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特開2023-114316産業機械、ワークの処理方法、及び旋回テーブル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114316
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】産業機械、ワークの処理方法、及び旋回テーブル装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20230809BHJP
   B23Q 7/10 20060101ALI20230809BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20230809BHJP
   B23Q 1/66 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B23Q7/00 Z
B23Q7/10
B23Q3/155 H
B23Q1/66 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016621
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米倉 功雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 竣
【テーマコード(参考)】
3C002
3C033
3C048
【Fターム(参考)】
3C002EE01
3C033AA24
3C033BB03
3C033EE01
3C033MM01
3C048DD12
3C048EE12
(57)【要約】
【課題】省人化ができて、多品種少量生産に適した新たな産業機械を提供すること。
【解決手段】本発明に係る産業機械は、ワークに対して処理を行う第1室(15)と、第1室に設けられ、ワークを着脱自在に保持する着脱具(6)と、第1室に設けられ、ワークに対して処理を行うための作業具(25)と、第1室と隣接する第2室(10)と、第1室と第2室との間に配置され、旋回軸(41)を中心に回転する旋回テーブル(40)と、を備え、旋回テーブルは、処理前のワーク(70)と処理後のワーク(71)とをそれぞれ区別して保管するストッカ(50,60)が設置された第1領域(40a)と、ワークを保持するジグ(90,91)が設置された第2領域(40b)と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して処理を行う第1室と、
前記第1室に設けられ、前記ワークを着脱自在に保持する着脱具と、
前記第1室に設けられ、前記ワークに対して処理を行うための作業具と、
前記第1室と隣接する第2室と、
前記第1室と前記第2室との間に配置され、旋回軸を中心に回転する旋回テーブルと、を備え、
前記旋回テーブルは、
処理前の前記ワークと処理後の前記ワークとをそれぞれ区別して保管するストッカが設置された第1領域と、
前記ワークを保持するジグが設置された第2領域と、を有する産業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の産業機械において、
前記旋回テーブルの前記第1領域が前記第1室に割り出されているとき、前記着脱具が、前記ストッカに保管されている処理前の前記ワークを取出し、あるいは、処理後の前記ワークを前記ストッカに保管し、
前記旋回テーブルの前記第2領域が前記第1室に割り出されているときに、前記作業具が、前記ジグに保持されてる前記ワークに対する処理を行う、産業機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の産業機械において、
前記第1領域には、前記ストッカに保管された処理前の前記ワークを押出す押出装置が設けられる、産業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の産業機械において、
前記押出装置は、
前記ストッカに積み重ねられた処理前の複数の前記ワークを一枚ずつ押出す押出プレートと、
前記押出プレートを前記旋回テーブルの面内方向に往復動させるシリンダと、を有する、産業機械。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の産業機械において、
前記ストッカの底部は、複数の段差が階段状に形成され、
それぞれの前記段差の高さは、前記ワークの高さより低い、産業機械。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の産業機械において、
