地装置1は、例えば図1乃至図3に示すように、一方の躯体3に設けられた第1の目地プレート支持部5と、前記他方の躯体4に設けられた第2の目地プレート支持部6と、一端部が第1の目地プレート支持部5に支持され、他端部が前記第2の目地プレート支持部6に支持された複数個の目地プレート7と、前記目地プレート7の底部に設けられ、かつ下方へ略垂下状態に延在する棒状の挿入部材8と、前記一方の躯体3の目地部側壁面3aに一端部が前後方向に回動可能に取り付けられ、他端部が前記他方の躯体4の目地部側壁面4aに前後方向に回動可能に取り付けられ、その略中央部が前記目地部2の略中央部に常時位置する複数個の中央維持装置9と、前記中央維持装置9に接続され、前後方向に延在する桁部材10と、前記桁部材10に設けられ、前記挿入部材8が上下方向に摺動可能に挿入される筒状の被挿入部材11とで構成されている。
【0019】
一方の躯体3の床面には、凹所状の第1の目地プレート支持部5が設けられており、他方の躯体4の床面にも前記第1の目地プレート支持部5と同様の構成の第2の目地プレート支持部6が形成されている。この第1の目地プレート支持部5及び第2の目地プレート支持部6の目地部2と反対側の端部には、目地部2が狭くなった際に目地プレート7が乗り上げる乗り上げ傾斜面12と、この乗り上げ傾斜面12に連続し、目地プレート7の底面を支持する目地プレート受け部23がそれぞれ形成されている。この目地プレート受け部23は一方の躯体3の床面3bや他方の躯体4の床面4bよりもやや高くなるように形成されており、この左右1対の目地プレート受け部23によって目地プレートをほぼ水平に保持できる程度の長さを有している。
【0020】
このような目地プレート受け部23を形成することにより、一方の躯体3や他方の躯体4の床面3b、4bに人工芝等が敷設されていた場合であっても、せり上がった目地プレート7は目地プレート受け部23上をスライド移動するため、人工芝や化粧板等の躯体の床面3b、4bを傷つけることがない。
【0021】
なお、第1の目地プレート支持部5、第2の目地プレート支持部6、乗り上げ傾斜面12及び目地プレート受け部23の全体又は一部やこれらの部位のうち任意の部位のみを金属板等の補強手段で覆ってもよい。
【0022】
目地プレート7は、例えば図4に示すように、浅皿状の目地プレート本体13と、前記目地プレート本体13の底部の左右方向の略中央部に設けられた棒状の挿入部材8と、前記目地プレート本体13に充填されたセメントやモルタル等の充填部材14と、前記充填部材14の上部を覆うように設けられた化粧部材15と、目地プレート本体13の両端部にヒンジ部材16を介して設けられたカバープレート17とで構成されている。
【0023】
挿入部材8は、本実施形態においては、下方へ延在する丸棒状の部材で、目地プレート7の底部の左右方向及び前後方向の略中央部に1つ設けられている。この挿入部材8の長さは、目地プレート7が地震によって上方へせり上がった場合に、後述する被挿入部材11から脱落しない程度の長さ、好ましくは、目地プレート7が地震によって上方へせり上がった場合であっても被挿入部材11に100mm程度挿入された状態となる程度の長さに形成することが望ましい。なお、挿入部材8はパイプ状、角棒状、角パイプ状等の形状にすることができ、長尺のバー状であれば断面形状は任意の形状とすることができる。
なお、挿入部材8は1つの目地プレート7に対して複数個設けてもよい。
【0024】
化粧部材15は、石材や板材で構成される化粧板等を用いてもよいが、本実施形態においては、人工芝を化粧部材15として用いている。このような化粧部材15を用いることにより、例えば一方の躯体3としての免震建物と他方の躯体4の床面4bとしてのグラウンドに30mm程度の長さの人工芝が敷設されており、この間に目地部2が存在する場合に、10mm程度の短い人工芝を化粧部材15として設けることにより、人工芝が一面に敷設されているような状態となり、目地部2を違和感なく塞ぐことができるとともに、美観を向上させることができる。
なお、カバープレート17の上面にも人工芝等の化粧部材15を設けることができ、カバープレート17の上面に化粧部材15を設けることで、より美観を向上させることができる。
【0025】
