(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114280
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】微細気泡発生装置
(51)【国際特許分類】
B01F 23/20 20220101AFI20230809BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20230809BHJP
E03C 1/084 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B01F3/04 Z
B01F5/06
E03C1/084
B01F5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016564
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(71)【出願人】
【識別番号】501483061
【氏名又は名称】株式会社 フクシマ化学
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】福島 康貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 高広
【テーマコード(参考)】
2D060
4G035
【Fターム(参考)】
2D060CC17
4G035AB04
4G035AC01
4G035AC26
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】微細気泡を発生させるための構造が新規である微細気泡発生装置を提供する。
【解決手段】微細気泡発生装置10は、流入口11及び排出口12と、流入口11と排出口12とを連通する流路13とを備える。流路13は、流入口11から排出口12へ延びる軸線P周りに螺旋状に延びる独立した複数の螺旋流路14が並列する並列部13aを備える。微細気泡発生装置10は、並列部13aの下流側にて、複数の螺旋流路14から排出された旋回流を合流させることにより微細気泡を発生させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓の通水路に取り付けて用いられる微細気泡発生装置であって、
流入口及び排出口と、
前記流入口と前記排出口とを連通する流路とを備え、
前記流路は、前記流入口から前記排出口へ延びる軸線周りに螺旋状に延びる独立した複数の螺旋流路が並列する並列部を備え、
前記並列部の下流側にて、複数の前記螺旋流路から排出された旋回流を合流させることにより微細気泡を発生させることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記流路における前記並列部の下流側には、複数の前記螺旋流路から排出された水流を合流させる合流部が設けられている請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記合流部は、複数の前記螺旋流路のそれぞれを前記排出口側に延長させた形状の延長部分と、前記軸線が位置する中心部分にて前記延長部分同士を連通する連通部分とを備える請求項2に記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
筒状の第1部材と、前記第1部材に挿入されるピン状の第2部材とを備え、
前記第1部材は、
断面が円形状の内周面を有する周壁と、
前記周壁の内周面から突出するとともに前記周壁の中心軸である前記軸線周りに螺旋状に延びる複数の螺旋壁と、
前記軸線上に位置するとともに前記第1部材を軸線方向に貫通する貫通孔とを備え、
前記第2部材は、前記貫通孔に挿入されることにより、前記螺旋壁の各先端面に当接して前記貫通孔を塞ぐ部材であり、
前記螺旋流路は、前記周壁、前記螺旋壁、及び前記第2部材により区画された空間である請求項1~3のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記第1部材の下流側の端部には、前記貫通孔に前記第2部材が挿入されていない部分であって、前記周壁及び前記螺旋壁により区画された空間同士が前記貫通孔により連通された部分が設けられている請求項4に記載の微細気泡発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細気泡発生装置は、水栓の通水路に取り付けて用いられる装置であり、通水路を流れる水流中に微細な気泡を発生させる。水流中に発生した微細な気泡は、洗浄効果などの付加効果を水流に付与する。