前記第1領域には、前記ワークの姿勢を変える姿勢変更装置が設けられる、産業機械。
【請求項7】
請求項6に記載の産業機械において、
前記姿勢変更装置は、
支軸を中心に傾動するシーソー部材を備え、
前記シーソー部材は、
前記支軸より一方の側に形成され、前記ワークが載置される載置部と、
前記支軸より他方の側に形成され、押圧力を受けて前記シーソー部材を前記支軸を中心に傾動させる押圧部と、を有する、産業機械。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の産業機械において、
前記第2領域には、異なる種類の前記ジグが複数設置される、産業機械。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の産業機械を用いたワークの処理方法であって、
前記ストッカに処理前の前記ワークを予め設置する第1工程と、
前記旋回テーブルの前記第1領域を前記第1室に割り出して、前記着脱具で処理前の前記ワークを保持する第2工程と、
前記旋回テーブルの前記第2領域を前記第1室に割り出して、前記第2工程で保持した前記ワークを前記ジグに設置する第3工程と、
前記ジグに設置された前記ワークに対して前記作業具で処理を行う第4工程と、
処理後の前記ワークを前記着脱具で保持する第5工程と、
前記旋回テーブルの前記第1領域を前記第1室に割り出して、前記着脱具で保持されている処理後の前記ワークを前記ストッカに収納する第6工程と、を含む、ワークの処理方法。
【請求項10】
旋回テーブルと、前記旋回テーブルを旋回軸を中心に回転させる回転機構と、を備え、
前記旋回テーブルは、
処理前後のワークをそれぞれ区別して保管するストッカが設置された第1領域と、
処理前の前記ワークを保持するジグが設置された第2領域と、を有する旋回テーブル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械、ワークの処理方法、及び旋回テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回テーブル付きの工作機械が知られている(例えば、特開2000-024866号公報参照)。この種の工作機械に用いられる旋回テーブルは、例えば、2位置旋回テーブルであり、搬送室と加工室との間に設置される。旋回テーブルは、180度旋回する。旋回テーブルは、1位置と2位置のいずれか一方を加工室内に割出し、他方を搬送室内に割出す。1位置と2位置の両方に、同じジグが旋回テーブルの旋回軸に対して回転対称に配置される。
【0003】
上記従来の工作機械では、加工室内でワーク(素材)を加工している間に、作業者が搬送室内で加工後のワーク(製品)を取出し、新たな素材をジグにセットする。そして、加工が済んだら、旋回テーブルが180度旋回して工作機械が同様の加工を行う。そのため、従来の工作機械は、製品の単位時間当たりの生産量が向上するので、少品種を大量に生産する場合に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の工作機械は搬送室に作業者が常時作業を行うため、省人化ができない。さらに、上記従来の工作機械は、多品種のワークを少量ずつ加工する場合には、ワークの種類が変わる度に、工作機械を停止して、作業者が新たなジグに交換しなければならない。そのため、作業者の工数がかかる割には、製品の単位時間当たりの生産量が少ない。よって、上記従来の工作機械は、多品種少量生産には不向きである。
【0005】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたもので、その目的は、省人化ができて、多品種少量生産に適した新たな産業機械、ワークの処理方法、及び旋回テーブル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の側面は、ワークに対して処理を行う第1室と、前記第1室に設けられ、前記ワークを着脱自在に保持する着脱具と、前記第1室に設けられ、前記ワークに対して処理を行うための作業具と、前記第1室と隣接する第2室と、前記第1室と前記第2室との間に配置され、旋回軸を中心に回転する旋回テーブルと、を備え、前記旋回テーブルは、処理前の前記ワークと処理後の前記ワークとをそれぞれ区別して保管するストッカが設置された第1領域と、前記ワークを保持するジグが設置された第2領域と、を有する産業機械である。
【0007】
ここで、本発明において、ワークを処理するとは、ワークに対して物理的に何らかの処理をすることを意味し、例えば、ワークに対して機械加工、洗浄、バリ取りなどをすることが含まれる。また、本発明における作業具は、ワークを処理できれば良く、例えば、ドリル等の工具やウォータージェットノズルなどが含まれる。よって、本発明における産業機械は、ワークを処理することができる広義の機械を意味し、工作機械、洗浄機、バリ取り装置など、あらゆる機械や装置が含まれる。
