(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114221
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】モータおよび航空機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/18 20060101AFI20230809BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H02K3/18 P
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016475
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水上 順也
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB13
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB03
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD21
5H603CE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータの軸方向の幅が大きくなることを抑制したモータを提供する。
【解決手段】モータは、ロータと、ステータと、を備え、ステータは、コアバックおよびティース32を有するステータコアと、コイル4と、を有し、コイルは、ティースに配置される導電部材40を有し、導電部材は、ティースに巻かれる巻線部41と、巻線部から延びる端部42と、を有し、端部の軸方向の位置は、巻線部の軸方向の一方側の端から他方側の端までの範囲内である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転するロータと、
前記ロータに対して径方向に対向して配置されるステータと、を備え、
前記ステータは、
前記中心軸を中心とする環状のコアバックおよび前記コアバックから径方向に延びるティースを有するステータコアと、
前記ステータコアの少なくとも一部に配置されるコイルと、を有し、
前記コイルは、前記ティースに配置される導電部材を有し、
前記導電部材は、
前記ティースに巻かれる環状の巻線部と、
前記巻線部から延びる端部と、を有し、
前記端部の軸方向の位置は、前記巻線部の軸方向の一方側の端から他方側の端までの範囲内である、モータ。
【請求項2】
前記ステータは、複数相の前記コイルを有し、
各相の前記コイルは、第1コイルと、第2コイルと、を含み、
前記ステータは、前記第1コイルを構成する前記導電部材の前記端部と前記第2コイルを構成する前記導電部材の前記端部とを繋ぐ渡り線を有し、
前記渡り線の軸方向の位置は、前記範囲内である、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記端部は、始端部と、終端部と、を含み、
前記始端部は、前記巻線部のうち前記ティースに最も近い内側から延び、
前記終端部は、前記巻線部のうち前記ティースから最も離れた外側から延び、
前記渡り線は、前記第1コイルおよび前記第2コイルのそれぞれの前記導電部材のうち、一方の前記始端部と他方の前記終端部とを繋ぐ、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記終端部は、前記巻線部の軸方向の端から延びる、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記始端部および前記終端部は、前記ティースに対して軸方向の同側に配置される、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記終端部は、前記巻線部の周方向の端から延びる、請求項3に記載のモータ。
【請求項7】
前記巻線部は、
前記ティースに最も近い最下層に配置される最下層部と、
前記最下層部上に配置される上層部と、で構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記巻線部は、複数の前記上層部を有し、
複数の前記上層部は、前記最下層部上に重ねて配置される、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記導電部材は、複数本の導線で構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項10】
前記導電部材は、複数本の前記導線を互いに平行に一方向に配列した部材であり、
前記巻線部は、前記導電部材を構成する複数本の前記導線の配列方向と直交する方向に前記導電部材を層状に重ねた部分である、請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のモータと、