【0003】
特許文献1に開示される微細気泡発生装置は、外形が略円筒状の本体部と、本体部をその中心軸方向に貫通する貫通孔とを備える。貫通孔の断面形状は、最も幅の狭い部分を含む中心領域と、本体部の中心軸に対して対称に形成されるとともに最も幅の広い部分を含む二つの周辺領域とを有する形状である。貫通孔は、本体部の中心軸に沿って、水流が流入する第1端部側から水流が流出する第2端部側に向かって上記断面が回転している形状である。
【0004】
水栓の通水路を流れる水流が微細気泡発生装置を通過する際、貫通孔の中心領域に流れ込んだ水流は、ほとんど回転されることなく、そのままの圧力及び流速で本体部の中心軸に沿って直進するように流れる。一方、貫通孔の周辺領域に流れ込んだ水流は、貫通孔の外周形状に沿って螺旋状に旋回しながら流れる。このとき、中心領域を流れる水流と、周辺領域を流れる水流との間には、水流の速度差が生じるとともに、周辺領域を流れる水流に作用する遠心力に基づいて中央領域が低水圧となる圧力差が生じる。特許文献1の微細気泡発生装置は、貫通孔の中心領域を流れる水流と周辺領域を流れる水流との間の速度差及び圧力差に基づいて、貫通孔を流れる水流中に微細気泡を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、微細気泡を発生させるための構造が従来技術と異なる新規な微細気泡発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する微細気泡発生装置は、水栓の通水路に取り付けて用いられる微細気泡発生装置であって、流入口及び排出口と、前記流入口と前記排出口とを連通する流路とを備え、前記流路は、前記流入口から前記排出口へ延びる軸線周りに螺旋状に延びる独立した複数の螺旋流路が並列する並列部を備え、前記並列部の下流側にて、複数の前記螺旋流路から排出された旋回流を合流させることにより微細気泡を発生させる。
【0008】
上記構成によれば、螺旋流路から排出された旋回流が混ざり合うことにより微細気泡を発生させることができる。上記構成の場合、従来技術において微細気泡を発生させるための要部である、流入口から排出口まで水流が直進できる部分を設けなくても、微細気泡を発生させることができる。また、上記構成の場合、微細気泡は、旋回流が混ざり合う部分で発生するため、発生と同時又は発生した後に拡散される。そのため、通水路を流れる水流中における微細気泡の分布の偏りが小さくなる。
【0009】
上記微細気泡発生装置において、前記流路における前記並列部の下流側には、複数の前記螺旋流路から排出された水流を合流させる合流部が設けられていることが好ましい。
上記構成の場合、微細気泡発生装置の内部に旋回流を合流させる合流部を設けているため、通水路における微細気泡発生装置が配置される部分の下流側に旋回流を合流させる部分を確保する必要がない。そのため、微細気泡発生装置が設置される通水路の形状、及び通水路における微細気泡発生装置の設置位置を設定する際の自由度が向上する。
【0010】
上記微細気泡発生装置において、前記合流部は、複数の前記螺旋流路のそれぞれを前記排出口側に延長させた形状の延長部分と、前記軸線が位置する中心部分にて前記延長部分同士を連通する連通部分とを備えることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、合流部の流路断面において、排出された各螺旋流が広がる方向が連通部分に向かう方向、即ち、流路の中央へ向かう方向に限定されるため、螺旋流同士が効率的に接触する。これにより、合流部における微細気泡の発生効率が向上する。また、螺旋流路が3以上である場合には、旋回流が混ざり合う部分が連通部分に集中することによっても、微細気泡の発生効率が向上する。
【0012】
上記微細気泡発生装置において、筒状の第1部材と、前記第1部材に挿入されるピン状の第2部材とを備え、前記第1部材は、断面が円形状の内周面を有する周壁と、前記周壁の内周面から突出するとともに前記周壁の中心軸である前記軸線周りに螺旋状に延びる複数の螺旋壁と、前記軸線上に位置するとともに前記第1部材を軸線方向に貫通する貫通孔とを備え、前記第2部材は、前記貫通孔に挿入されることにより、前記螺旋壁の各先端面に当接して前記貫通孔を塞ぐ部材であり、前記螺旋流路は、前記周壁、前記螺旋壁、及び前記第2部材により区画された空間であることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、型成形により形成することのできる形状の第1部材及び第2部材の組み合わせによって、複数の螺旋流路が並列する並列部を有する流路を簡易に形成できる。
