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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114233
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】缶蓋および飲料缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/32 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
B65D17/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016489
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521469760
【氏名又は名称】アルテミラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 宏章
(72)【発明者】
【氏名】小玉 達郎
【テーマコード(参考)】
3E093
【Fターム(参考)】
3E093AA03
3E093AA13
3E093BB01
3E093CC02
3E093CC03
3E093DD07
3E093EE05
(57)【要約】
【課題】飲み口を形成しないでも、飲料缶を振ることにより高まる飲料缶内の圧力を外部に逃がすことができるようにする。
【解決手段】スコア線600として、第1スコア線680、第2スコア線690が設けられている。回転中心であるリベット900を中心として、タブ500を時計回り方向へ90°回転させることで、タブ500の中心線Cの対向位置に、第2スコア線690が位置するようになる。第2スコア線690は、飲料缶100を振ることにより高まる飲料缶100内の圧力を外部に逃がすための圧力逃がし部の形成に用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸飲料を収容した飲料缶に用いることが可能な缶蓋であって、
基材と、
前記基材に形成され、当該基材の破断を促す第1のスコア線であって、飲み口の形成に用いられる第1のスコア線と、
前記基材に形成され、当該基材の破断を促す第2のスコア線であって、前記飲料缶を振ることにより高まる当該飲料缶内の圧力を外部に逃がすための圧力逃がし部の形成に用いられる第2のスコア線と、
を備える缶蓋。
【請求項2】
前記第2のスコア線は、前記第1のスコア線よりも短い請求項1に記載の缶蓋。
【請求項3】
前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、
前記タブによって、前記第2のスコア線における前記基材の破断が生じ、
前記第2のスコア線は、前記タブの幅寸法よりも短い請求項1に記載の缶蓋。
【請求項4】
前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、
前記タブは、予め定められた回転中心を中心として回転可能に設けられ、
前記回転中心を中心として前記タブを回転させた場合、当該タブの先端部が予め定められた環状の経路に沿って移動し、
前記第2のスコア線は、少なくとも一部が、前記環状の経路に沿って形成されている請求項1に記載の缶蓋。
【請求項5】
前記基材は、外周縁を有し、
前記タブは、前記基材のうち、前記第2のスコア線よりも前記回転中心側に位置する部分を押圧し、
前記基材のうち、前記第2のスコア線よりも前記外周縁側には、当該基材の剛性を高めるビードが設けられている請求項4に記載の缶蓋。
【請求項6】
前記基材は、外周縁を有し、
前記タブは、前記基材のうち、前記第2のスコア線よりも前記外周縁側に位置する部分を押圧し、
前記基材のうち、前記第2のスコア線よりも前記回転中心側には、当該基材の剛性を高めるビードが形成されている請求項4に記載の缶蓋。
【請求項7】
前記第2のスコア線は、前記基材のうちの、前記第1のスコア線により囲まれた囲まれ領域内に形成されている請求項1に記載の缶蓋。
【請求項8】
前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、
前記第2のスコア線は、前記飲み口が形成される箇所に対向して配置された状態の前記タブの長手方向に沿った中心線の対向位置から外れた箇所に設けられ、また、当該中心線の延長線の対向位置から外れた箇所に設けられている請求項1に記載の缶蓋。
【請求項9】
前記タブは、予め定められた回転中心を中心として回転可能に設けられ、
前記回転中心を中心として前記タブを回転させることで、前記中心線又は前記延長線の対向位置に、前記第2のスコア線が位置するようになる請求項8に記載の缶蓋。
【請求項10】
前記第2のスコア線は、前記第1のスコア線により囲まれた領域である囲まれ領域の外側に形成されている請求項1に記載の缶蓋。
【請求項11】
前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、
前記タブは、予め定められた回転中心を中心に回転可能に設けられ、
前記タブを回転させることで、前記囲まれ領域の外側に形成されている前記第2のスコア線における前記基材の破断であって当該タブを用いての当該破断を行えるようになる請求項10に記載の缶蓋。
【請求項12】
前記第2のスコア線は、前記回転中心の近傍に設けられている請求項11に記載の缶蓋。
【請求項13】
前記第2のスコア線の深さの方が、前記第1のスコア線の深さよりも大きい請求項1に記載の缶蓋。
【請求項14】
前記第1のスコア線にて前記基材が破断することにより形成される前記飲み口の面積よりも、前記第2のスコア線にて当該基材が破断することにより形成される前記圧力逃がし部の面積の方が小さい請求項1に記載の缶蓋。
【請求項15】
前記第2のスコア線にて前記基材が破断することにより形成される前記圧力逃がし部は、スリットである請求項14に記載の缶蓋。
【請求項16】
前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、
前記タブは、予め定められた回転中心を中心として回転可能に設けられ、
前記回転中心として前記タブを回転させることで、前記第2のスコア線における前記基材の破断であって当該タブを用いることによる当該破断を行えるようになり、
前記タブの回転が可能であることを示す形状及び/又は情報が前記基材に付されている請求項1に記載の缶蓋。
【請求項17】
前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、
前記タブは、予め定められた回転中心を中心として回転可能に設けられ、
前記第1のスコア線は、前記基材の中央部側から当該基材の外周縁側に向かって膨らむ部分を有し、
前記第2のスコア線は、前記膨らむ部分の頂部と前記回転中心とを結ぶ直線上から外れた箇所に形成され、
前記タブは、当該タブの先端部が前記直線の対向位置から外れた箇所に位置するように配置され、
