(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114299
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 7/00 20060101AFI20230809BHJP
H01C 1/032 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H01C7/00 110
H01C1/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016590
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
【テーマコード(参考)】
5E028
5E033
【Fターム(参考)】
5E028BA04
5E028BB01
5E028CA02
5E028EA01
5E028EB02
5E028JC02
5E028JC03
5E028JC04
5E028JC12
5E033AA27
5E033BA03
5E033BC01
5E033BD03
5E033BE02
5E033BH02
(57)【要約】
【課題】低抵抗においても高電力化を図りつつ低TCRを確保できるチップ抵抗器を提供する。
【解決手段】本発明のチップ抵抗器1は、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面両端部に設けられた一対の表電極3と、両表電極3間を接続する抵抗体5と、抵抗体5上に設けられたガラス体6と、ガラス体6を通して抵抗体5に形成された抵抗値調整用のトリミング溝5aと、一対の表電極3よりも内側の領域でトリミング溝5aを覆うように形成された第1保護膜7と、第1保護膜7を覆うように形成された第2保護膜8と、絶縁基板2の両端面に延在して表電極3に接続する一対の端面電極9と、端面電極9を覆う一対の外部めっき層10とを備え、第1保護膜7が放熱性フィラーを含有する樹脂材料からなると共に、第2保護膜8が樹脂材料からなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、
前記絶縁基板の主面両端部に所定間隔を存して形成された一対の電極と、
一対の前記電極に両端部を重ねるように形成された抵抗体と、
前記抵抗体上に形成されたガラス体と、
前記ガラス体を通して前記抵抗体に形成された抵抗値調整用のトリミング溝と、
一対の前記電極よりも内側の領域で前記トリミング溝を覆うように形成された第1保護膜と、
前記第1保護膜を覆うように形成された第2保護膜と、
前記絶縁基板の両端面に延在して前記電極に接続するように形成された一対の端面電極と、
前記端面電極を覆うように形成された一対の外部めっき層と、
を備え、
前記第1保護膜が放熱性フィラーを含有する樹脂材料からなると共に、前記第2保護膜が樹脂材料からなる、ことを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項2】
前記第2保護膜は一対の前記電極よりも内側の領域に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項3】
前記電極上に補助電極が形成されており、前記第1保護膜と前記外部めっき層が前記補助電極を介して接続されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のチップ抵抗器。
【請求項4】
前記電極上に補助電極が形成されていると共に、前記補助電極を覆う前記外部めっき層の上面と前記第2保護膜の上面とが略同一平面上で連続している、ことを特徴とする請求項2に記載のチップ抵抗器。
【請求項5】
前記補助電極は導電粒子を含有する樹脂材料からなる、ことを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載のチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板のランドに半田接合される面実装タイプのチップ抵抗器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、絶縁基板の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の表電極と、絶縁基板の裏面に所定間隔を存して対向配置された一対の裏電極と、表電極と裏電極を導通する一対の端面電極と、これら各電極を覆う一対の外部めっき層と、対をなす表電極どうしを橋絡する抵抗体と、抵抗体を覆う絶縁性の保護膜等によって主に構成されている。
【0003】