【0014】
上記微細気泡発生装置において、前記第1部材の下流側の端部には、前記貫通孔に前記第2部材が挿入されていない部分であって、前記周壁及び前記螺旋壁により区画された空間同士が前記貫通孔により連通された部分が設けられていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、型成形により形成することのできる形状の第1部材及び第2部材の組み合わせによって、並列部の下流側に、延長部分及び連通部分を備える合流部を簡易に形成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微細気泡を発生させるための構造が新規である微細気泡発生装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】(a)は、
図2の3a-3a線断面図であり、(b)は
図2の3b-3b線断面図である。
【
図6】微細気泡発生装置を水栓に取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の微細気泡発生装置の一実施形態を説明する。
[微細気泡]
本明細書において、微細気泡は、直径100μm未満の気泡を意味する。微細気泡の直径は、例えば、1nm以上である。微細気泡は、所謂、ファインバブルであり、直径1μm以上100μm未満の気泡であるマイクロバブル、及び直径1μm未満の気泡であるウルトラファインバブルを含む。
【0019】
[微細気泡発生装置]
図6に示すように、微細気泡発生装置10は、水栓40の通水路41の内部に取り付けて用いられる。通水路41を流れる水流は、微細気泡発生装置10を通過して通水路41の下流側へと流れ、水栓40の吐出部42から吐出される。微細気泡発生装置10は、通水路41における微細気泡発生装置10の下流側を流れる水流中に微細気泡を発生させる。水流中に発生した微細気泡は、洗浄効果などの付加効果を水流に付与する。
【0020】
微細気泡発生装置10が取り付けられる水栓40の種類は特に限定されるものではなく、微細気泡発生装置が取り付けられる公知の水栓に適用できる。
図6においては、一例として、水栓40がシャワーヘッドである場合を図示している。
【0021】
微細気泡発生装置10は、当該装置の内部に設けられた特定形状の流路内を水流が通過することにより微細気泡を発生させる。以下では、まず、微細気泡発生装置10に設けられる特定形状の流路について説明する。
【0022】
[流路形状]
図1及び
図2に示すように、微細気泡発生装置10は、流入口11及び排出口12と、流入口11と排出口12とを連通する流路13を備えている。流入口11は、通水路41を流れる水流が流れ込む部位である。排出口12は、微細気泡発生装置10を通過した水流を通水路41へ排出する部位である。流路13は、流路13の上流側の部分を構成する並列部13aと、並列部13aの下流側に連続して配置されるとともに流路13の下流側の部分を構成する合流部13bとを備える。並列部13aの上流側端部が流入口11であり、合流部13bの下流側端部が排出口12である。
【0023】
[並列部]
並列部13aは、微細気泡発生装置10に流れ込んだ水流を複数の独立した水流に分割するとともに、分割した各水流を螺旋状に流れさせる部分である。
【0024】
図2及び
図3(a)に示すように、並列部13aは、流入口11から排出口12へ延びる軸線P周りに螺旋状に延びる独立した複数の螺旋流路14が並列して設けられている。並列部13aに設けられる螺旋流路14の数は、2以上5以下であり、好ましくは3である。図面においては、一例として、螺旋流路14の数が3である場合を図示している。
図3(a)に示すように、複数の螺旋流路14は、軸線P周りに等間隔に配置されている。螺旋流路14は、軸線Pに沿って、流入口11から排出口12に向かって
図3(a)に示す流路断面が回転している形状である。
【0025】
螺旋流路14の回転数は、例えば、2回転以上(720度以上)である。また、螺旋流路14の回転数は、例えば、3回転以下(1080度以下)である。螺旋流路14の回転数が多くなるにしたがって、微細気泡の発生効率が向上する一方、流路断面積が小さくなることによって、微細気泡発生装置10を流れる水流の時間当たりの流量が低下する傾向がある。そのため、目的とする流量が得られる範囲内において、螺旋流路14の回転数を多くすることが好ましい。
