(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114270
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】除湿・脱臭装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20230809BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B01D53/26 210
A61L9/014
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016546
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小金井 隆志
【テーマコード(参考)】
4C180
4D052
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA16
4C180CC04
4C180CC15
4C180EA14X
4C180EA25X
4C180EA30X
4C180EA34X
4C180EC01
4D052AA08
4D052CA03
4D052CA06
4D052CA09
4D052FA01
4D052GA04
4D052GB13
4D052HA09
4D052HA11
4D052HA12
4D052HA13
(57)【要約】
【課題】脱臭性能を十分に発揮できる除湿・脱臭装置を提供する。
【解決手段】本発明の除湿・脱臭装置10は、水蒸気を吸収して潮解することにより水溶液となる粒子状の除湿剤41と微粉末状の吸着剤43を混合した薬剤40と、水蒸気の通過が可能な透湿部Xを有して重力方向に延設された後壁部22を有し、前壁部21、後壁部22、及び底壁部23によって封止された内部空間R内に薬剤40を収容した容器本体20と、を有する。透湿部Xを含む後壁部22の内部空間R側の内面28には、静電気が帯電し、この静電気により微粉末状の吸着剤43が付着する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を吸収して潮解することにより水溶液となる粒子状の除湿剤と微粉末状の吸着剤を混合した薬剤と、
前記水蒸気の通過が可能な透湿部を有して重力方向に延設された縦壁部を有し、前記縦壁部を含む壁部によって封止された内部空間内に前記薬剤を収容した容器本体と、を有し、
前記縦壁部の前記内部空間側の内面に帯電した静電気により前記微粉末状の吸着剤を付着させたことを特徴とする除湿・脱臭装置。
【請求項2】
前記縦壁部の表面固有抵抗値は、1013Ω以上である、
請求項1に記載の除湿・脱臭装置。
【請求項3】
前記微粉末状の吸着剤は、前記縦壁部の前記内面に前記静電気によって付着することができる程度の大きさ及び重さを有する、
請求項1又は請求項2に記載の除湿・脱臭装置。
【請求項4】
前記微粉末状の吸着剤の粒度は、100メッシュ以上である、
請求項3に記載の除湿・脱臭装置。
【請求項5】
前記縦壁部は、前記水蒸気の通過を許容するとともに前記水溶液の通過を規制する複数の微細な孔を有する微多孔膜の前記内部空間側に不織布を固定した透湿シートである、
請求項1-4のいずれか1項に記載の除湿・脱臭装置。
【請求項6】
前記薬剤は、前記粒子状の除湿剤と前記微粉末状の吸着剤に粒子状の吸着剤をさらに混合したものである、
請求項1-5のいずれか1項に記載の除湿・脱臭装置。
【請求項7】
前記吸着剤は、活性炭、備長炭、竹炭、アルミノケイ酸塩、酸化亜鉛、酸化チタンから選択されたものの一種または二種以上である、
