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特開2023-114318ワッシャーの製造方法、ワッシャーの製造装置、及びワッシャー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114318
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】ワッシャーの製造方法、ワッシャーの製造装置、及びワッシャー
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
F16B43/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016623
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】592099352
【氏名又は名称】株式会社飯塚製作所
(71)【出願人】
【識別番号】501471079
【氏名又は名称】東洋発條工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 智
(72)【発明者】
【氏名】南 隆之
(72)【発明者】
【氏名】村上 博史
【テーマコード(参考)】
3J034
【Fターム(参考)】
3J034AA07
3J034AA13
3J034BA03
3J034CA03
(57)【要約】
【課題】表面の凹凸の寸法形状が高い自由度で制御されたワッシャーを提供する。
【解決手段】ワッシャー9の製造方法は、厚みを有する金属板8を冷間鍛造機4にセットする工程と、冷間鍛造機4によって金属板8の厚み方向の両面又は片面に所定の凹凸形状7を成形する工程とを具備する。凹凸形状7は、所定の向きに突出する多数の突起71が分散配置された形状である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みを有する金属板を冷間鍛造機にセットする工程と、
前記冷間鍛造機によって、前記金属板の厚み方向の両面又は片面に、所定の凹凸形状を成形する工程と、を具備し、
前記凹凸形状は、所定の向きに突出する多数の突起が分散配置された形状である、
ワッシャーの製造方法。
【請求項2】
各突起の突出寸法は、0.15mmから0.5mmの範囲内で設定されている、
請求項1のワッシャーの製造方法。
【請求項3】
各突起は、半球台状である、
請求項1又は2のワッシャーの製造方法。
【請求項4】
厚みを有する金属板に押し当てられ、前記金属板の厚み方向の第1面と第2面の両方または一方に、冷間鍛造によって凹凸形状を成形する金型を具備し、
前記凹凸形状は、所定の向きに突出する多数の突起が分散配置された形状である、
ワッシャーの製造装置。
【請求項5】
前記金型は、
前記第1面に押し当てられ、冷間鍛造によって前記第1面に前記凹凸形状を成形する第1金型と、
前記第2面に押し当てられ、冷間鍛造によって前記第2面に前記凹凸形状を成形する第2金型と、を含む、
請求項4のワッシャーの製造装置。
【請求項6】
各突起の突出寸法は、0.15mmから0.5mmの範囲内で設定されている、
請求項4又は5のワッシャーの製造装置。
【請求項7】
各突起は、半球台状である、
請求項4から6のいずれか一項のワッシャーの製造装置。
【請求項8】
厚み方向の両面に、凹凸形状が成形されており、
前記凹凸形状は、所定の向きに突出する多数の突起が分散配置された形状である、
ワッシャー。
【請求項9】
各突起の突出寸法は、0.15mmから0.5mmの範囲内にある、
請求項8のワッシャー。
【請求項10】
各突起は、半球台状である、
請求項8又は9のワッシャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワッシャーの製造方法、ワッシャーの製造装置、及びワッシャーに関する。
【背景技術】
【0002】
ワッシャーを、例えばハイテンションワッシャーとして使用する場合、ワッシャーの表面は高い摩擦抵抗を有することが好ましい。従来、ワッシャーの表面の摩擦抵抗を高めるために、サンドブラストの手法を用いて(つまり圧縮空気に乗せて多数の微細な砂粒を吹き付けることによって)ワッシャーの表面に微細な凹凸を形成することが、特許文献1等で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3168086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術では、サンドブラストによってワッシャーに微細な凹凸を形成するため、凹凸の寸法形状を高い自由度で制御すること(言い換えれば、ワッシャー表面の摩擦抵抗を狙い通りに制御すること)は困難であった。
