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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114234
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】半導体光増幅器
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/20 20060101AFI20230809BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20230809BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20230809BHJP
   H01S 5/50 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H01S5/20
G02B6/12 301
G02B6/125 301
H01S5/50 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016490
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】506423051
【氏名又は名称】株式会社QDレーザ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】大山 浩市
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕
(72)【発明者】
【氏名】西 研一
(72)【発明者】
【氏名】武政 敬三
【テーマコード(参考)】
2H147
5F173
【Fターム(参考)】
2H147AB03
2H147BA06
2H147BB02
2H147BE22
2H147CA13
2H147CA14
2H147CD02
2H147DA08
2H147DA09
2H147EA12A
2H147EA12B
2H147EA12C
2H147FD20
2H147GA10
2H147GA19
5F173AA21
5F173AD15
5F173AL04
5F173AR99
(57)【要約】
【課題】光の出射方向を入射方向から反転させることで入出射を一端面にて行う構成の半導体光増幅器において、小型化と低損失化との双方を達成することができる技術を提供すること。
【解決手段】半導体光増幅器(1)は、第一方向(X)における一方側の端面である第一端面(21)と他方側の端面である第二端面(22)とを有するマルチモード干渉導波路(2)と、第一方向についてマルチモード干渉導波路に隣接配置されつつ第一方向と直交する第二方向(Y)に配列された一対の入出力導波路(3、4)とを備え、第一端面は一対の入出力導波路と光学的に結合され、第二端面は高反射加工され、一対の入出力導波路の各々は、第二方向における寸法である幅がマルチモード干渉導波路よりも狭く形成されるとともに、第一端面と光学的に結合された側とは反対側にて低反射加工された入出力端面(33、43)を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光増幅器(1)であって、
第一方向(X)における一方側の端面である第一端面(21)と他方側の端面である第二端面(22)とを有する、マルチモード干渉導波路(2)と、
前記第一方向について前記マルチモード干渉導波路に隣接配置されつつ、前記第一方向と直交する第二方向(Y)に配列された、一対の入出力導波路(3、4)と、
を備え、
前記第一端面は、前記一対の前記入出力導波路と光学的に結合され、
前記第二端面は、高反射加工され、
前記一対の前記入出力導波路の各々は、前記第二方向における寸法である幅が前記マルチモード干渉導波路よりも狭く形成されるとともに、前記第一端面と光学的に結合された側とは反対側にて低反射加工された入出力端面(33、43)を有する、
半導体光増幅器。
【請求項2】
前記第二端面は、高反射膜(7)を成膜することで高反射加工された、
請求項1に記載の半導体光増幅器。
【請求項3】
前記入出力導波路は、前記入出力端面から前記入出力導波路が延びる方向である延設方向(D1、D2)が前記入出力端面に対して傾斜するように設けられた、
請求項1または2に記載の半導体光増幅器。
【請求項4】
前記第一方向と直交し且つ前記第二方向と直交する第三方向(Z)について前記マルチモード干渉導波路に隣接配置された、第一電極(81)と、