前記第2のスコア線の形成箇所における前記基材の破断を前記タブを用いて行うに際し、当該タブの回転操作を伴わずに当該破断を行える請求項1に記載の缶蓋。
【請求項18】
炭酸飲料が収容された缶本体と、当該缶本体の開口を塞ぐ缶蓋、とを備え、当該缶蓋が請求項1乃至17の何れかに記載の缶蓋により構成された飲料缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋および飲料缶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主開口部を開口するタブの一連の操作によって、通気口についても同時に開口可能であり、開口操作を容易かつ確実に行えるようにした缶蓋および缶詰が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-102463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭酸飲料を収容した飲料缶では、この飲料缶を振ったうえで、飲料缶内の圧力を外部に逃がせば、炭酸飲料に含まれるガスの割合を低減でき、ユーザが炭酸飲料を飲む際に感じる刺激を低減できる。
飲料缶内の圧力を外部に逃がすための態様としては、例えば、缶蓋に飲み口を形成し、この飲み口を通じて、飲料缶内の圧力を外部に逃がす態様が挙げられる。
本発明の目的は、飲み口を形成しないでも、飲料缶を振ることにより高まる飲料缶内の圧力を外部に逃がすことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される缶蓋は、炭酸飲料を収容した飲料缶に用いることが可能な缶蓋であって、基材と、前記基材に形成され、当該基材の破断を促す第1のスコア線であって、飲み口の形成に用いられる第1のスコア線と、前記基材に形成され、当該基材の破断を促す第2のスコア線であって、前記飲料缶を振ることにより高まる当該飲料缶内の圧力を外部に逃がすための圧力逃がし部の形成に用いられる第2のスコア線と、を備える缶蓋である。
ここで、前記第2のスコア線は、前記第1のスコア線よりも短くしてもよい。
また、前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、前記タブによって、前記第2のスコア線における前記基材の破断が生じ、前記第2のスコア線は、前記タブの幅寸法よりも短くしてもよい。
また、前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、前記タブは、予め定められた回転中心を中心として回転可能に設けられ、前記回転中心を中心として前記タブを回転させた場合、当該タブの先端部が予め定められた環状の経路に沿って移動し、前記第2のスコア線は、少なくとも一部が、前記環状の経路に沿って形成されていてもよい。
また、前記基材は、外周縁を有し、前記タブは、前記基材のうち、前記第2のスコア線よりも前記回転中心側に位置する部分を押圧し、前記基材のうち、前記第2のスコア線よりも前記外周縁側には、当該基材の剛性を高めるビードが設けられていてもよい。
また、前記基材は、外周縁を有し、前記タブは、前記基材のうち、前記第2のスコア線よりも前記外周縁側に位置する部分を押圧し、前記基材のうち、前記第2のスコア線よりも前記回転中心側には、当該基材の剛性を高めるビードが形成されていてもよい。
また、前記第2のスコア線は、前記基材のうちの、前記第1のスコア線により囲まれた囲まれ領域内に形成されていてもよい。
また、前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、前記第2のスコア線は、前記飲み口が形成される箇所に対向して配置された状態の前記タブの長手方向に沿った中心線の対向位置から外れた箇所に設けられ、また、当該中心線の延長線の対向位置から外れた箇所に設けられていてもよい。
また、前記タブは、予め定められた回転中心を中心として回転可能に設けられ、前記回転中心を中心として前記タブを回転させることで、前記中心線又は前記延長線の対向位置に、前記第2のスコア線が位置するようにしてもよい。
また、前記第2のスコア線は、前記第1のスコア線により囲まれた領域である囲まれ領域の外側に形成されていてもよい。
また、前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、前記タブは、予め定められた回転中心を中心に回転可能に設けられ、前記タブを回転させることで、前記囲まれ領域の外側に形成されている前記第2のスコア線における前記基材の破断であって当該タブを用いての当該破断を行えるようにしてもよい。
また、前記第2のスコア線は、前記回転中心の近傍に設けられていてもよい。
また、前記第2のスコア線の深さの方が、前記第1のスコア線の深さよりも大きくしてもよい。
また、前記第1のスコア線にて前記基材が破断することにより形成される前記飲み口の面積よりも、前記第2のスコア線にて当該基材が破断することにより形成される前記圧力逃がし部の面積の方が小さいようにしてもよい。
また、前記第2のスコア線にて前記基材が破断することにより形成される前記圧力逃がし部は、スリットであってもよい。
また、前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、前記タブは、予め定められた回転中心を中心として回転可能に設けられ、前記回転中心として前記タブを回転させることで、前記第2のスコア線における前記基材の破断であって当該タブを用いることによる当該破断を行えるようになり、前記タブの回転が可能であることを示す形状及び/又は情報が前記基材に付されていてもよい。
また、前記飲み口の形成に用いられるタブをさらに備え、前記タブは、予め定められた回転中心を中心として回転可能に設けられ、前記第1のスコア線は、前記基材の中央部側から当該基材の外周縁側に向かって膨らむ部分を有し、前記第2のスコア線は、前記膨らむ部分の頂部と前記回転中心とを結ぶ直線上から外れた箇所に形成され、前記タブは、当該タブの先端部が前記直線の対向位置から外れた箇所に位置するように配置され、前記第2のスコア線の形成箇所における前記基材の破断を前記タブを用いて行うに際し、当該タブの回転操作を伴わずに当該破断を行えるようにしてもよい。
【0006】
また、本発明を飲料缶として捉えた場合、本発明が適用される飲料缶は、炭酸飲料が収容された缶本体と、当該缶本体の開口を塞ぐ缶蓋、とを備え、当該缶蓋が上記の缶蓋により構成された飲料缶である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飲み口を形成しないでも、飲料缶を振ることにより高まる飲料缶内の圧力を外部に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】飲料缶の上面図である。
図2】第1スコア線を拡大して示した図である。
図3】タブを時計回り方向へ90°回転させた場合における飲料缶の状態を示した図である。