【0005】
本開示は、表面の凹凸の寸法形状が高い自由度で制御されたワッシャーを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るワッシャーの製造方法は、厚みを有する金属板を冷間鍛造機にセットする工程と、前記冷間鍛造機によって、前記金属板の厚み方向の両面又は片面に、所定の凹凸形状を成形する工程と、を具備する。前記凹凸形状は、所定の向きに突出する多数の突起が分散配置された形状である。
【0007】
本開示の一態様に係るワッシャーの製造装置は、厚みを有する金属板に押し当てられ、前記金属板の厚み方向の第1面と第2面の両方または一方に、冷間鍛造によって凹凸形状を成形する金型を具備する。前記凹凸形状は、所定の向きに突出する多数の突起が分散配置された形状である。
【0008】
本開示の一態様に係るワッシャーは、厚み方向の両面に、凹凸形状が成形されている。前記凹凸形状は、所定の向きに突出する多数の突起が分散配置された形状である。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、表面の凹凸の寸法形状が高い自由度で制御されたワッシャーを提供することができるという、効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態のワッシャーの製造装置の概略断面図である。
図2図2は、同上の製造装置が備える第1金型の斜視図である。
図3図3は、図2のP部拡大図である。
図4図4Aは、同上の第1金型の下面図であり、図4Bは、図4AのA-A線断面図である。
図5図5は、同上の製造装置が備える第2金型の斜視図である。
図6図6は、同上のワッシャーの斜視図である。
図7図7は、図6のQ部拡大図である。
図8図8は、同上のワッシャーの別の斜視図である。
図9図9Aは、同上のワッシャーの平面図であり、図9Bは、図9AのB-B線断面図である。
図10図10Aは、同上のワッシャーを用いて結合させる被締結物を示す分解側面図であり、図10Bは、同上の被締結物の結合状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)第1実施形態
(1.1)製造装置
図1には、第1実施形態の製造装置を、概略的に示している。第1実施形態の製造装置は、冷間鍛造機4であり、第1金型11及び第2金型12を含んだ金型1と、これらを支持するダイセット3とを具備する。
【0012】
第1金型11と第2金型12は、対をなす金型である。第1実施形態においては、第1金型11が第2金型12の上方に位置する。第1金型11と第2金型12は、両者11,12の間に高圧力を伴って金属板8を挟み込むことで、金属板8の厚み方向の両面を塑性変形させて所定の凹凸形状7を成形するように構成されている。冷間鍛造は、より具体的にはプレス加工である。
【0013】
金属板8は、ワッシャー9(図6等参照)の基となる金属部材である。金属板8は、厚みを有する環状の部材であって、厚み方向に貫通する貫通孔が中央部に設けられている。
【0014】
金属板8は、厚み方向の一側に設けられた第1面81と、厚み方向の他側に設けられた第2面82とを有する。第1面81と第2面82は、互いに反対側を向く面である。第1面81と第2面82は、ともに円環状の面である。第1実施形態において、第1面81と第2面82は、互いに同大同形である。
【0015】
第1金型11は、金属板8の第1面81に対して、その上方から高圧力を伴って押し当てられる金型である。第1金型11は、言い換えればパンチである。第1金型11は、全体として円柱状の外形を有する金型であり、第1金型11の下面に、円環状の金型面110が設けられている(図2図3等参照)。
【0016】
金型面110は、金属板8の第1面81に対して高圧力を伴って押し当てられる面であり、所定の凹凸形状2が設けられている。凹凸形状2は、第1面81に所定の凹凸形状7を成形するために、その寸法形状が設定されている。
【0017】
第2金型12は、金属板8の第2面82をその下方から支持する金型である。第1金型11が金属板8の第1面81に押し当てられることに伴って、第2金型12が、金属板8の第2面82に対して下方から高圧力を伴って押し当てられる。第2金型12は、言い換えればカウンターパンチである。第2金型12は、全体として円柱状の外形を有する金型であり、第2金型12の上面には、円環状の金型面120が設けられている(図5参照)。
【0018】