この種のチップ抵抗器において、通常、抵抗体には抵抗値を調整するためのトリミング溝が形成されており、保護膜は、トリミング溝を含めた抵抗体を完全に覆う第1保護膜と、第1保護膜を完全に覆う第2保護膜とで構成されている。しかし、このように構成されたチップ抵抗器においては、保護膜の熱伝導率が低いため、電力負荷の大きな使用に対応しようとすると、抵抗体の発熱が大きくなり、抵抗体の発熱部を起点に破壊が発生してしまい、結果的にチップ抵抗器全体の破壊に繋がることが懸念される。
【0004】
そこで従来より、高電力に対応可能なチップ抵抗器を提供するために、第1保護膜をアルミナ等の高熱伝導性絶縁体粒子と樹脂で形成すると共に、第2保護膜を樹脂で形成し、この第1保護膜の幅を抵抗体の幅より狭く且つ第2保護膜の幅を抵抗体の幅よりも広くしたチップ抵抗器が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1に記載されたチップ抵抗器は、熱伝導率の高い第1保護膜で抵抗体を覆い、この第1保護膜が一対の表電極と接するように構成されているため、抵抗体で発生した熱が第1保護膜から一対の表電極を介して外部めっき層により放熱させることができ、しかも、第1保護膜の幅が抵抗体の幅より狭く設定されているため、絶縁基板上における第2保護膜を形成可能なスペースが広がって、抵抗体を第2保護膜で確実に保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで一般的なチップ抵抗器において、表電極には比抵抗の低いAg(銀)系の金属が用いられている。Ag系の金属はTCRの高い材料であるが、表電極上にNi(ニッケル)やSn(錫)等からなる外部めっき層を形成することで抵抗値成分が低下するため、チップ抵抗器全体に対する表電極の抵抗値成分が小さくなり、TCRを低くすることができる。ただし、低抵抗(例えば、1Ω未満)のチップ抵抗器の場合、表電極における外部めっき層の形成領域が狭くなると、表電極によるTCRの影響が大きくなってしまうため、低抵抗のチップ抵抗器ほどTCRを低くすることが困難となる。
【0008】
ここで、特許文献1に記載されたチップ抵抗器は、第1保護膜を抵抗体の表電極に重なる接続部を覆って表電極と接触させ、このような第1保護膜を第2保護膜で完全に覆う構成となっているため、第1保護膜の外形が印刷ダレに起因して外側に広がることを考慮して、第2保護膜を第1保護膜よりも十分に大きく形成する必要がある。その結果、表電極における外部めっき層の形成領域が狭くなってしまうため、低抵抗のチップ抵抗器の場合、TCRが増加してしまうという問題が発生する。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低抵抗においても高電力化を図りつつ低TCRを確保できるチップ抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面両端部に所定間隔を存して形成された一対の電極と、一対の前記電極に両端部を重ねるように形成された抵抗体と、前記抵抗体上に形成されたガラス体と、前記ガラス体を通して前記抵抗体に形成された抵抗値調整用のトリミング溝と、一対の前記電極よりも内側の領域で前記トリミング溝を覆うように形成された第1保護膜と、前記第1保護膜を覆うように形成された第2保護膜と、前記絶縁基板の両端面に延在して前記電極に接続するように形成された一対の端面電極と、前記端面電極を覆うように形成された一対の外部めっき層と、を備え、前記第1保護膜が放熱性フィラーを含有する樹脂材料からなると共に、前記第2保護膜が樹脂材料からなる、ことを特徴としている。
【0011】
このように構成されたチップ抵抗器では、抵抗体のトリミング溝近傍のホットスポットで発生した熱が熱伝導率の高い第1保護膜により放熱されるため、高電力化を図ることができる。また、電極と抵抗体の接続部に生じる段差によって第1保護膜の電極上への流出が防止されるため、必要最小限の大きさの第2保護膜で第1保護膜を覆うことが可能となる。その結果、電極における外部めっき層の形成領域を十分に確保することができるため、低抵抗のチップ抵抗器においてもTCRの増大を防止することができる。
【0012】
上記構成のチップ抵抗器において、第2保護膜は電極と抵抗体の接続部を超えた領域まで延びるように形成されても良いが、第2保護膜が一対の電極よりも内側の領域に形成されていると、外部めっき層の形成範囲が広くなると共に、抵抗体のホットスポットから外部めっき層までの経路が短くなるため、抵抗体のホットスポットで発生した熱を実装基板へ効率良く放熱することができる。
【0013】
また、上記構成のチップ抵抗器において、電極上に補助電極が形成されており、この補助電極を介して第1保護膜と外部めっき層が接続されていると、第1保護膜から露出する抵抗体の両端部を補助電極で覆うことができるため、必ずしも第2保護膜を電極間よりも広い形状で形成する必要がなくなり、第2保護膜の形状の自由度が向上する。