前記モータの駆動力により回転するプロペラと、を備える、航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよび航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータは、ステータを備える。ステータは、ステータコアに配置されるコイルを有する。コイルは、ステータコアに導線が巻かれることによって形成される(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、導線のうちステータコアに巻かれる部分の端部は、モータの中心軸に平行な軸方向に引き出される。これにより、コイルの軸方向の幅が大きくなる。その結果、モータのサイズを大きくする必要がある。
【0005】
本発明は、モータの軸方向の幅が大きくなることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、中心軸を中心として回転するロータと、ロータに対して径方向に対向して配置されるステータと、を備える。ステータは、中心軸を中心とする環状のコアバックおよびコアバックから径方向に延びるティースを有するステータコアと、ステータコアの少なくとも一部に配置されるコイルと、を有する。コイルは、ティースに配置される導電部材を有する。導電部材は、ティースに巻かれる環状の巻線部と、巻線部から延びる端部と、を有する。端部の軸方向の位置は、巻線部の軸方向の一方側の端から他方側の端までの範囲内である。
【0007】
また、本発明の例示的な航空機は、上記モータと、モータの駆動力により回転するプロペラと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の例示的なモータおよび航空機によれば、モータの軸方向の幅が大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る航空機の概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るモータの断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るステータの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るステータコアの斜視図である。
【
図5】
図5は、変形例に係るモータの断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るコイルを径方向内方から見た模式図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すコイルを矢印A方向から見た図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すコイルから上層部を省略した図である。
【
図9】
図9は、
図6に示すコイルを矢印B方向から見た図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るコイルを径方向内方から見た模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る渡り線を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
本明細書では、モータ100の中心軸CAが延びる方向を単に「軸方向」と呼び、軸方向の一方を上方と定義し、軸方向の他方を下方と定義する。ただし、この上下の定義がモータ100の使用時の向きおよび位置関係を限定するものではない。
【0012】
また、本明細書では、中心軸CAを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、径方向のうち、中心軸CAに近づく方向を単に「径方向内方」と呼び、中心軸CAから離れる向方向を単に「径方向外方」と呼ぶ。さらに、中心軸CAを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0013】
<1.航空機の概要>
図1は、本実施形態に係る航空機1000の概略図である。
【0014】
本実施形態に係る航空機1000は、モータ100を備える。航空機1000は、モータ100を駆動源とする。モータ100は、バッテリー1001から電力供給を受ける。また、航空機1000は、プロペラ1002を備える。プロペラ1002は、モータ100の駆動力により回転する。
【0015】
なお、モータ100の用途は特に限定されない。モータ100の用途が航空機1000の駆動源でなくてもよい。
【0016】
<2.モータの構成>
図2は、本実施形態に係るモータ100の断面図である。
図3は、本実施形態に係るステータ2の斜視図である。
図4は、本実施形態に係るステータコア3の斜視図である。
図5は、変形例に係るモータ100の断面図である。
【0017】
<2-1.実施形態に係るモータ>
本実施形態(
図2~