図4】タブの図示を省略した状態の飲料缶を示した図である。
図5】(A)、(B)は、ビードの他の構成例を示した図である。
図6】飲料缶の他の構成例を示した図である。
図7】飲料缶の他の構成例を示した図である。
図8】飲料缶の他の構成例を示した図である。
図9】飲料缶の他の構成例を示した図である。
図10】飲料缶の他の構成例を示した図である。
図11】飲料缶の他の構成例を示した図である。
図12】タブを回転させた後の飲料缶の状態を示した図である。
図13】飲料缶の他の構成例を示した図である。
図14】(A)、(B)は、第1スコア線、第2スコア線の断面形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される飲料缶100の上面図である。
飲料缶100は、缶本体200(容器本体、缶胴)と、缶蓋300とを有する。
缶本体200は、筒状に形成され、上部に開口を有するとともに、下部に底部を有する。缶蓋300は、容器本体200の開口に取り付けられ、この開口を塞ぐ。
飲料缶100の内部には、ビールや清涼飲料などの炭酸飲料(発泡性飲料)が収容されている。
【0010】
缶蓋300は、パネル400を有する。基材の一例としてのこのパネル400は、金属製の板材により形成されている。また、パネル400は、円盤状に形成され、外周縁401を有する。
さらに、缶蓋300には、操作者により操作されるタブ500が取り付けられている。
タブ500は、操作者によって一方の端部505(図中、上端部)が操作されることで(持ち上げられることで)、パネル400のうちの予め定められた押圧箇所に対して他方の端部510(先端部)を押し付け、パネル400を押圧する。
【0011】
タブ500は、略長方形状に形成されている。タブ500の端部510(先端部)には、曲率が付与され、この端部510は、タブ500の外側方向に向かって膨らみ且つ円弧を描くように形成されている。言い換えると、端部510は、半円状に形成されている。
また、タブ500は、タブ500の長手方向に沿った中心線Cを対象軸として線対称となる形状で形成されている。
なお、本明細書では、以下、タブ500の図中上端部を、被操作部505と称し、タブ500の図中下端部を、先端部510と称する。
【0012】
タブ500は、パネル400の中央部403に設けられたリベット900によって、パネル400に固定されている。また、タブ500は、被操作部505と先端部510との間に位置する部位が、リベット900によって、パネル400に固定されている。
また、タブ500は、予め定められた回転中心を中心として回転可能に設けられている。具体的には、タブ500は、リベット900により支持されている部分を回転中心として回転可能に設けられている。
【0013】
タブ500の被操作部505側には、操作者の指が入られる貫通孔505Aが形成されている。
さらに、タブ500のうちの、貫通孔505Aよりも、先端部510側には、U字状の貫通孔506が形成されている。この貫通孔506は、一端部506A、他端部506B、および、頂部506Cを有する。
本実施形態では、一端部506Aおよび他端部506Bが、タブ500の先端部510側に位置し、頂部506Cが、タブ500の被操作部505側に位置する。
【0014】
貫通孔506により囲まれた領域(貫通孔506の内側に位置する領域)には、舌片状の弾性片507が設けられている。
弾性片507は、先端部510側に位置する部分が、タブ本体500Aに対して接続され、さらに、タブ本体500Aに接続された部分を始点として、タブ500の被操作部505側に向かって延びる。
さらに、本実施形態では、タブ500のうちの、弾性片507が設けられている部分が、リベット900によって、パネル400に固定されている。
【0015】
さらに、パネル400には、パネル400の破断を促すスコア線600が形成されている。スコア線600は、パネル400の表面に形成された溝により構成されている。
本実施形態では、スコア線600として、第1スコア線680、第2スコア線690が設けられている。
【0016】
本実施形態では、パネル400のうち、第1スコア線680により囲まれた領域である囲まれ領域91が、タブ500の先端部510により押圧される。
言い換えると、本実施形態では、パネル400のうち、飲み口が形成される部分が、タブ500の先端部510により押圧される。
これにより、第1スコア線680に沿ってのパネル400の破断が生じる。第1スコア線680に沿ってのパネル400の破断が生じると、パネル400に、飲み口が形成される(第1スコア線680の内側の部分に開口が形成される)。これにより、ユーザが、飲料缶100の内部の飲料を飲めるようになる。
本実施形態では、このように、飲み口の形成にタブ500が用いられる。
【0017】
さらに、パネル400には、パネル400の剛性を増すため、図中紙面の奥側方向へ凹んだ凹部710が設けられている。さらに、パネル400には、この凹部710を取り囲む段差720が形成されている。
本実施形態では、パネル400のうちの段差720により囲まれた領域内に、第1スコア線680、第2スコア線690が形成され、さらに、段差720により囲まれたこの領域内に、タブ500が設けられている。
【0018】
さらに、パネル400には、第1スコア線680の内側に位置する領域に、パネル400の剛性を増加させる環状のビード(bead)730が設けられている。言い換えると、本実施形態では、パネル400のうち、第1スコア線680により囲まれた囲まれ領域91内に、パネル400の剛性を増加させる環状のビード730が設けられている。
このビード730は、缶蓋300の裏面側に向かって凹んだ凹部により構成されている。なお、ビードは、缶蓋300の表面側へ突出した凸部により構成してもよい。
本実施形態では、第1スコア線680に沿ってパネル400の破断が生じると、舌片状の部位が生じるが、ビード730があることで、この舌片状の部位の剛性が増加する。
【0019】
図2は、第1スコア線680を拡大して示した図である。
本実施形態の第1スコア線680には、U字状部分650と、このU字状部分650に接続された接続部分610とが設けられている。
U字状部分650は、一端部651および他端部652を有する。一端部651および他端部652は、パネル400の中央部403(図1参照)側に位置している。
【0020】
さらに、一端部651は、タブ500の中心線C(図1も参照)を挟んで相対する一方の領域671および他方の領域672のうちの、一方の領域671に設けられている。他端部652は、他方の領域672に設けられている。
さらに、U字状部分650は、パネル400の中央部403(図1参照)側から外周縁401(図1参照)側に向かって膨らむように形成され、パネル400の外周縁401側に頂部653を有する。本実施形態では、このように、第1スコア線680は、パネル400の中央部403からパネル400の外周縁401側に向かって膨らむ部分を有する。
本実施形態では、このU字状部分650(膨らむ部分)のうちの、外周縁401(図1参照)に最も近づく箇所に、頂部653が位置する構成となっている。
