(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114240
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230809BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230809BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230809BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20230809BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20230809BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230809BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H01L29/78 657A
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L29/78 652R
H01L29/78 652M
H01L29/78 652S
H01L29/78 655A
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016498
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻村 理俊
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AA05
5F048AB10
5F048AC06
5F048AC09
5F048AC10
5F048BA04
5F048BA06
5F048BA10
5F048BA11
5F048BA14
5F048BB05
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC05
5F048BC12
5F048BD07
5F048BE09
5F048BF02
5F048BF06
5F048BF07
5F048BF15
5F048BF16
5F048BF17
5F048BF18
5F048CB07
(57)【要約】
【課題】オン抵抗が増加することを抑制しつつ、SSFが発生することを抑制できるSiC半導体装置を提供する。
【解決手段】SiCで構成され、一面10aおよび他面10bを有す半導体基板10と、半導体基板10に形成され、寄生ダイオードが構成されるスイッチング素子を有する素子領域1と、半導体基板に形成され、ダイオード素子を有するダイオード領域2と、半導体基板10の一面側に配置されてスイッチング素子およびダイオード素子と電気的に接続される第1電極30と、半導体基板10の他面10b側に配置されてスイッチング素子およびダイオード素子と電気的に接続される第2電極33と、を備える。そして、ダイオード領域に形成されたダイオード素子は、寄生ダイオードよりも、順方向電流が流れ始める順方向電圧が小さくなるようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素で構成される炭化珪素半導体装置であって、
炭化珪素で構成され、一面(10a)および前記一面と反対側の他面(10b)を有す半導体基板(10)と、
前記半導体基板に形成され、寄生ダイオードが構成されるスイッチング素子を有する素子領域(1)と、
前記半導体基板に形成され、ダイオード素子を有するダイオード領域(2)と、
前記半導体基板の一面側に配置されて前記スイッチング素子および前記ダイオード素子と電気的に接続される第1電極(30)と、
前記半導体基板の他面側に配置されて前記スイッチング素子および前記ダイオード素子と電気的に接続される第2電極(33)と、を備え、
前記ダイオード領域に形成されたダイオード素子は、前記寄生ダイオードよりも、順方向電流が流れ始める順方向電圧が小さくされている炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記ダイオード領域は、単位面積当たりにおける第1電極との接続面積が前記素子領域の単位面積当たりにおける第1電極との接続面積より大きくされている請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記素子領域および前記ダイオード領域には、前記第1電極と接続される部分にコンタクト領域(23a、23b)が形成されており、
前記ダイオード領域に形成されたコンタクト領域は、前記素子領域に形成されたコンタクト領域よりも不純物濃度が高くされている請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板には、前記第1電極と接続される部分に金属シリサイド層(31a、31b)が形成されており、
前記ダイオード領域に形成された金属シリサイド層は、前記素子領域に形成された金属シリサイド層よりも、前記第1電極との接触抵抗が低くなる材料を用いて構成されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記素子領域と前記ダイオード領域との間には、前記第1電極と絶縁されたガード領域が配置されており、
