(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114266
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 63/20 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
F16H63/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016537
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 拓行
(72)【発明者】
【氏名】竹中 宏光
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA21
3J067AB21
3J067AC05
3J067BA58
3J067DB31
3J067EA62
3J067EA81
3J067FB81
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】挿入部材を変速機ケースに挿入する際に、挿入部材の姿勢が変化することを規制することができ、変速機ケースに対する挿入部材の組付け性を向上できる車両用変速機を提供すること。
【解決手段】変速機ケース2は、変速機ケース2の内部に設けられ、シフトアンドセレクト軸5に係合される係合部2Aと、係合部2Aよりも開口部2a側に位置するように変速機ケース2の内部に設けられたガイド壁2Bとを有する。カム部材11とインタロックプレート12が一体化されたシフトアンドセレクト軸5を、開口部2aを通して変速機ケース2に挿入する際に、シフトアンドセレクト軸5が係合部2Aに係合される前にインタロックプレート12がガイド壁2Bに当接することにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化することを規制する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する変速機ケースと、
前記開口部を通して前記変速機ケースに挿入される挿入部材とを有する車両用変速機であって、
前記変速機ケースは、
前記変速機ケースの内部に設けられ、前記挿入部材と係合する少なくとも1つの係合部と、
前記係合部よりも前記開口部側に位置するように前記変速機ケースの内部に設けられたガイド部とを有し、
前記開口部を通して前記挿入部材を前記変速機ケースに挿入する際に、前記挿入部材が前記係合部に係合される前に前記挿入部材が前記ガイド部に当接することにより、前記挿入部材の姿勢が変化することを規制することを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記挿入部材が正規の姿勢で前記変速機ケースに組付けられた状態において、前記挿入部材と前記ガイド部の間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項3】
前記挿入部材の挿入方向は、前記挿入部材の軸線に沿った方向であり、
前記挿入部材は、軸線周りに回転自在に支持されている挿入部品を有しており、
前記挿入部材は、前記ガイド部に当接することにより、前記挿入部品の回転方向の姿勢が変化することを規制することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項4】
前記挿入部材は、挿入方向に延びる軸部材を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用変速機。
【請求項5】
前記挿入部材は、前記挿入部材の挿入方向に沿って延びる溝部を有し、
前記ガイド部は、前記開口部を通して前記挿入部材を前記変速機ケースに挿入する際に、前記挿入部材が前記係合部に係合される前に前記溝部に入り込むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用変速機。
【請求項6】
前記挿入部材は、前記挿入部材から前記変速機ケースの壁部に向かって突出する凸部を有し、
前記ガイド部は、前記開口部を通して前記挿入部材を前記変速機ケースに挿入する際に、前記挿入部材が前記係合部に係合される前に前記凸部を両側から挟み込むことを請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用変速機。
【請求項7】
前記挿入部材は、前記挿入部材の挿入方向に沿って延びる平面を有し、
前記ガイド部は、前記挿入部材の平面と平行に延びる平面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用変速機。
【請求項8】
前記係合部は、前記変速機ケースに設けられ、前記挿入部材の端部が入り込んで第1の係合をすることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用変速機。
【請求項9】
前記挿入部材は、軸線周りに回転自在に支持されている挿入部品を有し、
前記係合部は、前記変速機ケース内に設置され、前記挿入部品が入り込んで第2の係合をすることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用変速機。
【請求項10】
前記ガイド部の下端部と前記係合部の上端部とは同じ高さ位置に位置していることを特徴とする請求項8に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
インプットシャフトやアウトプットシャフトのような挿入部材を同一線上に保持して変速機ケースに組付ける車両用変速機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この車両用変速機は、インプットシャフトに設けたベアリング孔にアウトプットシャフトの先端部を挿入して両者間にパイロットベアリングを介在させることにより、両シャフトを同一軸線上に保持しており、アウトプットシャフトの先端に設けたガイド孔に摺動ならびに回転自在に挿入されるガイドパイプがベアリング孔の中央に設けられている。