【0026】
螺旋流路14の螺旋のピッチは、例えば、12mm以上20mm以下である。また、螺旋のピッチは、すべての螺旋流路14で同じである。
図3(a)に示すように、螺旋流路14における軸線Pに直交する断面形状は、螺旋流路14がなす螺旋の中央側(軸線P側)から当該螺旋の外周側に向かって、徐々に幅が広くなる拡幅部分を有する形状である。なお、以下では、軸線Pに直交する断面形状を単に断面形状と記載する場合がある。
【0027】
拡幅部分を有する形状としては、例えば、扇形、台形、円弧形状、円形状、楕円形状が挙げられる。図面においては、一例として、螺旋流路14の断面形状が扇形である場合を図示している。複数の螺旋流路14の断面形状は、全て同じである。
【0028】
[合流部]
合流部13bは、各螺旋流路14から排出された水流を合流させて混ぜ合わせる部分である。
【0029】
図2及び
図3(b)に示すように、合流部13bは、複数の延長部分15と、連通部分16とを備える。延長部分15は、並列部13aの螺旋流路14を排出口12側に延長させた形状の部分であり、複数の螺旋流路14のそれぞれに対して一つずつ設けられている。延長部分15の螺旋のピッチ及び軸線Pに直交する断面形状は、螺旋流路14と同じである。
【0030】
連通部分16は、軸線Pが位置する中心部分に設けられて、複数の延長部分15同士を連通する部分である。連通部分16の軸線Pに直交する断面形状は特に限定されるものではないが、円形状であることが好ましい。
【0031】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、合流部13bにおける軸線Pに直交する流路断面の断面積は、連通部分16の分だけ、並列部13aにおける流路断面の断面積よりも大きい。連通部分16の断面積は、特に限定されるものではないが、一つの延長部分15の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0032】
換言すると、一つの螺旋流路14の断面積を「S」とし、並列部13aを構成する螺旋流路14の数を「n」とする。このとき、連通部分16の断面積は、合流部13bの流路断面の断面積が「S×(n+1)」以下となる断面積であることが好ましい。また、連通部分16の断面積は、例えば、合流部13bの流路断面の断面積が「S×(n+1/10)」以上となる断面積である。なお、並列部13aを構成する複数の螺旋流路14の断面形状がそれぞれ異なる場合には、螺旋流路14の平均断面積を「S」とする。
【0033】
軸線Pに沿った方向における合流部13bの長さは、例えば、同方向における並列部13aの長さの1/6以上1/8以下である。また、軸線Pに沿った方向における合流部13bの長さは、延長部分15の回転数が1/4回転以上(90度以上)1/3回転以下(120度以下)であることが好ましい。
【0034】
[微細気泡発生装置の構造]
次に、上述した流路13を区画する微細気泡発生装置10の構造について説明する。
図4に示すように、微細気泡発生装置10は、筒状の第1部材20と、ピン状の第2部材30とを備え、第1部材20と第2部材30とを組み合わせることにより形成されている。
【0035】
第1部材20は、軸線Pに直交する断面が円形状の内周面を有する周壁21を備える。周壁21の外周面の断面形状は特に限定されるものではなく、微細気泡発生装置10が取り付けられる通水路41の形状に合わせて適宜、設計される。
【0036】
第1部材20の上流側の端面には、軸線P方向に突出する係合部22が設けられている。
図6に示すように、係合部22は、微細気泡発生装置10を通水路41に取り付けた状態において、通水路41に設けられる被係合部43と係合する。係合部22と被係合部43とが係合することにより、通水路41に対する微細気泡発生装置10の回転が規制される。
【0037】
図4に示すように、第1部材20は、周壁21の内周面から軸線Pに向かって突出する複数の螺旋壁23を備えている。螺旋壁23は、周壁21の上流側端部から下流側端部に向かって、周壁21の中心軸である軸線P周りに螺旋状に延びる壁部である。隣接する螺旋壁23と螺旋壁23との間の空間が、並列部13aの螺旋流路14及び合流部13bの延長部分15となる。したがって、第1部材20における螺旋壁23の形成数は、螺旋流路14及び延長部分15の数に応じた数となる。例えば、