図4参照)では、モータ100は、ロータ1と、ステータ2と、を備える。また、モータ100は、シャフト10を備える。シャフト10は、上下に延びる中心軸CAに沿って配置される。シャフト10は、中心軸CAを中心として回転可能に保持される。ロータ1は、中心軸CAを中心として回転する。ステータ2は、ロータ1に対して径方向に対向して配置される。ステータ2は、ロータ1を回転させる。
【0018】
ロータ1は、ロータコア11と、マグネット12と、を有する。ロータコア11は、軸方向に延びる円筒状である。ロータコア11は、電磁鋼板が軸方向に複数積層された積層体である。マグネット12は、ロータコア11の径方向内側面に固定される。マグネット12は、円環状の永久磁石である。マグネット12は、N極とS極とを周方向に交互に有する。マグネット12は、複数のマグネット片を周方向に配列し、その複数のマグネット片をロータコア11の径方向内側面に固定した構成であってもよい。
【0019】
ロータ1は、回転部材110に固定される。回転部材110は、たとえば、有蓋筒状である。すなわち、回転部材110は、上面部111と、筒部112と、を有する。上面部111は、中心軸CAを中心とする円盤状である。上面部111は、中心軸CAに沿って下方に筒状に延びるシャフト固定部113を有する。
【0020】
シャフト固定部113の径方向内方には、シャフト10が配置される。シャフト10の径方向外側面は、シャフト固定部113の径方向内側面に固定される。これにより、シャフト10および回転部材110は、共に回転する。
【0021】
筒部112は、筒状であり、上面部111の径方向外方の端部から下方に延びる。ロータ1は、筒部112の径方向内方に配置される。具体的には、ロータコア11の径方向外側面は、筒部112の径方向内側面に固定される。これにより、ロータ1と共に回転部材110が回転する。
【0022】
プロペラ1002(
図1参照)は、回転部材110に固定される。たとえば、回転部材110は、上面部111にプロペラ保持部(図示せず)を有する。プロペラ1002は、締結部材を介して、上面部111のプロペラ保持部に締結される。
【0023】
ステータ2は、ステータコア3を有する。ステータコア3は、上下に延びる中心軸CAを中心とする環状体であり、電磁鋼板が軸方向に複数積層された積層体である。ステータ2は、ロータ1の径方向内方に配置される。すなわち、ステータコア3は、ロータ1の径方向内方に配置され、マグネット12と径方向に対向する。
【0024】
ステータコア3は、コアバック31を有する。コアバック31は、中心軸CAを中心とする環状である。コアバック31は、軸方向から見て円環状に形成される。また、ステータコア3は、ティース32を有する。ティース32は、コアバック31から径方向に延びる。具体的には、ティース32の個数は複数である。複数のティース32は、それぞれがコアバック31から径方向外方に延び、周方向に互いに間隔を隔てて配置される。
【0025】
ステータ2は、ステータホルダ120に保持される。ステータホルダ120は、ベース部121を有する。ベース部121は、中心軸CAを中心とする円盤状である。ベース部121は、モータ100の底面部を構成する。
【0026】
ステータホルダ120は、軸受保持部122を有する。軸受保持部122は、中心軸CAに沿って上方に筒状に延びる。軸受保持部122の径方向内方には、シャフト10が配置される。また、軸受保持部122の径方向内方には、軸受123が配置される。軸受123の径方向外側面は、軸受保持部122の径方向内側面に固定される。軸受123は、シャフト10を回転可能に保持する。
【0027】
なお、変形例として、図示しないが、シャフト10に対して回転部材110が回転してもよい。たとえば、ステータホルダ120に対してシャフト10が固定され、軸受123の外輪がシャフト固定部113に固定される。
【0028】
また、ステータ2は、コイル4を有する。コイル4は、ステータコア3の少なくとも一部に配置される。具体的には、コイル4は、後述する導電部材40によって構成される。また、ステータコア3の少なくとも一部は、インシュレータ(図示せず)によって覆われる。インシュレータは、樹脂などを用いた絶縁部材である。そして、コイル4は、インシュレータを介してステータコア3に導電部材40が巻かれることによって形成される。
図3では、コイル4を模式的に図示する。
【0029】
<2-2.変形例に係るモータ>
変形例(
図5参照)では、モータ100は、ステータ2に接続される基板300を備える。言い換えると、ステータ2は、基板300を有する。基板300は、コイル4に接続される。基板300には、コイル4への電力供給を制御する電子部品が実装される。
【0030】
基板300の形状は、特に限定されない。たとえば、基板300は、中心軸CAを中心とする円環状に形成される。基板300は、ステータ2の下方に配置される。言い換えると、基板300は、コイル4の下端と軸方向に間隔を隔てて配置される。また、図示しないが、基板300は、ステータ2の上方に配置されてもよい。この場合、基板300は、コイル4の上端と軸方向に間隔を隔てて配置される。
【0031】
なお、