前記第三方向について前記一対の前記入出力導波路のうちの一方(3)に隣接配置された、第二電極(82)と、
前記第三方向について前記一対の前記入出力導波路のうちの前記一方とは異なる他方(4)に隣接配置された、第三電極(83)と、
をさらに備え、
前記第二電極と前記第三電極とのうちの少なくともいずれか一方は、前記第一電極とは分離されている、
請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体光増幅器。
【請求項5】
前記第二電極および前記第三電極は、前記第一電極とは分離されている、
請求項4に記載の半導体光増幅器。
【請求項6】
前記第二電極と前記第三電極とは、互いに分離されている、
請求項5に記載の半導体光増幅器。
【請求項7】
前記一対の前記入出力導波路は、前記第二方向における前記マルチモード干渉導波路の両端に設けられた、
請求項1~6のいずれか1つに記載の半導体光増幅器。
【請求項8】
前記一対の前記入出力導波路の一方と他方との間に設けられた、低屈折率部(96)をさらに備えた、
請求項1~7のいずれか1つに記載の半導体光増幅器。
【請求項9】
前記低屈折率部は、ハイメサ構造によって形成された、
請求項8に記載の半導体光増幅器。
【請求項10】
前記一対の前記入出力導波路の各々は、シングルモード導波路である、
請求項1~9のいずれか1つに記載の半導体光増幅器。
【請求項11】
前記一対の前記入出力導波路のうちの一方である出力導波路は、他方である入力導波路よりも、前記第二方向における寸法である幅が広く形成された、
請求項1~10のいずれか1つに記載の半導体光増幅器。
【請求項12】
前記マルチモード干渉導波路は、前記第二方向における両側にハイメサ構造(97)が設けられたハイメサ導波路として形成された
請求項1~11のいずれか1つに記載の半導体光増幅器。
【請求項13】
前記マルチモード干渉導波路の基本モードにおける伝搬定数をβ0、
前記マルチモード干渉導波路の高次モードにおける伝搬定数をβ1、
前記マルチモード干渉導波路の前記第一方向における寸法である長さをL、
とした場合に、
前記マルチモード干渉導波路は、
【数1】
を満たすように形成された、
請求項1~12のいずれか1つに記載の半導体光増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体光増幅器を光集積回路等に集積化する際には、端面のアライメントが必要となる。この点、特許文献1は、平面光波回路とシリコン基板上に固定された半導体素子とを一体化した構成の光集積回路を開示する。
【0003】
特許文献1に開示された光集積回路において、平面光波回路は、PLC基板と、このPLC基板上に形成された2本の直線状の光導波路とを備えている。PLCはPlanar Lightwave Circuitの略である。2本の光導波路は、それぞれ、平面光波回路の一方の端面から他方の端面まで延びている。すなわち、光導波路の一方の端部はPLC基板の一方の端面に接し、他方の端部はPLC基板の他方の端面に接している。PLC基板は、例えば、シリコン基板である。半導体素子は、半導体基板と、この半導体基板上に形成された半導体光増幅器とを備えている。半導体基板上には、さらに、半導体光増幅器の入力側および出力側に、入力側の半導体導波路および出力側の半導体導波路がそれぞれ形成されている。出力側の半導体導波路は、半導体基板上で折り返された折り返し部を有しており、光の進行方向が反転されて入力側の半導体導波路と同じ側の半導体素子の端面に接している。そして、平面光波回路と半導体素子とが、一つの接触面で固定されている。すなわち、平面光波回路の他方の端面と半導体素子の端面とが固定されている。かかる構成によれば、調芯作業が簡単で良好な結合効率が得られやすく、しかも、平面光波回路と半導体素子とを一体化したコンパクトな光集積回路および光集積回路モジュールを実現することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-250019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、特許文献1に開示された光集積回路に備えられた半導体光増幅器においては、光の進行方向を反転させるために、導波路がU字状に形成されている。かかる構成において、U字状の部分における損失を抑制するためには、曲率半径をサブミリオーダー程度に大きく取る必要がある。このため、チップサイズの小型化が困難となる。