図3に示すように、螺旋流路14及び延長部分15の数が3である場合、螺旋壁23の形成数も3となる。
【0038】
図4及び
図5に示すように、各螺旋壁23の上流側の端部には、軸線Pを中心軸とする半球面に沿って、螺旋壁23の突出高さが下流側に向かって徐々に大きくなる形状の案内部23aが形成されている。案内部23aは、通水路41を流れる水流が微細気泡発生装置10に流れ込む際に、スムーズに流れ込むように、水流を螺旋流路14内へ案内するための構成である。
【0039】
図4に示すように、第1部材20は、軸線P上に位置するとともに第1部材20を軸線P方向に貫通する貫通孔24を備えている。各螺旋壁23は、その突出高さが周壁21の内周面から軸線Pまでの距離よりも低くなっている。これにより、第1部材20の中央に貫通孔24が形成されている。また、貫通孔24は、上流側から下流側に向かって徐々に縮径する形状に形成されている。つまり、各螺旋壁23の先端面における案内部23aよりも下流側の部分は、上流側から下流側に向かって徐々に縮径する円錐台の外周面に沿った形状に形成されている。
【0040】
第2部材30は、第1部材20の貫通孔24に挿入されることにより、螺旋壁23の先端面に当接して貫通孔24を塞ぐ。第2部材30は、ピン状のピン本体31と、ピン本体31の基端に設けられる係止部32とを備える。
【0041】
ピン本体31は、係止部32が位置する基端側から先端側に向かって徐々に縮径する円錐台形状又は円錐形状である。ピン本体31の外周面の形状は、第1部材20の各螺旋壁23の先端面に一致する形状である。したがって、第2部材30を第1部材20の貫通孔24に挿入した状態において、ピン本体31の外周面は、各螺旋壁23の先端面に面接触する。また、ピン本体31の軸線P方向の長さは、第1部材20の軸線P方向の長さよりも短い。より具体的には、ピン本体31の軸線P方向の長さは、第1部材20における螺旋壁23が設けられている範囲の軸線P方向の長さよりも短い。
【0042】
係止部32は、ピン本体31の基端側の端部よりも一回り大きく形成されて、ピン本体31の基端側の端部から段差状に拡径した部分である。第1部材20の貫通孔24に対して、上流側の端部側から第2部材30のピン本体31を挿入したとき、係止部32は、第1部材20の螺旋壁23の上流側の端部に当接する。係止部32が螺旋壁23に当接することにより、第2部材30は、貫通孔24に対して、それ以上の挿入が規制された状態となる。この状態が、第1部材20に対して第2部材30が適切に組付けられた組付け状態である。
【0043】
図2及び
図3(a)に示すように、上記の組付け状態においては、第1部材20の上流側には、貫通孔24内に第2部材30のピン本体31が挿入された部分が設けられる。当該部分が、流路13の上流側の部分を構成する並列部13aとなる。そして、当該部分において、第1部材20の周壁21及び螺旋壁23、並びに第2部材30のピン本体31により区画された螺旋状の空間が螺旋流路14となる。
【0044】
また、上記の組付け状態において、第1部材20の下流側には、貫通孔24内に第2部材30のピン本体31が挿入されてない部分が設けられる。当該部分が、流路13の下流側の部分を構成する合流部13bとなる。そして、当該部分において、第1部材20の周壁21及び螺旋壁23により区画された空間が延長部分15となり、延長部分15となる空間同士を連通する貫通孔24が連通部分16となる。
【0045】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図6に示すように、微細気泡発生装置10は、水栓40の通水路41の内部に取り付けて用いられる。通水路41内において、微細気泡発生装置10に達した水流は、流入口11から、微細気泡発生装置10に設けられる流路13に流れ込む。このとき、水流は、案内部23aに沿って流れながら並列部13aを構成する複数の螺旋流路14に流れ込むとともに、螺旋流路14の数に応じた複数の水流に分割される。
【0046】
図2に示すように、各螺旋流路14に流れ込んだ水流は、螺旋流路14内を螺旋状に流れる螺旋流となる。一つの螺旋流路14内を流れる螺旋流のうち、軸線Pに近い側である螺旋流路14の中央側を流れる内側の水流は、相対的に半径の短い螺旋で旋回しながら下流側へと流れる。一方、軸線Pから遠い側である螺旋流路14の外周側を流れる外側の水流は、相対的に半径の長い螺旋で旋回しながら下流側へと流れる。その結果、一つの螺旋流路14内を流れる螺旋流には、内側の部分は相対的に遅く流れ、外側の部分は相対的に速く流れることに基づく内側及び外側の速度差が生じる。上記速度差及び螺旋状に流れる際に加わる遠心力によって、螺旋流路14を流れる螺旋流は、下流側へと流れるにしたがって徐々に加圧されて圧縮された状態になる。