前記素子領域と前記ダイオード領域との間に配置される前記ガード領域は、前記素子領域と前記ダイオード領域との配列方向に沿った長さが、正孔の拡散長以上の長さとされている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ガード領域は、
第1導電型のドリフト層(19)と、
前記ドリフト層との間に空乏層を構成し、前記第1電極と絶縁された第2導電型のフローティング領域(16、24)とを含んで構成されている請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下では、単にSiCともいう)で構成されるSiC半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、SiCで構成された半導体基板にベース層やソース領域等を有するMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistorの略)が形成されたSiC半導体装置が提案されている。具体的には、このSiC半導体装置は、n+型の基板上に、n-型のドリフト層、p型のベース層が順に積層され、ベース層の表層部にソース領域が形成されたSiCで構成される半導体基板を備えている。また、このSiC半導体装置では、ベース層およびソース領域を貫通してドリフト層に達するトレンチが形成されている。そして、トレンチには、ゲート絶縁膜およびゲート電極が順に形成されている。
【0003】
半導体基板の一面側には、ソース領域およびベース層と接続される第1電極が配置されている。半導体基板の他面側には、ドレイン領域を構成する基板と接続される第2電極が配置されている。
【0004】
このようなSiC半導体装置では、SiCで構成される半導体基板に基底面転位(以下では、BPDともいう)が含まれることが報告されている。また、このようなSiC半導体装置では、ベース層とドリフト層とを含んで寄生ダイオードが構成される。そして、このようなSiC半導体装置では、寄生ダイオードが作動すると、正孔がドリフト層に注入され、注入された正孔がBPDで電子と再結合することでシングルショックレー型の積層欠陥(以下では、単にSSFともいう)が構成される。SSFは、BPDよりもSiC半導体装置の特性を低下させ易い欠陥である。
【0005】
このため、例えば、特許文献1には、ドリフト層にライフタイムキラーを形成し、寄生ダイオードが動作した際の正孔濃度を低減してSSFを構成され難くすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ドリフト層にライフタイムキラーを形成してSiC半導体装置を構成した場合、オン抵抗が増加する懸念がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、オン抵抗が増加することを抑制しつつ、SSFが発生することを抑制できるSiC半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1では、SiCで構成されるSiC半導体装置であって、SiCで構成され、一面(10a)および一面と反対側の他面(10b)を有す半導体基板(10)と、半導体基板に形成され、寄生ダイオードが構成されるスイッチング素子を有する素子領域(1)と、半導体基板に形成され、ダイオード素子を有するダイオード領域(2)と、半導体基板の一面側に配置されてスイッチング素子およびダイオード素子と電気的に接続される第1電極(30)と、半導体基板の他面側に配置されてスイッチング素子およびダイオード素子と電気的に接続される第2電極(33)と、を備え、ダイオード領域に形成されたダイオード素子は、寄生ダイオードよりも、順方向電流が流れ始める順方向電圧が小さくされている。
【0010】
これによれば、ダイオード領域の順方向電圧が素子領域に構成される寄生ダイオードの順方向電圧よりも低くされている。このため、SiC半導体装置がダイオード動作する際には、ダイオード領域が動作し易くなり、素子領域の寄生ダイオードが動作し難くなる。したがって、素子領域にSSFが構成されることを抑制できる。
【0011】
また、このSiC半導体装置では、ダイオード領域を配置することで素子領域にSSFが構成されることを抑制している。このため、素子領域にライフタイムキラー等を形成する場合と比較して、素子領域のオン抵抗が増加することを抑制できる。つまり、このSiC半導体装置によれば、オン抵抗が増加することを抑制しつつ、素子領域(すなわち、スイッチング素子内)にSSFが発生することを抑制できる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の平面図である。
【
図2】
図1中のII-II線に沿った断面図である。
【
図4】順方向電圧と順方向電流との関係を示す図である。
【
図5】第2実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【
図6】順方向電圧と順方向電流との関係を示す図である。
【
図7】第3実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【
図8】第4実施形態におけるSiC半導体装置の平面図である。
【
図9】第5実施形態におけるSiC半導体装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための装置として適用されると好適である。
【0016】