【0014】
また、上記構成のチップ抵抗器において、電極上に補助電極が形成されていると共に、この補助電極を覆う外部めっき層の上面と第2保護膜の上面とが略同一平面上で連続していると、第2保護膜を電極間の内側領域に形成することに伴って実装時のノズルとの吸着面積が小さくなったとしても、外部めっき層と第2保護膜の高さが揃えられてフラットな上面が形成されるため、実装性を安定させることができる。
【0015】
また、上記構成のチップ抵抗器において、補助電極はスパッタにより形成された金属材料であっても良いが、補助電極が導電粒子を含有する樹脂材料からなると、第1保護膜と第2保護膜および補助電極を全て同じ印刷工程にて形成することができ、製造工程の簡素化が図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低抵抗においても高電力化を図りつつ低TCRを確保できるチップ抵抗器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係るチップ抵抗器の平面図である。
【
図3】該チップ抵抗器の製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態に係るチップ抵抗器の平面図である。
【
図6】第3の実施形態に係るチップ抵抗器の平面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】第4の実施形態に係るチップ抵抗器の平面図である。
【
図10】第5の実施形態に係るチップ抵抗器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は本発明の第1の実施形態に係るチップ抵抗器の平面図、
図2は
図1のII-II線に沿う断面図である。
【0020】
図1と
図2に示すように、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の上面における長手方向の両端部に形成された一対の表電極3と、絶縁基板2の下面における長手方向の両端部に形成された一対の裏電極4と、一対の表電極3を接続する長方形状の抵抗体5と、抵抗体5上に形成されたガラス体6と、ガラス体6を覆うように抵抗体5上に形成された第1保護膜7と、第1保護膜7を完全に覆う第2保護膜8と、絶縁基板2の両端面に延在して表電極3と裏電極4間を導通する一対の端面電極9と、端面電極9の全体と端面電極9から露出する部分の表電極3と裏電極4を覆う一対の外部めっき層10と、を備えて構成されている。
【0021】
絶縁基板2はセラミックス等からなる部品本体であり、この絶縁基板2はシート状の大判基板を縦横に延びる一次分割溝と二次分割溝に沿って分割することにより多数個取りされたものである。
【0022】
表電極3は、Pd(パラジウム)を1~5wt%含有するAg(銀)系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。また、裏電極4はAgペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。
【0023】
抵抗体5は、酸化ルテニウム等の抵抗ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものであり、この抵抗体5の長手方向の両端部は表電極3に重なって接続している。なお、
図2において、抵抗体5の上面は両端の接続部を含めて全て同一高さになっているが、実際には、抵抗体5の両端部が表電極3に重なっているため、表電極3と抵抗体5の接続部に一段高くなった段差が生じている。また、抵抗体5には抵抗値を調整するためのトリミング溝5aが形成されており、このトリミング溝5aはガラス体6の上からレーザー光を照射することによって形成される。
【0024】
ガラス体6は、ガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。ガラス体6はトリミング溝5aを形成する前の抵抗体5上に形成され、少なくともトリミング溝5aが形成される部位の抵抗体5を覆うように形成されている。本実施形態の場合、ガラス体6は一対の表電極3よりも内側に位置する抵抗体5の中央部分に形成されているが、ガラス体6が抵抗体5の全体を覆うように形成しても良い。
【0025】
第1保護膜7は、放熱性フィラーを含有するエポキシやフェノール等の樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化(焼付け)させたものであり、この第1保護膜7は表電極3と抵抗体5の接続部に生じる段差よりも内側の領域に形成されている。第1保護膜7は、ガラス体6の上から抵抗体5にトリミング溝5aを形成した後に、ガラス体6の全体を覆うように形成されてトリミング溝5aを覆っている。なお、放熱性フィラーは、高熱伝導率の高い絶縁体粒子であるアルミナ(Al2O3)や窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ホウ素(BN)等である。