【0008】
また、本発明の第2の側面は、請求項1~8の何れか1項に記載の産業機械を用いたワークの処理方法であって、前記ストッカに処理前の前記ワークを予め設置する第1工程と、前記旋回テーブルの前記第1領域を前記第1室に割り出して、前記着脱具で処理前の前記ワークを保持する第2工程と、前記旋回テーブルの前記第2領域を前記第1室に割り出して、前記第2工程で保持した前記ワークを前記ジグに設置する第3工程と、前記ジグに設置された前記ワークに対して前記作業具で処理を行う第4工程と、処理後の前記ワークを前記着脱具で保持する第5工程と、前記旋回テーブルの前記第1領域を前記第1室に割り出して、前記着脱具で保持されている処理後の前記ワークを前記ストッカに収納する第6工程と、を含む、ワークの処理方法である。
【0009】
また、本発明の第3の側面は、旋回テーブルと、前記旋回テーブルを旋回軸を中心に回転させる回転機構と、を備え、前記旋回テーブルは、処理前後のワークをそれぞれ区別して保管するストッカが設置された第1領域と、処理前の前記ワークを保持するジグが設置された第2領域と、を有する旋回テーブル装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、省人化ができて、多品種少量生産に適している。なお、上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の工作機械の側面図。
図2】実施形態1の旋回テーブルの斜視図。
図3】実施形態1の旋回テーブルの平面図。
図4図3のIV-IV断面図であって、押出装置の構成図。
図5】実施形態1の押出装置の動作説明図。
図6】実施形態1のワークの加工方法のフローチャート。
図7】実施形態2の旋回テーブルの斜視図。
図8】実施形態2のストッカの内部構成図。
図9】実施形態2のストッカの側面図。
図10】実施形態2の姿勢変更装置の斜視図。
図11】実施形態2の姿勢変更装置の動作説明図。
図12】実施形態2の姿勢変更装置の動作説明図。
図13】実施形態2の半製品の加工方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
以下、本発明に係る産業機械の実施形態の一例として、工作機械でワークを機械加工する場合を、図面を参照しつつ説明する。図1は実施形態1の工作機械1の側面図である。図2は実施形態1の旋回テーブル40の斜視図、図3は実施形態1の旋回テーブル40の平面図である。なお、本明細書において、加工前(処理前)のワークを「素材」、加工後(処理後)のワークを「製品」、加工途中(処理途中)のワークを「半製品」と定義して、これらの用語を用いる。
【0013】
図1に示すように、工作機械1は、加工室(第1室)15と、ストッカ室(第2室)10と、シャッタ13と、回転機構30と、旋回テーブル40と、ストッカ50,60と、ジグ90,91と、主軸頭21と、主軸22と、主軸頭移動装置23と、自動工具交換装置(ATC)24と、工具(作業具)25と、着脱具26と、制御盤7と、を含む。
【0014】
工作機械1は、立型工作機械である。勿論、本発明は、上記したようにあらゆる産業機械に適用可能であり、例えば、横型工作機械、マシニングセンタ、研削盤、ホブ盤などの工作機械の他、洗浄機やバリ取り装置等にも適用可能である。
【0015】
主軸頭移動装置23は、主軸頭21を左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)、上下方向(Z軸)に自在に移動させる。主軸22は、主軸頭21に軸支される。工具25または着脱具26は、自動工具交換装置24によって、主軸22の主軸穴(図示せず)に装着される。工具25は、例えば正面フライス、エンドミル、ドリル、タップである。
【0016】
着脱具26は、例えば吸着具や把持具である。主軸22に着脱具26を装着したときに、主軸22は素材70や製品71(半製品も含む)を着脱し、保持できる。なお、着脱具26は、例えば特許第6499063号に開示されている装置を使用できる。
【0017】
旋回テーブル40は、例えば、2位置旋回テーブルであり、加工室15とストッカ室10との間に設置される。旋回テーブル40は、旋回軸41を中心に180度旋回する。旋回軸41は、加工室15とストッカ室10の境界上で、上下方向(Z軸方向)に延びる。
【0018】
図2,3に示すように、旋回テーブル40は、2つの領域40a,40b、及び可動壁42を有する。可動壁42は、旋回テーブル40を第1領域40aと第2領域40bとに区画する。
【0019】