図1に示されるように、SiC半導体装置は、平面矩形状とされており、素子領域1、ダイオード領域2、ダイオード領域2を囲むガード領域3、および素子領域1、ダイオード領域2、ガード領域3を囲む外周領域4を有している。そして、本実施形態では、素子領域1に、スイッチング素子としてのMOSFETが形成され、ダイオード領域2にダイオード素子が形成されている。
【0017】
なお、ガード領域3は、ダイオード領域2を囲むように配置されることで素子領域1とダイオード領域2との間にも配置される。また、外周領域4には、後述するゲート電極27等と接続されるパッド部5等が形成されている。
【0018】
以下、後述する基板11の面方向における一方向をX軸方向とし、基板の面方向における一方向と交差する方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向と直交する方向をZ軸方向として説明する。なお、本実施形態では、X軸方向とY軸方向とは直交している。そして、
図1では、紙面上下方向がX軸方向に相当し、紙面左右方向がY軸方向に相当し、紙面奥行き方向がZ軸方向に相当している。また、以下では、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(-)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書では所望の数字の前にバーを付している。
【0019】
SiC半導体装置は、
図2および
図3に示されるように、全体として4H-SiC型とされたSiCで構成される半導体基板10を用いて構成されており、BPDが含まれている。なお、本実施形態では、X軸方向が[1-100]方向に沿った方向とされ、Y軸方向が[11-20]方向に沿った方向とされている。
【0020】
具体的には、半導体基板10は、SiC単結晶からなるn+型の基板11を備えている。本実施形態では、基板11として、例えば、(0001)Si面に対してY軸方向に0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が1.0×1019/cm3とされ、厚さが300μm程度とされたものが用いられる。なお、基板11は、本実施形態ではドレイン領域を構成するものであり、高濃度層を構成する。また、基板11には、BPDが含まれている。そして、後述するように、基板11上にエピタキシャル層等が配置されることにより、BPDを含む半導体基板10が構成される。
【0021】
基板11の表面上には、SiCからなるn-型のバッファ層12が形成されている。バッファ層12は、基板11の表面にエピタキシャル成長を行うことによって構成される。そして、バッファ層12は、n型不純物濃度が、基板11と、後述する低濃度層13との間の不純物濃度とされ、厚さが1μm程度とされている。
【0022】
バッファ層12の表面上には、例えば、n型不純物濃度が5.0~10.0×1015/cm3とされ、厚さが10~15μm程度とされたSiCからなるn-型の低濃度層13がエピタキシャル成長を行うことによって構成されている。この低濃度層13は、不純物濃度がZ軸方向において一定とされていてもよいが、濃度分布に傾斜が付けられ、低濃度層13のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにされると好ましい。例えば、低濃度層13は、基板11の表面から3~5μm程度の部分の不純物濃度が2.0×1015/cm3程度他の部分よりも高くされるのが好ましい。このような構成にすることにより、低濃度層13の内部抵抗を低減でき、オン抵抗を低減することができる。
【0023】
低濃度層13の表層部には、素子領域1において、JFET部14および第1ディープ層15が形成されている。本実施形態では、素子領域1のJFET部14および第1ディープ層15は、それぞれX軸方向に沿って延設されると共に、Y軸方向において交互に繰り返し並べて配置された線状部分を有する構成とされている。つまり、素子領域1のJFET部14および第1ディープ層15は、基板11の表面に対する法線方向(以下では、単に法線方向ともいう)において、それぞれX軸方向に沿って延設されたストライプ状とされ、それらがY軸方向に沿って交互に並べられたレイアウトとなる構成とされている。なお、基板11の表面に対する法線方向においてとは、言い換えると、基板11の表面に対する法線方向から視たときということもできる。
【0024】
JFET部14は、低濃度層13よりも高不純物濃度とされたn型とされており、深さが0.3~1.5μmとされている。本実施形態では、JFET部14は、n型不純物濃度が7.0×1016~5.0×1017/cm3とされている。第1ディープ層15は、例えば、ボロン等のp型不純物濃度が2.0×1017~2.0×1018/cm3とされている。
【0025】
そして、本実施形態の第1ディープ層15は、JFET部14より浅く形成されている。つまり、第1ディープ層15は、底部がJFET部14内に位置するように形成されている。言い換えると、第1ディープ層15は、低濃度層13との間にJFET部14が位置するように形成されている。
【0026】
また、低濃度層13の表層部には、ダイオード領域2において、第1ディープ層15が全体的に形成されている。さらに、低濃度層13の表層部には、ガード領域3において、第1フローティング領域16が形成されている。第1フローティング領域16は、ダイオード領域2を囲むように複数本が形成されている。本実施形態の第1フローティング領域16は、例えば、四隅が丸められた四角枠状とされて同心状に形成されている。但し、この第1フローティング領域16は、四角枠状ではなく、円形枠状等の他の枠状とされて同心状に形成されていてもよい。