【0004】
ガイドパイプの先端は、パイロットベアリングの外端よりアウトプットシャフト側に位置しており、ガイドパイプとガイド孔で両シャフトを位置決めした後に、ベアリング孔へのアウトプットシャフトの先端の侵入を許容している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される車両用変速機にあっては、ガイドパイプとガイド孔で両シャフトを位置決めした後に、ベアリング孔へのアウトプットシャフトの先端の侵入を許容しているが、ガイドパイプをガイド孔に侵入させる前の状態においては、インプットシャフトとアウトプットシャフトとを同一軸線上に位置決めすることができない。
【0007】
このため、依然として作業者が勘を頼りにガイドパイプとアウトプットシャフトとを同一軸線上に位置決めする必要があり、インプットシャフトとアウトプットシャフトを変速機ケースに組付ける作業が面倒となる。
【0008】
また、特許文献1に記載されるガイドパイプとガイド孔は、インプットシャフトとアウトプットシャフトの回転方向に関する位置決めを行うことができないので、所望の回転方向位置に姿勢を安定させて変速機ケースに組付けることが困難である。
【0009】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、挿入部材を変速機ケースに挿入する際に、挿入部材の姿勢が変化することを規制することができ、変速機ケースに対する挿入部材の組付け性を向上できる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、開口部を有する変速機ケースと、前記開口部を通して前記変速機ケースに挿入される挿入部材とを有する車両用変速機であって、前記変速機ケースは、前記変速機ケースの内部に設けられ、前記挿入部材と係合する少なくとも1つの係合部と、前記係合部よりも前記開口部側に位置するように前記変速機ケースの内部に設けられたガイド部とを有し、前記開口部を通して前記挿入部材を前記変速機ケースに挿入する際に、前記挿入部材が係合部と係合される前に前記挿入部材が前記ガイド部に当接することにより、前記挿入部材の姿勢が変化することを規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように上記の本発明によれば、挿入部材を変速機ケースに挿入する際に、挿入部材の姿勢が変化することを規制することができ、変速機ケースに対する挿入部材の組付け性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係る車両用変速機をシフトアンドセレクト軸の軸線に沿って切断した縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係る車両用変速機を示す図であり、インタロックプレートとの関係を示す開口部周辺の変速機ケースの平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施例に係る車両用変速機を示す図であり、開口部を通してシフトアンドセレクト軸を変速機ケースに挿入する組付け途中の状態を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施例に係る車両用変速機を示す図であり、インタロックプレートとの関係を示す開口部周辺の変速機ケースの平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施例に係る車両用変速機を示す図であり、インタロックプレートとの関係を示す開口部周辺の変速機ケースの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、開口部を有する変速機ケースと、開口部を通して変速機ケースに挿入される挿入部材とを有する車両用変速機であって、変速機ケースは、変速機ケースの内部に設けられ、挿入部材と係合する少なくとも1つの係合部と、係合部よりも開口部側に位置するように変速機ケースの内部に設けられたガイド部とを有し、開口部を通して挿入部材を変速機ケースに挿入する際に、挿入部材が係合部に係合される前に挿入部材がガイド部に当接することにより、挿入部材の姿勢が変化することを規制する。
【0014】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、挿入部材を変速機ケースに挿入する際に、挿入部材の姿勢が変化することを規制することができ、変速機ケースに対する挿入部材の組付け性を向上できる。
【実施例0015】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
(第1の実施例)
図1から
図4は、本発明の第1の実施例に係る車両用変速機を示す図である。
【0016】
図1から
図4において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0017】
まず、構成を説明する。
車両に搭載される変速機1は、例えば、AMT(Automated Manual Transmission)から構成されており、車両の走行状態に応じて図示しない内燃機関の回転速度および回転トルクを変換し、図示しない駆動輪に伝達する。
【0018】
変速機1は、変速機ケース2を備えており、変速機ケース2の上部には開口部2aが形成されている。変速機ケース2にはシフト装置3や図示しない変速歯車機構等の変速機1を構成する部品が設けられている。
【0019】
シフト装置3は、シフトケース4を備えており、シフトケース4は、円筒状の収容部4Aと、変速機ケース2の上部に図示しないボルトによって固定される固定部4Bとを有する。
【0020】
シフトケース4は、変速機ケース2の開口部2aを閉塞しており、固定部4Bはボルトによって開口部2aの周縁に固定されている。