【0047】
並列部13aの各螺旋流路14を流れる螺旋流はそれぞれ、合流部13bに排出される。このとき、各螺旋流路14から排出された螺旋流は、合流部13bにて互いに混ざり合うと同時に、流路の総断面積が広がることによって圧縮状態から圧力が解放される。合流部13bにおける螺旋流の混ざり合いと、圧力の解放による減圧作用とによって、水流中に溶け込んでいた空気が気泡化し、その結果、合流部13bを流れる水流中に微細気泡が発生する。そして、微細気泡を含む水流が微細気泡発生装置10の排出口12から下流側の通水路41へと排出される。
【0048】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)微細気泡発生装置10は、流入口11及び排出口12と、流入口11と排出口12とを連通する流路13とを備える。流路13は、流入口11から排出口12へ延びる軸線P周りに螺旋状に延びる独立した複数の螺旋流路14が並列する並列部13aを備える。微細気泡発生装置10は、並列部13aの下流側にて、複数の螺旋流路14から排出された旋回流を合流させることにより微細気泡を発生させる。
【0049】
上記構成によれば、螺旋流路14から排出された旋回流が混ざり合うことにより微細気泡を発生させることができる。上記構成の場合、従来技術において微細気泡を発生させるための要部である、流入口から排出口まで水流が直進できる部分を設けなくても、微細気泡を発生させることができる。また、上記構成の場合、微細気泡は、旋回流が混ざり合う部分で発生するため、発生と同時又は発生した後に拡散される。そのため、通水路41を流れる水流中における微細気泡の分布の偏りが少なくなる。これに対して、特許文献1に開示される従来技術の場合、発生した微細気泡が水流の中心部分に偏る傾向がある。
【0050】
(2)流路13における並列部13aの下流側には、複数の螺旋流路14から排出された水流を合流させる合流部が設けられている。
微細気泡発生装置10の内部に旋回流を合流させる合流部13bを設けている。そのため、通水路41における微細気泡発生装置10が配置される部分の下流側に、旋回流を合流させるための部分を確保する必要がない。これにより、微細気泡発生装置10が設置される通水路41の形状、及び通水路41における微細気泡発生装置10の設置位置を設定する際の自由度が向上する。
【0051】
(3)合流部13bは、複数の螺旋流路14のそれぞれを排出口12側に延長させた形状の延長部分15と、軸線Pが位置する中心部分にて延長部分15同士を連通する連通部分16とを備える。
【0052】
上記構成によれば、合流部13bの流路断面において、排出された各螺旋流が広がる方向が連通部分16に向かう方向、即ち、流路の中央へ向かう方向に限定されるため、螺旋流同士が効率的に接触する。これにより、合流部13bにおける微細気泡の発生効率が向上する。また、螺旋流路14が3以上である場合には、旋回流が混ざり合う部分が連通部分16に集中することによっても、微細気泡の発生効率が向上する。
【0053】
(3)螺旋流路14における軸線Pに直交する断面形状は、螺旋流路14がなす螺旋の中央側から当該螺旋の外周側に向かって、徐々に幅が広くなる拡幅部分を有する形状である。
【0054】
上記構成によれば、螺旋流路14内を流れる螺旋流がより強く圧縮される。これにより、合流部13bにおける圧力の解放による減圧の度合も大きくなる。その結果、合流部13bにおける微細気泡の発生効率が向上する。
【0055】
(5)微細気泡発生装置10は、筒状の第1部材20と、第1部材20に挿入されるピン状の第2部材30とを備える。第1部材20は、周壁21と、周壁21の内周面から突出するとともに軸線P周りに螺旋状に延びる複数の螺旋壁23と、軸線P上に位置するとともに第1部材20を軸線P方向に貫通する貫通孔24とを備える。第2部材30は、貫通孔24に挿入されることにより、螺旋壁23の各先端面に当接して貫通孔24を塞ぐ部材である。螺旋流路14は、周壁21、螺旋壁23、及び第2部材30により区画された空間である。
【0056】
上記構成によれば、型成形により形成することのできる形状の第1部材20及び第2部材30の組み合わせによって、複数の螺旋流路14が並列する並列部13aを有する流路13を簡易に形成できる。
【0057】