第1領域40aと第2領域40bは、旋回軸41を中心に180度回転対称に配置される。旋回テーブル40の旋回により、2つの領域40a,40b(2つの位置)の一方が加工室15に割出され、他方がストッカ室10に割出される(位置決めされる)。
【0020】
可動壁42は、平板である。可動壁42は、旋回軸41を含んで旋回テーブル40に垂直な面上で、旋回テーブル40に固定される。可動壁42は、旋回テーブル40と一体となって旋回軸41を中心に旋回する。旋回テーブル40を位置決めすると、可動壁42はシャッタ13と接し(図1参照)、可動壁42とシャッタ13とにより、加工室15とストッカ室10とが仕切られる。なお、シャッタ13は、例えばスライド扉である。
【0021】
回転機構30は、旋回テーブル40を旋回軸41を中心に回転させる。回転機構30は、駆動源であるモータと、減速機等を含む。
【0022】
ストッカ50は、素材70を保管する。ストッカ60は、製品71を保管する。つまり、実施形態1において、素材70と製品71とは区別して保管される。素材70及び製品71は、例えば矩形状の平板である。素材70及び製品71は、例えば、円盤状であっても、ブロック状であっても良い。
【0023】
ストッカ50は、旋回テーブル40の第1領域40aに支持台45を介して配置される。
【0024】
ストッカ50は、一対の側壁51,52と、仕切部53と、レール54と、固定具55と、を備える。一方の側壁51は、例えば平板であり、支持台45に固定される。レール54は支持台45に固定される。レール54は長穴54aを有する。他方の側壁52は、L字状のブラケット57を介してレール54に取り付けられ、レール54上をスライドする。固定具55は、ブラケット57をレール54の任意の位置に固定する。固定具55は、例えばボルトである。固定具55をレール54の長穴54aに挿入してレール54とブラケット57とを締結すれば、側壁52がレール54上に位置決めされる。側壁52をレール54上でスライドさせ、側壁51と側壁52との距離が素材70の長さに合うように調整すれば、複数の素材70を側壁51と側壁52との間に積み重ねて収納可能となる。仕切部53は側壁51,52に一体的に設けられており、素材70の落下を防止し、あるいは、隣り合う素材70と素材70とを間隔を空けた状態に保持する。
【0025】
なお、側壁51,52の底部と支持台45との間には、隙間56が設けられている(図4参照)。この隙間56は、素材70の板厚tより大きく、かつ、板厚tの2倍の厚さより小さい(t<隙間56<2t)。つまり、隙間56は、素材70が一枚通過可能な程度の大きさである。
【0026】
ストッカ60は、旋回テーブル40の第2領域40bに支持台46を介して配置される。
【0027】
ストッカ60は、複数の支柱61と、仕切部62と、を備える。支柱61は支持台46に固定される。支柱61は、例えばL字状の部材(アングル)である。支柱61と支柱61との間の距離は、製品71の長さに合うように予め設計されており、製品71は、支柱61と支柱61との間に積み重ねて収納される。なお、仕切部62は支柱61に一体的に設けられており、製品71の落下を防止し、あるいは、隣り合う製品71と製品71とを間隔を空けた状態に保持する。
【0028】
押出装置80は、ストッカ50の近傍に設けられる。押出装置80は、ストッカ50に積み重ねて収納された素材70を一枚ずつ押出す。押出装置80の詳細について、さらに図4,5を参照して説明する。図4図3のIV-IV断面図であって、押出装置80の構成図、図5は実施形態1の押出装置80の動作説明図である。
【0029】
押出装置80は、押出プレート81と、流体シリンダ83と、を備える。押出プレート81の板厚は、ストッカ50の隙間56に挿入可能な厚さで、かつ、素材70の板厚tと同等であれば良い。押出プレート81の先端部は、隙間56を望むように配置される。流体シリンダ83は、支持台45の裏面側に設けられ、作動流体によりロッド84を往復動させる。流体シリンダ83として、例えば、エアシリンダを使用できる。この場合の作動流体は、圧縮空気である。ロッド84の先端は、押出プレート81の屈曲部82と接続している。ロッド84の伸縮動作に伴って、押出プレート81は支持台45の面内方向に沿って往復動する。
【0030】
ロッド84が伸長した状態(図4)から、ロッド84が矢印A方向に縮退動作すると、図5に示すように、押出プレート81が隙間56を介してストッカ50内に侵入し、素材70を一枚押出す。隙間56は素材70の板厚より若干大きいから、押し出された素材70は、素材置場48に移動する。
【0031】