前記中央維持装置9は、図2を基準とする正面視において、なす角を形成する左右一対の長杆18a、18bが略逆山形形状となるように枢支部が枢支ピンで枢支されたリンク部材18と、前記リンク部材18の上端部の中央に位置する中央枢支部19に取り付けられ、桁部材10と接続される接続部材20とで構成されている。このリンク部材18の上端部の両端部が前記一方の躯体3の目地部2側の壁面3a及び他方の躯体4の目地部2側の壁面4aにそれぞれ前後方向に回動可能に取り付けられている。このように構成することにより、上端部の枢支部が常時略水平に配置され、リンク部材18が伸縮しても、換言すると、前記略逆山形形状の左右一対の長杆18a、18bのなす角が大きくなったり、又は小さくなったり変化しても、リンク部材18の上端部が略水平を保ったまま伸縮することができる。
【0026】
このような中央維持装置9を用いることにより、中央維持装置9が伸縮しても挿入部材8等に与える影響が少ないため、任意の位置に中央維持装置9を配置することができ、桁部材10を安定した状態で維持することができる。
【0027】
この中央維持装置9は、前後方向に所定間隔を有して複数個、本実施形態では4つの中央維持装置9が設けられている。
【0028】
前記接続部材20は、リンク部材18の上端部の中央枢支部19に取り付けられているため、常時目地部2の略中央に位置する。
【0029】
桁部材10は、本実施形態においては、角パイプ又は角棒状の部材で、その左右方向の略中央部に前記接続部材20が固定的又は着脱自在に接続される。これにより桁部材10は常時目地部2の略中央部に位置する。
【0030】
この桁部材10には、挿入部材8が略嵌合状態で挿入されるパイプ状の被挿入部材11が所定間隔を有して複数個設けられている。
【0031】
被挿入部材11は、挿入部材8が上下方向に摺動可能で、かつ、略嵌合状態となるような孔形状を有するパイプ状の部材で、本実施形態においては、丸パイプ状に形成されており、桁部材10の板厚よりも下方に延在するように設けられている。この被挿入部材11の下端部は開放されており、挿入部材8が被挿入部材11の下端部よりも下方へ突出してもよい。このように挿入部材8を貫通状態で設けることも可能であるので被挿入部材11の長さは挿入部材8の長さより短くてもよいが、少なくとも200mm程度の長さを有することが望ましい。
【0032】
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が狭くなると、図5に示すように、目地プレート7の両端部が第1の目地プレート支持部5及び第2の目地プレート支持部6の乗り上げ傾斜面12により、目地プレート7が略水平状態を保ったまま略垂直に上方にせり上がり、目地プレート受け部23上を左右方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。このとき、挿入部材8は被挿入部材11から脱落しない程度の長さ、好ましくは、被挿入部材11に100mm程度挿入された状態となる程度の長さに形成することが望ましい。
【0033】
また、中央維持装置9は、正面視において略逆三角形状に形成されたリンク機構を用いているので、目地部2が狭くなりリンク機構が変形した場合であっても挿入部材8等に干渉することがない。
【0034】
さらに、目地プレート受け部23の上面をスライド移動して地震による揺れ動きを吸収するため、左右の躯体3、4の床面3b、4bを傷つけることを確実に防止することができる。
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、図6に示すように、目地プレート7の両端部が第1の目地プレート支持部5及び第2の目地プレート支持部6を左右方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。
【0035】
なお、地震で躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動いた場合には、中央維持装置9の両端部が前後方向に回動するとともに目地プレートの両端部が第1の目地プレート支持部5及び第2の目地プレート支持部6を前後方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。本願発明では、挿入部材8と長尺の被挿入部材11が略嵌合状態となっているため、挿入部材8等にかかる荷重を分散することができる。
【0036】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図7及び図8に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
図7及び図8に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、1対のラック部材21及びピニオン22を用いた中央維持装置9Aにした点で、このような中央維持装置9Aを用いた床用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0038】