本実施形態では、U字状部分650の他端部652を始点とし、一端部651を終端とした場合において、U字状部分650は、頂部653に向かって進行するに従い外周縁401(図1参照)に次第に接近し、頂部653が位置する箇所にて、外周縁401に最も接近する。そして、U字状部分650は、頂部653を通過すると、外周縁401から次第に離れるようになる。
【0021】
接続部分610は、U字状部分650の他端部652に接続され、U字状部分650に接続された箇所を始点として、U字状部分650の一端部651側に向かって進行する。
接続部分610の進行方向における下流側には、下流側端部610Aが設けられている。
さらに、接続部分610は、タブ500の長手方向に沿った中心線Cを横切る。また、接続部分610は、パネル400のうちのタブ500(図1参照)により押圧される押圧箇所RAと、リベット900(図1参照)との間を通過する。
【0022】
接続部分610は、U字状部分650の一端部651までは到達せず、本実施形態は、接続部分610の下流側端部610Aと、一端部651との間に、第1スコア線680が形成されない非形成領域92が存在する。
本実施形態では、缶蓋300(図1参照)に飲み口(開口)が形成される際には、まず、操作者によるタブ500の操作が行われて、タブ500の被操作部505側が持ち上げられる(パネル400から離れる方向へ被操作部505が移動する)。
【0023】
これにより、タブ500の先端部510が、パネル400のうちの第1スコア線680により囲まれた囲まれ領域91内に押し当てられ、まず、接続部分610(図2参照)にて、パネル400の破断が生じる。
より具体的には、タブ500の先端部510が、押圧箇所RAに押し当てられ、接続部分610にて、パネル400の破断が生じる。より具体的には、接続部分610のうち、中心線C上に位置する部分にて、パネル400の破断が生じる。
【0024】
その後、パネル400の破断は、U字状部分650に沿って進行し、最終的に、U字状部分650の一端部651まで生じる。
具体的には、パネル400の破断は、U字状部分650の他端部652、頂部653を経由して進行し、最終的に、U字状部分650の一端部651へ達する。
【0025】
付言すると、本実施形態では、第1スコア線680に沿ってパネル400の破断が進行していく際、図2の矢印2Sで示す方向へ、この破断が進行していく。
そして、本実施形態では、この破断は、第1スコア線680の一端部651(第1スコア線680のうち、破断の進行方向下流側に位置する端部)へ達する。
【0026】
本実施形態では、第1スコア線680に沿ってパネル400の破断が進行していくと、この破断は、最終的に、一端部651へ達する。
付言すると、本実施形態では、パネル400の破断が進行していく際の進行方向における下流側に、U字状部分650の一端部651が位置し、第1スコア線680に沿ったパネル400の破断は、この一端部651まで生じる。
本実施形態では、パネル400の破断が、この一端部651まで生じると、缶蓋300に開口(飲み口)が形成された状態となる。
【0027】
次に、第2スコア線690(図1参照)について説明する。
第2スコア線690は、タブ500の長手方向に沿った中心線Cの対向位置から外れた箇所に設けられている。また、第2スコア線690は、この中心線Cの延長線Eの対向位置から外れた箇所に設けられている。
なお、図1に示す構成例では、タブ500の長手方向に沿った中心線Cの延長線E上に、第1スコア線680の頂部653が位置するように、タブ500が配置された状態となっている。
【0028】
図1では、飲み口が形成される箇所に対向して配置された状態のタブ500を示している。言い換えると、図1では、囲まれ領域91に対向して配置された状態のタブ500を示している。
この状態において、第2スコア線690は、タブ500の長手方向に沿った中心線Cの対向位置から外れた箇所に設けられている。また、この状態において、第2スコア線690は、この中心線Cの延長線Eの対向位置から外れた箇所に設けられている。
また、本実施形態では、缶蓋300を正面から見た場合において、タブ500の背後に、第2スコア線690が位置する。
【0029】
また、第2スコア線690は、第1スコア線680により囲まれた領域である囲まれ領域91の外側に形成されている。
「囲まれ領域91の外側に形成」には、第2スコア線690の全ての部分が、囲まれ領域91の外側に形成されるのに限らず、第2スコア線690の一部が、囲まれ領域91の外側に形成される態様も含む。
本実施形態では、第2スコア線690の少なくとも一部が、囲まれ領域91の外側に形成されていれば、第2スコア線690が、囲まれ領域91の外側に形成されている状態と言える。
【0030】
本実施形態では、図1の符号1Sで示すように、第2スコア線690の図中下端部は、囲まれ領域91に入っている。その一方で、第2スコア線690のうち、この下端部よりも図中上方に位置する部分は、囲まれ領域91の外側に位置する。
ここで、第1スコア線680が形成されていない非形成領域92では、囲まれ領域91の境界は、破線1Xで示す部分となる。より具体的には、非形成領域92では、囲まれ領域91の境界は、第1スコア線680の端部同士を結ぶ直線が位置する部分となる。
本実施形態では、第2スコア線690の図中下端部は、破線1Xよりも下方に位置し、第2スコア線690のうち、この下端部よりも図中上方に位置する部分は、破線1Xよりも上方に位置する。
【0031】
第2スコア線690は、略U字状に形成され、図中左側方向に向かって膨らむように形成されている。言い換えると、第2スコア線690は、曲率を有し、パネル400の中央部403に位置するリベット900から離れる方向に向かって膨らむように形成されている。
また、本実施形態では、第2スコア線690の両端部にて、第2スコア線690は屈曲し、第2スコア線690の両端部では、第2スコア線690が、パネル400の径方向における中央部403側に向かう。
【0032】
この場合、第2スコア線690の長手方向における中央部にて生じ第2スコア線690の両端部に向かって進行するパネル400の破断が、符号1Yで示す箇所にて止まりやすくなる。この場合、パネル400の破断が、第2スコア線690を越えて生じるなどの不具合が生じにくくなる。
なお、図1では、第2スコア線690の両端部にて、第2スコア線690がパネル400の中央部403側に向かっているが、これに限らず、第2スコア線690の両端部にて、第2スコア線690がパネル400の外周縁401側に向かうようにしてもよい。
【0033】
第2スコア線690の形状は、特に制限されず、上記のように、第2スコア線690に曲率を付与してもよいし、第2スコア線690は、直線状に形成してもよい。
また、例えば、第2スコア線690の長手方向における中央部を直線状として、第2スコア線690の両端部に曲率を付与してもよい。
【0034】