素材置場48は、支持台45の面上において、ストッパ85と仕切部材(突条)86とレール54とにより区画された領域である。素材置場48は、素材70の外形と略同一に形成されている。即ち、素材70の縦横寸法と、素材置場48の領域の形状とは、略一致する。よって、押出プレート81によって押し出された素材70は、仕切部材86とレール54とによりに案内されながらストッパ85に衝突し、素材置場48から落下することなく正しい姿勢で載置される。
【0032】
素材置場48に移動した素材70は、着脱具26によって保持され、ジグ90,91にセットされた後、加工される。
【0033】
ジグ90,91は、旋回テーブル40の第2領域40bに配置される。ジグ90とジグ91とは、それぞれ異なる種類の素材70を保持できる。ジグ90,91は、素材70の形状等に応じて、好適な構成を使用できる。ジグ90,91は、例えば、素材70を固定するバイスやクランプである。
【0034】
制御盤7は、素材70をストッカ50から取出し、加工し、製品71をストッカ60に収納するまでの工作機械1の一連の動作を制御する。制御盤7は、図示しないが、各種演算等を行うCPU、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROMやHDD等の記憶装置、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM、および他の機器とデータを送受信する際のインタフェースである通信インタフェースを含むハードウェアと、記憶装置に記憶され、CPUにより実行されるソフトウェアとから構成される。例えば、制御盤7は数値制御装置を含む。制御盤7の各機能は、CPUが、記憶装置に格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。
【0035】
(ワークの加工方法)
次に、素材70の加工方法(処理方法)について説明する。図6は実施形態1のワーク(素材70)の加工方法のフローチャートである。なお、実施形態1ではジグ90を使用する場合を例に挙げて説明する。
【0036】
図6に示すように、ロボットや作業者が、複数の素材70を予めストッカ50に積み重ねて設置する(S1)。制御盤7からの指令により、旋回テーブル40が180度旋回し、ストッカ50,60が設置された第1領域40aを加工室15内に割出す(S2)。自動工具交換装置24が主軸22に着脱具26を装着する(S3)。制御盤7からの指令により、押出装置80が素材70を素材置場48に押出す(S4)。主軸22が素材置場48まで移動し、着脱具26が素材置場48に押出された素材70を保持する(S5)。制御盤7からの指令により、旋回テーブル40が180度旋回し、ジグ90が設置された第2領域40bを加工室15内に割出す(S6)。主軸22がジグ90まで移動し、着脱具26に保持された素材70をジグ90に設置する(S7)。自動工具交換装置24が主軸22に工具25を装着し、素材70を加工する(S9)。加工が終わると、自動工具交換装置24が主軸22に着脱具26を装着する(S10)。主軸22がジグ90まで移動し、着脱具26が製品71をジグ90から取出し、保持する(S11)。制御盤7からの指令により、旋回テーブル40が180度旋回し、第1領域40aを加工室15内に割出す(S12)。主軸22がストッカ60まで移動し、着脱具26が保持している製品71を開放し、製品71をストッカ60に収納する(S13)。
【0037】
実施形態1に係る工作機械1によれば、以下の作用効果を奏する。
【0038】
着脱具26を装着した主軸22が、直接、旋回テーブル40に設置したストッカ50から素材70を取出して、ジグ90に設置できる。また、着脱具26を装着した主軸22が、製品71をジグ90から取外し、直接、旋回テーブル40に設置したストッカ60に収納できる。このように、旋回テーブル40の第1領域40aにストッカ50,60が設けられているため、ロボットや作業者が、予め複数の素材70をストッカ50に設置しておけば、複数の素材70がなくなるまで自動的に工作機械1が素材70を加工して製品71をストッカ60に保管できる。よって、実施形態1に係る工作機械1によれば、省人化を実現でき、多品種少量生産に適している。また、ストッカ50,60を旋回テーブル40上に設ける構成であるため、素材70や製品71を搬送するための搬送ロボット等は不要である。よって、工作機械1のシステム全体を小型化でき、設置面積を縮小できる。
【0039】
また、工作機械1がストッカ50,60を内蔵しているため、工作機械1の周囲にストッカの設置スペースを別途設ける必要はない。また、素材置場48によって、素材70が所定位置に位置決めされるため、着脱具26が素材70を保持してジグ90に正しく設置できる。よって、製品71の加工精度が高い。
【0040】
素材70は通常、防錆油等が塗布されており、ストッカ50に積み重ねると、素材70同士がくっつくこともあるが、押出装置80が積み重ねられた素材70を一枚ずつ押し出す(切り出す)ことができるため、素材70を正確に一枚ずつ加工できる。