(6)第1部材20の下流側の端部には、貫通孔24に第2部材30が挿入されていない部分であって、周壁21及び螺旋壁23により区画された空間同士が貫通孔24により連通された部分が設けられている。
【0058】
上記構成によれば、型成形により形成することのできる形状の第1部材20及び第2部材30の組み合わせによって、並列部13aの下流側に、延長部分15及び連通部分16を備える合流部13bを簡易に形成できる。
【0059】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、複数の螺旋流路14の断面形状を全て同じとしていたが、一部の螺旋流路14の断面形状が異なっていてもよいし、全部の螺旋流路14の断面形状がそれぞれ異なっていてもよい。また、一つの螺旋流路14の中で断面形状が変化してもよい。
【0060】
・螺旋流路14の断面形状は、上記拡幅部分を有する形状に限定されない。例えば、螺旋流路14の断面形状は、螺旋流路14がなす螺旋の中央側から当該螺旋の外周側に向かって、幅が一定である形状、例えば、長方形状であってもよい。
【0061】
・合流部13bの形状は、延長部分15と連通部分16を備える形状に限定されない。例えば、第1部材20から螺旋壁23が省略されて周壁21のみからなるような断面円形状の合流部13bとしてもよいし、断面円環状の合流部13bとしてもよい。
【0062】
・合流部13bが省略された形状の微細気泡発生装置10としてもよい。この場合、通水路41における微細気泡発生装置10の下流側の部分において、各螺旋流路14から排出された水流を合流させて混ぜ合わせることにより微細気泡を発生させる。
【0063】
・微細気泡発生装置10は、上記実施形態の第1部材20及び第2部材30を組み合わせた構成に限定されない。例えば、螺旋壁23が省略された形状の第1部材20と、ピン本体31の外周面に螺旋壁23が一体に形成された第2部材30とを組み合わせた構成の微細気泡発生装置10としてもよい。また、切削加工や3次元プリンタにより流路13が形成された一部材からなる構成の微細気泡発生装置10としてもよい。
【0064】
・流路13は、合流部13bを間に挟んで配置された複数の並列部13aを備える構成であってもよい。複数の並列部13aを備える構成とした場合、各並列部13aを構成する螺旋流路14の回転方向は全て同じであってもよいし、並列部13aごとにそれぞれ異なっていてもよい。合流部13bを間に挟んで配置された複数の並列部13aを備える微細気泡発生装置10の一例を
図7及び
図8に示す。
【0065】
図7及び
図8に示す微細気泡発生装置10の流路13は、第1並列部13a1と、第1並列部13a1の下流側に配置される合流部13bと、合流部13bの下流側に配置される第2並列部13a2とを備える。第1並列部13a1を構成する螺旋流路14の回転方向は、下流側に向かって半時計回りであり、第2並列部13a2を構成する螺旋流路14の回転方向は、下流側に向かって時計回りである。合流部13bは、断面円環に形成されている。
【0066】
また、上記微細気泡発生装置10は、周壁21を備える筒状の第1部材20と、第1部材20の内部に挿入されるとともに、ピン本体31の外周面に螺旋壁23が一体に形成された第2部材30とから形成されている。なお、
図8においては、第1部材20のみを断面で表示している。
【0067】
通水路41内において、上記の微細気泡発生装置10に達した水流は、第1並列部13a1を構成する複数の螺旋流路14に流れ込むとともに、螺旋流路14の数に応じた複数の水流に分割される。第1並列部13a1の各螺旋流路14を流れる螺旋流は、合流部13bにて混ざり合う。そして、混ざり合った水流中に微細気泡が発生する。
【0068】
次いで、微細気泡を含む水流が更に、第2並列部13a2を構成する複数の螺旋流路14に流れ込むとともに、螺旋流路14の数に応じた複数の水流に分割される。第2並列部13a2の各螺旋流路14を流れる微細気泡を含む螺旋流は、下流側の通水路41にて混ざり合う。そして、混ざり合った水流中に更なる微細気泡が発生する。このように、合流部13bを間に挟んで配置された複数の並列部13aを備える微細気泡発生装置10とすることにより、水流中により多くの微細気泡を発生させることができる。
【符号の説明】
【0069】
P…軸線、10…微細気泡発生装置、11…流入口、12…排出口、13…流路、13a…並列部、13b…合流部、14…螺旋流路、15…延長部分、16…連通部分、20…第1部材、21…周壁、23…螺旋壁、24…貫通孔、30…第2部材、40…水栓、41…通水路。