請求項1-6のいずれか1項に記載の除湿・脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、除湿剤及び脱臭剤を容器に収容した除湿・脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、除湿・脱臭装置として、一方の面を透湿非透水性シートで構成し、他方の面を非透湿非透水性シートで構成して、全周をシールした袋体の中に、潮解性除湿剤と脱臭剤を混合して封入した脱臭除湿器が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の脱臭除湿器は、透湿非透水性シートを通して外気に含まれる水蒸気を袋体内に取り込み、除湿剤によって水蒸気を吸収する。除湿剤が水蒸気を吸収すると、化学反応によって除湿剤が潮解し、水溶液が生成される。袋体の内部で生成された水溶液は、透湿非透水性シート及び非透湿非透水性シートを通過することなく、袋体の内部に溜まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の脱臭除湿器において、脱臭剤は、除湿剤と混合された状態で袋体に収容されているため、除湿剤の潮解によって生成された水溶液中に沈んでしまう。このため、特許文献1の脱臭除湿器は、十分に満足のいく脱臭性能を発揮することができなかった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、脱臭性能を十分に発揮できる除湿・脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の除湿・脱臭装置の一態様は、水蒸気を吸収して潮解することにより水溶液となる粒子状の除湿剤と微粉末状の吸着剤を混合した薬剤と、水蒸気の通過が可能な透湿部を有して重力方向に延設された縦壁部を有し、縦壁部を含む壁部によって封止された内部空間内に薬剤を収容した容器本体と、を有する。縦壁部の内部空間側の内面に帯電した静電気により微粉末状の吸着剤が付着する。
【0008】
容器本体の内部空間は、除湿剤の効果により低湿度に保たれているため、静電気が発生しやすい。容器本体の内部空間に収容された微粉末状の吸着剤は、静電気によって縦壁部の内面に付着される。このため、縦壁部の透湿部を通過する水蒸気を含む空気が微粉末状の吸着剤に効果的に接触し、脱臭性能を十分に発揮することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、脱臭性能を十分に発揮できる除湿・脱臭装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る除湿・脱臭装置を斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の除湿・脱臭装置を切断した縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のF3の領域を部分的に拡大した部分拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の除湿・脱臭装置による脱臭試験の結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る除湿・脱臭装置10は、容器15、及び容器15内に収容した薬剤40を有している。
【0012】
薬剤40は、例えば、粒子状の除湿剤41、粒子状の吸着剤42、及び微粉末状の吸着剤43を所定の割合で混合したものである。粒子状の除湿剤41と吸着剤42、43の配合割合は、特に限定されないが、好ましくは、重量比で1000:1~10:1、特に500:1~5:1にすることが好ましい。本実施形態では、粒子状の除湿剤41、粒子状の吸着剤42、及び微粉末状の吸着剤43を、重量比で概ね150:1:1の割合で混合した。粒子状の吸着剤42の混合の割合はゼロにすることもできる。薬剤40には、この他に、必要に応じて他の添加剤を混合してもよい。他の添加剤としては、例えば、香料、消臭剤、防カビ剤、抗菌剤、増粘剤、及び色素などがある。
【0013】
粒子状の除湿剤41は、一例として、塩化カルシウム、塩化マグネシウムや硫酸マンガン、クエン酸、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、十酸化四リン、リン酸などの潮解性の除湿剤であり、本実施形態では、粒子状の塩化カルシウムを除湿剤として用いた。粒子状の除湿剤41の粒径は、1~5mm程度のものを用いた。
【0014】