【0027】
なお、素子領域1およびダイオード領域2に形成された第1ディープ層15およびガード領域3に形成された第1フローティング領域16は、それぞれ基板11側の下面が同じ深さとされていると共に同じ厚さとされ、p型不純物濃度が同じとされている。
【0028】
そして、素子領域1におけるJFET部14および第1ディープ層15上には、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21、ソース領域22、コンタクト領域23aが形成されている。ダイオード領域2における第1ディープ層15上には、第2ディープ層18、ベース層21およびコンタクト領域23bが形成されている。ガード領域3における低濃度層13および第1ディープ層15上には、電流分散層17および第2フローティング領域24が形成されている。
【0029】
電流分散層17は、n型不純物層で構成され、素子領域1ではJFET部14と繋がっている。このため、本実施形態では、低濃度層13、JFET部14、および電流分散層17が繋がり、これらによってドリフト層19が構成されている。
【0030】
第2ディープ層18は、厚さが電流分散層17と等しくされている。そして、素子領域1では、電流分散層17および第2ディープ層18は、JFET部14のうちのストライプ状とされた部分や、第1ディープ層15の長手方向に対して交差する方向に延設されている。本実施形態では、電流分散層17および第2ディープ層18は、Y軸方向を長手方向として延設されると共に、X軸方向において交互に複数本並べたレイアウトとされている。なお、電流分散層17および第2ディープ層18の形成ピッチは、後述するトレンチゲート構造の形成ピッチに合わせてあり、第2ディープ層18は、後述するトレンチ25を挟むように形成されている。
【0031】
一方、ダイオード領域2では、第2ディープ層18が第1ディープ層15上に全体的に形成されている。
【0032】
ベース層21は、p型とされており、素子領域1では、電流分散層17および第2ディープ層18上に形成されている。また、ベース層21は、ダイオード領域2では、第2ディープ層18上に形成されている。
【0033】
そして、素子領域1では、ベース層21の表層部に、n+型のソース領域22およびp+型のコンタクト領域23aが形成されている。具体的には、ソース領域22は、後述するトレンチ25の側面に接するように形成されている。コンタクト領域23aは、ソース領域22を挟んで後述するトレンチ25と反対側に形成されている。なお、本実施形態では、ソース領域22が不純物領域を構成する。
【0034】
ダイオード領域2では、ベース層21の表層部に、p+型のコンタクト領域23bが形成されている。
【0035】
ガード領域3では、電流分散層17が後述する半導体基板10の一面10aを構成するように配置されている。そして、ガード領域3では、電流分散層17の表層部に、ダイオード領域2を囲むように、複数本の第2フローティング領域24が形成されている。本実施形態では、第2フローティング領域24は、例えば、四隅が丸められた四角枠状とされて同心状に形成されている。但し、この第2フローティング領域24は、四角枠状ではなく、円形枠状等の他の枠状とされて同心状に形成されていてもよい。
【0036】
なお、素子領域1およびダイオード領域2に形成された第2ディープ層18、およびガード領域3に形成された第2フローティング領域24は、それぞれ、基板11側の下面が同じ深さとされていると共に同じ厚さとされ、p型不純物濃度が同じとされている。
【0037】
本実施形態では、以上のように、基板11、バッファ層12、低濃度層13、JFET部14、第1ディープ層15、第1フローティング領域16、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21、ソース領域22、第2フローティング領域24等を含んで半導体基板10が構成されている。そして、半導体基板10の一面10aがソース領域22、コンタクト領域23a、23b、電流分散層17、第2フローティング領域24等で構成され、半導体基板10の他面10bが基板11で構成されている。また、ダイオード領域2においては、基板11、バッファ層12、低濃度層13をカソードとし、第1ディープ層15、第2ディープ層18、ベース層21、コンタクト領域23bをアノードとするダイオード素子が構成される。
【0038】
半導体基板10には、素子領域1において、ソース領域22やベース層21等を貫通して電流分散層17に達すると共に、底面が電流分散層17内に位置するように、例えば、幅が1.4~2.0μmとされたトレンチ25が形成されている。なお、トレンチ25は、JFET部14および第1ディープ層15に達しないように形成されている。つまり、トレンチ25は、底面よりも下方にJFET部14および第1ディープ層15が位置するように形成されている。
【0039】
また、トレンチ25は、Y軸方向に沿って延びるように複数本が延設されていると共に、X軸方向に等間隔で並べられてストライプ状に形成されている。つまり、本実施形態では、トレンチ25は、長手方向が第1ディープ層15の長手方向と直交するように形成されている。また、トレンチ25は、法線方向において、第2ディープ層18に挟まれるように形成されている。
【0040】