【0006】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、光の出射方向を入射方向から反転させることで入出射を一端面にて行う構成の半導体光増幅器において、小型化と低損失化との双方を達成することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の、半導体光増幅器(1)は、
第一方向(X)における一方側の端面である第一端面(21)と他方側の端面である第二端面(22)とを有する、マルチモード干渉導波路(2)と、
前記第一方向について前記マルチモード干渉導波路に隣接配置されつつ、前記第一方向と直交する第二方向(Y)に配列された、一対の入出力導波路(3、4)と、
を備え、
前記第一端面は、前記一対の前記入出力導波路と光学的に結合され、
前記第二端面は、高反射加工され、
前記一対の前記入出力導波路の各々は、前記第二方向における寸法である幅が前記マルチモード干渉導波路よりも狭く形成されるとともに、前記第一端面と光学的に結合された側とは反対側にて低反射加工された入出力端面(33、43)を有する。
【0008】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものである。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の第一実施形態に係る半導体光増幅器の概略構成を示す平面図である。
図1B図1Aに示された半導体光増幅器における一部を拡大して示す断面図である。
図2A図1Aに示されたマルチモード干渉導波路の動作原理を説明するための概略図である。
図2B図1Aに示されたマルチモード干渉導波路の動作原理を説明するための概略図である。
図2C図1Aに示されたマルチモード干渉導波路の動作原理を説明するための概略図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る半導体光増幅器の概略構成を示す平面図である。
図4】本発明の第三実施形態に係る半導体光増幅器の概略構成を示す平面図である。
図5】本発明の第四実施形態に係る半導体光増幅器の概略構成を示す平面図である。
図6】本発明の第五実施形態に係る半導体光増幅器の概略構成を示す平面図である。
図7図6に示された半導体光増幅器における一部を拡大して示す断面図である。
図8】本発明の第六実施形態に係る半導体光増幅器の概略構成を示す平面図である。
図9】本発明の第七実施形態に係る半導体光増幅器の概略構成を示す平面図である。
図10図9に示された半導体光増幅器における一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中には挿入せず、その後にまとめて説明する。
【0011】
(第一実施形態:構成)
図1Aおよび図1Bを用いて、第一実施形態に係る半導体光増幅器1の構成について説明する。なお、説明の便宜のため、図1Aおよび図1Bに示されているようにXYZ3次元座標系を設定する。図中X軸方向が「第一方向」に相当し、図中Y軸方向が「第二方向」に相当し、図中Z軸方向が「第三方向」に相当する。第一方向と第二方向とは互いに直交し、第三方向は第一方向と直交し且つ第二方向と直交する。
【0012】
図1Aを参照すると、半導体光増幅器1は、X軸方向に長手方向を有する平面視にて略長方形状で且つZ軸方向に厚さ方向を有する直方体状に形成されている。本実施形態に係る半導体光増幅器1は、いわゆるB-SOAとしての構成を有していて、入力光を増幅して生成した出力光を出力するように構成されている。B-SOAはBooster Semiconductor Optical Amplifierの略である。本実施形態においては、半導体光増幅器1は、いわゆる「反射型SOA」であって、図中X軸方向における一方側(すなわちX軸正方向側)の入出力側端面1aと他方側の反射側端面1bとを備えている。すなわち、半導体光増幅器1は、入出力側端面1a側にて、不図示の他の光集積回路と光学的に接続されるように構成されている。そして、半導体光増幅器1は、入出力側端面1aにて他の光集積回路からの信号光(すなわち入力光)の入力と他の光集積回路への信号光(すなわち出力光)の出力とを行うとともに、反射側端面1bにて光の進行方向を反転させるように構成されている。
【0013】
具体的には、半導体光増幅器1は、マルチモード干渉導波路2と、入力導波路3と、出力導波路4と、埋込層5と、低反射膜6と、高反射膜7と、電極8とを備えている。以下、本実施形態に係る半導体光増幅器1を構成する各部について順に説明する。
【0014】