粒子状の吸着剤42は、一例として、備長炭、ナラ白炭、カシ白炭などの白炭、池田炭、佐倉炭などの黒炭、オガ炭、ヤシガラ炭、平炉炭、乾留炭、竹炭、豆炭、練炭、及びこれらを賦活させた活性炭等の炭素系の物理吸着剤、アルミノケイ酸塩、酸化亜鉛、酸化チタンなどの化学吸着剤であり、本実施形態では、ヤシガラの活性炭を吸着剤として用いた。粒子状の吸着剤42の粒径は、1~5mm程度のものを用いた。
【0015】
微粉末状の吸着剤43は、上述した粒子状の吸着剤42と同じ活性炭の粒径をさらに小さくして微粉末状にしたものであってもよく、他の種類の吸着剤を微粉末状にしたものであってもよい。微粉末状の吸着剤43の粒径は、後述するように微粉末状の吸着剤43を静電気により容器本体20の内面に付着させることができる粒径(重さ)であればよい。本実施形態では、粒度が100メッシュ以上の活性炭を微粉末状の吸着剤43として用いた。使用する微粉末状の吸着剤43の種類を変えると、最適な粒度も変わる。
【0016】
容器15は、容器本体20、及び容器本体20に固定された防汚シート30を有している。容器本体20は、内部に閉塞した内部空間Rを有している。この内部空間R内に上述した薬剤40を収容している。さらに、容器本体20は、少なくとも一部が透湿部Xにより形成されている。
【0017】
透湿部Xは、容器本体20の内部空間Rを構成する壁の一部である。透湿部Xは、後述する微多孔膜24を含む透湿シートから形成された部分であり、水蒸気を通し、かつ、容器本体20内に貯留された水溶液を通さない性質を有する。容器本体20内に貯留された水溶液は、本実施形態では、薬剤40に含まれる除湿剤41が水蒸気により潮解して生成された水溶液である。
【0018】
容器本体20は、一例として、透湿シートを含む複数枚のシート部材(壁部)を、例えば熱による溶着(ヒートシール)によって一部を貼り合わせることにより構成された所謂スタンディングパウチ容器である。容器本体20は、立位状態で机等の載置部1上に載置可能に構成されている。
【0019】
本実施形態では、容器本体20は、一例として、前壁部21、後壁部22、及び底壁部23を有している。容器本体20は、前壁部21、後壁部22、及び底壁部23により、内部に薬剤40を収容可能な内部空間Rを形成している。前壁部21及び後壁部22は、重力方向に延設された縦壁部として機能する。縦壁部21、22の表面固有抵抗値は、1013Ω以上であり、静電気が帯電しやすい。
【0020】
さらに、容器本体20は、前壁部21の外側の面となる表面から構成される前面5、後壁部22の外側の面となる表面から構成される後面6、及び、底壁部23の外面となる表面から構成される下面7を有する。すなわち、容器本体20の外面は、前面5、後面6、及び下面7を含む。
【0021】
前壁部21は、透明であり、空気、及び、容器15内に貯留された水溶液を通さないシート部材から形成されている。前壁部21は、空気を通さず、水蒸気も通さない。前壁部21は、一例として、ポリアミドやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル等から形成されたプラスチックシートにより形成されている。前壁部21は、一例として、長方形状に形成されている。透明の前壁部21から薬剤40及び貯留された水溶液を視認することができる。
【0022】
図3に示すように、後壁部22は、水蒸気の通過を許容するとともに容器本体20内に貯留された水溶液の通過を規制する微多孔膜24を含む透湿シートにより形成されている。この透湿シートは、具体的には、微多孔膜24、及びこの微多孔膜24の両面のそれぞれに熱融着により固定された不織布25を有する。
【0023】
微多孔膜24は、一例として、20~200μm程度の厚みを有するポリプロピレンで形成した膜であり、静電気が帯電しやすい。微多孔膜24は、複数の微細な孔を有する膜である。微多孔膜24の複数の孔は、それぞれ、水蒸気を通す大きさを有し、且つ水溶液が通らない大きさを有する。本実施形態では、一例として、微多孔膜24の水蒸気透過度は、2000g/m2・24h~8000g/m2・24hである。換言すると、微多孔膜24は、1m2あたり、1日で2000g以上であって8000g以下の範囲の水蒸気を透過可能に形成されている。微多孔膜24の孔は、例えば0.1μm~10μmの径を有している。微多孔膜24は、この孔を複数有することにより、水蒸気を通過させ、水溶液の通過を規制する。