【0041】
また、ストッカ50の側壁51,52及び仕切部53によって、ストッカ50内の素材70の位置が規制されるため、旋回テーブル40の旋回時に素材70がストッカ50内でずれることがない。同様に、ストッカ60の支柱61及び仕切部62によって、ストッカ60内の製品71の位置が規制されるため、旋回テーブル40の旋回時に製品71がストッカ60内でずれることがない。
【0042】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。図7は、実施形態2の旋回テーブル140の斜視図である。図7に示すように、実施形態2に係る旋回テーブル140は、実施形態1と比べて、ストッカ150,160の構成が異なる点と、姿勢変更装置100を備えている点とが主に相違する。以下、これら相違点を中心に説明し、実施形態1と重複する構成については、同一符号を付して、説明は省略する。
【0043】
ストッカ150は、支持台45に設けられて、側壁151と側壁152との間にブロック状の素材170を積み重ねて保管する。側壁152は、ブラケット157を介してレール154上をスライドする。固定具155は、例えばボルトであり、長穴154aに挿入して、ブラケット157をレール154に固定する。こうして、側壁152がレール154上の任意の位置に位置決めされる。側壁151,152の下部と支持台45との間には、素材170の高さより若干大きい隙間156が設けられている。素材170は、押出装置80により隙間156から押し出され、一対の仕切部材86に案内されながら、ストッパ85に衝突して、素材置場148に載置される。なお、実施形態2において、押出プレート81の板厚は実施形態1より大きくても良い。
【0044】
ストッカ160は、支持台46に設けられて、一対の側壁161の間にブロック状の製品171を積み重ねて保管する。図8は実施形態2のストッカ160の内部構成図、図9は実施形態2のストッカ160の側面図である。図8及び図9に示すように、ストッカ160の底部163は、複数の段差164が階段状に形成されている。各段差164の高さH1は、製品171の高さH2より小さく、例えば、高さH2の約半分である。
【0045】
姿勢変更装置100は、支持台45を介して第1領域40aに設置される。姿勢変更装置100は、素材170または半製品172の姿勢を変更する(傾ける)。図10は実施形態2の姿勢変更装置100の斜視図である。図10に示すように、姿勢変更装置100は、矩形平板状のシーソー部材101を備える。シーソー部材101は、一対の支軸104を有する。支軸104は、例えば円柱状の突起である。一対の支軸104は、一対の側板105に設けられた穴106にそれぞれ嵌められる。シーソー部材101は、一対の支軸104を中心に傾動する。シーソー部材101は、支軸104より一方の側に、素材170または半製品172が載置される載置部102を有する。シーソー部材101は、支軸104より他方の側に押圧力を受ける押圧部103を有する。さらに、姿勢変更装置100は、素材170または半製品172が支持台45から落下しないようストッパ107,108を備える。
【0046】
次に、姿勢変更装置100の動作について説明する。図11及び図12は実施形態2の姿勢変更装置100の動作説明図である。着脱具26の爪127で素材170または半製品172を掴んで、シーソー部材101の載置部102に落下させる(図10の矢印B)。すると、図11に示すように、素材170または半製品172は載置部102を滑ってシーソー部材101の端部まで移動する。着脱具26の先端を爪127からプッシュロッド128に交換し、主軸22が下降してプッシュロッド128が押圧部103を下向きに押すと、シーソー部材101は支軸104を中心にして傾動する。すると、シーソー部材101の端部が素材170または半製品172を図12の矢印D方向に起こす。こうして、素材170または半製品172の姿勢が90度変更される。
【0047】
(ワークの加工方法)
次に、実施形態2に係る素材170の加工方法について説明する。実施形態2では、図6のS9とS10との間に、半製品172の姿勢を変更して製品171を仕上げる工程が追加されている点に特徴がある。図13は実施形態2の半製品172の加工方法のフローチャートである。以下、図13に示す工程を参照して、半製品172の姿勢変更と加工の手順を説明する。まず、素材170は、図6のS1~S9の工程を経て半製品172が出来上がる。半製品172は、図13のS9-1~S9-10の工程を経て、最終的に製品171となる。
【0048】