マルチモード干渉導波路2は、X軸方向における一方側(すなわちX軸正方向側)の端面である第一端面21と、他方側の端面である第二端面22とを有している。マルチモード干渉導波路2は、第一端面21にて信号光の入出力を行う「1×1MMI」型の導波路としての構成を有している。「1×1MMI」は、1入力-1出力型MMIの略である。MMIはMulti-Mode Interferenceの略である。すなわち、マルチモード干渉導波路2は、第一端面21にて、入力導波路3および出力導波路4と光学的に結合されている。
【0015】
一対の入出力導波路としての、入力導波路3および出力導波路4は、図中X軸方向についてマルチモード干渉導波路2に隣接配置されつつ、図中X軸方向と直交するY軸方向に配列されている。入力導波路3および出力導波路4は、それぞれ1つずつ設けられている。入力導波路3および出力導波路4は、Y軸方向における寸法である幅がマルチモード干渉導波路2よりも狭く形成されている。本実施形態においては、入力導波路3および出力導波路4は、シングルモード導波路としての構成を有している。入力導波路3と出力導波路4とは、Y軸方向について所定間隔で配置されている。マルチモード干渉導波路2と入力導波路3と出力導波路4との結合体の周囲には、埋込層5が設けられている。
【0016】
入力導波路3は、入力側接続部31と入力側傾斜部32とを有している。入力側接続部31は、マルチモード干渉導波路2との光学的結合箇所から、図中X軸正方向に延設されている。入力側傾斜部32は、入力側接続部31の図中X軸正方向における端部から、図中Y軸負方向に向かって傾斜するように設けられている。入力導波路3は、一対の入出力端面のうちの一方である入力端面33を有している。入力端面33は、入力導波路3における第一端面21と光学的に結合された側とは反対側の端面、すなわち、入力側傾斜部32の端面であって、半導体光増幅器1における入出力側端面1aに設けられている。本実施形態においては、入力導波路3は、入力端面33から入力側傾斜部32が延びる延設方向(すなわち図1Aに示されている入射方向D1)が入力端面33に対して傾斜するように設けられている。入射方向D1は、入力端面33を信号光が通過する方向である。
【0017】
出力導波路4は、出力側接続部41と出力側傾斜部42とを有している。出力側接続部41は、マルチモード干渉導波路2との光学的結合箇所から、図中X軸正方向に延設されている。すなわち、出力側接続部41は、入力側接続部31と平行に設けられている。出力側傾斜部42は、出力側接続部41の図中X軸正方向における端部から、図中Y軸負方向に向かって傾斜するように設けられている。出力導波路4は、一対の入出力端面のうちの他方である出力端面43を有している。出力端面43は、出力導波路4における第一端面21と光学的に結合された側とは反対側の端面、すなわち、出力側傾斜部42の端面であって、半導体光増幅器1における入出力側端面1aに設けられている。本実施形態においては、出力導波路4は、出力端面43から出力側傾斜部42が延びる延設方向(すなわち図1Aに示されている出射方向D2の反対方向)が出力端面43に対して傾斜するように設けられている。出射方向D2は、出力端面43を信号光が通過する方向である。
【0018】
半導体光増幅器1は、入出力側端面1aにて低反射加工されている一方、反射側端面1bにて高反射加工されている。すなわち、マルチモード干渉導波路2における第二端面22は、高反射加工されている。また、入力導波路3における入力端面33、および、出力導波路4における出力端面43は、低反射加工されている。具体的には、入力導波路3における入力端面33、および、出力導波路4における出力端面43は、入出力側端面1aに低反射膜6を成膜することで低反射加工されている。一方、マルチモード干渉導波路2における第二端面22は、反射側端面1bに高反射膜7を成膜することで高反射加工されている。
【0019】
電極8は、半導体光増幅器1の厚さ方向における両面に設けられている。具体的には、半導体光増幅器1は、第一電極81と、第二電極82と、第三電極83とを有している。第一電極81は、半導体光増幅器1の厚さ方向について、マルチモード干渉導波路2に隣接配置されている。第二電極82は、半導体光増幅器1の厚さ方向について、入力導波路3に隣接配置されている。第三電極83は、半導体光増幅器1の厚さ方向について、出力導波路4に隣接配置されている。本実施形態においては、第一電極81と、第二電極82と、第三電極83とは、一体に形成されている。すなわち、第一電極81、第二電極82、および第三電極83は、同電圧が印加されるように設けられている。なお、電極8、第一電極81、第二電極82、および第三電極83における「電極」は、「電極対」とも称され得る。
【0020】