【0026】
第2保護膜8は、第1保護膜7はエポキシやフェノール等の樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。第2保護膜8は抵抗体5と第1保護膜7を完全に覆う大きさに形成されており、第2保護膜8の両端部は表電極3と抵抗体5の接続部を超えて表電極3に接している。
【0027】
端面電極9はニッケル(Ni)/クロム(Cr)等をスパッタすることによって形成されたものであり、この端面電極9によって絶縁基板2の端面を介して離間する表電極3と裏電極4とが導通されている。端面電極9は、絶縁基板2の端面を覆うだけでなく、絶縁基板2の端面寄りに位置する表電極3の上面と裏電極4の下面を覆うように形成されている。
【0028】
外部めっき層10は、内層側のバリア層11と、該バリア層11を覆う外層側の外部接続層12との2層構造からなる。バリア層11は電解めっきによって形成されたNiめっき層であり、このバリア層11は、端面電極9の全体と端面電極9から露出する部分の表電極3と裏電極4を覆うように形成されている。外部接続層12は電解めっきによって形成されたSnめっき層であり、この外部接続層12はバリア層11の表面全体を覆うように形成されている。
【0029】
次に、上記の如く構成されたチップ抵抗器1の製造方法について、
図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0030】
まず、絶縁基板2が多数個取りされる大判基板を準備する。この大判基板には一次分割溝と二次分割溝が格子状に設けられており、両分割溝によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ領域となる。そして、
図3に示すように、このような大判基板に対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0031】
最初の工程では、大判基板の裏面にAgペーストをスクリーン印刷して乾燥することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の裏電極4を形成する(ステップS1)。
【0032】
次に、大判基板の表面にAg-Pdペーストをスクリーン印刷して乾燥することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の表電極3を形成する(ステップS2)。しかる後、表電極3と裏電極4を約850℃の高温で同時に焼成する。なお、これら表電極3と裏電極4は個別に焼成しても良く、その形成順を逆にして裏電極4よりも表電極3を先に形成するようにしても良い。
【0033】
次に、大判基板の表面に酸化ルテニウム等を含有した抵抗ペーストをスクリーン印刷して乾燥することにより、両端部を表電極3に重ね合わせた抵抗体5を形成した後、これを約850℃の高温で焼成する(ステップS3)。その際、表電極3と抵抗体5が重なる両者の接続部には一段高くなった段差が生じる。
【0034】
次に、一対の表電極3よりも内側に位置する抵抗体5上にガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥することにより、抵抗体5の中央部分を被覆するガラス体6を形成した後、これを約600℃の温度で焼成する(ステップS4)。
【0035】
次に、一対の表電極3にプローブを当接させて抵抗体5の抵抗値を測定しながら、ガラス体6の上からレーザ光を照射することにより、抵抗体5にトリミング溝5aを形成して抵抗値を調整する(ステップS5)。
【0036】
次に、ガラス体6の上からアルミナ等の放熱性フィラーを含有するエポキシ樹脂(またはフェノール樹脂)ペーストをスクリーン印刷した後、これを約200℃の温度で加熱硬化して第1保護膜7を形成する(ステップS6)。その際、第1保護膜7の樹脂ペーストは一対の表電極3よりも内側の領域に印刷されるが、この領域の外側に位置する表電極3と抵抗体5の接続部に段差が存在するため、この段差によって樹脂ペーストの表電極3上への流出が防止される。
【0037】
次に、第1保護膜7上からエポキシ樹脂(またはフェノール樹脂)ペーストをスクリーン印刷した後、これを約200℃の温度で加熱硬化して第2保護膜8を形成する(ステップS7)。第2保護膜8は抵抗体5と第1保護膜7を完全に覆う大きさに形成されるため、第1保護膜7から露出する抵抗体5の端部(表電極3との接続部)も第2保護膜8によって覆われる。ここで、第2保護膜8の下層の第1保護膜7が表電極3上に流出していないため、第2保護膜8を表電極3上に必要以上大きく形成しなくても良く、換言すると、表電極3には第2保護膜8に覆われずに露出する大きな上面が確保されている。