【0021】
シフトケース4は、図示しないシール部材を介して変速機ケース2に取付けられており、シール部材によって変速機ケース2の開口部2aが密閉されている。これにより、開口部2aを通して変速機ケース2の内部への異物の侵入が防止されるとともに、変速機ケース2の内部に貯留される潤滑油が外部に漏出することが防止される。
【0022】
変速機ケース2の内部にはシフトアンドセレクト軸5が収容されている。シフトアンドセレクト軸5は、その上部がシフトケース4に支持されている。シフトアンドセレクト軸5は、変速機ケース2の開口部2aより挿入されて変速機ケース2の内部に配置されて取り付けられる挿入部材を構成する挿入部品である。
【0023】
シフトアンドセレクト軸5は、セレクト操作に応じてシフトケース4に対して軸線Oの方向に移動し、かつ、シフト操作に応じてシフトケース4に対して軸線O周りに回転する。なお、挿入部材は、シフトアンドセレクト軸5とシフトアンドセレクト軸5に取付けられる部品の集合体であって、変速機ケース2の内部へ開口部2aから挿入される部分のことである。また、挿入部品は、挿入部材を構成する部品のことである。
【0024】
シフトアンドセレクト軸5の軸線をOで示す。なお、シフトアンドセレクト軸5の軸線Oの方向をシフトアンドセレクト軸5の軸線方向ともいう。
【0025】
図1において、シフトアンドセレクト軸5の軸線方向への移動をセレクト方向S1で示し、シフトアンドセレクト軸5の軸線O周りの回転をシフト方向S2で示す。
【0026】
シフトアンドセレクト軸5の上端側は、シフトケース4の収容部4Aに支持されており、シフトアンドセレクト軸5は、収容部4Aに対して軸線方向に移動自在、かつ、回転自在に支持されている。
【0027】
変速機ケース2の開口部2aの下方にはシフトアンドセレクト軸5の下端部5aが挿入される孔で構成される係合部2Aが設けられており、シフトアンドセレクト軸5は、係合部2Aにて軸線方向に移動自在、かつ、回転自在に支持されている。以後、シフトアンドセレクト軸5の下端部5aと係合部2Aとの係合箇所を「第1の係合部」と呼ぶ場合がある。
【0028】
また、シフトアンドセレクト軸5の下端部5aが係合部2Aに係合されることを第1の係合という。また、シフトアンドセレクト軸5の下端部5aは、挿入部材の端部を構成する。
【0029】
すなわち、シフトアンドセレクト軸5は、その下端部5aがシフトケース4と変速機ケース2に軸線方向に移動自在、かつ、軸線O周りに回転自在に第1の係合部にて支持されている。
【0030】
シフトケース4には図示しないセレクトアクチュエータとシフトアクチュエータが設けられており、セレクトアクチュエータとシフトアクチュエータは、シフトアンドセレクト軸5をセレクト方向S1あるいはシフト方向S2に操作する。
【0031】
シフトアンドセレクト軸5にはカム部材11が固定されており、カム部材11は、シフトアンドセレクト軸5と一体で移動する。
【0032】
カム部材11は、カム面11Aと、カム面11Aと反対側の面からシフトアンドセレクト軸5の軸線方向と直交する方向に突出するフィンガー部11Bと、カム面11Aと直交する面に形成された図示しないガイド溝とを有する。
【0033】
変速機1には、1速/2速段用のシフトヨーク21A、3速/4速段用のシフトヨーク21B、5速/6速段用のシフトヨーク21Cおよび後進用のシフトヨーク21Dが重なるように配置されている。
【0034】
フィンガー部11Bは、1速/2速段用のシフトヨーク21A、3速/4速段用のシフトヨーク21B、5速/6速段用のシフトヨーク21Cおよび後進用のシフトヨーク21Dのいずれか1つに嵌合して、シフトアンドセレクト軸5の軸線Oを中心に揺動することによって、シフトヨーク21A、21B、21C、21Dのいずれか1つをフィンガー部11Bの揺動にて移動させる。
【0035】
シフトヨーク21A、21B、21C、21Dは、上面視でコの字状の形成されており、それぞれフィンガー部11Bを左右方向に挟み込むようにしてフィンガー部11Bに嵌合される。
【0036】
つまり、シフトヨーク21A、21B、21C、21Dは、上面視で左右方向の中央部が切欠かれて切欠き溝21a、21b、21c、21dが形成されている。これによってシフトアンドセレクト軸5側に向って開口するコの字状に形成されており、この切欠き溝21a、21b、21c、21dにフィンガー部11Bが入り込むことでフィンガー部11Bとシフトヨーク21A、21B、21C、21Dは嵌合している。本実施例の変速機1は、前進6速段の変速機である。なお、変速段は6速段に限定されるものではない。
【0037】
シフトアンドセレクト軸5の下部には、カム部材11を取り囲むようにインタロックプレート12が取付けられている。インタロックプレート12にはシフトアンドセレクト軸5が貫通配置されており、その内部に配置されたカム部材11によってシフトアンドセレクト軸5の軸方向に移動できないことから、インタロックプレート12は、シフトアンドセレクト軸5と一体で軸線方向に移動し、かつ、シフトアンドセレクト軸5と相対回転する。
【0038】
インタロックプレート12は、変速機ケース2の内部でその軸線Oを鉛直に配置されているシフトアンドセレクト軸5が垂直に貫通する上壁12Aと下壁12Bが水平方向に延びており、インタロックプレート12の水平方向の幅は、シフトアンドセレクト軸5の直径よりも長く形成されている。
【0039】
図1と
図2に示すように、インタロックプレート12は、上壁12Aと、下壁12Bと、上壁12Aの左側の前端部と下壁12Bの左側の前端部とを連絡し、上下方向に延びる左前壁12C(
図3参照)と、上壁12Aの右側の前端部と下壁12Bの右側の前端部とを連絡し、上下方向に延びる右前壁12Dと、上壁12Aの後端部から下方に屈曲してフィンガー部11Bに向って延びる上後壁12Eと、下壁12Bの後端部から上方に屈曲してフィンガー部11Bに向って延びる下後壁12Fとを有する。
【0040】