金型面120は、金属板8の第2面82に対して高圧力を伴って押し当てられる面であり、所定の凹凸形状2が設けられている。凹凸形状2は、第2面82に所定の凹凸形状7を成形するために、その寸法形状が設定されている。
【0019】
第1実施形態においては、第1金型11に形成された凹凸形状2と、第2金型12に形成された凹凸形状2とが、共通の基本形状を有する。以下においては区別のため、前者に符号2aを付し、後者に符号2bを付す。
【0020】
また、第1実施形態において、金属板8の第1面81に成形される凹凸形状7と、第2面82に成形される凹凸形状7とは、共通の基本形状を有する。以下においては区別のため、前者に符号7aを付し、後者に符号7bを付す。
【0021】
第1金型11が有する凹凸形状2aと、これを用いた冷間鍛造で成形される第1面81の凹凸形状7aとについて、更に詳細に説明する。
【0022】
第1金型11の凹凸形状2aは、所定の向きに凹んだ多数の凹部21が均等に分散配置された形状である(図3図4等参照)。ここでの均等は、厳密な意味での均等に限定されず、当該分野において均等とみなし得る程度であればよい。多数の凹部21の凹んだ向きは、第1金型11の中心軸に沿った向きであり、第1実施形態では上向きである。多数の凹部21は、互いに同一の向きに凹んでいる。
【0023】
凹凸形状2aは、第1金型11が有する円環状の金型面110の全体に、形成されている。つまり、多数の凹部21は、金型面110の全体に均等に分散して位置するように、形成されている。
【0024】
多数の凹部21のうち、互いに隣接する凹部21の間には、突起23が形成されている。突起23は、隣接する凹部21に対して相対的に突出した部分である。金型面110の全体には、所定の向きに突出した多数の突起23が、分散配置されている。多数の突起23の突出した向きは、第1金型11の中心軸に沿った向きであり、第1実施形態では下向きである。多数の突起23は、互いに同一の向きに突出している。
【0025】
第1実施形態において、各凹部21は、半球状の凹みである。ここでの半球状は、幾何学的に厳密な意味で解釈されるものではなく、当該分野において半球状とみなし得る程度であればよい。
【0026】
各凹部21の凹み寸法は、例えば0.2mm程度である。多数の凹部21の凹み寸法は、互いに同一である必要はなく、互いに相違してもよい。各凹部21の凹み寸法は、例えば0.2mmから0.3mmの範囲内で設定されていることが好ましい。
【0027】
多数の突起23には、下方に向けて尖った先鋭状の突起23が含まれているが、滑らかに湾曲した先端面を有する突起23や、平坦な先端面を有する突起23が含まれてもよい。
【0028】
金属板8の第1面81に成形される凹凸形状7aは、所定の向きに突出する多数の突起71が均等に分散配置された形状である(図7図9等参照)。多数の突起71の突出する向きは、金属板8の中心軸(つまりワッシャー9の中心軸)に沿った向きであり、また、金属板8の厚み方向の一側の向きである。多数の突起71は、互いに同一の向きに突出している。
【0029】
第1面81の凹凸形状7aは、円環状である第1面81の全体に、形成されている。つまり、多数の突起71は、第1面81の全体に均等に分散して位置するように、形成されている。
【0030】
多数の突起71のうち、互いに隣接する突起71の間には、凹部73が形成されている。凹部73は、隣接する突起71に対して相対的に凹んだ部分である。第1面81の全体には、所定の向きに凹んだ多数の凹部73が、分散配置されている。多数の凹部73の凹んだ向きは、金属板8の中心軸に沿った向きである。多数の凹部73は、互いに同一の向きに凹んでいる。
【0031】
第1実施形態において、各突起71は、台状の突起体であり、より具体的には半球台状の突起体である。各突起71は、金属板8の第1面81の一部が、対応する半球状の凹部21内に入り込むように塑性変形することで、半球台状に成形される。
【0032】
半球台状は、半球体からその頭部(つまり半球体の頂点を含む部分)が取り除かれた立体形状であるが、ここでの半球台状は、幾何学的に厳密な意味で解釈されるものではなく、当該分野において半球台状とみなし得る程度であればよい。各突起71が有する頂面は略平坦であるか、緩やかに凸状に湾曲した曲面であることが好ましい。
【0033】
凹凸形状7aを構成する各突起71の突出寸法は、例えば0.2mm程度である。突出寸法の測定は、例えば、コントレーサー又は表面粗さ計を用いて実行することが可能である。
【0034】
多数の突起71の突出寸法は、互いに同一である必要はなく、互いに相違してもよい。各突起71の突出寸法は、0.15mmから0.5mmの範囲内で設定されていることが好ましい。
【0035】