図1Bは、図1Aにおける、マルチモード干渉導波路2、入力導波路3、または出力導波路4に相当する部分の拡大断面図を示す。図1Bに示されているように、電極対である電極8は、厚さ方向に配列された下部電極84と上部電極85とを有し、電極8を構成する下部電極84と上部電極85との間には、半導体層90が設けられている。本実施形態においては、第一電極81、第二電極82、および第三電極83における下部電極84は、一体に形成されている。同様に、第一電極81、第二電極82、および第三電極83における上部電極85は、一体に形成されている。
【0021】
半導体層90は、ベース層91と、アンダークラッド層92と、活性層93と、オーバークラッド層94と、コンタクト層95とを有している。ベース層91と、アンダークラッド層92と、活性層93と、オーバークラッド層94と、コンタクト層95とは、この順に積層されている。
【0022】
ベース層91は、半導体基板の層であって、例えばGaAs等の半導体材料によって形成されている。ベース層91の底面には、下部電極84が設けられている。ベース層91の上面は、アンダークラッド層92と接合されている。アンダークラッド層92は、n型クラッド層であって、n型のAlGaAs等によって形成されている。アンダークラッド層92の上面は、活性層93と接合されている。すなわち、活性層93は、アンダークラッド層92とオーバークラッド層94とに挟まれた状態で設けられている。活性層93は、GaAs等によって形成されている。オーバークラッド層94は、p型クラッド層であって、p型のAlGaAs等によって形成されている。オーバークラッド層94の上面は、コンタクト層95と接合されている。コンタクト層95は、上部電極85と半導体層90との導通を取るための層であって、例えばGaAs等の半導体材料によって形成されている。コンタクト層95の上面には、上部電極85が設けられている。
【0023】
このように、本実施形態に係る半導体光増幅器1は、X軸正方向側にて隣接する不図示の光集積回路から信号光が入力されると、かかる信号光を増幅して当該光集積回路に出力する構成を有している。すなわち、半導体光増幅器1は、入力端面33から入力導波路3に入力された信号光を、電極8に対する通電により増幅しつつマルチモード干渉導波路2にて進行方向を反転させ、出力導波路4を介して出力端面43から出力するように構成されている。
【0024】
(第一実施形態:効果)
以下、本実施形態に係る半導体光増幅器1の構成による動作概要について、同構成により奏される効果とともに説明する。
【0025】
入力端面33から入力導波路3に入力された信号光は、第一端面21にてマルチモード干渉導波路2に入射し、第二端面22にて反射し、第一端面21から出力導波路4に伝播し、出力端面43から出力される。この間、電極8への通電により、信号光が増幅される。ここで、図2A図2Cを用いて、図1Aに示されたマルチモード干渉導波路2における動作原理の概略について説明する。まず、図2Aは、図1Aに示されたマルチモード干渉導波路2の前提となる構成である、非反射型すなわち透過型の2×2MMI導波路を示す。2×2MMI導波路における入出力ポートであるPort1~Port4は、2×2MMI導波路と入出力導波路との接続箇所を示す。Port1から光を入射させると、図中破線で示されている2×2MMI導波路の中間点においては、導波光が2か所で結像し、その光出力は均等になる。ここで、2×2MMI導波路には、Paired型とGeneral型との2種類が存在し、Paired型では導波路端面からX方向にLπ/2の場所で、General型では3Lπ/2の場所で、それぞれ結像する。ここでLπはビート長と呼ばれ、Lπ=π/(β0-β1)で表される。β0、β1はそれぞれ基本モード、1次モードの伝搬定数である。2×2MMI導波路をさらに伝搬すると、Port1に対してY方向に対称な位置に全ての光が結像し、Port4に出力される。そのX方向位置はPaired型ではLπ、General型では3Lπとなる。図2Aにおいて、Port1から2×2MMI導波路に入射してからPort4にて出力するために結像するまでの光の伝播長(すなわち図中実線で示した斜めの矢印の長さ)は、「結合長」と称される。図2Aに示された、Port1から入射した光がPort4に出力される2×2MMI導波路において、その導波路長の中間で切り取った構造が、図1Aに示されたマルチモード干渉導波路2である。その導波路長はPaired型ではLπ/2、General型では3Lπ/2である。