図3は、タブ500を時計回り方向へ90°回転させた場合における飲料缶100の状態を示した図である。また、図4は、タブ500の図示を省略した状態の飲料缶100を示した図である。
図4では、回転中心であるリベット900を中心としてタブ500を回転させた場合における、タブ500の先端部510(図1参照)の移動経路R1を示している。
この移動経路R1は、環状となっており、本実施形態では、タブ500を回転させると、タブ500の先端部510は、予め定められたこの環状の移動経路R1に沿って移動する。
本実施形態では、第2スコア線690は、曲率を有し、この環状の移動経路R1に沿って形成されている。
なお、第2スコア線690は、その全体が移動経路R1に沿う形状とするのに限らず、その一部が移動経路R1に沿う形状としてもよい。本実施形態では、第2スコア線690は、少なくとも一部が、環状の移動経路R1に沿って形成される。
【0035】
本実施形態では、回転中心であるリベット900を中心として、タブ500を時計回り方向へ90°回転させることで、図3に示すように、タブ500の中心線Cの対向位置に、第2スコア線690が位置するようになる。
第2スコア線690は、第1スコア線680と同様、パネル400に形成され、パネル400の破断を促す機能を有する。
第2スコア線690は、飲料缶100内の圧力を外部に逃がすための圧力逃がし部88の形成に用いられる。より具体的には、第2スコア線690は、飲料缶100を振ることにより高まる飲料缶100内の圧力を外部に逃がすための圧力逃がし部88の形成に用いられる。
【0036】
本実施形態では、図3に示す状態にて、タブ500が引き起こされる。
これにより、本実施形態では、パネル400のうちの、符号3Aで示す部分が、タブ500によって押圧される。
具体的には、本実施形態では、パネル400のうち、第2スコア線690よりもリベット900側に位置する部分が、タブ500によって押圧される。
【0037】
これにより、第2スコア線690の形成箇所にて、パネル400の破断が生じ、パネル400には、飲料缶100の内側と外側とを接続する圧力逃がし部88が形成される。
本実施形態では、第2スコア線690にてパネル400が破断することにより形成されるこの圧力逃がし部88は、スリットとなる。
本実施形態では、この圧力逃がし部88を通じ、飲料缶100内の圧力が外部に逃げる。
本実施形態では、このように、タブ500を回転させることで、囲まれ領域91の外側に形成されている第2スコア線690におけるパネル400の破断であって、タブ500を用いてのこの破断を行える。
【0038】
炭酸飲料を収容した飲料缶100では、この飲料缶100を振ったうえで、飲料缶100内の圧力を外部に逃がせば、炭酸飲料に含まれるガスの割合を低減でき、ユーザが炭酸飲料を飲む際に感じる刺激を低減できる。
本実施形態では、上記の通り、缶蓋300に、飲料缶100の内側と外側とを接続する圧力逃がし部88が形成される。これにより、この圧力逃がし部88を通じて、飲料缶100内の圧力を外部に逃がすことができる。
【0039】
本実施形態では、第2スコア線690は、第1スコア線680よりも短い。また、本実施形態では、図3に示すように、第2スコア線690は、タブ500の幅寸法Wよりも短い。ここで、タブ500の幅寸法Wとは、タブ500の長手方向と直交する方向におけるタブ500の長さを指す。
また、本実施形態では、第1スコア線680や、第2スコア線690の長さは、スコア線に沿って長さを測定した場合における長さを指す。
【0040】
本実施形態では、第1スコア線680にてパネル400が破断することにより形成される飲み口は、大きな開口となる。これに対し、第2スコア線690にてパネル400が破断することにより形成される圧力逃がし部88は、その面積が小さい。
本実施形態では、第1スコア線680にてパネル400が破断することにより形成される飲み口の面積よりも、第2スコア線690にてパネル400が破断することにより形成される圧力逃がし部88の面積の方が小さい。
【0041】
また、本実施形態では、図3に示すように、缶蓋300の径方向における中央部403、および、缶蓋300の外周縁401のうち、この中央部403に近い側に、第2スコア線690が設けられている。
言い換えると、缶蓋300の径方向における中央部403と外周縁401とを結ぶ直線を想定した場合に、この直線の中点よりもこの中央部403側に、第2スコア線690が設けられている。
また、本実施形態では、図1に示す缶蓋300を正面から見た場合において、パネル400のうちの、タブ500の背後に位置する部分に、第2スコア線690が設けられている。
【0042】
本実施形態では、ユーザが、炭酸飲料に含まれるガスの割合を低減させる場合、まず、ユーザが、飲料缶100を振る。そして、ユーザは、タブ500を時計回り方向へ90°回転させ、その後、タブ500を引き起こす。
ユーザがタブ500を引き起こすと、第2スコア線690の形成箇所にて、パネル400の破断が生じ、パネル400には圧力逃がし部88が形成される。そして、この圧力逃がし部88を通じて、飲料缶100内の圧力が外部へ逃げる。
なお、ここでは、飲料缶100を振った後に、タブ500を時計回り方向へ90°回転させる場合を一例に説明したが、ユーザによっては、タブ500を回転させた後に、飲料缶100を振る場合もある。
【0043】
その後、本実施形態では、ユーザは、タブ500を反時計回り方向へ90°回転させ、タブ500を、囲まれ領域91の対向位置に配置する。言い換えると、ユーザは、タブ500を当初の状態に戻す。
そして、ユーザは、タブ500を引き起こす。これにより、第1スコア線680にてパネル400の破断が生じ、パネル400に飲み口が形成される。これにより、ユーザは、飲料缶100の内部の飲料を飲める。
【0044】
なお、本実施形態では、タブ500の当初の位置が、飲み口の対向位置である場合を一例に説明するが、タブ500の当初の位置は、これに限られず、タブ500を時計回り方向へ90°回転させた後の位置としてもよい。図を参照して説明すると、タブ500の当初の位置は、図3に示す位置であってもよい。
この場合、ユーザは、タブ500を時計回り方向へ90°回転させずに済む。言い換えると、この場合、ユーザは、タブ500の回転操作を行わずに第2スコア線690の形成箇所にてパネル400の破断を行える。言い換えると、この場合、第2スコア線690の形成箇所におけるパネル400の破断を、タブ500を用いて行う際に際し、タブ500の回転操作を伴わずにこの破断を行える。
なお、この場合、ユーザは、第2スコア線690の形成箇所にてパネル400の破断を生じさせた後、タブ500を反時計回り方向へ回転させる。その後、ユーザは、タブ500を引き起こして、パネル400に飲み口を形成する。
【0045】
図3にて示す構成例では、第2スコア線690が、直線CL上から外れた箇所に形成されている。ここで、「直線CL」とは、タブ500の回転中心となるリベット900と、第1スコア線680の頂部653とを結ぶ仮想の直線である。