本実施形態の中央維持装置9Aは、一端部が一方の躯体3の目地部2側の壁面に取り付けられた一方のラック21aと、一端部が他方の躯体4の目地部2側の壁面に取り付けられた他方のラック21bと、これらの1対のラック部材21と噛み合い、その中央部が常時目地部2の略中央部に位置するピニオン22と、前記ピニオン22の中央部と略同軸となるように設けられ、前記桁部材に接続される接続部材20Aとで構成されている。付言すると、前記1対のラック部材21(ラック21aとラック21bと)が互いに異なる方向に移動しても、前記第1実施形態のリンク機構を構成する左右一対の長杆18a、18bと同様に目地部2の左右幅の変化に対応するので、本発明の課題を達成することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態では浅皿状の目地プレート本体を用いた目地プレートを使用するものについて説明したが、その他公知の目地プレートを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は床用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0041】
1、1A:床用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:第1の目地プレート支持部、 6:第2の目地プレート支持部、
7:目地プレート、 8:挿入部材、
9、9A:中央維持装置、 10:桁部材、
11:被挿入部材、 12:乗り上げ傾斜面、
13:目地プレート本体、 14:充填部材、
15:化粧部材、 16:ヒンジ部材、
17:カバープレート、 18:リンク部材、
19:中央枢支部、 20、20A:接続部材、
21:ラック部材、 22:ピニオン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体と他方の躯体との間の目地部を塞ぐ床用目地装置において、前記一方の躯体に設けられた第1の目地プレート支持部と、前記他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、一端部が第1の目地プレート支持部に支持され、他端部が前記第2の目地プレート支持部に支持され前記目地部を塞ぐ目地プレートと、前記目地プレートの底部の略中央部に設けられ下方へ延在する棒状の挿入部材と、前記一方の躯体に一端部が前後方向に回動可能に取り付けられ、他端部が前記他方の躯体に前後方向に回動可能に取り付けられ、その略中央部が前記目地部の略中央部に位置する複数個の中央維持装置と、前記中央維持装置に接続され、前後方向に延在する桁部材と、前記桁部材に設けられ、前記挿入部材が上下方向に摺動可能に挿入される被挿入部材とで構成され
前記第1の目地プレート支持部及び前記第2の目地プレート支持部の前記目地部と反対側の端部には、前記目地部が地震によって狭くなった際に前記目地プレートが乗り上げる乗り上げ傾斜面と、この乗り上げ傾斜面に連続し、前記目地プレートを支持する目地プレート受け部がそれぞれ形成され、
前記目地プレート受け部は、前記一方の躯体の床面及び他方の躯体の床面よりも高くなるように形成されており、この左右1対の目地プレート受け部によって目地プレートをほぼ水平に保持できる程度の長さを有し、
前記中央維持装置は、複数個の枢支部を有し、正面視において、なす角を形成する左右一対の長杆が略逆山形形状に接続され、その上端部の中央に位置する中央枢支部と前記桁部材が接続されているリンク機構又は左右方向に移動する1対のラック及び該1対のラックの間に介在し、その中心部と前記桁部材が接続されているピニオンのいずれか一方である床用目地装置。
【請求項2】
前記目地プレートは、浅皿状の目地プレート本体と、前記目地プレート本体に充填された充填部材と、前記充填部材の上部を覆うように設けられた化粧部材と、前記目地プレート本体の一端部及び他端部にヒンジ部材を介してそれぞれ設けられたカバープレートとで構成されることを特徴とする請求項1に記載の床用目地装置。
【請求項3】
前記カバープレートの上面には、前記化粧部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の床用目地装置。
【請求項4】