多数の凹部73には、断面V字状の凹部73が含まれているが、滑らかに湾曲した谷底面を有する凹部73や、平坦な谷底面を有する凹部73が含まれてもよい。
【0036】
次に、第2金型12の凹凸形状2bと、これを用いて成形される第2面82の凹凸形状7bとについて、更に詳細に説明する。
【0037】
上述したように、第2金型12の凹凸形状2bは、第1金型11の凹凸形状2aと、共通の基本形状を有する(図5参照)。つまり、第2金型12の凹凸形状2bは、所定の向きに凹んだ多数の凹部21が均等に分散配置された形状である。多数の凹部21の凹んだ向きは、第2金型12の中心軸に沿った向きであり、第1実施形態では下向きである。多数の凹部21は、互いに同一の向きに凹んでいる。凹凸形状2bの他の構成は、第1金型11の凹凸形状2aと同様であるから、これ以上の記載は省略する。
【0038】
金属板8の第2面82に成形される凹凸形状7bは、金属板8の第1面81に成形される凹凸形状7aと、共通の基本形状を有する(図8図9参照)。つまり、凹凸形状7bは、所定の向きに突出する多数の突起71が均等に分散配置された形状である。各突起71は、金属板8の第2面82の一部が、対応する半球状の凹部21内に入り込むように塑性変形することで、半球台状に成形される。
【0039】
第2面82の多数の突起71が突出する向きは、金属板8の中心軸(つまりワッシャー9の中心軸)に沿った向きであり、また、金属板8の厚み方向(つまりワッシャー9の厚み方向)の一側の向きである。多数の突起71は、互いに同一の向きに突出している。凹凸形状7bの他の構成は、第1面81の凹凸形状7aと同様であるから、これ以上の記載は省略する。
【0040】
(1.2)製造方法
第1実施形態の製造装置を用いたワッシャー9の製造方法は、セット工程と、成形工程とを具備する。
【0041】
セット工程では、ワッシャー9の基となる円環状の金属板8を、冷間鍛造機4にセットする。このとき、金属板8の下方を向く第2面82が、第2金型12の金型面120上に支持される。金属板8の上方を向く第1面81は、第1金型11の下方に位置し、第1面81と第1金型11の金型面110は、上下方向において互いに距離をあけて対向する。
【0042】
成形工程では、冷間鍛造機4が備える第1金型11の金型面110を、金属板8の第1面81に打ち当てる(図1の矢印参照)ことによって、金属板8の厚み方向の第1面81と第2面82の両方に、冷間鍛造によって所定の凹凸形状7a,7bを成形する。
【0043】
上記の方法によって製造されたワッシャー9は、その厚み方向の両面に、冷間鍛造によって高い自由度で寸法形状が制御された凹凸形状7a,7bを有するので、ワッシャー9の両面の摩擦抵抗は、狙い通りに制御されたものとなる。
【0044】
つまり、例えば従来技術のようにサンドブラストによって(つまり圧縮空気に乗せて多数の微細な砂粒を吹き付けることによって)ワッシャー9の表面に微細な凹凸を形成したときには、凹凸の寸法形状を高い自由度で制御することが困難であり、特に、第1実施形態のような凹凸形状7a,7bをサンドブラストの手法で成形することは不可能である。
【0045】
対して、第1実施形態の製造装置を用いて製造したワッシャー9においては、厚み方向の両面に凹凸形状7a,7bが成形されており、両面の凹凸形状7a,7bは、多数の半球台状の突起71が分散配置された形状である。そして、各突起71の突出寸法は、0.15mmから0.5mmの範囲内に収まるように設定されている。
【0046】
そのため、第1実施形態のワッシャー9によれば、各突起71が対象物に適度に減り込み、対象物に対して良好な摩擦抵抗を発揮することができる。
【0047】
なお、本発明者らは、第1実施形態のワッシャー9が、サンドブラストによって微細な凹凸が形成されたワッシャーと比較して良好な摩擦抵抗を発揮し、ナット締めと頭締めの両方において高いトルク係数値を実現することを、実験によって確認している。
【0048】
(1.3)ワッシャーの使用例
第1実施形態のワッシャー9(つまり、冷間鍛造による所定の凹凸形状7a,7bが厚み方向の両面に成形されたワッシャー9)は、例えば、ボルト51に含まれるボルトヘッド512と被締結物55との間に挟まれるハイテンションワッシャー57として、好適に用いられる(図10参照)。
【0049】
ボルト51は、ボルトヘッド512から突出する胴部514と、胴部514の突先から更に突出するねじ部516とを、更に含む。胴部514及びねじ部516は、ボルトヘッド512よりも小径である。
【0050】
被締結物55は、胴部514及びねじ部516が挿し通される貫通孔5518を有する第1被締結物551と、同じく胴部514及びねじ部516が挿し通される貫通孔5528を有する第2被締結物552とを含む。締結状態において、第1被締結物551と第2被締結物552の互いの貫通孔5518,5528は一つながりに連通する。