そして、対向するように配置された上後壁12Eの下端と下後壁12Fの上端との間のスリット12dにフィンガー部11Bが配置されている。さらに、シフトアンドセレクト軸5が組付けられた状態では、上後壁12E、下後壁12Fおよびフィンガー部11Bは、シフトヨーク21A、21B、21C、21Dの切欠き溝21a、21b、21c、21d(
図1参照)に配置されている。
【0041】
つまり、インタロックプレート12の上後壁12E、下後壁12Fは、シフトヨーク21A、21B、21C、21Dの切欠き溝21a、21b、21c、21dに係合している。以後、インタロックプレート12の下後壁12Fとシフトヨークの切欠き溝21dとが係合する係合箇所を「第2の係合部」と呼ぶ場合がある。
【0042】
つまり、インタロックプレート12の下後壁12Fはシフトヨークの切欠き溝に対して最初に係合する部分であり、シフトヨークの切欠き溝21dは最も開口部2a側に位置してインタロックプレート12に対して最初に係合する部分であり、インタロックプレート12とシフトヨーク21A、21B、21C、21Dが最初に係合する係合箇所を「第2の係合部」とする。
【0043】
また、インタロックプレート12とシフトヨーク21A、21B、21C、21Dが係合することを第2の係合という。
【0044】
図2に示すように、左前壁12Cと右前壁12Dは、左右方向に離れており、左右方向に並んで配置されている。詳細には、左前壁12Cと右前壁12Dは、シフトアンドセレクト軸5に対して右側と左側に分かれて配置されており、シフトアンドセレクト軸5に対して左右方向にほぼ同じ距離に配置されている。
【0045】
また、シフトアンドセレクト軸5が変速機ケース2に組付けられた状態では、左前壁12Cと右前壁12Dの間に後述するディテント部材13が挿入配置されて、このディテント部材13が左前壁12Cあるいは右前壁12Dと当接することでインタロックプレート12の回転方向の位置が規制される。
【0046】
図1に示すように、上壁12Aと下壁12Bには貫通穴12a、12bが形成されており、貫通穴12a、12bにはシフトアンドセレクト軸5が挿通されている。
【0047】
インタロックプレート12の上後壁12Eと下後壁12Fの間には横方向に延びるスリット12d(
図4参照)が形成されている。フィンガー部11Bの先端部は、スリット12dを通してインタロックプレート12の外方に突出しており、フィンガー部11Bは、シフトヨーク21A、21B、21C、21Dのいずれか1つに嵌合する。
【0048】
フィンガー部11Bがシフトヨーク21A、21B、21C、21Dのいずれか1つに嵌合すると、シフトヨーク21A、21B、21C、21Dのうちの残りの3つは、インタロックプレート12の上後壁12Eと下後壁12Fに係合して、フィンガー部11Bに嵌合しない。
【0049】
すなわち、シフトヨーク21A、21B、21C、21Dのうち、フィンガー部11Bと嵌合しない3つのシフトヨークは、スリット12dに対してシフトアンドセレクト軸5の軸線方向にずれた位置であり、ディテント部材13によって回転方向の位置が規制されているインタロックプレート12の上後壁12Eあるいは下後壁12Fに係合してニュートラル位置を維持する。これによって変速機内部で2つの変速段が同時に達成されてしまうことを防止することができる。
【0050】
シフト装置3は、シフトアンドセレクト軸5がセレクト方向S1に移動すると、フィンガー部11Bに嵌合される1つのシフトヨークを選択する。
【0051】
その後、シフトアンドセレクト軸5がシフト方向S2に回転すると、カム部材11のフィンガー部11Bに嵌合した1つのシフトヨークに連結される図示しないシフトフォークが図示しない同期装置を操作し、任意の変速段を構成するギヤ対を動力伝達可能に連結し、シフトレンジの切換え、すなわち、変速が行われる。
【0052】
図1において、シフトヨーク21Aは、1速/2速段用のシフト軸22Aに連結されており、1速/2速段用のシフト軸22Aには1速/2速段用のシフトフォークが連結されている。
【0053】
シフトヨーク21Bは、3速/4速段用のシフト軸22Bに連結されており、3速/4速段用のシフト軸22Bには3速/4速段用のシフトフォークが連結されている。
【0054】
シフトヨーク21Cは、5速/6速段用のシフト軸22Cに連結されており、5速/6速段用のシフト軸22Cには5速/6速段用のシフトフォークが連結されている。
【0055】
シフトヨーク21Dは、後進用のシフト軸22Dに連結されており、後進用のシフト軸22Dには後進用のシフトフォークが連結されている。
【0056】
カム部材11の上下面は、インタロックプレート12の上壁12Aと下壁12Bに接触しており、インタロックプレート12はシフトアンドセレクト軸5の軸線方向に相対移動しない。
【0057】
カム部材11の外周面に形成された図示しないガイド溝は、変速用のシフトパターンと同様の配列となる複数のシフトゲートパターンから構成されており、ガイド溝には図示しないガイドピンが挿入されている。
【0058】
シフトアンドセレクト軸5がセレクト方向S1に移動するとともに、シフト方向S2に回転するのに伴ってガイド溝が移動する。このとき、ガイド溝にはガイドピンが挿入されているのでガイド溝(カム部材11)がガイドピンに規制されながら移動し、シフト終了後(変速終了後)にガイドピンがガイド溝の壁面に当接する。
【0059】
これにより、シフトアンドセレクト軸5のセレクト方向S1およびシフト方向S2への移動量が規制されて、シフトアンドセレクト軸5がセレクト方向S1およびシフト方向S2にがたつくことや、不要に移動することが防止される。
【0060】
カム部材11のカム面11Aと対向する変速機ケース2の前壁2Wにはガイド壁2Bが形成されており、ガイド壁2Bにはボス部2Cが設けられている。本実施例のシフトアンドセレクト軸5は軸部材を構成し、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12は挿入部材を構成し、インタロックプレート12は挿入部材であり挿入部品を構成する。