【0024】
不織布25は、その繊維の間を通して水蒸気が通過可能に形成されている。本実施形態では、不織布25を、ポリエステルなどの帯電しやすい素材により形成したため、後壁部22の内部空間R側の内面28に静電気が帯電し易い。不織布25は、この他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンなどにより形成してもよい。不織布25の目付けは特に限定されないが、10g以上であって200g以下が好ましい。
【0025】
また、不織布25を微多孔膜24に熱融着して固定させることによって、内面28の表面が、不織布繊維による微細な凹凸のある構造になり、付着した微粉末状の吸着剤43が振動や摩擦などにより落下しにくくなる。不織布25の水蒸気透過度は特に限定されないが、8000g/m2・24h以上、好ましくは、10000g/m2・24h以上である。
【0026】
後壁部22は、一例として、前壁部21と同形状に形成されている。このように構成された後壁部22の一方の短手方向に沿う縁部22aは、前壁部21の一方の短手方向に沿う縁部21aに、一例として熱による溶着により、固定されている。後壁部22の長手方向に沿う一方の縁部22bは、前壁部21の長手方向に沿う一方の縁部21bに、一例として熱による溶着によって、固定されている。後壁部22の長手方向に沿う他方の縁部22cは、前壁部21の長手方向に沿う他方の縁部21cに、一例として熱による溶着によって、固定されている。
【0027】
このように構成された後壁部22は、溶着される溶着代以外の部分が、容器本体20の内部空間Rと外部との間で空気が移動可能となる、透湿部Xとなる。これに対し、溶着される部分は、内部空間Rに対向しないので、この部分を通過して空気が内部空間R内に入ることはない。つまり、後壁部22のうち、溶着される周縁34は、内部空間Rを囲む部分ではなく、内部空間Rに空気を導く通路として機能する部分ではないので、透湿部Xではない。
【0028】
底壁部23は、容器本体20内に貯留された水溶液、及び空気を通さない性質を有するシート部材から形成されている。底壁部23は、一例として、前壁部21を構成するシート部材と同じシート部材から形成されている。底壁部23は、一例として、長方形状に形成されている。底壁部23は、前壁部21の長手方向の他端部、及び後壁部22の長手方向の他端部に、例えば熱により、溶着されている。底壁部23は、前壁部21及び後壁部22を互いに引き離すことによって、
図1に示すように展開される。なお、底壁部23を折り畳むことによって、容器本体20を扁平にすることが可能となる。
【0029】
容器本体20は、内部に薬剤40が収容されると、薬剤40によって前壁部21及び後壁部22が互いに離れることにより、底壁部23が展開される。底壁部23を展開する際、前壁部21の内面26及び後壁部22の内面28が剥離されることによって静電気を帯びる。また、底壁部23が展開されると、前壁部21の底壁部23側の短手方向に沿う縁、及び、後壁部22の底壁部23側の短手方向に沿う縁が、環状に連続する。このように、前壁部21の短手方向に沿う縁、及び後壁部22の短手方向に沿う縁が環状に連続することにより、容器本体20は、この環状の縁を下端縁として、載置部1上に載置可能となる。
【0030】
防汚シート30は、
図2に示すように、後壁部22の後面6の全面、すなわち、透湿部X及び周縁34を覆う形状及び大きさを有する。防汚シート30は、水蒸気が通過可能であるとともに、後壁部22に、外部から異物が付着することを防止可能な材料から形成されている。防汚シート30は、本実施形態では、一例として、紙シート部材33と、紙シート部材33の一面(後壁部22側の面)に溶着液を塗布した溶着層32を有する。防汚シート30は、溶着層32を後壁部22の後面6に対向させた向きで後壁部22に固定される。
【0031】