前記化粧部材は人工芝であることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の床用目地装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は躯体の間の目地部を塞ぐ床用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地装置としては、例えば「目地部を介した左右の床躯体に、該目地部の幅寸法のほぼ半分の寸法で反目地部側に傾斜面が形成された左右の目地プレート支持凹部と、この左右の目地プレート支持凹部を覆うように並列された複数個の目地プレートと、前記左右の目地プレート支持凹部の下部位置の目地部側の前記左右の床躯体にほぼ水平状態で固定された少なくとも一対のガイドレール、この少なくとも一対のガイドレールに両端部がスライド移動可能に取付けられ、中央部が枢支された少なくとも2個以上のX字状の支持リンク、この少なくとも2個以上のX字状の支持リンクの中央枢支部に枢支ピンで枢支された中央維持バー、前記複数個の目地プレートのほぼ中央部の両側寄りの部位にそれぞれ固定された、前記中央維持バーに形成されたピン挿入孔へスライド移動可能に挿入される目地プレートを移動させる係合ピンとからなる目地プレート中央維持機構とを備えることを特徴とする床用目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような床用目地装置では、係合ピンや中央維持バー等に荷重が過剰にかかってしまうという欠点があった。また、目地部が狭くなった際に中央維持機構と係合ピンが干渉するおそれもあった。
【0004】
さらに、目地部の幅の1.5倍以上の長さの支持リンクを目地部に斜めに架け渡す必要があり、目地プレートのピッチに対して中央維持機構ピッチが大きくなってしまい、不安定に成らざるを得ない欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-7287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、係合ピン等にかかる荷重を分散できるとともに、中央維持装置と棒状部材とが干渉することを防止でき、かつ、地震による揺れ動きを確実に吸収できる床用目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の床用目地装置は、一方の躯体と他方の躯体との間の目地部を塞ぐ床用目地装置において、前記一方の躯体に設けられた第1の目地プレート支持部と、前記他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、一端部が第1の目地プレート支持部に支持され、他端部が前記第2の目地プレート支持部に支持され前記目地部を塞ぐ目地プレートと、前記目地プレートの底部の略中央部に設けられ下方へ延在する棒状の挿入部材と、前記一方の躯体に一端部が前後方向に回動可能に取り付けられ、他端部が前記他方の躯体に前後方向に回動可能に取り付けられ、その略中央部が前記目地部の略中央部に位置する複数個の中央維持装置と、前記中央維持装置に接続され、前後方向に延在する桁部材と、前記桁部材に設けられ、前記挿入部材が上下方向に摺動可能に挿入される被挿入部材とで構成され
前記第1の目地プレート支持部及び前記第2の目地プレート支持部の前記目地部と反対側の端部には、前記目地部が地震によって狭くなった際に前記目地プレートが乗り上げる乗り上げ傾斜面と、この乗り上げ傾斜面に連続し、前記目地プレートを支持する目地プレート受け部がそれぞれ形成され、前記目地プレート受け部は、前記一方の躯体の床面及び他方の躯体の床面よりも高くなるように形成されており、この左右1対の目地プレート受け部によって目地プレートをほぼ水平に保持できる程度の長さを有し、前記中央維持装置は、複数個の枢支部を有し、正面視において、なす角を形成する左右一対の長杆が略逆山形形状に接続され、その上端部の中央に位置する中央枢支部と前記桁部材が接続されているリンク機構又は左右方向に移動する1対のラック及び該1対のラックの間に介在し、その中心部と前記桁部材が接続されているピニオンのいずれか一方であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の床用目地装置の前記目地プレートは、浅皿状の目地プレート本体と、前記目地プレート本体に充填された充填部材と、前記充填部材の上部を覆うように設けられた化粧部材と、目地プレート本体の一端部及び他端部にヒンジ部材を介してそれぞれ設けられたカバープレートとで構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の床用目地装置の前記カバープレートの上面には、前記化粧部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の床用目地装置の前記化粧部材は人工芝であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、中央維持装置が、その正面視において、なす角を形成する左右一対の長杆が略逆山形形状に接続されたリンク機構又は左右方向に移動する1対のラック及び前記1対のラックの間に介在するピニオンのいずれか一方なので、目地部の寸法が変化し、これに追動して中央維持装置の前記略逆山形形状の左右一対の長杆のなす角が変位しても、又は前記1対のラックが互いに異なる方向に移動しても、挿入部材等に干渉することがない。