【0061】
また、変速機ケース2の前壁2Wは、壁部を構成する。つまり、挿入部材は、シフトアンドセレクト軸5とシフトアンドセレクト軸5に取付けられる挿入部品の集合体であって、開口部2aから挿入されて変速機ケース2の内部に配置される部分のことである。
【0062】
ボス部2Cにはディテント部材13が取付けられている。ディテント部材13は、ボス部2Cに取付けられた筒状体13Aと、筒状体13Aに収容された可動体13Bと、筒状体13Aに収容され、可動体13Bをカム面11Aに押圧する図示しないコイルスプリングとを有する。
【0063】
ディテント部材13の筒状体13Aの先端部は、左前壁12Cと右前壁12Dに挟まれるように配置されて左前壁12Cと右前壁12Dの間のスリットに嵌合している。
【0064】
可動体13Bは、左前壁12Cと右前壁12Dよりも後方に位置しており、カム面11Aに接触している。
【0065】
ディテント部材13は、カム部材11がセレクト方向S1およびシフト方向S2に移動するときに、コイルスプリングによって可動体13Bをカム面11Aに押し付ける押し付け力を発生させることにより、シフトアンドセレクト軸5がセレクト方向S1およびシフト方向S2に移動するときの操作力を付与する。
【0066】
シフトアンドセレクト軸5が上下方向に移動するときに、インタロックプレート12は、左前壁12Cと右前壁12Dとが筒状体13Aに規制されて上下方向に移動する。これにより、インタロックプレート12が筒状体13Aによって回転方向に位置決めされ、インタロックプレート12が回転することが規制されている。
【0067】
ガイド壁2Bは、係合部2Aよりも上方に位置し、かつ、開口部2aよりも下方に位置している。すなわち、ガイド壁2Bは、上下方向で開口部2aと係合部2Aとの間に位置している。
【0068】
ガイド壁2Bは、シフトアンドセレクト軸5の軸線Oに沿って延びる平面から構成されており、ガイド壁2Bの下端部2bは、横壁2Dを介して係合部2Aの上端部2cに連絡されている。本実施例のガイド壁2Bは、ガイド部を構成し、ガイド壁2Bの下端部2bは、ガイド部の下端部を構成する。
【0069】
すなわち、ガイド壁2Bの下端部2bと係合部2Aの上端部2cとは同じ高さ位置に位置している。
【0070】
ガイド壁2Bに対向するインタロックプレート12の左前壁12Cと右前壁12Dは、シフトアンドセレクト軸5の軸線Oと平行な平面に形成されている。すなわち、インタロックプレート12の左前壁12Cと右前壁12Dは、シフトアンドセレクト軸5の挿入方向と平行な平面に形成されている。
【0071】
シフトアンドセレクト軸5が係合部2Aに係合された状態において、シフトアンドセレクト軸5のインタロックプレート12の左前壁12Cおよび右前壁12Dとガイド壁2Bとの間には隙間sが形成されている。つまり、シフトアンドセレクト軸5が変速機ケース2に取付けられた状態では、挿入部材はガイド部に当接せず、挿入部材を構成する挿入部品であるインタロックプレート12はガイド壁2Bと離れている。
【0072】
ガイド壁2Bとインタロックプレート12の左前壁12Cおよび右前壁12Dとは、略平行な面に形成されており、隙間s(水平方向の距離)は、ディテント部材13よりも上方の隙間sに対してディテント部材13よりも下方の隙間sが小さい。
【0073】
すなわち、ディテント部材13よりも上方のガイド壁2Bは、ディテント部材13よりも下方のガイド壁2Bよりもシフトアンドセレクト軸5から僅かに前方に離れている。
【0074】
変速機1において、開口部2aを通してシフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12を変速機ケース2に上下方向に沿って挿入する際に、ガイド壁2Bは、インタロックプレート12がシフトヨーク21A、21B、21C、21Dに達する前(第2の係合部が係合して第2の係合が行われる前)にインタロックプレート12に当接することにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化することを規制する。
【0075】
また、ガイド壁2Bは、シフトアンドセレクト軸5が係合部2Aに係合される前(第1の係合部が係合して第1の係合が行われる前)にインタロックプレート12に当接することにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化することを規制する。
【0076】
そして、円滑にインタロックプレート12がシフトヨーク21A、21B、21C、21Dの切欠き溝21a、21b、21c、21d(「第2の係合部」)に挿入され、シフトアンドセレクト軸5が係合部2A(「第1の係合部」)に挿入される。
【0077】
シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢とは、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の向き(傾き)や回転方向の位置である。
【0078】
また、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化することを規制するとは、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の向きや回転方向の位置が正規の位置からずれることを規制することである。
【0079】
さらには、規制するとは、正規の位置からずれてしまったシフトアンドセレクト軸5あるいはインタロックプレート12を、組立作業者がガイド壁2Bを使って正規の位置に修整できることをも意味する。
【0080】
シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の向きや回転方向の位置が正規の位置に位置していれば、シフトアンドセレクト軸5の組付け時に干渉することなくインタロックプレート12の上後壁12Eと下後壁12Fが「第2の係合部」にてシフトヨーク21A、21B、21C、21Dと正常に嵌合し、正常に組付けを行うことができる。