紙シート部材33は、一例として、耐油シートである。紙シート部材33は、水蒸気を含む空気が通過可能に形成されている。紙シート部材33は、紙シート部材33を構成する繊維間の隙間を通して、空気が通過可能である。紙シート部材33の表面には、例えば非フッ素系耐油剤を塗工した耐油加工が施してある。耐油加工は、少なくとも溶着層32と反対側の紙シート部材33の外面に施せばよく、溶着層32側の内面に施してもよい。或いは、紙シート部材33は、例えばフッ素系耐油剤をパルプ原料と混ぜて形成したものであってもよい。本実施形態の紙シート部材33の水蒸気透過度は、1000g/m2・24h以上、好ましくは、2000g/m2・24h以上である。
【0032】
溶着液は、加熱により揮散する溶媒中に粒子状のヒートシール剤を分散させたものである。溶媒は、加熱により揮散するものに限らず、常温でも揮散する水のような揮発性を有するものであればよい。溶着液は、一例として、微粒状のポリオレフィンを水性ディスパージョン化したものであり、この場合の溶媒は水であり、ヒートシール剤は粒状のポリオレフィンである。微粒状のポリオレフィンを水性ディスパージョン化した溶着液として、例えば、三井化学株式会社製のケミパール(登録商標)が知られている。
【0033】
防汚シート30を後壁部22に固定する場合、防汚シート30を溶着層32が後壁部22の後面6に対向する向きで後面6に重ねて配置し、後壁部22の周縁34及び防汚シート30の周縁を加熱及び加圧して、後壁部22の周縁34と防汚シート30の周縁を熱溶着する。つまり、本実施形態では、後壁部22の後面6と防汚シート30の間に隙間Sを有した状態で、防汚シート30の全周縁を後壁部22に固定している。
【0034】
このとき、溶着層32の溶着液を所定温度に加熱して所定の圧力で加圧すると、溶着液の溶媒が揮散し、溶媒中に所定の割合で分散されていた粒子状のヒートシール剤が溶融されてつぶされる。溶融されてつぶされたヒートシール剤は、所定温度まで冷えるとつぶれたまま固まり、後壁部22の微多孔膜24と防汚シート30の紙シート部材33を互いに固着する。
【0035】
なお、溶媒が水である場合、紙シート部材33の一面に溶着液を塗布した後、しばらくすると、水分が揮散して乾いた状態となり、粒子状のヒートシール剤が紙シート部材33の一面に付着した状態となる。この場合、溶着層32を加熱及び加圧してヒートシール剤を溶融する際には、溶媒は既にほとんどが揮散しており、ヒートシール剤だけを加熱溶融することになる。
【0036】
いずれにしても、後壁部22に防汚シート30を熱溶着により固着すると、溶着層32の溶媒がほとんど無くなり、ヒートシール剤の粒子間に水蒸気を通過可能な大きさの隙間が形成された状態となる。ヒートシール剤の粒子間の隙間は、上述したようにヒートシール剤を加熱溶融したシール部分(周縁)において存在するとともに、シール部分以外の部分(隙間Sに対向する部分)においても存在する。
【0037】
例えば、溶媒が水である場合には、溶着液を紙シート部材33の一面に塗布した直後に揮散を開始するため、溶着液を加熱しなくてもほとんどの溶媒は揮散した状態となる。つまり、溶媒中に所定の割合で分散されている粒子状のヒートシール剤は、熱溶着の有無に関係なく、溶媒が揮散した後、ヒートシール剤の粒子間に少なくとも水蒸気が通過可能な大きさの隙間が形成された状態となる。
【0038】
言い換えると、溶着液の溶媒中における粒子状のヒートシール剤の分散の割合は、この溶着液を用いて防汚シート30を後壁部22に熱溶着して溶着液の溶媒が揮散した状態で、ヒートシール剤の粒子間に水蒸気を通過可能な大きさの隙間が形成される割合に設定されている。本実施形態では、後壁部22に熱溶着した状態の防汚シート30の水蒸気透過度が、1000g/m2・24h以上となるように、溶着液の溶媒中における粒子状のヒートシール剤の分散の割合を設定した。
【0039】
以上のように構成された防汚シート30は、後壁部22の後面6に固定した状態で、溶着層32(実質的には粒子状のヒートシール剤の層)が水蒸気を含む空気を通過可能であり、且つ紙シート部材33も水蒸気を含む空気を通過可能であることから、除湿・脱臭装置10の外部の水蒸気を含む空気を後壁部22側に良好に通過可能である。また、この防汚シート30は、表面が紙シート部材33により形成されているため、後壁部22(透湿部X)に汚れが付着する不具合を防止することができ、後壁部22を介して容器本体20内に溜まった水溶液が外部に漏出する不具合を防止することができる。つまり、本実施形態の除湿装置10は、除湿効果が高く、除湿スピードが速く、保水性に優れている。