トレンチ25には、内壁面にゲート絶縁膜26が形成され、ゲート絶縁膜26上には、ドープトPoly-Si等によって構成されるゲート電極27が形成されている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。特に限定されるものではないが、ゲート絶縁膜26は、トレンチ25の内壁面を熱酸化する、またはCVD(chemical vapor depositionの略)法を行うことで形成される。そして、ゲート絶縁膜26は、厚さがトレンチ25の側面側および底面側で共に100nm程度とされている。
【0041】
なお、ゲート絶縁膜26は、トレンチ25の内壁面以外の表面にも形成されている。具体的には、ゲート絶縁膜26は、素子領域1においては、半導体基板10の一面10aの一部も覆うように形成されている。より詳しくは、ゲート絶縁膜26は、ソース領域22の表面の一部も覆うように形成されている。言い換えると、ゲート絶縁膜26には、ゲート電極27が配置される部分と異なる部分において、ベース層21およびソース領域22を露出させるコンタクトホール26aが形成されている。また、ゲート絶縁膜26は、ダイオード領域2において、半導体基板10の一面10aの全体を露出させるコンタクトホール26bが形成されている。ゲート絶縁膜26は、ガード領域3においては、半導体基板10の一面10aの全体を覆うように形成されている。
【0042】
半導体基板10の一面10a上には、ゲート電極27やゲート絶縁膜26等を覆うように、層間絶縁膜28が形成されている。層間絶縁膜28は、BPSG(Borophosphosilicate Glassの略)等で構成されている。
【0043】
層間絶縁膜28には、コンタクトホール26aと連通して素子領域1におけるソース領域22およびコンタクト領域23aを露出させるコンタクトホール28aが形成されている。また、層間絶縁膜28には、コンタクトホール26bと連通してダイオード領域2におけるコンタクト領域23bを露出させるコンタクトホール28bが形成されている。
【0044】
なお、層間絶縁膜28に形成されたコンタクトホール28aは、ゲート絶縁膜26に形成されたコンタクトホール26aと連通するように形成されており、当該コンタクトホール26aと共に1つのコンタクトホールとして機能する。同様に、層間絶縁膜28に形成されたコンタクトホール28bは、ゲート絶縁膜26に形成されたコンタクトホール26bと連通するように形成されており、当該コンタクトホール26bと共に1つのコンタクトホールとして機能する。このため、以下では、コンタクトホール26aおよびコンタクトホール28aを纏めてコンタクトホール29aともいい、コンタクトホール26bおよびコンタクトホール28bを纏めてコンタクトホール29bともいう。そして、コンタクトホール29aおよびコンタクトホール29bのパターンは、任意であり、例えば複数の正方形のものを配列させたパターン、長方形のライン状のものを配列させたパターン、または、ライン状のものを並べたパターン等が挙げられる。本実施形態では、素子領域1に形成されるコンタクトホール29aは、トレンチ25の長手方向に沿ったライン状とされている。また、ダイオード領域2に形成されるコンタクトホール29bは、ダイオード領域2の全体を露出させるように形成されている。
【0045】
層間絶縁膜28上には、コンタクトホール29aを通じてソース領域22およびコンタクト領域23aと電気的に接続される共に、コンタクトホール29bを通じてコンタクト領域23bと電気的に接続される上部電極30が形成されている。つまり、素子領域1におけるコンタクト領域23aと、ダイオード領域2におけるコンタクト領域23bとは、共通の上部電極30と電気的に接続されている。なお、本実施形態では、上部電極30が第1電極に相当している。また、ガード領域3では、上記のようにゲート絶縁膜26および層間絶縁膜28が配置されているため、上部電極30とは電気的に接続されておらず、絶縁されている。
【0046】
本実施形態の上部電極30は、Al(アルミニウム)を主成分とするAl-Si層等で構成され、次のようにしてソース領域22およびコンタクト領域23a、23bと接続されている。具体的には、素子領域1におけるソース領域22およびコンタクト領域23a、23bには、コンタクトホール29aから露出する部分に、Ni(ニッケル)等の金属を用いて構成された金属シリサイド層31aが形成されている。同様に、ダイオード領域2におけるコンタクト領域23bには、コンタクトホール29aから露出する部分に、Ni等の金属を用いて構成された金属シリサイド層31bが形成されている。これらの金属シリサイド層31a、31bは、ソース領域22およびコンタクト領域23a、23bと上部電極30との間の接触抵抗を低減するためのものである。
【0047】
そして、金属シリサイド層31a、31b上には、Ti(チタン)やTiN(窒化チタン)等で構成されるバリアメタル膜32が形成されている。なお、バリアメタル膜32は、コンタクトホール29a、29bの壁面や層間絶縁膜28の表面にも形成されている。このバリアメタル膜32は、上部電極30を構成するAlが半導体基板10側や層間絶縁膜28側に拡散することを抑制したり、金属シリサイド層31a、31bを構成するNiが上部電極30側に拡散することを抑制するものである。
【0048】
そして、上部電極30は、バリアメタル膜32上に配置されることにより、バリアメタル膜32および金属シリサイド層31a、31bを介してソース領域22およびコンタクト領域23a、23bと接続されている。