図2に示す実施形態では、変形例の基板300に相当する基板は、モータ100の外側に配置される。実施形態の基板は、ステータホルダ120の下方に配置されてもよい。
【0032】
<3.コイルの構成>
図6は、本実施形態に係るコイル4を径方向内方から見た模式図である。
図6では、ティース32を図示することにより、コイル4とティース32との位置関係を明確にする。
図7は、
図6に示すコイル4を矢印A方向(上方)から見た図である。
図8は、
図7に示すコイル4から上層部420を省略した図である。
図9は、
図6に示すコイル4を矢印B方向(周方向)から見た図である。
図10は、変形例に係るコイルを径方向内方から見た模式図である。
【0033】
<3-1.コイル構成の概要>
コイル4は、導電部材40を有する。導電部材40は、ティース32に配置される。すなわち、コイル4は、ティース32に配置される導電部材40を有する。ここで、導電部材40は、複数のティース32にそれぞれ配置される。各ティース32に配置される導電部材40は、それぞれがコイル4となる。これにより、ステータコア3には、複数のコイル4が配置される。すなわち、ステータ2は、複数のコイル4を有する。複数のコイル4は、周方向に配列される。
【0034】
たとえば、ステータ2を製造するとき、空芯状のコイル4が別途形成される。コイル4を形成してステータコア3に配置する工程は、たとえば、第1~第3工程に分類できる。第1工程:芯材(図示せず)に導電部材40を巻き付け、環状のコイル4を形成する。第2工程:芯材からコイル4を外し、空芯状のコイル4を形成する。第3工程:空芯状のコイル4をティース32に挿入する。これにより、導電部材40がティース32に巻かれた状態となる。すなわち、ステータコア3にコイル4が配置されたステータ2が得られる。
【0035】
なお、ステータ2は、複数相のコイル4を有する。相数は、特に限定されない。たとえば、複数相のコイル4は、U相のコイル4と、V相のコイル4と、W相のコイル4と、の3つに分類される。ステータ2は、各相のコイル4を2以上ずつ有する。各相のコイル4の個数は同数である。
【0036】
<3-2.導電部材の構造>
導電部材40は、導線400である。たとえば、導線400の構成材料は銅である。ただし、これに限定されない。導線400の構成材料は、アルミニウムであってもよいし、他の材料であってもよい。導線400の構成材料がアルミニウムである場合には、銅である場合よりも、導電部材40で構成されるコイル4を軽量化できる。すなわち、モータ100を軽量化できる。
【0037】
ここで、導電部材40は、複数本の導線400で構成される。これにより、コイル4を形成する工程において、容易に、コイル4として巻かれる導線400の本数を増やすことができる。なお、導電部材40を構成する複数本の導線400の先端は、相ごとに、図示しない基板に接続される。導電部材40は、1本の導線400が巻かれることによって形成されてもよい。すなわち、導電部材40は、単線であってもよい。
【0038】
また、導電部材40は、複数本の導線400を互いに平行に一方向に配列した部材である。言い換えると、導電部材40は、前記一方向の幅が導線400の直径よりも大きく、かつ、前記一方向と直交する他方向の幅(言い換えると、導電部材40の厚み)が導線400の直径と同じ(略同じを含む)に形成された部材である。さらに言い換えると、導電部材40は、平型の部材である。
【0039】
<3-3.巻線部および端部>
導電部材40は、巻線部41を有する。巻線部41は、ティース32に環状に巻かれる部分である。なお、ティース32は、径方向から見て、軸方向を長手方向とする矩形状(略矩形状を含む)である。すなわち、巻線部41は、径方向から見て、軸方向を長手方向とする環状体である。巻線部41としての環状体を径方向から見た形状は、ティース32の外周に沿った形状となる。
【0040】
また、導電部材40は、端部42を有する。端部42は、巻線部41から延びる部分である。言い換えると、端部42は、導電部材40のうち巻線部41から突出する部分である。さらに言い換えると、端部42は、導電部材40のうちティース32に巻かれていない部分である。
【0041】
巻線部41からは、導電部材40のうち、ティース32に対する巻き始めの部分が突出した状態となる。さらに、巻線部41からは、導電部材40のうち、ティース32に対する巻き終わりの部分が突出した状態となる。導電部材40は、ティース32に対する巻き始めの部分およびティース32に対する巻き終わりの部分をそれぞれ端部42として有する。
【0042】
端部42のうち、ティース32に対する巻き始めの部分は「始端部」に相当し、ティース32に対する巻き終わりの部分は「終端部」に相当する。以下の説明では、端部42の巻き始めと巻き終わりとを区別する必要がある場合、ティース32に対する巻き始めの部分に符号421を付して始端部421と呼び、ティース32に対する巻き終わりの部分に符号422を付して終端部422と称する。すなわち、端部42は、始端部421と、終端部422と、を含む。
【0043】