動作を説明するため、Port1から入射した光が、切り取った端面に到達するまでの伝搬の様子を図2Bに、その端面で反射して出力ポートすなわちPort2に到達するまでの伝搬の様子を図2Cに分解して示す。まず図2Bでは、Port1から入射した光が伝搬し、反射鏡のある端面において2箇所に結像する。反射鏡で折り返しさらに伝搬すると、図2Cのように、Port2においてすべての光が結像し出力される。このPort2は図2AにおけるPort4に相当する。ここで反射鏡は、この端面に到達した光が図面左側に放射されないように設けている。反射率はたとえば誘電体多層膜によって99%程度まで高めることができるため、この反射鏡における損失は無視できる程度に小さい。かかる構成を有する反射型の1×1MMI導波路であるマルチモード干渉導波路2によれば、入出力ポートの間隔を数十μm程度にまで小型化できる。シングルモード導波路のSOAでは2μm程度の導波路幅であるが、MMIでは数十μm程度であるため、導波路幅に反比例して動作電圧が低減できる。また、透過型MMIを用いた構造に対しては導波路面積を半減できる。
【0026】
このように、本実施形態に係る半導体光増幅器1は、光の進行方向を反転させるために、特許文献1に開示された構成のようなU字状の導波路ではなく、マルチモード干渉導波路2を用いている。この点、特許文献1に開示された構成のようなU字状の導波路を用いる場合、U字状の部分における損失を抑制するためには、曲率半径をサブミリオーダー程度に大きく取る必要がある。このため、チップサイズの小型化が困難となる。これに対し、本実施形態に係る半導体光増幅器1においては、マルチモード干渉導波路2を用いることで、上述したように、低損失を維持しつつ小型化を図ることが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、端面のアライメントが簡易且つ正確に行える反射型SOAにおける、小型化と低損失化との双方を達成することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態においては、電極8として、主として増幅作用を奏するマルチモード干渉導波路2に対応する第一電極81に加えて、入力導波路3に対応する第二電極82と、出力導波路4に対応する第三電極83とが設けられている。かかる構成によれば、入力導波路3および出力導波路4における信号の減衰が、可能な限り抑制され得る。
【0028】
さらに、本実施形態においては、入力導波路3は、入力端面33から入力導波路3が延びる方向である延設方向が入力端面33に対して傾斜するように設けられている。同様に、出力導波路4は、出力端面43から出力導波路4が延びる方向である延設方向が出力端面43に対して傾斜するように設けられている。導波路が傾斜していない直線導波路構造の場合、端面反射による発振が生じやすい。これに対し、かかる構成によれば、導波路を傾斜させて端面反射率を低減させた斜め導波路構造とすることで、内部での端面反射が抑制され、以て端面反射による発振が良好に抑制され得る。
【0029】
(他の実施形態)
以下、他の実施形態について説明する。なお、以下の他の実施形態の説明においては、主として、上記第一実施形態と異なる部分について説明する。また、第一実施形態と他の実施形態とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の他の実施形態の説明において、第一実施形態と同一の符号が付された構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記第一実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0030】
第二電極82と第三電極83とのうちの少なくともいずれか一方は、第一電極81とは分離されていてもよい。すなわち、第二電極82と第三電極83とのうちの少なくともいずれか一方における上部電極85と、第一電極81における上部電極85とは、互いに分割して設けられ得る。なお、この場合、第一電極81、第二電極82、および第三電極83における下部電極84は、一体に形成され得る。あるいは、第二電極82と第三電極83とのうちの少なくともいずれか一方における下部電極84と、第一電極81における下部電極84とは、互いに分割して設けられ得る。
【0031】