【0051】
締結状態において、被締結物55の貫通孔5518,5528から突出するねじ部516には、ナット53が締め付けられ、ナット53と被締結物55(第2被締結物552)との間には、ハイテンションワッシャー58が挟み込まれる。
【0052】
ハイテンションワッシャー57は、被締結物55(第1被締結物551)に押し当たる面と、ボルトヘッド512に押し当たる面とを有し、その両面が、凹凸形状7が成形された面となる。ハイテンションワッシャー57は良好な摩擦抵抗を実現し、軸力の安定に寄与するので、ナット53の締結における回り過ぎや不足が抑えられる。
【0053】
(2)第2実施形態
第2実施形態の製造装置は、第1実施形態の製造装置と共通の基本構成を具備する。以下においては、第2実施形態の製造装置等の図示を省略し、第1実施形態と異なる構成についてのみ文章で説明する。
【0054】
第2実施形態の製造装置は、第1金型11と第2金型12の間に高圧力を伴って金属板8を挟み込むことによって、金属板8の厚み方向の片面に、冷間鍛造によって所定の凹凸形状7を成形するように構成されている。具体的には、第1金型11に所定の凹凸形状2が形成されているのに対して、第2金型12には凹凸形状2が形成されていない。そのため、金属板8の第1面81に凹凸形状7が成形されるのに対して、第2面82には凹凸形状7が成形されない。
【0055】
第2実施形態の製造装置を用いたワッシャー9の製造方法は、第1実施形態と同様のセット工程と、成形工程とを具備する。この方法で製造されたワッシャー9は、厚み方向の片面に、冷間鍛造によって高い自由度で寸法形状が制御された凹凸形状7を有するので、ワッシャー9の片面の摩擦抵抗は、狙い通りに制御されたものとなる。
【0056】
第2実施形態のワッシャー9(つまり、冷間鍛造による所定の凹凸形状7が厚み方向の片面に成形されたワッシャー9)は、例えば、図10に示すハイテンションワッシャー58として、好適に用いられる。
【0057】
ハイテンションワッシャー58は、被締結物55(第2被締結物552)に押し当たる面と、ナット53に押し当たる面とを有し、前者の面が、凹凸形状7が成形された面となり、後者の面が、凹凸形状7が成形されていない面となるように配される。後者の面は、共回り防止のために、例えば平滑な面であることが好ましい。
【0058】
(3)変形例
上記の実施形態において、金型1は第1金型11と第2金型12とを含むが、これに限定されず、例えば3つ以上の金型を含むことも有り得る。
【0059】
また、上記の実施形態においては、第1金型11の凹凸形状2aと第2金型12の凹凸形状2bとが、同様の構成を備えているが、凹凸形状2aと凹凸形状2bとで互いの寸法形状が相違することも有り得る。凹凸形状2aの各凹部21が半球状の凹みであるのに対して、凹凸形状2bの各凹部21が非半球状の凹みであることも有り得るし、凹凸形状2aの各凹部21が非半球状の凹みであるのに対して、凹凸形状2bの各凹部21が半球状の凹みであることも有り得る。また、凹凸形状2aと凹凸形状2bの各凹部21が非半球状の凹みであることも有り得る。
【0060】
また、上記の実施形態において、凹凸形状2a,2bには、多数の凹部21が均等に分散配置されているが、凹凸形状2a,2bの両方又は一方において、疎密が存在するように多数の凹部21が分散配置されてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態においては、第1金型11の金型面110の全体に凹凸形状2aが形成され、第2金型12の金型面120の全体に凹凸形状2bが形成されているが、金型面110の一部にだけ凹凸形状2aが形成されることも有り得るし、金型面120の一部にだけ凹凸形状2bが形成されることも有り得る。言い換えれば、金型面110の一部領域にだけ多数の凹部21が分散配置されることも有り得るし、金型面120の一部領域にだけ多数の凹部21が分散配置されることも有り得る。
【0062】
同様に、上記の実施形態においては、ワッシャー9を構成する金属板8の第1面81の凹凸形状7aと第2面82の凹凸形状7bとが、共通の構成を備えているが、凹凸形状7aと凹凸形状7bの構成が相違することも有り得る。凹凸形状7aの各突起71が半球台状の突起体であるのに対して、凹凸形状7bの各突起71が非半球台状の突起体であることも有り得るし、凹凸形状7aの各突起71が非半球台状の突起体であるのに対して、凹凸形状7bの各突起71が半球台状の突起体であることも有り得る。また、凹凸形状7aと凹凸形状7bの各突起71が非半球台状の突起体であることも有り得る。