予め、タブ500が回転しており、タブ500の当初の位置が、図3に示す位置である場合、タブ500は、タブ500の先端部510が直線CLの対向位置から外れた箇所に位置するように配置された状態となっている。
【0046】
この場合、上記の通り、第2スコア線690の形成箇所におけるパネル400の破断をタブ500を用いて行うに際し、タブ500の回転操作を伴わずにこの破断を行える。言い換えると、この場合、タブ500を回転させないでもパネル400に飲み口を形成できる。
このように、タブ500を回転させないでもパネル400に飲み口を形成できるようにするには、予め、タブ500を回転させた状態としておく。言い換えると、タブ500を回転させないでもパネル400に飲み口を形成できるようにするには、タブ500が既に回転した状態にある缶蓋300を製造するようにする。
なお、図11図13等にて示す他の構成例でも、タブ500が予め回転している缶蓋300を製造するようにすれば、タブ500を回転させないでもパネル400に飲み口を形成できるようになる。
【0047】
ここで、飲料缶100内の圧力を外部に逃がす方法としては、その他に、例えば、第2スコア線690を設けず、第1スコア線680にてパネル400を破断させて飲み口のみを形成し、この飲み口を通じて圧力を逃がす方法も考えられる。
ところで、この場合、飲料缶100内の飲料が、この飲み口を通じて外部へ漏れ出しやすくなる。
飲料缶100を振ると、飲料缶100の内部にて発砲が起こり、飲料の液面が上昇する。この場合に、上記のように、飲み口を形成すると、この飲み口を通じて、飲料缶100内の飲料が、外部へ漏れ出しやすくなる。
【0048】
これに対し、本実施形態のように、第1スコア線680よりも短い第2スコア線690にて、パネル400の破断を生じさせると、圧力逃がし部88の面積は小さいものとなる。この場合、飲料缶100の外部への飲料の漏れ出しが生じにくくなる。
本実施形態では、第2スコア線690は、タブ500の幅寸法Wよりも短く、第2スコア線690の長さの絶対値自体が小さい。これにより、圧力逃がし部88の面積は小さいものとなり、飲料缶100の外部への飲料の漏れ出しが生じにくくなる。
さらに、本実施形態では、圧力逃がし部88は、スリット状に形成される。これによっても、飲料缶100の外部への飲料の漏れ出しが生じにくくなる。
【0049】
ここで、図1~4にて示した構成例では、第2スコア線690の長さの好ましい範囲は、2.0mm~8.0mmである。
発明者の実験によれば、第2スコア線690の長さが、2.0mmよりも小さいと、飲料缶100の内部の圧力の低下に時間を要するようになり、また、8.0mmよりも大きいと、飲料缶100の外部への飲料の漏れ出しが生じやすくなった。
このため、上記の通り、第2スコア線690の長さは、2.0mm~8.0mmとすることが好ましい。
【0050】
また、本実施形態では、上記の通り、缶蓋300の径方向における中央部403側に、第2スコア線690が設けられ、これにより、缶蓋300の径方向における中央部403側に、圧力逃がし部88が形成される。
この場合、缶蓋300の外周縁401に近い側に、圧力逃がし部88が形成される場合に比べ、内部の飲料が、圧力逃がし部88に達しにくくなり、飲料缶100の外部への飲料の漏れ出しがさらに生じにくくなる。
【0051】
発泡した状態の飲料は、飲料缶100の内壁を伝って上方へ移動する傾向にあり、缶蓋300の中央部403に近い側に、圧力逃がし部88が設けられると、飲料が、圧力逃がし部88に達しにくくなる。
より具体的には、缶蓋300の外周縁401に近い側に、圧力逃がし部88が形成される場合に比べ、飲料が、圧力逃がし部88に達しにくくなる。
この場合、飲料缶100の外部への飲料の漏れ出しが生じにくくなる。
【0052】
また、図1~4に示す構成例では、第2スコア線690にてパネル400の破断を生じさせる際、タブ500からパネル400に作用する荷重が第1スコア線680に作用しにくくなり、第1スコア線680における、パネル400の破断が生じにくくなる。
図1~4にて示した構成例では、第2スコア線690が、囲まれ領域91の外側に形成され、第2スコア線690にてパネル400の破断を行う際、タブ500は、パネル400のうち、囲まれ領域91の外側に位置する部分を押圧する。
この場合、タブ500からパネル400に作用する荷重が、第1スコア線680に作用しにくくなり、圧力逃がし部88の形成の際に第1スコア線680にてパネル400が破断する事態が生じにくくなる。
【0053】
図1を参照して、缶蓋300についてさらに説明する。
本実施形態では、図1に示すように、パネル400のうち、第2スコア線690よりも外周縁401側に、パネル400の剛性を高めるビード(bead)151が設けられている。
このビード151は、パネル400に形成され且つ第2スコア線690に沿って形成された凹部により構成されている。なお、ビード151は、凹部に限らず、パネル400の表面側に向かって突出する凸部により構成してもよい。
【0054】
本実施形態では、このビード151によって、パネル400のうち、第2スコア線690よりも外周縁401側に位置する部分の変形が抑えられる。言い換えると、このビード151によって、パネル400のうち、第2スコア線690よりも外周縁401側に位置する部分の曲げ剛性が大きくなる。
これにより、第2スコア線690の形成箇所にて、パネル400の破断が生じやすくなる。
【0055】
なお、ビード151の長さや形状は、特に限定されず、例えば、図5(ビード151の他の構成例を示した図)の(A)に示すように、ビード151の長さを、図1に示す構成例に比べて短くしてもよい。
また、ビード151は、曲率を有する形状に限らず、図5(B)に示すように、直線状に形成してもよい。
【0056】
本実施形態では、直線状に形成されるこのビード151においても、このビード151の一部が、第2スコア線690に沿う。
具体的には、図5(B)に示す構成例では、ビード151の長手方向における中央部分151Cが、第2スコア線690の接線690Sに沿い、この中央部分151Cが、第2スコア線690に沿っている。
【0057】
また、パネル400のうちの、タブ500により押圧される押圧箇所は、上記にて説明した箇所に限られない。
パネル400のうち、第2スコア線690よりも外周縁401側に位置する部分が、タブ500により押圧される構成であってもよい。
具体的には、例えば、図6(飲料缶100の他の構成例を示した図)に示すように、第2スコア線690を、パネル400の中央部403側に配置し(図1にて示した構成例に比べて中央部403側に配置し)、図6の符号6Aで示す部分が、タブ500により押圧される構成としてもよい。
即ち、パネル400のうち、第2スコア線690よりも外周縁401側に位置する部分が、タブ500により押圧される構成としてもよい。
なお、この場合は、パネル400のうち、第2スコア線690よりもリベット900側に、パネル400の剛性を高めるビード151を形成することが好ましい。
【0058】