【0081】
しかし、シフトアンドセレクト軸5が正規の姿勢とならずに正規な姿勢からインタロックプレート12が傾いたり、あるいは正規な姿勢から回転した状態でシフトアンドセレクト軸5を変速機ケース2に組付けようとすると、インタロックプレート12の下後壁12Fがシフトヨーク21A、21B、21C、21Dと干渉して切欠き溝21a、21b、21c、21dに入り込めずに「第2の係合部」が正常に係合しないおそれがあり、正常な組付けを行うことが困難となる。
【0082】
また、正規な姿勢でない状態では、シフトアンドセレクト軸5の下端部5aが係合部2Aに入り込めずに「第1の係合部」が正常に係合しないおそれがあり、正常な組付けを行うことが困難となる。
【0083】
次に、作用を説明する。
図4ではシフトケース4を省略しているが、変速機1の製造工程において、一体化されているシフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12を、開口部2aを通して変速機ケース2に挿入する。このとき、シフトアンドセレクト軸5とシフトケース4が一体化されている
【0084】
シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12を、開口部2aを通して変速機ケース2に挿入して変速機ケース2に組付ける作業において、シフトアンドセレクト軸5が傾くことやインタロックプレート12が回転することにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化すると(正規の姿勢からずれると)、インタロックプレート12の上後壁12Eと下後壁12Fとがシフトヨーク21A、21B、21C、21Dの切欠き溝21a、21b、21c、21dに入り込まない。また、正規な姿勢でない状態では、シフトアンドセレクト軸5の下端部5aが係合部2Aに入り込めない。
【0085】
変速機ケース2に組付け前の状態において、インタロックプレート12はシフトアンドセレクト軸5に回転自在に組付けられているので、シフトアンドセレクト軸5の組付け時にインタロックプレート12がシフトアンドセレクト軸5に対して回転する可能性がある。
【0086】
インタロックプレート12がシフトアンドセレクト軸5に対して回転すると、インタロックプレート12の上後壁12Eおよび下後壁12Fと切欠き溝21a、21b、21c、21dとが回転方向に位置ずれし、インタロックプレート12の下後壁12Fがシフトヨーク21A、21B、21C、21Dと干渉して切欠き溝21a、21b、21c、21dに入り込まない。具体的には、インタロックプレート12の下端となる下後壁12Fと最も開口部2a側となるシフトヨーク21Dとの干渉が起こる。
【0087】
このため、インタロックプレート12がシフトアンドセレクト軸5に対して回転してしまった場合、作業者は、シフトアンドセレクト軸5を変速機ケース2より取り外してインタロックプレート12の姿勢を直して再度挿入を試みることになり、シフトアンドセレクト軸5の組付け作業を何回も繰り返す必要があり、シフトアンドセレクト軸5の組付けに多くの時間と労力を要し、シフトアンドセレクト軸5の組付け作業の作業性が悪化する。
【0088】
本実施例の変速機1によれば、変速機ケース2は、変速機ケース2の内部に設けられ、挿入部材と係合する第2の係合部(インタロックプレート12とシフトヨーク21A、21B、21C、21Dの係合箇所)あるいは、挿入部材と係合する第1の係合部(シフトアンドセレクト軸5の下端部5aと係合部2Aの係合箇所)と、これら第1の係合部と第2の係合部よりも開口部2a側に位置するように変速機ケース2の内部に設けられたガイド壁2Bとを有する。
【0089】
そして、このガイド壁2Bは、シフトヨーク21A、21B、21C、21Dの切欠き溝21a、21b、21c、21dと係合する前のインタロックプレート12と当接可能に配置されている。また、このガイド壁2Bは、シフトアンドセレクト軸5の下端部5aと係合部2Aが係合する前にインタロックプレート12と当接可能に変速機ケース2の内面に形成されている。
【0090】
そして、本実施例の変速機1は、インタロックプレート12が組み込まれたシフトアンドセレクト軸5を、開口部2aを通して変速機ケース2に挿入する際に、シフトアンドセレクト軸5が第1の係合部や第2の係合部に係合されて第1の係合と第2の係合が行われる前に、インタロックプレート12がガイド壁2Bに当接することにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化することを規制する。
【0091】
すなわち、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12を、開口部2aを通して変速機ケース2に挿入する際に、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化しようとすると、インタロックプレート12がガイド壁2Bに当接する。
【0092】
これにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化することを規制でき、インタロックプレート12の下後壁12Fをシフトヨーク21A、21B、21C、21Dの切欠き溝21a、21b、21c、21dに案内できるとともに、シフトアンドセレクト軸5の下端部5Aを正規の姿勢で係合部2Aに案内できる。
【0093】
つまり、作業者は、インタロックプレート12をガイド壁2Bに当接させることにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢と位置を安定させることができ、さらには、作業者は、インタロックプレート12をガイド壁2Bに当接させることにより、インタロックプレート12の姿勢(回転方向の向き)を修正することができ、組立作業性を大幅に改善することができる。
【0094】