【0049】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続される下部電極33が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極33が第2電極に相当している。
【0050】
ここで、上記のように、素子領域1においては、ソース領域22の一部およびコンタクト領域23a、23bを露出させるコンタクトホール29aが形成されている。ダイオード領域2においては、全体を露出させるコンタクトホール29bが形成されている。このため、ダイオード領域2の単位面積当たりにおける上部電極30との接続面積は、素子領域1の単位面積当たりにおける上部電極30との接続面積より大きくなる。したがって、本実施形態のSiC半導体装置では、ダイオード領域2の方が素子領域1よりも上部電極30との接触抵抗が小さくなる。また、素子領域1においては、ドリフト層19とベース層21とを含む寄生ダイオードが構成される。したがって、
図4に示されるように、素子領域1に構成される寄生ダイオードとダイオード領域2に形成されるダイオード素子とを比較すると、順方向電流Ifが流れ始める順方向電圧Vf(以下では、単に順方向電圧Vfともいう)は、ダイオード領域2の方が素子領域1よりも小さくなる。つまり、本実施形態のSiC半導体装置では、ダイオード動作する際、ダイオード領域2の方が素子領域1に形成される寄生ダイオードよりも動作し易くなっている。
【0051】
また、本実施形態のガード領域3は、
図1に示されるように、ダイオード領域2を囲むように配置されることで素子領域1とダイオード領域2との間にも配置される。そして、ガード領域3は、素子領域1とダイオード領域2との間に配置される部分の間隔が正孔の拡散長より長くなるように幅が設定されている。言い換えると、ガード領域3は、素子領域1とダイオード領域2との間に配置される部分の長さが、素子領域1とダイオード領域2との間の配列方向に沿った長さよりも長くされている。つまり、本実施形態では、ガード領域3のうちの素子領域1とダイオード領域2との間に配置される部分のX軸方向に沿った長さは、正孔の拡散長より長くされている。
【0052】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の構成である。なお、本実施形態では、n-型、n型、n+型が第1導電型に相当しており、p型、p+型が第2導電型に相当している。
【0053】
次に、本実施形態におけるSiC半導体装置の作動および効果について説明する。
【0054】
まず、SiC半導体装置では、ゲート電極27に閾値電圧以上のゲート電圧が印加される前のオフ状態では、ベース層21に反転層が形成されない。このため、下部電極33に正の電圧、例えば1600Vが印加されたとしても、ソース領域22からベース層21内に電子が流れず、SiC半導体装置は、上部電極30と下部電極33との間に電流が流れないオフ状態となる。
【0055】
また、SiC半導体装置がオフ状態である場合には、ドレイン-ゲート間に電界がかかり、ゲート絶縁膜26の底部に電界集中が発生し得る。しかしながら、上記SiC半導体装置では、トレンチ25よりも深い位置に、第1ディープ層15およびJFET部14が備えられている。このため、第1ディープ層15およびJFET部14との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線のせり上がりが抑制され、高電界がゲート絶縁膜26に入り込み難くなる。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜26が破壊されることを抑制できる。
【0056】
さらに、本実施形態では、ガード領域3には、第1フローティング領域16および第2フローティング領域24が形成されている。このため、第1フローティング領域16および第2フローティング領域24とドリフト層19との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線が集中することを抑制できる。したがって、ガード領域3の耐圧の向上も図ることができる。
【0057】
そして、ゲート電極27に、絶縁ゲート構造における閾値電圧以上の電圧、例えば20Vが印加されると、ベース層21のうちのトレンチ25に接している表面に反転層が形成される。これにより、上部電極30と下部電極33との間に電流が流れ、SiC半導体装置がオン状態となる。なお、本実施形態では、反転層を通過した電子が電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を通過して基板11へ流れるため、電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を有するドリフト層19が構成されているといえる。
【0058】
また、このようなSiC半導体装置では、素子領域1において、ドリフト層19およびベース層21を含む寄生ダイオードが構成される。そして、上部電極30に下部電極33より高い電圧が印加される場合等、SiC半導体装置がダイオード動作する場合がある。この場合、本実施形態では、共通の半導体基板10に、寄生ダイオードよりも順方向電圧Vfが低くなるダイオード領域2を形成している。このため、本実施形態では、SiC半導体装置がダイオード動作する際には、ダイオード領域2が動作し易くなり、素子領域1の寄生ダイオードが動作し難くなる。したがって、素子領域1にSSFが構成されることを抑制できる。
【0059】