図13に示すように、主軸22が着脱具26を装着する(S9-1)。主軸22がジグ90まで移動し、着脱具26が半製品172を保持してジグ90から取外す(S9-2)。制御盤7からの指令により、旋回テーブル140が180度旋回し、姿勢変更装置100が設置された第1領域40aを加工室15内に割出す(S9-3)。主軸22が姿勢変更装置100まで移動し、着脱具26が半製品172を姿勢変更装置100に設置する(S9-4)。具体的には、着脱具26が半製品172をシーソー部材101の載置部102に落とす(図10,11参照)。姿勢変更装置100が半製品172の向きを変更する(S9-5)。具体的には、主軸22がプッシュロッド128を把持して、シーソー部材101の押圧部103を押し、シーソー部材101が半製品172を起立させる(図12参照)。
【0049】
主軸22が姿勢変更装置100まで移動し、起立した半製品172を着脱具26が保持する(S9-6)。制御盤7からの指令により、旋回テーブル140が180度旋回し、ジグ91が設置された第2領域40bを加工室15内に割出す(S9-7)。主軸22がジグ91まで移動し、着脱具26に保持された半製品172をジグ91に設置する(S9-8)。自動工具交換装置24が主軸22に工具25を装着し(S9-9)、半製品172を加工する(S9-10)。加工が終わると、図6のS10の工程に進み、最終的に製品171がストッカ160に積み重ねられる。
【0050】
実施形態2に係る工作機械200によれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。つまり、省人化を実現でき、多品種少量生産に適した工作機械200を提供できる。さらに、実施形態2では、以下の特有の作用効果を奏する。
【0051】
着脱具26を装着した主軸22が、半製品172をジグ90から取外し、姿勢変更装置100が半製品172の姿勢を変える。そして、主軸22が半製品172をジグ91に設置し、半製品172を加工して製品171を完成させる。このように、実施形態2では、素材170の姿勢を変えて加工できるため、複雑な製品171を製作できる。
【0052】
ストッカ160は、一対の側壁161で製品171を挟むため、製品171の前後(Y)方向が規制される。
【0053】
また、ストッカ160の底部163に段差164が設けられているため、製品171を隙間なく並べて保管できる。図8,9を参照して具体的に説明する。製品171aを底部163に載置した後、製品171bを製品171aの隣に載置する場合、仮に段差164がないとすれば、爪127が製品171aに干渉するため、製品171aと製品171bとの間を爪127が入るだけのスペースを確保する必要がある。ところが、実施形態2のようにストッカ160の底部163に段差164が設けられていれば、爪127が製品171bを掴んで製品171aの隣に載置しても、爪127が製品171aに干渉しない。よって、製品171aの隣に製品171bを隙間なく載置することができる。
【0054】
さらに、段差164に製品171が並べられると、製品171同士が左右方向(X軸方向)に互いに規制し合う。よって、隣り合う製品171の位置が規制され、旋回テーブル140の旋回時に位置がずれない。
【0055】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 工作機械(産業機械)
7 制御盤
10 ストッカ室(第2室)
13 シャッタ
15 加工室(第1室)
21 主軸頭
22 主軸
23 主軸頭移動装置
24 自動工具交換装置
25 工具(作業具)
26 着脱具
30 回転機構
40 旋回テーブル
40a 第1領域
40b 第2領域
41 旋回軸
42 可動壁
45 支持台
46 支持台
48 素材置場
50 ストッカ
51 側壁
52 側壁
53 仕切部
54 レール
54a 長穴
55 固定具
56 隙間
57 ブラケット
60 ストッカ
61 支柱
62 仕切部
70 素材(ワーク)
71 製品(ワーク)
80 押出装置
81 押出プレート
82 屈曲部
83 流体シリンダ
84 ロッド
85 ストッパ
86 仕切部材
90,91 ジグ
100 姿勢変更装置
101 シーソー部材
102 載置部
103 押圧部
104 支軸
105 側板
106 穴
107,108 ストッパ
127 爪
128 プッシュロッド
140 旋回テーブル
148 素材置場
150 ストッカ
151 側壁
152 側壁
154 レール
154a 長穴
155 固定具
156 隙間
157 ブラケット
160 ストッカ
161 側壁
163 底部
164 段差
170 素材(ワーク)
171 製品(ワーク)
172 半製品(ワーク)
200 工作機械(産業機械)



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13