したがって、スムーズに地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)挿入部材は筒状の被挿入部材に挿入された状態で設けられているので、地震時にかかる荷重を適切に分散することができる。
(3)請求項2乃至請求項4に記載の各発明においても、前記(1)~(2)と同様の作用効果を得られるとともに、化粧部材等を設けることで美観を向上させることができる。
(4)躯体の床面を傷つけることなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至図6は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図7及び図8は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の床用目地装置の平面図。
図2図1の2-2線に沿う断面図。
図3図1の3-3線に沿う断面図。
図4】目地プレートの説明図。
図5】地震で目地部が狭くなった状態の説明図。
図6】地震で目地部が広くなった状態の説明図。
図7】第2の実施形態の床用目地装置の平面図。
図8図7の8-8線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1乃至図6に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4と目地部2を塞ぐ床用目地装置である。すなわち、図1を参照にすると、1は目地部2を介して左右に設けられた一方の躯体3と他方の躯体4間に設置される床用目地装置である。
【0016】
なお、左右方向とは図1における左右方向であり、前後方向とは図1における上(後)下(前)方向をいい、上下方向とは図2における上下方向をいう。また正面視は、図2を基準とする。
【0017】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0018】
この床用目地装置1は、例えば図1乃至図3に示すように、一方の躯体3に設けられた第1の目地プレート支持部5と、前記他方の躯体4に設けられた第2の目地プレート支持部6と、一端部が第1の目地プレート支持部5に支持され、他端部が前記第2の目地プレート支持部6に支持された複数個の目地プレート7と、前記目地プレート7の底部に設けられ、かつ下方へ略垂下状態に延在する棒状の挿入部材8と、前記一方の躯体3の目地部側壁面3aに一端部が前後方向に回動可能に取り付けられ、他端部が前記他方の躯体4の目地部側壁面4aに前後方向に回動可能に取り付けられ、その略中央部が前記目地部2の略中央部に常時位置する複数個の中央維持装置9と、前記中央維持装置9に接続され、前後方向に延在する桁部材10と、前記桁部材10に設けられ、前記挿入部材8が上下方向に摺動可能に挿入される筒状の被挿入部材11とで構成されている。
【0019】
一方の躯体3の床面には、凹所状の第1の目地プレート支持部5が設けられており、他方の躯体4の床面にも前記第1の目地プレート支持部5と同様の構成の第2の目地プレート支持部6が形成されている。この第1の目地プレート支持部5及び第2の目地プレート支持部6の目地部2と反対側の端部には、目地部2が狭くなった際に目地プレート7が乗り上げる乗り上げ傾斜面12と、この乗り上げ傾斜面12に連続し、目地プレート7の底面を支持する目地プレート受け部23がそれぞれ形成されている。この目地プレート受け部23は一方の躯体3の床面3bや他方の躯体4の床面4bよりもやや高くなるように形成されており、この左右1対の目地プレート受け部23によって目地プレートをほぼ水平に保持できる程度の長さを有している。
【0020】
このような目地プレート受け部23を形成することにより、一方の躯体3や他方の躯体4の床面3b、4bに人工芝等が敷設されていた場合であっても、せり上がった目地プレート7は目地プレート受け部23上をスライド移動するため、人工芝や化粧板等の躯体の床面3b、4bを傷つけることがない。