また、本実施形態では、素子領域1とダイオード領域2との間にガード領域3を配置しており、ガード領域3のうちの素子領域1とダイオード領域2との間に位置する部分は、幅が正孔の拡散長以上とされている。このため、ダイオード領域2がダイオード動作する際に注入される正孔が素子領域1に到達することを抑制できる。したがって、ダイオード領域2がダイオード動作する際の正孔によって素子領域1にSSFが構成されることも抑制できる。
【0060】
以上説明した本実施形態によれば、ダイオード領域2の順方向電圧Vfが素子領域1に構成される寄生ダイオードの順方向電圧Vfよりも低くされている。このため、SiC半導体装置がダイオード動作する際には、ダイオード領域2が動作し易くなり、素子領域1の寄生ダイオードが動作し難くなる。したがって、素子領域1にSSFが構成されることを抑制できる。
【0061】
また、本実施形態のSiC半導体装置では、ダイオード領域2を配置することで素子領域1にSSFが構成されることを抑制している。このため、素子領域1にライフタイムキラー等を形成する場合と比較して、素子領域1のオン抵抗が増加することを抑制できる。つまり、本実施形態のSiC半導体装置によれば、オン抵抗が増加することを抑制しつつ、素子領域1にSSFが発生することを抑制できる。
【0062】
(1)本実施形態では、ダイオード領域2の単位面積当たりにおける上部電極30との接続面積が、素子領域1の単位面積当たりにおける上部電極30との接続面積より大きくなるようにしている。このため、ダイオード領域2の順方向電圧Vfが素子領域1に構成される寄生ダイオードの順方向電圧Vfよりも低くなる構成を容易に実現できる。
【0063】
(2)本実施形態では、素子領域1とダイオード領域2との間にガード領域3が配置されている。そして、ガード領域3は、素子領域1とダイオード領域2との間に位置する部分の長さが正孔の拡散長以上とされている。このため、ダイオード領域2がダイオード動作する際に注入される正孔が素子領域1に到達することを抑制できる。したがって、ダイオード領域2がダイオード動作する際の正孔によって素子領域1にSSFが構成されることを抑制できる。
【0064】
(3)本実施形態では、ガード領域3には、ドリフト層19との間に空乏層を構成する第1フローティング領域16および第2フローティング領域24が形成されている。このため、ガード領域3の耐圧の向上を図ることができる。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ダイオード領域2の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0066】
本実施形態のSiC半導体装置では、
図5に示されるように、ダイオード領域2に形成されたコンタクト領域23bは、素子領域1に形成されたコンタクト領域23aよりも不純物濃度が高くされている。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、ダイオード領域2の順方向電圧Vfが素子領域1に構成される寄生ダイオードの順方向電圧Vfよりも低くされているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
(1)本実施形態では、ダイオード領域2に形成されたコンタクト領域23bは、素子領域1に形成されたコンタクト領域23aよりも不純物濃度が高くされている。このため、
図6に示されるように、ダイオード領域2の順方向電圧Vfをさらに小さくできる。
【0069】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ダイオード領域2の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0070】
本実施形態のSiC半導体装置では、
図7に示されるように、素子領域1に形成された金属シリサイド層31aとダイオード領域2に形成された金属シリサイド層31bとは、異なる金属シリサイド層とされている。具体的には、ダイオード領域2に形成された金属シリサイド層31bは、素子領域1に形成された金属シリサイド層31aよりも、上部電極30との接触抵抗が小さくなる材料で構成されている。例えば、素子領域1に形成された金属シリサイド層31aは、Niを用いて構成されたNiシリサイドとされ、ダイオード領域2に形成された金属シリサイド層31bは、Alを用いて構成されたAlシリサイドとされる。
【0071】
以上説明した本実施形態によれば、ダイオード領域2の順方向電圧Vfが素子領域1に構成される寄生ダイオードの順方向電圧Vfよりも低くされているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
(1)本実施形態では、ダイオード領域2に形成された金属シリサイド層31bは、素子領域1に形成された金属シリサイド層31aよりも、上部電極30との接触抵抗が小さくなる材料で構成されている。このため、ダイオード領域2の順方向電圧Vfをさらに小さくできる。
【0073】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ダイオード領域2を追加したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
本実施形態のSiC半導体装置では、
図8に示されるように、ダイオード領域2が2つ備えられている。そして、ガード領域3は、各ダイオード領域2を囲むようにそれぞれ備えられている。なお、各ダイオード領域2およびガード領域3は、それぞれ