【0063】
また、上記の実施形態において、凹凸形状7a,7bには、多数の突起71が均等に分散配置されているが、凹凸形状7a,7bの両方又は一方において、疎密が存在するように多数の突起71が分散配置されてもよい。
【0064】
(4)作用効果
実施形態及び変形例に基づいて説明したように、本開示のワッシャー9の製造方法は、厚みを有する金属板8を冷間鍛造機4にセットする工程と、冷間鍛造機4によって、金属板8の厚み方向の両面又は片面に、所定の凹凸形状7を成形する工程とを具備する。凹凸形状7は、所定の向きに突出する多数の突起71が分散配置された形状である。
【0065】
したがって、本開示の製造方法により製造されたワッシャー9は、冷間鍛造で成形された凹凸形状7を少なくとも片面に有するものとなる。そのため、本開示の製造方法によれば、ワッシャー9の表面の摩擦抵抗を狙い通りに制御することが可能である。
【0066】
本開示のワッシャー9の製造方法において、各突起71の突出寸法は、0.15mmから0.5mmの範囲内で設定されていることが好ましい。
【0067】
これによれば、各突起71は対象物に適度に減り込んで抵抗を与えることができ、ワッシャー9の凹凸形状7は良好な摩擦抵抗を発揮することが可能である。
【0068】
本開示のワッシャー9の製造方法において、各突起71は、半球台状であることが好ましい。
【0069】
これによれば、半球台状の各突起71は対象物に適度に減り込んで抵抗を与えることができ、ワッシャー9の凹凸形状7は良好な摩擦抵抗を発揮することが可能である。
【0070】
本開示のワッシャー9の製造装置は、厚みを有する金属板8に押し当てられ、金属板8の厚み方向の第1面81と第2面82の両方または一方に、冷間鍛造によって凹凸形状7を成形する金型1を具備する。凹凸形状7は、所定の向きに突出する多数の突起71が分散配置された形状である。
【0071】
したがって、本開示の製造装置により製造されたワッシャー9は、冷間鍛造で成形された凹凸形状7を少なくとも片面に有するものとなる。そのため、本開示の製造装置によれば、ワッシャー9の表面の摩擦抵抗を狙い通りに制御することが可能である。
【0072】
本開示の製造装置において、金型1は、第1面81に押し当てられ、冷間鍛造によって第1面81に凹凸形状7を成形する第1金型11と、第2面82に押し当てられ、冷間鍛造によって第2面82に凹凸形状7を成形する第2金型12とを含むことが好ましい。
【0073】
これによれば、第1金型11と第2金型12とで、ワッシャー9の両面に凹凸形状7を成形し、ワッシャー9の両面の摩擦抵抗をそれぞれ狙い通りに制御することが可能である。
【0074】
本開示の製造装置において、各突起71の突出寸法は、0.15mmから0.5mmの範囲内で設定されていることが好ましい。
【0075】
これによれば、各突起71は対象物に適度に減り込んで抵抗を与えることができ、ワッシャー9の凹凸形状7は良好な摩擦抵抗を発揮することが可能である。
【0076】
本開示の製造装置において、各突起71は、半球台状であることが好ましい。
【0077】
これによれば、半球台状の各突起71は対象物に適度に減り込んで抵抗を与えることができ、ワッシャー9の凹凸形状7は良好な摩擦抵抗を発揮することが可能である。
【0078】
本開示のワッシャー9は、厚み方向の両面に凹凸形状7が成形されている。凹凸形状7は、所定の向きに突出する多数の突起71が分散配置された形状である。
【0079】
したがって、本開示のワッシャー9によれば、ワッシャー9の両面の摩擦抵抗を狙い通りに制御することが可能である。
【0080】
本開示のワッシャー9において、各突起71の突出寸法は、0.15mmから0.5mmの範囲内にあることが好ましい。
【0081】
これによれば、各突起71は対象物に適度に減り込んで抵抗を与えることができ、ワッシャー9の凹凸形状7は良好な摩擦抵抗を発揮することが可能である。
【0082】
本開示のワッシャー9において、各突起71は、半球台状であることが好ましい。
【0083】
これによれば、半球台状の各突起71は対象物に適度に減り込んで抵抗を与えることができ、ワッシャー9の凹凸形状7は良好な摩擦抵抗を発揮することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 金型
11 第1金型
12 第2金型
4 冷間鍛造機
7 凹凸形状
71 突起
8 金属板
81 第1面
82 第2面
9 ワッシャー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10