【0038】
これまでの工程は大判基板に対する一括処理であり、次なる工程で、大判基板を一次分割溝に沿って短冊状に一次分割して短冊状基板を得る(ステップS8)。
【0039】
次に、この短冊状基板の分割面にNi/Crをスパッタすることにより、表電極3と裏電極4間を導通する一対の端面電極9を形成する(ステップS9)。これら端面電極9により、短冊状基板の端面全体と、短冊状基板の端面寄りに位置する表電極3の上面と裏電極4の下面が覆われる。
【0040】
次に、短冊状基板を二次分割溝に沿って複数のチップ状基板に二次分割した後(ステップS10)、これらチップ状基板に対して電解めっきを施すことにより、バリア層11と外部接続層12からなる一対の外部めっき層10を形成する(ステップS11)。具体的には、まず、チップ状基板に対して電解Niめっきを施すことにより、端面電極9の全体と端面電極9から露出する部分の表電極3と裏電極4を覆うバリア層11を形成する。しかる後、チップ状基板に対して電解Snめっきを施すことにより、バリア層11の表面全体を覆う外部接続層12を形成する。これらバリア層11と外部接続層12によって2層構造の外部めっき層10が形成され、この時点で
図1と
図2に示すようなチップ抵抗器1が得られる。
【0041】
以上説明したように、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1は、放熱性フィラーを含有する樹脂材料からなる第1保護膜7によってトリミング溝5aが覆われており、抵抗体5のトリミング溝5a近傍のホットスポットで発生した熱が熱伝導率の高い第1保護膜7を介して放熱されるため、高電力化を図ることができる。また、第1保護膜7は一対の表電極3よりも内側の領域に形成されており、表電極3と抵抗体5の接続部に生じる段差によって第1保護膜7の表電極3上への流出が防止されるため、必要最小限の大きさの第2保護膜8で第1保護膜7を覆うことが可能となる。その結果、表電極3における外部めっき層10の形成領域を十分に広く確保することができるため、低抵抗のチップ抵抗器1においてもTCRの増大を防止することができる。
【0042】
図4は第2の実施形態に係るチップ抵抗器20の平面図、
図5は
図4のV-V線に沿う断面図であり、
図1と
図2に対応する部分には同一符号を付してある。
【0043】
図4と
図5に示すチップ抵抗器20が第1の実施形態に係るチップ抵抗器1と相違する点は、第1保護膜7を覆う第2保護膜8が一対の表電極3よりも内側の領域に形成されていると共に、端面電極9が第2保護膜8から露出する表電極3と抵抗体5の接続部を覆っていることにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。
【0044】
このように構成された第2の実施形態に係るチップ抵抗器20では、第2保護膜8の大きさを小さくすることで表電極3における外部めっき層10の形成領域が大きく広がるため、チップ抵抗器全体に対する表電極3の抵抗値成分が小さくなり、TCRを低くすることができる。また、抵抗体5のホットスポットから外部めっき層10までの経路が短くなるため、抵抗体5のホットスポットで発生した熱を実装基板へ効率良く放熱することができる。
【0045】
図6は第3の実施形態に係るチップ抵抗器30の平面図、
図7は
図6のVII-VII線に沿う断面図であり、
図1と
図2に対応する部分には同一符号を付してある。
【0046】
図6と
図7に示すチップ抵抗器30が第1の実施形態に係るチップ抵抗器1と相違する点は、一対の表電極3上にそれぞれ補助電極31が形成されており、これら補助電極31を介して第1保護膜7と外部めっき層10が接続されていることにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。
【0047】
補助電極31は、絶縁基板2の端面から離れた表電極3上に形成されて表電極3と抵抗体5の接続部を覆っており、その一端部は第1保護膜7と第2保護膜8の間に挟まれている。補助電極31は、表電極3と第1保護膜7を跨ぐ位置に、AgやCuやNi等の導電性粒子を含む樹脂ペーストをスクリーン印刷した後、これを約200℃の温度で加熱硬化させたものである。すなわち、補助電極31は、
図3に示すフローチャートにおけるステップS6とステップS7の間に行われる工程であり、補助電極31の形成後に、一対の補助電極31間に露出する第1保護膜7を覆うように第2保護膜8が形成される。したがって、第1保護膜7と補助電極31および第2保護膜8を全てスクリーン印刷によって連続的に形成することができる。