図3は、第二実施形態に係る半導体光増幅器1の概略構成を示す。図3に示されているように、本実施形態においては、第三電極83は、第一電極81とは分離されている。すなわち、第三電極83における上部電極85と、第一電極81における上部電極85とは、互いに通電せず別電位となり得るように分離されている。一方、第二電極82は、第一電極81と一体に形成されている。すなわち、第二電極82における上部電極85と、第一電極81における上部電極85とは、互いに同電位となるように一体化されている。なお、第一電極81、第二電極82、および第三電極83における下部電極84は、一体に形成されていてもよい。かかる構成によれば、一体化された第一電極81および第二電極82と、これらとは分離された第三電極83とに、異なる通電量を設定することが可能となる。具体的には、例えば、図1Aに示された全電極一体型構成と、図3に示された電極分離構成とで、SOA動作を比較すると、以下の通りとなる。なお、便宜上、Y軸方向における中央位置から図中上下すなわち第二電極82側と第三電極83側とに領域を分け、前者を「入射側」とし後者を「出射側」と称することがある。また、仮想事例として、総印加電力は1Wであるものとし、MMIにおける損失を50%とし、発光効率を10%とする。この点、図1Aに示された全電極一体型構成によれば、入射側において1Wの半分である500mWが消費され、これによる発光量は50mWとなり、損失により光量が25mWまで低下する。一方、出射側においても1Wの半分である500mWが消費され、これによる発光量は50mWとなる。そうすると、最終的な出力は、25mW+50mW=75mWとなる。これに対し、図3に示された電極分離構成によれば、例えば、総印加電力1Wを入射側100mWとし出射側900mWとした場合、入射側においては100mWの消費から10mW発光して損失により光量が5mWに低下し、出射側においては900mWの消費から90mW発光するため、最終的な出力は、5mW+90mW=95mWとなる。すなわち、同じ総印加電力であっても、MMIにおける損失を考慮して、入射側と出射側との印加電圧配分を出射側の方が大きくなるように設定することで、より大きな出力すなわち高効率化が得られる。このように、かかる構成によれば、出力導波路4側に、より大きな電力すなわち高電流を印加することで、半導体光増幅器1における信号増幅を、マルチモード干渉導波路2における損失の影響を最小限にしつつ行うことが可能となる。
【0032】
図4は、第三実施形態に係る半導体光増幅器1の概略構成を示す。図4に示されているように、本実施形態においては、第二電極82および第三電極83は、第一電極81とは分離されている。すなわち、第一電極81における上部電極85と、第二電極82および第三電極83における上部電極85とは、分離されている。なお、第一電極81、第二電極82、および第三電極83における下部電極84は、一体に形成されていてもよい。かかる構成によれば、マルチモード干渉導波路2を独立電極で駆動することが可能となる。ここで、マルチモード干渉導波路2の形状すなわち寸法には、製造誤差が生じることがある。このような製造誤差が生じると、出力導波路4側のポートにおける結像位置が所定の設計位置からずれることで損失が大きくなり得る。一方、マルチモード干渉導波路2における結合長は、屈折率に応じて変化し、屈折率はキャリア密度に応じて変化し、キャリア密度は電流によって変化する。このため、印加電流を変化させると、キャリア密度が変化し、これにより屈折率が変化し、これにより結合長が変化する。したがって、かかる構成によれば、マルチモード干渉導波路2における結合長を第一電極81における印加電流で調整することで、損失を最小限に抑制することが可能となる。さらに、第二電極82と第三電極83とを互いに分離することで、上記第二実施形態と同様の効果が奏され得る。
【0033】
図5は、第四実施形態に係る半導体光増幅器1の概略構成を示す。図6は、第五実施形態に係る半導体光増幅器1の概略構成を示す。なお、図5および図6においては、図1A図3、あるいは図4における電極8の図示は、省略されているものとする。
【0034】
入力導波路3と出力導波路4との間隔が小さいと、入力導波路3を伝播する信号光が出力導波路4に結合したり、出力導波路4を伝播する信号光が入力導波路3に結合したりすることで、損失が発生するおそれがある。
【0035】
この点、図5に示されているように、第四実施形態においては、一対の入出力導波路である入力導波路3および出力導波路4は、図中Y軸方向におけるマルチモード干渉導波路2の両端に設けられている。すなわち、マルチモード干渉導波路2のY軸正方向側の端と、入力導波路3のY軸正方向側の端とは、ほぼ一致している。同様に、マルチモード干渉導波路2のY軸負方向側の端と、出力導波路4のY軸負方向側の端とは、ほぼ一致している。かかる構成によれば、入力導波路3と出力導波路4との間隔を、マルチモード干渉導波路2の幅の範囲で最大限確保することが可能となり、上記のような損失の発生を良好に抑制することが可能となる。