なお、コイル4を形成する工程では、導電部材40は、芯材側からその反対側に向かって層状に巻かれる。言い換えると、導電部材40は、芯材側からその反対側に向かって何重にも巻かれる。このため、ティース32に巻線部41が巻かれた状態では、ティース32側からその反対側に向かって、導電部材40が層状に重なる。
【0044】
すなわち、巻線部41は、ティース32に最も近い最下層に配置される最下層部410と、最下層部410上に配置される上層部420と、で構成される。言い換えると、巻線部41は、ティース32に対して2重以上に巻かれた導電部材40で構成される。さらに言い換えると、巻線部41は、導電部材40を構成する複数本の導線400の配列方向と直交する方向に導電部材40を層状に重ねた部分である。この構成では、コイル4の巻き数を増大できる。また、導電部材40は平型の部材であり、導電部材40を構成する複数本の導線400の配列方向と直交する方向に層状に重ねられるので、コイル4の軸方向の幅が大きくなることを抑制できる。
【0045】
なお、最下層部410は、巻線部41を構成する導電部材40のうち、ティース32の直上に位置する導電部材40であり、ティース32と対向する導電部材40である。すなわち、最下層部410は、巻線部41の最下層を構成する。コイル4を形成する工程において、1層目として最初に巻かれる導電部材40が最下層部410となる。
【0046】
さらに、巻線部41は、複数の上層部420を有する。複数の上層部420は、最下層部410上に重ねて配置される。言い換えると、巻線部41は、ティース32に対して3重以上に巻かれた導電部材40で構成される。この構成では、コイル4の巻き数がより増大する。
【0047】
導電部材40のうち、芯材に対する巻き始めの部分は、巻線部41の最下層に位置し、芯材に対する巻き終わりの部分は、巻線部41の最上層に位置する。言い換えると、始端部421は、巻線部41のうちティース32に最も近い内側から延び、終端部422は、巻線部41のうちティース32から最も離れた外側から延びる。さらに言い換えると、始端部421は、最下層部410から延び、終端部422は、複数の上層部420のうち最上に位置する上層部420から延びる。
【0048】
<3-4-1.実施形態に係る端部位置>
端部42は、巻線部41の上方側の端401から下方側の端402までの間に配置される。端部42は、巻線部41の上方側の端401よりも上方に突出することなく径方向および周方向など軸方向とは異なる方向に延び、巻線部41の下方側の端部の端402よりも下方に突出することなく径方向および周方向など軸方向とは異なる方向に延びる。言い換えると、端部42の軸方向の位置は、巻線部41の上方側(軸方向の一方側)の端401から下方側(軸方向の他方側)の端402までの範囲内である。さらに言い換えると、始端部421および終端部422のそれぞれの軸方向の位置は、巻線部41の上方側の端401から下方側の端402までの範囲内である。
【0049】
端部42の軸方向の位置が巻線部41の上方側の端401から下方側の端402までの範囲内である構成では、モータ100の軸方向の幅を広げる必要はない。その結果、モータ100の軸方向の幅が大きくなることを抑制できる。すなわち、モータ100の小型化を図ることができる。なお、たとえば、端部42の軸方向の位置が巻線部41の上方側の端401から下方側の端402までの範囲を外れる場合、導電部材40の配線スペースを確保するため、モータ100の軸方向の幅を広げる必要があるので、モータ100が大型化する。
【0050】
ステータ2の下方に基板300を配置する変形例(
図5参照)の構成では、ステータ2の下方空間を軸方向に広げなくても、導電部材40と基板300とが接触することを抑制できる。
【0051】
また、始端部421および終端部422は、ティース32に対して軸方向の同側に配置される。たとえば、始端部421および終端部422は、ティース32の上方側に配置される。ただし、これに限定されない。始端部421および終端部422は、ティース32の下方側に配置されてもよい。
【0052】
始端部421および終端部422をティース32に対して軸方向の同側に配置することにより、導電部材40を配線し易くなる。また、後述する渡り線43の配線スペースを軸方向の一方側および他方側の両方に確保する必要がなく、軸方向の一方側にのみ確保しておけばよいので、容易に、モータ100のサイズを小さくできる。
【0053】
ここで、本実施形態(
図6参照)では、終端部422は、巻線部41の軸方向の端から延びる。具体的には、終端部422は、巻線部41の上方側の端401から延びる。図示しないが、始端部421および終端部422がティース32の下方側に配置される構成では、終端部422は、巻線部41の下方側の端402から延びる。
【0054】
巻線部41の軸方向の端(実施形態では、巻線部41の上方側の端401)から終端部422が延びる構成では、巻線部41から延びる終端部422を周方向の隣のコイル4に引き出すなどの配線作業を行うとき、周方向に隣り合う他のコイル4の巻線部41が配線作業時に妨げになることを抑制できる。これにより、導電部材40の配線作業が容易になる。