【0048】
ただし、補助電極31をスパッタによって形成することも可能である。その場合は、一対の表電極3の外側部分と第1保護膜7の中央部をそれぞれマスク材で覆い、この状態で大判基板の表面に対して直交方向から金属粒子をスパッタして補助電極31を形成し、その後にマスク材を除去すれば良い。
【0049】
このように構成された第3の実施形態に係るチップ抵抗器30では、第1保護膜7から露出する表電極3と抵抗体5の接続部が補助電極31で覆われているため、端面電極9をスパッタにより形成する際に、スパッタ粒子を表電極3と抵抗体5の接続部まで飛ばす必要がなくなり、端面電極9を容易に形成することができる。また、表電極3と抵抗体5の接続部が補助電極31で覆われるため、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1のように、第2保護膜8を一対の表電極3間よりも広い形状に形成したり、第2の実施形態に係るチップ抵抗器20のように、第2保護膜8を一対の表電極3間よりも狭い形状に形成することが可能となり、第2保護膜8の形状の自由度が向上する。
【0050】
図8は第4の実施形態に係るチップ抵抗器40の平面図、
図9は
図8のIX-IX線に沿う断面図であり、
図6と
図7に対応する部分には同一符号を付してある。
【0051】
図8と
図9に示すチップ抵抗器40が第3の実施形態に係るチップ抵抗器30と相違する点は、第1保護膜7を覆う第2保護膜8が一対の表電極3よりも内側の領域に形成されていると共に、外部めっき層10の上面と第2保護膜8の上面とが略同一平面上で連続していることにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。
【0052】
このように構成された第4の実施形態に係るチップ抵抗器40では、第2保護膜8を一対の表電極3間の内側領域に形成することにより、表電極3における外部めっき層10の形成領域が大きく広がるため、TCRを低くすることができる。その反面、チップ抵抗器40をノズルで吸着して実装基板に実装する際に、第2保護膜8に対するノズルの吸着面積が小さくなってしまうが、外部めっき層10と第2保護膜8の高さが揃えられてフラットな上面が形成されるため、実装性を安定させることができる。
【0053】
図10は第5の実施形態に係るチップ抵抗器50の平面図、
図11は
図10のXI-XI線に沿う断面図であり、
図8と
図9に対応する部分には同一符号を付してある。
【0054】
図10と
図11に示すチップ抵抗器50が第4の実施形態に係るチップ抵抗器40と相違する点は、補助電極31の一端部が第1保護膜7と第2保護膜8との間に挟まれておらず、その代わりに補助電極31の一端部が第2保護膜8の上端部と接していることにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。
【0055】
このチップ抵抗器50において、第2保護膜8は一対の表電極3よりも内側の領域に形成されており、第1保護膜7は第2保護膜8によって完全に覆われている。補助電極31は、表電極3と抵抗体5の接続部を跨ぐ位置に、AgやCuやNi等の導電性粒子を含む樹脂ペーストをスクリーン印刷した後、これを約200℃の温度で加熱硬化させたものである。すなわち、補助電極31は、
図3に示すフローチャートにおけるステップS7とステップS8の間に行われる工程であり、第1保護膜7を覆う第2保護膜8の形成後に、この第2保護膜8の両端を超えて上端部を覆うように一対の補助電極31が形成される。
【0056】
このように構成された第5の実施形態に係るチップ抵抗器50では、一対の補助電極31を第2保護膜8の上端部まで覆うように形成し、これら補助電極31を覆うように外部めっき層10が形成されているため、チップ抵抗器50の上面に露出する補助電極31の面積を大きくすることができる。その結果、TCRを低くすることができると共に、チップ抵抗器50の上面に補助電極31の大きな平面が確保されて、実装性を安定させることができる。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、絶縁基板の裏面に表電極に導通する裏電極が設けられているチップ抵抗器について説明したが、そのような裏電極を備えていないタイプのチップ抵抗器についても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1,20,30,40,50 チップ抵抗器
2 絶縁基板
3 表電極(電極)
4 裏電極
5 抵抗体
5a トリミング溝
6 ガラス体
8 第2保護膜
9 端面電極
10 外部めっき層
11 バリア層
12 外部接続層
31 補助電極