【0040】
なお、防汚シート30は、例えば、後壁部22を前壁部21と底壁部23とに溶着するときに、後壁部22の溶着と一緒に溶着してもよい。このようにすることによって、後壁部22の溶着部分と防汚シート30との溶着部分とが重なるので、溶着の工数を減らすことができる。或いは、後壁部22の後面6に隙間Sを介して防汚シート30を溶着した後、このシート部材を前壁部21及び底壁部23とともに溶着してもよい。このようにすることによって、3枚のシート部材を重ねて溶着する必要がなく、作業を容易にできる。
【0041】
本実施形態では、防汚シート30は、後壁部22に固定された状態で、後壁部22との間に隙間Sを有している。このため、もしも防汚シート30に汚れ等が付着したとしても、この汚れは、隙間Sにより後壁部22に付着することをより確実に防止できる。したがって、隙間Sを設けることにより容器15内の水溶液が外部に漏れ出ることを、より確実に防止することができる。
【0042】
また、防汚シート30の表面35に印刷などによりインク等を用いて図柄を描いた場合に、隙間Sにより後壁部22にインク等が付着することをより確実に防止できる。なお、図柄は、例えば、文字、絵、数字、及び記号の少なくとも1つである。すなわち、図柄は、ユーザにより視認可能なものであればよい。また、図柄は、印刷により形成されることに限定されない。他の例では、図柄は、手作業により描かれてもよい。
【0043】
或いは、防汚シート30は、紙シート部材33の一面を隙間Sを設けることなく容器本体20の後壁部22の後面6に熱溶着によって密着させてもよい。つまり、防汚シート30の全面を後壁部22に熱溶着してもよい。この場合、防汚シート30の溶着層32の粒子状のヒートシール剤によって、紙シート部材33の一面の全面が後壁部22の後面6の全面に固着される。しかし、上述したように、紙シート部材33と後壁部22を熱溶着する溶着液は、溶媒に対して粒子状のヒートシール剤を所定の割合で分散させたものであるため、両者を固着した状態の溶着層32は、ヒートシール剤の粒子間に水蒸気を通過可能な大きさの隙間を有する状態となる。このため、隙間Sを設けることなく後壁部22に固定した防汚シート30であっても、除湿・脱臭装置10の外部の空気中に含まれる水蒸気を後壁部22に向けて良好に通過させることができる。
【0044】
また、上記のように、防汚シート30の全面を後壁部22に固着させる場合、周縁同士を熱溶着する場合と比較して、防汚シート30の後壁部22に対する固着工程を容易にすることができ、防汚シート30を後壁部22に固着したシート部材の取り扱いを容易にすることができる。この場合、例えば、後壁部22の後面6側の不織布25を省略して、微多孔膜24に溶着液を介して防汚シート30を熱溶着したシート部材を製造して、このシート部材を用いて容器本体20を製造するようにしてもよい。
【0045】
また、防汚シート30の全面を後壁部22に固着させると、両者の間に隙間Sが無くなり空気層が無くなるため、隙間Sがある場合と比較して、防汚シート30が容器本体20の内部空間Rに近くなる。このため、内部空間R内に収容した除湿剤41に対しても防汚シート30が近付くことになり、防汚シート30及び後壁部22を透過した水蒸気が除湿剤41により吸着され易くなり、除湿効果が高くなる。
【0046】
以下、上述した除湿・脱臭装置10の機能について説明する。
使用者が除湿・脱臭装置10を把持すると、使用者の手が、容器本体20の前壁部21及び防汚シート30に触れる。このとき、防汚シート30により、使用者の手に付着したハンドクリーム等の界面活性成分を含む異物が、後壁部22に付着することが防止される。
【0047】
除湿・脱臭装置10の外部の水蒸気の一部は、防汚シート30を通過して、後壁部22と防汚シート30との間の隙間Sに侵入する。後壁部22と防汚シート30との間の隙間Sに侵入した水蒸気は、後壁部22を通過して容器本体20内(内部空間R内)に侵入する。容器本体20内に侵入した水蒸気は、薬剤40に含まれる除湿剤41を潮解することによって水溶液となり、容器本体20内に溜まる。