【0021】
なお、第1の目地プレート支持部5、第2の目地プレート支持部6、乗り上げ傾斜面12及び目地プレート受け部23の全体又は一部やこれらの部位のうち任意の部位のみを金属板等の補強手段で覆ってもよい。
【0022】
目地プレート7は、例えば図4に示すように、浅皿状の目地プレート本体13と、前記目地プレート本体13の底部の左右方向の略中央部に設けられた棒状の挿入部材8と、前記目地プレート本体13に充填されたセメントやモルタル等の充填部材14と、前記充填部材14の上部を覆うように設けられた化粧部材15と、目地プレート本体13の両端部にヒンジ部材16を介して設けられたカバープレート17とで構成されている。
【0023】
挿入部材8は、本実施形態においては、下方へ延在する丸棒状の部材で、目地プレート7の底部の左右方向及び前後方向の略中央部に1つ設けられている。この挿入部材8の長さは、目地プレート7が地震によって上方へせり上がった場合に、後述する被挿入部材11から脱落しない程度の長さ、好ましくは、目地プレート7が地震によって上方へせり上がった場合であっても被挿入部材11に100mm程度挿入された状態となる程度の長さに形成することが望ましい。なお、挿入部材8はパイプ状、角棒状、角パイプ状等の形状にすることができ、長尺のバー状であれば断面形状は任意の形状とすることができる。
なお、挿入部材8は1つの目地プレート7に対して複数個設けてもよい。
【0024】
化粧部材15は、石材や板材で構成される化粧板等を用いてもよいが、本実施形態においては、人工芝を化粧部材15として用いている。このような化粧部材15を用いることにより、例えば一方の躯体3としての免震建物と他方の躯体4の床面4bとしてのグラウンドに30mm程度の長さの人工芝が敷設されており、この間に目地部2が存在する場合に、10mm程度の短い人工芝を化粧部材15として設けることにより、人工芝が一面に敷設されているような状態となり、目地部2を違和感なく塞ぐことができるとともに、美観を向上させることができる。
なお、カバープレート17の上面にも人工芝等の化粧部材15を設けることができ、カバープレート17の上面に化粧部材15を設けることで、より美観を向上させることができる。
【0025】
前記中央維持装置9は、図2を基準とする正面視において、なす角を形成する左右一対の長杆18a、18bが略逆山形形状となるように枢支部が枢支ピンで枢支されたリンク部材18と、前記リンク部材18の上端部の中央に位置する中央枢支部19に取り付けられ、桁部材10と接続される接続部材20とで構成されている。このリンク部材18の上端部の両端部が前記一方の躯体3の目地部2側の壁面3a及び他方の躯体4の目地部2側の壁面4aにそれぞれ前後方向に回動可能に取り付けられている。このように構成することにより、上端部の枢支部が常時略水平に配置され、リンク部材18が伸縮しても、換言すると、前記略逆山形形状の左右一対の長杆18a、18bのなす角が大きくなったり、又は小さくなったり変化しても、リンク部材18の上端部が略水平を保ったまま伸縮することができる。
【0026】
このような中央維持装置9を用いることにより、中央維持装置9が伸縮しても挿入部材8等に与える影響が少ないため、任意の位置に中央維持装置9を配置することができ、桁部材10を安定した状態で維持することができる。
【0027】
この中央維持装置9は、前後方向に所定間隔を有して複数個、本実施形態では4つの中央維持装置9が設けられている。
【0028】
前記接続部材20は、リンク部材18の上端部の中央枢支部19に取り付けられているため、常時目地部2の略中央に位置する。
【0029】
桁部材10は、本実施形態においては、角パイプ又は角棒状の部材で、その左右方向の略中央部に前記接続部材20が固定的又は着脱自在に接続される。これにより桁部材10は常時目地部2の略中央部に位置する。
【0030】
この桁部材10には、挿入部材8が略嵌合状態で挿入されるパイプ状の被挿入部材11が所定間隔を有して複数個設けられている。
【0031】
被挿入部材11は、挿入部材8が上下方向に摺動可能で、かつ、略嵌合状態となるような孔形状を有するパイプ状の部材で、本実施形態においては、丸パイプ状に形成されており、桁部材10の板厚よりも下方に延在するように設けられている。この被挿入部材11の下端部は開放されており、挿入部材8が被挿入部材11の下端部よりも下方へ突出してもよい。このように挿入部材8を貫通状態で設けることも可能であるので被挿入部材11の長さは挿入部材8の長さより短くてもよいが、少なくとも200mm程度の長さを有することが望ましい。