また、その他に、パネル400のうち、第2スコア線690が形成された部分そのものが、タブ500により押圧される構成であってもよい。
なお、この場合は、パネル400のうちの、第2スコア線690よりもリベット900側に位置する部分や、パネル400のうちの、第2スコア線690よりも外周縁401側に位置する部分の少なくとも一方に、パネル400の剛性を高めるビード151を形成することが好ましい。
【0059】
図7は、飲料缶100の他の構成例を示した図である。
図7では、タブ500を時計回り方向へ90°回転させた後の状態を示している。
この構成例では、パネル400のうち、タブ500の対向位置から外れた箇所に、第2スコア線690が形成されている。
第2スコア線690は、タブ500の対向位置に形成するのに限らず、この構成例のように、タブ500の対向位置から外れた箇所に、第2スコア線690を形成してもよい。
【0060】
この構成例では、タブ500の中心線Cの延長線Eの対向位置に、第2スコア線690が位置する構成となっている。
この構成例では、上記と同様、リベット900を中心としてタブ500を時計回り方向へ90°回転させることで、タブ500の中心線Cの延長線Eの対向位置に、第2スコア線690が位置するようになる。
そして、この構成例では、上記と同様、パネル400のうちの、第2スコア線690よりもリベット900(図7では不図示)側に位置する部分が、タブ500により押圧される。
【0061】
また、本実施形態では、第2スコア線690におけるパネル400の破断にあたってタブ500の回転が必要であることをユーザに示すための形状がパネル400に付されている。
具体的には、本実施形態では、図1に示すように、缶蓋300の周方向における位置が互いに異なる2つの凹部97が設けられている。
本実施形態では、この凹部97が設けられることによって、タブ500の引き起こしを行いやすくなる。具体的には、本実施形態では、凹部97が無い場合に比べ、ユーザは、タブ500の被操作部505とパネル400との間に指を入れやすくなり、ユーザは、タブ500の引き起こしを行いやすくなる。
【0062】
2つの凹部97は、タブ500が回転した場合における、被操作部505の移動経路R2の脇に位置するように配置されている。
本実施形態では、凹部97が2つ設けられていることによって、ユーザは、タブ500が回転可能であることを認識し、さらに、第2スコア線690におけるパネル400の破断にあたってタブ500の回転が必要であることを認識する。
言い換えると、本実施形態では、凹部97が2つ設けられていることによって、ユーザは、タブ500が回転可能であることを認識し、さらに、飲料缶100内の圧力を逃がすにあたってタブ500の回転が必要であることを認識する。
【0063】
なお、これは一例であり、パネル400には、第2スコア線690におけるパネル400の破断にあたってタブ500の回転が必要であることをユーザに直接的に知らせる情報を付してもよい。
具体的には、パネル400に対し、例えば、「タブを90°回転させてください。」という文字情報を、刻印や、印刷によって付してもよい。
【0064】
また、例えば、図8(飲料缶100の他の構成例を示した図)に示すように、パネル400の表面に、飲料におけるガス含有量が下がり飲料がより飲みやすくなることを示す情報の一例としての「MILD」などの文字情報を付してもよい。これによっても、ユーザに対して、タブ500の回転が必要であることを認識させられる。
また、その他に、タブ500の回転が必要であることをユーザに示す形状及び情報の一方に限らず、両方をパネル400に付してもよい。
また、タブ500の回転が必要であることを示す形状や情報は、必須ではなく、この形状や情報がパネル400に付されない構成としてもよい。
【0065】
図9は、飲料缶100の他の構成例を示した図である。
図9に示す構成例では、第2スコア線690が、囲まれ領域91内に形成されている。
また、この構成例では、図9に示すように、囲まれ領域91に対向した状態で配置されているタブ500の中心線Cの対向位置に、第2スコア線690が形成されている。
この構成例では、タブ500の長手方向に沿った中心線Cの延長線E上に、第1スコア線680の頂部653が位置するように、タブ500が配置された状態となっている。そして、この構成例では、このように配置されたタブ500の中心線Cの対向位置に、第2スコア線690が形成されている。
この構成例においても、上記と同様、タブ500は、パネル400のうち、第2スコア線690よりもリベット900側に位置する部分を押圧する。
また、この構成例においても、上記と同様、パネル400のうち、第2スコア線690よりも外周縁401側に、パネル400の剛性を高めるビード730が設けられている。
【0066】
図9に示すこの構成例において、ユーザは、飲料に含まれるガスを低減させたい場合、上記と同様、飲料缶100を振る。
そして、ユーザは、飲み口が形成される際のタブ500の角度である第1の角度よりも小さい第2の角度、タブ500を引き起こす。ここでの「角度」は、パネル400に対するタブ500の角度を指す。
【0067】
これにより、第2スコア線690の形成箇所にて、パネル400の破断が生じ、パネル400には、上記と同様、圧力逃がし部88が形成される。
その後、この構成例では、ユーザは、タブ500をさらに引き起こす。これにより、第1スコア線680の形成箇所にて、パネル400の破断が生じ、パネル400に飲み口が形成される。
図9に示す構成例では、ユーザは、タブ500の回転を行わずに、飲料缶100内の圧力を外部に逃がすことができる。
【0068】
なお、上記と同様、パネル400のうちのタブ500により押圧される箇所は、特に限定されず、パネル400のうち、第2スコア線690よりも外周縁401側に位置する部分がタブ500により押圧される構成としてもよい。
この場合、パネル400のうち、第2スコア線690よりもリベット900側に、パネル400の剛性を高めるビードを形成することが好ましい。
【0069】
また、上記と同様、パネル400のうちの、第2スコア線690が形成された部分が、タブ500により押圧される構成としてもよい。
この場合、パネル400のうち、第2スコア線690よりもリベット900側に位置する部分、および、パネル400のうち、第2スコア線690よりも外周縁401側に位置する部分の少なくとも一方に、パネル400の剛性を高めるビードを形成することが好ましい。
【0070】
また、例えば、図10(飲料缶100の他の構成例を示した図)に示すように、パネル400のうちの、タブ500に対向しない部分に、第2スコア線690を形成してもよい。
図10に示す構成例では、タブ500の中心線Cを延長した延長線Eの対向位置に、第2スコア線690が位置する構成となっている。
【0071】
なお、図9、10にて示した構成例では、第2スコア線690の長さの好ましい範囲は、2.0mm~8.0mmである。
発明者の実験によれば、第2スコア線690の長さが、2.0mmよりも小さいと、飲料缶100の内部の圧力の低下に時間を要するようになり、また、8.0mmよりも大きいと、飲料缶100の外部への飲料の漏れ出しが生じやすくなった。