【0048】
本実施形態の除湿・脱臭装置10は、防汚シート30によって、後壁部22の表面の全面が覆われている。このため、使用者がハンドクリーム等の界面活性成分を含む異物が付着した手で除湿・脱臭装置10に触れても、界面活性成分等の異物が後壁部22に付着することを防止できる。このため、界面活性成分によって表面張力が下がり、後壁部22を通して容器本体20内の水溶液が外部に出ることが防止される。
【0049】
また、本実施形態の除湿・脱臭装置10は、容器本体20の内部空間Rに微粉末状の吸着剤43を収容している。微粉末状の吸着剤43の一部は、
図2及び
図3に示すように、容器本体20の内面、すなわち前壁部21の前面5と反対の内面26、及び後壁部22の後面6と反対の内面28(後壁部22の内側の不織布25の内面)に、静電気により付着する。
【0050】
静電気は、本実施形態の除湿・脱臭装置10の製造時、流通時、及び使用時に発生する。除湿・脱臭装置10の製造時には、図示しない素材ロールから各シート部材を引き出す際に各シート部材に帯電するものと考えられる(剥離帯電)。また、製造時において、薬剤40を容器本体20の内部空間Rに収容する際に、折り畳んだ状態の容器本体20の底壁部23を展開して前壁部21と後壁部22を離間させる際に帯電するものと考えられる。また、容器15の内部に薬剤40を投入する際に、薬剤40の粒子同士が擦れ合うとともに、薬剤40と容器15の内面26、28が擦れ合い、静電気が発生するものと考えられる(摩擦帯電・接触帯電)。
【0051】
また、除湿・脱臭装置10の流通時及び使用時において、容器15に振動が加わったり、容器15を振ったりした場合に、薬剤40の粒子同士が擦れ合うとともに、薬剤40と容器15の内面26、28が擦れ合い、静電気が発生するものと考えられる。内部空間Rで発生した静電気は、表面固有抵抗値の高い容器本体20の前壁部21の内面26、後壁部22の内面28、及び底壁部23の内面に帯電し、透湿部X及びその近傍の比較的広い面積が帯電することになる。
【0052】
また、本実施形態の除湿・脱臭装置10は、載置部1上に置いて使用するスタンディングパウチであるため、薬剤40に含まれる除湿剤41が水蒸気を吸収して潮解しても、生成された水溶液は内部空間Rの下方に溜まる。このため、重力方向に延設された前壁部21及び後壁部22の内面の略全面に静電気により付着した微粉末状の吸着剤43は、ほとんどが水溶液中に沈むことがなく、内部空間R内の空気を効果的に脱臭することができる。
【0053】
また、本実施形態によると、略全体が透湿部Xである後壁部22の内面28の略全面に微粉末状の吸着剤43が静電気により付着するため、透湿部Xを通過する空気に吸着剤43を効果的に触れさせることができ、脱臭性能を十分に発揮することができる。
【0054】
上述したように、容器本体20の内部空間R内に収容する薬剤40に微粉末状の吸着剤43を混合した場合における本実施形態の除湿・脱臭装置10による脱臭性能を評価するため、以下のような脱臭試験を実施した。
【0055】
脱臭試験を実施したサンプル(1)は、粒子状の除湿剤41のみを薬剤40として容器本体20の内部空間R内に収容したものを用意した。サンプル(1)の粒子状の除湿剤41は、粒径1mm~5mm程度の塩化カルシウムであり、この塩化カルシウム170(g)を内部空間R内に収容した。サンプル(2)は、サンプル(1)と同じ粒径の塩化カルシウム170(g)に粒子状の吸着剤42を1(g)混合した薬剤40を容器本体20の内部空間R内に収容したものを用意した。サンプル(2)の粒子状の吸着剤42は、粒径1mm~5mm程度のヤシガラの活性炭である。サンプル(3)は、サンプル(1)と同じ粒径の塩化カルシウム170(g)に微粉末状の吸着剤43を1(g)混合した薬剤40を容器本体20の内部空間R内に収容したものを用意した。サンプル(3)の微粉末状の吸着剤43は、粒径1μm~100μm程度のヤシガラの活性炭である。
【0056】
そして、各サンプル(1)~(3)を、それぞれ、10リットルのバリア袋に入れて所定量の硫化水素ガスを封入し、バリア袋内の硫化水素濃度の経時的な変化を測定した。その結果を