図2に示す構成とされている。
【0075】
以上説明した本実施形態によれば、ダイオード領域2の順方向電圧Vfが素子領域1に構成される寄生ダイオードの順方向電圧Vfよりも低くされているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(1)本実施形態では、2つのダイオード領域2を備えている。このため、さらに素子領域1がダイオード動作することを抑制できる。なお、特に図示しないが、ダイオード領域2の数は変更可能であり、3個以上のダイオード領域2が備えられていてもよい。
【0077】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ダイオード領域2の配置場所を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0078】
本実施形態のSiC半導体装置では、
図9に示されるように、ダイオード領域2が素子領域1に対してY軸方向に沿って配置されている。そして、ガード領域3は、このダイオード領域2囲むように配置されている。
【0079】
以上説明した本実施形態によれば、ダイオード領域2の順方向電圧Vfが素子領域1に構成される寄生ダイオードの順方向電圧Vfよりも低くされているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
(1)本実施形態では、ダイオード領域2が素子領域1に対してY軸方向に沿って配置されている。ここで、本実施形態のようなSiC半導体装置である場合、ダイオード動作した際に構成されるSSFは、[1-100]方向に沿って延びやすいことが報告されている。このため、ダイオード領域2に構成され得るSSFは、X軸方向に沿って延び易くなる。したがって、ダイオード領域2に構成され得るSSFが素子領域1に到達し難くなり、素子領域1の特性が低下することをさらに抑制し易くできる。
【0081】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0082】
例えば、上記第1実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが素子領域1に形成されたSiC半導体装置を説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、例えば、スイッチング素子として、nチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが素子領域1に形成されたSiC半導体装置としてもよい。さらに、SiC半導体装置は、MOSFET以外に、スイッチング素子として、同様の構造のIGBTが素子領域1に形成されて構成されていてもよい。素子領域1にIGBTを形成する場合、上記各実施形態におけるn+型の基板11をp+型の基板11に変更する以外は、上記各実施形態で説明したMOSFETと同様である。さらに、スイッチング素子は、トレンチゲート構造ではなく、プレーナゲート構造を有する構成とされていてもよい。
【0083】
また、上記各実施形態において、SiC半導体装置は、他の素子が形成されていてもよく、例えば、電流を検出するための電流センス領域等が形成されていてもよい。
【0084】
そして、上記各実施形態において、第1ディープ層15および第2ディープ層18は備えられていなくてもよい。また、ドリフト層19は、不純物濃度が均一とされた単一の層で構成されていてもよい。
【0085】
さらに、上記第2、第3実施形態では、ダイオード領域2の順方向電圧Vfが素子領域1に構成される寄生ダイオードの順方向電圧Vfよりも低くなるのであれば、ダイオード領域2およびガード領域3における単位面積当たりの上部電極30との接続面積の関係は、適宜変更可能である。
【0086】
そして、上記各実施形態では、半導体基板10が4H-SiCで構成されている例について説明したが、半導体基板10は、6H-SiC等で構成されていてもよい。
【0087】
また、上記各実施形態において、ガード領域3には、第1フローティング領域16および第2フローティング領域24のいずれか一方のみが形成されるようにしてもよいし、第1フローティング領域16および第2フローティング領域24が形成されていなくてもよい。さらに、上記各実施形態において、ガード領域3が形成されていなくてもよい。このようなSiC半導体装置としても、ダイオード領域2の順方向電圧Vfが素子領域1に構成される寄生ダイオードの順方向電圧Vfよりも低くなるのであれば、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
そして、上記各実施形態を組み合わせたSiC半導体装置としてもよい。例えば、上記第2実施形態を上記第3~第5実施形態に組み合わせ、ダイオード領域2のコンタクト領域23bが素子領域1のコンタクト領域23aより不純物濃度が高くなるようにしてもよい。上記第3実施形態を上記第4、第5実施形態に組み合わせ、ダイオード領域2の金属シリサイド層31bが素子領域1の金属シリサイド層31aよりも上部電極30との接触抵抗が低くなるようにしてもよい。上記第4実施形態を上記第5実施形態に組み合わせ、ダイオード領域2を複数備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 素子領域
2 ダイオード領域
10 半導体基板
10a 一面
10b 他面
30 第1電極
33 第2電極