このため、図9、10にて示した構成例では、第2スコア線690の長さは、2.0mm~8.0mmとすることが好ましい。
【0072】
図11は、飲料缶100の他の構成例を示した図である。
この構成例においては、第2スコア線690は、第1スコア線680により囲まれた領域である囲まれ領域91の外側に形成されている。
また、この構成例では、第2スコア線690は、タブ500の回転中心となるリベット900の近傍に設けられている。
また、この構成例では、第2スコア線690は、舌片状の弾性片507の対向位置に設けられている。
【0073】
また、この構成例では、第2スコア線690は、タブ500の長手方向に沿った中心線Cの対向位置から外れた箇所に設けられている。また、第2スコア線690は、この中心線Cの延長線Eの対向位置から外れた箇所に設けられている。
また、第2スコア線690は、その両端部において、缶蓋300の外周縁401側に向かっている。なお、上記と同様、第2スコア線690の両端部において、第2スコア線690が、缶蓋300の中央部403側に向かうようにしてもよい。
【0074】
この構成例においても、タブ500を時計回り方向へ90°回転させることで、図12(タブ500を回転させた後の飲料缶100の状態を示した図)に示すように、タブ500の中心線Cの対向位置に、第2スコア線690が位置するようになる。
この構成例でも、上記と同様、このように、タブ500を回転させることで、囲まれ領域91の外側に形成されている第2スコア線690におけるパネル400の破断であってタブ500を用いてのこの破断を行える。
【0075】
この構成例では、図12に示すように、タブ500の中心線Cの対向位置に第2スコア線690が位置する状態で、タブ500を引き起こす。
この場合、パネル400のうちのリベット900が設けられた部分が、タブ500によって持ち上げられる。その一方で、パネル400のうちの、タブ500の先端部510が接触する接触部分が、押し下げられる。これにより、パネル400のうちの第2スコア線690の形成部分に、せん断力が作用する。
これにより、第2スコア線690の形成箇所にて、パネル400の破断が生じ、上記と同様、パネル400に圧力逃がし部88が形成される。これにより、飲料缶100内の圧力が外部へ逃げる。
【0076】
図13は、飲料缶100の他の構成例を示した図である。
図13は、タブ500を回転させた後の状態を示している。
図13に示すこの構成例では、図11図12にて示した構成例に比べ、第2スコア線690が長くなっている。これにより、この場合、圧力逃がし部88を通じて飲料缶100の外部へ逃がす気体の量(単位時間当たりの量)を増やすことができる。
図13にて示すこの構成例では、図11図12にて示した構成例に比べ、第2スコア線690の長手方向における中央部690Cが、上方に位置し、図11図12にて示した構成例に比べ、第2スコア線690の全体が上方へずれた構成となっている。
【0077】
図11図12にて示した構成例において、第2スコア線690の長さを大きくすると、第2スコア線690と第1スコア線680とが交差してしまう。
このため、図13に示すこの構成例では、第2スコア線690の位置を図中上方へずらすことで、第2スコア線690の長さを大きくしつつ、第2スコア線690と第1スコア線680との交差を避けている。
この構成例では、タブ500を90°を超えて回転させる必要があるが、この構成例でも、上記と同様、圧力逃がし部88を形成でき、飲料缶100内の圧力を外部に逃がすことができる。
【0078】
ここで、図11~13にて示した構成例では、第2スコア線690の長さの好ましい範囲は、2.0mm~8.0mmである。
発明者の実験によれば、第2スコア線690の長さが、2.0mmよりも小さいと、飲料缶100の内部の圧力の低下に時間を要するようになり、また、8.0mmよりも大きいと、飲料缶100の外部への飲料の漏れ出しが生じやすくなった。
このため、上記の通り、第2スコア線690の長さは、2.0mm~8.0mmとすることが好ましい。
【0079】
図14(A)、(B)は、第1スコア線680、第2スコア線690の断面形状を示した図である。
図1図13に示した構成例では、第2スコア線690の深さの方が、第1スコア線680の深さよりも大きい。
これに伴い、本実施形態では、第2スコア線690の形成部分におけるパネル400の肉厚T1の方が、第1スコア線680の形成部分におけるパネル400の肉厚T2よりも小さくなっている。
【0080】
第2スコア線690の深さの方が、第1スコア線680の深さよりも大きいと、第2スコア線690の形成箇所におけるパネル400の破断の方が、第1スコア線680の形成箇所におけるパネル400の破断よりも生じやすくなる。
ここで、本実施形態のように、タブ500を用い、飲み口の形成以外に、圧力逃がし部88の形成を行う構成であると、タブ500への負担が大きくなる。この場合、圧力逃がし部88の形成の後に行われる、飲み口の形成の際に、タブ500が変形や破損等するおそれがある。
【0081】
これに対し、本実施形態のように、第2スコア線690の深さの方が、第1スコア線680の深さよりも大きいと、第2スコア線690の深さが、第1スコア線680の深さと同じである場合や小さい場合に比べて、タブ500への負担が小さくなる。
この場合、圧力逃がし部88の形成の後に行われる、飲み口の形成の際に、タブ500が変形や破損等が生じにくくなる。
【0082】
(その他)
上記では、第2スコア線690におけるパネル400の破断の際のタブ500の回転角度(缶蓋300の周方向における回転角度)が、いずれも180°未満である場合を説明した。ところで、これに限らず、リベット900を挟み、囲まれ領域91とは反対側に第2スコア線690を形成してもよく、この場合は、タブ500の回転角度は180°となる。
但し、上記のように、タブ500の回転角度は、180°未満とすることが好ましい。より好ましくは、タブ500の回転角度は、90°以下とすることがよい。この場合、タブ500の回転量が小さくて済み、ユーザの操作性が向上する。
ここで、タブ500の回転角度とは、飲み口を形成する際のタブ500の位置を基準とした場合における、タブ500の回転角度を指す。
より具体的には、タブ500の回転角度とは、タブ500の長手方向に沿った中心線C(図1参照)の延長線E上に、第1スコア線680の頂部653が位置するように、タブ500が配置された状態を基準状態とした場合における、タブ500の回転角度を指す。
【符号の説明】
【0083】
88…圧力逃がし部、91…囲まれ領域、100…飲料缶、200…缶本体、151…ビード、300…缶蓋、400…パネル、401…外周縁、500…タブ、510…先端部、680…第1スコア線、690…第2スコア線、900…リベット、C…中心線、E…延長線、R1…移動経路
図1
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