図4に示す。
【0057】
これによると、微粉末状の活性炭を混ぜた薬剤40を収容したサンプル(3)は、脱臭試験の開始直後から硫化水素濃度が急激に低下しており、約1時間後には硫化水素濃度がゼロになっているのがわかる。これに対し、活性炭を混合していない薬剤40を収容したサンプル(1)、及び粒子状の活性炭を混合した薬剤40を収容したサンプル(2)は、脱臭試験開始から約3時間経過した時点でも硫化水素濃度がゼロになっていないことがわかる。
【0058】
また、脱臭試験を実施した後の各サンプル(1)~(3)を観察したところ、サンプル(3)の前壁部21の内面26及び後壁部22の内面28が黒く煤けたように呈色しており、内面26、28に微粉末状の吸着剤43が付着していることが確認できた。つまり、サンプル(3)において、前壁部21の内面26及び後壁部22の内面28の広い面積に微粉末状の吸着剤43が付着したことにより、他のサンプル(1)(2)と比較して、脱臭効果が高まったものと考えられる。
【0059】
以上のように、本実施形態の除湿・脱臭装置10によると、装置の製造時、流通時、及び使用時において容器本体20の内面に帯電した静電気により、薬剤40に含まれる微粉末状の吸着剤43が内面に付着した状態となる。このため、容器本体20の内部空間Rに接する内面の比較的広い面積に吸着剤43を付着させることができ、脱臭性能を十分に高めることができる。
【0060】
また、本実施形態によると、重力方向に延設された前壁部21の内面26、及び後壁部22の内面28の略全面に微粉末状の吸着剤43が付着するため、薬剤40に含まれる除湿剤41が潮解して水溶液が内部空間Rの下方に溜まった状態であっても、微粉末状の吸着剤43の大部分が水溶液中に沈むことがなく、脱臭効果を持続させることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、容器本体20の複数面のうちの後面6だけが、微多孔膜24を含むシート部材で形成された場合について説明した。しかし、容器本体20の後面6以外の面が透湿部Xによって形成されてもよい。この一例としては、前壁部21が、水蒸気を通し、さらに、容器15内に貯留された水溶液の通過を規制する微多孔膜24を含む透湿シートで形成されてもよい。このように、前壁部21が微多孔膜24を含む透湿シートで形成された場合は、透湿部Xを通過した空気が前壁部21の内面に付着した微粉末状の吸着剤43に接触し、脱臭効果がより高められる。
【0062】
また、本実施形態では、透湿部Xを、微多孔膜24の両面に不織布25を設けたシート部材から形成した例について説明したが、他の例では、微多孔膜24の内面に不織布25を備えていないシート部材により透湿部Xを形成してもよい。このように、微多孔膜24の内面に不織布25を持たないシート部材により透湿部Xを形成しても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0063】
また、本実施形態では、容器本体20の内部空間R内に収容する薬剤40に微粉末状のヤシガラの活性炭を混合した場合について説明したが、別の微粉末状の吸着剤43として、例えば、備長炭を微粉末に粉砕したものを薬剤40に混合して内部空間R内に収容してもよい。微粉末状の吸着剤43は、静電気により容器本体20の内面に付着可能なものであればよい。
【0064】
また、本実施形態では、防汚シート30を紙シート部材33の一面(後壁部22側の面)に溶着液を塗布した溶着層32を設けて構成した場合について説明したが、紙シート部材の一面(後壁部22側の面)に溶着シートを設けた防汚シートを用いることもできる。この場合、溶着シートは、例えば、多数の孔を有するポリエチレンシートにより形成すればよい。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0066】
10…除湿・脱臭装置、 15…容器、 20…容器本体、 21…前壁部、 22…後壁部、 24…微多孔膜、 25…不織布、 26、28…内面、 30…防汚シート、 40…薬剤、 41…粒子状の除湿剤、 42…粒子状の吸着剤、 43…微粉末状の吸着剤、 R…内部空間、 S…隙間、 X…透湿部。