【0032】
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が狭くなると、図5に示すように、目地プレート7の両端部が第1の目地プレート支持部5及び第2の目地プレート支持部6の乗り上げ傾斜面12により、目地プレート7が略水平状態を保ったまま略垂直に上方にせり上がり、目地プレート受け部23上を左右方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。このとき、挿入部材8は被挿入部材11から脱落しない程度の長さ、好ましくは、被挿入部材11に100mm程度挿入された状態となる程度の長さに形成することが望ましい。
【0033】
また、中央維持装置9は、正面視において略逆三角形状に形成されたリンク機構を用いているので、目地部2が狭くなりリンク機構が変形した場合であっても挿入部材8等に干渉することがない。
【0034】
さらに、目地プレート受け部23の上面をスライド移動して地震による揺れ動きを吸収するため、左右の躯体3、4の床面3b、4bを傷つけることを確実に防止することができる。
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、図6に示すように、目地プレート7の両端部が第1の目地プレート支持部5及び第2の目地プレート支持部6を左右方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。
【0035】
なお、地震で躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動いた場合には、中央維持装置9の両端部が前後方向に回動するとともに目地プレートの両端部が第1の目地プレート支持部5及び第2の目地プレート支持部6を前後方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。本願発明では、挿入部材8と長尺の被挿入部材11が略嵌合状態となっているため、挿入部材8等にかかる荷重を分散することができる。
【0036】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図7及び図8に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
図7及び図8に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、1対のラック部材21及びピニオン22を用いた中央維持装置9Aにした点で、このような中央維持装置9Aを用いた床用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0038】
本実施形態の中央維持装置9Aは、一端部が一方の躯体3の目地部2側の壁面に取り付けられた一方のラック21aと、一端部が他方の躯体4の目地部2側の壁面に取り付けられた他方のラック21bと、これらの1対のラック部材21と噛み合い、その中央部が常時目地部2の略中央部に位置するピニオン22と、前記ピニオン22の中央部と略同軸となるように設けられ、前記桁部材に接続される接続部材20Aとで構成されている。付言すると、前記1対のラック部材21(ラック21aとラック21bと)が互いに異なる方向に移動しても、前記第1実施形態のリンク機構を構成する左右一対の長杆18a、18bと同様に目地部2の左右幅の変化に対応するので、本発明の課題を達成することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態では浅皿状の目地プレート本体を用いた目地プレートを使用するものについて説明したが、その他公知の目地プレートを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は床用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0041】
1、1A:床用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:第1の目地プレート支持部、 6:第2の目地プレート支持部、
7:目地プレート、 8:挿入部材、
9、9A:中央維持装置、 10:桁部材、
11:被挿入部材、 12:乗り上げ傾斜面、
13:目地プレート本体、 14:充填部材、
15:化粧部材、 16:ヒンジ部材、
17:カバープレート、 18:リンク部材、
19:中央枢支部、 20、20A:接続部材、
21:ラック部材、 22:ピニオン。