図2は、インタロックプレート12の上後壁12Eがシフトヨーク21Dの切欠き溝21dに正常に入り込んだ状態を示しており、この状態では、インタロックプレート12の上後壁12Eと下後壁12Fにシフトヨーク21A、21B、21C、21Dの切欠き溝21a、21b、21c、21dが確実に係合している。
【0095】
組立作業において、この係合部はシフトケース4にて上方が覆われて隠されてしまうため、作業者は確認することが困難である。しかし、作業者の手前側に配置されるガイド壁2Bとインタロックプレート12の左前壁12Cと右前壁12Dは、比較的容易に作業者は確認することができ、シフトアンドセレクト軸5およびインタロックプレート12の位置を調整することができる。
【0096】
つまり、本実施例の変速機1によれば、シフトアンドセレクト軸5の下端部5aは、変速機ケース2に設けられ、シフトアンドセレクト軸5の下端部5aが入り込んで第1の係合をする。
【0097】
さらに、本実施例の変速機1によれば、インタロックプレート12は、変速機ケース2内に設置され、インタロックプレート12が入り込んで第2の係合をする。
【0098】
このように本実施例の変速機1は、変速機ケース2に設けられたガイド壁2Bを利用して、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の向きや回転方向の姿勢が変化することを規制でき、変速機ケース2に対するシフトアンドセレクト軸5の組付け性を向上できる。
【0099】
この結果、変速時にフィンガー部11Bを所望するシフトヨーク21A、21B、21C、21Dと正常に嵌合させ、変速機1の信頼性を向上できる。
【0100】
なお、係合部2Aにシフトアンドセレクト軸5が取付けられた状態でボス部2Cにディテント部材13が取付けられて、インタロックプレート12はガイド壁2Bに当接することのない正規の取付姿勢となる。
【0101】
また、ガイド壁2Bの上端は、インタロックプレート12の上下方向の寸法よりも開口部2aに接近して形成されているので、開口部2aを通してシフトアンドセレクト軸5を変速機ケース2に挿入する途中において、作業者は、上方から目視確認ができる位置でインタロックプレート12とガイド壁2Bとの当接状態を確認することができる。
【0102】
また、インタロックプレート12の向きや回転方向の姿勢に不具合を発見した場合、作業者は、インタロックプレート12をガイド壁2Bに当接させることで向きを容易に修正することができるので、変速機ケース2に対するシフトアンドセレクト軸5の組付け性をより効果的に向上できる。
【0103】
また、本実施例の変速機1によれば、ディテント部材13よりも上方のガイド壁2Bは、ディテント部材13よりも下方のガイド壁2Bよりもシフトアンドセレクト軸5から僅かに前方に離れている。
【0104】
これにより、シフトアンドセレクト軸5が係合部2Aに向かって移動するにつれて、インタロックプレート12をガイド壁2Bに沿って係合部2A側に移動させることができ、シフトアンドセレクト軸5の軸線Oを係合部2Aの中心軸側に容易に一致させることができる。このため、シフトアンドセレクト軸5を係合部2Aに円滑に挿入できる。
【0105】
また、本実施例の変速機1によればシフトアンドセレクト軸5の挿入方向は、シフトアンドセレクト軸5の軸線Oに沿った方向である。つまり、鉛直方向であり、作業者に判り易い方向であり、作業性を向上させることができる。
【0106】
係合部2Aは、シフトアンドセレクト軸5と係合されたときにシフトアンドセレクト軸5を軸線O周りに回転自在に支持しており、ガイド壁2Bは、インタロックプレート12に当接することにより、インタロックプレート12の回転位置が変化することを規制する。
【0107】
このように、シフトアンドセレクト軸5が係合部2Aに回転自在に支持される場合であっても、変速機ケース2に設けられたガイド壁2Bを利用して、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の回転方向の姿勢が変化することを規制でき、変速機ケース2に対するシフトアンドセレクト軸5の組付け性を向上できる。
【0108】
また、本実施例の変速機1によれば、シフトアンドセレクト軸5が挿入方向に延びる軸部材から構成されているので、シフトアンドセレクト軸5を開口部2aから変速機ケース2に挿入して係合部2Aに係合されるまでの間に、シフトアンドセレクト軸5を長い距離にわたって上下方向に移動させる必要がある。
【0109】
本実施例の変速機1は、インタロックプレート12が組み込まれたシフトアンドセレクト軸5を、開口部2aを通して変速機ケース2に挿入する際に、シフトアンドセレクト軸5が係合部2Aに係合される前にインタロックプレート12がガイド壁2Bに当接することにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化することを規制する。
【0110】
これにより、長尺なシフトアンドセレクト軸5に取付けられたインタロックプレート12の姿勢が変化することを確実に規制できる。
【0111】
また、本実施例の変速機1によれば、ガイド壁2Bの下端部2bと係合部2Aの上端部2cは、同じ高さ位置に位置しているので、開口部2aを通して変速機ケース2にシフトアンドセレクト軸5を挿入する際に、インタロックプレート12をガイド壁2Bに沿って係合部2Aの近くまで案内できる。
【0112】
このため、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢が変化することをより効果的に規制できる。
【0113】
また、本実施例の変速機1によれば、インタロックプレート12の左前壁12Cと右前壁12Dは、シフトアンドセレクト軸5の挿入方向に沿って延びる平面を有し、ガイド壁2Bは、左前壁12Cと右前壁12Dと平行に延びる平面に形成されている。
【0114】
これにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12を、開口部2aを通して変速機ケース2に挿入する際に、インタロックプレート12の左前壁12Cと右前壁12Dとガイド壁2Bとを面接触させることにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の姿勢をより効果的に規制できる。
【0115】
この結果、変速機ケース2に対するシフトアンドセレクト軸5の組付け性をより効果的に向上できる。
【0116】
(第2の実施例)
図5は、本発明の第2の実施例に係る車両用変速機を示す図であり、第1の実施例と同一の構成には同一の番号を付して説明を省略する。
【0117】
図5に示すように、ガイド壁2Bには突出部2dが形成されている。突出部2dは、ガイド壁2Bからインタロックプレート12に向かって突出しており、シフトアンドセレクト軸5の軸線Oに沿って上下方向に延びている。
【0118】
突出部2dは、左前壁12Cと右前壁12Dの間に入り込んでおり、インタロックプレート12は、突出部2dに沿って移動可能である。
【0119】
すなわち、インタロックプレート12には左前壁12Cと右前壁12Dによって溝部12cが形成されており、溝部12cは、シフトアンドセレクト軸5の挿入方向に沿って延びている。本実施例の突出部2dは、ガイド部を構成する。
【0120】
本実施例の変速機1によれば、インタロックプレート12は、シフトアンドセレクト軸5の挿入方向に沿って延びる溝部12cを有し、開口部2aを通してシフトアンドセレクト軸5を変速機ケース2に挿入する際に、シフトアンドセレクト軸5が係合部2Aに係合される前に突出部2dが溝部12cに入り込む。
【0121】
つまり、シフトアンドセレクト軸5が第1の係合部や第2の係合部に係合されて第1の係合と第2の係合が行われる前に、突出部2dがインタロックプレート12の溝部12cに入り込むことにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の位置や姿勢が変化することを規制する。
【0122】
これにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の向きや回転方向の姿勢が変化することを規制でき、変速機ケース2に対するシフトアンドセレクト軸5の組付け性を向上できる。
【0123】
また、突出部2dが溝部12cに入り込んだ状態でシフトアンドセレクト軸5を係合部2Aに案内できるので、変速機ケース2に対するシフトアンドセレクト軸5の組付け性をより効果的に向上できる。
【0124】
(第3の実施例)
図6は、本発明の第3の実施例に係る車両用変速機を示す図であり、第1の実施例と同一の構成には同一の番号を付して説明を省略する。
【0125】
インタロックプレート12と対向する変速機ケース2の前壁2Wには溝部2Eが形成されており、溝部2Eは、上下方向において開口部2aと係合部2Aの間でシフトアンドセレクト軸5の軸線Oに沿って上下方向に延びている。本実施例の溝部2Eは、ガイド部を構成する。
【0126】
左前壁12Cと右前壁12Dは、溝部2Eに挿入されており、溝部2Eは、開口部2aを通してシフトアンドセレクト軸5を変速機ケース2に挿入する際に、シフトアンドセレクト軸5が係合部2Aに係合される前に左前壁12Cと右前壁12Dを左右両側から挟み込む。
【0127】
本実施例の左前壁12Cと右前壁12Dは、インタロックプレート12から変速機ケースの前壁2Wに向かって突出する凸部を構成している。
【0128】
本実施例の変速機1によれば、シフトアンドセレクト軸5は、シフトアンドセレクト軸5から変速機ケース2の前壁2Wに向かって突出する左前壁12Cと右前壁12Dを有し、溝部2Eは、開口部2aを通してシフトアンドセレクト軸5を変速機ケース2に挿入する際に、シフトアンドセレクト軸5が係合部2Aに係合される前に左前壁12Cと右前壁12Dを左右両側から挟み込む。
【0129】
つまり、シフトアンドセレクト軸5が第1の係合部や第2の係合部に係合されて第1の係合と第2の係合が行われる前に、溝部2Eがインタロックプレート12の左前壁12Cと右前壁12Dを挟み込むことにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の位置や姿勢が変化することを規制する。
【0130】
これにより、シフトアンドセレクト軸5とインタロックプレート12の向きや回転方向の姿勢が変化することを規制でき、変速機ケース2に対するシフトアンドセレクト軸5の組付け性を向上できる。
【0131】
また、左前壁12Cと右前壁12Dが溝部2Eに入り込んだ状態でシフトアンドセレクト軸5を係合部2Aに案内できるので、変速機ケース2に対するシフトアンドセレクト軸5の組付け性をより効果的に向上できる。
【0132】
本実施例の変速機1はAMTから構成されているが、変速機1をMT(Manual Transmission)から構成してもよい。
【0133】
また、挿入部品として、ガイド部と当接するとともに第2の係合をするインタロックプレートを例示しているが、これに限定されず、複数の部品にて構成してもよい。つまり、ガイド部との当接と第2の係合を1つの挿入部品にて達成してもよく、ガイド部と当接する挿入部品と第2の係合を達成する別の挿入部品にて構成してもよい。
【0134】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1...変速機(車両用変速機)、2...変速機ケース、2A...係合部(係合部)、2a...開口部、2B...ガイド壁(ガイド部)、2b...下端部(ガイド部の下端部)、2c...上端部(係合部の上端部)、2d...突出部(ガイド部)、2E...溝部(ガイド部)、2W...前壁(壁部)、5...シフトアンドセレクト軸(挿入部材、軸部材)、5a...下端部(挿入部材の下端部)、12...インタロックプレート(挿入部品)、12C...左前壁(凸部)、12D...右前壁(凸部)、21d...シフトヨークの切欠き溝(係合部)s...隙間