【0036】
一方、図6に示されているように、第五実施形態においては、一対の入出力導波路である入力導波路3と出力導波路4との間には、低屈折率部96が設けられている。具体的には、低屈折率部96は、図7に示されているように、ハイメサ構造によって形成され得る。「ハイメサ構造」とは、基板層であるベース層91が、非導波領域(すなわち厚さ方向と直交する面内方向について導波路が設けられていない領域)において、導波路層よりも低い位置までエッチング等により除去された構造である。すなわち、入力導波路3および出力導波路4は、いわゆる「ハイメサ導波路」として形成され得る。かかる構成によれば、入力導波路3と出力導波路4との間隔を変更することなく、上記のような損失の発生を良好に抑制することが可能となる。
【0037】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0038】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な装置構成に限定されない。すなわち、図1A等は、本発明に係る半導体光増幅器1の概要を簡易に説明するための、簡素化された概略図である。したがって、実際に製造販売される半導体光増幅器1の構成は、必ずしも、図1A等に示された例示的な構成と一致するとは限らない。また、実際に製造販売される半導体光増幅器1の構成は、図1A等に示された例示的な構成から適宜変更され得る。
【0039】
例えば、半導体光増幅器1の各部における具体的な構造や、これらを構成する材料についても、特段の限定はない。具体的には、図1Aに示された構成において、第一電極81と、第二電極82と、第三電極83とは、半導体光増幅器1の平面視における全体を覆う略矩形状の単一電極によって、一体的に形成され得る。すなわち、第一電極81は、上記単一電極における、マルチモード干渉導波路2に対応する部分に相当する。また、第二電極82は、上記単一電極における、入力導波路3に対応する部分に相当する。同様に、第三電極83は、上記単一電極における、出力導波路4に対応する部分に相当する。この場合、第一電極81と、第二電極82と、第三電極83とは、外見上、区別が困難あるいは不可能となる。
【0040】
マルチモード干渉導波路2の平面形状(すなわち図1A等に示された形状)は、伝播モードにおける伝搬定数等に基づいて設定され得る。具体的には、上記の通り、マルチモード干渉導波路2は、以下の式を満たすように形成され得る。なお、以下の式において、長さLは、マルチモード干渉導波路2の図1A等におけるX軸方向における寸法である。すなわち、L=Lπ/2である。
【数1】
【0041】
導波路の伝搬定数を入射側と出射側とで変わるようにすることで、光の結合を抑制することができ、以て低損失となる。また、SOAは、導波路幅が広いほど、高出力時の効率が上がる。そこで、図8に示されているように、出力導波路4は、入力導波路3よりも、第二方向すなわち図中Y軸方向における寸法である幅が広く形成され得る。特に、図3に示された電極分離構成を図8に示された導波路構成に適用することで、よりいっそうの高効率化が可能となる。
【0042】
図9および図10に示されているように、マルチモード干渉導波路2は、第二方向すなわち図中Y軸方向における両側にハイメサ構造97が設けられた、いわゆるハイメサ導波路として形成され得る。これにより、光の閉じ込めが強くなり、β0-β1の値が大きくなる。すると、ビート長Lπの値が小さくなり、上記の式におけるLの値すなわちマルチモード干渉導波路2の長さ寸法を小さくすることが可能となる。したがって、マルチモード干渉導波路2をさらに小型化することが可能となる。
【0043】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0044】
変形例も、上記の例示に限定されない。すなわち、例えば、上記に例示した以外で、複数の実施形態同士が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。同様に、複数の変形例が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体光増幅器
2 マルチモード干渉導波路
21 第一端面
22 第二端面
3 入力導波路(入出力導波路)
33 入力端面
4 出力導波路(入出力導波路)
43 出力端面(入出力端面)
6 低反射膜
7 高反射膜(入出力端面)
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10