【0055】
<3-4-2.変形例に係る端部位置>
変形例(
図10参照)では、終端部422は、巻線部41の周方向の端から延びる。すなわち、変形例では、終端部422は、周方向に隣り合う一対のコイル4の周方向間から延びる。変形例では、実施形態と比べると、他のコイル4が妨げになって導電部材40の配線作業が困難になり易い。しかし、変形例では、終端部422を軸方向の端に配置しなくてもよいので、コイル4の軸方向の幅を小さくできる。
【0056】
<4.渡り線の位置>
図11は、実施形態に係る渡り線43を示す模式図である。
図11では、便宜上、2つのコイル4およびそれらを繋ぐ渡り線43のみを図示する。
【0057】
本実施形態では、同一相のコイル4が周方向に所定数連続して配置される。たとえば、所定数は2であり、各相のコイル4が周方向に2つずつ交互に配置される。すなわち、U相の2つのコイル4を含むコイル群、V相の2つのコイル4を含むコイル群、および、W相の2つのコイル4を含むコイル群、が周方向に交互に配列される。このため、同一相の2つのコイル4が周方向に互いに隣り合う。
【0058】
以下の説明では、同一相であり周方向に隣り合う一方のコイル4および他方のコイル4をそれぞれ第1コイル4Aおよび第2コイル4Bと呼ぶ。すなわち、各相のコイル4は、第1コイル4Aと、第2コイル4Bと、を含む。第1コイル4Aおよび第2コイル4Bは、任意の2つのコイル4である。なお、第1コイル4Aおよび第2コイル4Bの各導電部材40を巻く工程では、第1コイル4Aおよび第2コイル4Bの順番で導電部材40が巻かれるとする。
【0059】
ステータ2は、第1コイル4Aを構成する導電部材40の端部42と第2コイル4Bを構成する導電部材40の端部42とを繋ぐ渡り線43を有する。ここで、渡り線43の軸方向の位置は、巻線部41の上方側(軸方向の一方側)の端401から下方側(軸方向の他方側)の端402までの範囲内である。すなわち、渡り線43は、巻線部41の上方側の端401よりも上方に突出することなく、第1コイル4Aから第2コイル4Bに向かって延びる。また、渡り線43は、巻線部41の下方側の端402よりも下方に突出することなく、第1コイル4Aから第2コイル4Bに向かって延びる。
【0060】
渡り線43の軸方向の位置が巻線部41の上方側の端401から下方側の端402までの範囲内である構成では、渡り線43の配線スペースを軸方向に広げる必要がない。これにより、容易に、モータ100の軸方向の幅が大きくなることを抑制できる。
【0061】
ステータ2の下方に基板300を配置する変形例(
図5参照)の構成では、ステータ2の下方空間を軸方向に広げなくても、導電部材40と基板300とが接触することを抑制できる。
【0062】
ここで、渡り線43は、第1コイル4Aおよび第2コイル4Bのそれぞれの導電部材40のうち、一方の始端部421と他方の終端部422とを繋ぐ。なお、始端部421および終端部422のそれぞれの軸方向の位置はいずれも、巻線部41の上方側の端401から下方側の端402までの範囲内である。これにより、容易に、渡り線43の軸方向の位置を巻線部41の上方側の端401から下方側の端402までの範囲内に収めることができる。
【0063】
なお、渡り線43は、コイル4を構成する導電部材40と同一部材である。言い換えると、導電部材40は、渡り線43となる部分を最初から有する。さらに言い換えると、導電部材40は、巻線部41と、端部42と、渡り線43となる部分と、を有する。
【0064】
これにより、同一相の各コイル4は、一つながりの導電部材40によって構成される。したがって、先に第1コイル4Aとなる導電部材40が巻かれ、その後から第2コイル4Bとなる導電部材40が巻かれる場合には、渡り線43は、第1コイル4Aを構成する導電部材40の終端部422と第2コイル4Bを構成する導電部材40の始端部421とを繋ぐ。
【0065】
変形例として、図示しないが、渡り線43は、コイル4を構成する導電部材40と別部材であってもよい。この変形例では、たとえば、第1コイル4Aおよび第2コイル4Bを形成した後、第1コイル4Aを構成する導電部材40の端部42と第2コイル4Bを構成する導電部材40の端部42とを渡り線43で接続してもよい。
【0066】
<5.その他>
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態は適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、たとえば、航空機などの駆動源として利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 ロータ
2 ステータ
3 ステータコア
4 コイル
4A 第1コイル
4B 第2コイル
31 コアバック
32 ティース
40 導電部材
41 巻線部
42 端部
43 渡り線
100 モータ
400 導線
401、402 端
410 最下層部
420 上層部
421 始端部
422 終端部
1000 航空機
1002 プロペラ
CA 中心軸